(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】フィルム押え部材
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
A01G9/14 L
(21)【出願番号】P 2019123078
(22)【出願日】2019-07-01
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000221568
【氏名又は名称】東都興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】窪田 亮
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-062820(JP,A)
【文献】特開昭60-502267(JP,A)
【文献】登録実用新案第3028507(JP,U)
【文献】特開平8-298880(JP,A)
【文献】実開昭61-154309(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14- 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺板状の底部と、前記底部の長手側の二辺から互いに接近しつつ起立する第一の側部及び第二の側部とを有し、前記第一の側部と前記第二の側部との間に前記底部とは反対側へ長手方向に沿って開口するフィルム定着溝が形成されるフィルム定着材にフィルムを定着させるフィルム押え部材であって、
前記フィルム定着溝の外側に前記フィルム定着溝の開口と相対向して配置される蓋部と、
前記蓋部の一端に設けられて前記第一の側部の先端に引っ掛かる銜え部と、
前記蓋部から突出して前記フィルム定着溝内に挿入される挿入部とを備え、
前記挿入部は、前記蓋部からの距離が異なる位置に、前記第二の側部側へ突出する複数の突出部を有し、
前記突出部は、前記蓋部から離れた位置にあるものほど突端が前記銜え部に近い位置にあり、
前記突出部の何れかの突端が前記第二の側部の内側面に突き当てられる
ことを特徴とするフィルム押え部材。
【請求項2】
前記挿入部は、前記フィルム定着材の短手方向に並ぶよう、前記蓋部から前記フィルム定着溝へ向けて相対向して起立する第一の挟持片及び第二の挟持片を有し、
前記第二の挟持片は、前記第一の挟持片の前記第二の側部側に配置され、
前記突出部は、それぞれ前記第二の挟持片の異なる位置に連なる
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム押え部材。
【請求項3】
前記蓋部の前記フィルム定着材とは反対側であって、前記第一の挟持片と前記第二の挟持片の中間となる位置に溝が形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルム押え部材。
【請求項4】
前記突出部としては、前記第二の挟持片の側部に連なる第一の突出部と、前記第二の挟持片の先端に連なる第二の突出部とが設けられ、
前記第一の挟持片と前記第二の挟持片が前記蓋部から下方へ突出するように見た状態で、
前記第一の突出部は、前記第二の挟持片の側部に連なる根本から突端へ向けて上り勾配を有し、
前記第二の突出部は、前記第二の挟持片の先端に連なる根本から前記第二の側部側へ伸びるとともに、途中から下方前記第一の側部側へ折れ曲がり、
前記第二の突出部の突端となる折り曲げ部より下側部分が、突端へ向けて上り勾配を有する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のフィルム押え部材。
【請求項5】
前記挿入部は、前記第二の突出部の先端に連なり、前記底部側へ膨らむように湾曲するカール部を有し、
前記カール部は、前記第一の挟持片と前記第二の挟持片との間にできる隙間に対向する
ことを特徴とする請求項4に記載のフィルム押え部材。
【請求項6】
前記第一の挟持片と前記第二の挟持片が前記蓋部から下方へ突出するように見た状態で、
前記蓋部は、一端に前記銜え部が設けられる第一の板部と、前記第一の板部の他端に連なるとともに前記第一の板部に対して傾斜する第二の板部とを有して山なりとなっており、
前記第一の挟持片と前記第二の挟持片は、前記第二の板部に連なっている
ことを特徴とする請求項2から5の何れか一項に記載のフィルム押え部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム押え部材の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム押え部材は、ビニールハウス(プラスチックハウス)の骨組に取り付けられたフィルム定着材にフィルムを定着させて、ビニールハウスの屋根面、妻面、側面等にフィルムを展張するのに利用されている。
【0003】
フィルム定着材は、長尺矩形の底部と、その底部の長手側の二辺から互いに接近しつつ起立する第一、第二の側部とを有し、これら第一、第二の側部間に反底部側へ開口するフィルム定着溝が長手方向に沿って形成されている。その一方、フィルム押え部材は、フィルム定着溝の外側に、その開口に相対向して配置される蓋部と、この蓋部の一端に位置して第一の側部の先端に引っ掛かる銜え部と、蓋部における銜え部より他端側から突出してフィルム定着溝内に挿入される挿入部とを有する。その挿入部には、フィルム定着材の第二の側部へ向けて突出し、その突端が第二の側部の内側面に突き当たる突出部が設けられている(例えば、特許文献1)。
【0004】
これにより、フィルム定着溝の開口を塞ぐようにフィルムをフィルム定着材に重ね、その上から更にフィルム押え部材を重ねるようにして、フィルム押さえ部材をフィルム定着材に装着し、突出部と第二の側部との間にフィルムを挟むことで、フィルムがフィルム定着材に定着される。また、このとき、フィルム押え部材の突出部を第二の側部に強く押し当てることで、強風等でフィルムがあおられたときに、フィルムがフィルム定着材から外れるのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、フィルム定着材には様々な種類がある。フィルム定着材におけるフィルム定着溝の開口の短手方向の幅の最も狭くなる部分を間口とすると、その間口が広いものも狭いものもある。しかし、従来のフィルム押え部材では、銜え部と突出部が一つずつで銜え部から突出部の突端までの間隔が固定されている。このため、従来のフィルム押え部材では、多様なフィルム定着材に対応できず、汎用性が低い。
【0007】
より具体的には、例えば、間口の広いフィルム定着材に利用される従来のフィルム押え部材を間口の狭いフィルム定着材に利用しようとすると、第一の側部の先端に銜え部を引っ掛けた状態で突出部が間口を通らず、フィルム押え部材を装着できないことがある。また、これとは逆に、間口の狭いフィルム定着材に利用される従来のフィルム押え部材を間口の広いフィルム定着材に利用しようとすると、第一の側部の先端に銜え部を引っ掛けた状態で突出部の突端が第二の側部に当たらず、フィルム押え部材でフィルムを押さえられない。
【0008】
そこで、本発明は、汎用性が高く、間口の広いフィルム定着材にも間口の狭いフィルム定着材にも対応できるフィルム押え部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するフィルム押え部材は、底部の長手側の二辺から互いに接近しつつ起立する第一、第二の側部を有してこれらの間にフィルム定着溝が形成されるフィルム定着材にフィルムを定着させるものであり、フィルム定着溝の外側に配置される蓋部と、この蓋部の一端に設けられて第一の側部の先端に引っ掛かる銜え部と、蓋部から突出してフィルム定着溝内に挿入される挿入部とを備える。そして、挿入部が、蓋部からの距離が異なる位置に第二の側部側へ突出する複数の突出部を有する。さらに、突出部は、蓋部から離れた位置にあるものほど突端が銜え部に近い位置にあり、何れかの突端が第二の側部の内側面に突き当てられる。
【0010】
このような構成を備えたフィルム押え部材によれば、その装着対象となるフィルム定着材が間口の広いものであっても狭いものであっても、何れかの突出部の突端とフィルム定着材における第二の側部との間にフィルムを挟み込み、フィルムをフィルム定着材に定着できる。このため、上記フィルム押え部材は、様々な種類のフィルム定着材にフィルムを定着するのに利用でき、汎用性が高い。
【0011】
また、上記フィルム押え部材の挿入部は、フィルム定着材の短手方向に並ぶように蓋部からフィルム定着溝へ向けて相対向して起立する第一、第二の挟持片を有し、第二の挟持片が、第一の挟持片の第二の側部側に配置され、突出部がそれぞれ第二の挟持片の異なる位置に連なるように設けられていてもよい。
【0012】
このようにすると、第一、第二の挟持片間にビスを打ち込むことにより、第一、第二の突出部の一方を第二の側部の内側面に強く押し当てられる。このため、フィルム押え部材がフィルム定着材から外れてフィルムが外れたり、フィルムがフィルム押え部材とフィルム定着材との間から抜け出たりするのを確実に防止できる。さらには、第一、第二の挟持片間にビスを打ち込むことにより、銜え部から第一、第二の突出部の突端までの距離を変更できるので、フィルム押え部材の汎用性を一層向上できる。
【0013】
また、上記フィルム押え部材では、蓋部のフィルム定着材とは反対側であって第一、第二の挟持片の中間となる位置に溝が形成されていてもよい。このようにすると、溝がビスを打ち込む際の目印となるので、第一、第二の挟持片間にビスを打ち込む作業を容易にできる。
【0014】
また、上記フィルム押え部材の突出部として、第二の挟持片の側部に連なる第一の突出部と、第二の挟持片の先端に連なる第二の突出部とが設けられ、第一、第二の挟持片が蓋部から下方へ突出するようにフィルム押え部材を見た状態で、第一の突出部が第二の挟持片の側部に連なる根本から突端へ向けて上り勾配を有し、第二の突出部が第二の挟持片の先端に連なる根本から第二の側部側へ伸びるとともに途中から下方第一の側部側へ折れ曲がり、第二の突出部の突端となる折り曲げ部より下側部分が突端へ向けて上り勾配を有していてもよい。このようにすると、フィルム押え部材のフィルム定着材への装着を容易にできる。
【0015】
また、上記フィルム押え部材の挿入部は、第二の突出部の先端に連なって底部側へ膨らむように湾曲するカール部を有し、そのカール部が、第一、第二の挟持片間にできる隙間に対向するとしてもよい。このようにすると、フィルム定着溝内のフィルムにビスが干渉し、フィルムが傷付くのを防止できる。
【0016】
また、上記フィルム押え部材では、第一、第二の挟持片が蓋部から下方へ突出するようにフィルム押え部材を見た状態で、蓋部が、一端に銜え部が設けられる第一の板部と、その他端に連なるとともに第一の板部に対して傾斜する第二の板部とを有して山なりとなっていて、第一、第二の挟持片が第二の板部に連なっていてもよい。このようにすると、蓋部から離れた位置にある突出部の突端を銜え部に近づけるのが容易である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るフィルム押え部材によれば、汎用性が高く、間口の広いフィルム定着材にも間口の狭いフィルム定着材にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)は本発明の一実施の形態に係るフィルム押え部材の取付け状態を示した正面図である。(b)は(a)のW部分の拡大図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係るフィルム押え部材を装着可能な第一のフィルム定着材を示した正面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係るフィルム押え部材を装着可能な第二のフィルム定着材を示した正面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係るフィルム押え部材の正面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係るフィルム押え部材の斜視図である。
【
図6】本発明の一実施の形態に係るフィルム押え部材を第一のフィルム定着材に装着した状態を示す正面図である。
【
図7】本発明の一実施の形態に係るフィルム押え部材を第二のフィルム定着材に装着した状態を示す正面図である。
【
図8】本発明の一実施の形態に係るフィルム押え部材を利用して第一のフィルム定着材にフィルムを定着させる工程を説明する説明図である。
【
図9】本発明の一実施の形態に係るフィルム押え部材を利用して第二のフィルム定着材にフィルムを定着させる工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態に係るフィルム押え部材について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品(部分)か対応する部品(部分)を示す。
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るフィルム押え部材Aは、フィルム定着材B1に装着されて、このフィルム定着材B1とともにビニールハウスHの屋根面、妻面、側面等にフィルムを展張するのに利用されている。ビニールハウスに展張されるフィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリオレフィンフィルム、又はフッ素樹脂フィルム(硬質フィルム)等がある。そして、ビニールハウスに利用されるフィルムは、主に、透光性を有する透明フィルムであるが、ネット、遮光フィルム等が部分的に利用されていてもよい。
【0021】
本実施の形態では、フィルム押え部材Aは硬質フィルムをフィルム定着材B1に定着させるのに利用されている。しかし、フィルム押え部材Aが、その他のフィルムの定着に利用されてもよいのは勿論である。また、本実施の形態のフィルム押え部材Aは、
図1に示すフィルム定着材B1に限らず、他のフィルム定着材にも装着可能であり、
図2,3には、本実施の形態のフィルム押え部材Aが装着可能なフィルム定着材の一例を示している。
【0022】
以下、
図2,3に示すフィルム定着材を区別して呼ぶ場合には、
図2に示すフィルム定着材を第一のフィルム定着材B1、
図3に示すフィルム定着材を第二のフィルム定着材B2といい、その両方を呼ぶ場合には、単にフィルム定着材B1,B2、又は第一、第二のフィルム定着材B1,B2等という。以下、第一、第二のフィルム定着材B1,B2について詳細に説明する。
【0023】
第一、第二のフィルム定着材B1,B2は、それぞれ、アルミ又はスチール等の金属製の長尺物であって、その長手方向のどの位置で切断しても、その切断面の形状が略同じになっている。第一のフィルム定着材B1は、
図2に示すように、その短手方向に横並びに配置される樋フレーム1及び第一のフィルム定着フレーム2と、これらに重なるように配置される第二のフィルム定着フレーム3とを有する。その一方、第二のフィルム定着材B2は、
図3に示すように、一つのフィルム定着フレーム4で構成されている。
【0024】
各フィルム定着フレーム2,3,4は、それぞれ、長尺な矩形板状の底部2a,3a,4aと、その底部2a,3a,4aの長手側の二辺から互いに接近しつつ起立する第一の側部2b,3b,4b及び第二の側部2c,3c,4cとを有する。そして、各フィルム定着フレーム2,3,4における第一の側部2b,3b,4bと第二の側部2c,3c,4cとの間に、底部2a,3a,4aとは反対側(反底部側)へ開口するフィルム定着溝20,30,40がフィルム定着材B1,B2の長手方向に沿ってそれぞれ形成されている。
【0025】
以下、説明の便宜上、
図2,3に示すように、第一、第二の側部2b,3b,4b,2c,3c,4cが左右に並び、底部2a,3a,4aから上方へ起立するように各フィルム定着材B1,B2、及び各フィルム定着材B1,B2に装着されるフィルム押え部材Aを見たときの上下左右を、特別な説明がない限り、単に「上」「下」「左」「右」とする。また、そのようにフィルム定着材B1,B2を見たときの各フィルム定着フレーム2,3,4における右側の側部を第一の側部2b,3b,4b、左側の側部を第二の側部2c,3c,4cとする。
【0026】
すると、
図2に示すように、第一のフィルム定着材B1では、第一のフィルム定着フレーム2の右側に樋フレーム1が位置する。そして、第一のフィルム定着フレーム2の第一の側部2bの上端が第二のフィルム定着フレーム3の底部3aの左端に連なり、第一、第二のフィルム定着フレーム2,3のフィルム定着溝20,30がそれぞれ上方へ、平面視で左右横並びに開口する。また、樋フレーム1は、第一のフィルム定着フレーム2の底部2aの右側に横並びに配置される長尺な矩形板状の受け部1aと、第二のフィルム定着フレーム3の底部3aの中央部分から下方へ伸びて下端(先端)が受け部1aの左端に連なる垂下部1bとを含む。
【0027】
その第一のフィルム定着材B1は、主に、ビニールハウスHの肩部か、その近傍に設けられている。そして、その第一のフィルム定着材B1は、
図1(a)に示すようにビニールハウスHが連棟型である場合、ビニールハウスHの屋根部のフィルムF1と、肩部のフィルムF2を展張するのに利用され、図示しないがビニールハウスが単棟型である場合、ビニールハウスの屋根部のフィルムと、側部のフィルムを展張するのに利用されている。
【0028】
より詳しくは、第一のフィルム定着材B1は、ビニールハウスHの肩部近傍に奥行き方向へ伸びるように略水平に設けられるとともに、樋フレーム1が第一のフィルム定着フレーム2の斜め上方に位置し、これらの上側に第二のフィルム定着フレーム3が重なるよう、短手方向に勾配をもって配置される。そして、第二のフィルム定着フレーム3に屋根部のフィルムF1の端部がフィルム押え部材Aによって止められるとともに、第一のフィルム定着フレーム2に肩部のフィルムF2の上端が波形ばねSによって止められる。
【0029】
前述のようにしてフィルムF1,F2が定着された第一のフィルム定着材B1には、図示しないが、ドレンパイプが接続された露受け具が装着される。これにより、ビニールハウスの屋根部に生じた結露水は、屋根部のフィルムF1を伝って樋フレーム1へと流れ込み、その樋フレーム1によって露受け具へと導かれる。そして、結露水がその露受け具によって回収されて、ドレンパイプを通じてビニールハウス外へと排出される。
図1(a)に示すように、ビニールハウスHが連棟型で、隣り合うハウス間に谷樋Tが設けられる場合には、露受け具に回収された結露水は、ドレンパイプから谷樋Tへと排出される。
【0030】
その一方、第二のフィルム定着材B2は、ビニールハウスHの妻面、屋根面、側面等の各部に設けられる。そして、第二のフィルム定着材B2におけるフィルム定着フレーム4には、上記各部のフィルムがフィルム押え部材A又は波形ばねS等によって止められる。なお、この第二のフィルム定着材B2をビニールハウスの肩部か、その近傍に設け、ビニールハウスの肩部、屋根部、側部等のフィルムを展張するのに利用してもよいのは勿論である。
【0031】
つづいて、フィルム押え部材Aは、
図4,5に示すように、長尺な矩形板状の蓋部5と、この蓋部5の長手側の一端から上下二又に分かれる銜え部6と、蓋部5における銜え部6より他端側から下方へ突出する挿入部7とを有する。そして、
図6,7に示すように、そのフィルム押え部材Aが第一、第二のフィルム定着材B1,B2にそれぞれ装着された状態では、蓋部5がフィルム定着溝30,40の外側にその開口と対向して配置されるとともに、銜え部6の内側に第一の側部3b,4bの上端(先端)が挿入され、挿入部7がフィルム定着溝30,40内へと突出する。
【0032】
以下に、本実施の形態に係るフィルム押え部材Aの各部について詳細に説明する。
【0033】
蓋部5は、
図4,5に示すように、短手方向に山なりに配置される第一の板部5a及び第二の板部5bを含む。換言すると、蓋部5は、短手方向の中央部分で山なりに折れ曲がり、その頂部の一方側が第一の板部5a、他方側が第二の板部5bとなっている。そして、フィルム押え部材Aがフィルム定着材B1,B2に取り付けられた状態で、第一の板部5aが第二の板部5bの右側に位置し、その第一の板部5aの先端に銜え部6が連なるように設けられ、第二の板部5bの下側に挿入部7が突き出るように設けられる。また、第二の板部5bの上端には、上方へ開口するV字状又はU字状の溝5cが長手方向に沿って形成されている。
【0034】
銜え部6は、蓋部5における第一の板部5aの先端からこの第一の板部5aの延長方向へ突出する上顎部6aと、この上顎部6aの根本から下方へ伸びて途中から右方へカーブする下顎部6bとを含む。また、上顎部6a及び下顎部6bにおける第一の板部5aからその延長方向への突出量を比較すると、上顎部6aの突出量の方が下顎部6bの突出量と比較して小さい。
【0035】
挿入部7は、蓋部5における第二の板部5bから下方へ垂直方向に起立して、左右(短手方向)に並ぶように相対向して配置される第一の挟持片7a及び第二の挟持片7bと、これら第一、第二の挟持片7a,7bのうち、左側(第二の側部3c,4c側)に位置する第二の挟持片7bの側部から左方へ伸びる第一の突出部7cと、第二の挟持片7bの下端(先端)から左方へ伸びて途中から右下方へ折れ曲がる第二の突出部7dと、この第二の突出部7dの下端(先端)から下方へ膨らむように湾曲しつつ右方へ伸びるカール部7eとを含む。
【0036】
第二の挟持片7bは、これと向かい合う第一の挟持片7aと比較して薄肉で変形しやすい。さらに、蓋部5において、第二の板部5bに形成される溝5cは、平面視において第一、第二の挟持片7a,7bの中央となる位置に長手方向に沿って形成されている。これにより、溝5cの上側からビスEを打ち込むと、そのビスEのネジ部が第一、第二の挟持片7a,7bの間に挿入される。すると、第一、第二の挟持片7a,7bがビスEのネジ部によって押し広げられて、第二の挟持片7bが第一、第二の突出部7c,7dとともに左方へ動く。
【0037】
また、第二の挟持片7bから左方へ突出する第一、第二の突出部7c,7dの左端をそれぞれ突端q1,q2とすると、第二の突出部7dの突端q2は、第一の突出部7cの突端q1より銜え部6と近い位置にある。より詳細には、
図6,7に示すように、フィルム押え部材Aが各フィルム定着材B1,B2に装着された状態で、銜え部6の内側に挿入された第一の側部3b,4bの先端が上顎部6aに突き当たる位置を基準位置Pとすると、
図4に示すように、その基準位置Pから第二の突出部7dの突端q2までの距離X2が、基準位置Pから第一の突出部7cの突端q1までの距離X1より短い(X1>X2)。
【0038】
また、各フィルム定着材B1,B2における各フィルム定着溝20,30,40の開口の短手方向の幅が最も狭くなっている部分をそれぞれ間口とする。すると、
図2に示す第一のフィルム定着材B1において、フィルム押え部材Aが装着される第二のフィルム定着フレーム3の間口(以下、第一のフィルム定着材B1の間口という)の幅Y1は、
図3に示す第二のフィルム定着材B2において、フィルム押え部材Aが装着されるフィルム定着フレーム4の間口(以下、第二のフィルム定着材B2の間口という)の幅Y2よりも広い(Y1>Y2)。
【0039】
さらに、
図2に示す第一のフィルム定着材B1の間口の幅Y1は、
図4に示すフィルム押え部材Aの第一の突出部7cの突端q1から基準位置Pまでの距離X1より若干短く、且つ、第二の突出部7dの突端q2から基準位置Pまでの距離X2より長い(X2<Y1<X1)。このような第一のフィルム定着材B1にフィルム押え部材Aを装着する場合、幅Y1は距離X2より長いので、第一のフィルム定着材B1における第一の側部3bの先端がフィルム押え部材Aの銜え部6に引っ掛かった状態で、第二の突出部7dが第一のフィルム定着材B1の間口を容易に通過する。
【0040】
また、第一のフィルム定着材B1の間口の幅Y1はフィルム押え部材Aの第一の突出部7cの突端q1から基準位置Pまでの距離X1より若干短いが、作業者が第一のフィルム定着材B1における第一の側部3bの先端にフィルム押え部材Aの銜え部6を引っ掛けて、第二の板部5bに下向きに力を加えることで、第一の突出部7cが第一のフィルム定着材B1の間口を通過する。これにより、
図6に示すように、フィルム押え部材Aが第一のフィルム定着材B1に装着される。このような状態では、第一の突出部7cによって挿入部7がフィルム定着溝30から抜け出るのが防止されるので、フィルム押え部材Aの第一のフィルム定着材B1からの外れ止めがなされる。
【0041】
また、
図4に示すように、第一の突出部7cは第二の挟持片7bから斜め上向きに伸びて突端q1へ向けて上り勾配をもつ。このため、作業者が第一の突出部7cをフィルム定着溝30内へ押し込む際に、その第一の突出部7cの下端面に沿って第二の側部3cの先端を滑らせて、第一の突出部7cの突端q1にフィルム定着材B1の間口を通過させることができる。つまり、第一の突出部7cの下端面が突端q1をフィルム定着溝30内へ案内するガイド面として機能するので、第一の突出部7cをフィルム定着溝30内へ押し込みやすい。
【0042】
その一方、
図3に示す第二のフィルム定着材B2の間口の幅Y2は、
図4に示すフィルム押え部材Aの第二の突出部7dの突端q2から基準位置Pまでの距離X2より若干短い(Y2<X2)。このように、幅Y2は距離X2より若干短いが、作業者が第二のフィルム定着材B2における第一の側部4bの先端にフィルム押え部材Aの銜え部6を引っ掛けて、第二の板部5bに下向きに力を加えることで、第二の突出部7dが第二のフィルム定着材B2の間口を通過する。これにより、
図7に示すように、フィルム押え部材Aが第二のフィルム定着材B2に装着される。このような状態では、第二の突出部7dによって挿入部7がフィルム定着溝40から抜け出るのが抑制されるので、フィルム押え部材Aの第二のフィルム定着材B2からの外れ止めがなされる。
【0043】
なお、フィルム押え部材Aにおける第一の突出部7cの突端q1から基準位置Pまでの距離X1は、第二の突出部7dの突端q2から基準位置Pまでの距離X2よりさらに長いので(X2<X1)、第一の突出部7cは、第二のフィルム定着材B2の間口を通過できない。このため、フィルム押え部材Aが第二のフィルム定着材B2に装着された状態では、第一の突出部7cはフィルム定着溝40の外側に位置する。
【0044】
また、
図4に示すように、第二の突出部7dの突端q2よりも下側部分が下端へ向けて斜め下向きに伸びる。換言すると、第二の突出部7dの突端q2から下端にかけての部分が突端q2へ向けて上り勾配をもつ。このため、作業者が第二の突出部7dをフィルム定着溝40内へ押し込む際に、その第二の突出部7dの突端q2より下側部分の下端面に沿って第二の側部4cの先端を滑らせて、突端q2にフィルム定着材B2の間口を通過させることができる。つまり、第二の突出部7dの突端q2より下側部分の下端面が突端q2をフィルム定着溝40内へ案内するガイド面として機能するので、第二の突出部7dをフィルム定着溝40内へ押し込みやすい。
【0045】
以下、本実施の形態に係るフィルム押え部材Aを利用した第一、第二のフィルム定着材へのフィルム定着方法を説明する。
【0046】
図8に示すように、本実施の形態のフィルム押え部材Aを利用して第一のフィルム定着材B1における第二のフィルム定着フレーム3にフィルムF1を定着する場合、まず、
図8(a)に示すように、第二のフィルム定着フレーム3における第一の側部3bの先端に両面テープCを張り付ける。そして、フィルムF1の端から所定の間隔をあけた部分をその両面テープCに貼り付けることで、フィルムF1を第一のフィルム定着材B1に仮止めする。
【0047】
次に、
図8(b)に示すように、フィルムF1の上からフィルム押え部材Aの銜え部6を第一の側部3bの先端に被せる。このようにして銜え部6を第一の側部3bの先端に引っ掛けた状態でフィルム押え部材Aを反時計回りに回転し、
図8(c)に示すように、挿入部7をフィルム定着溝30内へ押し込む。このとき、銜え部6の下顎部6b先端がフィルム定着溝30内のフィルムF1を第一の側部3bの内側面へ向けて押し込むので、屋根部のフィルムF1が撓むことなく展張される。
【0048】
次に、
図8(d)に示すように、フィルム押え部材Aの溝5cをめがけてビスEを打ち込む。これにより、ビスEのネジ部が第一、第二の挟持片7a,7bの間に挿入されて、そのネジ部によって第二の挟持片7bが第二の側部3c側へ押され、第一の突出部7cの突端q1(
図4)が第二の側部3cの内側面に強く押し付けられる。これにより、第一の突出部7cと第二の側部3cとの間にフィルムF1を強固に挟持した状態で、フィルム押え部材Aが第一のフィルム定着材B1に強固に装着されて、その外れ止めがなされる。
【0049】
つづいて、
図9に示すように、本実施の形態のフィルム押え部材Aを利用して第二のフィルム定着材B2におけるフィルム定着フレーム4にフィルムF3を定着する場合、まず、
図9(a)に示すように、フィルム定着フレーム4における第一の側部4bの先端に両面テープCを張り付ける。そして、フィルムF3の端から所定の間隔をあけた部分をその両面テープCに貼り付けることで、フィルムF3を第二のフィルム定着材B2に仮止めする。
【0050】
次に、
図9(b)に示すように、フィルムF3の上からフィルム押え部材Aの銜え部6を第一の側部4bの先端に被せる。このようにして銜え部6を第一の側部4bの先端に引っ掛けた状態でフィルム押え部材Aを反時計回りに回転し、
図9(c)に示すように、挿入部7をフィルム定着溝40内へ押し込む。このとき、銜え部6の下顎部6b先端がフィルム定着溝40内のフィルムF3を第一の側部4bの内側面へ向けて押し込むので、フィルムF3が撓むことなく展張される。
【0051】
次に、
図9(d)に示すように、フィルム押え部材Aの溝5cをめがけてビスEを打ち込む。これにより、ビスEのネジ部が第一、第二の挟持片7a,7bの間に挿入されて、そのネジ部によって第二の挟持片7bが第二の側部4c側へ押され、第二の突出部7dの突端q2(
図4)が第二の側部4cの内側面に強く押し付けられる。これにより、第二の突出部7dと第二の側部4cとの間にフィルムF3を強固に挟持した状態で、フィルム押え部材Aが第二のフィルム定着材B2に強固に装着されて、その外れ止めがなされる。
【0052】
また、
図4に示すように、カール部7eは、第一、第二の挟持片7a,7bの間にできる隙間と上下に向かい合う位置に設けられている。さらに、
図8(d)と
図9(d)に示すように、ビスEのネジ部の長さは、フィルム押え部材AにビスEを打ち込んだときに、そのネジ部がカール部7eを貫通しない長さとなっている。このため、ビスEのネジ部先端をカール部7eで覆い、ビスEがフィルムF1,F3に干渉してそのフィルムF1,F3を傷付けるのを防止する。
【0053】
また、
図2,3に示すように、第一、第二のフィルム定着材B1,B2の第一の側部3b,4bの先端部は、それぞれ膨らみをもった形状となっており、
図6,7に示すように、各フィルム定着材B1,B2にフィルム押え部材Aを装着した状態で、上顎部6aが第一の側部3b,4bの先端部を超えない(はみ出さない)長さとなっている。このため、
図8(b)と
図9(b)に示すように、第一の側部3b,4bの先端を銜え部6に引っ掛けたとき、上顎部6aでフィルムF1,F3を第一の側部3b,4bの先端部外側へ押し込むことがなく、フィルム押え部材Aの装着作業が容易である。
【0054】
以下、本実施の形態に係るフィルム押え部材Aの作用効果について説明する。
【0055】
本実施の形態のフィルム押え部材Aはフィルム定着材B1,B2にフィルムを定着させるものであり、そのフィルム定着材B1,B2は、長尺板状の底部3a,4aと、その底部3a,4aの長手側の二辺から互いに接近しつつ起立する第一の側部3b,4b及び第二の側部3c,4cとを有し、第一の側部3b,4bと第二の側部3c,4cとの間に底部3a,4aとは反対側へ長手方向に沿って開口するフィルム定着溝30,40が形成されている。
【0056】
そして、フィルム押え部材Aは、フィルム定着溝30,40の外側にその開口と相対向して配置される蓋部5と、この蓋部5の一端に設けられて第一の側部3b,4bの先端に引っ掛かる銜え部6と、蓋部5から突出してフィルム定着溝30,40内に挿入される挿入部7とを備えている。さらに、その挿入部7は、蓋部5からの距離が異なる位置に、左方(第二の側部3c,4c側)へ突出する第一、第二の突出部7c,7dを有している。これら第一、第二の突出部7c,7dのうち、蓋部5からより離れた位置にある第二の突出部7dの突端q2は、第一の突出部7cの突端q1よりも銜え部6に近い位置にあり、第一、第二の突出部7c,7dの何れかの突端q1,q2が第二の側部3c,4cの内側面に突き当てられる。
【0057】
上記構成によれば、フィルム押え部材Aが間口の広い第一のフィルム定着材B1に装着される場合には、第一の突出部7cの突端q1が第二の側部3cの内側面に突き当たる。その一方、フィルム押え部材Aが間口の狭い第二のフィルム定着材B2に装着される場合には、第二の突出部7dの突端q2が第二の側部4cの内側面に突き当たる。
【0058】
このように、本実施の形態のフィルム押え部材Aによれば、その装着対象となるフィルム定着材B1,B2が間口の広いものであっても狭いものであっても、何れかの突出部の突端とフィルム定着材B1,B2における第二の側部3c,4cとの間にフィルムを挟み込み、フィルムをフィルム定着材B1,B2材に定着できる。つまり、本実施の形態のフィルム押え部材Aは、汎用性が高く、間口の広いフィルム定着材にも間口の狭いフィルム定着材にも対応できる。
【0059】
なお、本実施の形態では、一つの樋フレーム1と二つのフィルム定着フレーム2,3とを有する第一のフィルム定着材B1の間口が広く、一つのフィルム定着フレーム4を有する第二のフィルム定着材B2の間口が狭い。しかし、第一のフィルム定着材B1の間口が、第二のフィルム定着材B2の間口より広くてもよいのは勿論である。さらに、本実施の形態のフィルム押え部材Aが装着可能なフィルム定着材は、第一、第二のフィルム定着材B1,B2に限られない。
【0060】
例えば、フィルム定着材は、短手方向へ横並びに配置される樋フレーム及びフィルム定着フレームと、樋フレームの垂下部とこれと相対向するフィルム定着フレームの一方の側部とをつなぐ接続部とを有していてもよい。また、フィルム定着材は、短手方向へ横並びに配置される二つのフィルム定着フレームを有していても、三以上のフィルム定着フレームを有していてもよく、本発明に係るフィルム押え部材を装着可能なフィルム定着材は、少なくとも一つのフィルム定着フレームを有していればよい。
【0061】
また、本実施の形態のフィルム押え部材Aにおいて、挿入部7は、フィルム定着材B1,B2の短手方向に並ぶように蓋部5からフィルム定着溝30,40へ向けて相対向して起立する第一の挟持片7a及び第二の挟持片7bを有している。そして、第二の挟持片7bは、第一の挟持片7aの左側(第二の側部3c,4c側)に配置され、その第二の挟持片7bの異なる位置に第一、第二の突出部7c,7dが連なっている。
【0062】
上記構成によれば、第一、第二の挟持片7a,7bの間にビスEを打ち込むことにより、第一、第二の突出部7c,7dの一方を第二の側部3c,4cの内側面に強く押し当てられる。このため、フィルムが強風にあおられた際、フィルム押え部材Aが挿入部7側からフィルム定着材B1,B2から外れてフィルムが外れたり、フィルムがフィルム押え部材Aとフィルム定着材B1,B2との間から抜け出たりするのを確実に防止できる。
【0063】
さらに、上記構成によれば、第一、第二の挟持片7a,7bの間にビスEを打ち込むことにより、第二の挟持片7bが第二の側部3c,4c側へ押される。このため、例えば、
図7に示すようにビスEを打ち込む前の段階で第二の突出部7dの突端q2と第二の側部4cとの間に隙間があったとしても、ビスEを打ち込むことにより、第二の突出部7dの突端q2を第二の側部4cに突き当てられる。つまり、上記構成によれば、ビスEを第一、第二の挟持片7a,7bの間に打ち込むことにより、銜え部6から第一、第二の突出部7c,7dの突端q1,q2までの距離X1,X2を変更できるので、フィルム押え部材Aの汎用性を一層向上できる。
【0064】
また、本実施の形態のフィルム押え部材Aにおいて、蓋部5の上側(フィルム定着材B1,B2とは反対側)であって、第一の挟持片7aと第二の挟持片7bの中間となる位置に溝5cが形成されている。当該構成によれば、溝5cをめがけてビスEを打ち込むことにより、このビスEのネジ部を第一、第二の挟持片7a,7bの間に挿し込める。このため、上記構成によれば、ビスEを第一、第二の挟持片7a,7bの間に打ち込む作業を容易にできる。
【0065】
さらに、本実施の形態では、第一、第二の挟持片7a,7bの対向面が平坦面となっている。このため、ビスEのネジ部が第一、第二の挟持片7a,7bの間に挿し込まれたときに、ビスEのネジ部のネジ山が第一、第二の挟持片7a,7bに食い込み難く、第二の挟持片7aを第二の側部3c,4c側へ動かす量を大きくできる。しかし、フィルム押え部材Aがフィルム定着材B1,B2から外れなければ、第一、第二の挟持片7a,7bの間にビスEを打ち込まなくてもよい。そして、このような場合には、第一の挟持片7aを廃してもよい。
【0066】
また、本実施の形態では、第一、第二の挟持片7a,7bが蓋部5から下方へ突出するようにフィルム押え部材Aを見た状態で、第一の突出部7cは、第二の挟持片7bの側部に連なり、その根本から突端q1へ向けて上り勾配を有する。その一方、前述のようにフィルム押え部材Aを見た状態で、第二の突出部7dは、第二の挟持片7bの先端に連なり、その根本から左方(第二の側部3c,4c側)へ伸びるとともに、途中から右下方(下方第一の側部3b,4b側)へ折れ曲がり、その折り曲げ部が第二の突出部7dの突端q2となっている。そして、第二の突出部7dの突端q2より下側部分が、突端q2へ向けて上り勾配を有する。
【0067】
上記構成によれば、挿入部7をフィルム定着溝30,40内へ押し込む際に、第一の突出部7cの突端q1より根元側と、第二の突出部7dの突端q2より下側部分が突端q1,q2をフィルム定着溝30,40内へ案内するガイドとして機能する。このため、上記構成によれば、フィルム押え部材Aのフィルム定着材B1,B2への装着を容易にできる。
【0068】
なお、挿入部7をフィルム定着溝30,40内へ挿入可能で、第一、第二の突出部7c,7dの突端q1,q2の何れかが第二の側部3c,4cの内側面に突き当たるようになっていれば、第一、第二の突出部7c,7dの形状は適宜変更できる。さらに、本実施の形態では、第一の突出部7cと第二の突出部7dの二つの突出部が設けられているが、突出部の数は複数であればよく、突出部の数がいくつであれ蓋部5から離れた位置にある突出部ほど突端が銜え部6に近い位置にあればよい。
【0069】
また、本実施の形態のフィルム押え部材Aでは、挿入部7は、第二の突出部7dの下端(先端)に連なり、下方(底部3a,4a側)へ膨らむように湾曲するカール部7eを有する。そして、このカール部7eが第一、第二の挟持片7a,7bの間にできる隙間に対向する。これにより、第一、第二の挟持片7a,7bの間にビスEを打ち込んだ際、そのビスEの先端にカール部7eが対向する。このため、フィルム定着溝30,40内のフィルムにビスEが干渉し、フィルムが傷付くのを防止できる。さらに、カール部7eは、第二の突出部7dの突端q2をフィルム定着溝30,40内へ案内するガイドの一部としても機能できる。
【0070】
しかし、第一、第二の挟持片7a,7bの間にビスEを挿し込まない場合、又は、第一、第二の挟持片7a,7bの長さがビスEのネジ部の長さよりも長く、第一、第二の挟持片7a,7bの間にビスEが挿し込まれてもそのビスEでフィルムを傷付ける心配がない場合等には、カール部7eを廃してもよい。さらに、第二の突出部7dの突端q2がフィルム定着材B1,B2の間口を通過できれば、カール部7eを第一の挟持片7aの先端に設けてもよい。
【0071】
また、本実施の形態のフィルム押え部材Aでは、第一、第二の挟持片7a,7bが蓋部5から下方へ突出するように見た状態で、蓋部5は、一端に銜え部6が設けられる第一の板部5aと、その第一の板部5aの他端に連なるとともに一の板部5aに対して傾斜する第二の板部5bとを有して山なりとなっている。そして、第一の挟持片7aと第二の挟持片7bが、それぞれ第二の板部5bに連なっている。当該構成によれば、第一、第二の板部5a,5bの板厚を均一にしつつ、蓋部5から離れた位置にある突出部の突端を銜え部6に近づけるのが容易である。
【0072】
しかし、第一、第二の板部5a,5bが同一平面上に配置され、第一、第二の挟持片7a,7bが第二の板部5bに対して傾斜していてもよい。また、第一、第二の板部5a,5bの上端面が面一となる一方で、下側面が山なりになっていて、第一、第二の挟持片7a,7bが第二の板部5bの下端面に対して垂直に配置されていてもよい。このように、蓋部5の形状及び、蓋部5に対する第一、第二の挟持片7a,7bの傾きは、適宜変更できる。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
A・・・フィルム押え部材、B1・・・第一のフィルム定着材(フィルム定着材)、B2・・・第二のフィルム定着材、F1,F3・・・フィルム、q1,q2・・・突端、3a,4a・・・底部、3b,4b・・・第一の側部、3c,4c・・・第二の側部、30,40・・・フィルム定着溝、5・・・蓋部、5a・・・第一の板部、5b・・・第二の板部、5c・・・溝、6・・・銜え部、7・・・挿入部、7a・・・第一の挟持片、7b・・・第二の挟持片、7c・・・第一の突出部(突出部)、7d・・・第二の突出部(突出部)、7e・・・カール部