(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】薄型メガネ
(51)【国際特許分類】
G02C 5/00 20060101AFI20230214BHJP
G02C 1/06 20060101ALI20230214BHJP
G02C 5/16 20060101ALI20230214BHJP
G02C 5/12 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
G02C5/00
G02C1/06
G02C5/16
G02C5/12
(21)【出願番号】P 2019210075
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】591167452
【氏名又は名称】株式会社サンリーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】金谷 秀幸
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-536684(JP,A)
【文献】特表2019-507901(JP,A)
【文献】特開2003-315744(JP,A)
【文献】特開2008-191329(JP,A)
【文献】特開2016-148711(JP,A)
【文献】実開昭55-111217(JP,U)
【文献】実開昭58-180526(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 5/00
G02C 1/06
G02C 5/16
G02C 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要に応じて一時的に掛ける薄型メガネにおいて、該メガネは金属板又は樹脂
板を用い
て形成されたフレームのリムにレンズを嵌めた構造とし、
上記フレームはリムを有す
るフロント部と
該フロント部の両側に設けたヨロイ部から
上記リムの下側に沿って中央側へ延びるツルを有し、該ツルはフロント部と同一面に形成され、上記ヨロイ部にはツルを開くことが出来るように捩り変形する複数のスリットを
ヨロイ部内周とヨロイ部外周から切り込んで設け、
ヨロイ部内周から切り込まれるスリットはヨロイ部外周に届くことなく、ヨロイ部外周から切り込まれるスリットはヨロイ部内周には届かない長さとし、そしてヨロイ部内周から切り込まれるスリットとヨロイ部外周から切り込まれるスリットは交互に形成され、これらスリットによってヨロイ部が途中で途切れることはなくジグザグ状を成して連続していることを特徴とする薄型メガネ。
【請求項2】
フロント部の中央部にはリム内側から斜め上方へ延びる鼻当てを形成した請求項1記載の薄型メガネ。
【請求項3】
リムに嵌るレンズの外側には該リムとの間に空間を設けた請求項1、又は請求項2記載の薄型メガネ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顔から外して持ち歩く際に、胸ポケットに収納出来ることはもちろん、本や雑誌に挟むことが出来る紙片のように薄い薄型メガネに関するものである。
【背景技術】
【0002】
メガネには色々な形態があり、又多種多様なデザイン・装飾が施されている。そして機能面では長時間にわたって着用していても疲れを感じることがないように、チタンなどの材質が使用されて軽くなっている。又、フロント部にリムを備えることなく、両レンズを連結部材で直接ネジ止めし、レンズ外側にはヨロイをネジ止めした縁なしメガネも多用されている。
【0003】
図4は一般的なメガネを示しているが、該メガネはフロント部(イ)の両側にツル(ロ)、(ロ)を折畳み出来るように取付けている。そしてフロント部(イ)は両リム(ハ)、(ハ)を連結部材(ニ)にて連結すると共に、両リム(ハ)、(ハ)の外側にはヨロイ(ホ)、(ホ)がロウ付けされて構成し、該ヨロイ(ホ)、(ホ)に上記ツル(ロ)、(ロ)が蝶番(ヘ)、(ヘ)を介して折畳み可能に連結している。そしてリム(ハ)、(ハ)にはレンズ(ト)、(ト)が嵌っている。
【0004】
図5はメガネを外してツル(ロ)、(ロ)が折畳まれた場合であり、両ツル(ロ)、(ロ)は互いに重なり合っている。そして同図から明らかなように、ツル(ロ)、(ロ)はフロント部(イ)の裏側に折畳まれ、その厚さ寸法Hは比較的大きくなる。近眼用のメガネであるならば常に着用しているが、老眼鏡は仕事をする場合、新聞雑誌を読む場合などに着用する為に、一般にはメガネケースに入れて常時持ち歩いている。
【0005】
したがって、携帯する老眼鏡は出来るだけコンパクトであることが必要である。フロント部の縦横寸法は顔に掛ける関係上小さくするには限度があるが、折畳んだ状態の厚さ寸法Hを小さくすることで、収容するメガネケースは薄くなる。しかし、従来のメガネでは、フロント部両側に概略L型をしたヨロイ(ホ)、(ホ)が設けられ、該ヨロイ(ホ)、(ホ)に取付けられたツル(ロ)、(ロ)が該フロント部の裏側に重なり合うように折畳まれる為に、厚さの縮小には限度がある。
【0006】
実開平1-64616号に係る「薄型メガネ」は、メガネフレームのフロント部上縁の左右端に垂直に枢支軸を設け、該枢支軸によってテンプル(ツル)を枢支している。したがって、このメガネはコンパクトに折畳むことが出来、場所を取らずに収納可能であり、持ち運びに便利で特に老眼鏡用として有効である。
【0007】
実開平5-45635号に係る「折りたたみ式眼鏡」は、折りたたんだ状態がカードのように薄くなり、ワイシャツや洋服などのポケットに入れても該ポケットが膨らまず、財布などの薄いスペースにも収納可能で携帯に便利なメガネである。
そこで、レンズが嵌め込まれた薄板状のフロントが中央でヒンジで連結されて折りたたみ可能であると共に、テンプルも前テンプルと後テンプルからなって折りたたみ可能であり、テンプルを折りたたむと後テンプルがフロントの上端縁に乗るようになる。
【0008】
特開2009-69356号に係る「薄型メガネ」は、概略楕円形リムの中心から延びる水平基線に対して下方へ傾斜した傾斜線がリムと交わる位置にブローチを設け、該ブローチには継手を取付けると共に、該継手の軸は上記位置におけるリムの接線と平行とし、そして、継手に取付けたツルは折畳まれた状態でフロント部と同一面を成してリムに沿って立ち上がり、その後は真っ直ぐに延びて先端部は湾曲したモダンとし、また、ツルを開いた状態では外側へ傾斜し、さらに、両リムを連結する連結部材は山形としてリムの下側に設けている。
【文献】実開平1-64616号に係る「薄型メガネ」
【文献】実開平5-45635号に係る「折りたたみ式眼鏡」
【文献】特開2009-69356号に係る「薄型メガネ」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、老眼鏡をコンパクトに携帯することが出来るように構成した薄型メガネは色々存在している。本発明が解決しようとする課題は、ツルは蝶番などの継手を備えることなく折畳んだ際に同一面となり、厚みが紙片のように一定厚さで極めて薄く、胸ポケットに入れたり、シールとして本の間に挟み込んで持ち運び出来ると共に、手軽に掛けることが出来る薄型メガネを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る薄型メガネは一定厚さの板材、例えばβチタンなど金属板又は樹脂板を用いて構成され、フロント部と両ツルは同一面内に形成される。該板材はレーザー加工、ワイヤーカット、時にはプレス打ち抜き加工などにて所定の形状に製作される。
フロント部はレンズが嵌るリムを有し、両リムは連結部を介して左右対称に連結され、連結部の下側には鼻当てが設けられている。そして、フロント部の外側にはヨロイ部が形成され、このヨロイ部からツルがリムに沿ってフロント部中央側へ延びている。
【0011】
連結部の両側に形成している両リム、両ヨロイ部、両鼻当て、及び両ツルは一枚の金属板上に形成される。ここで、上記リム、ヨロイ部、鼻当て、及びツルの具体的な形状は限定しないが、プログラムされたコンピューターにて制御されることで、レーザー加工又はワイヤーカットなどが行われる。
そして、薄型メガネを着用する場合、同一面上に形成されるツルは、フロント部の後方に延びるように旋回(回転)して開くことが出来る。フロント部両側部に設けているヨロイ部には複数本のスリットが形成され、該スリットを介してヨロイ部は捩り変形し、ツルは旋回して開くことが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る薄型メガネではツルが折畳まれている場合、フロント部と同一面に収まる為に折畳み状態の厚さは紙片のように薄くなる。
しかも、ツルには蝶番のような継手を備えておらず、フロント部と同一面に形成され、その重さは約3g程度と非常に軽い。ツルは開閉することが出来るが、フロント部の外側となるヨロイ部に設けた複数のスリットを介して該ヨロイ部が捩れ、ツルは旋回して開き、後方へ延びる両ツルを顔の両側面に挟むことで掛けることが出来る。そして、顔から外すと同時にツルは旋回してフロント部と同一面に収まる。
【0013】
本発明の薄型メガネは一枚の金属板をレーザー加工やワイヤーカットなどで切断して製作され、フロント部とツルは同一面に形成される。すなわちロウ付け部分はなく、厚みは薄いが丈夫である。ツルはヨロイ部に形成されるスリットを介して旋回することが出来、メガネを掛けた際のフイット感は柔らかくて良好となる。また、メガネを掛けた際のツルは短く、掛けた場合に髪に触れない程度の長さであり、その為に美容室などでも有効に使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る薄型メガネを示す実施例で、(a)は平面図、(b)は正面図。
【
図2】フロントの外側に設けているヨロイ部を示す拡大図。
【
図3】(a)はツルが開いた場合の正面図、(b)はツルが開いた場合の平面図、(c)はツルが開いた場合の後方からの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係る薄型メガネを示す実施例であり、(a)は平面図、(b)は正面図をそれぞれ表している。本発明の薄型メガネは
図1に表しているように、その厚さは極めて薄く、例えばβチタンなどの薄い金属板を用いて構成している。
同図の1はフロント部、2a,2bはツル(テンプル)、3a,3bはリム、4は連結部、5a,5bは鼻当て、6a,6bはヨロイ部をそれぞれ表している。
【0016】
上記リム3a,3bにはレンズ7a,7bが嵌っているが、老眼鏡用のレンズ7a,7bはリム3a,3bより小さくなっており、その為にリム3a,3bとレンズ7a,7bとの間には空間13a,13bを残している。両リム3a,3bは中央の連結部4を介して左右対称に形成され、連結部4は正面側へ僅かに膨らんでいるが、フロント部1はほぼ平面状を成している。
リム3a,3bにはレンズ7a,7bが嵌っているが、レンズ外周に形成している凹溝にリム7a,7bの内周縁が篏合して取付けられている。
【0017】
リム3a,3bの内側には鼻当て5a,5bが中央に向いて斜め上方へ延びており、この鼻当て5a,5bは柔らかいシリコン樹脂にて被覆されている。
ツル2aはヨロイ部6aからリム3aの下側に沿って中央側へ延び、ツル2aの先端は概略三角形のモダン部を形成し、該モダン部にも柔らかくて滑りにくいシリコン樹脂が被覆されている。
【0018】
そして、上記ツル2bもヨロイ部6bからリム3bの下側に沿って中央側へ延び、ツル2bの先端には概略三角形のモダン部を形成し、モダン部には柔らかくて滑りにくいシリコン樹脂が被覆されている。
ところで、上記ツル2a,2bはフロント部1と同一面に収まっており、メガネを顔に掛ける場合に、ツル2a,2bは旋回(回転)して後方へその向きを変えることが出来る。すなわち、両ツル2a,2bを摘まんで開くことが出来る。
【0019】
フロント部1のヨロイ部6a,6bには複数本のスリットが形成され、このスリットを介して該ヨロイ部6a,6bが捩り変形し、ツル2a,2bは旋回することが出来る。
図2は上記ヨロイ部6を示す拡大図であり、ヨロイ部6には複数本のスリット8a,8b・・・、9a,9b・・・が互いに平行に形成されている。
ヨロイ部6はリム3との間にスリット溝10が設けられ、その為に該ヨロイ部6にはヨロイ部内周11とヨロイ部外周12を有している。
【0020】
上記スリット8a,8b・・・はヨロイ部内周11から切り込まれ、スリット9a,8b・・・はヨロイ部外周12から切り込まれており、スリット8a,8b・・・はヨロイ部外周12に届くことなく、スリット9a,9b・・・はヨロイ部内周11には届かない長さとしている。そして、スリット8a、スリット9a,スリット8b、スリット9bのように、交互に形成され、その為にこれら各スリット8a,9a,8b,9b・・・によってヨロイ部6が途中で途切れることはなく、ジグザグ状を成して連続している。
【0021】
ところで、リム3の下側に沿って延びているツル2を開く場合、該ヨロイ部6は各スリット8a,9a,8b,9b・・・介して捩られる。
図3はヨロイ部6が捩り変形してツル2を開いた場合を示している。(a)はツル2が開いた場合の正面図であり、ヨロイ部6はスリット8a,9a,8b,9b・・・にて形成される複数のヨロイ片が分離して大きく捩り変形することが出来、フロント部1と同一面に位置しているツル2は旋回して開くことが出来る。
すなわち、ヨロイ部6はスリット8a,9a,8b,9b・・・によって複数のヨロイ片に分離し、個々のヨロイ片が曲げ変形することでヨロイ部6は全体的に捩り変形することが出来る。
【0022】
この場合、ヨロイ部6は捩り変形し、すなわち、弾性変形することで開かれたツル2は閉じる方向に復元力が働き、メガネを外すならば該ツル2は直ちに閉じてフロント部1と同一面となる。
図3(b)はツル2が開いている場合の平面図であり、また
図3(c)はツル2が開いている場合の後方からの斜視図を表している。
【0023】
レンズ7はリム3に嵌り、レンズ7の外側には空間13を残しているが、その為にリム3には内側へ延びる上突片14と下突片15が形成され、これら上突片14と下突片15がレンズ外周凹溝に嵌って位置決めされている。リム3がレンズ7の全外周を拘束しないことで、すなわち、リム3から内側へ延びる上突片14と下突片15を設けることで、レンズ7は簡単にリム3に嵌めることが出来る。
【符号の説明】
【0024】
1 フロント部
2 ツル
3 リム
4 連結部
5 鼻当て
6 ヨロイ部
7 レンズ
8 スリット
9 スリット
10 スリット溝
11 ヨロイ部内周
12 ヨロイ部外周
13 空間
14 上突片
15 下突片