(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】新規の鎮痛薬製剤処方及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/12 20060101AFI20230214BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230214BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230214BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230214BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20230214BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230214BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20230214BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230214BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230214BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230214BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20230214BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230214BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230214BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230214BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20230214BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20230214BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230214BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
A61K38/12 ZNA
A61K9/08
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/40
A61P1/04
A61P1/12
A61P3/04
A61P9/12
A61P19/02
A61P21/02
A61P25/04
A61P25/08
A61P25/18
A61P25/36
A61P29/02
A61P37/02
A61P37/06
(21)【出願番号】P 2020528471
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(86)【国際出願番号】 US2018048346
(87)【国際公開番号】W WO2019108285
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-07-29
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512300816
【氏名又は名称】サイトジェル ファーマ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】メイワン セオドア イー
(72)【発明者】
【氏名】マグラリス コンスタンティン ベイジル
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-530147(JP,A)
【文献】特表2013-533890(JP,A)
【文献】米国特許第06740639(US,B1)
【文献】特表2001-509487(JP,A)
【文献】特表2005-534671(JP,A)
【文献】特表2015-516416(JP,A)
【文献】特開2011-173888(JP,A)
【文献】国際公開第2008/001849(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/12
A61K 9/08
A61K 47/04
A61K 47/12
A61K 47/40
A61P 1/04
A61P 1/12
A61P 3/04
A61P 9/12
A61P 19/02
A61P 21/02
A61P 25/04
A61P 25/08
A61P 25/18
A61P 25/36
A61P 29/02
A61P 37/02
A61P 37/06
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
μ-オピオイド
受容体結合活性を有する、水溶液である組成物であって、配列番号13のμ-オピオイド
受容体結合ペプチド及び
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβC)を含み、4.75~5.25のpHを有し、前記ペプチドの濃度が少なくとも4mg/mlである組成物。
【請求項2】
HPβCの濃度が、15%~25%である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
約0.01N HClを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ペプチドの濃度が、少なくとも6mg/mlであり、HPβCの濃度が、約20%である請求項
1に記載の組成物。
【請求項5】
酢酸イオンをさらに含む、請求項
4に記載の組成物。
【請求項6】
μ-オピオイド受容体の活性を調節する薬剤の調製のための請求項1の組成物の使用。
【請求項7】
HPβCの濃度が、15%~25%である、請求項
6に記載の組成物の使用。
【請求項8】
μ-オピオイド受容体の調節によって処置することのできる疾患又は症状を処置する薬剤の調製のための請求項1の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2017年11月30日出願の米国仮出願第62/592,601号の利益を主張する、2018年4月25日出願の米国特許出願第15/962,200号の利益を主張し、両者共、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
配列表
本明細書の配列表は、2018年4月2日に作成された「SeqList-02Apr18-ST25.txt」という名称であり、8KBである。配列表は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
オピエートの主な機能は、痛みを緩和することである。オピエートの使用に適している他の領域は、胃腸障害、統合失調症、肥満、血圧、痙攣、及び痙攣に関連する症状である。
【0003】
3つの異なるオピエート受容体が見つかっており、デルタ(δ)、カッパ(κ)及びミュー(μ)である。エンドモルフィン-1ペプチド(EM-1)及びその類似体は、μオピエート受容体に結合することによってオピエート様活性を示すことが見出されている。
【0004】
μ受容体の活性化は、広範囲の疼痛症状を緩和する最も効果的な手段の一つである。μアゴニストの独特の有効性は、疼痛処理を調節する神経系の多数の領域におけるそれらの存在及び疼痛伝達を制限する複数の機構の活性化(例えば、末梢神経系からの興奮性伝達物質の放出の阻害及び中枢神経系における細胞興奮性の低下)を含むいくつかの因子に起因する。
【0005】
オピオイドの使用に関する制限は、乱用傾向、呼吸抑制、認知障害及び運動障害等の負の副作用に起因する。負の副作用を減少させながら鎮痛特性を維持する化合物を開発するための主な取り組みは、あまり成果が上がっていない。これは、現在の処方薬乱用の流行から明らかである。
【0006】
米国では、毎年1億人を超える患者が急性又は慢性の疼痛を経験しており、効果が限定的なのと、副作用が強いために、既存の薬剤からは、十分に緩和されないことが多い。
【0007】
臨床的有用性を有するモルヒネ及び他の化合物は主としてμ受容体で作用するので、この部位に対して高い親和性及び選択性を有するペプチドを有する医薬組成物はかなり重要である。従って、これらの化合物を送達するための医薬製剤を有することが望ましい。
【0008】
デルタ又はカッパ受容体よりもμオピオイド受容体に対して高度に選択的であるウシ及びヒト脳由来の天然の内因性ペプチドが記載されている(例えば、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる特許文献1を参照のこと)。これらのペプチドは強力な鎮痛薬であり、乱用傾向及び呼吸抑制の低下に有望であることが示されている。
【0009】
エンドモルヒネの環状化されたD-アミノ酸含有テトラペプチド類似体(特許文献2、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)も記載されている。これらの結果は有望であるが、改善された薬学的に許容される製剤の開発が必要である。
【0010】
現在利用可能なオピオイド製剤の中には薄すぎて、疼痛をコントロールするために長期治療又は大量の薬物投与を必要とする患者のニーズを満たせないものがある。例えば、クエン酸スフェンタニルは、50μg/mLの濃度の水溶液、1μg/mLのモルヒネ、20μg/mLの硫酸モルヒネ、20μg/mLのクエン酸フェンタニル及び500μg/mLのアルフェンタニルで、現在、入手可能である。より多くの薬剤を従来の水性製剤に単に添加することは、オピオイド化合物、特にフェンタニルやその同族体のような親油性のものが溶液から沈殿するので、より濃縮された製剤を作製するための実行可能な選択肢ではなく、これは例えば、一貫しない送達速度、薬物吸収の減少、組織応答の減少や薬物送達手段又は注入経路に沿った他のポイントで目詰まりにつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第6,303,578号
【文献】米国特許第5,885,958号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、改善された溶解性及び他の特性を有する新規かつ有利なペプチド製剤を提供することによって、この必要性に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、疼痛を軽減するための組成物及び方法を提供する。具体的には、本発明は、有利なμ-オピオイド受容体結合活性を有するペプチド及び/又はそれらの塩の医薬製剤を提供する。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、ペプチドは、配列番号13:H-Tyr1-cyclo-(D-Lys2-Trp3-Phe4)、すなわち、アミノ酸、チロシン、リジン、トリプトファン及びフェニルアラニンである。
【0015】
好ましい実施形態において、組成物は、ペプチドの塩をシクロデキストリンと混合することによって調製される水性製剤である。
【0016】
シクロデキストリンは、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル化β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、又は2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンであってもよい。さらに好ましい実施形態において、シクロデキストリンは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。
【0017】
他の実施形態において、ペプチドは、例えば、プロピレングリコール、クレモフォール、ポリエチレングリコール及び/又はポリソルベートと共に製剤化されてもよい。
【0018】
配列番号13の塩は、例えば、塩酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、又はアスパラギン酸塩である。ペプチドはまた、遊離塩基として存在してもよい。
【0019】
具体的な実施形態において、製剤は、最終pH4.75~5.25で、20%(w/v)ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)、約0.01NのHCl及び6mg/mLの配列番号13を含有する。
【0020】
製剤は、懸濁液又は溶液であってもよい。好ましい実施形態において、製剤は溶液である。
【0021】
本発明の製剤はまた、μ-オピオイド受容体結合活性を有する配列番号13以外のペプチドと共に使用することもできる。これらのペプチドは、例えば、配列番号1~26のいずれかである。オピオイドペプチドはまた、米国特許出願第2012/0322740A1号、第2013/0178427A1号、第2015/0315238A1号、第2016/0009764A1号、第2016/0176930A1号又は第2016/0264625A1号に開示されているもののいずれであってもよい。これらの各出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
本発明の別の態様は、μ-オピオイド受容体に結合するエンティティに応答する症状を有する患者を治療する方法における組成物の使用に関する。このような方法は、有効量の本発明の医薬組成物を患者に投与することを含む。
【0023】
この方法の特定の実施形態は、(i)鎮痛(疼痛緩和)、(ii)下痢などの胃腸障害からの緩和、(iii)オピオイド薬依存症の治療、(iv)神経障害性疼痛、及び(v)オピオイドが適応とされる任意の状態の治療から選択される少なくとも1つの効果を提供する目的で実施することができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、急性又は慢性疼痛を処置するために、本発明の医薬組成物を使用することができる。組成物の使用にはまた、抗片頭痛剤、免疫調節剤、免疫抑制剤及び/又は抗関節炎剤としての使用を含むが、これらに限定されるものではない。
【0025】
疼痛又はオピオイド薬物依存の治療など、本発明の方法の特定の実施形態は、オピオイド物質乱用の病歴を有する患者を対象とする。
【0026】
本方法の特定の実施形態において、本発明の組成物は、非経口的に投与される。投与は例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下投与によって行うことができる。他の実施形態において、組成物は経口投与される。
【0027】
配列の詳細な説明
配列番号1は、本発明に有用なペプチドである。
配列番号2は、本発明に有用なペプチドである。
配列番号3は、本発明に有用なペプチドである。
配列番号4は、本発明に有用なペプチドである。
配列番号5は、本発明に有用なペプチドである。
配列番号6は、本発明に有用なペプチドである。
配列番号7は、本発明に有用なペプチドである。
配列番号8は、本発明に有用なペプチドである。
配列番号9は、本発明に有用なペプチドである。
配列番号10は、本発明に有用なペプチドである。
配列番号11は、本発明に有用なペプチドである。
配列番号12は、本発明に有用なペプチドである。
配列番号13~26は、本発明に有用なさらなるペプチドである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、疼痛を軽減するための組成物及び方法を提供する。具体的には、本発明は、有利なμ-オピオイド受容体結合活性を有するペプチド及び/又はそれらの塩の医薬製剤を提供する。有利には、本発明の製剤中のペプチドの濃度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又はさらには10mg/ml以上である。好ましい実施形態において、製剤は溶液である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、ペプチドは、配列番号13:H-Tyr1-cyclo-(D-Lys2-Trp3-Phe4)、すなわち、アミノ酸であるチロシン、リジン、トリプトファン及びフェニルアラニンである。
【0030】
好ましい実施形態において、組成物は、シクロデキストリンを有するペプチドの水性製剤である。
【0031】
シクロデキストリンは、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル化β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、又は2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンであってもよい。さらに好ましい実施形態において、シクロデキストリンは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。シクロデキストリンの濃度は、例えば、5%~40%、10%~35%、又は15%~25%である。
【0032】
組成物は、例えば、水溶液中でペプチドの塩とシクロデキストリンとを混合することによって形成することができる。
【0033】
ペプチドの塩は、例えば、塩酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、又はアスパラギン酸塩であってもよい。ペプチドはまた、遊離塩基として存在してもよい。
【0034】
具体的な実施形態において、製剤は、最終pH4.75~5.25で、20%(w/v)のヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)、約0.01NのHCl及び6mg/mLの配列番号13を含有する。
【0035】
他の実施形態において、ペプチドは、例えば、プロピレングリコール、クレモフォール、ポリエチレングリコール及び/又はポリソルベートにより製剤化されてもよい。
【0036】
製剤は、懸濁液又は溶液であってもよい。好ましい実施形態において、製剤は溶液である。
【0037】
本発明の製剤また、配列番号13以外のオピオイドペプチドと共に使用することもできる。これらのオピオイドペプチドは、例えば、配列番号1~26のいずれかである。オピオイドペプチドはまた、米国特許出願第2012/0322740A1号、第2013/0178427A1号、第2015/0315238A1号、第2016/0009764A1号、第2016/0176930A1又は米国特許出願第2016/0264625A1号に開示されているものいずれであってもよい。各特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
本発明に従って用いることができるペプチドは、一般式Tyr-X1-X2-X3を有するものを含み、X2は、Pro、D-Lys又はD-Ornであり、X2は、Trp、Phe又はN-アルキル-Pheで、アルキルは、1~6個の炭素原子を含み、X3は、Phe、Phe-NH2、D-Phe、D-Phe-NH2又はp-Y-Pheであり、Yは、NO2、F、Cl又はBrである。本発明の具体的なペプチドは、
H-Tyr-Pro-Trp-Phe-NH2(配列番号:1)
H-Tyr-Pro-Phe-Phe-NH2(配列番号:2)
H-Tyr-Pro-Trp-Phe-OH(配列番号:3)
H-Tyr-Pro-Phe-Phe-OH(配列番号:4)
H-Tyr-Pro-Trp-D-Phe-NH2(配列番号:5)
H-Tyr-Pro-Phe-D-Phe-NH2(配列番号:6)
H-Tyr-Pro-Trp-pNO2-Phe-NH2(配列番号:7)
H-Tyr-Pro-Phe-pNO2-Phe-NH2(配列番号:8)
H-Tyr-Pro-N-Me-Phe-Phe-NH2(配列番号:9)
H-Tyr-Pro-N-Et-Phe-Phe-NH2(配列番号:10)
H-Tyr-Pro-N-Me-Phe-D-Phe-NH2(配列番号:11)
H-Tyr-Pro-N-Et-Phe-D-Phe-NH2(配列番号:12)
H-Tyr-c-[D-Lys-Trp-Phe](配列番号:13)
H-Tyr-c-[D-Lys-Phe-Phe](配列番号:14)
H-Tyr-c-[D-Orn-Trp-Phe](配列番号:15)
H-Tyr-c-[D-Orn-Phe-Phe](配列番号:16)
H-Tyr-c-[D-Lys-Trp-pNO2-Phe](配列番号:17)
H-Tyr-c-[D-Lys-Phe-pNO2-Phe](配列番号:18)
H-Tyr-c-[D-Orn-Trp-pNO2-Phe](配列番号:19)
H-Tyr-c-[D-Orn-Phe-pNO2-Phe](配列番号:20)
H-Tyr-c-[D-Lys-N-Me-Phe-Phe](配列番号:21)
H-Tyr-c-[D-Orn-N-Me-Phe-Phe](配列番号:22)
H-Tyr-c-[D-Lys-N-Et-Phe-Phe](配列番号:23)
H-Tyr-c-[D-Orn-N-Et-Phe-Phe](配列番号:24)
H-Tyr-c-[D-Lys-N-Me-Phe-D-Phe](配列番号:25)
H-Tyr-c-[D-Lys-N-Et-Phe-D-Phe](配列番号:26)
【0039】
列挙した最後の14個のペプチドは、鎖状一次アミノ酸配列が、配列番号13~配列番号26に示される環状ペプチドである。これに関して、出願人は、参照により、米国特許第6,303,578号の全体を本明細書に組み込む。
【0040】
本発明の別の態様は、μ-オピオイド受容体に結合するエンティティに応答する症状を有する患者を処置する方法における、本明細書中に記載された組成物の使用に関する。このような方法は、有効量の本発明の医薬組成物を患者に投与することを含む。
【0041】
この方法の特定の実施形態は、(i)鎮痛(疼痛緩和)、(ii)下痢などの胃腸障害の緩和、(iii)オピオイド薬物依存の治療、(iv)神経障害性疼痛、及び(v)オピオイドが適応とされる任意の症状の治療から選択される少なくとも1つの効果を提供することができる。
【0042】
ある実施形態において、本発明の薬学的組成物は、急性又は慢性疼痛を処置するために使用される。組成物の使用はまた、抗片頭痛剤、免疫調節剤、免疫抑制剤及び/又は抗関節炎剤としての使用を含むが、これらに限定されない。
【0043】
疼痛又はオピオイド薬物依存の処置といった、本発明の方法の特定の実施形態は、オピオイド物質乱用の病歴を有する患者を対象とする。
【0044】
本方法の特定の実施形態において、本発明の組成物は、非経口的に投与される。投与は、例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下投与によって行うことができる。他の実施形態において、組成物は経口投与される。
【0045】
医薬組成物は、例えば、液体、ゲル、固体、クリーム、又はペースト剤形などの任意の適切な剤形で送達することができる。一実施形態において、組成物は、ペプチドを徐放するように適合させすることができる。
【0046】
医薬組成物は、経口、直腸、鼻、局所(口腔及び舌下を含む)、経皮、膣、非経口(筋肉内、皮下、及び静脈内を含む)、脊髄(硬膜外、髄腔内)、及び中枢(脳室内)投与に適した形態を含むが、これらに限定されない。組成物は、必要に応じて、別個の投薬単位で簡便に提供することができる。
【0047】
選択された定義
「薬学的に許容される」とは、連邦もしくは州政府の規制機関、又は米国以外の国の対応する機関、又は動物、より具体的にはヒトにおける使用のために米国薬局方又は他の一般に認められている薬局方によって承認又は承認可能であることを意味する。
【0048】
「薬学的に受容可能な塩」とは、薬学的に受容可能であり、親化合物の所望の薬理学的活性を有する本発明の化合物の塩を指す。特に、このような塩は、無機又は有機酸付加塩及び塩基付加塩である。具体的には、このような塩には、(1)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等により形成、又は有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンフォルスルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクト-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第3級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフタル酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸等により形成された酸付加塩、(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、又はアルミニウムイオンで置換されるか、又は有機塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミン等と配位する場合に形成される塩が含まれる。塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム等がさらに挙げられ、化合物が塩基性官能基を含有する場合、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシレート、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩等の無毒の有機酸又は無機酸の塩が挙げられる。
【0049】
「薬学的に許容される媒体」とは、本発明の化合物が投与される希釈剤、アジュバント、添加剤又は担体をいう。「薬学的に許容される添加剤」とは薬理学的組成物に添加されるか、又は薬剤の投与を容易にするための媒体、担体又は希釈剤として他の方法で使用される、不活性物質等の対象への投与に非毒性であり、生物学的に許容され、かつ他の方法で生物学的に任意であり、かつそれと適合性である物質をいう。添加剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖及びデンプンの型、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0050】
「対象」は人を含む。「人」、「患者」、及び「対象」という用語は、本明細書では区別なく用いられる。
【0051】
任意の疾患又は障害の「処置」は、一実施形態において疾患又は障害を改善すること(すなわち、疾患の発症又はその臨床症状の少なくとも1つを停止又は低減すること)を指し、別の実施形態において「処置」は、対象によって識別できない少なくとも1つの身体的パラメータを改善することを指し、さらに別の実施形態において「処置」は、身体的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、身体的パラメータの安定化)、又はその両方で、疾患又は障害を調節することを指す。さらに別の実施形態において「処置」は、疾患又は障害の発症を遅延させることを指す。
【0052】
本明細書中で使用される場合、用語「減少させる」、「阻害する」、「ブロックする」、「予防する」、「軽減する」、又は「緩和する」は、化合物(例えば、ペプチド)に言及する場合、化合物が症状、事象、又は活性の発生、重篤度、サイズ、体積、又は関連する症状を、化合物又は化合物を含む組成物を適用することなく、症状、事象、又は活性がどのように通常存在するかと比較して、少なくとも約7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、22.5%、25%、27.5%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%又は100%下がることを意味する。化合物を参照する場合に、「増加」、「昇降」、「増強」、「向上」、「向上」、「活性化」という用語は、化合物が症状、事象、又は活性の発生又は活性を、化合物を含む組成物の適用なしに通常存在するのであろう条件、事象、又は活性の少なくとも約7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、22.5%、25%、27.5%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、750%、又は1000%増えることを意味する。
【0053】
「調節する」という用語には、「減少する」、「阻害する」、「遮断する」、「防ぐ」、「軽減する」、「緩和する」、「増加する」、「上昇する」、「向上する」、「上方制御する」、「改善する」、及び「活性化する」が含まれる。
【0054】
本発明による処置方法において、本発明による医薬品の治療有効量は、このような疾患、障害、又は症状を患っているか、又は有すると診断された対象に投与される。「治療有効量」は、指定された疾病、障害、又は症状のため、そのような治療を必要とする患者において所望の治療的又は予防的利益を一般にもたらすのに充分な量又は用量を意味する。
【0055】
本発明のポリマーの有効量又は用量はモデリング、用量漸増研究又は臨床試験のような日常的な方法によって、及び日常的な因子、例えば、投与又は薬物送達のモード又は経路、ポリマーの薬物動態、疾患、障害又は状態の重症度及び経過、対象の以前の又は進行中の治療、対象の健康状態及び薬物に対する応答、ならびに治療する医師の判断を考慮することによって確認することができる。用量の例は単回又は分割された用量単位(例えば、BID、TID、QID)において、対象の体重1kg当たり約0.001~約200mg/日、好ましくは約0.05~100mg/kg/日、又は約1~35mg/kg/日の範囲のポリマーである。70kgのヒトについて、適切な投薬量の例示的な範囲は、約0.05~約7g/日、又は約0.2~約2.5g/日である。
【0056】
「本発明の化合物」及び同等の表現は、本明細書中に記載されるような例示化合物を包含することを意味し、この表現は、文脈により許容されれば、医薬的に許容される塩、及び溶媒和物(例えば、水和物)を含む。
【0057】
このような化合物は、医薬組成物として製剤し、処置を必要とする対象、例えば、人間の患者のような哺乳動物に、選択された投与経路に適合した種々の形態で投与することができる。例えば、本発明の化合物は、投与、経口、経鼻、腹腔内、又は非経口、静脈内、筋肉内、局所、もしくは皮下経路、又は組織への注射用に処方することができる。
【0058】
投与経路及び剤形
特定の実施形態において、化合物は、静脈内又は腹腔内に、注入又は注射によって投与することができる。化合物の溶液は水中で調製することができ、任意で、非毒性界面活性剤と混合することができる。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含むことができる。
【0059】
注射又は注入に適した薬学的投薬形態は、任意にリポソームに封入された、滅菌注射又は注入可能な溶液又は分散液の即時調製に適合された化合物を含む、滅菌水性溶液又は分散液又は滅菌粉末を含むことができる。好ましくは、最終投薬形態が滅菌され、流体であり、そして製造及び貯蔵の条件下で安定であるべきである。液体坦体又は添加剤は例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は液体分散媒体とすることができる。適切な流動性は例えば、リポソームの形成によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、又は界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、各種抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等により実施できる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、緩衝液、又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用混合液の持続的吸収は、注射用混合液中に、例えばステアリン酸アルミニウムやゼラチンのような吸収遅延剤を使用することによりもたらされる。
【0060】
滅菌注射溶液は、必要に応じて、本明細書に記載されているような適切な溶媒中に必要量のポリマーを、本明細書に列挙されている種々の他の成分と共に組み込み、好ましくは、続いて濾過滅菌することによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、これは、活性成分の粉末に加え、以前に滅菌濾過された溶液中に存在する任意のさらなる所望の成分を生じる。
【0061】
本発明の組成物はまた、不活性希釈剤又は同化可能な食用担体等の薬学的に受容可能な媒体と組み合わせて、経口投与することができる。これらは硬質又は軟質ゼラチンカプセルに内包されても、タブレットとして圧縮されても、又は患者の食事用の食物に直接加えられてもよい。
【0062】
経口治療投与のために、化合物は、1つ以上の添加剤と混合し、摂取可能な錠剤、口腔錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハー等の形態で使用することができる。このような組成物及び調製物は、少なくとも0.1%の本発明のポリマーを含有するものとする。このような組成物及び調製物中の本発明のポリマーのパーセンテージは、当然のことながら、変化させることができ、与えられた単位剤形の重量の約2%~約60%の間とすると都合が良い。このような治療的に有用な組成物中の化合物の量は、有効投与量レベルが得られるような量である。
【0063】
錠剤、トローチ、ピル、カプセル等はまた、以下の1つ以上を含むことができる。すなわち、バインダー(例えば、トラガントゴム、アラビアゴム、トウモロコシデンプン又はゼラチン)、添加剤(例えば、リン酸二カルシウム)、崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸等)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)及び甘味剤(例えば、スクロース、フルクトース、ラクトース、又はアスパルテーム)又は香味剤(例えば、ペパーミント、ウィンターグリーンオイル、又はチェリー香味料)を添加することができる。
【0064】
単位投与形態がカプセル剤の場合、上記物質以外に、植物油又はポリエチレングリコール等の液体担体を含有していてもよい。
【0065】
種々の他の材料が、コーティングとして存在したり、又は固体単位剤形の物理的形態を修飾してもよい。例えば、錠剤、丸剤、又はカプセル剤は、ゼラチン、ワックス、セラック、又は糖等でコーティングされてもよい。シロップ又はエリキシルは、活性ポリマー、甘味剤としてのスクロース又はフルクトース、防腐剤としてのメチル及びプロピルパラベン、染料、ならびにチェリー又はオレンジフレーバー等のフレーバーを含有してもよい。
【0066】
当然のことながら、任意の単位剤形の調製に使用される任意の材料は、その使用量で薬学的に許容されかつ実質的に非毒性でなければならない。
【0067】
さらに、この化合物は、徐放性調製物及びデバイスに組み込むことができる。例えば、化合物は、徐放性カプセル、徐放性錠剤、徐放性丸剤、及び徐放性ポリマー又はナノ粒子に組み込まれてもよい。
【0068】
表皮(粘膜又は切片表面)へのペプチドの局所投与用の薬品組成物は、軟膏、クリーム、ローション、ゲル、又は経皮パッチとして処方することができる。そのような経皮パッチは、リナロール、カルバクロール、チモール、シトラール、メントール、t-アネトール等の浸透促進剤を含有することができる。軟膏及びクリームは、例えば、適切な増粘剤、ゲル化剤、着色剤等を添加した水性又は油性基剤を含むことができる。ローション及びクリームは水性又は油性基剤を含むことができ、典型的には、1種以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤等も含有する。ゲルは、好ましくは水性担体基剤を含み、架橋ポリアクリル酸ポリマー等のゲル化剤、誘導体化多糖類(例えば、カルボキシメチルセルロース)等を含む。
【0069】
口内での局所投与(例えば、口腔内又は舌下投与)に適した医薬組成物には、スクロース、アカシア、又はトラガント等の香味付き基剤中に組成物を含むロゼンジ、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア等の不活性基剤中に組成物を含むパスチル、ならびに適切な液状担体中に活性成分を含むマウスウォッシュが含まれる。口中での局所投与のための医薬組成物は所望であれば、浸透増強剤を含むことができる。
【0070】
有用な固体担体には、タルク、クレー、微結晶セルロース、シリカ、アルミナ等の微粉砕固体が含まれる。他の固体担体には、非毒性ポリマーナノ粒子又は微粒子が含まれる。有用な液体担体としては水、アルコール、又はエチレングリコール、又は水/アルコール/エチレングリコールブレンドが挙げられ、これらの中で、ポリマーは、任意に非毒性界面活性剤の助けを借りて、有効なレベルで溶解又は分散される。アジュバント、例えば、香気成分及び他の抗微生物剤を、特定の用途のための特性を最適化するのに加えてよい。得られる液体組成物は、包帯等に含侵して使用される吸収パッドから適用されたり、ポンプ型噴霧器もしくはエアゾール型噴霧器を用いて疾患領域に噴霧することができる。
【0071】
増粘剤、例えば合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及びエステル、脂肪アルコール、修飾セルロース、又は修飾ミネラル材料を液体担体と共に使用して、使用者の皮膚に直接適用するために、展延性ペースト、ゲル、軟膏、石鹸等を形成することもできる。
【0072】
ポリマーを皮膚に送達するために使用することができる有用な皮膚科学的組成物の例は当技術分野で公知であり、例えば、Jacquetら(米国特許第4,608,392号)、Geria(米国特許第4,992,478号)、Smithら(米国特許第4,559,157号)及びWortzman(米国特許第4,820,508号)を参照されたい。
【0073】
このような処方中の本発明の治療用化合物の濃度は、処方の性質及び意図される投与経路に応じて広く変化させることができる。例えば、ローション等の液体組成物中の化合物の濃度は、好ましくは約0.1~25重量%、又はより好ましくは約0.5~10重量%とすることができる。ゲル又は粉末のような半固体又は固体組成物中の濃度は、好ましくは約0.1~5重量%、又はより好ましくは約0.5~2.5重量%とすることができる。
【0074】
脊髄投与又は羊水中への注射のための医薬組成物は、アンプル、事前充填シリンジ、小容量注入、又は複数用量容器中の単位用量形態で提供することができ、添加された防腐剤を含むことができる。非経口投与用組成物は、懸濁液、溶液、又は乳剤とすることができ、懸濁剤、安定化剤、及び分散剤等の添加剤を含有することができる。
【0075】
直腸投与に適した医薬組成物は、固体又は半固体(例えば、クリーム又はペースト)の担体又は媒体と混合した本発明のペプチドを含む。例えば、このような直腸組成物は、単位用量坐剤として提供することができる。適切な担体又は媒体には、カカオバター及び当技術分野で一般に使用される他の材料が含まれる。
【0076】
一実施形態によれば、膣内投与に適した本発明の医薬組成物は、当技術分野で公知の担体と混合して本発明のポリマーを含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体、又はスプレーとして提供される。あるいは、膣投与に適切な組成物が液体又は固体の投薬形態で送達させることができる。
【0077】
鼻腔内投与に適した医薬組成物もまた、本発明に包含される。このような鼻腔内組成物は、媒体中の本発明のポリマー、及び液体スプレー、分散性粉末、又は液滴を送達するための適切な投与デバイスを含む。液滴は、1つ以上の分散剤、可溶化剤、又は懸濁剤も含む水性又は非水性塩基と共に処方されてもよい。液体スプレーは、加圧パック、吸入器、ネブライザー、又はポリマーを含むエーロゾルを送達する他の好都合な手段から好都合に送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は当技術分野で周知の他の適切なガス等の適切な噴射剤を含む。エーロゾル投与量は、計量された量のポリマーを送達するためのバルブを提供することによって制御することができる。
【0078】
化合物は、不活性粉末担体と混合され、対象によって吸入、又は通気される。
【0079】
吸入又は通気による投与のための医薬組成物は乾燥粉末組成物、例えば、ペプチドと、ラクトース又はデンプン等の適切な粉末基剤との粉末混合物の形成で提供することができる。このような粉末組成物は単位剤形、例えば、カプセル、カートリッジ、ゼラチンパック、又はブリスターパックで提供することができ、そこから粉末を吸入器又は注入器を用いて投与することができる。
【0080】
薬剤の正確な量(有効用量)は、例えば、対象の種、年齢、体重、及び全身又は臨床的状態、処置される何等かの障害の重症度又はメカニズム、使用される特定の薬剤又は媒体、投与の方法及びスケジューリング等に応じて、対象ごとに変化する。治療上有効な用量は、当業者に公知の従来の手順によって、経験的に決定される。例えば、「The Pharmacological Basis of Therapeutics、Goodman and Gilman編、Macmillan Publishing Co.,New York」を参照のこと。例えば、有効用量は、最初は、細胞培養アッセイ又は適切な動物モデルのいずれかにおいて、推定することができる。動物モデルはまた、適切な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも用いられる。それから、このような情報は、ヒトにおける投与のための有用な用量及び経路を決定するために用いられる。マウスその他動物からヒトにおける有効投与量の外挿法は当業者に知られている。例えば、ここに参考文献として援用される米国特許第4,938,949号を参照のこと。治療用量はまた、匹敵する治療剤についての用量との類似性によって選択される。
【0081】
具体的な投与方法及び用法・用量は、症例の詳細(例えば、対象、疾患、関与する病態、及び処置が予防的であるか否か)を考慮して、担当臨床医が選択する。処置には、数日~数ヶ月、さらには数年の期間にわたる化合物の1日用量又は複数日用量が含まれる可能性がある。
【0082】
しかしながら、一般に、適切な用量は、約0.001~約100mg/kg体重/日、好ましくは約0.01~約100mg/kg体重/日、より好ましくは約0.1~約50mg/kg体重/日、又はさらにより好ましくは約1~約10mg/kg体重/日の範囲である。例えば、適切な用量は、約1mg/kg、10mg/kg、又は50mg/kg体重/日である。
【0083】
化合物は、単位剤形当たり、例えば、約0.05~約10000mg、約0.5~約10000mg、約5~約1000mg、又は約50~約500mgの活性成分を含有する単位剤形で都合よく投与することができる。
【0084】
化合物は、例えば、約0.25~約200μM、約0.5~約75μM、約1~約50μM、約2~約30μM、又は約5~約25μMのピーク血漿濃度を達成するために投与することができる。望ましい血漿濃度の例を挙げると、少なくとも0.25、0.5、1、5、10、25、50、75、100又は200μMである。例えば、血漿レベルは、約1~約100マイクロモル又は約10~約25マイクロモルとすることができる。これは、例えば、化合物の0.05~5%溶液の静脈内注射(任意で、生理食塩水中)によって、又は約1~約100mgの化合物を含有するボーラスとして経口投与することによって、なされる。望ましい血中レベルは、連続的又は断続的な注入によって維持される。
【0085】
配列番号13又は他のμ-オピオイド受容体結合ポリマーは,医学及び医薬分野で周知の日常的な方法によって決定されるように、治療的に有用かつ有効な濃度範囲内で組成物に含まれる。例えば、典型的な組成物は、少なくとも約1mg/ml、好ましくは少なくとも約4mg/ml、より好ましくは少なくとも5mg/ml、最も好ましくは少なくとも6mg/mlの範囲の濃度で1つ以上のポリマーを含む。
【0086】
化合物は、適切な間隔、例えば、1日あたり1用量として、又は1日あたり2、3、4又はそれ以上の服用量として、投与される、単回用量又は分割用量でとして簡便に与えられる。服用量自体は、例えば、注入器からの複数回の吸入のような、数多くの個別に間隔のあいた投与にさらに分割されてもよい。
【0087】
任意で、本発明の医薬組成物は、例えば併用療法として、1つ又は複数の他の治療薬を含むことができる。追加の治療剤は医学及び医薬分野で周知の日常的な方法によって決定されるように、治療的に有用かつ有効な濃度範囲内で組成物に含まれる。任意の特定の追加の治療剤の濃度は、単剤療法としてその薬剤を使用するのに典型的なものと同じ範囲であってもよく、又は本発明のペプチドと混合した場合に相乗効果がある場合には、その濃度は典型的な単剤療法濃度より低くてもよい。
【0088】
処置方法
本発明は、μ-オピオイド受容体での結合によって改善することのできる症状の処置のための、本発明の組成物の使用を提供する。これには、例えば、疼痛、胃腸障害に関連する不快感、及び薬物依存の治療が含まれる。
【0089】
鎮痛(疼痛を軽減又は軽減する)、下痢等の胃腸障害からの緩和、及びヒトを含む哺乳動物等の患者における薬物依存の治療を提供するための方法は前述の症状のうちの1つに罹患している患者に、有効量の本発明の組成物を投与することを含む。
【0090】
下痢は、感染症、コレラ、又は癌治療に使用されるものを含む様々な薬物又は治療の効果もしくは副作用等、多くの原因によって引き起こされることがある。好ましくは、ペプチドは、非経口的又は経腸的に投与される。ペプチドの有効量の用量は、処置される個々の患者の年齢及び条件に依存して変化し得る。しかしながら、適切な単位用量は、典型的には約0.01~約100mgの範囲である。例えば、単位用量は、約0.2mg~約50mgの範囲であり得る。このような単位用量は、1日に2回以上、例えば、1日に2回又は3回投与することができる。
【0091】
以下の実施例は、本発明の特定の局面を実証するために含まれる。本発明を実施する際によく機能することが知られている技法を表す、実施例に開示されている技法はその実施のための好ましい形態を構成すると考えることができるが、当業者は本開示に照らして、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、特定の開示されている実施形態に多くの変更を加えることができ、依然として同様の又は類似の結果を得ることができることを理解されたい。従って、実施例は、例示目的のみのためであって、限定することを意図するものではない。
【0092】
実施例1:本発明の配列番号13組成物の調製
配列番号13、20%HPβCD、及び滅菌水中で以下の手法により製造された約0.01N塩酸を含む製剤を調製する。
【0093】
まず、HPβCD及び塩酸を、滅菌水に添加する。配列番号13を、7.5mg/mLで添加する。混合物を室温で一晩撹拌し、次いで0.45μmフィルターを通してろ過して、不溶性物質を除去する。
【0094】
インプロセス濃度は、HPLC分析によって求められる。
【0095】
次いで、ろ過した溶液を、分析後、6mg/mLの配列番号13まで希釈し(塩酸を含まない20%HPβCD溶液で)、0.22μmフィルターを通して再度ろ過する。
【0096】
実施例2:本発明の配列番号13組成物の成分
表1は、本発明の組成物の好ましい実施形態の成分を示す。
【表1】
【0097】
【0098】
本出願において言及され、引用され、又は言及される、雑誌記事、特許出願、及び特許を含むが、これらに限定されない、すべての文書、参考文献、及び情報は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【配列表】