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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】ヘッドホンカバーおよびその留め具
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20230214BHJP
   H04R 1/12 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
H04R1/10 102
H04R1/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021511037
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 JP2019014984
(87)【国際公開番号】W WO2020202535
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】514010999
【氏名又は名称】フィフティスクエア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】林 雅之
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-044290(JP,U)
【文献】特開2013-063217(JP,A)
【文献】特開2015-133609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0187151(US,A1)
【文献】中国実用新案第205249446(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0215000(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
H04R 1/12
A61F 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラウンドイヤー型のヘッドホンのイヤーパッドに被せて使用するヘッドホンカバーであって、
上記イヤーパッドをその外周面から内周面にかけて被覆するための生地と、
上記生地とは別体として構成され、上記イヤーパッドの内側に形成されている凹空間から上記イヤーパッドの内周面に向かう方向に作用して、上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を固定するための固定用部材とを備え、
上記生地の所定位置に形成された開口の周縁に当たる開口周縁部を上記イヤーパッドの外周面またはハウジングの外周面に固定可能に構成するとともに、上記固定用部材により上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を固定可能に構成し、
上記固定用部材は、複数のプレートを順次連結して全体としてリング状となるように構成された、リング状部材またはリング状に形成された帯状部材を含み、内向きに狭まった状態と外向きに広がった状態との間で変形可能に構成され、
上記複数のプレートの各々は、両端部付近に設けられた回転軸を介して他のプレートと連結され、上記回転軸を中心として回動可能に構成されている
ことを特徴とするヘッドホンカバー。
【請求項2】
アラウンドイヤー型のヘッドホンのイヤーパッドに被せて使用するヘッドホンカバーであって、
上記イヤーパッドをその外周面から内周面にかけて被覆するための生地と、
上記生地とは別体として構成され、上記イヤーパッドの内側に形成されている凹空間から上記イヤーパッドの内周面に向かう方向に作用して、上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を固定するための固定用部材とを備え、
上記生地の所定位置に形成された開口の周縁に当たる開口周縁部を上記イヤーパッドの外周面またはハウジングの外周面に固定可能に構成するとともに、上記固定用部材により上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を固定可能に構成し、
上記固定用部材は、可撓性を有する可撓部材と、当該可撓部材の両端の間に配置されるバネ部材とを含み、上記可撓部材および上記バネ部材により全体としてリング状となるように構成されたリング状部材であり、外力が印加されて内向きに狭まった状態へと変形した後、外力の印加がなくなったときに外向きに広がって元の形状に戻ろうとする復元力を有し、内向きに狭まった状態と外向きに広がった状態との間で変形可能に構成されており、外向きに広がることによって上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を誘導するまで変形した状態を維持可能に構成されている
ことを特徴とするヘッドホンカバー。
【請求項3】
アラウンドイヤー型のヘッドホンのイヤーパッドに被せて使用するヘッドホンカバーであって、
上記イヤーパッドをその外周面から内周面にかけて被覆するための生地と、
上記生地とは別体として構成され、上記イヤーパッドの内側に形成されている凹空間から上記イヤーパッドの内周面に向かう方向に作用して、上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を固定するための固定用部材とを備え、
上記生地の所定位置に形成された開口の周縁に当たる開口周縁部を上記イヤーパッドの外周面またはハウジングの外周面に固定可能に構成するとともに、上記固定用部材により上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を固定可能に構成し、
上記固定用部材は、リング状に形成された帯状部材であり、上記リング状の内向きに狭まった状態と外向きに広がった状態との間で変形可能に構成され、外力が印加されて内向きに狭まった状態へと変形した後、外力の印加がなくなったときに外向きに広がって元の形状に戻ろうとする復元力を有し、外向きに広がることによって上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を誘導するまで変形した状態を維持可能に構成されており、
上記リング状に形成された上記帯状部材がその長手方向に沿って安定して摺動するようにガイドするガイド部材を備えた
ことを特徴とするヘッドホンカバー。
【請求項4】
アラウンドイヤー型のヘッドホンのイヤーパッドに被せて使用するヘッドホンカバーであって、
上記イヤーパッドをその外周面から内周面にかけて被覆するための生地と、
上記生地とは別体として構成され、上記イヤーパッドの内側に形成されている凹空間から上記イヤーパッドの内周面に向かう方向に作用して、上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を固定するための固定用部材とを備え、
上記生地の所定位置に形成された開口の周縁に当たる開口周縁部を上記イヤーパッドの外周面またはハウジングの外周面に固定可能に構成するとともに、上記固定用部材により上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を固定可能に構成し、
上記固定用部材は、リング状に形成された帯状部材であり、上記リング状の内向きに狭まった状態と外向きに広がった状態との間で変形可能に構成され、
上記帯状部材を変形してリング状に形成した状態が維持されるように上記帯状部材の少なくとも一部を係止する係止部材を備え、外向きに広がることによって上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を誘導するまで変形した状態を維持可能に構成されており、
上記係止部材は、ケーシングと、軸を中心として回動可能な爪とを備えた爪型係止部材により構成され、
上記帯状部材の一端が上記ケーシングに固定され、上記帯状部材の他端側が上記ケーシングの内部で摺動可能とされ、上記帯状部材の他端側に形成されているノコギリ歯の何れかが上記爪と係止するように構成されている
ことを特徴とするヘッドホンカバー。
【請求項5】
アラウンドイヤー型のヘッドホンのイヤーパッドに被せて使用するヘッドホンカバーであって、
上記イヤーパッドをその外周面から内周面にかけて被覆するための生地と、
上記生地とは別体として構成され、上記イヤーパッドの内側に形成されている凹空間から上記イヤーパッドの内周面に向かう方向に作用して、上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を固定するための固定用部材とを備え、
上記生地の所定位置に形成された開口の周縁に当たる開口周縁部を上記イヤーパッドの外周面またはハウジングの外周面に固定可能に構成するとともに、上記固定用部材により上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を固定可能に構成し、
上記固定用部材は、リング状に形成された帯状部材であり、上記リング状の内向きに狭まった状態と外向きに広がった状態との間で変形可能に構成され、
上記帯状部材を変形してリング状に形成した状態が維持されるように上記帯状部材の少なくとも一部を係止する係止部材を備え、外向きに広がることによって上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を誘導するまで変形した状態を維持可能に構成されており、
上記係止部材は、上記帯状部材の表面に形成されたレール部と、上記帯状部材の裏面に形成された脚部とを含むレール型係止部材により構成され、
上記帯状部材の一端側の表面に形成されている上記レール部と上記帯状部材の他端側の裏面に形成されている上記脚部とが噛み合うように形成されている
ことを特徴とするヘッドホンカバー。
【請求項6】
アラウンドイヤー型のヘッドホンのイヤーパッドにヘッドホンカバーを留めるための留め具であって、
上記イヤーパッドの内側に形成されている凹空間から上記イヤーパッドの内周面に向かう方向に作用して、上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に生地の一部を固定するための固定用部材から成り、
上記固定用部材は、内向きに狭まった状態と外向きに広がった状態との間で変形可能に構成された、リング状部材またはリング状に形成された帯状部材を含み、上記ヘッドホンの上記イヤーパッドの裏面とハウジングとの間に存在する隙間に入るサイズに構成され、
上記固定用部材は、複数のプレートを順次連結して全体としてリング状となるように構成され、上記複数のプレートの各々は、両端部付近に設けられた回転軸を介して他のプレートと連結され、上記回転軸を中心として回動可能に構成されている
ことを特徴とするヘッドホンカバーの留め具。
【請求項7】
アラウンドイヤー型のヘッドホンのイヤーパッドにヘッドホンカバーを留めるための留め具であって、
上記イヤーパッドの内側に形成されている凹空間から上記イヤーパッドの内周面に向かう方向に作用して、上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に生地の一部を固定するための固定用部材から成り、
上記固定用部材は、上記ヘッドホンの上記イヤーパッドの裏面とハウジングとの間に存在する隙間に入るサイズに構成され、
上記固定用部材は、可撓性を有する可撓部材と、当該可撓部材の両端の間に配置されるバネ部材とを含み、上記可撓部材および上記バネ部材により全体としてリング状となるように構成されたリング状部材であり、外力が印加されて内向きに狭まった状態へと変形した後、外力の印加がなくなったときに外向きに広がって元の形状に戻ろうとする復元力を有し、内向きに狭まった状態と外向きに広がった状態との間で変形可能に構成されており、外向きに広がることによって上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を誘導するまで変形した状態を維持可能に構成されている
ことを特徴とするヘッドホンカバーの留め具。
【請求項8】
アラウンドイヤー型のヘッドホンのイヤーパッドにヘッドホンカバーを留めるための留め具であって、
上記イヤーパッドの内側に形成されている凹空間から上記イヤーパッドの内周面に向かう方向に作用して、上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に生地の一部を固定するための固定用部材から成り、
上記固定用部材は、上記ヘッドホンの上記イヤーパッドの裏面とハウジングとの間に存在する隙間に入るサイズに構成され、
上記固定用部材は、リング状に形成された帯状部材であり、上記リング状の内向きに狭まった状態と外向きに広がった状態との間で変形可能に構成され、外力が印加されて内向きに狭まった状態へと変形した後、外力の印加がなくなったときに外向きに広がって元の形状に戻ろうとする復元力を有し、外向きに広がることによって上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を誘導するまで変形した状態を維持可能に構成されており、
上記リング状に形成された上記帯状部材がその長手方向に沿って安定して摺動するようにガイドするガイド部材を備えた
ことを特徴とするヘッドホンカバーの留め具。
【請求項9】
アラウンドイヤー型のヘッドホンのイヤーパッドにヘッドホンカバーを留めるための留め具であって、
上記イヤーパッドの内側に形成されている凹空間から上記イヤーパッドの内周面に向かう方向に作用して、上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に生地の一部を固定するための固定用部材から成り、
上記固定用部材は、上記ヘッドホンの上記イヤーパッドの裏面とハウジングとの間に存在する隙間に入るサイズに構成され、
上記固定用部材は、リング状に形成された帯状部材であり、上記リング状の内向きに狭まった状態と外向きに広がった状態との間で変形可能に構成され、
上記帯状部材を変形してリング状に形成した状態が維持されるように上記帯状部材の少なくとも一部を係止する係止部材を備え、外向きに広がることによって上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を誘導するまで変形した状態を維持可能に構成されており、
上記係止部材は、ケーシングと、軸を中心として回動可能な爪とを備えた爪型係止部材により構成され、
上記帯状部材の一端が上記ケーシングに固定され、上記帯状部材の他端側が上記ケーシングの内部で摺動可能とされ、上記帯状部材の他端側に形成されているノコギリ歯の何れかが上記爪と係止するように構成されている
ことを特徴とするヘッドホンカバーの留め具。
【請求項10】
アラウンドイヤー型のヘッドホンのイヤーパッドにヘッドホンカバーを留めるための留め具であって、
上記イヤーパッドの内側に形成されている凹空間から上記イヤーパッドの内周面に向かう方向に作用して、上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に生地の一部を固定するための固定用部材から成り、
上記固定用部材は、上記ヘッドホンの上記イヤーパッドの裏面とハウジングとの間に存在する隙間に入るサイズに構成され、
上記固定用部材は、リング状に形成された帯状部材であり、上記リング状の内向きに狭まった状態と外向きに広がった状態との間で変形可能に構成され、
上記帯状部材を変形してリング状に形成した状態が維持されるように上記帯状部材の少なくとも一部を係止する係止部材を備え、外向きに広がることによって上記イヤーパッドの内周面またはその近傍に上記生地の一部を誘導するまで変形した状態を維持可能に構成されており、
上記係止部材は、上記帯状部材の表面に形成されたレール部と、上記帯状部材の裏面に形成された脚部とを含むレール型係止部材により構成され、
上記帯状部材の一端側の表面に形成されている上記レール部と上記帯状部材の他端側の裏面に形成されている上記脚部とが噛み合うように形成されている
ことを特徴とするヘッドホンカバーの留め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホンカバーおよびその留め具に関し、特に、アラウンドイヤー型のヘッドホンのイヤーパッド(耳あて)に被せて使用するヘッドホンカバーおよび、ヘッドホンカバーをイヤーパッドに留めるための留め具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドホンのイヤーパッドに被せて使用するヘッドホンカバーが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のヘッドホンカバーは、伸縮性のある生地の周縁部をその全周にわたって一の面側に折り返し、当該一の面側に開口を形成して成るヘッドホンカバーにおいて、開口の周縁に当たる開口周縁部の生地に対して平ゴムが縫い付けられた構成を有している。
【0003】
このように構成されたヘッドホンカバーをイヤーパッドに装着することにより、ヘッドホンを使用しているユーザの汗・脂のべたつきや蒸れによる不快感を解消することが可能となる。すなわち、吸湿性のある布で作ったヘッドホンカバーをイヤーパッドに装着することで、耳の蒸れを軽減することが可能となり、ヘッドホンで音楽を長く聴き続けても蒸れによる不快感が生じないようにすることができる。
【0004】
なお、アラウンドイヤー型(イヤーパッドの真ん中の部分がへこんでいて、その凹空間に耳を挿入するように装着するタイプ。オーバーイヤー型ともいう)のヘッドホンにおいて、イヤーパッドにヘッドホンカバーを装着すると、イヤーパッドで作られる凹空間がヘッドホンカバーによって塞がれるため、耳を押さえつけるようにして固定させるオンイヤー型のヘッドホンに近い使用感となる。
【0005】
【文献】特開2015-133609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アラウンドイヤー型のヘッドホンとオンイヤー型のヘッドホンには一長一短がある。アラウンドイヤー型は、耳全体を覆う性質上、周囲のノイズをある程度シャットアウトでき、またスピーカのすぐ横まで耳が近づく状態となるので、より迫力のある音を聴くことができるというメリットを有する。これに対し、オンイヤー型は、コンパクトかつ軽量に構成することが可能で、ヘッドホンを装着していてもユーザがその重さを実感しにくいといったメリットを有する。
【0007】
そのため、アラウンドイヤー型のヘッドホンを使用しているユーザにおいて、イヤーパッドにヘッドホンカバーを装着しても、アラウンドイヤー型に近い使用感のまま音楽を楽しみたいとするニーズが存在する。
【0008】
本発明は、このようなニーズを応えるために成されたものであり、アラウンドイヤー型のヘッドホンにヘッドホンカバーを装着しても、アラウンドイヤー型に近い使用感でヘッドホンを使用することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明のヘッドホンカバーは、イヤーパッドをその外周面から内周面にかけて被覆するための生地と、イヤーパッドの内周面またはその近傍に生地の一部を固定するための固定用部材とを備え、生地の所定位置に形成された開口の周縁に当たる開口周縁部をイヤーパッドの外周面またはハウジングの外周面に固定可能に構成するとともに、生地とは別体として構成された固定用部材がイヤーパッドの内側に形成されている凹空間からイヤーパッドの内周面に向かう方向に作用して、イヤーパッドの内周面またはその近傍に生地の一部を固定可能に構成している。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した本発明によれば、生地の開口周縁部をイヤーパッドの外周面またはハウジングの外周面に固定する状態にしてイヤーパッドをその外周面から内周面にかけて生地で被覆し、イヤーパッドの内周面またはその近傍に生地の一部を固定用部材により固定することにより、ヘッドホンカバーの生地によってイヤーパッドを被覆した状態にしても、イヤーパッドの真ん中の部分にできている凹空間がヘッドホンカバーの生地によって塞がれないようにすることができる。これにより、アラウンドイヤー型のヘッドホンに本発明のヘッドホンカバーを装着しても、ユーザはアラウンドイヤー型に近い使用感でヘッドホンを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態によるヘッドホンカバーの構成例を示す図である。
図2】第1の実施形態によるヘッドホンカバーをヘッドホンに装着した状態を示す模式図である。
図3】他のタイプのヘッドホンに第1の実施形態によるヘッドホンカバーを装着した状態を示す図である。
図4】固定用部材の他の例を示す図である。
図5】固定用部材の他の例を示す図である。
図6】固定用部材の他の例を示す図である。
図7】帯状部材の末端どうしを係止する係止部材の構成例を示す図である。
図8】固定用部材の他の例を示す図である。
図9】固定用部材の他の例を示す図である。
図10】第2の実施形態によるヘッドホンカバーの構成例を示す図である。
図11】第2の実施形態によるヘッドホンカバーをヘッドホンに装着した状態を示す模式図である。
図12】第3の実施形態によるヘッドホンカバーの構成例を示す図である。
図13】第3の実施形態によるヘッドホンカバーをヘッドホンに装着した状態を示す模式図である。
図14】固定用部材の他の例を示す図である。
図15】固定用部材の他の例を示す図である。
図16】固定用部材の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るヘッドホンカバーを図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態によるヘッドホンカバー1Aの構成例を示す図であり、(a)は正面の表面を示し、(b)は正面の裏面を示し、(c)は上面を示している。本実施形態のヘッドホンカバー1Aは伸縮性を有していて変形可能であり、図1は外力が加えられていない定常状態におけるヘッドホンカバー1Aの形状の一態様を示している。
【0013】
本実施形態のヘッドホンカバー1Aは、図2を用いて後述するように、アラウンドイヤー型のヘッドホン100のイヤーパッド101に被せて使用するものである。アラウンドイヤー型のヘッドホン100は、イヤーパッド101がリング状に形成されているために真ん中の部分がへこんだ状態となっており、そこに円筒状の凹空間105が形成されている。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のヘッドホンカバー1Aは、当該ヘッドホンカバー1Aがヘッドホン100に装着されたときにイヤーパッド101をその外周面から内周面にかけて被覆するための生地11を有している。この生地11の所定位置には開口12-1,12-2が形成されている。
【0015】
第1の実施形態において、生地11は筒状に形成され、当該筒状の一端に第1の開口12-1が形成されるとともに、当該筒状の他端に第2の開口12-2が形成されている。2つの開口12-1,12-2は何れも円形に形成されており、第1の開口12-1よりも第2の開口12-2の方が直径が小さく形成されている。
【0016】
ここで、第1の開口12-1の直径は、ヘッドホンカバー1Aの装着対象となるヘッドホン100が有するイヤーパッド101の外周面またはハウジング102(特に、イヤーパッド101と接する部分)の外周面により形成される円の直径よりも小さい値とする。以下では説明を簡略化するため、図2に示すように、ヘッドホンカバー1Aを装着するヘッドホン100は、イヤーパッド101の外周面と、ハウジング102のイヤーパッド101と接する部分の外周面とが連続するように面一となっているものとし、イヤーパッド101の外周面により形成される円の直径と、ハウジング102のイヤーパッド101と接する部分の外周面により形成される円の直径とが同じであるものとする。
【0017】
なお、イヤーパッド101の外周面と、ハウジング102のイヤーパッド101と接する部分の外周面とが非連続となっていて、イヤーパッド101の外周面により形成される円の直径よりも、ハウジング102のイヤーパッド101と接する部分の外周面により形成される円の直径の方が小さい場合は、第1の開口12-1の直径は、ハウジング102の外周面の直径よりも小さい値とするのが好ましい。このようにすれば、イヤーパッド101の外周面とハウジング102の外周面とが連続しているタイプのヘッドホン100にも非連続となっているタイプのヘッドホン(図示せず)にも、ヘッドホンカバー1Aをヘッドホンにフィットさせた状態で装着することが可能である。
【0018】
また、第2の開口12-2の直径は、イヤーパッド101の内周面により形成される円の直径と同等程度とする。ただし、第2の開口12-2の周辺の生地11は伸縮可能であるので、第2の開口12-2の直径は、イヤーパッド101の内周面により形成される円の直径より若干小さいか大きくてもよい。なお、伸縮性の高い生地11を用いる場合は、第2の開口12-2の直径を、イヤーパッド101の内周面により形成される円の直径と同等程度またはそれより若干小さいか大きくし、第1の開口12-1の直径をこれと同等程度としてもよい。
【0019】
以上のように、(イヤーパッド101の内周面により形成される円の直径)≒(第2の開口12-2の直径)<(第1の開口12-1の直径)<(イヤーパッド101(またはハウジング102)の外周面により形成される円の直径)の関係となるように、2つの開口12-1,12-2の直径を設計するのが好ましい。
【0020】
第1の開口12-1の周縁に当たる第1の開口周縁部には、弾性体13が設けられている。この弾性体13は、ヘッドホンカバー1Aがヘッドホン100に装着されたときにイヤーパッド101の外周面またはハウジング102の外周面に生地11の第1の開口周縁部を固定するためのものである。すなわち、(第1の開口12-1の直径)<(イヤーパッド101(またはハウジング102)の外周面により形成される円の直径)の関係となるように形成された第1の開口12-1の開口周縁部に沿って弾性体13が設けられるので、弾性体13を伸ばしてイヤーパッド101の外周面またはハウジング102の外周面に掛けることにより、弾性体13が元の状態に縮もうとする力により、生地11の第1の開口周縁部がイヤーパッド101の外周面またはハウジング102の外周面に固定される。
【0021】
本実施形態では、弾性体13の一例として平ゴムを用いている(以下、平ゴム13と記す)。具体的には、第1の開口12-1における第1の開口周縁部の生地11に対し、糸14によって平ゴム13を縫い付けている。ここで使用する糸14は、伸縮性を有するものであることが好ましい。平ゴム13を用いているのは、丸ゴムに比べて、生地11に対する縫着を容易に行うことができるからである。
【0022】
ここで、伸ばしていない状態での平ゴム13の円周の長さと、伸ばしていない状態での生地11の端部の円周の長さとが略同じとなるようにサイズが設定されている。縫い付ける糸14の長さは、平ゴム13の最も縮んでいる状態での全周の長さ(図1に示す定常状態での平ゴム13の円周の長さ)よりも長くする。そして、平ゴム13の長手方向(円周方向)に略平行に糸を縫い付ける。具体的には、生地11と平ゴム13とを共に伸ばした状態にして、生地11の端部と平ゴム13とを合わせ縫いしていく。
【0023】
このように、本実施形態のヘッドホンカバー1Aでは、縫製に使用する糸14の長さを定常状態における平ゴム13の全周の長さよりも長くしているので、平ゴム13が最も縮んでいる(伸びていない)状態では糸14が弛んだ状態となっていて、糸14が弛んだ状態から弛みのない状態となるまでの伸び代がある分、糸14自体の伸びの限界を超えて平ゴム13を伸ばすことができる。これにより、1種類のヘッドホンカバー1Aをできるだけ多くの大きさのヘッドホン100に使用することができる。また、イヤーパッド101およびハウジング102の断面形状が円形のヘッドホン100のみならず、1種類のヘッドホンカバー1Aを様々な形状のヘッドホン100に使用することもできる。
【0024】
第2の開口12-2の周縁に当たる第2の開口周縁部には、ヘッドホンカバー1Aがヘッドホン100に装着されたときにイヤーパッド101の内周面またはその近傍に生地11の一部を固定するためのリング状部材15(特許請求の範囲の固定用部材および留め具の一例)が設けられている。本実施形態において、生地11の一部とは、第2の開口12-2における第2の開口周縁部である。すなわち、リング状部材15は、生地11とは別体として構成され、イヤーパッド101の内側に形成されている凹空間105からイヤーパッド101の内周面に向かう方向に作用して(この点は後述する他の実施形態でも同様)、生地11の第2の開口周縁部をイヤーパッド101の内周面またはその近傍に固定するためのものである。リング状部材15の断面形状は任意である。例えば、リング状部材15は、平板状(断面が矩形)のリング形状であってもよいし、円柱状(断面が円形)のリング形状であってもよい。
【0025】
リング状部材15は、内向きに狭まった状態と外向きに広がった状態との間で変形可能な材質により構成されており、外向きに広がることによってイヤーパッド101の内周面またはその近傍に生地11の一部(第2の開口周縁部)を誘導するまで変形した状態を維持可能に構成されている。一例として、リング状部材15は、可撓性を有する樹脂製の部材であり、外力を印加することによって内向きに狭まった状態へと変形させることが可能で、かつ、外力の印加を止めると外向きに広がって元のリング形状に戻ろうとする復元力を有している。
【0026】
すなわち、外力を印加することによって内向きに狭まった状態へと変形させたリング状部材15が、外力の印加中止により外向きに広がって元のリング形状に戻る過程で、リング状部材15がイヤーパッド101の内周面またはその近傍まで生地11の第2の開口周縁部を誘導する。そして、リング状部材15は、生地11の第2の開口周縁部がイヤーパッド101の内周面またはその近傍であるイヤーパッド101の裏面に当接した状態、またはリング状部材15が元のリング形状に戻った状態(イヤーパッド101の内周面の近傍に生地11の第2の開口周縁部が位置する状態)で、その状態を維持するように作用する。
【0027】
なお、リング状部材15は、銅、真鍮、アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属素材により構成された形状記憶合金ワイヤ(メモリワイヤ)であってもよい。
【0028】
リング状部材15は、生地11の一部(本実施形態では、第2の開口12-2における第2の開口周縁部)に形成された袋状部16に埋設されている(図1(c)では、袋状部16を模式的にデフォルメして示している)。これにより、生地11とリング状部材15とが一体的(生地11とリング状部材15とが分離できない状態)に構成されている。図1(b)に示すように、袋状部16は、生地11の第2の開口周縁部を全周にわたって表側から裏側に折り返し、折り返した部分の先端に近い側を糸17で縫うことによって形成されている。
【0029】
具体的には、生地11の第2の開口周縁部に近いところにリング状部材15を置いた状態にして、生地11の第2の開口周縁部を全周にわたって表側から裏側に折り返すことによってリング状部材15を生地11で覆い、折り返した部分の先端に近い側を全周にわたって糸17で縫うことにより、袋状部16の中にリング状部材15が埋設された状態とすることができる。
【0030】
なお、生地11の第1の開口周縁部に平ゴム13を縫い付けることに代えて、第1の開口周縁部についても袋状部16と同様に袋状部を構成し、その中に丸ゴムまたは平ゴムを埋設するようにしてもよい。また、生地11を弾性力のある素材で形成することにより、第1の開口周縁部に平ゴム13等の弾性体を設けない構成としてもよい。この場合、第1の開口周縁部を二重またはそれ以上に折り返して縫うことにより、開口周縁部の弾性力が増すようにしてもよい。
【0031】
図2は、以上のように構成したヘッドホンカバー1Aをヘッドホン100に装着した状態を示す模式図である。図2では、ヘッドバンドと一対のヘッドホンユニットとを備えて構成されるヘッドホン100のうち一方のヘッドホンユニットと、それに装着したヘッドホンカバー1Aとの断面を簡易的な模式図として示している。
【0032】
上述したように、アラウンドイヤー型のヘッドホン100の場合、リング状に形成されたイヤーパッド101の真ん中の部分がへこんだ状態となっていて、そこに円筒状の凹空間105が形成されている。凹空間105の底部にスピーカユニット104が存在する。また、イヤーパッド101の内周面の底部には、イヤーパッド101の裏面とハウジング102との間にできた隙間106が存在する。
【0033】
リング状部材15は、この隙間106に入るサイズに構成されており、当該隙間106の内部において、イヤーパッド101の内周面の近傍に生地11の第2の開口周縁部を固定する。ここで、リング状に形成される隙間106の内径(=イヤーパッド101の内周面の直径)の方が、最も広がった状態(元のリング形状の状態)におけるリング状部材15の外径よりも小さくなるようなサイズに形成されているヘッドホン100であれば、異なるサイズや形状のヘッドホン100であっても、リング状部材15を隙間106の中に入れた状態にして、イヤーパッド101の内周面の近傍に生地11の第2の開口周縁部を固定することが可能である。
【0034】
イヤーパッド101は弾性力を有するクッション材により構成されているので、実際にはリング状部材15が隙間106よりも若干厚いサイズに形成されていても、リング状部材15を隙間106に入れることが可能である。そのようなサイズにリング状部材15を構成した場合、隙間106に挿入したリング状部材15がイヤーパッド101の裏面から圧力または摩擦力を受けて抜けにくくなるようにすることが可能である。
【0035】
なお、リング状部材15は、これを隙間106に挿入したときにイヤーパッド101の裏面に当接するサイズであることが必須というわけではない。すなわち、リング状部材15は、イヤーパッド101の裏面との間に若干の隙間が空くようなサイズとしてもよい。この場合、リング状部材15は、隙間106の奥の位置に当たるハウジング102の内周面に生地11の第2の開口周縁部が当接した状態、またはリング状部材15が隙間106の中で元のリング形状に戻った状態で、その状態を維持するように作用する。このように、リング状部材15がイヤーパッド101の裏面との間に隙間が空くようなサイズに構成されている場合でも、イヤーパッド101の内周面または外周面を覆っている部分の生地11が引かれると、リング状部材15(実際はこれを覆っている生地11)が隙間106の中でイヤーパッド101の裏面に当たるため、リング状部材15が隙間106から抜けにくい状態とすることができる。
【0036】
ヘッドホンカバー1Aをヘッドホン100に装着する際には、例えば、図1(b)のようにヘッドホンカバー1Aの裏面が外側にくる状態(外から裏面が見える状態)にして、生地11の第2の開口周縁部に形成された袋状部16に埋設されているリング状部材15を変形させながら、リング状部材15(生地11の第2の開口周縁部)を全周にわたって隙間106に差し込む。
【0037】
次いで、生地11の表面が外から見えるように生地11を裏返しながら、イヤーパッド101の内周面から外周面を順に生地11で覆っていく。そして、生地11の第1の開口周縁部に縫着された平ゴム13をイヤーパッド101またはハウジング102の外周面に掛けることにより、生地11の第1の開口周縁部をイヤーパッド101またはハウジング102の外周面に固定する。
【0038】
なお、これとは逆の手順でヘッドホンカバー1Aを装着することも可能である。すなわち、図1(a)のようにヘッドホンカバー1Aの表面が外側にくる状態(外から表面が見える状態)にして、生地11の第1の開口周縁部に縫着された平ゴム13をイヤーパッド101またはハウジング102の外周面に掛けることにより、生地11の第1の開口周縁部をイヤーパッド101またはハウジング102の外周面に固定する。
【0039】
次いで、イヤーパッド101の外周面から内周面を順に生地11で覆っていき、生地11の第2の開口周縁部に形成された袋状部16に埋設されているリング状部材15を変形させながら、リング状部材15(生地11の第2の開口周縁部)を全周にわたって隙間106に差し込む。
【0040】
このように、イヤーパッド101またはハウジング102の外周面に生地11の第1の開口周縁部を平ゴム13により固定するとともに、イヤーパッド101の内周面の底部(イヤーパッド101の裏面とハウジング102との間)に形成されている隙間106の中で、イヤーパッド101の内周面の近傍に生地11の第2の開口周縁部をリング状部材15により固定する状態にして、イヤーパッド101の外周面および内周面を生地11で被覆する。図2では、見た目が分かりやすくなるようにイヤーパッド101から生地11を離した状態で図示しているが、実際にはイヤーパッド101の外周面から内周面にかけて生地11をフィットさせることが可能である。
【0041】
このようにすることにより、ヘッドホンカバー1Aの生地11によってイヤーパッド101を被覆した状態にしても、イヤーパッド101の真ん中の部分にできている円筒状の凹空間105がヘッドホンカバー1Aの生地11によって塞がれないようにすることができる。これにより、アラウンドイヤー型のヘッドホン100に本実施形態のヘッドホンカバー1Aを装着しても、ユーザはアラウンドイヤー型に近い使用感でヘッドホン100を使用することができる。
【0042】
図3は、他のタイプのヘッドホン100’に本実施形態のヘッドホンカバー1Aを装着した状態を示す図である。図3は、イヤーパッド101の内周面の底部に隙間が存在しないタイプのヘッドホン100’にヘッドホンカバー1Aを装着した状態を示している。この場合は、イヤーパッド101の内周面の底部またはハウジング102’の内周面に生地11の第2の開口周縁部をリング状部材15により固定する状態にして、イヤーパッド101を生地11で被覆する。
【0043】
この場合は、イヤーパッド101の内周面の直径の方が、最も広がった状態(元のリング形状の状態)におけるリング状部材15の外径よりも小さくなるようなサイズに形成されているヘッドホン100であれば、異なるサイズや形状のヘッドホン100であっても、リング状部材15をイヤーパッド101の内周面に押し当てた状態にして、イヤーパッド101の内周面に生地11の第2の開口周縁部を固定することが可能である。
【0044】
一方、イヤーパッド101の内周面の直径の方が、最も広がった状態(元のリング形状の状態)におけるリング状部材15の外径よりも大きくなるようなサイズに形成されているヘッドホン100であっても、その直径の差が大きくない場合は、リング状部材15により生地11の第2の開口周縁部をイヤーパッド101の内周面の近傍まで誘導した状態にして、イヤーパッド101の内周面の近傍に第2の開口周縁部を固定することが可能である。この場合は、生地11の一部がイヤーパッド101の内周面から離れた状態となるが、アラウンドイヤー型に近い使用感を損なうものではない。
【0045】
なお、上記実施形態では、外力の印加によって変形が可能で、かつ、外力の印加停止によって元のリング形状に戻ろうとする復元力を有する固定用部材の一例として、可撓性を有する樹脂製のリング状部材15を説明したが、固定用部材はこれに限定されない。例えば、図4に示すように、固定用部材は、複数のプレート151aを順次連結して全体としてリング状となるように構成したリング状部材151により構成してもよい。各プレート151aの素材は任意であり、例えば金属製または樹脂製とすることが可能である。
【0046】
複数のプレート151aの各々は、両端部付近に設けられた回転軸151bを介して他のプレート151aと連結され、回転軸151bを中心として回動可能に構成されている。図4の例では、角を面取りした矩形形状の10個のプレート151aを順次連結した構成を示している。ここで、各プレート151aが交互に上側および下側となるように連結することにより、1枚のプレート151aの厚みの2倍の厚さの空間領域でリング形状が構成されている。
【0047】
図4(a)は、全てのプレート151aが同じ角度で連結され、リング状部材151が全体として正十角形(リング形状)を成した状態を示している。これに対し、図4(b)は、複数のプレート151aを任意の角度で回動させることにより、リング状部材151を任意の形状に変形させた状態を示している。また、図4(c)は、5個の回転軸151bの部分を1つ飛びに正十角形の中心方向に同じ量ずつ押し込むような態様で複数のプレート151aを回動させることにより、リング状部材151を全体として星形の形状に変形させた状態を示している。
【0048】
図4のように構成したリング状部材151も、生地11の第2の開口周縁部に形成された袋状部16に埋設され、生地11と一体的に構成される。ヘッドホンカバー1Aをヘッドホン100に装着する際、リング状部材151(生地11の第2の開口周縁部)を隙間106の中に差し込むときには、リング状部材151を図4(b)または図4(c)のように変形させる。そして、リング状部材151を隙間106の中に差し込んだ後は、リング状部材151を図4(a)のような状態とし、リング状部材151が全周にわたって隙間106の中に納まるようにする。
【0049】
なお、図4に示すリング状部材151は、図4(b)または図4(c)のように変形された状態(内向きに狭まった状態)から図4(a)のようなリング形状(外向きに広がった状態)に戻ろうとする復元力を有するものであってもよいし、復元力を有しないものであってもよい。すなわち、図4(b)または図4(c)のように折り畳まれた状態から、図4(a)のようなリング形状に広げられた状態へのリング状部材151の変形は、ユーザが手を使って手動で行うようにしてもよいし、リング状部材151が元のリング形状に戻ろうとする復元力を利用して自動的に行うようにしてもよい。リング状部材151に復元力を与えるための構成の一例として、図4(d)に示すようにトーションバネ151cを利用する構成が考えられる。
【0050】
例えば、プレート151aの内部の一部または全部を空洞とし、1つ飛びに回転軸151bの周囲にトーションバネ151cを巻回させる。そして、トーションバネ151cの両脚が、隣接する2つのプレート151aの内壁の各々に1本ずつ当接するように構成する。このように構成した場合、ユーザがリング状部材151に外力を加えて図4(c)のようにリング状部材151を星形に変形させた後、外力の印加を止めると、星形の中央付近にある5個の回転軸151bの周囲に巻回されたトーションバネ151cの復元力を受けて、リング状部材151は図4(a)のようなリング形状に自動的に戻る。
【0051】
また、外力の印加によって変形が可能で、かつ、外力の印加停止によって元のリング形状に戻ろうとする復元力を有する固定用部材の別の例として、図5のように構成したリング状部材152を用いてもよい。図5に示すリング状部材152は、例えば樹脂製で可撓性を有する可撓部材152aと、可撓部材152aの両端の間に配置されるバネ部材(例えば、コイルバネ152b)とを含み、可撓部材152aおよびコイルバネ152bにより全体としてリング状となるように構成されている。
【0052】
図5の構成において、可撓部材152aとコイルバネ152bとは別体として構成されており、これらをチューブ152cの中に挿入することにより、全体としての一体性を持たせている。チューブ152cは、リング状の一部が欠損した構成を有しており、チューブ152cを縮めたり弛ませたりすることなくコイルバネ152bを縮めることができるようにしている。なお、可撓部材152aの両端とコイルバネ152bの両端とを接着するようにしてもよい。
【0053】
図5のように構成したリング状部材152も、生地11の第2の開口周縁部に形成された袋状部16に埋設され、生地11と一体的に構成される。ヘッドホンカバー1Aをヘッドホン100に装着する際、リング状部材152(生地11の第2の開口周縁部)を隙間106の中に差し込むときには、ユーザがリング状部材152に外力を与えてコイルバネ152bを図5(b)のように縮める。そして、リング状部材152を隙間106の中に差し込んだ後は、リング状部材152から手を離すことにより、縮んでいたコイルバネ152bが伸びてリング状部材152が図5(a)のような状態となるようにして、リング状部材152が全周にわたって隙間106の中に納まるようにする。
【0054】
また、上記実施形態では、固定用部材として、最も広がったときの直径があらかじめ決められたリング状部材15,151,152を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図6(a)に示すように、帯状部材15’をリング状に形成したものを固定用部材として用いるようにしてもよい。帯状部材15’は、袋状部16に埋設して生地11と一体的に構成するようにしてもよいし、生地11と非一体的(生地11と帯状部材15’とが分離できる状態)に構成するようにしてもよい。
【0055】
生地11と帯状部材15’とを分離可能に構成する場合、例えば図6(b)に示すように、袋状部16の一部に欠損部16aを設けて、ヘッドホンカバー1Aの使用時にこの欠損部16aから帯状部材15’を袋状部16に挿入(埋設)するようにしてもよい。この場合において、袋状部16に挿入した帯状部材15’の両端を欠損部16aから露出させ、ユーザが帯状部材15’の両端の部分を手で持って摺動させることにより、リング状にした帯状部材15’の直径の大きさを調整することができるようにしてもよい。このようにすれば、円筒状の凹空間105の直径が異なる様々な大きさのヘッドホン100に本実施形態のヘッドホンカバー1Aを使用することが可能な範囲を広げることができる。
【0056】
なお、図6(a)のような帯状部材15’を固定用部材として用いる場合において、リング状に形成した状態が安定して維持されるように、帯状部材15’の少なくとも一部を係止する係止部材を備えるようにしてもよい。図7は、その係止部材の一例を示す図である。このような係止部材を用いることにより、帯状部材15’がイヤーパッド101の内周面またはその近傍に位置するようにリング状の直径を調整したときに、調整した直径を確実に維持することができる。これにより、帯状部材15’の位置が容易にずれないようにし、ヘッドホンカバー1Aのイヤーパッド101に対する被覆状態を安定して維持することができる。
【0057】
図7(a)は、例えば弾性を有する塩化ビニル樹脂等の素材により形成されたリング型係止部材51の構成例を示している。リング型係止部材51の内径は、帯状部材15’を2つ重ねた厚みと同程度またはそれより若干小さい値とする。このように構成したリング型係止部材51は、帯状部材15’をその両端から逆向きに挿通した状態にして、帯状部材15’の互いに重なった部分に圧接する。これにより、リング型係止部材51の中に挿入された帯状部材15’がリング型係止部材51により締めつけられ、帯状部材15’を所望の直径のリング状に形成した状態が安定して維持されるようになる。
【0058】
図7(b)は、爪の係合により帯状部材15’の端部どうしを係止するようにした爪型係止部材52の構成例を示している。図7(b)の例では、爪型係止部材52は、ケーシング52aと、軸52bを中心として回動可能な爪52cとを備える。ケーシング52aに帯状部材15’の一端が固定され、帯状部材15’の他端側がケーシング52aの中に挿入されて摺動可能となっている。帯状部材15’の他端側にはノコギリ歯15aが形成されおり、このノコギリ歯15aの何れか1つが爪52cと係止するようになっている。
【0059】
爪52cとノコギリ歯15aとの係合関係は、次のようになっている。すなわち、爪52cを回動させてノコギリ歯15aから退避する状態としなくても、帯状部材15’により形成されるリングの直径が大きくなる方向(図7(b)の右矢印で示す方向)には帯状部材15’を摺動させることが可能である。一方、帯状部材15’により形成されるリングの直径が小さくなる方向(図7(b)の左矢印で示す方向)には帯状部材15’を摺動させることができない。この方向に帯状部材15’を摺動させるためには、爪52cを回動させてノコギリ歯15aから退避する状態とする必要がある。
【0060】
なお、図7のように係止部材51,52を用いる場合、帯状部材15’は必ずしも復元力を有するものとしなくてもよい。あるいは復元力が弱いものであってもよい。これは、次の図8および図9において説明する帯状部材151’,152’についても同様である。
【0061】
図8は、係止部材の他の構成例を示す図である。図8に示す例において、帯状部材151’は、その両端に係止部材53a,53bを備えている。係止部材53a,53bは、帯状部材151’の一部が嵌合する嵌合型係止部材により構成される。すなわち、図8に示すように、係止部材53a,53bは、帯状部材151’の断面形状に合わせて、帯状部材151’の一部を安定的に把持する形状に構成されている。帯状部材151’の一部とは、帯状部材151’の長手方向の長さの一部、かつ、帯状部材151’の断面形状の周方向の一部を意味する。なお、帯状部材151’の断面形状の周方向に関しては、一部ではなく全周を保持する形状としてもよい。
【0062】
図8に示すように、帯状部材151’の一方の端部に設けられた一方の係止部材53aは、帯状部材151’の他方の端部に近い部分を把持する。また、帯状部材151’の他方の端部に設けられた他方の係止部材53bは、帯状部材151’の一方の端部に近い部分を把持する。両端の係止部材53a,53bは、上下が互いに逆向きに形成されており、一方の係止部材53aは帯状部材151’を下側から把持し、他方の係止部材53bは帯状部材151’を上側から把持する。このため、両端の係止部材53a,53bの間では、帯状部材151’が重なった状態となる。
【0063】
上述したように、係止部材53a,53bは、帯状部材151’の断面形状に合わせた形状に構成されている。断面形状に合わせた形状とは、係止部材53a,53bの内側の部分の断面形状が、それに対応する帯状部材151’の部分の断面形状と略同じであり、かつ、大きさも略同じであることを意味する。なお、係止部材53a,53bが可撓性を有する部材により構成されている場合は、係止部材53a,53bの内側の部分の断面形状の方が、それに対応する帯状部材151’の部分の断面形状よりも若干小さくてもよい。このような構成のため、一定以上の外力が加えらない限り、帯状部材151’を特定の部分で把持した状態を維持することが可能である。
【0064】
これに対して、ユーザが帯状部材151’外力を加えることにより、係止部材53a,53bを帯状部材151’の長手方向に沿って摺動させることが可能である。これにより、係止部材53a,53bが把持する帯状部材151’の長手方向の部位を変えることで、帯状部材151’を縮めたり伸ばしたりすることも可能である。
【0065】
ここで、帯状部材151’を縮めるとは、帯状部材151’によって形成されるリング形状の直径を小さくすることであり、両端の係止部材53a,53bの間において帯状部材151’が重なる部分を長くすることである。帯状部材151’を伸ばすとは、帯状部材151’によって形成されるリング形状の直径を大きくすることであり、両端の係止部材53a,53bの間において帯状部材151’が重なる部分を短くすることである。
【0066】
図8のように、帯状部材151’の両端に係止部材53a,53bを設けた場合、係止部材53a,53bを摺動させるだけでは、係止部材53a,53bから帯状部材151’が抜けることはない。この意味では、図8の帯状部材151’をリング状部材と捉えることも可能である。そのため、図8のように構成した帯状部材151’は、生地11の第2の開口周縁部に形成された袋状部16にあらかじめ埋設され、生地11と一体的に構成される。
【0067】
なお、可撓性を有する部材により係止部材53a,53bを構成し、開口されている部分を手で広げることができるようにすることで、係止部材53a,53bから帯状部材151’を外すことができるようにしてもよい。このようにした場合は、図6と同様に、一部を欠損させた袋状部16に対して後から帯状部材151’を挿入するようにすることも可能である。また、図8では、帯状部材151’の両端に係止部材53a,53bを設ける構成を示したが、一方にのみ設ける構成としてもよい。この場合は、帯状部材151’の一端に設けられた係止部材を摺動させるだけで、係止部材から帯状部材151’が抜くことができる。
【0068】
図9は、係止部材の更に別の構成例を示す図である。図9に示す例において、係止部材は、帯状部材152’の表面に形成されたレール部54aと、帯状部材152’の裏面に形成された脚部54bとを含むレール型係止部材により構成されている。図9の例において、レール部54aは、断面形状が台形に形成された1つのレールであり、帯状部材152’の表面の全体に長手方向に沿って形成されている。脚部54bは、レール部54aの断面台形形状に合わせて、当該レール部54aを両側から挟持する形状に構成されており、帯状部材152’の裏面の全体に長手方向に沿って形成されている。
【0069】
このように、図9に示す係止部材は、帯状部材152’の一端側の表面に形成されているレール部54aと、帯状部材152’の他端側の裏面に形成されている脚部54bとが噛み合うように形成されている。このため、レール部54aと脚部54bとが噛み合った部分では、帯状部材152’が重なった状態となる。
【0070】
上述したように、脚部54bは、レール部54aの断面形状に合わせた形状に構成されている。断面形状に合わせた形状とは、脚部54bの長さおよび角度が、レール部54aの側面(台形の両脚に相当する部分)の長さおよび角度と略同じであることを意味する。なお、脚部54bが可撓性を有する部材により構成されている場合は、脚部54bの角度が、レール部54aの側面の角度よりも若干鋭角となっていてもよい。このような構成のため、一定以上の外力が加えらない限り、帯状部材152’の特定の部分を挟持した状態を維持することが可能である。
【0071】
これに対して、ユーザが帯状部材152’外力を加ええることにより、脚部54bをレール部54aの長手方向に沿って摺動させることが可能である。これにより、脚部54bが挟持するレール部54aの長手方向の長さを変えることで、帯状部材152’を縮めたり伸ばしたりすることも可能である。
【0072】
ここで、帯状部材152’を縮めるとは、帯状部材152’によって形成されるリング形状の直径を小さくすることであり、帯状部材152’においてレール部54aと脚部54bとが噛み合う部分を長くすることである。帯状部材152’を伸ばすとは、帯状部材152’によって形成されるリング形状の直径を大きくすることであり、帯状部材152’においてレール部54aと脚部54bとが噛み合う部分を短くすることである。
【0073】
図9のように係止部材を構成した場合、脚部54bをレール部54aに沿って摺動させるだけで、脚部54bをレール部54aから外すことができる。従って、図9のように構成した帯状部材152’は、生地11の第2の開口周縁部に形成された袋状部16にあらかじめ埋設しておくようにしてもよいし、図6と同様に、一部を欠損させた袋状部16に対して後から挿入するようにしてもよい。
【0074】
なお、図9では、レール部54aを帯状部材152’の表面の全体にわたって形成するとともに、脚部54bを帯状部材152’の裏面の全体にわたって形成する構成を示したが、レール部54および脚部54bを帯状部材152’の端部付近にのみ形成する構成としてもよい。
【0075】
以上説明したように、図8では、嵌合型に構成した係止部材53a,53bを帯状部材151’の断面形状に合わせた形状とすることで、係止部材53a,53bが帯状部材151’の一部を安定的に把持できるようにしている。また、図9では、レール部54aと脚部54bとによりレール型係止部材を構成し、脚部54bをレール部54aの断面形状に合わせた形状とすることで、係止部材54a,54bが帯状部材152’の一部を安定的に把持できるようにしている。
【0076】
これに対し、係止部材53a,53bの断面形状を帯状部材151’の断面形状よりも若干大きく形成することにより、係止部材53a,53bが帯状部材151’に沿って摺動しやすくなるようにし、かつ、帯状部材151’が外力を受けて内向きに狭まった状態(帯状部材151’を縮めた状態)へと変形した後、外力の印加がなくなったときに外向きに広がって元の形状(帯状部材151’が伸びた状態)に戻ろうとする復元力を有する部材によって帯状部材151’を構成するようにしてもよい。
【0077】
また、例えば脚部54bの角度をレール部54aの角度より若干鈍角とすることにより、脚部54bがレール部54aに沿って摺動しやすくなるようにし、かつ、帯状部材152’が外力を受けて内向きに狭まった状態(帯状部材152’を縮めた状態)へと変形した後、外力の印加がなくなったときに外向きに広がって元の形状(帯状部材152’が伸びた状態)に戻ろうとする復元力を有する部材によって帯状部材152’を構成するようにしてもよい。
【0078】
このように構成した場合、図8の係止部材53a,53bおよび図9の係止部材54a,54bは、帯状部材151’,152’を一定の状態に安定的に維持させるための係止機構として機能するのではなく、帯状部材151’,152’をその長手方向に沿って安定的に摺動させるためのガイド機構(ガイド部材)として機能する。
【0079】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。図10は、第2の実施形態によるヘッドホンカバー1Bの構成例を示す図であり、(a)は平面を示し、(b)は底面を示している。本実施形態のヘッドホンカバー1Bは伸縮性を有していて変形可能であり、図10は外力が加えられていない定常状態におけるヘッドホンカバー1Bの形状の一態様を示している。第2の実施形態によるヘッドホンカバー1Bも、アラウンドイヤー型のヘッドホン100のイヤーパッド101に被せて使用するものである。なお、この図10において、図1に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0080】
第2の実施形態において、生地11’は、その周縁部が全周にわたって一の面側(底面側)に折り返され、当該一の面側に第1の開口12-1’が形成されるとともに、一の面側とは反対側の、折り返されていない面側(平面側)に第2の開口12-2’が形成されている。2つの開口12-1’,12-2’は何れも円形に形成されており、第1の開口12-1’よりも第2の開口12-2’の方が直径が小さく形成されている。
【0081】
ここで、第1の開口12-1’の直径は、ヘッドホンカバー1Bの装着対象となるヘッドホン100が有するイヤーパッド101の外周面またはハウジング102(特に、イヤーパッド101と接する部分)の外周面により形成される円の直径よりも小さい値とする。また、第2の開口12-2’の直径は、イヤーパッド101の内周面により形成される円の直径と同等程度またはそれより若干小さいか大きい値とする。すなわち、(イヤーパッド101の内周面により形成される円の直径)≒(第2の開口12-2’の直径)<(第1の開口12-1’の直径)<(イヤーパッド101(またはハウジング102)の外周面により形成される円の直径)の関係となるように、2つの開口12-1’,12-2’の直径を設計する。
【0082】
第1の開口12-1’の周縁に当たる第1の開口周縁部には、当該第1の開口周縁部をイヤーパッド101の外周面またはハウジング102の外周面に固定するための弾性体(例えば平ゴム)13が設けられている。第2の実施形態においても、縫い付ける糸の長さは、平ゴム13の最も縮んでいる状態での全周の長さよりも長くする。そして、平ゴム13の長手方向(円周方向)に略平行に糸を縫い付ける。第2の実施形態では、平ゴム13を伸ばした状態にして、伸ばしていない状態の生地11’の端部と平ゴム13とを合わせ縫いしていく。これは後述する第3の実施形態でも同様である。
【0083】
また、伸ばしていない状態での平ゴム13の円周の長さよりも、伸ばしていない状態での生地11’の端部の円周の長さの方が長くなるようにサイズが設定されている。これにより、平ゴム13を伸ばした状態で生地11’に縫い付けた後、伸ばすのをやめて定常状態に戻すと、第1の開口周縁部が平ゴム13の力で縮められて皺が生じた状態となる。つまり、第1の開口周縁部が弛んだ状態で生地11’の端部が平ゴム13に縫い付けられた状態となる。これは後述する第3の実施形態でも同様である。
【0084】
第2の開口12-2’の周縁に当たる第2の開口周縁部には、ヘッドホンカバー1Bがヘッドホン100に装着されたときにイヤーパッド101の内周面またはその近傍に生地11’の一部を固定するための固定用部材が設けられている。本実施形態において、生地11’の一部とは、第2の開口12-2’における第2の開口周縁部である。
【0085】
固定用部材は、第1の実施形態と同様のものを用いることが可能である。例えば、固定用部材として、図1に示したリング状部材15を用いることが可能である。このリング状部材15は、第2の開口12-2’における第2の開口周縁部に形成された袋状部16’に埋設される。袋状部16’は、生地11’の第2の開口周縁部を全周にわたって折り返し、折り返した部分の先端に近い側を糸で縫うことによって形成されている。
【0086】
なお、リング状部材15に代えて、図4に示したリング状部材151、図5に示したリング状部材152、または図6に示した帯状部材15’を用いてもよい。帯状部材15’を用いる場合はさらに、図7に示したような係止部材51,52を用いるようにしてもよい。また、リング状部材15に代えて、図8に示した帯状部材151’または図9に示した帯状部材152’を用いるようにしてもよい。
【0087】
第2の実施形態のように構成した場合も、ヘッドホンカバー1Bの生地11’によってイヤーパッド101を被覆した状態(図2と同様の状態)にしても、イヤーパッド101の真ん中の部分にできている円筒状の凹空間105がヘッドホンカバー1Bの生地11’によって塞がれないようにすることができる。これにより、アラウンドイヤー型のヘッドホン100に本実施形態のヘッドホンカバー1Bを装着しても、ユーザはアラウンドイヤー型に近い使用感でヘッドホン100を使用することができる。
【0088】
また、第2の実施形態によれば、図11に示すように、生地11’の第1の開口周縁部をイヤーパッド101またはハウジング102の外周面に平ゴム13により固定した状態にする一方、生地11’の第2の開口周縁部(固定用部材)をイヤーパッド101の裏面とハウジング102との隙間106に入れることなくヘッドホンカバー1Bを使用することもできる。この場合、耳の一部が生地11’に接触することになるが、第2の開口12-2’の部分が解放されているので、完全なオンイヤー型のヘッドホンほどの圧迫感はなく、また、スピーカユニット104から生地11’を通さないダイレクトな音声を聴取することができる。
【0089】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図面に基づいて説明する。図12は、第3の実施形態によるヘッドホンカバー1Cの構成例を示す図であり、(a)は平面を示し、(b)は底面を示している。本実施形態のヘッドホンカバー1Cは伸縮性を有していて変形可能であり、図12は外力が加えられていない定常状態におけるヘッドホンカバー1Cの形状の一態様を示している。第3の実施形態によるヘッドホンカバー1Cも、アラウンドイヤー型のヘッドホン100のイヤーパッド101に被せて使用するものである。なお、この図12において、図10に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0090】
第3の実施形態において、生地11”は、その周縁部が全周にわたって一の面側(底面側)に折り返され、当該一の面側に開口12-1”が形成されている。この開口12-1”は、第2の実施形態における第1の開口12-1’と同様のものである。第3の実施形態において、第2の実施形態における第2の開口12-2’は存在しない。
【0091】
開口12-1”の周縁に当たる開口周縁部には、当該開口周縁部をイヤーパッド101の外周面またはハウジング102の外周面に固定するための弾性体(例えば平ゴム)13が設けられている。この点は第2の実施形態と同様である。
【0092】
第3の実施形態において、固定用部材は生地11”と非一体的に構成されている。すなわち、固定用部材が生地11”の袋状部に埋設されて一体的となるような構成とはなっていない。例えば、第3の実施形態では、図7のように帯状部材15’を固定用部材として用いるとともに、係止部材51または52を用いるのが好ましい。また、図8に示した帯状部材151’(係止部材53a,53bが係止機構として機能するもの)または図9に示した帯状部材152’(係止部材54a,54bが係止機構として機能するもの)を固定用部材として用いるのも好ましい。
【0093】
あるいは、イヤーパッド101とハウジング102との隙間106に入るサイズの直径を有し、かつ、外力が加えられていないときに元のリング形状に戻ろうとする復元力を有する固定用部材として、図1に示したリング状部材15、図4に示したリング状部材151、図5に示したリング状部材152、図8に示した帯状部材151’(係止部材53a,53bがガイド機構として機能するもの)、または図9に示した帯状部材152’(係止部材54a,54bがガイド機構として機能するもの)を用いるようにしてもよい。
【0094】
第3の実施形態において、固定用部材は、生地11”の一の面側(底面側)とは反対側の、折り返されていない面側(平面側)の生地11”の一部をイヤーパッド101の内周面またはその近傍(隙間106)に固定する。生地11”の一部とは、第2の実施形態における第2の開口12-2’の開口周縁部が存在している位置あたりの部分をいう。
【0095】
図13は、第3の実施形態によるヘッドホンカバー1Cをヘッドホン100に装着した状態を示す模式図である。ヘッドホンカバー1Cをヘッドホン100に装着する際には、まず、図13(a)に示すように、生地11”の開口12-1”を広げながらイヤーパッド101の全体を生地11”で覆うような状態にして、生地11”の開口周縁部に縫着された平ゴム13をイヤーパッド101またはハウジング102の外周面に掛けることにより、開口周縁部をイヤーパッド101またはハウジング102の外周面に固定する。この段階では、生地11”が円筒状の凹空間105を塞いだ状態になっている。
【0096】
次いで、図13(b)に示すように、円筒状の凹空間105を塞いだ状態となっている生地11”を伸ばしてイヤーパッド101の底部の方に押し下げながら、生地11”の上から固定用部材を押し当てて、その固定用部材をイヤーパッド101とハウジング102との隙間106に生地11”の一部と共に押し込む。これにより、隙間106の中で生地11”の一部を固定する状態にして、イヤーパッド101を生地11”で被覆する。
【0097】
このようにすることにより、ヘッドホンカバー1Cの生地11”によってイヤーパッド101を被覆した状態にしても、イヤーパッド101の真ん中の部分にできている円筒状の凹空間105がヘッドホンカバー1Cの生地11”によって塞がれないようにすることができる。これにより、アラウンドイヤー型のヘッドホン100に本実施形態のヘッドホンカバー1Cを装着しても、ユーザはアラウンドイヤー型に近い使用感でヘッドホン100を使用することができる。
【0098】
また、第3の実施形態によれば、図13(a)に示すように、生地11”の開口周縁部をイヤーパッド101またはハウジング102の外周面に平ゴム13により固定した状態にする一方、生地11”の一部をイヤーパッド101とハウジング102との隙間106に入れることなくヘッドホンカバー1Cを使用することもできる。この場合、オンイヤー型のヘッドホンに近い使用感を得ることができる。ユーザは、そのときの好みに応じて、図13(a)の状態または図13(b)の状態の何れかでヘッドホンカバー1Cを使用することが可能である。
【0099】
なお、第3の実施形態では、固定用部材を生地11”と非一体的に構成する例について説明したが、これに限定されない。例えば、第2の実施形態における第2の開口12-2’の開口周縁部が存在している位置に相当する位置に袋状部を形成し、この袋状部に固定用部材を埋設することにより、固定用部材を生地11”と一体的に構成するようにしてもよい。
【0100】
なお、上記第1および第2の実施形態では、生地11,11’の第2の開口周縁部に形成した袋状部16,16’に固定用部材を埋設する構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、生地11,11’の第2の開口周縁部に対して、生地11,11’とは別体の固定用部材を接着することにより、固定用部材を生地11,11’と一体的に構成するようにしてもよい。接着は、例えば接着剤、面ファスナーなどを用いて行うことが可能である。図14および図15は、生地11,11’の第2の開口周縁部に固定用部材を接着させる構成例を示す図である。なお、図14および図15は、第1の実施形態において示した筒状の生地11に対して固定用部材を接着する例を示している。
【0101】
例えば、図14(a)に示すように、生地11の第2の開口周縁部付近において、生地11の先端から所定長だけ内側の部分に第1のリング状部材15-1を接着する。さらに、図14(b)に示すように、接着した第1のリング状部材15-1から先端側にはみ出した生地11の部分を第1のリング状部材15-1と第2のリング状部材15-2との間に挟むようにして、かつ、第2のリング状部材15-2を第1のリング状部材15-1に密着させるようにして、第2のリング状部材15-2を生地11に接着する。このとき、2つのリング状部材15-1,15-2の間から生地11の端部がはみ出している場合は、そのはみ出した部分を切断するなどの端処理を行う。
【0102】
図14(c)は、図14(b)のように生地11の外側からリング状部材15-1,15-2を接着した構成から成るヘッドホンカバー1A’をヘッドホン100に装着した状態を示す図である。リング状部材15-1,15-2が生地11により覆われていない点を除けば、図2に示した状態と同じである。なお、ここでは外観上の美観をよくするために2つのリング状部材15-1,15-2を生地11に接着する構成を示したが、第1のリング状部材15-1のみであってもよい。
【0103】
図15は、第2のリング状部材15-2の内側に生地111を設けた構成例を示している。生地111がある点以外は図14と同様である。図15において、生地111の周縁部付近において、当該生地111の先端から所定長だけ内側の部分に第2のリング状部材15-2を接着する。さらに、第1のリング状部材15-1から先端側にはみ出した生地11の部分と、第2のリング状部材15-2から先端側にはみ出した生地111の部分とを両リング状部材15-1,15-2の間に挟むようにして、かつ、第2のリング状部材15-2を第1のリング状部材15-1に密着させるようにして、生地11の端部と生地111の端部とを接着する。このとき、2つのリング状部材15-1,15-2の間から生地11,111の端部がはみ出している場合は、そのはみ出した部分を切断するなどの端処理を行う。
【0104】
上記第1~第3の実施形態では、固定用部材として、リング状部材15,151,152またはリング状にした帯状部材15’,151’,152’を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図16に示すように、リング状でも帯状でもない複数個のブロック状部材15”により固定用部材を構成するようにしてもよい。図16の例では、第1の実施形態で示したリング状部材15,15’に代えて4つのブロック状部材15”を用い、この4つのブロック状部材15”によりイヤーパッド101の内周面またはその近傍に生地11の一部を固定している。
【0105】
なお、ブロック状部材15”を用いる場合、リング状部材15,151,152や帯状部材15’,151’,152’のように元の形状に戻る復元力を利用して生地11を固定したり、係止部材を利用してリング形状の大きさを維持することによって生地11を固定したりすることはできないので、ブロック状部材15”を隙間106の中に埋め込んで生地11を固定する。これと同様に、第2の実施形態で示した生地11’の一部や第3の実施形態で示した生地11”の一部を隙間106の中で複数のブロック状部材15”により固定するようにすることも可能である。
【0106】
また、上記第1~第3の実施形態では、生地11,11’,11”の形状が円形である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、生地11,11’,11”の形状は楕円形、三角形や四角形、あるいは五角形以上の多角形であってもよい。また、上記実施形態では、開口12-1,12-2,12-1’,12-2’,12-1”の形状が円形である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、開口12-1,12-2,12-1’,12-2’,12-1”の形状は楕円形、三角形や四角形、あるいは五角形以上の多角形であってもよい。
【0107】
また、上記第1および第2の実施形態では、生地11,11’に形成した袋状部16,16’に固定用部材を埋設する構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第3の実施形態と同様に袋状部16,16’は設けず、固定用部材と生地11,11’とが一体的となることがないように構成するようにしてもよい。
【0108】
その他、上記第1~第3の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0109】
1A,1B,1C ヘッドホンカバー
11,11’,11” 生地
12-1,12-2,12-1’,12-2’,12-1” 開口
13 平ゴム(弾性体)
15,151,152 リング状部材(固定用部材)
15’,151’,152’ 帯状部材(固定用部材)
15” ブロック状部材(固定用部材)
16 袋状部
51,52,53a,53b 係止部材
54a レール部(係止部材)
54b 脚部(係止部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16