(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】濃厚茶飲料
(51)【国際特許分類】
A23F 3/16 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
A23F3/16
(21)【出願番号】P 2017247738
(22)【出願日】2017-12-25
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【氏名又は名称】大森 未知子
(72)【発明者】
【氏名】矢島 由莉佳
(72)【発明者】
【氏名】若林 英行
(72)【発明者】
【氏名】日置 淳平
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-220055(JP,A)
【文献】特開2000-041577(JP,A)
【文献】特開2000-078946(JP,A)
【文献】特開2003-169603(JP,A)
【文献】特開2004-129669(JP,A)
【文献】特開2005-168426(JP,A)
【文献】特開2008-011834(JP,A)
【文献】特開2014-014315(JP,A)
【文献】特開2007-117043(JP,A)
【文献】特開2017-099291(JP,A)
【文献】国際公開第2008/123214(WO,A1)
【文献】特開2012-019707(JP,A)
【文献】特開2013-169152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00-5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)、(b)および(d)を満たす
容器詰め緑茶飲料:
(a)飲料中の非重合カテキン濃度が、10~80mg/100mLである
(b)飲料中のカフェイン濃度が、40~100mg/100mLであ
る
(d)飲料の可溶性固形分(Brix)が、0.45以上である。
【請求項2】
(c)飲料の粘度が、1.05mPa・s以上である、請求項1に記載の緑茶飲料。
【請求項3】
(e)非重合カテキン濃度に対する粘度の比率(粘度/非重合カテキン濃度比率)が、0.013以上である、請求項1または2に記載の緑茶飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃厚茶飲料に関し、より詳細には、容器詰め濃厚茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の嗜好が多様化し、これに応じた様々な風味や機能性を有する茶飲料が開発されている。濃厚な茶飲料は、茶飲料に含まれる各種成分の濃度が濃く、その香味が強く表れる。例えば、茶飲料に含まれるアミノ酸は飲料に旨味を付与する成分であり、アミノ酸が豊富な濃厚な茶飲料は旨味が強いという特徴を有する。一方で、茶飲料に含まれるポリフェノールは、飲料の苦味や渋味の要因となる成分でもあり、濃厚な茶飲料は苦味や渋みが強くなり、飲用が敬遠される一因ともなりうる。
【0003】
これまでにアミノ酸を高濃度で含有する茶飲料の加熱劣化臭を緩和する技術(特許文献1)が知られているが、良好な飲み口を実現した濃厚茶飲料は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、飲み応えがあり、ほどよい苦渋味が付与された濃厚茶飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、濃厚茶飲料において非重合カテキン含量を低減すると飲み応えや苦渋味が不十分になること、非重合カテキン含量が低減された濃厚茶飲料においてカフェイン濃度を所定範囲内に調整することにより、飲み応えがあり、ほどよい苦渋味が付与された濃厚茶飲料を実現できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
【0007】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]下記(a)および(b)を満たす茶飲料:
(a)飲料中の非重合カテキン濃度が、10~80mg/100mLである
(b)飲料中のカフェイン濃度が、40~100mg/100mLである。
[2](c)飲料の粘度が、1.05mPa・s以上である、上記[1]に記載の茶飲料。
[3](d)飲料の可溶性固形分(Brix)が、0.45以上である、上記[1]または[2]に記載の茶飲料。
[4](e)非重合カテキン濃度に対する粘度の比率(以下、「粘度/非重合カテキン濃度比率」ということがある)が、0.013以上である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の茶飲料。
[5]緑茶飲料である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の茶飲料。
[6]容器詰め飲料である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の茶飲料。
【0008】
本発明によれば、飲み応えがあり、ほどよい苦渋味が付与された濃厚茶飲料が提供される。本発明の茶飲料は、濃厚茶飲料でありながら、良好な飲み口を実現するものであり、消費者の多様な嗜好ニーズを満たす点で有利である。
【発明の具体的説明】
【0009】
本発明の茶飲料は、茶飲料の成分が濃い茶飲料、すなわち、濃厚な茶飲料である。本発明において茶飲料の濃厚さの程度は、飲料の粘度および可溶性固形分(Brix)を指標にして決定することができる。
【0010】
本発明の茶飲料の粘度の下限値(以上または超)は、1.05mPa・sとすることができ、好ましくは1.07mPa・s、より好ましくは1.08mPa・sである。本発明の茶飲料の粘度の上限値(以下または未満)は、特に限定されるものではないが、例えば、1.30mPa・sとすることができ、好ましくは1.25mPa・sである。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。茶飲料の粘度は、市販の落球式マイクロ粘度計を使用して測定することができる。
【0011】
本発明の茶飲料の可溶性固形分(Brix)の下限値(以上または超)は、0.45とすることができ、好ましくは0.60である。本発明の茶飲料の可溶性固形分の上限値(以下または未満)は、特に限定されるものではないが、例えば、1.8とすることができ、好ましくは1.57である。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。茶飲料の可溶性固形分は、市販の屈折糖度計を使用して測定することができる。
【0012】
本発明の茶飲料は、飲料中の非重合カテキン濃度が所定値であることを特徴とする。飲料中の非重合カテキン濃度の上限値(以下または未満)は、80mg/100mLである。飲料中の非重合カテキン濃度の下限値(以上または超)は、10mg/100mLであり、好ましくは40mg/100mLであり、さらに好ましくは60mg/100mLである。これらの上限値および下限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。茶飲料の非重合カテキン濃度は、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレートおよびエピガロカテキンガレートのそれぞれの濃度の合計量であり、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定することができる。
【0013】
本発明の茶飲料は、飲料中のカフェイン濃度が所定値であることを特徴とする。飲料中のカフェイン濃度の上限値(以下または未満)は、100mg/100mLである。飲料中のカフェイン濃度の下限値(以上または超)は、40mg/100mLであり、好ましくは60mg/100mLであり、さらに好ましくは80mg/100mLである。これらの上限値および下限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。茶飲料のカフェイン濃度は、HPLC法により測定することができる。
【0014】
本発明の茶飲料は、非重合カテキン濃度に対する粘度の比率により特定することもできる。非重合カテキン濃度は茶飲料の苦渋味成分の指標であり、粘度は茶飲料の旨み成分の指標でもあるため、この比率は、本発明の茶飲料における旨み成分の比率を示しているといえる。本発明の飲料の粘度/非重合カテキン濃度比率の下限値(以上または超)は、0.013とすることができる。本発明の飲料の粘度/非重合カテキン濃度比率の上限値(以下または未満)は、0.13とすることができる。
【0015】
本発明の茶飲料としては、特に限定されないが、本発明に適用可能な茶飲料としては、例えば、不発酵茶(例えば、緑茶、ルイボス茶)飲料、発酵茶(例えば、紅茶)飲料、半発酵茶(例えば、烏龍茶)飲料、後発酵茶(例えば、プーアル茶)飲料および穀物茶(例えば、麦茶)飲料並びにこれらの一部または全部のブレンド茶飲料が挙げられる。
【0016】
本発明の茶飲料は、通常の茶抽出液の調製に用いられている方法を用いて製造される茶抽出液やその濃縮液または希釈液から調製することができる。例えば、茶葉と水(0~100℃)を混合接触させるか、あるいは、茶エキスや茶パウダーなどの茶抽出液の濃縮物や精製物を水(0~100℃)に混合または溶解させることにより、本発明に用いられる茶抽出液を得ることができる。また、上記の茶葉と水を混合接触させて得られる茶抽出液と、上記の茶エキスや茶パウダーとを混合したものを茶抽出液として本発明の茶飲料に用いてもよい。茶葉と水を混合接触させた場合には、遠心分離や濾過などの分離手段を用いて茶葉と茶抽出液を分離することができる。また、茶抽出液の調製に際し茶葉以外の任意の原料を配合してよい。
【0017】
茶抽出液の調製に用いられる原料は、特に限定されないが、穀物など(麦、米など)やマメ科植物(ルイボスなど)の他、ツバキ科の常緑樹である茶樹カメリア・シネンシス(Camellia
sinensis var.)に属する茶葉を用いることができる。本発明の茶飲料の製造に用いられる茶葉は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではなく、煎茶、玉露、抹茶、釜炒り茶、番茶、ほうじ茶などの緑茶に代表される不発酵茶の茶葉に限らず、烏龍茶のような半発酵茶の茶葉や、紅茶のような発酵茶の茶葉、プーアル茶のような後発酵茶の茶葉なども用いることができる。本発明に用いられる茶葉としては、好ましくは緑茶葉である。本発明においてはまた、複数種類の原料および茶葉が使用されてもよい。なお、本発明において「緑茶」は、緑茶にマツリカ(茉莉花)の花の香りを着香させたジャスミン茶を包含する。
【0018】
本発明において「茶抽出液」とは、茶葉を抽出処理に付することにより得られる、抽出液を意味する。本発明に用いられる茶抽出液は、茶葉からの抽出液それ自体や、その加工品類(例えば、濃縮液体エキス、粉末エキス)などが挙げられ、従来、茶飲料の製造に用いられている茶抽出原料であれば、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0019】
茶葉の抽出処理は、特に限定されず、食品加工分野で一般的に用いられている種々の抽出方法を用いることができ、例えば、溶媒抽出、気流抽出、圧搾抽出などが包含され、必要に応じて、沈殿もしくは濾過などの固液分離、濃縮、遠心分離、乾燥(例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥)または粉末化などの処理をさらに施してもよい。
【0020】
ここで、溶媒抽出で用いられる抽出溶媒としては、水(例えば、硬水、軟水、イオン交換水および天然水)が望ましい。抽出溶媒の量は、当業者が適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、抽出溶媒が水の場合は、その量は、茶葉の1~100倍量(質量)である。
【0021】
抽出温度および時間は、当業者が適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、抽出溶媒が水の場合は、その温度および時間は、10~120℃で1分~12時間である。
【0022】
抽出処理の一例としては、茶葉を、水中に、0~90℃で、1分~24時間浸漬および攪拌し、その後、茶葉を濾過または遠心分離する方法が挙げられる。ここで、抽出時の温度や時間などの条件は、特に限定されず、茶葉の種類や量によって当業者が任意に選択し、かつ設定することができる。
【0023】
茶抽出液の調製において、茶エキスや茶パウダーなどの茶抽出液の濃縮物や精製物を用いてもよく、例えば、Value Instant Tea(Kroger社製)やポリフェノン(三井農林社製)、サンフェノン(太陽化学社製)、テアフラン(伊藤園社製)などの市販品を用いることができる。また、これらの茶濃縮物や茶精製物は、そのまままたは水で溶解もしくは希釈したものを単独で使用しても、複数の種類を混合して用いても、茶抽出液と混合して用いてもよい。
【0024】
本発明の茶飲料では、通常の飲料の製造に用いられている飲料用添加剤、例えば、酸味料、香料、色素、果汁、甘味料(高甘味度甘味料を含む)、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤)などを添加してもよい。
【0025】
本発明の茶飲料は、容器詰め飲料の形態で提供することができる。容器詰め飲料の容器とは、内容物と外気との接触を断つことができる密閉容器を意味し、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器などが挙げられる。
【0026】
本発明の茶飲料の製造は、飲料の粘度、可溶性固形分、非重合カテキン濃度およびカフェイン濃度が所定値となるように調製する以外は、飲料の製造に用いられる通常の方法に従って実施することができる。茶飲料の通常の調製方法は公知であり、例えば、茶抽出液を準備し、調合工程を経て茶飲料を製造することができる。本発明の飲料の製造においては、通常の飲料の処方設計に用いられている飲料用添加剤を添加してもよく、これら添加剤の添加時期は特に制限されない。
【0027】
ここで、本発明の茶飲料は濃厚な茶飲料であることを特徴とするが、茶抽出液の調製の際に低倍率で抽出することや、茶抽出液の希釈率を緩和することにより、飲料の粘度および飲料の可溶性固形分(Brix)を所定範囲に調整することができる。また、本発明の茶飲料は、濃厚でありながら、非重合カテキン濃度が低減されていることを特徴とするが、茶抽出液をポリビニルポリピロリドン(PVPP)などの非重合カテキンの吸着剤と接触させることにより、茶飲料の非重合カテキン濃度を低減し、所定値とすることができる(例えば、特開平9-220055号公報参照)。さらに、本発明の茶飲料は、カフェイン濃度が所定範囲であることを特徴とするが、茶葉抽出液の希釈、カフェインの除去あるいはカフェインの添加により飲料中のカフェイン濃度を所定値とすることができる。
【0028】
本発明の茶飲料の製造に当たっては、当業界に公知の製造技術を用いて製造することができ、例えば、「改訂新版ソフトドリンクス」(株式会社光琳)を参考とすることができる。
【0029】
本発明により提供される茶飲料は、抽出工程、調合工程、充填工程および殺菌工程などの工程を経て容器詰め飲料として提供することができる。例えば、調合工程で得られた茶飲料を常法に従って殺菌し、容器に充填することができる。殺菌は容器への充填前であっても充填後であってもよい。
【0030】
本発明の茶飲料の製造において殺菌処理を行う場合、食品分野で一般的に用いられている種々の殺菌方法を用いることができ、典型的には加熱殺菌法を用いることができる。使用できる殺菌方法としては、例えば、レトルト殺菌、UHT殺菌、低温殺菌、HTST殺菌などが挙げられる。これらの加熱殺菌方法は飲料の製造に通常用いられている条件で実施することができる。
【実施例】
【0031】
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0032】
例1:緑茶飲料の調製と官能評価
(1)サンプル飲料の調製
緑茶葉と、緑茶葉の乾燥質量に対して10倍質量の70℃の水を抽出溶媒として用いて6分間抽出した後、茶葉を分離し、抽出液を20℃に冷却した。次いで、抽出液に対して0質量%、1質量%、2質量%または4質量%のポリビニルポリピロリドン(アイエスピージャパン社製)を添加して15分間接触させた後、3000rpm、5分間の遠心分離を行いポリビニルピロリドンや粗大な粉砕茶組織、茶粒子などの固形分を除去した後、濾過により残存した固形物を完全に除き、抽出液A(非重合カテキン濃度:494mg/100mL、カフェイン濃度:169mg/100mL)、抽出液B(非重合カテキン濃度:135mg/100mL、カフェイン濃度:138mg/100mL)、抽出液C(非重合カテキン濃度:35mg/100mL、カフェイン濃度:156mg/100mL)および抽出液D(非重合カテキン濃度:6mg/100mL、カフェイン濃度:146mg/100mL)を得た。次いで、これらの抽出液を任意の割合で希釈および/または混合し、場合によっては非重合カテキン製剤(ポリフェノン70A、三井農林社製)を添加することにより、表3に示す所定のカフェイン濃度および所定のカテキン濃度の緑茶サンプル飲料(サンプル番号1~30)を調製した。
【0033】
(2)サンプル飲料の分析
【0034】
上記(1)で調製した飲料のカフェイン濃度(mg/100mL)は、HPLC法により測定した。具体的には、試料溶液を表1に示すHPLC分析条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供し、カフェイン濃度を測定した。
【0035】
【0036】
上記(1)で調製した飲料の非重合カテキン濃度(mg/100mL)は、HPLC法により測定した。具体的には、試料溶液を表2に示すHPLC分析条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供し、非重合カテキン濃度を測定した。
【0037】
【0038】
上記(1)で調製した飲料の可溶性固形分(Brix)は、屈折糖度計(RX-5000α、アタゴ(ATAGO)社製)を用いて測定した。上記(1)で調製した飲料の粘度(mPa・s)は、落球式マイクロ粘度計(アントンパール社製)を用いて測定した。また、上記で得られた粘度の値を用いて、非重合カテキン濃度に対する粘度の比率(粘度(mPa・s)/非重合カテキン濃度(mg/100mL))を算出した。さらに、上記(1)で調製した飲料を5℃で2日間静置保管し、分光光度計(U‐3900H、日立ハイテクサイエンス社製)を用いてOD660の吸光度を測定し、濁度を評価した。
【0039】
(3)官能評価
上記(1)で得られた飲料を官能評価に供した。評価項目は、「飲み応え」と「苦渋味」の2項目とした。ここで、「飲み応え」とは濃い茶感を口、喉で感じる食感をいい、「苦渋味」とは舌で感じる収斂する香味をいう。官能評価は訓練されたパネラー4名により以下の手順で実施した。飲み応えについて、サンプル飲料11を基準品として評点を2点と固定して官能評価を行い、香味と評点をパネラー間で共通の認識としたうえで、他のサンプル飲料について官能評価を行った。また、苦渋味について、サンプル飲料11を基準品として評点を1点と固定して官能評価を行い、香味と評点をパネラー間で共通の認識としたうえで、他のサンプル飲料について官能評価を行った。各評価項目のパネラーの評点の平均値を算出した。評価基準は以下に示した通りである。
【0040】
<飲み応え>
5点:基準品に比べとても強く感じられる
4点:基準品に比べ強く感じられる
3点:基準品に比べやや強く感じられる
2点:基準品と同等で、飲み応えをやや感じる
1点:基準品に比べ弱く感じられる
<苦渋味>
4点:基準品に比べとても強く感じられる
3点:基準品に比べ強く感じられる
2点:基準品に比べやや強く感じられちょうどよい
1点:基準品と同等で、苦渋味が弱い
【0041】
飲み応えの評価で得られた評点に基づいて、平均値が4.5以上のものを「A」、平均値が3.5以上4.5未満のものを「B」、平均値が2.5以上3.5未満のものを「C」、平均値が1.5以上2.5未満のものを「D」、平均値が1.5未満のものを「E」と評価した。また、苦渋味の評価で得られた評点に基づいて、平均値が3.5以上のものを「++」、平均値が2.5以上3.5未満のものを「+」、平均値が1.5以上2.5未満のものを「◎」、平均値が1.5未満のものを「-」と評価した。
【0042】
(4)結果
上記(1)で得られたサンプル飲料の分析値を表3に示す。
【表3】
【0043】
【0044】
【0045】
表4および表5の結果から、所定の粘度およびBrixを満たす濃厚な緑茶飲料において、非重合カテキン濃度を所定範囲内に調整し、カフェイン濃度を所定範囲内に調整することで、飲み応えがあり、ほどよい苦渋味が付与された緑茶飲料を実現できることが確認された。また、飲料中の非重合カテキン濃度が、10~80mg/100mLであり、かつ、飲料中のカフェイン濃度が、40~100mg/100mLであるサンプル飲料は、5℃で2日間静置保管後の吸光度(OD660)が0.2以下であり、容器詰め茶飲料として遜色のない濁度であることが確認された。