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  • 特許-排ガス浄化用触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20230214BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20230214BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230214BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230214BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018157951
(22)【出願日】2018-08-27
(65)【公開番号】P2020032305
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-05-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100118991
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 聡二郎
(72)【発明者】
【氏名】安田 和也
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】梶田 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 圭
(72)【発明者】
【氏名】泉 清孝
(72)【発明者】
【氏名】金 仁寿
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-020276(JP,A)
【文献】特開2005-334801(JP,A)
【文献】特開2016-026112(JP,A)
【文献】特開2012-040547(JP,A)
【文献】特開2015-093266(JP,A)
【文献】特開2016-182586(JP,A)
【文献】特開2007-038072(JP,A)
【文献】特開2010-058069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
53/86-53/90
53/94
53/96
B01J 21/00-38/74
F01N 3/00
3/02
3/04-3/38
9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが通過するガス流路を区画する基材と、
前記基材上に設けられ且つ酸素吸蔵放出材料を含有するOSC層と、
前記OSC層上に設けられ且つRhを含有する下地触媒層と、
前記基材上に前記OSC層及び前記下地触媒層を介して設けられた触媒層であって、前記ガス流路の上流側に設けられ且つPdを含有する上流側触媒層、及び、前記基材上に前記OSC層及び前記下地触媒層を介して設けられ、前記ガス流路の下流側に前記上流側触媒層と距離Lcだけ離間して設けられ且つRhを含有する下流側触媒層を有する触媒層と、
を少なくとも備え
前記下流側触媒層中のRh含有量が、前記下地触媒層中のRh含有量よりも多い
排ガス浄化用触媒。
ここで、Lcは、前記排ガスの流れ方向の断面視で前記基材の全長を基準として0%を超え、15%未満である。
【請求項2】
前記上流側触媒層は、前記排ガスの流れ方向の断面視で前記基材の全長に対して30~70%の範囲で前記OSC層及び前記下地触媒層を覆うように設けられており、
前記下流側触媒層は、前記排ガスの流れ方向の断面視で前記基材の全長に対して70~30%の範囲で前記OSC層及び前記下地触媒層を覆うように設けられている
請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記下地触媒層中のRh含有量に対する前記下流側触媒層中のRh含有量の割合(下流側触媒層中Rh含有量/下地触媒層中Rh含有量)が、1超5以下である
請求項2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記下地触媒層は、第1母材粒子及び前記第1母材粒子上に担持された前記Rhを有する第1複合触媒粒子を少なくとも含有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記上流側触媒層は、第2母材粒子及び前記第2母材粒子上に担持された前記Pdを有する第2複合触媒粒子を少なくとも含有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記下流側触媒層は、第3母材粒子及び前記第3母材粒子上に担持された前記Rhを有する第2複合触媒粒子を少なくとも含有する
請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関し、特にパラジウム及びロジウムを必須成分として用いた、積層構造の触媒層を備える排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)等の浄化において、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ等の白金族元素(PGM:Platinum Group Metal)を触媒活性成分として用いた三元触媒(TWC:Three-Way Catalyst)が広く用いられている。
【0003】
従来、比較的に高価なPGMの使用量を削減するとともに高い触媒活性を確保するため、微細な粒子の状態で触媒活性成分を基材上に担持させた複合粒子構造の排ガス浄化用触媒が広く用いられている。具体的には、アルミナ、ジルコニア、セリア等の金属酸化物からなる母材粒子と、この母材粒子上に担持された白金族元素とを有する排ガス浄化用触媒等が例示される。
【0004】
この種の排ガス浄化用触媒は、高温の排ガスを供給して暖機時間を短縮し、触媒活性温度まで早期に昇温させて高効率な浄化性能を発揮させるために、エンジンの直下に設けられることが多い。しかし、例えばエンジン始動初期では排ガスの温度が低いため、目的とする触媒活性が得られ難い。また近年では、エンジンの停止と運転を頻繁に繰り返す車両が多くなってきている。そのため、触媒の暖機性の向上及び低温浄化性能の向上が求められてきている。触媒の低温浄化性能の向上のためには、触媒貴金属の担持量を増やすことが考えられるが、コストアップにつながるという潜在的な問題がある。
【0005】
かかる課題に対して、従来から種々の提案がなされており、例えばパラジウム及びロジウムを必須成分として用いた、積層構造の触媒層を備える排ガス浄化用触媒等が開発されている。具体的には、特許文献1及び2には、ハニカム基材上に、パラジウム触媒層、ロジウム触媒層、及びパラジウム触媒層をこの順に有する3層積層構造の触媒層を備える排ガス浄化用触媒が開示されている。
【0006】
また、排ガス流路において上流側と下流側で別個の触媒層をハニカム基材上に配置したゾーンコート触媒等も開発されている。例えば特許文献3には、ハニカム基材等の表面に、パラジウム領域とこれに隣接配置されたロジウム領域を有する触媒層を備える排気ガス浄化用触媒が開示されている。また、特許文献4には、ハニカム基材等の表面に形成されたPd及びPtの少なくとも1種を含む下触媒層と、下触媒層の表面であって排ガスのガス流れ方向の上流側を被覆するPdを含む前段上触媒層と、下触媒層の表面であって前段上触媒層よりもガス流れ方向の下流側を被覆するRhを含む後段上触媒層とから構成され、触媒層のPd担持密度、コート長さ、及びコート量が調整された、排ガス浄化用触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2010-501337号公報
【文献】得表2012-525955号公報
【文献】特開2015-093266号公報
【文献】特開2016-026112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動車等の内燃機関から排出される排ガスは、始動時等の触媒温度が低い状態では、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)が多く排出される。浄化性能を向上させるためには、触媒の早期昇温と触媒の低温浄化性能の向上が重要である。すなわち触媒の昇温性能、換言すれば触媒の暖まりやすさである暖機性能を向上することで、触媒を早期活性化させることができる。また、低温浄化性能を向上させることで、排ガス中の有害物質を高効率で浄化させることができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2には、三元触媒の浄化性能が改善する旨の単なる開示に留まり、自動車等の内燃機関から排出される排ガスの低温浄化性能や暖機特性に関しては十分な検討がなされていない。
【0010】
また、特許文献3には、触媒層をゾーンコートすることで、さらに特許文献4には、触媒層のコート長さを最適化し、触媒の低温浄化性能に重要な触媒の温まりやすさ、すなわち暖機性能を向上させることで、排ガス浄化性能が向上する旨の開示がある。しかしながら、これらの特許文献3及び4においても、ゾーンコートの重なりの影響については、十分な検討がなされていない。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、比較的に少ない貴金属使用量でありながらも、暖機性能及び低温浄化性能がさらに改善された、排ガス浄化用触媒等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、所定の積層構造を有するゾーンコート触媒を採用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
(1)排ガスが通過するガス流路を区画する基材と、前記基材上に直接、または、他層を介して設けられた触媒層であって、前記ガス流路の上流側に設けられ且つPdを含有する上流側触媒層、及び、前記基材上に直接、または、前記他層を介して設けられ、前記ガス流路の下流側に前記上流側触媒層と距離Lcだけ離間して設けられ且つRhを含有する下流側触媒層を有する触媒層と、を少なくとも備える、排ガス浄化用触媒。
ここで、Lcは、前記排ガスの流れ方向の断面視で前記基材の全長を基準として0%を超え、15%未満である。
【0014】
(2)前記上流側触媒層は、前記排ガスの流れ方向の断面視で前記基材の全長に対して30~70%の範囲で前記基材または前記他層を覆うように設けられており、前記下流側触媒層は、前記排ガスの流れ方向の断面視で前記基材の全長に対して70~30%の範囲で前記基材または前記他層を覆うように設けられている(1)に記載の排ガス浄化用触媒。
(3)前記下流側触媒層中のRh含有量が、前記下地触媒層中のRh含有量よりも多い(1)又は(2)に記載の排ガス浄化用触媒。
【0015】
(4)前記基材上に設けられ且つ酸素吸蔵放出材料を含有するOSC層と、前記OSC層上に設けられ且つRhを含有する下地触媒層と、をさらに備える(1)~(3)のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
(5)前記下地触媒層は、第1母材粒子及び前記第1母材粒子上に担持された前記Rhを有する第1複合触媒粒子を少なくとも含有する(4)に記載の排ガス浄化用触媒。
(6)前記下地触媒層は、酸素吸蔵放出材料をさらに含有する(4)又は(5)に記載の排ガス浄化用触媒。
【0016】
(7)前記上流側触媒層は、第2母材粒子及び前記第2母材粒子上に担持された前記Pdを有する第2複合触媒粒子を少なくとも含有する(1)~(6)のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
(8)前記上流側触媒層は、酸素吸蔵放出材料をさらに含有する(7)に記載の排ガス浄化用触媒。
【0017】
(9)前記下流側触媒層は、第3母材粒子及び前記第3母材粒子上に担持された前記Rhを有する第2複合触媒粒子を少なくとも含有する(1)~(8)のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
(10)前記下流側触媒層は、酸素吸蔵放出材料をさらに含有する(9)に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、比較的に少ない貴金属使用量でありながらも、暖機性能及び低温浄化性能がさらに改善された排ガス浄化用触媒等を実現することができる。そして、本発明の排ガス浄化用触媒等は、その組成及び構造に基づいて、排ガス中のNOx、CO、HC等を削減する三元触媒(TWC:Three Way Catalyst)として特に好適に用いることができ、始動低温時、A/F変動時、暖機時等において優れた浄化性能を有する三元触媒を実現することができ、暖機性能、低温浄化性能、A/F特性のすべてを高レベルで発現し得る。また、本発明の排ガス浄化用触媒等は、エンジン直下型触媒コンバーターやタンデム配置の直下型触媒コンバーター等に搭載することができ、これにより、キャニングコストの削減などを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態の排ガス浄化用触媒の概略構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。但し、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。すなわち本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、例えば「1~100」との数値範囲の表記は、その上限値「100」及び下限値「1」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態の排ガス浄化用触媒100の概略構成を示す模式図である。この排ガス浄化用触媒100は、排ガスが通過するガス流路を区画する基材としての触媒基材11と、この触媒基材11の少なくとも一方の面側に設けられたOSC層21と、このOSC層21の上面側に設けられた下地触媒層31と、この下地触媒層31の上面側に設けられた触媒層41と、を少なくとも備えている。すなわち、本実施形態において、OSC層21、下地触媒層31、及び触媒層41をこの順に少なくとも備える積層構造体が、触媒基材11上に設けられている。そして、触媒層41は、ガス流路の上流側に設けられた上流側触媒層41aとガス流路の下流側に設けられた下流側触媒層41bとを有し、上流側触媒層41aと下流側触媒層41bは距離Lcだけ離間して並列配置されている。なお、図中の矢印は、排ガスの流れ方向を示す。以下、各構成要素について詳述する。
【0022】
触媒基材11は、上述した積層構造体(積層体)を支持するための触媒部材である。触媒基材11上に触媒層を設けた一体構造型触媒部材として用いることで、装置への組み込みが容易となる等、種々の用途への適用可能性が増大する。例えば排ガス浄化用途においては、触媒基材11としてハニカム構造基材等を用い、ガス流が通過する流路内にこの一体構造型触媒部材を設置し、ハニカム構造基材のセル内にガス流を通過させることで、高効率に排ガス浄化を行うことができる。
【0023】
ここで用いる触媒基材11としては、当業界で公知のものを適宜選択することができる。代表的には、コージェライト、シリコンカーバイド、窒化珪素等のセラミックモノリス基材、ステンレス製等のメタルハニカム基材、ステンレス製等のワイヤメッシュ基材、スチールウール状のニットワイヤ基材等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、その形状も、特に限定されず、例えば角柱状、円筒状、球状、ハニカム状、シート状等の任意の形状を選択可能である。これらは、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0024】
ここで、本明細書において、「触媒基材11の少なくとも一方の面側に設けられた」とは、図1に示すように触媒基材11の上面側の面(又は下面側の面)のみに積層触媒が設けられた態様、触媒基材11の上面側及び下面側の面に触媒層21が設けられた態様、のいずれもを包含する意味である。このとき、「一方の面側に設ける」とは、触媒基材11と触媒層21とが直接載置された態様、触媒基材11と触媒層21とが任意の他の層を介して離間して配置された態様、の双方を含む意味で用いている。すなわち、触媒基材11と積層触媒との間に、任意の他の層(例えばプライマー層、接着層等)が介在していてもよい。
【0025】
上述した積層構造体(積層体)は、OSC層21、下地触媒層31、及び触媒層41をこの順に少なくとも備える積層構造を有する。ここで、本明細書において、「この順に少なくとも備える」とは、OSC層21、下地触媒層31、及び触媒層41がこの順に配置されていることを意味し、この順に配列されている限り、これらの層間に任意の他の層(例えばプライマー層、接着層等)が介在していてもよい。すなわち、触媒層21の積層構造は、OSC層21、下地触媒層31、及び触媒層41が直接載置された態様(OSC層21/下地触媒層31/触媒層41)、OSC層21、下地触媒層31、及び触媒層41が任意の他の層を介して離間して配置された態様(例えば、OSC層21/他の層/下地触媒層31/他の層/触媒層41、OSC層21/他の層/下地触媒層31/触媒層41、OSC層21/下地触媒層31/他の層/触媒層41)のいずれであってもよい。
【0026】
本実施形態において、OSC層21は、酸素吸蔵放出材料を含有する層である。このOSC層21を触媒基材11上に設けることで、排ガス浄化用触媒100の酸素吸放出能(以下、「OSC能」と略記する場合がある。)を底上げでき、所望の浄化性能を具備させることができる。ここで用いる酸素吸蔵放出材料は、酸素吸放出能(Oxygen Storage Capacity)を有するものである。具体的には、セリア系酸素吸蔵放出材料(例えばセリア系(複合)酸化物)、ジルコニア系高耐熱性材料(例えばジルコニア系(複合)酸化物)が挙げられるが、これらに特に限定されない。酸素吸蔵放出材料は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0027】
なお、本明細書において、「セリア系(複合)酸化物」は、セリア系酸化物及びセリア系複合酸化物の双方を包含する用語として用いており、具体的には、セリア(CeO2)又はこれに他元素がドープされた複合酸化物或いは固溶体を包含する概念として用いている。同様に、「ジルコニア系(複合)酸化物」は、ジルコニア系酸化物及びジルコニア系複合酸化物の双方を包含する用語として用いており、具体的には、ジルコニア(ZrO2)又はこれにセリウム以外の他元素がドープされた複合酸化物或いは固溶体を包含する概念として用いている。なお、セリウム及びジルコニウムの双方を含有するセリウム-ジルコニウム系複合酸化物は、前者のセリア系複合酸化物に該当するものとし、後者のジルコニア系複合酸化物には該当しないものとして取り扱う。
【0028】
セリア系(複合)酸化物の具体例としては、酸化セリウム(IV)、セリウム-セリウムを除く希土類元素複合酸化物、セリウム-遷移元素複合酸化物、セリウム-セリウムを除く希土類元素-遷移元素複合酸化物等が挙げられる。これらの中でも、セリア系酸素吸蔵放出材料としては、酸素吸放出能及び耐熱性のバランスに優れるセリア-ジルコニア系複合酸化物が好ましく、セリウム及びジルコニウム以外の他の希土類元素が固溶したセリア-ジルコニア系複合酸化物がより好ましい。なお、セリア系(複合)酸化物としては、Ce及びZrの質量割合が、酸化物(CeO2及びZrO2)換算で、合計50質量%以上95質量%以下のものが好ましく用いられる。
【0029】
また、ジルコニア系(複合)酸化物の具体例としては、酸化ジルコニウム(IV)、ジルコニウム-セリウム及びジルコニウムを除く希土類元素複合酸化物、ジルコニウム-遷移元素複合酸化物、ジルコニウム-セリウム及びジルコニウムを除く希土類元素-遷移元素複合酸化物等が挙げられる。これらの中でも、ジルコニア系高耐熱性材料としては、耐熱性や靱性等のバランスの観点等から、セリウム及びジルコニウム以外の他の希土類元素が固溶したジルコニア系複合酸化物がより好ましい。なお、ジルコニア系(複合)酸化物としては、Zrの質量割合が、酸化物(ZrO2)換算で、50質量%以上80質量%以下のものが好ましく用いられる。
【0030】
ここで、セリア系(複合)酸化物やジルコニア系(複合)酸化物は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロビウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム等の、セリウム及びジルコニウム以外の希土類元素(以降において、「他の希土類元素」と称する場合がある。)を含んでいてもよい。これらの中でも、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジムが好ましい。他の希土類元素は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。他の希土類元素が含まれる場合、その含有割合は、特に限定されないが、母材粒子の総量に対して、上述した他の希土類元素の酸化物換算の総量(例えばLa23、Nd23、Pr511等の総和)で、0.1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
また、セリア系(複合)酸化物やジルコニア系(複合)酸化物は、クロム、コバルト、鉄、ニッケル、チタン、マンガン及び銅等の遷移元素を含んでいてもよい。遷移元素は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。遷移元素が含まれる場合、その含有割合は、特に限定されないが、母材粒子の総量に対して、上述した遷移元素の酸化物換算の総量(例えばFe23、TiO2等の総和)で、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
なお、上記のセリア系(複合)酸化物及びジルコニア系(複合)酸化物において、セリウムやジルコニウムの一部が、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属元素や、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属元素等で置換されていてもよい。ここで、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素は、それぞれ1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び割合で用いることができる。また、上記のセリア系(複合)酸化物及びジルコニア系(複合)酸化物は、ジルコニア鉱石中に通常1~2質量%程度含まれているハフニウム(Hf)を不可避不純物として含有していても構わない。
【0033】
上述した酸素吸蔵放出材料は、各種グレードの市販品を用いることができる。例えば、上述した組成を有する母材粒子は、当業界で公知の方法で製造することもできる。これらの製造方法は、特に限定されないが、共沈法やアルコキシド法が好ましい。
【0034】
共沈法としては、例えば、セリウム塩及び/又はジルコニウム塩と、必要に応じて配合する他の希土類金属元素や遷移元素等とを所定の化学量論比で混合した水溶液に、アルカリ物質を添加して加水分解させ或いは前駆体を共沈させ、その加水分解生成物或いは共沈物を焼成する製法が好ましい。ここで用いる各種塩の種類は、特に限定されない。一般的には、塩酸塩、オキシ塩酸塩、硝酸塩、オキシ硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等が好ましい。また、アルカリ性物質の種類も、特に限定されない。一般的には、アンモニア水溶液が好ましい。アルコキシド法としては、例えば、セリウムアルコキシド及び/又はジルコニウムアルコキシドと、必要に応じて配合する他の希土類金属元素や遷移元素等とを所定の化学量論比で混合した混合物を加水分解し、その後に焼成する製法が好ましい。ここで用いるアルコキシドの種類は、特に限定されない。一般的には、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシドや、これらのエチレンオキサイド付加物等が好ましい。また、希土類金属元素は、金属アルコキシドとして配合しても、上述した各種塩として配合してもよい。
【0035】
その後に行う焼成処理の焼成条件は、常法にしたがえばよく、特に限定されない。焼成雰囲気は、酸化性雰囲気、還元性雰囲気、大気雰囲気のいずれの雰囲気でもよい。焼成温度及び処理時間は、所望する組成及びその化学量論比によって変動するが、生産性等の観点からは、一般的には、150℃以上1300℃以下で1~12時間が好ましく、より好ましくは350℃以上800℃以下で2~4時間である。なお、高温焼成に先立って、真空乾燥機等を用いて減圧乾燥を行い、50℃以上200℃以下で約1~48時間程度の乾燥処理を行うことが好ましい。
【0036】
上述した酸素吸蔵放出材料の平均粒子径(D50)は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、大きな比表面積を保持させるとともに耐熱性を高めて自身の触媒活性サイトの数を増大させる等の観点から、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましく、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、酸素吸蔵放出材料の平均粒子径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社製、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-3100等)で測定されるメディアン径を意味する。
【0037】
OSC層21は、上述した酸素吸蔵放出材料を含有する限り、他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、当業界で公知の各種添加剤、例えばベーマイトやアルミナゾル等のバインダー;非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の分散安定化剤;pH調整剤;粘度調整剤;PdやRhやPt等の白金族元素等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの公知の各種添加剤の詳細については、各触媒層の項で後述する。また、OSC層21は、他の成分として当業界で公知の触媒や助触媒等を含んでいてもよい。
【0038】
OSC層21中の酸素吸蔵放出材料の含有割合は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、OSC層21の総量に対して、50質量%以上100質量%以下が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0039】
また、OSC層21の塗工量(コート量)は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、圧力損失、エンジン出力、燃費等の影響を考慮すると、触媒基材11の単位体積(1L)あたり、10~100gが好ましく、より好ましくは12~80g、さらに好ましくは15~60gである。
【0040】
ここで、本明細書において、「触媒基材11の単位体積(1L)あたり(基材1Lあたり)」とは、「触媒基材11(基材)の純体積のみならず、基材の内部に形成されている空隙の容積も含めた、全体の嵩容積1Lあたり」を意味する。また、触媒基材11(基材)の内部にセルが区画形成されている場合には、「触媒基材11(基材)の純体積及び空隙の容積に、セルの容積も含めた、全体の嵩容積1L」を意味する。以降において、基材1Lあたりの各成分の塗工量(コート量)は、この(g/L)で表記する場合がある。
【0041】
一方、下地触媒層31は、Rhを含有する触媒層である。この下地触媒層31をOSC層21上に設けることで、A/F変動時の排ガス浄化用触媒100の浄化性能を底上げでき、所望の浄化性能を具備させることができる。
【0042】
本実施形態において、下地触媒層31は、第1母材粒子と、この第1母材粒子上に少なくとも担持された触媒活性粒子としてロジウムとを有する第1複合触媒粒子を少なくとも含有する。下地触媒層31中に含有される白金族元素としては、A/F変動時の浄化性能を向上させる観点から、少なくともロジウムが必須とされる。本実施形態では、第1母材粒子としてアルミナが用いられており、第1複合触媒粒子としてRh担持アルミナが用いられている。ここで第1母材粒子は、触媒活性粒子を高分散に担持する母材粒子である。
【0043】
一方、触媒層41は、ガス流路の上流側に設けられた上流側触媒層41aと、この上流側触媒層41aの下流側に設けられた下流側触媒層41bとを有するゾーンコート層である。Pdを含有する上流側触媒層41aとRhを含有する下流側触媒層41bとがこのように配置されたゾーンコート層を採用することにより、暖機性能と低温浄化性能とを高次元で両立することができる。
【0044】
本実施形態において、上流側触媒層41aは、第2母材粒子と、この第2母材粒子上に少なくとも担持された触媒活性粒子としてパラジウムとを有する第2複合触媒粒子を少なくとも含有する。上流側触媒層41a中に含有される白金族元素としては、暖機性能を向上させる観点から、少なくともパラジウムが必須とされる。本実施形態では、第2母材粒子としてアルミナが用いられており、第2複合触媒粒子としてPd担持アルミナが用いられている。ここで第2母材粒子は、触媒活性粒子を高分散に担持する母材粒子である。
【0045】
また、本実施形態において、下流側触媒層41bは、第3母材粒子と、この第3母材粒子上に少なくとも担持された触媒活性粒子としてロジウムとを有する第3複合触媒粒子を少なくとも含有する。下流側触媒層41b中に含有される白金族元素としては、低温浄化性能を向上させる観点から、少なくともロジウムが必須とされる。本実施形態では、第3母材粒子としてアルミナが用いられており、第3複合触媒粒子としてRh担持アルミナが用いられている。ここで第3母材粒子は、触媒活性粒子を高分散に担持する母材粒子である。
【0046】
上述した白金族元素を担持する第1~3母材粒子としては、要求性能に応じて当業界で公知のものから適宜選択することができ、その種類は特に限定されない。例えば、シリカ;ベーマイト;アルミナ(α-Al23、δ-Al23、γ-Al23、δ-Al23、η-Al23、θ-Al23);シリカ-アルミナ、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-ボリア等のアルミナを含む複合酸化物;酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化プラセオジム等の金属酸化物乃至は金属複合酸化物;ペロブスカイト型酸化物;バリウム化合物、アナターゼ型チタニア、ゼオライト等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、基材としては、BET比表面積が大きな多孔質粒子が好ましい。具体的には、アルミナ、シリカ、ベーマイト及びシリカ-アルミナ等が挙げられる。アルミナの例としては、γ-アルミナ、δ-アルミナ、及びθ-アルミナが挙げられる。シリカには、種々の異なる相変態を有する結晶性シリカの他、無定形、ガラス状、及びコロイド状シリカ等がある。シリカは、一般に、アルミナに比べBET比表面積が高く、白金族元素が高度に分散される。シリカ-アルミナは、結晶性のものと非結晶性のものがある。シリカ-アルミナにおいて、Si/Al比は様々であり、用途に合わせて、適宜設定される。チタニアの例としては、アナターゼ型のチタニアが挙げられる。結晶性のゼオライトの例としては、ZSM型ゼオライト及びやβ型ゼオライト等が挙げられる。母材粒子は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0047】
第1~3母材粒子の平均粒子径(D50)は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、大きな比表面積を保持させるとともに耐熱性を高めて自身の触媒活性サイトの数を増大させる等の観点から、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましく、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、第1~3母材粒子の平均粒子径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社製、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-3100等)で測定されるメディアン径を意味する。なお、上述した第1~3母材粒子は、各種グレードの市販品を用いることができる。例えば、上述した組成を有する母材粒子は、当業界で公知の方法で製造することもできる。
【0048】
各触媒層31,41a,41bは、上述した第1~3母材粒子以外に、上述した白金族元素や貴金属元素を担持可能な母材粒子(以下、「他の母材粒子」と称する場合がある。)を含んでいてもよい。他の母材粒子としては、例えば、シリカ;アルミナ;シリカ-アルミナ、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-ボリア等のアルミナを含む安定化複合酸化物;ゼオライト;酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、チタニア、セリア-ジルコニア、希土類元素及び/又は遷移元素がドープされたジルコニアやセリア-ジルコニア等の複合酸化物等の金属酸化物乃至は金属複合酸化物又はこれらに希土類元素や遷移元素等をドープした安定化複合酸化物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの素材は、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらの中でも、比表面積が50~300m2/g、好ましくは100~200m2/gのγ-アルミナが好適に用いられる。なお、他の母材粒子は、上述した白金族元素が担持されていても、担持されていなくてもよい。
【0049】
より具体的には、下地触媒層31においては、ロジウムの塗工量(コート量)は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、触媒基材11の単位体積(1L)あたりの貴金属量換算で、0.01~0.4gが好ましく、より好ましくは0.03~0.3g、さらに好ましくは0.05~0.2gである。
【0050】
また、上流側触媒層41aにおいて、パラジウムの塗工量(コート量)は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、触媒基材11の単位体積(1L)あたりの貴金属量換算で、1~20gが好ましく、より好ましくは2~15g、さらに好ましくは4~10gである。
【0051】
さらに、下流側触媒層41bにおいて、ロジウムの塗工量(コート量)は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、触媒基材11の単位体積(1L)あたりの貴金属量換算で、0.10~0.5gが好ましく、より好ましくは0.13~0.45g、さらに好ましくは0.15~0.40gである。
【0052】
一方、排ガス浄化用触媒100中(OSC層21及び各触媒層31,41a,41b)に含まれるPdの全担持量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、触媒基材11の単位体積(1L)あたりの貴金属量換算で、基材1Lあたり合計で1.0~10.0gが好ましく、より好ましくは、1.2~8g、さらに好ましくは1.5~5gである。
【0053】
また、排ガス浄化用触媒100中(OSC層21及び各触媒層31,41a,41b)に含まれるRhの全担持量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、触媒基材11の単位体積(1L)あたりの貴金属量換算で、基材1Lあたり合計で0.1~0.5gが好ましく、より好ましくは、0.15~0.4g、さらに好ましくは0.2~0.3gである。
【0054】
ここで、各触媒層31,41bに含まれるロジウムの質量割合は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、白金族元素の使用量を比較的に低く抑えるとともに高い触媒性能を得る観点から、下流側触媒層41b中のRh含有量が、下地触媒層31中のRh含有量よりも多いことが好ましい。具体的には、下流側触媒層41bのRh含有量/下地触媒層31中のRh含有量が、1超5以下が好ましく、より好ましくは1.1以上4以下、さらに好ましくは1.2以上3以下である。
【0055】
各触媒層31,41a,41bは、上述したそれぞれ必須の白金族元素及び必要に応じて配合する第1~第3母材粒子を含有する限り、他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、当業界で公知の各種添加剤、例えばバインダー;非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の分散安定化剤;pH調整剤;粘度調整剤;Pd、Rh、Pt等のそれぞれ必須の白金族元素以外の白金族元素;アルカリ金属;アルカリ土類金属元素等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0056】
バインダーとしては、例えば、ベーマイト、アルミナゾル、チタニアゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル等の種々のゾルが挙げられる。また、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等の可溶性の塩もバインダーとして使用することができる。その他、酢酸、硝酸、塩酸、硫酸等の酸も、バインダーとして使用することができる。なお、バインダーの使用量は、特に限定されないが、各触媒層31,41a,41bの総量に対して、合計でそれぞれ0.01~15質量%が好ましく、合計でそれぞれ0.05~10質量%がより好ましく、合計でそれぞれ0.1~8質量%がさらに好ましい。また、各触媒層31,41a,41bは、上述した成分以外に、当業界で公知の触媒や助触媒、各種添加剤を含有していてもよい。
【0057】
また、添加剤としてBa含有化合物を使用することもできる。Ba含有化合物を配合することで、耐熱性の向上、及び触媒性能の活性化を期待できる。Ba含有化合物としては、硫酸塩、炭酸塩、複合酸化物、酸化物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。より具体的には、BaO、Ba(CH3COO)2、BaO2、BaCO3、BaZrO3、BaAl24等が挙げられる。なお、Ba含有化合物の使用量は、特に限定されないが、各触媒層31,41a,41bの総量に対して、合計でそれぞれ1~20質量%が好ましく、合計でそれぞれ2~15質量%がより好ましく、合計でそれぞれ3~13質量%がさらに好ましい。
【0058】
ここで、各触媒層31,41a,41bは、上述した第1~3母材粒子以外に、他の母材粒子として或いは非母材粒子として、酸素吸放出能(Oxygen Storage Capacity)を有する酸素吸蔵放出材料を含有することが好ましい。各触媒層31,41a,41bが酸素吸蔵放出材料を含有することで、排ガス浄化用触媒100のOSC能を補強することができ、また、A/F変動時でも浄化性能が高められる傾向にある。なお、この併用可能な酸素吸蔵放出材料としては、セリア系酸素吸蔵放出材料やジルコニア系高耐熱性材料が好ましく用いられる。ここで、併用可能な酸素吸蔵放出材料の具体例については、上述したOSC層で説明したものと同様であり、ここでの重複した説明は省略する。
【0059】
また、各触媒層31,41a,41bが他の母材粒子や非母材粒子を含有する場合、これらの含有割合は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、各触媒層31,41a,41bの総量に対して、それぞれ1質量%以上45質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上35質量%以下である。
【0060】
下地触媒層31の塗工量(コート量)は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、圧力損失、エンジン出力、燃費等の影響を考慮すると、触媒基材11の単位体積(1L)あたり、10~80gが好ましく、より好ましくは20~70g、さらに好ましくは30~60gである。
【0061】
上流側触媒層41aの塗工量(コート量)は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、圧力損失、エンジン出力、燃費等の影響を考慮すると、触媒基材11の単位体積(1L)あたり、20~100gが好ましく、より好ましくは30~80g、さらに好ましくは40~60gである。
【0062】
下流側触媒層41bの塗工量(コート量)は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、圧力損失、エンジン出力、燃費等の影響を考慮すると、触媒基材11の単位体積(1L)あたり、20~120gが好ましく、より好ましくは30~100g、さらに好ましくは40~100gである。
【0063】
また、OSC層21及び各触媒層31,41a,41bの合計塗工量(合計コート量)は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、圧力損失、エンジン出力、燃費等の影響を考慮すると、触媒基材11の単位体積(1L)あたり、合計で100~200gが好ましく、より好ましくは120~180g、さらに好ましくは140~160gである。このとき、積層構造体の上層側の方が、排ガス成分と接触し易いため、塗工量は、OSC層21より下地触媒層31が多くなっていることが好ましく、また、下地触媒層31より触媒層41が多くなっていることが好ましい。
【0064】
本実施形態の排ガス浄化用触媒100においては、上述した積層構造を有し、最上層(最表層)が上流側触媒層41a及び下流側触媒層41bのゾーンコート層であるゾーンコート積層触媒を採用している。かかる構成を採用することにより、比較的に少ない貴金属使用量でありながらも、暖機性能、低温浄化性能、A/F特性のすべてを高レベルで発現し得る排ガス浄化用触媒100を実現している。触媒を早期に温める暖機性能を上流側触媒層41aが担保し、下流側触媒層41bでは優れた低温浄化性能を提供し、さらに下地触媒層31によりA/F変動時の浄化性能を、またOSC層21によりOSC能の底上げをそれぞれ担うことにより、優れた排ガス浄化性能が発揮されているものと推察される。
【0065】
このとき、上流側触媒層41a及び下流側触媒層41bの塗工割合は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。貴金属使用量を比較的に低く保ち、上流側触媒層41aによる暖機性能を十分に発揮させるとともに、下流側触媒層41bの設置スペースを十分に確保して優れた低温浄化性能やA/F特性を発揮させる観点から、上流側触媒層41aの塗布長さLaは、排ガスの流れ方向の断面視で、触媒基材11の全長Lに対して30~70%の範囲であることが好ましく、より好ましくは35~65%であり、さらに好ましくは37~55%であり、下流側触媒層41bの塗布長さLbは、排ガスの流れ方向の断面視で、触媒基材11の全長Lに対して70~30%の範囲が好ましく、より好ましくは65~35%であり、さらに好ましくは63~45%である。なお、以降においても、塗布長さLa,Lbは、触媒基材11の全長Lに対する割合(%)として記載することがある。
【0066】
ここで、上流側触媒層41aと下流側触媒層41bとが層の厚み方向に重なるように形成されていると、その重なった領域は厚み方向に隆起した隆起部となり、触媒量が局所的に多くなってしまい、その結果、触媒の昇温性が低下することが判明した。また、上流側触媒層41aと下流側触媒層41bとの間に厚み方向に隆起した部分があると、下流側触媒層41bへのガスあたりが悪化するという問題も生じる。一方で、上流側触媒層41aと下流側触媒層41bとが離れすぎていると、ガス流れ方向の触媒塗布長さが短くなり、触媒へのガスあたり低下にともない浄化性能が低下する。そのため、これらの触媒昇温性及び触媒へのガスあたりの観点から、下地触媒層31上に並列配置される上流側触媒層41aと下流側触媒層41bとは、所定の距離Lcだけ離間して配置されていることが好ましい。このとき、距離Lcは、触媒基材11の全長Lに対して、0.5~15%の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1.0~14.5%の範囲内であり、さらに好ましくは1.5~14.2%の範囲内である。
【0067】
なお、上述した上流側触媒層41aと下流側触媒層41bの離間状態及び離間した距離Lcは、例えば透過型X線装置により確認することができる。具体的には、排ガス浄化用触媒100の側面或いは周方向からX線を照射して画像を得て、その画像において離間状態及び離間した距離Lcを確認することができる。離間した距離Lcは、一方の側面或いは外周側面から他方の側面或いは外周側面に向けて、画像を幅方向に4分割したときにおける、1/4の位置、1/2の位置(中心軸)、3/4の位置の3点の平均値として算出した。
【0068】
上述した層構成を有する排ガス浄化用触媒100は、例えば、上述したセラミックモノリス基材等の触媒基材11上に、常法にしたがってOSC層21及び各触媒層31,41a,41bを設けることで製造可能である。例えば、触媒基材11の表面に、OSC層21及び各触媒層31,41a,41bのスラリー状混合物を順次被覆(担持)させることで、本実施形態の排ガス浄化用触媒100を得ることができる。触媒基材11へのスラリー状混合物の付与方法は、常法にしたがって行えばよく、特に限定されない。各種公知のコーティング法、ウォッシュコート法、ゾーンコート法を適用することができる。そして、スラリー状混合物の付与後においては、常法にしたがい乾燥や焼成を行うことができる。
【0069】
具体例としては、例えば上述した酸素吸蔵放出材料と水系媒体と必要に応じてバインダーやBa含有化合物、他の母材粒子、他の触媒、助触媒、OSC材、バインダー、白金族元素、各種添加剤等とを所望の配合割合で混合してOSC層21用のスラリー状混合物を調製し、また、例えば上述した第1~第3複合触媒粒子と水系媒体と必要に応じてバインダーやBa含有化合物、他の母材粒子、他の触媒、助触媒、OSC材、バインダー、各種添加剤等とを所望の配合割合で混合して各触媒層31,41a,41b用のスラリー状混合物を調製し、得られたOSC層21用のスラリー状混合物をハニカム構造基材等の触媒基材11の表面に付与し、乾燥及び焼成することで、触媒基材11上にOSC層21を設けることができる。次に、同様にして、各触媒層31,41a,41b用のスラリー状混合物を順次塗布し、乾燥及び焼成することで、触媒基材11上に、OSC層21、下地触媒層31、及び触媒層41(上流側触媒層41a及び下流側触媒層41b)を設けることができる。このとき、例えば触媒基材11の排ガスのガス流路の上流側から塗布長さLaだけ上流側触媒層41a用のスラリー状混合物を塗布し、触媒基材11の排ガスのガス流路の下流側から塗布長さLbだけ下流側触媒層41b用のスラリー状混合物を塗布することで、上述したゾーンコートを行うことができる。そして、触媒基材11の全長Lに対して、上流側触媒層41aの塗布長さLa+下流側触媒層41b塗布長さLb<触媒基材11の全長Lとすることで、上述した距離Lcを設定することが可能である。
【0070】
スラリー状混合物の調製時に用いる水系媒体は、スラリー中で各成分が均一に分散乃至溶解できる量を用いればよい。このとき、必要に応じてpH調整のための酸や塩基を配合したり、粘性の調整やスラリー分散性向上のための界面活性剤や分散用樹脂等を配合したりすることができる。上述した第1~3複合触媒粒子を強固に付着させ或いは結合させる観点からは、上述したバインダー等を用いることが好ましい。また、スラリーの混合方法としては、ボールミル等による粉砕混合等、公知の粉砕方法又は混合方法を適用することができる。
【0071】
触媒基材11上にスラリー状混合物を付与した後においては、常法にしたがい乾燥や焼成を行うことができる。なお、乾燥温度は、特に限定されないが、例えば70~200℃が好ましく、80~150℃がより好ましい。また、焼成温度は、特に限定されないが、例えば300~650℃が好ましく、400~600℃がより好ましい。このとき用いる加熱手段については、例えば電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行うことができる。
【0072】
本実施形態の排ガス浄化用触媒100は、例えばディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、ジェットエンジン、ボイラー、ガスタービン等の排ガスを浄化するための触媒として用いることができ、内燃機関の排ガス浄化用触媒、とりわけ自動車の排ガス浄化用三元触媒として有用である。本実施形態の排ガス浄化用触媒100は、各種エンジンの排気系に配置することができる。設置個数及び設置箇所は、排ガスの規制に応じて適宜設計できる。例えば、排ガスの規制が厳しい場合には、設置箇所を2以上とし、設置箇所は排気系の直下触媒の後方の床下位置に配置することができる。そして、本実施形態の排ガス浄化用触媒100によれば、低温での始動時のみならず、高温での高速走行時を含む種々の走行仕様において、CO、HC、NOxの浄化反応に優れた効果を発揮することができる。
【実施例
【0073】
以下に試験例、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0074】
(実施例1)
まず、セリア-ジルコニア系複合酸化物(CeO2:40質量%)と、γ-アルミナ粉末に純水を加えて、実施例1のOSC層用のスラリー状混合物を調製した。
【0075】
得られたOSC層用のスラリー状混合物を、ウォッシュコート法により、コージェライト製ハニカム基材上に塗工量40g/Lで塗布し乾燥させることで、OSC層を作製した。
【0076】
次に、γ-アルミナ粉末、及び、上述したセリア-ジルコニア系複合酸化物に、硝酸ロジウム(III)溶液(Rh換算で10質量%含有)を含浸させ、600℃で30分間焼成して、実施例1の第1複合触媒粒子を得た。その後、得られた第1複合触媒粒子と、ベーマイトとを混合し、純水で希釈して、実施例1の下地触媒層用のスラリー状混合物を調製した。
【0077】
得られた下地触媒層用のスラリー状混合物を、ウォッシュコート法により、コージェライト製ハニカム基材のOSC層上に塗工量50g/Lで塗布し乾燥させることで、下地触媒層(Rh塗工量:0.10g/L)を作製した。
【0078】
次いで、上述したγ-アルミナ粉末、及び、上述したセリア-ジルコニア系複合酸化物に、硝酸パラジウム(II)溶液(Pd換算で20質量%含有)を含浸させ、600℃で30分間焼成して、実施例1の第2複合触媒粒子を得た。その後、得られた第2複合触媒粒子と、Ba化合物と、ベーマイトとを混合し、純水で希釈して、実施例1の上流側触媒層用のスラリー状混合物を調製した。
【0079】
得られた上流側触媒層用のスラリー状混合物を、ウォッシュコート法により、コージェライト製ハニカム基材の排ガス流入側の下地触媒層上に塗工量80g/Lで塗布し乾燥させることで、上流側触媒層(Pd塗工量:5.13g/L)を作製した。なお、上流側触媒層の塗布長さLaは、排ガス流入側の端面から39.0%である。
【0080】
次いで、上述したγ-アルミナ粉末、及び、上述したセリア-ジルコニア系複合酸化物に、硝酸ロジウム(III)溶液(Rh換算で10質量%含有)を含浸させ、600℃で30分間焼成して、実施例1の第3複合触媒粒子を得た。その後、得られた第3複合触媒粒子と、ベーマイトとを混合し、純水で希釈して、実施例1の下流側触媒層用のスラリー状混合物を調製した。
【0081】
得られた下流側触媒層用のスラリー状混合物を、ウォッシュコート法により、コージェライト製ハニカム基材の排ガス流出側の下地触媒層上に塗工量80g/Lで塗布し乾燥させることで、下流側触媒層(Rh塗工量:0.25g/L)を作製した。なお、下流側触媒層の塗布長さLbは、排ガス流入側の端面から59.5%である。
【0082】
これにより、コージェライト製ハニカム基材上に、OSC層21、下地触媒層31、触媒層41(上流側触媒層41a及び下流側触媒層41b)がこの順に設けられ、上流側触媒層41a及び下流側触媒層41bが下地触媒層31上で距離Lcだけ離間して配置された、図1に示す層構成を有する実施例1の一体構造型積層触媒を得た。
【0083】
次いで、得られた一体構造型積層触媒を1個ずつコンバーターに格納後、ガソリンエンジンの排気口の後流にコンバーターを装着した。その後、エンジン(3UZ-FE)排ガス下で、床温:960℃×40時間の耐久処理を行い、耐久処理後の実施例1の一体構造型積層触媒を得た。
【0084】
(実施例2~6)
貴金属総量が変動しないように、下流側触媒層用のスラリー状混合物の貴金属量を表1に示すとおりに変更した上で、下流側触媒層の塗布長さLbを表1に示すとおりに変更する以外は、実施例1と同様にして、耐久処理後の実施例2~5の一体構造型積層触媒を得た。
【0085】
(比較例1~3)
貴金属総量が変動しないように、上流側触媒層用のスラリー状混合物及び下流側触媒層用のスラリー状混合物の貴金属量を表1に示すとおりに変更した上で、上流側触媒層の塗布長さLa及び下流側触媒層の塗布長さLbをそれぞれ表1に示すとおりに変更する以外は、実施例1と同様にして、耐久処理後の比較例1~3の一体構造型積層触媒を得た。比較例1~3の一体構造型積層触媒は、上流側触媒層上に下流側触媒層の一部が重なるように被覆したものであり、表1中のマイナスの符号は、上流側触媒層と下流側触媒層とが重なっている部分の長さ(距離)を意味する。
【0086】
(比較例4)
貴金属総量が変動しないように、下流側触媒層用のスラリー状混合物の貴金属量を表1に示すとおりに変更した上で、下流側触媒層の塗布長さLbを表1に示すとおりに変更する以外は、実施例1と同様にして、耐久処理後の比較例4の一体構造型積層触媒を得た。
【0087】
<性能評価>
得られた耐久処理後の各排ガス浄化用触媒につき、暖機性能、低温浄化性能、A/F特性、及びOSC性能をそれぞれ評価した。評価条件を以下に示す。
【0088】
〔暖機特性の測定〕
耐久処理後に室温まで放冷させた各排ガス浄化用触媒をそれぞれ用いて、暖機特性の測定を行った。ここでは、2Lエンジンを用い、エンジン回転数2500rpm、ブースト圧-380mmHg、及びA/Fレート14.56±0.1/2.5Hzの条件下、触媒入口端面から1インチ部分に温度センサを取り付け、バイパス切り替えで400℃に保った排ガスを導入し、開始温度50℃から昇温成り行きで測定を行った。触媒入口及び出口ガス組成を分析して、HCの浄化率を求めた。そしてHC浄化率が50%に到達した時間(HC50%浄化時間)を算出し、暖機特性とした。HCの50%浄化時間が短い程、優れた触媒であることを示している。
【0089】
〔ライトオフ性能の測定〕
耐久処理後に室温まで放冷させた各排ガス浄化用触媒をそれぞれ用いて、ライトオフ性能の測定を行った。ここでは、2Lエンジンを用い、エンジン回転数2500rpm、ブースト圧-300mmHg、A/Fレート14.56±0.4/2.5Hzの条件下、エンジン排気系の触媒コンバーターの前に熱交換器を取り付け、触媒入口ガス温度を200~450℃まで一定の昇温速度(10℃/min)で変化させ、触媒入口及び出口ガス組成を分析して、HCの浄化率を求めた。そしてHCの浄化率が50%に達した温度(ライトオフ温度)を測定し、ライトオフ性能とした。HCの50%浄化温度が低い程、優れた触媒であることを示している。
【0090】
〔A/F特性の測定〕
耐久処理後に室温まで放冷させた各排ガス浄化用触媒をそれぞれ用いて、A/F特性の測定を行った。ここでは、2Lエンジンを用い、エンジン回転数2500rpm、ブースト圧-300mmHg条件下、触媒入口ガス温度を500℃に固定し、A/Fを±1.0A/F、1Hzで振動させながら平均空燃比を連続的に変化させ、このときの触媒入口及び出口ガス組成を分析して、平均空燃比A/Fが13.5から15.5までのCO、HCおよびNOxの浄化率をそれぞれ求めた。このようにして求めたCO、HCおよびNOxの浄化率対入口空燃比をグラフにプロットして三元特性曲線を作成し、CO、NOx浄化曲線の交点(クロスオーバーポイント:COP)の浄化率をA/F特性とした。COPの浄化率が高い程、優れた触媒であることを示している。
【0091】
〔OSC性能の測定〕
耐久処理後に室温まで放冷させた各排ガス浄化用触媒をそれぞれ用いて、OSC性能の測定を行った。ここでは、2Lエンジンを用い、エンジン回転数2500rpm、ブースト圧-300mmHg条件下、触媒入口ガス温度を500℃に固定し、A/Fを14.1~15.1の間における出ガス中の酸素濃度を連続的に測定した。空燃比が15.1から14.1に達するまでに放出する酸素量を、酸素吸蔵量として算出し、OSC性能とした。酸素吸蔵量が高い程、優れた触媒であることを示している。
【0092】
表1に、実施例1~6及び比較例1~4の排ガス浄化用触媒の処方及び構成、並びに各触媒の性能評価結果を示す。
【表1】
【0093】
表1に示すように、上流側触媒層上に下流側触媒層の一部が重なるように被覆した比較例1~3の一体構造型積層触媒に対して、上流側触媒層と下流側触媒層とが離間している実施例1~6の一体構造型積層触媒は、暖機特性、及びライトオフ性能が向上することが確認された。さらに、実施例1~6の一体構造型積層触媒は、暖機特性、ライトオフ性能、A/F特性、及びOSC性能のすべての触媒特性が高いレベルでバランスしていることが確認された。一方、距離Lcが16.3%の比較例4では、比較例1~3と同等レベルの浄化性能に留まっていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の排ガス浄化用触媒100は、排ガス中のNOx、CO、HC等を削減する三元触媒として、広く且つ有効に利用することができ、例えばディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、ジェットエンジン、ボイラー、ガスタービン等の排ガスを浄化するための触媒用途において殊に有効に利用可能である。また、本発明の排ガス浄化用触媒100は、エンジン直下型触媒コンバーターやタンデム配置の直下型触媒コンバーター等のTWCとして有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
100 ・・・排ガス浄化用触媒
11 ・・・触媒基材
21 ・・・OSC層
31 ・・・下地触媒層
41 ・・・触媒層
41a・・・上流側触媒層
41b・・・下流側触媒層
L ・・・触媒基材の全長
La・・・塗布長さ
Lb・・・塗布長さ
Lc・・・距離
図1