(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】排気再循環システム
(51)【国際特許分類】
F02M 26/34 20160101AFI20230214BHJP
F02M 26/06 20160101ALI20230214BHJP
F02M 26/05 20160101ALI20230214BHJP
F02B 37/18 20060101ALI20230214BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20230214BHJP
F02M 26/23 20160101ALN20230214BHJP
【FI】
F02M26/34
F02M26/06 311
F02M26/05
F02B37/18 A
F02B37/00 302F
F02M26/23
(21)【出願番号】P 2018169909
(22)【出願日】2018-09-11
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】増馬 鉄朗
(72)【発明者】
【氏名】森口 優
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-127205(JP,A)
【文献】特開2010-236381(JP,A)
【文献】特開2018-040285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/00 - 26/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気路と吸気路との間を接続する排気再循環路と、
前記排気再循環路に介装された遠心ポンプと、
前記排気路に介装された過給用のタービンと、
前記吸気路に介装された過給用のコンプレッサと、
前記排気再循環路に介装されて前記吸気路に帰還される排気についての冷却を行う冷却部と、を備え、
前記排気再循環路は、
前記排気路における前記タービンよりも下流位置において前記排気路との接続口を有し、
前記吸気路における前記コンプレッサよりも上流位置において前記吸気路との接続口を有しており、
前記冷却部は、
前記排気再循環路と前記吸気路とが連通状態となる排気再循環状態と前記排気再循環路と前記吸気路とが非連通状態となる非排気再循環状態との切り替えを行う循環制御弁よりも上流側に位置され、
前記遠心ポンプは、
前記排気路との接続口と前記冷却部との間に配置され
ると共に、
前記冷却部よりも下流で且つ前記循環制御弁よりも上流となる位置での排気圧と前記循環制御弁よりも下流となる位置での吸気圧との差圧を検出する差圧センサが検出した前記差圧に基づき制御される
排気再循環システム。
【請求項2】
前記タービンのバイパス路に介装されたウエストゲートバルブを備えた
請求項1に記載の排気再循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの排気を吸気路に環流させる排気再循環路を備えた排気再循環システムについての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを備えた車両には、燃費(燃料消費率)や排ガス性能の向上を目的としたEGR(Exhaust Gas Recirculation:排気再循環)システムを搭載したものがある(例えば下記特許文献1、2を参照)。
EGRの手法としては、未燃焼ガスをエンジンの排気ポート直下から直接インテークマニホールドに帰還させるHP(High Pressure)-EGRが知られているが、このHP-EGRでは、リーン燃焼領域や高負荷運転領域等の「吸気圧>排気圧」となるような状況において排ガスが十分に環流せず、EGR量不足になってしまうという課題を有している。
【0003】
一方、EGRの手法としては、排ガスをインテークマニホールドに帰還させるのではなく、吸気圧のより低いターボ上流(過給用コンプレッサの上流)に帰還させるLP(Low Pressure)-EGRも知られている。HP-EGRと比較して排気圧と吸気圧との差圧を高め易いため、EGR量の増大化を図ることができる。また、LP-EGRでは、排気路における過給用タービンの下流位置から排ガスを取り込んで吸気路に帰還させるため、全ての排ガスがタービンを通過することとなり、排気エネルギーの回収効率向上が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2015-523493号公報
【文献】特表2010-512487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、EGRシステムは、エンジンからの排気を排気再循環路を介して吸気路に流入させるという構成上、排気脈動が吸気系に伝達される。排気脈動が吸気系に伝達されると、吸気口より「ボボボ」のような騒音が発生してしまう虞がある。HP-EGRの場合は、排気再循環路に排気を取り込むための取込口から吸気路との接続口(戻し口)までの間にインタークーラや過給用のコンプレッサ等の脈動緩和要素が配置されることになるため、騒音は比較的小さなものとなるが、LP-EGRの場合は取込口から戻し口までの間にそのような脈動緩和要素が配置されない構成となるため、比較的大きな騒音が生じる虞がある。
【0006】
上記のような排気脈動に起因した騒音(脈動音)については、吸気系に消音器を設けることで対策することが考えられるが、脈動音の対策にあたっては比較的広い周波数帯域の音を低減する必要があるため、反共振で跳ね返りが生じるようなレゾネータやサイドブランチでは対策が困難であり、拡張室型消音器のような幅広い周波数帯域に低減効果のある消音器を用いることが有効である。このとき、エンジン回転2次~10次の極低周波数帯域(約50Hz~300Hz)の脈動音を低減するには大型の消音器を用いることになり、消音器の配置スペースを大きく要する。そのため、部品レイアウトの制約が大きくなり車両設計自由度の低下を招来する。
【0007】
また、EGRシステムとしては、EGR領域を拡大することで排ガス性能や燃費性能のさらなる向上を図ることが要請されている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み為されたものであり、部品レイアウトの制約を緩和することによる車両設計自由度の向上を図りつつ、排気脈動に起因した騒音の低減、排ガス性能の向上、及び燃費の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る排気再循環システムは、エンジンの排気路と吸気路との間を接続する排気再循環路と、前記排気再循環路に介装された遠心ポンプと、を備えたものである。
【0010】
これにより、エンジンからの排気を、排気再循環路に介装された遠心ポンプを介して吸気路に帰還させることが可能とされる。
排気脈動の特に低周波成分が遠心ポンプを介することで緩和され、排気脈動に起因した騒音の低減が図られる。
また、遠心ポンプによって吸気路に対する排気の戻し圧調整が可能となり、EGR(Exhaust Gas Recirculation)領域の拡大化を図ることができる。EGR領域の拡大化により、排ガス性能の向上、及び燃費向上を図ることができる。
遠心ポンプは排気再循環路のパイプ中に比較的小スペースに配置可能であるため、排気脈動に起因した騒音を低減するために大型の消音器を用いる必要がなくなる。
【0011】
上記した本発明に係る排気再循環システムにおいては、前記排気路に介装された過給用のタービンと、前記吸気路に介装された過給用のコンプレッサと、を備え、前記排気再循環路は、前記排気路における前記タービンよりも下流位置において前記排気路との接続口を有し、前記吸気路における前記コンプレッサよりも上流位置において前記吸気路との接続口を有する構成とすることが可能である。
【0012】
すなわち、LP(Low Pressure)-EGR路に対して遠心ポンプが介装された構成である。
【0013】
上記した本発明に係る排気再循環システムにおいては、前記タービンのバイパス路に介装されたウエストゲートバルブを備えた構成とすることが可能である。
【0014】
排気脈動の緩和は、過給用のタービンとしてVNT(Variable Nozzle Turbo:可変ノズルターボ:登録商標)で用いられるような排気流速調整機能付きのタービンを用いることによっても図ることができるが、排気流速調整機能付きのタービンは高価である。このため、ウエストゲートバルブによって排気流速調整機能を実現する構成とし、ウエストゲートバルブ(バイパス路)を介して伝達される排気脈動は排気再循環路の遠心ポンプによって緩和する。
【0015】
上記した本発明に係る排気再循環システムにおいては、前記排気再循環路と前記吸気路とが連通状態となる排気再循環状態と前記排気再循環路と前記吸気路とが非連通状態となる非排気再循環状態との切り替えを行う循環制御弁と、前記排気再循環路に介装されて前記吸気路に帰還される排気についての冷却を行う冷却部と、を備え、前記遠心ポンプが、前記循環制御弁と前記冷却部との間に配置された構成とすることが可能である。
【0016】
これにより、遠心ポンプには冷却部による冷却後の排気が流入する。
【0017】
上記した本発明に係る排気再循環システムにおいては、前記排気再循環路に介装されて前記吸気路に帰還される排気についての冷却を行う冷却部を備え、前記遠心ポンプは、前記排気路との接続口と前記冷却部との間に配置された構成とすることが可能である。
【0018】
これにより、遠心ポンプは冷却部よりも排気路との接続口に近い位置に配置される。すなわち、遠心ポンプは排気再循環路の上流部に配置される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、部品レイアウトの制約を緩和することによる車両設計自由度の向上を図りつつ、排気脈動に起因した騒音の低減、排ガス性能の向上、及び燃費の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る実施形態としての排気再循環システムの概略構成例を模式的に示した図である。
【
図2】実施形態としての排気再循環システムが備える遠心ポンプの構造例を説明するための図である。
【
図3】第一変形例としての排気再循環システムの概略構成例を模式的に示した図である。
【
図4】第二変形例としての排気再循環システムの概略構成例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施形態としての排気再循環システム1について説明する。
図1は、排気再循環システム1の概略構成例を模式的に示した図である。
図示のように排気再循環システム1は、エンジン2と、エンジン2の吸気路Riと、エンジン2の排気路Reと、吸気路Riに介装されたエアクリーナ3、コンプレッサ4、インタークーラ5、及びスロットル6と、排気路Reに介装されたタービン7、フロント触媒9、リア触媒10、LNT(Lean NOx Trap:吸蔵型窒素酸化物還元)触媒11、及びマフラ12と、タービン7をバイパスするバイパス路Rbと、バイパス路Rbに換装されたウエストゲートバルブ(wastegate valve)8とを備えている。
そして、排気再循環システム1は、排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)のための構成として、HP(High Pressure)-EGR部13とLP(Low Pressure)-EGR部16とを備えている。
【0022】
エンジン2は、例えば四つ等、複数の気筒を備えたガソリンエンジンとされる。なお、図中では、インテークマニホールド、エキゾーストマニホールドについてはそれぞれ吸気路Ri、排気路Reの一部として図示を省略している。
吸気路Riに介装されたコンプレッサ4と排気路Reに介装されたタービン7は過給機を構成している。
【0023】
吸気路Riにおいて、吸気口Oiより流入した空気は、粉塵等の異物除去を行うエアクリーナ3を介した後、コンプレッサ4を介してインタークーラ5に流入する。インタークーラ5は流入した空気(吸気)を冷却する。インタークーラ5を介した吸気はスロットル6を介して不図示のインテークマニホールドに流入し、不図示のインジェクタによって噴射される燃料との混合気がエンジン2の各気筒に流入される。
【0024】
排気路Reにおいて、エンジン2からの排気はタービン7を介してフロント触媒9に流入し、浄化される。このとき、エンジン2からの排気は、ウエストゲートバルブ8が開状態ではその一部がバイパス路Rbを介してフロント触媒9に流入する。
フロント触媒9を介した排気はリア触媒10で浄化された後にLNT触媒11でさらに浄化され、マフラ12を介して大気中に排出される。
【0025】
HP-EGR部13は、排気路Reにおけるタービン7よりも上流の比較的高圧・高温な排気を吸気路Riにおけるスロットル6よりも下流に帰還させるEGR部とされる。具体的に、本例におけるHP-EGR部13は、不図示のエキゾーストマニホールド内の排気の一部を取り込んでインテークマニホールド(不図示)に帰還させるHP-EGR路Rhを有しており、このHP-EGR路RhにEGRクーラ14とEGRバルブ15が介装されている。なお、HP-EGR路Rhには、不図示の温度センサと差圧センサが備えられている。EGRクーラ14はエンジン2側から取り込まれる排気についての冷却を行う。EGRバルブ15は、不図示のECU(Engine Control Unit)等の制御手段によって開度制御され、該開度制御によりHP-EGR部13によるEGR量が調整される。
EGRバルブ15は、HP-EGR路Rhと吸気路Riとが連通状態となる排気再循環状態と、HP-EGR路Rhと吸気路Riとが非連通状態となる非排気再循環状態との切り替えを行う循環制御弁としても機能する。
【0026】
LP-EGR部16は、排気路Reにおけるタービン7よりも下流の比較的低圧・低温な排気を吸気路Riにおけるコンプレッサ4よりも上流に帰還させるEGR部とされる。LP-EGR部16は、吸気路Riに排気を帰還させるためのLP-EGR路Rlと、LP-EGR路Rlに介装されたEGRクーラ17、EGRバルブ18、及び遠心ポンプ21と、温度センサ19と差圧センサ20とを有している。
LP-EGR路Rlは、本例では排気路Reにおけるフロント触媒9よりも下流で且つリア触媒10よりも上流となる位置に排気路Reとの接続口Otを有すると共に、吸気路Riにおけるコンプレッサ4よりも上流で且つエアクリーナ3よりも下流となる位置に吸気路Riとの接続口Orを有している。
なお以下、排気路Reとの接続口Otについては「取込口Ot」とも表記することがある。また、吸気路Riとの接続口Orについては「戻し口Or」と表記することもある。
【0027】
LP-EGR路Rlにおいて、取込口Otの位置を最上流位置、戻し口Orの位置を最下流位置とすると、EGRクーラ17、遠心ポンプ21、EGRバルブ18は上流側から下流側にかけてこの順で配置されている。
EGRクーラ17は取込口Otから取り込まれる排気についての冷却を行い、EGRバルブ18は不図示のECU等の制御手段によって開度制御される。EGRバルブ18は、LP-EGR路Rlと吸気路Riとが連通状態となる排気再循環状態と、LP-EGR路Rlと吸気路Riとが非連通状態となる非排気再循環状態との切り替えを行う循環制御弁としても機能する。
温度センサ19は、LP-EGR路RlにおけるEGRクーラ17の下流で且つ遠心ポンプ21の上流となる位置に配置され、EGRクーラ17による冷却後の排気温度を検出する。差圧センサ20は、LP-EGR路RlにおけるEGRクーラ17の下流で且つ遠心ポンプ21の上流となる位置での排気圧と、吸気路Riにおけるエアクリーナ3の下流で且つコンプレッサ4よりも上流となる位置での吸気圧との差圧を検出する。
【0028】
LP-EGR部16において、EGRバルブ18の開度は、ECU等の制御手段が温度センサ19が検出した温度と差圧センサ20が検出した差圧とに基づき制御する。特に、「吸気圧>排気圧」となる状態では、EGRバルブ18が閉状態に制御され、LP-EGR部16による排気再循環が停止される(上記した非排気再循環状態)。
【0029】
遠心ポンプ21は、例えば渦巻きポンプとされ、本例ではタービン7と同様の構造を有している。
図2は、遠心ポンプ21の構造例を説明するための図であり、遠心ポンプ21が備えるタービン翼車22とタービン車室23のカットモデルと、タービン翼車22の駆動ユニット30とを示している。
駆動ユニット30は、タービン翼車22を回転駆動するための電動モータと該電動モータを駆動する駆動回路とを少なくとも備えている。駆動ユニット30の制御、すなわちタービン翼車22の回転制御は、例えば上述したECU等の制御手段により行われる。
【0030】
遠心ポンプ21において、排気路Re側(EGRクーラ17側)より流入した排気はタービン翼車22の回転によりタービン車室23に流入する。このとき、タービン翼車22の回転に伴う遠心力の作用により、タービン車室23に流入した排気の圧力が高められ、高圧とされた排気がタービン車室23から吸気路Ri側(EGRバルブ18側)に流出される。これにより、排気路Re側より流入した排気は、遠心ポンプ21を介することで圧力が高められる。
【0031】
本例のLP-EGR部16においては、遠心ポンプ21の制御、すなわちタービン翼車22の回転制御により、EGR量の調整を行うことが可能とされる。具体的に、ECU等の制御手段は、エンジン2の燃焼状態や温度センサ19が検出した温度、差圧センサ20が検出した差圧等に基づいて駆動ユニット30を通じて遠心ポンプ21の制御を行うことで、LP-EGR部16によるEGR量を適切に制御することができる。
【0032】
遠心ポンプ21を設けたことで、LP-EGRによるEGR量の増大化を図ることができるため、従来は差圧が低くEGRを実行できなかった領域においてもEGRの実行を可能とすることができる、すなわちEGR領域の拡大化を図ることができる。従って、排ガス性能や燃費(燃料消費率)性能の向上を図ることができる。
【0033】
ここで、遠心ポンプ21はその構造より、排気を流通させた際に排気脈動の緩和効果を発揮する。すなわち、排気脈動の緩和要素として機能する。
本例のように過給機に対してウエストゲートバルブ8が設けられる構成においては、排気脈動はウエストゲートバルブ8が介装されたバイパス路Rbを介してLP-EGR路Rlに伝達されることになる。
仮に、LP-EGR路Rlに遠心ポンプ21が介装されていないとすると、LP-EGR路に介装される要素はEGRクーラ17とEGRバルブ18のみとなるため、排気脈動を十分に緩和することは困難となる。すなわち、LP-EGR路Rlに伝達された排気脈動は十分に緩和されることなく吸気系に伝達され、吸気口Oiにおいて排気脈動に起因した騒音(脈動音)が生じてしまう。
遠心ポンプ21を設けることで、LP-EGR路Rlに伝達された排気脈動の十分な緩和を図ることができ、その結果、脈動音の低減を図ることができる。
特に、脈動音で問題となるのは低周波数の成分であるが、遠心ポンプ21の回転翼が流入する排気を掻き乱すことにより低周波数の脈動を効果的に低減することができるため、脈動音を良好に低減することができる。
【0034】
図3は、第一変形例としての排気再循環システム1Aの概略構成例を模式的に示している。
図1に示した排気再循環システム1との差異点は、遠心ポンプ21が取込口OtとEGRクーラ17との間に配置された点である。
【0035】
ここで、
図1に示したように遠心ポンプ21をEGRバルブ18とEGRクーラ17との間に配置した場合には、遠心ポンプ21にはEGRクーラ17による冷却後の排気が流入する。そのため、遠心ポンプ21として高耐熱品を用いる必要がなくなり、コスト削減を図ることができる。
【0036】
一方、
図3に示すように遠心ポンプ21を取込口OtとEGRクーラ17との間に配置した場合には、遠心ポンプ21はLP-EGR路Rlにおけるより上流部に配置されることになる。
排気脈動をより上流において緩和できれば、排気脈動が伝達される部分の長さがより短くなるため、吸気系に伝達される排気脈動の大きさをより小さくすることができる。従って、上記のように遠心ポンプ21を取込口OtとEGRクーラ17との間に配置することで、騒音の低減効果を高めることができる。
【0037】
図4は、第二変形例としての排気再循環システム1Bの概略構成例を模式的に示している。
図1に示した排気再循環システム1との差異点は、HP-EGR部13が設けられていない点である。
実施形態において、HP-EGR部13を設けることは必須ではなく、遠心ポンプ21の適用は、EGR部としてLP-EGR部16のみが設けられたシステムに対しても行うことができる。
【0038】
なお、図示による説明は省略するが、HP-EGR部13が設けられる場合には、遠心ポンプ21はHP-EGR路Rhに介装することもできる。HP-EGR路Rhに伝達された排気脈動は、吸気口Oi付近に伝達されるまでの間にインタークーラやコンプレッサ4等の脈動緩和要素を経由することになるため、仮に、遠心ポンプ21を設けないとしても脈動音は比較的小さいものとなる。すなわち、HP-EGR路Rhを伝達する排気脈動に起因した脈動音は元々小さいものである。
しかしながら、脈動音の低減をより徹底する場合等には、遠心ポンプ21をHP-EGR路Rh側に設ける構成とすることが考えられる。
【0039】
以上で説明したように、実施形態の排気再循環システム(同1)は、エンジン(同2)の排気路(同Re)と吸気路(Ri)との間を接続する排気再循環路(LP-EGR路Rl又はHP-EGR路Rh)と、排気再循環路に介装された遠心ポンプ(同21)とを備えている。
【0040】
これにより、エンジンからの排気を、排気再循環路に介装された遠心ポンプを介して吸気路に帰還させることが可能とされる。
排気脈動の特に低周波成分が遠心ポンプを介することで緩和され、排気脈動に起因した騒音の低減が図られる。
また、遠心ポンプによって吸気路に対する排気の戻し圧調整が可能となり、EGR領域の拡大化を図ることができる。EGR領域の拡大化により、排ガス性能の向上、及び燃費向上を図ることができる。
遠心ポンプは排気再循環路のパイプ中に比較的小スペースに配置可能であるため、排気脈動に起因した騒音を低減するために大型の消音器を用いる必要がなくなる。従って、本実施形態の排気再循環システムによれば、レイアウト制約を緩和することによる車両設計自由度の向上を図りつつ、排気脈動に起因した騒音の低減、排ガス性能の向上、及び燃費の向上を図ることができる。
【0041】
また、実施形態の排気再循環システムにおいては、排気路に介装された過給用のタービン(同7)と、吸気路に介装された過給用のコンプレッサ(同4)と、を備え、排気再循環路は、排気路におけるタービンよりも下流位置において排気路との接続口(取込口Ot)を有し、吸気路におけるコンプレッサよりも上流位置において吸気路との接続口(戻し口Or)を有している。
【0042】
すなわち、LP-EGR路に対して遠心ポンプが介装された構成である。
HP-EGR路に伝達される排気脈動は、吸気口に伝達されるまでの間にインタークーラや過給用のコンプレッサ等を介するため、緩和され易い。一方、LP-EGR路に伝達される排気脈動については、仮にLP-EGR路に遠心ポンプが介装されていないとすると、LP-EGR路にはインタークーラやコンプレッサ等のような脈動緩和要素が介装されていないため、排気脈動が十分に緩和されずに吸気口に伝達され易い。すなわち、より大きな騒音が生じ易い。
従って、排気脈動に起因した騒音の低減を図る上では、LP-EGR路に対して遠心ポンプを介装することが好適である。
【0043】
さらに、実施形態の排気再循環システムにおいては、タービンのバイパス路(同Rb)に介装されたウエストゲートバルブ(同8)を備えている。
【0044】
排気脈動の緩和は、過給用のタービンとしてVNT(Variable Nozzle Turbo:可変ノズルターボ:登録商標)で用いられるような排気流速調整機能付きのタービンを用いることによっても図ることができるが、排気流速調整機能付きのタービンは高価である。このため、ウエストゲートバルブによって排気流速調整機能を実現する構成とし、ウエストゲートバルブ(バイパス路)を介して伝達される排気脈動は排気再循環路の遠心ポンプによって緩和する。
これにより、排気流速調整機能付きのタービンを用いることなく排気流速調整機能と排気脈動緩和機能とを実現することができる。すなわち、排気流速調整機能と排気脈動緩和機能とを具備する排気再循環システムをより低コストに実現することができる。
【0045】
また、実施形態の排気再循環システム(同1)においては、排気再循環路と吸気路とが連通状態となる排気再循環状態と排気再循環路と吸気路とが非連通状態となる非排気再循環状態との切り替えを行う循環制御弁(EGRバルブ18)と、排気再循環路に介装されて吸気路に帰還される排気についての冷却を行う冷却部(EGRクーラ17)と、を備え、遠心ポンプが、循環制御弁と冷却部との間に配置されている。
【0046】
これにより、遠心ポンプには冷却部による冷却後の排気が流入する。
従って、遠心ポンプとして高耐熱品を用いる必要がなくなり、コスト削減を図ることができる。
【0047】
さらにまた、実施形態の排気再循環システム(同1A)においては、排気再循環路に介装されて吸気路に帰還される排気についての冷却を行う冷却部を備え、遠心ポンプは、排気路との接続口と冷却部との間に配置されている。
【0048】
これにより、遠心ポンプは冷却部よりも排気路との接続口に近い位置に配置される。すなわち、遠心ポンプは排気再循環路の上流部に配置される。
排気脈動をより上流において緩和できれば、排気脈動が伝達される部分の長さがより短くなるため、吸気系に伝達される排気脈動の大きさをより小さくすることができる。従って、上記のように遠心ポンプを排気路との接続口と冷却部との間に配置することで、騒音の低減効果を高めることができる。
【0049】
なお、本発明は上記で説明した具体例に限定されず、多様な変形例が考えられるものである。
例えば、本発明は、過給用のタービンとしてVNTで用いられるような排気流速調整機能付きのタービンを用いた場合にも適用することができる。排気流速調整機能付きのタービンで緩和し切れなかった排気脈動を本発明の遠心ポンプによって緩和することができる。
【0050】
また、本発明は、ガソリンエンジンではなくディーゼルエンジンにも好適に適用することができる。
さらに、本発明は、LP-EGR部が設けられずHP-EGR部が設けられた構成においても適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 、1A、1B 排気再循環システム、2 エンジン、3 エアクリーナ、4 コンプレッサ、5 インタークーラ、6 スロットル、7 タービン、8 ウエストゲートバルブ、13 HP-EGR部、14,17 EGRクーラ、15,17 EGRバルブ、16 LP-EGR部、19 温度センサ、20 差圧センサ、21 遠心ポンプ、22 タービン翼車、23 タービン車室、Ri 吸気路、Re 排気路、Rb バイパス路、Rh HP-EGR路、Rl LP-EGR路、Oi 吸気口、Ot 接続口(取込口)、Or 接続口(戻し口)