(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】硬化性組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20230214BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20230214BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20230214BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20230214BHJP
C09D 5/34 20060101ALI20230214BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20230214BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230214BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20230214BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20230214BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230214BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20230214BHJP
C08G 18/30 20060101ALN20230214BHJP
【FI】
C08L75/04
C08G18/40
C08L33/02
C09D5/02
C09D5/34
C09D7/41
C09D7/61
C09D133/00
C09D175/04
C09D201/00
C09K3/10 E
C09K3/10 Q
C09K3/10 Z
C08G18/30 020
(21)【出願番号】P 2018197479
(22)【出願日】2018-10-19
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 吉訓
(72)【発明者】
【氏名】大藤 功
(72)【発明者】
【氏名】多田 直史
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/061705(WO,A1)
【文献】特開昭62-074966(JP,A)
【文献】特開平07-310028(JP,A)
【文献】特開2018-123242(JP,A)
【文献】特開平09-221656(JP,A)
【文献】特開2016-008298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0218428(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/30
C08G 18/40
C08L 75/04
C08L 33/02
C09D 5/02
C09D 5/34
C09D 7/41
C09D 7/61
C09D 133/00
C09D 175/04
C09D 201/00
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)合成樹脂エマルジョン、
(B)高吸水性樹脂、
(C)体質顔料、および
(D)ポリイソシアネート化合物を含有してなる樹脂組成物であって、
前記(B)高吸水性樹脂が、球状粒子および/または球状の一次粒子が凝集した二次粒子を含む
、木質材用シーラー組成物用または木質材用パテ組成物用の硬化性組成物。
【請求項2】
前記(B)高吸水性樹脂が、球状の一次粒子が凝集した二次粒子を含み、該二次粒子の中位粒子径が、100~500μmである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(B)高吸水性樹脂が、アクリル酸金属塩の重合体および/またはその架橋物を含む、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記(A)合成樹脂エマルジョンが、アクリル樹脂系エマルジョンである、請求項1~3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
硬化性組成物の固形分100質量%中、前記(B)高吸水性樹脂の固形分が0.005~0.1質量%である、請求項1~4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
硬化性組成物の固形分100質量%中、前記(D)ポリイソシアネート化合物が5~50質量%である、請求項1~5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
硬化性組成物の固形分100質量%中、前記(C)体質顔料が5~70質量%である、請求項1~6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
23℃において回転式粘度計で測定した粘度が5~25dPa・sである、請求項1~7のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の
硬化性組成物から形成された塗膜または硬化体。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の硬化性組成物からなる木質材用シーラー組成物または木質材用パテ組成物から形成された、塗膜または硬化体を、木質基材表面の少なくとも一部に有することを特徴とする木質材。
【請求項11】
請求項1~8のいずれかに記載の硬化性組成物からなる木質材用シーラー組成物または木質材用パテ組成物を、木質基材の表面に塗布する工程と、塗布された該組成物を硬化する工程とを含む木質材の製造方法。
【請求項12】
さらに上塗り塗料を塗布する工程を有する請求項
11に記載の木質材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラー等の用途に好適な硬化性組成物と、それを用いた木質材用シーラー組成物および木質材用パテ組成物、該木質材用シーラー組成物から形成された塗膜、該パテ組成物から形成された硬化体、該塗膜または硬化体を有する木質材、並びに木質材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート型枠用の合板として、基材である木質板の表面に、シーラー組成物の塗装による被覆処理を施したものが使用されている。これによって、合板の変質によるコンクリート面の硬化不良、木材からのヤニの滲出によるコンクリート面の着色およびコンクリート面への導管の食い込み・付着等を防止することができる。
【0003】
従来、コンクリート型枠用合板の原材料である木質材は、ラワン材等の熱帯雨林産の広葉樹が主流であった。しかし、近年の環境保護意識の高まりや、資源である原木の確保が困難な状況により、徐々に針葉樹由来の木質材が利用されている。しかし、針葉樹由来の木質材は、広葉樹由来の木質材と比較して表面に細かい凹凸が多く、従来のシーラー組成物では、十分な平滑性を得ることが難しかった。また、針葉樹由来の木質材は、広葉樹由来の木質材と比較して比重が小さく、軽くて柔らかいため、温度変化による寸法変動が大きく、シーラー組成物の硬化塗膜にクラックが生じやすかった。さらに、針葉樹由来の木質材表面には、深さが1~2mm程度、最大幅が30mm程度の節穴(以下、大欠陥部ともいう。)が点在している場合があり、従来のシーラー組成物を機械塗装するだけでは節穴を十分に充填することが困難であるため、手作業による高粘度のパテ材充填作業が必要であり、コンクリート型枠用合板を製造する時の施工性において課題があった。また、このような節穴部分に充填したパテ材は、乾燥硬化した際に、体積収縮による目ヤセが生じて補修部分が凹みやすく、複数回の充填作業が必要であった。
【0004】
従来のシーラー組成物として、特許文献1には、水性ラテックス、ホルムアルデヒド樹脂、有機イソシアネート、充填材および専用硬化剤とからなる発泡性塗布剤およびこれを用いる木質板の補修、目止め方法が記載されている。特許文献2には、特定の水性ウレタン樹脂と、水溶性高分子化合物と、熱膨張性フィラーからなる樹脂組成物、特に合板表面の小さな凹凸を均一な表面に補修するパテ剤の樹脂組成物が記載されている。しかしながら、これらの樹脂組成物では、節穴等の大欠陥部をナイフコーターによる塗装1回で充填するには不十分であり、施工性の点で課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-267174号公報
【文献】特開平10-007902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、塗布性、充填性がよく、硬化後の体積減少が少なく、目ヤセを低減できる硬化性組成物を提供することを課題としている。また本発明は、前記課題に鑑み、節穴等の大欠陥部に対しても充填性がよく、ナイフコーターなどを用いた機械塗装により1回で塗布および充填施工が可能で、硬化後の目ヤセの少ない、木質材表面への施工に好適な硬化性組成物およびその関連技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、以下の〔1〕~〔14〕の事項に関する。
〔1〕(A)合成樹脂エマルジョン、
(B)高吸水性樹脂、
(C)体質顔料、および
(D)ポリイソシアネート化合物
を含有してなる樹脂組成物であって、
前記(B)高吸水性樹脂が、球状粒子および/または球状の一次粒子が凝集した二次粒子を含むことを特徴とする硬化性組成物。
〔2〕前記(B)高吸水性樹脂が、球状の一次粒子が凝集した二次粒子を含み、該二次粒子の中位粒子径が、100~500μmである、前記〔1〕に記載の硬化性組成物。
〔3〕前記(B)高吸水性樹脂が、アクリル酸金属塩の重合体および/またはその架橋物を含む、前記〔1〕または〔2〕に記載の硬化性組成物。
〔4〕前記(A)合成樹脂エマルジョンが、アクリル樹脂系エマルジョンである、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔5〕硬化性組成物の固形分100質量%中、前記(B)高吸水性樹脂の固形分が0.005~0.1質量%である、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔6〕硬化性組成物の固形分100質量%中、前記(D)ポリイソシアネート化合物が5~50質量%である、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔7〕硬化性組成物の固形分100質量%中、前記(C)体質顔料が5~70質量%である、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔8〕23℃において回転式粘度計で測定した粘度が5~25dPa・sである、前記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔9〕前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の硬化性組成物からなる木質材用シーラー組成物。
〔10〕前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の硬化性組成物からなる木質材用パテ組成物。
〔11〕前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の硬化性組成物、前記〔9〕に記載の木質材用シーラー組成物、および前記〔10〕に記載の木質材用パテ組成物のいずれかから形成された塗膜または硬化体。
〔12〕前記〔9〕に記載の木質材用シーラー組成物または前記〔10〕に記載の木質材用パテ組成物から形成された、塗膜または硬化体を、木質基材表面の少なくとも一部に有することを特徴とする木質材。
〔13〕木質基材の表面に、前記〔9〕に記載の木質材用シーラー組成物または前記〔10〕に記載の木質材用パテ組成物を塗布する工程と、塗布された該組成物を硬化する工程とを含む木質材の製造方法。
〔14〕さらに上塗り塗料を塗布する工程を有する前記〔13〕に記載の木質材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、充填性、塗布性などの施工性に優れるとともに、硬化後の体積減少が少ない硬化性組成物およびその用途を提供することができる。本発明の硬化性組成物は、充填性、塗布性などの施工性に優れ、窪みを有する基材への充填性がよくしかも硬化による体積変化が小さいという優れた特性を有し、目ヤセが少ないことから、たとえば節穴や窪み等の欠損部を有する木質材を平滑に加工するためのシーラー組成物あるいはパテ組成物として好適に使用することができる。
【0009】
本発明の木質材用シーラー組成物およびパテ組成物は、充填性、塗布性などの施工性に優れ、ロールコーターやナイフコーターなどでの機械塗装にも適しており、木材、合板などの木質基材の凹部(特に、大欠陥部)の充填、表面の被覆などの施工が容易であり、硬化後の目ヤセが少なく、施工時の形状が好適に保持され、木質基材の凹凸を平滑化することができ、耐クラック性にも優れる。
【0010】
また、本発明の硬化性組成物、木質材用シーラー組成物およびパテ組成物は、施工後の硬化部上にさらに塗装による塗膜の形成を行うことができ、またラミネート加工を施すこともできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、(A)合成樹脂エマルジョン、(B)高吸水性樹脂、(C)体質顔料、および(D)ポリイソシアネート化合物を含有する樹脂組成物である。
【0012】
(A)合成樹脂エマルジョン
本発明で用いる(A)合成樹脂エマルジョンとしては、特に制限はなく、硬化後に膜を形成し得るものを用いることができる。(A)合成樹脂エマルジョンとしては、たとえば、アクリル樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、エポキシ樹脂系エマルジョン、ウレタン樹脂系エマルジョン、合成ゴムエマルジョン等を挙げることができる。中でも、性能のバランスおよびコストの観点から、アクリル樹脂系エマルジョンが好ましく用いられる。
【0013】
アクリル樹脂系エマルジョンの形態で供されるアクリル樹脂としては、特に制限はなく、従来公知のアクリル系モノマーの単独の重合体または共重合体、あるいはその他のモノマーとの共重合体が使用できる。なお、アクリル樹脂系エマルジョンは、アクリル樹脂系ラテックスを含む。また本明細書中において、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0014】
アクリル系モノマーとしては、たとえば、
(メタ)アクリル酸;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸シクロへキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;
ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノ-アルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体;
グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0015】
アクリル系モノマーと共重合されるモノマーとしては、たとえば、
スチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系モノマー;
プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエスエル系モノマー;
無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和多価カルボン酸もしくはマレイン酸ジメチル、フマル酸ジエチル等の不飽和多価カルボン酸誘導体のエステル類;
N-フェニルマレイミド等のN-置換マレイミド;
エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー
等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0016】
酢酸ビニル系エマルジョンの形態で供される酢酸ビニル樹脂としては、特に制限はなく従来公知のものが使用でき、ポリ酢酸ビニルまたは酢酸ビニルと他のモノマーとの共重合体が使用できる。酢酸ビニルと共重合される他のモノマーとしては、たとえば、
エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー;
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジルアクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー;
マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸2-エチルヘキシル等のマレイン酸エステルやこれらに対応するフマル酸エステル;
プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル;
クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸半エステル、マレイン酸、マレイン酸半エステル等のカルボキシ基を有するモノマー;
スチレン、塩化ビニル、メチルビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクロレイン、クロトンアルデヒド等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0017】
エポキシ樹脂系エマルジョンの形態で供されるエポキシ樹脂としては、特に制限はなく従来公知のエポキシ樹脂が使用でき、たとえばビスフェノール型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルジアミン型エポキシ樹脂、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の環状オキシラン型エポキシ樹脂が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0018】
ウレタン樹脂系エマルジョンの形態で供されるウレタン樹脂としては、特に制限はなく従来公知のウレタン樹脂が使用でき、たとえばポリオール類および/またはポリアミンの混合物を第1成分とし、1分子中に平均2個以上の末端イソシアネート基を含有するポリイソシアネート類を第2成分として反応硬化して得られるウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0019】
上記ポリオール類としては、たとえばポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等が、上記ポリイソシアネートとしては、たとえばTDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(メチルジフェニルジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)およびHMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0020】
合成ゴムエマルジョンとしては、具体的には、スチレン-ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、イソプレンゴムラテックス、メチルメタクリレートブタジエンゴムラテックス等が挙げられる。
【0021】
(A)合成樹脂エマルジョンを構成する合成樹脂は、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などの活性水素を含む官能基を有することが望ましい。
たとえば、アクリル樹脂系エマルジョンについては、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらのアルキルエステルと、スチレンなどのモノマーとの共重合体に、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等を付加させることにより、水酸基を末端に有する重合体を合成することができる。
【0022】
また、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンについては、酢酸ビニルの重合体、酢酸ビニル-エチレン共重合体等にポリビニルアルコールを付加させることにより、同様に水酸基を有する重合体を合成することができる。
【0023】
本発明で用いる(A)合成樹脂エマルジョンは、上記合成樹脂を、乳化剤を用いてエマルジョンとすることにより調整することができる。また乳化重合により、原材料となるモノマーから直接合成樹脂エマルジョンを調製することもできる。乳化剤としては、特に限定されず、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤等から適宜選択して使用される。
【0024】
このような合成樹脂エマルジョンとして市販されているものとしては、「ヨドゾールAD152、AD159」(ヘンケルジャパン(株)製)、「ウルトラゾールN-80」(アイカ工業(株)製)、「NIPOL X814、LX854E、LX874、LX852、LX851C」(日本ゼオン(株)製)、「SAP-7118、7507、7209、7148、7156、7178、7308G、2118、2500P、2250」(Samji Corporation製)、「ボンコート VF-1040、CF-0140、EO-905EF、CG-8400、CG-8490、CF-2800」(DIC(株)製)、「KR-150、KR-648、KR-648L、KR-655」(光洋産業(株)製)、「モビニール128N、135N、138N、168N、718N、730L、742A、787」(ニチゴー・モビニール(株)製)などが挙げられる。
【0025】
合成樹脂エマルジョンとしては、分子構造中にカルボキシル基を有してなるアクリル酸エステル系共重合体ラテックスである自己架橋型アクリレートラテックスが、硬化性組成物の粘度および硬化性組成物を大欠陥部に充填・硬化させた際の平滑性の点で好ましい。
【0026】
これらの(A)合成樹脂エマルジョンは、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
本発明の硬化性組成物の固形分中に含まれる(A)合成樹脂エマルジョンの固形分量は、乾燥後の体積収縮による目減りが少なく、節穴の充填性に優れる点から、好ましくは10~50質量%、より好ましくは10~35質量%、さらに好ましくは15~25質量%であることが好ましい。
【0027】
(B)高吸水性樹脂
本発明で用いる(B)高吸水性樹脂は、吸水性を有する樹脂であって、球状粒子および/または球状の一次粒子が凝集した二次粒子を含有する形態の樹脂である。本発明で用いる(B)高吸水性樹脂は、球状の一次粒子が凝集した二次粒子を含有することが望ましい。
【0028】
(B)高吸水性樹脂に含まれる、二次粒子を構成する球状の一次粒子、あるいは球状粒子は、略球状であればよいが、長径と短径との差が長径の10%以内であることが好ましく、ほぼ真球状であることがより好ましい。このような粒子形状の吸水性樹脂を用いると、大欠陥部等の基材表面の凹凸に充填した組成物を発泡、硬化させる際に、歪みを生じず、節穴を均一に充填可能な硬化体を形成することができる。二次粒子を構成する球状の一次粒子、あるいは球状粒子は、顕微鏡写真により測定される長径を直径とした場合の中位粒子径(平均粒子径)が、通常40~150μm、好ましくは60~100μm程度であることが望ましい。なお、一次粒子あるいは球状粒子の中位粒子径は、顕微鏡写真により測定される、任意の10個の粒子の長径を平均して求めることができる。
【0029】
(B)高吸水性樹脂が、球状の一次粒子が凝集した二次粒子を含む場合、二次粒子の中位粒子径は、100~500μmであることが好ましく、200~400μmであることがより好ましい。二次粒子の中位粒子径がこの範囲にあると、組成物を発泡、硬化させる際の発泡性および基材表面凹部の充填性および、形成された硬化体の表面平滑性に優れる。なお、二次粒子の粒子径は、顕微鏡写真により測定される、粒子の最大径を意味する。例えば、二次粒子が略楕円形である場合、粒子の最大径とは、二次粒子の長径を意味する。また、二次粒子の中位粒子径は、顕微鏡写真により測定される、任意の10個の二次粒子の粒子径を平均して求めることができる。
【0030】
(B)高吸水性樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用でき、例えば、アクリル酸塩重合体およびその架橋物、澱粉-アクリル酸塩グラフト共重合体の加水分解生成物の架橋物、ビニルアルコール-アクリル酸塩共重合体の架橋物、無水マレイン酸グラフトポリビニルアルコールの架橋物、架橋イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、および酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物等が挙げられる。
【0031】
アクリル酸塩重合体に用いられるアクリル酸塩の具体例としては、例えば、アクリル酸リチウム、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム等のアクリル酸金属塩、アクリル酸アンモニウム等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸金属塩が好ましく、アクリル酸ナトリウムがより好ましい。
これらの中でも、硬化性組成物が硬化した際の体積収縮を緩和し、基材表面凹部の充填性に優れる点から、アクリル酸金属塩の重合体および/またはその架橋物が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムの架橋物がより好ましい。
【0032】
(B)高吸水性樹脂は、単一の構成単位だけではなく、2種類以上の構成単位から合成されていてもよい。また、合成の際に用いる重合開始剤、内部架橋剤、連鎖移動剤、キレート剤、架橋抑制剤、界面活性剤等が含まれていてもよく、またその合成方法は水溶液重合、逆相乳化重合、逆相懸濁重合等のいずれの方法でもよい。
【0033】
このような(B)高吸水性樹脂として市販されているものでは、アクリル酸金属塩の重合体およびその架橋物として、「アクアキープ」シリーズ(住友精化(株)製)、「サンフレッシュGT」、「アクアパールDS」(三洋化成(株)製)、「アクアリック」シリーズ(日本触媒(株)製)等が挙げられる。
【0034】
本発明の硬化性組成物の固形分100質量%中に含まれる(B)高吸水性樹脂の固形分含量は、組成物の流動性の観点から、0.005~0.1質量%が好ましく、より好ましくは0.005~0.05質量%、さらに好ましくは0.005~0.01質量%である。
【0035】
(C)体質顔料
本発明で用いる(C)体質顔料は、硬化性組成物の木質材凹部などへの充填性を向上させ、またコストの低減に寄与する。
本発明で用いる(C)体質顔料としては、体質顔料として公知の無機顔料および有機顔料を特に制限なく用いることができ、たとえば、カリ長石、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリンおよび硫酸バリウム等の無機顔料、およびアクリルビーズ等の有機顔料が挙げられる。
【0036】
これらの(C)体質顔料の中でも、無機顔料としては、炭酸カルシウムおよびカリ長石が好ましく、有機顔料としては、アクリルビーズが好ましい。また、無機顔料と有機顔料を併用することが好ましく、炭酸カルシウムとアクリルビーズを併用することがより好ましい。
【0037】
(C)体質顔料として用いられる無機顔料あるいは有機顔料として、市販されているものとしては、例えば以下のものが挙げられる。
カリ長石としては、例えば、「Unisper PG-K10」、「Unisper PG-F5」、「Unisper PG-F7」(SIBELCO社製)、「MINEX 8F」、「MINEX 10」(白石工業(株)製)、「MINEX 10B」(東洋ファインケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0038】
炭酸カルシウムとしては、例えば、「NS-300、400」(日本粉化工業(株)製)、「CaCO3 スーパーSS」(九州カルシウム(株)製)、「CaCO3 サンライト No.300」(竹原工業(株)製)、「炭酸カルシウム NN-200」(日東粉化工業(株)製)等が挙げられる。
【0039】
タルクとしては、例えば、「ミクロエースL-1」(日本タルク(株)製)、「タルクMG115」、「タルクMS410」、「タルクRL119」(富士タルク工業(株)製)、「タルクTST-1」、「タルクTST-2」、「FC-1タルク」(福岡タルク工業(株)製)等が挙げられる。
【0040】
アクリルビーズとしては、例えば、「ガンツパール GM-0401S」、「ガンツパール GM-0801」、「ガンツパール GM-2001」、「ガンツパール GM-4003」(アイカ工業(株)製)等が挙げられる。
【0041】
本発明の硬化性組成物の固形分100質量%中に含まれる(C)体質顔料の含有量は、特に限定されるものではないが、基材凹部への充填性と組成物の不揮発分のバランスの観点から、好ましくは5~70質量%、より好ましくは20~70質量%、さらに好ましくは40~60質量%であることが好ましい。
体質顔料は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
(D)ポリイソシアネート化合物
本発明で用いる(D)ポリイソシアネート化合物は、硬化性組成物中の(A)合成樹脂エマルジョンを構成する合成樹脂が有する水酸基またはカルボキシル基もしくは水分と反応し、組成物を発泡・硬化させる。ポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物などの、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート、およびブロック化ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
ポリイソシアネートとしては、具体的には、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-ジイソシアナートシクロヘキサン、ビス(4-イソシアナートフェニル)メタン、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-および2,6-トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、6-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートなどが挙げられる。また、上記ポリイソシアネートのアダクト体、あるいはイソシアヌレートなどの多官能イソシアネート化合物、さらにはこれらの二量体、三量体などの化合物が挙げられる。
【0044】
なお、ポリイソシアネート化合物としては、(A)合成樹脂エマルジョンとの相溶性の観点から、前記ポリイソシアネートと親水性界面活性剤とが結合した乳化性親水基含有ポリイソシアネートの形態であることが好ましい。親水性界面活性剤としては、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0045】
ブロック化ポリイソシアネートとしては、前記ポリイソシアネートのイソシアネート基が150℃以上で分離するブロック剤(ε-カプロラクタム等)によってブロックされた化合物が挙げられる。
【0046】
なお、基材がコンクリート型枠用合板や木質床材などの木質基材の場合、基材を100℃以上に加熱すると物性低下を招く恐れがあるため、通常は、このような温度には加熱されないことが多い。従って、本発明の硬化性組成物を、木材用シーラー組成物あるいは木材用パテ組成物等として用いる場合、(D)ポリイソシアネート化合物としては、ブロック化されていないポリイソシアネートがより好適である。
【0047】
(D)ポリイソシアネート化合物は、アロファネート構造を有することが好ましい。アロファネート構造を有する(D)ポリイソシアネート化合物を用いると、硬化性組成物を発泡・硬化する際の発泡性および基材表面凹部の充填性に優れる。
【0048】
アロファネート構造を有するポリイソシアネート化合物としては、上記のポリイソシアネート化合物のアロファネート変性物(アロファネート体)を特に制限なく用いることができる。アロファネート構造を有するポリイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物をアロファネート変性したものを用いてもよく、市販のアロファネート型ポリイソシアネート化合物を用いてもよい。なお、ポリイソシアネート化合物のアロファネート変性は、例えば、上記のポリイソシアネート化合物にカルボン酸の金属塩を触媒とし、40~130℃の中程度に高められた温度下でのアルコール化合物の付加反応等の手法によって行われる。
【0049】
このような(D)ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族ジイソシアネートのヌレート変性体からなる乳化性親水基含有ポリイソシアネートが好ましく、アロファネート骨格を有する脂肪族ジイソシアネートのヌレート変性体からなる乳化性親水基含有ポリイソシアネートがより好ましい。具体的には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート変性体からなる乳化性親水基含有ポリイソシアネートが好ましく、アロファネート骨格を有するヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート変性体からなる乳化性親水基含有ポリイソシアネートがより好ましいものとして挙げられる。
【0050】
本発明の硬化性組成物の固形分100質量%中に含まれる(D)ポリイソシアネート化合物の固形分量は、組成物の体積膨張率と発泡性および硬化性の観点から、通常5~50質量%が好ましい。この(D)ポリイソシアネート化合物の固形分量は、基材の種類および硬化性組成物の硬化・乾燥条件等に応じて適宜変更することができるが、下限値はより好ましくは10質量%、さらに好ましくは15質量%であり、上限値はより好ましくは40質量%、さらに好ましくは35質量%である。
【0051】
たとえば、本発明の硬化性組成物を針葉樹合板等の木質基材に用いる場合、節穴などの大欠損部に塗布・充填した硬化性組成物の硬化、すなわち塗膜または硬化体の形成は、好ましくは20~80℃程度の条件下において行われ、例えば60℃で強制乾燥させることによって行われる。このような条件下においては、(D)ポリイソシアネート化合物の固形分量は、15~50質量%であることが好ましく、15~40質量%がより好ましく、15~35質量%がさらに好ましい。
(D)ポリイソシアネート化合物の固形分量が前記範囲内であると、硬化性組成物の表面硬化性に優れる。
【0052】
(E)浸透防止剤
本発明の硬化性組成物は、任意に(E)浸透防止剤を含んでもよい。硬化性組成物を適用する基材が、木質基材などの浸透性を有する基材である場合には、(E)浸透防止剤を含有することが望ましい。
【0053】
本発明の硬化性組成物が(E)浸透防止剤を含有すると、硬化性組成物を木材等の基材に塗布した際に、硬化性組成物の基材への浸透が防止されるため、(D)ポリイソシアネート化合物と組成物中の水分とが効率よく反応して、基材内部の微小空隙等に過剰に浸透することなく、硬化性組成物を適用した箇所で硬化塗膜または硬化体を形成する。このため硬化性組成物が(E)浸透防止剤を含有すると、木質基材の凹部等に対しても充填性に優れ、充填された硬化性組成物が当該凹部内で目減りせずに硬化し、凹部が好適に充填された木質材等が得られるため好ましい。
【0054】
(E)浸透防止剤としては、非シリコーン系撥水剤、シリコーン系撥水剤等の公知の撥水剤をを用いることができる。
非シリコーン系撥水剤としては、例えば、フッ素系撥水剤、アクリル系撥水剤、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、蜜蝋、カルナバウロウ、ワセリン等のワックス系撥水剤等が挙げられる。
【0055】
このような(E)浸透防止剤として市販されているものとしては、例えば、「Creotran」((株)CGIクレオス、非シリコーン系撥水剤)等を用いることができる。
本発明の硬化性組成物中の固形分100質量%中に含まれる(E)浸透防止剤の固形分含有量は、硬化性組成物の充填性の観点から、0.01~0.2質量%が好ましく、0.02~0.12質量%がより好ましい。
【0056】
その他の成分
本発明の硬化性組成物は、その用途や適用形態に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、各種添加剤等のその他の任意成分を含有することができる。このようなその他の任意成分としては、着色顔料、揺変剤、沈殿防止剤、消泡剤、湿潤分散剤、発泡剤および、その他合成樹脂エマルジョンを含む塗料あるいはシーラー等に適用可能な公知の添加剤等が挙げられる。
【0057】
[着色顔料]
着色顔料としては、特に限定されることなく、公知の着色顔料を制限なく用いることができ、例えば、黄色酸化鉄、酸化チタン、シアニンブルー、カーボンブラック等が好ましく用いられる。
【0058】
本発明の硬化性組成物が着色顔料を含む場合には、硬化性組成物を適用する基材に所望の色調を与えることができる。着色顔料の種類は、所望の色調に加え、硬化後の用途および使用環境等に応じて適宜選択することができる。
【0059】
例えば、硬化性組成物をコンクリート型枠用合板として用いられる木質板に適用する場合には、コンクリート中のアルカリ等の成分に侵されないため変色等が生じにくいという利点から、黄色酸化鉄、酸化チタン、シアニンブルー、カーボンブラック等が好適であり、求められる色調に応じて選択することができる。
【0060】
黄色酸化鉄は、天然物と合成物(湿式、乾式)があるが、湿式法による合成物の黄色酸化鉄は、分散性、着色力・隠ぺい力、耐候性、耐酸・耐アルカリ性に優れ、硬化塗膜および硬化体の耐溶剤性の向上に寄与している。黄色酸化鉄として市販されているものとしては、例えば、「タロックス LL-XLO」(チタン工業(株)製、水和酸化第二鉄)、「BAYFERROX 920」(バイエル社製、水和酸化第二鉄)等が挙げられる。
【0061】
本発明では、このような着色顔料に代えて、またこのような着色顔料と共に、アルカリ等に安定なその他の顔料を用いることも好適であり、このようなアルカリ等に安定なその他の顔料としては、例えば、赤色酸化鉄などが挙げられる。
【0062】
[揺変剤]
揺変剤(チキソトロピー調整剤)としては、有機系揺変剤、無機系揺変剤、複合系揺変剤があり、有機系揺変剤としては、水添ひまし油系、アマイド系、酸化ポリエチレン系、植物油重合油系、界面活性剤系が、無機系揺変剤としては、シリカ、ベントナイト等が、複合系揺変剤としては、アマイド/ポリエチレン系などが挙げられる。揺変剤は、組成物の貯蔵安定性、塗装時の塗料のタレ防止に寄与し、多すぎると塗膜の平坦化へ悪影響を与える。遥変剤として市販されているものとしては、例えば、「エロジール200」(日本アエロジル(株)製)、「ディスパロン4200-20」(楠本化成(株)製、酸化ポリエチレン系)等が挙げられる。
【0063】
[沈殿防止剤]
沈殿防止剤としては、Al,Ca,Znのステアレート、有機ベントナイト、ポリエチレンワックス、アミドワックス、アマイドワックス、レシチン、アルキルスルホン酸塩などが挙げられる。市販されているものとしては、例えば、「ディスパロンAQ-607」、「ディスパロンAQ-001」、「ディスパロンBB-102」(楠本化成(株)製)等が挙げられる。
【0064】
[消泡剤]
消泡剤としては、シリコーン系、オキシアルキレン系、プロルニック型、鉱物系などの消泡剤が挙げられる。市販されているものとしては、例えば、「フローレンAC-300」(共栄社油脂(株)製)、「BYK-028」、「BYK-088」、「BYK-065」、「BYK-P104」(ビックケミー・ジャパン(株)製)、「ディスパロンOX-70」(楠本化成(株)製)等が挙げられる。
【0065】
[湿潤分散剤]
湿潤分散剤としては、市販されているものとしては、例えば、「AFCONA-4531」「AFCONA-4570」、「AFCONA-5071」(AFCONA製)、「EFKA-5071」(EFKA製)、「PAT-ADD DA202」、「PAT-ADD DA501」、「PAT-ADD DA603」(PATCHAM製)が挙げられる。
【0066】
硬化性組成物
本発明の硬化性組成物は、上述した各成分を適宜混合することで調製することができる。
本発明の硬化性組成物は、シーラー、パテ、塗料、シーラント等の形態で用いることが好ましく、用途に応じた特性を有するよう各成分の配合比を適宜調整することができる。
【0067】
本発明の硬化性組成物中に含まれる固形分以外の成分としては、水およびアルコール等の有機溶剤が挙げられ、水を含有することが望ましい。硬化性組成物中の固形分以外の成分は、(A)合成樹脂エマルジョン中に含まれる水分のみであってもよく、また、上記した構成成分以外の成分として添加したものを含んでもよい。硬化性組成物中の固形分以外の成分の量は、特に限定されるものではないが、硬化性組成物が所望の粘度となる量であればよく、塗料、シーラー(シーラント)、パテなどの、硬化性組成物を基材に適用する際の形態により、適宜調整することができる。上述した各成分以外の水を添加して硬化性組成物を調製する場合、添加する水を、上記各成分のいずれかにあらかじめ添加して、各成分を混合してもよく、各成分を混合した後に添加してさらに混合してもよい。具体的には、(A)合成樹脂エマルジョンおよび/または(B)高吸水性樹脂に、所望量の水をあらかじめ添加した後、各成分を公知の方法で混合あるいは混錬して、所望形態の硬化物組成物を調製することができる。
【0068】
本発明の硬化性組成物は、全成分を同時あるいは逐次に混合して調製してもよいが、(D)ポリイソシアネート化合物が硬化剤、発泡剤として作用することから、(D)成分以外の成分を主剤としてあらかじめ混合しておき、これに(D)ポリイソシアネート化合物を添加して調製することが好ましい。
【0069】
本発明の硬化性組成物の粘度は、シーラー、パテ、塗料などの、硬化物組成物を適用する際に所望される粘度であればよく、特に限定されるものではないが、硬化性組成物を木質材用シーラー組成物あるいは木質材用パテ組成物の形態で用いる場合には、23℃の粘度が、好ましくは5~25dPa・sであり、より好ましくは8~18dPa・sであり、さらに好ましくは、11~15dPa・sである。硬化性組成物の粘度が前記範囲にあると、ナイフコーター等の機械施工に適しており好適である。なお、粘度は、回転式粘度計によって測定した値であり、例えば、リオン粘度計ビスコテスタVT-04E(リオン株式会社製)を用いて測定することができる。
【0070】
本発明の硬化性組成物は、基材への適用形態に適した施工性、充填性を有し、かつ、硬化時の目減り・目ヤセが生じにくい。このため節穴等の凹部を有する木質材の目止めおよび凹部の充填を行うシーラー組成物あるいはパテ組成物として好適であり、このような用途に用いた場合には、凹部が好適に充填されるとともに、充填物である硬化性組成物が硬化した後の体積収縮(目減り・目ヤセ)が少なく、硬化後の充填箇所にへこみを生じにくく、木質基材等の適用基材の表面に平滑性を与えることができ、欠陥部、凹部が大きな場合にも、一度の施工で木質基材表面を十分に充填・被覆した木質材を製造することができる。本発明においては、硬化性組成物が、吸水性を有するとともに球状粒子および/または球状の一次粒子が凝集した二次粒子を含有する形態の樹脂である(B)高吸水性樹脂を含有することにより、硬化の前後において体積減少が生じにくく、目減り・目ヤセが少ないことから、欠陥部・凹部を有する基材への充填を行った場合には、硬化後にも充填箇所の目ヤセが少なく、平滑な表面を有する木質材などの加工基材を容易に製造することができる。
【0071】
また、本発明の硬化性組成物は、発泡性に優れていることが好ましい。本発明の硬化性組成物が発泡性に優れている場合には、欠陥部・凹部を有する基材に塗布・充填後に、硬化性組成物が十分に発泡した後硬化することで、欠陥部・凹部に硬化物が十分に充填された木質材を製造することができる。
【0072】
本発明の硬化性組成物の用途は、特に限定されるものではないが、表面に欠陥部・凹部を有する基材に適用することが好ましく、木質基材に適用する事がより好ましく、具体的には、例えば、コンクリート型枠用等の合板、床材、壁材、天井、手すり、家具等の木質材の表面に適用することができ、特にコンクリート型枠合板用途に適している。
【0073】
硬化性組成物の使用方法、木質材の製造方法
本発明の硬化性組成物は、適用する基材に塗布、充填した後、硬化させて、基材表面および充填箇所に硬化物である塗膜または硬化体を形成することができる。塗布・充填した硬化性組成物の硬化、すなわち塗膜または硬化体の形成は、通常0~100℃、好ましくは20~80℃程度の条件で行うことができる。
【0074】
本発明の硬化性組成物を、木質材用シーラー組成物または木質材用パテ組成物として木質基材に適用して、木質材を製造する場合には、ナチュラルリバースコーター、スポンジリバースコーター、ナイフコーター等の塗装機により塗付することが可能であるが、針葉樹合板の節穴充填においてはナイフコーターが最も好ましい。ナイフコーターを用いる場合は、ナイフコーターにセットされたダミー板にブレードを当て、そのブレード手前側に本発明の組成物を垂らし、基材を搬送させることで、容易に節穴などの凹み部分に充填することができる。基材の搬送速度は、組成物の充填性の観点から、10~30m/分が好ましく、ブレード角度は、30~60°が好ましい。
【0075】
また、節穴部分への充填時に欠けを生じた場合は、ブレード角度・搬送速度の調整および、必要に応じて組成物を水希釈することで改善できる。ナイフコーター塗付後は、強制乾燥(60℃/3~6時間)を行うことで、本組成物が節穴部分や深い凹み箇所に乾燥・硬化した発泡体として効率良く充填され、針葉樹合板の欠点である表面凹凸を無くし、次工程の塗装作業に移ることが可能である。
【0076】
木質基材としては、針葉樹由来の木質材、広葉樹由来の木質材、各種合板などを制限なく用いることができるが、本発明では、表面に節穴等の凹部や欠陥部を有する針葉樹由来の木質基材に対しても好適に用いることができる。
【0077】
本発明に係る硬化性組成物を、凹部を有する木質基材に塗布・充填し、硬化させて得られる木質材は、充填部の硬化物の体積減少が少なく、目減り・目ヤセが少ない。得られた木質材は、そのまま用いてもよく、また研磨や鉋がけなどにより表面を削る加工を行って用いることもできる。また、硬化性組成物が発泡性に優れており、充填部の硬化物が隆起した(盛り上がった)状態で得られる態様も許容でき、この場合には表面を研磨することにより平滑な木質材を容易に得ることができる。
【0078】
本発明の硬化性組成物、木質材用シーラー組成物およびパテ組成物は、施工後の硬化部上に、さらに上塗り塗料による塗膜の形成を行うことができ、またラミネート加工を施すこともできる。なお、ここでいう上塗り塗料とは、本発明の塗膜(シーラー層)の上層に塗布する塗料を指し、基材の最上面に塗布する上塗り塗料の他に、下塗り塗料、中塗り塗料を含むものである。これらの塗料としては、公知のものを適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<原料>
以下の実施例および比較例において、硬化性組成物の原料となる各成分としては、以下のものを用いた。
(A)合成樹脂エマルジョン
合成樹脂エマルジョン(A1):自己架橋型アクリレート系ラテックス、固形分45%
合成樹脂エマルジョン(A2):スチレン-アクリレートエマルジョン、固形分46%
(B)高吸水性樹脂
高吸水性樹脂(B1):アクアキープ(住友精化(株)製、真球凝集状のポリアクリル酸ナトリウムの架橋物、一次粒子の中位粒子径:80μm、二次粒子の中位粒子径:300μm)
高吸水性樹脂(B’2):不定形のポリアクリル酸ナトリウム、一次粒子の中位粒子径:300μm
高吸水性樹脂(B’3):不定形のポリアクリル酸ナトリウム、一次粒子の中位粒子径:150μm
(C)体質顔料
(C1):ガンツパールGM-2001(アイカ工業(株)製、アクリルビーズ)
(C2):Unisper PG-F7(SIBELCO社製、カリ長石)
(C3):炭酸カルシウム NN-200(日東粉化工業(株)製、炭酸カルシウム)
(D)ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物(D1):アロファネート構造を有するHDIイソシアヌレートからなる乳化性親水基含有ポリイソシアネート
ポリイソシアネート化合物(D2):HDIイソシアヌレートからなる乳化性親水基含有ポリイソシアネート
ポリイソシアネート化合物(D3):脂肪族ポリイソシアネート
【0080】
[実施例1]
硬化性組成物の調製
表1に示す配合で原料を混合することにより、硬化性組成物を調製した。高吸水性樹脂(B)は、他の材料と混合する前に、1/1000に水希釈したものを使用した。得られた硬化性組成物について、リオン粘度計ビスコテスタVT-04E(リオン(株)製)を用いて、23℃における粘度を測定したところ、8dPa・sであり、シーラー組成物、パテ組成物として好適な粘度を有していた。
【0081】
用いた高吸水性樹脂(B1)は、ほぼ真球状である球状の一次粒子が凝集した二次粒子の形態であって、球状の一次粒子の中位粒子径は80μm、二次粒子の中位粒子径は300μmであった。
【0082】
硬化性組成物の塗膜および硬化体が形成された木質材の製造
針葉樹合板(林べニア産業(株)製、120mm厚)を30cm×30cmに切断した後、ボッシュDIY電動工具 PMR 500 パワートリマーにて、直径2.5cm、深さ2.0mmの人工穴を4か所掘削し、表面をペーパー♯180で研磨した試験板を作成した。
【0083】
実施例の組成物を、速度:20m/分、角度:45°、プレス圧力:0.2MPaの条件で、ナイフコーターにて塗装後、60℃で3時間乾燥させて、本発明の組成物の硬化塗膜および硬化体が形成された木質材を得た。
得られた木質材について、次の方法で充填性を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0084】
・充填性
人口穴に充填された組成物の硬化体それぞれに対し、Mitutoyo DIGIMATIC INDICATOR((株)中央正規機器製)を使用して、人口穴の中央部分における、基材表面からの凹み値を測定し評価した。4か所の人口穴の測定値を平均して得られた平均値が、0.70mm以下であるものを合格と評価した。なお、硬化体が隆起しても合格と判断するが、隆起部を研磨する工程が不要になることから、隆起しない方が好ましい。
【0085】
[実施例2~8、比較例1~4]
それぞれ表1に示す配合で原料を用いたことの他は、実施例1と同様にして硬化性組成物を調製し、得られた硬化性組成物を用いて木質材を製造した。測定・評価結果をそれぞれ表1に併せて示す。
【0086】
【0087】
[比較例5,6]
実施例1において、高吸水性樹脂(B1)に代えて、高吸水性樹脂(B’2)または高吸水性樹脂(B’3)(いずれも凝集していない不定形粒子である)を用いたことの他は、実施例1と同様にして硬化性組成物を調製し、得られた硬化性組成物を用いて木質材を製造した。得られた木質材について、実施例1及び比較例4で得た木質材とともに、以下の方法で外観の評価を行った。結果を表2に示す。
【0088】
・外観評価
充填性の評価で得られた硬化体を目視にて評価した。硬化体が発泡し、かつ綺麗に膨らんで表面が滑らかであるものを○、硬化体が発泡し、かつ歪に膨らんで表面に凹凸が見られるものを△、硬化体が発泡しないものを×と評価した。
【0089】
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の硬化性組成物は、基材上に塗膜または硬化体を形成する用途に特に制限なく用いることができ、特に、針葉樹由来の木質基材などの、凹部・欠陥部を有する木質基材表面の欠損部・凹部を充填し、平滑な木質材を製造する用途に好適に用いることができる。