(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】麺線切出し装置、麺類の製造装置、並びに麺類及び即席麺の製造方法
(51)【国際特許分類】
A21C 11/24 20060101AFI20230214BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20230214BHJP
【FI】
A21C11/24 A
A23L7/109 B
A23L7/109 J
(21)【出願番号】P 2018202818
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000106531
【氏名又は名称】サンヨー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】永山 嘉昭
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-093145(JP,A)
【文献】特開2015-092837(JP,A)
【文献】特開2010-110334(JP,A)
【文献】特開2017-006091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 11/24
A23L 7/109
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向して噛み合うように並列に配置された複数の環状溝部を有する一対の切刃ロールと、
前記切刃ロールの長手方向に沿って延びる板状部と、前記板状部の長辺に、該長辺と略直交する方向に延びる複数の突起部を有するスクレーパであって、前記複数の突起部がそれぞれ前記切刃ロールの前記複数の環状溝部の対応する1つに係合して前記複数の環状溝部にある麺線を前記切刃ロールから剥離するように構成されている、
各切刃ロールに設けられたスクレーパと、
前記切刃ロールの長手方向に沿って前記複数の環状溝部の中心と揃うように配置された複数の突起部を有する櫛板であって、前記複数の突起部が、前記切刃ロールの前記複数の環状溝部に対して1つおきに配置されており、且つ、前記麺線が前記切刃ロール及び前記スクレーパの前記複数の突起部と接触していない位置で前記麺線と接触するように構成されている、
各切刃ロールに設けられた櫛板と
を備える、麺線切出し装置
であって、
前記櫛板が、前記切刃ロールの長手方向に沿って延びる板状部と、前記板状部の長辺に、該長辺と略直交する方向に延びる前記複数の突起部とを有しており、前記櫛板の前記板状部が前記スクレーパの前記板状部の上に重ねて配置されている、麺線切出し装置。
【請求項2】
前記櫛板の前記複数の突起部が、前記切刃ロールから剥離しかつ前記スクレーパから離間した麺線の進行方向及び該麺線の幅方向に対して直交する方向に該麺線に力を加える隆起形状を有する、請求項1に記載の麺線切出し装置。
【請求項3】
切り出された前記麺線を受容するガイドをさらに備える、請求項1
又は2に記載の麺線切出し装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の麺線切出し装置を含む麺類の製造装置。
【請求項5】
ドウから形成された麺帯を請求項1~
3のいずれか一項に記載の麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切り出すことを含む、麺類の製造方法。
【請求項6】
切り出された前記複数の麺線を一食単位に切断すること、及び一食単位に切断された前記複数の麺線を二つ折り又は二段重ねにすることをさらに含む、請求項
5に記載の麺類の製造方法。
【請求項7】
ドウから形成された麺帯を請求項1~
3のいずれか一項に記載の麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切り出すこと、
前記麺線を蒸煮してα化すること、
前記麺線を一食単位に切断すること、
前記麺線を二つ折り又は二段重ねにすること、及び
前記麺線を乾燥すること
を含む、即席麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、麺線切出し装置、麺線切出し装置を含む麺類の製造装置、並びに麺線切出し装置を用いた麺類及び即席麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中華麺、うどん、パスタ等の麺類の機械製麺は、例えば、小麦粉、澱粉等の主原料と、水、食塩、かん水等の副原料とを混練して得られた混練物(「ドウ」ともいう。)を圧延ロールに通してシート状の粗麺帯を形成し、2枚の粗麺帯を複合機により重ね、次の圧延ロールに通して所定の厚みまで薄くすることにより得られた麺帯を、複数の環状溝部を有する一対の切刃ロールを備えた麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切断及び分離することを含む。麺帯は、一対の切刃ロールの間に送り込まれて複数の環状溝部により複数の麺線に切断される。切断後、環状溝部に入っている麺線は、切刃ロールの複数の環状溝部に係合する複数の突起部を有するスクレーパによって、それぞれの切刃ロールの環状溝部から取り出される。取り出された麺線は、一方(例えば上側)の切刃ロールから取り出された麺線束と、他方(例えば下側)の切刃ロールから取り出された麺線束とを形成する。2つの麺線束の麺線は、麺線切出し装置の直下に配置されたコンベア上に直接落下するか、あるいはガイドに一旦受容され、ガイドを通る間に鉛直方向に波状に縮れた後、ガイドの出口からコンベア上に移される。その後、麺線は、例えば蒸煮、一食単位への切断、乾燥等の工程を経て麺製品となる。
【0003】
麺線を一食単位に切断する際、量目が製品規格の下限値より下回る場合、製品不良となるため、一食毎の量目を合わせることは重要である。例えば、量目のバラツキ(標準偏差)が大きいと、製品規格の下限値を下回らないようにするため、製品規格の中央値を大きくする必要が生じ、生産効率が低下し、麺製品の製造コストが上昇する。このため、量目のバラツキを抑制する試みがなされている。
【0004】
特許文献1(特開昭48-056876号公報)は、「麺線切刃ロール4、4の切出速度よりも緩慢な輸送速度を有する金網コンベヤー6が蒸煮函8を通過するようにし、同コンベヤー6に引続いて蒸煮麺線引出しコンベヤー10を設け、同コンベヤー10の輸送速度を上記切出速度に蒸煮による麺線5の延びを見込んだ速度にほぼ合致させ、同コンベヤーの終端部に定量切断装置11を設けて成る蒸煮麺類の連続製造装置」を記載している。
【0005】
特許文献2(特開平10-084896号公報)は、「袋詰即席麺類又は生麺類を製造する際に、蒸煮工程を経た麺線を引き伸ばしコンベア上で引き伸ばし、その引き伸ばされた麺線を1食づつカットして型枠コンベアの枠内に投入し、これをほぐして整形する工程を備えたものにおいて、蒸煮後の麺線を引き伸ばす際に、回転又は左右斜めに振れるノズルから圧縮空気を傾けて麺線に吹き付けることによって麺線をほぐす方法」を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭48-056876号公報
【文献】特開平10-084896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、麺線を一食単位に切断する際に、一食単位の量目のバラツキを少なくすることを目的として、特許文献1及び特許文献2のような麺線を引き伸ばす工程を採用した場合、製造ラインが長くなるため製造設備の配置に制約が生じる。また、蒸煮工程でα化した麺線表面はべたつきを有しており、麺線同士が相互に付着しやすいため、通常は、麺線の引き伸ばし工程の直前又は途中でほぐし液が麺線に散布される。そのため、生産効率の観点から、従来、引き伸ばし工程を採用せずに、麺線切出し装置より切り出された麺線束を二つ折り又は二段に重ねることが行われていた。麺線束を二つ折り又は二段に重ねる場合、麺線の引き伸ばし工程がないため依然として量目のバラツキが大きいという問題がある。
【0008】
本開示は、麺類の製造方法において、麺線を一食単位に切断する際に、量目のバラツキを抑制することが可能な麺線切出し装置及び麺類の製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、切刃ロールの環状溝部から取り出された麺線の一部に対して、所定方向に外力を加えて麺線の進行方向を変更及び/又は麺線の進行を遅延させることにより、上記課題を解決することができることを見出して本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、以下の実施形態[1]~[8]を包含する。
[1]
相互に対向して噛み合うように並列に配置された複数の環状溝部を有する一対の切刃ロールと、
前記切刃ロールの長手方向に沿って延びる板状部と、前記板状部の長辺に、該長辺と略直交する方向に延びる複数の突起部を有するスクレーパであって、前記複数の突起部がそれぞれ前記切刃ロールの前記複数の環状溝部の対応する1つに係合して前記複数の環状溝部にある麺線を前記切刃ロールから剥離するように構成されている、スクレーパと、
前記切刃ロールの長手方向に沿って前記複数の環状溝部の中心と揃うように配置された複数の突起部を有する櫛板であって、前記複数の突起部が、前記切刃ロールの前記複数の環状溝部に対して1つおきに配置されており、且つ、前記麺線が前記切刃ロール及び前記スクレーパの前記複数の突起部と接触していない位置で前記麺線と接触するように構成されている、櫛板と
を備える、麺線切出し装置。
[2]
前記櫛板の前記複数の突起部が、前記切刃ロールから剥離しかつ前記スクレーパから離間した麺線の進行方向及び該麺線の幅方向に対して直交する方向に該麺線に力を加える隆起形状を有する、[1]に記載の麺線切出し装置。
[3]
前記櫛板が、前記切刃ロールの長手方向に沿って延びる板状部と、前記板状部の長辺に、該長辺と略直交する方向に延びる前記複数の突起部とを有しており、前記櫛板の前記板状部が前記スクレーパの前記板状部の上に重ねて配置されている、[1]又は[2]のいずれかに記載の麺線切出し装置。
[4]
切り出された前記麺線を受容するガイドをさらに備える、[1]~[3]のいずれかに記載の麺線切出し装置。
[5]
[1]~[4]のいずれかに記載の麺線切出し装置を含む麺類の製造装置。
[6]
ドウから形成された麺帯を[1]~[4]のいずれかに記載の麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切り出すことを含む、麺類の製造方法。
[7]
切り出された前記複数の麺線を一食単位に切断すること、及び一食単位に切断された前記複数の麺線を二つ折り又は二段重ねにすることをさらに含む、[6]に記載の麺類の製造方法。
[8]
ドウから形成された麺帯を[1]~[4]のいずれかに記載の麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切り出すこと、
前記麺線を蒸煮してα化すること、
前記麺線を一食単位に切断すること、
前記麺線を二つ折り又は二段重ねにすること、及び
前記麺線を乾燥すること
を含む、即席麺の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、麺類の製造方法において、麺線を一食単位に切断する際に、量目のバラツキを抑制することができる。
【0012】
上述の記載は、本発明の全ての実施形態及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態の麺線切出し装置の切刃ロールの軸方向から見た概略断面図である。
【
図2】切刃ロールから剥離された麺線の進行方向が櫛板によって変更される様子を説明する概略断面図である。
【
図3】一実施形態の櫛板及びスクレーパの概略斜視図である。
【
図4】一実施形態の麺線切出し装置を麺線が取り出される側の正面から見た概略平面図である。
【
図5】一実施形態の麺線切出し装置を用いた麺線の切り出し工程を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の代表的な実施形態を例示する目的で、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。図面の参照番号について、異なる図面において類似する番号が付された要素は、類似又は対応する要素であることを示す。
【0015】
本開示における「麺類」とは、小麦粉、澱粉、米粉、そば粉、マメ粉等を主原料として含み、線状に加工され、茹でる、煮る、炒める、熱湯を注水する、そのまま又は注水して電子レンジで加熱するなどの調理により喫食可能な状態となる食品を意味する。麺類として、例えば、うどん、きしめん、中華麺、そば、パスタ等が挙げられる。調理前の麺類の状態として、生麺、乾麺、蒸麺、茹で麺、冷凍麺、及び即席麺等が挙げられる。
【0016】
本開示における「即席麺」とは、麺類のうち生麺、蒸麺又は茹で麺を加熱乾燥して、麺に含まれる水分を、油揚げ乾燥の場合は約2~10質量%、熱風乾燥の場合は約6~14.5質量%となるまで除去することにより、長期保存可能とした食品を意味する。製造工程中にα化工程が含まれず、かつ常温又は低温で長時間乾燥させたものを「乾麺」という。本開示において、乾麺は即席麺とは区別され即席麺から除かれる。
【0017】
本開示における「ドウ」とは、主原料と、水、食塩、かん水等の副原料との混練物を意味する。主原料及び副原料の混練には、ニーダ、プラネタリーミキサなどを用いることができる。ドウの形状は一般に不定形であるが、混練した後に押出機等を用いて円筒状、角筒状等に成形されていてもよい。
【0018】
本開示における「麺帯」とは、ドウを麺線の切出しに適した厚みを有するシート状に加工したものを意味する。加工の方法としては、圧延中に形成される中間物である2枚又は3枚の粗麺帯を複合機によって重ねた後、次の圧延ロールでさらに圧延することが挙げられる。別の加工方法としては、ドウを押出機によって直接シート状に押出することが挙げられる。
【0019】
本開示における「麺線」とは、麺線切出し装置によって機械的に麺帯から切り出された麺を意味する。麺線の断面形状は、円形、楕円形、正方形、矩形、又はこれらの形状の一部の組み合わせ若しくは厚さが異なる同一形状の組み合わせによる輪郭を有する形状であってよく、それらの角部は面取りされていてもよい。
【0020】
本開示における「麺線束」とは、並列に配置された複数の環状溝部を有する1つの切刃ロールから取り出される一群の複数の麺線を意味する。一対の切刃ロールを備える麺線切出し装置を用いると、それぞれの切刃ロールから麺線束が取り出される。これらの2つの麺線束は、通常その後の工程で積み重なって処理される。
【0021】
図1に、一実施形態の麺線切出し装置の切刃ロールの軸方向から見た概略断面図を示す。麺線切出し装置100は、相互に対向して噛み合うように並列に配置された複数の環状溝部12a、12bを有する一対の切刃ロール10a、10bと、切刃ロール10a、10bの長手方向に沿って延びる板状部24a、24bと、板状部24a、24bの長辺に、その長辺と略直交する方向に延びる複数の突起部22a、22bを有するスクレーパ20a、20bであって、複数の突起部22a、22bがそれぞれ切刃ロール10a、10bの複数の環状溝部12a、12bの対応する1つに係合して複数の環状溝部12a、12bにある麺線を切刃ロール10a、10bから剥離するように構成されている、スクレーパ20a、20bと、切刃ロール10a、10bの長手方向に沿って複数の環状溝部12a、12bの中心と揃うように配置された複数の突起部32a、32bを有する櫛板30a、30bであって、複数の突起部32a、32bが、麺線が切刃ロール10a、10b及びスクレーパ20a、20bの複数の突起部22a、22bと接触していない位置で麺線と接触するように構成されている、櫛板30a、30bとを備える。
図1には示されていないが、櫛板30a、30bの複数の突起部32a、32bは、切刃ロール10a、10bの複数の環状溝部12a、12bに対して1つおきに配置されている。本開示において、「中心と揃うように配置された」とは、環状溝部の幅方向の中心を通りその幅方向に直交する中心線と、櫛板の突起部の幅方向の中心を通りその幅方向に直交する中心線とが、重なるように一致していることをいう。
【0022】
図1では、櫛板の複数の突起部32a、32bがそれぞれ切刃ロール10a、10bの長手方向に沿って複数の環状溝部12a、12bの中心と揃うように配置されているが、櫛板の突起部は切刃ロールの長手方向に沿って環状溝部の中心からずれて配置されてもよい。櫛板の突起部は、環状溝部の中心から右側にずれて配置されてもよく、左側にずれて配置されてもよい。櫛板の複数の突起部はそれぞれ、複数の環状溝部の対応する環状溝部の中心から不規則な側にずれていてもよく、不規則な距離でずれていてもよく、又はこれらの組み合わせでずれていてもよい。
【0023】
麺線切出し装置は、必要に応じて、切り出された麺線を受容するガイドをさらに備えてもよい。ガイドは、導管、誘導管、又は「ウェーブボックス」などと呼ばれることもある。切刃ロール、スクレーパ、櫛板、及び任意のガイドは、ステンレス、鉄等を用いて形成された枠状の筐体に取り付けられていてもよい。
【0024】
一対の切刃ロールとして麺線切出し装置に使用される公知のものを使用することができる。一対の切刃ロールは、相互に対向して噛み合うように並列に配置された複数の環状溝部を有する。切刃ロールの複数の環状溝部の間には凸部が存在する。ギアを介して各切刃ロールをモータ等の駆動装置に連結し、一対の切刃ロールを互いに反対方向に回転させながら切刃ロール間に麺帯を通すことにより、一方の切刃ロールの凸部及び他方の切刃ロールの環状溝部により麺帯が麺線へと切断される。麺帯の切断により形成された麺線は、切刃ロールの環状溝部に入り込む。
【0025】
切刃ロールの材料として、ステンレス、鉄等を使用することができる。
【0026】
一実施形態では、一対の切刃ロールは水平方向に並べて配置されて、スクレーパにより剥離された麺線は鉛直方向に移動(落下)する。別の実施形態では、一対の切刃ロールは水平方向から0度超、90度以下の角度を成す方向に並べて配置されて、スクレーパにより剥離された麺線は、斜め下方向に移動しながら落下する。
【0027】
環状溝部の断面は、半円形、半楕円形、正方形、矩形、三角形又はこれらの形状の一部の組み合わせ若しくは環状溝部の深さが異なる同一形状の組み合わせによる輪郭を有する形状であってよく、それらの角部は面取りされていてもよい。環状溝部の間の凸部は、平面、曲面、2つ以上の平面の組み合わせ、又は曲面と1以上の平面の組み合わせとすることができる。
【0028】
一実施形態では、環状溝部の幅は、0.75mm以上、1.0mm以上、1.07mm以上、1.15mm以上、1.25mm以上、1.36mm以上、1.5mm以上、又は1.68mm以上、3.0mm以下、2.5mm以下、又は2.0mm以下である。例えば、環状溝部の幅を、0.75mm~3.0mm、1.0mm~2.5mm、又は1.07mm~2.0mmとすることができる。本発明は、このようなラーメンの製造に通常用いられる幅を有する環状溝部により切り出される麺線に対してより効果的である。
【0029】
スクレーパとして麺線切出し装置に使用される公知のものを使用することができる。スクレーパは、切刃ロールの長手方向に沿って延びる板状部と、板状部の長辺に、その長辺と略直交する方向に延びる複数の突起部を有する。複数の突起部はそれぞれ、切刃ロールの複数の環状溝部の対応する1つに係合して複数の環状溝部にある麺線を切刃ロールから剥離する。1つの切刃ロールから剥離された麺線は、切刃ロールの軸方向に沿って並んだ一群の複数の麺線から構成される麺線束となって、鉛直方向又は斜め下方向に向かって移動する。したがって、一対の切刃ロールから2つの麺線束が形成される。スクレーパは、カスリと呼ばれることもある。切刃ロールには稀に麺線の滓が付着したまま残留することがある。麺線の滓を切刃ロールから除去するために、スクレーパに、対応する複数の環状溝部の間の凸部の1つに接触する複数の突起部を設けてもよい。
【0030】
スクレーパの板状部は複数の突起部を所定位置で保持する支持部材として機能し、複数の突起部に加わる応力を吸収することもできる。スクレーパの板状部を利用して、ボルト等によりスクレーパを筐体に固定することもできる。
【0031】
スクレーパの複数の突起部はまっすぐ伸びていてもよく、屈曲部又は湾曲部を含んでもよい。複数の突起部の角部は面取りされていてもよい。
【0032】
スクレーパは、一枚の板の一方の辺に、櫛歯状の切り込みを入れて複数の突起部を形成することにより得ることができる。板は1つ又は2つ以上の鈍角を有するように折り曲げられていてもよく、複数の突起部に相当する部分、複数の突起部と板状部との境界に相当する部分、又はそれらの両方が屈曲又は湾曲していてもよい。スクレーパの材料として、真鍮、リン青銅、ステンレス等を使用することができる。真鍮及びリン青銅は加工が容易であり、ステンレスは耐久性に優れている。
【0033】
図2に、切刃ロールから剥離された麺線の進行方向(櫛板の突起部に麺線が接触する直前及び接触した直後における麺線が有する速度ベクトルの向き)が櫛板によって変更される様子を説明する概略断面図を示す。
図2では、一方の切刃ロール10aの環状溝部12aにある麺線52aが、環状溝部12aに係合したスクレーパ20aの突起部22aにより切刃ロールから剥離されて斜め下方に移動する。櫛板30aの突起部32aは、麺線52aが切刃ロール10a及びスクレーパ20aの突起部22aと接触していない位置で麺線52aと接触する。その際に、麺線52aは突起部32aから外力を受けて、切刃ロール10aから剥離して移動している麺線52aの進行方向は、
図2の曲線矢印で示されるように変更される。
【0034】
櫛板の突起部と接触した全ての麺線の進行方向が変更されてもよく、櫛板の突起部と接触した一部の麺線の進行方向が変更されるが、櫛板の突起部と接触した残りの麺線の進行方向が変更されなくてもよい。櫛板の突起部と接触した麺線の進行方向は様々な方向に変更されてもよく、
図2に曲線矢印で示すものに限られない。
【0035】
図1及び
図2に示すように、櫛板の複数の突起部は、切刃ロールの複数の環状溝部に係合せず、挿入もされない。したがって、櫛板は切刃ロールの複数の環状溝部にある麺線を剥離する機能を有さない。
【0036】
一実施形態では、
図3に概略斜視図で示すように、櫛板30は、切刃ロールの長手方向に沿って延びる板状部34と、板状部34の長辺に、その長辺と略直交する方向に延びる複数の突起部32とを有しており、櫛板30の板状部34がスクレーパ20の板状部24の上に重ねて配置されている。櫛板の板状部とスクレーパの板状部とを重ねて、櫛板及びスクレーパを一緒にボルト等で筐体に固定してもよい。
【0037】
櫛板の複数の突起部はまっすぐ伸びていてもよく、屈曲部又は湾曲部を含んでもよい。複数の突起部の角部は面取りされていてもよい。
【0038】
櫛板は、一枚の板の一方の辺に、櫛歯状の切り込みを入れて複数の突起部を形成することにより得ることができる。板は1つ又は2つ以上の鈍角を有するように折り曲げられていてもよく、複数の突起部と板状部との境界に相当する部分が屈曲又は湾曲していてもよい。櫛板を圧縮成形、射出成形、注型などの樹脂成形技術を用いて形成することもできる。
図3では櫛板が一枚で構成されているが、突起部を有する二枚以上の部材を重ね合せて櫛板を構成してもよい。
【0039】
櫛板の材料として、例えば、真鍮、リン青銅、ステンレス等の金属材料、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBS)、シリコーンゴムなどのゴム、又はアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することができる。真鍮、リン青銅、ゴム、及びプラスチックは加工が容易であり、ステンレスは耐久性に優れている。複数の突起部の表面にニッケルなどのメッキ、又はフッ素樹脂等のコーティングが施されていてもよい。
【0040】
一実施形態では、櫛板の複数の突起部は、切刃ロールから剥離しかつスクレーパから離間した麺線の進行方向とは異なる方向に麺線に力を加える隆起形状を有する。隆起形状を有する突起部の、麺線の進行方向に沿った断面として、鉤状に曲げられた形状、半円形若しくは弓形、三角形、台形等が挙げられる。
図1、
図2及び
図3には、麺線の進行方向に沿った断面が鉤状に曲げられた形状を有する突起部32、32a、32bが示されている。
【0041】
麺線配向変更部材の複数の突起部の幅は、切刃ロールの環状溝部の幅と同じであってもよく、切刃ロールの環状溝部の幅より大きくてもよく、切刃ロールの環状溝部の幅より小さくてもよい。一実施形態では、麺線配向変更部材の複数の突起部の幅は、切刃ロールの環状溝部の幅の50%~150%、50%~120%、又は80%~100%である。
【0042】
櫛板の複数の突起部は、切刃ロールの複数の環状溝部に対して1つおきに配置されている。
図4に一実施形態の麺線切出し装置を麺線が取り出される側の正面から見た概略平面図を示す。
図4では、切刃ロール10a、10bの複数の環状溝部12a、12bのそれぞれにスクレーパの複数の突起部22a、22bが係合しており、切刃ロール10a、10bの複数の環状溝部12a、12bに対して櫛板の複数の突起部32a、32bが1つおきに配置されている。この実施形態では、1つの麺線束のある麺線は櫛板の突起部と接触してその進行方向が変更されるが、同じ麺線束の当該麺線に隣り合う麺線は櫛板の突起部と接触せずその進行方向は変更されない。その結果、櫛板の突起部に接触した麺線と接触しなかった麺線との間で、麺線の進行方向のずれ、又は麺線の進行の遅延に起因する縮れの周期若しくは位相のずれが生じる。他方、櫛板の突起部に接触しない麺線には、通常の縮れが形成される。そのため、1つの麺線束に含まれる麺線の一部の進行方向又は縮れの周期若しくは位相の規則性を失わせて、縮れ形状を保持したまま、当該麺線束の単位長さあたりの麺線質量をより均一にすることができる。一般に、麺製品の製造において、麺線を一食単位に切断する工程では、製造誤差等を考慮して、麺線の質量が一食の量目を下回らないように、例えば一食の量目の105%を目標値として麺線が切断される。麺線束の単位長さあたりの麺線質量をより均一にすることで、麺線を一食単位に切断する工程において考慮すべき製造誤差をより小さくすることができる。その結果、一食の量目により近い目標値、すなわちより100%に近い目標値で麺線を切断することができ、麺製品の製造コストを効果的に削減することができる。
【0043】
一実施形態では、麺線切出し装置は、切り出された麺線を受容するガイドをさらに備える。ガイドとして、スクレーパによって切刃ロールから剥離された麺線を一旦受容して、その後、麺線をコンベア上に導く機能を有する、麺線切出し装置に使用される公知のものを使用することができる。ガイドは、切刃ロールの長手方向に沿って配置された、麺線束を分割する仕切り板をさらに備えてもよい。ガイドは、一般に、一対の切刃ロールの直下又は斜め下方であって、かつ一対の切刃ロールとコンベアの間に、垂直方向に麺線が移動するように立てて、又は斜め下方向に麺線が移動するように傾斜して配置される。
【0044】
ガイドは、一般に樋状、板状、又は管状であり、ステンレス、プラスチック等の材料を用いて形成することができる。ガイドの上側は開放されていてもよく、ガイドの上側に開閉可能かつ開口部分の高さを調整可能な蓋を用いてもよい。蓋は、ガイドに取り付けられていてもよく、ガイドと一体であってもよく、ガイドとは別の部分、例えば切刃ロールが装着された筐体に取り付けられてもよい。ガイドと蓋とは同じ材料で形成されてもよく、異なる材料で形成されてもよい。例えば、ガイドをステンレス製としたときに、蓋は軟質プラスチック又はシリコーンゴム製のシートであってもよい。
【0045】
切刃ロールの直下又はガイドの出口の下方にコンベアを配置することができる。コンベアは特に限定されず、金網コンベア又はネットコンベア、ベルトコンベアなどであってよい。切り出された麺線は、コンベア上に直接又はガイドを通って移送される。一対の切刃ロールから形成された2つの麺線束はコンベア上又はガイド上で鉛直方向に積み重ねられて、後工程に移送されて処理される。
【0046】
麺線切出し装置の直下に配置されたコンベアの搬送速度は、一般に切刃ロールの回転速度、すなわち麺線の切出し速度より小さくされる。切り出された麺線は、コンベア上に移されたとき、又はガイド上を移動している間に、コンベアの搬送速度と麺線の切出し速度の差による生じる抵抗を受けて縮れる。このように縮れた麺線の状態を、その形状から「ウェーブ」と表現する場合がある。上側に蓋を有するガイドを通して麺線をコンベア上に導く場合、ガイド及び蓋により画定された、より拘束された空間で麺線が縮れるため、麺線の縮れの度合い、すなわち「ウェーブ」の大きさをより均一にすることができる。上側に蓋を有するガイドを用いない場合、麺線に縮れを形成するためには、切刃ロールの直下にコンベアを配置することが望ましい。切刃ロールとコンベアの距離が離れていると麺線に縮れが形成されない場合がある。切刃ロールとコンベアの距離がどの程度で麺線に縮れが形成されるかは、麺線の原材料、製造条件等により異なるので、コンベアは麺線に縮れが形成される程度に切刃ロールの「直下」にあればよい。上側に蓋を有するガイドを用いて麺線に縮れを形成する場合は、コンベアの配置及び切刃ロールとコンベアの距離に制限はない。
【0047】
麺線を蒸煮する際に、上記コンベアよりも若干高速で麺線束を搬送するコンベアを上記コンベアの直後又は後工程に配置してもよい。蒸煮を行う際、縮れの密度が高すぎると、麺線表面のα化により麺線同士が結着することがある。しかし、麺線同士の結着を防ぐことができる程度に縮れの密度が疎である麺線束を、切刃ロールの切出し速度とコンベアの搬送速度のみで実現しようとしても、好適な形状の縮れをつくることが難しい場合がある。そこで、麺線切出し装置の直後のコンベア上では縮れが密な状態の麺線束をつくり、その後、蒸煮前に若干高速で麺線束を搬送するコンベアに移して、蒸煮時に麺線同士が結着しない程度に縮れの密度を緩和させることができる。コンベア速度が若干高速になっていることにより、後工程の生産効率を高めることもできる。
【0048】
図5に、一実施形態の麺線切出し装置100を用いた麺線の切り出し工程を説明する概略断面図を示す。麺帯50は、互いに反対方向に回転する一対の切刃ロール10a、10bの間を通過する。切刃ロール10a、10bはそれぞれ、麺帯50を複数の麺線52a、52bへと切断する。切刃ロール10a、10bの環状溝部12a、12bに入った麺線52a、52bは、スクレーパ20a、20bの突起部(符号不図示)により切刃ロール10a、10bから剥離されて上側麺線束54a及び下側麺線束54bをそれぞれ形成し、斜め下方に向かって進行する。その後、麺線52a、52bの一部は、櫛板30a、30bの突起部(符号不図示)と接触して、接触した麺線52a、52bの進行方向は変更される。切刃ロール10a、10bの斜め下方、かつ切刃ロール10a、10bとコンベア44の間にガイド40及び蓋42が配置されている。麺線52a、52bは、ガイド40及び蓋42で画定された、拘束された空間を通る間に、コンベア44の搬送速度と切刃ロール10a、10bの回転速度、すなわち麺線の切出し速度の差により縮れる。ガイド40の内部又は出口で、麺線52aを含む上側麺線束54aと麺線52bを含む下側麺線束54bとが重ねられて、コンベア44により、蒸煮等の後工程に移送される。
【0049】
一実施形態の麺類の製造装置は、上記麺線切出し装置を含む。麺類の製造装置は、ホッパーなどの主原料及び副原料の供給装置、主原料及び副原料を混練するニーダ、プラネタリーミキサなどの混合装置、押出機、ドウから麺帯を形成する圧延ロール及び複合機、麺線束を搬送するコンベア、麺線に含まれる澱粉質をα化する蒸煮機、麺線束を一食分の長さに切断する切断機、油揚げ乾燥機又は熱風乾燥機、包装機などを含んでもよい。
【0050】
一実施形態の麺類の製造方法は、ドウから形成された麺帯を、上記麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切り出すことを含む。
【0051】
一実施形態の麺類の製造方法は、切り出された複数の麺線を一食単位に切断すること、及び一食単位に切断された複数の麺線を二つ折り又は二段重ねにすることをさらに含む。一食単位の切断は、麺線のα化前に行ってもよく、α化後に行ってもよい。複数の麺線の二つ折りは、コンベアの進行方向に直交する方向に少なくとも1箇所切断した麺線を鉛直方向(コンベア下方)に垂下させた状態で横(垂下した麺線に直交する方向)から板状の押し込み部材で麺線を押し込むことにより折り畳む方法を用いて行うことができる。なお、麺線の折り畳みが完了する前に押し込み部材は押し込み前の位置まで戻る。複数の麺線を一食単位に切断した後に折り畳んでもよく、折り畳むと同時に一食単位に切断してもよい。複数の麺線の二段重ねは、一食単位に切断した麺線を重ねることにより行うことができる。進行方向に同列の麺線を待ち受ける同期機構を設けてもよく、進行方向に並列する麺線を重ね合せてもよい。
【0052】
一実施形態の即席麺の製造方法は、ドウから形成された麺帯を、上記麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切り出すこと、切り出された麺線を蒸煮してα化すること、及びα化した麺線を乾燥することを含む。即席麺は油揚げ麺であってもよく、熱風乾燥麺であってもよい。
【0053】
一実施形態の即席麺の製造方法は、ドウから形成された麺帯を、上記麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切り出すこと、麺線を蒸煮してα化すること、麺線を一食単位に切断すること、麺線を二つ折り又は二段重ねにすること、麺線を乾燥することを含む。即席麺は油揚げ麺であってもよく、熱風乾燥麺であってもよい。α化、一食単位の切断、及び二つ折り又は二段重ねにすることは、いずれの順番で行ってもよい。
【0054】
一実施形態の即席麺の製造方法は、ドウから形成された麺帯を、上記麺線切出し装置を用いて複数の麺線に切り出すこと、切り出された麺線を蒸煮してα化すること、α化した麺線を一食単位に切断すること、一食単位に切断された麺線を二つ折り又は二段重ねにすること、二つ折り又は二段重ねにされた麺線を乾燥することを含む。即席麺は油揚げ麺であってもよく、熱風乾燥麺であってもよい。
【0055】
一実施形態の麺類又は即席麺の製造方法は、麺線を一食単位に切断する際に、一食単位の量目のバラツキを少なくすることを目的として、切り出された麺線を引き伸ばすことを含まない。例えば、麺類又は即席麺の製造方法は、麺線を一食単位に切断する際に、一食単位の量目のバラツキを少なくすることを目的として、α化された麺線を引き伸ばすことを含まない。麺線を引き伸ばすことは、麺線が切り出された直後のコンベア、及び蒸煮時に縮れの密度を緩和させるために若干速く麺線束を搬送するコンベアよりも、さらに高速で麺線束を搬送するコンベアを設けることにより行うことができる。高速なコンベアに麺線束が移る際に、麺線が引き伸ばされる。高速コンベアの速度は、麺線切出し装置から一食単位の切断までのライン長等により異なるので、一食単位の切断を行う際に麺線が引き伸ばされているように適宜決定することができる。麺類又は即席麺の製造方法が麺線を引き伸ばすことを含まないことにより、ライン長を短くすることができ、ほぐし液の塗布も不要となるので、効率的に生産を行うことができる。
【0056】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、その精神の範囲内において本発明の様々な変形、構成要素の追加、又は改良が可能である。
【符号の説明】
【0057】
100 麺線切出し装置
10、10a、10b 切刃ロール
12、12a、12b 環状溝部
20、20a、20b スクレーパ
22、22a、22b スクレーパの突起部
24、24a、24b スクレーパの板状部
30、30a、30b 櫛板
32、32a、32b 櫛板の突起部
34、34a、34b 櫛板の板状部
40 ガイド
42 蓋
44 コンベア
50 麺帯
52a、52b 麺線
54a 上側麺線束
54b 下側麺線束