(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】アウトソール、ゴルフトレーニング用シューズ、及びバランス矯正用器具
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20230214BHJP
A43B 5/00 20220101ALI20230214BHJP
A43B 7/32 20060101ALI20230214BHJP
A63B 69/36 20060101ALI20230214BHJP
A43B 13/22 20060101ALN20230214BHJP
【FI】
A43B13/14 A
A43B5/00 303
A43B7/32
A63B69/36 531A
A43B13/22 A
(21)【出願番号】P 2018231359
(22)【出願日】2018-12-11
【審査請求日】2021-10-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)展示日 2018年6月13日(2)展示会名、開催場所 Callaway Apparel Spring&Summer2019大阪展 ハービスホール展示場(大阪府大阪市北区梅田2丁目5ハービスOSAKA)(3)公開者 キャロウェイアパレル株式会社(4)公開された発明の内容 キャロウェイアパレル株式会社は、Callaway Apparel Spring&Summer2019大阪展にて、原洋介が発明したゴルフトレーニング用シューズを展示した。
(73)【特許権者】
【識別番号】300044551
【氏名又は名称】トップゴルフ キャラウェイ ブランズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】原 洋介
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0111748(KR,A)
【文献】特開2015-051256(JP,A)
【文献】特開2013-081741(JP,A)
【文献】特開平09-308706(JP,A)
【文献】特表2011-516127(JP,A)
【文献】登録実用新案第3122440(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0084589(KR,A)
【文献】特開2001-275702(JP,A)
【文献】登録実用新案第3150974(JP,U)
【文献】実開平4-40804(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00-23/30
A43C 1/00-19/00
A43D 1/00-999/00
A63B69/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズのアウトソールであって、
前記アウトソールの接地面は、前記アウトソールの前後方向及び左右方向において、地面側に凸状の曲面を有するように構成され、
前記アウトソールの内部には、前記接地面を補強するための複数の突起部が設けられて
おり、
前記アウトソールの接地面は、前記アウトソールの接地面の頂点を中心として同心円状に並んだ複数の溝状の波紋構造をさらに備える、前記アウトソール。
【請求項2】
前記複数の突起部は、前記アウトソールの内部の足側の面に固定され、前記複数の突起部のうちの一部又は全ては、これら突起部の先端と前記接地面との間の距離が一定となるように設計されている、請求項1に記載のアウトソール。
【請求項3】
前記接地面の曲面は、前記前後方向において200~330の範囲のR値を有し、前記左右方向において20~100のR値を有する、請求項1又は2に記載のアウトソール。
【請求項4】
前記アウトソールの前後方向の長さをLとすると、
前記接地面は、前記アウトソールのつま先部分から長さ2L/5から長さ3L/5の範囲に前記曲面の頂点がくるように構成され、且つ、
(i)前記アウトソールのつま先部分から長さL/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、50~100の範囲にあり、且つ/又は、
(ii)前記アウトソールのつま先部分から長さ2L/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、50~80の範囲にあり、且つ/又は、
(iii)前記アウトソールのつま先部分から長さ3L/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、20~40の範囲にあり、且つ/又は、
(iv)前記アウトソールのつま先部分から長さ4L/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、50~80の範囲にある、請求項3に記載のアウトソール。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のアウトソールを備えたシューズ。
【請求項6】
ゴルフトレーニング用シューズである請求項5に記載のシューズ。
【請求項7】
シューズ又は足に装着されるバランス矯正用器具であって、
前記器具の接地面は、前記器具の前後方向及び左右方向において、地面側に凸状の曲面を有するように構成され、
前記器具の内部には、前記接地面を補強するための複数の突起部が設けられ、
前記複数の突起部は、前記器具の内部の足側の面に固定され、前記複数の突起部のうちの一部又は全ては、これら突起部の先端と前記接地面との間の距離が一定となるように設計されて
おり、
前記器具の接地面は、前記器具の接地面の頂点を中心として同心円状に並んだ複数の溝状の波紋構造をさらに備える、前記器具。
【請求項8】
前記接地面の曲面は、前記前後方向において200~330の範囲のR値を有し、
前記器具の前後方向の長さをLとすると、
前記接地面は、前記アウトソールのつま先部分から長さ2L/5から長さ3L/5の範囲に前記曲面の頂点がくるように構成され、且つ、
(i)前記器具のつま先部分から長さL/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、50~100の範囲にあり、且つ/又は、
(ii)前記器具のつま先部分から長さ2L/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、50~80の範囲にあり、且つ/又は、
(iii)前記器具のつま先部分から長さ3L/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、20~40の範囲にあり、且つ/又は、
(iv)前記器具のつま先部分から長さ4L/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、50~80の範囲にある、請求項7に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトソール、ゴルフトレーニング用シューズ、及びバランス矯正用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、靴底(アウトソール)の接地面の形状を船底型楕円状に形成し、使用者のバランス感覚を向上させるシューズは知られている。
【0003】
特許文献1は、靴の接地面を重心よりも前方内側に一番高い位置に設定する船底型楕円形状にした足腰矯正強化用の訓練靴を開示する。特許文献2は、バランス感覚を鍛え、歩く等の前進機能効果を上げるための、アウトソールの接地面が前後方向に凸状の曲面をなした不安定な履物を開示する。特許文献3は、アウトソールの接地面を半球体とした、使用者の足首の怪我の予防とその部位を強化するための足首強化履物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-187803号公報
【文献】特開2013-81741号公報
【文献】特開平9-308706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴルファーは、ゴルフクラブをスイングする際に、できるだけ体重移動を減らし、ゴルフクラブヘッドからゴルフボールに伝わる力を減衰させず、ゴルフボールを所望の方向及び距離に飛ばすようにすることが望まれる。ゴルファーにとってゴルフクラブのスイング時のバランスを保つこと(過度な体重移動を減らすこと)は、プレーの質を向上させるための重要な要素の一つである。
【0006】
従来のバランス矯正用のシューズでは、それを履いた使用者の重さによりアウトソールの接地面の形状が歪み、例えば接地面が平坦になってしまう等により、接地面の曲面の頂点が消滅し、バランスをとるべき位置(バランスポイント)が変わってしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、使用者のバランス強化のために設けたアウトソールの接地面の曲面形状を補強し、使用者の体重により接地面のバランスポイントが変わることを防止ないし低減するアウトソールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明には、下記実施形態が含まれる。
〔1〕
シューズのアウトソールであって、
前記アウトソールの接地面は、前記アウトソールの前後方向及び左右方向において、地面側に凸状の曲面を有するように構成され、
前記アウトソールの内部には、前記接地面を補強するための複数の突起部が設けられている、前記アウトソール。
〔2〕
前記複数の突起部は、前記アウトソールの内部の足側の面に固定され、前記複数の突起部のうちの一部又は全ては、これら突起部の先端と前記接地面との間の距離が一定となるように設計されている、上記〔1〕に記載のアウトソール。
〔3〕
前記接地面の曲面は、前記前後方向において200~330の範囲のR値を有し、前記左右方向において20~100のR値を有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載のアウトソール。
〔4〕
前記アウトソールの前後方向の長さをLとすると、
前記接地面は、前記アウトソールのつま先部分から長さ2L/5から長さ3L/5の範囲に前記曲面の頂点がくるように構成され、且つ、
(i)前記アウトソールのつま先部分から長さL/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、50~100の範囲にあり、且つ/又は、
(ii)前記アウトソールのつま先部分から長さ2L/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、50~80の範囲にあり、且つ/又は、
(iii)前記アウトソールのつま先部分から長さ3L/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、20~40の範囲にあり、且つ/又は、
(iv)前記アウトソールのつま先部分から長さ4L/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、50~80の範囲にある、上記〔3〕に記載のアウトソール。
〔5〕
上記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のアウトソールを備えたシューズ。
〔6〕
ゴルフトレーニング用シューズである上記〔5〕に記載のシューズ。
〔7〕
シューズ又は足に装着されるバランス矯正用器具であって、
前記器具の接地面は、前記器具の前後方向及び左右方向において、地面側に凸状の曲面を有するように構成され、
前記器具の内部には、前記接地面を補強するための複数の突起部が設けられ、
前記複数の突起部は、前記器具の内部の足側の面に固定され、前記複数の突起部のうちの一部又は全ては、これら突起部の先端と前記接地面との間の距離が一定となるように設計されている、前記器具。
〔8〕
前記接地面の曲面は、前記前後方向において200~330の範囲のR値を有し、
前記器具の前後方向の長さをLとすると、
前記接地面は、前記アウトソールのつま先部分から長さ2L/5から長さ3L/5の範囲に前記曲面の頂点がくるように構成され、且つ、
(i)前記器具のつま先部分から長さL/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、50~100の範囲にあり、且つ/又は、
(ii)前記器具のつま先部分から長さ2L/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、50~80の範囲にあり、且つ/又は、
(iii)前記器具のつま先部分から長さ3L/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、20~40の範囲にあり、且つ/又は、
(iv)前記器具のつま先部分から長さ4L/5の位置における前記左右方向の前記接地面の曲面のR値は、50~80の範囲にある、上記〔7〕に記載の器具。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態に係るゴルフトレーニング用シューズは、使用者のバランス強化のために設けたアウトソールの接地面の曲面形状を補強し、使用者の体重により接地面のバランスポイントが変わることを防止ないし低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1-1】一実施形態に係るゴルフトレーニング用シューズの外観図である。
【
図1-2】一実施形態に係るゴルフトレーニング用シューズの外観図である。
【
図2】一実施形態に係るゴルフトレーニング用シューズの断面図である。
【
図3】アウトソールの接地面のR値を説明するための図である。
【
図4】別の実施形態に係るバランス矯正器具の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本発明の一実施形態に係るアウトソール30を備えたゴルフトレーニング用シューズ10について説明する。
【0012】
図1A~1Eは、本実施形態に係るゴルフトレーニング用シューズ10の外観模式図であり、
図1Aは左側面図、
図1Bは平面図、
図1Cは右側面図、
図1Dは背面図、そして
図1Eは正面図である。なお、左足用のゴルフトレーニング用シューズ10について説明するが、右足用のものも同じであり説明は省略する。
【0013】
ゴルフトレーニング用シューズ10は、足を保持するアッパー20と、地面に接するアウトソール30と、アッパー20及びアウトソール30間に設けられたミッドソール40とを備える。
【0014】
アッパー20は、ゴルファー(使用者)の足を締め付け保持するためのベルト22を備える。ベルト22の一端は、アッパー20(又はミッドソール40)の、足の小指付け根近傍に当たる部位21に固定され、ベルト22の他端は、自由端であり、面ファスナー23(雄又は雌)を備える。ベルト20は、アッパー20の、足の土踏まず近傍に設けたサイドウォール24の開口25を通って反対側に折り返され、ベルト22の面ファスナー23が、アッパー20に取り付けた対応する面ファスナー26(雌又は雄)に接着することで、ベルト22は固定される。このようにベルト22により使用者の足を保持、固定する。
【0015】
アウトソール30の接地面31は、ゴルフトレーニング用シューズ10の前後方向及び左右方向において、地面側に凸状の曲面で構成されている。言い換えると、アウトソール30の接地面31は、船底型の楕円形状を有する。詳細には後述するが、アウトソール30の接地面31の曲面は、アウトソール30の位置に応じてR値を異ならせている。
【0016】
なお、前後方向は、アウトソール30の長手方向であり、後述するように、アウトソール30の踵部分(最後端)から頂点34とを結ぶ直線の方向であるが、アウトソール30の踵部分から頂点34を通りつま先部分(最先端)へ向かう線分の方向としてもよい。左右方向は、アウトソール30の短手方向であり、前後方向に直行する方向である。
【0017】
アウトソール30の接地面31の曲面の頂点34は、アウトソール30の前後方向の中心及び左右方向の中心付近にあり、およそ足の楔状骨に当たる部分に位置する。使用者は、この頂点34の位置がバランスを取るべき位置(バランスポイント)となるように自身のバランスを矯正することができる。
【0018】
アウトソール30の接地面31には、頂点34を中心にして、滑り止め効果を向上させるための同心円状に並んだ複数の突起状(又は溝状)の波紋構造32が形成されている。なお、
図3Aに示すように、波紋構造32に加えて、複数の微小球構造を設けてもよく(
図3A参照)、これにより滑り止め効果やデザイン性をさらに向上させることができる。
【0019】
ミッドソール40は、ゴルフトレーニング用シューズ10の衝撃吸収性や履き心地を向上させる部材である。ミッドソール40は、アウトソール30と別部材であってもよいし、一体的な単一の部材で構成されていてもよい。言い換えると、アウトソール30とミッドソール40とを合わせて本発明における「アウトソール」と称してもよい。また、ゴルフトレーニング用シューズ10は、アッパー20とアウトソール30で構成し、ミッドソール40を備えないようにしてもよい。
【0020】
ミッドソール40とアウトソール30は同じ材料で構成されていてもよいし、互いに異なる材料で構成されていてもよい。また、ミッドソール40のうち比較的大きな負荷のかかる部分には、ガスやゲルを充填したクッション性部材を設けてもよい。
【0021】
アウトソール30及びミッドソール40はそれぞれ、天然ゴム、イソプロピレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム、ウレタンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、発泡熱可塑性ポリウレタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料で作製される。好ましくは、アウトソール30には、使用者が履いた際に接地面31の形状が大きく歪まない程度に高強度の材料を用いるとよい。例えば、アウトソール30をブタジエンゴム(BR)又は熱可塑性ポリウレタン(TPU)で作製し、ミッドソール40をエチレン酢酸ビニルゴム(EVA)で作製してもよい。
【0022】
図2Aは、
図1BのAA線に沿ったゴルフトレーニング用シューズ10の断面模式図であり、
図2Bは
図2AのBB線に沿った断面模式図である。
図2A及び2Bにおいてはアッパー20の図示は省略している。
【0023】
アウトソール30の内部には、アウトソール30の接地面31を補強するための複数の突起部36が設けられている。複数の突起部36は、アウトソール30内部の足側の面37(又はミッドソール40の接着面)に固定されている。突起部36の材料は、アウトソール30の材料よりも剛性が強いものを用いるのが好ましいが、アウトソール30の材料と同じであってもよい。
【0024】
複数の突起部36は、アウトソール30の内部全体にわたり等間隔で(一定密度で)設けられていてもよい。また、荷重を受けやすい部分(例えば、頂点34、土踏まず、及び/又は母子球にあたる部分など)に、複数の突起部36を比較的高密度で設けておくことで、荷重によるアウトソール30の接地面31の曲面の歪みを防ぐ又は低減することができる。また、使用者が静止した状態では荷重を受けにくい部分(例えば、つま先部分及び/又は踵部分など)には複数の突起部36を比較的低密度で設けるようにしてもよい。荷重を受けにくい部分は接地面31の曲面が潰れる可能性が低いため、突起部36を減らして製造コストを下げることができる。
【0025】
また、複数の突起部36の全て又は一部(例えば、使用者の荷重を受けやすい部分にある突起部)は、その接地面31側の先端(先端に沿う曲面38)とアウトソール30の接地面31との間の距離が一定値dとなるように設計される。使用者の荷重がかかりアウトソール30の接地面31の曲面に歪みができたとしても、突起部36が接地面31に作用して接地面31を補強し、接地面31の形状を維持する。なお、接地面31の形状を維持し、バランスポイントの位置に大きな影響が生じないようにするために、一定値dの値をできるだけ小さくするとよい。
【0026】
アウトソール30の内部39は、充実構造であってもよいし、中空構造であってもよい。
【0027】
アウトソール30内部39が充実構造の場合、成形型を用いて足側の面37に固定された複数の突起部36を作製した後、それを別の成形型に入れて、アウトソール30の内部39及び接地面31を作製するようにしてもよい。このとき、アウトソール30の内部39及び接地面31の材料の熱で突起部36が溶け出さないように、突起部36の材料は、アウトソール30の内部39及び接地面31の材料の融点よりも高い融点を有する材料とするとよい。
【0028】
また、アウトソール30の内部39が充実構造の場合、アウトソール30の充実状の内部39に複数の穴を形成し、これを突起部36としてもよい(即ち、突起部36が中空構造となる)。そして、該穴を覆うようにミッドソール40をアウトソール30に接着するようにしてもよい。この構成により、突起部36の製造が容易となり、アウトソール30の製造コストを低減できる。
【0029】
アウトソール30の内部39が中空構造の場合、中空部分に相当する中子を用いる成形型により、複数の突起部36をアウトソール30の接地面31と同じ材料で作製するようにしてもよい。
【0030】
上記のとおり、本実施形態に係るゴルフトレーニング用シューズ10においては、アウトソール30の内部に、前後方向及び左右方向において地面側に凸状の曲面を有する接地面31を補強するための複数の突起部36が備えつけられている。この構成により、使用者がゴルフトレーニング用シューズ10を履いた際に、アウトソール30の接地面31の形状が大きく歪み、バランスポイントの位置が変わることが防止又は低減される。このため、使用者は、アウトソール30の接地面31の歪みによるバランスポイントの変動を受けることなく、バランス位置を確かめ、自身の体重移動の状態を感覚的につかみ、矯正することが可能となる。
【0031】
次に、
図3を用いて、アウトソール30の接地面31の曲面のR値について説明する。アウトソール30の前後方向におけるつま先部分(最後端部分)から踵部分(最先端部分)までの長さをLする。なお、
図3Bには、踵部分と頂点34とを結ぶ線C1-C2線が描かれ、
図3Cには、踵部分から頂点34を通りつま先部分へ向かう線分C1-C3に沿った断面形状が描かれている。
【0032】
アウトソール30の接地面31は、アウトソール30のつま先部分から長さ2L/5~3L/5の範囲に曲面の頂点34が位置するに構成されている。
【0033】
アウトソール30のつま先部分から長さL/5の位置における左右方向の接地面31の曲面のR値(R1)は、30~300、35~250、40~200、50~150、50~100、50~90、60~80、又は70~80の範囲にある。R1は、好ましくは50~100、さらに好ましくは60~80の範囲にある。
【0034】
アウトソール30のつま先部分から長さ2L/5の位置における左右方向の接地面31の曲面のR値(R2)は、30~200、35~150、40~100、40~90、50~80、又は55~70の範囲にある。R2は、好ましくは40~100、さらに好ましくは50~80の範囲にある。
【0035】
アウトソール30のつま先部分から長さ3L/5の位置における左右方向の接地面31の曲面のR値(R3)は、20~80、20~70、20~60、20~50、20~40、25~40、又は25~35の範囲にある。R3は、好ましくは20~40、さらに好ましくは25~40の範囲にある。
【0036】
アウトソール30のつま先部分から長さ4L/5の位置における左右方向の接地面31の曲面のR値(R4)は、20~100、25~90、30~80、40~80、50~80、50~70、55~70、又は60~70の範囲にある。R4は、好ましくは50~80、さらに好ましくは55~70の範囲にある。
【0037】
アウトソール30の前後方向(
図3AのC1-C2線又はC1-C3線に沿った)の接地面31のR値(R5)は、100~400、120~390、140~370、160~350、180~340、200~330、210~320、220~310、230~300、240~290、又は250~280の範囲にある。R5は、好ましくは200~330、さらに好ましくは220~310、またさらに好ましくは240~290の範囲にある。
【0038】
図3B及び3Cは、従来のゴルフトレーニング用シューズと(比較例)、一実施例に係るゴルフトレーニング用シューズ10のアウトソール30の接地面31のR値を比較した図である。比較例に係る従来のゴルフトレーニング用シューズの接地面の形状は破線で描かれている。
【0039】
アウトソール30のつま先部分から長さL/5、2L/5、3L/5、及び4L/5の位置における左右方向の接地面の曲面のR値はそれぞれ、本実施例では76、64、30、及び65であり、比較例では439、208、84、及び114であった。また、前後方向(
図3AのC1-C3線)におけるアウトソール30のR値は、本実施例では269であり、比較例では485であった。
【0040】
上記のとおり、本実施形態に係るゴルフトレーニング用シューズ10では、アウトソール30の接地面31が、従来のものに比べて全体的によく曲がった(曲率が大きい)曲面を有するように構成される。このため、使用者は、ゴルフトレーニング用シューズ10を履いてゴルフのスイング等の練習をする際に、過度な体重移動により重心がゴルフトレーニング用シューズ10の中心付近に位置する頂点34からずれてしまうと、使用者のバランスが崩れやすくなるようになっている。すなわち、ゴルフトレーニング用シューズ10を履いた使用者は、ゴルフのスイングの練習時等で、自身の体重移動によるバランスの崩れに意識を向けやすく、最適なバランス位置を見つけ、スイング時における過度な体重移動の習慣を矯正することができる。
【0041】
また、空気が入った袋の上に乗ってゴルフのスイング等を行う従来のバランス矯正器具と違って、本発明では、ゴルフトレーニング用シューズ10を履いてバランス矯正を行うことができ、手軽であり、たとえ使用者がバランスを崩し転びそうになったとしても、滑り止め(波紋構造32)が施されたゴルフトレーニング用シューズ10を履いた足で地面をとらえることができるため、転んだりするリスクも低減できる。
【0042】
(別の実施形態)
本発明の別の実施形態はバランス矯正器具50に関する(
図4)。本実施実施に係るバランス矯正器具50は、上記実施形態に係るアウトソール30と同じ構造の接地面31を有し、且つ、足や通常の靴への装着を可能にする把持具55(例えば、鼻緒、ストラップ、又はスリッポンシューズのアッパー部分など)を有する。バランス矯正器具50の接地面31の構造及び作用効果は前述のとおりであるので、説明は省略する。
【0043】
本実施形態のバランス矯正器具50は、ゴルフトレーニング用シューズの形態でなくても、足や一般的な靴に装着して使用することで、前述のように使用者のバランス矯正を可能にするものである。
【0044】
上記実施形態で説明される寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構造又は様々な条件に応じて変更される。また、本発明は、具体的に記載された上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明の一実施形態に関連して説明した特徴を、たとえ明確に前述していなくても、他の実施形態とともに用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
10 ゴルフトレーニング用シューズ
20 アッパー
22 ベルト
23、26 面ファスナー
30 アウトソール
31 接地面
32 波紋構造
34 頂点(バランスポイント)
36 突起部
37 アウトソールの内部の足側の面
40 ミッドソール