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特許7226989閉じたチャンバの砥粒流動加工システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】閉じたチャンバの砥粒流動加工システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 31/00 20060101AFI20230214BHJP
   B22D 31/00 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
B24B31/00 C
B22D31/00 C
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018244854
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2019171558
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】15/859,173
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デ シルバ, カンドーデッジ チャンナ ルワン
(72)【発明者】
【氏名】スラットリー, ケヴィン トーマス
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107052980(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0097746(US,A1)
【文献】特開2001-138206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 31/00
B22D 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞(104)、及び、前記空洞(104)内に配置され且つ加工対象物(106)を受け入れるように構成された加工対象物ホルダ(508)を備えるツール本体(102)と、
前記空洞へのアクセスを可能にする第1の位置と前記空洞へのアクセスを妨げる第2の位置との間で移動するように構成された封止ドア(116)と、
媒体源(108A)に連結され且つ媒体が前記空洞(104)の中へ流れることを可能にするように構成された第1の媒体入口(112A)と、
前記媒体が前記空洞(104)から流れ(706)出ることを可能にするように構成された第1の媒体出口(114A)と、
を備え、
前記第1の媒体入口(112A)が、前記媒体の媒体流路(512)内の第1のポイントであり、前記第1の媒体出口(114A)が、前記媒体流路(512)内の前記第1のポイントの下流の第2のポイントであり、
前記加工対象物ホルダ(508)が、前記媒体によって加工され(708)るように前記加工対象物(106)を前記媒体流路(512)内で保持するように構成され
前記ツール本体(102)が、
空洞(308)を備えたシェイピング・ポーション(306)、及び
前記シェイピング・ポーション(306)を受け入れ且つ前記シェイピング・ポーション(306)を補強するように構成されたスティッフニング・ポーション(304)を更に備える、装置(100)。
【請求項2】
前記加工対象物ホルダ(508)は、前記シェイピング・ポーション(306)に連結されている、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記シェイピング・ポーション(306)が、前記スティッフニング・ポーション(304)から除去可能であるように構成されている、請求項1又は2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記シェイピング・ポーション(306)が、前記空洞(308)内で前記媒体流路(512)に影響を与えるように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記ツール本体(102)が、前記空洞(104)内に配置され且つ加工対象物ホルダ(310)とは独立して前記空洞(104)から除去されるように構成された摩耗可能部分(312)を更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項6】
媒体が前記空洞(104)の中へ流れることを可能にするように構成された第2の媒体入口(112B)、及び
媒体が前記空洞(104)から流れ出ることを可能にするように構成された第2の媒体出口(114B)を更に備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記媒体源(108A)と通信可能に接続されたコントローラ(120)を更に備え、前記コントローラが、前記媒体源(108A)に所定の時間だけ前記媒体を前記空洞(104)の中へ流させ(706)るように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(100)を使用する方法であって、
加工対象物(106)が前記加工対象物ホルダ(508)によって保持されるように前記加工対象物(106)を位置決めすること(702)、
前記封止ドア(116)を前記第2の位置へ移動させること、
前記媒体を前記空洞(104)の中へ流すこと(706)、及び
前記媒体流路(512)を通って流れる前記媒体を用いて前記加工対象物(106)を加工すること(708)を含む、方法。
【請求項9】
記方法が更に、
前記シェイピング・ポーション(306)の摩耗が摩耗閾値を超えたと判定すること(712)、
前記シェイピング・ポーション(306)を前記スティッフニング・ポーション(304)から除去すること(714)、及び
前記摩耗閾値未満の摩耗を有する第2のシェイピング・ポーション(306)を前記スティッフニング・ポーション(304)に連結すること(714)を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
加工される加工対象物の形状を特定すること(610)、
前記加工される加工対象物の形状を特定したこと(610)に応じて、異なる幾何学的形状の複数のシェイピング・ポーションから前記シェイピング・ポーション(306)を選択すること、及び
前記シェイピング・ポーション(306)を前記スティッフニング・ポーション(304)に連結すること(702)を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置を構成する方法であって、
空洞(104)と前記空洞(104)内に配置され且つ加工対象物(106)を受け入れるように構成された前記加工対象物ホルダ(508)とを備える前記ツール本体の幾何学的形状を特定すること(608)、
前記加工対象物(106)の初期形状を特定すること(602)、
媒体の特性を特定すること(604)、
前記空洞(104)内の前記加工対象物ホルダ(508)が前記加工対象物(106)を受け入れたときの前記空洞(104)内の前記媒体の媒体流路を特定すること(606)、及び
前記加工対象物(106)上の前記媒体の前記媒体流路(512)の加工特性を特定すること(606)を含む、方法。
【請求項12】
前記ツール本体の前記幾何学的形状を特定すること(608)が、前記ツール本体(102)の前記シェイピング・ポーション(306)の形状を特定することを含み、前記シェイピング・ポーション(306)が、前記媒体流路(512)内に配置されるように構成され且つ前記媒体流路(512)に影響を与えるように構成されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ツール本体の前記幾何学的形状を特定すること(608)が、前記シェイピング・ポーション(306)の摩耗可能部分(312)の幾何学的形状を特定することを更に含み、前記方法が更に、
前記摩耗可能部分(312)上の前記媒体の前記媒体流路(512)の加工特性を特定すること(606)を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記加工特性を特定すること(606)が、前記加工対象物の第1の部分からの侵食の量が第1の侵食閾値を超えていると判定すること(610)、及び/又は、前記加工対象物の第1の部分の膨張が第1の膨張閾値未満であると判定すること(612)を含み、前記媒体流路(512)を特定することが、前記加工対象物ホルダ(310)に対する媒体入口(112)の配置を特定することを含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記加工対象物の最終形状と前記媒体の前記特性とから前記空洞の空洞形状を特定すること(608)を更に含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くは、加工対象物の処理に関し、特に、例えば、砥粒流動加工を利用する航空機の構成要素の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の構成要素は、しばしば、厳密な表面仕上げ要件を有する複雑な幾何学的形状を含む。そのような構成要素の製造では、高いスループット及び低いコストも望まれる。砥粒流動加工は、滑らかな内部チャネルを表面仕上げするために使用され得るが、鋭い端部を丸くし、曲がり(bend)の中に残留物を蓄積し、圧力によって構成要素を膨らませる可能性もあり、現在は、外部表面ではなく内部表面を加工するためにのみ使用することができる。
【発明の概要】
【0003】
粘性媒体流動加工ツールのためのシステム及び方法が本明細書で開示される。特定の一実施例では、装置が説明され得る。該装置は、空洞、及び空洞内に配置され且つ加工対象物を受け入れるように構成された加工対象物ホルダを含む、ツール本体を含むことができる。該装置は、空洞へのアクセスを可能にする第1の位置と空洞へのアクセスを妨げる第2の位置との間で移動するように構成された封止ドア、粘性媒体源に連結され且つ粘性媒体が空洞の中へ流れることを可能にするように構成された第1の粘性媒体入口、及び粘性媒体が空洞から流れ出ることを可能にするように構成された第1の粘性媒体出口を更に含むことができる。第1の粘性媒体入口は、粘性媒体の媒体流路内の第1のポイントであり、第1の粘性媒体出口は、媒体流路内の第1のポイントの下流の第2のポイントであり得る。加工対象物ホルダは、媒体流路内の加工対象物が粘性媒体によって加工されるように該加工対象物を保持するように構成され得る。
【0004】
別の一実施例では、方法が説明され得る。該方法は、空洞と空洞内に配置され且つ加工対象物を受け入れるように構成された加工対象物ホルダとを備えるツール本体の幾何学的形状を特定すること、加工対象物の初期形状を特定すること、粘性媒体の特性を特定すること、空洞内の加工対象物ホルダが加工対象物を受け入れたときの空洞内の粘性媒体の媒体流路を特定すること、及び加工対象物上の粘性媒体の媒体流路の加工特性を特定することを含む。
【0005】
本発明の範囲は、参照することによってこのセクションに組み込まれる特許請求の範囲によって規定される。以下の1以上の実施態様の詳細な説明を考慮することにより、当業者は、本開示をより完全に理解し、その更なる利点を認識することとなる。これより、まず簡潔に説明される添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の一実施例による、粘性媒体加工ツールを示す。
図2】本開示の一実施例による、ツール本体の前面図を示す。
図3A】本開示の一実施例による、2つの部分を含むツール本体の前面図を示す。
図3B】本開示の一実施例による、別のツール本体の前面図を示す。
図4】本開示の一実施例による、更なるツール本体の前面図を示す。
図5】本開示の一実施例による、動作中の粘性加工ツールの側面断面図を示す。
図6】本開示の一実施例による、媒体加工ツールの構成を詳細に示すフローチャートである。
図7】本開示の一実施例による、粘性媒体加工ツールの動作を詳細に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の実施例とそれらの利点とは、下記の詳細な説明を参照することにより最もよく理解できる。1以上の図面で示される類似の要素を識別するために類似の参照番号が使用されることを理解するべきである。
【0008】
粘性媒体流動加工(例えば、砥粒流動加工)及び/又は化学侵食流動加工のためのシステム及び技術が、1以上の実施例に従って本明細書で説明される。そのような加工は、構成要素の内部及び/又は外部を加工することができる。更に、粘性媒体流動加工及び/又は化学侵食流動加工で使用される様々なツールの流路を構成するためのシステム及び技術も説明される。
【0009】
本明細書で説明されるシステム及び技術は、構成要素の製造、殊に、航空機の構成要素の製造を可能にする。流動加工は膨張なしに内面及び外面の両方のために使用され得るので、そのようなシステム及び技術は、流動加工のより広い用途を可能にする。更に、そのような流動加工は、端部などの所望の幾何学的形状を可能にするように適切に構成され得る。
【0010】
本明細書で説明されるツールは、加工対象物の外面及び内面の両方の流動加工を可能にするように構成され得る。本明細書で説明されるツールは、加工対象物の外側表面の成形及び/又は加工を可能にするために、加工対象物の外側表面にわたり粘性媒体の流れ又は化学侵食媒体の流れを導くように特に構成された空洞を含む。更に、そのような制御は、残留物、膨張、及び加工対象物の角部の意図せぬ丸めを避けることができる。
【0011】
本開示の目的のために、粘性媒体加工のために説明されるシステム及び技術は、化学侵食加工のためにも使用され得る。更に、粘性媒体加工と化学侵食加工は、個別に又は組み合せても使用され得る。そのようにして、本明細書で説明されるシステム及び技術は、粘性媒体のみ、化学侵食媒体のみ、又は両方の組み合わせを使用し得る。
【0012】
例示的な一実施例として、図1は、本開示の一実施例による粘性媒体加工ツールを示している。図1は、装置又はツール100を示している。それは、ツール本体102、及び通信チャネル122を介してツール本体102と通信可能に接続されたコントローラ120を含む。
【0013】
ツール本体102は、空洞104を含む。空洞104は、加工対象物106を保持するように構成され得る。特定の実施例では、加工対象物106が、1以上の加工対象物ホルダによって空洞104内に保持され得る。加工対象物ホルダは、粘性媒体が空洞104を通って流れる間に、実質的に安定した位置で加工対象物106を保持することができる。空洞104へのアクセスは、封止ドア116によって制御される。封止ドア116が開いているときに、空洞104はアクセス可能であり、したがって、加工対象物106を空洞104の中へ積み込むことができる。封止ドア116が閉じているときに、空洞104の中への粘性媒体の流れを除いて、空洞104は密封され得る。したがって、封止ドア116が閉じているときに、粘性媒体は、空洞104内を流れ、加工対象物106を加工し且つ/又は成形することができる。
【0014】
空洞104は、粘性媒体入口112A‐C及び粘性媒体出口114A‐Cに連結されている。図1で示されている一実施例は、3つの粘性媒体入口及び3つの粘性媒体出口を示しているが、他の実施例は、任意の数の粘性媒体入口及び出口を含むことができる。粘性媒体入口112A‐Cは、1以上の粘性媒体源に連結され、粘性媒体が空洞104に入るための1以上の通路を形成することができる。粘性媒体出口114A‐Cは、粘性媒体が(例えば、加工対象物106を加工した後で)空洞104から出て粘性媒体を集めることができる1以上の廃棄装置に至るための1以上の通路を形成することができる。
【0015】
粘性媒体源は、空洞104の中へ流れる粘性媒体を供給することができる。図1で示されているように、粘性媒体入口112A‐Cの各々は、粘性媒体源108A‐Cのうちの1つに連結されているが、他の実施例は、任意の数の(例えば、1つ、2つ、4つ以上の)粘性媒体源を含むことができる。空洞104を出た粘性媒体を受け入れるために、粘性媒体収集器(例えば、粘性媒体収集器110A‐C)が、粘性媒体出口114A‐Cに連結されている。特定の実施例では、空洞104を出た粘性媒体が、粘性媒体入口112A‐Cを通って再び空洞104へ入るように経路指定され得る。
【0016】
粘性媒体は、1以上の流路を介して空洞104を通って流れることができる。粘性媒体入口112A‐Cのうちの1つは、流路のうちの1つ内の第1のポイントを規定し、粘性媒体出口114A‐Cのうちの1つは、流路のうちの1つ内の第2のポイントを規定することができる。そのようにして、粘性媒体は、粘性媒体入口112A‐Cのうちの1つから空洞104を通って流れ、加工対象物106を成形し、摩耗させ、且つ/又は加工し、粘性媒体出口114A‐Cのうちの1つへ流れることができる。そのような粘性媒体流路は、粘性媒体の流れが、加工対象物106を摩耗させ、形作り、又はさもなければ成形(例えば、加工)することを可能にするように構成され得る。
【0017】
空洞104は、(複数の)媒体流路内に加工対象物106を保持するための加工対象物ホルダを含むことができる。加工対象物ホルダは、加工対象物106をしっかりと保持することができる。それによって、粘性媒体の流れは、加工対象物106を動かすこと又は実質的に動かすこと(例えば、1インチを超える距離の移動を含む)をせず、したがって、粘性媒体の流れは、加工対象物106を正確に摩耗させ、形作り、又はさもなければ成形(例えば、加工)するために使用され得る。
【0018】
ツール本体102は、粘性媒体の流れを導くためのシェイピング・ポーション(成形部分)を含むことができる。特定の実施例では、例えば、シェイピング・ポーションが、空洞104又はその部分である。そのようにして、空洞104は、粘性媒体の流れに影響を与えることができる1以上の特徴を含み得る。そのような特徴は、空洞104内の粘性媒体の流れに影響を与え、粘性媒体の流れによるツール100内の処理の後で、加工対象物106が所望の形状と一致するように、加工対象物106を摩耗させ、形作り、又はさもなければ成形(例えば、加工)することができる。
【0019】
空洞104内の粘性媒体の流れは、ツール100の他の動作と共に、コントローラ120によって制御され得る。コントローラ120は、例えば、シングルコアプロセッサ(若しくはシングルコアマイクロプロセッサ)又はマルチコアプロセッサ(若しくはマルチコアマイクロプロセッサ)、マイクロコントローラ、論理デバイス、信号処理デバイス、実行可能指示命令を記憶するためのメモリ(例えば、ソフトウェア、ファームウェア、又は他の指示命令)、及び/又は本明細書で説明される様々な動作の何れかを実行するための任意の要素を含んでもよい。様々な実施例では、コントローラ120及び/又はその関連する動作が、単一のデバイスとして、又は、コントローラ120を集合的に構成するための(例えば、データ接続122を介するなどして、1以上の通信チャネルと通じるなどして、アナログ、有線、又は無線接続を通じて通信可能にリンクされた)複数のデバイスとして実装されてもよい。
【0020】
コントローラ120は、データ及び情報を記憶するための1以上のメモリ構成要素又はデバイスを含み得る。メモリは、揮発性及び不揮発性のメモリを含み得る。このようなメモリの例は、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリーメモリ)、EEPROM(電気的消去可能リードオンリーメモリ)、フラッシュメモリ、又は他の種類のメモリを含む。特定の実施例では、コントローラ120が、センサ及び/又はオペレータ(例えば、飛行乗務員)の入力に応じた制御アルゴリズムの実施及び実行を含む、本明細書で説明される様々な方法及びプロセスを実行するために、メモリ内に記憶された指示命令を実行するように適合され得る。したがって、コントローラ120は、ツール100の動作のための指示命令を記憶することができ、更に、適切なタイミングでツール100の様々な構成要素の動作のためにそれらに指示命令を提供することができる。
【0021】
コントローラ120は、データ接続122を介してツール100と通信可能に接続されている。データ接続122は、アナログ、有線、又は、Bluetooth、WiFi、近距離無線通信などの、若しくはインターネットサービスプロバイダ若しくはデータ接続(例えば、3G、4G、LTE、若しくは他の接続)を介するなどした、無線接続のうちの1以上を含むことができる。したがって、データ接続122は、任意の接続であり得る。
【0022】
図2は、本開示の一実施例による、ツール本体の前面図を示している。図2は、一体成形されたツール本体200を示している。ツール本体200は、本体部分202及び空洞204を含む。空洞204は、本体部分202内の空間(void)である。空洞204は、加工対象物を受け入れるように構成され得る。
【0023】
空洞204は、空洞204内の粘性媒体の流れを制御するように構成された1以上の特徴を含み得る。例えば、空洞204は、1以上の突出、空洞、空間、及び/又は空洞204内で保持された任意の加工対象物の周りで粘性媒体の流れを導く他の特徴を含むことができる。
【0024】
図3Aは、本開示の一実施例による、2つの部分を含むツール本体の前面図を示している。ツール本体300は、スティッフニング・ポーション(強化部分)304とシェイピング・ポーション306を含む、2つの部分を含むツール302である。スティッフニング・ポーション304は、シェイピング・ポーション306を受け入れて、ツール100の動作中にシェイピング・ポーション306に対する更なる構造的支持を提供するように構成されている。したがって、スティッフニング・ポーション304は、シェイピング・ポーション306を支持することができる。それによって、ツール100及び粘性媒体の流れの動作中に、シェイピング・ポーション306は望ましくないやり方で膨張しない。
【0025】
あるそのような実施例では、スティッフニング・ポーション304とシェイピング・ポーション306は、異なる材料から作られ得るか又は構造的に異なり得る(例えば、スティッフニング・ポーション304は格子構造であり、一方、シェイピング・ポーション306は固体構造であり得る)。そのような差異は、スティッフニング・ポーション304が、粘性媒体と相互作用しないように構成され且つシェイピング・ポーション306を支持するように構成されることを可能にする一方で、シェイピング・ポーション306が、粘性媒体と相互作用し又は粘性媒体を包含するように構成されることを可能にし得る。
【0026】
シェイピング・ポーション306は、空洞308を含むことができる。空洞308は、加工対象物、更に粘性媒体の流れを受け入れるように構成され得る。粘性媒体はツール表面を摩耗させることができるので、空洞308又はその部分は、消耗し又は摩耗するように構成され、したがって、シェイピング・ポーション306は、交換可能に構成され得る。シェイピング・ポーション306は、空洞308の特徴が最大摩耗レベル未満の摩耗を示しているうちに、交換されるように構成され得る。特定の実施例では、そのような摩耗レベルは、最大摩耗レベルを過ぎた摩耗が存在するならば、粘性媒体の流れによる加工対象物の成形が影響を受けるレベルであり得る。
【0027】
そのような一実施例では、シェイピング・ポーション306が、シェイピング・ポーション306の交換を容易にするために、スティッフニング・ポーション304から連結解除されるように構成され得る。シェイピング・ポーション306は、接着、機械的締結、溶接、又は他の取り付け技術を通じてスティッフニング・ポーション304に連結され得る。そして、そのような取り付けは、スティッフニング・ポーション304からのシェイピング・ポーション306の除去を可能とするために連結解除され得る。
【0028】
図3Bは、本開示の一実施例による、別のツール本体の前面図を示している。図3Bは、更なる特徴を有する図3Aのツール本体300を示している。そのような更なる特徴は、加工対象物ホルダ310A‐C、インサート312、及びカットアウト(切り欠き)314A‐Dを含む。
【0029】
加工対象物ホルダ310A‐Cは、加工対象物を保持するように構成されている。加工対象物ホルダ310A‐Cの各々は、加工対象物の異なる部分と連結するように構成され得る。したがって、加工対象物ホルダ310A‐Cは、空洞308内に加工対象物しっかりと保持し、保持されたときに空洞308内の加工対象物の実質的な動きを妨げることができる。例えば、加工対象物ホルダ310A‐Cは、機械的締結具、角片(angled piece)、クランプ、ピン、及び/若しくは合わせくぎなどの特徴、並びに/又は加工対象物の保持のための他のそのような構成要素若しくはデバイスを含むことができる。図3Bで示されている実施例が、加工対象物ホルダ310A‐Cを含む一方で、他の実施例は、任意の数の加工対象物ホルダを含み得る。
【0030】
(「摩耗可能部分312」とも称される)インサート312は、空洞308の1以上の特徴と連結するように構成され得る。インサート312は、接着、機械的締結、溶接、磁力を介して、又は他の締結技術を通じて、空洞308の1以上の特徴に連結され得る。特定の実施例では、空洞308が、(例えば、空洞308内のカットアウト、空洞308内に配置されたスタッド、締結具を受け入れ若しくは締結具と係合するように構成された特徴、及び/又は空洞308の1以上の特徴にインサート312を受け入れる若しくは連結するように構成されたそのような特徴を通じて)インサート312を受け入れるように構成され得る。
【0031】
インサート312は、粘性媒体の流れによって摩耗し、インサート312の摩耗が、例えば、摩耗閾値にあるならば又は摩耗閾値を超えるならば、交換されるように構成され得る。特定の実施例では、インサート312が、空洞308の高摩耗エリアに配置されるように構成され得る。例えば、空洞308の鋭い端部は、粘性媒体の流れに曝されたときに高摩耗エリアになり得る。そのようなエリアは、摩耗し且つ/又は定期的に交換されるように構成され得るインサートを受け入れるように構成され得る。特定の更なる実施例では、そのようなインサートが、空洞308の残りの部分とは異なる硬度又は弾性を有し得る。例えば、そのようなインサートは、殊に、粘性媒体の流れに対して、空洞308の残りの部分よりも摩耗しにくく構成されている。更に、ツール本体300の他の実施例は、任意の数のインサートを含み得る。
【0032】
カットアウト314A‐Dは、シェイピング・ポーション306を複数の部材に分割することができる。そのような構成は、シェイピング・ポーション306の個々の部材が、例えば、摩耗又は幾何学的な制約に応じて交換されることを可能にし得る。シェイピング・ポーション306の異なる部材も、最終的な加工対象物の幾何学的な必要に応じて交換され得る。例えば、ツール本体300内で異なる最終的な幾何学的形状の加工対象物が成形され、加工対象物の最終的な幾何学的形状に応じて、シェイピング・ポーション306の異なる形状の部材が、スティッフニング・ポーション304の中へ挿入され得る。
【0033】
図4は、本開示の一実施例による、更なるツール本体の前面図を示している。図4は、2つの部分を含むツール402を含む、ツール本体400を示している。2つの部分を含むツール402は、スティッフニング・ポーション404とシェイピング・ポーション406を含む。シェイピング・ポーション406は、空洞408を含む。
【0034】
空洞408は、空洞308とは異なる形状である。そのようにして、空洞408は、空洞408と空洞308の形状/幾何学的形状における差異のために、空洞308のものとは異なる最終形状の加工対象物を成形するように構成され得る。したがって、加工対象物の異なる最終形状が望まれるならば、異なる形状の空洞が使用され得る。
【0035】
図5は、本開示の一実施例による、動作中の粘性加工ツールの側面断面図を示している。図5は、空洞504、加工対象物ベース506、加工対象物ホルダ508A及びB、並びに加工対象物アタッチメント510を含む、ツール500を示している。加工対象物502は、加工対象物ベース506の上に置かれ、加工対象物ホルダ508A及びBによって保持され得る。
【0036】
加工対象物アタッチメント510は、加工対象物502の1以上の表面の摩耗を妨げるために、加工対象物502に連結され得る。したがって、加工対象物アタッチメント510は、加工対象物502の角部の望ましくない摩耗及び/又は丸めを妨げるために、加工対象物502の表面及び/又は端部に取り付けられ得る。加工対象物アタッチメント510は、本明細書で説明される任意の技術を介して連結され得る。そのようにして、加工対象物アタッチメント510は、機械的に、接着で、磁気的に、又は他の技術を通じて連結され得る。特定の実施例では、加工対象物アタッチメント510が、加工対象物502の成形の後で除去可能に構成され得る。そのようにして、加工対象物アタッチメント510は、加工対象物アタッチメント510なしに、加工対象物502が粘性媒体の流れによって摩耗され得る特定のエリアにおいて、加工対象物502に対する摩耗を妨げるために犠牲的であり得る。
【0037】
加工対象物502は、加工対象物ベース506の上に置かれ、加工対象物ホルダ508A及びBによって保持され得る。加工対象物ホルダ508A及びBは、加工対象物502を適所に保持するために加工対象物502の一部分を覆って置かれ得る。特定の実施例では、加工対象物ホルダ508A及びBが、粘性媒体の流れによって成形されない加工対象物502の部分を覆って且つ/又はそれらの近傍に置かれ得る。そのようにして、加工対象物ホルダ508A及びBは、加工対象物502のそのような部分が粘性媒体の流れによって意図せぬ摩耗を被らないようにも保護し得る。加工対象物ベース506、加工対象物ホルダ508A及びB、並びに加工対象物アタッチメント510は、加工対象物502と類似した若しくは同一の材料から作られ、且つ/又は加工対象物502とは異なる(例えば、より硬い)材料から作られ得る。
【0038】
粘性媒体の流れは、例えば、粘性媒体流路512を通って空洞504内を流れることができる。空洞504は、粘性媒体の流れからの空洞504の摩耗を妨げる又は遅くするために、コーティング504Aを含むことができる。コーティング504Aは、硬化コーティング、材料処理(例えば、ショットピーニング)、めっき、空洞504の1以上の部分上に配置された硬質材料の層、又は粘性媒体の流れからの空洞504の摩耗を妨げる若しくは遅くするための他のそのような技術であり得る。
【0039】
粘性媒体の流れは、粘性媒体流路512又は空洞504内の(図示せぬ)他の流路に従って流れることができる。粘性媒体流路512の部分は、加工対象物502の部分を覆って通過することができ、したがって、加工対象物502を加工し、摩耗させ、又はさもなければ成形することができる。空洞504は、粘性媒体の流れを導くように構成された特徴を含み得る。特徴は、角部の望ましくない丸め、残留物の蓄積、及び/又は粘性媒体の流れの他の望ましくない副作用なしに、加工対象物502の外側表面の成形及び/又は加工を可能にし得る。
【0040】
加工対象物502を成形するために使用される粘性媒体の流れは、所定の流量及び/若しくは圧力又は複数の所定の流量及び/若しくは圧力(例えば、異なる時点での異なる流量)、加工時間、並びに/又は使用される1以上の粘性媒体(例えば、異なる流量で加工対象物502を摩耗させることができる粘性媒体が、加工の異なるポイントで使用され得る)などの、所定の特性を含むことができる。したがって、そのようなプロセスは、第1の期間に第1の圧力で第1の粘性媒体を流すこと、及び、その後に、第2の期間に第2の圧力で流れることとなる第2の粘性媒体に切り替えることを含み得る。
【0041】
そのような所定の特性は、ツール500の動作の前の解析を通じて特定され得る。例えば、ツール500の幾何学的形状及び特性並びに使用される粘性媒体は、例えば、数値流体力学(CFD)によってモデル化され得る。少なくとも加工対象物502の初期形状と空洞504及び空洞504内の構成要素の幾何学的形状とに基づいて、流量及び/若しくは圧力、加工時間、使用される粘性媒体などの特性、並びに/又は他の特性が、粘性媒体の流れが加工対象物502を成形して所望の最終形状を呈することができるように特定され得る。その後、そのような特性が使用されて、ツール500を動作させ、可能性としては、そのような特性が必要に応じて調整され得る。
【0042】
図6は、本開示の一実施例による、媒体加工ツールの構成を詳細に示すフローチャートである。図6で詳細に示されているステップのうちの1つ、一部、又は全部は、特定の設計技術を使用して実行され得る。例えば、加工特性及び流れ特性などの粘性媒体の流れに関する特性が、CFDを通じて特定され得る。更に、ブロック602で詳細に示されているように、加工対象物の幾何学的形状は、加工対象物の最終三次元形状に到達することができるように、例えば、コンピュータ支援設計(CAD)によって特定される。様々な実施例では、ブロック602が、加工対象物の初期形状及び/又は中間形状及び/又は最終形状を特定することを含み得る。加工対象物の初期形状は、加工対象物が先ず空洞内に置かれたときの加工対象物の幾何学的形状であり得る。加工対象物の最終形状は、粘性流動加工が実行された後の加工対象物の所望の幾何学的形状であり得る。
【0043】
ブロック602で加工対象物の最終形状が特定された後で、ツールの特性が特定され得る。そのような特性は、複数の異なる特性を含み得る。例えば、ブロック604では、使用されるべき粘性媒体が特定され得る。粘性媒体は、粘度、摩耗性、コスト、流量、スループット、加工対象物の所望の幾何学的形状、加工対象物の材料、及び/又は他のそのような要因などの、要因に基づいて選択され得る。したがって、例えば、より軟らかい材料から作られた加工対象物は、より摩耗性が低い粘性媒体を用いて成形され得る。一方で、より硬い材料から作られた加工対象物は、より摩耗性が高い粘性媒体を用いて成形され得る。
【0044】
ブロック606では、粘性媒体流路が特定され得る。粘性媒体流路は、加工特性及び/又は加工対象物に対して望まれる加工の量に基づいて特定され得る。例えば、加工されることが要求される多くの量を含む初期加工対象物は、したがって、摩耗性粘性媒体を含む媒体の流れ、及び加工対象物にわたるそのような媒体の流れを積極的に導く(例えば、加工対象物の表面を覆って大量の媒体の流れを導く且つ/又は高い圧力及び/若しくは流量で媒体の流れを導く)媒体流路を必要とし得る。より少ない加工を必要とする他の加工対象物は、加工対象物にわたって媒体の流れをより消極的に導く(例えば、加工対象物の表面を覆ってより少ない量の媒体の流れを導く且つ/又はより低い圧力及び/若しくは流量で媒体の流れを導く)媒体流路を含み得る。特定の実施例では、加工対象物の異なる部分での加工対象物の加工の異なる速度を可能にするために、媒体流路内の媒体の流れが変更され得る(例えば、媒体流路の特定の部分は、より高い流量及び/又は圧力を含み得る)。
【0045】
ブロック608では、空洞の幾何学的形状が特定され得る。空洞のサイズは、少なくとも、空洞内に加工対象物を受け入れるように構成されるように設定され得る。そのような幾何学的形状は、空洞内の粘性媒体の流れに影響を与え得る。例えば、空洞の1以上の特徴は、加工対象物に向けて、加工対象物の周りで、加工対象物から離れるように、粘性媒体を導き、粘性媒体の流れをスピードアップ若しくはスローダウンさせ、粘性媒体の圧力を高め若しくは低減させ、特定の流路若しくは特性の流れを生成し、又は他のやり方で粘性媒体の流れに影響を与えることができる。空洞の中へ及び空洞の外への粘性媒体の流れのためのインレット(入口)及びアウトレット(出口)の位置決め及び数も、ブロック608で特定され得る。多数のインレット及び/又はアウトレットを含むことは、空洞内の粘性媒体の流れを更に微調整することができる。
【0046】
様々な実施例では、ブロック604、606、及び/又は608が、個別に実行され得るか且つ/又はプロセス内の1つのステップの中へ組み込まれ得る。例えば、別の一実施例では、ブロック604で粘性媒体の選択が先ず実行され得る。粘性媒体が選択された後で、粘性媒体流路、空洞の幾何学的形状、及び粘性媒体流路を通って空洞内を流れるときの粘性媒体の加工特性が共に特定され得る。
【0047】
加工対象物の幾何学的形状、粘性媒体、粘性媒体流路、加工の所望のレベル、及び空洞が、ブロック602‐608で特定された後で、加工プロセスの出力(610)が解析され得る。そのような解析は、例えば、CFDを通じて実行され得る。加工対象物の幾何学的形状、粘性媒体、粘性媒体流路、及び空洞の幾何学的形状は、CFD及び/又は他のそのような技術でモデル化され、その後、粘性媒体の流れがシミュレートされ得る。シミュレーションの結果は、粘性媒体の流れによる加工及び/又は摩耗の量、加工対象物の膨張の量、粘性媒体の流れによる(例えば、摩擦からの)粘性媒体、加工対象物、及び/又は空洞の温度、使用される粘性媒体の量、空洞及び/又は使用される様々なアタッチメント及び/又はホルダ、並びに/又は幾つかの要因を出力することができる。そのような要因は、ブロック612‐616で解析され得る。
【0048】
ブロック612‐616では、加工対象物の膨張又は歪、粘性媒体、加工対象物、及び/又は空洞の温度、粘性媒体による加工対象物の加工及び/又は摩耗の量、空洞及び/又はアタッチメント及び/又はホルダの摩耗の量、並びに/又は他のそのような要因が解析され得る。全てのそのような要因は、閾値量を含み得る。例えば、粘性媒体、加工対象物、及び/又は空洞の最大膨張量、最大許容温度、加工対象物に要求される加工及び/又は摩耗の範囲、並びに/又は空洞及び/若しくはアタッチメントの許容可能な摩耗の閾値量が存在し得る。例えば、加工対象物の初期形状が、粘性媒体の特性、粘性媒体流路、及び空洞の幾何学的形状、更には、加工対象物の初期形状が加工対象物の所望の幾何学的形状に成形され得るか否かを判定するための他の動作パラメータ(例えば、流量、圧力、動作時間)と共に解析され得る。
【0049】
更に、加工対象物上の残留物の堆積の量も特定されて閾値量と比較され得る。任意のそのような要因が許容可能な閾値を超えているならば、加工対象物の幾何学的形状、粘性媒体、粘性媒体流路、所望の加工特性、空洞の幾何学的形状、及び/又は他のそのような要因が、ブロック602‐608で調整され得る。
【0050】
したがって、ブロック602‐616で詳細に説明されているプロセスは、ツール及び/又は空洞の幾何学的形状、粘性媒体の流れの流れ特性、並びにどのように粘性媒体が加工対象物と相互作用するかを、素早く解析するために使用され得る。その後、そのような技術は、許容可能なパラメータに従って加工対象物が成形されることを可能とするツール及び/又は空洞の幾何学的形状に到達するために使用され得る。粘性媒体の流れは、それが接触する全ての表面を摩耗させる傾向があるので、そのようなプロセスは、意図せぬ誤差(例えば、角部の丸め)を生成することなしに加工対象物が意図された最終形状に成形されることとなるようにツールが作られることを可能にする。
【0051】
加工対象物は、加工対象物の特定の部分が、特定の加工/成形パラメータの観点から、加工対象物で実行される後処理(例えば、穿孔、更なる部分の溶接、及び/又は他のそのような処理)などの、加工/成形プロセス中に除去されるべき多かれ少なかれ余剰な材料を含むような、加工/成形プロセスを受け入れるように設計され得る。したがって、加工対象物は、流動加工の前、間、又は後の更なる成形を受けることができる。
【0052】
したがって、意図された最終形状は、更なる材料を有する表面を含むことができ、更なる材料は、所望の部分形状に到達するために(例えば、処理後の加工によって)除去され得る。意図された最終形状は、最終部分よりも少ない材料を有する表面も含み得る。そして、更なる材料が、所望の部分形状に到達するために後処理中に追加(例えば、溶接、機械的に締結、及び/又は接合)され得る。更に、(例えば、任意の流動加工が実行される前に)加工対象物の初期形状は、流動加工及び後処理加工によって部分的に又は完全に加工され得る余剰の材料を有する幾何学的形状を含むことができる。特定の実施例では、特定の表面の加工は、流動加工中に実行され得る。
【0053】
ツールの解析が、本明細書で説明される解析要因が閾値に従った許容可能なパラメータ内あると判定したならば、該プロセスは、ブロック618へ進むことができ、ツールが製造される。その後、ツールは、様々な機構(例えば、粘性媒体源)に連結され、加工対象物の最終形状を製造するために動作可能であり得る。
【0054】
図7は、本開示の一実施例による、粘性媒体加工ツールの動作を詳細に示すフローチャートである。ブロック702では、加工対象物が、ツールの空洞内に配置され、加工対象物ホルダによって保持される。
【0055】
ブロック704では、ツールが、例えば、任意の加工対象物アタッチメントを取り付けること、空洞への任意のドアを閉じること、粘性媒体源をツールに連結すること、及び他のそのような準備によって、動作のために準備され得る。
【0056】
ブロック706では、粘性媒体の流れが、ツールに供給されて空洞の中へ流れ得る。粘性媒体の流れは、ブロック708で、加工対象物を加工し成形することができる。したがって、粘性媒体は、加工対象物を最終形状へ成形することができる。特定の実施例では、最終形状が、粘性媒体の流れによる加工の終点であり得る。そして、他の後処理ステップ(例えば、穿孔、更なる構成要素の取付け、面取り、デバリング、及び/又は端部の丸め)も、粘性媒体による加工の後に実行され得る。
【0057】
ブロック710では、粘性媒体の流れが停止した後で、加工対象物が空洞から除去され得る。その後、加工対象物は、完全に加工され得るか又は後処理のための準備ができている。その後、インサート、アタッチメント、ホルダ、空洞、及び/又はツールの他の構成要素が、ブロック712でチェックされ得る。許容可能な閾値を超えた摩耗を示す構成要素は、ブロック714で交換され得る。
【0058】
更に、本開示は以下の条項による実施例を含む。
条項1
空洞(104)、及び、前記空洞(104)内に配置され且つ加工対象物(106)を受け入れるように構成された加工対象物ホルダ(508)を備えるツール本体(102)と、
前記空洞へのアクセスを可能にする第1の位置と前記空洞へのアクセスを妨げる第2の位置との間で移動するように構成された封止ドア(116)と、
媒体源(108A)に連結され且つ媒体が前記空洞(104)の中へ流れることを可能にするように構成された第1の媒体入口(112A)と、
前記媒体が前記空洞(104)から流れ(706)出ることを可能にするように構成された第1の媒体出口(114A)と、
を備え、
前記第1の媒体入口(112A)が、前記媒体の媒体流路(512)内の第1のポイントであり、前記第1の媒体出口(114A)が、前記媒体流路(512)内の前記第1のポイントの下流の第2のポイントであり、
前記加工対象物ホルダ(508)が、前記媒体によって加工され(708)るように前記加工対象物(106)を前記媒体流路(512)内で保持するように構成されている、装置(100)。
条項2
前記ツール本体(102)が、
前記空洞(308)を備えたシェイピング・ポーション(306)、及び
前記シェイピング・ポーション(306)を受け入れ且つ前記シェイピング・ポーション(306)を補強するように構成されたスティッフニング・ポーション(304)を更に備える、条項1に記載の装置(100)。
条項3
前記シェイピング・ポーション(306)が、前記スティッフニング・ポーション(304)から除去可能であるように構成されている、条項2に記載の装置(100)。
条項4
前記シェイピング・ポーション(306)が、前記空洞(308)内で前記媒体流路(512)に影響を与えるように構成されている、条項3に記載の装置(100)。
条項5
前記加工対象物ホルダ(508)が、前記シェイピング・ポーション(306)に連結されている、条項2に記載の装置(100)。
条項6
前記ツール本体(102)が、前記空洞(104)内に配置され且つ前記加工対象物ホルダ(310)とは独立して前記空洞(104)から除去されるように構成された摩耗可能部分(312)を更に備える、条項1に記載の装置(100)。
条項7
前記ツール本体(102)が第1の材料から作られ、少なくとも前記空洞(104)が前記第1の材料上に配置された硬化コーティング(504A)を更に備える、条項1に記載の装置(100)。
条項8
媒体が前記空洞(104)の中へ流れることを可能にするように構成された第2の媒体入口(112B)、及び
媒体が前記空洞(104)から流れ出ることを可能にするように構成された第2の媒体出口(114B)を更に備える、条項1に記載の装置(100)。
条項9
前記媒体が、粘性媒体及び/又は化学侵食媒体である、条項1に記載の装置(100)。
条項10
前記空洞(104)が、前記媒体流路に影響を与えるように構成された特徴を備える、条項1に記載の装置(100)。
条項11
前記媒体源(108A)を更に備える、条項1に記載の装置(100)。
条項12
前記媒体源(108A)と通信可能に接続されたコントローラ(120)を更に備え、前記コントローラが、前記媒体源(108A)に所定の時間だけ前記媒体を前記空洞(104)の中へ流させ(706)るように構成されている、条項11に記載の装置(100)。
条項13
条項1に記載の装置(100)を使用する方法であって、
加工対象物(106)が前記加工対象物ホルダ(508)によって保持されるように前記加工対象物(106)を位置決めすること(702)、
前記封止ドア(116)を前記第2の位置へ移動させること、
前記媒体を前記空洞(104)の中へ流すこと(706)、及び
前記媒体流路(512)を通って流れる前記媒体を用いて前記加工対象物(106)を加工すること(708)を含む、方法。
条項14
前記ツール本体(102)が、前記空洞(104)を備えたシェイピング・ポーション(306)、及び前記シェイピング・ポーション(306)を受け入れ且つ前記シェイピング・ポーション(306)を補強するように構成されたスティッフニング・ポーション(304)を更に備え、前記方法が更に、
前記シェイピング・ポーション(306)の摩耗が摩耗閾値を超えたと判定すること(712)、
前記シェイピング・ポーション(306)を前記スティッフニング・ポーション(304)から除去すること(714)、及び
前記摩耗閾値未満の摩耗を有する第2のシェイピング・ポーション(306)を前記スティッフニング・ポーション(304)に連結すること(714)を含む、条項13に記載の方法。
条項15
加工される加工対象物の形状を特定すること(610)、
前記加工される加工対象物の形状を特定したこと(610)に応じて、異なる幾何学的形状の複数のシェイピング・ポーションから前記シェイピング・ポーション(306)を選択すること、及び
前記シェイピング・ポーション(306)を前記スティッフニング・ポーション(304)に連結すること(702)を更に含む、条項14に記載の方法。
条項16
空洞(104)と前記空洞(104)内に配置され且つ加工対象物(106)を受け入れるように構成された加工対象物ホルダ(508)とを備えるツール本体の幾何学的形状を特定すること(608)、
前記加工対象物(106)の初期形状を特定すること(602)、
媒体の特性を特定すること(604)、
前記空洞(104)内の前記加工対象物ホルダ(508)が前記加工対象物(106)を受け入れたときの前記空洞(104)内の前記媒体の媒体流路を特定すること(606)、及び
前記加工対象物(106)上の前記媒体の前記媒体流路(512)の加工特性を特定すること(606)を含む、方法。
条項17
前記ツール本体の前記幾何学的形状を特定すること(608)が、前記ツール本体(102)のシェイピング・ポーション(306)の形状を特定することを含み、前記シェイピング・ポーション(306)が、前記媒体流路(512)内に配置されるように構成され且つ前記媒体流路(512)に影響を与えるように構成されている、条項16に記載の方法。
条項18
前記ツール本体の前記幾何学的形状を特定すること(608)が、前記シェイピング・ポーション(306)の摩耗可能部分(312)の幾何学的形状を特定することを更に含み、前記方法が更に、
前記摩耗可能部分(312)上の前記媒体の前記媒体流路(512)の加工特性を特定すること(606)を更に含む、条項17に記載の方法。
条項19
前記加工特性を特定すること(606)が、前記加工対象物の第1の部分からの侵食の量が第1の侵食閾値を超えていると判定すること(610)、及び/又は、前記加工対象物の第1の部分の膨張が第1の膨張閾値未満であると判定すること(612)を含み、前記媒体流路(512)を特定することが、前記加工対象物ホルダ(310)に対する媒体入口(112)の配置を特定することを含む、条項16に記載の方法。
条項20
前記加工対象物の最終形状と前記媒体の前記特性とから前記空洞の空洞形状を特定することを更に含む、条項16に記載の方法。
【0059】
上記の実施例は、本発明を例示するものであって、限定するものではない。本発明の原則に従って数多くの修正例及び変形例が可能であることも理解するべきでる。したがって、本発明の範囲は下記の請求項によってのみ定義されるものである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7