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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】光照射器用電源装置及び光照射システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/00 20100101AFI20230214BHJP
【FI】
H01L33/00 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018247394
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020107802
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】596099446
【氏名又は名称】シーシーエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】倉野 一俊
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-354878(JP,A)
【文献】特開2011-041418(JP,A)
【文献】特開2015-170530(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0095181(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0050381(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00- 5/50
H05B 39/00-39/10
H05B 45/00-45/58
H05B 47/00-47/29
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDを光源とする光照射器に電流を供給してこれを点灯させるものであって、
前記LEDに対する電流目標値と、前記LEDに流れている電流計測値との偏差が小さくなるように、前記LEDに流す電流をフィードバック制御する電流制御回路とを備えており、
該電流制御回路が、前記電流目標値が大きくなるほど位相を遅らせるように伝達関数が変化する位相補償回路を有していることを特徴とする光照射器用電源装置。
【請求項2】
前記位相補償回路が、位相遅れ補償型のものである請求項1記載の光照射器用電源装置。
【請求項3】
前記位相補償回路が、抵抗素子及びキャパシタからなるRC回路を利用したものであって、前記抵抗素子の抵抗値又はキャパシタの容量を前記電流目標値に応じて変化させる調整回路をさらに備えている請求項1記載の光照射器用電源装置。
【請求項4】
前記調整回路は、前記電流目標値が大きくなるほど前記抵抗素子の抵抗値又はキャパシタの容量が大きくなるように変化させる請求項3記載の光照射器用電源装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか記載の光照射器用電源装置と、これに接続された光照射器とを備えていることを特徴とする光照射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面検査や露光等に用いられるLED光照射器に電流を供給してこれを点灯させる光照射器用電源装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光照射器用電源装置(B)(以下、単に電源装置(B)ともいう。)として、例えば図1に示すように、光照射器(A)のLED(A1)に流れる電流を制御して調光する電流制御回路(B1)を有したものが知られている。
【0003】
この電流制御回路(B1)は、光照射器のLED(A1)に流したい電流目標値(すなわち調光目標値)と、LED(A1)に流れている電流を計測した電流計測値との偏差が小さくなるようにLED(A1)の駆動電流を増減させるフィードバック制御を行うものである。
【0004】
具体的に説明すると、この電流制御回路(B1)は、
(1)LED(A1)に直列に設けられた電流計測用抵抗素子(B2)と
(2)LED(A1)に直列に設けられてこれを駆動するFET(B3)と
(3)オペレータ等によって設定された前記電流目標値に対する前記電流計測値の偏差を前記FET(B3)のゲートに出力し、該偏差が小さくなる向きにLED(A1)の駆動電流を増減させるオペアンプなどを利用した比較器(B4)と
(4)位相補償を行うRC等を利用した位相補償回路(B5)と、
を備えている。
【0005】
ところで、このような電流制御回路の応答性、すなわち発光応答性は、電源装置と光照射器とを接続するケーブルの長さや前記FET、比較器などといった回路素子等の各応答性によって一意的に定まり、例えば任意の電流目標値(調光目標値)において、安定かつ可及的速やかに動作する(すなわち、最適な応答性が得られる)ように位相補償回路によって位相補償さえしておけば、どのような調光目標値であってもほぼ同様に安定して動作すると考えられていた。
【0006】
しかしながら、実際には、例えばストロボ発光などのオンオフ時に、電流目標値が小さいときには発振しないが、電流目標値が大きくなると発振するなどといった不具合が発生することを本願発明者は見出した。
【0007】
その例として、オン時の電流目標値を大小3パターンで変えて、オンオフ発光させた場合の電流計測値の波形を図2に示す。
【0008】
図2(b)に示すように、電流目標値が大のときに立ち上がりが早く、かつ発振しないように、位相補償回路のRC値を設定すると、電流目標値が小のときには、同図(a)に示すように、発振はしないが、応答が遅すぎて電流が十分なパルス波形にならないし、逆に電流目標値を小に合わせて位相補償回路を設定すると、同図(c)に示すように、電流目標値が大のときには、応答が早すぎて発振してしまうことがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-135225公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、電流目標値(調光目標値)に関わらず、安定して、しかも応答性良く光照射器を動作させることのできる光照射器用電源装置等を提供すべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明に係る光照射器用電源装置は、LEDを光源とする光照射器に電流を供給してこれを点灯させるものであって、
前記LEDに対する電流目標値と、前記LEDに流れている電流計測値との偏差が小さくなるように、前記LEDに流す電流をフィードバック制御する電流制御回路とを備えており、
該電流制御回路が、前記電流目標値に応じて伝達関数が変化する位相補償回路を有していることを特徴とするものである。
【0012】
このようなものであれば、電流目標値(あるいは調光目標値)に応じて、最適な位相補償をすることができるので、安定して、しかも応答性良く、光照射器を発光させることができるようになる。
【0013】
前述したFET、比較器などの回路素子において、入出力される信号の電圧又は電流が大きいほど応答性がやや悪化する傾向があるのは技術常識として知られている。とすれば、LEDのフィードバック電流制御回路において、電流目標値を大きくすると、各素子の応答性が悪くなり、発光応答性も悪化するはずである。しかしながら前述したように実際には電流目標値を大きくすると、発光応答性は良くなり、発振にまで至ることを本願発明者は見出している。
【0014】
これを改善するには、位相補償回路において、前記電流目標値が大きくなるほど位相を遅らせるように構成しておくことが望ましい。
具体的な実施態様として、前記位相補償回路が、抵抗素子及びキャパシタからなるRC回路を利用したものにおいては、前記抵抗素子の抵抗値又はキャパシタの容量を前記電流目標値に応じて変化させる調整回路をさらに備えているものを挙げることができる。
【0015】
その場合、前記調整回路が、前記電流目標値が大きくなるほど前記抵抗素子の抵抗値又はキャパシタの容量が大きくなるように変化させるものが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る光照射器用電源装置によれば、電流目標値(あるいは調光目標値)に関わらず、安定して、しかも応答性良く、光照射器を発光させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来の光照射システムを示す全体回路図。
図2】従来の光照射システムにおいて、調光目標値を変えたときの計測電流のパルス応答波形の一例。
図3】本発明の一実施形態における光照射システムの全体回路図。
図4】同実施形態の光照射システムにおいて従来と同様に調光目標値を変えたときの計測電流のパルス応答波形の一例。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る光照射システム100は、図3に示すように、LEDを光源とする表面検査用乃至露光用の光照射器300と、この光照射器300に電流を供給する光照射器用電源装置200(以下、単に電源装置200ともいう。)と、これら光照射器及び電源装置とを電気的に接続する接続ケーブル400とを備えたものである。
【0020】
前記光照射器300は、直列乃至並列に接続した1又は複数のLED11からなるLED回路1と、前記接続ケーブル400に接続される一対の接続端子2a、2b(以下、そのうちの一方を光照射器側第1端子2a、他方を光照射器側第2端子2bともいう。)とを備えたものである。そして、前記光照射器側第1端子2aがLED回路1のアノード側に、光照射器側第2端子2bがLED回路1のカソード側に接続されている。
【0021】
前記電源装置200は、同図に示すように、筐体3と、該筐体3の正面に設けられたパネル部4と、筐体3の内部に収容された電源回路5と、一対の接続端子6a、6b(以下、そのうちの一方を電源装置側第1端子6a、他方を電源装置側第2端子6bともいう。)とを備えているものである。
【0022】
前記筐体3は、例えば直方体状をなす金属製のものである。
【0023】
前記パネル部4は、ここでは、デジタルパネルメータや各種操作キーからなり、このパネル部4をオペレータ等が操作することにより、光照射器300の光量を示す調光目標値(すなわち、LED回路1に流したい電流目標値)が、例えばデジタル信号で出力されるように構成してある。なお、同図中符号4aは、前記電流目標値をアナログ値に変換する変換器である。また、この電流目標値は、パネル部4のみならず、他の端末からも設定できるようにしてある。
【0024】
前記電源回路5は、図3に示すように、商用AC電源の交流電圧を直流定電圧に変換するAC-DCコンバータ等からなる定電圧源51と、この定電圧源51から出力される電流を制御する電流制御回路52とを備えたものであり、前記定電圧源51が前記電源装置側第1端子6aに、また、前記電流制御回路52が前記電源装置側第2端子6bにそれぞれ接続されている。
【0025】
そして、前記電源装置側の各端子6a、6bが、前記接続ケーブル400によって前記光照射器側の各端子2a、2bにそれぞれ接続されることによって、前記定電圧源51のプラスコモンから出力された電流が、LED回路1を経て、前記電流制御回路52によって制御されながら流れ、マイナスコモン(グラウンド)に至るように構成してある。
【0026】
次にこの電源回路5の各部について詳述する。
【0027】
前記電流制御回路52は、LED回路1に流れている電流を計測する電流計測回路たる抵抗素子521(以下、計測用抵抗素子521ともいう。)と、前記LED回路1を駆動する(駆動電流を流す)駆動回路たるMOSFET522と、オペレータ等によって設定された前記電流目標値に対する前記電流計測値の偏差を前記駆動素子522に出力してこれを制御し、該偏差が小さくなる向きに駆動電流を増減させる駆動制御回路たる比較器523と、位相補償回路7とを備えたものである。
【0028】
各部を説明する。
【0029】
前記計測用抵抗素子521は、前記LED回路1に直列に配設することによって、その端子間電圧が前記電流計測値を示すように構成したものである。ここでは、その一端がグラウンドに接続してあって、その他端の電圧が前記電流計測値を示すようにしてある。
【0030】
前記MOSFET522は、そのドレンが前記電源装置側第2端子6bを介してLED回路1のカソード側に接続されており、また、そのソースが前記計測用抵抗素子521を介してグラウンドに接続されている。そして、そのゲートに印加される電圧によって、ドレン―ソース間を流れる電流、すなわちLED回路1を流れる電流を増減させ得るように構成してある。
【0031】
前記比較器523は、オペアンプ(増幅器)を利用したものである。そのプラス入力ポートには、前記変換器4aの出力端子が接続されて前記電流目標値が入力されるようにしてあるとともに、そのマイナス入力ポートには、前記計測用抵抗素子521の他端が接続されて電流計測値が入力されるようにしてあって、その出力ポートから前記電流目標値に対する電流計測値の偏差(にオペアンプのゲインを乗じた値)が出力され、前記MOSFET522のゲートに入力されるように構成してある。
【0032】
前記位相補償回路7は、ここでは位相遅れ補償するものであり、抵抗素子71(以下、位相補償用抵抗素子ともいう。)と、キャパシタ72(以下、位相補償用キャパシタ72ともいう。)とを利用したRC回路によって構成されている。
【0033】
前記位相補償用抵抗素子71は、ここでは、前記計測用抵抗素子521と比較器523のマイナス入力端子との間に配設してある。また、前記位相補償用キャパシタ72は、ここでは、前記比較器523のマイナス入力端子と出力端子との間に配設してある。
【0034】
しかして、この実施形態では、前記位相補償用抵抗素子71を、例えばデジタルポテンショメータと称される可変型のものとする一方、その抵抗値を前記電流目標値に応じて変化させ、前記位相補償回路7の伝達関数を変える調整回路8を設けている。
【0035】
この調整回路8は、PLDやマイコンなどによって構成したものであり、前記電流目標値を受け付けて、その値に応じた前記抵抗設定信号の値を定め、これを前記位相補償用抵抗素子71の調整端子(ワイパー端子)に出力してその抵抗値を設定する。
【0036】
この実施形態での調整回路8は、電流目標値が大きくなるほど抵抗値が大きくなるように、つまり、電流目標値が大きくなるほど、位相遅れが大きくなるように動作するようにしてある。電流目標値と抵抗設定信号値との関係は、例えば実験やシミュレーションによって定め、数式やテーブル形式でメモリ(図示しない)に予め記憶させてある。該調整回路8は、この関係に基づいて、電流目標値から抵抗設定信号値を演算して出力する。なお、この関係は、機種によっては線形の場合もあれば、非線形の場合もあり得る。
【0037】
しかしてこのようなものであれば、図4に示すように、電流目標値(あるいは調光目標値)に関わらず、安定して、しかも同様な応答性で、光照射器300の光源であるLED11を発光させることができるようになる。
【0038】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではない。
【0039】
例えば、光照射器の発光応答性を、前記実施形態のように調光目標値に関わらずほぼ等しくするだけでなく、例えば、調光目標値が小さいほど発光応答性が高くなる(あるいは遅くなる)ようにするなど、調光目標値に応じて発光応答性が変動するように構成しても構わない。
【0040】
また、前記実施形態では、調光目標値に応じて位相補償用抵抗素子の値を変えていたが、位相補償用キャパシタの値を変えてもよいし、位相補償回路にインダクタを用いている場合は、その値を変えるようにしてもよい。
【0041】
位相補償回路としては、遅れ位相補償のみならず、進み位相補償するものにも適用可能であるし、位相補償回路を構成する各素子の配設箇所も、前記実施形態に限られるものではない。
【0042】
その他、本発明は、MOSFETをトランジスタに変更したり、LED回路をグラウンド側に、電流制御回路をプラスコモン側に配設したりするなど、前記実施形態に限らず、その趣旨に反しない限りにおいて種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
100 光照射システム
200 光照射器用電源装置
300 光照射器
11 LED
52 電流制御回路
7 位相補償回路
73 抵抗素子
72 キャパシタ
8 調整回路

図1
図2
図3
図4