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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】座席制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/14 20060101AFI20230214BHJP
   B61D 33/00 20060101ALI20230214BHJP
   H04B 10/116 20130101ALI20230214BHJP
   A47C 3/18 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
B60N2/14
B61D33/00 D
H04B10/116
A47C3/18 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018247419
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020104788
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和弥
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187971(JP,A)
【文献】特開2014-031135(JP,A)
【文献】特開2018-122668(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0210247(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
B61D 33/00
H04B 10/116
A47C 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の室内に設置されている複数の座席と、前記複数の座席とそれぞれ通信し、個々の前記座席に対して回転の指示を送信する座席制御装置と、を有する座席制御システムであって、
前記座席は、
前記座席の状態として前記座席の向き、前記座席の可動部材の状態及び前記座席の周囲の物体の有無を検出する検出部と、
検出された前記座席の状態に基づいて前記座席制御装置へ前記座席の向き及び前記座席が回転可能か否かを示す情報を含む状態情報を送信する第1送信部と、
前記座席制御装置から前記回転の指示を受信する第1受信部と、
前記第1受信部が受信した前記回転の指示を実行する第1制御部と、を備え、
前記座席制御装置は、
前記座席から送信された前記状態情報を受信する第2受信部と、
前記回転の指示を送信する第2送信部と、
前記状態情報に基づいて当該座席の回転の要否を判定し、回転が必要と判定された前記座席に対して前記回転の指示を前記第2送信部に送信させる第2制御部と、
を備えていることを特徴とする座席制御システム。
【請求項2】
前記座席制御装置は、前記複数の座席の配置に関する情報を取得する取得部を備え、
前記第2制御部は、前記複数の座席の配置に関する情報に及び前記状態情報に基づいて回転の要否を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の座席制御システム。
【請求項3】
前記第1受信部、前記第1送信部、前記第2受信部及び前記第2送信部は無線通信装置で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の座席制御システム。
【請求項4】
前記無線通信装置は、可視光通信を行うことを特徴とする請求項に記載の座席制御システム。
【請求項5】
前記第2送信部は、前記移動体の室内に設置されている照明装置であることを特徴とする請求項に記載の座席制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両等の移動体の室内に設置された座席を回転させる座席制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体として、例えば鉄道車両においては、客室内に乗客が着席する座席が設置されている。この種の座席は、乗客の好みに合わせて乗客自身の操作により回転させて座席の向きを変更するに限らず、例えば始発駅や終着駅等で進行方向に座席の向きを一斉に変更することも可能となっている。
【0003】
例えば特許文献1には、座席方向設定スイッチ3および制御車両設定スイッチ4による座席回転作業の設定に応じて、制御部8は安全確認スイッチ5により自車両内の安全を確認し、回転座席駆動I/F回路7を介して座席9を座席方向設定スイッチ3の設定方向に回転制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-132765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された発明では、安全確認スイッチ5により自車両内の安全を確認しているが、例えば清掃員等による人手での確認が完了した場合に安全確認スイッチ5が操作されるものであり、人手による確認が不十分な場合には、座席の回転に支障をきたすおそれがある。
【0006】
また、従来の座席を自動的に回転させるシステムでは、現在の座席の向きを考慮せずに一様に回転制御してしまうため、既に所望の向きになっている座席を回転させようとしてモータ等の電力を無駄に消費する場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、人手による確認作業の負担を軽減し、さらに省電力化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載された発明は、移動体の室内に設置されている複数の座席と、前記複数の座席とそれぞれ通信し、個々の前記座席に対して回転の指示を送信する座席制御装置と、を有する座席制御システムであって、前記座席は、前記座席の状態として前記座席の向き、前記座席の可動部材の状態及び前記座席の周囲の物体の有無を検出する検出部と、検出された前記座席の状態に基づいて前記座席制御装置へ前記座席の向き及び前記座席が回転可能か否かを示す情報を含む状態情報を送信する第1送信部と、前記座席制御装置から前記回転の指示を受信する第1受信部と、前記第1受信部が受信した前記回転の指示を実行する第1制御部と、を備え、前記座席制御装置は、前記座席から送信された前記状態情報を受信する第2受信部と、前記回転の指示を送信する第2送信部と、前記状態情報に基づいて当該座席の回転の要否を判定し、回転が必要と判定された前記座席に対して前記回転の指示を前記第2送信部に送信させる第2制御部と、を備えていることを特徴とする座席制御システムである。
【0010】
請求項に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記座席制御装置は、前記複数の座席の配置に関する情報を取得する取得部を備え、前記第2制御部は、前記複数の座席の配置に関する情報に及び前記状態情報に基づいて回転の要否を判定する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項に記載された発明は、請求項1または2に記載された発明において、前記第1受信部、前記第1送信部、前記第2受信部及び前記第2送信部は無線通信装置で構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項に記載された発明は、請求項に記載された発明において、前記無線通信装置は、可視光通信を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項に記載された発明は、請求項に記載された発明において、前記第2送信部は、前記移動体の室内に設置されている照明装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、座席制御装置の第2制御部が、座席で検出された座席の状態に基づいて回転の要否を判定して回転が必要とされた座席に対して回転の指示を送信させる。このようにすることにより、座席の状態を座席自身が検出して情報として出力するので、人手による確認作業を簡素化することが可能となり、人手による確認作業の負担を軽減して座席を回転させることができる。
【0015】
また、検出部は、座席の向き、座席の可動部材の状態及び座席の周囲の物体の少なくともいずれかを検出する。このようにすることにより、座席の向きを検出すれば、既に指定された向きになっている座席は回転させずに、回転が必要な座席のみを回転させることができる。したがって、回転時に消費する電力を削減することができ、さらに、複数の座席の回転に要する時間を短縮することが可能となる。また、座席の可動部材の状態を検出すれば、座席のリクライニング、レッグレスト、テーブル等が復帰位置にある場合にのみ回転させることができる。また、座席の周囲の物体を検出すれば、足元に荷物が有る場合や着座している人がいる等の場合は回転させないようにすることができる。
【0016】
請求項に記載の発明によれば、第2制御部は、複数の座席の配置に関する情報に及び座席の状態に基づいて回転の要否を判定するので、例えば、全座席を進行方向に向ける配置に限らず、ボックスシートやロングシートといった様々な配置を設定することができる。
【0017】
請求項に記載の発明によれば、第1受信部、第1送信部、第2受信部及び第2送信部は無線通信装置で構成されているので、複数の座席と座席制御装置との間を接続する配線を削減することができる。
【0018】
請求項に記載の発明によれば、無線通信装置は、可視光通信を行うので、電波による無線通信と異なり、車外へ放射される可能性が低下させて車外から不適切なアクセスがなされないようにすることができるため適切なセキュリティ対策を行うことができる。また、電波は客室内の受信位置で感度が変化する場合があるので感度の対策が不必要となる。
【0019】
請求項に記載の発明によれば、第2送信部は、移動体の室内に設置されている照明装置であるので、照明装置が通信装置の機能を兼ねることができ、通信専用の装置を設置す
るスペースが不要で当該装置を追加するためのコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態にかかる座席制御システムの概略構成図である。
図2図1に示された座席制御部と通信機能付室内灯の機能的構成である。
図3図1に示された座席制御装置の機能的構成である。
図4】座席制御装置と座席との通信を示したシーケンス図である。
図5図2に示された判定部の動作についてのフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、図1図5を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる座席制御システムの概略構成図である。
【0022】
座席制御システム5は、座席制御部1と、照明装置としての通信機能付室内灯2と、座席3と、を備えている。座席制御システム5は、例えば鉄道車両等の移動体に設けられている。以下の説明では移動体として鉄道車両の例を説明するが、移動体としては航空機や船舶、自動車等であってもよい。
【0023】
座席制御部1は、例えば車両毎或いは編成毎に設けられている。座席制御部1は、後述する座席3の状態を示す状態情報及び座席3の回転した後の向きを示す回転方向情報に基づいて回転させる座席を特定し、通信機能付室内灯2に特定された座席に対しての回転指令を送信させる。
【0024】
通信機能付室内灯2は、例えば鉄道車両の客室内に設置され、当該車内を照明する。また、通信機能付室内灯2は、可視光通信により座席3に上記した回転指令を送信する。また、通信機能付室内灯2は、赤外光通信により座席3からの状態情報を受信する。なお、通信機能付室内灯2は、図1では1つであるが1両につき複数設置されていてもよい。
【0025】
座席制御部1と通信機能付室内灯2は、例えば有線通信ネットワークにて接続されている。この有線通信ネットワークは、例えば鉄道車両であれば予め配設されている配線による通信ネットワークであり、車両間に亘り情報の送受信が行われる場合もある。座席制御部1と通信機能付室内灯2とで本実施形態にかかる座席制御装置として機能する。
【0026】
座席3は、例えば鉄道車両の客室内に設置されている。座席3は、例えば2人掛けや3人掛け等複数人が横に並んで着席することができる周知のものである。また、座席3は、乗客が進行方向に向かって着席できるように水平方向に回転させて向きを変更することができる。或いは、乗客の好みに合わせて向きを変更することができるようになっていてもよい。また、座席3は、着席した乗客の好みに合わせて背もたれの角度を変化(リクライニング)させることができる。さらには、収納自在なレッグレストやテーブル等が設けられていてもよい。即ち、座席3は、リクライニング可能な背もたれ、レッグレスト、テーブル等の可動部材が設けられている。なお、図1では、座席3は進行方向に沿って4つ(座席3a~3d)が示されているが、後述する説明用に示したものであり座席数は特に限定されない。
【0027】
図2に座席制御部1と通信機能付室内灯2の機能構成図を示す。座席制御部1は、配置設定部11と、判定部12と、を備えている。
【0028】
配置設定部11は、例えば複数のボタン等の入力装置で構成されている。配置設定部11は、例えば鉄道車両の進行方向が上り方向である場合は、上りボタンを操作すると乗客が上り方向に向かって着席するような配置に設定する回転方向情報を判定部12へ出力する。また、鉄道車両の進行方向が下り方向である場合は、下りボタンを操作すると乗客が下り方向に向かって着席するような配置に設定する回転方向情報を判定部12へ出力する。即ち、回転方向情報が座席の配置に関する情報となり、配置設定部11は、座席の配置に関する情報を取得する取得部として機能する。
【0029】
判定部12は、配置設定部11からの回転方向情報と、状態情報と、に基づいてそれぞれの座席の回転の要否を判定する。判定部12は、個々の座席毎の判定結果を通信機能付室内灯2の発光制御部22へ出力する。即ち、判定部12は、座席3の状態に基づいて当該座席3の回転の要否を判定し、回転が必要と判定された座席3に対して回転の指示をLED23(通信機能付室内灯2)に送信させる第2制御部として機能する。
【0030】
通信機能付室内灯2は、受光部21と、発光制御部22と、LED23と、を備えている。
【0031】
受光部21は、例えばフォトダイオードで構成され、座席3から送信された赤外光を受光する。受光した赤外光は電気信号に変換され発光制御部22へ出力される。即ち、受光部21は、座席3から送信された座席3の状態を受信する第2受信部として機能する。
【0032】
発光制御部22は、通信機能付室内灯2の全体制御を司る。発光制御部22は、判定部12から入力された判定結果に基づいてLED23の点灯制御を行い座席3と可視光通信を行う。つまり、可視光通信により送信する回転指令等の情報を所定の変調方式により変調してLED23を点灯させる。また、受光部21が受光した赤外光に基づいて判定部12へ送信する状態情報を復調して判定部12へ出力する。
【0033】
LED23は、発光ダイオードであり、通信機能付室内灯2の発光素子である。LED23は、発光制御部22により情報を送信する場合は、上述したように可視光通信用の送信部として機能し、そうでない場合は通常の照明として機能する。即ち、LED23は、座席3に対して可視光通信により回転の指示を送信する第2送信部として機能する。
【0034】
座席3は、座席制御装置30を備えている。座席制御装置30は、座席制御装置から送信される指令に基づいて座席の回転の制御や、座席の各部の状態を検出して座席の状態を座席制御装置へ送信する。図3に、座席制御装置30の機能構成図を示す。座席制御装置30は、受光部31と、制御部32と、制御モータ33と、発光部34と、検出部35と、を備えている。
【0035】
受光部31は、例えばフォトダイオードで構成され、通信機能付室内灯2から送信された可視光(回転指令等)を受光する。受光した可視光は電気信号に変換され制御部32へ出力される。即ち、受光部31は、通信機能付室内灯2(座席制御装置)から回転の指示を受信する第1受信部として機能する。
【0036】
制御部32は、座席3の全体制御を司る。制御部32は、受光部31が受光した可視光から変換された電気信号から回転指令等を復調する。そして、復調された情報に基づいて制御モータ33の制御を行う。また、制御部32は、検出部35が検出した結果に基づいて座席の状態を判定し、判定結果を状態情報として発光部34を介して通信機能付室内灯2へ赤外光通信により送信する。即ち、制御部32は、受光部31が受信した回転の指示を実行する第1制御部として機能する。
【0037】
制御モータ33は、制御部32からの回転指示に応じて座席3を回転させて向きを変更するモータである。制御モータ33は、制御部32からの制御により座席3を回転させる。
【0038】
発光部34は、赤外光を発光する発光素子から構成されている。発光部34は、制御部32により検出部35で検出された座席の状態に基づく状態情報を送信するように発光制御される。即ち、発光部34は、通信機能付室内灯2(座席制御部1)へ座席の状態を送信する第1送信部として機能する。
【0039】
検出部35は、座席3の状態を検出する。座席の状態とは、例えば、座席の向き(上り、下り)、現在回転中か否か、リクライニングの状態、背もたれの背面に設けられたテーブルの収納状態、レッグレストの収納状態、着座の有無、足元の物体の有無等である。即ち、リクライニングの状態、背もたれの背面に設けられたテーブルの収納状態、レッグレストの収納状態は座席の可動部材の状態を示す。また、足元の物体の有無は座席の周囲の物体を示し、本実施形態では、この座席の周囲の物体には着席している人体も含める。
【0040】
座席の向きの検出は、例えば座席が上り方向の場合にオンになるスイッチと座席が下り方向の場合にオンになるスイッチ等により検出可能である。テーブルの収納状態は、収納状態になるとオンになるスイッチや収納状態になると光が遮られる光センサ等で検出可能である。レッグレストの収納状態やリクライニングの状態は、復帰位置(デフォルト位置)でオンになるスイッチ等により検出可能である。着座の有無は座面に圧力センサを設置することで検出可能である。足元の物体は光センサにより検出可能である。また、回転中か否かは制御モータ33が動作中か否かで判定することができる。勿論これらの方法に限らず、周知の他の方法により検出してもよい。
【0041】
制御部32は、座席の状態を示す状態情報としては、少なくとも座席の向きを含めるようにする。したがって、検出部35で検出された他の状態(回転中か否か等)は、検出された状態をそのまま状態情報に含めてもよいし、回転可能な状態か否かという情報にまとめてもよい。例えば、テーブルやレッグレストが未収納の場合やリクライニングが復帰位置以外の角度にある場合はそのまま回転すると前後の座席と接触してしまうことがあるため回転できない。足元に荷物等の物体があると回転に支障をきたすおそれがある。また、座席に人が着席した状態で回転させるのも好ましくない。これらのようなことが検出された場合は、制御部32で回転不可と判定して状態情報に含めてもよい。
【0042】
また、上述したリクライニングやレッグレスト等の所定の操作により自動的に位置が復帰するものは、復帰しないことが検出された場合(スイッチがオンにならない場合)は、故障であると制御部32が判定して状態情報に含めてもよい。
【0043】
なお、本実施形態では、座席3の発光部34は、赤外光を発光しているが可視光であってもよい。また、発光部34に代えて電波を送信するようにしてもよい。この場合は通信機能付室内灯2の受光部21も電波を受信するように変更する。あるいは、座席制御部1との通信について無線通信ではなく有線通信としてもよい。
【0044】
次に、上述した構成の座席制御システム5の動作について図4及び図5を参照して説明する。なお、以下の説明は、例えば鉄道車両が終点等で折り返す際に座席を一斉に回転させる動作を示すものである。
【0045】
図4は、座席制御装置(座席制御部1及び通信機能付室内灯2)と座席3との通信を示したシーケンス図である。なお、図4において、座席3の向きの初期状態は、図1に示したように座席3aが下り方向、座席3b~3dが上り方向を向いている。また、各座席3a~3dは、故障等の回転に支障がある状態ではないとする。
【0046】
まず、座席の向きを下り方向に向けるよう配置設定部11に設定されたとする。その場合、判定部12は下り方向との回転方向情報に対応して座席3の状態を取得するため、各座席3a~3dに対して状態要求を発光制御部22に送信するよう指示する。発光制御部22は、LED2の発光を制御して要求情報として状態要求を各座席3a~3dにマルチキャストで送信する(T11)。なお、ここでは後述する指令要求は要求情報に含まれない(指令なし)。ここで、座席制御装置と各座席3a~3dには予めアドレスが付与されており、送信元及び送信先にアドレスを設定することで指令等の発信元と発信先を特定することができる。
【0047】
各座席3では、受光部31が受光した状態要求に基づいて、制御部32が座席の状態を状態情報として発光部34に座席制御装置に対してユニキャストで送信させる。図1の例の場合、座席3aが下り方向(T21)、座席3bが上り方向(T22)、座席3cが上り方向(T23)、座席3dが上り方向(T24)との状態情報が送信される。
【0048】
座席制御装置では、受光部21で各状態情報を受光し、発光制御部22で復調して判定部12に出力される。判定部12では、各座席3a~3dの向きに基づいて回転が必要な座席があるか判定し、回転の必要がある座席に対して要求情報として指令要求である回転指令及び状態要求を送信する(T12)。図4の場合は、座席3b~3dは上り方向であるため回転の必要がある。また、本実施形態では進行方向に沿って1つ置きに座席の回転を行うので、まずは、偶数番目の座席である座席3b、3dに対しての回転指令をマルチキャストで送信する。このとき、この指令は座席3a、3cでは受信されるものの自身宛ではないとして破棄される。
【0049】
そして、座席3a~3dでは、制御部32が座席の状態を状態情報として発光部34に座席制御装置に対してユニキャストで送信させる。ここでは、まだ回転が完了していないので、座席3b、3dは、上り方向との状態情報を送信する(T26、T28)。座席3a、3cは、回転指令を破棄しているので、前の状態と同じ状態を送信する(T25、T27)。なお、T26、T28において、座席3b、3dから送信する状態情報は、回転中を示すものであってもよい。
【0050】
座席制御装置では、受光部21で各状態情報を受光し、T12で送信した回転指令が完了していないので、各座席3a~3dに対して要求情報として状態要求を発光制御部22に送信するよう指示する。発光制御部22は、LED2の発光を制御して状態要求を各座席3a~3dにマルチキャストで送信する(T13)。なお、ここでは、指令要求は要求情報に含まれない。
【0051】
各座席3では、受光部31が受光した状態要求に基づいて、制御部32が座席の状態を状態情報として発光部34に座席制御装置に対してユニキャストで送信させる。このとき、座席3b、3dの回転が完了していたとすると、座席3a、3b、3dが下り方向(T29、T30、T32)、座席3cが上り方向(T31)との状態情報が送信される。
【0052】
座席制御装置では、受光部21で各状態情報を受光し、T12で送信した回転指令が完了しているので、再度判定部12で、各座席3a~3dの向きに基づいて回転が必要な座席があるか判定し、回転の必要がある座席に対して要求情報として指令要求である回転指令及び状態要求を送信する(T14)。ここでは、偶数番目の座席は回転の必要がある座席が無いので、奇数番目の座席で回転の必要がある座席3cに対しての回転指令をマルチキャストで送信する。座席3aは奇数番目であるが既に下り方向を向いているので回転させない。この指令は座席3a、3b、3dでは受信されるものの自身宛ではないとして破棄される。
【0053】
座席3cでは、受光部31が受光した回転指令に基づいて、制御部32が制御モータ33を制御して座席を回転させる。そして、座席3a~3dでは、制御部32が座席の状態を状態情報として発光部34に座席制御装置に対してユニキャストで送信させる。ここでは、まだ回転が完了していないので、座席3cは、上り方向との状態情報を送信する(T35)。座席3a、3b、3dは、回転指令を破棄しているので、前の状態と同じ状態を送信する(T33、T34、T36)。
【0054】
座席制御装置では、受光部21で各状態情報を受光し、T14で送信した回転指令が完了していないので、各座席3a~3dに対して要求情報として状態要求を発光制御部22に送信するよう指示する。発光制御部22は、LED2の発光を制御して状態要求を各座席3a~3dにマルチキャストで送信する(T15)。なお、ここでは、指令要求は要求情報に含まれない。
【0055】
各座席3では、受光部31が受光した状態要求に基づいて、制御部32が座席の状態を状態情報として発光部34に座席制御装置に対してユニキャストで送信させる。このとき、座席3cの回転が完了していたとすると、全ての座席3a~3dが下り方向(T37~T40)との状態情報が送信される。
【0056】
座席制御装置では、受光部21で各状態情報を受光し、全ての座席の向きが下り方向となったので、回転完了を示す情報を不図示の表示部に出力して表示させたり、上位の機器等に送信するようにしてもよい。
【0057】
図5は、判定部12における動作を示したフローチャートである。まず、配置設定部11に設定された向きに基づく回転方向情報(上り又は下り)が判定部12に入力される(S1)。次に、全ての座席の状態を取得する(S2)。即ち、座席制御部1が管理する範囲(例えば1両、1編成等)における各座席の状態を取得する。
【0058】
次に、偶数座席とその前後の座席の状態を確認する(S3)。偶数座席とは、例えばクロスシートの場合に、車両の一方の端部側から数えて偶数番目に設置されている座席を示す。例えば、図1における座席3b、3dである。そして、これらの座席が回転できない状態となっているか判定し、更に、前後の座席との関係で回転ができなくなっているかを判定する。
【0059】
当該座席自体に回転できない状態とは、当該座席自体の回転駆動系の故障、当該座席の足元荷物を検知、当該座席の着座が検知されている等が挙げられる。前後の座席との関係で回転ができなくなっている状態とは、前席又は後席が回転中、前席又は後席のテーブルが未収納、前席又は後席のレッグレストが未収納、前席又は後席のリクライニングが未収納、前席又は後席の着座が検知、前席又は後席の足元荷物の検知、回転中座席の合計が規定数を超えた等が挙げられる。回転中座席の合計が規定数とは、モータへ供給する電流の上限により設定される数である。なお、座席の状態として“故障”や“回転不可”といった情報が取得されている場合は、前後の座席のいずれかが“故障”や“回転不可”の場合は、前後の座席との関係で回転ができなくなっている状態と判定する。
【0060】
S3で回転できないと判定された座席がなく、現在の座席の向きと指定された回転方向から回転の必要な座席がある場合は、回転が必要な座席について回転指令を発光制御部22に出力する(S4)。
【0061】
一方、S3で回転できないと判定された座席がある場合は、回転できない理由が当該座席自体の場合は当該座席のみを回転不可とし、回転できない理由が前後の座席との関係の場合は、当該座席及び回転できない原因となっている前又は後ろの座席を回転不可とする(S5)。
【0062】
S4又はS5を実行した後は、再度S2で全ての座席の状態を取得して、偶数座席についてその前後の座席の状態を確認する(S3)。このとき既に当該座席自体または前後の座席との関係で回転不可とされている座席については除いて判断する。
【0063】
そして、S3で偶数番目の座席で回転させる座席が無いと判定された場合は、全ての座席の状態を取得する(S6)。
【0064】
次に、奇数座席とその前後の座席の状態を確認する(S7)。ここでは、S3と同様に、奇数座席について座席が回転できない状態となっているか判定し、更に、前後の座席との関係で回転ができなくなっているかを判定する。
【0065】
S7で回転できないと判定された座席がなく、座席の向きと指定された回転方向から回転の必要な座席がある場合は、回転が必要な座席について回転指令を発光制御部22に出力する(S8)。
【0066】
一方、S7で回転できないと判定された座席がある場合は、回転できない理由が当該座席自体の場合は当該座席のみを回転不可とし、回転できない理由が前後の座席との関係の場合は、当該座席と回転できない原因となっている前又は後ろの座席を回転不可とする(S9)。
【0067】
S8又はS9を実行した後は、再度S6で全ての座席の状態を取得して、奇数座席についてその前後の座席の状態を確認する(S7)、このとき既に当該座席自体または前後の座席との関係で回転不可とされている座席については除いて判断する。
【0068】
そして、S7で奇数列目の座席で回転させる座席が無いと判定された場合は、回転可能な全ての座席の回転が完了したとして終了する。
【0069】
本実施形態によれば、移動体の室内に設置されている複数の座席3と、複数の座席3とそれぞれ通信し、個々の座席3に対して回転の指示を送信する座席制御部1及び通信機能付室内灯2と、を有する座席制御システム5であって、座席3は、座席の状態を検出する検出部35と、通信機能付室内灯2へ座席の状態を送信する発光部34と、通信機能付室内灯2から回転指令を受信する受光部31と、受光部31が受信した回転指令を実行する制御部32と、を備え、通信機能付室内灯2は、座席3から送信された座席の状態を受信する受光部21と、回転指令を送信するLED23と、を備え、座席制御部1は、座席の状態に基づいて当該座席3の回転の要否を判定し、回転が必要と判定された座席3に対して回転指令を通信機能付室内灯2に送信させる判定部12を備えている。
【0070】
このように構成されることにより、判定部12が、座席3で検出された座席の状態に基づいて回転の要否を判定して回転が必要とされた座席に対して回転の指示を送信させるため、座席の状態を座席自身が検出して情報として出力することができる。したがって、人手による確認作業を簡素化することが可能となり、人手による確認作業の負担を軽減して座席を回転させることができる。また、座席の状態が通知されるので、速やかに点検等の保守をすることができる。
【0071】
また、検出部35は、座席3の向きを検出するので、既に指定された向きになっている座席3は回転させずに、回転が必要な座席3のみを回転させることができる。したがって、回転時に消費する電力を削減することができ省電力化を図ることができる。さらに、複数の座席の回転に要する時間を短縮することが可能となる。
【0072】
また、検出部35は、座席3のリクライニング、レッグレスト、テーブルの状態を検出しているので、これらが復帰位置にある場合にのみ回転させることができる。また、座席3の足元の荷物や着座の有無をしているので、これらの状態が検出された場合は回転させないようにすることができる。
【0073】
また、通信機能付室内灯2と座席3とは無線通信を行うように構成されているので、複数の座席と座席制御装置との間を接続する配線を削減することができる。そして、通信機能付室内灯2から座席3へは可視光通信を行うので、電波による無線通信と異なり、車外や隣接車両へ放射される可能性が低下させて車外等から不適切なアクセスがなされないようにすることができるため適切なセキュリティ対策を行うことができる。また、電波は客室内の受信位置で感度が変化する場合があるので感度の対策が不必要となる。
【0074】
さらには、通信機能付室内灯2は、鉄道車両の室内に設置されている照明装置であるので、照明装置が通信装置の機能を兼ねることができ、通信専用の装置を設置するスペースが不要で当該装置を追加するためのコストを削減することができる。
【0075】
なお、上述した実施形態では、配置設定部11から入力される座席の配置に関する情報として座席の向き(上り又は下り)としていたが、それに限らない。例えば、全ての座席が同じ向きとなっている状態から前後の座席が向かい合うボックスシートとする状態に変更してもよいし、クロスシートからロングシートに変更する(或いはその逆)ようにしてもよい。つまり、座席制御装置で座席毎に回転の要否を判定することが可能となるため、各座席に合わせて指令を発することができる。また、座席の向きも上り又は下りに限らず、例えば進行方向と垂直な向き(窓に向かって着席する等)であってもよい。
【0076】
また、上述した実施形態では、座席の向きが必須であったが、それに限らない。例えば、座席の可動部材の状態や座席の周囲の物体の検出の情報があれば、少なくともその座席や前後の座席が回転できる状態か否かを判断することができる。したがって、座席に対して回転指令を送信するか否かを判定することが可能である。
【0077】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の座席制御システムの構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
1 座席制御部(座席制御装置)
2 通信機能付室内灯(座席制御装置)
3 座席
5 座席制御システム
11 配置設定部(取得部)
12 判定部(第2制御部)
21 受光部(第2受信部、無線通信装置)
22 発光制御部
23 LED(第2送信部、無線通信装置、照明装置)
30 座席制御装置
31 受光部(第1受信部)
32 制御部(第1制御部、無線通信装置)
34 発光部(第1送信部、無線通信装置)
35 検出部
図1
図2
図3
図4
図5