IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャープ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図1
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図2
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図3
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図4
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図5
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図6
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図7
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図8
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図9
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図10
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図11
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図12
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図13
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図14
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図15
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図16
  • 特許-移動装置および移動制御方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】移動装置および移動制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20230214BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230214BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230214BHJP
   G01S 17/93 20200101ALN20230214BHJP
【FI】
B60W30/08
G05D1/02 R
G08G1/16 C
G01S17/93
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019018869
(22)【出願日】2019-02-05
(65)【公開番号】P2020125031
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】黒田 達朗
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-005834(JP,A)
【文献】特開2018-113937(JP,A)
【文献】特開2011-145975(JP,A)
【文献】特開2018-159570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/08
G05D 1/02
G08G 1/16
G01S 17/93
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体を移動させる駆動部と、
被検知物までの距離値を計測する距離検知部と、
前記距離検知部の検知結果を予め定められたフレーム時間ごとに記憶する記憶部と、
前記距離検知部の検知結果に応じて、前記駆動部を制御する制御部とを備え、
前記距離検知部は、予め設定された距離範囲にある被検知物を検知する第一検知範囲と、前記第一検知範囲よりも前記筐体に近い距離範囲にある被検知物を検知する第二検知範囲と、前記第一検知範囲と同じ範囲か、前記第一検知範囲よりも大きい第三検知範囲とを有し、
前記制御部は、前記距離検知部が前記第一検知範囲で被検知物を検知した後に前記第二検知範囲で被検知物を検知した場合は、前記筐体を停止させ、
前記距離検知部が前記第一検知範囲で被検知物を検知せずに前記第二検知範囲で被検知物を検知した場合、予め定められた過去の前記フレーム時間における前記距離検知部の検知結果を参照し、
前記過去のフレーム時間において、前記距離検知部が前記第三検知範囲で被検知物を検知していた場合、前記筐体を停止させ、
一方、前記過去のフレーム時間において、前記距離検知部が前記第三検知範囲で被検知物を検知していなかった場合、前記筐体の移動を継続させることを特徴とする移動装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記過去のフレーム時間において、前記距離検知部が前記第検知範囲で被検知物を検知していなかった場合、前記筐体を予め定められた速度に減速させる請求項に記載の移動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記筐体の移動速度に応じて前記第検知範囲を変化させる請求項1または2に記載の移動装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記筐体の移動速度が大きくなるほど、前記第検知範囲を広くする請求項に記載の移動装置。
【請求項5】
前記過去のフレーム時間は、前記筐体の移動速度に応じて異なる請求項2~のいずれか1つに記載の移動装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記距離検知部が前記第一検知範囲で被検知物を検知せずに前記第二検知範囲で被検知物を検知した場合、予め定められた複数の過去のフレーム時間にわたって、前記距離検知部が前記第検知範囲で被検知物を検知し続けていたか否かを判定し、
前記複数の過去のフレーム時間にわたって、前記距離検知部が前記第検知範囲で距離値が減少傾向にある被検知物を検知していた場合、前記制御部は、前記筐体を停止させ、
一方、前記複数の過去のフレーム時間にわたって、前記第検知範囲で距離値が減少傾向にある被検知物を検知していない場合、前記制御部は、前記筐体の移動を継続させる請求項2~のいずれか1つに記載の移動装置。
【請求項7】
前記複数の過去のフレーム時間の一部にわたって、前記第検知範囲内に距離値が減少傾向にある被検知物を検知していたが、他の一部の過去のフレーム時間で被検知物を検知していない場合、前記制御部は、前記筐体を予め定められた速度に減速移動させる請求項に記載の移動装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記筐体を予め定められた速度に減速移動させた後、前記第一検知範囲で被検知物を検知した場合、前記筐体を停止させる請求項に記載の移動装置。
【請求項9】
前記複数の過去のフレーム時間にわたって、前記距離検知部が前記第検知範囲で距離値が不規則に変化する被検知物を検知した場合、前記制御部は、予め定められた速度に前記筐体を減速移動させる請求項7または8に記載の移動装置。
【請求項10】
筐体を備えた移動装置の移動制御方法であって、
被検知物までの距離値を計測する距離検知ステップと、
前記距離検知ステップの検知結果を予め定められたフレーム時間ごとに記憶する記憶ステップと、
前記距離検知ステップの検知結果に応じて、移動装置の移動を制御する移動制御ステップとを有し、
前記距離検知ステップの検知範囲には、予め設定された距離範囲にある被検知物を検知する第一検知範囲と、前記第一検知範囲よりも前記筐体に近い距離範囲にある被検知物を検知する第二検知範囲と、前記第一検知範囲と同じ範囲か、前記第一検知範囲よりも大きい第三検知範囲とが含まれ、
前記距離検知ステップにおいて、前記第一検知範囲で被検知物を検知せずに前記第二検知範囲で被検知物を検知した場合、予め定められた過去の前記フレーム時間における前記距離検知ステップの検知結果を参照し、
前記過去のフレーム時間において、前記第三検知範囲で被検知物を検知していた場合、前記移動制御ステップにおいて、前記筐体を停止し、
一方、前記過去のフレーム時間において、前記第三検知範囲で被検知物を検知していなかった場合、前記移動制御ステップにおいて、前記筐体の移動を継続することを特徴とする移動装置の移動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動装置に関し、詳しくは、LIDAR等の距離検知部により周囲の障害物を検知する障害物検知機能を有する移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、移動装置として、LIDAR等の距離検知部により障害物を検知する障害物検知機能を有し、障害物の検知結果に応じて減速または停止させるものが知られている。
【0003】
このような移動装置の安全制御に関する発明として、例えば、予め設定された安全範囲内の被検知物を検知する安全検知部と、予め設定された指示範囲内の被検知物を検知する指示検知部と、前記安全検知部の検知結果に応じて、前記安全装置を作動させるか否かの安全判定を行う安全判定部と、前記指示検知部の検知結果に応じて、前記機器を減速または停止させるか否かの指示判定を行う指示判定部とを備え、走行面を走行する移動体への電源供給を遮断させる安全装置の補助を行う安全補助装置の発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-109725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような障害物検知機能を有する移動装置において、雨や霧、雪などの天候の影響によって距離検知部が正しく動作しないことがある。
【0006】
LIDAR等の距離検知部による障害物を測定する場合、障害物にレーザー光が当たる前に、雨や霧、雪等によってレーザー光が反射されてしまうことがあるため、結果として、障害物の検知精度が下がってしまう。
【0007】
このような誤検知が発生した場合、減速の必要がない場所においても走行装置の減速が発生し、また、降雪量が多い場合、しばしば走行装置が停止することもある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する移動装置および移動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)この発明の移動装置は、筐体と、前記筐体を移動させる駆動部と、被検知物までの距離値を計測する距離検知部と、前記距離検知部の検知結果に応じて、前記駆動部を制御する制御部とを備え、前記距離検知部は、予め設定された距離範囲にある被検知物を検知する第一検知範囲と、前記第一検知範囲よりも前記筐体に近い距離範囲にある被検知物を検知する第二検知範囲とを有し、前記制御部は、前記距離検知部が前記第一検知範囲で被検知物を検知した後に前記第二検知範囲で被検知物を検知した場合は、前記筐体を停止させ、前記距離検知部が前記第一検知範囲で被検知物を検知せずに前記第二検知範囲で被検知物を検知した場合は、前記筐体の移動を継続させることを特徴とする。
また、この発明の移動装置の移動制御方法は、筐体を備えた移動装置の移動制御方法であって、被検知物までの距離値を計測する距離検知ステップと、前記距離検知ステップの検知結果に応じて、移動装置の移動を制御する移動制御ステップとを有し、前記距離検知ステップにおいて、予め設定された第一検知範囲で被検知物を検知した後に予め設定された第二検知範囲で被検知物を検知した場合は、前記移動制御ステップにおいて、前記筐体を停止し、前記距離検知ステップにおいて、前記第一検知範囲で被検知物を検知せずに前記第二検知範囲で被検知物を検知した場合は、前記筐体の移動を継続することを特徴とする。
【0010】
「被検知物」は、レーザー光を走査した際に、反射されたレーザー光を受光することによって検知された対象物である。
【0011】
本発明の「駆動部」は、走行駆動部102によって実現される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第一検知範囲内に被検知物が検知された後、第二検知範囲内に被検知物が検知された場合、障害物を検知している可能性が高いものと判定して筐体を停止させるため、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する移動装置および移動制御方法を実現できる。
【0013】
また、本発明の移動装置は、次のように構成されてもよく、それらが適宜組み合わされてもよい。
【0014】
(2)前記距離検知部の検知結果を予め定められたフレーム時間ごとに記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記距離検知部が前記第二検知範囲で被検知物を検知した場合、予め定められた過去の前記フレーム時間における前記距離検知部の検知結果を参照し、前記過去のフレーム時間において、前記距離検知部が前記第一検知範囲で被検知物を検知していた場合、前記筐体を停止させ、一方、前記過去のフレーム時間において、前記距離検知部が前記第一検知範囲で被検知物を検知していなかった場合、前記筐体の移動を継続させるものであってもよい。
【0015】
「予め定められた過去のフレーム時間」は、例えば、現在のフレーム時間よりも1つ前のフレーム時間である。
また、例えば、現在のフレーム時間よりも1つ~3つ前のフレーム時間のように、複数の過去のフレームであってもよい。
【0016】
このようにすれば、第二検知範囲内に被検知物が検知され、かつ、所定の過去のフレーム時間においても第一検知範囲内に被検知物が検知されていた場合、障害物を検知している可能性が高いものと判定して筐体を停止させるため、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する移動装置を実現できる。
【0017】
(3)前記制御部は、前記過去のフレーム時間において、前記距離検知部が前記第一検知範囲で被検知物を検知していなかった場合、前記筐体を予め定められた速度に減速させるものであってもよい。
【0018】
このようにすれば、現在のフレーム時間において検知された被検知物が誤検知によるものと判定した場合、筐体を即座に停止させずに減速移動させることにより、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する移動装置を実現できる。
【0019】
(4)前記制御部は、前記筐体の移動速度に応じて前記第一検知範囲を変化させるものであってもよい。
【0020】
このようにすれば、筐体の移動速度に応じた適切な範囲の障害物が監視対象となるため、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する移動装置が提供される。
【0021】
(5)前記制御部は、前記筐体の移動速度が大きくなるほど、前記第一検知範囲を広くするものであってもよい。
【0022】
このようにすれば、筐体の移動速度が大きくなるほど、より広い範囲の障害物が監視対象となるため、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する移動装置を実現できる。
【0023】
(6)前記過去のフレーム時間は、前記筐体の移動速度に応じて異なるものであってもよい。
【0024】
「前記過去のフレーム時間は、前記筐体の移動速度に応じて異なる」は、例えば、筐体の移動速度が遅くなるほど、より過去のフレーム時間に基づいて障害物の有無を判定する。
また、複数の過去のフレーム時間に基づいて障害物の有無を判定する場合は、筐体の移動速度が遅くなるほど、より多くの過去のフレーム時間に基づいて障害物の有無を判定する。
【0025】
このようにすれば、筐体の移動速度に応じた適切な過去のフレーム時間で検知された被検知物に基づいて障害物の有無が判定されるため、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する移動装置を実現できる。
【0026】
(7)前記制御部は、前記距離検知部が前記第二検知範囲で被検知物を検知した場合、予め定められた複数の過去のフレーム時間にわたって、前記距離検知部が前記第二検知範囲で被検知物を検知し続けていたか否かを判定し、前記複数の過去のフレーム時間にわたって、前記距離検知部が前記第二検知範囲で距離値が減少傾向にある被検知物を検知していた場合、前記制御部は、前記筐体を停止させ、一方、前記複数の過去のフレーム時間にわたって、前記第二検知範囲で距離値が減少傾向にある被検知物を検知していない場合、前記制御部は、前記筐体の移動を継続させるものであってもよい。
【0027】
このようにすれば、第二検知範囲内に被検知物が検知され、かつ、所定の複数の過去のフレーム時間にわたって接近する被検知物が検知された場合、接近中の障害物を検知している可能性が高いものと判定して、筐体を停止させるため、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する移動装置を実現できる。
【0028】
(8)前記複数の過去のフレーム時間の一部にわたって、前記第二検知範囲内に距離値が減少傾向にある被検知物を検知していたが、他の一部の過去のフレーム時間で被検知物を検知していない場合、前記制御部は、前記筐体を予め定められた速度に減速移動させるものであってもよい。
【0029】
「距離値が減少傾向にある被検知物を検知」は、例えば、所定の複数の過去のフレームのうち、一部の過去のフレームにおいて被検知物が検知されていなかったとしても、全体として被検知物までの距離が減少する傾向にあることが検知されている場合である。
また、複数の過去のフレームにおいて、数フレームずつ被検知物までの距離値の平均をとった結果、当該距離値の平均が減少する傾向にあることが検知されている場合も、このような場合に該当する。
【0030】
このようにすれば、複数の過去のフレーム時間の一部にわたって接近する被検知物を検知しているものの、他の一部のフレーム時間で被検知物が検知されていない場合は、接近中の障害物を検知している可能性が高いものと判定して、いったん筐体を所定の速度で減速移動させるため、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する移動装置を実現できる。
【0031】
(9)前記制御部は、前記筐体を予め定められた速度に減速移動させた後、前記第一検知範囲で被検知物を検知した場合、前記筐体を停止させるものであってもよい。
【0032】
このようにすれば、接近中の障害物を検知している可能性が高いものと判定して、いったん筐体を所定の速度で減速移動させた後、再び停止範囲内に被検知物を検知した場合に、筐体を停止させるため、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する移動装置を実現できる。
【0033】
(10)前記筐体の停止時に前記距離検知部が前記第一検知範囲で被検知物を検知した場合、前記制御部は、予め定められた複数の過去のフレーム時間にわたって、前記距離検知部が同じ距離値の被検知物を検知していたか否かを判定し、前記複数の過去のフレーム時間にわたって、前記距離検知部が同じ距離値の被検知物を検知していた場合、前記制御部は、前記筐体を停止させるものであってもよい。
【0034】
このようにすれば、筐体が停止している場合に、停止範囲内に被検知物を検知し、かつ、所定の過去の複数のフレーム時間にわたって、同じ距離値の被検知物を検知し続けていたか否かに基づいて障害物の有無を判定するため、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する移動装置を実現できる。
【0035】
(11)前記複数の過去のフレーム時間にわたって、前記距離検知部が前記第二検知範囲で距離値が不規則に変化する被検知物を検知した場合、前記制御部は、予め定められた速度に前記筐体を減速移動させるものであってもよい。
【0036】
「距離値が不規則に変化する被検知物を検知」は、例えば、雨や霧、雪等のノイズの影響でセンサが不調なときに障害物を検知した場合などがあげられる。
また、例えば、草むらにおいて、風にゆれる草の葉のように不規則な変化をする障害物を検知した場合も、このような場合に該当する。
【0037】
このようにすれば、距離値が不規則に変化する被検知物を検知した場合、筐体を減速移動させるため、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する移動装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態1に係る自律走行型車両を示す左側面図である。
図2図1の自律走行型車両の平面図である。
図3図1の自律走行型車両における電動車台部の概略構成を示す説明図である。図3(A)は、電動車台部の右側面図であり、図3(B)は、図3(A)のB-B線矢視断面図である。
図4図1の自律走行型車両の走行制御に関連した構成を示すブロック図である。
図5図1の自律走行型車両の距離検知部の検知範囲の一例を示す説明図である。
図6図5の距離検知部の切り替えの例を示す説明図である。図6(A)は、前進時または前スラローム時に駆動される距離検知部、図6(B)は、左方向への対地旋回時に駆動される距離検知部である。
図7】従来の自律走行型車両の障害物検知処理の流れを示すフローチャートである。
図8】距離検知部が監視範囲内に被検知物を検知した場合において、当該被検知物までの距離の変化を示すグラフである。図8(A)は、通常の障害物までの距離の変化を示すグラフであり、図8(B)は、雨や霧、雪等のノイズに起因する被検知物までの距離の変化を示すグラフである。
図9図1の自律走行型車両の障害物検知処理の流れを示すフローチャートである。
図10図1の自律走行型車両のフレームごとの被検知物までの距離値と車両の動作との対応関係を示す表である。
図11】本発明の実施形態2に係る自律走行型車両の前面および後面の距離検知部によって検知された被検知物までの距離値と車両の動作との対応関係を示す表である。
図12】本発明の実施形態2に係る自律走行型車両の左右側面の距離検知部によって検知された被検知物までの距離値と車両の動作との対応関係を示す表である。
図13】本発明の実施形態3に係る自律走行型車両の走行動作と監視範囲および減速・停止範囲との関係を示す表である。
図14】本発明の実施形態4に係る自律走行型車両の側面の距離検知部によって検知された被検知物までの距離値と車両の動作との対応関係を示す表である。
図15図14においてノイズに起因する飛び込み判定がなされた場合に当該飛び込み判定を解除するための条件を示す表である。
図16】本発明の実施形態5に係る自律走行型車両の障害物検知処理の流れを示すフローチャートである。
図17】距離検知部が監視範囲内に被検知物を検知した場合において、当該被検知物までの距離の変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照しながら、本発明の移動装置の一例としての自律走行型車両1の実施形態について詳説する。なお、以下の実施例の記載によって、この発明が限定されるものではない。
【0040】
本発明は、自律走行型の車両への適用に限定されず、周囲の障害物の検知結果に応じて移動を制御するものであれば、人が運転する車両等の移動装置に適用するものであってもよい。
また、車を有する走行装置に限られず、二足(多足)歩行型のロボットや磁気等による浮上式の移動装置などであってもよい。
また、地面を走行する走行装置に限られず、例えば、空中を飛行する航空機やドローン、水上を航行する船やホバークラフト、海中を移動する潜水艦などの移動装置であってもよい。
【0041】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る自律走行型車両1を示す左側面図である。また、図2は、図1の自律走行型車両1の平面図である。また、図3は、図1の自律走行型車両1における電動車台部の概略構成を示す説明図である。図3(A)は、電動車台部の右側面図であり、図3(B)は、図3(A)のB-B線矢視断面図である。また、図1の自律走行型車両1の走行制御に関連した構成を示すブロック図である。
【0042】
本発明の実施形態1に係る自律走行型車両1は、主として、電動車台部10と、電動車台部10上に設けられた昇降機構部50と、昇降機構部50の先端部に設けられた撮像部としての監視カメラ60を備える。
【0043】
さらに詳しくは、電動車台部10の前端部上には距離検知部12が設けられ、電動車台部10の後端部上にはWi‐Fiアンテナ71および警告灯72が設けられ、電動車台部10の左右側面および後端面にはCCDカメラ73が設けられ、昇降機構部50の監視カメラ60の後方位置にはGPSアンテナ74が設けられている。
【0044】
距離検知部12は、移動する前方領域や路面の状態を確認する機能を有し、光を出射する発光部と、光を受光する受光部と、前記前方空間の所定の複数の被検知物に向けて前記光が出射されるように、光の出射方向を走査させる走査制御部とを備える。
【0045】
距離検知部12としては、所定の距離測定領域内の2次元(2D)空間または3次元(3D)空間にレーザーを出射し、前記距離測定領域内の複数の被検知物における距離を測定するLIDAR(Light Detection and Ranging、あるいはLaser Imaging Detection and Ranging:ライダー)を用いることができる。
【0046】
なお、図5に示すように、筐体の前後左右に複数の距離検知部12を設けるようにしてもよい。
【0047】
制御部100は、自律走行型車両1の有する走行機能や監視機能などを実行する部分であり、例えば制御部(走行制御部および安全制御部)、指示認識部、指示実行部などから構成される。
【0048】
自律走行型車両1は、走行すべき領域の地図情報と移動経路情報とを予め記憶し、監視カメラ60、距離検知部12およびGPS(Global Positioning System)から取得した情報を利用して、障害物を避けながら、所定の経路を走行するよう構成されている。
実施形態1において、距離検知部12は、2次元(2D)空間にレーザーを出射して被検知物までの距離を測定するが、3次元(3D)空間にレーザーを出射するものであってもよい。
【0049】
自律走行型車両1は、監視カメラ60や距離検知部12等を利用して、電動車台部10の進行方向前方の状態を確認しながら自走する。例えば、前方に、障害物や段差等が存在することを検知した場合には、障害物に衝突することなどを防止するために、静止、回転、後退、前進等の動作を行って進路を変更する。
【0050】
次に、図3(A)および(B)を参照しながら自律走行型車両1の走行に関係する構成を説明する。なお、図3(A)において右側の前輪21および後輪22を2点鎖線で示し、図3(B)において後述するスプロケット21b、22b、31b、32bを破線で示している。
【0051】
<電動車台部10の説明>
電動車台部10は、車台本体11と、車台本体11の前後左右に設けられた4つの車輪と、4つの車輪のうち少なくとも前後一方側の左右一対の車輪を個別に回転駆動する2つの電動モータ41R、41Lと、2つの電動モータ41R、41Lに電力を供給するバッテリ40と、距離検知部12と、制御部100とを備える。
【0052】
実施形態1に係る場合、図3(A)(B)に示すように、電動車台部10は矢印A方向に前進するため、矢印A側の左右の車輪が前輪21、31であり、残りの左右の車輪が後輪22、32であり、左右の前輪21、31が2つの電動モータ41R、41Lにて個別に駆動制御される。
【0053】
図3(B)において、前輪21、31および後輪22、32はそれぞれ、接地中心点G21、G31およびG22、G32を有する。
また、バッテリ40は、車台本体11の収容スペース16内に収納される。
【0054】
なお、図3(A)(B)は、単に電動車台部10を構成する各構成部およびそれらの配置を説明するものであるため、図3(A)(B)で示された電動車台部10の各構成部の大きさや間隔等は図1および図2に示された電動車台部10と必ずしも一致するものではない。
【0055】
車台本体11において、前面13と後面14には、バンパー17f、17rが取り付けられると共に、右側面12Rと左側面12Lには帯状のカバー18が設置され、車台本体11の前後方向に沿って延びている。カバー18の下側には、前輪21、31および後輪22、32をそれぞれ回転支持する車軸21a、31aおよび車軸22a、32aが設けられている。前輪21、31の車軸21a、31aは同一の第1軸心P上に配置されると共に、後輪22、32の車軸22a、32aは同一の第2軸心P上に配置されている。
なお、各車軸21a、31a、22a、32aは、動力伝達部材によって結合されない場合は、独立して回転可能となっている。
【0056】
右および左のそれぞれ一対の前輪21、31と後輪22、32は、動力伝達部材であるベルト23、33によって連動する。具体的には、右側の前輪21の車軸21aにはスプロケット21bが設けられ、後輪22の車軸22aにはスプロケット22bが設けられる。また、前輪21のスプロケット21bと後輪22のスプロケット22bとの間には、例えばスプロケット21b、22bと歯合する突起を内面側に設けたベルト23が巻架されている。同様に、左側の前輪31の車軸31aにはスプロケット31bが設けられると共に、後輪32の車軸32aにはスプロケット32bが設けられており、前輪31のスプロケット31bと後輪32のスプロケット32bとの間には、ベルト23と同様の構造を持つベルト33が巻架されている。
【0057】
したがって、右と左の前輪と後輪21と22、31と32は、ベルト23、33によって連結駆動されるので、一方の車輪を駆動すればよい。実施形態1では、前輪21、31を駆動する場合を例示している。一方の車輪21、31を駆動輪とした場合に、他方の車輪22、32は、動力伝達部材であるベルト23、33によってスリップすることなく駆動される従動輪として機能する。
【0058】
前輪と後輪とを連結駆動する動力伝達部材としては、スプロケット21b、31bとこのスプロケット21b、31bに歯合する突起を設けたベルト23、33を用いるほか、例えば、スプロケット21b、31bとこのスプロケット21b、31bに歯合するチェーンを用いてもよい。さらに、スリップが許容できる場合は、摩擦の大きなプーリーとベルト23、33を動力伝達部材として用いてもよい。ただし、駆動輪と従動輪の回転数が同じとなるように動力伝達部材を構成する。
図3(A)と(B)では、前輪21、31が駆動輪に相当し、後輪22、32が従動輪に相当する。
【0059】
車台本体11の底面15の前輪側には、右側の前後輪21、22を駆動するための電動モータ41Rと、左側の前後輪31、32を駆動するための電動モータ41Lの2つのモータが設けられている。右側の電動モータ41Rのモータ軸42Rと右側の前輪21の車軸21aとの間には、動力伝達機構としてギアボックス43Rが設けられている。同様に、左側の電動モータ41Lのモータ軸42Lと左側の前輪31の車軸31aとの間には、動力伝達機構としてギアボックス43Lが設けられている。ここでは、2つの電動モータ41R、41Lは車台本体11の進行方向(矢印A方向)の中心線CLに対して左右対称となるように並列配置されており、ギアボックス43R、43Lもそれぞれ電動モータ41R、41Lの左右外側に配設されている。
【0060】
ギアボックス43R、43Lは、複数の歯車や軸などから構成され、電動モータ41R、41Lからの動力をトルクや回転数、回転方向を変えて出力軸である車軸21a、31aに伝達する組立部品であり、動力の伝達と遮断を切替えるクラッチを含んでいてもよい。
なお、一対の後輪22、32はそれぞれ軸受44R、44Lによって軸支されており、軸受44R、44Lはそれぞれ車台本体11の底面15の右側面12R、左側面12Lに近接させて配設されている。
【0061】
以上の構成により、進行方向右側の前後輪21、22と、左側の前後輪31、32とは、独立して駆動することが可能となる。すなわち、右側の電動モータ41Rの動力はモータ軸42Rを介してギアボックス43Rに伝わり、ギアボックス43Rによって回転数、トルクあるいは回転方向が変更されて車軸21aに伝達される。そして、車軸21aの回転によって前輪21が回転するとともに、車軸21aの回転は、スプロケット21b、ベルト23、および、スプロケット22bを介して後方の車軸22aに伝わり、後輪22を回転させることになる。左側の電動モータ41Lからの前輪31および後輪32への動力の伝達については上記した右側の動作と同様である。
【0062】
図4に示すように、実施形態1の電動車台部10は、制御部100、記憶部101、走行駆動部102および距離検知部12を備える。
【0063】
以下、図4の電動車台部10の各構成要素を説明する。
【0064】
制御部100は、自律走行型車両1の各構成要素の動作を制御する部分であり、走行制御部および通信制御部などから構成される。
主として、CPU、ROM、RAM、I/Oコントローラ、タイマー等からなるマイクロコンピュータによって実現される。制御部100は、CPUあるいはマイクロプロセッサ(Microprocessor)を主体とする回路である。制御部100は、ROM等に予め格納された制御プログラムに基づいて、各ハードウェアを有機的に動作させて、後述するようなこの発明の自律走行型車両1の障害物検知機能および走行制御機能などを実現する。
なお、周辺回路として、特定の用途のために設計、製造される集積回路であるASIC(Application Specific Integrated Circuit)、その他の演算機能を有する回路を含んでいてもよい。
【0065】
制御部100は、記憶部101に記憶された自律走行型車両1の障害物判定用プログラムおよび走行制御用プログラムに基づき、自律走行型車両1の障害物判定機能および走行制御機能を実行する。
また、制御部100は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された障害物判定用プログラムおよび走行制御用プログラムを読み取ることによって、自律走行型車両1の障害物判定機能および走行制御機能を実行するものであってもよい。
【0066】
また、制御部100は、通信部を介して、サーバー等の外部の走行制御装置から受信した走行制御指令に基づき、自律走行型車両1の走行を制御するものであってもよい。
この場合、外部の走行制御装置は、サーバー等の記憶部に記憶され、またはコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された自律走行型車両1の障害物判定用プログラムおよび走行制御用プログラムを読み取ることによって、自律走行型車両1の障害物判定機能および走行制御機能実行する。
【0067】
記憶部101は、自律走行型車両1の各種機能を実現するために必要な情報や、プログラムを記憶する部分であり、RAMやROM等の半導体素子、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶媒体が用いられる。
【0068】
走行駆動部102は、電動モータ41R,41L、モータ軸42R,42Lおよびギアボックス43R,43Lを制御して、前輪21、31および後輪22、32を駆動することによって、電動車台部10を走行駆動させる部分である。
【0069】
距離検知部12は、例えば、2次元(2D)空間にレーザーを出射して被検知物までの距離を測定することによって、車両の周囲の被検知物までの距離を検知する部分である。
【0070】
また、筐体の周囲に超音波を発振し、障害物によって反射された超音波を受信することによって、筐体の周辺の障害物の有無を検知するものであってもよい。
この場合、超音波の発振から受信までの経過時間に基づき、距離検知部12は当該障害物までの距離を検知する。
【0071】
<本発明の実施形態1に係る障害物検知処理の流れ>
次に、図5図10に基づき、本発明の実施形態1に係る障害物検知処理の流れについて説明する。
図5は、図1の自律走行型車両1の距離検知部12の検知範囲の一例を示す説明図である。また、図6は、図5の距離検知部12の切り替えの例を示す説明図である。図6(A)は、前進時または前スラローム時に駆動される距離検知部12、図6(B)は、左方向への対地旋回時に駆動される距離検知部12である。また、図7は、従来の自律走行型車両1の障害物検知処理の流れを示すフローチャートである。また、図8は、距離検知部12が検知範囲内に被検知物を検知した場合において、当該被検知物までの距離の変化を示すグラフである。図8(A)は、通常の被検知物までの距離の変化を示すグラフであり、図8(B)は、雨や霧、雪等のノイズに起因する被検知物までの距離の変化を示すグラフである。また、図9は、図1の自律走行型車両1の障害物検知処理の流れを示すフローチャートである。また、図10は、図1の自律走行型車両1のフレームごとの被検知物までの距離値と車両の動作との対応関係を示す表である。
【0072】
はじめに、図5図8に基づき、従来の障害物検知処理の問題点と、本発明の障害物検知処理の概要について説明する。
【0073】
図5に示すように、自律走行型車両1は、筐体の前部に2つ、筐体の左右両側にそれぞれ1つずつ、筐体の後部に2つの計6つの距離検知部12を備える。
【0074】
制御部100は、筐体の移動方向に応じて、これらの距離検知部12のうち、どの距離検知部12を駆動すべきかを決定し、障害物の監視距離も必要に応じて切り替える。
【0075】
図5には、減速範囲、停止範囲および監視範囲が示されている。
図5の例において、減速範囲は、距離検知部12から40cm~100cmの距離の範囲内に設定されており、停止範囲は、距離検知部12から40cmまでの距離の範囲内に設定されている。
【0076】
例えば、制御部100は、自律走行型車両1の前進中に距離検知部12が減速範囲内の前方に障害物を検知した場合、車両を減速する。
また、制御部100は、自律走行型車両1の前進中に距離検知部12が停止範囲内の前方に障害物を検知した場合、車両を停止する。
【0077】
このように、制御部100は、自律走行型車両1の走行中に障害物が減速範囲内または停止範囲内に入ったか否かに応じて、車両を減速または停止することで、当該障害物との衝突を事前に回避する自律走行型車両1を実現できる。
【0078】
監視範囲は、障害物の検知範囲を示し、一般に減速範囲と同じ範囲か、減速範囲よりも大きい範囲である。
【0079】
制御部100は、距離検知部12によって監視範囲内の被検知物を検知し、距離検知部12は、当該被検知物までの距離を検知する。
【0080】
一方、監視範囲よりも外側に位置する被検知物は、「未検知」となる。
【0081】
図6に示すように、制御部100は、移動方向に応じてどの距離検知部12を駆動すべきかを決定する。
【0082】
図6(A)に示すように、車両が前進または前スラローム(前方に蛇行走行)する場合、制御部100は、前面13に設けられた2つの距離検知部12を駆動させる。
【0083】
また、図6(B)に示すように、車両が左方向に対地旋回する場合、制御部100は、右側面12Rおよび後面14に設けられた3つの距離検知部12を駆動させる。
【0084】
また、制御部100は、移動方向に応じて監視範囲を変化させるようにしてもよい。
【0085】
<電動車台部10の説明>
次に、図7に基づき、従来の自律走行型車両1の障害物検知処理の流れを示す。
【0086】
図7のステップS1において、制御部100は、距離検知部12が減速範囲内に被検知物を検知したか否かを判定する(ステップS1)。
【0087】
ステップS1において、距離検知部12が減速範囲内に被検知物を検知した場合(ステップS1の判定がYesの場合)、制御部100は、ステップS2において、車両を予め定められた速度まで減速する(ステップS2)。
なお、すでに車両を減速中の場合は、減速した速度を維持したまま走行し続けるものとする。
その後、制御部100は、処理をステップS1に戻す(ステップS1)。
【0088】
一方、ステップS1において、距離検知部12が減速範囲内に被検知物を検知していない場合(ステップS1の判定がNoの場合)、制御部100は、ステップS3において、停止範囲内に被検知物を検知したか否かを判定する(ステップS3)。
【0089】
距離検知部12が停止範囲内に被検知物を検知した場合(ステップS3の判定がYesの場合)、制御部100は、ステップS4において、車両を停止する(ステップS4)。
その後、制御部100は処理を終了する。
【0090】
一方、距離検知部12が停止範囲内に被検知物を検知していない場合(ステップS3の判定がNoの場合)、制御部100は、ステップS5において、車両が減速中か否かを判定する(ステップS5)。
【0091】
車両が減速中の場合(ステップS5の判定がYesの場合)、距離検知部12が減速範囲内および停止範囲内のいずれにも被検知物を検知していないため、制御部100は、ステップS6において車両の減速を解除し、通常速度での走行に復帰する(ステップS6)。
その後、制御部100は、処理をステップS1に戻す(ステップS1)。
【0092】
一方、車両が減速中でない場合(ステップS5の判定がNoの場合)、制御部100は、通常速度での走行を継続中であるものとして、処理をステップS1に戻す(ステップS1)。
【0093】
図8は、自律走行型車両1の前進中に距離検知部12が前方の監視範囲内に被検知物を検知した場合において、距離検知部12によって検知された当該被検知物までの距離の変化を示すグラフである。
【0094】
ここで、図8の横軸は、時間を示し、図8の縦軸は、被検知物までの距離値を示す。
図8において、監視範囲は、停止範囲および減速範囲を合わせた範囲と同一とする。
【0095】
図8(A)において、予め定められたフレーム時間ごとに、距離値は「100cm」から「60cm」、「30cm」へと変化している。
すなわち、距離値は、監視範囲外から監視(減速)範囲内、そして減速範囲内から停止範囲内へと変化している。
【0096】
このように、自律走行型車両1が障害物に接近する場合、距離検知部12によって検知された被検知物までの距離は、「未検知」から「100cm」、「100cm」から「60cm」、「60cm」から「30cm」のように、走査のたびに距離値が徐々に小さく変化して検知される。
【0097】
一方、図8(B)は、雨や霧、雪等が降っている状況における距離値の変化の一例を示す。
【0098】
図8(B)において、時間の経過とともに、距離値は「100cm」から「30cm」へと急変化している。
すなわち、距離値は、監視範囲外からいきなり停止範囲内へと変化している。
【0099】
これは、雨や霧、雪等の飛び込みに起因するノイズを距離検知部12が誤検知した結果、距離値が大きく変化したことによるものと考えられる。
実際、雨や霧、雪等のノイズの影響により、距離検知部12は、ランダムな距離値の変化を断続的に検知する。
【0100】
この場合、図7に示すように、検知された被検知物までの距離値のみに応じた走行制御方法は、停止範囲内に雨や霧、雪等を誤検知した場合、停止範囲内に実際に障害物が存在していないのにもかかわらず、自律走行型車両1が頻繁に停止することがある。
【0101】
そこで、本発明では、このような問題を回避するため、図9に示すフローチャートにしたがって車両の走行を制御する。
【0102】
なお、図9のステップS11,S12,S14,S17,S20およびS21は、それぞれ図7のステップS1~S6に対応するため、説明を省略する。
ここでは、図7に記載のないステップS13,S15,S16,S18およびS19について説明する。
【0103】
図7のステップS11において、距離検知部12が減速範囲内に被検知物を検知した場合(ステップS11の判定がYesの場合)、制御部100は、ステップS12において、車両を予め定められた速度まで減速し(ステップS12)、続くステップS13において、距離検知部12によって検知された当該被検知物までの距離値を記憶部101に記憶させる(ステップS13)。
【0104】
また、ステップS14において、距離検知部12が停止範囲内に被検知物を検知した場合(ステップS14の判定がYesの場合)、制御部100は、ステップS15において、記憶部101を参照して、1フレーム前の被検知物の有無を確認する(ステップS15)。
【0105】
続くステップS16において、制御部100は、1フレーム前において距離検知部12が監視範囲内に被検知物を検知していたか否かを判定する(ステップS16)。
【0106】
1フレーム前において距離検知部12が監視範囲内に被検知物を検知していた場合(ステップS16の判定がYesの場合)、制御部100は、ステップS17において、障害物が車両に接近しているものと判定して、車両を停止する(ステップS17)。
【0107】
一方、1フレーム前において監視範囲内に距離検知部12が被検知物を検知していない場合(ステップS16の判定がNoの場合)、制御部100は、ステップS14で検知された被検知物は、雨や霧、雪等の飛び込みによって生じたノイズの誤検知によるものと判定する。
【0108】
次に、制御部100は、ステップS18において、安全のため車両を減速し(ステップS18)、続くステップS19において、距離検知部12によって検知された当該被検知物までの距離値を記憶部101に記憶させる(ステップS19)。
なお、ステップS18において、すでに車両を減速中の場合は、減速した速度を維持したまま走行し続けるものとする。
【0109】
このようにすることで、図8(B)に示すように、いきなり停止範囲内に被検知物が検知された場合、雨や霧、雪等の飛び込みによって生じたノイズの影響によるものと判定して、車両を停止させず、車両の走行を継続させる。
【0110】
なお、上記の飛び込み判定は、車両の移動方向によらず、毎フレーム、前後左右すべての距離検知部12についておこなうようにしてもよい。
【0111】
図10は、図9のフローチャートに基づき、自律走行型車両1のフレームごとの被検知物までの距離値が、減速範囲または停止範囲内にあるか否かに応じて、車両を停止すべきか否かの結果を示した表である。
【0112】
図10は、フレーム0~3において、距離値が未検知、減速範囲外(L)、減速範囲内(M)、停止範囲内(S)のいずれかにある場合において、車両を停止すべきか否かの結果を示している。
【0113】
例えば、図10の3番目の事例では、フレーム3において、被検知物までの距離値が停止範囲内(S)に検知されている。
しかし、1つ前のフレーム2において、被検知物までの距離値が減速範囲外(L)にあるため、車両を停止しない。
この事例は、図8(B)の場合に対応する。
【0114】
一方、図10の6番目の事例では、フレーム3において、被検知物までの距離値が停止範囲内(S)に検知されている。
1つ前のフレーム2において、被検知物までの距離値が減速範囲内(M)にあるため、車両を停止させる。
この事例は、図8(A)の場合に対応する。
【0115】
このように、距離検知部12が停止範囲内に被検知物を検知した場合、1つ前のフレームにおける当該被検知物の距離値を確認し、当該距離値が監視範囲内にある場合は車両を停止し、監視範囲外にある場合は車両を減速することにより、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する自律走行型車両1を実現できる。
【0116】
(実施形態2)
次に、図11図12に基づき、本発明の実施形態2に係る障害物検知処理の一例について説明する。
図11は、本発明の実施形態2に係る自律走行型車両1の前面13および後面14の距離検知部12によって検知された被検知物までの距離値と車両の動作との対応関係を示す表である。また、図12は、本発明の実施形態2に係る自律走行型車両1の左右側面12L、12Rの距離検知部12によって検知された被検知物までの距離値と車両の動作との対応関係を示す表である。
【0117】
実施形態1では、自律走行型車両1の左右前後に検知された被検知物に対し、同一の障害物検知処理を行ったが、実施形態2においては、自律走行型車両1の前方または後方で検知された被検知物か、あるいは側方で検知された被検知物かによって異なる障害物検知処理を行う。
【0118】
具体的には、自律走行型車両1の前面13または後面14に設けられた距離検知部12が検知した被検知物に対しては、図11の表にしたがって障害物検知処理を行い、自律走行型車両1の左右側面12L、12Rに設けられた距離検知部12が検知した被検知物に対しては、図12の表にしたがって障害物検知処理を行う。
【0119】
図11において、横列は、現フレームの距離値の範囲の別を示し、縦列は、1つ前のフレームの距離値の範囲の別を示す。
【0120】
現フレームの距離値の範囲は、左から順に「未検知」、「減速範囲外」、「減速範囲内」、「停止範囲+10cm内」、「停止範囲内」および「検知・距離不明」の6種類の範囲を含む。
【0121】
ここで、「検知・距離不明」は、距離検知部12が被検知物を検知したものの、その距離値が不明の場合である。
例えば、距離検知部12から出射された光や音波等が被検知物に当たっても、当該被検知物表面で吸収されてエコーが返ってこない場合や、当該被検知物と距離検知部12との距離が近すぎてエコーが判定できない場合に、距離値が不明になる。
【0122】
また、前フレームの距離値の範囲は、上から順に「未検知」、「減速範囲内」、「停止範囲内」および「検知・距離不明」の4種類の範囲を含む。
【0123】
図11の表において、被検知物が「減速範囲内」、「停止範囲内」および「検知・距離不明」の場合は、監視範囲内にあるものとする。
一方、被検知物が「未検知」の場合は、監視範囲外にあるものとする。
【0124】
図11に示すように、車両を停止させる条件として、以下の(1)~(4)の場合が考えられる。
【0125】
(1)被検知物が現フレームで停止範囲内、かつ、前フレームで減速範囲内にある。
これは、実施形態1の場合と同じである。
【0126】
(2)被検知物が現フレームで停止範囲内、かつ、前フレームで停止範囲内にある。
これは、前フレームから車両が停止し続けている場合において、被検知物が停止範囲内にあるときは、引き続き車両を停止させるためである。
【0127】
(3)被検知物が現フレームで停止範囲+10cm内、かつ、前フレームで停止範囲内にある。
これは、前フレームから車両が停止し続けている場合において、被検知物が移動したものの、停止範囲内+10cm内にあるときは、当該被検知物と衝突の可能性があるため、引き続き車両を停止させるためである。
【0128】
(4)現フレームで被検知物を検知したものの、その距離値が不明であり、かつ、前フレームで被検知物が監視範囲内にある。
これは、前フレームで被検知物を検知した後、現フレームでも被検知物を検知しているものの、その距離値が不明の場合、安全のために引き続き車両を停止させるためである。
【0129】
(5)被検知物が現フレームで停止範囲+10cm内または停止範囲内、かつ、前フレームで被検知物を検知したものの、その距離値が不明である。
これは、前フレームで被検知物を検知したものの、その距離値が不明である場合において、現フレームでも停止範囲+10cm内または停止範囲内に被検知物を検知している場合、安全のために引き続き車両を停止させるためである。
【0130】
一方、図11において、破線の枠で囲まれた部分は、雨や霧、雪等の飛び込みに起因するノイズを距離検知部12が検知した場合において、飛び込み判定がなされたものとして、停止を回避する部分である。
【0131】
具体的には、前フレームにおいて未検知の被検知物がいきなり現フレームにおいて停止範囲内に入ったか、もしくは被検知物を検知したものの距離値が不明の場合は、車両を停止させずに減速させる。
【0132】
また、飛び込み判定がなされた場合、制御部100は、飛び込み判定がなされた時点の停止範囲を記録し、車両がその範囲を出るまで飛び込み判定を解除せずに、車両の減速を継続する。
【0133】
飛び込み判定は、関数(diveDtCounter)で判定する。
飛び込みを最初に検知してからの経過フレーム数をdiveDtCounterでカウントし、0のときは、非飛び込みと判定する。
また、0より大きいときは、飛び込んだ物体が継続して検知される。
【0134】
一方、自律走行型車両1の左右側面12L、12Rに設けられた距離検知部12が被検知物を検知した場合は、図12の表にしたがって障害物検知処理を行う。
【0135】
図12の表が図11の表と異なる点は、前フレームにおいて、減速範囲外の距離値も考慮する点である。
また、同じ減速範囲外の範囲であっても、監視範囲内に含まれる範囲と、監視範囲外に含まれる範囲に分類する。
【0136】
図12の表において、前フレームにおいて、被検知物が減速範囲内にある場合の処理と同じ処理を、被検知物が減速範囲外かつ監視範囲内の場合に適用する。
また、前フレームにおいて、被検知物が未検知の場合の処理と同じ処理を、被検知物が減速範囲外かつ監視範囲外にある場合に適用する。
【0137】
図12の表において、前フレームにおいて被検知物が減速範囲外の場合も考慮する理由としては、距離検知部12の検知範囲がせまい場合には、走行しながら検知するのが困難であるため、なるべく早い段階で検知しなければ障害物との接触の回避に間に合わないからである。
【0138】
このように、自律走行型車両1の前方または後方で検知された被検知物か、あるいは側方で検知された被検知物かによって異なる障害物検知処理を行うことにより、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する自律走行型車両1を実現できる。
【0139】
(実施形態3)
次に、図13に基づき、本発明の実施形態3に係る障害物検知処理の一例について説明する。
図13は、本発明の実施形態3に係る自律走行型車両1の走行動作と監視範囲および減速・停止範囲との関係を示す表である。
【0140】
図13に示すように、前面13、後面14および左右側面12L、12Rに設けられた距離検知部12のそれぞれについて、走行動作に応じて異なる範囲が設定される。
【0141】
(1)左右側面12L、12Rに設けられた距離検知部12については、対地旋回時のみにおいて、80cm以内の範囲および検知・距離不明の場合に監視範囲が設定される。
また、40~50cmの範囲内に減速範囲が設定される。
また、40cmの範囲内および検知・距離不明の場合に停止範囲が設定される。
【0142】
(2)後面14に設けられた距離検知部12については、対地旋回時において、(1)の場合と同様に範囲が設定される。
【0143】
(3)前面13に設けられた距離検知部12については、前進または前スラローム時において、150cmの範囲内および検知・距離不明の場合に監視範囲が設定される。
また、150cmの範囲内に減速範囲が設定される。
また、60cmの範囲内および検知・距離不明の場合に停止範囲が設定される。
【0144】
(4)後面14に設けられた距離検知部12については、後進または後進スラローム時において、(3)の場合と同様に範囲が設定される。
【0145】
このように、前面13、後面14および左右側面12L、12Rに設けられた距離検知部12のそれぞれについて、走行動作に応じて異なる範囲を細かく設定することにより、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する自律走行型車両1を実現できる。
【0146】
(実施形態4)
次に、図14および図15に基づき、本発明の実施形態4に係る障害物検知処理の一例について説明する。
図14は、本発明の実施形態4に係る自律走行型車両1の側面の距離検知部12によって検知された被検知物までの距離値と車両の動作との対応関係を示す表である。また、図15は、図14においてノイズに起因する飛び込み判定がなされた場合に当該飛び込み判定を解除するための条件を示す表である。
【0147】
図14において、横列は、現フレームの距離値の分類の別を示し、縦列は、1つ前のフレームの距離値の分類の別を示す。
ここで、距離値の分類としては、図13に示すように予め設定されるものとする。
【0148】
図14のその他の項目については、図11および図12と同様であるため、説明を省略する。
【0149】
図14において、破線の枠で囲まれた部分は、雨や霧、雪等の飛び込みに起因するノイズを距離検知部12が検知した場合において、飛び込み判定がなされたものとして、停止を回避する部分である。
【0150】
例えば、前フレームにおいて、距離値の分類が9(監視範囲内)であり、かつ、現フレームにおいて、距離値の分類が4の場合、飛び込み判定がなされたものとして、車両を減速させる。
【0151】
飛び込み判定がなされた場合、制御部100は、図15の表にしたがって、当該飛び込み判定を解除すべきか否かを判定する。
【0152】
図15において、「解除」に該当する場合は、飛び込み判定を解除した後、図14に戻って車両の動作を決定する。
現フレームにおいて、距離値の分類が予め定められた値(図15の例では5)以上の場合、雨や霧、雪等のノイズが検知されなくなったと考えられるためである。
【0153】
一方、「飛び込み継続」の場合は、飛び込み判定を解除せずに、車両の減速を継続するものとする。
現フレームにおいて、距離値の分類が予め定められた値(図15の例では5)よりも小さい場合、雨や霧、雪等のノイズがまだ検知されているものと考えられるためである。
【0154】
例えば、飛び込み判定がなされた後、前フレームにおいて、距離値の分類が4であり、かつ、現フレームにおいて、距離値の分類が5の場合、飛び込み判定を解除して、図14に戻って車両の動作を決定する。
【0155】
その後、図14において、距離値の分類が5(監視範囲内)であり、かつ、現フレームにおいて、距離値の分類が4の場合、車両を停止させる。
【0156】
このように、ノイズに起因する飛び込み判定がなされた場合に当該飛び込み判定を解除すべき条件を定めることにより、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する自律走行型車両1を実現できる。
【0157】
(実施形態5)
次に、図16および図17に基づき、本発明の実施形態5に係る障害物検知処理の一例について説明する。
図16は、本発明の実施形態5に係る自律走行型車両1の障害物検知処理の流れを示すフローチャートである。また、図17は、距離検知部12が監視範囲内に被検知物を検知した場合において、当該被検知物までの距離の変化の一例を示すグラフである。
【0158】
なお、図16のステップS31~S34,S37~S39,S40およびS41は、それぞれ図9のステップS11~S14,S17~S19,S20およびS21に対応するため、説明を省略する。
ここでは、図9に記載のないステップS35およびS36について説明する。
【0159】
図7のステップS34において、距離検知部12が停止範囲内に被検知物を検知した場合(ステップS34の判定がYesの場合)、制御部100は、ステップS35において、記憶部101を参照して、1~3フレーム前の被検知物の有無を確認する(ステップS35)。
【0160】
続くステップS36において、制御部100は、1~3フレーム前において距離検知部12が監視範囲内に接近する被検知物を検知していたか否かを判定する(ステップS36)。
【0161】
1~3フレーム前において距離検知部12が監視範囲内に接近する被検知物を検知していた場合(ステップS36の判定がYesの場合)、制御部100は、ステップS37において、障害物が車両に接近しているものと判定して、車両を停止する(ステップS37)。
【0162】
一方、1~3フレーム前において距離検知部12が監視範囲内に被検知物を検知していない場合(ステップS36の判定がNoの場合)、制御部100は、ステップS34で検知された被検知物は、雨や霧、雪等の飛び込みによって生じたノイズの誤検知によるものと判定する。
【0163】
ここで、ステップS36において、「接近する被検知物を検知」は、距離検知部12によって検知された被検知物までの距離がフレームごとに近づいていくことを検知した場合である。
【0164】
ただし、対象となる過去の複数のフレームのすべてにおいて、被検知物までの距離値が検知されている必要はない。
例えば、図17に示すように、一部のフレームにおいて、ノイズの影響による距離検知部12の不具合などによって、被検知物までの距離値が検知されていない場合であっても、残りのフレームから被検知物までの距離値が減少する傾向にあることを検知した場合は、制御部100は、「接近する被検知物を検知」したものと判定する。
【0165】
また、例えば、3フレームずつ被検知物までの距離値の平均をとった結果、当該距離値の平均が減少する傾向にあることを検知した場合も、制御部100は、「接近する被検知物を検知」したものと判定する。
【0166】
なお、複数の過去のフレーム時間の一部にわたって接近する被検知物を検知しているものの、他の一部のフレーム時間で被検知物が検知されていない場合、制御部100は、接近中の障害物を検知している可能性が高いものとして、いったん車両を減速させるようにしてもよい。
【0167】
また、いったん車両を減速させた後、再び停止範囲内に被検知物が検知された場合、制御部100は、車両を停止させるようにしてもよい。
【0168】
このように、複数の過去のフレーム時間の一部にわたって接近中の被検知物を検知しているか否かに基づいて、障害物の有無を判定することにより、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する自律走行型車両1が提供される。
【0169】
(実施形態6)
実施形態6として、車両が狭い道を通る場合、側面方向の前フレームを参照したとき、監視範囲および減速範囲を通常時よりも狭く設定するようにしてもよい。
【0170】
このように、道幅に応じて前フレーム参照時の監視範囲および減速範囲を狭く設定することにより、狭い道路上を走行する際においても、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する自律走行型車両1を実現できる。
【0171】
(実施形態7)
実施形態7として、車両の走行速度に応じて、監視範囲または減速範囲を変化させるようにしてもよい。
【0172】
例えば、車両の走行速度が大きくなるにつれて、監視範囲または減速範囲を広くすることで、車両の走行速度に応じた適切な範囲の障害物が監視対象となるため、雨や霧、雪等の飛び込みに起因するノイズの影響を効果的に低減することができる。
【0173】
このように、車両の走行速度に応じて、監視範囲および減速範囲を変化させることにより、車両の走行速度に応じた適切な範囲の障害物が対象となるため、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する自律走行型車両1を実現できる。
【0174】
(実施形態8)
実施形態8として、飛び込み判定の際に参照する過去のフレーム時間を車両の走行速度に応じて異なるようにしてもよい。
【0175】
例えば、車両の走行速度が小さくなるにつれて、3フレーム以上の過去のフレーム時間を参照することで、被検知物までの距離値の変化を明確に検知できるようになるため、検知された被検知物が障害物の接近によるものか、それとも雨や霧、雪等の飛び込みに起因するノイズの影響によるものかを容易に区別することができる。
【0176】
このように、飛び込み判定の際に参照する過去のフレーム時間を車両の走行速度に応じて異なるようにすることにより、車両の走行速度が変化する場合においても、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する自律走行型車両1を実現できる。
【0177】
(実施形態9)
実施形態9として、車両が停止した場合、制御部100は、停止範囲内に何秒継続して同じ距離値の被検知物が検知されているのかに応じて、誤検知の有無を判定するようにしてもよい。
【0178】
例えば、停止範囲内に継続して1秒間同じ距離値の被検知物が検知されている場合、制御部100は、当該被検知物の検知が誤検知によるものではないと判定する。
【0179】
このように、停止範囲内に何秒継続して同じ距離値の被検知物が検知されているのかに応じて、誤検知の有無を判定することにより、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する自律走行型車両1を実現できる。
【0180】
(実施形態10)
実施形態10として、複数の過去のフレーム時間にわたって、監視範囲内に距離値が不規則に変化する被検知物を検知した場合、制御部100は、車両を減速させるようにしてもよい。
【0181】
このようにすれば、距離値が不規則に変化する被検知物を検知した場合、車両を減速させるため、雨や霧、雪等のノイズの影響による誤動作を従来よりも高い精度で防止する自律走行型車両1が提供される。
【0182】
この発明の好ましい態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0183】
1:自律走行型車両、 10:電動車台部、 11:車台本体、 12:距離検知部、 12R:右側面、 12L:左側面、 13:前面、 14:後面、 15:底面、 16:収容スペース、 17f,17r:バンパー、 18:カバー、 21,31:前輪、 21a,22a,31a,32a:車軸、 21b,22b,31b,32b:スプロケット、 22,32:後輪、 23,33:ベルト、 31Wa,32Wa:車輪本体、 31Wb,32Wb:タイヤ、 40:バッテリ、 41R,41L:電動モータ、 42R,42L:モータ軸、 43R,43L:ギアボックス、 44R,44L:軸受、 50:昇降機構部、 52:ブーム、 53:平衡部、 60:監視カメラ、 71:Wi‐Fiアンテナ、 72:警告灯、 73:CCDカメラ、 74:GPSアンテナ、 100:制御部、 101:記憶部、 102:走行駆動部、 A,B:矢印、 CL:中心線、 CP:中心点、 CR:円形、 G21,G31,G22,G32:接地中心点、 P,P:第2軸心、 R:半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17