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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】押釦スイッチ用部材
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/52 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
H01H13/52 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019024036
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020135951
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正幸
(72)【発明者】
【氏名】林 正志
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-175746(JP,A)
【文献】特開平4-301331(JP,A)
【文献】特開2003-346599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧とその解除によってスイッチのオンとオフを実行可能な押釦スイッチ用部材であって、
第1弾性部材と、前記第1弾性部材によって押圧される第2弾性部材と、を押圧方向に積載して備え、
前記第1弾性部材は、
第1キートップと、
前記第1キートップに接続されていて前記第1キートップから平面視にて拡径する形状の弾性変形可能なドーム部と、
前記第1キートップからの押圧によって前記第2弾性部材を押し込むプッシャー部と、
前記ドーム部の開口側に設けられる第1ベース部と、
を備え、
前記第2弾性部材は、
前記第1キートップから押圧されていないときには前記プッシャー部と離れていて、前記第1キートップから押圧を受けると前記プッシャー部に接触する第2キートップと、
前記第2キートップから平面視にて径方向外側に延出して、前記第1キートップから前記第2キートップへの押圧およびその解除によって弾性変形する弾性薄肉部と、
前記第2キートップの下方に配置されていてスイッチのオンとオフを行う導電性の接点と、
前記弾性薄肉部の外側から前記接点の側方へと延出して押圧方向に開口する第2ベース部と、
を備え、
前記弾性薄肉部は、前記第2キートップから水平方向若しくは前記第1弾性部材に向かって斜め上方向に延出している押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材とを別体として備え、
前記第2弾性部材を、前記第1弾性部材の前記ドーム部の開口部に配置している請求項1に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
前記第2ベース部は、前記ドーム部より押圧方向側に配置されている請求項2に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
前記弾性薄肉部は、前記第2キートップの外側面に接続しており、
前記第2キートップは、前記弾性薄肉部との接続部位より前記第1弾性部材の方向に突出している請求項1からのいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦スイッチ用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、押釦スイッチ用部材は、通信機器、パーソナルコンピュータ、テレビ用リモートコントローラ、自動車の車載用機器などの多くの機器に搭載されている。近年、携帯通信端末の中には、押釦スイッチ用部材からタッチパネル式のキーに変更するものが多くなっており、ユーザからの人気を集めている。しかし、押釦スイッチ用部材は、押圧操作によりスイッチのオンまたはオフを行う特性上、ユーザに操作感覚を与えやすい。このため、例えば、自動車の車載用機器のキーやリモートコントローラのキーには、押釦スイッチ用部材が多用されている。特に、押圧からスイッチのオンまたはオフに至るまでのストロークの長い押釦スイッチ用部材を備える機器も少なくない(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
図7は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の縦断面図およびキートップの押圧によるドーム部の変化(X1からX2への変化)を示す。
【0004】
図7に示す押釦スイッチ用部材100は、略円柱形状のキートップ121の下端に、キートップ121の径方向外側にドーム状に拡径するドーム部122を備える。ドーム部122は、図7に示す断面図において斜め下方に向かって直線的に拡径する拡径部123と、拡径部123の開口下端部から垂直下方に延出する円筒部124と、を接続した部材である。押釦スイッチ用部材100は、ドーム部122の下方開口部より径方向外側に延出するベース部126を備える。ベース部126は、押釦スイッチ用部材100を配置する基板S上に固定される部分である。押釦スイッチ用部材100は、ドーム部122の下方開口部とベース部126との間に、ベース部126の上面よりも下方に窪む凹部125を備える。押釦スイッチ用部材100は、キートップ121の直下にあってドーム部122の内方空間の上部に、基板S上の電極EL1と電極EL2とを接続可能な導電性の接点134を備える。
【0005】
キートップ121の天面から基板Sの方向に押圧すると、所定の押圧力に至った段階でドーム部122の変形が生じ、接点134が電極EL1および電極EL2に接触する。これによって、電極EL1と電極EL2との間が導通する。キートップ121への押圧を解除すると、ドーム部122が元の形状に復帰するに伴い、接点134は電極EL1,EL2から離れる。このように、押釦スイッチ用部材100は、両矢印の示すように、キートップ121への押圧およびその解除によって、電極EL1,EL2へ接触と非接触とを実行できる。なお、キートップ121は、その天面に、リング状の突出部127を備えている。操作者は、キートップ121を押圧する際に突出部127に接触し、突出部127を潰しながらキートップ121を押し下げることができる。このため、操作者は、キートップ121に突出部127を備えていない場合と比べて、より高ストロークの操作感覚を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-173044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述のような従来から公知の押釦スイッチ用部材100は、次のような問題を有している。キートップ121の押圧前後で図中の領域X(ドーム部122の中心から断面図の左側の領域)を比較すると、押圧前(X1)のドーム部122の中心から外側部までの距離(A)は、押圧時(X2)にドーム部122が距離(B)だけ径方向外側にふくらむことによって、距離(A+B)に増大する。押釦スイッチ用部材100が高ストロークタイプである場合、ドーム部122の長さが大きい。このため、押圧時にドーム部122が径方向外側に距離(B)だけ突出する分を考慮して、ドーム部122の外周囲に、広い空間を確保しなければならない。
【0008】
また、押釦スイッチ用部材100は、接点134(直径:C)と同一若しくはそれ以上の径のキートップ121(直径:K1、K1≧C)を備える必要がある。この結果、押釦スイッチ用部材100の小径化が難しい。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、キートップとドーム部とを共に小径化可能な押釦スイッチ用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、押圧とその解除によってスイッチのオンとオフを実行可能な押釦スイッチ用部材であって、第1弾性部材と、前記第1弾性部材によって押圧される第2弾性部材と、を押圧方向に積載して備える。前記第1弾性部材は、第1キートップと、前記第1キートップに接続されていて前記第1キートップから平面視にて拡径する形状の弾性変形可能なドーム部と、前記第1キートップからの押圧によって前記第2弾性部材を押し込むプッシャー部と、前記ドーム部の開口側に設けられる第1ベース部と、を備える。前記第2弾性部材は、前記第1キートップから押圧されていないときには前記プッシャー部と離れていて、前記第1キートップから押圧を受けると前記プッシャー部に接触する第2キートップと、前記第2キートップから平面視にて径方向外側に延出して、前記第1キートップから前記第2キートップへの押圧およびその解除によって弾性変形する弾性薄肉部と、前記第2キートップの下方に配置されていてスイッチのオンとオフを行う導電性の接点と、前記弾性薄肉部の外側から前記接点の側方へと延出して押圧方向に開口する第2ベース部と、を備える。
(2)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、好ましくは、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材とを別体として備え、前記第2弾性部材を、前記第1弾性部材の前記ドーム部の開口部に配置している。
(3)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材において、好ましくは、前記第2ベース部は、前記ドーム部より押圧方向側に配置されている。
(4)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材において、好ましくは、前記弾性薄肉部は、前記第2キートップから水平方向若しくは前記第1弾性部材に向かって斜め上方向に延出している。
(5)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材において、好ましくは、前記弾性薄肉部は、前記第2キートップの外側面に接続しており、前記第2キートップは、前記弾性薄肉部との接続部位より前記第1弾性部材の方向に突出している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キートップとドーム部とを共に小径化可能な押釦スイッチ用部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の組み立て前後の縦断面図を示す。
図2図2は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の形態と、本発明の第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の形態とをそれぞれ縦断面図にて比較して示す。
図3図3は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の押圧-ストローク曲線(F-S曲線)と、本発明の第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の押圧-ストローク曲線(F-S曲線)とを比較して示す。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材の組み立て前後の縦断面図を示す。
図5図5は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の形態と、本発明の第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材の形態とをそれぞれ縦断面図にて比較して示す。
図6図6は、本発明の第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材の縦断面図を示す。
図7図7は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の縦断面図およびキートップの押圧によるドーム部の変化(X1からX2への変化)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の組み立て前後の縦断面図を示す。
【0016】
第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1は、押圧とその解除によってスイッチのオンとオフを実行可能である。押釦スイッチ用部材1は、第1弾性部材2と、第1弾性部材2によって押圧される第2弾性部材3と、を押圧方向に積載して備える。
【0017】
図1およびそれ以降の図における縦断面図は、押釦スイッチ用部材1の基板Sへの押圧方向に押釦スイッチ用部材1を切断した断面を意味する。本願において、「下」は、第1弾性部材2を第2弾性部材3に積載する方向を意味し、「上」は、当該方向の反対方向を意味する。「平面視」は、押釦スイッチ用部材1から基板Sの方向を見た視野を意味する。
【0018】
(1)第1弾性部材
第1弾性部材2は、上から下に向かって、第1キートップ21と、第1キートップ21に接続されていて第1キートップ21から平面視にて拡径する形状の弾性変形可能なドーム部22と、第1キートップ21からの押圧によって第2弾性部材3を押し込むプッシャー部29と、ドーム部22の開口側に設けられる第1ベース部26と、を備える。キートップ21は、その天面に、平面視にて環状の突出部27を備える。第1弾性部材2は、ドーム部22の開口側の外側面と第1ベース部26との間に、第1ベース部26の上面より下方に窪み、平面視にて環状の凹部25を備える。以下、第1キートップ21、ドーム部22、プッシャー部29、第1ベース部26およびその他の部材について詳述する。
【0019】
第1キートップ21は、好ましくは、略円柱形状を有する。押釦スイッチ用部材1を操作する操作者は、第1キートップ21の天面側から、第1ベース部26を固定する基板Sに向かって押圧することができる。第1キートップ21の天面に設けられる突出部27は、操作者からの操作時に押圧を受けて容易に圧縮変形可能な低硬度の部分である。突出部27は、操作者に、押圧時の高ストロークの感触を与える部材である。ただし、突出部27は、第1キートップ21にとって必須の部材ではなく、第1キートップ21に備えなくても良い。
【0020】
ドーム部22は、好ましくは、第1キートップ21から基板Sの方向に拡径する部分を少なくとも備える。より具体的には、ドーム部22は、第1キートップ21の下方に近い外側面から、第1キートップ21の径方向外側に徐々に径を大きくする拡径部23と、拡径部23の開口側に接続されていて下方に略垂直に延出する円筒部24と、を備える。拡径部23は、図中、縦断面視において、第1キートップ21から斜め下方に拡径する薄肉のスカート形状の部材である。なお、拡径部23は、第1キートップ21から直線的に斜めに拡径するのではなく、上方に凸の放物線を描く釣鐘形状の部材でも良い。また、円筒部24は、拡径部23から下方に接続する薄肉の円筒状の部材である。円筒部24は、ドーム部22にとって必須の部位ではない。しかし、円筒部24は、ドーム部22の全体を拡径部23にて構成するよりも、ドーム部22の径方向外側への突出を抑制可能な部材である。したがって、ドーム部22に円筒部24を備える方が好ましい。また、ドーム部22は、平面視にて円形状ではなく、楕円形状あるいは三角以上の多角形状でも良い。
【0021】
プッシャー部29は、好ましくは、逆円錐台形状を有する。プッシャー部29は、第1キートップ21の下方にあって、好ましくは、ドーム部22の内方空間において下方に突出する部材である。プッシャー部29は、接点を備えず、第2弾性部材3を基板Sに向かって押圧可能な部材である。プッシャー部29は、第1キートップ21の押圧前において、第2弾性部材3から離れた状態にある。
【0022】
第1ベース部26は、好ましくは、平面視にて、円形状である。ただし、第1ベース部26は、平面視にて、楕円形状あるいは三角以上の多角形状でも良い。第1ベース部26は、ドーム部22の下方外側にあって、凹部25を介してドーム部22と接続される部材である。第1ベース部26は、基板Sに対して、接着、嵌合、貫通、ネジ止めなどの任意の手法によって固定される。凹部25は、第1キートップ21を基板Sに向かって押圧する際に、ドーム部22がその径方向に突出する空間を確保して、ドーム部22が容易に弾性変形可能にするのに寄与する。ただし、凹部25は、第1弾性部材2にとって必須の部材ではない。
【0023】
ドーム部22は、その開口側であって、凹部25より下方に、第2弾性部材3を嵌め込む段差部28を備える。段差部28は、ドーム部22の円筒部24より下方に設けられている。第2弾性部材3は、段差部28によって、それ以上、上方に入り込まないように規制される。
【0024】
(2)第2弾性部材
第2弾性部材3は、第2キートップ31と、第2キートップ31から平面視にて径方向外側に延出する弾性薄肉部32と、第2キートップ31の下方に配置される接点34と、弾性薄肉部32の外側から接点34の側方へと延出して押圧方向に開口する第2ベース部33と、を備える。第2弾性部材3は、第1弾性部材2に向かって(矢印Mの方向)、ドーム部22の開口部に嵌め込まれて、押釦スイッチ用部材1の一部となる。以下、第2キートップ31、弾性薄肉部32、接点34、第2ベース部33およびその他の部材について詳述する。
【0025】
第2キートップ31は、好ましくは、略円柱形状を有する。第2キートップ31は、第1キートップ21から押圧されていないときにはプッシャー部29と離れていて、第1キートップ21から押圧を受けるとプッシャー部29に接触可能である。第2キートップ31は、好ましくは、弾性薄肉部32との接続部位より第1弾性部材2の方向に突出している。第2キートップ31は、好ましくは、第2キートップ31と弾性薄肉部32との接続位置よりも上方に突出しているが、当該接続位置から上方に突出していなくとも良い。例えば、第2キートップ31の天面と上記の接続位置とを面一とすることもできる。
【0026】
弾性薄肉部32は、第1キートップ21から第2キートップ31への押圧およびその解除によって弾性変形する部材である。弾性薄肉部32、第2キートップ31と第2ベース部33とを連結する薄肉部材である。弾性薄肉部32は、第2キートップ31の外側面に接続している。弾性薄肉部32は、好ましくは、第2キートップ31から水平方向、すなわち、基板Sと平行の方向に延出する環状部材である。
【0027】
接点34は、スイッチのオンとオフを行う導電性の部材である。接点34は、好ましくは、円板形状を有する。接点34は、第1キートップ21からの押圧を受ける前には、基板S上の電極EL1および電極EL2と離れているが、第1キートップ21からの押圧を受けると、電極EL1および電極EL2に接触する。第1キートップ21からの押圧が解除されると、弾性薄肉部32は、非押圧時の状態に戻る。この結果、接点34は、電極EL1および電極EL2から離れる。
【0028】
第2ベース部33は、その上面を第1弾性部材2の段差部28に接触させて、第2弾性部材3を第1弾性部材2に合体可能とする部分である。第2ベース部33は、ドーム部22より押圧方向(すなわち、下方向)に配置されている。第2ベース部33は、弾性薄肉部32の径方向外側に接続される略円筒形状の部材である。第2ベース部33の下方は、開口部である。弾性薄肉部32と第2ベース部33によって形成される空間は、接点34が上下可動する空間となっている。第2弾性部材3を第1弾性部材2に合体させたとき、第2ベース部33の下面は、好ましくは、第1ベース部26の下面と面一となり、基板Sに接触可能である。しかし、第2弾性部材3を第1弾性部材2に強固に固定できるならば、第2ベース部33の下面は、第1ベース部26の下面より上方に位置し、基板Sから浮いていても良い。
【0029】
(3)押釦スイッチ用部材
この実施形態では、押釦スイッチ用部材1は、第1弾性部材2と第2弾性部材3とを別体として備え、第2弾性部材3を、第1弾性部材2のドーム部22の開口部に配置している。変形例として、第1弾性部材2と第2弾性部材3とは、接着等の手法により一体化あるいは最初から一体の状態のものでも良い。
【0030】
また、この実施形態では、接点34を除く各部材は、ゴム状弾性体によって構成されている。ゴム状弾性体は、一例として、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含む。特に好ましいゴム状弾性体は、シリコーンゴムあるいはウレタンゴムである。
【0031】
しかし、少なくともドーム部22および弾性薄肉部32をゴム状弾性体にて構成すれば、第1キートップ21、凹部25、第1ベース部26、プッシャー部29、第2キートップ31および第2ベース部33は、ゴム状弾性体以外のより硬質な部材(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、セラミックスなど)で構成されていても良い。突出部27を第1キートップ21に備える場合には、突出部27をゴム状弾性体で構成する方が好ましい。
【0032】
接点34は、電極EL1と電極EL2との間を通電可能なレベルの導電性を有する部材で構成されている。接点34の構成材料としては、SUS、アルミニウム合金、銅、銀、金、亜鉛、ニッケル、パラジウム、タングステンあるいはそれらの複合若しくは積層した金属、導電性ポリマー、インジウム錫酸化物(ITO)、グラファイト、カーボンブラックを例示できる。また、接点34は、電極EL1,EL2側に凹形状の導電性のドーム(例えば、メタルドーム)であっても良い。
【0033】
第1キートップ21の天面から基板Sに向かって押圧すると、所定の押圧に至った際に、ドーム部22が弾性的に変形して、プッシャー部29は第2キートップ31に接触する。続いて、第2キートップ31は弾性薄肉部32の変形を伴って下降する。その後、接点34は、基板Sの上面に露出している電極EL1と電極EL2に接触する。この結果、スイッチはオンとなる。第1キートップ21の天面からの押圧を解除すると、ドーム部22は、押圧前の元の形状に戻ろうとする。この結果、プッシャー部29は、上昇して第2キートップ31から離れる。第2キートップ31は、プッシャー部29からの押圧の解除によって上昇する。これによって、接点34は、電極EL1および電極EL2から離れる。この結果、スイッチはオフとなる。なお、スイッチのオンとオフは、上述とは逆であっても良い。
【0034】
図2は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の形態と、本発明の第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の形態とをそれぞれ縦断面図にて比較して示す。
【0035】
従来から公知の押釦スイッチ用部材100は、略円柱形状のキートップ121の下端に、キートップ121の径方向外側にドーム状に拡径するドーム部122を備える。ドーム部122は、図中の縦断面図において斜め下方に向かって直線的に拡径する拡径部123と、拡径部123の開口下端部から垂直下方に延出する円筒部124と、を接続した部材である。押釦スイッチ用部材100は、ドーム部122の下方開口部より径方向外側に延出するベース部126を備える。ベース部126は、押釦スイッチ用部材100を配置する基板S上に固定される部分である。押釦スイッチ用部材100は、ドーム部122の下方開口部とベース部126との間に、ベース部126の上面よりも下方に窪む凹部125を備える。押釦スイッチ用部材100は、キートップ121の直下に、導電性の接点134を備える。接点134は、ドーム部122の内方空間の上部に備えられており、基板S上の電極EL1と電極EL2とを接続可能な形態を有する。キートップ121は、その天面に突出部127を備える。突出部127は、操作者からの操作時に押圧を受けて容易に圧縮変形可能な部分である。キートップ121の直径(K1)は、接点134の直径(C)より大きい。ただし、K1とCとを同一とすることもできる。
【0036】
第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1の構成は、既に図1を参照して説明したとおりである。この実施形態では、押釦スイッチ用部材1のプッシャー部29の下端から第2キートップ31の上面までの距離(L2)と、接点34の下端から電極EL1,EL2までの距離(L3)との合計距離(L2+L3)は、押釦スイッチ用部材100の接点134の下端から電極EL1,EL2までの距離(L1)とほぼ同一である。
【0037】
従来から公知の押釦スイッチ用部材100は、接点134をキートップ121の直下に固定している。このため、キートップ121の直径(K1)は、接点134の直径(C)と同一若しくはそれ以上の大きさにする必要がある。この結果、ドーム部122の開口直径(D1)は、キートップ121の直径(K1)より大きくせざるを得なくなる。一方、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1は、接点34をプッシャー部29に固定せず、第2キートップ31の下端に固定している。このため、第1キートップ21の直径(K2)は、接点34の直径(C)に左右されず、従来よりも小さく形成できる。すなわち、K2<K1となる。この結果、ドーム部22の開口直径(D2)は、第1キートップの直径(K2)および接点34の直径(C)より大きい限り、従来よりも小さく構成できる。すなわち、D2<D1となる。一例を挙げるなら、押釦スイッチ用部材100のK1を4.5mm、D1を8.5mmとすると、押釦スイッチ用部材1のK2を3.5mm、D2を7.5mmとすることができる。このように、接点34を第2弾性部材3に設けて基板Sに近づけることにより、第1キートップ21の直径を従来よりも小さくでる。また、ドーム部22の開口直径を従来よりも小さくできる。この結果、押釦スイッチ用部材1を設けるスペースを小さくできる。
【0038】
図3は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の押圧-ストローク曲線(F-S曲線)と、本発明の第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の押圧-ストローク曲線(F-S曲線)とを比較して示す。
【0039】
押釦スイッチ用部材100のF-S曲線と、押釦スイッチ用部材1のF-S曲線とを比較すると、大きな差が認められず、ともに良好な押圧特性が得られている。したがって、接点34を基板S近傍位置まで下げ、第1キートップ21の小径化と、それに伴うドーム部22の小径化とを実現しても、従来と同様の押圧特性が得られることがわかる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。
【0041】
図4は、本発明の第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材の組み立て前後の縦断面図を示す。第2実施形態において第1実施形態と共通する部分は、同じ符号を付され、重複した説明を省略される。
【0042】
第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材1aは、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1と異なり、ドーム部22の下方開口面より上方に段差部28aを備える。押釦スイッチ用部材1aは、第2弾性部材3aにおける第2ベース部33aの上面を当該下方開口面より上方に位置するように構成されている。第2実施形態におおける上記以外の構成は、第1実施形態と共通する。
【0043】
第2弾性部材3aは、第2キートップ31と、第2キートップ31から平面視にて径方向外側に延出する弾性薄肉部32aと、第2キートップ31の下方に配置される接点34と、弾性薄肉部32aの外側から接点34の側方へと延出して押圧方向に開口する第2ベース部33aと、を備える。第2弾性部材3aは、第1弾性部材2aに向かって(矢印Mの方向)、ドーム部22の開口部に嵌め込まれて、押釦スイッチ用部材1aの一部となる。第2弾性部材3aの構成は、第1実施形態における第2弾性部材3の構成と近似する。しかし、弾性薄肉部32aの第2キートップ31の径方向外側に延出する長さ、および第2ベース部33aの当該径方向外側に延出する長さは、第1実施形態のそれらに比べて短い。すなわち、第2弾性部材3aは、第2弾性部材3に比べて、上記径方向を短く構成されていて、ドーム部22の下方開口部内に入り込むように構成されている。段差部28aは、凹部26の径方向内側であって、ドーム部22の下方開口面より上方に形成されている。
【0044】
この実施形態では、押釦スイッチ用部材1aは、第1弾性部材2aと第2弾性部材3aとを別体として備え、第2弾性部材3aを、第1弾性部材2aのドーム部22の開口部に配置している。変形例として、第1弾性部材2aと第2弾性部材3aとは、接着等の手法により一体化あるいは最初から一体の状態のものでも良い。
【0045】
図5は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の形態と、本発明の第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材の形態とをそれぞれ縦断面図にて比較して示す。
【0046】
従来から公知の押釦スイッチ用部材100は、第1実施形態の説明において図2に示したものと同一である。
【0047】
第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材1aの構成は、既に図4を参照して説明したとおりである。この実施形態では、押釦スイッチ用部材1aのプッシャー部29の下端から第2キートップ31の上面までの距離(L2)と接点34の下端から電極EL1,EL2までの距離(L3)との合計距離(L2+L3)は、押釦スイッチ用部材100の接点134の下端から電極EL1,EL2までの距離(L1)より短い。これは、第2キートップ31の上面の位置は、第1実施形態に比べて上方にあるからである。押釦スイッチ用部材1aは、第1実施形態と同様、接点34をプッシャー部29に固定せず、第2弾性部材3aの第2キートップ31の下端に固定している。このため、第1キートップ21の直径(K2)は、接点34の直径(C)に左右されず、従来よりも小さく形成できる。すなわち、K2<K1となる。この結果、ドーム部22の開口直径(D2)は、第1キートップの直径(K2)および接点34の直径(C)より大きい限り、従来よりも小さく構成できる。すなわち、D2<D1となる。このように、接点34を第2弾性部材3aに設けて基板Sに近づけることにより、第1キートップ21の直径を従来よりも小さくできる。また、ドーム部22の開口直径を従来よりも小さくできる。この結果、押釦スイッチ用部材1aを設けるスペースを小さくできる。
【0048】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。
【0049】
図6は、本発明の第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材の縦断面図を示す。第3実施形態において第1実施形態と共通する部分は、同じ符号を付され、重複した説明を省略される。
【0050】
第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材1bは、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1と異なり、第2ベース部33の上面から第2キートップ31の外側面に向かって直線的に下方傾斜する漏斗形状の弾性薄肉部32bを備える。すなわち、弾性薄肉部32bは、縦断面視において、第2キートップ31から第1弾性部材2に向かって斜め上方向に延出している。第3実施形態におおける上記以外の構成は、第1実施形態と共通する。この実施形態でも、押釦スイッチ用部材1bは、第1弾性部材2と第2弾性部材3bとを別体として備え、第2弾性部材3bを、第1弾性部材2のドーム部22の開口部に配置している。変形例として、第1弾性部材2と第2弾性部材3bとは、接着等の手法により一体化あるいは最初から一体の状態のものでも良い。
【0051】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0052】
上述の各実施形態では、プッシャー部29は、第1キートップ21の下端から第2キートップ31に向かって突出する形態を有している。しかし、プッシャー部29は、第1キートップ21の下端自体であって、第2キートップ31に向かって突出していなくとも良い。また、弾性薄肉部32,32a,32bは、押釦スイッチ用部材1,1a,1bの縦断面視にて、基板Sの面に対して平行若しくは第2キートップ31から斜め上方に向かって延出している。しかし、弾性薄肉部は、ドーム部22の形態と同様に、第2キートップ31の外側面若しくは下端から下方に向けて拡径する形態でも良い。
【0053】
上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。例えば、第3実施形態における弾性薄肉部32bを、第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材1aの第2弾性部材3aに備えても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る押釦スイッチ用部材は、例えば、自動車の車載用機器の他、工業用ロボット、家庭用電化製品、PCなどの各種機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1,1a,1b・・・押釦スイッチ用部材、2,2a・・・第1弾性部材、3,3a,3b・・第2弾性部材、21・・・第1キートップ、22・・・ドーム部、26・・・第1ベース部、29・・・プッシャー部、31・・・第2キートップ、32,32a,32b・・・弾性薄肉部、33,33a・・・第2ベース部、34・・・接点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7