(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置及びモータの駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 6/15 20160101AFI20230214BHJP
【FI】
H02P6/15
(21)【出願番号】P 2019024404
(22)【出願日】2019-02-14
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【氏名又は名称】石川 竜郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】海津 浩之
(72)【発明者】
【氏名】野上田 弥
(72)【発明者】
【氏名】青木 政人
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208731(JP,A)
【文献】特開平9-37586(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158133(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続された複数のスイッチング素子を有し、モータの複数相のコイルに選択的に通電するモータ駆動部と、
前記複数相のうちいずれか1相に対応し、前記モータのロータの位置に対応して位相が変化する位置信号を出力する位置検出部と、
前記モータの駆動電流を検出する電流検出部と、
前記複数のスイッチング素子を動作させる駆動制御信号を前記モータ駆動部に出力する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記位置信号の所定の位相変化を検知する変化検知手段と、
前記位相変化が検知されたタイミングに基づいて、前記複数相のコイルの通電パターンを順次切り替える第1の切替手段と、
前記変化検知手段が前記位相変化を検知していない状態で、前記位置信号の所定の位相変化が予想されるタイミングより後の監視期間において前記駆動電流の値が所定の第1の閾値以上になったとき、前記第1の切替手段による前記通電パターンの切り替えタイミングにかかわらず強制的に次の通電パターンに切替える動作を行う第2の切替手段とを有する、モータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記監視期間が終わるタイミングまで前記変化検知手段が前記位相変化を検知していない状態が続いた場合に前記モータの駆動を停止させる停止手段をさらに有する、請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記モータは、3相のコイルを有し、
前記位置信号の所定の位相変化が予想されるタイミングから前記監視期間が終わるタイミングまでの時間は、前記ロータが電気角で30度回転するのにかかることが予想される時間より長い、請求項1又は2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項4】
前記監視期間が始まるタイミングは、前記位置信号の所定の位相変化が予想されるタイミングから所定時間が経過したタイミングである、請求項1から3のいずれかに記載のモータ駆動制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記駆動電流の値が所定の第2の閾値を超えたときに前記モータ駆動部による通電を停止させる過電流制限手段をさらに有する、請求項1から4のいずれかに記載のモータ駆動制御装置。
【請求項6】
前記第2の切替手段は、前記監視期間以外の期間において、前記強制的に次の通電パターンに切り替える動作を行わない、請求項1から5のいずれかに記載のモータ駆動制御装置。
【請求項7】
電源に接続された複数のスイッチング素子を有し、モータの複数相のコイルに選択的に通電するモータ駆動部と、
前記複数相のうちいずれか1相に対応し、前記モータのロータの位置に対応して位相が変化する位置信号を出力する位置検出部と、
前記モータの駆動電流を検出する電流検出部とを用いて、前記モータを駆動する前記モータの駆動制御方法であって、
前記位置信号の所定の位相変化を検知する変化検知ステップと、
前記位相変化が検知されたタイミングに基づいて、前記複数相のコイルの通電パターンを順次切り替える第1の切替ステップと、
前記変化検知ステップが前記位相変化を検知していない状態で、前記位置信号の所定の位相変化が予想されるタイミングより後の監視期間において前記駆動電流の値が所定の第1の閾値以上になったとき、前記第1の切替ステップによる前記通電パターンの切り替えタイミングにかかわらず強制的に次の通電パターンに切替える動作を行う第2の切替ステップとを備える、モータの駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ駆動制御装置及びモータの駆動制御方法に関し、特に、いわゆる1センサ駆動を行うことができるモータ駆動制御装置及びモータの駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動を制御するモータ駆動制御装置には、いわゆる1センサ駆動によりモータを駆動させるものがある。例えば、モータの磁極位置を検出するためのホールセンサを1つだけ用いてモータを駆動するものがある。
【0003】
1センサ駆動によりモータを駆動する場合、複数のセンサを用いる場合とは異なり、磁極位置を特定することができない。そのため、ホールセンサから出力される信号の周期に基づいて特定したタイミングで通電パターンを順次切り替えることにより、モータを駆動する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように1つのセンサを用いてモータを駆動させる場合において、駆動中にセンサからの情報が何らかの理由によって得られなくなると、通電パターンを切り替えることができなくなり、モータに流れる電流が大幅に増加してしまうという問題がある。モータに流れる電流が過度に大きくなると、モータ駆動制御装置やモータの構成要素に不具合が生じる可能性がある。
【0006】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、位置検出のための信号が得られないときにおいてもモータに流れる電流が過度に大きくならないモータ駆動制御装置及びモータの駆動制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、モータ駆動制御装置は、電源に接続された複数のスイッチング素子を有し、モータの複数相のコイルに選択的に通電するモータ駆動部と、複数相のうちいずれか1相に対応し、モータのロータの位置に対応して位相が変化する位置信号を出力する位置検出部と、モータの駆動電流を検出する電流検出部と、複数のスイッチング素子を動作させる駆動制御信号をモータ駆動部に出力する制御部とを備え、制御部は、位置信号の所定の位相変化を検知する変化検知手段と、位相変化が検知されたタイミングに基づいて、複数相のコイルの通電パターンを順次切り替える第1の切替手段と、変化検知手段が位相変化を検知していない状態で、位置信号の所定の位相変化が予想されるタイミングより後の監視期間において駆動電流の値が所定の第1の閾値以上になったとき、第1の切替手段による通電パターンの切り替えタイミングにかかわらず強制的に次の通電パターンに切替える動作を行う第2の切替手段とを有する。
【0008】
好ましくは、制御部は、監視期間が終わるタイミングまで変化検知手段が位相変化を検知していない状態が続いた場合にモータの駆動を停止させる停止手段をさらに有する。
【0009】
好ましくは、モータは、3相のコイルを有し、位置信号の所定の位相変化が予想されるタイミングから監視期間が終わるタイミングまでの時間は、ロータが電気角で30度回転するのにかかることが予想される時間より長い。
【0010】
好ましくは、監視期間が始まるタイミングは、位置信号の所定の位相変化が予想されるタイミングから所定時間が経過したタイミングである。
【0011】
好ましくは、制御部は、駆動電流の値が所定の第2の閾値を超えたときにモータ駆動部による通電を停止させる過電流制限手段をさらに有する。
【0012】
好ましくは、第2の切替手段は、監視期間以外の期間において、強制的に次の通電パターンに切り替える動作を行わない。
【0013】
この発明の他の局面に従うと、モータの駆動制御方法は、電源に接続された複数のスイッチング素子を有し、モータの複数相のコイルに選択的に通電するモータ駆動部と、複数相のうちいずれか1相に対応し、モータのロータの位置に対応して位相が変化する位置信号を出力する位置検出部と、モータの駆動電流を検出する電流検出部とを用いて、モータを駆動するモータの駆動制御方法であって、位置信号の所定の位相変化を検知する変化検知ステップと、位相変化が検知されたタイミングに基づいて、複数相のコイルの通電パターンを順次切り替える第1の切替ステップと、変化検知ステップが位相変化を検知していない状態で、位置信号の所定の位相変化が予想されるタイミングより後の監視期間において駆動電流の値が所定の第1の閾値以上になったとき、第1の切替ステップによる通電パターンの切り替えタイミングにかかわらず強制的に次の通電パターンに切替える動作を行う第2の切替ステップとを備える。
【発明の効果】
【0014】
これらの発明に従うと、位置検出のための信号が得られないときにおいてもモータに流れる電流が過度に大きくならないモータ駆動制御装置及びモータの駆動制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態の一つにおけるモータ駆動制御装置の構成を示す図である。
【
図2】通常時の通電パターンと位置信号との関係を示す図である。
【
図3】通電パターンの強制的な切り替えが行われる場合の通電パターンと位置信号との関係を示す図である。
【
図4】本実施の形態における制御部の動作を説明するフローチャートである。
【
図5】位置信号検知時処理を示すフローチャートである。
【
図6】タイマ割り込み処理を示すフローチャートである。
【
図7】通電パターンの強制切替動作が行われない場合の通電パターンと位置信号との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の一つにおけるモータ駆動制御装置について説明する。
【0017】
[実施の形態]
【0018】
図1は、本発明の実施の形態の一つにおけるモータ駆動制御装置1の構成を示す図である。
【0019】
図1に示されるように、モータ駆動制御装置1は、制御部3と、位置検出器(位置検出部の一例)5と、電流検出部7と、モータ駆動部9とを備える。モータ駆動制御装置1は、モータ10に駆動電力を供給し、モータ10を駆動させる。なお、本実施の形態におけるモータ10は、U相、V相、W相のコイルLu,Lv,Lwを有する3相のブラシレスモータである。
【0020】
位置検出器5は、モータ10の複数相のうちいずれか1相に対応し、モータ10のロータの位置に対応して位相が変化する位置信号を出力する。具体的には、位置検出器5は、例えば、ホール素子やホールICなどの磁気センサであり、位置信号としてホール信号が出力される。位置検出器5から出力される位置信号は、制御部3に入力される。位置検出器5は、モータ10の1箇所においてロータの位置を検出し、位置信号を出力する。例えば、位置検出器5は、U相のコイルLuに対応するように1つ設けられている。位置信号は、ロータが1回転する間に、所定の位置をロータが通過したとき(ロータが第1の回転位置になったとき)にローからハイになり(立ち上がり;立ち上がりエッジ)、それとは別の所定の位置をロータが通過したとき(ロータが第2の回転位置になったとき)にハイからローに戻る(立ち下がり;立ち下がりエッジ)。位置信号は、ロータの回転に応じて周期的にハイ、ローとなる信号である。
【0021】
第1の回転位置と第2の回転位置は、モータ10のいずれか1相に対応する位置である。位置信号は、ロータの位置に応じて、すなわちモータ10のいずれか1相とロータとの位置関係に応じて、位相が変化する信号である。なお、位置信号として、周期的にハイ、ローを繰り返す信号が直接位置検出器5から出力されてもよいし、位置検出器5から出力されたアナログの位置信号が制御部3に入力された後に、周期的にハイ、ローとなる信号に変換されるようにしてもよい(以下の説明において、このようにアナログの位置信号が変換された後の信号も位置信号と呼ぶ)。
【0022】
本実施の形態において、1つの位置検出器5のみが設けられている。すなわち、モータ10のうち1箇所のみで検出された位置信号が制御部3に入力される。なお、複数の相のそれぞれに対応する複数の位置検出器5が設けられており、そのうち1箇所の位置検出器5のみから出力された位置信号が制御部3に入力されて用いられるようにしてもよい。すなわち、本実施の形態においては、1つの位置検出器5から出力された位置信号が制御部3に入力される。モータ駆動制御装置1は、ロータの位置を検出するための位置検出器5を1つのみ使用する1センサ方式で、モータ10を駆動する。
【0023】
モータ駆動部9は、モータ10の複数相のコイルLu,Lv,Lwを選択的に通電する。モータ駆動部9は、インバータ回路2と、プリドライブ回路4とを有している。モータ駆動部9には、制御部3から出力される駆動制御信号C1が入力される。
【0024】
インバータ回路2は、プリドライブ回路4から出力される6種類の駆動信号R1-R6に基づいてモータ10の3相のコイルLu,Lv,Lwを選択的に通電し、モータ10の回転を制御する。
【0025】
本実施の形態において、インバータ回路2は、モータ10のコイルLu,Lv,Lwのそれぞれに駆動電流を供給するための6個のスイッチング素子Q1-Q6を備えている。スイッチング素子Q1,Q3,Q5は、直流電源Vccの正極側に配置されたPチャンネルのMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)からなるハイサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q2,Q4,Q6は、直流電源Vccの負極側に配置されたNチャンネルのMOSFETからなるローサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q1,Q2の組み合わせ、スイッチング素子Q3,Q4の組み合わせ、及びスイッチング素子Q5,Q6の組み合わせのそれぞれにおいて、2つのスイッチング素子が直列に接続されている。そして、これらの3組の直列回路が並列に接続されて、ブリッジ回路が構成されている。スイッチング素子Q1,Q2の接続点がU相のコイルLuに接続され、スイッチング素子Q3,Q4の接続点がV相のコイルLvに接続され、スイッチング素子Q5,Q6の接続点がW相のコイルLwに接続されている。
【0026】
プリドライブ回路4は、インバータ回路2の6個のスイッチング素子Q1-Q6のそれぞれのゲート端子に接続される複数の出力端子を備えている。各出力端子から駆動信号R1-R6を出力して、スイッチング素子Q1-Q6のオン/オフ動作を制御する。制御部3から出力される駆動制御信号C1は、プリドライブ回路4に入力される。プリドライブ回路4は、駆動制御信号C1に基づいて、駆動信号R1-R6を出力することにより、インバータ回路2を動作させる。すなわち、インバータ回路2は、駆動制御信号C1に基づいて、モータ10の各相のコイルLu,Lv,Lwに選択的に通電する。
【0027】
電流検出部7は、モータ10の駆動電流を検出する。本実施の形態では、電流検出部7は、インバータ回路2と接地電位(電源Vccの負極)との間に配置される電流検出抵抗を含んでおり、モータ10の駆動電流に対応する電圧値を検出する。すなわち、モータ10のコイルLu,Lv,Lwの各相に流れた駆動電流は、インバータ回路2を通り、電流検出抵抗を通って、接地電位へ流れる。電流検出部7は、電流検出抵抗の両端の電圧から、モータ10の駆動電流の大きさを電圧値として検出することができる。検出結果である駆動電流の大きさに対応する電圧値の信号は、制御部3に入力される。なお、電流検出部7が、モータ10の電源電流を検出するように構成されていてもよい。
【0028】
制御部3は、複数のスイッチング素子Q1-Q6を動作させる駆動制御信号C1をモータ駆動部9に出力することにより、モータ駆動部9の動作を制御する。制御部3は、モータ駆動部9に駆動制御信号C1を出力することにより、複数相のコイルLu,Lv,Lwの通電パターン(通電相)を所定の順序で切り替える。制御部3は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、マイクロコンピュータなどのプログラマブルデバイスを用いて構成することができるが、これに限られるものではない。
【0029】
詳細は後述するが、制御部3は、変化検知手段として、位置信号の所定の位相変化を検知する。また、制御部3は、第1の切替手段として、位置信号の所定の位相変化が検知されたタイミングに基づいて、複数相のコイルLu,Lv,Lwの通電パターンを順次切り替える。また、制御部3は、第2の切替手段として、位置信号の所定の位相変化を検知していない状態で、位置信号の所定の位相変化が予想されるタイミングより後の監視期間において駆動電流の値が第1の閾値以上になったとき、第1の切替手段として行う通電パターンの切り替えタイミングにかかわらず、強制的に次の通電パターンに切替える動作を行う。換言すると、制御部3は、モータ駆動部9と、位置検出器5と、電流検出部7とを用いて、モータ10を駆動するモータの駆動制御方法を行う。すなわち、制御部3は、位置信号の所定の位相変化を検知し(変化検知ステップ)、検知されたタイミングに基づいて、複数相のコイルLu,Lv,Lwの通電パターンを順次切り替える(第1の切替ステップ)。また、位置信号の所定の位相変化を検知していない状態で、位置信号の所定の位相変化が予想されるタイミングより後の監視期間において駆動電流の値が第1の閾値以上になったとき、第1の切替手段として行う通電パターンの切り替えタイミングにかかわらず、強制的に次の通電パターンに切替える動作を行う(第2の切替ステップ)。
【0030】
制御部(停止手段の一例)3は、通電切替タイミング監視部(変化検知手段の一例、第1の切替手段の一例、第2の切替手段の一例)31と、過電流監視部(過電流制限手段の一例)32と、通電切替制御部33と、モータ制御部35とを有している。制御部3には、位置検出器5から出力される位置信号と、入力指令回転数Ssと、電流検出部7の検出結果である駆動電流の大きさに対応する電圧値の信号が入力される。
【0031】
入力指令回転数Ssは、モータ10の回転速度に関する信号である。例えば、入力指令回転数Ssは、モータ10の目標回転速度に対応するPWM(パルス幅変調)信号である。換言すると、入力指令回転数Ssは、モータ10の回転速度の目標値に対応する情報である。なお、入力指令回転数Ssとして、クロック信号が入力されてもよい。
【0032】
図2は、通常時の通電パターンと位置信号との関係を示す図である。
【0033】
図2において、上段から、通電パターンと、位置信号の波形と、後述する通電切替カウンタの値の推移と、モータ10の駆動電流の推移とが模式的に示されている。
【0034】
モータ10は3相のコイルLu,Lv,Lwを有しているので、6つの通電パターンがある。すなわち、
図2に示されるように、(1)ハイサイドU相及びローサイドV相の組合せの第1通電パターン、(2)ハイサイドU相及びローサイドW相の組合せの第2通電パターン、(3)ハイサイドV相及びローサイドW相の組合せの第3通電パターン、(4)ハイサイドV相及びローサイドU相の組合せの第4通電パターン、(5)ハイサイドW相及びローサイドU相の組合せの第5通電パターン、及び(6)ハイサイドW相及びローサイドV相の組合せの第6通電パターンがある。
【0035】
モータ10を所定の方向に回転させるとき、制御部3は、6つの通電パターンの全てを所定の順序でひととおり切り替える1巡の切替制御を繰り返して行う。所定の順序は、例えば、第1通電パターン、第2通電パターン、第3通電パターン、第4通電パターン、第5通電パターン、及び第6通電パターンの順番である。
【0036】
図1に戻って、通電切替タイミング監視部31には、位置検出器5から出力される位置信号が入力される。通電切替タイミング監視部31は、位置信号に基づいて、通電切替タイミング情報とモータ10の実際の回転数に対応する実回転数を表す情報とを含む、実回転数情報S1を出力する。通電切替タイミング監視部31は、位置信号の立ち上がりタイミング(所定の位相変化の一例)を検出し、その情報に基づいて、通電パターンを切り替えるタイミングを示す通電切替タイミング情報を実回転数情報S1に含めて出力する。なお、通電切替タイミング監視部31は、位置信号の立ち下がりタイミングを所定の位相変化として検出してもよいし、立ち上がりと立ち下がりとの両方を検出してもよいし、周期的に到来する所定の態様の位相の変化を検出するように構成されていればよい。
【0037】
通電切替制御部33には、入力指令回転数Ssと、実回転数情報S1とが入力される。通電切替制御部33は、入力指令回転数Ssと、実回転数情報S1とに基づいて、駆動指令信号Scを生成して出力する。通電切替制御部33は、実回転数情報S1に基づいて、モータ10が入力指令回転数Ssで回転するように駆動指令信号Scを出力するフィードバック制御を行う。このとき、通電切替制御部33は、実回転数情報S1に基づいて、複数相のコイルLu,Lv,Lwの通電パターンが順次切り替わるように、駆動指令信号Scを出力する。
【0038】
モータ制御部35は、駆動指令信号Scに基づいて駆動制御信号C1を出力する。すなわち、モータ制御部35は、駆動指令信号Scに基づいて駆動制御信号C1を生成し、生成した駆動制御信号C1をモータ駆動部9のプリドライブ回路4に出力する。
【0039】
過電流監視部32には、電流検出部7で得られた駆動電流の大きさに対応する電圧値の信号が入力される。過電流監視部32は、モータ10に流れる駆動電流を監視して、駆動電流が所定の通常過電流閾値(第2の閾値の一例)よりも大きいか否かを判断する。そして、過電流監視部32は、駆動電流が所定の通常過電流閾値よりも大きいと判断したとき、モータ制御部35を制御し、モータ10に駆動電流が流れないように過電流制限を行う過電流制限手段として機能する。これにより、モータ10やモータ駆動制御装置1に過大な電流が流れることによりモータ10やモータ駆動制御装置1が故障してしまうことを防止することができる。
【0040】
通常時のモータ10の駆動時において、制御部3は次のように動作を行う。すなわち、
図2に示されるように、制御部3は、位置信号の立ち上がりタイミングt11が第4通電パターンの間に到来するように、通電パターンを切り替える。通電切替タイミング監視部31は、時刻t11に位置信号の立ち上がりを検知すると、時刻t11から所定時間(例えば、電気角で30度回転するだけの時間)が経過した時刻t12に、通電パターンを切り替えるタイミングを示す通電切替タイミング情報を出力する。通電切替制御部33は、通電切替タイミング情報に応じて、次の通電パターンである第5通電パターンへの切り替えを行う。以後、通電切替タイミング監視部31が通電切替タイミング情報を出力するのに応じて、通電切替制御部33が通電パターンを順次切り替える。このとき、通電切替タイミング監視部31は、位置信号の立ち上がりタイミングが検出される度に、前回の位置信号の立ち上がりタイミングが検出されてから今回の位置信号の立ち上がりタイミングが検出されるまでの期間(最新の周期)を計測する。そして、位置信号の立ち上がりタイミングから、計測した最新の周期の6分の1(電気角で60度分)の時間(タイマ時間)が経過する度に、通電切替タイミング情報を出力する。このような動作は、制御部3が内蔵するタイマを用いて行われる。第4通電パターンに切り替えて通電パターンのサイクルが一巡すると、次の位置信号の立ち上がりタイミングの検出タイミングに基づいて、次のサイクルの切り替えを行う。なお、最新の周期は、過去の1周期分の計測結果に限られず、複数周期分の計測結果を平均することによって得られるようにしてもよい。
【0041】
ここで、本実施の形態において、過電流監視部32は、通電切替タイミング監視部31で検出された位置信号の立ち上がりタイミングに基づいて予想される次の立ち上がりタイミング(以下、予想タイミングということがある)より後の監視期間において、駆動電流が所定の特別過電流閾値(第1の閾値の一例)よりも大きいか否かを判断する。特別過電流閾値は、通常過電流閾値とは関係せず、適切な値に設定されている。
【0042】
予想タイミングは、例えば次のようなタイミングとして定義することができる。すなわち、通電切替タイミング監視部31は、位置信号の立ち上がりタイミングが検出される度に、最新の周期を計測することができる。モータ10の速度に変動がない場合、今回の位置信号の立ち上がりタイミングから最新の周期が経過したタイミングに、位置信号の立ち上がりが到来すると予想される。そのため、今回の位置信号の立ち上がりタイミングから最新の周期が経過したタイミングを予想タイミングとすることができる。
【0043】
監視期間が始まるタイミングは、予想タイミングから所定時間が経過したタイミングである。また、予想タイミングから監視期間が終わるタイミングまでの時間は、ロータが電気角で30度回転するのにかかることが予想される時間より長くなっている。本実施の形態においては、予想タイミングから、最新の周期の12分の1(電気角で30度分)の時間が経過したタイミングから監視期間が始まる。換言すると、監視期間が始まるタイミングは、一巡の通電パターンの切替サイクルの最後の切り替えが行われるタイミング(第3通電パターンから第4通電パターンへの切り替えタイミング)から、最新の周期の6分の1(電気角で60度分)の時間が経過するタイミングである。
【0044】
監視期間の長さは、例えば、通電パターンの1つの通電期間に相当する長さに設定されている。例えば、最新の周期の6分の1(電気角で60度分)の時間が経過するタイミングまでの期間が、監視期間の長さとして設定される。
【0045】
後述するように、通電切替タイミング監視部31は、位置信号の立ち上がりタイミングが検出されると、その後で位置信号の立ち上がりを検知していない状態が続いている限り、監視期間が始まるタイミングと終わるタイミングに、過電流監視部32に信号を出力する。過電流監視部32は、通電切替タイミング監視部31から出力される信号に基づいて、監視期間以外の期間では、駆動電流が通常過電流閾値よりも大きいか否かを判断し、監視期間では、駆動電流が特別過電流閾値よりも大きいか否かを判断する。駆動電流が通常過電流閾値よりも大きいと判断されたときには上述のように過電流制限が行われ、監視期間において駆動電流が特別過電流閾値よりも大きいと判断されたときには、過電流監視部32から通電切替タイミング監視部31に信号が出力される。
【0046】
監視期間において駆動電流が特別過電流閾値よりも大きいと判断された、過電流監視部32から通電切替タイミング監視部31に信号が出力されると、通電切替タイミング監視部31は、強制的に通電パターンを切り替えるための通電切替タイミング情報を出力する。これにより、通電パターンが次の通電パターンに強制的に切り替えられる。
【0047】
図3は、通電パターンの強制的な切り替えが行われる場合の通電パターンと位置信号との関係を示す図である。
【0048】
図3において、上段から、通電パターンと、位置信号の波形と、特別過電流閾値と、モータ10の駆動電流の推移と、通電切替カウンタの値の推移とが模式的に示されている。
図3に示されるように、予想タイミングが時刻t31に到来すると予想される状況において、予想タイミングを過ぎてもなお、次の位置信号の立ち上がりが検知されていない状態が続いている場合を想定する。このとき、時刻t31から電気角で30度分の時間が経過した時刻t32においては、通電パターンは切り替えられない。時刻t32に監視期間が始まり、時刻t32から電気角で60度分の時間が経過したタイミングである時刻t34に監視期間が終了することになる。なお、本実施の形態において、予想タイミング(時刻t31)から監視期間が終了する時刻t34までの期間は、次の位置信号の立ち上がりがあるまで待機する期待期間となっており、次の位置信号の立ち上がりが検出されなくても、監視期間が終了する時刻t34まではモータ10の駆動は停止されない。
【0049】
時刻t32に監視期間が始まると、モータ10の駆動電流の大きさが特別過電流閾値を超えないか、監視が開始される。モータ10が回転しており、時刻t32に通電パターンの切り替えが行われなかったとき、第4通電パターンの状態で継続してモータ10に電流が流される。そうすると、モータ10の駆動電流が大きくなっていく。
【0050】
時刻t33において、モータ10の駆動電流の大きさが特別過電流閾値に達すると、通電切替タイミング監視部31が通電切替タイミング情報を出力することにより、強制的に通電パターンの切り替えが行われる。通電パターンは、第4通電パターンから第5通電パターンになる。通電パターンの切り替えが行われることにより、モータ10の駆動電流の大きさは、一旦小さくなる。
【0051】
その後、時刻t34になると、監視期間が終了する。監視期間が終わるタイミングまでに、すなわち期待期間が終わるタイミングまでに、位置信号の立ち上がりが検出されない状態が続いた場合には、制御部3は、モータ10の駆動を停止させる制御を行う停止手段として機能する。これにより、モータ10への通電がオフとなり、駆動電流はゼロとなる。
【0052】
なお、このような強制的な通電パターンの切替は、監視期間以外には行われない。以下に説明するように、本実施の形態においては、制御部3は、通電切替カウンタを用いて、このような監視期間における動作を行うか否かを制御する。
【0053】
図4は、本実施の形態における制御部3の動作を説明するフローチャートである。
【0054】
図4に示される処理は、モータ10が駆動されている間、繰り返し実行されるものである。すなわち、ステップS11において、通電切替タイミング監視部31は、位置信号の立ち上がりを検知したか否かを判断する。位置信号の立ち上がりを検知したとき(YES)、ステップS12に進み、そうでないとき(NO)、ステップS13に進む。
【0055】
ステップS12において、制御部3は、後述のように位置信号検知時処理を行う。
【0056】
ステップS13において、通電切替タイミング監視部31は、タイマ割り込みがあったか否かを判断する。タイマ割り込みがあったとき(YES)、ステップS14に進み、そうでないとき(NO)、ステップS15に進む。
【0057】
ステップS14において、制御部3は、後述のようにタイマ割り込み処理を行う。
【0058】
ステップS15において、通電切替タイミング監視部31は、特別過電流割り込みがあったか否かを判断する。過電流監視部32が監視期間において駆動電流が特別過電流閾値よりも大きいと判断し、過電流監視部32から通電切替タイミング監視部31に信号が出力されると、通電切替タイミング監視部31は、特別過電流割り込みがあったと判断する。特別過電流があった場合には(YES)、ステップS16に進み、そうでないとき(NO)、ステップS11に戻る。
【0059】
ステップS16において、通電切替タイミング監視部31は、強制的に通電パターンの切替を行うための通電切替タイミング情報を出力する。これにより、通電パターンが強制的に切り替えられる。
【0060】
ステップS12、ステップS14、ステップS16のいずれかの処理が終了すると、一連の処理が終了する。
【0061】
図5は、位置信号検知時処理を示すフローチャートである。
【0062】
ステップS21において、通電切替タイミング監視部31は、位置信号の周期を取得する。例えば、通電切替タイミング監視部31は、前回の立ち上がりタイミングから今回検知した立ち上がりタイミングまでの最新の周期を取得する。
【0063】
ステップS22において、通電切替タイミング監視部31は、位置信号の周期から、通電切替タイミングを計算する。
【0064】
ステップS23において、通電切替タイミング監視部31は、特別過電流の監視を終了する。すなわち、特別過電流割り込みを無効化する。
【0065】
ステップS24において、通電切替タイミング監視部31は、通電切替カウンタをクリアする。
【0066】
ステップS25において、通電切替タイミング監視部31は、通電切替タイミングを設定する。すなわち、位置信号の周期に基づいて、次回の通電切替タイミングを、電気角で30度進んだタイミングとし、そのタイミングにタイマ割り込みが生じるようにタイマを設定する。ステップS25が終了すると、
図4の処理に戻る。
【0067】
図6は、タイマ割り込み処理を示すフローチャートである。
【0068】
図6に示されるように、ステップS31において、通電切替タイミング監視部31は、通電切替カウンタの値が6より小さいか否かを判断する。通電切替カウンタの値が6より小さい場合には(YES)、ステップS32に進み、そうでない場合には(NO)、ステップS41に進む。
【0069】
ステップS32において、通電切替タイミング監視部31は、通電切替タイミング情報を出力する。これにより、通電パターンが次の通電パターンに切り替えられる。
【0070】
ステップS33において、通電切替タイミング監視部31は、位置信号の周期に基づいて、通電切替タイミングを設定する。すなわち、電気角で60度進んだタイミングとし、そのタイミングにタイマ割り込みが生じるようにタイマを設定する。
【0071】
ステップS34において、通電切替タイミング監視部31は、通電切替カウンタをインクリメントする。すなわち、ステップS34において、通電切替カウンタの値が1増加する。ステップS34が終了すると、
図4の処理に戻る。
【0072】
他方、ステップS41において、通電切替タイミング監視部31は、通電切替カウンタの値が6と等しいか否かを判断する。通電切替カウンタの値が6と等しい場合には(YES)、ステップS42に進み、そうでない場合には(NO)、ステップS44に進む。
【0073】
ステップS41において通電切替カウンタの値が6と等しいと判断されるのは、
図3に示される時刻t32である。すなわち、この場合、ステップS42において、通電切替タイミング監視部31は、特別過電流の監視を開始する。すなわち、通電切替タイミング監視部31は、特別過電流割り込みを有効化する。また、通電切替タイミング監視部31は、過電流監視部32に信号を出力し、過電流監視部32においてモータ10の駆動電流が特別過電流閾値よりも大きいか否かの判断を開始させる。
【0074】
ステップS43において、通電切替タイミング監視部31は、位置信号の周期に基づいて、通電切替タイミングを設定する。すなわち、電気角で60度進んだタイミングにタイマ割り込みが生じるようにタイマを設定する。ステップS43が終了すると、ステップS34の処理が行われ、通電切替カウンタがインクリメントされる。これにより、通電切替カウンタの値は7となる。その後、
図4の処理に戻る。
【0075】
他方、ステップS41において通電切替カウンタの値が6と等しいと判断されないのは、
図3に示される時刻t32を過ぎて、その後タイマ割り込みが生じる時刻t34である。すなわち、この場合、ステップS44において、制御部3は、モータ10の通電をオフとし、モータ10の駆動を停止させる。
【0076】
ステップS45において、通電切替タイミング監視部31は、通電切替カウンタをクリアする。
【0077】
ステップS46において、制御部3は、モータ10をロック保護状態とする。なお、制御部3は、モータ10をロック保護状態としなくてもよい。ステップS46が終了すると、
図4の処理に戻る。
【0078】
図7は、通電パターンの強制切替動作が行われない場合の通電パターンと位置信号との関係を示す図である。
【0079】
図7においては、通電パターンの強制切替動作が行われない場合の動作の一例が示されている。時刻t81に予想タイミングが到来すると予想される場合において、位置信号の立ち上がりタイミングが検知されない場合、通電パターンは切り替えられないままとなる。例えば、第3通電パターンから第4通電パターンに切り替えられてから電気角で120度分の時間が経過した後の時刻t82までの間に位置信号の立ち上がりタイミングが検知されない場合にはモータ10の通電がオフとなるように構成されていたとしても、第4通電パターンでの通電が長くなるにつれて駆動電流が急激に大きくなることがある。このように過大な駆動電流が流れると、モータ10やモータ駆動制御装置1の回路部品に不具合が発生する可能性がある。
【0080】
これに対して、本実施の形態では、
図3に示されるように、位置信号の立ち上がりを検知していない状態で、位置信号の立ち上がりの予想タイミングt31より後の、時刻t32から時刻t34までの監視期間において駆動電流の値が特別過電流閾値以上になったとき(時刻t33)、位置信号の立ち上がりタイミングに基づいて設定される通常の通電パターンの切り替えタイミング(タイマ割り込みに基づく切替タイミング)にかかわらず、強制的に次の通電パターンに切替える強制切替動作が行われる。通電パターンの切り替えが行われることにより、モータ10の駆動電流の大きさは、一旦小さくなる。そのため、何らかの理由で位置信号の立ち上がりが検出されずに最終的にモータ10が停止する場合であっても、モータ10の駆動電流の大きさが特別過電流閾値を超えないようにすることができ、モータ10やモータ駆動制御装置1を保護することができる。
【0081】
強制的な通電パターンの切り替えが行われるのは、監視期間において駆動電流の値が特別過電流閾値以上になったときに限られる。したがって、意図しない場合に強制的な通電パターンの切り替えが行われることを防止できる。監視期間以外の期間においては、通常過電流閾値に基づいて過電流制御を行うことができる。
【0082】
監視期間は、予想タイミングより後に設定される。予想タイミングから時間を空けたタイミングで監視期間が開始するので、位置信号の立ち上がりの検出タイミングが何らかの要因で若干遅れた場合において、位置信号の立ち上がりが発生しているにもかかわらず強制的な通電パターンの切り替えが行われることを防止することができる。
【0083】
[その他]
【0084】
モータ駆動制御装置は、上述の実施の形態に示されるような回路構成に限定されない。本発明の目的に適合するように構成された、様々な回路構成が適用できる。例えば、上記の実施の形態の特徴点が部分的に組み合わされてモータ駆動制御装置が構成されていてもよい。上記の実施の形態において、いくつかの構成要素が設けられていなかったり、いくつかの構成要素が他の態様で構成されていてもよい。
【0085】
上述の実施の形態において、監視期間が開始されるタイミングや終了するタイミングは、適宜変更してもよい。監視期間が始まるタイミングは、位置信号の立ち上がりの予想される遅延時間(本実施形態では、電気角で30度分を想定)を考慮して、適切に設定すればよい。監視期間が始まるタイミングが早すぎると、何らかの要因で遅延してくる位置信号の立ち上がりが検出されるのを待たずに特別過電流割り込みが発生し、通常より早いタイミングで次のサイクルへの切り替えが行われてしまうという不具合が起こり得る。
【0086】
位置信号の立ち上がりが検出されない場合に、複数回以上の強制的な通電パターンの切り替えが行われるようにしてもよい。
【0087】
なお、強制的な通電パターンの切り替えが行われた後に行う処理については、特に限定しない。例えば、強制切替動作が行われた後に位置信号の立ち上がりが検出された場合、その検出タイミングに基づいて、次のサイクルの切り替えを行うようにしてもよい。あるいは、強制切替動作が行われた後に位置信号の立ち上がりが検出された場合、強制的にモータを停止するようにしてもよい。
【0088】
本実施形態では、期待期間を、予想タイミングから監視期間が終了する時刻までの期間としたが、期待期間はこれに限定されない。想定される位置信号の立ち上がりの遅延時間や想定されるモータ電流の発生具合などを考慮して、適切に設定すればよい。すなわち、期待期間が短いとモータが停止しやすくなり、期待期間が長いと電源電流が増加しやすくなる。
【0089】
特別過電流閾値と通常過電流閾値とは、同じであっても異なっていてもよい。
【0090】
本実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータは、ブラシレスモータに限られず、他の種類のモータであってもよい。
【0091】
また、モータの相数は、3相に限定されない。すなわち、通電パターンの数は、上述のものに限られない。また、考えられる通電パターン(通電される相の組み合わせ)のうち、一部の通電パターンのみが所定の順序で切り替えられてモータが駆動されるように構成されていてもよい。その場合、所定の順序で通電パターンがひととおり切り替えられる度に(1巡の切替制御が行われる度に)、位置信号の立ち上がりが検出されない場合、上述のような動作が行われるようにすればよい。
【0092】
制御部に入力される入力指令回転数は、モータ駆動制御装置の内部で生成されたものであってもよい。
【0093】
ロータ位置検出方法、回転数検出方法は特に問わない。ホール素子とは異なる検出器を用いて、モータの位置検出信号が得られるようにしてもよい。例えば、ホールIC等を用いてもよい。また、例えば、モータに設けるホール素子の数は、3個に限られない。1つのホール素子を用いて、いわゆる1センサ方式で駆動が行われればよい。
【0094】
上述のフローチャートなどは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではなく、例えば、各ステップの順番が変更されたり各ステップ間に他の処理が挿入されたりしてもよいし、処理を並列化してもよい。
【0095】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウエアによって行われるようにしても、ハードウエア回路を用いて行われるようにしてもよい。例えば、制御部は、マイコンに限定されない。制御部の内部の構成は、少なくとも一部がソフトウエアで処理されるようにしてもよい。
【0096】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
1 モータ駆動制御装置、2 インバータ回路、3 制御部(停止手段の一例)、4 プリドライブ回路、5 位置検出器(位置検出部の一例)、7 電流検出部、9 モータ駆動部、10 モータ、31 通電切替タイミング監視部(変化検知手段の一例、第1の切替手段の一例、第2の切替手段の一例)、32 過電流監視部(過電流制限手段の一例)、33 通電切替制御部、35 モータ制御部、Lu U相のコイル、Lv V相のコイル、Lw W相のコイル、C1 駆動制御信号、Ss 入力指令回転数、S1 実回転数情報、Sc 駆動指令信号、Q1,Q3,Q5 ハイサイドスイッチング素子、Q2,Q4,Q6 ローサイドスイッチング素子