(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】印刷装置およびインク供給方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
B41J2/175 301
B41J2/175 121
B41J2/175 501
B41J2/175 119
(21)【出願番号】P 2019026404
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】竹内 克説
(72)【発明者】
【氏名】種本 満
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-160699(JP,A)
【文献】特開平10-244690(JP,A)
【文献】特開2011-136426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0310143(US,A1)
【文献】実開平6-7945(JP,U)
【文献】特開2016-153199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯留するメインタンクと、
前記メインタンクを着脱可能に保持するタンク保持部と、
前記メインタンクから供給されたインクを貯留する中間タンクと、
前記中間タンクから供給されたインクを吐出する印刷ヘッドと、
前記メインタンクから前記中間タンクへインクを送るインク駆動部と、
前記中間タンクに貯留されるインクの量をインク残量として検出するインク量検出部と、
前記インク残量が第1基準量未満になると、前記メインタンクから前記中間タンクに前記インク駆動部によりインクを送ることで、前記第1基準量よりも多い通常量にまで前記インク残量を増加させる通常補給動作によって、前記中間タンクに貯留されるインクの量を制御する制御部と
を備え、
前記タンク保持部に保持される前記メインタンクが交換された場合には、前記制御部は、前記インク残量が前記第1基準量より少ない第2基準量未満になると、前記メインタンクから前記中間タンクに前記インク駆動部によりインクを送ることで、前記第2基準量にまで前記インク残量を増加させる臨時補給動作によって、前記中間タンクに貯留されるインクの量を制御する印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記メインタンクが交換された場合に、前記インク残量が前記第2基準量以上であれば前記通常補給動作によって前記中間タンクに貯留されるインクの量を制御し、前記インク残量が前記第2基準量未満であれば前記臨時補給動作によって前記中間タンクに貯留されるインクの量を制御する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第2基準量は、前記第1基準量の65%以上であって85%以下である請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記臨時補給動作を複数回実行した後は、前記通常補給動作によって前記中間タンクに貯留されるインクの量を制御する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、2回目以後の前記臨時補給動作を、前記インク残量が前記第2基準量より少ない第3基準量未満に減少したのをきっかけに実行する請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第3基準量は、
前記第2基準量と前記第3基準量との差分を、前記第2基準量で除した値が、25%以上50%以下となるような値である請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
インクを吐出する印刷ヘッドに供給されるインクを貯留する中間タンク内のインクの量をインク残量として検出する工程と、
前記中間タンクに送られるインクを貯留するメインタンクの交換の有無を判断する工程と、
前記メインタンクの交換前において、前記インク残量が第1基準量未満になると、前記メインタンクから前記中間タンクにインクを送ることで、前記第1基準量よりも多い通常量にまで前記インク残量を増加させる通常補給動作を実行する工程と、
前記メインタンクの交換後において、前記インク残量が前記第1基準量より少ない第2基準量未満になると、前記メインタンクから前記中間タンクにインクを送ることで、前記第2基準量にまで前記インク残量を増加させる臨時補給動作によって、前記中間タンクに貯留されるインクの量を制御する工程と
を備えるインク補給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着脱可能に保持されるメインタンクから中間タンクへインクを供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の印刷装置では、インクカートリッジからバッファタンクに供給されたインクを用いて、記録ヘッドがインクジェット方式で画像を印刷する。また、バッファタンク内のインクが減少すると、インクカートリッジからバッファタンクにインクが供給される。具体的には、バッファタンク内の液面の高さがレベルL3まで下がると、液面の高さがレベルL1に上昇するまでインクカートリッジからバッファタンクにインクが供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクカートリッジといったインクを貯留するメインタンクは、インクの消費に伴って適宜交換される。この際、交換前のメインタンク内のインクと、交換後のメインタンク内のインクとの間に、大きな特性(例えば、濃度)の差があると、印刷される画像の質がメインタンクの交換前後で急激に変化してしまう。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、メインタンクから中間タンクに送られたインクを印刷ヘッドにより吐出して画像を印刷する印刷技術において、メインタンクの交換前後における画像の質の急激な変化を抑制可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷装置は、インクを貯留するメインタンクと、メインタンクを着脱可能に保持するタンク保持部と、メインタンクから供給されたインクを貯留する中間タンクと、中間タンクから供給されたインクを吐出する印刷ヘッドと、メインタンクから中間タンクへインクを送るインク駆動部と、中間タンクに貯留されるインクの量をインク残量として検出するインク量検出部と、インク残量が第1基準量未満になると、メインタンクから中間タンクにインク駆動部によりインクを送ることで、第1基準量よりも多い通常量にまでインク残量を増加させる通常補給動作によって、中間タンクに貯留されるインクの量を制御する制御部とを備え、タンク保持部に保持されるメインタンクが交換された場合には、制御部は、インク残量が第1基準量より少ない第2基準量未満になると、メインタンクから中間タンクにインク駆動部によりインクを送ることで、第2基準量にまでインク残量を増加させる臨時補給動作によって、中間タンクに貯留されるインクの量を制御する。
【0007】
本発明に係るインク補給方法は、インクを吐出する印刷ヘッドに供給されるインクを貯留する中間タンク内のインクの量をインク残量として検出する工程と、中間タンクに送られるインクを貯留するメインタンクの交換の有無を判断する工程と、メインタンクの交換前において、インク残量が第1基準量未満になると、メインタンクから中間タンクにインクを送ることで、第1基準量よりも多い通常量にまでインク残量を増加させる通常補給動作を実行する工程と、メインタンクの交換後において、インク残量が第1基準量より少ない第2基準量未満になると、メインタンクから中間タンクにインクを送ることで、第2基準量にまでインク残量を増加させる臨時補給動作によって、中間タンクに貯留されるインクの量を制御する工程とを備える。
【0008】
このように構成された本発明(印刷装置、インク供給方法)では、メインタンクの交換前の通常時には、インク残量が第1基準量未満になると第1基準量よりも多い通常量にまでインク残量を増加させる通常補給動作により、メインタンクから中間タンクにインクが補給される。一方、メインタンクの交換後は、インク残量が第1基準量より少ない第2基準量未満になると第2基準量にまでインク残量を増加させる臨時補給動作によって、メインタンクから中間タンクにインクが補給される。
【0009】
つまり、メインタンクの交換後においては、交換前のメインタンクから供給されたインクが残存する中間タンクに対して、交換後のメインタンクからインクが補給される。この際、交換後のメインタンクから多量のインクが供給されると、中間タンクに貯留されるインクの特性が一気に変化して、画質の急激な変化が引き起こされるおそれがある。これに対して、本発明では、メインタンク交換後は、メインタンク交換前の第1基準量より少ない第2基準量まで中間タンク内のインク残量が増大すると、インクの補給を停止することで、交換後のメインタンクから中間タンクに供給されるインクの量を抑えている。その結果、メインタンクの交換前後における画像の質の急激な変化を抑制することが可能となっている。
【0010】
ちなみに、特許文献1においても、インクカートリッジ(メインタンク)の交換前後における交換前後の画質の急激な変化を抑制する技術が示されている。ただし、本発明は、特許文献1と異なる構成を具備することで、より有利な効果を奏することができる。この点について、次に詳述する。
【0011】
特許文献1では、上述の通り、通常時(すなわち、カートリッジの交換前)は、バッファタンク内の液面の高さがレベルL3まで下がると、液面の高さがレベルL1に上昇するまでインクカートリッジからバッファタンクにインクが供給される。一方、インクカートリッジの交換後では、バッファタンク内のインクの特性の急激な変化を抑制するために、通常時とは異なる態様でバッファタンクにインクが供給される。具体的には、レベルL3よりも高いレベルL2まで液面の高さが下がると、バッファタンク内の液面の高さがレベルL1まで上昇するまでインクカートリッジからバッファタンクにインクが供給される。つまり、通常時のレベルL3まで液面が下がる前に、早めにインクカートリッジからバッファタンクへインクを供給することで、交換前の古いインクに対して交換後の新しいインクが供給される量を抑えて、バッファタンク内のインクの特性の急激な変化を抑制している。
【0012】
ちなみに、インクカートリッジの交換は、ユーザーにより適宜のタイミングで実行される。そのため、インクカートリッジのインクが無くなった際に、インクカートリッジの交換が速やかに行われるとは限らない。これに対して、バッファタンクに貯留されたインクは印刷の実行に伴って減少し、バッファタンクの液面はやがてレベルL2にまで下がる。この時点までにインクカートリッジが交換されていないと、インクカートリッジからバッファタンクにインクを供給できないため、印刷を停止する必要がある。なぜなら、印刷の続行によりバッファタンクのインクがさらに減少してから、レベルL1までインクを供給したのでは、交換前の古いインクに対して交換後の新しいインクが多量に供給されることとなり、インクカートリッジの交換前後においてバッファタンク内のインクの特性が急激に変化してしまうからである。
【0013】
ただし、このレベルL2は、通常時のレベルL3よりも高く設定されている。つまり、インクカートリッジのインクが無くなってから、バッファタンクの液面がレベルL2まで下がるのに要する時間は比較的短い。そのため、印刷停止を回避するためには、インクカートリッジを速やかに交換する必要があり、ユーザーの負担が大きかった。
【0014】
これに対して、本発明では、メインタンクの交換後は、中間タンク内のインク残量が通常時の第1基準量より少ない第2基準量未満になると第2基準量にまでインク残量を増加させることで、メインタンクから中間タンクにインクが補給される(臨時補給動作)。つまり、メインタンクから中間タンクへのインクの補給のきっかけとなる第2基準量が少なく抑えられており、メインタンクのインクが無くなってから、第2基準量まで中間タンクのインク残量が減少するまでに要する時間を比較的長く確保することが可能となっている。その結果、ユーザーは、時間的な余裕を持ってメインタンクの交換を行うことができ、ユーザーの負担の軽減が可能となっている。
【0015】
また、制御部は、メインタンクが交換された場合に、インク残量が第2基準量以上であれば通常補給動作によって中間タンクに貯留されるインクの量を制御し、インク残量が第2基準量未満であれば臨時補給動作によって中間タンクに貯留されるインクの量を制御するように、印刷装置を構成しても良い。つまり、メインタンクの交換時の中間タンク内のインク残量が第2基準量以上であって、交換前のメインタンクから供給されたインクが中間タンクにおいて多量に残存している場合には、通常補給動作よって交換後のメインタンクから中間タンクにインクを供給しても、中間タンク内のインクの特性の急激な変化は引き起こされない。したがって、通常補給動作によってインクを補給することで、メインタンクの交換前後での画像の質の急激な変化を抑制できる。一方、メインタンクの交換時の中間タンク内のインク残量が第2基準量未満の場合には、臨時補給動作によってインクを補給することで、上述の理由により、メインタンクの交換前後での画像の質の急激な変化を抑制できる。
【0016】
また、第2基準量は、第1基準量の65%以上であって85%以下であるように、印刷装置を構成しても良い。このように第2基準量を設定することで、交換後のメインタンクから中間タンクに供給されるインクの量を適切に抑えて、メインタンクの交換前後における画像の質の急激な変化を抑制することができる。
【0017】
また、制御部は、臨時補給動作を複数回実行した後は、通常補給動作によって中間タンクに貯留されるインクの量を制御するように、印刷装置を構成しても良い。かかる構成では、交換前のメインタンクから中間タンクに供給されたインクに対して、交換後のメインタンクから中間タンクに供給されたインクを徐々に混合することができ、中間タンクに貯留されるインクの特性の変化を緩やかにし、メインタンクの交換前後における画像の質の急激な変化を抑制することができる。
【0018】
また、制御部は、2回目以後の臨時補給動作を、インク残量が第2基準量より少ない第3基準量未満に減少したのをきっかけに実行するように、印刷装置を構成しても良い。これによって、交換前のメインタンクから中間タンクに供給されたインクに対して、交換後のメインタンクから中間タンクに供給されたインクを徐々に混合することができる。
【0019】
また、第3基準量は、第2基準量と第3基準量との差分を、第2基準量で除した値が、25%以上50%以下となるような値であるように、印刷装置を構成しても良い。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、メインタンクから中間タンクに送られたインクを印刷ヘッドにより吐出して画像を印刷する印刷技術において、メインタンクの交換前後における画像の質の急激な変化を抑制可能とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す図。
【
図2】
図1の印刷装置で実行される動作の一例を示すフローチャート。
【
図3】通常補給モードの一例を示すフローチャート。
【
図4】混合補給モードの一例を示すフローチャート。
【
図5】混合補給モードにおける液面レベルの変化を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す図である。
図1において、ドットハッチングが付された範囲はインクの存在範囲を示す。印刷装置1は、装置全体を統括的に制御するコントローラー11を備える。コントローラー11は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random access memory)等で構成されたプロセッサーである。さらに、印刷装置1は、コントローラー11の指令に基づき、例えば音声、光あるいは文字等によりユーザーに報知を行うUI(User Interface)12を有する。
【0023】
また、印刷装置1は、印刷を実行可能なプリンター2を備える。プリンター2は、インクを貯留する円筒形状の中間タンクTiと、印刷ヘッド21と、中間タンクTiから印刷ヘッド21へ延設された配管22と、中間タンクTiと印刷ヘッド21との間で配管22に取り付けられたポンプ23とを有する。ポンプ23は、例えばダイアフラムポンプであり、配管22内のインクを駆動することで、中間タンクTiから配管22を介して印刷ヘッド21へインクを供給する。印刷ヘッド21は、ポンプ23により中間タンクTiから供給されたインクをインクジェット方式で吐出することで、紙あるいはフィルムといった印刷媒体にインクを着弾させて、画像を印刷する。なお、印刷ヘッド21がインクを吐出する量やタイミングおよびポンプ23によるインクの供給は、コントローラー11によって制御される。
【0024】
中間タンクTiに貯留されるインクの量、すなわちインク残量は、5段階の液面レベルLfull、Llv、Lmid、Llow、Lepyに基づき管理される。これらの液面レベル(すなわち、中間タンクTi内のインクの液面の高さ)は、次の大小関係
Lfull>Llv>Lmid>Llow>Lepy
を満たす。ここの例では、LmidはLlvの75%であり、LlowはLlvの50%であり、LepyはLlvの25%であり、これら液面レベルの比は、各液面レベルまで貯留されたインクの体積(残量)の比に相当する。ただし、これら液面レベルの具体的な値は、ここの例に限られない。
【0025】
これらの液面レベルのうち、4段階の液面レベルLfull、Llv、Lmid、Lepyのそれぞれに対しては、液面センサーS1、S2、S3、S4が対向する。液面センサーS1、S2、S3、S4のそれぞれは、例えば静電容量センサーであり、対向する液面レベルLfull、Llv、Lmid、Lepyにおいて中間タンクTi内にインクが存在するか否かを検出する。具体的には、液面センサーS1、S2、S3、S4は、対向する液面レベルLfull、Llv、Lmid、Lepyにインクが存在する場合には、オン信号をコントローラー11に出力し、インクが存在しない場合には、オフ信号をコントローラー11に出力する。したがって、コントローラー11は、液面センサーS1、S2、S3、S4の出力に基づき、中間タンクTi内のインク残量を確認することができる。また、コントローラー11は、液面センサーS3の出力がオンからオフに切り換わってから、ポンプ23が送ったインクの量が所定量に到達したことに基づき、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLowまで減少したことを確認できる。
【0026】
さらに、印刷装置1は、中間タンクTiよりも大きな容量を有してインクを貯留するメインタンクTmを着脱可能に保持するタンク保持部31と、タンク保持部31に装着されたメインタンクTmの有無を検出するタンクセンサー32とを備える。タンクセンサー32は、タンク保持部31にメインタンクTmが装着されている場合には、オン信号をコントローラー11に出力し、タンク保持部31にメインタンクTmが装着されていない場合には、オフ信号をコントローラー11に出力する。
【0027】
また、印刷装置1は、タンク保持部31に保持されたメインタンクTmからプリンター2の中間タンクTiにインクを送る送液ユニット4を備える。送液ユニット4は、メインタンクTmからプリンター2の中間タンクTiまで延設された配管41と、メインタンクTmと中間タンクTiとの間で配管41に取り付けられたポンプ42とを有する。ポンプ42は、例えばダイアフラムポンプであり、配管41内のインクを駆動することで、メインタンクTmから配管41を介して中間タンクTiにインクを送る。ポンプ42によるインクの供給は、コントローラー11によって制御される。
【0028】
配管41に対しては、エンプティーセンサー43が対向する。このエンプティーセンサー43は、例えば静電容量センサーであり、対向する配管41内にインクが存在するか否かを検出する。具体的には、エンプティーセンサー43は、配管41内にインクが存在する場合には、オン信号をコントローラー11に出力し、インクが存在しない場合には、オフ信号をコントローラー11に出力する。したがって、コントローラー11は、エンプティーセンサー43の出力がオン信号からオフ信号に切り換わったことに基づき、メインタンクTm内のインクが使いきられて、メインタンクTmが空になったことを確認できる。
【0029】
そして、コントローラー11は、タンクセンサー32、エンプティーセンサー43および液面センサーS1~S4等の検出結果に基づきポンプ42、23およびUI12を制御することで、以下に説明する動作を実行する。
【0030】
図2は
図1の印刷装置で実行される動作の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの各ステップは、コントローラー11の制御により実行される。ステップS101では、コントローラー11は、ユーザーがUI12を介して印刷開始指令を入力したか否かを判断する。そして、印刷開始指令の入力が確認されると(ステップS101で「YES」)、ポンプ23が始動されて、中間タンクTiから印刷ヘッド21へのインクの供給が開始され、印刷が開始される(ステップS102)。これによって、印刷ヘッド21はインクを吐出して、図示しない印刷媒体に画像を印刷することができる。
【0031】
次にコントローラー11は、ステップS102で印刷を開始した印刷装置1の状態が復旧モードであるか否かを判断する(ステップS103)。具体的には、前回の印刷を終了してから、ステップS102で今回の印刷を開始するまでに所定時間が経過している場合には、印刷装置1の状態は復旧モードであると判断され(ステップS103で「YES」)、ステップS108の混合補給モードにより、メインタンクTmから中間タンクTiへのインクの補給が実行される。なお、混合補給モードについては、
図4を用いて後に詳述する。一方、前回の印刷を終了してから、ステップS102で今回の印刷を開始するまでに所定時間が経過していない場合には、印刷装置1の状態は復旧モードではないと判断され(ステップS103で「NO」)、印刷開始後におけるメインタンクTmから中間タンクTiへのインクの供給は、ステップS104の通常補給モードにより実行される。
【0032】
図3は通常補給モードの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの各ステップは、コントローラー11の制御により実行される。ステップS201では、液面レベルLlvに対向する液面センサーS2の出力に基づき、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLlv未満に下降したか否かが判断される。そして、液面センサーS2の出力がオン信号からオフ信号に切り換わると、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLlv未満に下降したと判断され(ステップS201で「YES」)、ポンプ42の駆動が開始され、メインタンクTmから中間タンクTiへインクが補給される(ステップS202)。
【0033】
ステップS203では、液面レベルLfullに対向する液面センサーS1の出力に基づき、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLfullまで上昇したか否かが判断される。液面センサーS1の出力がオフ信号であり、中間タンクTi内のインクが液面レベルLfullに到達していない場合(ステップS203で「NO」の場合)には、エンプティーセンサー43の出力に基づき、メインタンクTmが空になったかが判断される(ステップS204)。メインタンクTmが空でない場合(ステップS204で「NO」の場合)には、ステップS202に戻り、ステップS203およびステップS204のいずれかで「YES」と判断されるまで、ステップS202~S204が繰り返される。
【0034】
ステップS203で、液面センサーS1の出力がオン信号に切り換わり、中間タンクTi内のインクが液面レベルLfullに到達した場合(ステップS203で「YES」の場合)には、ポンプ42の停止により、メインタンクTmから中間タンクTiへのインクの補給が停止される(ステップS205)。そして、ステップS201に戻り、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLlv未満に下降する度に、ステップS201~S205が繰り返される。
【0035】
中間タンクTi内のインクが液面レベルLfullに到達することなく、メインタンクTmが空になった場合(ステップS204で「YES」の場合)には、メインタンクTmを交換するように、UI12がユーザーに報知する(ステップS206)。そして、ステップS207において、ポンプ42が停止されて、メインタンクTmから中間タンクTiへのインクの補給が停止されると、
図2のステップS105に進む。
【0036】
ステップS105では、タンクセンサー32の出力に基づき、メインタンクTmが交換されたかが判断される。メインタンクTmの交換が確認されないと(ステップS105で「NO」)、液面レベルLepyに対向する液面センサーS4の出力に基づき、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLepy未満に下降したか否かが判断される(ステップS106)。液面センサーS4の出力がオフ信号である場合には、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLepy未満に下降し、中間タンクTiが空になったと判断され(すなわち、ステップS106で「YES」と判断され)、ステップS107に進む。ステップS107では、ポンプ23の停止により、中間タンクTiから印刷ヘッド21へのインクの供給が停止され、印刷が停止される。つまり、メインタンクTmの交換の前に中間タンクTiが空になると、印刷が停止される。
【0037】
なお、中間タンクTiの空を検知する具体的方法は適宜変更できる。例えば、ポンプP23の作動時間に基づいて中間タンクTiから印刷ヘッド21へのインク供給量を算出し、このインク供給量から中間タンクTiが空であることを検知してもよい。
【0038】
一方、中間タンクTiが空になる前にメインタンクTmの交換が確認されると(ステップS105で「YES」)、液面レベルLmidに対向する液面センサーS3の出力に基づき、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLmid未満であるか否かが判断される(ステップS109)。中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLmid以上である場合(ステップS109で「NO」の場合)には、ステップS104に戻り、メインタンクTm交換後におけるメインタンクTmから中間タンクTiへのインクの補給は、通常補給モードにより実行される。一方、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLmid未満である場合(ステップS109で「YES」の場合)には、メインタンクTm交換後におけるメインタンクTmから中間タンクTiへのインクの供給は、ステップS108の混合補給モードにより実行される。
【0039】
図4は混合補給モードの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの各ステップは、コントローラー11の制御により実行される。ステップS301では、ポンプ42の駆動が開始され、メインタンクTmから中間タンクTiへインクが補給される。ステップS302では、液面レベルLmidに対向する液面センサーS3の出力に基づき、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLmidまで上昇したか否かが判断される。液面センサーS3の出力がオフ信号からオン信号に切り換わると、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLmidまで上昇したと判断され(すなわち、ステップS302で「YES」と判断され)、ポンプ42の停止により、メインタンクTmから中間タンクTiへのインクの補給が停止される。
【0040】
こうして、メインタンクTmの交換後に、最初の中間タンクTiへの補給が完了すると、ステップS303で、補給回数Nが「1」に設定される。この補給回数Nは、メインタンクTmの交換後に、このメインタンクTmから中間タンクTiにインクの補給を行った回数である。
【0041】
ステップS304では、ポンプ23が中間タンクTiから印刷ヘッド21に供給したインクの量に基づき、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLmidから所定量Δ下降したか否かが判断される。この所定量Δは、液面レベルLmidと液面レベルLlowとの差に相当する。そして、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLmidから所定量Δ下降したと判断された場合(ステップS304で「YES」の場合)には、ステップS305に進む。
【0042】
ステップS305では、ポンプ42の駆動が開始され、メインタンクTmから中間タンクTiへインクが補給される。ステップS306では、液面レベルLmidに対向する液面センサーS3の出力に基づき、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLmidまで上昇したか否かが判断される。液面センサーS3の出力がオフ信号からオン信号に切り換わると、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLmidまで上昇したと判断され(すなわち、ステップS306で「YES」と判断され)、ポンプ42の停止により、メインタンクTmから中間タンクTiへのインクの補給が停止される。
【0043】
ステップS307では、補給回数Nがインクリメントされ(すなわち、1回増加され)、ステップS308では、補給回数Nが最大補給回数Nmaxに到達したかが判断される。最大補給回数Nmaxは、2以上の値であり、印刷装置1の出荷時などにコントローラー11のメモリーに設定されても良いし、UI12によってユーザーにより設定されても良い。後者の場合、ユーザーは任意の最大補給回数Nmaxを設定できる。補給回数Nが最大補給回数Nmax未満であれば、ステップS304に戻って、補給回数Nが最大補給回数Nmaxとなるまで(すなわち、ステップS308で「YES」となるまで)、ステップS304~S308が繰り返される。
【0044】
つまり、
図3に示した通常補給モードでは、中間タンクTiへのインクの補給は、中間タンクTiのインクの液面が液面レベルLlv未満に下降すると、中間タンクTiのインクの液面を液面レベルLfullまで上昇させることで実行される。これに対して、
図4に示した混合補給モードでは、メインタンクTmの交換後の最初のNmax回の中間タンクTiへのインクの補給は、中間タンクTiのインクの液面が液面レベルLmidから所定量Δ下降すると、中間タンクTiのインクの液面を液面レベルLmidまで上昇させることで実行される。
【0045】
中間タンクTiへのインクの補給がNmax回実行されると(ステップS308で「YES」)、ポンプ42が始動されて、メインタンクTmから中間タンクTiへのインクの補給が開始される(ステップS309)。ステップS310では、液面レベルLfullに対向する液面センサーS1の出力に基づき、中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLfullまで上昇したか否かが判断される。そして、液面センサーS1の出力がオン信号に切り換わり、中間タンクTi内のインクが液面レベルLfullに到達した場合(ステップS310で「YES」の場合)には、ポンプ42の停止により、メインタンクTmから中間タンクTiへのインクの補給が停止されて、
図2のステップS104に戻る。そして、以後の中間タンクTiへのインクの補給は、通常補給モードで実行される。
【0046】
以上に説明した実施形態では、メインタンクTmの交換前の通常時には、中間タンクTiでのインクの液面(すなわち、インク残量)が液面レベルLlv(第1基準量)未満になると液面レベルLlvよりも高い液面レベルLfull(通常量)にまでインクの液面を増加させる通常補給動作(ステップS201~S205)により、メインタンクTmから中間タンクTiにインクが補給される。一方、メインタンクTmの交換後は、中間タンクTiのインクの液面が液面レベルLlvよりも低い液面レベルLmid(第2基準量)未満になると液面レベルLmidにまでインクの液面を増加させる臨時補給動作(ステップS301~S302、ステップS304~S306)によって、メインタンクTmから中間タンクTiにインクが補給される。
【0047】
つまり、メインタンクTmの交換後においては、交換前のメインタンクTmから供給されたインクが残存する中間タンクTiに対して、交換後のメインタンクTmからインクが補給される。この際、交換後のメインタンクTmから多量のインクが供給されると、中間タンクTiに貯留されるインクの特性が一気に変化して、画質の急激な変化が引き起こされる。これに対して、この実施形態では、メインタンクTmの交換後は、液面レベルLlvより低い液面レベルLmidまで中間タンクTiのインクの液面が上昇すると、インクの補給を停止する。これによって、交換後のメインタンクTmから中間タンクTiに供給されるインクの量が抑えられている。その結果、メインタンクTmの交換前後における画像の質の急激な変化を抑制することが可能となっている。
【0048】
特に、この実施形態では、メインタンクTmの交換後の最初にメインタンクTmから中間タンクTiへインクを補給するきっかけとなる液面レベルLmidが、通常時のインク補給のきっかけを与える液面レベルLlvと比較して低く抑えられている。したがって、メインタンクTmのインクが無くなってから、液面レベルLmidまで中間タンクTiの液面が下降するまでに要する時間が比較的長く確保されている。その結果、ユーザーは、時間的な余裕を持ってメインタンクTmの交換を行うことができ、ユーザーの負担の軽減が可能となっている。
【0049】
また、メインタンクTmが交換された場合に、中間タンクTiの液面が液面レベルLmid以上(ステップS109で「NO」)であれば、通常補給動作(ステップS201~S205)によって中間タンクTiに貯留されるインクの量が制御される。一方、メインタンクTmが交換された場合に、中間タンクTiの液面が液面レベルLmid未満(ステップS109で「YES」)であれば、臨時補給動作(ステップS301~S302、ステップS304~S306)によって中間タンクTiに貯留されるインクの量が制御される。つまり、メインタンクTmの交換時の中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLmid以上であって、交換前のメインタンクTmから供給されたインクが中間タンクTiにおいて多量に残存している場合には、通常補給動作(ステップS201~S205)よって交換後のメインタンクTmから中間タンクTiにインクを供給しても、中間タンクTi内のインクの特性の急激な変化は引き起こされない。したがって、通常補給動作(ステップS201~S205)によってインクを補給することで、メインタンクTmの交換前後での画像の質の急激な変化を抑制できる。一方、メインタンクTmの交換時の中間タンクTi内のインクの液面が液面レベルLmid未満の場合には、臨時補給動作(ステップS301~S302、ステップS304~S306)によってインクを補給することで、上述の理由により、メインタンクTmの交換前後での画像の質の急激な変化を抑制できる。
【0050】
また、Nmax回(複数回)の臨時補給動作(ステップS301~S302、ステップS304~S306)が実行された後に、通常補給動作(ステップS201~S205)によって中間タンクTiに貯留されるインクの量が制御される。かかる構成では、交換前のメインタンクTmから中間タンクTiに供給されたインクに対して、交換後のメインタンクTmから中間タンクTiに供給されたインクを徐々に混合することができる。したがって、中間タンクTiに貯留されるインクの特性の変化を緩やかにし、メインタンクTmの交換前後における画像の質の急激な変化を抑制することができる。
【0051】
また、2回目以後の臨時補給動作(ステップS304~S306)は、インク残量が液面レベルLmidより少ない液面レベルLlow(第3基準量)未満に減少したのをきっかけに実行される。これによって、交換前のメインタンクTmから中間タンクTiに供給されたインクに対して、交換後のメインタンクTmから中間タンクTiに供給されたインクを徐々に混合することができる。
【0052】
さらに、中間タンクTiが空になった(すなわち、液面レベルLepyを下回った)と判断されると(ステップS106で「YES」)、印刷を停止した上で(ステップS107)、一連の処理を終了する。空になった中間タンクTiに向けて交換後のメインタンクTmからインクを補給する場合、中間タンクTiに向けて交換後のメインタンクTmから多量のインクが補給される。こうなると交換後のメインタンクTmから補給されるインクの混合割合が高くなり、中間タンクTiに貯留されるインクの特性が急激に変化するおそれがある。本実施形態では、これを防止するため、中間タンクTiが空になった後の印刷を停止している。
【0053】
以上に説明した実施形態では、印刷装置1が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、印刷ヘッド21が本発明の「印刷ヘッド」の一例に相当し、タンク保持部31が本発明の「タンク保持部」の一例に相当し、ポンプ42が本発明の「インク駆動部」の一例に相当し、メインタンクTmが本発明の「メインタンク」の一例に相当し、中間タンクTiが本発明の「中間タンク」の一例に相当し、液面センサーS1~S4およびコントローラー11(ポンプ23の送液量を監視する)が本発明の「インク量検出部」の一例に相当し、コントローラー11が本発明の「制御部」の一例に相当し、ステップS201~S205が本発明の「通常補給動作」の一例に相当し、ステップS301~S302およびステップS304~S306のそれぞれが本発明の「臨時補給動作」の一例に相当し、液面レベルLfullが本発明の「通常量」の一例に相当し、液面レベルLlvが本発明の「第1基準量」の一例に相当し、液面レベルLmidが本発明の「第2基準量」の一例に相当し、液面レベルLlowが本発明の「第3基準量」の一例に相当する。
【0054】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上述の通り、液面レベルLfull、Llv、Lmid、Llow、Lepyの比を適宜変更することができる。
【0055】
この際、液面レベルLmid(第2基準量)は、液面レベルLlv(第1基準量)の65%以上であって85%以下に設定しても良い。これによって、交換後のメインタンクTmから中間タンクTiに供給されるインクの量を適切に抑えて、メインタンクTmの交換前後における画像の質の急激な変化を抑制することができる。
【0056】
ここで、液面レベルLlow(第3基準量)の設定の仕方について説明する。
図5の参考図を参照する。
図5は混合補給モードにおける液面レベルの変化を説明するための模式図である。
【0057】
混合補給モードの開始時において、中間タンクTiに貯留されているインク量は液面レベルLmid(第2基準量)に相当する量(xリットルとする)である。また、1回の補給期間で中間タンクTiに供給されるインクの量は同期間における印刷ヘッド21へのインク供給を無視すれば液面レベルLmid(第2基準量)と液面レベルLlow(第3基準量)の差分(yリットルとする)に相当する量である。
【0058】
したがって、xリットルをyリットルで除算すれば、混合補給モードの開始時点で中間タンクTiに貯留されていたインクを全て新インク(交換後のインクタンクTmから補給されるインク)に置換するために必要なインク補給回数を得ることができる。
【0059】
中間タンクTi内のインクを徐々に新インクに置換することが可能なインク補給回数は例えば2~4回である。したがって、yリットルをxリットルの25%以上50%以下に設定すれば、インク補給回数2~4回で中間タンクTi内のインクを全て新インクに置換することができる。第3基準量をこのように設定すれば、混合補給モードの開始時点で中間タンクTiに貯留されていたインクを徐々に新インクに置換していくことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、着脱可能に保持されるメインタンクから中間タンクへ供給されたインクにより印刷を行う印刷技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…印刷装置
11…コントローラー(インク量検出部、制御部)
21…印刷ヘッド
31…タンク保持部
42…ポンプ(インク駆動部)
Tm…メインタンク
Ti…中間タンク
S1~S4…液面センサー(インク検出部)
S201~S205…通常補給動作
S301~S302…臨時補給動作
S304~S306…臨時補給動作
Lfull…液面レベル(通常量)
Llv…液面レベル(第1基準量)
Lmid…液面レベル(第2基準量)
Llow…液面レベル(第3基準量)