(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】印刷装置および乾燥方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2019053233
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】筒井 雄基
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-205793(JP,A)
【文献】特開2011-186119(JP,A)
【文献】特開2012-045764(JP,A)
【文献】特開2017-109376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状の印刷媒体にインクジェット方式で画像を印刷する印刷装置であって、
印刷媒体を長手方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送機構により搬送される印刷媒体の表面に向けてインクを吐出するヘッドと、
前記ヘッドよりも搬送経路の下流側において、印刷媒体に付着したインクを乾燥させる乾燥部と、
を備え、
前記乾燥部は、
印刷媒体の幅方向と平行に延びる回転軸を中心として回転するヒートローラと、
前記ヒートローラの内部に設けられた熱源と、
前記ヒートローラの外周面に対向して配置された円弧状の第1ガイドプレートと、
前記ヒートローラと前記第1ガイドプレートとの間の第1円弧状空間に気流を発生させる気流発生部と、
を有し、
印刷媒体は、前記ヒートローラの周囲の一部分である接触領域において、前記ヒートローラの外周面に接触し、
前記第1ガイドプレートは、前記ヒートローラの周囲の他の部分である非接触領域において、前記ヒートローラの外周面に沿って広が
り、
前記乾燥部は、
前記第1円弧状空間を通過した気体を、印刷媒体へ送る中継ダクト
をさらに備える、印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記中継ダクトは、前記第1円弧状空間を通過した気体を、前記接触領域へ送る、印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記乾燥部は、
前記ヒートローラの前記接触領域において、前記ヒートローラの外周面に対向して配置された円弧状の第2ガイドプレート
をさらに有し、
前記中継ダクトは、前記ヒートローラに支持される印刷媒体と前記第2ガイドプレートとの間の第2円弧状空間へ、気体を送る、印刷装置。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記中継ダクトは、前記第1円弧状空間を通過した気体を、前記ヒートローラよりも搬送経路の下流側において、印刷媒体へ送る、印刷装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の印刷装置であって、
前記乾燥部は、
前記第1円弧状空間から気体を吸引する吸引部
をさらに有し、
前記吸引部は、幅方向に配列された複数の吸引口を有し、
前記中継ダクトの上流側の端部が、前記吸引部の幅方向の両端部に接続され、
前記複数の吸引口の大きさが、幅方向の中央部から幅方向の両端部へ向かうにつれて、徐々に小さくなる、印刷装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の印刷装置であって、
前記第1ガイドプレートは、
前記第1円弧状空間の外側を覆うメインプレートと、
前記第1円弧状空間の幅方向の両端部を覆う一対のサイドプレートと、
を有する、印刷装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の印刷装置であって、
前記ヒートローラの回転の向きと、前記第1円弧状空間における気流の向きとが、互いに逆向きである、印刷装置。
【請求項8】
長尺帯状の印刷媒体にインクジェット方式で画像を印刷する印刷装置であって、
印刷媒体を長手方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送機構により搬送される印刷媒体の表面に向けてインクを吐出するヘッドと、
前記ヘッドよりも搬送経路の下流側において、印刷媒体に付着したインクを乾燥させる乾燥部と、
を備え、
前記乾燥部は、
印刷媒体の幅方向と平行に延びる回転軸を中心として回転するヒートローラと、
前記ヒートローラの内部に設けられた熱源と、
前記ヒートローラの外周面に対向して配置された円弧状の第1ガイドプレートと、
前記ヒートローラと前記第1ガイドプレートとの間の第1円弧状空間に気流を発生させる気流発生部と、
を有し、
印刷媒体は、前記ヒートローラの周囲の一部分である接触領域において、前記ヒートローラの外周面に接触し、
前記第1ガイドプレートは、前記ヒートローラの周囲の他の部分である非接触領域において、前記ヒートローラの外周面に沿って広がり、
前記第1円弧状空間へ導入される気体の温度は、前記ヒートローラの外周面の温度よりも低く、かつ、環境温度よりも高い、印刷装置。
【請求項9】
請求項8に記載の印刷装置であって、
前記乾燥部は、
前記熱源により加熱された気体を前記第1円弧状空間へ導入する導入ダクト
をさらに有する、印刷装置。
【請求項10】
長尺帯状の印刷媒体にインクジェット方式で画像を印刷する印刷装置において、印刷媒体を長手方向に搬送しつつ、印刷媒体に付着したインクを乾燥させる乾燥方法であって、
a)熱源を内蔵したヒートローラを回転させつつ、前記ヒートローラの外周面に印刷媒体を接触させる工程と、
b)印刷媒体に、加熱された気体を供給する工程と、
を有し、
前記工程a)では、
前記ヒートローラの周囲の一部分である接触領域において、前記ヒートローラの外周面に印刷媒体を接触させ、
前記工程b)では、
前記ヒートローラの周囲の他の部分である非接触領域において、前記ヒートローラにより加熱された気体を、印刷媒体に供給する、乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺帯状の印刷媒体にインクジェット方式で画像を印刷する印刷装置において、印刷媒体に付着したインクを乾燥させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺帯状の印刷用紙を長手方向に搬送しながら、印刷用紙へ向けてインクを吐出することにより画像を印刷する印刷装置が知られている。この種の印刷装置の中には、ヒートローラ方式の乾燥部を備えたものがある。ヒートローラ方式の乾燥部は、加熱されたヒートローラの表面に印刷用紙を接触させることにより、インクを加熱して乾燥させる。ヒートローラ方式の乾燥部を備えた従来の印刷装置については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヒートローラ方式の加熱部では、一連の印刷用紙を搬送しながら、ヒートローラの表面に印刷用紙を接触させる。このため、ヒートローラの全周に印刷用紙を接触させることはできない。すなわち、ヒートローラの周囲には、印刷用紙が接触する接触領域と、印刷用紙が通過しない非接触領域とが、存在する。非接触領域においては、ヒートローラの熱がインクの乾燥に有効に利用されていない、という問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、ヒートローラの非接触領域を有効に活用して、乾燥部のエネルギー効率を高めることができる印刷装置および乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、長尺帯状の印刷媒体にインクジェット方式で画像を印刷する印刷装置であって、印刷媒体を長手方向に搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送される印刷媒体の表面に向けてインクを吐出するヘッドと、前記ヘッドよりも搬送経路の下流側において、印刷媒体に付着したインクを乾燥させる乾燥部と、を備え、前記乾燥部は、印刷媒体の幅方向と平行に延びる回転軸を中心として回転するヒートローラと、前記ヒートローラの内部に設けられた熱源と、前記ヒートローラの外周面に対向して配置された円弧状の第1ガイドプレートと、前記ヒートローラと前記第1ガイドプレートとの間の第1円弧状空間に気流を発生させる気流発生部と、を有し、印刷媒体は、前記ヒートローラの周囲の一部分である接触領域において、前記ヒートローラの外周面に接触し、前記第1ガイドプレートは、前記ヒートローラの周囲の他の部分である非接触領域において、前記ヒートローラの外周面に沿って広がり、前記乾燥部は、前記第1円弧状空間を通過した気体を、印刷媒体へ送る中継ダクトをさらに備える。
【0008】
本願の第2発明は、第1発明の印刷装置であって、前記中継ダクトは、前記第1円弧状空間を通過した気体を、前記接触領域へ送る。
【0009】
本願の第3発明は、第2発明の印刷装置であって、前記乾燥部は、前記ヒートローラの前記接触領域において、前記ヒートローラの外周面に対向して配置された円弧状の第2ガイドプレートをさらに有し、前記中継ダクトは、前記ヒートローラに支持される印刷媒体と前記第2ガイドプレートとの間の第2円弧状空間へ、気体を送る。
【0010】
本願の第4発明は、第1発明の印刷装置であって、前記中継ダクトは、前記第1円弧状空間を通過した気体を、前記ヒートローラよりも搬送経路の下流側において、印刷媒体へ送る。
【0011】
本願の第5発明は、第1発明から第4発明までのいずれか1発明の印刷装置であって、前記乾燥部は、前記第1円弧状空間から気体を吸引する吸引部をさらに有し、前記吸引部は、幅方向に配列された複数の吸引口を有し、前記中継ダクトの上流側の端部が、前記吸引部の幅方向の両端部に接続され、前記複数の吸引口の大きさが、幅方向の中央部から幅方向の両端部へ向かうにつれて、徐々に小さくなる。
【0012】
本願の第6発明は、第1発明から第5発明までのいずれか1発明の印刷装置であって、前記第1ガイドプレートは、前記第1円弧状空間の外側を覆うメインプレートと、前記第1円弧状空間の幅方向の両端部を覆う一対のサイドプレートと、を有する。
【0013】
本願の第7発明は、第1発明から第6発明までのいずれか1発明の印刷装置であって、前記ヒートローラの回転の向きと、前記第1円弧状空間における気流の向きとが、互いに逆向きである。
【0014】
本願の第8発明は、長尺帯状の印刷媒体にインクジェット方式で画像を印刷する印刷装置であって、印刷媒体を長手方向に搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送される印刷媒体の表面に向けてインクを吐出するヘッドと、前記ヘッドよりも搬送経路の下流側において、印刷媒体に付着したインクを乾燥させる乾燥部と、を備え、前記乾燥部は、印刷媒体の幅方向と平行に延びる回転軸を中心として回転するヒートローラと、前記ヒートローラの内部に設けられた熱源と、前記ヒートローラの外周面に対向して配置された円弧状の第1ガイドプレートと、前記ヒートローラと前記第1ガイドプレートとの間の第1円弧状空間に気流を発生させる気流発生部と、を有し、印刷媒体は、前記ヒートローラの周囲の一部分である接触領域において、前記ヒートローラの外周面に接触し、前記第1ガイドプレートは、前記ヒートローラの周囲の他の部分である非接触領域において、前記ヒートローラの外周面に沿って広がり、前記第1円弧状空間へ導入される気体の温度は、前記ヒートローラの外周面の温度よりも低く、かつ、環境温度よりも高い。
【0015】
本願の第9発明は、第8発明の印刷装置であって、前記乾燥部は、前記熱源により加熱された気体を前記第1円弧状空間へ導入する導入ダクトをさらに有する。
【0016】
本願の第10発明は、長尺帯状の印刷媒体にインクジェット方式で画像を印刷する印刷装置において、印刷媒体を長手方向に搬送しつつ、印刷媒体に付着したインクを乾燥させる乾燥方法であって、a)熱源を内蔵したヒートローラを回転させつつ、前記ヒートローラの外周面に印刷媒体を接触させる工程と、b)印刷媒体に、加熱された気体を供給する工程と、を有し、前記工程a)では、前記ヒートローラの周囲の一部分である接触領域において、前記ヒートローラの外周面に印刷媒体を接触させ、前記工程b)では、前記ヒートローラの周囲の他の部分である非接触領域において、前記ヒートローラにより加熱された気体を、印刷媒体に供給する。
【発明の効果】
【0017】
本願の第1発明~第9発明によれば、ヒートローラの非接触領域と第1ガイドプレートとの間の第1円弧状空間に気体を流すことにより、温風を生成して、乾燥部の他の箇所で利用することができる。これにより、ヒートローラの非接触領域を有効に活用して、乾燥処理のエネルギー効率を高めることができる。
【0018】
特に、本願の第1発明~第4発明によれば、ヒートローラの非接触領域により生成された温風を、印刷媒体へ送る。これにより、印刷媒体に付着したインクを、効率よく乾燥させることができる。
【0019】
特に、本願の第5発明によれば、第1円弧状空間から吸引部への気体の吸引量を、幅方向に均一化できる。これにより、例えば、幅方向の両端部付近における気体の吸引量が極端に多くなって、加熱が不十分なまま、気体が吸引されることを抑制できる。したがって、第1円弧状空間から中継ダクトへ、十分に加熱された温風を送ることができる。
【0020】
特に、本願の第6発明によれば、第1円弧状空間を流れる気体の拡散が抑制される。これにより、第1円弧状空間を流れる気体を、効率よく加熱することができる。
【0021】
特に、本願の第7発明によれば、気体が第1円弧状空間を通過する間に、ヒートローラの外周面のより多くの面に、気体が接触する。その結果、第1円弧状空間において、より効率よく温風を生成することができる。
【0022】
特に、本願の第8発明によれば、第1円弧状空間に環境温度よりも高温の気体を導入することで、ヒートローラの温度低下を抑制できる。
【0023】
特に、本願の第9発明によれば、熱源からの熱を有効に利用できる。
【0024】
また、本願の第10発明によれば、ヒートローラの非接触領域において加熱された気体を、印刷媒体に供給する。これにより、ヒートローラの非接触領域を有効に活用して、乾燥処理のエネルギー効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図3】制御部と印刷装置内の各部との電気的接続を示したブロック図である。
【
図4】印刷装置の乾燥部の付近を、幅方向の一方側から見た図である。
【
図5】
図4のV-V位置から見たヒートローラおよび第1ガイドプレートの断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る印刷装置の乾燥部の付近を、幅方向の一方側から見た図である。
【
図8】第3実施形態に係る印刷装置の乾燥部の付近を、幅方向の一方側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
<1.第1実施形態>
<1-1.印刷装置の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る印刷装置1の構成を示した図である。この印刷装置1は、長尺帯状の印刷媒体である印刷用紙9を搬送しつつ、印刷用紙9の表面にインクジェット方式で画像を印刷する装置である。
図1に示すように、印刷装置1は、搬送機構10、4つのヘッドユニット20、乾燥部30、および制御部40を備えている。搬送機構10、4つのヘッドユニット20、および乾燥部30は、印刷装置1の外装ハウジング100の内部に収容されている。
【0028】
搬送機構10は、印刷用紙9をその長手方向に沿う搬送方向に搬送するための機構である。本実施形態の搬送機構10は、巻き出しローラ11、複数の搬送ローラ12、および巻き取りローラ13を有する。搬送機構10の一部のローラには、動力源となるモータ(図示省略)が連結されている。モータを動作させると、印刷用紙9は、巻き出しローラ11から繰り出され、複数の搬送ローラ12により構成される搬送経路に沿って搬送される。各搬送ローラ12は、水平軸を中心として回転することによって、印刷用紙9を搬送経路の下流側へ案内する。また、搬送後の印刷用紙9は、巻き取りローラ13へ回収される。
【0029】
なお、搬送機構10のうちの一部分が、他の部分から独立した装置となっていてもよい。例えば、搬送機構10のうち、巻き出しローラ11を含む一部分や、巻き取りローラ13を含む一部分が、搬送機構10の他の部分とは別体の装置となっていてもよい。
【0030】
4つのヘッドユニット20は、搬送機構10により搬送される印刷用紙9に対して、インクを吐出するためのユニットである。この印刷装置1は、印刷用紙9が4つのヘッドユニット20の下方を1回だけ通過する間に、各ヘッドユニット20からインクの液滴を吐出して、印刷用紙9に画像を印刷する、いわゆるワンパス方式の印刷装置である。
図1に示すように、印刷用紙9は、4つのヘッドユニット20の下方において、ヘッドユニット20の配列方向に沿って、略水平に移動する。このとき、印刷用紙9の印刷面は、上方(ヘッドユニット20側)に向けられている。4つのヘッドユニット20は、多色画像の色成分となるブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)の各色のインクの液滴(以下、単に「インク滴」と称する)を、印刷用紙9の印刷面に、それぞれ吐出する。
【0031】
4つのヘッドユニット20は、互いに吐出するインクの色が異なるものの、構造自体ほぼ同等である。
図2は、1つのヘッドユニット20の下面図である。
図2に示すように、本実施形態のヘッドユニット20は、筐体21と、筐体21に固定された2つのヘッド22とを有する。2つのヘッド22は、それぞれ、筐体21の下面に露出した吐出面を有する。また、
図2に示すように、2つのヘッド22は、搬送方向の位置をずらして配置され、かつ、2つのヘッド22で、印刷用紙9の幅方向(搬送方向に直交する水平方向)の全域をカバーするように、幅方向の位置もずらして配置されている。
【0032】
また、
図2中に拡大して示したように、各ヘッド22の下面には、複数のノズル221が規則的に配列されている。複数のノズル221は、互いに幅方向の位置をずらして配列され、印刷用紙9上の1ピクセル幅の領域に対して、1つのノズル221が割り当てられている。印刷時には、各ヘッド22の複数のノズル221から、印刷用紙9の印刷面へ向けて、インク滴が吐出される。その結果、4つのヘッドユニット20が、それぞれ、印刷用紙9の印刷面に単色画像を印刷する。そして、4つの単色画像の重ね合わせによって、印刷用紙9の印刷面に多色画像が形成される。
【0033】
なお、1つのヘッドユニット20に含まれるヘッド22の数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、印刷装置1が有するヘッドユニット20の数は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。例えば、印刷装置1は、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローの各色のインクを吐出する4つのヘッドユニット20に加えて、特色のインクを吐出するヘッドユニットをさらに備えていてもよい。
【0034】
乾燥部30は、印刷用紙9に付着したインクを乾燥させるための処理部である。乾燥部30は、4つのヘッドユニット20よりも搬送経路の下流側に配置されている。
図1に示すように、乾燥部30は、ヒートローラ31と、ヒートローラ31の内部に設けられたハロゲンランプ32とを有する。ヒートローラ31は、搬送ローラ12よりも外径の大きい円筒状のローラである。ヒートローラ31は、印刷用紙9の幅方向と平行に延びる回転軸を中心として回転する。ハロゲンランプ32は、ヒートローラ31を加熱するための熱源である。ハロゲンランプ32に駆動電流が供給されると、ハロゲンランプ32が発熱することによって、ヒートローラ31が加熱される。
【0035】
印刷用紙9は、4つのヘッドユニット20からのインクの吐出を受けた後、乾燥部30へ搬入される。乾燥部30では、ヒートローラ31が、印刷用紙9を支持しつつ回転することによって、印刷用紙9を搬送する。このとき、ヒートローラ31の外周面は、印刷用紙9の裏面(印刷面とは反対側の面)に接触する。そして、ハロゲンランプ32によってヒートローラ31に蓄積された熱が、ヒートローラ31の外周面から印刷用紙9に伝導する。その結果、印刷用紙9の印刷面に付着したインクから溶媒が気化して、インクが乾燥する。
【0036】
なお、乾燥部30のより詳細な構成については、後述する。
【0037】
制御部40は、印刷装置1内の各部を動作制御するための処理部である。
図1中に概念的に示したように、制御部40は、CPU等のプロセッサ41、RAM等のメモリ42、およびハードディスクドライブ等の記憶部43を有するコンピュータにより構成されている。記憶部43には、後述する乾燥処理を含む印刷処理を実行するためのコンピュータプログラムPがインストールされている。
【0038】
図3は、制御部40と、印刷装置1内の各部との電気的接続を示したブロック図である。
図3に示すように、制御部40は、上述した搬送機構10、4つのヘッドユニット20、および乾燥部30(ヒートローラ31、ハロゲンランプ32、後述する第1ファン37、第2ファン38、および第3ファン39を含む)と、それぞれ通信可能に接続されている。制御部40は、記憶部43に記憶されたコンピュータプログラムPをメモリ42に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPに基づいて、プロセッサ41が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、印刷装置1における印刷処理が進行する。
【0039】
<1-2.乾燥部の構成>
続いて、乾燥部30のより詳細な構成について説明する。
図4は、印刷装置1の乾燥部30の付近を、幅方向の一方側から見た図である。
【0040】
ヒートローラ31は、外装ハウジング100の内部に設けられた一対の側壁に、ベアリングを介して回転自在に支持される。ハロゲンランプ32は、ヒートローラ31の回転軸Oに沿って配置される柱状の熱源である。印刷処理の実行時には、制御部40からハロゲンランプ32に、駆動電流が供給される。これにより、ハロゲンランプ32が発光・発熱して、ヒートローラ31が加熱される。
【0041】
以下では、ヒートローラ31の周囲のうち、印刷用紙9が通過する角度範囲を「接触領域A1」と称する。また、ヒートローラ31の周囲のうち、印刷用紙9が通過しない角度範囲を「非接触領域A2」と称する。
図4の例では、ヒートローラ31の周囲のうち、回転軸Oを中心とする約180°の範囲が、接触領域A1となっている。4つのヘッドユニット20の下方を通過した印刷用紙9は、接触領域A1において、ヒートローラ31の外周面に接触する。そして、この接触領域A1において、印刷用紙9に付着したインク滴が、ヒートローラ31からの熱を受ける。これにより、インク滴が乾燥して、印刷用紙9の印刷面にインクが定着する。
【0042】
また、
図4に示すように、本実施形態の乾燥部30は、第1ガイドプレート33、第2ガイドプレート34、中継ダクト35、排気ダクト36、第1ファン37、第2ファン38、および第3ファン39を有する。
【0043】
第1ガイドプレート33は、ヒートローラ31の周囲の非接触領域A2に配置された、円弧状のプレートである。
図5は、
図4のV-V位置から見たヒートローラ31および第1ガイドプレート33の断面図である。
図5に示すように、第1ガイドプレート33は、メインプレート331と、一対のサイドプレート332とを有する。メインプレート331は、ヒートローラ31の外周面に対向して配置され、ヒートローラ31の外周面に沿って広がる。一対のサイドプレート332は、メインプレート331の幅方向の両端部から、半径方向の内側へ向けて延びる。
【0044】
ヒートローラ31と第1ガイドプレート33との間には、ヒートローラ31の外周面に沿った第1円弧状空間330が介在する。メインプレート331は、第1円弧状空間330の外側を覆う。一対のサイドプレート332は、第1円弧状空間330の幅方向の両端を覆う。
【0045】
第2ガイドプレート34は、ヒートローラ31の周囲の接触領域A1に配置された、円弧状のプレートである。第2ガイドプレート34は、第1ガイドプレート33と同様に、メインプレートと、一対のサイドプレートとを有する。メインプレートは、ヒートローラ31の外周面に支持される印刷用紙9の印刷面に対向して配置され、ヒートローラ31の外周面に沿って広がる。一対のサイドプレートは、メインプレートの幅方向の両端部から、半径方向の内側へ向けて延びる。
【0046】
接触領域A1においてヒートローラ31の外周面に支持される印刷用紙9と、第2ガイドプレート34との間には、ヒートローラ31の外周面に沿った第2円弧状空間340が介在する。第2ガイドプレート34のメインプレートは、第2円弧状空間340の外側を覆う。第2ガイドプレート34の一対のサイドプレートは、第2円弧状空間340の幅方向の両端を覆う。
【0047】
中継ダクト35は、第1円弧状空間330と第2円弧状空間340との間を繋ぐ筒状の部材である。中継ダクト35の上流側の端部は、第1吸引部351を介して、第1ガイドプレート33に接続されている。中継ダクト35の下流側の端部は、第2ガイドプレート34に接続されている。中継ダクト35の内部空間は、第1円弧状空間330を通過した気体を、第2円弧状空間340へ送るための流路となる。なお、中継ダクト35における気体の温度低下を抑制するために、中継ダクト35は、断熱材により被覆されていてもよい。
【0048】
図6は、第1吸引部351の斜視図である。第1吸引部351は、第1円弧状空間330と中継ダクト35とを繋ぐ中空の部材である。
図6に示すように、第1吸引部351の第1円弧状空間330側の面には、複数のスリット状の吸引口352が設けられている。複数の吸引口352は、幅方向に間隔をあけて配列されている。中継ダクト35の上流側の端部は、2本に分岐して、第1吸引部351の幅方向の両端部に設けられた開口353に、それぞれ接続される。
【0049】
第1吸引部351は、中継ダクト35からの吸引力によって、第1円弧状空間330の気体を吸引する。このため、単位面積あたりの気体の吸引力は、第1吸引部351の幅方向の中央付近よりも、第1吸引部351の幅方向の両端部付近の方が大きくなる。しかしながら、
図6に示すように、本実施形態では、複数の吸引口352の大きさが、幅方向の中央部から幅方向の両端部へ向かうにつれて、徐々に小さくなっている。このため、上述した吸引力の差があるにも拘わらず、幅方向の中央付近の吸引口352における気体の吸引量と、幅方向の両端部付近の吸引口352における気体の吸引量とは、略均一化される。
【0050】
排気ダクト36は、第2円弧状空間340と外装ハウジング100の外部空間とを繋ぐ筒状の部材である。排気ダクト36の上流側の端部は、上述した第1吸引部351と同様の第2吸引部361を介して、第2ガイドプレート34に接続されている。排気ダクト36の下流側の端部は、外装ハウジング100の外部へ露出する。排気ダクト36の内部空間は、第2円弧状空間340を通過した気体を、外装ハウジング100の外部へ排出するための流路となる。
【0051】
第1ファン37は、第1ガイドプレート33の周方向(ヒートローラ31の回転軸Oを中心とする回転方向)の一端部付近に配置されている。第2ファン38は、中継ダクト35の下流側の端部付近に配置されている。第3ファン39は、排気ダクト36の下流側の端部付近に配置されている。印刷処理の実行時には、制御部40から供給される電流により、これらの第1ファン37、第2ファン38、および第3ファン39が回転する。そうすると、外装ハウジング100内の気体(例えば空気)が、第1ファン37を介して第1円弧状空間330へ導入される。そして、第1円弧状空間330から、第1吸引部351、中継ダクト35、第2円弧状空間340、第2吸引部361、および排気ダクト36を通って、外装ハウジング100の外部へ向かう気流が形成される。
【0052】
すなわち、本実施形態では、第1ファン37、第2ファン38、および第3ファン39の3つのファンが、第1円弧状空間330から排気ダクト36までの流路に気流を発生させる気流発生部となる。ただし、気流発生部を構成するファンの数は、3つに限らず、1~2個、あるいは、4個以上であってもよい。また、各ファンの位置も、
図4の例とは異なる位置であってもよい。
【0053】
第1円弧状空間330を流れる気体は、ヒートローラ31の熱により加熱される。これにより、第1円弧状空間330を流れる気体の温度が上昇する。また、気体の温度上昇に伴い、気体の湿度が低下する。加熱後の気体は、外装ハウジング100内の他の部分の気体の温度よりも高く、ヒートローラ31の外周面の温度よりも低い温度の温風となる。すなわち、ヒートローラ31の外周面のうち、印刷用紙9と接触しない非接触領域A2の部分を利用して、温風が生成される。
【0054】
特に、本実施形態では、第1円弧状空間330の幅方向の両端部が、サイドプレート332に覆われている。このため、第1円弧状空間330を流れる気体の、幅方向の外側への拡散が抑制される。これにより、第1円弧状空間330を流れる気体が、効率よく加熱される。
【0055】
また、本実施形態では、ヒートローラ31の回転の向きと、第1円弧状空間330に形成される気流の向きとが、互いに逆向きである。このようにすれば、気体が第1円弧状空間330を通過する間に、ヒートローラ31の外周面のより多くの面に接触する。その結果、第1円弧状空間330において、より効率よく温風を生成することができる。
【0056】
また、上述の通り、本実施形態では、第1円弧状空間330から気体を吸引する第1吸引部351の複数の吸引口352の大きさが、幅方向の中央部から幅方向の両端部へ向かうにつれて、徐々に小さくなっている。これにより、第1円弧状空間330から第1吸引部351への気体の吸引量が、幅方向に均一化されている。このようにすれば、例えば、幅方向の両端部付近における気体の吸引量が極端に多くなって、加熱が不十分なまま、気体が吸引されることを抑制できる。したがって、第1円弧状空間330から中継ダクト35へ、十分に加熱された温風を送ることができる。
【0057】
第1円弧状空間330において生成された温風は、第1円弧状空間330から、第1吸引部351および中継ダクト35の内部を通って、第2円弧状空間340へ送られる。そして、接触領域A1においてヒートローラ31の外周面に支持される印刷用紙9の印刷面に、当該温風が供給される。このため、印刷用紙9の印刷面に付着したインク滴は、ヒートローラ31からの熱だけではなく、温風からの熱も受ける。これにより、インク滴からの溶媒の蒸発が促進される。また、上述の通り、温風の湿度は低いため、インク中の溶媒は、より積極的に温風中へ蒸発する。その結果、印刷用紙9の印刷面に付着したインク滴を、効率よく乾燥させることができる。
【0058】
第2円弧状空間340を通過した温風は、インク滴から蒸発した溶媒の蒸気により、その湿度が上昇している。この高湿の温風は、第2吸引部361および排気ダクト36を通って、外装ハウジング100の外部へ排出される。このように、乾燥に使用した温風を、外装ハウジング100の外部へ排出すれば、外装ハウジング100の内部空間において、気体の湿度が上昇することを抑制できる。したがって、第1円弧状空間330へ導入される気体を、低湿の状態に維持することができる。これにより、乾燥部30におけるインク滴の乾燥効率をさらに高めることができる。
【0059】
以上のように、本実施形態の印刷装置1では、印刷用紙9が通過しない非接触領域A2において、ヒートローラ31と第1ガイドプレート33との間の第1円弧状空間330に気体を流すことにより、温風を生成する。そして、生成された温風を、印刷用紙9の印刷面に付着したインク滴の乾燥を促進させるために利用する。これにより、ヒートローラ31の非接触領域A2を有効に活用して、乾燥部30における乾燥処理のエネルギー効率を高めることができる。
【0060】
<2.第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図7は、第2実施形態に係る印刷装置1の乾燥部30の付近を、幅方向の一方側から見た図である。
【0061】
図7の印刷装置1の乾燥部30は、第2ガイドプレート34に代えて、一対の第3ガイドプレート51を有する。一対の第3ガイドプレート51は、印刷用紙9の搬送経路におけるヒートローラ31よりも下流側の位置おいて、印刷用紙9の印刷面と裏面とに、それぞれ対向して配置される。また、印刷用紙9の幅方向の両側には、一対の第3ガイドプレート51を繋ぐサイドプレート(図示省略)が配置されている。一対の第3ガイドプレート51と、一対のサイドプレートとに囲まれた空間は、印刷用紙9が通過可能な層状空間510となる。
【0062】
図7に示すように、第3ガイドプレート51の上流側の端部は、中継ダクト35の下流側の端部に接続される。また、第3ガイドプレート51の下流側の端部は、排気ダクト36の上流側の端部に接続される。
【0063】
印刷処理の実行時には、制御部40から供給される電流により、第1ファン37、第2ファン38、および第3ファン39が回転する。そうすると、外装ハウジング100内の気体(例えば空気)が、第1ファン37を介して第1円弧状空間330へ導入される。そして、第1円弧状空間330から、第1吸引部351、中継ダクト35、層状空間510、第2吸引部361、および排気ダクト36を通って、外装ハウジング100の外部へ向かう気流が形成される。
【0064】
第1円弧状空間330において生成された温風は、第1円弧状空間330から、第1吸引部351および中継ダクト35の内部を通って、層状空間510へ送られる。そして、層状空間510を通過する印刷用紙9の印刷面および裏面に、当該温風が供給される。このため、ヒートローラ31を通過した印刷用紙9に付着したインク滴の乾燥が、もし不十分であったとしても、そのインク滴は、層状空間510内において、さらに温風により乾燥される。したがって、印刷用紙9に付着したインク滴を、より確実に乾燥させることができる。
【0065】
<3.第3実施形態>
続いて、本発明の第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図8は、第3実施形態に係る印刷装置1の乾燥部30の付近を、幅方向の一方側から見た図である。
【0066】
図8の印刷装置1の乾燥部30は、第1実施形態の構成に加えて、導入ダクト52を有する。導入ダクト52の上流側の端部は、ヒートローラ31の内部のハロゲンランプ32の付近へ向けて開口している。導入ダクト52の下流側の端部は、第1ファン37を介して、第1ガイドプレート33の上流側の端部に接続されている。
【0067】
この実施形態では、第1ファン37を回転させると、ハロゲンランプ32により加熱された気体が、導入ダクト52を通って、第1円弧状空間330へ導入される。すなわち、ヒートローラ31の外周面の温度よりも低く、かつ、環境温度よりも高い温度に、予め加熱された気体が、第1円弧状空間330へ導入される。このようにすれば、第1円弧状空間330へ未加熱の気体を導入する場合よりも、効率よく温風を生成できる。また、ハロゲンランプ32の余熱を有効に活用することができる。また、第1円弧状空間330へ環境温度よりも高温の気体を導入することで、ヒートローラ31の温度低下を抑制できる。
【0068】
<4.変形例>
以上、本発明の第1実施形態~第3実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0069】
上記の実施形態では、ヒートローラの熱源として、ハロゲンランプを用いていた。しかしながら、ハロゲンランプに代えて、他の発熱体を熱源として用いてもよい。
【0070】
また、上記の実施形態では、印刷装置が備えるヒートローラの数は1つであった。しかしながら、印刷装置が備えるヒートローラの数は、2つ以上であってもよい。印刷用紙の搬送経路上に、2つ以上のヒートローラが連続して配置される場合、各ヒートローラにおいて接触領域を広くとることが、より困難となる。したがって、上記の実施形態のように、非接触領域を有効に活用して、乾燥処理のエネルギー効率を高めることが、より重要となる。
【0071】
また、上記の実施形態の印刷装置は、印刷媒体としての印刷用紙に画像を印刷するものであった。しかしながら、本発明における印刷媒体は、一般的な紙以外のシート状の印刷媒体(例えば、樹脂製のフィルム等)であってもよい。
【0072】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 印刷装置
9 印刷用紙
10 搬送機構
11 巻き出しローラ
12 搬送ローラ
13 巻き取りローラ
20 ヘッドユニット
21 筐体
22 ヘッド
30 乾燥部
31 ヒートローラ
32 ハロゲンランプ
33 第1ガイドプレート
34 第2ガイドプレート
35 中継ダクト
36 排気ダクト
37 第1ファン
38 第2ファン
39 第3ファン
40 制御部
51 第3ガイドプレート
52 導入ダクト
100 外装ハウジング
330 第1円弧状空間
331 メインプレート
332 サイドプレート
340 第2円弧状空間
351 第1吸引部
352 吸引口
353 開口
361 第2吸引部
510 層状空間
A1 接触領域
A2 非接触領域