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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】車載用バッテリの温調装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/633 20140101AFI20230214BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20230214BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20230214BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230214BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230214BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230214BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/6568
H01M10/6556
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/48 Z
H01M10/48 301
B60K11/04 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019095248
(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2020191203
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】橋本 孝
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-2797(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0134125(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00-15/10
H01M 10/42-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが収納された電池モジュールと、
前記電池モジュールの下面に配設され、前記電池セルを温調する温調用流体が流れる温調プレートと、
前記温調プレートと連結され、前記温調用流体を循環させる流体循環管路と、
前記流体循環管路に配設され、前記温調用流体を圧送するポンプと、
前記ポンプと前記温調プレートの流入口との間の前記流体循環管路に配設され、前記温調用流体に脈動を生成する脈動生成機構と、
前記温調プレートの流出口側の前記流体循環管路に配設され、前記温調用流体に含まれる空気を検出する空気検出機構と、
前記空気検出機構からの検出結果に基づき、前記脈動生成機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部が、前記検出結果から前記温調用流体に前記空気が含まれていると判定した場合に、前記脈動生成機構を稼働させ、前記温調用流体の流れに変化を加えることを特徴とする車載用バッテリの温調装置。
【請求項2】
前記脈動生成機構は、前記温調用流体を貯蔵するタンクと、前記タンクの流入口またはその近傍の前記流体循環管路に配設される第1の電磁弁と、前記タンクの流出口またはその近傍の前記流体循環管路に配設される第2の電磁弁と、を有し、
前記制御部は、前記第1の電磁弁を開状態とすると共に前記第2の電磁弁を閉状態とした後、前記ポンプを稼働させることで、前記タンク内の前記温調用流体に加わる圧力を調整することを特徴とする請求項1に記載の車載用バッテリの温調装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記タンク内の前記温調用流体に圧力が加えられた状態にて、前記第1の電磁弁を閉状態とした後、前記第2の電磁弁の開閉動作を繰り返すことで、前記温調用流体に脈動を生成することを特徴とする請求項2に記載の車載用バッテリの温調装置。
【請求項4】
前記空気検出機構は、前記流体循環管路に配設された集音センサと、前記集音センサにて集音した前記温調用流体の流れる音を用いて前記温調用流体に前記空気が含まれているか、否かを判定する流音判定部と、を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載用バッテリの温調装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記温調用流体に前記空気が含まれているか、否かを判定するための判定音を予め記憶し、
前記流音判定部は、前記判定音と前記温調用流体の前記流れる音とを対比し、前記温調用流体に前記空気が含まれているか、否かを判定することを特徴とする請求項4に記載の車載用バッテリの温調装置。
【請求項6】
前記流音判定部は、前記温調用流体の前記流れる音の音圧を用いて、前記温調用流体に前記空気が含まれているか、否かを判定することを特徴とする請求項4に記載の車載用バッテリの温調装置。
【請求項7】
前記空気検出機構は、前記流体循環管路内の上方側へ向けて突出した突出空間部と、前記突出空間部内に配設されたガス検出センサと、を有し、
前記ガス検出センサは、前記突出空間部内に溜まる前記空気を検出することで、前記温調用流体に前記空気が含まれていると判定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載用バッテリの温調装置。
【請求項8】
前記電池モジュールの前記電池セルの温度を検出する温度センサと、を更に有し、
前記制御部は、前記温度センサからの検出温度に基づき、前記温調用流体の温度を調整することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車載用バッテリの温調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用バッテリの温調装置に関し、特に、電池モジュールの下面に配設される温調プレート内に溜まる空気やコンタミネーション(以下、「コンタミ」と呼ぶ。)を適宜除去することで、電池モジュールの温調効率を向上させる車載用バッテリの温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用電池の冷却装置100(以下、「冷却装置100」と呼ぶ。)として、図5に示す装置が知られている。図5(A)は、従来の冷却装置100を説明する概略図である。図5(B)は、従来の冷却装置100を説明する側面図である。
【0003】
図5(A)に示す如く、冷却装置100は、例えば、EV(Electrical Vehicle)等の車両101に配設され、車両101の駆動源である電池モジュール102を適切に冷却し、保護している。そして、冷却装置100は、主に、冷却タンク103と、冷却タンク103と連結する流体循環管路104と、流体循環管路104と接続し、流体循環管路104内を流れる冷却液を冷却するラジエータ105と、流体循環管路104と接続するポンプ(図示せず)と、を有している。
【0004】
図5(B)に示す如く、電池モジュール102の各電池セル106の下面には、冷却タンク103が配設されている。冷却タンク103は、例えば、銅や銅合金等の熱伝導率に優れた材料から形成され、冷却タンク103内には、流体循環管路104を介して冷却液が流れ込む。そして、電池セル106と冷却タンク103とは、冷却部材107を介して接続し、冷却液が、電池セル106にて発生した熱を効率良く吸熱する。その結果、電池セル106の温度上昇を抑制し、電池セル106が所定温度を超えた状態にて使用されることを防止し、電池セル106の特性や寿命が悪化することを防止する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6020942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、冷却液は、流体循環管路104内を循環し、冷却液は、電池セル106との熱交換により温められるが、ラジエータ105を通過する際に走行風等と熱交換することで冷却される。そして、冷却された冷却液が、冷却タンク103内へと流れ込むことで、電池セル106の温度上昇を抑制し、電池セル106が所定温度の範囲内にて使用可能となる。
【0007】
一方、車両101には、走行距離を伸ばすために多数の電池モジュール102が搭載されると共に、多数の車両用部品(図示ぜす)が組み付けられている。そして、流体循環管路104は、上記車両用部品等を迂回しながら配線されるため、流体循環管路104のコーナー部等のエッジ部では、冷却液内にキャビテーションによる小さい泡が発生し易くなる。また、流体循環管路104内に冷却液を注入する際に、冷却液と一緒に空気も流体循環管路104内へと混入されてしまう。
【0008】
図示したように、冷却タンク103は、電池モジュール102の形状に合わせて流体循環管路104よりも幅広く形成されると共に、冷却タンク103の車高方向の高さ幅T1も流体循環管路104の車高方向の高さ幅T2よりも広くなっている。
【0009】
この構造により、キャビテーションによる上記泡や上記空気も冷却液と一緒に冷却タンク103内へと流れ込むため、冷却液よりも比重の小さい上記泡や上記空気は、冷却タンク103の上部に溜まり易くなる。そして、冷却タンク103内では、電池セル106と冷却液との間に空気層が形成されることで、電池セル106にて発生した熱が、上記空気層にて阻害され、冷却液へと伝わり難くなる。その結果、冷却装置100での冷却効率が悪化し、電池セル106の出力制限、性能悪化や寿命劣化が発生するという課題がある。
【0010】
更には、冷却タンク103の上部に、上記泡や上記空気による空気層が長期に渡り存在することで、冷却液内の成分が析出し、硬化したコンタミが、冷却タンク103の内部天面に固着する。その結果、上記空気層と同様に、冷却装置100での冷却効率が悪化するという課題がある。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、電池モジュールの下面に配設される温調プレート内に溜まる空気やコンタミを適宜除去することで、電池モジュールの温調効率を向上させる車載用バッテリの温調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の車載用バッテリの温調装置では、複数の電池セルが収納された電池モジュールと、前記電池モジュールの下面に配設され、前記電池セルを温調する温調用流体が流れる温調プレートと、前記温調プレートと連結され、前記温調用流体を循環させる流体循環管路と、前記流体循環管路に配設され、前記温調用流体を圧送するポンプと、前記ポンプと前記温調プレートの流入口との間の前記流体循環管路に配設され、前記温調用流体に脈動を生成する脈動生成機構と、前記温調プレートの流出口側の前記流体循環管路に配設され、前記温調用流体に含まれる空気を検出する空気検出機構と、前記空気検出機構からの検出結果に基づき、前記脈動生成機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部が、前記検出結果から前記温調用流体に前記空気が含まれていると判定した場合に、前記脈動生成機構を稼働させ、前記温調用流体の流れに変化を加えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の車載用バッテリの温調装置では、前記脈動生成機構は、前記温調用流体を貯蔵するタンクと、前記タンクの流入口またはその近傍の前記流体循環管路に配設される第1の電磁弁と、前記タンクの流出口またはその近傍の前記流体循環管路に配設される第2の電磁弁と、を有し、前記制御部は、前記第1の電磁弁を開状態とすると共に前記第2の電磁弁を閉状態とした後、前記ポンプを稼働させることで、前記タンク内の前記温調用流体に加わる圧力を調整することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の車載用バッテリの温調装置では、前記制御部は、前記タンク内の前記温調用流体に圧力が加えられた状態にて、前記第1の電磁弁を閉状態とした後、前記第2の電磁弁の開閉動作を繰り返すことで、前記温調用流体に脈動を生成することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の車載用バッテリの温調装置では、前記空気検出機構は、前記流体循環管路に配設された集音センサと、前記集音センサにて集音した前記温調用流体の流れる音を用いて前記温調用流体に前記空気が含まれているか、否かを判定する流音判定部と、を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の車載用バッテリの温調装置では、前記制御部は、前記温調用流体に前記空気が含まれているか、否かを判定するための判定音を予め記憶し、前記流音判定部は、前記判定音と前記温調用流体の前記流れる音とを対比し、前記温調用流体に前記空気が含まれているか、否かを判定することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の車載用バッテリの温調装置では、前記流音判定部は、前記温調用流体の前記流れる音の音圧を用いて、前記温調用流体に前記空気が含まれているか、否かを判定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の車載用バッテリの温調装置では、前記空気検出機構は、前記流体循環管路内の上方側へ向けて突出した突出空間部と、前記突出空間部内に配設されたガス検出センサと、を有し、前記ガス検出センサは、前記突出空間部内に溜まる前記空気を検出することで、前記温調用流体に前記空気が含まれていると判定することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の車載用バッテリの温調装置では、前記電池モジュールの前記電池セルの温度を検出する温度センサと、を更に有し、前記制御部は、前記温度センサからの検出温度に基づき、前記温調用流体の温度を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車載用バッテリの温調装置は、複数の電池セルが収納された電池モジュールと、電池モジュールの下面に配設され、電池セルを温調する温調用流体が流れる温調プレートと、温調プレートと連結し、温調用流体を循環させる流体循環管路と、流体循環管路に配設され、温調用流体を圧送するポンプと、ポンプと温調プレートの流入口との間の流体循環管路に配設され、温調用流体に脈動を生成する脈動生成機構と、温調プレートの流出口側の流体循環管路に配設され、温調用流体に含まれる空気を検出する空気検出機構と、空気検出機構からの検出結果に基づき、脈動生成機構を制御する制御部と、を備える。そして、制御部が、検出結果から温調用流体に空気が含まれていると判定した場合に、脈動生成機構を稼働させ、温調用流体の流れに変化を加えることを特徴とする。この構造により、空気検出機構が温調プレート内に形成された空気層があると判定した場合には、脈動生成機構を用いて温調用流体に脈動を生成することで、上記空気層を除去することができる。その結果、電池セルと温調用流体との熱交換効率が向上され、電池セルは、適正温度範囲内で稼働することが可能となり、電池セルの出力制限、性能悪化や寿命劣化の発生が防止される。
【0021】
また、本発明の車載用バッテリの温調装置では、脈動生成機構は、温調用流体を貯蔵するタンクと、タンクの流入口またはその近傍の流体循環管路に配設される第1の電磁弁と、タンクの流出口またはその近傍の流体循環管路に配設される第2の電磁弁と、を有する。そして、制御部は、第1の電磁弁を開状態とすると共に第2の電磁弁を閉状態とした後、ポンプを稼働させることで、タンク内の温調用流体に加わる圧力を調整する。この構造により、脈動生成機構では、温調用流体に加える圧力を調整することで、衝撃の大きい長周期の脈動や衝撃の小さい短周期の脈動を目的に応じて生成することができる。
【0022】
また、本発明の車載用バッテリの温調装置では、制御部は、タンク内の温調用流体に圧力が加えられた状態にて、第1の電磁弁を閉状態とした後、第2の電磁弁の開閉動作を繰り返すことで、温調用流体に脈動を生成する。この構造により、脈動生成機構では、制御部による第2の電磁弁の開閉操作に応じて、連続した脈動を生成することで、温調プレート内の空気層やコンタミネーションを確実に除去することができる。
【0023】
また、本発明の車載用バッテリの温調装置では、空気検出機構は、流体循環管路に配設された集音センサと、集音センサにて集音した温調用流体の流れる音を用いて温調用流体に空気が含まれているか、否かを判定する流音判定部と、を有する。この構造により、温調用流体は、その内部に空気が含まれる場合と、含まれない場合では、その流れる音が異なる特性を利用し、空気検出機構の流音判定部では、上記流れる音を用いて温調プレート内に空気層が形成されているか、否かを判定することができる。
【0024】
また、本発明の車載用バッテリの温調装置では、制御部は、温調用流体に空気が含まれているか、否かを判定する判定音を予め記憶し、流音判定部は、判定音と温調用流体の流れる音とを対比し、温調用流体に空気が含まれているか、否かを判定する。この構造により、流音判定部は、集音センサから集音した実際の流れる音と、制御部に予め記憶している判定音とを対比することで、正確に温調用流体に空気が含まれているか、否かを判定することができる。
【0025】
また、本発明の車載用バッテリの温調装置では、流音判定部は、温調用流体の流れる音の音圧を用いて、温調用流体に空気が含まれているか、否かを判定する。この構造により、流音判定部は、集音センサから集音した実際の流れる音の音圧を用いて、温調用流体に前記空気が含まれているかの判定を行うことで、その判定精度を高めることができる。
【0026】
また、本発明の車載用バッテリの温調装置では、空気検出機構は、流体循環管路内の上方側へ向けて突出した突出空間部と、突出空間部内に配設されたガス検出センサと、を有する。そして、ガス検出センサは、突出空間部内に溜まる空気を検出することで、温調用流体に前記空気が含まれていると判定する。この構造により、空気検出機構は、実際に温調用流体に含まれる空気を用いて判定することができ、その判定精度を高めることができる。
【0027】
また、本発明の車載用バッテリの温調装置は、電池モジュールの電池セルの温度を検出する温度センサと、を更に有し、制御部は、温度センサからの検出温度に基づき、温調用流体の温度を調整する。この構造により、既存の設備であるBCU(Battery Control Unit)に、温調用流体に脈動を生成する制御機能を付加することで、省スペース化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態である車載用バッテリの温調装置を備えた車両を説明する(A)斜視図、(B)平面図である。
図2】本発明の一実施形態である(A)車載用バッテリの温調装置を説明する概略図、(B)温調装置を構成する温調プレートを説明する断面図である。
図3】本発明の一実施形態である車載用バッテリの温調装置での制御方法を説明するフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態である車載用バッテリの温調装置の空気検出機構の変形例を説明する概略図である。
図5】従来の冷却装置100を説明する(A)概略図、(B)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態に係る車載用バッテリ12の温調装置10(以下、「温調装置10」と呼ぶ。)を図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0030】
図1は、本実施形態の温調装置10(図2参照)を搭載した車両11を説明する斜視図である。図1(B)は、本実施形態の車載用バッテリ12の配設状態を説明する平面図である。図2(A)は、本実施形態の温調装置10の構成態様を説明する概略図である。図2(B)は、本実施形態の温調装置10を構成する温調プレート21を説明する断面図である。図3は、本実施形態の温調装置10の温調プレート21の清掃運転時の制御方法を説明するフローチャートである。図4は、本実施形態の温調装置10の空気検出機構28の変形例を説明する概略図である。
【0031】
図1(A)に示す如く、自動車や電車等の車両11には、モータや様々の電装部品に電力を供給するための車載用バッテリ12(図1(B)参照)が搭載されている。車両11が自動車の場合には、近年、EV(Electrical Vehicle)、HEV(Hybrid Electrical Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electrical Vehicle)等が普及している。
【0032】
図1(A)は、車載用バッテリ12を備えた車両11を下方から見た状態を示している。車両11は、主に、車体13と、車両11の底面14近傍のバッテリ配置領域15には、複数の電池モジュール12Aが直列接続された車載用バッテリ12と、車載用バッテリ12から供給される電力により駆動する駆動モータ(図示せず)と、駆動モータの駆動力で回転するタイヤ(図示せず)と、を有している。
【0033】
図1(B)に示す如く、車両11のバッテリ配置領域15には、行列状に車載用バッテリ12の各電池モジュール12Aが配設されている。電池モジュール12Aは、例えば、直方体形状であり、車両11の前後方向に沿ってその長手方向が配置されている。そして、多数の電池モジュール12Aが、バッテリ配置領域15に効率良く配置されることで、車両11の連続走行距離を伸ばすことができる。
【0034】
詳細は後述するが、各電池モジュール12Aには、その下面に温調プレート21(図2(A)参照)が夫々配設されている。そして、温調プレート21内を流れる温調用流体33(図2(B)参照)の温度を調整し、温調用流体33と各電池モジュール12Aとが熱交換を行うことで、各電池モジュール12Aを冷却し、あるいは、昇温することができる。
【0035】
図2に示す如く、温調装置10は、主に、各電池モジュール12Aの下面に配設される温調プレート21と、温調プレート21と電池モジュール12Aとの間に配設される熱伝導シート22と、温調プレート21と連結する流体循環管路23と、流体循環管路23に配設され、温調用流体33(図2(B)参照)を貯蔵するリザーバータンク24と、流体循環管路23に配設され、温調用流体33を冷却するコンデンサ25と、流体循環管路23に配設され、温調用流体33を圧送するポンプ26と、流体循環管路23に配設され、温調用流体33に加わる圧力を調整し、脈動を生成する脈動生成機構27と、流体循環管路23に配設され、温調用流体33内に含有される空気を検出する空気検出機構28と、空気検出機構28による検出信号に基づき、脈動生成機構27等を制御する制御部29と、を備えている。
【0036】
尚、温調装置10としては、温調用流体33の温度を調整することで、各電池モジュール12Aの稼働状況に応じて、各電池モジュール12Aを昇温することも、冷却することも可能である。以下の説明では、各電池モジュール12Aを冷却する制御を行う場合のみについて説明を行うが、この場合に限定するものではない。車両11の走行環境等に応じて、各電池モジュール12Aを昇温する制御のみを行う場合、各電池モジュール12Aを昇温し、冷却する両制御を行う場合でも良い。
【0037】
温調プレート21は、各電池モジュール12Aの下面の近傍に配設される温調手段である。温調プレート21の天面は、例えば、電池モジュール12Aの底面とほぼ同等の平面形状、あるいは若干小さい程度の平面形状を有している。温調プレート21は、熱伝導率に優れたアルミニウム等の金属板により形成され、直方体形状である。そして、温調プレート21の長手方向の両端部には、流体循環管路23と連通する流入口31及び流出口32が設けられている。
【0038】
この構造により、流入口31を介して流体循環管路23から温調プレート21内へと温調用流体33が流入する。一方、流出口32を介して温調プレート21から流体循環管路23へと温調用流体33が流出する。そして、温調プレート21の流路断面積は、流体循環管路23の流路断面積よりも大きく、温調用流体33は、温調プレート21内部を充填すると共に、ゆっくりと流れながら、電池モジュール12Aと熱交換を行う。
【0039】
熱伝導シート22は、温調プレート21と電池モジュール12Aとの間に配設されている。熱伝導シート22は、電池モジュール12Aの底面とほぼ同等の平面形状、あるいは若干小さい程度の平面形状を有している。そして、熱伝導シート22は、電池モジュール12Aの底面及び温調プレート21の天面のほぼ全面に貼り合わされている。この構造により、電池モジュール12A、熱伝導シート22及び温調プレート21の接触領域が出来る限り増大し、熱交換効率が向上される。
【0040】
流体循環管路23は、例えば、金属製の高圧配管、高圧ゴムホースや高圧ビニールホース等により形成され、温調装置10内にて温調用流体33を循環させるための循環管路を形成している。上述したように、バッテリ配置領域15では、流体循環管路23は、各温調プレート21に対して並列に接続し、各温調プレート21へと温調用流体33を供給し、各温調プレート21から温調用流体33を回収する。
【0041】
また、矢印34は、流体循環管路23内の温調用流体33の流れる方向を示している。流体循環管路23には、温調プレート21の流出口32から流入口31の間に、空気検出機構28と、リザーバータンク24と、コンデンサ25と、ポンプ26と、脈動生成機構27とが、配設されている。そして、温調用流体33が、各電池モジュール12Aの冷却用として用いられる場合には、温調プレート21にて電池モジュール12Aと熱交換して温められた温調用流体33は、コンデンサ25を通過する際に熱交換により冷却され、再び、温調プレート21へと送られ、電池モジュール12Aを冷却する。
【0042】
尚、温調用流体33が冷却される手段としては、コンデンサ25に限定されるものではない。例えば、温調用流体33としてラジエータ液を用い、コンデンサ25に代えて車両11に搭載されたラジエータ(図示せず)を用いる場合でも良い。この場合には、温調用流体33が、ラジエータを通過する際に、走行風等と熱交換し、温調用流体33が冷却される。
【0043】
脈動生成機構27は、ポンプ26の下流側の流体循環管路23に配設され、例えば、温調用流体33を一時的に貯蔵するサブタンク27Aと、サブタンク27Aの上流側の流入口またはその近傍の流体循環管路23に配設される第1の電磁弁27Bと、サブタンク27の下流側の流出口またはその近傍の流体循環管路23に配設される第2の電磁弁27Cと、を有している。そして、第1及び第2の電磁弁27B,27Cは、制御部29にてその開閉動作が制御される。
【0044】
具体的には、温調装置10の通常冷却運転では、温調用流体33は、温調プレート21内にて各電池モジュール12Aと熱交換することを目的とする。そのため、制御部29は、第1及び第2の電磁弁27B,27Cを開状態に制御し、サブタンク27Aも流体循環管路23の一部として機能する。そして、ポンプ26にて圧送された温調用流体33は、流体循環管路23内にて脈動することなく、ゆっくりとした速度にて温調プレート21内を流れ、各電池モジュール12Aと熱交換する。
【0045】
一方、温調装置10の温調プレート21の清掃運転では、温調用流体33は、温調プレート21内の上部に溜まる複数の小さい泡や流体循環管路23内へ温調用流体33を注入する際に混入する空気等の空気層35(図2(B)参照)や温調プレート21の天面の内側面に析出するコンタミネーション(以下、「コンタミ」と呼ぶ。)を除去することを目的とする。そして、詳細は後述するが、制御部29は、第1及び第2の電磁弁27,27Cを、適宜、開閉動作させることで、温調用流体33を脈動させ、温調プレート21内の温調用流体33を揺動させる。
【0046】
制御部29は、第1の電磁弁27Bを開状態とし、第2の電磁弁27Cを閉状態とし、ポンプ26を始動させることで、サブタンク27A内に貯留する温調用流体33に圧力を加える。その後、第1の電磁弁27Bを閉状態とし、第2の電磁弁27Cを、適宜、開状態と閉状態とを繰り返すことで、温調用流体33を脈動させることができる。このとき、温調用流体33に加える圧力の大きさや第2の電磁弁27Cの開状態と閉状態との間隔を変更することで、温調用流体33に衝撃の大きい長周期の脈動や衝撃の小さい短周期の脈動を生成することができる。
【0047】
空気検出機構28は、温調プレート21の流出口32近傍の流体循環管路23に対して配設され、例えば、集音センサ28Aと、制御部29の流音判定部29A及び記憶部29Bと、を有している。そして、集音センサ28Aは、流体循環管路23内の温調用流体33の流れる音(以下、「流音」と呼ぶ。)を集音し、その流音を制御部29へと送信する。
【0048】
ここで、温調用流体33では、その内部に上記混入した空気や複数の小さな泡やその小さな泡同士が結合した結合泡等の空気が含まれている場合の流音と、その内部に上記空気が含まれていない場合の流音とは、明らかに相違する。そして、本実施形態の空気検出機構28では、上記流音の相違に着目し、制御部29の記憶部29Bは、少なくとも2つの判定音を予め記憶している。1つ目の判定音は、その内部に上記空気を含む場合の温調用流体33の流音であり、2つ目の判定音は、その内部に上記空気を含まない場合の温調用流体33の流音である。
【0049】
制御部29の流音判定部29Aでは、集音センサ28Aから送られた温調用流体33の実際の流音と、予め記憶部29Bに記憶している判定音とを対比し、温調用流体33の中に上記空気が含まれているか、否かを判定する。詳細は後述するが、流音判定部29Aが、温調用流体33の中に上記空気が含まれていると判断した場合には、温調プレート21内の上部にキャビテーション等により発生した複数の小さい泡等からなる空気層35(図2(B)参照)が形成されていると判断する。
【0050】
制御部29は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有して構成され、温度センサ36等を介して各電池モジュール12A内の電池セル12B(図2(B)参照)の監視や制御等を行うBCU(Battery Control Unit)である。そして、本実施形態では、制御部29は、ポンプ26、脈動生成機構27及び空気検出機構28を制御することで、適宜、温調用流体33に脈動を発生させることができる。つまり、制御部29では、既存の設備であるBCUに、上記脈動を生成する制御機能を付加することで、省スペース化を実現することができる。
【0051】
尚、制御部29の記憶部29Bには、上述したように、流音判定部29Aの判定時に用いる判定音を記憶すると共に、温度センサ36等による検出結果や流音判定部29Aによる上記判定結果等も記憶する。
【0052】
図2(B)に示す如く、各電池モジュール12Aの下面には、熱伝導シート22を介して温調プレート21が配設されている。温調プレート21の内部は、温調用流体33にて充填されることで、各電池モジュール12Aの電池セル12Bにて発生した熱が、効率良く温調用流体33へと伝わり、電池セル12Bは冷却される。尚、図2(B)では、説明の都合上、温調用流体33の上面に空気層35が形成されている状態を示しているが、本実施形態の温調装置10では、上記空気層35を検出し、除去するため、温調装置10の通常冷却運転時には、空気層35は存在しないか、あるいは、熱交換効率に影響を及ぼさない程度に存在している。
【0053】
ここで、車両11には、多数の車両用部品(図示ぜす)が組み付けられると共に、走行距離を伸ばすために多数の電池モジュール12Aが搭載されるため、流体循環管路23は、上記車両用部品等を迂回しながら配線される。そして、特に、ポンプ26と温調プレート21との間では、温調用流体33に加わる圧力も高く、流体循環管路23のコーナー部等のエッジ部では、温調用流体33内にキャビテーションによる複数の小さい泡が発生し易くなる。
【0054】
上記小さい泡は、温調用流体33と一緒に温調プレート21の内部へと流れ込み、温調用流体33よりも比重が小さいため、上記小さい泡は、温調プレート21内部の上方に溜まり、空気層35が形成されてしまう。そして、温調プレート21内では、温調用流体33の上面に空気層35が形成されることで、電池セル12Bにて発生した熱が、空気層35にて阻害され、温調用流体33へと伝わり難くなる。
【0055】
上述したように、本実施形態では、空気検出機構28の流音判定部29Aが、温調用流体33の中に空気層35の一部である空気が含まれていると判定した場合には、脈動生成機構27を制御し、温調用流体33に脈動を生成する。そして、温調用流体33が、脈動することで、温調プレート21内の温調用流体33が揺動し、再び、空気層35が温調用流体33内に混合される。その結果、空気層35は、温調用流体33と一緒に温調プレート21の外部へと流れ出し、温調プレート21内の空気層35が除去されることで、温調プレート21での熱交換効率が向上される。そして、電池セル12Bは、適正温度範囲内で稼働することが可能となり、電池セル12Bの出力制限、性能悪化や寿命劣化の発生が防止される。
【0056】
また、温調プレート21の内部では、空気層35が長期に渡り存在することで、温調用流体33の成分が析出し、硬化したコンタミが、温調プレート21の天面の内側面に固着する。そして、上記空気層35の除去作業時に、あるいは、単独作業にて、温調プレート21の内部に、例えば、圧力の高い、大きく脈動した温調用流体33を流すことで、温調プレート21の天面の内側面に固着したコンタミを剥離させ、除去することもできる。その結果、空気層35と同様に、コンタミによる熱交換効率の悪化を防止することができる。尚、リザーバータンク24内には、フィルター(図示せず)が配設され、上記コンタミ等のゴミは、適宜、温調用流体33内から除去される。
【0057】
図3では、温調装置10の温調プレート21の清掃運転時の制御方法を示している。先ず、ステップS11において、制御部29が、各電池モジュール12A内の電池セル12Bの温度上昇による高温側の設定温度を検出すると、ステップS12に移行し、制御部29は、記憶部29Bに前回の温調装置10による通常冷却運転時に、流音判定部29Aが、温調用流体33の中に空気が含まれていると判定した履歴を記憶しているか、否かを確認する。
【0058】
ステップS12のYESにおいて、前回の通常冷却運転時に、流音判定部29Aによる温調用流体33の中に空気が含まれていると判定が、記憶部29Bに記憶されている場合には、ステップS13に移行し、制御部29は、第1及び第2の電磁弁27B,27Cを開状態とし、ポンプ26を始動させる。このとき、ポンプ26では、温調用流体33が流体循環管路23内をゆっくりと流れる程度の圧力、例えば、通常冷却運転時に加える圧力よりも小さい圧力を温調用流体33に加える。この制御方法により、温調プレート21内に空気層35が存在する場合には、詳細は後述するが、空気層35の一部が、流体循環管路23へと流出し易くなり、空気層35を発見し易くなる。
【0059】
次に、ステップS14において、制御部29の流音判定部29Aが、空気検出機構28の集音センサ28Aから送られる流音と記憶部29Bに記憶された判定音とを対比し、温調用流体33の中に空気が含まれているか、否かを判定する。
【0060】
ステップS14のYESにおいて、制御部29の流音判定部29Aが、温調用流体33の中に空気が含まれていると判定した場合には、ステップS15へと移行し、制御部29は、第1の電磁弁27Bを開状態とし、第2の電磁弁27Cを閉状態とした後、ポンプ26を始動させる。そして、この制御方法により、サブタンク27A内には温調用流体33が貯留されると共に、複数回に渡りポンプ26を稼働させることで、温調用流体33には、所望の圧力、例えば、通常冷却運転時に加える圧力よりも大きい圧力が加えられる。
【0061】
次に、ステップS15において、制御部29は、第1の電磁弁27Bを閉状態とした後、第2の電磁弁27Cを繰り返し開閉動作させることで、サブタンク27Aから流体循環管路23へと脈動する温調用流体33を流すことができる。そして、脈動する温調用流体33が、流体循環管路23から温調プレート21内へと流入することで、温調プレート21内に充填された温調用流体33が揺動する。
【0062】
ここで、制御部29が、第2の電磁弁27Cの開状態と閉状態との間隔を長くすることで、大きく脈動した温調用流体33を生成することができる。そして、本実施形態では、温調プレート21の天面の内側面に固着したコンタミを除去する際には、大きく脈動した温調用流体33が用いられる。温調用流体33からコンタミに対して大きな衝撃を与えることで、コンタミが、温調プレート21の天面の内側面から剥離し易くなるからである。
【0063】
一方、制御部29が、第2の電磁弁27Cの開状態と閉状態との間隔を短くすることで、小さく脈動した温調用流体33を生成することができる。そして、温調プレート21内の空気層35を除去する際には、小さく脈動した温調用流体33が用いられる。空気層35は、上述した小さい泡やその結合泡により形成されているため、温調用流体33を連続して細かく揺らすことで、再び、上記小さい泡等が温調用流体33内に混合し易くなるからである。
【0064】
その後、ステップS13へと戻り、制御部29は、第1及び第2の電磁弁27B,27Cを開状態とし、ポンプ26を始動させる。そして、ステップS14へと移行し、制御部29の流音判定部29Aが、空気検出機構28の集音センサ28Aから送られる流音と記憶部29Bに記憶された判定音とを対比し、温調用流体33の中に空気が含まれているか、否かを判定する。
【0065】
一方、ステップS12のNOまたはステップS14のNOにおいて、制御部29の流音判定部29Aが、温調用流体33の中に空気が含まれていないと判定した場合には、ステップS17へと移行し、制御部29は、第1及び第2の電磁弁27B,27Cを開状態とし、温調装置10による通常冷却運転へと移行し、電池モジュール12Aの各電池セル12Bの冷却を開始する。
【0066】
上述したように、本実施形態の温調装置10では、清掃運転を開始した後は、ステップS14の制御部29の流音判定部29Aが、温調用流体33の中に空気が含まれていないと判定するまで、脈動生成機構27にて温調用流体33に脈動を発生させ、温調プレート21内の空気層35やコンタミを除去する作業を繰り返す。
【0067】
この制御方法により、温調プレート21内の空気層35が、温調プレート21での熱交換効率に影響を及ぼさない程度にまで空気層35やコンタミを除去することができる。そして、複数の電池モジュール12Aに対して冷却効率の偏りを出来る限り無くすことで、車載用バッテリ12(図1(B)参照)全体として電池性能の向上が実現される。
【0068】
尚、ステップS17における温調装置10の通常冷却運転時では、制御部29は、空気検出機構28を制御し、制御部29の流音判定部29Aが、温調用流体33の中に空気が含まれているか、否かを判定し、温調用流体33の中に空気が含まれていると判定した場合には、その判定結果を記憶部29Bに記憶する。
【0069】
図4では、上述した空気検出機構28の変形例を説明する。尚、空気検出機構28以外の温調装置10の構造及び制御方法は、図1から図3を用いて説明した構造及び制御方法と同一である。そのため、図1から図3を用いて説明した同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0070】
空気検出機構28は、流体循環管路23の一部であり、流体循環管路23内の上方側へと向けて突出した突出空間部41と、突出空間部41内に溜まる空気を検出するガス検出センサ42と、制御部29の記憶部29Bと、を有している。そして、空気検出機構28は、温調プレート21の流出口32近傍の流体循環管路23に配設され、温調用流体33内に空気が含まれているか、否かを判定する。
【0071】
矢印43は、流体循環管路23内の温調用流体33が流れる方向を示し、温調用流体33内に空気が含まれている場合には、温調用流体33が突出空間部41を流れる際にその空気が、突出空間部41内の上方へと溜まる。そして、ガス検出センサ42は、突出空間部41内に溜まる空気層44を検出し、その検出結果を制御部29へと送信し、制御部29は、その検出結果を記憶部29Bに記憶する。
【0072】
制御部29では、記憶部29B内の上記検出結果により、温調用流体33内に空気が含まれていると判定し、制御部29は、脈動生成機構27を制御し、温調用流体33を脈動させることで、温調プレート21内の空気層35やコンタミを除去する。そして、制御部29は、上記検出結果を記憶した後、例えば、突出空間部41に配設された可動ピン(図示せず)を可動させ、突出空間部41に溜まった空気を外部へと除去する。
【0073】
尚、本実施形態では、流体循環管路23にコンデンサ25を配設し、電池セル12Bとの熱交換により温められた温調用流体33を冷却する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、車両11が寒冷地を走行し、電池セル12Bを適正温度まで昇温するために温調用流体33を温める場合には、流体循環管路23に設けられた切換え弁(図示せず)を切り換え、温調用流体33の流路を昇温用の流路とし、温調用流体33を温める場合でも良い。そして、温調用流体33を温める場合においても、上記温調装置10の構造及び制御方法により、温調プレート21内に発生する空気層35やコンタミを除去することで、上述した効果と同様な効果を得ることができる。
【0074】
また、制御部29の流音判定部29Aでは、集音センサ28Aから送られた温調用流体33の流音と、予め記憶部29Bに記憶している判定音とを対比し、温調用流体33内に空気が含まれているか、否かを判定する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、温調用流体33内に空気が含まれている場合には、流音の音圧が大きくなるため、制御部29の流音判定部29Aでは、判定用の音圧の閾値を設け、集音センサ28Aから送られた温調用流体33の流音の音圧が上記閾値以上の場合には、温調用流体33内に空気が含まれていると判定する場合でも良い。
【0075】
また、空気検出機構28のその他の実施形態として、気泡検知センサ(図示せず)を用いることもできる。気泡検知センサは、超音波の液体中を伝搬しやすい性質を利用したセンサであり、温調プレート21の流出口32近傍の流体循環管路23に対して配設される。そして、例えば、受信側のセンサにて受信する超音波の受信強度が、送信側のセンサから発した超音波の送信強度よりも弱くなった場合には、温調用流体33内に空気が含まれていると判定し、上述した清掃運転の制御により温調プレート21内の空気層35やコンタミを除去することができる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 温調装置
11 車両
12 車載用バッテリ
12A 電池モジュール
12B 電池セル
15 バッテリ配置領域
21 温調プレート
22 熱伝導シート
23 流体循環管路
24 リザーバータンク
25 コンデンサ
26 ポンプ
27 脈動生成機構
27A サブタンク
27B 第1の電磁弁
27C 第2の電磁弁
28 空気検出機構
28A 集音センサ
29 制御部
29A 流音判定部
29B 記憶部
31 流入口
32 流出口
33 温調用流体
35,44 空気層
36 温度センサ
41 突出空間部
42 ガス検出センサ
図1
図2
図3
図4
図5