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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
F25B1/00 341R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019137613
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021021522
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】藤田 秀穂
(72)【発明者】
【氏名】莅戸 智史
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-268164(JP,A)
【文献】特開2001-147038(JP,A)
【文献】実開昭61-195261(JP,U)
【文献】実開昭63-150258(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間容積Bを排除量Aで除した値(B/A)が50以下で回転数が可変の圧縮機と、
室内機内に設置された室内熱交換器と、
冷媒を減圧する膨張弁と、
室外機内に設置された室外熱交換器と、
前記圧縮機、前記室内熱交換器、前記膨張弁、及び前記室外熱交換器を冷媒配管で環状に接続した冷凍サイクルと、
前記圧縮機が起動開始してから目標回転数に達するまでの間に、前記圧縮機を所定の中間回転数で所定時間だけ維持する制御部と、を有し
前記制御部は、前記B/Aの値が小さい場合は、大きい場合に比べて前記圧縮機を前記所定の中間回転数で維持する前記所定時間が長くなるよう設定することを特徴とした空気調和装置。
【請求項2】
前記圧縮機の停止時間を判断する停止時間判断手段を備え、
前記制御部は、前記停止時間判断手段で判断された前記圧縮機の停止時間が長くなるに従い、前記圧縮機を前記所定の中間回転数で維持する前記所定時間が長くなるよう設定することを特徴とした請求項記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、室内に温風を吹き出す暖房運転が実施可能な空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものでは、回転数可変の圧縮機、室内熱交換器、膨張弁、及び室外熱交換器を冷媒配管で環状に接続した冷凍サイクルを備え、冷房、及び暖房運転の開始指示があったら圧縮機を駆動させ、冷凍サイクル内を冷媒が循環するものがあった。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-184886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のものでは、特に圧縮機の内部空間容積が小さいものにおいて、運転開始時に圧縮機を起動させ急激に回転数を上昇させると、冷凍サイクル内にある冷媒の相状態が不安定になり、気泡塊状の冷媒が膨張弁に流入することで急激な圧力変動が生じ、冷媒流動音が顕著に現れることを発明者は発見した。
冷媒流動音の発生を抑制するため、膨張弁の前後にある冷媒配管に配管径を小さくするオリフィス管を設置する方法が知られているが、部品点数が増加しコストアップとなることから、部品点数の増加がない改善方法が求められていた。
【0005】
そこで本発明は、部品点数が増加することなく運転開始時に発生する冷媒流動音を抑制可能な空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、内部空間容積Bを排除量Aで除した値(B/A)が50以下で回転数が可変の圧縮機と、
室内機内に設置された室内熱交換器と、
冷媒を減圧する膨張弁と、
室外機内に設置された室外熱交換器と、
前記圧縮機、前記室内熱交換器、前記膨張弁、及び前記室外熱交換器を冷媒配管で環状に接続した冷凍サイクルと、
前記圧縮機が起動開始してから目標回転数に達するまでの間に、前記圧縮機を所定の中間回転数で所定時間だけ維持する制御部と、を有し
前記制御部は、前記B/Aの値が小さい場合は、大きい場合に比べて前記圧縮機を前記所定の中間回転数で維持する前記所定時間が長くなるよう設定することを特徴としている。
【0008】
また、請求項では、前記圧縮機の停止時間を判断する停止時間判断手段を備え、
前記制御部は、前記停止時間判断手段で判断された前記圧縮機の停止時間が長くなるに従い、前記圧縮機を前記所定の中間回転数で維持する前記所定時間が長くなるよう設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、内部空間容積Bを排除量Aで除した値(B/A)が50以下で回転数が可変の圧縮機を用いたものにおいて、圧縮機が起動開始してから目標回転数に達するまでの間に、圧縮機を所定の中間回転数で所定時間だけ維持するので、特に圧縮機の内部空間容積が小さいものにおいて、暖房運転の開始時に冷媒の相状態を安定化させ、気泡塊状の冷媒発生を抑制することができるので、部品点数の増加によるコストアップを要することなく冷媒流動音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の一実施形態を説明する概略構成図である。
図2】同発明の第1実施形態の制御ブロック図である。
図3】この発明の圧縮機の構造を説明する図である。
図4】同発明の第1実施形態における暖房運転時の圧縮機の回転数変化を説明する図である。
図5】同発明の第1実施形態における回転数維持時間の有無の設定方法を説明する図である。
図6】同発明の第2実施形態の制御ブロック図である。
図7】同発明の第2実施形態のB/A値に対する回転数維持時間を説明する図である。
図8】同発明の第2実施形態における暖房運転時の圧縮機の回転数変化を説明する図である。
図9】同発明の第3実施形態の制御ブロック図である。
図10】同発明の第3実施形態のB/A値に対する回転数維持時間を説明する図である。
図11】同発明の第3実施形態における暖房運転時の圧縮機の回転数変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次にこの発明の一実施形態を説明する。
図1を参照する。1は空気調和装置であり、当該空気調和装置1は、室内に設置された室内機10と、室外に設置された室外機20とで構成されている。
【0012】
図1を参照する。室内機10内には、複数のパイプ内を冷媒が流動する室内熱交換器11と、当該室内熱交換器11に室内の空気を供給するクロスフローファン12と、室内の温度を検出するための室温センサ13と、が備えられており、高温及び低温の冷媒を室内熱交換器11に流通させ、クロスフローファン12を駆動させることで室内の空気を室内熱交換器11に供給することで、室内機10が備えられた部屋の空調を行う。
【0013】
図1、2を参照する。室外機20内には、冷媒を圧縮させて高温高圧にする圧縮機21と、冷媒の流動方向を変化させる四方弁22と、冷媒を膨張させて低温低圧にする膨張弁23と、内部に備えられた複数のパイプ内を冷媒が流動する室外熱交換器24と、当該室外熱交換器24に向けて外気を供給する室外ファンとしての送風ファン25と、前記室外熱交換器24の温度を検出する室外熱交センサ26と、前記圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検知する吐出温度センサ27と、各機能装置に指示を与えるマイコンで構成された制御部28と、が備えられており、四方弁22の向きを切り替えることで冷房運転と暖房運転の切替を可能とする。
【0014】
図1を参照する。室内機10内及び室外機20内には、前記圧縮機21、前記四方弁22、前記室内熱交換器11、前記膨張弁23、及び前記室外熱交換器24を環状に接続した冷媒配管で構成される冷凍サイクル30が設置されており、暖房運転、冷房運転等の各種運転状態に応じて前記四方弁22が切り替わることで、冷媒配管内を流動する冷媒の流動方向を切り替えることができる。
【0015】
図3を参照する。前記圧縮機21は全密閉の高圧ドーム型で構成されたロータリー圧縮機である。前記圧縮機21は円筒型のケーシング21aで覆われており、当該ケーシング21a内には、冷媒を圧縮するための圧縮機構21bと、駆動軸21cを介して前記圧縮機構21bを駆動するモータ21dとが収納されている。
また、前記ケーシング21aの下部には、冷凍サイクル30内を流動する低圧冷媒を吸入し圧縮機構21bへ送る吸入管21eが接続され、上部には、ケーシング21a内で高圧状態にした冷媒を溜める高圧空間21g内の冷媒を冷凍サイクル30内へ吐出する吐出管21fが接続されている。
【0016】
図3を参照する。モータ21dが駆動することで圧縮機構21b内にある冷媒が圧縮され、圧縮機構21bにある図示しない吐出口から高圧となった冷媒が高圧空間21g内へ吐出される。これに伴い、吐出管21fから高圧空間21g内の冷媒が冷凍サイクル30内へ吐出される。
【0017】
ここで、モータ21dが駆動すると、モータ21dを構成し駆動軸21cと接続したロータ21d1が1回転する毎に圧縮機構21bの吐出口から高圧空間21g内へ吐出される冷媒量が排除量であり、圧縮機21毎に固有の値(ここでは、6.4cm)が設定されている。
【0018】
また、ケーシング21aの圧縮機構21bより上方にあり、圧縮機構21bとモータ21dを除いた高圧空間21gが圧縮機21の内部空間容積であり、圧縮機21毎に固有の値(ここでは、270cm)が設定されている。
【0019】
次に、この発明の一実施形態における具体的な動作について説明する。
図示しないリモコンに設置された運転切替ボタンで暖房運転が選択されると、図1の実線で示す方向へ冷凍サイクル30内の冷媒が流動するよう四方弁22が切り替わった後に圧縮機21が駆動し、圧縮機21で圧縮され高温高圧となった冷媒が凝縮器として働く室内熱交換器11へ流入して、クロスフローファン12が駆動することで室内熱交換器11へ供給された室内空気が加熱され、室内に温風が送風される。
【0020】
室内熱交換器11から流出した冷媒は、膨張弁23で膨張され低温低圧となって室外熱交換器24に流入し、蒸発器として働く室外熱交換器24に流入した冷媒は送風ファン25で供給された室外空気によって蒸発し、ガス状に変化して圧縮機21に流入する。このように冷凍サイクル30内を冷媒が流動することで暖房運転が可能となる。
【0021】
また、図示しないリモコンに設置された運転切替ボタンで冷房運転が選択されると、図1の破線で示す方向へ冷凍サイクル30内の冷媒が流動するよう四方弁22が切り替わった後に圧縮機21が駆動開始するので、圧縮機21で圧縮され高温高圧となった冷媒が室外熱交換器24内に流入して、送風ファン25で供給された室外空気によって室外熱交換器24内に流入した冷媒は凝縮する。
【0022】
室外熱交換器24から膨張弁23に流入した冷媒は膨張され低温低圧となり、蒸発器として働く室内熱交換器11に冷媒が流入してクロスフローファン12で供給された室内空気の熱を吸熱して室内へ冷風を送風すると共に、室内熱交換器11から流出したガス状の冷媒が圧縮機21に流入する。このように冷凍サイクル30内を冷媒が流動することで冷房運転が可能となる。
【0023】
次に、本発明の第1実施形態における暖房運転開始時の圧縮機21の回転数変化について説明する。
まず、暖房運転の開始指示が出されたら、制御部28は、予め入力された圧縮機21の内部空間容積Bを排除量Aで除した値(B/A)が所定値である50以下かを確認する。例えば、室外機20内に設置された圧縮機21の排除量が6.4cm、内部空間容積が270cmであれば、前記B/Aが42.2となるので所定値以下と判断される。
【0024】
図4を参照する。前記B/Aが所定値である50以下であることが確認されたら、制御部28は、冷媒が暖房運転時の方向へ流動するよう四方弁22を切り替えて圧縮機21を駆動させ回転数を上昇させる。
圧縮機21は時間経過に応じて徐々に回転数が上昇し、所定の中間回転数である70rpsまで達したら、制御部28は、圧縮機21の回転数上昇を停止し70rpsで圧縮機21を維持させる。
【0025】
そして、制御部28は、圧縮機21を70rpsで維持した時間が所定時間である120秒経過したと判断したら、再び圧縮機21の回転数を上昇させ、目標回転数である100rpsまで達するよう制御する。
【0026】
このように、暖房運転の開始時に圧縮機21の回転数を急激に上昇させることなく中間回転数で所定時間だけ維持させるので、冷凍サイクル30内の冷媒の相状態を安定化させて気泡塊状の冷媒発生を抑制することができ、暖房運転開始時における冷媒流動音を抑制することができる。
【0027】
なお、本実施形態では圧縮機21の内部空間容積Bを排除量Aで除した値(B/A)を運転開始時に制御部28が確認し、圧縮機21を所定の中間回転数で維持するかを判断する内容で説明したが、これに限らず以下に説明するように、事前に複数の圧縮機21における前記B/Aの値に基づき、暖房運転開始時において圧縮機21を所定の中間回転数で維持する制御の実施有無が設定可能な内容であってもよい。
【0028】
図5を参照する。制御部28には、型式の異なる複数の圧縮機21(ここでは、AからE)毎の前記B/Aの値に基づき、暖房運転開始時において圧縮機21を所定の中間回転数で維持する回転数維持時間の有無が記憶されている。
そして、制御部28の基板上に配置されたディップスイッチにあるNo.1から5のスイッチが、それぞれAからEの圧縮機21に対応することで、室外機20内に設置された圧縮機21の型式に応じたNo.のスイッチをON状態に切り替えると、回転数維持時間の有無が自動的に設定される。
【0029】
よって、室外機20内に設置された圧縮機21の型式がAだった場合、No.1をON状態にすることで、暖房運転開始時において圧縮機21の回転数維持時間は無しとなる
また、室外機20内に設置された圧縮機21の型式がCだった場合、No.3をON状態にすることで、暖房運転開始時において圧縮機21の回転数維持時間は有りとなる。
【0030】
このように、ディップスイッチにより暖房運転開始時における圧縮機21の回転数維持時間の有無を設定可能としたので、空気調和装置1の設置時、工事業者が圧縮機21の型式に応じたNo.のスイッチを切り替えると、暖房運転開始時における圧縮機21の回転数維持時間の有無が自動的に設定される。
【0031】
次に、本発明の第2実施形態における暖房運転開始時の圧縮機21の回転数変化について説明する。
まず、第1実施形態との差異について説明する。
【0032】
図6を参照する。制御部28には、暖房運転開始時に圧縮機21を中間回転数で維持する時間(回転数維持時間)を判断する維持時間判断手段28aがある。この維持時間判断手段28aは、圧縮機21の内部空間容積Bを排除量Aで除した値(B/A)に応じて前記回転数維持時間を変動させるものであり、具体的には、前記B/Aが小さい場合は、大きい場合と比較して前記回転数維持時間が長くなるよう設定する。
なお、その他の構成については第1実施形態と同一である。
【0033】
図7を参照する。前記B/Aの算出結果をXとしたとき、維持時間判断手段28aは、算出されたXの値に基づき前記回転数維持時間を決定する。
例えば、前記B/Aの算出結果が38であれば、維持時間判断手段28aにより前記回転数維持時間は140秒に設定される。
また、前記B/Aの算出結果が47であれば、維持時間判断手段28aにより前記回転数維持時間は100秒に設定される。
【0034】
圧縮機21の内部空間容積が大きく前記B/Aの値が大きいと、暖房運転開始時における冷媒の流動音が小さくなるので、前記B/Aの値が大きい場合は、小さい場合と比較して前記回転数維持時間が短くなるよう設定することで、暖房運転開始から圧縮機21が目標回転数に到達するまでの時間を早くすることで、早期に所定温度以上の温風を室内機10から送風可能とし、ユーザーの快適性を向上させる。
【0035】
図8を参照する。前記B/Aの算出結果を確認したら、制御部28は、冷媒が暖房運転時の方向へ流動するよう四方弁22を切り替えて圧縮機21を駆動させ回転数を上昇させる。
圧縮機21は時間経過に応じて徐々に回転数が上昇し、所定の中間回転数である70rpsまで達したら、制御部28は、圧縮機21の回転数上昇を停止し70rpsで圧縮機21を維持させる。
【0036】
圧縮機21を70rpsで維持させたら、制御部28は、前記B/Aの算出結果に応じて前記回転数維持時間を判断し、カウントを開始する。
例えば、前記B/Aの算出結果が38の場合は、前記回転数維持時間は140秒なので、制御部28は、圧縮機21が70rpsに到達してからカウントを開始し、カウント開始から140秒経過したら圧縮機21の回転数を再度上昇させる。
また、前記B/Aの算出結果が47の場合は、前記回転数維持時間は100秒なので、制御部28は、圧縮機21が70rpsに到達してからカウントを開始し、カウント開始から100秒経過したら圧縮機21の回転数を再度上昇させる。
【0037】
このように、暖房運転の開始時に圧縮機21の回転数を急激に上昇させることなく、前記B/Aの算出結果に応じて中間回転数で維持させる回転数維持時間を変化させるので、前記B/Aの値が小さく圧縮機21の内部空間容積が小さなものは、前記B/Aの値が大きいものと比較して前記回転数維持時間を長くしたことで、冷凍サイクル30内の冷媒の相状態を安定化させて気泡塊状の冷媒発生を抑制し、暖房運転開始時における冷媒流動音を抑制することができる。
【0038】
また、前記B/Aの値が大きなものは前記B/Aの値が小さなものと比較し冷媒の流動音が小さいことから、前記B/Aの値が小さなものと比較して前記回転数維持時間を短めにしたことで、圧縮機21が目標回転数に到達するまでの時間を早くしユーザーの快適性を向上させることができる。
【0039】
次に、本発明の第3実施形態における暖房運転開始時の圧縮機21の回転数変化について説明する。
まず、第1、2実施形態との差異について説明する。
【0040】
図9を参照する。制御部28には、吐出温度センサ27での検知温度と室外熱交センサ26での検知温度との差から圧縮機21の停止時間を判断する停止時間判断手段28bがある。この停止時間判断手段28bは、吐出温度センサ27での検知温度と室外熱交センサ26での検知温度との差が大きい程、圧縮機21の運転停止時間が短いと判断するものである。
【0041】
そして、前記停止時間判断手段28bで判断された圧縮機21の停止時間に基づき、維持時間判断手段28aが圧縮機21を所定の中間回転数で維持する時間について設定する。具体的には、圧縮機21の停止時間が長くなるに従い、中間回転数で維持する時間が長くなるよう設定する。
なお、その他の構成については第1、2実施形態と同一である。
【0042】
図10を参照する。制御部28は、吐出温度センサ27での検知温度と室外熱交センサ26での検知温度との差に応じた前記回転数維持時間を設定する。
例えば、吐出温度センサ27での検知温度が3℃で室外熱交センサ26での検知温度が2℃であれば、吐出温度と熱交温度との差が1なので圧縮機21の停止時間が長いと前記停止時間判断手段28bが判断し、前記維持時間判断手段28aにより前記回転数維持時間は240秒に設定される。
【0043】
また、吐出温度センサ27での検知温度が35℃であり室外熱交センサ26での検知温度が2℃であれば、吐出温度と熱交温度との差が33なので圧縮機21の停止時間が短いと前記停止時間判断手段28bが判断し、前記維持時間判断手段28aにより前記回転数維持時間は150秒に設定される。
【0044】
吐出温度と熱交温度との差が大きいと、圧縮機21の停止時間が短いと推定されるため冷凍サイクル30内にある冷媒の寝込みによる影響がほとんどなく、暖房運転開始時における冷媒の流動音は小さい。
また、吐出温度と熱交温度との差が小さいと、圧縮機21の停止時間が長いと推定されるため冷凍サイクル30内にある冷媒の寝込みによる影響が大きくなり、暖房運転開始時における冷媒の流動音は大きい。
よって、吐出温度と熱交温度との差が大きいほど前記回転数維持時間が短くなるよう設定することで、冷媒の流動音抑制とユーザーの快適性向上とを達成することができる。
【0045】
図11を参照する。圧縮機21の内部空間容積Bを排除量Aで除した値(B/A)が所定値である50以下であることが確認されたら、制御部28は、冷媒が暖房運転時の方向へ流動するよう四方弁22を切り替えて圧縮機21を駆動させ回転数を上昇させる。
圧縮機21は時間経過に応じて徐々に回転数が上昇し、所定の中間回転数である70rpsまで達したら、制御部28は、圧縮機21の回転数上昇を停止し70rpsで圧縮機21を維持させる。
【0046】
圧縮機21を70rpsで維持させたら、制御部28は、吐出温度センサ27での検知温度と室外熱交センサ26での検知温度との差により停止時間判断手段28bが圧縮機21の停止時間を推定し、維持時間判断手段28aにより設定した前記回転数維持時間のカウントを開始する。
例えば、吐出温度と熱交温度との差が1であれば、制御部28は、圧縮機21が70rpsに達したときからカウントを開始し、240秒をカウントしたら圧縮機21の回転数を再度上昇させ、目標回転数である100rpsにする。
【0047】
また、吐出温度と熱交温度との差が33であれば、制御部28は、圧縮機21が70rpsに達したときからカウントを開始し、150秒をカウントしたら圧縮機21の回転数を再度上昇させ、目標回転数である100rpsにする。
【0048】
このように、暖房運転の開始後に圧縮機21の回転数が所定の中間回転数に達したら、吐出温度と熱交温度との差に応じて回転数維持時間を変化させることで、寝込み時間が長いと推定される場合は回転数維持時間を長くすることで冷媒流動音を抑制することができ、寝込み時間が短いと推定される場合は回転数維持時間を短くすることでユーザーの快適性を向上させることができる。
【0049】
次に、本発明の効果を説明する。
【0050】
内部空間容積Bを排除量Aで除した値(B/A)が所定値以下の圧縮機21を備えた空気調和装置1において、暖房運転開始時に圧縮機21の回転数を増加させ、所定の中間回転数に達したら圧縮機21の回転数増加を停止し、回転数維持時間だけ中間回転数で維持することで冷媒の相状態を安定化させることができるため、特に内部空間容積が小さな圧縮機21を使用した場合において、膨張弁23の前後に径の小さい配管を設置するといった部品点数の増加を招くことなく、暖房運転開始時における冷媒流動音を抑制することができる。
【0051】
また、前記B/Aの値が小さい場合は、大きい場合と比べて前記回転数維持時間を長くするので、暖房運転の開始時において、より冷媒の流動音が発生しやすい前記B/Aの値が小さい圧縮機21を使用した場合、中間回転数で維持する回転数維持時間を長くすることで冷媒の相状態を安定化させることができるため、暖房運転開始時における冷媒流動音を抑制することができ、また、前記B/Aの値が大きい圧縮機21を使用した場合、前記回転数維持時間が短くなり、圧縮機21を早期に目標回転数まで到達させるので、ユーザーの快適性が向上する。
【0052】
また、吐出温度センサ27での検知温度と熱交温度センサ26での検知温度との差が小さい程、前記回転数維持時間を長くするので、吐出温度と熱交温度との差から圧縮機21の停止時間を推定し、圧縮機21の停止時間が長く冷媒の寝込みによる影響が大きい場合、暖房運転開始時に圧縮機21を所定の中間回転数で維持する回転数維持時間を長くして冷媒の状態を安定化させるので、冷媒の流動音を抑制することができ、また、圧縮機21の停止時間が短く冷媒の寝込みによる影響が小さい場合、暖房運転開始時に圧縮機21を所定の中間回転数で維持する回転数維持時間を短くして、圧縮機21を早期に目標回転数まで到達させるので、ユーザーの快適性が向上する。
【0053】
なお、本実施形態では暖房運転の開始時における圧縮機21の回転数制御について説明したが、冷房運転の開始時において本発明の制御を実施してもよいものであり、冷房運転の開始指示が出されたとき、圧縮機21の内部空間容積Bを排除量Aで除した値(B/A)が所定値以下であることが確認されたら、制御部28は、冷房運転を開始し圧縮機21の回転数を増加させた後、所定の中間回転数に達したら圧縮機21の回転数増加を停止し、回転数維持時間だけ中間回転数で維持することで、暖房運転と同様に冷媒の流動音を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では圧縮機21の内部空間容積Bを排除量Aで除した値(B/A)の所定値を50として説明したが、この数値に限られることなく設定可能であり、暖房運転開始時に冷媒の流動音が発生する圧縮機21を特定することが可能な数値であればよい。
【0055】
また、第3実施形態で吐出温度センサ27での検知温度と室外熱交センサ26での検知温度との差により圧縮機21の停止時間を推定しているが、室外熱交センサ26ではなく室外機20周辺の温度を検知する外気温センサでの検知結果と吐出温度との差により圧縮機21の停止時間を推定してもよく、あるいは、圧縮機21が停止した時間を直接カウントするものであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 空気調和装置
10 室内機
11 室内熱交換器
20 室外機
21 圧縮機
21g 高圧空間(内部空間容積)
23 膨張弁
24 室外熱交換器
28 制御部
30 冷凍サイクル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11