(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/861 20060101AFI20230214BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20230214BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230214BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230214BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230214BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
H01L29/91 D
H01L29/06 301S
H01L29/06 301V
H01L29/91 F
H01L29/78 653A
H01L29/78 652N
H01L29/78 652T
H01L29/78 655F
H01L29/06 301G
(21)【出願番号】P 2019169390
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】吉川 大輝
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-098440(JP,A)
【文献】特開2018-010988(JP,A)
【文献】特開昭59-110164(JP,A)
【文献】特表2018-504778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/06
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられ
た半導体層であって、
前記第1電極と電気的に接続された第1導電形の第1半導体領域と、
前記半導体層の表面に設けられ、前記第1半導体領域の上に
位置する第2導電形の第2半導体領域と、
前記表面に設けられ、前記第2半導体領域を囲み、前記第1半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第3半導体領域と、
前記表面において前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域から離れ、且つ互いに離れて設けられ、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域との間に位置し、それぞれが前記第2半導体領域を囲む第2導電形の複数の環状領域と、
を含む、前記半導体層と、
前記第2半導体領域の上に設けられ、前記第2半導体領域と電気的に接続された第2電極と、
前記第3半導体領域の上に前記第2電極から離れて設けられ、前記第2電極を囲み、前記第3半導体領域と電気的に接続された第3電極と、
前記第1半導体領域、前記第2電極、前記複数の環状領域、及び前記第3電極と接する半絶縁層と、
を備え、
前記複数の環状領域は、第1環状領域と、前記第1環状領域と前記第3半導体領域との間に設けられた第2環状領域と、を含み、
前記第2半導体領域から前記第3半導体領域に向かう径方向における前記第2環状領域の長さは、前記径方向における前記第1環状領域の長さよりも短
く、
前記径方向の各点において、前記半絶縁層の電位は前記表面の電位よりも高い半導体装置。
【請求項2】
前記複数の環状領域は、前記第2環状領域と前記第3半導体領域との間に設けられた第3環状領域をさらに含み、
前記径方向における前記第3環状領域の長さは、前記径方向における前記第2環状領域の前記長さよりも短い請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の環状領域のそれぞれの前記径方向における長さは、外周に向かうほど短い請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられ
た半導体層であって、
前記第1電極と電気的に接続された第1導電形の第1半導体領域と、
前記半導体層の表面に設けられ、前記第1半導体領域の上に
位置する第2導電形の第2半導体領域と、
前記表面に設けられ、前記第2半導体領域を囲み、前記第1半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第3半導体領域と、
前記表面において前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域から離れ、且つ互いに離れて設けられ、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域との間に位置し、それぞれが前記第2半導体領域を囲む第2導電形の複数の環状領域と、
を含む、前記半導体層と、
前記第2半導体領域の上に設けられ、前記第2半導体領域と電気的に接続された第2電極と、
前記第3半導体領域の上に前記第2電極から離れて設けられ、前記第2電極を囲み、前記第3半導体領域と電気的に接続された第3電極と、
前記第1半導体領域、前記第2電極、前記複数の環状領域、及び前記第3電極と接する半絶縁層と、
を備え、
前記複数の環状領域は、
第1環状領域と、
前記第1環状領域と隣り合う第2環状領域と、
前記第2環状領域と前記第3半導体領域との間に設けられた第3環状領域と、
前記第3環状領域と隣り合う第4環状領域と、
を含み、
前記第2半導体領域から前記第3半導体領域に向かう径方向における前記第3環状領域と前記第4環状領域との間の距離は、前記径方向における前記第1環状領域と前記第2環状領域との間の距離よりも長
く、
前記径方向の各点において、前記半絶縁層の電位は前記表面の電位よりも高い半導体装置。
【請求項5】
前記複数の環状領域は、
前記第4環状領域と前記第3半導体領域との間に設けられた第5環状領域と、
前記第5環状領域と隣り合う第6環状領域と、
をさらに含み、
前記径方向における前記第5環状領域と前記第6環状領域との間の距離は、前記径方向における前記第3環状領域と前記第4環状領域との間の前記距離よりも長い請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記径方向において隣り合う前記環状領域同士の間の距離は、外周に向かうほど長い請求項4又は5に記載の半導体装置。
【請求項7】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられ
た半導体層であって、
前記第1電極と電気的に接続された第1導電形の第1半導体領域と、
前記半導体層の表面に設けられ、前記第1半導体領域の上に
位置する第2導電形の第2半導体領域と、
前記表面に設けられ、前記第2半導体領域を囲み、前記第1半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第3半導体領域と、
前記表面において前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域から離れ、且つ互いに離れて設けられ、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域との間に位置し、それぞれが前記第2半導体領域を囲む第2導電形の複数の環状領域と、
を含む、前記半導体層と、
前記第2半導体領域の上に設けられ、前記第2半導体領域と電気的に接続された第2電極と、
前記第3半導体領域の上に前記第2電極から離れて設けられ、前記第2電極を囲み、前記第3半導体領域と電気的に接続された第3電極と、
前記第1半導体領域、前記第2電極、前記複数の環状領域、及び前記第3電極と接する半絶縁層と、
を備え、
前記複数の環状領域は、第1環状領域と、前記第1環状領域と前記第3半導体領域との間に設けられた第2環状領域と、を含み、
前記第2環状領域における第2導電形の不純物濃度は、前記第1環状領域における第2導電形の不純物濃度よりも低
く、
前記第2半導体領域から前記第3半導体領域に向かう径方向の各点において、前記半絶縁層の電位は前記表面の電位よりも高い半導体装置。
【請求項8】
前記複数の環状領域は、前記第2環状領域と前記第3半導体領域との間に設けられた第3環状領域をさらに含み、
前記第3環状領域における第2導電形の不純物濃度は、前記第2環状領域における第2導電形の前記不純物濃度よりも低い請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記複数の環状領域のそれぞれにおける第2導電形の不純物濃度は、外周に向かうほど低い請求項7又は8に記載の半導体装置。
【請求項10】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられ
た半導体層であって、
前記第1電極と電気的に接続された第1導電形の第1半導体領域と、
前記半導体層の表面に設けられ、前記第1半導体領域の上に
位置する第2導電形の第2半導体領域と、
前記表面に設けられ、前記第2半導体領域を囲み、前記第1半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第3半導体領域と、
前記表面において前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域から離れ、且つ互いに離れて設けられ、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域との間に位置し、それぞれが前記第2半導体領域を囲む第2導電形の複数の環状領域と、
を含む、前記半導体層と、
前記第2半導体領域の上に設けられ、前記第2半導体領域と電気的に接続された第2電極と、
前記第3半導体領域の上に前記第2電極から離れて設けられ、前記第2電極を囲み、前記第3半導体領域と電気的に接続された第3電極と、
前記第1半導体領域、前記第2電極、前記複数の環状領域、及び前記第3電極と接する半絶縁層と、
を備え、
前記複数の環状領域は、前記第2半導体領域から前記第3半導体領域に向か
う径方向に沿って並べられた第1乃至第n環状領域からなり、
前記
径方向において隣り合う前記第i環状領域(1≦i≦n)と前記第i-1環状領域との間の距離α
i[μm](i=1のときは前記第2半導体領域と前記第1環状領域との間の距離)、前記
径方向における前記第i環状領域の長さβ
i[μm]、電気素量q[C]、前記第1半導体領域の誘電率ε[F/cm]、前記第1半導体領域における第1導電形のキャリア密度N
d[cm
-3
]、前記
径方向における前記第2電極と前記第3電極との間の距離L[μm]、静耐圧V[V]が、以下の各数式を満た
し、
前記径方向の各点において、前記半絶縁層の電位は前記表面の電位よりも高い半導体装置。
【請求項11】
前記半絶縁層の抵抗率は、1.0×10
8[Ω・cm]以上1.0×10
13[Ω・cm]未満である請求項1~10のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2半導体領域の上に設けられた第1導電形の第4半導体領域と、
ゲート絶縁層を介して前記第2半導体領域と対向するゲート電極と、
をさらに備えた請求項1~11のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1電極と前記第1半導体領域との間に設けられた第2導電形の第5半導体領域をさらに備えた請求項12記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイオード、Metal Oxide Silicon Field Effect Transistor(MOSFET)、Insulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)などの半導体装置は、電力変換等の用途に用いられる。半導体装置の耐圧は、電圧の印加に伴って低下することがある。電圧印加による耐圧の低下量は、小さいことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、電圧印加による耐圧の低下を抑制できる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1電極と、第1導電形の第1半導体領域と、第2導電形の第2半導体領域と、第1導電形の第3半導体領域と、第2導電形の複数の環状領域と、第2電極と、第3電極と、半絶縁層と、を有する。前記第1半導体領域は、前記第1電極の上に設けられ、前記第1電極と電気的に接続されている。前記第2半導体領域は、前記第1半導体領域の上に設けられている。前記第3半導体領域は、前記第1半導体領域の上に設けられ、前記第2半導体領域を囲み、前記第1半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する。前記複数の環状領域は、前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域から離れ、且つ互いに離れて設けられている。前記複数の環状領域は、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域との間に位置し、それぞれが前記第2半導体領域を囲む。前記第2電極は、前記第2半導体領域の上に設けられ、前記第2半導体領域と電気的に接続されている。前記第3電極は、前記第3半導体領域の上に前記第2電極から離れて設けられ、前記第2電極を囲み、前記第3半導体領域と電気的に接続されている。前記半絶縁層は、前記第1半導体領域、前記第2電極、前記複数の環状領域、及び前記第3電極と接する。前記複数の環状領域は、第1環状領域と、前記第1環状領域と前記第3半導体領域との間に設けられた第2環状領域と、を含む。前記第2半導体領域から前記第3半導体領域に向かう径方向における前記第2環状領域の長さは、前記径方向における前記第1環状領域の長さよりも短い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置を表す平面図である。
【
図3】参考例及び第1実施形態に係る半導体装置の特性を表すグラフである。
【
図4】参考例及び第1実施形態に係る半導体装置の特性を表すグラフである。
【
図5】第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置の一部を表す断面図である。
【
図6】第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置の一部を表す断面図である。
【
図7】第1実施形態の第3変形例に係る半導体装置を説明するための断面図である。
【
図8】第1実施形態の第3変形例に係る半導体装置を説明するための断面図である。
【
図9】第2実施形態に係る半導体装置の一部を表す断面図である。
【
図10】第3実施形態に係る半導体装置の一部を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下の説明及び図面において、n+、n、n-及びp+、pの表記は、各不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、「+」が付されている表記は、「+」及び「-」のいずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に高く、「-」が付されている表記は、いずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に低いことを示す。これらの表記は、それぞれの領域にp形不純物とn形不純物の両方が含まれている場合には、それらの不純物が補償しあった後の正味の不純物濃度の相対的な高低を表す。
以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を表す平面図である。
図2は、
図1のII-II断面図である。
図1では、半絶縁層30、絶縁層31、絶縁層32、及び絶縁部33が省略されている。
【0009】
第1実施形態に係る半導体装置100は、ダイオードである。半導体装置100は、
図1及び
図2に表したように、半導体層SL、下部電極21(第1電極)、上部電極22(第2電極)、EQuivalent-Potential Ring(EQPR)電極23(第3電極)、半絶縁層30、絶縁層31、絶縁層32、及び絶縁部33を有する。
半導体層SLは、n
-形(第1導電形)半導体領域1(第1半導体領域)、p形(第2導電形)半導体領域2(第2半導体領域)、n
+形EQPR領域3(第3半導体領域)、n
+形コンタクト領域4、p
+形コンタクト領域5、及びp
+形環状領域10を有する。
【0010】
実施形態の説明では、XYZ直交座標系を用いる。下部電極21からn-形半導体領域1に向かう方向をZ方向とする。Z方向に対して垂直であり、相互に直交する2方向をX方向及びY方向とする。また、半導体装置100の中心から外周に向かう方向を、径方向とする。また、説明のために、下部電極21からn-形半導体領域1に向かう方向を「上」と言い、その反対方向を「下」と言う。これらの方向は、下部電極21とn-形半導体領域1との相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0011】
図2に表したように、半導体装置100の下面には、下部電極21が設けられている。n
+形コンタクト領域4は、下部電極21の上に設けられ、下部電極21と電気的に接続されている。n
-形半導体領域1は、n
+形コンタクト領域4の上に設けられている。n
-形半導体領域1は、n
+形コンタクト領域4を介して、下部電極21と電気的に接続されている。
【0012】
n-形半導体領域1の上には、p形半導体領域2、n+形EQPR領域3、及びp+形環状領域10が設けられている。例えば、p形半導体領域2は、半導体装置100のX方向及びY方向における中央部に設けられている。n+形EQPR領域3は、p形半導体領域2を囲んでいる。例えば、n+形EQPR領域3は、半導体装置100のX方向の端部及びY方向の端部に沿って設けられている。
【0013】
図1及び
図2に表したように、p
+形環状領域10は、p形半導体領域2とn
+形EQPR領域3との間に複数設けられている。それぞれのp
+形環状領域10が、p形半導体領域2を囲んでいる。p形半導体領域2、n
+形EQPR領域3、及び複数のp
+形環状領域10は、径方向において互いに離れている。p
+形環状領域10の数は、半導体装置100に求められる耐圧に応じて適宜設計される。
【0014】
n+形EQPR領域3におけるn形不純物濃度は、n-形半導体領域1におけるn形不純物濃度よりも高い。p+形環状領域10におけるp形不純物濃度は、例えばp形半導体領域2におけるp形不純物濃度よりも高い。
【0015】
図2に表したように、p
+形コンタクト領域5は、p形半導体領域2の上に選択的に設けられている。p
+形コンタクト領域5におけるp形不純物濃度は、p形半導体領域2におけるp形不純物濃度よりも高い。p
+形コンタクト領域5の形状、数、位置などは、半導体装置100に求められる特性に応じて適宜設計される。
【0016】
上部電極22は、p形半導体領域2及びp+形コンタクト領域5の上に設けられ、p形半導体領域2及びp+形コンタクト領域5と電気的に接続されている。EQPR電極23は、n+形EQPR領域3の上に設けられ、n+形EQPR領域3と電気的に接続されている。
【0017】
例えば
図1に表したように、上部電極22は、半導体装置100のX方向及びY方向における中央部に設けられている。EQPR電極23は、径方向において上部電極22から離れ、上部電極22を囲んでいる。EQPR電極23は、半導体装置100のX方向における端部及びY方向における端部に沿って設けられている。
【0018】
図2に表したように、p形半導体領域2の外周と上部電極22の外周との間には、絶縁層31が設けられている。n
+形EQPR領域3の内周とEQPR電極23の内周との間には、絶縁層32が設けられている。
【0019】
半絶縁層30は、上部電極22の外周、半導体層SL(n-形半導体領域1及び複数のp+形環状領域10)、及びEQPR電極23に接している。このため、上部電極22、半導体層SL、及びEQPR電極23は、半絶縁層30を介して電気的に接続されている。
【0020】
絶縁部33は、半絶縁層30の上に設けられている。例えば、絶縁部33は、半導体装置100の上面の外周を封止している。上部電極22の上面の中央部は、絶縁部33に覆われておらず、外部に露出している。
【0021】
p
+形環状領域10について具体的に説明する。
図2に表したように、p形半導体領域2とn
+形EQPR領域3との間には多数のp
+形環状領域10が設けられている。例えば、複数のp
+形環状領域10は、p
+形環状領域10a~10iを含む。
【0022】
p+形環状領域10a~10cは、径方向において互いに隣り合っている。p+形環状領域10d~10fは、p+形環状領域10cとn+形EQPR領域3との間に設けられ、径方向において互いに隣り合っている。p+形環状領域10d~10fは、別のp+形環状領域10を挟んでp+形環状領域10a~10cから離れている。p+形環状領域10g~10iは、p+形環状領域10fとn+形EQPR領域3との間に設けられ、径方向において互いに隣り合っている。p+形環状領域10g~10iは、さらに別のp+形環状領域10を挟んでp+形環状領域10d~10fから離れている。例えば、p+形環状領域10d~10fのいずれかは、径方向に並べられた複数のp+形環状領域10の真中に位置する。
【0023】
半導体装置100では、p+形環状領域10d(第2環状領域の一例)の径方向における長さX2は、p+形環状領域10a(第1環状領域の一例)の径方向における長さX1よりも短い。p+形環状領域10g(第3環状領域の一例)の径方向における長さX3は、長さX2よりも短い。すなわち、p+形環状領域10の径方向における長さは、それよりも内周側に位置する別のp+形環状領域10の径方向における長さよりも短い。
【0024】
p+形環状領域10の長さは、半導体層SLの表面(半導体層SLと半絶縁層30との接触面)における、n-形半導体領域1とp+形環状領域10との間のpn接合面を用いて測定される。すなわち、p+形環状領域10の長さは、半導体層SLの表面において、pn接合面の径方向の一端から他端までの長さで表わされる。後述するp+形環状領域10同士の間の距離についても、n-形半導体領域1と各p+形環状領域10との間のpn接合面を用いて測定される。
【0025】
半導体装置100の動作について説明する。
下部電極21に対して上部電極22に正の電圧が印加されると、n-形半導体領域1とp形半導体領域2との間のpn接合面に順方向電圧が印加される。これにより、半導体装置100がオン状態となり、上部電極22から下部電極21へ電流が流れる。
【0026】
その後、上部電極22に対して下部電極21に正の電圧が印加されると、電流の流れが止まり、半導体装置100がオン状態からオフ状態に切り替わる。n-形半導体領域1とp形半導体領域2との間のpn接合面には、逆方向電圧が印加される。逆方向電圧の印加により、n-形半導体領域1とp形半導体領域2との間のpn接合面から空乏層が広がる。
p形半導体領域2から広がった空乏層がp+形環状領域10に達すると、p+形環状領域10とn-形半導体領域1との間にも逆方向電圧が印加される。これにより、n-形半導体領域1とp+形環状領域10との間のpn接合面からも空乏層が広がる。各p+形環状領域10からの空乏層の広がりにより、p形半導体領域2の外周における電界集中が抑制され、半導体装置100の耐圧を高めることができる。
【0027】
半導体装置100がオフ状態のとき、EQPR電極23の電位は、下部電極21の電位と実質的に同じとなる。上部電極22及びEQPR電極23は、半絶縁層30を介して互いに電気的に接続されている。このため、EQPR電極23から上部電極22へ、半絶縁層30を介して微小な電流が流れる。半絶縁層30の各部の電位は、電流の流れに応じて固定される。半絶縁層30の各部の電位は、半導体装置100の外周に向けた空乏層の広がりに影響を与える。半絶縁層30の各部の電位が固定されることで、例えば半導体装置100における空乏層の広がり方が安定し、半導体装置100の信頼性を向上させることができる。
【0028】
また、半導体装置100がオフ状態のとき、半導体装置100の外周には電界が発生する。この電界により、絶縁部33や半導体装置100の外部に存在する荷電粒子が半導体層SLに向けて引き寄せられる。このとき、半絶縁層30が設けられていると、引き寄せられた荷電粒子が半絶縁層30中を流れ、上部電極22又はEQPR電極23へ排出される。このため、外部の荷電粒子によって空乏層の広がりが変動し、半導体装置100の耐圧が低下することを抑制できる。
【0029】
また、半導体層SLと半絶縁層30との間に絶縁層が設けられていると、半導体層SL中で加速されたキャリアが絶縁層中にトラップされることがある。半導体装置100では、半導体層SLと半絶縁層30との間には絶縁層が設けられておらず、半絶縁層30は半導体層SLと接している。加速されたキャリアが半絶縁層30へ進入すると、キャリアは上部電極22又はEQPR電極23へ排出される。従って、絶縁層中にキャリアがトラップされることによる空乏層の広がりの変動及び半導体装置100の耐圧の低下を抑制できる。
【0030】
半導体装置100の各構成要素の材料の一例を説明する。
n-形半導体領域1、p形半導体領域2、n+形EQPR領域3、n+形コンタクト領域4、p+形コンタクト領域5、及びp+形環状領域10は、半導体材料として、シリコン、炭化シリコン、窒化ガリウム、またはガリウムヒ素を含む。半導体材料としてシリコンが用いられる場合、n形不純物として、ヒ素、リン、またはアンチモンを用いることができる。p形不純物として、ボロンを用いることができる。
下部電極21、上部電極22、及びEQPR電極23は、アルミニウム又は銅などの金属を含む。
絶縁層31及び32は、酸化シリコン又は窒化シリコンなどの絶縁材料を含む。
半絶縁層30は、酸化シリコン又は窒化シリコンなどの絶縁材料を含む。ただし、半絶縁層30の電気抵抗は、絶縁層31及び32のそれぞれの電気抵抗よりも低い。例えば、半絶縁層30の抵抗率は、1.0×108[Ω・cm]以上1.0×1013[Ω・cm]未満である。絶縁層31及び32のそれぞれの抵抗率は、1.0×1013[Ω・cm]以上である。
絶縁部33は、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料を含む。
【0031】
図3及び
図4を参照しつつ、第1実施形態の効果を説明する。
図3(a)は、参考例に係る半導体装置の特性を表すグラフである。
図3(b)は、第1実施形態に係る半導体装置の特性を表すグラフである。
図4は、参考例及び第1実施形態に係る半導体装置の特性を表すグラフである。
参考例に係る半導体装置では、複数のp
+形環状領域10の径方向における長さは、互いに同じである。また、径方向において隣り合うp
+形環状領域10同士の間の距離は、それぞれ同じである。
【0032】
図3(a)及び
図3(b)は、各半導体装置のY方向の中心における、X方向の位置(X座標)と電位との関係を表している。横軸は、上部電極22の外周端部の位置を基準としたときのX座標を表す。縦軸は、半導体装置がオフ状態のときの電位を表す。横軸及び縦軸の値は、任意単位で表されている。実線は、半導体層SLの表面の電位を表す。点線は、半絶縁層30の電位を表す。また、横軸の値が約2.6の位置には、EQPR電極23の内周端部が存在する。
図3(a)及び
図3(b)では、最も低い印加電圧を1とし、印加電圧を13まで増大させたときの特性を表している。
【0033】
図3(a)から、参考例に係る半導体装置では、X座標が0から約1.5の範囲では、半絶縁層30の電位が、半導体層SLの表面の電位よりも高い。一方で、X座標が約1.5から2.6の範囲では、半導体層SLの表面の電位が、半絶縁層30の電位よりも高い。
参考例に係る半導体装置では、耐圧を向上させるために、p形半導体領域2付近における空乏層の広がりを促している。また、参考例に係る半導体装置では、p形半導体領域2から半導体装置100の外周端部までの距離(終端長)を短くするために、半導体装置100の外周端部では、n
+形EQPR領域3及びEQPR電極23を設けて空乏層の広がりを抑えている。この結果、
図3(a)に表されたように、半導体装置100の外周側で半導体層SLの表面の電位が増大し、半絶縁層30の電位よりも大きくなっている。
【0034】
この参考例に係る半導体装置について、発明者は以下のことを発見した。
半導体装置がオフ状態のときに、半導体層SLの電位が半絶縁層30の電位よりも高いと、その電位差によって半導体層SLから半絶縁層30に向けて正孔が注入される。このとき、正孔が半絶縁層30のトラップ準位に捕捉されると、その正孔は上部電極22へ排出されず、半絶縁層30に留まり続ける。半絶縁層30に正孔が留まると、その正孔が形成する電界によって、空乏層の広がりが変動し、半導体装置100の耐圧が低下する。
【0035】
この課題について、第1実施形態に係る半導体装置100では、p+形環状領域10の径方向における長さを異ならせている。具体的には、あるp+形環状領域10の径方向における長さは、そのp+形環状領域10よりも内周側に位置する別のp+形環状領域10の径方向における長さよりも短い。例えば、複数のp+形環状領域10のピッチがそれぞれ一定とすると、p+形環状領域10の径方向における長さが短いほど、半導体層SLの表面におけるn-形半導体領域1の面積の割合が大きくなる。ピッチは、1つのp+形環状領域10の径方向における中心と、そのp+形環状領域10に隣り合う別のp+形環状領域10の径方向における中心と、の間の距離に対応する。
n-形半導体領域1の面積の割合が大きくなると、半導体層SLの表面における電圧の降下が大きくなる。すなわち、第1実施形態に係る半導体装置100によれば、径方向における長さが相対的に短いp+形環状領域10を設けることで、そのp+形環状領域10近傍における電圧降下を増大させ、そのp+形環状領域10近傍の電位を低下させることができる。この結果、半導体層SLから半絶縁層30に向けた電界の強度を低減できる。例えば、半絶縁層30の電位を半導体層SLの表面の電位よりも高くすることが可能となる。
【0036】
図3(b)は、p
+形環状領域10の径方向における長さが外周に向かうほど短いときの、半導体装置100の特性を表す。
図3(b)に表したように、半導体装置100では、参考例に係る半導体装置に比べて、X座標1.5から2.6までにおける半導体層SLの電位が低い。参考例に係る半導体装置と同じ終端長で、いずれのX座標においても、半導体層SLの電位が半絶縁層30の電位よりも低い。これにより、半絶縁層30から半導体層SLに向けて電界が形成され、半導体層SLを流れる正孔が半絶縁層30へ注入されることを抑制できる。半絶縁層30中における正孔の捕捉が抑制されることで、半導体装置100への電圧印加に伴う耐圧の低下を抑制できる。
【0037】
図4は、ストレス電圧を十分に長い時間印加したときの、半導体装置の静耐圧の変動を表す。
図4において、横軸は、ストレス電圧を表す。縦軸は、半導体装置の耐圧を表す。横軸及び縦軸は、任意単位で表されている。実線は、第1実施形態に係る半導体装置100の特性を表す。破線は、参考例に係る半導体装置の特性を表す。
図4から、参考例に係る半導体装置について、ストレス電圧を印加した後の耐圧は、ストレス電圧を印加する前の耐圧よりも大きく低下することが分かる。一方、第1実施形態に係る半導体装置にストレス電圧を印加しても、耐圧の低下は小さかった。すなわち、第1実施形態に係る半導体装置にストレス電圧を印加したときの耐圧の低下量は、参考例に係る半導体装置にストレス電圧を印加したときの耐圧の低下量よりも小さい。この耐圧の低下量の違いは、半導体層SLから半絶縁層30への正孔の注入が抑制されたことに起因する。
このように、第1実施形態によれば、終端長を維持したまま、電圧の印加に伴う半導体装置100の耐圧の低下を抑制できる。
【0038】
複数のp+形環状領域10について、少なくとも一部のp+形環状領域10の径方向における長さが、それよりも内周側に位置するp+形環状領域10の径方向における長さよりも短ければ良い。こうすることで、当該少なくとも一部のp+形環状領域10近傍において、電位が低下し、半導体層SLから半絶縁層30への正孔の注入を抑制できる。
【0039】
より多くのp+形環状領域10近傍の電位を低下させるためには、各p+形環状領域10の径方向における長さが、外周に向けて短くなっていることが好ましい。これにより、半導体層SLから半絶縁層30への正孔の注入をさらに抑制できる。この場合、互いに隣り合う一部のp+形環状領域10の長さが同じであっても良い。例えば、p+形環状領域10iの径方向における長さは、p+形環状領域10hの径方向における長さよりも短くても良いし、p+形環状領域10hの径方向における長さと同じでも良い。巨視的に見たときに、各p+形環状領域10の径方向における長さが、外周に向けて短くなる傾向にあれば良い。これにより、半導体層SLから半絶縁層30への正孔の注入を大きく抑制し、電圧の印加に伴う半導体装置100の耐圧の低下をさらに抑制できる。
【0040】
(第1変形例)
図5は、第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置の一部を表す断面図である。
第1変形例に係る半導体装置110では、p
+形環状領域10d(第3環状領域の一例)とp
+形環状領域10e(第4環状領域の一例)との間の径方向における距離Y2は、p
+形環状領域10a(第1環状領域の一例)とp
+形環状領域10b(第2環状領域の一例)との間の径方向における距離Y1よりも長い。p
+形環状領域10g(第5環状領域の一例)とp
+形環状領域10h(第6環状領域の一例)との間の径方向における距離Y3は、距離Y2よりも長い。すなわち、p
+形環状領域10同士の間の距離が、それよりも内周側に位置する別のp
+形環状領域10同士の間の距離よりも長い。
【0041】
p+形環状領域10同士の間の距離が長くなると、その間のn-形半導体領域1における電圧降下が大きくなり、電位が低下する。このため、半絶縁層30から半導体層SLへ向けた電界の強度を低減できる。例えば、半導体層SLから半絶縁層30へ向けた電界を形成できる。従って、半導体装置110によれば、半導体装置100と同様に、半導体層SLから半絶縁層30への正孔の注入を抑制し、耐圧の低下を抑制できる。
【0042】
なお、互いに隣り合う一対のp+形環状領域10同士の間の距離が、当該一対と隣り合う別の一対のp+形環状領域10同士の間の距離と同じであっても良い。例えば、p+形環状領域10hと10iとの間の距離が、p+形環状領域10gと10hとの間の距離よりも長くても良いし同じでも良い。巨視的に見たときに、隣り合うp+形環状領域10同士の間の径方向における距離が、外周に向けて長くなる傾向にあれば良い。これにより、半導体層SLから半絶縁層30への正孔の注入を大きく抑制し、電圧の印加に伴う半導体装置110の耐圧の低下をさらに抑制できる。
【0043】
(第2変形例)
図6は、第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置の一部を表す断面図である。
第2変形例に係る半導体装置120では、p
+形環状領域10d(第2環状領域の一例)におけるp形不純物濃度は、p
+形環状領域10a(第1環状領域の一例)におけるp形不純物濃度よりも低い。p
+形環状領域10g(第3環状領域の一例)におけるp形不純物濃度は、p
+形環状領域10dにおけるp形不純物濃度よりも低い。すなわち、p
+形環状領域10のp形不純物濃度は、それよりも内周側に位置する別のp
+形環状領域10のp形不純物濃度よりも低い。
【0044】
p+形環状領域10におけるp形不純物濃度が低いほど、p+形環状領域10の電気抵抗が増大する。これにより、p+形環状領域10における電圧降下が大きくなり、そのp+形環状領域10近傍の電位が低下する。このため、半絶縁層30から半導体層SLへ向けた電界の強度を低減できる。例えば、半導体層SLから半絶縁層30へ向けた電界を形成できる。従って、半導体装置120によれば、半導体装置100と同様に、半導体層SLから半絶縁層30への正孔の注入を抑制し、半導体装置120の耐圧の低下を抑制できる。
【0045】
なお、互いに隣り合う一部のp+形環状領域10におけるp形不純物濃度が同じであっても良い。例えば、p+形環状領域10iにおけるp形不純物濃度は、p+形環状領域10hにおけるp形不純物濃度よりも低くても良いし同じでも良い。巨視的に見たときに、各p+形環状領域10におけるp形不純物濃度が、外周に向けて低くなる傾向にあれば良い。これにより、半導体層SLから半絶縁層30への正孔の注入を大きく抑制し、電圧の印加に伴う半導体装置120の耐圧の低下をさらに抑制できる。
【0046】
以上で説明した半導体装置100~120の構造は、互いに組み合わせて実施することも可能である。例えば、半導体装置100において、p+形環状領域10同士の間の距離を、それよりも内周側に位置する別のp+形環状領域10同士の間の距離よりも長くしても良い。半導体装置100において、p+形環状領域10のp形不純物濃度を、それよりも内周側に位置する別のp+形環状領域10のp形不純物濃度よりも低くしても良い。
【0047】
(第3変形例)
図7及び
図8は、第1実施形態の第3変形例に係る半導体装置を説明するための断面図である。
第3変形例に係る半導体装置130では、各p
+形環状領域10の径方向における長さ及びp
+形環状領域10同士の間の距離の少なくとも一方が、以下の数式1~数式3を満たすように設計される。
【数1】
【数2】
【数3】
【0048】
図7に表した半導体装置130では、p形半導体領域2からn
+形EQPR領域3に向かってn個のp
+形環状領域10(p
+形環状領域10-1~10-n)が並んでいる。数式1~数式3において、α
iは、内周側から数えてi番目のp
+形環状領域10と、i-1番目のp
+形環状領域10と、の間の径方向における距離[μm]である。iは、1以上n以下である。iが1のとき、α
1は、p形半導体領域2と1番目のp
+形環状領域10との間の径方向における距離[μm]である。β
iは、i番目のp
+形環状領域10の径方向における長さ[μm]である。qは、電気素量[C]である。εは、n
-形半導体領域1の誘電率[F/cm]である。N
dは、n
-形半導体領域1におけるn形キャリア密度[cm
-3
]である。Lは、径方向における上部電極22とEQPR電極23との間の距離[μm]である。Vは、半導体装置130の静耐圧[V]である。
【0049】
数式1~数式3は、ガウスの法則を用いて導かれる。数式1及び数式2を満たすとき、i番目のp+形環状領域10の電位は、そのp+形環状領域10の直上における半絶縁層30の電位よりも低くなる。さらに、数式3を満たすと、いずれのp+形環状領域10の電位も、そのp+形環状領域10の直上における半絶縁層30の電位よりも低くなる。従って、いずれの点においても、半絶縁層30から半導体層SLへ向かう電界が形成され、半導体層SLから半絶縁層30への正孔の注入が効果的に抑制される。
【0050】
一例として、電気素量qは、1.6×10-19[C]である。誘電率εは、1.04×10-12[F/cm]である。n形キャリア密度Ndは、6×1012[cm-1]である。距離Lは、2000[μm]である。静耐圧Vは、6000[V]である。この場合、数式1~3における2εV/LqNdは、約6.5[μm]となる。この結果から、数式1は、αi
2<6.5×(αi+βi-1)で表される。例えば、αi+βi-1が25[μm]のとき、αiは、数式1を満たすように13[μm]以下に設計される。
【0051】
なお、半導体装置130において、n
-形半導体領域1のn形不純物濃度に対する、p
+形環状領域10のp形不純物濃度の比が十分に大きくないときは、p
+形環状領域10における空乏層の幅が広くなる。p
+形環状領域10における空乏層の幅が広くなると、半導体層SLの電位に影響を与える。数式1~3に基づいてp
+形環状領域10を設計したとしても、半導体層SLから半絶縁層30への正孔の注入を抑制できるが、より好ましくは、数式1及び3に代えて数式4及び5が用いられる。各p
+形環状領域10の径方向における長さ及びp
+形環状領域10同士の間の距離の少なくとも一方は、数式2、4、及び5を満たすように設計される。
【数4】
【数5】
【0052】
数式4及び5において、xは、p+形環状領域10における空乏化の割合を表し、0より大きく1以下である。O(x2)は、xの2次以上の項を表す。例えば、n-形半導体領域1におけるn形キャリア密度が、1.0×1013[cm
-3
]以下であり、p+形環状領域10におけるp形キャリア密度が1.0×1017[cm
-3
]以上のとき、xは1より十分に小さい。このため、p+形環状領域10の空乏化は、無視できる。p+形環状領域10におけるp形キャリア密度が1.0×1016[cm
-3
]以下のときは、p+形環状領域10の空乏化が半導体層SLの電位に与える影響が大きくなるため、数式4及び5を用いることが好ましい。
【0053】
また、数式3は、p形半導体領域2の外周端部の径方向における位置が上部電極22の外周端部の径方向における位置と同じであり、n
+形EQPR領域3の内周端部の径方向における位置がEQPR電極23の内周端部の径方向における位置と同じ場合に、好適に用いられる。p形半導体領域2の外周端部の径方向における位置が上部電極22の外周端部の径方向における位置と異なる場合、又はn
+形EQPR領域3の内周端部の径方向における位置がEQPR電極23の内周端部の径方向における位置と異なる場合は、数式3を修正しても良い。数式1~3に基づいてp
+形環状領域10を設計したとしても、半導体層SLから半絶縁層30への正孔の注入を抑制できるが、より好ましくは、数式3に代えて数式6が用いられる。
【数6】
【0054】
図8に表したように、δL
1は、p形半導体領域2の外周端部と上部電極22の外周端部との間の径方向における距離である。δL
2は、n
+形EQPR領域3の内周端部とEQPR電極23の内周端部との間の径方向における距離である。上部電極22の外周端部がp形半導体領域2の外周端部よりも半導体装置130の外周側に位置しているとき、δL
1は正の値である。上部電極22の外周端部がp形半導体領域2の外周端部よりも半導体装置130の内周側に位置しているとき、δL
1は負の値である。また、EQPR電極23の内周端部がn
+形EQPR領域3の内周端部よりも半導体装置130の外周側に位置しているとき、δL
2は正の値である。EQPR電極23の内周端部がn
+形EQPR領域3の内周端部よりも半導体装置130の内周側に位置しているとき、δL
2は負の値である。各p
+形環状領域10の径方向における長さ、及びp
+形環状領域10同士の間の距離の少なくとも一方は、数式1、2、及び6を満たすように設計される。
【0055】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る半導体装置の一部を表す断面図である。
第2実施形態に係る半導体装置200は、MOSFETである。
図9に表したように、半導体装置200は、半導体装置100と比べて、n
+形ソース領域6(第4半導体領域)及びゲート電極15をさらに有する。
【0056】
p
+形コンタクト領域5及びn
+形ソース領域6は、p形半導体領域2の上に選択的に設けられている。ゲート電極15は、ゲート絶縁層15aを介してp形半導体領域2と対向している。
図9に表した例では、ゲート電極15は、さらに、n
-形半導体領域1の一部及びn
+形ソース領域6と対向している。例えば、p形半導体領域2、p
+形コンタクト領域5、n
+形ソース領域6、及びゲート電極15は、X方向において複数設けられ、それぞれがY方向に延びている。
【0057】
半導体装置200の動作について説明する。
上部電極22に対して下部電極21に正電圧が印加された状態で、ゲート電極15に閾値以上の電圧を印加する。これにより、p形半導体領域2にチャネル(反転層)が形成され、半導体装置200がオン状態となる。電子は、チャネルを通って上部電極22から下部電極21へ流れる。その後、ゲート電極15に印加される電圧が閾値よりも低くなると、p形半導体領域2におけるチャネルが消滅し、半導体装置200がオフ状態になる。
【0058】
半導体装置200がオフ状態のときのp+形環状領域10及び半絶縁層30の機能は、半導体装置100と同様である。すなわち、p+形環状領域10が設けられることで、p形半導体領域2から半導体装置200の外周に向けた空乏層の広がりが促される。これにより、半導体装置200の耐圧が向上する。また、半絶縁層30が設けられ、且つ半絶縁層30が半導体層SLに接することで、半導体装置200における耐圧の低下を抑制できる。
【0059】
半導体装置200においても、第1実施形態と同様に、p+形環状領域10の径方向における長さは、それよりも内周側に位置する別のp+形環状領域10の径方向における長さよりも短い。又は、p+形環状領域10同士の間の距離が、それよりも内周側に位置する別のp+形環状領域10同士の間の距離よりも長い。又は、p+形環状領域10のp形不純物濃度が、それよりも内周側に位置する別のp+形環状領域10のp形不純物濃度よりも低い。これらの条件の少なくとも1つが満たされることで、半絶縁層30への正孔の注入を抑制し、半導体装置200への電圧の印加に伴う耐圧の低下を抑制できる。また、半導体装置200において、第1実施形態の第3変形例と同様に、各p+形環状領域10の径方向における長さ、及びp+形環状領域10同士の間の距離の少なくとも一方が、上述した数式を満たすように設計されても良い。
【0060】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態に係る半導体装置の一部を表す断面図である。
半導体装置300は、IGBTである。半導体装置300は、n
+形コンタクト領域4に代えてp
+形コレクタ領域7(第5半導体領域)及びn形バッファ領域8を有する点で半導体装置200と異なる。p
+形コレクタ領域7は、下部電極21とn
-形半導体領域1との間に設けられている。n形バッファ領域8は、p
+形コレクタ領域7とn
-形半導体領域1との間に設けられている。n形バッファ領域8におけるn形不純物濃度は、n
-形半導体領域1におけるn形不純物濃度よりも高く、n
+形ソース領域6におけるn形不純物濃度よりも低い。
【0061】
半導体装置300の動作について説明する。
上部電極22に対して下部電極21に正電圧が印加された状態で、ゲート電極15に閾値以上の電圧を印加する。これにより、p形半導体領域2にチャネル(反転層)が形成され、半導体装置200がオン状態となる。電子がチャネルを通って上部電極22からn-形半導体領域1へ流れると、正孔がp+形コレクタ領域7からn-形半導体領域1に注入される。n-形半導体領域1において伝導度変調が生じることで、半導体装置300の電気抵抗が大きく低下する。その後、ゲート電極15に印加される電圧が閾値よりも低くなると、p形半導体領域2におけるチャネルが消滅し、半導体装置300がオフ状態になる。
【0062】
半導体装置300がオフ状態のときのp+形環状領域10及び半絶縁層30の機能は、半導体装置100及び200と同様である。また、半導体装置300においても、第1実施形態と同様に、p+形環状領域10の径方向における長さは、それよりも内周側に位置する別のp+形環状領域10の径方向における長さよりも短い。又は、p+形環状領域10同士の間の距離が、それよりも内周側に位置する別のp+形環状領域10同士の間の距離よりも長い。又は、p+形環状領域10のp形不純物濃度が、それよりも内周側に位置する別のp+形環状領域10のp形不純物濃度よりも低い。これらの条件の少なくとも1つが満たされることで、半絶縁層30への正孔の注入を抑制し、半導体装置200への電圧の印加に伴う耐圧の低下を抑制できる。また、半導体装置300において、第1実施形態の第3変形例と同様に、各p+形環状領域10の径方向における長さ、及びp+形環状領域10同士の間の距離の少なくとも一方が、上述した数式を満たすように設計されても良い。
【0063】
図9及び
図10に表した半導体装置は、ゲート電極15が半導体層SL中に設けられた、トレンチゲート型構造を有する。第2実施形態及び第3実施形態に係る半導体装置は、ゲート電極15が半導体層SLの上に設けられた、プレーナゲート型構造を有していても良い。第2実施形態及び第3実施形態に係る半導体装置がそれぞれMOSFET及びIGBTとして動作できれば、p形半導体領域2、p
+形コンタクト領域5、n
+形ソース領域6、及びゲート電極15の具体的な構造は、適宜変更可能である。
【0064】
以上で説明した各実施形態における、各半導体領域の間の不純物濃度の相対的な高低については、例えば、SCM(走査型静電容量顕微鏡)を用いて確認することが可能である。なお、各半導体領域におけるキャリア濃度は、各半導体領域において活性化している不純物濃度と等しいものとみなすことができる。従って、各半導体領域の間のキャリア濃度の相対的な高低についても、SCMを用いて確認することができる。また、各半導体領域における不純物濃度については、例えば、SIMS(二次イオン質量分析法)により測定することが可能である。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 n-形半導体領域、 2 p形半導体領域、 3 n+形EQPR領域、 4 n+形コンタクト領域、 5 p+形コンタクト領域、 6 n+形ソース領域、 7 p+形コレクタ領域、 8 n形バッファ領域、 10、10a~10i、10-1~10-n p+形環状領域、 11 下部電極、 15 ゲート電極、 15a ゲート絶縁層、 21 下部電極、 22 上部電極、 23 EQPR電極、 30 半絶縁層、 31,32 絶縁層、 33 絶縁部、 α 距離、 β 長さ、 100~130,200,300 半導体装置、 L 距離、 SL 半導体層、 X1~X3 長さ、 Y1~Y3 距離