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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】二重合金火工作動弁アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/14 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
F16K17/14
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019534750
(86)(22)【出願日】2017-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 US2017062940
(87)【国際公開番号】W WO2018125442
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-11-16
(31)【優先権主張番号】15/391,931
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー-ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE-HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】メリート,ジョエル・パトリック
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-111381(JP,A)
【文献】特開2000-149747(JP,A)
【文献】特開2016-33451(JP,A)
【文献】特開昭58-107324(JP,A)
【文献】米国特許第3587601(US,A)
【文献】実開昭64-12974(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/00-17/168
F16K 17/36-17/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火工作動弁アセンブリであって、
インサート本体であって、入口、出口、および前記入口から前記出口まで延びる流路を有し、第1の合金で形成されている、前記インサート本体と、
剪断構造であって、前記流路を閉じるように前記インサート本体の前記出口に結合され、かつ第2の合金から形成され、前記剪断構造の前記第2の合金は前記インサート本体の前記第1の合金に結合されて前記剪断構造と前記インサート本体との間の粒界に沿って密閉シールを形成し、前記粒界は前記火工作動弁アセンブリの作動中に破壊界面となるように構成される、前記剪断構造と、
を含むことを特徴とする火工作動弁アセンブリ。
【請求項2】
前記インサート本体は、前記剪断構造との接触面積を減少させるために、前記出口で先細りの形状になっていることを特徴とする請求項1に記載の火工作動弁アセンブリ。
【請求項3】
前記インサート本体は、2インチ(5.08cm)より大きい外径を有することを特徴とする請求項1に記載の火工作動弁アセンブリ。
【請求項4】
前記第1の合金および前記第2の合金は、異なる結晶構造を有することを特徴とする請求項1に記載の火工作動弁アセンブリ。
【請求項5】
前記第1の合金および前記第2の合金が異なる格子定数を有することを特徴とする請求項1に記載の火工作動弁アセンブリ。
【請求項6】
前記第2の合金が前記第1の合金よりも硬いことを特徴とする請求項1に記載の火工作動弁アセンブリ。
【請求項7】
前記第2の合金はコバルトを含まないことを特徴とする請求項1に記載の火工作動弁アセンブリ。
【請求項8】
前記第2の合金が少なくとも0.5重量パーセントの窒素を含むことを特徴とする請求項1に記載の火工作動弁アセンブリ。
【請求項9】
前記インサート本体の前記流路を決定する第3の合金の被覆材であって、前記第3の合金は、前記第1の合金および前記第2の合金よりも耐腐食性が高い、前記第3の合金をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の火工作動弁アセンブリ。
【請求項10】
前記剪断構造に衝突して前記剪断構造を変位させ、前記流路を開くように構成されたピストンをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の火工作動弁アセンブリ。
【請求項11】
前記剪断構造に固定された保持構造であって、前記保持構造は、前記剪断構造の作動後の動きおよび位置を制御しながら前記剪断構造の変位を可能にするように構成されている、前記保持構造をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の火工作動弁アセンブリ。
【請求項12】
前記インサート本体がニップルの形態であり、前記剪断構造が剪断キャップの形態であることを特徴とする請求項1に記載の火工作動弁アセンブリ。
【請求項13】
前記インサート本体は、第1導管セクションおよび第2導管セクションを含み、前記剪断構造は、前記第1導管セクションと前記第2導管セクションとの間にある剪断プラグの形態であることを特徴とする請求項1に記載の火工作動弁アセンブリ。
【請求項14】
火工作動弁アセンブリの製造方法であって、
入口、出口、および前記入口から前記出口まで延びる流路を有するように、第1合金のインサート本体を形成するステップと、
第2合金の剪断構造を形成するステップと、
前記流路を閉じるように前記剪断構造を前記インサート本体の前記出口に結合し、前記剪断構造の前記第2合金を前記インサート本体の前記第1合金に結合して前記剪断構造と前記インサート本体との間の粒界に沿って密閉シールを形成するステップと
を備え、前記粒界は前記火工作動弁アセンブリの作動中に破壊界面となるように構成されることを特徴とする火工作動弁アセンブリの製造方法。
【請求項15】
前記剪断構造を形成するステップと、前記剪断構造を結合するステップとが同時に実行されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記剪断構造を形成するステップは、前記第2合金の粉末を用いて実施されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記結合するステップは、前記剪断構造を前記インサート本体に3D印刷することにより実施されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記結合するステップは、前記剪断構造を前記インサート本体に熱間静水圧プレスすることにより実施されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記インサート本体の前記流路を決定するように第3合金の被覆を形成するステップであって、前記第3合金は、前記第1合金および前記第2合金よりも耐食性が高い、ステップとを更に含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項20】
火工作動弁アセンブリの作動方法であって、
制御信号に応じて火工装置をトリガーするステップと、
インサート本体の出口に接着された剪断構造に衝突させ、前記剪断構造を、前記剪断構造と前記インサート本体の間の粒界に沿って変位させ、前記インサート本体を変形させることなく、前記インサート本体内の流路を開くステップと
を備えたことを特徴とする火工作動弁アセンブリの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、火工品装薬を爆発させることによって作動する弁に関する。このような弁は、例えば原子力発電所の安全システムに使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
従来、剪断型火工作動弁は、剪断部と一体となり形成された挿入部を有する。特に、挿入部分及び剪断部分はモノシリック構造として形成され、従って同じ材料でできている。挿入部分は、作動中の適切な剪断作用を促進する目的で構造的な脆弱性を提供するように設計された溝または他の特徴によって剪断部分から画定されてもよい。弁は作動するまで閉じた状態を維持するように設計されている。作業中、火工品装薬を爆発させて剪断部分を剪断して弁を開く。弁を開くために必要なデトネーションの大きさは、弁の口径などの様々な要因によって異なる。この点に関して、大口径弁は、同じ素材の小口径弁と比較して、一般に作動するためにはより多くの火工品装薬を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、より強いデトネーションはまた、作動中に剪断部分が剪断されて弁を開くときに、挿入部分及び/又は材料の破断の発生の増加をもたらす。結果として、開いた弁を通る結果として生じる流れは、変形によって妨げられ、歪められ、または乱され、それによって弁の意図された動作に悪影響を及ぼし得る。さらに、流れの中に材料の破片が存在すると、下流の構成要素および構造に損傷を与える、若しくは有害な影響を及ぼす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
火工作動弁アセンブリは、入口と、出口と、入口から出口まで延びる流路とを有するインサート本体を含んでもよい。インサート本体は第1の合金から形成されている。剪断構造は、流路を閉じるようにインサート本体の出口に接合されている。剪断構造は、第2の合金から形成される。剪断構造の第2の合金は、インサート本体の第1の合金に接合され、密閉シールを形成している。インサート本体は、剪断構造との接触面積を減らすために出口で先細りの形状になっていてもよい。
【0005】
インサート本体は、2インチよりも大きい外径を有し得る。第1の合金と、第2の合金は互いに異なる結晶構造及び/又は異なる格子状数を有する。第1の合金は、400シリーズのステンレス鋼、又は他の硬化可能な高強度マルテンサイトステンレス鋼合金であり得る。第1合金は又、高強度低合金鋼でもよい。第1の合金はインコネル合金、又は他の高強度ニッケル合金でもよい。第2合金は、第1合金よりも硬い。火工作動弁アセンブリが原子炉環境で使用される場合、第2の合金がコバルトを含まないことが有益であろう。更に、第2の合金は、少なくとも0.5重量パーセントの窒素を含有してもよい。第2の合金は、又、第1の合金と第2の合金が同じ材料でない限り、第1の合金について特定された合金の1つでもよい。
【0006】
第3の合金の被覆によって、インサート本体の流路が決定され得る。第3の合金は、第1の合金及び第2の合金よりも高い耐腐食性を有するか、さもなければ火工作動弁アセンブリが設置される配管システムの材料と一致する、連続する耐腐食性の内部流体の境界を提供する必要がある。第3の合金は、300シリーズのステンレス鋼であり得る。
【0007】
ピストンが剪断構造に衝突して、剪断構造が変位し、流路が開かれるようにピストンは構成されている。保持構造は、剪断構造に固定されてもよい。保持構造は、剪断構造の作動後の動きと位置を制御しながら、剪断構造の変位を可能にするように構成されている。剪断構造が捕捉される(及び流体経路からの剪断構造の完全な変異を可能にする)弁体内部の保持ポケット又は捕捉空間も、保持構造とともに、又は保持構造の代わりに使用されてもよい。
【0008】
インサート本体は、ニップルの形態であってよく、剪断構造は、剪断キャップの形態であってもよい。別の例示的な実施形態では、インサート本体は、第1の導管セクション及び第2の導管セクションを含んでもよく、剪断構造は、インサート本体の第1の導管セクションと第2の導管セクションの間にある剪断プラグの形態であり得る(例えば、インサート本体の入口と出口の導管の間に接着される)。
【0009】
火工作動弁アセンブリの製造方法は、入口、出口、及び入口から出口まで延びる流路を有するように、第1合金のインサート本体を形成することを含んでもよい。更に、この方法は、第2合金の剪断構造を形成することを含んでもよい。更に、この方法は、流路を閉じるように、剪断構造をインサート本体の出口に接着することを含んでもよい。剪断構造の第2の合金は、ハーメチックシールを形成するように、挿入体の第1の合金に結合されている。
【0010】
剪断構造の形成及び剪断構造の接着は、同時に実行されてもよい。加えて、剪断構造は、第2合金の粉末で形成されてもよい。従って、一例では、3D印刷を使用して、インサート本体上に剪断構造を形成してもよい。別の例では、インサート本体に剪断構造を形成するために熱間静水圧プレスを使用してもよい。
【0011】
製造方法は、インサート本体の流路を決定するように第3合金の被覆を形成することを更に含んでもよい。第3の合金は、第1の合金及び第2の合金よりも耐食性が高い。第3の合金は、異種材料の腐食を防止するために均一に用いられる。
【0012】
弁アセンブリを作動させる方法は、制御信号に応答して火工品デバイスをトリガーすることを含み得る。更に、この方法は、剪断構造をインサート本体の出口に接合して、剪断構造を剪断構造とインサート本体の間の粒界に沿って変位させ、インサート本体を変形させることなくインサート本体内の流路を開くことを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細の非限定的な実施形態の様々な特徴及び利点は、添付の図面と併せて詳細な説明を検討することでより明らかになる可能性がある。添付の図面は単に例示を目的として提示されており、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。添付の図面は、特に明記されていない限り、縮尺通りに描かれているとはみなされない。明確にするために、図面の様々な寸法は誇張されている場合がある。
図1】例示的な実施形態による、作動前の火工作動弁アセンブリの概略図である。
図2】例示的な実施形態による、作動後の図1の火工作動弁アセンブリの概略図である。
図3】例示的な実施形態による、作動前の別の火工作動弁アセンブリの概略図である。
図4】例示的な実施形態による、作動後の図3火工作動弁アセンブリの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
要素または層が別の要素または層を「オン」、「接続」、「結合」、または「覆う」と呼ばれる場合、それは直接オン、接続、結合、または、他の要素または層を覆うか、介在する要素または層が存在してもよい。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接オン」、「直接接続」、または「直接結合」されていると呼ばれる場合、介在する要素または層は存在しない。同じ符号は、仕様全体を通して同じ要素を指す。本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、関連するリストされたアイテムの1つまたは複数のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0015】
本明細書では、第1、第2、第3などの用語を使用して様々な要素、コンポーネント、領域、層、及び/又はまたはセクションを説明することがあるが、これらの要素、コンポーネント、領域、層、及び/又はセクションは、これらの条件に制限されることはない。これらの用語は、1つの要素、コンポーネント、領域、レイヤー、またはセクションを別の領域、レイヤー、またはセクションから区別するためにのみ使用される。従って、以下で説明する第1の要素、構成要素、領域、層、またはセクションは、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、またはセクションと呼ぶことができる。
【0016】
本明細書では、説明を簡単にするために、ある要素または特徴と別の要素との関係、又は図に示されている機能を説明するために、空間的に相対的な用語(例えば「下部」、「低い」、「下に」、「上方」、「高い」など)を使用することがある。空間的に相対的な用語は、図に示された向きに加えて、使用中または動作中のデバイスの異なる向きを包含することを意図していることを理解されたい。たとえば、図のデバイスを裏返すと、他の要素または機能の「低い」または「下部」にある要素は、他の要素または機能の「上方」に配置される。したがって、「低い」という用語は、上と下の両方の方向を含む場合がある。デバイスは、別の方法で方向付けられ(90度または他の方向で)、それに応じて本明細書で使用される空間的に相対的な記述子が解釈されてもよい。
【0017】
本明細書で使用される用語は、様々な実施形態のみを説明するためのものであり、例示的な実施形態を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。さらに、用語「含む」、「含んでいる」、「備える」、及び/又は「備えている」は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/又はコンポーネント、ただし、1つまたは複数の他の機能、整数、ステップ、操作、要素、コンポーネント、及び/又はグループの存在または追加を排除しない。
【0018】
例示的な実施形態は、例示的な実施形態の理想化された実施形態(および中間構造)の概略図である断面図を参照して本明細書で説明される。そのようなものとして、例えば、製造技術及び/又は公差の結果としてのイラストの形状からの変動が予想される。したがって、例示的な実施形態は、本明細書に示される領域の形状に限定されると解釈されるべきではなく、例えば、製造に起因する形状の逸脱を含むべきである。
【0019】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、例示的な実施形態が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されている用語を含む用語は、関連技術の文脈における意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、ここでの定義が明示されない限り理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されないことがさらに理解される。
【0020】
図1は、例示的な実施形態による、作動前の火工作動弁アセンブリの概略図である。火工作動弁アセンブリ100は、原子力発電所の安全システムに適用することができる。ここで、火工作動弁アセンブリ100は、他の状況および環境でも使用できることを理解されたい。図1に示されるように、火工作動弁アセンブリ100は、入口、出口、および入口から出口まで延びる流路104を有するインサート本体102を含む。インサート本体102は、第1合金により形成される。剪断構造108は、流路104を閉じるようにインサート本体102の出口に結合されている。剪断構造108は、第2の合金により形成される。剪断構造108の第2の合金は、ハーメチックシールを形成するように、インサート本体102の第1の合金に結合されている。インサート本体102は、一次導管またはニップルの形態であり得、剪断構造108は、剪断キャップの形態であり得る。
【0021】
本明細書の原理は様々な火工作動弁に適用できるが、この教示は、大口径弁に特に有益である。ここで、当業者には、2インチを超える外径を有するバルブが大口径弁であると理解されている。これに関して、例示的な実施形態によれば、インサート本体102は、2インチより大きい外径(非フランジ部分)を有する。別の例では、インサート本体102の外径は、6インチ、8インチ、さらには14インチより大きくてもよい。
【0022】
作動中、エネルギーの衝撃を利用して、インサート本体102から剪断構造108を剪断し、火工作動弁アセンブリ100を開く。作動中のきれいな剪断を促進するために、インサート本体102および剪断構造108を形成するために使用される材料は、エネルギーの衝撃が、意図した破壊界面の周りに、ほぼ瞬時に、最小の吸収で伝達されることが可能となるのに十分に硬くなければならない。そのような場合、エネルギーの衝撃は、インサート本体102と剪断構造108の界面のほぼ同時の分離を引き起こす。そうでなければ、剪断作用の開始から完了までの時間が長くなるほど(例えば、エネルギーの衝撃に続く破壊の伝播が遅くなるほど)、発生する可能性のある材料の変形と巨視的な裂け目が多くなる。上記の結果は小口径弁では特に問題ではないかもしれないが、大口径弁の場合、インサート本体102と剪断構造108との間の、エネルギーの衝撃の衝撃点からインサート間の界面の端までの距離が長くなるため、効果はより顕著になる。
【0023】
上記の欠点を克服するために、火工作動弁アセンブリ100に関して、二重合金の方法が用いられる。特に、インサート本体102は第1合金で形成され、剪断構造108は異なる第2合金で形成される。第1の合金および第2の合金は、比較的硬い材料であり、(例えば、結晶構造の幾何学的形状及び/又は格子寸法により)相互に十分に区別されており、作動中のインサート本体102および剪断構造108の界面またはそのごく近傍での比較的きれいな破壊面の生成を促進する。加えて、エネルギー衝撃を剪断領域に集中させるのを助けるために、その出口でのインサート本体102の外面は、せん断構造108との接触面積を減少させるために先細りの形状にされてもよい。
【0024】
非限定的な実施形態において、第1の合金は、体心立方(BCC)結晶構造を有し得る。例えば、第1の合金は、400シリーズのステンレス鋼(または他の硬化可能な高強度マルテンサイトステンレス鋼合金)などのフェライトまたはマルテンサイト鉄ベースの合金であってもよい。第1の合金は、高強度低合金鋼であってもよい。別の例では、第1の合金は、インコネル合金(または他の高強度ニッケル合金)などのオーステナイトニッケルクロムベースの合金であってもよい。
【0025】
第2の合金は、第1の合金よりも硬い。非限定的な実施形態において、第2の合金は、面心立方(FCC)結晶構造を有し得る。火工作動弁アセンブリ100が原子炉環境で使用される場合、曝露の懸念を低減または回避するために、第2の合金がコバルトを含まないことが有益である。第2の合金は、少なくとも0.5重量パーセントの窒素を含むオーステナイト鉄ベースの合金であってもよい。第2の合金を得るために、オーステナイト鉄ベースの合金をベース材料として使用し、窒素で過飽和にすることができる。たとえば、2番目の合金には、Electric Power Research Institute(EPRI)のNitroMaxxを使用できる。第2の合金は、第1の合金と第2の合金が同じ材料で形成されていない限り、第1の合金について上記で開示した材料の1つであってもよい。
【0026】
第1の合金が第2の合金に融合する結果として、インサート本体102と剪断構造108との界面は、隣接する合金よりも、結晶構造の不整合によって、より弱いか、共生強化によって、より強くなる。前者の状況では、自然な破壊面が存在し、作動中に界面でせん断が発生する。後者の状況では、非常に薄い強化された部分が界面に存在し、作動中に界面のすぐ近くでせん断が発生する。従って、どちらの状況でも、作動中に比較的きれいなせん断を実現できる。
【0027】
第3合金のクラッド106は、インサート本体102の流路104を裏打ちしている。第3合金は、第1合金および第2合金ほど硬くないが、第1合金および第2合金よりも耐腐食性が高い。合金。第3の合金は、300シリーズのステンレス鋼(例えば、308SS、316SS)などのオーステナイト鉄系合金であってもよい。
【0028】
ピストン116は、剪断構造108に衝突して剪断構造108を変位させ、流路104を開くように構成されている。ピストン116は、火工装置118によって動作するように構成されており、火工装置118は、制御システムによって、個人が手動でまたは自動的に(および遠隔的に)トリガーされ得る。流路104を妨害する可能性を軽減または防止するために、火工装置118の爆発後にピストン116が突出する距離を制限するストッパーを設けることができる。ストッパーの代わりに、またはそれに加えて、せん断構造108に衝突した後、ピストン116を流路104から離れるように付勢するために、ばねもまたあり得る。例えば、ピストン116のヘッド部分がばねの上に載った状態で、ピストン116の下部ラム部分は、ばねを通って延びてもよい。その結果、火工装置118が爆発すると、ピストン116が駆動されて剪断構造108に衝突し、同時にばねを圧縮する。直後に、ピストン116は、ばねの減圧により持ち上げられ、流路104から離れる。
【0029】
保持構造110は、剪断構造108の作動後の運動および位置を制御するために、剪断構造108に固定され得る。保持構造110は、ピン114と係合するスロット112を含み得る。ピン114は、インサート本体102の近くに取り付けられ、静止したままであるように構成され得、(せん断構造108が固定される)保持構造110は、作動後に、スロット112を介してピン114の周りで軸および角度の可動性を有するように構成される。
【0030】
保持構造110は、任意選択で、挿入構造体102および剪断構造108に固定することができる。このような非限定的な実施形態では、保持構造110は、剪断構造108との接続を維持しながら剪断構造108の変位を可能にするように構成される。あるいは、保持構造110を省略し、作動後に剪断構造108を受け入れるための凹部またはポケットを設けることができる。
【0031】
図2は、例示的な実施形態に係る、作動後の図1の火工作動弁アセンブリの概略図である。図2に示すように、火工装置118の爆発により、ピストン116は駆動して剪断構造108に衝突する。その結果、剪断構造108は、第1の合金と第2の合金の界面またはそのごく近傍でインサート本体102から剪断され、それによりプロセス中の粒子間の金属結合を破壊する。この点で、従来技術のような巨視的スケールのものとは対照的に、引き裂きは顕微鏡スケールのものに制限される。
【0032】
保持構造110のスロット112は、剪断構造108による軸方向の動きを可能にし、剪断作用を促進する。スロット112はまた、剪断構造108がインサート本体102から分離されると、(剪断構造108が固定される)保持構造110が下方に揺動して流路104を開くように角運動を可能にする。その結果、(例えば、減圧のため)入口104aから出口104bへのインサート本体102を通る流れが生じ得る。図2に示されるように、火工作動弁アセンブリ100は、作動後、ピストン116および剪断構造108が流路104内に突出しないように構成され得る。特に、ピストン116の下面は、インサート本体102によって画定された流路104の上限のレベル以上であり得る。さらに、剪断構造108(図2)の上面は、インサート本体102によって画定された流路104の下限のレベル以下であり得る。
【0033】
図3は、例示的な実施形態による、作動前の別の火工作動弁アセンブリの概略図である。図3に示されるように、火工作動弁アセンブリ300は、第1の導管セクション302(例えば、入口ノズル)および第2の導管セクション303(例えば、出口ノズル)を含むインサート本体を含む。剪断構造308は、流路を閉鎖するように、挿入体の第1の導管セクション302と第2の導管セクション303との間にある剪断プラグである。特に、剪断構造308は、第1の導管セクション302の出口に接着/融着され、第2の導管セクション303の入口に接着/融着されているとみなされることができる。インサート本体の第1の導管セクション302と第2の導管セクション303は第1合金で形成され、せん断構造308は異なる第2合金で形成されている。剪断構造308の第2の合金は、密閉シールを形成するように、インサート本体の第1の導管セクション302および第2の導管セクション303の第1の合金に結合される。第1の合金、第2の合金、およびそれらの互いへの結合/融合は、図1および図2に関連して上述した通りである。
【0034】
第3の合金の被覆306によって、インサート本体の第1の導管セクション302および第2の導管セクション303によって画定される流路が決定される。第3の合金は、図1および図2に関連して上述した通りである。
【0035】
ピストン316は、剪断構造308に衝突して剪断構造308が変位し、流路を開くように構成されている。ピストン316は、火工式装置318によって動作するように構成され、火工式装置318は、個人によって手動で、または制御システムによって自動的に(および遠隔で)トリガーすることができる。流路を妨害する可能性を軽減または防止するために、ピストン316のラム部分の長さを調整して、火工品318の爆発後にピストン316が突出する距離を制限することができる。
【0036】
図4は、例示的な実施形態による作動後の、図3の火工作動弁アセンブリの概略図である。図4に示すように、火工品318の爆発は、ピストン316を駆動してせん断構造308に衝突する。その結果、せん断構造308は、第1合金と第2合金の界面またはそのすぐ近くでインサート本体からせん断され、それによりプロセスでそれらの間の原子結合を破壊する。結果として、インサート本体の第1の導管セクション302および第2の導管セクション303を通って流れが生じ得る。
【0037】
図1および図2に示される例示的な実施形態は、剪断キャップ圧力境界と外部火工作動を備えた減圧弁(DPV)と見なすことができる。他方、図3および図4に示される例示的な実施形態は、流体境界の完全性のために、剪断プラグの内側本体と密閉された火工作動を備えた火工ブロック弁(PBV)と見なすことができる。
【0038】
火工作動弁アセンブリを製造する方法は、入口、出口、および入口から出口まで延びる流路を有するように、第1の合金のインサート本体を形成することを含む。加えて、この方法は、第2合金の剪断構造を形成することを含む。さらに、この方法は、流路を閉じるために、剪断構造をインサート本体の出口に接着することを含む。剪断構造の第2の合金は、密閉シールを形成するように、挿入体の第1の合金に結合されている。密閉シールは、通常の操作圧力の少なくとも1,500ポンド/平方インチ(psi)に耐えることができ、より大きな操作圧力用に設計することができる。
【0039】
剪断構造の形成およびせん断構造の結合は、同時に実行されてもよい。加えて、せん断構造は、第2合金の粉末で形成されてもよい。レーザーを使用して粉末を溶かし、インサート本体に層ごとに剪断構造を作成する。熱と圧力を使用して粉末を溶融し、インサート本体に剪断構造を形成することもできる。したがって、一例では、3D印刷(または積層造形)を使用して、インサート本体上に剪断構造を形成することができる。別の例では、インサート本体に剪断構造を形成するために熱間静水圧プレスが使用されてもよい。
【0040】
本方法は、インサート本体の流路を決定するように第3合金の被覆を形成することをさらに含み、第3合金は、第1合金および第2合金よりも耐腐食性が高い。クラッディングは、剪断構造の形成の前または後に形成されてもよい。
【0041】
弁アセンブリを作動させる方法は、制御信号に応答して火工品デバイスをトリガーすることを含み得る。さらに、この方法は、剪断体を挿入体の出口に接合してせん断体を挿入することにより、剪断体と挿入体の間の粒界に沿ってせん断体を変位させ、インサート本体を変形することなく挿入体内の流路を開くことを含む。
【0042】
本明細書で議論される二重合金アプローチは、火工作動弁アセンブリを開くための剪断作用後に比較的きれいな流路を提供する。したがって、損失係数への影響はごくわずかである。さらに、デュアルアロイアプローチにより、作動に必要なインパルスのエネルギーレベルをより予測可能にすることができる。
【0043】
本明細書ではいくつかの例示的な実施形態を開示したが、他の変形形態が可能であり得ることを理解されたい。そのような変形は、本開示の精神および範囲からの逸脱と見なされるべきではなく、当業者に明らかであるすべてのそのような修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4