(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】回生ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/17 20060101AFI20230214BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20230214BHJP
B60W 10/18 20120101ALI20230214BHJP
B60W 20/11 20160101ALI20230214BHJP
B60L 7/12 20060101ALI20230214BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230214BHJP
【FI】
B60T8/17 C
B60W10/08 900
B60W10/18 900
B60W20/11
B60L7/12 Q
B60L3/00 N
(21)【出願番号】P 2019542084
(86)(22)【出願日】2018-01-19
(86)【国際出願番号】 GB2018050166
(87)【国際公開番号】W WO2018142104
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-12
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】303063311
【氏名又は名称】ベントレー・モーターズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オマハー,デグラ
(72)【発明者】
【氏名】クランプトン,マシュー
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-221889(JP,A)
【文献】特開2009-177956(JP,A)
【文献】国際公開第2013/018198(WO,A1)
【文献】特開2014-230457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60W 10/08
B60W 10/18
B60W 20/11
B60L 7/12
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の回生ブレーキシステムであって、
前記車両に関する1つ以上の減速プロファイルの詳細を記憶する記憶手段であって、前記減速プロファイルの各々は、単位時間あたりの走行距離、または、
時間に対する車両速度の記録を含むものである記憶手段と、
現在のブレーキ操作を、選択かつ記憶された前記減速プロファイルと比較し、前記操作の間に、記憶された前記減速プロファイルから前記現在のブレーキ操作における前記減速プロファイルがどれだけ逸脱しているかを表す出力信号を生成するように構成された比較手段と、
前記現在のブレーキ操作について前記車両のドライバーにフィードバックを提供するために、前記出力信号によって駆動されるドライバーインタフェースと、
を備え、
前記ドライバーインタフェースは、前記ドライバーのブレーキ力が、記憶された前記減速プロファイルを達成するのに必要なものよりも小さいか高いかを示す、車両用の回生ブレーキシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用の回生ブレーキシステムにおいて、
前記現在のブレーキ操作における前記減速プロファイルを記憶する手段を備え、
前記比較手段は、ブレーキ操作の完了時に、前記現在のブレーキ操作における前記減速プロファイルに関してのメリットスコアを決定するとともに、当該メリットスコアを、前記ブレーキ操作中に前記現在のブレーキプロファイルと比較する記憶された前記ブレーキプロファイルのメリットスコアと比較するように構成された、回生ブレーキシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
ブレーキ操作の前記メリットスコアが、前記ブレーキ操作中に回収されるエネルギー量である、または、それに関連する、回生ブレーキシステム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
前記比較手段は、前記現在のブレーキ操作における前記減速プロファイルの前記メリットスコアが、記憶された前記ブレーキ操作における前記減速プロファイルのものを超えるときに、記憶された前記減速プロファイルにおける前記減速プロファイルの詳細を、前記現在のブレーキ操作における前記減速プロファイルの詳細と置き換え、記憶された前記減速プロファイルに取って代わるように構成された、回生ブレーキシステム。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
ブレーキ事象に関する情報を前記比較手段に提供するように構成された回生ブレーキ制御装置を備え、
前記情報には、車両速度、ブレーキ適用の継続時間、必要とされるブレーキ力、前記回生ブレーキシステムによって提供されるブレーキ力、および、前記回生ブレーキシステムによって回収されるエネルギーのうち1つ以上が含まれる、回生ブレーキシステム。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
前記車両の位置を決定してそれを前記比較手段に提供するように動作する位置決めシステムを備える、回生ブレーキシステム。
【請求項7】
請求項6に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
前記位置決めシステムは、マップデータを記憶するメモリを備え、前記車両の位置における道路の特性に関する情報を、前記比較手段に提供するように構成された、回生ブレーキシステム。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
前記比較手段は、前記ブレーキ操作の時刻および/または曜日を決定することを可能にするクロックを備える、回生ブレーキシステム。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
前記車両の外部の周囲温度を測定してそれを前記比較手段に提供するように動作する温度計を備える、回生ブレーキシステム。
【請求項10】
請求項1~8の何れか一項に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
前記車両の走行距離に関する情報を、前記比較手段に提供するように動作するセンサを備える、回生ブレーキシステム。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
減速プロファイルにおける、単位時間当たりの走行距離、必要とされるブレーキ力、および、回収されたエネルギーを記録するように構成された、回生ブレーキシステム。
【請求項12】
請求項11に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
減速プロファイルにおける、位置、時刻、曜日、道路の特性、および/または、温度のうちの1つ以上を記録するように構成された、回生ブレーキシステム。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
前記記憶手段は、2つ以上の減速プロファイルの詳細を記録し、
前記比較手段は、ブレーキ適用が最初に行われるときに、前記現在のブレーキ操作を比較する記憶された前記減速プロファイルのうち1つを選択するように構成された、回生ブレーキシステム。
【請求項14】
請求項13に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
前記比較手段は、記憶された減速プロファイルに関連して格納された空間的、時間的、および/または、環境的な情報を、前記現在のブレーキ操作に関する対応情報と比較するとともに、格納された一時的および/または環境的な情報が前記現在のブレーキ操作のものともっとも厳密に一致する記憶された前記減速プロファイルを選択するように構成された、回生ブレーキシステム。
【請求項15】
請求項13に記載の回生ブレーキシステムであって、
前記記憶手段は、デフォルトの減速プロファイルの詳細と、1つ以上の追加の減速プロファイルの詳細とを格納し、前記追加の減速プロファイルの詳細には空間的、時間的、および/または、環境的な情報が含まれ、
前記比較手段は、前記追加の記憶された減速プロファイルに関連して格納された前記空間的、時間的、および/または、環境的な情報を、前記現在のブレーキ操作に関連する対応情報と比較して、有効な比較が可能な幾つかのプロファイルを選択するように構成され、選択された幾つかのプロファイルのデフォルトでは、前記現在のブレーキ操作を前記デフォルトの減速プロファイルと比較するように構成された、回生ブレーキシステム。
【請求項16】
請求項15に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
有効な比較を行うことができる2つ以上の減速プロファイルが選択されるときに、前記比較手段は、前記現在のブレーキ操作の前記空間的、時間的、および/または、環境的な情報と前記記憶された減速プロファイルのそれぞれのものとの間の類似の程度を表す類似点スコアを生成するように構成された、回生ブレーキシステム。
【請求項17】
請求項16に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
前記比較手段は、もし前記類似点スコアがしきい値を超えるならば前記現在のブレーキ操作と比較する最高の前記類似点スコアを有する減速プロファイルを選択するが、そうでなければそれを前記デフォルトの減速プロファイルと比較するように構成された、回生ブレーキシステム。
【請求項18】
請求項15~17の何れか一項に記載の回生ブレーキシステムにおいて、
前記現在のブレーキ操作が前記デフォルトの減速プロファイルと比較されるときに、前記比較手段は、前記現在のブレーキ操作における前記減速プロファイルの詳細を追加の減速プロファイルとして記憶するように構成された、回生ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のブレーキシステムに関し、特に限定されないが、自動車などの車両用の回生ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジン、電気牽引モータ、および電気バッテリ(電池)から構成されるハイブリッド駆動システムを搭載した自動車や純粋な電気自動車などの、電気推進システムを搭載した自動車は、車両を推進(前進)させる際に用いる車両の運動エネルギーを回収および貯蔵するために、大抵、回生ブレーキ(回生制動装置)をうまく活用する。これは、通常とは逆に電気牽引モータを発電機として使って、車両のロードホイール(路面車輪)からの回転運動エネルギーを、車両の電気バッテリに貯蔵される電気エネルギーに変換することにより達成される。
【0003】
典型的な電気牽引モータの容量と電気牽引システムの他の特性とにより、これらの回生ブレーキシステムは、従来の摩擦ブレーキシステムで浪費され得るほど迅速にエネルギーを吸収することができず、エネルギーを吸収するその能力は、動作と、車速(車両速度)などの環境条件とに伴って変化し得る。その結果、回生システムへのバックアップを補いかつ提供するために摩擦ブレーキシステムもまた設けられ、摩擦システムと回生システムとの間でブレーキ力(制動力)を分配するためにブレーキ制御システムが設けられている。ブレーキ制御システムは、ドライバー(運転手)に対して従来の摩擦ブレーキシステムの感覚を維持しながら、エネルギー回収を最大化するために2つのブレーキシステム間にブレーキ力を分配するように構成(配置)される。
【0004】
実際には、回生ブレーキシステムによって回収されるエネルギー量は、ドライバーの運転スタイルによって制限される。通常、激しいブレーキをかける(ブレーキング)には、回生ブレーキと摩擦ブレーキの両方を動作させるように要求される。摩擦ブレーキが展開されるたびに、エネルギーは分散されるが、さもなければ回収されたかもしれない。エネルギー回収を最大化するには、ドライバーが自分の運転を変更する(部分的に改める)こと、特に特定の車両に合うようにブレーキングスタイルを変更することが必要になる。しかしながら、特に回生ブレーキシステムが従来の摩擦ブレーキシステムと同じ感覚(感触)を提供するように設計されている場合に、ドライバーがどのようにブレーキングスタイルを変更するべきかは、ドライバーにとって必ずしも明らかではない。さらに、最適なブレーキ戦略は、車両ごとに異なるだけでなく、道路や交通状況などの外部要因に応じて異なる場合がある。
【0005】
本発明における実施の形態の目的は、これらの問題に対処することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様によれば、車両用の回生ブレーキシステムが提供され、当該システムは、前記車両に関する1つ以上の減速プロファイルの詳細を記憶する記憶手段であって、前記減速プロファイルの各々は、長い時間にわたる車両速度または同等のものの記録を含むものである記憶手段と、現在のブレーキ操作を、選択かつ記憶された前記減速プロファイルと比較し、前記操作の間に、記憶された前記減速プロファイルから前記現在のブレーキ操作における前記減速プロファイルの逸脱を表す出力信号を生成するように構成された比較手段と、前記現在のブレーキ操作について前記車両のドライバーにフィードバックを提供するために、前記出力信号によって駆動されるドライバーインタフェースと、を備える。
【0007】
このように、出力信号は、車両の好ましいまたは理想的な減速プロファイルになる可能性がある記憶された減速プロファイルからブレーキ操作がどれだけ逸脱して(それて)いるかをさし示すフィードバックをドライバーに提供するのに役立つ。
【0008】
車両用の回生ブレーキシステムは、前記現在のブレーキ操作について前記車両のドライバーにフィードバックを提供するために、前記出力信号によって駆動されるドライバーインタフェースを備えてもよい。そのインタフェースはディスプレイであってもよいし、または、可聴の、触覚の、または、他のフィードバックをドライバーに提供してもよい。インタフェースは、前記ドライバーのブレーキ力が、記憶された前記減速プロファイルを達成するのに必要なものよりも小さいか高いかを示してもよく、記憶された減速プロファイルを達成するのに必要とされる力からの逸脱(ずれ)の範囲を示してもよい。したがって、これにより、ドライバーは、ブレーキ操作中に、自己の動作を特にブレーキ力を変更可能であり、記憶された減速プロファイルに、特に理想的な減速プロファイルに密接に対応するようにしている。
【0009】
車両用の回生ブレーキシステムは、前記現在のブレーキ操作における前記減速プロファイルを記憶する手段を備え、前記比較する手段は、ブレーキ操作の完了時に、前記現在のブレーキ操作における前記減速プロファイルに関してのメリットスコアを決定するとともに、当該メリットスコアを、前記ブレーキ操作中に前記現在のブレーキプロファイルと比較する記憶された前記ブレーキプロファイルのメリットスコアと比較するように構成されてもよい。前記メリットスコアは、前記ブレーキ操作中に回収されるエネルギー量であってもよいし、または、それに関連してもよい。前記比較する手段は、前記現在のブレーキ操作における前記減速プロファイルの前記メリットスコアが、記憶された前記ブレーキ操作における前記減速プロファイルのものを超えるときに、記憶された前記減速プロファイルにおける前記減速プロファイルの詳細を、前記現在のブレーキ操作における前記減速プロファイルの詳細と置き換え、前記理想的な減速プロファイルに取って代わるように構成されてもよい。したがって、当該システムは、使用を通じて理想的なブレーキ操作のプロファイルを効果的に学習する。そのため、理想的な減速プロファイルは、最大のエネルギー回収を達成する現在知られたプロファイルである。
【0010】
回生ブレーキシステムは、ブレーキ事象に関する情報を前記比較する手段に提供するように構成された回生ブレーキ制御装置を備えてもよく、前記情報は、車両速度、ブレーキ適用の継続時間、必要とされるブレーキ力、前記回生ブレーキシステムによって提供されるブレーキ力、および、前記回生ブレーキシステムによって回収されるエネルギーのうち1つ以上を含んでもよい。
【0011】
回生ブレーキシステムは、前記車両の位置を決定してそれを前記比較する手段に提供するように動作する位置決めシステムを備えてもよい。前記位置決めシステムは、マップ(地図)データを記憶するメモリを備え、前記車両の位置における道路の特性に関する情報を、前記比較する手段に提供するように構成されてもよい。前記比較する手段は、ブレーキ操作の時刻および/または曜日を決定することを可能にするクロックを備えてもよい。
【0012】
回生ブレーキシステムは、前記車両の外部の周囲温度を測定してそれを前記比較する手段に提供するように動作する温度計を備えてもよい。
【0013】
回生ブレーキシステムは、前記車両の走行距離に関する情報を、前記比較する手段に提供するように動作するセンサを備えてもよい。
【0014】
回生ブレーキシステムは、減速プロファイルにおける、単位時間当たりの走行距離、必要とされるブレーキ力、および、回収されたエネルギーを記録するように構成されてもよい。
【0015】
回生ブレーキシステムはまた、減速プロファイルにおける、位置、時刻、曜日、道路の特性、および/または、温度のうちの1つ以上を記録するように構成されてもよい。
【0016】
前記記憶する手段は、2つ以上の減速プロファイルの詳細を記録してもよく、前記比較する手段は、ブレーキ適用が最初に行われるときに、前記現在のブレーキ操作を比較する記憶された前記減速プロファイルのうち1つを選択するように構成されてもよい。これにより、さまざまな理想的な減速プロファイルが記憶(保存)可能になり、さまざまな状況で使用されるように、および、最も適切なプロファイルが所定の状況に対して選択されるように意図される。
【0017】
この目的のために、前記比較する手段は、記憶された減速プロファイルに関連して格納された空間的、時間的、および/または、環境的な情報を、前記現在のブレーキ操作に関する対応情報と比較するとともに、格納された前記一時的および/または環境的な情報が前記現在のブレーキ操作のものともっとも厳密に一致する記憶された前記減速プロファイルを選択するように構成されてもよい。
【0018】
前記記憶する手段は、デフォルトの減速プロファイルの詳細と、1つ以上の追加の減速プロファイルの詳細とを格納しもよく、前記追加の減速プロファイルの詳細は、空間的、時間的、および/または、環境的な情報を含む。
【0019】
前記比較する手段は、前記追加の記憶された減速プロファイルに関連して格納された前記空間的、時間的、および/または、環境的な情報を、前記現在のブレーキ操作に関連する前記対応情報と比較して、有効な比較が可能な幾つかのプロファイルを選択するように構成され、選択された幾つかのプロファイルのデフォルトでは、前記現在のブレーキ操作を前記デフォルトの減速プロファイルと比較するように構成されてもよい。
【0020】
有効な比較を行うことができる2つ以上の減速プロファイルが選択されるときに、前記比較する手段は、前記現在のブレーキ操作の前記空間的、時間的、および/または、環境的な情報と前記記憶された減速プロファイルのそれぞれのものとの間の類似の程度を表す類似点スコアを生成するように構成されてもよい。
【0021】
前記比較する手段は、もし前記類似点スコアがしきい値を超えるならば前記現在のブレーキ操作と比較する最高の前記類似点スコアを有する減速プロファイルを選択するが、そうでなければそれを前記デフォルトの減速プロファイルと比較するように構成されてもよい。
【0022】
前記現在のブレーキ操作が前記デフォルトの減速プロファイルと比較されるときに、前記比較する手段は、前記現在のブレーキ操作における前記減速プロファイルの詳細を追加の減速プロファイルとして記憶するように構成されてもよい。したがって、新たに記憶された減速プロファイルは、現在のブレーキ操作との有効な比較を行うのに十分に有効な条件に関連する記憶された減速プロファイルが前もって(予め)存在しなかった条件に対して、格納される。これにより、比較可能な記憶されたブレーキ操作のライブラリが増える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明をより明確に理解できるようにするために、添付の図面を参照しながら、ほんの一例として、その実施形の態を説明する。
【
図1】ブレーキシステムの構成要素を示す自動車の概略図である。
【
図2】
図1の自動車のダッシュボードディスプレイを示す。
【
図3】
図1の自動車の車両速度に対する、回生ブレーキシステムにより提供される減速度のグラフである。
【
図4】
図1の自動車の距離に対する速度のグラフである。
【
図5】
図1の自動車の距離に対する速度のグラフである。
【
図6】
図1の自動車の距離に対する速度のグラフである。
【
図7】
図1の自動車の距離に対する速度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1を参照すると、自動車1は4つの車輪(ロードホイール)2を備えている。自動車には摩擦および回生ブレーキシステムが設けられている。
【0025】
摩擦ブレーキシステムは、各車輪2に関連付けられたそれぞれのディスクブレーキ3を備える。各ディスクブレーキは、ブレーキパイプ4を介してマスターシリンダ10に接続された油圧作動式キャリパーを備える。
【0026】
回生ブレーキシステムは、シャフト6によって自動車の後輪に駆動接続された電気モータ(電動機)5を備える。モータ5は、回生ブレーキ制御装置8により電気バッテリ(電池)7に接続されている。回生ブレーキ制御装置は、モータを発電機として動作させ、ドライバーがブレーキ力を必要とするときに、自動車の後輪から回転エネルギーを吸収し、バッテリ7に供給され貯蔵される電気を生成する。回生ブレーキ制御装置8は、ホイール(または車軸)センサ12に接続されており、ホイールセンサは、ホイール(車輪)の回転速度を測定して、車両の速度およびその減速の速度を決定するようにしている。
【0027】
ブレーキシステムは、ブレーキシステムからブレーキ力を必要とする支持力に対して自動車のドライバーが押し込む(踏み込む)ブレーキペダル9によって動作される。ブレーキペダル9は、電気機械式ブレーキブースター11を介してマスターシリンダ10に接続されている。電気機械式ブレーキブースター11は、ブレーキペダル位置を決定するセンサと、マスターシリンダ10を作動するまたはその作動を補助するサーボ(サーボモータ、サーボ機構)とを備えており、ブレーキの回生ブレーキ制御装置8に接続されている。
【0028】
使用時に、ブレーキ適用中には、回生ブレーキ制御装置8のブレーキペダル位置センサによって測定されるようなブレーキペダル位置は、ホイールセンサ12によって決定されるような車両の速度と同様に、回生ブレーキ制御装置に送信される。回生ブレーキ制御装置8は、エネルギー回収を最大化しながら、摩擦のみのブレーキシステムに対する同様の応答をドライバーに提供する方法で回生および/または摩擦ブレーキを展開することによって必要とされるブレーキ力を提供するように構成されている。
【0029】
実際に、回生ブレーキ制御装置8は、より微細な減速を提供するために摩擦ブレーキのみによって制動(ブレーキング)が提供される限りでは、限界最小速度(例えば10km/h)未満で車両が走行している場合を除いて、摩擦ブレーキの使用に優先して、利用可能な回生ブレーキ力を使用する。回生ブレーキシステムによって提供されるブレーキ力は、回生ブレーキ制御装置によって直接制御される。摩擦ブレーキシステムによって提供されるブレーキ力は、回生ブレーキ制御装置の制御下で電気機械式ブレーキブースターによって決定される。
【0030】
このタイプの結合した摩擦および回生ブレーキシステムは知られており、内燃エンジンと、充電可能な蓄積エネルギー源で、典型的には電気モータとバッテリまたはコンデンサとで動力を供給される第2駆動装置とを備えた、純粋な電気自動車、しかも所謂ハイブリッド自動車に展開(搭載)されている。ブレーキシステムが実施される方法は、本発明にとって重要ではない。
【0031】
ブレーキシステムが従来のシステムと異なる所は、回生ブレーキ制御装置8、ダッシュボードディスプレイ14、位置決めシステム15、および温度計16に動作可能なように接続されたブレーキ最適化プロセッサ(BOP)13の提供である。
【0032】
BOP13は、プログラム可能であってもよいプロセッサと、メモリとを備える。BOP13は、自動車の既存のプロセッサまたは電子制御ユニット上に実装されてもよく、または、スタンドアロンユニットとして提供されてもよい。BOPは、回生ブレーキ制御装置からブレーキ事象に関連する情報を受け取り、ブレーキ事象には、
車両速度と、
操作中の単位時間あたりの走行距離と、
ブレーキ適用の継続時間(ブレーキ時間)と、
必要とされるブレーキ力と、
摩擦ブレーキシステムのブレーキ液圧と、
回生ブレーキシステムによって提供されるブレーキ力と、
回生ブレーキシステムによって回収されるエネルギーと、
が含まれる。
【0033】
ナビゲーションシステム15は、自動車の位置を決定する働きがある位置決めシステム(全地球測位システムなど)と、或る一定の場所の道路の特性に関する情報を含む格納マップデータとを備える。これには、道路の種類、局所勾配、および、道路の曲線の半径が含まれてもよい。BOP13は、ナビゲーションシステムから現在の自動車位置に関する位置情報と選択マップデータとを受信する。
【0034】
温度計16は、車両の外部の周囲温度を測定し、これをBOP13に提供する。
【0035】
ダッシュボードディスプレイ14は
図2に示される。それは、回転可能に取り付けられたポインタ17を備え、その先端は、5つのセグメントに分割されたスケール17に対して動く。中央のセグメントは約36度にわたって広がり、100%のラベルが付けられ、第1の色(例えば緑色)に色付けされ、針がほぼ水平に並んだときにセグメントの中心を指すように配置(位置決め)されている。中央のセグメントの上下には、それぞれ約36度にわたって延び、第2の色(例えばオレンジ色)に着色された第2のセグメントが配置されている。第2のセグメントの上下には、それぞれ約36度にわたって延び、第3の色(例えば赤色)に色付けされた第3のセグメントが配置されている。中央のセグメントの上の領域は「大きい作動力」を表し、中央のセグメントの下の領域は「小さい作動力」を表す。ディスプレイは、背景に対してアクチュエータで移動される機械的な針によって、または、ディスプレイの画像を表示するディスプレイ画面によって実装(提供)されるかもしれない。
【0036】
ディスプレイ14は、2つのデジタルディスプレイ19も備え、一方は「目標」とラベル付けされ、他方は「実際」とラベル付けされている。これらは、専用のデジタル表示、または、ディスプレイ画面上に表示される画像であってもよい。
【0037】
BOP13は、ポインタを、スケールの中心すなわち100%ゾーンの方向を示す状態で静止させる。ドライバーがブレーキペダル9を押し込むと、BOPは、必要とされるブレーキ力が最適なエネルギー回収を得る力を超える場合には、針をスケールの「大きい作動力」の端部に向けて上に移動させ、必要とされるブレーキ力が最適なエネルギー回収を得る力より小さくなる場合には、針をスケールの「小さい作動力」の端部に向けて上に移動させる。これにより、自動車のドライバーに、エネルギー回収を改善するためにブレーキ動作をどのように変更できるのかに関するフィードバックが提供される。ブレーキペダルが放されまたは自動車が停止状態になるときに、BOPは、針を、スケールの中心を示すように戻す。
【0038】
ドライバーがブレーキペダルを押し込むときに、BOPはまた、デジタルディスプレイに、ブレーキ操作の最適なエネルギー回収率の目標値を、操作中に回収された実際のエネルギー率と一緒に、ともにkW単位で表示させる。これはまた、ドライバーに情報を提供し、当該情報によりドライバーは自分の動作を部分的に改めてブレーキ操作の効率を改善できるようにしている。自動車が停止状態になるとまたはドライバーがブレーキペダルを放すと、ブレーキ操作の最後に、BOPによりデジタルディスプレイは空白(ブランク)になる。
【0039】
さて、情報を取得してダッシュボードディスプレイ14を駆動するためにBOP13の動作をより詳細に説明する。
【0040】
説明された異なる動作モードは、本発明の異なる実施の形態とみなすことができる。しかしながら、異なるモードは、単一の実施の形態において任意の組み合わせで結合されてもよい。
【0041】
図3は、様々な車両速度で
図1の自動車の回生ブレーキシステムのみによって証明されたブレーキ力により引き起こされ得るg単位の減速率を示すグラフである。図は特定の車両に固有のものであるが、グラフの形状はほとんどの自動車の回生ブレーキシステムに共通している。
【0042】
第1のしきい値T1(この例では10km/h)未満の速度に対して、ブレーキシステムは、スムーズな減速を提供するために回生ブレーキを展開しない。
【0043】
第1のしきい値から第2のしきい値T2(例では20km/h)までの速度では、利用可能な減速度は、速度に比例して最大値(この例では0.3g)までほぼ直線的に増加する。この増加は、これらの相対的に低い(遅い)速度でスムーズな減速を提供するためにも、回生ブレーキ制御装置によって決定される。
【0044】
最大減速度の値は、回生ブレーキシステムによって達成できる値である。それは、電気モータ5によって達成できる最大トルクによって制限される。
【0045】
第2のしきい値と第3のしきい値T3(この例では58km/h)の間の速度に対して、利用可能な減速度は、利用可能な最大モータートルクによって制限されたままなので、一定である。
【0046】
第3のしきい値を超える速度に対して、利用可能な減速度は、車両速度の増加に比例して非線形的に減少する。第3のしきい値を超える速度に対して、達成できる減速度は、電気モータ5によって吸収できる最大電力により制限される。
【0047】
グラフの線の下の領域は、エネルギー回収ゾーンを表す。このゾーン内に収まるブレーキ操作は、回生ブレーキシステムを使用することで実現されるので、ゾーン範囲外に落ちるブレーキ操作よりも優れたエネルギー回収の結果になる。ゾーン範囲外では、第1のしきい値T1を下回る速度の場合にのみ、第1のしきい値T1を上回る速度の回生ブレーキとともに摩擦ブレーキが展開される。摩擦ブレーキを配置すると、エネルギーは浪費されるが、さもなければ回収される可能性があるので、ブレーキ操作の効率が低下(低少)される。
【0048】
便宜上、ブレーキ操作は3つのゾーンまで分割可能であり、ゾーンAは、展開された回生ブレーキの割合が回生ブレーキ制御装置によって制限される場合には第2のしきい値までの速度であり、ゾーンBは、利用可能な回生ブレーキの量がモータートルクによって制限される場合には第2および第3のしきい値の間の速度でブレーキをかけ続け、ゾーンCは、回生ブレーキの量がモータ出力によって制限される場合には第3のしきい値以上の速度でブレーキをかけ続ける。
【0049】
エネルギー回収ゾーン内でのブレーキ操作に関して、使用されるブレーキ操作の量によって操作の効率が依然として影響を受ける可能性がある。バッテリ7にエネルギーを戻す際に回生ブレーキシステムの効率は、モータによる最大ブレーキトルクの適用に向けて良くなる傾向がある。ゾーンA、B、Cの少なくとも2つの間に及ぶ速度範囲で行われるより長いブレーキ操作では、あるゾーン内でのブレーキトルクの利用効率が大きくなると、別のゾーン内での摩擦ブレーキの必要性が減少することに至るかもしれない。
【0050】
図4~6は、ブレーキ操作の効率を測定できる1つの方法を示している。
図4は、距離に対する速度のグラフであり、最大エネルギー回収を達成する50km/hの速度から静止までの減速プロファイルを示している。これは、回生ブレーキシステムのみを使用して最大使用可能ブレーキトルクを50km/hから20km/hまで提供することにより達成され、その後に回生ブレーキ制御装置は、摩擦ブレーキシステムを展開して、20km/h未満のモータからのトルクを低減させつつ車両の減速率を同じに保つ。
【0051】
この減速プロファイルから逸脱すると、操作で回収されるエネルギー量の減少をもたらす。
図5は、実際のブレーキプロファイル(破線)を、
図4の実線の理想的な線形プロファイルとともに示している。実際のプロファイルの例では、ドライバーは、最初に回生ブレーキシステムが提供できるよりも多くのブレーキ力を必要とし(したがって、摩擦ブレーキを使用する)、その次に回生システムが提供できるよりも少ないブレーキ力を必要とする(エネルギーを回収する効率を低下させる)。自動車を理想的な減速プロファイルとほぼ同じ距離で停止させる間に、回収されるエネルギーを減少させる。
【0052】
また、
図5は、理想的な減速プロファイルの両側にあってそれに境界を接する3つの領域20、21、22を示している。第1の領域20は理想的なプロファイルの隣にある。第2の領域21は第1の領域の隣にあってその領域の縁部を画定しており、第3の領域22は第2の領域の隣にあってその領域の縁部を画定する。3つの領域は、理想的な減速プロファイルの長さにわたって広がり、そのプロファイルの最初のゼロ幅からその終わりまで幅を増大し、そのプロファイルの幅を最初はより急激に増大させ、その後にそのプロファイルの高速端から低速端までより狭く増大させる。
【0053】
図6および
図7は、
図4および
図5と同様のグラフを示すが、理想的な減速プロファイルを100km/hから始まるように拡張された状態を示す。再び、そのプロファイルは、20km/hを超える速度では回生ブレーキのみが使用されるほどのものである。そのため、モータ出力がそのモータによって提供可能なブレーキトルク(制動トルク)を制限する場合には、50km/hを超える減速率は、50km/hを下回る減速率よりも低くなる。
図7には、理想的なプロファイルの両側の領域20、21、22も含まれる。
【0054】
実際の減速プロファイルがグラフ上の理想的なプロファイルから逸脱する距離は、操作の効率が最適効率からどれだけ逸脱するかを示すために使用される場合もある。この距離は、ダッシュボードディスプレイのポインタ17を動作させるために使用される。
【0055】
一実施の形態では、BOPは、自動車の理想的な減速プロファイルの詳細を記憶する電子メモリなどの記憶手段を備えており、当該記憶手段は、最大(または良好な)エネルギー回収を達成する。いつでも、記憶された理想的な減速プロファイルは、最大のエネルギー回収を達成する既知のプロファイルであり得る。これは、式またはルックアップテーブル(参照テーブル)として記憶(保存)できるだろう。記憶された詳しい情報は、理想的な減速プロファイルに従って車両にブレーキをかけるときに回収されるエネルギー量のみならずそのプロファイルを定義するために、単位時間あたりの走行距離(移動距離)、または、長い間にわたって車両速度などの同等のデータを含んでいる。これには、プロファイルの各段階で回収されるエネルギー量が含まれて、理想的なプロファイルでカバーされる(に適用される)速度範囲内にある2つの速度間で生じる実際のブレーキ操作が理想的なプロファイルと比較できるようにしている。格納(記憶)された情報により、BOPは、車両が所定の開始速度からブレーキ操作で所定の距離を走行したときに理想的な車両速度を決定し、したがって、ブレーキ操作の効率に関するフィードバックをドライバーに提供できるようにする。
【0056】
また、それにより、BOPは、ドライバーが実行したブレーキ操作の効率を、記憶されている理想的な減速プロファイルの効率と比較する方法を決定できるようにする。こうして、BOPは、現在のブレーキ操作を、記憶されている減速プロファイルに対して比較する手段をこなす(務める)。
【0057】
ドライバーがブレーキをかけると、BOPは、回生ブレーキ制御装置8を介して、ホイールセンサ12の出力から自動車の速度(開始速度)を決定する。それはまた、ホイールセンサの出力からも、自動車の走行距離の測定をし始める。時間間隔で、ブレーキをかけた地点からの走行距離は、理想的な減速プロファイルと相互参照されて、自動車が走行距離にわたって開始速度から理想的な減速プロファイルに従った場合に、自動車がどんな速度で走行していたのかを決定する。次に、BOPは、実際の速度とその走行距離での理論速度との差を計算する。このプロセスは、ブレーキがかかっている限り繰り返される。計算された差は、理想的なプロファイルからの実際の減速プロファイルの逸脱(偏移)を表す。
【0058】
それから、BOPは、ダッシュボードディスプレイのポインタ17に、実際の車両速度が走行距離に対しての理想的な減速プロファイルの速度よりも低い場合には上方に向きを変えさせ、大き過ぎる(強すぎる)ブレーキ力が展開されているとドライバーに対して信号で知らせ、または、走行距離に対して速度が速すぎて、小さ過ぎる(弱すぎる)ブレーキ力が展開されていることを示す場合には、下方に向きを変えさせる。
【0059】
ある構成では、ポインタは、所定の走行距離に対して理想的な速度と異なる速度の大きさに比例して移動する。別の構成では、BOPは、
図5および
図6に示すように、理想的なプロファイルの両側のゾーンを決定し、測定されたブレーキ操作がどのゾーンに入るかを決定する。次に、ポインタは、そのゾーンに対応するセグメントの方に向けさせられる。また、このようなブレーキ性能に関するBOPからの出力は、他のタイプのディスプレイを駆動するために使用されてもよい。
【0060】
ブレーキ中、BOPは、「実際」のデジタル表示に、バッテリに回収され回生ブレーキ制御装置8から取得された瞬間的な電力量を表示させ、そして、「目標」のデジタル表示に、記憶された理想的な減速プロファイルに追従する場合に回収される電力量を表示させる。
【0061】
BOPは、他の方法でドライバーにフィードバックを提供できるかもしれない。さらに別の実施の形態では、BOPからの出力は、機械的ブレーキブースター11の作動を変更(修正)するために使用されるが、そうでなければブレーキペダルの感触を変えるために使用される。ドライバーのブレーキングが理想的な減速プロファイルを達成するために必要とされるブレーキングよりも重い場合には、ドライバーのブレーキングが軽すぎるときにブレーキペダルを強化でき、その逆も同じである。ブレーキペダルの感触の変化は、単に一時的である可能性があり、および/または、車両の安全性を損なわないようにドライバーによって簡単に無効される可能性がある。
【0062】
ドライバーがブレーキペダルを離すと、BOPは、実際の自動車速度と理論上の自動車速度との差の計算を停止し、ディスプレイ上のポインタ17を中間位置に戻し、デジタルディスプレイ18に何の情報も表示しない。
【0063】
ブレーキ操作の完了時に、BOPは操作に関する情報も記憶(格納)する。これには、
ブレーキペダルが踏まれた速度と、
ブレーキペダルを離した速度と、
操作に関する減速プロファイルと、
回収されたエネルギーと、
が含まれ、さらに、次のうち、
操作中の走行距離と、
操作が行われた(ナビゲーションユニットから取得された)場所と、
操作が行われた道路の特性と、
操作が行われた時刻と、
操作が行われた周囲温度と、
の何れかまたは全てが含まれてもよい。
【0064】
この情報は、ブレーキ操作の効率が評価されるBOPによって記憶された理想的な減速プロファイルを更新するために使用されてもよい。これにより、理想的な減速プロファイルが確立可能になり、自動車の実際の現実社会の性能を反映する。その結果、ドライバーに提供されるガイダンス(案内)は、車両の実際の性能をより正確に反映するので、より有用かつ達成可能になるだろう。
【0065】
一実施の形態では、比較される記憶された理想的な減速プロファイルと同じ速度範囲にわたってブレーキ操作中に回収されるエネルギー量が、理想的な減速プロファイルに従うことによって回収される(または回収可能である)エネルギー量を超える場合には、ブレーキ操作の減速プロファイルは理想的な減速プロファイルとして記憶され、元の理想的な減速プロファイルを置き換える。
【0066】
より複雑な例では、さまざまな運転条件に対して複数の理想的な減速プロファイルが記憶され、ブレーキ操作と比較される理想的な減速プロファイルは、操作が実行される実際の条件を最も精密に再現(複製)する条件に関連する。この場合、記憶された各プロファイルは、それが関係する運転条件、すなわち、これらの条件で最大のエネルギー回収を達成する運転条件に関して最もよく知られているプロファイルである。
【0067】
たとえば、理想的な減速プロファイルの詳細が場所(位置)に関して記憶されている場合に、操作が開始されるときにBOPはナビゲーションシステムからのデータを使用して場所を決定し、その場所に最も近い場所で取得される記憶された理想的な減速プロファイルを選択する。理想的な減速プロファイルもまたそれらが取得された時刻に対して記憶される場合に、現在のブレーキ操作を比較する理想的な減速プロファイルは、現在のブレーキ操作の時刻に基づいて追加的に選択され得る。したがって、現在のブレーキ操作に最も近い場所で取得された理想的な減速プロファイルのうち、BOPは、現在の操作と同じまたは最も近い時間に取得されたものを選択できる。時刻は交通状況のうち良い予測因子である。同様の時刻に記録された以前のイベント(事象)を選択すると、以前のイベントが現在のイベントと同様の条件で行われた可能性がより高くなる。
【0068】
同様に、理想的な減速プロファイルの詳細が周囲温度に関連して記憶される場合には、ブレーキ操作時での現在の周囲温度が測定(評価)可能であり、適切な理想的な操作と比較される操作は同じまたは最も近い周囲温度で実行される。これにより、ドライバーに提供されるガイダンスが、ブレーキ操作が温度によってどのように影響を受けるかだけでなく、温度を使って回生ブレーキシステムの性能の変化を考慮することが可能になる。
【0069】
ブレーキ操作が行われた道路の特性がブレーキ操作の詳細とともに記憶される場合には、
BOPが信頼する記憶(記録)されたデータは、現在の操作の効率を評価(測定)することに対して、現在の操作が行われている道路と同じまたは類似(同様)の特性を持つ道路で行われた理想的な以前のブレーキ操作のものであってもよい。これは、その場所でのブレーキ事象に関して以前のデータが記録されていない(または限られている)場合に役立つ。例えば、急な下り坂勾配で行われるブレーキ操作に関連して記憶された情報は、異なる場所に通じる同様に急な下り坂勾配で行われるブレーキ操作の効率を測定するために使用され得る。
【0070】
このように、BOPは、ドライバーにフィードバックを提供するために将来のブレーキ操作を比較できる理想的な減速プロファイルの数を拡張することで学習するように構成されている。BOPは、ブレーキの適用時に、現在のブレーキ操作の条件に最も適合する条件(空間的、時間的、および/または環境的条件でもよい)で得られた理想的な減速プロファイルを選択する。実際には、ドライバーは定期的に旅行を繰り返し、しばしば同時に、したがって理想的な減速プロファイルの有用なライブラリはすぐに確立されるだろう。
【0071】
しかしながら、多くの状況では、BOPによって記憶された現実的に比較可能な理想的な減速プロファイルが存在しない条件で、ブレーキ操作が行われるだろう。この場合、現在のブレーキ操作の条件のうち最も近いものに見合う(一致する)条件で取得されるとともに記憶された理想的な減速プロファイルを選択しても、現実的または有用な比較は提供されないだろう。これに対処するために、システムの実施の形態では、BOPには理論上の理想的なデフォルトの減速プロファイルが提供される。
【0072】
最初の実社会(実世界)のブレーキ操作が行われると、これは、デフォルトと比較されるが、時間、場所、および温度の詳細、ならびに、操作に関連するその他の条件の詳細とともに記憶されて、追加の理想的な減速プロファイルを形成する。それから、将来のブレーキ操作は、操作の条件と記憶されたプロファイルの条件との間で十分にぴったりと釣り合っている場合には、記憶された実世界の例と比較されるが、そうでなければデフォルトの減速プロファイルと比較され、追加の理想的な減速プロファイルとして記憶される。
【0073】
将来のブレーキ操作に関しては、操作が開始されると、BOPは、以前に記憶された実世界の減速プロファイルの操作に対して比較されるか否か、したがって、より良いエネルギー回収が得られた場合にのみその減速プロファイルを置き換えるか否か、または、デフォルトの減速プロファイルに対して比較されるか否か、その後に、追加の理想的な減速プロファイルとして記憶(記録)されるか否かを決定する。
【0074】
最初に、有効な比較として使用できる記憶された減速プロファイルがあるか否かを決定することが必要になる。これは、現在の減速プロファイルの時間的、空間的、および/または環境的なデータを、記憶された理想的なプロファイルのデータと比較して、1つ以上のパラメータが比較を正当化するのに十分に互いに近いか否かを決定することを必要とする。考慮される各パラメータには同様(類似)のしきい値が設定される。たとえば、同じ場所の所定の距離内で取得された減速プロファイルと、そのような減速プロファイルのうち現在の時刻の所定の時間内に取得されたもののみとを比較することが唯一適切な場合がある。
【0075】
このプロセスが、現在のブレーキ操作との有効な比較を示す複数の減速プロファイルを識別する場合には、次に、BOPは、その比較をするために最も関連性のあるプロファイルを選択する。これは、記録されたパラメータが互いにどれだけ近いかを比較すること、および、各パラメータに適切な重み付けを適用することにより得られる類似点スコアを決定することにより達成される。例えば、位置、勾配、時刻、および曜日が、例えば周囲温度よりも、2つの操作が比較できると決める際に重要であるかどうかが決定されてもよい。
【0076】
それから、現在の操作が、最高の類似点スコアを持つ理想的な減速プロファイルと比較される。
【0077】
比較可能な減速プロファイルを見つけるための初期スクリーニングプロセスが何らのプロファイルも特定しない場合に、または、選択されたプロファイルの類似点スコアが或る一定のしきい値を超えない場合に、現在の操作は、デフォルトの減速プロファイルと比較され、その後に、将来の操作と比較できる追加の理想的な減速として記憶される。
【0078】
上記の実施の形態は、例としてのみ説明されている。 添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変形が可能である。