(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】車両制御システム、車両制御装置および車両制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G07C 9/20 20200101AFI20230214BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20230214BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20230214BHJP
【FI】
G07C9/20
E05B49/00 K
B60R25/24
(21)【出願番号】P 2020013934
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399007408
【氏名又は名称】株式会社シイエム・シイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜田 伸
(72)【発明者】
【氏名】太田 恭久
(72)【発明者】
【氏名】高田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 智
(72)【発明者】
【氏名】辰本 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】矢島 哲
【審査官】葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-102943(JP,A)
【文献】特開2005-273281(JP,A)
【文献】特開2010-144366(JP,A)
【文献】特開2016-205001(JP,A)
【文献】特開2019-120078(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0061800(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0102899(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00-25/40
E05B 49/00-49/04
E05B 77/00-85/28
G07C 9/00- 9/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードウェアを有する第一のプロセッサであって、
車両に搭乗するユーザの施設への入退室を検出し、
前記ユーザの前記施設への入室を示す第一の信号および前記ユーザの前記施設からの退室を示す第二の信号を、サーバ装置に出力する第一のプロセッサを備える入退室管理装置と、
ハードウェアを有する第二のプロセッサであって、
前記第一の信号を取得した場合、前記車両のスマートキー機能を停止させるための第三の信号を前記車両に出力し、無線通信による前記車両のドアの開錠を禁止し、
前記第二の信号を取得した場合、前記車両のスマートキー機能を設定させるための第四の信号を前記車両に出力し、無線通信による前記車両のドアの開錠を許可する第二のプロセッサを備えるサーバ装置と、
を備え
、
前記第二のプロセッサは、
前記第二の信号を取得した場合、前記施設から前記車両の駐車場所までの距離に応じて設定される所定時間が経過した後に、前記第四の信号を前記車両に出力する、
車両制御システム。
【請求項2】
前記第二のプロセッサは、
前記第一の信号を取得した場合、第三の信号に加えて、前記車両のイモビライザ機能を設定させるための第五の信号を前記車両に出力し、前記車両のエンジンの始動を禁止し、
前記第二の信号を取得した場合、第四の信号に加えて、前記車両のイモビライザ機能を停止させるための第六の信号を前記車両に出力し、前記車両のエンジンの始動を許可する、
請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記第二のプロセッサは、
前記第二の信号を取得した場合、前記施設から前記車両の駐車場所までの距離に応じて設定される所定時間が経過した後に、前記第六の信号を前記車両に出力する、
請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記第一のプロセッサは、前記施設に入退室する前記ユーザの生体情報を取得し、認証処理を行うことにより、前記ユーザの前記施設への入退室を検出する、
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記第一のプロセッサは、前記施設に入退室する前記ユーザが所持するICカードのデータを取得し、認証処理を行うことにより、前記ユーザの前記施設への入退室を検出する、
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記第一のプロセッサは、前記施設の入口のドアの開閉状態に基づいて、前記ユーザの前記施設への入退室を検出する、
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記第二のプロセッサは、
前記第三の信号および前記第四の信号を前記車両に出力する際に、前記スマートキー機能の設定状態を示す信号を、前記ユーザが所持する鍵装置に出力し、前記鍵装置の表示部に前記スマートキー機能の設定状態を表示する、
請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項8】
前記第二のプロセッサは、
前記第五の信号および前記第六の信号を前記車両に出力する際に、前記イモビライザ機能の設定状態を示す信号を、前記ユーザが所持する鍵装置に出力し、前記鍵装置の表示部に前記イモビライザ機能の設定状態を表示する、
請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項9】
ハードウェアを有するプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
車両に搭乗するユーザの施設への入退室を検出する入退室管理装置から、前記ユーザの前記施設への入室を示す第一の信号を取得した場合、前記車両のスマートキー機能を停止させるための第三の信号を前記車両に出力し、無線通信による前記車両のドアの開錠を禁止し、
前記入退室管理装置から、前記ユーザの前記施設からの退室を示す第二の信号を取得した場合、前記車両のスマートキー機能を設定させるための第四の信号を前記車両に出力し、無線通信による前記車両のドアの開錠を許可
し、
前記第二の信号を取得した場合、前記施設から前記車両の駐車場所までの距離に応じて設定される所定時間が経過した後に、前記第四の信号を前記車両に出力する、
車両制御装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記第一の信号を取得した場合、第三の信号に加えて、前記車両のイモビライザ機能を設定させるための第五の信号を前記車両に出力し、前記車両のエンジンの始動を禁止し、
前記第二の信号を取得した場合、第四の信号に加えて、前記車両のイモビライザ機能を停止させるための第六の信号を前記車両に出力し、前記車両のエンジンの始動を許可する、
請求項
9に記載の車両制御装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記第二の信号を取得した場合、前記施設から前記車両の駐車場所までの距離に応じて設定される所定時間が経過した後に、前記第五の信号を前記車両に出力する、
請求項1
0に記載の車両制御装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、
前記第三の信号および前記第四の信号を前記車両に出力する際に、前記スマートキー機能の設定状態を示す信号を、前記ユーザが所持する鍵装置に出力し、前記鍵装置の表示部に前記スマートキー機能の設定状態を表示する、
請求項
9から請求項1
1のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、
前記第五の信号および前記第六の信号を前記車両に出力する際に、前記イモビライザ機能の設定状態を示す信号を、前記ユーザが所持する鍵装置に出力し、前記鍵装置の表示部に前記イモビライザ機能の設定状態を表示する、
請求項1
0に記載の車両制御装置。
【請求項14】
ハードウェアを有するプロセッサに、
車両に搭乗するユーザの施設への入退室を検出する入退室管理装置から、前記ユーザの前記施設への入室を示す第一の信号を取得した場合、前記車両のスマートキー機能を停止させるための第三の信号を前記車両に出力し、無線通信による前記車両のドアの開錠を禁止し、
前記入退室管理装置から、前記ユーザの前記施設からの退室を示す第二の信号を取得した場合、前記車両のスマートキー機能を設定させるための第四の信号を前記車両に出力し、無線通信による前記車両のドアの開錠を許可
し、
前記第二の信号を取得した場合、前記施設から前記車両の駐車場所までの距離に応じて設定される所定時間が経過した後に、前記第四の信号を前記車両に出力する、
ことを実行させる車両制御プログラム。
【請求項15】
前記プロセッサに、
前記第一の信号を取得した場合、第三の信号に加えて、前記車両のイモビライザ機能を設定させるための第五の信号を前記車両に出力し、前記車両のエンジンの始動を禁止し、
前記第二の信号を取得した場合、第四の信号に加えて、前記車両のイモビライザ機能を停止させるための第六の信号を前記車両に出力し、前記車両のエンジンの始動を許可する、
ことを実行させる請求項1
4に記載の車両制御プログラム。
【請求項16】
前記プロセッサに、
前記第二の信号を取得した場合、前記施設から前記車両の駐車場所までの距離に応じて設定される所定時間が経過した後に、前記第五の信号を前記車両に出力する、
ことを実行させる請求項1
5に記載の車両制御プログラム。
【請求項17】
前記プロセッサに、
前記第三の信号、前記第四の信号、前記第五の信号および前記第六の信号を前記車両に出力する際に、前記スマートキー機能の設定状態および前記イモビライザ機能の設定状態を示す信号を、前記ユーザが所持する鍵装置に出力し、前記鍵装置の表示部に前記スマートキー機能の設定状態および前記イモビライザ機能の設定状態を表示する、
ことを実行させる請求項1
5に記載の車両制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御システム、車両制御装置および車両制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両とスマートキーとの間で車両のドアロックを解除するための無線通信を行うスマートキーシステムが開示されている。このシステムでは、例えばスマートフォン等の位置情報端末の位置がアンロック許可範囲に属する場合、スマートキーによるドアロック解除を許可する(スマートキー機能をオンにする)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザの位置情報を用いることなく、スマートキー機能をオンまたはオフにすることができる技術が求められていた。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、ユーザの位置情報を用いることなく、スマートキー機能をオンまたはオフにすることができる車両制御システム、車両制御装置および車両制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車両制御システムは、ハードウェアを有する第一のプロセッサであって、車両に搭乗するユーザの施設への入退室を検出し、前記ユーザの前記施設への入室を示す第一の信号および前記ユーザの前記施設からの退室を示す第二の信号を、サーバ装置に出力する第一のプロセッサを備える入退室管理装置と、ハードウェアを有する第二のプロセッサであって、前記第一の信号を取得した場合、前記車両のスマートキー機能を停止させるための第三の信号を前記車両に出力し、無線通信による前記車両のドアの開錠を禁止し、前記第二の信号を取得した場合、前記車両のスマートキー機能を設定させるための第四の信号を前記車両に出力し、無線通信による前記車両のドアの開錠を許可する第二のプロセッサを備えるサーバ装置と、を備える。
【0007】
本開示に係る車両制御装置は、ハードウェアを有するプロセッサを備え、前記プロセッサが、車両に搭乗するユーザの施設への入退室を検出する入退室管理装置から、前記ユーザの前記施設への入室を示す第一の信号を取得した場合、前記車両のスマートキー機能を停止させるための第三の信号を前記車両に出力し、無線通信による前記車両のドアの開錠を禁止し、前記入退室管理装置から、前記ユーザの前記施設からの退室を示す第二の信号を取得した場合、前記車両のスマートキー機能を設定させるための第四の信号を前記車両に出力し、無線通信による前記車両のドアの開錠を許可する。
【0008】
本開示に係る車両制御プログラムは、ハードウェアを有するプロセッサに、車両に搭乗するユーザの施設への入退室を検出する入退室管理装置から、前記ユーザの前記施設への入室を示す第一の信号を取得した場合、前記車両のスマートキー機能を停止させるための第三の信号を前記車両に出力し、無線通信による前記車両のドアの開錠を禁止し、前記入退室管理装置から、前記ユーザの前記施設からの退室を示す第二の信号を取得した場合、前記車両のスマートキー機能を設定させるための第四の信号を前記車両に出力し、無線通信による前記車両のドアの開錠を許可する、ことを実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ユーザの位置情報を用いることなく、スマートキーによるドアロック解除を許可または禁止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両制御システムおよび車両制御装置を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車両制御システムおよび車両制御装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る車両制御システム、車両制御装置および車両制御プログラムが実行する車両制御方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る車両制御システム、車両制御装置および車両制御プログラムが実行する車両制御方法の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態に係る車両制御システム、車両制御装置および車両制御プログラムについて、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
(車両制御システム/車両制御装置)
本実施形態に係る車両制御システムおよび車両制御装置の構成について、
図1および
図2を参照しながら説明する。本実施形態に係る車両制御システム、車両制御装置および車両制御プログラムは、ユーザの施設への入退室に応じて、車両に搭載されたスマートキー機能およびイモビライザ機能を制御するためのものである。
【0013】
ここで、「ユーザ」とは、車両の運転者を含む乗員であり、かつ施設の利用者(居住者)のことを示している。また、「施設」とは、例えば会社、自宅等が挙げられる。本実施形態では、この施設の内部または外部に、ユーザが搭乗する車両の駐車場所(駐車場)が設けられていることを想定している。
【0014】
「スマートキー機能」とは、ユーザが所持する鍵装置(電子キー)と車両との間で無線通信(近距離無線通信)を行うことにより、車両のドアの開錠(アンロック)および施錠(ロック)を行う機能のことを示している。スマートキー機能には、鍵装置を所持するユーザが車両に近づいた際に、車両側が無線通信を通じて鍵装置の認証を行い、ユーザが車両のドアノブ等に触れることにより、ドアの開錠等を行うスマートエントリ機能と、鍵装置が備えるスイッチをユーザが操作することにより、ドアの開錠等を行うリモートキーレスエントリ機能とが含まれる。
【0015】
本実施形態において、無線通信による車両のドアの開錠を許可するために、スマートキー機能をオンにすることを、「スマートキー機能を設定(復帰)」と表現し、無線通信による車両のドアの開錠を禁止するために、スマートキー機能をオフにすることを、「スマートキー機能を停止(解除)」と表現する。
【0016】
「イモビライザ機能」とは、具体的にはリモートイモビライザ機能であり、サーバ装置からのリモート操作によりユーザの車両のエンジンの始動を禁止する機能のことを示している。本実施形態において、車両のエンジンの始動を禁止するために、イモビライザ機能をオンにすることを、「イモビライザ機能を設定」と表現し、車両のエンジンの始動を許可するために、イモビライザ機能をオフにすることを、「イモビライザ機能を停止(解除)」と表現する。
【0017】
車両制御システム1は、
図1に示すように、サーバ装置10と、入退室管理装置20と、鍵装置30と、車両40と、を有している。本実施形態に係る車両制御装置は、具体的にはサーバ装置10によって実現される。サーバ装置10、入退室管理装置20、鍵装置30および車両40は、ネットワークNWを通じて相互に通信可能に構成されている。このネットワークNWは、例えばインターネット回線網、携帯電話回線網等から構成される。
【0018】
(サーバ装置)
サーバ装置10は、
図2に示すように、制御部11と、通信部12と、記憶部13と、を備えている。制御部11は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等からなるプロセッサと、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等からなるメモリ(主記憶部)と、を備えている。
【0019】
制御部11は、記憶部13に格納されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等を制御することにより、所定の目的に合致した機能を実現する。
【0020】
制御部11は、施設に設けられた入退室管理装置20から、ユーザが施設に入室したことを示す信号(以下、「入室検出信号」という)およびユーザが施設から退室したことを示す信号(以下、「退室検出信号」という)を取得する。
【0021】
制御部11は、入退室管理装置20から入室検出信号を取得した場合、車両40のスマートキー機能を停止させるための信号(以下、「スマートキー停止要求信号」という)を車両40に出力する。これにより、スマートキー機能がオフになり、無線通信による車両40のドアの開錠が禁止される。一方、制御部11は、入退室管理装置20から退室検出信号を取得した場合、車両40のスマートキー機能を設定させるための信号(以下、「スマートキー設定要求信号」という)を車両40に出力する。これにより、スマートキー機能がオンになり、無線通信による車両40のドアの開錠が許可される。
【0022】
なお、制御部11は、入室検出信号に含まれるユーザの情報と、記憶部13の車両情報DB131に格納されたユーザの情報とを照合することにより、ユーザの車両40を特定し、特定した車両40に対してスマートキー停止要求信号およびスマートキー設定要求信号を出力する。
【0023】
制御部11は、入退室管理装置20から入室検出信号を取得した場合、スマートキー停止要求信号に加えて、車両40のイモビライザ機能を設定させるための信号(以下、「イモビライザ設定要求信号」という)を車両40に出力してもよい。これにより、イモビライザ機能がオンになり、車両40のエンジンの始動が禁止される。一方、制御部11は、入退室管理装置20から退室検出信号を取得した場合、スマートキー設定要求に加えて、車両40のイモビライザ機能を停止させるための信号(以下、「イモビライザ停止要求信号」という)を車両40に出力する。これにより、イモビライザ機能がオフになり、車両40のエンジンの始動が許可される。
【0024】
なお、制御部11は、入室検出信号に含まれるユーザの情報と、記憶部13の車両情報DB131に格納されたユーザの情報とを照合することにより、ユーザの車両40を特定し、特定した車両40に対してイモビライザ設定要求信号およびイモビライザ停止要求信号を出力する。
【0025】
制御部11は、入退室管理装置20から退室検出信号を取得した場合、所定時間が経過した後に、スマートキー設定要求信号を車両40に出力してもよい。なお、「所定時間」は、例えばユーザがいる施設から車両40の駐車場所までの距離と、当該ユーザの平均的な歩行速度に基づいて算出することができる。また、この所定時間は、ユーザが施設から駐車場所まで移動する際の平均の移動時間を設定することもできる。このように、ユーザが施設から退室してからすぐにスマートキー機能を設定するのではなく、ユーザが施設から退室してから駐車場所に到着するまでの時間を考慮して、所定時間遅らせてスマートキー機能を設定することにより、例えばユーザが施設から駐車場所に移動する隙に、例えばリレーアタックにより車両40のドアが開錠され、車両40が盗難される等の事態を防止することができる。
【0026】
ここで、「リレーアタック」とは、悪意を持った第三者が、スマートキー機能を悪用して車両40を盗難する手口のことであり、例えば鍵装置30と車両40との間に無線通信の信号を中継する中継機を置き、鍵装置30が車両40から遠く離れた場所にある場合であっても、車両40のドアを開錠する手口のことを示している。
【0027】
制御部11は、入退室管理装置20から退室検出信号を取得した場合、ユーザがいる施設から車両40の駐車場所までの距離に応じて設定される所定時間が経過した後に、イモビライザ停止要求信号を車両40に出力してもよい。このように、ユーザが施設から退室してからすぐにイモビライザ機能を停止するのではなく、ユーザが施設から退室してから駐車場所に到着するまでの時間を考慮して、所定時間遅らせてイモビライザ機能を停止することにより、例えばユーザが施設から駐車場所に移動する隙に、例えばリレーアタックにより車両40のエンジンが始動され、車両40が盗難される等の事態を防止することができる。
【0028】
制御部11は、スマートキー停止要求信号およびスマートキー設定要求信号を車両40に出力する際に、スマートキー機能の設定状態を示す信号を、ユーザが所持する鍵装置30に出力し、当該鍵装置30の表示部34にスマートキー機能の設定状態を表示させてもよい。これにより、ユーザがスマートキー機能の設定状態を常時確認することができるため、利便性を向上させることができる。
【0029】
制御部11は、イモビライザ設定要求信号およびイモビライザ停止要求信号を車両40に出力する際に、イモビライザ機能の設定状態を示す信号を、ユーザが所持する鍵装置30に出力し、当該鍵装置30の表示部34にイモビライザ機能の設定状態を表示させてもよい。これにより、ユーザがイモビライザ機能の設定状態を常時確認することができるため、利便性を向上させることができる。
【0030】
通信部12は、例えばLAN(Local Area Network)インターフェースボード、無線通信のための無線通信回路等から構成される。通信部12は、公衆通信網であるインターネット等のネットワークNWに接続されている。そして、通信部12は、当該ネットワークNWに接続することにより、入退室管理装置20および車両40との間で通信を行う。
【0031】
記憶部13は、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)およびリムーバブルメディア等の記録媒体から構成される。リムーバブルメディアとしては、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体が挙げられる。また、記憶部13には、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベース等が格納可能である。
【0032】
記憶部13は、車両情報DB131を備えている。このデータベース(DB)は、制御部11によって実行されるデータベース管理システム(Database Management System:DBMS)のプログラムが、記憶部13に記憶されるデータを管理することによって構築される。
【0033】
車両情報DB131は、ユーザが利用する車両40に関する情報である車両情報が索出可能に格納されたリレーショナルデータベースによって構成されている。車両情報としては、例えば車両40を利用するユーザに関する情報(氏名、ID等)、車両40のナンバー、車種等が挙げられる。
【0034】
(入退室管理装置)
入退室管理装置20は、ユーザが利用する施設(会社、自宅)に設けられている。入退室管理装置20は、制御部21と、通信部22と、記憶部23と、情報取得部24と、を備えている。制御部21、通信部22および記憶部23の物理的な構成は、制御部11、通信部12および記憶部13と同様である。
【0035】
制御部21は、記憶部23に格納されたプログラムの実行を通じて、入退室判定部211として機能する。入退室判定部211は、情報取得部24が取得した情報に基づいて、ユーザが施設に入室したか否か、およびユーザが施設から退室したか否かを判定する。
【0036】
入退室判定部211における判定方法は、施設への入退室の際の個人認証方法によって異なる。この個人認証の方法としては、例えば生体認証、ICカードを利用した認証、暗証番号を利用した認証等が挙げられる。
【0037】
例えば、施設への入退室時に生体認証が行われる場合、入退室判定部211は、情報取得部24から入力されるユーザの生体情報(例えば指紋情報、声紋情報、虹彩情報、顔情報)と、記憶部23のユーザ情報DB231に格納されているユーザの生体情報とを照合して認証処理を行うことにより、ユーザを特定し、かつ当該ユーザの施設への入退室を検出する。
【0038】
また、施設への入退室時にICカードを利用した認証が行われる場合、入退室判定部211は、情報取得部24から入力されるICカード情報と、ユーザ情報DB231に格納されているユーザのICカード情報とを照合して認証処理を行うことにより、ユーザを特定し、かつ当該ユーザの施設への入退室を検出する。
【0039】
また、施設への入退室時に暗証番号を利用した認証が行われる場合、入退室判定部211は、情報取得部24から入力される暗証番号と、ユーザ情報DB231に格納されているユーザの暗証番号とを照合して認証処理を行うことにより、ユーザを特定し、かつ当該ユーザの施設への入退室を検出する。
【0040】
入退室判定部211は、ユーザの施設への入室を検出した場合、入室検出信号をサーバ装置10に出力する。また、入退室判定部211は、ユーザの施設からの退室を検出した場合、退室検出信号をサーバ装置10に出力する。なお、入退室判定部211は、入退室したユーザの情報を入室検出信号および退室検出信号に含めてサーバ装置10に出力する。
【0041】
記憶部23は、ユーザ情報DB231を備えている。このデータベースは、制御部21によって実行されるデータベース管理システムのプログラムが、記憶部23に記憶されるデータを管理することによって構築される。
【0042】
ユーザ情報DB231は、施設を利用するユーザに関する情報であるユーザ情報が索出可能に格納されたリレーショナルデータベースによって構成されている。ユーザ情報は、施設への入退室の際の個人認証方法によって異なる。
【0043】
例えば、施設への入退室時に生体認証が行われる場合、ユーザ情報としては、例えば指紋情報(指紋認証)、声紋情報(音声認証)、虹彩情報(虹彩認証)、顔情報(顔認証)等の生体情報が挙げられる。また、施設への入退室時にICカードを利用した認証が行われる場合、ユーザ情報としては、例えばユーザの氏名、ID、所属、社員番号等のICカード情報が挙げられる。また、施設への入退室時に暗証番号を利用した認証が行われる場合、ユーザ情報としては、例えばユーザの氏名、暗証番号、所属、社員番号等の情報が挙げられる。
【0044】
情報取得部24は、施設に入室または施設から退室するユーザの情報を取得する。情報取得部24の具体的構成は、施設への入退室の際の個人認証方法によって異なる。
【0045】
例えば、施設への入退室時に生体認証が行われる場合、情報取得部24は、例えば指紋リーダ(指紋認証)、マイク(声紋認証)、カメラ(虹彩認証、顔認証)等であり、施設に入退室するユーザの生体情報を取得する。また、施設への入退室時にICカードを利用した認証が行われる場合、情報取得部24は、例えばICカードリーダ等であり、施設に入退室するユーザが所持するICカードのデータを取得する。また、施設への入退室時に暗証番号を利用した認証が行われる場合、情報取得部24は、例えばタッチパネル、テンキーボタン等であり、施設に入退室するユーザが入力する暗証番号を取得する。
【0046】
(鍵装置)
鍵装置30は、車両40に搭乗するユーザが所持している。鍵装置30は、制御部31と、通信部32と、記憶部33と、表示部34と、近距離無線通信部35と、を備えている。制御部31、通信部32および記憶部33の物理的な構成は、制御部11、通信部12および記憶部13と同様である。
【0047】
記憶部33には、スマートキー機能で用いる車両40固有のキーIDが格納されている。表示部34は、具体的にはインジケータである。表示部34は、サーバ装置10から入力される信号に基づいて点灯・点滅等することにより、スマートキー機能の設定状態およびイモビライザ機能の設定状態をユーザに提示する。これにより、ユーザは、スマートキー機能の設定状態およびイモビライザ機能の設定状態を常時確認することができる。
【0048】
近距離無線通信部35は、例えばNFC(Near field radio communication)、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、IrDA(Infrared Data Association)等の規格に準拠した通信機能を有している。本実施形態では、スマートキー機能を利用する際に、近距離無線通信部35を通じて、車両40と近距離無線通信を行う。
【0049】
(車両)
車両40は、制御部41と、通信部42と、記憶部43と、ドアロック部44と、近距離無線通信部45と、を備えている。記憶部43および近距離無線通信部45の物理的な構成は、記憶部13および近距離無線通信部35と同様である。制御部41は、車両40に搭載される各種構成要素の動作を統括的に制御するECU(Electronic Control Unit)である。
【0050】
制御部41は、記憶部43に格納されたプログラムの実行を通じて、ドアロック制御部411およびエンジン制御部412として機能する。ドアロック制御部411は、無線通信により、記憶部43に格納されたキーIDと鍵装置30の記憶部33に格納されたキーIDとを照合することにより、車両40のドアを開錠または施錠する。
【0051】
ドアロック制御部411は、サーバ装置10からスマートキー停止要求信号が入力された場合、スマートキー機能をオフにし、鍵装置30による車両40のドアの開錠を禁止する。一方、ドアロック制御部411は、サーバ装置10からスマートキー設定要求信号が入力された場合、スマートキー機能をオンにし、鍵装置30による車両40のドアの開錠を許可する。
【0052】
エンジン制御部412は、車両40のエンジンの始動を制御する。エンジン制御部412は、サーバ装置10からイモビライザ設定要求信号が入力された場合、イモビライザ機能をオンにし、車両40のエンジンの始動を禁止する。一方、エンジン制御部412は、サーバ装置10からイモビライザ停止要求信号が入力された場合、イモビライザ機能をオフにし、車両40のエンジンの始動を許可する。
【0053】
通信部42は、例えばDCM(Data Communication Module)等から構成され、ネットワークNWを介した無線通信により、サーバ装置10との間で通信を行う。記憶部43には、スマートキー機能で用いる車両40固有のキーIDが格納されている。ドアロック部44は、例えば車両40のドアに設けられた電動ドアロック装置である。ドアロック部44は制御部41の制御に基づいて、車両40のドアを開錠または施錠する。
【0054】
(車両制御方法(ユーザの入室時))
本実施形態に係る車両制御システム1および車両制御装置が実行する車両制御方法において、ユーザが施設に入室した場合の処理について、
図3を参照しながら説明する。
【0055】
まず、入退室管理装置20の情報取得部24は、施設に入室するユーザの情報(例えば指紋情報、声紋情報、虹彩情報、顔情報、ICカード情報、暗証番号等)を取得する(ステップS1)。続いて、入退室管理装置20の入退室判定部211は、ユーザの情報に基づいて、当該ユーザが施設に入室したか否かを判定する(ステップS2)。
【0056】
ユーザが施設に入室したと判定した場合(ステップS2でYes)、入退室判定部211は、その判定結果(入室検出信号)をサーバ装置10に出力する(ステップS3)。一方、ユーザが施設に入室していないと判定した場合(ステップS2でNo)、入退室判定部211は、ステップS1に戻る。
【0057】
続いて、サーバ装置10の制御部11は、スマートキー機能の停止要求(スマートキー停止要求信号)を車両40に出力する(ステップS4)。続いて、車両40は、スマートキー機能を停止し(ステップS5)、本処理を終了する。
【0058】
なお、制御部11は、ステップS4において、スマートキー機能の停止要求(スマートキー停止要求信号)に加えて、イモビライザ機能の設定要求(イモビライザ設定要求信号)を車両40に出力してもよい。これを受けて、車両40は、スマートキー機能を停止し、かつイモビライザ機能を設定する。
【0059】
(車両制御方法(ユーザの退室時))
本実施形態に係る車両制御システム1および車両制御装置が実行する車両制御方法において、ユーザが施設から退室した場合の処理について、
図4を参照しながら説明する。
【0060】
まず、入退室管理装置20の情報取得部24は、施設から退室するユーザの情報(例えば指紋情報、声紋情報、虹彩情報、顔情報、ICカード情報、暗証番号等)を取得する(ステップS11)。続いて、入退室管理装置20の入退室判定部211は、ユーザの情報に基づいて、当該ユーザが施設から退室したか否かを判定する(ステップS12)。
【0061】
ユーザが施設から退室したと判定した場合(ステップS12でYes)、入退室判定部211は、その判定結果(退室検出信号)をサーバ装置10に出力する(ステップS13)。一方、ユーザが施設から退室していないと判定した場合(ステップS12でNo)、入退室判定部211は、ステップS11に戻る。
【0062】
続いて、サーバ装置10の制御部11は、スマートキー機能の復帰要求(スマートキー設定要求信号)を車両40に出力する(ステップS14)。続いて、車両40は、スマートキー機能を復帰させ(ステップS15)、本処理を終了する。
【0063】
なお、制御部11は、ステップS14において、スマートキー機能の復帰要求(スマートキー設定要求信号)に加えて、イモビライザ機能の停止要求(イモビライザ停止要求信号)を車両40に出力してもよい。これを受けて、車両40は、スマートキー機能を設定し、かつイモビライザ機能を停止する。
【0064】
以上説明した本実施形態に係る車両制御システム1、車両制御装置および車両制御プログラムによれば、ユーザの位置情報を用いることなく、スマートキー機能、イモビライザ機能をオンまたはオフにすることができる。
【0065】
また、本実施形態に係る車両制御システム1、車両制御装置および車両制御プログラムによれば、ユーザが施設内にいる時はスマートキー機能がオフに、イモビライザ機能がオンになるため、例えば悪意のある第三者のリレーアタックにより、ユーザが意図しないにもかかわらず、車両40のドアが開錠されてしまう等の事態を防止することができる。
【0066】
なお、本実施形態に係る車両制御システム1、車両制御装置および車両制御プログラムでは、施設から入退室する際に、ユーザ自身に固有の情報をユーザ情報として取得し、入退室を判定している。そのため、施設に出入りするユーザが複数人であり、車両40が複数台ある場合であっても、施設への入退室をユーザごとに検出し、ユーザごとの車両40のスマートキー機能、イモビライザ機能をオンまたはオフにすることができる。
【0067】
一方、施設を利用するユーザが一人である場合は、施設への入退室時にユーザが誰であるかまでは判別する必要がない。そのため、この場合は生体認証等以外の方法を利用してユーザの入退室を検出してもよい。例えば情報取得部24によって、施設の入口のドアの開閉状態を常時監視し、入退室判定部211によって、ドアの開閉状態に基づいて、ユーザの施設への入退室を検出してもよい。このように、ドアの開閉状態に基づいてユーザの入退室を検出することにより、ユーザの入退室をより簡便かつ低コストに検出することができる。
【0068】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わしかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 車両制御システム
10 サーバ装置
11 制御部
12 通信部
13 記憶部
131 車両情報DB
20 入退室管理装置
21 制御部
211 入退室判定部
22 通信部
23 記憶部
231 ユーザ情報DB
24 情報取得部
30 鍵装置
31 制御部
32 通信部
33 記憶部
34 表示部
35 近距離無線通信部
40 車両
41 制御部
411 ドアロック制御部
412 エンジン制御部
42 通信部
43 記憶部
44 ドアロック部
45 近距離無線通信部
NW ネットワーク