IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立アプライアンス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-誘導加熱調理器による検出温度補正方法 図1
  • 特許-誘導加熱調理器による検出温度補正方法 図2A
  • 特許-誘導加熱調理器による検出温度補正方法 図2B
  • 特許-誘導加熱調理器による検出温度補正方法 図2C
  • 特許-誘導加熱調理器による検出温度補正方法 図3
  • 特許-誘導加熱調理器による検出温度補正方法 図4
  • 特許-誘導加熱調理器による検出温度補正方法 図5A
  • 特許-誘導加熱調理器による検出温度補正方法 図5B
  • 特許-誘導加熱調理器による検出温度補正方法 図5C
  • 特許-誘導加熱調理器による検出温度補正方法 図6
  • 特許-誘導加熱調理器による検出温度補正方法 図7
  • 特許-誘導加熱調理器による検出温度補正方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】誘導加熱調理器による検出温度補正方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
H05B6/12 313
H05B6/12 335
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020140927
(22)【出願日】2020-08-24
(65)【公開番号】P2022036625
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】下妻 清秋
(72)【発明者】
【氏名】松尾 良平
(72)【発明者】
【氏名】河野 悠平
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-160899(JP,A)
【文献】特開2013-254617(JP,A)
【文献】特開平11-104014(JP,A)
【文献】特開2005-078993(JP,A)
【文献】特開2020-177802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器を載置するトッププレートと、
該トッププレートの下方に設けられ、前記調理容器を加熱する加熱部と、
前記調理容器内の調理物の温度を設定する温度設定部と、
該温度設定部により設定された温度を表示する表示部と、
前記トッププレートの下方に設けられ、前記調理容器の底面の温度を検出する赤外線センサと、
前記赤外線センサの出力値を補正することにより、前記赤外線センサの検出温度を変化させる温度補正部と、を具備する誘導加熱調理器による検出温度補正方法であって、
前記調理物の温度が前記表示部に表示された温度よりも低い場合、前記温度補正部に前記赤外線センサの検出温度を低く変化させることを特徴とする検出温度補正方法
【請求項2】
調理容器を載置するトッププレートと、
該トッププレートの下方に設けられ、前記調理容器を加熱する加熱部と、
前記調理容器内の調理物の温度を設定する温度設定部と、
該温度設定部により設定された温度を表示する表示部と、
前記トッププレートの下方に設けられ、前記調理容器の底面の温度を検出する赤外線センサと、
前記赤外線センサの出力値を補正することにより、前記赤外線センサの検出温度を変化させる温度補正部と、を具備する誘導加熱調理器による検出温度補正方法であって、
前記調理物の温度が前記表示部に表示された温度よりも高い場合、前記温度補正部に前記赤外線センサの検出温度を高く変化させることを特徴とする検出温度補正方法
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の検出温度補正方法において、
前記温度補正部により前記赤外線センサの検出温度が補正された場合、
前記表示部に表示される温度は変更されないことを特徴とする検出温度補正方法
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の検出温度補正方法において、
前記温度補正部により補正可能な範囲は、-20℃から+20℃であることを特徴とする検出温度補正方法
【請求項5】
請求項1から請求項の何れか一項に記載の検出温度補正方法において、
前記温度補正部により前記赤外線センサの検出温度が補正された場合、
前記赤外線センサの制御温度は変更されないことを特徴とする検出温度補正方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トッププレートに載置した調理容器の底面温度を赤外線センサで検知することで、調理容器内の油温を設定温度に維持する誘導加熱調理器、および、検出温度補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導加熱調理器として、使用者が食材に応じて設定した油温を表示部に表示するとともに、調理容器の底面温度を赤外線センサで検知することで、調理容器内の油温を設定温度に維持するものが知られている。この機能を用いれば、使用者が火力を随時調節することなく、食材に応じた適温で揚げ物調理を行うことができる。
【0003】
しかしながら、調理容器は多種多様であるため、調理容器の材質や板厚や大きさが標準調理容器と異なる場合には、底面温度が所定の制御温度となるように火力制御しても、使用者が設定し表示部に表示された油温と、調理容器内の実際の油温の間に温度差が生じることもあり、誤った表示温度を信用した使用者が揚げ物調理に失敗するおそれもあった。
【0004】
そこで、特許文献1では、表示手段に表示する温度設定値は変更せずに、調理容器底面の制御温度を初期の第1の制御温度から使用者が調整した第2の制御温度へ変更する設定調整機能が提案されている。この設定調整機能を用い、赤外線センサの検出温度が、第1の制御温度よりも低い、あるいは高い、第2の制御温度になるように火力を調整することにより、特許文献1では、表示手段に表示される温度設定値と調理容器内の調理物の温度の差を減少させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-49000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、調理容器の底面の制御温度を第1の制御温度から第2の制御温度に変更することで、温度設定値と調理物温度の差を減少させる方法には、次のような課題がある。
【0007】
揚げ物調理を例にとると、多量の油を蓄えた調理容器を加熱する場合、油自体の放熱や調理容器自体の加熱を考慮した熱量を与える必要があるため、使用者が設定した油温(一般的には、140℃~200℃)を超える温度まで調理容器底面を加熱する必要がある。調理容器底面が高温になると、調理容器を載置したトッププレートも伝熱により加熱され、その結果、赤外線センサを含む周囲部品や雰囲気温度も上昇する。
【0008】
本来、赤外線センサは、調理容器底面の赤外線量を検出するものであるが、伝熱により各部が加熱されると、調理容器底面以外からの赤外線量を外乱として余分に検出する恐れがある。つまり、調理容器底面の赤外線量のみを検出することが理想ではあるものの、外乱により本来の調理容器底面よりも高い温度を赤外線センサが検出する恐れがある。
【0009】
したがって、外乱により本来の底面温度よりも高い温度を赤外線センサが検出している場合には、特許文献1のように、制御温度を第1の制御温度から第2の制御温度に変更しても、赤外線センサが調理容器底面の温度を正しく検出できないことがあり、赤外線センサが第2の制御温度を検出するように制御しても、表示手段に表示される設定温度と調理容器内の調理物の温度差を減じる効果が小さくなってしまう場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、表示部に表示される設定温度と調理容器内の調理物の温度差を更に減じることを可能とする誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の誘導加熱調理器は、調理容器を載置するトッププレートと、該トッププレートの下方に設けられ、前記調理容器を加熱する加熱部と、前記調理容器内の調理物の温度を設定する温度設定部と、該温度設定部により設定された温度を表示する表示部と、前記トッププレートの下方に設けられ、前記調理容器の底面の温度を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサの出力値を補正することにより、前記赤外線センサの検出温度を変化させる温度補正部と、を具備する誘導加熱調理器とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の誘導加熱調理器によれば、表示部に表示される設定温度と調理容器内の調理物の温度差を更に減じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施例の誘導加熱調理器の概略構成図
図2A】全点灯状態の、入力部と表示部の平面図
図2B】予熱中の、入力部と表示部の平面図
図2C】適温報知後の、入力部と表示部の平面図
図3】設定温度と油温の温度相関の概略図
図4】揚げ物制御時の設定温度と赤外線センサによる制御温度テーブル
図5A】温度補正機能の初期表示状態の、入力部と表示部の平面図
図5B】温度補正機能を「2」に設定中の、入力部と表示部の平面図
図5C】温度補正機能を「-2」に設定中の、入力部と表示部の平面図
図6】温度補正機能設定値と赤外線センサの検出温度の増減テーブル
図7】温度補正機能を「2」に設定した時の温度相関概略図
図8】温度補正機能を「-2」に設定した時の温度相関概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の誘導加熱調理器の実施例を図1図8を参照して説明する。
【0015】
図1は、一実施例の誘導加熱調理器の概略構成図である。ここに示すように、誘導加熱調理器の上面には、水平な耐熱ガラスであるトッププレート2が配置される。このトッププレート2上には被加熱物となる調理容器1が載置される。トッププレート2の下方には、調理容器1を誘導加熱する加熱コイル3が配置される。加熱コイル3の隙間3aの下方には、赤外線センサ4が設けられている。赤外線センサ4は、調理容器1の底面が放射する赤外線を、トッププレート2を介して受光し、受光した赤外線のエネルギーから調理容器1の底面の温度を検知する。制御部5には赤外線センサ4と入力部6と表示部7とインバータ8が接続される。入力部6は、使用者が指令等を入力するためのものであり、表示部7は、使用者が指令した状態等を表示するためのものである。インバータ8は制御部5の制御に従い加熱コイル3に高周波電圧を印加する。このような構成により、調理容器1の底面に渦電流を発生させることができ、使用者の指令に応じた火力で調理容器1を自己発熱させることができる。
【0016】
ここで、図2Aを用いて、入力部6と表示部7を詳細に説明する。ここに示すように、入力部6には、切スタートキー10、揚げ物キー11、火力アップキー12、火力ダウンキー13が設けられており、表示部7には、予熱中表示14、適温表示15、ディスプレイ16が設けられている。なお、図2Aは、表示部7が全点灯している実際にはあり得ない状態を示しており、ディスプレイ16の「888」は、ディスプレイ16を構成する3桁の7セグメントディスプレイが全点灯した状態を示している。
【0017】
切スタートキー10は、設定状態を確定したり、設定された調理モードを開始したりする際に押下するキーである。
【0018】
揚げ物キー11は、揚げ物調理モードを設定する際に操作するキーである。揚げ物調理モードは、赤外線センサ4で検出した調理容器1の底面温度が所定の制御温度となるように火力制御することで、調理容器1内の調理物である油の温度(以下、「油温」と称する)を入力部6で設定した設定温度に維持する調理モードである。
【0019】
火力アップキー12と火力ダウンキー13は、揚げ物の設定温度を140℃~200℃の範囲で10℃刻みに上下させるキーである。これらのキーにより揚げ物の設定温度を例えば180℃に設定すると、図2B図2Cに示すように、ディスプレイ16に設定温度として「180℃」が表示される。
【0020】
ここで、図3を用い、揚げ物の設定温度を180℃に設定し、例えばコロッケを調理する場合の、標準的な制御を説明する。なお、図3では、赤外線センサ4の検出温度を破線で、調理容器1の実際の底面温度を細実線で、調理容器1内の実際の油温を太実線で示している。
【0021】
揚げ物調理を行う場合、制御部5は、赤外線センサ4の検出温度が、揚げ物の設定温度に対応する制御温度となるように、インバータ8の出力を制御する。図4は、設定温度と制御温度の関係を規定した表の一例である。例えば、使用者が揚げ物の設定温度を180℃に設定した場合、制御部5は、図4の表に従い、赤外線センサ4の検出温度が230℃となるようにインバータ8の出力を制御する。
【0022】
誘導加熱調理器の製造者が指定した標準調理容器を用いる場合、図3に示すように、赤外線センサ4の検出温度(破線)と実際の底面温度(細実線)が略一致するので、制御部5は、検出温度(破線)が設定温度(180℃)相当の制御温度(230℃)となるようにインバータ8の出力を制御することで、油温を設定温度(180℃)に維持することができる。
【0023】
しかしながら、調理容器の材質や板厚や大きさが標準調理容器と異なる場合には、赤外線センサ4の検出温度(破線)と実際の底面温度(細実線)が乖離しており、外線センサ4の検出温度に基づいて制御部5が火力を制御しても、油温が設定温度にならないこともある。例えば、外乱の影響で検出温度が底面温度より低くなる場合には、制御部5が火力を必要以上に強める結果、油温が設定温度を超える高温になってしまい、コロッケの表面が焦げる反面、内部が加熱不足になったりする。一方、外乱の影響で検出温度が底面温度より高くなる場合には、制御部5が火力を必要以上に弱める結果、油温が設定温度に到達しない低温になってしまい、コロッケがカラっと揚がらず煮崩れしたりする場合がある。
【0024】
<赤外線センサの検出温度の補正方法>
このような油温制御の不良があった場合、使用者は、調理後のコロッケの状態から、表示部7に表示された設定温度と実際の油温の乖離に気づくことができ、また、調理に慣れた使用者であれば、菜箸の先端を油面に浸したときの空気の泡の出方や、パン粉などを油に落としたときの広がり方などで、調理を始める前に、設定温度と実際の油温の乖離の程度を認識することができる。
【0025】
そこで、本実施例の誘導加熱調理器では、赤外線センサ4の検出温度が不正確である結果、表示部7に表示される設定温度と実際の油温に温度差が生じている場合には、赤外線センサ4の検出温度を適正化できる温度補正機能を備え、表示部7に表示される設定温度と実際の油温の温度差を減ずることができるようにした。なお、温度補正機能は、入力部6により実現される機能であり、この機能を実現するための構成を、温度補正部と称することもある。
【0026】
ここで、一般的に、揚げ物調理は10℃刻みの調理温度を設定することが多く、油温補正機能においても10℃刻みでの温度差を減じることが実調理に対応することでも効果的である。そのため、本実施例の温度補正機能による設定値は、油温を、-20℃、-10℃、+10℃、+20℃の何れかに補正できるようにする。
【0027】
一方で、赤外線センサ4の検出温度は調理容器の底面温度であり、油温を直接検知していないため、油温を1℃刻みの精度で特定することはできない。このような場合、表示部7への表示内容は、油温としての補正温度を表示することも可能であるが、油温の補正精度に対して使用者に誤解を与えないために、温度の高低をレベルの意味として表す表記として、-2(約-20℃)、-1(約-10℃)、0(±0℃)、1(約+10℃)、2(約+20℃)のような表記を使用する。
【0028】
以下、図5A図5Cを用いて、温度補正機能の設定手順を説明する。
【0029】
温度補正機能の設定は、入力部6に設けられた揚げ物キー11を3秒間押下することで開始される。図5Aは、温度補正機能の起動直後の状態を示しており、ディスプレイ16には、温度補正機能の初期の設定値「0」が表示されている。温度補正機能の設定値は、火力アップキー12または火力ダウンキー13により増減させることができ、設定値「2」を選択した場合は図5Bの如く表示され、設定値「-2」を選択した場合は図5Cの如く表示される。温度補正機能の設定値を調整したのち、揚げ物キー11を押下すると、設定値が確定する。
【0030】
図6は、温度補正機能の設定値と、赤外線センサ4の検出温度の増減などとの相関を示す表である。この表に示すように、例えば、設定値を「2」にした場合は赤外線センサ4の検出温度に「-20℃」の補正を施し、設定値を「-2」にした場合は赤外線センサ4の検出温度に「+20℃」の補正を施すことにより、赤外線センサ4の検出温度を調理容器1の実際の底面温度に近づけることができる。なお、制御部5には、温度補正機能の設定値を記憶するメモリ機能が備わっており、温度補正機能の設定を次回行う場合には、表示部7にはメモリ機能に記憶された前回の設定値がまず表示される。
【0031】
<本実施例の誘導加熱調理器の具体的な操作方法>
以上のように構成された誘導加熱調理器において、使用者が揚げ物を調理した場合の操作例を具体的に説明する。
【0032】
まず、使用者は、調理容器1に油を入れ、トッププレート2の上に載置する。次に、入力部6の揚げ物キー11を操作した後、火力アップキー12や火力ダウンキー13を操作して、油温を例えば180℃に設定し、切スタートキー10を操作して予熱を開始する。
【0033】
制御部5は、調理容器1内の油温が180℃になるように、図4の表に従い、制御温度を230℃に設定する。そして、調理容器1の底面温度を赤外線センサ4で検出しながら、底面温度が制御温度(230℃)となるように火力を調整する。なお、赤外線センサ4の検出温度が制御温度に到達するまでの予熱期間中は、図2Bに示すように、予熱中表示14が点灯する。一方、赤外線センサ4の検出温度が制御温度に到達した後は、図2Cに示すように、予熱中表示14が消灯し、適温表示15が点灯する。適温表示15の点灯によって、使用者は油温が設定温度180℃へ到達し、揚げ物調理が可能とすることを認識する。
【0034】
次に、図7を用いて、赤外線センサ4の検出温度が調理容器1の実際の底面温度よりも高い場合の油温補正方法を説明する。ここでは、油温の設定温度を180℃としているため、制御部5は、図4の表に従い、赤外線センサ4の検出温度が制御温度230℃になるようにインバータ8の出力を制御する。図7に示す加熱時間の前段では、調理容器1の実際の底面温度は制御温度230℃に満たない210℃であるが、赤外線センサ4の検出温度は外乱の影響により制御温度230℃となっているため、制御部5は、油温が設定温度180℃であると誤解し、図2Cのように適温を報知する。
【0035】
しかしながら、使用者の知見から、実際の油温が設定温度180℃より低い160℃程度と判断できる場合は、赤外線センサ4の検出温度を適正化すべく、図5Bのように、温度補正機能の設定値を「2」に設定する。これにより、赤外線センサ4の検出温度230℃に「-20℃」の補正が施され、その時点での調理容器1の実際の底面温度210℃と一致するため、制御部5は、補正後の検出温度210℃が制御温度230℃に上昇するまで火力を強める。これに伴い、実際の油温も160℃から180℃に上昇し、表示部7に表示される設定温度と調理容器1内の実際の油温の温度差を減じることができる。
【0036】
同様に、図8を用いて、赤外線センサ4の検出温度が調理容器1の実際の底面温度よりも低い場合の油温補正方法を説明する。ここでは、油温の設定温度を180℃としているため、制御部5は、図4の表に従い、赤外線センサ4の検出温度が制御温度230℃になるようにインバータ8の出力を制御する。図8に示す加熱時間の前段では、調理容器1の実際の底面温度は制御温度230℃を超える250℃であるが、赤外線センサ4の検出温度は外乱の影響により制御温度230℃となっているため、制御部5は、油温が設定温度180℃であると誤解し、図2Cのように適温を報知する。
【0037】
しかしながら、使用者の知見から、実際の油温が設定温度180℃より高い200℃程度と判断できる場合は、赤外線センサ4の検出温度を適正化すべく、図5Cのように、温度補正機能の設定値を「-2」に設定する。これにより、赤外線センサ4の検出温度230℃に「+20℃」の補正が施され、その時点での調理容器1の実際の底面温度250℃と一致するため、制御部5は、補正後の検出温度250℃が制御温度230℃に低下するまで火力を弱める。これに伴い、実際の油温も200℃から180℃に低下し、表示部7に表示される設定温度と調理容器1内の実際の油温の温度差を減じることができる。
【0038】
上記したように、温度補正機能による設定状態は、メモリ機能により記憶されている。したがって、次回揚げ物キーによる揚げ物通電時には、温度補正機能による設定値に応じて赤外線センサの検出温度の低下、または増加がなされる。よって、使用者は再度、温度補正機能による操作、設定を行う必要がなく、使用者の手間を軽減するものである。
【0039】
また、温度補正機能の設定は、揚げ物調理開始前に於いても、有効である。例えば、使用者が普段使用する調理容器を買い替えたとき、調理をおこなう前に温度補正機能の設定を初期値である0(±0℃)にすることで、不要な温度差が生じることがないよう配慮している。
【0040】
以上のように、赤外線センサにより調理容器底面の温度を検出、制御し、設定温度に応じた油温を制御する誘導加熱調理器において、設定温度と調理容器内の油温差が発生した場合に於いても、温度補正機能により、該温度差を減じることが可能であり、使い勝手の向上、調理性能の向上を図ることを可能とするものである。また、揚げ物における油温に限らず、赤外線センサを用いて調理容器底面の温度を制御する他の機能においても有効である。
【0041】
また、赤外線センサ検出温度を変化させることにより、調理以外の面においても以下のような効果を得られる。
【0042】
図4において、揚げ物の設定温度200℃の場合、調理容器底面の制御温度は250℃を示している。この制御温度の上限は250℃とは限らず、例えば270℃のような高い制御温度に対応するように調理容器底面の温度を補正するケースがある。このケースにおいて、従来の温度補正機能に従えば、調理容器底面の温度は、調理容器底面の制御温度を250℃から270℃へ上昇させることで補正する。このとき、図1で示す制御部5のような温度補正を担う制御手段の内部制御情報として270という数字が設定されることになる。
【0043】
制御要素をデータ表現として用いる数字として、整数0~255を1バイトとし、整数0~65,535を2バイトの情報量として、制御することが知られている。1バイト、2バイトは制御要素の情報量であり、この情報量が増えるほど、内部記憶容量を大きく設ける必要がある。つまり、270℃の整数270を用いることにより、2バイト情報量が必要となり、より大きな情報量を処理することから、従来の温度補正では、温度補正を担う制御手段の内部記憶容量が圧迫してしまう。
【0044】
しかし、本発明では、赤外線センサの制御温度を直接変更するのではなく赤外線センサ検出温度を変動させることから、設定温度200℃のような高温域においても、赤外線センサの制御温度を250℃(整数250)1バイトのままで、調理容器底面の温度及び調理容器内の油温を制御できるようになる。
【0045】
したがって、制御上の情報量の増加を抑制することが可能となり、制御部5の内部記憶容量の大容量化を不要にできる。これは、小容量で安価な部品構成を採用することへと繋がりコストパフォーマンスを向上させる。
【符号の説明】
【0046】
1 調理容器
2 トッププレート
3 加熱コイル
3a 隙間
4 赤外線センサ
5 制御部
6 入力部
7 表示部
8 インバータ
9 調理物(油)
10 切スタートキー
11 揚げ物キー
12 火力アップキー
13 火力ダウンキー
14 予熱中表示
15 適温表示
16 ディスプレイ
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8