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▶ ルソール リベルテ インコーポレイティドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】コイルバネ及びそれを作製する方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/06 20060101AFI20230214BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
F16F1/06 B
F16F1/06 K
F16F1/06 L
B32B5/26
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2020531799
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 CA2018050993
(87)【国際公開番号】W WO2019036801
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/549,602
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520060427
【氏名又は名称】ルソール リベルテ インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ルネ フルニエ
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ マソン
(72)【発明者】
【氏名】リュック デジャルダン
(72)【発明者】
【氏名】ジェルマン ベランジェ
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-226327(JP,A)
【文献】米国特許第07857294(US,B2)
【文献】特表2015-526661(JP,A)
【文献】実開昭63-188346(JP,U)
【文献】特開2007-278438(JP,A)
【文献】特開2017-082966(JP,A)
【文献】特公昭48-005418(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
F16F 1/00- 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸線を有しかつ巻回方向においてバネ軸線の回りに湾曲されたワイヤで作成された複合バネにおいて、
前記ワイヤは、コアと、前記コアの回りに巻回された複数のファイバ層とを備え、
前記複数のファイバ層は、前記コアに最も近い複数の最内側ファイバと、複数の最外側ファイバと、前記複数の最内側ファイバと前記複数の最外側ファイバの間の複数の中間ファイバとを備え、単位質量当たりの前記複合バネに蓄積される目標とするエネルギに従って、前記コアの丈に沿って、前記複合バネの与えられた巻回方向で、前記複数の最外側ファイバの前記ワイヤの前記長手軸線に関する配向が選択され、
前記複数の最外側ファイバの配向は、前記複合バネの与えられた巻回方向が右巻き方向である場合、前記長手軸線に関して負の角度であり、
前記複数の最内側ファイバ及び前記複数の中間ファイバの内の少なくとも一つの配向は、前記複合バネの与えられた巻回方向が右巻き方向である場合、前記長手軸線に関して正の角度であり、
前記複数の最外側ファイバの配向は、前記複合バネの与えられた巻回方向が左巻き方向である場合、前記長手軸線に関して正の角度であり、
前記複数の最内側ファイバ及び前記複数の中間ファイバの内の少なくとも一つの配向は、前記複合バネの与えられた巻回方向が左巻き方向である場合、前記長手軸線に関して負の角度である、複合バネ。
【請求項2】
i)前記バネ軸線の回りに右巻き方向において、前記複数の最外側ファイバは、前記ワイヤの前記長手軸線に対して-35°~-55°の範囲内の角度にて配向され、ii)前記バネ軸線の回りに左巻き方向において、前記複数の最外側ファイバは、前記ワイヤの前記長手軸線に対して+35°~+55°の範囲内の角度にて配向される、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項3】
左巻き方向である請求項1に記載の複合バネであって、
前記複数の最外側ファイバは前記ワイヤの前記長手軸線に対して+35°~+55°の範囲内の角度にて配向されており
前記複数の最内側ファイバは前記ワイヤの前記長手軸線に対して0°~15°の範囲内の角度にて配向されている、複合バネ。
【請求項4】
左巻き方向である請求項1に記載の複合バネであって、
前記複数の最外側ファイバは前記ワイヤの前記長手軸線に対して+35°~+55°の範囲内の角度にて配向されており
前記複数の最内側ファイバは前記ワイヤの前記長手軸線に対して、i)0°~15°の範囲内の角度、ii)+75°~+90°の範囲内の角度、iii)0°~-15°の範囲内の角度、及び、iV)-75°~-90°の範囲内の角度、の内の少なくとも一つにて配向されており
前記複数の中間ファイバは前記ワイヤの前記長手軸線に対して、i)+35°と+55°との間、及び、ii)-35°と-55°との間で選択された範囲内の角度にて配向されている、複合バネ。
【請求項5】
前記バネ軸線の回りにおいて前記ワイヤが右巻き方向である請求項1に記載の複合バネであって
前記複数の最外側ファイバが前記ワイヤの前記長手軸線に対して-35°~-55°の範囲内の角度にて配向されており
前記複数の最内側ファイバが前記ワイヤの前記長手軸線に対して0°~15°の範囲内の角度にて配向されている、複合バネ。
【請求項6】
前記バネ軸線の回りにおいて前記ワイヤが右巻き方向である請求項1に記載の複合バネであって、
前記複数の最外側ファイバが前記ワイヤの前記長手軸線に対して-35°~-55°の範囲内の角度にて配向されており
前記複数の最内側ファイバが前記ワイヤの前記長手軸線に対して、i)0°~15°の範囲内の角度、ii)+75°~+90°の範囲内の角度、iii)0°~-15°の範囲内の角度、及び、iV)-75°~-90°の範囲内の角度、の内の少なくとも一つにて配向されており
前記複数の中間ファイバが前記ワイヤの前記長手軸線に対して、i)+35°と+55°との間、及び、ii)-35°と-55°との間で選択された範囲内の角度にて配向されている、複合バネ。
【請求項7】
前記コアは、i)非軸対称的な幾何学形状、及び、ii)軸対称的な幾何学形状の一方を有する、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項8】
前記コアは、その丈の少なくとも一部分に沿い、円形、多角形、凸形及び卵形の断面の内の少なくとも一つを備える、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項9】
前記ワイヤは、その丈の少なくとも一部分に沿い、円形、多角形、凸形及び卵形の断面の内の少なくとも一つを備える、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項10】
前記ワイヤは、先細化端部、大径化端部、研削端部、無研削端部、多角形断面形状化端部、及び、重ね型成形端部の内の少なくとも一つを備える請求項1に記載の複合バネ。
【請求項11】
前記ワイヤは、一定ピッチ、可変ピッチ、円筒形状、円錐形状、樽形状、砂時計形状、開放端部バネ、及び、閉塞端部バネの内の少なくとも一つであるバネ巻線へと巻回される、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項12】
前記コアは中空管材である、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項13】
記複合バネは、前記中空管材を貫通して延在する少なくとも一本の熱的又は電気的な導通要素をさらに備える、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項14】
記コアは機能要素を収容する、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項15】
前記ワイヤは、少なくとも一本の熱的又は電気的な導通要素を備える、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項16】
前記ワイヤは外側包被体を備える、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項17】
記外側包被体は、i)保護包被体、ii)仕上げ包被体、及び、iii)透明包被体の内の少なくとも一つである、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項18】
前記複数のファイバ層の内の少なくとも一つは、i)粗面、及び、ii)着色樹脂の一方を備える、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項19】
前記複合バネは、前記コアの回りにおける非軸対称的なファイバ層載置をもたらすように、前記コアの周縁の少なくとも一部分において、前記複数のファイバ層の間で挿入されている織地を備えている、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項20】
前記コアは、その丈に沿い一定の断面を有し、且つ、i)ファイバ層の数、及び、ii)ファイバ/樹脂の比率の少なくとも一方は、前記ワイヤの丈に沿い選択的に変化せしめられる、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項21】
前記コアは、その丈に沿い変化する断面を有し、且つ、i)ファイバ層の数、及び、ii)ファイバ/樹脂の比率の少なくとも一方は、前記ワイヤの丈に沿い選択的に変化せしめられる、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項22】
前記バネ軸線の回りにおける前記ワイヤの右巻き方向において、前記ワイヤの前記長手軸線に対して-θ°にて配向されたファイバ層の数は、前記ワイヤの前記長手軸線に対して+θ°にて配向されたファイバ層の数以上であり、前記ワイヤの左巻き方向において、前記ワイヤの前記長手軸線に対して+θ°にて配向されたファイバ層の数は、前記ワイヤの前記長手軸線に対して-θ°にて配向されたファイバ層の数以上である、請求項1に記載の複合バネ。
【請求項23】
バネ軸線に沿った与えられた巻回方向を有する複合バネを作製する方法において、
前記方法は、
A)コアと、前記コアに巻回された複数のファイバ層とを備える複合的な未硬化プリフォームであって、前記複数のファイバ層は、前記コアに最も近い複数の最内側ファイバと、複数の最外側ファイバと、前記複数の最内側ファイバと前記複数の最外側ファイバの間複数の中間ファイバとを備える複合的な未硬化プリフォームを作製する段階と、
B)前記複合バネの与えられた巻回方向に依存して、単位質量当たりの前記複合バネに蓄積される目標とするエネルギに従って、前記未硬化プリフォームの丈に沿って、前記未硬化プリフォームの長手軸線に関する前記最外側ファイバの配向を選択する段階であって、
前記複数の最外側ファイバの配向は、前記複合バネの与えられた巻回方向が右巻き方向である場合、前記長手軸線に関して負の角度であり、
前記複数の最内側ファイバ及び前記複数の中間ファイバの内の少なくとも一つの配向は、前記複合バネの与えられた巻回方向が右巻き方向である場合、前記長手軸線に関して正の角度であり、
前記複数の最外側ファイバの配向は、前記複合バネの与えられた巻回方向が左巻き方向である場合、前記長手軸線に関して正の角度であり、
前記複数の最内側ファイバ及び前記複数の中間ファイバの内の少なくとも一つの配向は、前記複合バネの与えられた巻回方向が左巻き方向である場合、前記長手軸線に関して負の角度である、段階と、
)前記未硬化プリフォームを、バネ軸線の回りに関して形状化して前記与えられた巻回方向を有するバネにする段階と、
D)硬化させる段階とを備える、複合バネを作製する方法。
【請求項24】
前記方法は、
i)非軸対称的な断面のコアを選択する段階、ii)前記コアの回りにおける前記最内側ファイバ、前記中間ファイバ及び前記最外側ファイの非軸対称的な載置形態を選択する段階、iii)ファイバ/樹脂の比率を選択する段階、及び、iV)前記未硬化プリフォームの前記コアの横方向変位を引き起こす段階、の内の少なくとも一つの段階によって、前記未硬化プリフォームの長手軸線に関する前記最内側ファイバ、前記中間ファイバ及び前記最外側ファイバの非軸対称的な載置形態を提供する段階を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、
i)前記最内側ファイバ、前記中間ファイバ及び前記最外側ファイバを前記未硬化プリフォームの丈に沿い選択的に位置決めする段階、ii)前記未硬化プリフォームの丈に沿いファイバ/樹脂の比率を変化させる段階、及び、iii)自身の丈に沿い変化する断面を有するように前記コアを選択する段階、の内の少なくとも一つの段階を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記未硬化プリフォームを形状化して前記与えられた巻回方向を有するバネにする前記段階は、一定ピッチ、可変ピッチ、円筒形状、円錐形状、樽形状、砂時計形状、開放端部バネ、及び、閉塞端部バネの内の少なくとも一つを以て、前記未硬化プリフォームを前記バネ軸線の回りで前記与えられた巻回方向に巻回する段階を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記方法は、
前記未硬化プリフォームの長手軸線に対し、少なくとも一つ前記最内側ファイバを、i)+75°と+90°との間、及び、ii)-75°と-90°との間で選択された範囲内の角度にて配向させることにより、前記バネの高固有振動数を調節する段階を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、
前記未硬化プリフォームの長手軸線に対し、少なくとも一つ前記最内側ファイバを、i)0°と+15°との間、及び、ii)0°と-15°との間で選択された範囲内の角度にて配向させることにより、前記バネの座屈に対する抵抗を調節する段階を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項29】
前記方法は、
前記未硬化プリフォームの長手軸線に対し、前記複数の中間ファイバを、i)+35°と+55°との間、及び、ii)-35°と-55°との間で選択された範囲内の角度にて配向させる段階を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項30】
前記方法は、
前記バネ軸線の回りにおいて前記複合バネが右巻き方向である場合、
前記未硬化プリフォームの長手軸線に対し、前記複数の最外側ファイバを、-35°~-55°の範囲内の角度にて配向させる段階を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項31】
前記方法は、
前記バネ軸線の回りにおいて前記複合バネが左巻き方向である場合、
前記未硬化プリフォームの軸線に対し、前記複数の最外側ファイバを、+35°~+55°の範囲内の角度にて配向させる段階を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項32】
前記コアは中空コアであり、
前記方法は、
ケーブルを前記中空コアの中に挿入する段階と、
前記ケーブルの各端部にて張力を付与し、硬化の前に依然として未硬化である間に、巻回済みプリフォームの内側に向けて前記コアの丈に沿って前記コアを撓ませる段階とを備える、請求項2に記載の方法。
【請求項33】
前記方法は、
前記未硬化プリフォームの周縁の少なくとも一部分において、前記最内側ファイバ、前記中間ファイバ及び前記最外側ファイバの複数の層の間で織地を挿入する段階を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項34】
前記方法は、
i)前記バネ軸線の回りにおいて前記複合バネが右巻き方向である場合、前記未硬化プリフォームの前記長手軸線に対して+θ°にて配向された前記複数のファイバの数以上である、前記未硬化プリフォームの前記長手軸線に対して-θ°にて配向された前記複数のファイバの数を選択し、
ii)前記バネ軸線の回りにおいて前記複合バネが左巻き方向である場合、前記未硬化プリフォームの前記長手軸線に対して-θ°にて配向された前記複数のファイバの数以上である、前記未硬化プリフォームの前記長手軸線に対して+θ°にて配向された前記複数のファイバの数を選択する段階を備える、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルバネに関する。更に詳細には、本発明は、複合コイルバネ(composite coil spring)、及び、それを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バネは典型的に、エネルギを蓄積すると共に、次続的に放出することで、接触する表面同士の間において、衝撃を吸収し、又は、力を維持すべく使用される。それらは、付与荷重下で変形すると共に、荷重解除されたときにはそれらの本来の長さに復帰する。圧縮に抗すべく設計された圧縮コイルバネ、引伸ばしに抗すべく設計された引張/伸張コイルバネ、捻り作用に抗すべく設計されたトーション・コイルバネ、一般的には車輪自動車における懸架装置に対して使用される板バネ、円錐状のスパイラル・バネ、皿バネなどの、広範囲なバネが在る。
【0003】
自動車産業において使用されるとき、バネは一般的に、鋼鉄で作成されると共に、目標とする機械的な応力及び疲労の特性を満足すべく設計される。労力は、バネの材料、使用ワイヤ及び/又はバネの幾何学形状、製造方法などを選択することにより、疲労もしくは最大荷重に対する抵抗を増大させながら、バネの重量を減少することに向けられている。
【0004】
最近、自動車産業においては、たとえば板バネ及び駆動軸に関し、複合材料が次第に使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当業界においては依然として、コイルバネ、及び、それを作製する方法に対する要望が在る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
更に詳細には、本開示内容に依れば、
巻回方向においてバネ軸線の回りに湾曲された長手軸線を有するワイヤで作成された複合バネであって、
前記ワイヤは、コアと、該コアの回りに巻回された複数のファイバ層とを備え、
前記バネ軸線に対する、前記ファイバ層の各々の角度的位置は、前記バネ軸線の回りにおける前記ワイヤの前記巻回方向に依存して、前記コアの丈に沿い選択されることで、前記バネの高固有振動数、座屈に対する抵抗、及び、バネに対する圧縮荷重の付与により誘起された引張及び圧縮の応力成分に対する抵抗、の内の少なくとも一つを調節する、複合バネが提供される。
【0007】
更に、
コアと、少なくとも2つのファイバ層とを備える複合的な未硬化プリフォームを作製する段階と、
前記未硬化プリフォームを選択的に形状化してバネにする段階と、
硬化させる段階と、
を備える、複合バネを作製する方法が提供される。
【0008】
本開示内容の他の目的、利点及び特徴は、添付図面を参照して例示的にのみ与えられる本開示内容の特定実施例に関する以下の非限定的な説明を読破すれば更に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、右巻き方向を有する圧縮コイルバネの概略図である。
図2図2は、左巻き方向を有する圧縮コイルバネの概略図である。
図3図3は、右巻き方向及び左巻き方向を有する同様のコイルバネ間の対掌性を示す図である。
図4A図4Aは、左巻き方向を有する圧縮コイルバネの圧縮荷重下における概略図である。
図4B図4Bは、右巻き方向を有する圧縮コイルバネの圧縮荷重下における概略図である。
図4C図4Cは、図4Aの詳細である。
図4D図4Dは、図4Bの詳細である。
図5図5は、ワイヤにおける捩りモーメント及び直接剪断の概略図である。
図6A図6Aは、左巻き方向を有する圧縮コイルバネにおける該コイルバネの内側面に対する圧縮荷重の作用の概略図である。
図6B図6Bは、左巻き方向を有する圧縮コイルバネにおける該コイルバネの外側面に対する圧縮荷重の作用の概略図である。
図6C図6Cは、右巻き方向を有する圧縮コイルバネにおける該コイルバネの内側面に対する圧縮荷重の作用の概略図である。
図6D図6Dは、右巻き方向を有する圧縮コイルバネにおける該コイルバネの外側面に対する圧縮荷重の作用の概略図である。
図7図7は、本開示内容の態様の実施例に係るバネのプリフォームの各ファイバの角度的位置を示す図である。
図8図8は、右巻き方向を有する閉端式の圧縮コイルバネの概略図である。
図9A図9Aは、本開示内容の態様の実施例に係る、A-A線に沿う図8の断面図である。
図9B図9Bは、本開示内容の態様の別実施例に係る、A-A線に沿う図8の断面図である。
図10A図10Aは、本開示内容の態様の実施例に係る左巻き圧縮コイルバネを示す図である。
図10B図10Bは、本開示内容の態様の実施例に係る右巻き圧縮コイルバネを示す図である。
図10C図10Cは、図10Aのコイルバネのワイヤの詳細である。
図10D図10Dは、図10Bのコイルバネのワイヤの詳細である。
図11図11は、本開示内容の態様の実施例に係る、先細化された終端部を備えた右巻き方向を有する圧縮コイルバネの概略図である。
図12A図12Aは、本開示内容の態様の実施例に係る卵形プリフォームの断面図である。
図12B図12Bは、本開示内容の態様の実施例に係る角柱形プリフォームの断面図である。
図12C図12Cは、本開示内容の態様の実施例に係るポテト状プリフォームの断面図である。
図13図13は、本開示内容の態様の実施例に係る圧縮コイルバネのワイヤの概略図である。
図14A図14Aは、本開示内容の態様の実施例に係る直線状の未硬化プリフォームの概略図である。
図14B図14Bは、本開示内容の態様の実施例に係る非直線状の未硬化プリフォームの概略図である。
図15図15は、本開示内容の態様の実施例に係る可変ピッチの円筒状コイルバネを示す図である。
図16図16は、本開示内容の態様の実施例に係る円錐状コイルバネを示す図である。
図17図17は、本開示内容の態様の実施例に係る樽形状コイルバネを示す図である。
図18図18は、本開示内容の態様の実施例に係る砂時計形状コイルバネを示す図である。
図19図19は、本開示内容の態様の実施例に係る研削端部を有するコイルバネを示す図である。
図20A図20Aは、本開示内容の態様の実施例に係るプリフォームの部分図である。
図20B図20Bは、本開示内容の態様の実施例に係る、図20Aのプリフォームから作成されたバネを示す図である。
図21図21は、本開示内容の態様の実施例に係る多角形状の端部断面を有するコイルバネを示す図である。
図22図22は、本開示内容の態様の実施例に係る方法における段階を示す図である。
図23図23は、本開示内容の態様の実施例に係る、平均バネ直径ΦD1よりも大きいバネ直径ΦD2の最終巻線を備える砂時計形状バネを示す図である。
図24図24は、本開示内容の態様の実施例に係る、プレート幾何形状物の端部巻線を有する円筒状コイルバネを示す図である。
図25図25は、図24に示されたプレート幾何形状物を作成する方法の段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、以下の非限定的な例により更なる詳細にて例証される。
【0011】
コイルバネは典型的に、軸線(X)の回りで巻回することにより長手軸線(X)のコイルへと形状化される長手軸線(Y)を有するワイヤを備える。
【0012】
図1は、軸線(X)の回りで反時計方向に湾曲されて右巻き方向を有する圧縮コイルバネ10とされた長手軸線(Y)のワイヤ12を示している。
【0013】
図2は、軸線(X)の回りで時計方向に湾曲されて左巻き方向を有する圧縮コイルバネ14とされたワイヤ12を示している。
【0014】
図3に示された如く、軸線(X)の回りにおけるワイヤ12の同一数の回旋、同一のバネ平均直径(ΦD)、同一のワイヤ断面直径(Φd)、及び、同一のバネ自由高さ(h)を有するバネ10及び14は、対掌性の物体であり、それらは、平面(O)に対するそれらの鏡像から区別可能であると共に、それらは、それらの異なる巻回方向の故に、その上に重畳され得ない。
【0015】
図4は、夫々の軸線(X)に沿う同一の圧縮荷重Pの付与下におけるバネ10(図4B)及び14(図4A)を示している。各バネの表面にては、各バネに対して付与された圧縮荷重Pから帰着する変形及び付随応力に追随する平行六面体の各要素140、141及び100、101が指摘される。図4C及び図4Dにおいて最適に見られる如く、バネ10のワイヤ12の表面上の要素101、及び、バネ14のワイヤ12の表面上の要素141は、夫々、軸線(X)に接近して、すなわち、バネ10及び14の内側面上に位置される一方、バネ10のワイヤ12の表面上の要素100、及び、バネ14のワイヤ12の表面上の要素140は、夫々、軸線(X)から離間して、すなわち、バネ10及び14の外側面上に位置される。
【0016】
図6は、圧縮バネ10及び14に対する荷重Pの付与に依る図4の要素140、141及び100、101の変形を示している。付与された荷重Pは、ワイヤ断面上に、捩りモーメントM、ならびに、直接剪断力Vを生成する。
【0017】
図5に示された如く、M=P×ΦD/2と定義される捩りモーメントは、ワイヤの表面に対する接線方向に沿うワイヤ断面の周縁部上の変形を引き起こす。直接剪断力Vは、付与された荷重Pの方向に沿う、すなわち、バネの軸線(X)に沿う変形を引き起こす。故に、2通りの変形は、バネの内側面上では同一方向を有する一方、それらは、バネの外側面上では逆方向を有する。
【0018】
故に、これらの2つの成分は、図6における点線(直接剪断力)及び破線(捩りモーメント)により示された如く、要素140、141及び100、101がもやは直角ではない様式にて、それらを変形させる剪断応力を引き起こす。
【0019】
それらの作用は、(たとえば、101及び141により例証される如く)各バネの内側面にては加算的である一方、それらは(たとえば100及び140により例証される如く)各バネの外側面にては減算的であることが理解され得る。全体的な正味の作用は、図6において太実線により表される。
【0020】
たとえば、内側の要素101及び141と外側の要素100及び140とを比較することにより図6において明確に示される如く、ワイヤ12の長手軸線(Y)に関し、バネの巻回方向と、材料要素に作用する剪断応力の配向との間には、関係が在る。これらの剪断応力はまた、夫々、図6においてT及びCと注記された、各要素の対角線に沿う引張及び圧縮の応力成分にも関連し得る。再び、バネの巻回方向と、長手軸線(Y)に関する引張及び圧縮の応力成分の方向との間には、直接的な関係が在る。
【0021】
c=ΦD/Φdとして、ワイヤ直径(Φd)に対するバネ平均直径(ΦD)の比率により定義されるバネの指数もまた、荷重下でワイヤ断面にて引き起こされる剪断応力も決定するワイヤ上の極小の材料要素の位置に依存して、該極小材料要素の長さに影響を与える。比率cが小さいほど、すなわち、ワイヤの直径Φdが大きいほど、バネの、内側面及び外側面と、軸線(X)との間の距離(夫々、(ΦD/2-Φd/2)、及び、(ΦD/2+Φd/2))は大きい。故に、捩りモーメント下で、ワイヤは、それの各区画の相対回転に従い、異なる様式で変形する、と言うのも、(たとえば、101及び141により例証される如く)ワイヤの内周が短いほど、効果(剪断応力)はバネの内側面に向かい増大するからである。
【0022】
故に、捩りモーメント、直接剪断及び曲率は、協働して、ワイヤ断面の周縁に亙る剪断応力分布をもたらす。約10の指数を有するバネの場合、剪断応力は、バネの外側面と比較して該バネの内側面上で、30%まで大きくなり得る。6以下の指数の場合、この効果は更に高くなり得る。最大の剪断応力は常に、バネの内側面にて生ずる。故に、ワイヤにおける亀裂の形態であるバネの破損は概略的に、バネの内側面から開始する。
【0023】
本明細書において前記で考察された如く、バネ・ワイヤの軸対称断面に亙るこの不均一な応力分布の故に、概略的に、軸対称断面を有するバネ・ワイヤを有するバネのエネルギ蓄積及び放出機能は、ワイヤ上における更に応答的な箇所により制限される一方、バネの残存部分は、十分には使用されない。
【0024】
図7は、複合ワイヤ12内における、該ワイヤ12の長手軸線(Y)に対するファイバの角度的位置を示している。ファイバ16は軸線(Y)に対して90°に配向され、ファイバ18は軸線(Y)に対して0°に配向され、ファイバ20は軸線(Y)に対して+θ°に配向され、且つ、22は軸線(Y)に対して-θ°に配向される。
【0025】
図8は、右巻き方向を有する閉端式の圧縮コイルバネを示している。図9において、図8のA-A線に沿う断面にて示される如く、図8のバネは、コア24と、該コア24の回りに巻回された幾つかのファイバの層26とを備えるワイヤ12を備える。層26のファイバは、ガラスファイバ、炭素繊維、又は、それらの組み合わせであり得ると共に、それらは、たとえば、ポリエステル、エポキシ又はウレタンの如き樹脂中に埋設され得る。周囲の各ファイバ層26を備えたコア24は、たとえば、熱収縮管28内に埋設され(図9A参照)、又は、収縮テープ30(図9B参照)、もしくは、共押出しされた可撓的な熱可塑性鞘体内に包装され、又は、吹き付けプラスチック薄膜により覆われ得る。
【0026】
本開示内容の態様の実施例に依れば、バネのワイヤ内の各ファイバの角度的位置、すなわち、コイル形成されてバネとされたワイヤの方向(Y)に対する各ファイバの配向角度、及び、ワイヤの断面の中心に最も近いファイバから、其処から最も遠いファイバに至る各ファイバの順序は、巻回の方向に依存して選択される。
【0027】
図10C及び図10Dは、コア24と、対称的な積層順序の複合薄層であって、樹脂が含浸されたファイバで作成された、ワイヤの外側面上に配置された最外側層34と、中間層32と、該中間層とコア24との間に配置された最内側層36とを備えるという複合薄層を備えるワイヤを示し、所定の層に関しては、ワイヤ12のコア24に対して、軸線(Y)に対する各ファイバの角度的位置が選択されると共に、該層は、それに応じて巻回される。
【0028】
右巻きバネ(図10B)において、積層順序は、均衡され得、すなわち、同一数の層を以て、もしくは、バネ・ワイヤの軸線(Y)に対して-θ°にてでなく+θ°にて配向された同一量のファイバを以て、均衡され得、又は、積層順序は、更に多数の層を以て、もしくは、バネ・ワイヤの軸線(Y)に対して+θ°にて配向されるのではなく-θ°にて配向された更に多量のファイバを以て、不均衡とされ得る(図10B図10Dを参照)。
【0029】
左巻きバネ(図10A)において、積層順序は、均衡され得、すなわち、同一数の層を以て、もしくは、バネ・ワイヤの軸線(Y)に対して-θ°にてでなく+θ°にて配向された同一量のファイバを以て、均衡され得、又は、更に多数の層を以て、もしくは、バネ・ワイヤの軸線(Y)に対して-θ°にてではなく+θ°にて配向された更に多量のファイバを以て、不均衡とされ得る(図10A図10Cを参照)。
【0030】
各ファイバの角度的位置、すなわち、バネ・ワイヤの軸線(Y)に対する各ファイバの配向角度は、バネの高固有振動数と、座屈に対するバネの抵抗と、バネに対する圧縮荷重の付与により誘起された引張及び圧縮の応力成分に対する抵抗とを含むバネの目標特性に従い、バネ軸線(X)に関するバネ巻回方向に依存して選択される。故に、右巻きを有する、又は、左巻き方向を有する圧縮コイルバネにおける各ファイバの角度的レイアウトは、以下の如くであり得る。
最内側層36は、バネ・ワイヤの軸線(Y)に対し、約+75°~約+90°の範囲内、又は、約-75°~約90°の範囲内の角度で配向されることで、巻回方向に関わり無く、バネの高固有振動数を増大させ、且つ/又は、
最内側層36は、バネ・ワイヤの軸線(Y)に対し、約0°~約+15°、又は、約0°~約-15°の範囲内の角度で配向されることで、巻回方向に関わり無く、座屈に対するバネの抵抗を増大させ、
中間層32は、バネ・ワイヤの軸線(Y)に対し、約+35°~約+55°の範囲内、又は、約-35°~約55°の範囲内の角度で配向されることで、バネに対する圧縮荷重の付与により誘起された引張及び圧縮の応力成分に対する抵抗を増大させ(図10C図10Dを参照)、
左巻き方向において、最外側層34は、バネ・ワイヤの軸線(Y)に対して約+35°~約+55°の範囲内の角度で配向されることで、引張応力成分に対する抵抗を増大させ(図10A図10Cを参照)、
右巻き方向において、最外側層34は、バネ・ワイヤの軸線(Y)に対して約-35°~約-55°の範囲内の角度で配向されることで、引張応力成分に対する抵抗を増大させる(図10B図10Dを参照)。
【0031】
更に、ワイヤ12におけるファイバ層の数、すなわち、熱可塑性もしくは熱硬化性樹脂のマトリクス内のファイバの層の数、又は、ファイバの量は、ワイヤの丈に沿い選択的に変化され得、たとえば、ワイヤ12におけるファイバ層の数、もしくは、ファイバの量は、バネの端部40、42の間における該バネの丈に沿うよりも、これらの端部40、42における方が少なくされ得る。たとえば、図11は、先細化された終端部40、42を備えた、右巻き方向を有する圧縮コイルバネを示している。代替的に、たとえば図20Bに示された如く、コイルバネは大径化端部を有し得る。
【0032】
更に、ワイヤ12におけるファイバ層の数、もしくは、ファイバの量は、本明細書において以下に図12に関して考察される如く、円形、又は、たとえば、正方形もしくは矩形もしくは六角形の如き多角形、たとえば、凸形もしくは卵形もしくはポテト形であり得るワイヤの断面を適合作成すべく、選択的に調節され得る。故に、バネ・ワイヤの断面の幾何学形状は、バネの意図された用法に基づいて選択され得る。故に、たとえば、図21は、バネの安定性のためにその端部にて多角形の断面を有するワイヤを示す一方、それの残りの断面は円形である。
【0033】
本明細書において以下に図13に関して論じられる如く、各層間には、ファイバ織地が挿入されることで、コアの回りにおける非軸対称的なファイバ層載置がもたらされる。
【0034】
コイルバネは、たとえば、図1に示された如き一定ピッチ、又は、たとえば図15に示された如き可変ピッチを有し得る。コイルバネは、たとえば、図1及び図15に示された如き円筒形状、たとえば図16に示された如き円錐形状、たとえば図17に示された如き樽形状、又は、たとえば図18に示された如き砂時計形状を有し得る。
【0035】
コイルバネは、たとえば図1に示された如き開放端部、もしくは、たとえば、図8に見られる如き閉塞端部、研削端部(図19)、又は、無研削端部(図1)を有し得る。
【0036】
本開示内容の態様の実施例に係る方法においては、コアと少なくとも2つのファイバ層とを備えるプリフォームであって、複合的で、非軸対称的もしくは軸対称的で、未硬化の、すなわち、未固化であるが故に撓曲可能であるというプリフォームが作製される。
【0037】
図14において図式化された如く、未硬化のプリフォーム25は直線状(図14A)又は非直線状(図14B)であり、依然として撓曲可能であり得る。その後、コイル形成段階の間において、未硬化プリフォーム25は選択的に、当該バネの目標性能に従うバネへと配向される。これらの段階は全て、周囲温度にて実施され得る。
【0038】
選択的に、形状化の前に未硬化プリフォーム25の回りには、たとえば図9に関して本明細書中において前記に論じられた管材28又はテープ30の如き収縮可能なプラスチック材料の外側包被体が位置され得る。プリフォームを製造するとき、斯かる外側包被体は、樹脂が依然として液状形態であるときに、それの均一な分布を確実とし得る、と言うのも、不透性であるこの外側包被体は、樹脂を抑留して、マトリクスの固化の前に先に配向されたファイバの正しい湿潤を確実にするからである。それはまた、湿潤されたファイバの正しい圧縮を確実にし得ると共に、正しい最終的なファイバ/樹脂の比率も確実にし得る。次に、前記外側包被体は、硬化後に一旦形成されたバネから取外し可能であり得る。但し、以下で論じられる如く、それを最終的なバネ内に維持することを決定し得る。
【0039】
ワイヤの非軸対称的な幾何学形状は、1)非軸対称的な断面のコアを選択する、2)コアの回りにおける各ファイバ層の非軸対称的な載置を選択する、3)ファイバと樹脂との比率を選択的に選択する、及び、4)硬化に先立つ巻回済みプリフォーム25のコア24の横方向変位(図22参照)、の内の少なくとも一つにより達成され得る。
【0040】
故に、コアは、たとえば、卵形、角柱形又は、ポテト状のコアとして選択され得る。
【0041】
非軸対称的なファイバ層の載置は、たとえば、図13に示された如く、プリフォームの各層間にファイバ織地を挿入することにより達成され得る。これらの織地50、51、52、53、54は、マット、布地、又は、単方向という異なる構成とされ得、それらは、これらの形式の織地の任意のものの特定の積層物(51、52)へと組み合わされ得る。これらの挿入織地は、プリフォームの周縁の一部のみに対し、又は、プリフォームの全周に亙る範囲に対して積層され得る。プリフォームの断面の全周縁を覆うべく異なる織地(53、54)の組み合わせが使用されることで、結果的なバネのワイヤの異なる部分における異なる特性を達成し得る。
【0042】
故に、結果的なプリフォーム25は、円形、正方形もしくは矩形もしくは六角形(図12B)の如き多角形、凸形もしくは卵形(図12A)、又は、ポテト状(図12C)の断面を有することで、ワイヤ12の対応断面に帰着し得る。
【0043】
プリフォームの丈に沿い、異なる数のファイバ層を選択的に位置させることにより、且つ/又は、プリフォームの丈に沿い、樹脂とファイバとの比率を変化させることにより、且つ/又は、たとえば、図21に示された如く自身の丈に沿い変化する断面を有するコアを選択することにより、プリフォームは、使用される複合材料の構成を改変せずに、バネ・ワイヤの長手軸線(Y)に沿う該バネ・ワイヤの堅固な又は更に撓曲的な丈を提供すべく作製され得る。
【0044】
図22に示された如く、ワイヤの軸線(Y)に対するファイバの非軸対称的な載置を達成する更なる手法は、中空のコア24内にケーブルを挿入し、次に、ケーブルの各端部にて張力を付与することで、硬化の前に、依然として未硬化である間に、巻回済みプリフォームの内側に向けてコア24の丈に沿いそれを撓ませることである。
【0045】
図20Aにおいて、(一端のみが示される)プリフォーム25は、それの長さL1に亙る第1の一定の直径Φd1と、それの各端部における長さL2に沿い、それの端部における断面の直径Φd2>Φd1まで次第に増大する直径とを備えて示される。故に、図20Bに示された結果的なバネは、大径化された、すなわち、それの丈の残存部分に沿う直径Φd1よりも大きい直径Φd2の各大径化端部34を備える。バネ・ワイヤ12の端部の斯かる大径化によれば、その様にしなければバネに対する機械的破損を誘起し得る該バネの終端巻線同士の間における接触を最小限度に抑え乍ら、該バネの事前圧縮が許容される。Φd1からΦd2までの増大直径の遷移長さL2を配備すると、応力の集中が阻止される。そのとき、結果的なバネは、無効な巻線のない線形に変化するバネ定数と、局所的に付与される機械的応力に対する抵抗とにより特性記述される。
【0046】
プリフォームは、それの断面の線形に変化する直径を以て、たとえば、先細化された末端部と共に作製され得ることから、結果的なバネは先細化された端部(たとえば図11を参照)を有することにより、当業界で典型的に行われる研削段階を排除する。
【0047】
故に、コイル形成段階の間における巻回方向に関わり無く、結果的なバネのワイヤの断面は、バネの丈に沿う位置に従って可変的であり得る。
【0048】
図23は、平均バネ直径ΦD1より大きいバネ直径ΦD2の最終巻線を備えることにより、無効巻線を排除し、又は、当業界において典型的に行われる安定性のための補償プレートの使用を排除するという砂時計形状の圧縮バネを示している。
【0049】
図24は、螺旋状区画を形成する段階と、次に、端部巻線にて、選択された直径及び厚みのプレート幾何形状物60を重ね型成形することで、バネの全ての巻線が作用的であることを確実にする段階とを備える、別実施例を示している。端部巻線の斯かる重ね型成形は、たとえば圧力ダイキャストによるポリエステル/ファイバ複合体の如き塊状成形材料(BMC)を用いて、巻回済みプリフォームに対して直接的に行われ得る(図25を参照)。
【0050】
故に、未硬化のプリフォームをコイルバネ形状へと形成することにより、直線状もしくは非直線状の未硬化プリフォームを用いて作製された複合コイルバネが提供される。
【0051】
所望されるバネ平均直径と、プリフォームの外径とに依存し、コイル形成段階の間における螺旋形成は、曲率を伴い、すなわち、バネの内側面と外側面との間の長さの差を伴い、これは、形状化が一旦完了されたとき、結果的なバネにおいて各ファイバが位置決めされる実効角度を決定するものである。故に、直線状のプリフォームの実現に対して使用される各ファイバの角度的載置は、バネの平均直径と、プリフォームの中心からの位置と、応力が最大であるバネの内側面における所望角度とに従って選択される。更に、可変的な平均直径のバネ、すなわち、円錐、砂時計もしくは樽の幾何学形状に対し、プリフォームの各ファイバの角度的載置は、バネ全体に対するバネの内側面上の最適なファイバ配向を企図して、最終的な幾何学形状を考慮して、プリフォームの丈に沿って調節され得る。
【0052】
コア24は、可撓プラスチック管材であって、たとえば被覆ファイバを含む金属フィラメントの如き導通要素、又は、撚りワイヤが一体化され、すなわち封入されることで、抵抗及び誘導加熱などにより熱硬化性樹脂マトリクスを硬化させるために必要な熱を生成すべく電源の使用を許容するという、可撓プラスチック管材であり得る。代替的に、プリフォームの最外側層は、ファイバもしくはフィラメントの如き導電要素を備えることで、樹脂マトリクスの硬化を、故に、プリフォームの固化を許容し得る。固化はまた、マイクロ波又は放射加熱によるなど、他の方法によっても達成され得る。前記可撓管は、硬化後に取り外されることで、結果的なバネの断面における内側キャビティを、故に、低重量のバネをもたらし得る。
【0053】
代替的に、コア24の内側キャビティは、機能要素を収容することにより、バネに対して選択特性を付加すべく使用され得る。たとえば、それは、粘弾性又は揺変性の材料で充填されることで、緩衝効果を許容し得る。たとえば、誘導効果、撓み、変形に基づく機械的特性に対するセンサとして、光ファイバ、センサゲージ、又は、小径ワイヤケーブルが挿入され得る。
【0054】
代替的に、コア24は、たとえば、鋼鉄ケーブルの様式で、撚り形態の金属ワイヤで作成され得る。金属ワイヤの撚り方向を選択することにより、コア24には、プリフォームの巻回済み強化ファイバの付着性を高めると共に、コイルバネの増大された更に良好な全体的強度をもたらし得る起伏状表面が形成され得る。
【0055】
本明細書中において前記に言及された如く、前記ワイヤは、熱収縮管28の如き外側包被体を備え、又は、収縮テープ30もしくは共押出しされた可撓的な熱可塑性鞘体内に包装され、又は、吹き付けプラスチック薄膜により覆われ得る。
【0056】
斯かる外側包被体は、バネを、たとえば、自動車及びトラックの如きオンロード車両、及び、たとえば、自動二輪車、ATV及びスノーモビルの如きオフロード車両において懸架バネが典型的に晒される岩の突出部、泥土、砂、又は、他の任意の異物からの衝撃及び摩滅により引き起こされる破損から保護し得る。更に、前記外側包被体は、バネを、雨などの天候条件に起因する、又は、湿気もしくは太陽光に対する、又は、たとえば、除氷塩、海水などの如く使用中に該バネと接触し易い任意の化学物質に対する長期の露出に起因する応力から保護し得る。前記外側包被体はまた、着色されたもしくは発光性の鞘体として、又は、パターン、図形、ロゴなどを取入れた層として、又は、塗装、ラベル付けもしくは移し絵の適用の如き習用的な仕上げ処理に対する代替策としても、選択され得る。前記外側包被体はまた、たとえば、表面仕上げ(粗さ)、浮き出し模様、又は、表面組織を提供する層としても選択され得る。
【0057】
更に代替的に、前記外側包被体は、透明な鞘体として選択されることで、概略的な樹脂の色を明らかとし得る。この色は、着色された又は発光性の顔料を樹脂に対して添加することにより、調節され得る。
【0058】
故に、一定ピッチもしくは可変ピッチのいずれかであり、円錐、樽、砂時計の形態などの如き所定範囲の形状、所定範囲のワイヤ断面、及び、所定範囲の端部形式、すなわち、開放端部、閉塞端部、先細化端部、大径化端部、研削端部、無研削端部を備えた、圧縮力に対して設計された複合螺旋バネが提供される。
【0059】
本発明の複合コイルバネは、たとえば、自動車の懸架装置、スノーモビルの懸架装置、オフロード車両の懸架装置、及び、レクリエーショナル・ビークルの懸架装置の如き、車両の懸架システムにおいて使用され得る。
【0060】
概略的に、プリフォームを作製する段階と、該プリフォームをコイルバネ形状へと形状化する段階と、次に、それを、熱源を用いることにより固化させる段階とを備える、複合コイルバネを作製する方法が提供される。
【0061】
一例として、同一のコア、軸線(Y)に対する各ファイバの同一の角度的位置における同一の内側層、同一量のファイバ、及び、ファイバ/樹脂の比率を有する2つの同一的なプリフォームが作製された。両方のプリフォームは、軸線(X)の回りで同一数の回旋を以てコイル形成され、同一のバネ平均直径(ΦD)、同一の断面直径(d)、及び、同一の自由高さ(h)をもたらした。相違は、最外側層の逆向きの角度的位置であった。両方のバネは、それらが破壊されるまで、圧縮下で試験された。以下の表1は、測定結果を示している。
【表1】
【0062】
表1は、バネが破壊されたときのバネの撓み、破壊時における対応荷重、及び、第3列において、蓄積されたエネルギの概算を記録している。コイルバネの与えられた巻回方向に対しては、最外側層の好適な配向が在ることが明らかである、と言うのも、バネAと比較してバネBには更なるエネルギが蓄積され得るからである。
【0063】
故に、目標とする圧縮バネと、単位質量当たりの圧縮バネにより蓄積及び放出される最適なエネルギとに従い、プリフォームを選択的に作製する段階と、コイルバネに対して与えられた巻回方向、バネが圧縮されたときの応力の方向、及び、バネ・ワイヤの複合材料の異方特性を組み合わせる段階とを備える方法が提供される。
【0064】
各請求項の有効範囲は、各例において示された例証的実施例により制限されるべきでなく、全体として、説明と一致する最も広範囲な解釈が与えられるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21
図22
図23
図24
図25