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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】改善された疎水性エアロゲル材料
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/16 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
C01B33/16
【請求項の数】 48
(21)【出願番号】P 2021037360
(22)【出願日】2021-03-09
(62)【分割の表示】P 2019027986の分割
【原出願日】2015-10-02
(65)【公開番号】P2021095331
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/059,555
(32)【優先日】2014-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/118,864
(32)【優先日】2015-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/232,945
(32)【優先日】2015-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506229844
【氏名又は名称】アスペン エアロゲルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン エバンズ
(72)【発明者】
【氏名】キャスリン デクラフト
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ザフィロプロス
(72)【発明者】
【氏名】ウェンティン ドン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ミハルシク
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ グールド
(72)【発明者】
【氏名】イリーナ メルニコバ
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/150310(WO,A1)
【文献】特開平10-236817(JP,A)
【文献】国際公開第2005/110919(WO,A1)
【文献】特表平10-508049(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0279044(US,A1)
【文献】特表2008-511537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ系エアロゲルと、強化材料と、添加剤と、少なくとも1つの疎水結合ケイ素とを含む強化エアロゲル組成物であって、
20wt%以下の液水吸収;及び
0.01~0.5のT1-2:T3の比を含む29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトル及び0.1~1.5のQ2-3:Q4の比を含む29Si核磁気共鳴(NMR)スペクトルのいずれか一方又は両方;
を有し、
ここでT 1-2 :T 3 の比は、T 3 種に対するT 1 種とT 2 種との組み合わせの比を示し、Q 2-3 :Q 4 の比は、Q 4 種に対するQ 2 種とQ 3 種との組み合わせの比を示し、T 1 、T 2 、T 3 、Q 2 、Q 3 、及びQ 4 の量は、 29 Si NMR分析におけるT 1 種、T 2 種、T 3 種、Q 2 種、Q 3 種、及びQ 4 種にそれぞれ関連する個々の化学シフトピークの積分によって定量化される、強化エアロゲル組成物。
【請求項2】
前記強化エアロゲル組成物が300℃以上の疎水性有機材料の熱分解開始点を有する、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項3】
前記強化エアロゲル組成物が717cal/g以下の燃焼熱を有する、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項4】
前記強化エアロゲル組成物が500℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点を有する、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項5】
前記添加剤が、マイクロ繊維、充填材、強化剤、安定剤、増粘剤、弾性化合物、乳白剤、着色化合物又は色素化合物、放射線吸収化合物、放射線反射化合物、腐食防止剤、熱伝導成分、相変換材料、pH調整剤、酸化還元調整剤、HCN緩和剤、オフガス緩和剤、導電性化合物、誘電化合物、磁性化合物、レーダー防止成分、硬化剤、収縮防止剤、煙抑制剤、火炎抑制剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項6】
前記添加剤が相転換材料である、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項7】
前記添加剤が乳白剤である、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項8】
前記添加剤が金属炭化物、金属酸化物、珪藻土、金属フェライト、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項9】
前記添加剤が、炭化ホウ素、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag2O、Bi23、カーボンブラック、酸化チタン、鉄チタン酸化物、酸化アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、鉄チタン酸化物、酸化クロム、SiC、TiC、WC、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項10】
前記添加剤が、炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、及びこれらの混合物からなる群から選択される炭化物を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項11】
前記添加剤が炭化ケイ素を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項12】
前記強化エアロゲル組成物が、以下の性質:すなわち、ii)500℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点;iii)265cal/g~717cal/gの燃焼熱;及びiv)15mW/M・K~40mW/M・Kの熱伝導度を有する、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項13】
前記強化シリカ系エアロゲル組成物が、以下の1以上の性質:すなわち、ii)525℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点;又は、iii)265cal/g~600cal/gの燃焼熱を有する、請求項1に記載の強化シリカ系エアロゲル組成物。
【請求項14】
前記強化シリカ系エアロゲル組成物が、以下の1以上の性質:すなわち、ii)550℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点;又は、iii)265cal/g~550cal/gの燃焼熱を有する、請求項1に記載の強化シリカ系エアロゲル組成物。
【請求項15】
前記強化シリカ系エアロゲル組成物が、以下の1以上の性質:すなわち、ii)575℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点;又は、iii)265cal/g~500cal/gの燃焼熱を有する、請求項1に記載の強化シリカ系エアロゲル組成物。
【請求項16】
前記エアロゲル組成物中の疎水性有機含有量が2wt%~10wt%である、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項17】
強化材料が繊維強化材料を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項18】
前記繊維強化材料が、離散繊維、織布材料、不織布材料、綿、ウェブ、マット、フェルト、又はこれらの組み合わせの形態である、請求項17に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項19】
強化材料が繊維強化材料のシートを含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項20】
前記繊維強化材料のシートが織布材料、不織布材料、綿、ウェブ、マット、フェルト、又はこれらの組み合わせの形態である、請求項19に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項21】
強化材料が繊維強化材料以外の材料を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項22】
強化材料が繊維強化材料のシート以外の材料のシートを含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項23】
強化材料が発泡体強化材料を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項24】
強化材料が発泡体強化材料のシートを含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項25】
強化エアロゲル組成物がシートの形態である、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項26】
さらにホウ素、アルミニウム、鉄、又は炭素を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項27】
さらにアルミニウムを含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項28】
さらに鋼を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項29】
さらにステンレス鋼を含む、請求項1又は2に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項30】
強化材料がさらにホウ素、アルミニウム、鉄、又は炭素を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項31】
強化材料がさらにアルミニウムを含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項32】
前記強化エアロゲル組成物が、発泡体、繊維、アルミニウム、又はこれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項33】
前記強化エアロゲル組成物が0.40g/cm3以下の密度を有する、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項34】
前記強化エアロゲル組成物が15mW/M・K~30mW/M・Kの熱伝導度を有する、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項35】
前記強化エアロゲル組成物がエアロゲルブランケット組成物である、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項36】
前記強化エアロゲル組成物が減酸素雰囲気中にある、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項37】
前記減酸素雰囲気が、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のガスを含む、請求項36に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項38】
前記強化エアロゲル組成物が上昇した温度にある、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項39】
前記上昇した温度が少なくとも200℃である、請求項38に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項40】
前記強化エアロゲル組成物がモノリス型エアロゲル材料を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項41】
シリカ系エアロゲルが、粒状物、粒子、顆粒、ビーズ、粉体、モノリス型、又はこれらの組み合わせの形態である、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項42】
シリカ系エアロゲルが、少なくとも1種の粒状物エアロゲル材料を含む、請求項1に記載の強化エアロゲル組成物。
【請求項43】
請求項1に記載の組成物を上昇した温度にさらすことを含む、方法。
【請求項44】
前記上昇した温度が少なくとも200℃である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
減酸素雰囲気中にある請求項1に記載の組成物を含む、システム。
【請求項46】
上昇した温度にある請求項1に記載の組成物を含む、システム。
【請求項47】
上昇した温度が少なくとも200℃である、請求項45又は46に記載のシステム。
【請求項48】
前記組成物が密閉されている、請求項45又は46に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2014年10月3日に出願した米国仮特許出願第62/059555号、2015年2月20日に出願した同第62/118864号、及び2015年9月25日に出願した同第62/232945号からの優先権の利益を主張し、これらの全ては、本出願中の用語の任意の定義を管理したまま、参照することによりその全てが本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
低密度のエアロゲル材料は、利用可能である最良な固体絶縁体であると広く考えられている。エアロゲルは、伝導(低い構造密度が固体骨格を通じてエネルギー伝達のための蛇行した経路(tortuous path)をもたらす)、対流(大きな孔容積と極めて小さな孔サイズが最小の対流をもたらす)、及び放射(IR吸収又は散乱ドーパントが、エアロゲルマトリックスにわたって容易に分散する)を最小化することにより、主に絶縁体として機能する。エアロゲルは、加熱及び冷却絶縁、音響絶縁、電子誘電体、航空宇宙、エネルギー保存及び製造、並びに濾過を含む、広い範囲の用途で使用することができる。さらに、エアロゲル材料は、それらを様々な絶縁及び非絶縁用途で十分に有用にさせる、多くの他の興味深い音響的、光学的、機械的、及び化学的性質を示す。
【発明の概要】
【0003】
1つの一般的態様において、本開示は、水性環境で好ましい性能を有し、好ましい燃焼及び自己加熱の性質をまた有する、耐久性があって扱いが容易なエアロゲル組成物を提供することができる。幾つかの実施形態において、本開示は、水性環境で好ましい性能を有し、好ましい燃焼及び自己加熱の性質をまた有する、柔軟で弾性があり自己支持性がある強化エアロゲル組成物であるエアロゲル組成物を示す。
【0004】
別の一般的態様において、本開示は、シリカ系骨格を含み、以下の性質、a)0.60g/cm3以下の密度、b)50mW/M・K以下の熱伝導度、及びc)40wt%以下の液水吸収を有するエアロゲル組成物を提供することができる。幾つかの実施形態において、本開示のエアロゲル組成物は、717cal/g未満の燃焼熱を有する。幾つかの実施形態において、本開示のエアロゲル組成物は、300℃~700℃の疎水性有機材料の熱分解開始点の温度を有する。幾つかの実施形態において、本開示のエアロゲル組成物は、0.50g/cm3以下、0.40g/cm3以下、0.30g/cm3以下、0.25g/cm3以下、又は0.20g/cm3以下の密度を有する。幾つかの実施形態において、本開示のエアロゲル組成物は、45mW/M・K以下、40mW/M・K以下、35mW/M・K以下、30mW/M・K以下、25mW/M・K以下、20mW/M・K以下の熱伝導度、又は5mW/M・K~50mW/M・Kの熱伝導度を有する。幾つかの実施形態において、本開示のエアロゲル組成物は、35wt%以下、30wt%以下、25wt%以下、20wt%以下、15wt%以下、又は10wt%以下の液水吸収を有する。幾つかの実施形態において、本開示のエアロゲル組成物は、650cal/g以下、600cal/g以下、550cal/g以下、500cal/g以下、450cal/g以下、400cal/g以下の燃焼熱、又は250cal/g~717cal/gの燃焼熱を有する。幾つかの実施形態において、本開示のエアロゲル組成物は、400℃以上、450℃以上、475℃以上、500℃以上、525℃以上、550℃以上、575℃以上、600℃以上の疎水性有機材料の熱分解開始点の温度、又は400℃~700℃の疎水性有機材料の熱分解開始点の温度を有する。好ましい実施形態において、本開示のエアロゲル組成物は、以下の性質、a)0.40g/cm3以下の密度、b)40mW/M・K以下の熱伝導度、c)40wt%以下の液水吸収、d)140cal/g~600cal/gの燃焼熱、及びe)525℃~700℃の熱分解開始点の温度を有する。幾つかの実施形態において、本開示のエアロゲル組成物は、0.01~0.5のT1-2-T3シリカ種の比、及び/又は0.1~1.5のQ2-3:Q4シリカ種の比を有する。幾つかの実施形態において、本開示のエアロゲル組成物は、強化エアロゲル組成物、繊維強化エアロゲル組成物、又はエアロゲルブランケット組成物である。幾つかの実施形態において、本開示のエアロゲル組成物は、約1wt%~約30wt%、約1wt%~約25wt%、約1wt%~約20wt%、約1wt%~約15wt%、約1wt%~約10wt%、又は約1wt%~約5wt%の疎水性有機含有量を有する。
【0005】
別の一般的態様において、本開示は、a)シリカゲル前駆体材料と、溶媒と、任意選択で触媒とを含む前駆体溶液を提供する工程と、b)前駆体溶液中のシリカゲル前駆体材料をゲル材料又は組成物に遷移させる工程と、c)ゲル材料又は組成物から溶媒の少なくとも一部を抽出して、エアロゲル材料又は組成物を得る工程と、d)少なくとも1つの疎水結合ケイ素を、i)前駆体組成物中に、少なくとも1つの疎水基を有する少なくとも1つのシリカゲル前駆体材料を含めること、又はii)前駆体溶液、ゲル組成物、又はエアロゲル組成物を疎水剤にさらすことのうち1つ又は両方によって、エアロゲル材料又は組成物中に組み入れる工程と、e)エアロゲル材料又は組成物を、300℃超の温度で減酸素雰囲気にさらすことによって、エアロゲル材料又は組成物を熱処理する工程とを含む、エアロゲル組成物を調製する方法を提供することができる。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、エアロゲル組成物を、約30秒間~約200分間の時間、300℃~650℃の温度で減酸素雰囲気にさらして、処理されたエアロゲル組成物を得ることを含む。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、前駆体溶液中のシリカゲル前駆体材料がゲル組成物に遷移する前又は遷移する際のいずれかに、強化材料を前駆体溶液と組み合わせることによって、強化材料をエアロゲル組成物に組み入れることを含む。好ましい実施形態において、強化材料は、連続シート状の繊維強化材料を含む。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、850℃未満の温度に制限されたエアロゲル組成物の熱処理の温度にさらすことを含む。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、30時間以下の時間内である、前駆体溶液中の少なくとも1つのゲル前駆体をゲル材料に変えるための合計時間を含む。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、0.1容積%~5容積%の酸素を含む減酸素雰囲気を含む。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、約1wt%~約25wt%のエアロゲル組成物中の疎水性有機含有量を提供するエアロゲル組成物中に、少なくとも1つの疎水結合ケイ素を組み入れる工程を含む。好ましい実施形態において、本開示の方法は、エアロゲル組成物を製造する。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、以下の性質、a)0.60g/cm3以下の密度、b)50mW/M・K以下の熱伝導度、c)40wt%以下の液水吸収、d)150cal/g~717cal/gの燃焼熱、及びe)300℃~700℃の疎水性有機材料の熱分解開始点の温度を有するエアロゲル組成物を製造する。
【0006】
別の一般的態様において、本開示は、a)少なくとも1つの疎水結合ケイ素を含む第1エアロゲル組成物を製造する工程と、b)第1エアロゲル組成物を、300℃超の温度で減酸素雰囲気にさらす工程とを含む、エアロゲル組成物を調製する方法を提供することができる。別の一般的態様において、本開示は、少なくとも1つの疎水結合ケイ素を含む第1エアロゲル組成物を、300℃超の温度で減酸素雰囲気にさらして、第2エアロゲル組成物を得ることを含む方法を提供することができる。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、エアロゲル材料又は組成物を、約30秒間~約200分間の時間、300℃~650℃の温度で減酸素雰囲気にさらして、処理されたエアロゲル材料又は組成物を得ることを含む。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、850℃未満の温度に制限された、エアロゲル材料又は組成物の熱処理の温度にさらすことを含む。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、シリカ系エアロゲル材料であるエアロゲル組成物を含む。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、強化エアロゲル組成物であるエアロゲル組成物を含む。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、0.1容積%~5容積%の酸素を含む減酸素雰囲気を含む。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、約1wt%~約25wt%の疎水性有機含有量を有するエアロゲル組成物を含む。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、処理方法の前のエアロゲル組成物に比べて疎水性が改善された、処理されたエアロゲル組成物を製造する。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、処理方法の前のエアロゲル組成物に比べて少ない液水吸収を有する処理されたエアロゲル組成物を製造する。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、処理方法の前のエアロゲル組成物に比べて少ない燃焼熱を有する処理されたエアロゲル組成物を製造する。幾つかの実施形態において、本開示の方法は、処理方法の前のエアロゲル組成物に比べて高い熱分解開始点の温度を有する処理されたエアロゲル組成物を製造する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示のエアロゲル組成物の例についての、29Si固体状態NMRスペクトルである。
図2】本開示のエアロゲル組成物の例についての、TGA/DSC分析を描いたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
エアロゲルは、骨格内で統合した孔の関連ネットワークを持つ、相互接続構造の骨格と、空気のようなガスで主に構成された孔のネットワーク内の間隙相とを含む連続気泡を持つ多孔質材料の分類である。エアロゲルは、典型的に、低い密度、高い多孔率、大きい表面積、及び小さい孔サイズによって特徴付けられる。エアロゲルは、それらの物理的及び構造的性質によって他の多孔質材料から区別することができる。
【0009】
本開示の内容の範囲内において、「エアロゲル」又は「エアロゲル材料」という用語は、骨格内で統合した相互接続孔の関連ネットワークを持つ、相互接続構造の骨格を含み、分散された間隙媒体として空気のようなガスを含有するゲルを言い表し、それは、エアロゲルに起因する、以下の物理的及び構造的性質(窒素ポロシメトリー試験に従う)、(a)約2nm~約100nmの範囲の平均孔径、(b)少なくとも80%以上の多孔率、及び(c)約20m2/g以上の表面積、によって特徴づけられる。
【0010】
したがって、本開示のエアロゲル材料は、前の段落で説明された定義要素を満たす任意のエアロゲル又は他の連続気泡化合物を含み、そうでない場合は、キセロゲル、クリオゲル、アンビゲル、微多孔材料などとして分類される場合がある化合物を含む。
【0011】
エアロゲル材料はまた、(d)約2.0mL/g以上、好ましくは約3.0mL/g以上の孔容積、(e)約0.50g/cc以下、好ましくは0.25g/ccの密度、及び(f)50%以上の、2~50nmの孔径を有する孔を含む合計孔容積を含む、追加の物理的性質によってさらに特徴付けることができるが、エアロゲル材料として化合物を特徴づけるために、これらの追加の性質を満たすことは要求されない。
【0012】
本開示の内容の範囲内において、「革新的な処理及び抽出技術」という用語は、ゲルの骨格構造に低い孔崩壊及び低い収縮をもたらすように、ウェットゲル材料中の液体間隙相を空気のようなガスで置き換える方法を言い表す。大気圧蒸発のような乾燥技術により、しばしば、蒸発されるべき又は除去されるべき間隙相の液体-蒸気界面で、強い毛管圧及び他の物質移動制限がもたらされる。液体の蒸発又は除去により作り出された強い毛管力によって、ゲル材料内で大きい孔収縮及び骨格崩壊が引き起こされる場合がある。液体間隙相の抽出の際に革新的な処理及び抽出技術を使用することで、液相抽出の際の孔及びゲルの骨格への毛管力の好ましくない影響が低減される。
【0013】
幾つかの実施形態において、革新的な処理及び抽出技術は、近臨界若しくは超臨界流体、又は近臨界若しくは超臨界条件を使用して、ウェットゲル材料から液体間隙相を抽出する。これは、液体又は液体の混合物の臨界点の近く又は臨界点の上で、ゲルから液体間隙相を除去することにより達成することができる。共溶媒又は溶媒交換は、近臨界又は超臨界流体の抽出プロセスを最適化するために使用することができる。
【0014】
幾つかの実施形態において、革新的な処理及び抽出技術は、液体-蒸気界面での毛管圧及び他の物質移動制限の不可逆効果を低減するためにゲル骨格を変更することを含む。この実施形態は、疎水剤又は他の機能剤でゲル骨格を処理することを含み、それにより、ゲル骨格が、液体空隙層の臨界点未満で行われる液相抽出の際に、いかなる崩壊力に耐えるか又はいかなる崩壊力から回復することが可能となる。この実施形態はまた、液体空隙相の臨界点未満で行われる液相抽出の際、崩壊力に耐えるか又は崩壊力から回復するのに十分に高い骨格率を提供する官能基又は骨格要素を組み込むことを含むことができる。
【0015】
本開示の内容の範囲内において、「骨格」又は「骨格構造」という用語は、ゲル又はエアロゲルの立体構造を形成する相互接続オリゴマー、ポリマー又はコロイダル粒子のネットワークを言い表す。骨格構造を作り上げるポリマー又は粒子は、典型的に、約100オングストロームの径を有する。しかしながら、本開示の骨格構造はまた、ゲル又はエアロゲル内に立体構造を形成する全ての径サイズの相互接続オリゴマー、ポリマー又はコロイダル粒子のネットワークを含むことができる。さらに、「シリカ系エアロゲル」又は「シリカ系骨格」という用語は、シリカが、ゲル又はエアロゲル内に固体骨格構造を形成する、50wt%以上のオリゴマー、ポリマー又はコロイダル粒子を含むエアロゲル骨格を言い表す。
【0016】
本開示の内容の範囲内において、「エアロゲル組成物」という用語は、複合体の成分としてエアロゲル材料を含む任意の複合体材料を言い表す。エアロゲル組成物の例としては、限定されないが、繊維強化エアロゲル複合体;乳白剤のような添加剤要素を含むエアロゲル複合体;エアロゲル発泡体複合体;エアロゲルポリマー複合体;及びエアロゲルの粒状物、粒子、顆粒、ビーズ、又は紛体を、固形物又は半固形物材料(例えば、バインダ、レジン、セメント、発泡体、ポリマー、又は類似の固形物材料)中に組み入れた複合体材料が挙げられる。
【0017】
本開示の内容の範囲内において、「モノリス型」という用語は、エアロゲル材料又は組成物中に含まれる50wt%超のエアロゲルが、単一相互接続エアロゲルナノ構造の形態であるエアロゲル材料を言い表す。モノリス型エアロゲル材料は、最初に単一相互接続ゲル又はエアロゲルナノ構造を有するように形成されるが、その後に割れる、砕ける、又は分裂して非単一エアロゲルナノ構造になるエアロゲル材料を含む。モノリス型エアロゲル材料は、粒状エアロゲル材料から区別される。「粒状エアロゲル材料」という用語は、エアロゲル材料中に含まれる50wt%超のエアロゲルが、共に組み合わさるか又は圧縮される場合があるが、個々の粒子間で相互接続エアロゲルナノ構造が不足している、粒状物、粒子、顆粒、ビーズ、又は紛体の形態であるエアロゲル材料を言い表す。
【0018】
本開示の内容の範囲内において、「強化エアロゲル組成物」という用語は、エアロゲル材料内にエアロゲル骨格の部分でない強化相を含むエアロゲル組成物を言い表す。強化相は、増加した柔軟性、弾性、適合性又は構造安定性をエアロゲル材料に提供する任意の材料であることができる。よく知られた強化材料の例としては、限定されないが、連続気泡発泡体強化材料、独立気泡発泡体強化材料、連続気泡膜、ハチの巣強化材料、ポリマー強化材料、及び繊維強化材料(例えば、離散繊維、織布材料、不織布材料、綿(battings)、ウェブ、マット、及びフェルト)が挙げられる。追加的に、繊維系強化は、1つ又は複数のその他の強化材料と組み合わせることができ、組成物の限定された好ましい部分にわたって又はその中で連続的に配向させることができる。
【0019】
本開示の内容の範囲内において、「繊維強化エアロゲル組成物」という用語は、強化相として繊維強化材料を含む強化エアロゲル組成物を言い表す。繊維強化材料の例としては、限定されないが、離散繊維、織布材料、不織布材料、綿、ウェブ、マット、フェルト、又はそれらの組み合わせが挙げられる。繊維強化材料は、限定されないが、ポリエステル、ポリオレフィンテレフタレート、ポリ(エチレン)ナフタレート、ポリカーボネート(例えば、レーヨン、ナイロン)、綿(例えば、DuPont製のライクラ)、炭素(例えば、グラファイト)、ポリアクリロニトリル(PAN)、酸化PAN、未炭化熱処理PANs(例えば、SGL carbon製のもの)、繊維ガラス系材料(例えば、Sガラス、901ガラス、902ガラス、475ガラス、Eガラス)、石英のようなシリカ系繊維(例えば、Saint-Gobain製のQuartzel)、Qフェルト(Johns Manville製)、Saffil(Saffil製)、Durablanket(Unifrax製)及び他のシリカ繊維、Duraback(Carborundum製)、Kevlar、Nomex、Sontera(全てDuPont製)のようなポリアラミド繊維、Conex(Taijin製)、Tyvek(DuPont製)のようなポリオレフィン、Dyneema(DSM製)、Spectra(Honeywell製)、Typer、Xavan(両方DuPont製)のような他のポリプロピレン繊維、Teflon(DuPont製)として商標名を持つPTFEのようなフルオロポリマー、Goretex(W.L.GORE製)、Nicalon(COI Ceramics製)のような炭化ケイ素繊維、Nextel(3M製)のようなセラミック繊維、アクリルポリマー、綿、絹、麻、皮革、スエードの繊維、PBO-Zylon繊維(Tyobo製)、Vectan(Hoechst製)のような液晶材料、Cambrelle繊維(DuPont製)、ポリウレタン、ポリアミド、木質繊維、ホウ素、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼繊維、及び他の熱可塑性材料、例えば、PEEK、PES、PEI、PEK、PPSを含む、様々な範囲の材料を含むことができる。
【0020】
本開示の内容の範囲内において、「エアロゲルブランケット」又は「エアロゲルブランケット組成物」という用語は、連続シート状の強化材料で強化されたエアロゲル組成物を言い表す。エアロゲルブランケット組成物は、非連続的な繊維又は発泡ネットワーク、例えば、繊維材料の分離凝集体又は塊で強化された他の強化エアロゲル組成物から区別することができる。エアロゲルブランケット組成物は、それらが極めて適合性があり、単純又は複雑な形状の表面を覆うようなブランケットのように使用することができるため、柔軟性を要求し、またエアロゲルの優れた熱絶縁性質を維持する用途に対して特に有用である。エアロゲルブランケット組成物及び類似の繊維強化エアロゲル組成物は、公開されたUS特許出願公開第2002/0094426号(段落12~16、25~27、38~58、60~88)で説明され、それは、個別に述べられた節及び段落に従って、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
本開示の内容の範囲内において、「ウェットゲル」という用語は、相互接続孔のネットワーク内の移動間隙相が、従来の溶媒のような液相、液体二酸化炭素のような液化ガス、又はそれらの組み合わせで主に構成されるゲルを言い表す。エアロゲルは、典型的に、ウェットゲルの初期の製造を要求し、その後、ゲル中の移動間隙液相を空気で置き換えるような革新的な処理及び抽出を行う。ウェットゲルの例としては、限定されないが、アルコゲル、ハイドロゲル、ケトゲル(ketgel)、カーボンゲル、及び当業者に公知の任意の他のウェットゲルが挙げられる。
【0022】
本開示の内容の範囲内において、「添加剤」又は「添加剤要素」という用語は、エアロゲルの製造前、製造中、又は製造後にエアロゲル組成物に加えることができる材料を言い表す。添加剤は、エアロゲルにおける望ましい性質を改変若しくは改善するために、又はエアロゲルにおける望ましくない性質に対抗するために、加えることができる。添加剤は、典型的に、ゲル化する前又はゲル化中のいずれかにエアロゲル材料に加えられる。添加剤の例としては、限定されないが、マイクロ繊維、充填材、強化剤、安定剤、増粘剤、弾性化合物、乳白剤、着色化合物又は色素化合物、放射線吸収化合物、放射線反射化合物、腐食防止剤、熱伝導成分、相変換材料、pH調整剤、酸化還元調整剤、HCN緩和剤、オフガス緩和剤、導電性化合物、誘電化合物、磁性化合物、レーダー防止成分、硬化剤、収縮防止剤、及び当業者に公知な他のエアロゲル添加剤が挙げられる。添加剤の他の例としては、煙抑制剤及び火炎抑制剤が挙げられる。公開された米国特許出願公開第20070272902号(A1)(段落[0008]及び[0010]~[0039])では、煙抑制剤及び火炎抑制剤の教示を含み、それらは、個別に述べられた段落に従って、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
本開示の内容の範囲内において、「柔軟」及び「柔軟性」という用語は、エアロゲル材料又は組成物がマクロ構造の破壊なく湾曲又は屈曲される能力を言い表す。好ましくは、本開示のエアロゲル組成物は、微視的な破壊なく、5°以上、25°以上、45°以上、65°以上、又は85°以上で曲がることができる、及び/又は、微視的な破壊なく、4フィート未満、2フィート未満、1フィート未満、6インチ未満、3インチ未満、2インチ未満、1インチ未満、又は1/2インチ未満の湾曲半径を有する。同様に、「高度に柔軟」又は「高度な柔軟性」という用語は、微視的な破壊なく、90°以上に曲がることができる、及び/又は1/2未満の湾曲半径を有するエアロゲル材料又は組成物を言い表す。さらに、「分類された柔軟」及び「柔軟と分類する」という用語は、ASTM分類標準C1101(ASTM International,West Conshohocken,PA)に従って柔軟と分類することができるエアロゲル材料又は組成物を言い表す。
【0024】
本開示のエアロゲル材料又は組成物は、柔軟である、高度に柔軟である、及び/又は分類された柔軟であることができる。本開示のエアロゲル材料又は組成物はまた、ドレープ性であることができる。本開示の内容の範囲内において、「ドレープ性の」及び「ドレープ性」という用語は、エアロゲル材料又は組成物が、微視的な破壊なく、約4インチ以下の湾曲半径を持ち、90°以上で湾曲又は屈曲される能力を言い表す。本開示のエアロゲル材料又は組成物は、組成物が非剛体であり、3次元の表面又は対象物に適用及び適合するか、又は様々な形状及び構成に事前形成されて、導入及び適用を容易にすることができるように、柔軟であることが好ましい。
【0025】
本開示の内容の範囲内において、「弾性のある」及び「弾性」という用語は、圧縮、屈曲、又は湾曲を通じた変形の後に初期の形態又は寸法に少なくとも部分的に回復する、エアロゲル材料又は組成物の能力を言い表す。弾性は完全又は部分的であることができ、それは回復の割合によって表すことができる。本開示のエアロゲル材料又は組成物は、好ましくは、変形の後に初期の形態及び寸法に対して、25%超、50%超、60%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、又は95%超の回復をする弾性を有する。同様に、「分類された弾性のある」及び「弾性のあると分類する」という用語は、ASTM分類標準C1101(ASTM International,West Conshohocken,PA)に従って弾性があると分類することができる本開示のエアロゲル材料又は組成物を言い表す。
【0026】
本開示の内容の範囲内において、「自己支持性」という用語は、エアロゲル及びエアロゲル組成物中の任意の強化相の物理的性質に主に基づいて、柔軟である及び/又は弾性のある、エアロゲル材料又は組成物の能力を言い表す。本開示の自己支持性エアロゲル材料又は組成物は、柔軟性及び/又は弾性を材料に提供するための下地基材に依存する他のエアロゲル材料、例えば被膜と区別することができる。
【0027】
本開示の内容の範囲内において、「収縮」という用語は、2)ゾルゲル前駆体溶液中の固形物含有量から計算された目標密度に対する、1)乾燥エアロゲル材料又は組成物の測定された最終密度と、ゾルゲル前駆体溶液中の固形物含有量から計算された目標密度との間の差、の比を言い表す。収縮は、以下の等式、収縮=[最終密度(g/cm3)-目標密度(g/cm3)]/[目標密度(g/cm3)]によって計算することができる。好ましくは、本開示のエアロゲル材料の収縮は、好ましくは、50%以下、25%以下、10%以下、8%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.1%以下、約0.01%以下、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲である。
【0028】
本開示の内容の範囲内において、「熱伝導度」及び「TC」という用語は、2つの表面間で温度差を持つ材料又は組成物の両側での2つの表面間で伝熱する、材料又は組成物の能力の測定値を言い表す。熱伝導度は、具体的に、単位時間あたりかつ単位表面積あたりに伝達した熱エネルギーを温度差で割ったものとして測定される。それは、典型的に、mW/M・K(ミリワット毎メートル*ケルビン)としてSI単位で記録される。材料の熱伝導度は、限定されないが、熱流計装置による安定状態の伝熱性に対する試験方法(ASTM C518,ASTM International,West Conshohocken,PA);保護熱板装置による安定状態の熱フラックス測定及び伝熱性に対する試験方法(ASTM C177,ASTM International,West Conshohocken,PA);パイプ絶縁体の安定状態の伝熱性に対する試験方法(ASTM C335,ASTM International,West Conshohocken,PA);薄いヒーターの伝熱性試験(ASTM C1114,ASTM International,West Conshohocken,PA);保護熱板及び熱流計方法による熱抵抗の決定(EN12667,British Standards Institution,United Kingdom);又は安定状態の熱抵抗及び関連する性質-保護熱板装置(ISO8203,International Organization for Standardization,Switzerland)を含む、当技術分野で公知な方法によって決定することができる。本開示の内容の範囲内において、別段の記載がない限り、熱伝導度の測定は、約37.5℃の温度、大気圧、及び約2psiの圧縮で、ASTM C177標準に従って得られる。好ましくは、本開示のエアロゲル材料又は組成物は、約50mW/mK以下、約40mW/mK以下、約30mW/mK以下、約25mW/mK以下、約20mW/mK以下、約18mW/mK以下、約16mW/mK以下、約14mW/mK以下、約12mW/mK以下、約10mW/mK以下、約5mW/mK以下、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲の熱伝導度を有する。
【0029】
本開示の内容の範囲内において、「密度」という用語は、エアロゲル材料又は組成物の単位体積あたりの質量の測定値を言い表す。「密度」という用語は、一般的に、エアロゲル材料の真の密度、並びにエアロゲル組成物のバルク密度を言い表す。密度は、典型的に、kg/m3又はg/ccとして記録される。エアロゲル材料又は組成物の密度は、限定されないが、事前形成されたブロック及びボードタイプの熱絶縁体の寸法及び密度に対する標準試験方法(ASTM C303,ASTM International,West Conshohocken,PA);ブランケット又はバット熱絶縁体の厚さ及び密度に対する標準試験方法(ASTM C167,ASTM International,West Conshohocken,PA);又は事前形成されたパイプ絶縁体の見かけ密度の決定(ISO18098,International Organization for Standardization,Switzerland)を含む、当技術分野で公知な方法によって決定することができる。本開示の内容の範囲内において、密度の測定は、別段の記載がない限り、ASTM C167標準に従って得られる。好ましくは、本開示のエアロゲル材料又は組成物は、約0.60g/cc以下、約0.50g/cc以下、約0.40g/cc以下、約0.30g/cc以下、約0.25g/cc以下、約0.20g/cc以下、約0.18g/cc以下、約0.16g/cc以下、約0.14g/cc以下、約0.12g/cc以下、約0.10g/cc以下、約0.05g/cc以下、約0.01g/cc以下、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲の密度を有する。
【0030】
本開示の内容の範囲内において、「疎水性」という用語は、水に反発するエアロゲル材料又は組成物の能力の測定値を言い表す。
【0031】
エアロゲル材料又は組成物の疎水性は、液水吸収に従って表すことができる。本開示の内容の範囲内において、「液水吸収」という用語は、エアロゲル材料又は組成物の液水を吸収する又はそうでなければ保持する潜在力の測定値を言い表す。液水吸収は、幾つかの測定条件下で液水にさらされた場合、エアロゲル材料又は組成物によって吸収された又はそうでなければ保持された水の割合(質量又は体積)として表すことができる。エアロゲル材料又は組成物の液水吸収は、限定されないが、繊維状ガラス絶縁体の保水(撥水性)特性を決定するため標準試験方法(ASTM C1511,ASTM International,West Conshohocken,PA);熱絶縁体材料の浸水による水吸収に対する標準試験方法(ASTM C1763,ASTM International,West Conshohocken,PA);アプリケーションを構築するための熱絶縁体生成物、部分的浸水による短時間の水吸収の決定(EN1609,British Standards Institution,United Kingdom)を含む、当技術分野で公知な方法によって決定することができる。本開示の内容の範囲内において、液水吸収の測定は、別段の記載がない限り、周辺圧力かつ温度下で、ASTM C1511標準に従って得られる。好ましくは、本開示のエアロゲル材料又は組成物は、約100wt%以下、約80wt%以下、約60wt%以下、約50wt%以下、約40wt%以下、約30wt%以下、約20wt%以下、約15wt%以下、約10wt%以下、約8wt%以下、約3wt%以下、約2wt%以下、約1wt%以下、約0.1wt%以下、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲の、ASTM C1511に従った液水吸収を有することができる。本開示のエアロゲル材料又は組成物は、約100wt%以下、約80wt%以下、約60wt%以下、約50wt%以下、約40wt%以下、約30wt%以下、約20wt%以下、約15wt%以下、約10wt%以下、約8wt%以下、約3wt%以下、約2wt%以下、約1wt%以下、約0.1wt%以下、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲の、ASTM C1763に従った液水吸収を有することができる。別のエアロゲル材料又は組成物に対して液水吸収が改善されたエアロゲル材料又は組成物は、参照エアロゲル材料又は組成物に比べて低い割合の液水吸収/保持を有する。
【0032】
エアロゲル材料又は組成物の疎水性は、水蒸気吸収に従って表すことができる。本開示の内容の範囲内において、「水蒸気吸収」という用語は、水蒸気を吸収するエアロゲル材料又は組成物の潜在性の測定値を言い表す。水蒸気吸収は、幾つかの測定条件下で水蒸気にさらされた場合、エアロゲル材料又は組成物によって吸収された又はそうでなければ保持された水の割合(質量)として表すことができる。エアロゲル材料又は組成物の水蒸気吸収は、限定されないが、結晶面の無い鉱物繊維絶縁体の水蒸気吸着を決定するための標準試験方法(ASTM C1104,ASTM International,West Conshohocken,PA)を含む、当技術分野で公知な方法によって決定することができる。本開示の内容の範囲内において、水蒸気吸収の測定は、別段の記載がない限り、周辺圧力及び温度下で、ASTM C1104標準に従って得られる。好ましくは、本開示のエアロゲル材料又は組成物は、約50wt%以下、約40wt%以下、約30wt%以下、約20wt%以下、約15wt%以下、約10wt%以下、約8wt%以下、約3wt%以下、約2wt%以下、約1wt%以下、約0.1wt%以下、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲の水蒸気吸収を有することができる。別のエアロゲル材料又は組成物に対して水蒸気吸収が改善されたエアロゲル材料又は組成物は、参照エアロゲル材料又は組成物に比べて低い割合の水蒸気吸収/保持を有する。
【0033】
エアロゲル材料又は組成物の疎水性は、材料の表面との界面で水滴の平衡接触角を測定することによって表すことができる。本開示のエアロゲル材料又は組成物は、約90°以上、約120°以上、約130°以上、約140°以上、約150°以上、約160°以上、約170°以上、約175°以上、又はこれらの値の任意の2つの間の水接触角を有することができる。
【0034】
本開示の内容の範囲内において、「燃焼熱」及び「HOC」という用語は、エアロゲル材料又は組成物の燃焼で解放される熱エネルギーの量の測定値を言い表す。燃焼熱は、典型的に、エアロゲル材料又は組成物のグラムあたりの開放された熱エネルギーのカロリー(cal/g)で、又はエアロゲル材料又は組成物のキログラムあたりの解放された熱エネルギーのメガジュール(MJ/kg)で記録される。材料又は組成物の燃焼熱は、限定されないが、生成物に対する燃焼試験の反応-合計の燃焼熱(発熱量)の決定(ISO1716,International Organization for Standardization,Switzerland)を含む、当技術分野で公知な方法によって決定することができる。本開示の内容の範囲内において、燃焼熱の測定は、別段の記載がない限り、ISO1716標準と一致する条件に従って得られる。好ましくは、本開示のエアロゲル組成物は、約750cal/g以下、約717cal/g以下、約700cal/g以下、約650cal/g以下、約600cal/g以下、約575cal/g以下、約550cal/g以下、約500cal/g以下、約450cal/g以下、約400cal/g以下、約350cal/g以下、約300cal/g以下、約250cal/g以下、約200cal/g以下、約150cal/g以下、約100cal/g以下、約50cal/g以下、約25cal/g以下、約10cal/g以下、又はこれらの値の任意の2つの間の燃焼熱を有することができる。別のエアロゲル組成物に対して燃焼熱が改善されたエアロゲル組成物は、参照エアロゲル組成物と比べて低い熱燃焼値を有する。
【0035】
本開示の内容の範囲内において、「疎水性有機材料の熱分解開始点」、「熱分解開始点」及び「Td」という用語は、疎水性有機材料の分解からの急激な発熱反応が材料又は組成物内で現れる環境熱の最低温度の測定値を言い表す。材料又は組成物の熱分解開始点は、熱重量分析(TGA)を使用して測定することができる。材料のTGA曲線は、周囲の温度の増加にさらされた際の材料の質量損失(重量%)を示す。材料の熱分解開始点は、以下のTGA曲線の接線、TGA曲線の基線に接する線、及び疎水性有機材料の分解に関する急激な分解事象の間の最大の傾きの点でのTGA曲線に接する線の接線、の接点と相関する場合がある。本開示の内容の範囲内において、疎水性有機材料の熱分解開始点の測定は、別段の記載がない限り、この段落で提供されたようなTGA分析を使用して得られる。
【0036】
材料の熱分解開始点はまた、示差走査熱量(DSC)分析を使用して測定することができる。材料のDSC曲線は、周囲温度の漸増にさらされた際の材料によって解放された熱エネルギー(mW/mg)を示す。材料の熱分解開始点の温度は、ΔmW/mg(熱エネルギー出力の変化)が最大に増加した、したがって、エアロゲル材料からの発熱の熱生成を示している、DSC曲線中の点と相関する場合がある。本開示の内容の範囲内において、DSCを使用した熱分解開始点の測定は、別段の記載がない限り、20℃/分以下の温度ランプ速度を使用して得られる。
【0037】
好ましくは、本開示のエアロゲル材料又は組成物は、約100℃以上、約150℃以上、約200℃以上、約250℃以上、約300℃以上、約350℃以上、約400℃以上、約450℃以上、約500℃以上、約550℃以上、約600℃以上、約650℃以上、約700℃以上、約750℃以上、約800℃以上、又はこれらの値の任意の2つの間の熱分解開始点を有する。別のエアロゲル材料又は組成物に対して熱分解開始点が改善されたエアロゲル材料又は組成物は、参照エアロゲル材料又は組成物と比べて高い熱分解開始点の温度を有する。
【0038】
本開示の内容の範囲内において、「自己加熱温度」という用語は、発熱反応が絶縁系、例えば、エアロゲル材料又は組成物を含む絶縁系内で特殊な測定条件下において現れる環境熱の最低温度の測定値を言い表す。本開示の内容の範囲内において、絶縁系の自己加熱温度の測定は、別段の記載がない限り、以下の手順、a)各辺で20mmの寸法を持つ幾何学的立方体である絶縁系を提供すること、b)絶縁系の中心に熱電対測定デバイスを設置すること、及びc)自己加熱発熱事象が起こるまで、絶縁系を一連の増加温度にさらすこと、に従って測定され、それは、絶縁系内で自己加熱発熱事象を示すのに十分有意な量で試料の外部さらし温度を超える、熱電対測定デバイスの温度によって示される。好ましくは、本開示のエアロゲル材料又は組成物は、約100℃以上、約150℃以上、約200℃以上、約250℃以上、約300℃以上、約350℃以上、約400℃以上、約450℃以上、約500℃以上、約550℃以上、約600℃以上、約650℃以上、約700℃以上、約750℃以上、約800℃以上、又はこれらの値の任意の2つの間の自己加熱温度を有する。別のエアロゲル材料又は組成物に対して自己加熱温度が改善されたエアロゲル材料又は組成物は、参照エアロゲル材料又は組成物に比べて高い自己加熱温度を有する。
【0039】
エアロゲルは、最も一般的に、相互接続オリゴマー、ポリマー又はコロイダル粒子で構成される相互接続構造の骨格として説明される。エアロゲル骨格は、無機前駆体材料(例えば、シリカ系エアロゲルの製造で使用される前駆体)、有機前駆体材料(例えば、炭素系エアロゲルの製造で使用される前駆体)、有機/無機混成前駆体材料、及びそれらの組み合わせを含む、様々な範囲の前駆体材料から作ることができる。本開示の内容の範囲内において、「アマルガムエアロゲル」という用語は、2つ以上の異なるゲル前駆体の組み合わせから製造されたエアロゲルを言い表す。
【0040】
無機エアロゲルは、一般的に、金属酸化物又は金属アルコキシド材料から形成される。金属酸化物又は金属アルコキシド材料は、酸化物か又は酸化物を形成することができる任意の金属のアルコキシドかに基づくことができる。そのような金属としては、限定されないが、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、バナジウム、セリウムなどが挙げられる。無機シリカエアロゲルは、伝統的に、シリカ系アルコキシド(例えば、テトラエトキシルシラン)の加水分解及び縮合を通じてか、又はケイ酸又は水ガラスのゲル化を通じて作られる。シリカ系エアロゲル合成物のための他の関連する無機前駆体材料としては、限定されないが、金属ケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸カリウム、アルコキシシラン、部分的に加水分解したアルコキシシラン、テトラエトキシルシラン(TEOS)、部分的に加水分解したTEOS、TEOSの縮合ポリマー、テトラメトキシルシラン(TMOS)、部分的に加水分解したTMOS、TMOSの縮合ポリマー、テトラ-n-プロポキシシラン、部分的に加水分解したテトラ-n-プロポキシシラン及び/又はテトラ-n-プロポキシシランの縮合ポリマー、ポリエチルシリケート、部分的に加水分解したポリエチルシリケート、モノマーアルキルアルコキシシラン、ビス-トリアルコキシアルキル若しくはアリールシラン、多面体シルセスキオキサン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
本開示の幾つかの実施形態において、約1.9~2の水/シリカ比で加水分解された、事前に加水分解したTEOS、例えば、SilbondH-5(SBH5,Silbond Corp)を、商業的に利用可能であるとして使用することができるか、又はゲル化プロセスに組み入れる前にさらに加水分解することができる。部分的に加水分解したTEOS又はTMOS、例えば、ポリエチルシリケート(Silbond40)又はポリメチルシリケートを、商業的に利用可能であるとして使用することができるか、又はゲル化プロセスに組み入れる前にさらに加水分解することができる。
【0042】
無機エアロゲルはまた、少なくとも1つの疎水基、例えば、アルキル金属アルコキシド、シクロアルキル金属アルコキシド、及びアリール金属アルコキシドを含むゲル前駆体を含むことができ、それは、安定性及び疎水性のようなゲル中の幾つかの性質を付与するか又は改善することができる。無機シリカエアロゲルは、具体的に、アルキルシラン又はアリールシランのような疎水性前駆体を含むことができる。疎水性ゲル前駆体は、ゲル材料の骨格を形成するための一次前駆体材料として使用することができる。しかしながら、疎水性ゲル前駆体は、より一般的には、アマルガムエアロゲルの形成において、単純な金属アルコキシドと組み合わせて共前駆体として使用される。シリカ系エアロゲル合成物のための疎水性無機前駆体材料としては、限定されないが、トリメチルメトキシシラン[TMS]、ジメチルジメトキシシラン[DMS]、メチルトリメトキシシラン[MTMS]、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン[DMDS]、メチルトリエトキシシラン[MTES]、エチルトリエトキシシラン[ETES]、ジエチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン[PhTES]、ヘキサメチルジシラザン及びヘキサエチルジシラザンなどが挙げられる。
【0043】
エアロゲルはまた、疎水性を付与する又は改善するために処理されることができる。疎水処理は、ゾルゲル溶液、液相抽出前のウェットゲル、又は液相抽出後のエアロゲルに適用することができる。疎水処理は、特に、金属酸化物エアロゲル、例えば、シリカエアロゲルの製造において一般的である。ゲルの疎水処理の例は、特にシリカウェットゲルを処理する内容において、以下でより詳細に議論される。しかしながら、本明細書で提供される具体例及び例示は、本開示の範囲を、いかなる具体的な種類の疎水処理手順又はエアロゲル基材に限定することを意図するものでない。本開示は、当業者に公知ないかなるゲル又はエアロゲル、並びに、ウェットゲル形態又は乾燥エアロゲル形態のいずれかのエアロゲル、の疎水処理の関連方法を含むことができる。
【0044】
疎水処理は、ゲル上のヒドロキシ部分、例えば、シリカゲルの骨格上に存在するシラノール基(Si-OH)が疎水剤の官能基と反応することによって行われる。得られた反応は、シラノール基と疎水剤とをシリカゲルの骨格上で疎水基に変える。疎水剤化合物は、以下の反応、RNMX4-N(疎水剤)+MOH(シラノール)→MOMRN(疎水基)+HX、に従ってゲル上のヒドロキシル基と反応することができる。疎水処理は、シリカゲルの外部マクロ表面上、並びにゲルの孔ネットワーク内の内部孔表面上の両方で起こることができる。
【0045】
ゲルは、疎水剤と、任意選択の疎水処理溶媒との混合物中に浸されることができ、疎水剤は可溶であり、それはまた、ウェットゲル中でゲル溶媒に混和である。広い範囲の疎水処理溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、キシレン、トルエン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、及びヘキサン、を使用することができる。液体又はガス形態の疎水剤をまた、疎水性を付与するためにゲルと直接接触させることができる。
【0046】
疎水処理プロセスは、疎水剤がウェットゲルに浸透するのを助けるために、混合又は撹拌を含むことができる。疎水処理プロセスはまた、温度及びpHのような他の条件を変えて、処理反応をさらに促進し最適化することを含むことができる。反応が完了した後、ウェットゲルは未反応物及び反応副産物を除去するために洗浄される。
【0047】
エアロゲルの疎水処理のための疎水剤は、一般的に、式:RNMX4-Nの化合物であり、式中、Mは金属であり、Rは疎水基、例えば、CH3、CH2CH3、C66、又は類似の疎水アルキル、シクロアルキル、若しくはアリール部分であり、Xはハロゲン、通常Clである。疎水剤の具体例としては、限定されないが、トリメチルクロロシラン[TMCS]、トリエチルクロロシラン[TECS]、トリフェニルクロロシラン[TPCS]、ジメチルクロロシラン[DMCS]、ジメチルジクロロシラン[DMDCS]などが挙げられる。疎水剤はまた、式:Y(R3M)2であることができ、式中、Mは金属であり、Yは架橋基、例えば、NH又はOであり、Rは疎水基、例えば、CH3、CH2CH3、C66、又は類似の疎水アルキル、シクロアルキル、若しくはアリール部分である。そのような疎水剤の具体例は、限定されないが、ヘキサメチルジシラザン[HMDZ]及びヘキサメチルジシロキサン[HMDSO]が挙げられる。疎水剤は、式:RNMV4-Nの化合物をさらに含むことができ、式中、Vはハロゲン以外の反応基又は脱離基である。そのような疎水剤の具体例としては、限定されないが、ビニルトリエトキシシラン及びビニルトリメトキシシランが挙げられる。
【0048】
本開示の内容の範囲内において「疎水結合ケイ素」という用語は、ケイ素原子と共有結合した少なくとも1つの疎水基を含むゲル又はエアロゲルの骨格内のケイ素原子を言い表す。疎水結合ケイ素の例としては、限定されないが、少なくとも1つの疎水基(例えば、MTES又はDMDS)を含むゲル前駆体から形成されたゲル骨格内のシリカ基におけるケイ素元素が挙げられる。疎水結合ケイ素はまた、限定されないが、追加の疎水基を組成物中に組み入れることによって疎水性を付与する又は改善するために、疎水剤(例えば、HMDZ)で処理されたゲル骨格中又はゲルの表面上のケイ素原子を含むことができる。本開示の疎水基は、限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tertブチル基、オクチル基、フェニル基、又は当業者に公知な他の置換又は未置換の疎水性有機基が挙げられる。本開示の内容の範囲内において、「疎水基」、「疎水性有機材料」及び「疎水性有機含有量」という用語は、具体的に、有機溶媒とシラノール基の間の反応の生成物であるゲル材料の骨格上の、容易に加水分解する有機ケイ素結合アルコキシ基を除外する。
【0049】
本開示の内容の範囲内において、「脂肪族疎水基」、「脂肪族疎水性有機材料」及び「脂肪族疎水性有機含有量」という用語は、限定されないが、飽和又は不飽和(芳香族を除く)であることができ、直鎖状、分枝状、環状部分(例えば、融解、架橋、及びスピロ融解ポリ環状)又はそれらの組み合わせ、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、又は(シクロアルキル)アルケニル部分、及びヘテロ脂肪族部分(1つ又は複数の炭素原子が、独立して、酸素、硫黄、窒素、又はリンからなる群より選択される1つ又は複数の原子によって置換された)を含むことができる、1~40個の炭素原子を含有する炭化水素部分を含む脂肪族炭化水素に限定される疎水結合ケイ素上の疎水基を説明する。本開示の幾つかの実施形態において、エアロゲル組成物中の50%以上の疎水性有機材料は脂肪族疎水基を含む。
【0050】
エアロゲル中に含有する疎水結合ケイ素の量は、NMR分光、例えば、CP/MAS29Si固体状態NMRを使用して分析することができる。エアロゲルのNMR分析は、Mタイプの疎水結合ケイ素(単官能性シリカ、例えばTMS誘導体);Dタイプの疎水結合ケイ素(二官能性シリカ、例えば、DMDS誘導体);Tタイプの疎水結合ケイ素(三官能性シリカ、例えばMTES誘導体);及びQタイプのケイ素(四官能性シリカ、例えばTEOS誘導体)の特徴づけ及び相対的な定量化を可能とする。NMR分析はまた、特定タイプの疎水結合ケイ素をサブタイプに分類(例えば、Tタイプの疎水結合ケイ素をT1種、T2種、及びT3種に分類)することを可能とすることによって、エアロゲル中に含有する疎水結合ケイ素の化学結合を分析するために使用することができる。シリカ材料のNMR分析に関する具体的な詳細は、Geppiらによる文献「有機/無機複数成分材料の研究への固体状態NMRの適用(Applications of Solid-State NMR to the Study of Organic/Inorganic Muliticomponent Materials)」中で、具体的には7~9ページ(Appl.Spec.Rev.(2008),44-1:1-89)で確認することができ、それは、具体的に述べたページに従って、参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
CP/MAS29SiNMR分析における疎水結合ケイ素の特徴づけは、以下の化学シフトピーク:M1(30から10ppm);D1(10から-10ppm)、D2(-10から-20ppm);T1(-30から-40ppm)、T2(-40から-50ppm)、T3(-50から-70ppm);Q2(-70から-85ppm)、Q3(-85から-95ppm)、Q4(-95から-110ppm)に基づくことができる。これらの化学シフトピークは、おおよそでありかつ例示であり、制限される又は限定的であることが意図されない。材料内の様々なケイ素種に起因する正確な化学シフトピークは、材料の特定の化学成分に依存し、一般的に、当業者による日々の実験及び分析を通じて解釈することができる。
【0052】
本開示のエアロゲル材料は、約0.01~約0.5、約0.01~約0.3、又は約0.1~約0.3のT1-2:T3の比を有することができる。T1-2:T3の比は、T3種に対するT1種とT2種との組み合わせの比を示す。T1、T2及びT3の量は、前に規定したように、29Si NMR分析におけるT1種、T2種、又はT3種にそれぞれ関連する個々の化学シフトピークの積分によって定量化することができる。本開示のエアロゲル材料は、約0.1~2.5、約0.1~2.0、約0.1~1.5、約0.1~1.0、又は約0.5~1.0のQ2-3:Q4の比を有することができる。Q2-3:Q4の比は、Q4種に対するQ2種とQ3種との組み合わせの比を示す。Q2、Q3、及びQ4の量は、前に規定したように、29Si NMR分析におけるQ2種、Q3種、又はQ4種にそれぞれ関連する個々の化学シフトピークの積分によって定量化することができる。
【0053】
本開示の内容の範囲内において、「疎水性有機含有量」という用語は、エアロゲル材料又は組成物中の骨格に結合した疎水性有機材料の量を言い表す。エアロゲル材料又は組成物の疎水性有機含有量は、エアロゲル材料又は組成物中の材料の全体量に対するエアロゲル骨格上の疎水性有機材料の量の質量割合として表すことができる。疎水性有機含有量は、エアロゲル材料又は組成物を製造するのに使用される材料の性質及び相対濃度に基づいて、当業者が計算することができる。疎水性有機含有量はまた、不活性雰囲気中で熱重量分析(TGA)を使用して測定することができる。具体的には、エアロゲル中の疎水性有機材料の割合は、TGA分析中の燃焼熱の温度にさらされた場合の、TGA分析中の湿度の損失、残留溶媒の損失、及び容易に加水分解するアルコキシ基の損失に対してなされる調整を含む、疎水性エアロゲル材料又は組成物における質量損失の割合に相関する場合がある。
【0054】
本開示のエアロゲル材料又は組成物は、50wt%以下、40wt%以下、30wt%以下、25wt%以下、20wt%以下、15wt%以下、10wt%以下、8wt%以下、6wt%以下、5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、1wt%以下、又はこれらの値の任意の2つの間の疎水性有機含有量を有することができる。
【0055】
「燃料含有量」という用語は、エアロゲル材料又は組成物中の燃焼可能な材料の全体量を言い表し、それは、TGA分析又はTG-DSC分析中に燃焼熱の温度にさらされた場合の、湿度の損失に対してなされた調整を含む、エアロゲル材料又は組成物における質量損失の全体の割合に相関する場合がある。エアロゲル材料又は組成物の燃料含有量は、疎水性有機含有量、並びに他の燃焼可能な材料、例えば、残留アルコール溶媒、充填材材料、強化材料、及び容易に加水分解するアルコキシ基を含むことができる。
【0056】
有機エアロゲルは、一般的に、炭素系ポリマー前駆体から形成される。そのようなポリマー材料としては、限定されないが、レゾルシノールホルムアルデヒド(RF)、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリレートオリゴマー、ポリオキシアルキレン、ポリウレタン、ポリフェノール、ポリブタジエン、トリアルコキシシリル末端ポリジメチルシロキサン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリフルフラル、メラミン-ホルムアルデヒド、クレゾールホルムアルデヒド、フェノールフルフラル、ポリエーテル、ポリオール、ポリイソシアネート、ポリヒドロキシベンゼン、ポリビニルアルコールジアルデヒド、ポリシアヌレート、ポリアクリルアミド、様々なエポキシ、寒天、アガロース、キトサン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。1つの例として、有機RFエアロゲルは、典型的に、アルカリ条件下で、ホルムアルデヒドでレゾルシノール又はメラミンをゾルゲルポリマー化することで作られる。
【0057】
有機/無機混成エアロゲルは、オルモシル(ormosil)(有機的に改質されたシリカ)エアロゲルで主に構成される。これらのオルモシル材料は、シリカネットワークと共有結合した有機成分を含む。オルモシルは、典型的に、伝統的なアルコキシド前駆体Y(OX)4で有機的に改質されたシランR--Si(OX)3の加水分解及び縮合を通じて形成される。これらの式中で、Xは、例えば、CH3、C25、C37、C49を示すことができ、Yは、例えば、Si、Ti、Zr、又はAlを示すことができ、Rは任意の有機断片、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、メタクリレート、アクリレート、ビニル、エポキシドなどであることができる。オルモシルエアロゲル中の有機成分はまた、シリカネットワークにわたって分散するか又はシリカネットワークと化学結合することができる。
【0058】
本開示の内容の範囲内において、「オルモシル」という用語は、前述の材料並びに他の有機的に改質されたセラミックスを包含し、時々「オルモサー(ormocer)」と言い表される。オルモシルは、しばしば、例えば、ゾルゲルプロセスを通じてオルモシル膜を基材材料上に流涎した被膜として使用される。本開示の他の有機-無機混成エアロゲルの例としては、限定されないが、シリカ-ポリエーテル、シリカ-PMMA、シリカ-キトサン、炭化物、ニトリド、並びに前述した有機及び無機エアロゲル形成化合物の他の組み合わせが挙げられる。公開された米国特許出願公開第20050192367(段落[0022]~[0038]及び[0044]~[0058])では、そのような有機-無機混成材料の教示を含み、それは、個別に述べられた節及び段落に従って、参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
本開示のエアロゲルは、好ましくは、ケイ素アルコキシドから形成された加水分解シリケートエステルのアルコール溶液から主に形成された無機シリカエアロゲルである。しかしながら、本開示は、全体として、当業者に公知のいかなる他のエアロゲル組成物で実施することができ、いかなる1つの前駆体材料又は前駆体材料のアマルガム混合物に限定されない。
【0060】
エアロゲルの製造は、一般的に、以下の工程、i)ゾルゲル溶液を形成すること、ii)ゾルゲル溶液からゲルを形成すること、及びiii)革新的な処理及び抽出を通じてゲル材料から溶媒を抽出して、乾燥エアロゲル材料を得ることを含む。このプロセスは、以下でより詳細に、具体的には、シリカエアロゲルのような無機エアロゲルを形成する内容において議論される。しかしながら、本明細書で提供される具体例及び例示は、本開示をいずれの特定タイプのエアロゲル及び/又は調製方法に限定することを意図しない。本開示は、当業者に公知のあらゆる関連する調製方法によって形成されたあらゆるエアロゲルを含むことができる。
【0061】
無機エアロゲルを形成する第1工程は、一般的に、アルコール系溶媒中での金属アルコキシド前駆体の加水分解及び縮合を通じての、ゾルゲル溶液の形成である。無機エアロゲルの形成における主な変数としては、ゾルゲル溶液中に含まれるアルコキシド前駆体のタイプ、溶媒の性質、処理温度、及びゾルゲル溶液のpH(酸又は塩基の追加によって変えることができる)、並びにゾルゲル溶液中の前駆体/溶媒/水の比が挙げられる。ゾルゲル溶液の形成におけるこれらの変数の制御は、「ゾル」状態から「ゲル」状態へのゲル材料のその後の変換の際に、ゲル骨格の成長及び凝集の制御を可能とすることができる。得られたエアロゲルの性質は、前駆体溶液のpH及び反応物のモル比によって影響を受けるが、ゲルの形成を可能とする任意のpH及び任意のモル比が、本開示中で使用されることがある。
【0062】
ゾルゲル溶液は、少なくとも1つのゲル前駆体を溶媒と組み合わせることによって形成される。ゾルゲル溶液を形成するのに使用するための適切な溶媒は、1~6個、好ましくは2~4個の炭素原子を持つ低級アルコールを含むが、他の溶媒を当業者に公知であるものとして使用することができる。有用な溶媒の例としては、限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。複数の溶媒をまた、所望のレベルの分散を得るために又はゲル材料の性質を最適化するために組み合わせることができる。したがって、ゾルゲル及びゲルの形成工程のための任意選択の溶媒の選択は、ゾルゲル溶液中に組み入れられた特定の前駆体、充填材及び添加剤、並びに、ゲル化及び液相抽出のための目標処理条件、及び最終エアロゲル材料の所望の性質に依存する。
【0063】
水はまた、前駆体-溶媒溶液の中に存在することができる。水は、金属アルコキシド前駆体を金属ヒドロキシド前駆体に加水分解するために作用する。加水分解反応は、(例として、エタノール溶媒中でTEOSを使用して)Si(OC254+4H2O→Si(OH)4+4(C25OH)であることができる。得られた加水分解された金属ヒドロキシド前駆体は、個々の分子として又は小さいポリマー化した(若しくはオリゴマー化した)分子のコロイド状クラスタとして、「ゾル」状態の溶媒溶液中で懸濁されたままである。例えば、Si(OH)4前駆体のポリマー化/縮合は、以下、2Si(OH)4=(OH)3Si-O-Si(OH)3+H2Oのように起こる場合がある。このポリマー化は、ポリマー化した(オリゴマー化した)SiO2(シリカ)分子のコロイド状クラスタが形成されるまで続く場合がある。
【0064】
酸及び塩基を、溶液のpHを制御するために、及び前駆体材料の加水分解及び縮合反応に触媒作用を及ぼすために、ゾルゲル溶液中に組み入れることができる。いずれの酸を、前駆体反応に触媒作用を及ぼすために、及びより低いpH溶液を得るために使用することができるが、好ましい酸としては、HCl、H2SO4、H3PO4、シュウ酸及び酢酸が挙げられる。同様に、いずれの塩基を、前駆体反応に触媒作用を及ぼすために、及びより高いpH溶液を得るために使用することができるが、好ましい塩基はNH4OHを含む。
【0065】
ゾルゲル溶液は、追加の共ゲル化前駆体、並びに充填材材料及び他の添加剤を含むことができる。充填材材料及び他の添加剤を、ゲルの形成前又は形成中のあらゆる時点でゾルゲル溶液中に分散することができる。充填材材料及び他の添加剤をまた、当業者に公知な様々な技術を通じて、ゲル化後にゲル材料中に組み入れることができる。好ましくは、ゲル化前駆体、溶媒、触媒、水、充填材材料及び他の添加剤を含むゾルゲル溶液は、適切な条件下で効率的なゲル形成を可能とする均一溶液である。
【0066】
ゾルゲル溶液が形成され最適化された後、ゾルゲル中のゲル形成成分はゲル材料に変換されることができる。ゲル形成成分をゲル材料に変換するプロセスは、ゲル材料のゲル点までゲルが固体化する初期ゲル形成工程を含む。ゲル材料のゲル点は、ゲル化溶液が流れ抵抗を示す及び/又はその容積にわたって実質的に連続なポリマー骨格を形成する点として理解することができる。ゲル形成技術の範囲は当業者に公知である。例としては、限定されないが、混合物を十分な時間静止状態に維持すること、溶液のpHを調整すること、溶液の温度を調整すること、ある形態のエネルギー(紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、超音波、粒子線、電磁気)を混合物に与えること、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
ゲル形成成分をゲル材料に変換するプロセスはまた、液相抽出の前にエージング工程(硬化とも言い表される)を含むことができる。ゲル材料がそのゲル点に達した後のゲル材料のエージングは、ネットワーク内の架橋の数を増加せることによってゲル骨格をさらに強化することができる。ゲルエージングの時間は、得られるエアロゲル材料内の様々な性質を制御するために調整することができる。このエージング手順は、液相抽出中の潜在的な容積減少及び収縮を阻止するのに有用であることができる。エージングは、(抽出の前に)延長された時間、ゲルを静止状態で維持すること、上昇した温度でゲルを維持すること、架橋促進化合物を追加すること、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。エージングのための好ましい温度は、通常、約10℃~約100℃である。ゲル材料のエージングは、典型的に、ウェットゲル材料の液相抽出まで続く。
【0068】
ゲル形成材料をゲル材料に変換するための時間は、初期ゲル形成の時間(ゲル化開始からゲル点まで)、並びに、液相抽出前のゲル材料の任意のその後の硬化及びエージングの時間(ゲル点から液相抽出開始まで)の両方を含む。ゲル形成材料をゲル材料に変換するための全体の時間は、典型的に、約1分間~7日間、好ましくは約30時間以下、約24時間以下、約15時間以下、約10時間以下、約6時間以下、約4時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約30分間以下、又は約15分間以下である。
【0069】
得られたゲル材料は、ウェットゲル中に存在する一次反応溶媒を置き換えるために、適切な二次溶媒中で洗浄することができる。そのような二次溶媒は、1つ又は複数の脂肪族炭素原子を持つ直鎖状1価アルコール、2つ以上の炭素原子を持つ2価アルコール、分枝状アルコール、環状アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール、多価アルコール、エーテル、ケトン、環状エーテル又はそれらの誘導体であることができる。
【0070】
ゲル材料が形成され処理された後、次いで、ゲルの液相は、革新的な処理及び抽出技術を含む、抽出方法を使用してウェットゲルから少なくとも部分的に抽出されて、エアロゲル材料を形成することができる。他の要因の中で、液相抽出は、エアロゲルの特性、例えば、多孔率及び密度、並びに熱伝導度のような関連する性質を操作する重要な役割を担う。一般的に、エアロゲルは、低い収縮性をウェットゲルの孔ネットワーク及び骨格にもたらす方法で、液相がゲルから抽出された場合に得られる。
【0071】
エアロゲルは、一般的に、液体移動相の臨界点の近く又はその上の温度及び圧力で、ゲル材料から液体移動相を除去することで形成される。臨界点に達する(略臨界)又臨界点を超える(超臨界)(すなわち、系の圧力及び温度が、それぞれ臨界圧力及び臨界温度であるか又はそれより大きい)と、新しい超臨界相が、液相又は蒸気相と異なる流体において現れる。次いで、溶媒を、液体-蒸気界面、毛管圧、又は液体-蒸気の境界に典型的に関連する、任意の関連する物質移動制限を導くことなく、除去することができる。追加的に、一般に、超臨界相は、有機溶媒により混和性があり、したがって、より良い抽出に対する潜在性を有する。共溶媒及び溶媒交換はまた、一般的に、超臨界流体の乾燥プロセスを最適化するために使用される。
【0072】
蒸発又は抽出が、超臨界点より下で起こった場合、液体蒸発によって作り出された毛管力により、ゲル材料内で収縮及び孔崩壊が引き起こされる場合がある。溶媒抽出プロセス中に臨界圧力及び温度の近く又はその上で移動相を維持することは、そのような毛管力の好ましくない影響を減らす。本開示の幾つかの実施形態において、溶媒系の臨界点のちょうど下の略臨界条件を使用することで、十分に低い収縮を持つエアロゲル材料又は組成物を製造すること、したがって、商業的に実行可能な最終生成物を製造することが可能となることがある。
【0073】
幾つかの追加のエアロゲル抽出技術は当技術分野で公知であり、エアロゲルを乾燥するのに超臨界流体を使用する際の様々な範囲の異なるアプローチを含む。例えば、Kistler(J.Phys.Chem.(1932)36:52-64)は、ゲル溶媒がその臨界圧力及び温度の上で維持され、それによって、蒸発毛管力を減らし、ゲルネットワークの構造的完全性を維持する、単純な超臨界抽出プロセスを説明する。米国特許第4610863号明細書では、ゲル溶媒が液体二酸化炭素で交換され、その後に二酸化炭素が超臨界状態になる条件で抽出される抽出プロセスを説明する。米国特許第6670402号明細書では、実質的に超臨界条件以上に事前加熱及び事前加圧された抽出器中に、(液体というよりむしろ)超臨界二酸化炭素を注入することによって、急激な溶媒交換を通じてゲルから液相を抽出し、それによってエアロゲルを製造することを教示する。米国特許第5962539号明細書では、ポリマー分解の温度未満の臨界温度を有する流体に対して有機溶媒を交換することによって、及び超臨界的に流体/ゾルゲルを抽出することによって、有機溶媒中でゾルゲル形態であるポリマー材料からエアロゲルを得るためのプロセスを説明する。米国特許第6315971号明細書では、ゲル固形物と乾燥剤とを含むウェットゲルを乾燥して、乾燥中にゲルの収縮を減らすのに十分な乾燥条件下で乾燥材を除去すること、を含むゲルを製造するためのプロセスを説明する。米国特許第5420168号明細書では、レゾルシノール/ホルムアルデヒドエアロゲルを、単純な空気乾燥手順を使用して製造することができるプロセスを説明する。米国特許第5565142号明細書では、ゲル骨格及び孔が、周辺乾燥又は亜臨界抽出中に崩壊に耐えることができるように、ゲル表面をより強く、より疎水性に改質する乾燥技術を説明する。エアロゲル材料から液相を抽出する他の例は、米国特許第5275796号及び同第5395805号明細書において確認することができる。
【0074】
ウェットゲルから液相を抽出する1つの好ましい実施形態は、例えば、最初にゲルの孔ネットワーク中に存在する一次溶媒を液体二酸化炭素に実質的に交換すること、並びに、次いで、二酸化炭素の臨界温度(約31.06℃)超に、(典型的にはオートクレーブ中で)ウェットゲルを加熱すること、及び系の圧力を二酸化炭素の臨界圧力(約1070psig)超の圧力に増加させることを含む、二酸化炭素の超臨界条件を使用する。ゲル材料周辺の圧力を、ゲルから超臨界二酸化炭素流体を除去するのを容易にするためにわずかに変動させることができる。ウェットゲルから一次溶媒を連続的に除去するのを容易にするために、抽出システムを通じて、二酸化炭素を再循環させることができる。最後に、温度及び圧力を周辺条件にゆっくり戻して、乾燥エアロゲル材料を製造する。二酸化炭素はまた、抽出チャンバーに注入される前に、超臨界状態に事前処理することができる。
【0075】
エアロゲルを形成する代替的方法の1つの例としては、水中で塩基性金属酸化物前駆体(例えば、ケイ酸ナトリウム)を酸性化してハイドロゲルを作ることが挙げられる。塩副産物は、イオン交換によって及び/又は形成されたゲルをその後に水で洗浄することによって、ケイ酸前駆体から除去することができる。ゲルの孔から水を除去することを、極性有機溶媒、例えば、エタノール、メタノール、又はアセトンとの交換によって行うことができる。次いで、ゲル中の液相は、革新的な処理及び抽出技術を使用して、少なくとも部分的に抽出される。
【0076】
エアロゲルを形成する代替的方法の別の例としては、表面ヒドロキシル基の疎水性トリメチルシリルエーテルへの変換を通じてウェットゲル状態のマトリックス材料を化学的に改質することによって、溶媒/孔界面での有害な毛管圧の力を減らし、それによって、溶媒の臨界点未満の温度及び圧力でゲル材料から液相抽出を可能とすることが挙げられる。
【0077】
エアロゲル材料又は組成物の大量製造は、大規模にゲル材料を連続的に形成することに関する困難性、並びに、革新的な処理及び抽出技術を使用して、大量にゲル材料から液相抽出することに関する困難性によって複雑化される場合がある。本開示のエアロゲル材料又は組成物は、大規模に製造するのに適合することが好ましい。幾つかの実施形態において、本開示のゲル材料は、連続成形及びゲル化プロセスを通じて大規模で製造することができる。幾つかの実施形態において、本開示のエアロゲル材料又は組成物は、大規模な抽出容器の使用を要する、大規模で製造される。本開示の大規模な抽出容器は、約0.1m3以上、約0.25m3以上、約0.5m3以上、又は約0.75m3以上の容積を有する抽出容器を含むことができる。
【0078】
本開示のエアロゲル組成物は、15mm以下、10mm以下、5mm以下、3mm以下、2mm以下、又は1mm以下の厚さを有することができる。
【0079】
乾燥エアロゲル材料又は組成物は、エアロゲル材料又は組成物の目標性質を最適化するために、さらに処理することができる。幾つかの実施形態において、乾燥エアロゲル組成物を、1つ又は複数の熱処理、例えば、熱分解にさらして、熱処理されたエアロゲル組成物を製造することができる。注意深く制御された熱処理を使用して、エアロゲル材料又は組成物の炭化水素燃料含有量を減らす又は安定化することができ、それにより、エアロゲル材料又は組成物の関連するHOC及びTd性質を改善することができる。幾つかの実施形態において、乾燥エアロゲル組成物の熱処理は、様々な範囲の温度、圧力、時間、及び大気圧条件下で起こることができる。
【0080】
本開示の幾つかの実施形態において、乾燥エアロゲル組成物を、200℃以上、250℃以上、300℃以上、350℃以上、400℃以上、450℃以上、500℃以上、550℃以上、600℃以上、650℃以上、700℃以上、750℃以上、800℃以上、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲の処理温度にさらすことができる。
【0081】
本開示の幾つかの実施形態において、乾燥エアロゲル組成物を、3時間以上、10秒間~3時間、10秒間~2時間、10秒間~1時間、10秒間~45分間、10秒間~30分間、10秒間~15分間、10秒間~5分間、10秒間~1分間、1分間~3時間、1分間~1時間、1分間~45分間、1分間~30分間、1分間~15分間、1分間~5分間、10分間~3時間、10分間~1時間、10分間~45分間、10分間~30分間、10分間~15分間、30分間~3時間、30分間~1時間、30分間~45分間、45分間~3時間、45分間~90分間、45分間~60分間、1時間~3時間、1時間~2時間、1時間~90分間、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲の時間で、1つ又は複数の熱処理にさらすことができる。
【0082】
本開示の幾つかの実施形態において、乾燥エアロゲル組成物を200℃~750℃の処理温度に、10秒間~3時間の時間で熱処理にさらすことができる。
【0083】
エアロゲル材料又は組成物の熱処理は、減酸素環境において起こることができる。本発明の内容の範囲内において、「減酸素環境」という用語は、10容積%以下の酸素(標準条件での周辺空気中の酸素の量未満である)の容積の濃度を含む雰囲気を言い表す。減酸素環境は、(限定されないが、)窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、アルゴン、及びキセノンを含む不活性ガスの濃度が上昇された陽圧雰囲気を含むことができる。減酸素環境はまた、真空及び部分真空を含む、酸素の濃度が減少した真空雰囲気を含むことができる。減酸素環境は、制限された燃焼により密閉された雰囲気中の酸素含有量の一部が消費された密閉された容器中に含まれる雰囲気をさらに含むことができる。減酸素環境は、10容積%以下の酸素、8容積%以下の酸素、6容積%以下の酸素、5容積%以下の酸素、4容積%以下の酸素、3容積%以下の酸素、2容積%以下の酸素、又は1容積%以下の酸素、を含むことができる。減酸素環境は、0.1~10容積%の酸素、0.1~5容積%の酸素、0.1~3容積%の酸素、0.1~2容積%の酸素、又は0.1~1容積%の酸素を含むことができる。本開示の1つの実施形態において、疎水性エアロゲル材料又は組成物は、約85%~約99.9%の不活性ガス(例えば、窒素)を含む減酸素雰囲気中で熱処理される。本開示の好ましい実施形態において、乾燥疎水性エアロゲル組成物は、約200℃~約800℃の温度で、約1分間~約3時間の時間、約95%~約99.9%の不活性ガス(例えば、窒素)を含む減酸素雰囲気中で熱処理される。
【0084】
エアロゲル材料又は組成物の熱処理は、幾つかのエアロゲル材料の様々な性質に大きく悪影響を与える場合がある。例えば、Raoら(J.Sol-Gel Sci.Tech.,2004,30:141-147)は、310℃超の温度にさらされた場合に疎水性を全て失う疎水性を提供するために、共ゲル化及び表面誘導体化の両方を通じて加えられた様々な疎水反応剤(例えば、MTMS、MTES、TMES、PhTES、ETES、DMCS、TMCS及びHMDZ)で、TEOS前駆体から作られたエアロゲルを教示し(390℃まで安定であるDMCS共ゲル、及び520℃まで安定であるPhTES共ゲルを除く)、Liuら(J.Sol-Gel Sci.Tech.,2012,62:126-133)は、標準雰囲気中で430℃超の温度にさらされた場合にその疎水性を失う疎水性を提供するために、HMDZで処理されたケイ酸ナトリウム前駆体から作られたエアロゲル材料を教示し、Zhouら(Inorg.Mat.,2008,44-9:976-979)は、標準雰囲気中で500℃超の温度にさらされた場合にその疎水性を失う疎水性を提供するために、TMCSで処理されたTEOS前駆体から作られたエアロゲル材料を教示する。1つの実施形態において、本開示のエアロゲル材料又は組成物の熱処理は、950℃未満、900℃未満、850℃未満、800℃未満、750℃未満、700℃未満、650℃未満、又は600℃未満での温度さらしに限定される。
【0085】
幾つかの実施形態において、本開示は、エアロゲル材料、組成物、及び、制御された熱処理によりエアロゲル材料の炭化水素燃料含有量を減らす又は安定化する(それによって、HOC及びTdのようなエアロゲル材料の関連する性質を改善する)ことが可能となる処理方法を提供し、それにより、エアロゲル材料が、約550℃以上の温度へのさらし、及び約650℃以上の温度へのさらしを含む、高温での疎水性の機能レベルを維持することが可能となる。
【0086】
本開示の実施形態は、本明細書で議論されたいずれの処理、抽出及び処理技術、並びに、本明細書で規定されたようなエアロゲル、エアロゲル系材料、及びエアロゲル組成物を製造するための、当業者に公知な他の処理、抽出及び処理技術を使用して、行うことができる。
【0087】
エアロゲル組成物は、より柔軟で、耐性があり、適合性がある複合体生成物を得るために、様々な繊維強化材料で繊維強化することができる。繊維強化剤を、ゲル化プロセス中のあらゆる時点でゲルに加え、ウェットな繊維状ゲル組成物を製造することができる。次いで、ウェットゲル組成物を乾燥して繊維強化エアロゲル組成物を製造することができる。繊維強化材料は、離散繊維、織布材料、不織布材料、綿、ウェブ、マット、及びフェルトの形態であることができる。繊維強化は、有機繊維状材料、無機繊維状材料、又はそれらの組み合わせから作ることができる。
【0088】
好ましい実施形態において、不織布繊維強化材料は、相互接続又は交絡繊維強化材料の連続シートとして、エアロゲル組成物中に組み入れられる。プロセスは、ゲル前駆体溶液を、連続シートに状の相互接続又は交絡繊維強化材料に成形する又は含浸することで、連続シート状の繊維強化ゲルを最初に製造することを含む。次いで、液相は、繊維強化ゲルシートから少なくとも部分的に抽出されてシート状の繊維強化エアロゲル組成物を製造することができる。
【0089】
エアロゲル組成物はまた、伝熱の放射性成分を減らすために、乳白剤を含むことができる。ゲル形成の前のあらゆる時点で、不透明化化合物又はそれらの前駆体を、ゲル前駆体を含む混合物中に分散させることができる。不透明化化合物の例としては、限定されないが、炭化ホウ素[B4C]、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag2O、Bi23、カーボンブラック、酸化チタン、鉄チタン酸化物、酸化アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、鉄チタン酸化物(イルメナイト)、酸化クロム、炭化物(例えば、SiC、TiC又はWC)、又はそれらの混合物が挙げられる。不透明化化合物前駆体の例としては、限定されないが、TiOSO4又はTiOCl2が挙げられる。
【0090】
本開示のエアロゲル材料及び組成物は、絶縁材料として極めて効果的であることが示されてきた。しかしながら、本開示の方法及び材料の適用が、絶縁に関する用途に限定されることは意図されない。本開示の方法及び材料は、本開示の材料及び方法によって提供される性質又は手順の一意の組み合わせから利益を得る任意の系又は用途に適用することができる。
【0091】
以下の例は、本開示の非限定的な実施形態及び性質を提供する。
【実施例
【0092】
例1
Kグレードのケイ酸ナトリウムを前駆体として使用し、それは、質量で2.88のSiO2:Na2O比を含み、31.7wt%のSiO2と、11wt%のNa2Oとを含有していた。ナトリウムメチルシリコネートは水中で30%のNaSiO3CH3として利用可能であった。ケイ酸ナトリウムとナトリウムメチルシリコネートとを組み合わせて、得られた31.4%のエアロゲル塊が、エアロゲル材料内で7.0wt%の期待疎水性有機含有量を持つナトリウムメチルシリコネートから生じた(NaSiO3CH3からのSiO1.5CH3)。
【0093】
この組み合わせを、酸性化ゾル中に9.68wt%のシリカ固形物(6.64wt%のSiO2と3.04wt%のSiO1.5CH3)が存在するように、32%のH2SO4に加える前に希釈した。H2SO4とNa2SiO3との両方を氷浴中で10℃に冷却した。Na2SiO3を高速撹拌しながらH2SO4にゆっくり加えた。ゲル化を避けるために温度が12度を超えないような速度で、この発熱性の追加を行った。ゾルを4℃に冷却して、いくらかのNa2SO4・10H2Oの沈殿を促進した。溶液の温度を4℃で維持した。硫酸ナトリウムをさらに沈殿させるために、エタノールを水性ゾルの容積の68.7%に等しい量で加えて、ゾル中の成分のモル比を1:0.409:2.34:6.97:0.156のSi(水ガラスから):Si(メチルシリコネートから):EtOH:H2O:H2SO4にした。Na2SO4を真空濾過により速やかに除去した。
【0094】
ゲルを、触媒としての希釈水酸化アンモニウム(水中で10容積%の28%NH4OH)を追加することで0.07~0.08g/ccの目標エアロゲル密度で成形した。85容積%のゾルと、5容積%のEtOHと、10容積%の触媒流とを使用した(数秒にわたって加えた)。触媒を加えた後、ゾルを300rpmで30秒間撹拌して、次いで、繊維強化相に流し込み、ゲルを得た。約1時間の硬化の後、エアロゲル材料を、3:1のEtOH:ゲルの容積比を持つEtOH浴に入れて、エージングの前に水含有量を減らした。次いで、それらを、3:1の流体:ゲル比で、0.8wt/容積%のNH3を含有するエタノールエージング流体中において68℃で14時間エージングした。試験片を、超臨界CO2で溶媒抽出して、次いで、110℃で2時間乾燥した。
【0095】
繊維強化相は、9ミクロン径の繊維を持ち、約3.8オンス/平方フィートの密度を持つ約10mm厚のシリカPD綿であった。得られたエアロゲル材料は、約45wt%のエアロゲルと、55wt%の繊維とであり、約0.16~0.20g/ccの期待材料密度を得た(0.07~0.08g/ccのエアロゲル密度を与えた)。
【0096】
例2
EtOH及びH2O中で酸性触媒を用いてTEOSとMTESとを共加水分解することで、ゾルを作った。ゾル材料のモル比を調整して、エアロゲル材料内において約7.0wt%の有機含有量を持つエアロゲルを得た。ゾルを60℃で4時間撹拌して、次いで、室温に冷却した。加水分解中にゾルの容積が約3%減少し、EtOHを加えてゾルをその元の容積に戻した。
【0097】
0.5MのNH4OHを、0.07~0.08g/ccの目標エアロゲル密度を持つ複合ゾルに加えた。ゾルを繊維強化相に流し込み、ゲルを得た。約1時間の硬化の後、エアロゲル材料を、3:1の流体:ゲル比で、0.8wt/容積%のNH3を含有するエタノールエージング流体中において68℃で約16時間エージングした。試験片を超臨界CO2で溶媒抽出して、次いで、110℃で2時間乾燥した。
【0098】
繊維強化相は、9ミクロン径の繊維を持ち、約3.8オンス/平方フィートの密度を持つ約10mm厚のシリカPD綿であった。得られたエアロゲル材料は、約45wt%のエアロゲルと、55wt%の繊維とであり、約0.16~0.20g/ccの期待材料密度を得た(0.07~0.08g/ccのエアロゲル密度を与えた)。
【0099】
例3
EtOH及びH2O中で酸性触媒を用いてTEOSとMTESとを共加水分解することで、ゾルを作った。ゾル材料のモル比を調整して、エアロゲル材料内において約7.0wt%の有機含有量を持つエアロゲルを得た。ゾルを60℃で4時間撹拌して、次いで、室温に冷却した。炭化ホウ素[B4C]、カーボンブラック、二酸化マンガン、酸化チタン、又はケイ酸ジルコニウムを、複合ゾルの別のバッチに組み入れて、次いで、それを1時間以上撹拌した。
【0100】
0.5MのNH4OHを、0.07~0.08g/ccの目標エアロゲル密度を持つ複合ゾルに加えた。ゾルを繊維強化相に流し込み、ゲルを得た。約1時間の硬化の後、エアロゲル材料を、3:1の流体:ゲル比で、0.8wt/容積%のNH3を含有するエタノールエージング流体中において68℃で約16時間エージングした。試験片を超臨界CO2で溶媒抽出して、次いで、110℃で2時間乾燥した。
【0101】
繊維強化相は、9ミクロン径の繊維を持ち、約3.8オンス/平方フィートの密度を持つ約10mm厚のシリカPD綿であった。得られたエアロゲル材料は、約45wt%のエアロゲルと、55wt%の繊維とであり、約0.16~0.20g/ccの期待材料密度を得た(0.07~0.08g/ccのエアロゲル密度を与えた)。
【0102】
例4
EtOH及びH2O中で酸性触媒を用いてTEOSを加水分解することで、ポリエチルシリケートゾルを製造し、次いで、6時間以上周辺温度で撹拌した。EtOH及びH2O中で酸性触媒を用いてMTESを加水分解することで、ポリメチルシルセスキオキサンゾルを製造し、次いで、6時間以上周辺温度で撹拌した。ポリエチルシリケート(TEOS)ゾルとポリメチルシルセスキオキサン(MTES)ゾルとを組み合わせて、約10~11wt%の有機含有量を持つエアロゲルを得た。炭化ケイ素粉末(F1200グリット)又は二酸化チタン粉末を、約15:1のゾル:粉末の質量比を持つ、別バッチの複合ゾルに組み入れた。複合ゾルを1時間以上撹拌した。
【0103】
0.5MのNH4OHを、0.07~0.08g/ccの最終エアロゲルの目標密度を持つ、複合ゾルに加えた。ゾルを、不織布のガラス繊維強化相に流し込み、ゲルを得た。エアロゲル材料を、0.5wt/容積%のNH3を含有するエタノールエージング流体中で、10時間以上エージングした。試験片を超臨界CO2で溶媒抽出して、次いで、約180℃で従来法の加熱で乾燥した。
【0104】
得られたエアロゲル材料は、約45wt%のエアロゲルと、55wt%の繊維とであり、約0.16~0.20g/ccの期待材料密度を得た(0.07~0.08g/ccのエアロゲル密度を与えた)。
【0105】
例5
EtOH及びH2O中で酸性触媒を用いてTEOSを加水分解することで、ポリエチルシリケートゾルを製造し、6時間以上周辺温度で撹拌した。EtOH及びH2O中で酸性触媒を用いてMTESを加水分解することで、ポリメチルシルセスキオキサンゾルを製造し、次いで、6時間以上周辺温度で撹拌した。ポリエチルシリケート(TEOS)ゾルとポリメチルシルセスキオキサン(MTES)ゾルとを組み合わせて、約10~11wt%の有機含有量を持つエアロゲルを得た。酸化鉄、炭化チタン、珪藻土、マンガンフェライト又は鉄チタン酸化物を、別のバッチの複合ゾルに組み入れた。複合ゾルを1時間以上撹拌した。
【0106】
0.5MのNH4OHを、0.07~0.08g/ccの最終エアロゲルの目標密度を持つ、複合ゾルに加えた。ゾルを、不織布のガラス繊維強化相に流し込み、ゲルを得た。エアロゲル材料を、0.5wt/容積%のNH3を含有するエタノールエージング流体中で、10時間以上エージングした。試験片を超臨界CO2で溶媒抽出して、次いで、約180℃で従来法の加熱で乾燥した。
【0107】
得られたエアロゲル材料は、約45wt%のエアロゲルと、55wt%の繊維とであり、約0.16~0.20g/ccの期待材料密度を得た(0.07~0.08g/ccのエアロゲル密度を与えた)。
【0108】
例6
EtOH及び1mMのシュウ酸水溶液中で、TEOSと有機シラン疎水性物質とを共加水分解することで、ゾルを得た。有機シラン疎水性物質の共前駆体を、以下、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、トリメチルエトキシシラン(TMES)、エチルトリエトキシシラン(ETES)、及びフェニルトリエトキシシラン(PhTES)から選択することができる。この例では、PhTESを有機シラン疎水性物質として使用した。EtOH:H2O:シュウ酸のモル比を、1mMのシュウ酸として水と共に導入されたシュウ酸で、5:7:1.26×10-4で一定に保った。TEOSとPhTESとのモル比を提供して、それぞれの場合において、8.0wt%と9.0wt%の疎水性有機含有量と、目標密度は0.07~0.08g/ccであったとを持つエアロゲルを得た。これらの2つの配合物についてのゾル成分のモル比は、それぞれ、0.0719:1:8.98:12.57:2.26×10-4及び0.0825:1:9.18:12.85:2.31×10-4のPhTES:TEOS:EtOH:H2O:シュウ酸であった。
【0109】
ゾルを15分間撹拌して、次いで、繊維強化相に流し込み、60℃のオーブンでゲルを得た。60℃で21~33時間の硬化の後、エアロゲル材料を、3:1の流体:ゲル比で、0.8wt/容積%のNH3を含有するエタノールエージング流体中において68℃で22時間エージングした。試験片を超臨界CO2で溶媒抽出して、次いで、110℃で2時間乾燥した。
【0110】
繊維強化相は、9ミクロン径の繊維を持ち、約3.8オンス/平方フィートの密度を持つ約10mm厚のシリカPD綿であった。得られたエアロゲル材料は、約45wt%のエアロゲルと、55wt%の繊維とであり、約0.16~0.20g/ccの期待材料密度を得た(0.07~0.08g/ccのエアロゲル密度を与えた)。
【0111】
例7
1mMのシュウ酸水溶液の触媒で、MeOH中でTEOSとPhTESとを共加水分解することで、ゾルを作った。MeOH:H2O:シュウ酸のモル比を、1mMのシュウ酸として水と共に導入されたシュウ酸で、66:7:1.26×10-4で一定に保った。全ての配合物について、目標密度は0.07~0.08g/ccであった。PhTES含有量を変えて、7.0、11.0、又は19.0wt%の目標有機含有量を持つエアロゲルを得た。これらの配合物についてのゾル成分のモル比は、それぞれ、1:0.062:16.57:1.76:3.16×10-5、1:0.105:18.15:1.93:3.47×10-5、及び1:0.217:22.18:2.35:4.24×10-5のTEOS:PhTES:MeOH:H2O:シュウ酸であった。ゾルを28℃で24時間撹拌した。
【0112】
加水分解したゾルをゲル化するために、前工程中の1モルごとのH2Oに対して追加の1モルのH2Oを加える量で、1MのNH4OHを加えた。これは、7.0、11.0、及び19.0wt%の有機配合物について、それぞれ、TEOS1モルあたり0.0316、0.0347、又は0.0424モルのNH4OHをもたらす。ゾルを3分間撹拌して、次いで、繊維強化相に流し込み、28度でゲルを得た。ゲルを2日間室温で硬化して、次いで、24時間ごとに新しいエタノールで4日間エタノール浴に浸した。試験片を超臨界CO2で溶媒抽出して、次いで、110℃で2時間乾燥した。
【0113】
繊維強化相は、9ミクロン径の繊維を持ち、約3.8オンス/平方フィートの密度を持つ約10mm厚のシリカPD綿であった。得られたエアロゲル材料は、約45wt%のエアロゲルと、55wt%の繊維とであり、約0.16~0.20g/ccの期待材料密度を得た(0.07~0.08g/ccのエアロゲル密度を与えた)。
【0114】
例8
MeOH中で、86mMのNH4OH触媒を用いてテトラメチルオルソシリケート(TMOS)とPhTESとを共加水分解することで、ゾルを作った。溶媒と触媒との間のモル比を、86mMのNH4OHとして水と共に導入されたNH4OHで、11:5:3.7×10-3のMeOH:H2O:NH4OHで一定に保った。全ての配合物について、目標密度は0.07~0.08g/ccであった。PhTES含有量を変えて、7.0、11.0、又は19.0wt%の目標有機含有量を持つエアロゲルを得た。これらの配合物についてのゾル成分のモル比は、それぞれ、1:0.062:16.61:7.55:5.59×10-3、1:0.105:18.04:8.20:6.07×10-3、及び1:0.217:21.78:9.90:7.33×10-3のTMOS:PhTES:MeOH:H2O:NH4OHであった。
【0115】
ゾルを15分間撹拌して、次いで、繊維強化相に流し込み、ゲルを得た。ゲルを3日間室温で硬化して、次いで、24時間ごとに新しいエタノールで4日間エタノール浴に浸した。試験片を超臨界CO2で溶媒抽出して、次いで、110℃で2時間乾燥した。
【0116】
繊維強化相は、9ミクロン径の繊維を持ち、約3.8オンス/平方フィートの密度を持つ約10mm厚のシリカPD綿であった。得られたエアロゲル材料は、約45wt%のエアロゲルと、55wt%の繊維とであり、約0.16~0.20g/ccの期待材料密度を得た(0.07~0.08g/ccのエアロゲル密度を与えた)。
【0117】
例9
EtOH及びH2O中で、1MのHCl触媒を用いてTEOSと1,2-ビス(トリエトキシリル)エタン(BTESE)とを共加水分解することで、ゾルを作った。7.0、8.0、又は9.0wt%の有機含有量を持つエアロゲルを、それぞれ、1:0.223:13.84:3.46:2.42×10-3、1:0.275:15.04:3.76:2.63×10-3、及び1:0.334:16.24:4.06:2.84×10-3のTEOS:BTESE:EtOH:H2O:HClのモル比を使用することで得た。それぞれの場合において、BTESE含有量を変えつつ、溶媒と触媒との間の比を8:2:1.4×10-3のEtOH:H2O:HClで一定に保った。ゾルを60℃で4時間撹拌して、次いで、室温に冷却した。加水分解中にゾルの容積が約3%減少し、EtOHを加えてゾルをその元の容積に戻した。
【0118】
加水分解したゾルをゲル化するために、最終成形ゲルが8.0容積%の0.5MのNH4OHを含有し、最終エアロゲルの目標密度が0.07~0.08g/ccであるように、希釈したNH4OHを加えた。ゾルを繊維強化相に流し込み、ゲルを得た。約1時間の硬化の後、エアロゲル材料を、3:1の流体:ゲル比で、0.8wt/容積%のNH3を含有するエタノールエージング流体中において68℃で約16時間エージングした。試験片を超臨界CO2で溶媒抽出して、次いで、110℃で2時間乾燥した。
【0119】
繊維強化相は、9ミクロン径の繊維を持ち、約3.8オンス/平方フィートの密度を持つ約10mm厚のシリカPD綿であった。得られたエアロゲル材料は、約45wt%のエアロゲルと、55wt%の繊維とであり、約0.16~0.20g/ccの期待材料密度を得た(0.07~0.08g/ccのエアロゲル密度を与えた)。
【0120】
例10
Kグレードのケイ酸ナトリウムを前駆体として使用して、それは質量で2.88のSiO2:Na2O比を含み、31.7wt%のSiO2と11wt%のNa2Oとを含有していた。ケイ酸ナトリウム前駆体を、最初に水で希釈して、次いで、32%のH2SO4に加えた。得られた溶液は、酸性化ゾル中に10.34wt%のSiO2と、1.34MのNa+と、1.50MのH+とを含んでいた。H2SO4とNa2SiO3との両方を氷浴中で10℃に冷却して、次いで、Na2SiO3を高速撹拌しながらH2SO4溶液にゆっくり加えた。ゲル化を避けるために温度が12度を超えないような速度で、この発熱性の追加を行った。ゾルを4℃に冷却して、いくらかのNa2SO4・10H2Oの沈殿を促進した。溶液の温度を4℃に維持した。
【0121】
THFを、6.72wt%のSiO2が最終ゾル内に含まれるまでの量で加えて、それによってNa2SO4をさらに沈殿させた。沈殿したNa2SO4を真空濾過で素早く除去して、NaClを、ゾルが飽和するまで、濾過されたゾル溶液に加えた。NaClは、水性相と有機相との分離を引き起こす。95%のH2Oを有機相から除去し、100%のSiO2を有機相に分配した。約0.18gSiO2/mLの期待固形物含有量で、有機相を隔離した。ゾル中の成分のモル比が1(Si):6.256(EtOH):0.975(H2O):4.115(THF)であるように、エタノールをTHF層の容積の104%に等しい量で加えた。
【0122】
MTES前駆体ゾル溶液を調製して、それは、2.7のH2O:Si(モル比)を持つ69.4wt%のMTESと、EtOHで希釈した70mMの酢酸(99.7%)とを含み、それは26wt%の期待固形物含有量[SiO1.5(CH3)]を提供した。MTES:EtOH:H2O:HOAcのモル比は、1:0.624:2.703:0.0199であった。ゾルを魔法瓶中で5時間撹拌し、次いで、冷却により急冷した。
【0123】
85.9容積%のケイ酸ゾル(1a)と14.1容積%のMTES(1b)とを組み合わせて2時間撹拌して、7.0wt%の期待疎水性有機含有量を持つ、31.4wt%の期待最終エアロゲル塊が疎水成分から生じた(MTESからのSiO1.5CH3)。
【0124】
触媒としての希釈水酸化アンモニウム(水中で2.5容積%の28%NH4OH)及びEtOHを加えることで、ゲルを0.07~0.08g/ccの目標密度で成形した。67容積%のゾル溶液と、21容積%のEtOHと、12容積%の触媒流とを使用した(数秒間にわたって加えた)。触媒を追加した後、ゾルを300rpmで30秒間撹拌して、次いで、繊維強化相に流し込み、ゲルを得た。約1時間の硬化の後、エアロゲル材料を、3:1の流体:ゲル比で、0.8wt/容積%のNH3を含有するエタノールエージング流体中において68℃で約16時間エージングした。試験片を超臨界CO2で溶媒抽出して、次いで、110℃で2時間乾燥した。
【0125】
繊維強化相は、9ミクロン径の繊維を持ち、約3.8オンス/平方フィートの密度を持つ約10mm厚のシリカPD綿であった。得られたエアロゲル材料は、約45wt%のエアロゲルと、55wt%の繊維とであり、約0.16~0.20g/ccの期待材料密度を得た(0.07~0.08g/ccのエアロゲル密度を与えた)。
【0126】
例11
Kグレードのケイ酸ナトリウムを使用して、それは質量で2.88のSiO2:Na2Oを有し、31.7wt%のSiO2と11wt%のNa2Oとを含有し、1.48g/mLの密度を有した。それを、希釈された溶液が22.1wt%の元の水ガラス(7.0wt%のSiO2)を含有するように、最初に水で希釈した。希釈ケイ酸ナトリウムを、アンバーライトNa+樹脂を通すことでイオン交換を行った。次いで、得られたケイ酸を、H2Oと1MのNH4OHとを追加することでゲル化して、希釈液H2Oと触媒流とを、それぞれ、最終ハイドロゾルの6.9容積%と0.4容積%とに分配した。ゾルを、300rpmで30秒間撹拌して、繊維強化相に流し込みゲル化した。Si:H2O:NH3のモル比は1:47.8:0.0016であり、目標シリカエアロゲルの密度は0.07~0.08g/ccであった。ゲルを50℃で3時間エージングした。エタノールとの溶媒交換を36時間で3回行い、次いで、エタノールを36時間で3回ヘキサンと交換した。
【0127】
繊維強化相は、9ミクロン径の繊維を持ち、約3.8オンス/平方フィートの密度を持つ約10mm厚のシリカPD綿であった。得られたエアロゲル材料は、約45wt%のエアロゲルと、55wt%の繊維とであり、約0.16~0.20g/ccの期待材料密度を得た(0.07~0.08g/ccのエアロゲル密度を与え、疎水処理を含まない)。
【0128】
以下の疎水性シリル化剤:メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、フェニルトリメトキシシラン(PhTMS)、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)、又はジメチルジメトキシシラン(DMDMS)のうちの1つで、ウェットゲルの疎水処理を行った。ゲルのシラン化を、4:1の流体:ゲル比を使用して、20容積%の疎水性物質を含有するヘキサン浴中において50℃で24時間行った。流体中の疎水性物質とゲル中のSiとのモル比は、どの疎水性物質を使用したかに応じて、2.8~5.0の範囲であった。ゲルを24時間で2回ヘキサンを用いて洗浄して、次いで、超臨界CO2で溶媒抽出して、次いで、110℃で2時間乾燥した。
【0129】
例12
シュウ酸触媒の存在下で、EtOHで希釈して、TEOSの加水分解及び縮合によってシリカゲルを調製した。TEOS:EtOH:H2O:シュウ酸のモル比は、1mMのシュウ酸として水と共に導入されたシュウ酸で、1:7.60:10.64:1.92×10-4であった。目標シリカエアロゲルの密度は0.07~0.08g/ccであった。ゾルを15分間撹拌して、次いで、繊維強化相に流し込み、60℃のオーブン中でゲルを得た。
【0130】
繊維強化相は、9ミクロン径の繊維を持ち、約3.8オンス/平方フィートの密度を持つ約10mm厚のシリカPD綿であった。得られたエアロゲル材料は、約45wt%のエアロゲルと、55wt%の繊維とであり、約0.16~0.20g/ccの期待材料密度を得た(0.07~0.08g/ccのエアロゲル密度を与え、疎水処理を含まない)。
【0131】
ゲルをメタノール中で20容積%の疎水性反応剤を含有する浴に移動して、4:1の流体:ゲル比を使用して45℃で24時間加熱した。疎水性反応剤は、以下、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、エチルトリエトキシシラン(ETES)、又はフェニルトリエトキシシラン(PhTES)のうちの1つである。流体中の疎水性物質とゲル中のSiとのモル比は、どの疎水性物質を使用したかに応じて2.8~4.8の範囲であった。次いで、ゲルを45℃で6時間おきに、3回EtOHで洗浄して、次いで、超臨界CO2で溶媒抽出して、次いで、110℃で2時間乾燥した。
【0132】
例13
例1、2、6、7、8、及び9では、各例において期待されたエアロゲル材料(3.0~5.0wt%の複合体)中に約7.0~9.0wt%の疎水性有機含有量を持つエアロゲル組成物を製造した。例4では、エアロゲル材料(4.0~6.0wt%の複合体)中に約9.0~11.0wt%の疎水性有機含有量を持つエアロゲル組成物を製造した。例7及び8ではまた、エアロゲル材料(6.0~9.0wt%の複合体)中に約11.0~19.0wt%のPhTES疎水性有機含有量を持つエアロゲル組成物を製造した。例3及び5では、調整された製造条件(疎水性材料の量、時間、温度など)下で、エアロゲル材料中に約9.0~11.0wt%の疎水性有機含有量を持つエアロゲル組成物を製造することができる。例10~12では、調整された製造条件(疎水性材料の量、時間、温度など)下で、エアロゲル材料中に約7.0~9.0wt%の疎水性有機含有量を持つエアロゲル組成物を製造することができる。
【0133】
例1、2、6、7、8及び9において製造された試料、並びに、炭化ケイ素粉末を含む例4において製造された試料を、200℃~700℃の範囲の処理温度の選択値に達するまで10℃/分の温度ランプ速度で、N2下において管状炉中で熱処理した。処理時間が完了した後、炉を5℃/分の冷却ランプで冷却することができ、試料を除去した。
【0134】
処理された試料は、例2からの7%のMTES試料;例1からのNaSiO3CH3試料;例9からの7%、8%及び9%のBTESE試料;例6からの8%及び9%のPhTES試料;例7からの11%及び19%のPhTES試料;並びに例8からの7%、11%及び19%のPhTES試料を含んでいた。試料を、200℃~700℃の範囲の様々な温度下で、10秒間~1時間の範囲の時間熱処理した。475℃で10分間及び525℃で10分間処理した試料を追加の試験のために選択した。
【0135】
ステンレス鋼フォイルバッグ中の各バッチから試料試験片を密閉し、450℃~800℃の様々な温度で、60分間以下の時間で事前加熱された不活性炉中にバッグを入れることによって、二酸化チタン粉末を含む例4において製造された試料を熱処理した。
【0136】
例4からの処理された試料(二酸化チタン粉末又は炭化ケイ素粉末)は、粉末材料によって(S=炭化ケイ素、T=二酸化チタン)、熱処理温度によって(450~800)、及び処理時間によって(0~60)、本開示中で特定される。
【0137】
7%、8%及び9%のBTESEからの試料の熱処理は、約475℃で開始した分解の兆候を示した。PhTESからの試料の熱処理は全て、400℃超の高い温度での不安定なフェニル種の兆候を示した。
【0138】
例14
表1は例13からの処理されたエアロゲル複合体試料の密度の測定値を示す。密度の測定はASTM C167に従って行った。全ての複合体のエアロゲル試料は0.216g/cc未満の密度が測定された。
【0139】
例15
表1は、例13からの処理されたエアロゲル複合体試料についての熱伝導度(TC)の測定値を示す。TCの測定は、ASTM C177に従って、約37.5℃の温度、及び2psiの圧縮(8×8試料)又は8psiの圧縮(4×4試料)で行った。
【0140】
全ての処理されたエアロゲル複合体試料は、31.6mW/mK以下の熱伝導度の測定値を有した。
【0141】
例16
約7.0~8.0wt%の疎水性有機含有量を持つエアロゲル組成物は、典型的に、製造の際に親水性であると予測され、約350wt%以上のC1511の期待水吸収値(周辺条件で15分間の浸水下)を持つ。
【0142】
表1は、例13からの処理されたエアロゲル複合体試料についての、減酸素熱処理前後の両方での液水吸収の測定値を示す。全ての測定を、ASTM C1511に従って行った(周辺条件で15分間の浸水下)。
【0143】
7%のMTESと7%のNaSiO3CH3との両方についての処理前試料は、400wt%水吸収超の液水吸収の測定値を有した。7%、8%及び9%のBTESEの全てについての処理前試料は、340wt%水吸収超の液水吸収の測定値を有した。PhTES材料全てについての処理前試料は、280%液水吸収超の測定値を有した。
【0144】
7%のMTESについての処理後試料は、約0.0wt%水吸収の液水吸収の測定値を有し、それは7%のMTESについての処理前試料より低かった。7%のNaSiO3CH3についての処理後試料は、(475℃で10分間熱処理したサンプルに対して)約81wt%水吸収の液水吸収の測定値を有した。BTESEについての全ての処理後試料は、290wt%水吸収超の液水吸収の測定値を有した。PhTESについての全ての処理後試料は、約275wt%水吸収の液水吸収の測定値を有した。
【0145】
例17
表1は、例13からの処理されたエアロゲル複合体試料についての、減酸素熱処理前後の両方での燃焼熱(HOC)の測定値を示す。HOC測定は、ISO1716測定標準に一致した条件に従って行った。
【0146】
7%のMTESについての処理前試料は約600cal/gのHOCの測定値を有し、処理後試料(525℃で10分間熱処理された)は約425cal/gのHOCの測定値を有した。7%のNaSiO3CH3についての処理前試料は約415cal/gのHOCの測定値を有し、処理後試料(525℃で10分間熱処理された)は約140cal/gのHOCの測定値を有した。9%のBTESEについての処理前試料は約780cal/gのHOCの測定値を有し、9%のBTESEについての処理後試料(525℃で10分間熱処理された)は約285cal/gHOCの測定値を有した。9%のPhTES(例3-1からの)についての処理前試料は約437cal/gのHOCの測定値を有し、処理後試料(525℃で10分間熱処理された)は約144cal/gのHOCの測定値を有した。7%のPhTES(例3-3からの)についての処理前試料は約351cal/gのHOCの測定値を有し、処理後試料(400℃で10分間熱処理された)は約120cal/gのHOCの測定値を有した。11%のPhTES(例3-3からの)についての処理前試料は約403cal/gのHOCの測定値を有し、処理後試料(400℃で10分間熱処理された)は約110cal/gのHOCの測定値を有した。
【0147】
例18
図1は、例13からの7%のMTES試料についての、525℃で10分間の減酸素熱処理前後の両方でのCP/MAS29Si固体状態NMR分析を示す。
【0148】
7%のMTESについての処理前試料は約0.463のT1-2:T3比と、約1.961のQ2-3:Q4比とを示した。7%のMTESについての処理後試料は約0.272のT1-2:T3比と、約0.842のQ2-3:Q4比とを示した。重なったピークは、個々に比を得るために、統合されたピークを畳み込みを解いて得た(デコンボリューションした)。
【0149】
例19
図2は、例13からの7%のMTES試料と、7%のNaSiO3CH3試料と、9%のBTESE試料と、9%のPhTES(例3-1)試料とについての、525℃で10分間の減酸素熱処理前後のTGA/DSC分析を示す。TGA/DSC分析を、20℃/分のランプ速度で、周辺温度から1000℃までの範囲の温度について行った。
【0150】
表1は、図2に示されたTGA/DSC分析のプロットに基づいて、処理前試料についての熱分解開始点の温度(℃)を示す。
【0151】
7%のMTESについての処理後試料(525℃で10分間熱処理された)は約545℃のTdの測定値を有した。7%のNaSiO3CH3についての処理後試料(525℃で10分間熱処理された)は約600℃のTdの測定値を有した。9%のBTESEについての処理後試料(525℃で10分間熱処理された)は約460℃のTdの測定値を有した。9%のPhTESについての処理後試料(525℃で10分間熱処理された)は約595℃のTdの測定値を有した。
【0152】
【表1】
【0153】
本明細書で使用される場合、別段の記載がない限り、接続詞「及び(and)」は包括的であることが意図され、接続詞「又は(or)」は排他的であることが意図されない。例えば、語句「又は、代替的に(or,alternatively)」は排他的であることが意図される。
【0154】
本開示で記載している内容において(特に、特許請求の範囲の内容において)、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」という用語、又は類似の指示対象は、別段の記載がないか又は文脈により明確に否定されない限り、単数及び複数の両方を含むと解されるべきである。
【0155】
「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、別段の記載がない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)として解されるべきである。
【0156】
本明細書で使用される場合、「約(about)」という用語は、示したような特定の性質、組成物、量、値又はパラメータついて典型的である変位、例えば、実験誤差、測定誤差、近似誤差、計算誤差、平均値からの標準偏差、日々の微調整に基づく変位の程度を言い表す。
【0157】
本明細書中の値の範囲の記述は、別段の記載がない限り、その範囲内にあるそれぞれの別個の値を個々に言い表す省略方法として提供されることが単に意図され、それぞれの別個の値は、それが本明細書に個々に示されるように、本明細書中に組み込まれる。
本開示には以下に例示する実施形態も開示される。
[実施形態1]
a)シリカゲル前駆体材料及び溶媒を含む前駆体溶液を提供する工程と、
b)前記前駆体溶液を繊維強化材料と組み合わせる工程と、
c)前記前駆体溶液中の前記シリカゲル前駆体材料をゲル組成物に遷移させて、繊維強化シリカ系ゲル複合体を形成する工程と、
d)前記繊維強化シリカ系ゲル複合体から溶媒の少なくとも一部を抽出して、第1繊維強化シリカ系エアロゲル複合体を得る工程と、
e)前記第1繊維強化シリカ系エアロゲル複合体を、500~700℃の温度で減酸素雰囲気中で1つ又は複数の熱処理にさらして、第2繊維強化シリカ系エアロゲル複合体を得る工程と
を含み、工程e)の前に、少なくとも1つの疎水結合ケイ素を前記第1繊維強化シリカ系エアロゲル複合体に組み入れることをさらに含み、
前記第2繊維強化シリカ系エアロゲル複合体が、40wt%以下の液水吸収を有する、方法。
[実施形態2]
少なくとも1つの疎水結合ケイ素を含む第1繊維強化シリカ系エアロゲル複合体を、500~700℃の温度で減酸素雰囲気中で1つ又は複数の熱処理にさらして、第2繊維強化シリカ系エアロゲル複合体を得ることを含む方法であって、前記第2繊維強化シリカ系エアロゲル複合体が、以下の性質、i)40wt%以下の液水吸収と、ii)500℃以上の疎水性有機材料の熱分解開始点とを有する、方法。
[実施形態3]
前記第2繊維強化シリカ系エアロゲル複合体が以下の性質、iii)717cal/g以下の燃焼熱と、iv)15mW/M・K~40mW/M・Kの熱伝導度とを有する、実施形態1又は2に記載の方法。
[実施形態4]
前記繊維強化材料がシート状の繊維強化材料を含む、実施形態1~3のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態5]
あらゆるエアロゲル複合体の減酸素雰囲気中でのあらゆる熱処理が、700℃未満の温度に制限される、実施形態1~4のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態6]
前記第2繊維強化シリカ系エアロゲル複合体が、1wt%~15wt%の疎水性有機含有量を有する、実施形態1~5のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態7]
前記第2繊維強化シリカ系エアロゲル複合体が、前記第1繊維強化シリカ系エアロゲル複合体に比べて低い液水吸収を有する、実施形態1~6のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態8]
前記第2繊維強化シリカ系エアロゲル複合体が40wt%以下の液水吸収を有し、以下の性質、ii)500℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点、又はiii)265cal/g~717cal/gの燃焼熱のうち1つ又は複数を有する、実施形態1~7のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態9]
前記第2繊維強化シリカ系エアロゲル複合体が40wt%以下の液水吸収を有し、以下の性質、ii)525℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点、又はiii)265cal/g~600cal/gの燃焼熱のうち1つ又は複数を有する、実施形態1~7のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態10]
前記第2繊維強化シリカ系エアロゲル複合体が40wt%以下の液水吸収を有し、以下の性質、ii)550℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点、又はiii)265cal/g~550cal/gの燃焼熱のうち1つ又は複数を有する、実施形態1~7のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態11]
前記第2繊維強化シリカ系エアロゲル複合体が40wt%以下の液水吸収を有し、以下の性質、ii)575℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点、又はiii)265cal/g~500cal/gの燃焼熱のうち1つ又は複数を有する、実施形態1~7のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態12]
シリカ系骨格を含む繊維強化エアロゲル複合体であって、モノリス型エアロゲル材料を含み、以下の性質、i)40wt%以下の液水吸収と、ii)500℃以上の疎水性有機材料の熱分解開始点とを有する、繊維強化エアロゲル複合体。
[実施形態13]
以下の性質、iii)717cal/g以下の燃焼熱を有する、実施形態12に記載の繊維強化エアロゲル複合体。
[実施形態14]
シート状の繊維強化材料を含む、実施形態12又は13に記載の繊維強化エアロゲル複合体。
[実施形態15]
以下の性質、i)40wt%以下の液水吸収と、ii)500℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点と、iii)265cal/g~717cal/gの燃焼熱と、iv)15mW/M・K~40mW/M・Kの熱伝導度とを有する、実施形態12~14のいずれか1項に記載の繊維強化エアロゲル複合体。
[実施形態16]
以下の性質、ii)525℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点、又はiii)265cal/g~600cal/gの燃焼熱のうち1つ又は複数を有する、実施形態12~15のいずれか1項に記載の繊維強化エアロゲル複合体。
[実施形態17]
以下の性質、ii)550℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点、又はiii)265cal/g~550cal/gの燃焼熱のうち1つ又は複数を有する、実施形態12~15のいずれか1項に記載の繊維強化エアロゲル複合体。
[実施形態18]
以下の性質、ii)575℃~635℃の疎水性有機材料の熱分解開始点、又はiii)265cal/g~500cal/gの燃焼熱のうち1つ又は複数を有する、実施形態12~15のいずれか1項に記載の繊維強化エアロゲル複合体。
[実施形態19]
前記繊維強化エアロゲル複合体中の疎水性有機含有量が1wt%~15wt%である、実施形態12~18のいずれか1項に記載の繊維強化エアロゲル複合体。
[実施形態20]
前記シリカゲル前駆体材料が、トリメチルメトキシシラン[TMS]、ジメチルジメトキシシラン[DMS]、メチルトリメトキシシラン[MTMS]、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン[DMDS]、メチルトリエトキシシラン[MTES]、エチルトリエトキシシラン[ETES]、ジエチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン及びヘキサエチルジシラザンから選択される、実施形態1~11のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態21]
前記シリカゲル前駆体材料が、トリメチルメトキシシラン[TMS]、ジメチルジメトキシシラン[DMS]、メチルトリメトキシシラン[MTMS]、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン[DMDS]、メチルトリエトキシシラン[MTES]、エチルトリエトキシシラン[ETES]、ジエチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン及びヘキサエチルジシラザンから選択される、実施形態12~19のいずれか1項に記載の繊維強化エアロゲル複合体。
[実施形態22]
前記第2繊維強化シリカ系エアロゲル複合体が添加剤を含む、実施形態1~11及び20のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態23]
添加剤をさらに含む、実施形態12~19及び21のいずれか1項に記載の繊維強化エアロゲル複合体。
図1
図2