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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】温度管理装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 16/00 20060101AFI20230214BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230214BHJP
   F28F 3/00 20060101ALI20230214BHJP
   F28D 1/03 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
F25D16/00
F25D11/00 101B
F28F3/00 311
F28D1/03
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021099545
(22)【出願日】2021-06-15
(65)【公開番号】P2022190977
(43)【公開日】2022-12-27
【審査請求日】2022-07-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519242078
【氏名又は名称】株式会社XEN GROUP
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】名越 和法
(72)【発明者】
【氏名】高畑 洋輔
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162967(JP,A)
【文献】特開2008-082591(JP,A)
【文献】特開平10-170124(JP,A)
【文献】特開平04-104879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 16/00
F25D 11/00
F28F 3/00
F28D 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化圧縮型の冷気循環サイクルを利用した温度管理装置であって、
温度管理対象物を収容する収容部と、
目標温度の冷気を生成する温度調整制御部と、
前記温度調整制御部により前記目標温度に調整された調整冷気を前記収容部へ送る送風部と、
を備え、
前記温度調整制御部は、
前記目標温度よりも低い温度の基本冷気を生成する基本冷気生成部と、
所定温度の塩水相当品を生成する冷却準備ユニットと、
前記冷却準備ユニットから供給された前記塩水相当品の少なくとも一部を保持し、前記基本冷気生成部から供給された前記基本冷気と接触することにより前記調整冷気を生成する熱交換機と、
を有し、
前記熱交換機は、貫通孔を有する複数の金属板が所定間隔で並んで積層された積層体を有し、前記貫通孔に前記塩水相当品を収容することにより前記塩水相当品を保持し、前記金属板の表面において前記基本冷気生成部から供給された前記基本冷気と接触することにより前記調整冷気を生成することを特徴とする温度管理装置。
【請求項2】
前記塩水相当品の前記所定温度は、摂氏-1℃以上、摂氏-0.5℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の温度管理装置。
【請求項3】
前記塩水相当品は、所定濃度の液体状態の塩水、前記塩水が凝固した固体状態の塩水氷、および前記塩水と前記塩水氷との混合物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の温度管理装置。
【請求項4】
前記所定濃度は、0.05質量%以上、1質量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の温度管理装置。
【請求項5】
前記金属板は、前記基本冷気の流れの上流側および下流側のいずれか一方から前記上流側および前記下流側のいずれか他方に向かって前記基本冷気の流れに交差する方向の幅が広くなる形状を有することを特徴とする請求項に記載の温度管理装置。
【請求項6】
前記積層体は、
前記上流側から前記下流側に向かって前記幅が広くなる前記複数の金属板が前記所定間隔で積層された第1積層体と、
前記下流側から前記上流側に向かって前記幅が広くなる前記複数の金属板が前記所定間隔で積層された第2積層体と、
を含み、
前記第1積層体と前記第2積層体とは、前記基本冷気の流れに交差する方向に沿って互いに並んで配置されたことを特徴とする請求項に記載の温度管理装置。
【請求項7】
前記温度管理対象物は、食品類であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の温度管理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食品等の温度管理対象物を所定の温度で管理する温度管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生鮮食品などの食品類の品質保持の方法として、環境温度を低温に保つ冷蔵庫等の装置内で食品類の保管を行う方法が主に用いられている。従来の冷蔵庫や冷却装置などでは、装置内の環境温度を低温に管理することが重要とされている。つまり、従来の冷蔵庫や冷却装置などは、装置内の環境温度を低温に制御することで、装置内に収納した食品類の品質の維持・管理を行うことを重視した装置である。
【0003】
例えば冷気を利用して食品類を保存する場合、食品類の品質の管理は、一般的に、定温・チルド・冷蔵・冷凍・超低温の5つの温度帯のうち食品類の種類に適した温度帯に冷却された保管場所において行われる。定温とは、約10℃以上、20℃以下の一定の温度をいう。チルドとは、凍結寸前の温度まで冷却して保存することをいう。JIS9607(冷蔵庫規格)では、チルドの温度は、0℃付近とされている。冷蔵とは、0℃前後から15℃程度までの温度で保存することをいう。このように、定温・チルド・冷蔵のいずれにおいても、温度の幅は、とても広く曖昧である。
【0004】
また、食品類には、生鮮食品をはじめとする多くの種類が存在している。そのため、食品類の鮮度的品質を重視した管理方法では、多くの付加価値を得ることができる。そこで、本発明者は、食品類を提供する方法や食品類を保存する環境などを含め、食品類をコントロール(制御)する方法こそが、本来の品質管理であると考えた。ここで求められる品質には、味、香り、色彩、テクスチャーなどのおいしさに関する官能的特性も含まれる。
【0005】
食品類の場合には、一般的に良いと考えられている栄養成分が食品類に含まれていても、用途によっては多量の栄養成分が食品類に含まれていることが良いとは限らないことが多い。食品類の加工においても、食品類の個体すなわち加工前の素材の品質的価値が失われることで、加工後の食品類の品質が低下することがある。本発明者の得た知見によれば、品質の良い加工品は、品質の良い素材から加工される。このように、食肉類・魚介類・野菜果物類などの食品類の品質を保つことが重要である一方で、従来の冷蔵庫、冷却装置、冷凍装置および解凍装置などは、食品類の品質を十分には保持できない状況にある。
【0006】
例えば特許文献1には、蓄冷室と、貯蔵室と、空気温度センサと、送風機と、を備えた蓄冷装置が開示されている。蓄冷室には、蓄冷体が収納されている。貯蔵室は、蓄冷室と連通可能に仕切られ、蓄冷体の冷熱によって保冷される。空気温度センサは、蓄冷室又は貯蔵室に配置され、空気の温度を検出する。送風機は、蓄冷体によって冷却された空気を貯蔵室に循環させる。特許文献1に記載された蓄冷装置では、空気温度センサによって検知された貯蔵室内の空気の温度情報は、制御装置へ送信される。そして、制御装置は、貯蔵室内の温度を冷凍温度帯や冷蔵温度帯に維持するように送風機の動作を制御する。
【0007】
しかし、前述したように、例えば特許文献1に記載された蓄冷装置のような従来の冷蔵庫や冷却装置などは、食品類の保管環境温度を重視した装置であり、温度センサを使用した温度制御方法あるいは温度管理方法を一般的に採用している。温度センサのみを用いた温度制御方法あるいは温度管理方法では、安定制御や比例動作のために時間がかかり、装置内の環境温度の変動が大きい。装置内の環境温度の変動が大きいと、食品類の中で特に生鮮食品の品質が不安定になり、食品類の品質を維持可能な期間が短縮される。
【0008】
すなわち、従来の冷蔵庫や冷却装置などでは、装置内の環境温度が設定された場合であっても、装置内の上部面(すなわち天井面)と、装置内の下部面(すなわち床面)と、の間に温度差がある。また、装置内の平均温度を示す温度センサの設定温度に対して、装置内の環境温度の変動が大きい。本発明者の得た知見によれば、食品類自体を冷やす目的の冷蔵庫や冷却装置などは少なく、装置内の環境温度を下げる目的の冷蔵庫や冷却装置などが多い原因の1つとしては、温度センサのみで装置内の環境温度を制御することが挙げられる。
【0009】
従来の冷蔵庫や冷却装置などでは、装置内の環境温度を検知する温度センサの検知温度が目的温度に達した時点で、冷却動作が停止する。その後、装置内の環境温度が上昇し、温度センサの検知温度が設定温度を過ぎた時点で、冷却動作が動き始める。このように、従来の冷蔵庫や冷却装置などは、冷却動作の循環サイクル(すなわちON・OFF制御)を実行している。これにより、食品類側から見ると、食品類に触れる冷気の温度に変動が生じている。本発明者の得た知見によれば、従来の冷蔵庫や冷却装置などにおける装置内の環境温度の変動は、4℃以上となり食品類の品質に影響を与えている。
【0010】
そこで、本発明者は、食品類の品質保持においては、装置内の環境温度を下げることではなく、食品類自体の個体温度を均等に保つことが望ましいと考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2019-086175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、食品類等の温度管理対象物の温度を均等に保ち、温度管理対象物の品質を保持できる温度管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題は、気化圧縮型の冷気循環サイクルを利用した温度管理装置であって、温度管理対象物を収容する収容部と、目標温度の冷気を生成する温度調整制御部と、前記温度調整制御部により前記目標温度に調整された調整冷気を前記収容部へ送る送風部と、を備え、前記温度調整制御部は、前記目標温度よりも低い温度の基本冷気を生成する基本冷気生成部と、所定温度の塩水相当品を生成する冷却準備ユニットと、前記冷却準備ユニットから供給された前記塩水相当品の少なくとも一部を保持し、前記基本冷気生成部から供給された前記基本冷気と接触することにより前記調整冷気を生成する熱交換機と、を有することを特徴とする本発明に係る温度管理装置により解決される。
【0014】
本発明に係る温度管理装置は、気化圧縮型の冷気循環サイクルを利用した装置であり、収容部と、温度調整制御部と、送風部と、を備える。収容部は、温度管理対象物を収容する。温度調整制御部は、目標温度の冷気を生成する。送風部は、温度調整制御部により目標温度に調整された調整冷気を収容部へ送る。ここで、温度調整制御部は、基本冷気生成部と、冷却準備ユニットと、熱交換機と、を有する。基本冷気生成部は、目標温度よりも低い温度の基本冷気を生成する。冷却準備ユニットは、所定温度の塩水相当品を生成する。熱交換機は、冷却準備ユニットから供給された塩水相当品の少なくとも一部を保持する。そして、熱交換機は、基本冷気生成部から供給された基本冷気と接触することにより、基本冷気生成部により生成された基本冷気の温度よりも高い温度の調整冷気を生成する。
【0015】
本発明に係る温度管理装置は、気化圧縮型の冷気循環サイクルを応用した基本冷気により、装置内の環境温度を低温に整える装置である。通常であれば、冷気が放出される場所は、装置内の冷却部である。これに対して、本発明に係る温度管理装置では、収容部から区分けされた温度調整制御部において、熱交換機が、熱交換機能により熱流の密度的な熱容量の制御を行う。すなわち、温度調整制御部の熱交換機は、冷気循環サイクルの動作中(すなわち冷却動力ONサイクル時)において、保持した塩水相当品を凝固させ、基本冷気生成部から供給された基本冷気の冷熱を蓄積する。一方で、温度調整制御部の熱交換機は、冷気循環サイクルの停止中(すなわち冷却動力OFFサイクル時)において、保持した塩水相当品を融解させ、蓄積した冷熱を放出して収容部の温度上昇を抑える。ここで、熱交換機に保持された塩水相当品は、冷却準備ユニットにより生成された所定温度の塩水相当品であり、凝固点降下を生じさせる。このように、温度調整制御部の熱交換機は、冷気制御の補佐的役割を有し、塩水相当品を使用することで凝固点降下を生じさせ、塩水相当品の融解および凝固を特定の温度で繰り返し行う。そのため、本発明に係る温度管理装置は、熱交換機の熱交換機能により、温度センサのみで収容部の環境温度を制御する場合と比較して収容部の環境温度の変動を抑え、収容部の環境温度を略均等に維持することができる。これにより、本発明に係る温度管理装置は、温度管理対象物の温度を均等に保ち、温度管理対象物の品質を保持できる。
【0016】
本発明に係る温度管理装置において、好ましくは、前記塩水相当品の前記所定温度は、摂氏-1℃以上、摂氏-0.5℃以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る温度管理装置によれば、塩水相当品の所定温度は、摂氏-1℃以上、摂氏-0.5℃以下である。これにより、熱交換機は、摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度の冷気を保有した状態になり、摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度の調整冷気を生成することができる。そして、目標温度として摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度の温度に調整された調整冷気は、送風部により収容部へ送られる。そのため、収容部の環境温度は、摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度に整えられる。また、収容部に収容された温度管理対象物の温度は、摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度に整えられる。
【0018】
これにより、例えば温度管理対象物が食品類である場合、本発明に係る温度管理装置は、収容部に収容された食品類に氷結物が生ずることを抑え、保管状態にあった食品類の昇温を速やかに行うことができる。また、本発明に係る温度管理装置は、食品類の個体全体を均等な氷点下以下の温度状態に整えることができるため、例えば生鮮食品類について高い品質を保持することができる。
【0019】
本発明に係る温度管理装置において、好ましくは、前記塩水相当品は、所定濃度の液体状態の塩水、前記塩水が凝固した固体状態の塩水氷、および前記塩水と前記塩水氷との混合物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る温度管理装置によれば、塩水相当品は、所定濃度の液体状態の塩水であってもよく、所定濃度の塩水が凝固した固体状態の塩水氷であってもよく、所定濃度の塩水と所定濃度の塩水が凝固した塩水氷との混合物であってもよい。これにより、塩水相当品は、凝固点降下をより確実に生じさせることができる。また、冷却準備ユニットは、所定濃度の塩水相当品を容易に生成し、適正量の塩水相当品を分割して熱交換機に容易に供給することができる。
【0021】
本発明に係る温度管理装置において、好ましくは、前記所定濃度は、0.05質量%以上、1質量%以下であることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る温度管理装置によれば、塩水相当品の濃度は、0.05質量%以上、1質量%以下である。これにより、塩水相当品は、凝固点降下をより確実に生じさせることができる。そして、塩水相当品の温度は、摂氏-1℃以上、摂氏-0.5℃以下により確実に設定される。
【0023】
本発明に係る温度管理装置において、好ましくは、前記熱交換機は、貫通孔を有する複数の金属板が所定間隔で並んで積層された積層体を有し、前記貫通孔に前記塩水相当品を収容することにより前記塩水相当品を保持し、前記金属板の表面において前記基本冷気生成部から供給された前記基本冷気と接触することにより前記調整冷気を生成することを特徴とする。
【0024】
本発明に係る温度管理装置によれば、熱交換機は、複数の金属板が所定間隔で並んで積層された積層体を有する。金属板は、貫通孔を有する。熱交換機は、金属板に形成された貫通孔に塩水相当品を収容することにより塩水相当品を保持する。そして、熱交換機は、金属板の表面において基本冷気生成部から供給された基本冷気と接触することにより調整冷気を生成する。そのため、熱交換機は、積層体として積層された複数の金属板の表面において効率的に基本冷気と接触し熱交換を行うことができる。
【0025】
本発明に係る温度管理装置において、好ましくは、前記金属板は、前記基本冷気の流れの上流側および下流側のいずれか一方から前記上流側および前記下流側のいずれか他方に向かって前記基本冷気の流れに交差する方向の幅が広くなる形状を有することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る温度管理装置によれば、積層体の金属板は、基本冷気の流れの上流側および下流側のいずれか一方から基本冷気の上流側および下流側のいずれか他方に向かって基本冷気の流れに交差する方向の幅が広くなる形状を有する。そのため、積層体の金属板は、基本冷気の流れを阻害することを抑えつつ、金属板の表面において効率的に基本冷気と接触し熱交換を行うことができる。
【0027】
本発明に係る温度管理装置において、好ましくは、前記積層体は、前記上流側から前記下流側に向かって前記幅が広くなる前記複数の金属板が前記所定間隔で積層された第1積層体と、前記下流側から前記上流側に向かって前記幅が広くなる前記複数の金属板が前記所定間隔で積層された第2積層体と、を含み、前記第1積層体と前記第2積層体とは、前記基本冷気の流れに交差する方向に沿って互いに並んで配置されたことを特徴とする。
【0028】
本発明に係る温度管理装置によれば、積層体は、第1積層体と、第2積層体と、を含む。第1積層体では、基本冷気の流れの上流側から下流側に向かって幅が広くなる複数の金属板が所定間隔で積層されている。第2積層体では、基本冷気の流れの下流側から上流側に向かって幅が広くなる複数の金属板が所定間隔で積層されている。そして、第1積層体と第2積層体とは、基本冷気の流れに交差する方向に沿って互いに並んで配置されている。これにより、第1積層体および第2積層体のそれぞれの金属板は、基本冷気の流れを阻害することを抑えつつ、金属板の表面においてより一層効率的に基本冷気と接触し熱交換を行うことができる。
【0029】
本発明に係る温度管理装置において、好ましくは、前記温度管理対象物は、食品類であることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る温度管理装置によれば、熱交換機能により食品類の個体温度を表層面から中心部分まで全てを均等に整えることができる。また、収容部に食品類を収納することにより、微生物による作用(すなわち腐敗・発酵)、食品類中の酵素による分解作用、酸化などの科学的作用、乾燥などの物理的作用、吸収や蒸散などの食品自体の生理活性作用などを緩和し、食品類の品質の保持期間を延長することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、食品類等の温度管理対象物の温度を均等に保ち、温度管理対象物の品質を保持できる温度管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態に係る温度管理装置を表す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る温度管理装置を表すブロック図である。
図3】本実施形態の温度調整制御部を表す斜視図である。
図4】本実施形態の熱交換機を表す斜視図である。
図5】本実施形態の熱交換機を図4に表した矢印A35に沿って眺めたときの平面図である。
図6】本発明者が実施した検討の結果の一例を表す表である。
図7】本発明者が実施した検討の結果の一例を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係る温度管理装置を表す平面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る温度管理装置を表すブロック図である。
なお、図1に表した実線の矢印A41は、高濃度塩水および塩水相当品の流れを表している。図1に表した破線の矢印A42は、基本冷気および調整冷気の流れを表している。
【0035】
本実施形態に係る温度管理装置2は、冷却装置あるいは冷蔵庫などと呼ばれ、食肉類・魚介類・野菜果物類などの食品類のような温度管理対象物を収容し所定の温度で管理する装置である。温度管理装置2は、例えば業務用の冷却装置あるいは冷蔵庫などに利用される。
【0036】
図1および図2に表したように、温度管理装置2は、気化圧縮型の冷気循環サイクル6を利用した装置であり、収容部3と、温度調整制御部4と、排気ファン51と、吸気ファン52と、を備える。本実施形態の排気ファン51は、本発明の「送風部」の一例である。
【0037】
収容部3は、例えばアルミニウムやステンレスなどの金属により形成された外壁および内壁と、外壁と内壁との間に設けられ発泡材などにより形成された断熱材と、を有し、食肉類・魚介類・野菜果物類などの食品類のような温度管理対象物を内部に収容する。収容部3の内部は、装置内あるいは庫内などと呼ばれる。後述するように、収容部3の内部の環境温度は、摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度に整えられる。
【0038】
温度調整制御部4は、収容部3から区分けされた状態で収容部3の外部に設けられている。図2に表したように、温度調整制御部4は、冷却準備ユニット41と、熱交換機42と、蒸発器62と、を有する。本実施形態の蒸発器62は、本発明の「基本冷気生成部」の一例であり、冷気循環サイクル6に含まれる。
【0039】
冷気循環サイクル6は、気化圧縮型の冷凍サイクルであり、蒸発器62と、圧縮機611と、凝縮器612と、膨張弁613と、を有する。本実施形態に係る温度管理装置2では、圧縮機611、凝縮器612および膨張弁613は、室外機61として温度調整制御部4の外部に設けられている。一方で、前述したように、蒸発器62は、温度調整制御部4の一部として設けられている。
【0040】
冷気循環サイクル6は、蒸発器62と圧縮機611と凝縮器612と膨張弁613とがこの順に冷媒配管により接続された閉回路を形成している。
圧縮機611は、図2に表した矢印A21のように蒸発器62から冷媒配管を通して供給された低温・低圧のガスを圧縮する。そして、図2に表した矢印A22のように、圧縮機611は、高温・高圧のガスを冷媒配管を通して凝縮器612に供給する。
凝縮器612は、圧縮機611から供給された高温・高圧のガスの熱を外部に放出し、高温・高圧のガスを液化させる。そして、図2に表した矢印A23のように、凝縮器612は、常温・高圧の液体を冷媒配管を通して膨張弁613に供給する。
膨張弁613は、凝縮器612から供給された常温・高圧の液体を減圧させる。そして、図2に表した矢印A24のように、膨張弁613は、低温・低圧の気液混合冷媒(すなわちガスと液体とが混合した状態の冷媒)を冷媒配管を通して蒸発器62に供給する。
【0041】
蒸発器62は、膨張弁613から供給された低温・低圧の気液混合冷媒の熱を吸収し、低温・低圧の気液混合冷媒を蒸発させる。そして、図2に表した矢印A11のように、蒸発器62は、吸気ファン52から送られた風により熱交換機42に向かって基本冷気71を放出する。本実施形態に係る温度管理装置2において、蒸発器62から放出される基本冷気71の温度は、例えば約摂氏-10℃程度である。また、図2に表した矢印A21のように、蒸発器62は、低温・低圧のガスを冷媒配管を通して圧縮機611に供給する。
【0042】
冷気循環サイクル6の動作は、制御装置53により制御される。具体的には、制御装置53は、温度センサ31から送信された検知信号に応じて冷気循環サイクル6の動作を制御する。温度センサ31は、収容部3の内部に設置されており、収容部3の内部の環境温度を検知し、環境温度に関する検知信号を制御装置53に送信する。制御装置53は、温度センサ31から送信された検知信号に基づく環境温度が設定温度以上である場合には、冷気循環サイクル6の動作を実行する(冷却動力ONサイクル)。冷気循環サイクル6の動作中(すなわち冷却動力ONサイクル時)において、蒸発器62は、基本冷気71を放出する。一方で、制御装置53は、温度センサ31から送信された検知信号に基づく環境温度が設定温度未満である場合には、冷気循環サイクル6の動作を停止する(冷却動力OFFサイクル)。冷気循環サイクル6の停止中(すなわち冷却動力OFFサイクル時)において、蒸発器62は、基本冷気71の放出を停止する。
【0043】
冷却準備ユニット41は、高濃度塩水備蓄タンク411と、チューブポンプ412と、水道水吸入バルブ413と、濃度調整シリンダ414と、塩水冷却機415と、塩水相当品転送装置416と、を有し、所定温度の塩水相当品を生成する。本実施形態の塩水相当品は、所定濃度の液体状態の塩水、前記塩水が凝固した固体状態の塩水氷、および前記塩水と前記塩水氷との混合物の少なくともいずれかを含む。すなわち、塩水相当品は、所定濃度の液体状態の塩水であってもよく、所定濃度の塩水が凝固した固体状態の塩水氷であってもよく、所定濃度の塩水と所定濃度の塩水が凝固した塩水氷との混合物であってもよい。
【0044】
高濃度塩水備蓄タンク411は、濃度調整シリンダ414により調整される塩水相当品の濃度よりも高い濃度の塩水を備蓄する。高濃度塩水備蓄タンク411に対する高濃度塩水の供給は、手動で行われてもよく、自動で行われてもよい。
【0045】
チューブポンプ412は、図2に表した矢印A1のように、高濃度塩水備蓄タンク411から高濃度塩水を吸引する。そして、チューブポンプ412は、高濃度塩水の計量を行い、図2に表した矢印A2のように所定量を高濃度塩水を濃度調整シリンダ414に供給する。
【0046】
水道水吸入バルブ413は、例えば水道管や水道水備蓄タンクなどに接続された開閉弁であり、図2に表した矢印A3のように、弁を開くことにより適量の水道水を濃度調整シリンダ414に供給する。一方で、水道水吸入バルブ413は、弁を閉じることにより濃度調整シリンダ414に対する水道水の供給を停止する。
【0047】
濃度調整シリンダ414は、チューブポンプ412から供給された高濃度塩水と、水道水吸入バルブ413から供給された水道水と、を用いて所定濃度の塩水相当品を生成する。塩水相当品の濃度は、凝固点が凝固点降下により所定温度まで低下するような濃度に設定される。本実施形態に係る温度管理装置2において、濃度調整シリンダ414により調整される塩水相当品の所定濃度は、0.05質量%以上、1質量%以下である。つまり、濃度調整シリンダ414は、チューブポンプ412から供給された高濃度塩水と、水道水吸入バルブ413から供給された水道水と、を用いて0.05質量%以上、1質量%以下の濃度の塩水相当品を生成する。そして、図2に表した矢印A4のように、濃度調整シリンダ414は、所定濃度に調整した塩水相当品を塩水冷却機に供給する。
【0048】
塩水冷却機415は、濃度調整シリンダ414から供給された塩水相当品を用いて、所定温度の塩水相当品を生成する。本実施形態に係る温度管理装置2において、塩水冷却機415により調整される塩水相当品の温度は、摂氏-1℃以上、摂氏-0.5℃以下である。つまり、塩水冷却機415は、例えば塩水製氷機などの機能を有し、濃度調整シリンダ414から供給された塩水相当品を用いて摂氏-1℃以上、摂氏-0.5℃以下の温度の塩水相当品を生成する。塩水冷却機415により生成された塩水相当品は、前述したように、所定濃度の液体状態の塩水であってもよく、所定濃度の塩水が凝固した固体状態の塩水氷であってもよく、所定濃度の塩水と所定濃度の塩水が凝固した塩水氷との混合物であってもよい。そして、図2に表した矢印A5のように、塩水冷却機415は、所定温度に調整した塩水相当品を塩水相当品転送装置416に供給する。
【0049】
塩水相当品転送装置416は、図2に表した矢印A6のように、塩水冷却機415から供給された所定温度および所定濃度の塩水相当品72を熱交換機42に送る。前述したように、塩水相当品72の所定温度は、摂氏-1℃以上、摂氏-0.5℃以下である。また、塩水相当品72の所定濃度は、0.05質量%以上、1質量%以下である。
【0050】
熱交換機42は、塩水相当品転送装置416から供給された塩水相当品72の少なくとも一部を保持する。また、熱交換機42は、塩水相当品72を保持した状態で、蒸発器62から供給された基本冷気71と接触する。前述したように、蒸発器62から熱交換機42に供給される基本冷気71の温度は、例えば約摂氏-10℃程度である。
【0051】
ここで、熱交換機42は、塩水相当品72を保持しているため、塩水相当品72の温度帯(例えば約摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度)の領域を形成している。言い換えれば、熱交換機42は、塩水相当品72の温度帯(例えば約摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度)の冷気を常に保有した状態にある。さらに言い換えれば、熱交換機42は、塩水相当品72の温度帯(例えば約摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度)の熱源を準備した状態にある。これにより、熱交換機42は、塩水相当品転送装置416から供給された塩水相当品72の少なくとも一部を保持した状態で、蒸発器62から供給された基本冷気71と接触することにより、目標温度に調整された調整冷気73を生成する。調整冷気73の目標温度は、例えば約摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度である。
【0052】
熱交換機42は、冷気循環サイクル6の動作中(すなわち冷却動力ONサイクル時)において、保持した塩水相当品72を凝固させ、蒸発器62から供給された基本冷気71の冷熱を蓄積する。一方で、熱交換機42は、冷気循環サイクル6の停止中(すなわち冷却動力OFFサイクル時)において、保持した塩水相当品72を融解させ、蓄積した冷熱を放出する。このように、熱交換機42は、冷気制御の補佐的役割を有し、塩水相当品72を使用することで凝固点降下を生じさせ、塩水相当品72の融解および凝固を特定の温度で繰り返し行う。
【0053】
排気ファン51は、図2に表した矢印A12のように、熱交換機42により目標温度に調整された調整冷気73を吸引する。本実施形態に係る温度管理装置2では、2つの排気ファン51が設けられている。なお、排気ファン51の設置数は、特に限定されるわけではなく、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。そして、排気ファン51は、図2に表した矢印A13のように、熱交換機42から吸引した調整冷気73を収容部3の内部へ送る。これにより、収容部3の環境温度は、例えば約摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度に整えられる。
【0054】
吸気ファン52は、図2に表した矢印A13のように、収容部3の内部の冷気を吸引する。本実施形態に係る温度管理装置2では、2つの吸気ファン52が設けられている。なお、吸気ファン52の設置数は、特に限定されるわけではなく、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。そして、吸気ファン52は、図2に表した矢印A14のように、収容部3の内部から吸引した冷気を蒸発器62に向かって送る。前述したように、吸気ファン52から蒸発器62に向かって送られた風により、蒸発器62は、熱交換機42に向かって基本冷気71を放出する。
【0055】
次に、本実施形態の温度調整制御部4を、図面を参照してさらに説明する。
図3は、本実施形態の温度調整制御部を表す斜視図である。
図4は、本実施形態の熱交換機を表す斜視図である。
図5は、本実施形態の熱交換機を図4に表した矢印A35に沿って眺めたときの平面図である。
【0056】
図1および図2に関して前述したように、塩水冷却機415は、摂氏-1℃以上、摂氏-0.5℃以下の所定温度に調整した塩水相当品を塩水相当品転送装置416に供給する。図3に表した矢印A31のように、塩水相当品転送装置416は、モータ417から減速機構を介して伝達された回転力によりスクリューを回転させ、塩水冷却機415から供給された塩水相当品72を熱交換機42に送る。
【0057】
ここで、本実施形態の熱交換機42は、第1積層体421と第2積層体422とを有する。本実施形態の第1積層体421および第2積層体422のそれぞれは、本発明の「積層体」の一例である。言い換えれば、本実施形態の第1積層体421および第2積層体422は、本発明の「積層体」に含まれる。第1積層体421の構造は、第2積層体422の構造と同様である。そのため、本実施形態では、第1積層体421を例に挙げ、熱交換機42が有する積層体を説明する。
【0058】
図4および図5に表したように、第1積層体421は、複数の金属板423を有する。金属板423は、金属の中で比較的高い熱伝導率を有する例えば銅やアルミニウムなどにより形成されている。すなわち、金属板423は、いわゆる良導体である。なお、金属板423の材料は、銅およびアルミニウムに限定されるわけではない。第1積層体421は、複数の金属板423が所定間隔で並んで積層された構造を有する。具体的には、互いに隣り合う2つの金属板423の間には、スペーサ426が設置されている。これにより、図5に表したように、複数の金属板423は、所定間隔で並んで積層されている。
【0059】
金属板423は、金属板423を板厚方向に貫通した貫通孔424を有する。複数の金属板423が所定間隔で並んで積層されているため、第1積層体421は、全体として略筒状を呈する。塩水相当品転送装置416から供給された塩水相当品72は、第1積層体421の内部すなわち貫通孔424に収容される。このように、第1積層体421は、貫通孔424に塩水相当品72を収容することにより塩水相当品72を保持する。
【0060】
図4に表したように、金属板423は、基本冷気71の流れの上流側および下流側のいずれか一方から基本冷気71の流れの上流側および下流側のいずれか他方に向かって基本冷気71の流れに交差する方向(図4に表した矢印A32参照)の幅が広くなる形状を有する。具体的には、第1積層体421の金属板423では、基本冷気71の流れの上流側から下流側に向かって基本冷気71の流れに交差する方向(図4に表した矢印A32参照)の幅が広くなっている。一方で、第2積層体422の金属板423では、基本冷気71の流れの下流側から上流側に向かって基本冷気71の流れに交差する方向(図4に表した矢印A32参照)の幅が広くなっている。
【0061】
第1積層体421と第2積層体422とは、基本冷気71の流れに交差する方向に沿って互いに並んで配置されている。図3に表したように、本実施形態の温度調整制御部4では、3つの第1積層体421と、3つの第2積層体422と、が設けられている。そして、第1積層体421と第2積層体422とが、基本冷気71の流れに交差する方向に沿って交互に配置されている。なお、第1積層体421と第2積層体422とのそれぞれの設置数は、3つに限定されるわけではなく、2つ以下であってもよく、4つ以上であってもよい。
【0062】
熱交換機42は、塩水相当品転送装置416から供給された塩水相当品72を金属板423の貫通孔424に収容し保持した状態で、金属板423の表面425において蒸発器62から供給された基本冷気71と接触することにより調整冷気73を生成する。
【0063】
具体的に説明すると、金属板423の貫通孔424に保持された塩水相当品72は、互いに隣り合う2つの金属板423の隙間を通り、金属板423の表面425を伝う。これにより、金属板423の表面425付近には、塩水相当品72の温度帯(例えば約摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度)が形成される。言い換えれば、熱交換機42は、塩水相当品72の温度帯(例えば約摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度)の冷気を常に保有した状態にある。さらに言い換えれば、熱交換機42は、塩水相当品72の温度帯(例えば約摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度)の熱源を準備した状態にある。
【0064】
この状態において、冷気循環サイクル6の動作中には、基本冷気71が蒸発器62から導風部44(図3参照)により導かれて熱交換機42に供給され、金属板423の表面425と接触する。前述したように、基本冷気71の温度は、例えば約摂氏-10℃程度である。これにより、熱交換機42に保持された塩水相当品72が凝固する。すなわち、冷気循環サイクル6の動作中において、熱交換機42は、保持した塩水相当品72を凝固させ、蒸発器62から供給された基本冷気71の冷熱を蓄積する。そして、熱交換機42を通過した基本冷気71は、例えば約摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度の目標温度に調整された調整冷気73となる。調整冷気73は、排気ファン51により収容部3の内部に送られ、収容部3の内部の環境温度を低下させる。
【0065】
一方で、冷気循環サイクル6の停止中には、基本冷気71は、蒸発器62から供給されない。これにより、熱交換機42に保持された塩水相当品72が融解する。すなわち、冷気循環サイクル6の停止中において、熱交換機42は、保持した塩水相当品72を融解させ、蓄積した冷熱を放出する。熱交換機42から放出された冷気は、排気ファン51により収容部3の内部に送られ、収容部3の内部の環境温度の上昇を抑える。なお、図1に表した矢印A7のように、熱交換機42において融解した塩水相当品72の少なくとも一部は、温度調整制御部4において回収された後、配管43(図1および図3参照)を通して温度調整制御部4の外部に排出される。
【0066】
このように、熱交換機42は、冷気循環サイクル6の動作中に蒸発器62から放出された基本冷気71の冷熱を塩水相当品72の凝固により一旦蓄積し、冷気循環サイクル6の停止中に塩水相当品72の凝固物の融解により冷熱を放出することで、温度センサ31のみで収容部3の環境温度を制御する場合と比較して収容部3の環境温度の変動を抑える。これにより、本実施形態に係る温度管理装置2は、単位面積を流れる熱流の熱流束密度の熱容量を高めることができ、収容部3に保管された食品類自体に氷結物が発生することを抑えつつ、食品類自体の個体温度を氷点下以下の温度に均等に保つことができる。なお、アミノ酸やミネラルなどが食品類に含まれる水分に溶け込んでいるため、例えば摂氏-5℃以上、摂氏-1℃以下の範囲内で食品類自体に氷結物が発生する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る温度管理装置2によれば、収容部3から区分けされた温度調整制御部4において、熱交換機42が、熱交換機能により熱流の密度的な熱容量の制御を行う。すなわち、温度調整制御部4の熱交換機42は、冷気循環サイクル6の動作中(すなわち冷却動力ONサイクル時)において、保持した塩水相当品72を凝固させ、蒸発器62から供給された基本冷気71の冷熱を蓄積する。一方で、温度調整制御部4の熱交換機42は、冷気循環サイクル6の停止中(すなわち冷却動力OFFサイクル時)において、保持した塩水相当品72を融解させ、蓄積した冷熱を放出して収容部3の温度上昇を抑える。ここで、熱交換機42に保持された塩水相当品72は、冷却準備ユニット41により生成された所定温度の塩水相当品であり、凝固点降下を生じさせる。このように、温度調整制御部4の熱交換機42は、冷気制御の補佐的役割を有し、塩水相当品72を使用することで凝固点降下を生じさせ、塩水相当品72の融解および凝固を特定の温度で繰り返し行う。そのため、本実施形態に係る温度管理装置2は、熱交換機42の熱交換機能により、温度センサ31のみで収容部3の環境温度を制御する場合と比較して収容部3の環境温度の変動を抑え、収容部3の環境温度を略均等に維持することができる。これにより、本実施形態に係る温度管理装置2は、温度管理対象物の温度を均等に保ち、温度管理対象物の品質を保持できる。
【0068】
また、塩水相当品72の所定温度は、摂氏-1℃以上、摂氏-0.5℃以下である。これにより、熱交換機42は、摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度の冷気を保有した状態になり、摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度の調整冷気73を生成することができる。そして、目標温度として摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度の温度に調整された調整冷気73は、排気ファン51により収容部3へ送られる。そのため、収容部3の環境温度は、摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度に整えられる。また、収容部3に収容された温度管理対象物の温度は、摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度に整えられる。
【0069】
これにより、例えば温度管理対象物が食品類である場合、本実施形態に係る温度管理装置2は、収容部3に収容された食品類に氷結物が生ずることを抑え、保管状態にあった食品類の昇温を速やかに行うことができる。また、本実施形態に係る温度管理装置2は、食品類の個体全体を均等な氷点下以下の温度状態に整えることができるため、例えば生鮮食品類について高い品質を保持することができる。
【0070】
また、塩水相当品72は、所定濃度の液体状態の塩水であってもよく、所定濃度の塩水が凝固した固体状態の塩水氷であってもよく、所定濃度の塩水と所定濃度の塩水が凝固した塩水氷との混合物であってもよい。これにより、塩水相当品72は、凝固点降下をより確実に生じさせることができる。また、冷却準備ユニット41は、所定濃度の塩水相当品72を容易に生成し、適正量の塩水相当品72を分割して熱交換機42に容易に供給することができる。
【0071】
また、塩水相当品72の濃度は、0.05質量%以上、1質量%以下である。これにより、塩水相当品72は、凝固点降下をより確実に生じさせることができる。そして、塩水相当品72の温度は、摂氏-1℃以上、摂氏-0.5℃以下により確実に設定される。
【0072】
また、熱交換機42は、複数の金属板423が所定間隔で並んで積層された積層体421、422を有する。金属板423は、貫通孔424を有する。熱交換機42は、金属板423に形成された貫通孔424に塩水相当品72を収容することにより塩水相当品72を保持する。そして、熱交換機42は、金属板423の表面425において蒸発器62から供給された基本冷気71と接触することにより調整冷気73を生成する。そのため、熱交換機42は、積層体421、422として積層された複数の金属板423の表面425において効率的に基本冷気71と接触し熱交換を行うことができる。
【0073】
積層体421、422の金属板423は、基本冷気71の流れの上流側および下流側のいずれか一方から基本冷気71の上流側および下流側のいずれか他方に向かって基本冷気71の流れに交差する方向(図4に表した矢印A32参照)の幅が広くなる形状を有する。そのため、積層体421、422の金属板423は、基本冷気71の流れを阻害することを抑えつつ、金属板423の表面425において効率的に基本冷気71と接触し熱交換を行うことができる。
【0074】
また、積層体421、422は、第1積層体421と、第2積層体422と、を含む。第1積層体421では、基本冷気71の流れの上流側から下流側に向かって幅が広くなる複数の金属板423が所定間隔で積層されている。第2積層体422では、基本冷気71の流れの下流側から上流側に向かって幅が広くなる複数の金属板423が所定間隔で積層されている。そして、第1積層体421と第2積層体422とは、基本冷気71の流れに交差する方向(図4に表した矢印A32参照)に沿って互いに並んで配置されている。これにより、第1積層体421および第2積層体422のそれぞれの金属板423は、基本冷気71の流れを阻害することを抑えつつ、金属板423の表面425においてより一層効率的に基本冷気71と接触し熱交換を行うことができる。
【0075】
さらに、温度管理対象物が食品類である場合には、本実施形態に係る温度管理装置2は、熱交換機能により食品類の個体温度を表層面から中心部分まで全てを均等に整えることができる。また、本実施形態に係る温度管理装置2は、収容部3に食品類を収納することにより、微生物による作用(すなわち腐敗・発酵)、食品類中の酵素による分解作用、酸化などの科学的作用、乾燥などの物理的作用、吸収や蒸散などの食品自体の生理活性作用などを緩和し、食品類の品質の保持期間を延長することができる。
【0076】
次に、本発明者が実施した検討の結果の一例を、図面を参照して説明する。
図6は、本発明者が実施した検討の結果の一例を表す表である。
図7は、本発明者が実施した検討の結果の一例を表すグラフである。
【0077】
本発明者は、本実施形態に係る温度管理装置2の収容部3に豚肩ロースを保管し、豚肩ロースの温度変化の過程を確認した。収容部3に保管した豚肩ロースの最小幅は、約10cm程度である。また、収容部3に保管した豚肩ロースの重さは、約2kg強である。本発明者は、豚肩ロースの中心部(最外形から内側に約5cm程度の部位)、豚肩ロースの赤身質(最外形から内側に約2.5cm程度の部位)、および豚肩ロースの脂身下(最外形から内側に約1.7cm程度の部位)にデータロガーの温度検知針を挿入した。データロガーの温度検知針の長さは、約5cm程度である。
【0078】
収容部3に豚肩ロースを収容してから経過した時間(分)と、豚肩ロースの各部位の温度(℃)と、の関係は、図6および図7に表した通りである。すなわち、収容部3に豚肩ロースを収容してから105分間が経過した時点で、豚肩ロースの3つの部位の温度が摂氏-0.5℃以上、摂氏-0.2℃以下に整えられた。また、収容部3に豚肩ロースを収容してから210分間が経過した時点で、豚肩ロースの3つの部位の温度が摂氏-0.7℃以上、摂氏-0.5℃以下に整えられた。
【0079】
本検討の結果の一例によれば、本実施形態に係る温度管理装置2は、収容部3に保管された豚肩ロースに氷結物が発生しない温度帯において、約2kg強の豚肩ロース自体の個体温度を氷点下以下の温度に略均等に保つことができた。
【0080】
以上説明したように、本実施形態に係る温度管理装置2は、食品類などの温度管理対象物自体が保有する熱を均等な温度に整えることができる。その均等な温度は、摂氏0℃以下である。この点が、本実施形態に係る温度管理装置2の特徴の一つである。本実施形態に係る温度管理装置2は、摂氏10℃以上、摂氏20℃以下の定温域から摂氏-50℃以下の超低温域にある食品類に応用可能であり、食品類の温度を摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度の温度範囲へ熱交換し変更することができる。
【0081】
本実施形態に係る温度管理装置2は、収容部3から区分けされた温度調整制御部4において、広い表面積を有する良導体(すなわち金属板423)を利用した熱交換機能により熱流の密度的、熱容量制御を行う装置である。本実施形態に係る温度管理装置2の熱交換機能により、温度センサのみで温度制御を行ったときに収容部の環境温度が大きく変動することを克服し、常に均等に近い温度環境を維持し、環境温度の上下幅を限りなく小さくすることを可能にした。また、収容部3の内部の平均温度が、摂氏0℃以下である。その低温の環境の中において、本実施形態に係る温度管理装置2は、食品類の個体自体に氷結物を発生させない機能特性を持つ装置である。
【0082】
例えば生鮮類食品などの品質を重視する物については、保管においての重要事項の一つとして、温度が挙げられる。そして、温度管理機能を正確に行う必要がある。本実施形態に係る温度管理装置2は、熱交換機能により食品の個体温度を、表層面から中心部分までの全てを均等に整えることができる。本実施形態に係る温度管理装置2は、収容部3に食品類を収納することにより、微生物による作用(腐敗・発酵)、食品類中の酵素による分解作用、酸化などの科学的作用、乾燥などの物理的作用、吸収や蒸散などの食品類自体の生理活性などを緩和し、品質保持期間の延長を可能とする。
【0083】
収容部3の内部において、食品類自体が保有していた温度を摂氏-0.8℃以上、摂氏0℃以下程度の範囲内で均等に整えられた食品は、氷結物の発生を抑えられる。本実施形態に係る温度管理装置2は、冷凍を行う前の事前冷却技術として利用されることで、優れた品質の冷凍技術として応用可能である。
【0084】
本実施形態に係る温度管理装置2では、単位面積を流れる熱流の熱流束密度の熱容量を高める工夫を施した。これにより、冷凍品の保管温度である摂氏-18℃以下から、超低温の摂氏-50℃以下の保管品に至るまでの食品類の全てを、摂氏0℃よりも低い温度で摂氏-1℃以上の温度に熱交換を行うことが可能である。そのため、冷凍保管状態にあった食品類の昇温を速やかに行うことができる。
【0085】
その機能を有する本実施形態に係る温度管理装置2は、解凍装置に類する装置である。本実施形態に係る温度管理装置2において行われる現象について、熱交換を行う熱容量の全ての温度が氷点下以下の温度であるため、冷凍状態にある食品類の昇温のみならず、食品類の内部に含まれ凝固した水分の融解による流出が起きない。本発明者の得た知見によれば、特に重量物などにおいて、冷凍保存物の解凍時や加重重圧等により起きる圧力ドリップ等の現象も、本実施形態に係る温度管理装置2を使用することで改善された。
【0086】
本実施形態に係る温度管理装置2は、氷点0℃以下の温度に収容部3の内部の環境温度を整える装置である。本実施形態に係る温度管理装置2は、従来の冷蔵庫類とは異なり、収容部3に収納した食品類の持つ温度も、摂氏-0.1℃以下の温度で均等に整えることができる。さらに、食品類自体に氷結物が発生しない状態、かつ、食品類の個体全体を均等な氷点0℃以下の温度状態に整えることができることは、生鮮食品類においての品質保持を行う上で有益である。
【0087】
食品類の凍結時における一般的な見解では、食品類内の水分が氷結晶になり始めると温度が一定に成り、食品類中の水分の全てが氷になった後に食品の温度が低下するとされている。これに対して、本実施形態に係る温度管理装置2は、食品類自体に氷結物が発生することを抑え、食品類自体の温度を均等に整えることができる全く新たな装置である。
【0088】
食品類の保管を行う際、品質維持の面から、菌類の増殖抑制は重要な要素である。そこで、本実施形態に係る温度管理装置2は、菌類が休眠する温度とされる摂氏0℃以下に食品類自体が持つ温度を下げることができる。
【0089】
本実施形態に係る温度管理装置2は、温度センサ31のOFFサイクルとなる冷気循環サイクル6の停止中には、食品類の温度上昇を抑え、さらに食品類自体から熱を奪い続けることができる。食品類の品質維持に必要な温度は、摂氏0℃付近であって摂氏0℃以下であることが望ましい。本実施形態に係る温度管理装置2は、食品類自体の個体全体温度を摂氏0℃以下に保つことができる。
【0090】
本実施形態に係る温度管理装置2は、熱交換機42の能力が高い装置である。熱交換機42の熱交換部(すなわち積層体421、422の金属板423)の表面積は広い。また、金属板423の表面積の広さと金属板423の厚み、さらには凝固点降下を得るための塩水相当品72の濃度で作り上げる熱流束密度が持つ機能により、本実施形態に係る温度管理装置2は、収容部3の内部の環境温度においても、野菜類の葉物や軟弱野菜等にも氷結物の発生が起きにくい限界的温度幅で精密な温度コントロールを可能とした。
【0091】
従来の考え方では、食品類の品種や、大小の形状を含む食品類個体全体を均等な温度に整える場合、食品類内に氷結物ができ始めることが均等な温度分布状態の完成とされていた。これに対して、本実施形態に係る温度管理装置2は、氷点下以下の温度まで装置内蓄積温度と食品類自体が保有する温度とを交換し、その温度が摂氏-0.5℃以下でありながら食品類自体には氷結物の発生が起きない機能特性を持つ。そして、本実施形態に係る温度管理装置2は、食品類自体の温度を氷点下以下の温度にし、均等に整えることができる機能を持つ。
【0092】
本発明者が本実施形態に係る温度管理装置2を用いることで得た知見によれば、生鮮食品類の食肉類・魚介類・野菜果物類の品質維持期間を通常よりさらに長く延ばすことができた。また、品質保持の意味で、本実施形態に係る温度管理装置2は、収容部3に収納する食品類の温度を均等に氷点下以下の温度域に保つことができるため、菌類の休眠する温度となり非常に効率の良い衛生基準を保つことが可能となった。
【0093】
また、食品類において摂氏0℃以下の均等な温度バランスが保たれるため、冷凍前に本実施形態に係る温度管理装置2を利用することで、食品類の事前冷凍装置として使用することができる。これにより、食品類の冷凍時の品質は、生鮮時により近い品質に保たれ、冷凍品質の向上が可能となった。すなわち、食品類自体の中心温度までの全ての温度を、摂氏-0.5℃以下の温度まで熱交換を行うことは、水の氷結時の氷結潜熱80Kcal/kgを除く段階の温度状態である。そのため、冷凍時の変性度を低下させることができる。
【0094】
摂氏-18℃以下で保存されている冷凍の食品素材、およびそれに類する冷凍保管品の解凍において、解凍温度を摂氏0℃以上の熱源を応用し熱交換速度を向上するような方法を用いられることがある。特に肉類や魚類などの大型の重量物や、マグロの様な大型の重量物の場合において、解凍における問題点は、解凍時に外層部の底面に大きく加重重圧が加わることで、圧力ドリップ等の流出による変質が生ずることである。
【0095】
これに対して、本実施形態に係る温度管理装置2を使用した場合には、同様の大型サイズの冷凍品を挿入した場合においても、収容部3の内部の環境温度は摂氏0℃以下であることから、氷結物の融解は起きない。そのため、大型サイズの加重重圧や冷凍時における体積変動に関する問題は、軽減される。また、大型食品類の表層面および底面の解凍は、促進されない。また、加重重圧が食品類個体の底面に集中することが原因で生ずる変質度は、軽減される。
【0096】
本実施形態に係る温度管理装置2において、収容部3の内部の環境温度は、氷点下以下の温度を基準とした温度帯である。そのため、水の融解は起きにくい。食品類の組織内に発生していた氷結物は、個体全体の温度が摂氏0℃に近い摂氏-0.8℃付近を目指し、昇温方向に進ませる。ゆえに、本実施形態に係る温度管理装置2は、解凍装置に類する物である。
【0097】
さらに、本実施形態に係る温度管理装置2は、食品類個体全体の温度を均等に整え、昇温させることが可能である。通常の食品類の場合、冷凍時の水分の凝固による固体膨張が起きる。そして、昇温時の摂氏-7℃~摂氏-5℃の付近の過程で、食品類に含まれていた水分の氷結物が融解と同時に食品固体から流出し始める。
【0098】
これに対して、本実施形態に係る温度管理装置2では、それぞれの場所的融解とは異なり、食品類個体全体の温度が均等に昇温進行する。そして、冷凍状態の食品類個体内で、水と他の養分とが凍結前の状態に似た、組織構成に準じた状況に変わる。そのため、食品類の組織内の安定が起きる。
【0099】
冷凍状態で保管されている食品類では、個体体積の膨張が水の氷結と共に起きている。その状態の温度を常温に近い温度に戻す(すなわち解凍する)過程において、食品類に含む水や、その他の養分が基の融和状態に近い現象を起こすことが望まれる。その現象では、食品類個体温度を均等に昇温し、食品類個体内を融解し、表層面を氷点下以下の温度で保つことが必要であると考えられた。
【0100】
本実施形態に係る温度管理装置2において、冷凍保管品の解凍に類する昇温過程におけるメカニズムとしては、まず収容部3の内部の平均温度が摂氏0℃以下であって摂氏-0.5℃以下である。また、熱交換機42が、常にOFFサイクル時も、熱を奪い続けることができる。通常の冷蔵庫では、冷気動力のON・OFFサイクルが温度センサで制御されているが、OFFサイクル時には、冷気動力の停止が起きる。
【0101】
これに対して、本実施形態に係る温度管理装置2の温度的制御は、冷気温度幅が制限された範囲で、同温度帯の密度を作りつつ熱容量を増やす内容である。本実施形態に係る温度管理装置2は、同温度帯の範囲で熱量を増やすことで、その温度帯に準ずる温度域の広まりが起きる目的を装置化した物である。
【0102】
本実施形態に係る温度管理装置2の作用により、通常の冷蔵庫類と比較して温度上下幅が極めて均等な誤差範囲の制御が行われる。また、塩水相当品72を含む水の融解や凝固・気化により、本実施形態に係る温度管理装置2は、想像以上の熱流束密度を作りだし、豊富な熱容量を持つことができる。
【0103】
食品類の価値は、安全で健康に良いことに加え、嗜好性においても食べて美味しく、見た目も美しいことにある。食品類には、水を含有していないものは存在しない。さらに、水の動態が、食品加工や食品の調理に深い関わりを持っている。要点は、時間と共に変化することにある。
【0104】
食品の品質、特に鮮度では、乾燥・吸湿・水分の増減・栄養成分・呈味成分の変化が、鮮度低下の生物的要因・科学的要因・物理的要因を起こすことに繋がる。さらに、その現象の基本的な原因は、環境条件による酸素濃度・温度・湿度・水分・光線・pH等によるものと考えられる。
【0105】
特に、生鮮物の品質を保つことにおいて、食品の保管環境を定温温度に維持する目的にあった冷蔵庫や冷却装置とは異なり、本実施形態に係る温度管理装置2は、収容部3に収納した食品類自体が持つ温度を氷点下以下(摂氏0℃以下)に保ちつつ、その食品類個体に氷結物を発生させない温度コントロールを目的にして保管を行う。その点において、本実施形態に係る温度管理装置2は、冷蔵庫や冷却装置とは異なる食品類の品質管理を行うことができる。
【0106】
本実施形態に係る温度管理装置2は、まず、食品類が保有する温度と、温度管理装置2が持つ温度と、を交換する特性を有する。収容部3に収容された食品類の全体温度が均等に摂氏0℃以下になるため、細菌類は休眠状態となり、収容部3での菌の増殖は激減する。これにより、生鮮食品の品質保持期間を確実に延長することが可能になる。そして、生鮮食品類の昨今話題となっている大型魚類や畜肉類のエージング(熟成)処理などに対してより優れた効果を得ることができる。食品類の全体温度が均等であるため、食品類個体内の水分の流動は起こらず、自己の酵素反応は緩やかに進行する。そのため、本実施形態に係る温度管理装置2は、変色や水分の増減、異種菌類の増殖等の問題を緩和し、さらに加熱歩留まり向上などの好影響をもたらす。
【0107】
イチゴ等の軟弱な食品における問題として、鮮度低下が早いため収穫した当日中にパック(包装、梱包)出荷を行わなければならなかった。そのため、サイズや品質での選別に充てる時間が短く、品質価値を統一することが難しい状況であった。これに対して、本実施形態に係る温度管理装置2を使用した場合では、品質維持期間の延長が可能となるため、より選別にかける時間も延長することが可能となる。仕分けを確実に行うことで、品質的な信頼度も向上し、出荷後の商品期間も保たれる。そのため、物流を含めて制限が緩和されるメリットは多い。
【0108】
果物や野菜類の場合、収穫者が自主的な判断により収穫のタイミングやその後の処理を判断している。野菜や果物の食味や、栄養面での最適期は個体各々で異なる。旬と呼ばれる時期は、地域性もあるが約1年間の四季におおよそ分類される。旬のものの品質を30日~90日にわたって維持することができると、新鮮で美味しい野菜や果物を必要かつ適正な量で供給することができる。これは、わが国の自給率が40%と低い問題に対して、廃棄率を低下させるという観点からの対策として非常に有益である。本実施形態に係る温度管理装置2は、旬のものの品質を30日~90日にわたって維持することができ、新鮮で美味しい野菜や果物を必要かつ適正な量で供給することができる。
【0109】
従来、生鮮食品等の品質維持に対して、保管環境温度を冷やす冷蔵庫や冷却装置が、保存中における食品類の品質変化を最小限に抑えるために用いられていた。これに対して、本実施形態に係る温度管理装置2は、食品類の個体全体の温度を、微生物の増殖を抑える摂氏0℃以下の温度に整えるという機能を有し、さらに品質管理の時間的延長を可能とする。これにより、本実施形態に係る温度管理装置2は、従来よりも緊急や急務をなくし、確実な管理体制を設けることが可能となり、生産、物流、消費のすべての段階においてコストや食品ロスの削減を図ることができる。
【0110】
食品類の成分は、酵素や微生物によって分解や腐敗して変化する。また、食品類の食味や栄養素は、酸化や乾燥などにより変敗する。本実施形態に係る温度管理装置2の機能は、食品類自体が持つ温度を、氷点下以下の温度まで熱交換を行い、その食品類個体全体の温度を均等に整えることである。
【0111】
理想的な食品類の保管温度は、チルド温度相当の食品類の氷結点を超えない温度帯である。事実上の理想的な保管温度は、摂氏0℃以下でありながら、個々の食品類の氷結点よりも微細に高い温度範囲と考えられる。また、理想的な食品類の保管方法は、食品類の個体内を未凍結状態で保つ方法である。本実施形態に係る温度管理装置2は、このような温度帯の保管温度および保管方法を実質的に達成することができる。
【0112】
一般的に、摂氏0℃は、温度の通過点である。そのため、摂氏0℃の範囲における温度の上下幅をなくし、食品類に氷結物を発生させない温度を維持する温度制御は、今日まで不可能とされていた。これに対して、本実施形態に係る温度管理装置2は、このような温度制御を可能とし、食品類の温度を表面から中心部まで均等に摂氏0℃以下までコントロールすることができる。これにより、食品類内水分が結合水になったかのように、水とタンパク質や炭水化物などの養分との分子運動が互いに束縛されているような現象が起こる。また、水が氷になる際の膨張も緩和された。その応用として、冷凍を行う前の事前冷却として本実施形態に係る温度管理装置2を用いることで、冷凍時の品質向上機能を確保できる。
【0113】
本実施形態に係る温度管理装置2は、以下のような機能特性を有する。すなわち、本実施形態に係る温度管理装置2は、食品類を温度的に安定させ、食品類の品質を長く保つ。収容部3に保管された食品の冷凍適正が向上し、保管中の変性度も少ない。本実施形態に係る温度管理装置2は、食品類の品質を生鮮品により近い品質を保つ。さらに、揚げ物・焼き物など調理加工済商品や、生鮮品よりも多くの糖質や塩分を含む水分活性値が少ない物などにおいては、非常に高品質な冷凍保管が可能になる。
【0114】
また、本実施形態に係る温度管理装置2は、冷凍保管状態にある食品類や、生物から調理加工品までに至る全ての低温保管品が持つ温度(例えば摂氏-18℃~摂氏-50℃以下)を摂氏0℃以下の氷点に極近い温度まで、均等な温度配分を維持しながら昇温することができる。
【0115】
また、あらゆる食品類の品質変化の問題において、水分の挙動は重要な要素の一つである。食品類物質内水分の挙動については、水の温度による比重変化を緩和することにより、食品の取り扱い方法をより簡略化することも可能となる。本実施形態に係る温度管理装置2は、保存期間を延長しつつ品質を維持することで、食品の価値をより向上させることができる。
【0116】
食品類を扱うにあたり、まずは安全であることが重要である。さらに、食品が本来持つ栄養や、色彩、食味、食感等の五感に及ぼす作用を含めて保持すべきである。食品類の定温保存で有効な低温度帯と、食品類の水分の挙動を束縛する温度帯と、が互いに重なるため、本実施形態に係る温度管理装置2は、長期保存と凍結による超長期保管とを高品質なままで実現することができる。
【0117】
以上のような食品類を使用する産業においては、本来食品類が持っている安全性と機能性との損失を無くすことが大切である。本実施形態に係る温度管理装置2は、本来食品類が持っている安全性と機能性との損失を無くすことができ、食品産業の大きな発展に寄与し、食品ロス(日本では612トン/年間)を低減することができる。
【0118】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0119】
2:温度管理装置、 3:収容部、 4:温度調整制御部、 6:冷気循環サイクル、 31:温度センサ、 41:冷却準備ユニット、 42:熱交換機、 43:配管、 44:導風部、 51:排気ファン、 52:吸気ファン、 53:制御装置、 61:室外機、 62:蒸発器、 71:基本冷気、 72:塩水相当品、 73:調整冷気、 411:高濃度塩水備蓄タンク、 412:チューブポンプ、 413:水道水吸入バルブ、 414:濃度調整シリンダ、 415:塩水冷却機、 416:塩水相当品転送装置、 417:モータ、 421:第1積層体、 422:第2積層体、 423:金属板、 424:貫通孔、 425:表面、 426:スペーサ、 611:圧縮機、 612:凝縮器、 613:膨張弁

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7