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特許7227325優れた光学特性を有するポリイミドフィルム
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  • 特許-優れた光学特性を有するポリイミドフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】優れた光学特性を有するポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230214BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G73/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021138690
(22)【出願日】2021-08-27
(65)【公開番号】P2022120772
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0016999
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504408236
【氏名又は名称】ドゥーサン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アン、キョンイル
(72)【発明者】
【氏名】イ、ホヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ダヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、トンヨン
(72)【発明者】
【氏名】シム、ジェヒョン
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112632(JP,A)
【文献】国際公開第2020/138645(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00- 5/02
5/12- 5/22
C08G73/00-73/26
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のジアミン、及び少なくとも1種の酸二無水物を含んで共重合されたポリイミドフィルムであって、
前記ジアミン及び前記酸二無水物のうちの少なくとも1つは、脂環族化合物を含み、
前記ジアミンは、フッ素化芳香族第1のジアミン及び脂環族ジアミンからなる群から選択される1種以上であり、
前記酸二無水物は、脂環族酸二無水物及び芳香族酸二無水物を含み、
前記芳香族酸二無水物は、非フッ素化芳香族第2の酸二無水物、及びスルホン系芳香族第3の酸二無水物からなる群から選択される1種以上であり
前記酸二無水物中の前記芳香族酸二無水物と前記脂環族酸二無水物の割合(モル比)は、30~90:10~70であり、
フィルム厚さ40μmを基準に、波長550nmでの厚さ方向位相差(Rth)は、300~1,200nmであり、面内方向位相差(R in )は、50~200nmであり、面内方向平均屈折率(n)は、1.60以下であり、
厚さ30~100μmにおいて、波長550nmでの透過率が、85%以上であり、ASTM E313-73規格に準拠した黄色度が、5以下であり、
50~250℃で測定した平均線膨張係数(CTE)は、30~45ppm/℃であり、ヤング率(Young’s Modulus)が、3~8GPaである、ポリイミドフィルム。
【請求項2】
前記脂環族酸二無水物は、次の化学式(1)又は化学式(2)で示される化合物である、請求項に記載のポリイミドフィルム。
【化1】
【化2】
(前記化学式(1)及び化学式(2)において、
A~Cは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、炭素数4~炭素数20である環状脂環族有機基であり、
Xは、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-(CH-(ここで、1≦p≦10)、-(CF-(ここで、1≦q≦10)、-C(CHC-、-(CFC-、及び-C(=O)NH-からなる群から選択され、
nは、0~2である。)
【請求項3】
前記ジアミン(a)と前記酸二無水物(b)とのモル数の比(a/b)は、0.7~1.3の範囲である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
ディスプレイ装置のカバーウィンドウに使用される、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドフィルムに関し、より詳しくは、厚さ方向位相差(Rth)、面内方向位相差(Rin)、及び面内方向平均屈折率が同時に低く調節されることで、視野角補償効果によって画面歪みが防止され、優れた視認性を確保するとともに、ディスプレイのカバーウィンドウに使用可能なポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(Liquid Crystal Display:LCD)、有機電界発光表示装置(Organic Light Emitting Display:OLED)などのようなディスプレイ装置の表面には、パネルを保護するためのカバーウィンドウが適用されている。従来、カバーウィンドウの材質としては、平坦度、耐熱性、耐化学性、及び水分や気体に対するバリヤー性能に優れ、かつ線膨張係数(CTE)が小さく、光透過率が高い強化ガラスが主に使用されている。
【0003】
近年、カーブドディスプレイや折り畳み式(in-folding)ディスプレイのようなフレキシブルディスプレイが開発されている。このようなフレキシブルディスプレイに適用されるためには、カバーウィンドウも柔軟性を有する必要があるが、従来、ガラス材質のカバーウajrkィンドウは、一般に重く、割れ易く、柔軟性に劣るため、フレキシブルディスプレイには適していない。
【0004】
上述のような問題点を解決するため、近来、比較的に成形性に富むプラスチック材質を用いたカバーウィンドウが提案されている。プラスチック材質を用いたカバーウィンドウは、軽量でかく割れ難く、種々にデザインを具現することができるという長所を有する。現在、カバーウィンドウ用プラスチック材料としては、主に透明性に優れたポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレートなどが使用されている。このような材料は、優れた透明性を有するという長所があるが、ガラス転移温度(Tg)が150℃以下で、耐熱特性が悪く、耐化学性及び機械的強度が低いため、適用には制限がある。また、カバーウィンドウは、フレキシブルディスプレイ装置の最外殻に配置されるが、上述の材料が適用され、外部の紫外線に継続して晒される場合は、黄変現象が発生し、ディスプレイの視認性に悪影響を与える。
【0005】
特に、ポリイミド系樹脂で構成されるカバーウィンドウは、ポリイミドが、分極率(Polarization)が高い含有量のベンゼン環をもっているため、少ない配向効果によっても高い光学異方性(複屈折の値)を有する。このように、複屈折の値が高くかつ不均一な物質を、一般的なフィルム加工工程によってディスプレイなどのデバイスに適用する場合、伝達される応力によって、高分子鎖の配向に影響を及ぼすようになり、ディスプレイの光学設計が狂い、これによって、ディスプレイ画面の歪みが発生し、視認性が低下するという問題点が招来される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の問題点を解決するために案出されたものであって、低い厚さ方向位相差(Rth)、面内方向位相差(Rin)、及び面内方向平均屈折率が同時に確保すると共に、透明性、柔軟性、機械的特性などの諸物性に優れた、カバーウィンドウに適用可能な、新規なポリイミドフィルムを提供することに技術的課題がある。
【0007】
本発明の他の目的及び利点は、後述の詳細な説明及び特許請求の範囲によってより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述のような技術課題を達成するため、本発明は、少なくとも1種のジアミン、及び少なくとも1種の酸二無水物を含んで共重合されたポリイミドフィルムであって、前記ジアミン及び前記酸二無水物のうちの少なくとも1つは、脂環族化合物を含み、フィルム厚さ40μmを基準に、波長550nmでの厚さ方向位相差(Rth)は、300~1,200nmであるポリイミドフィルムを提供する。
【0009】
本発明の一実施例では、前記ポリイミドフィルムは、フィルム厚さ40μmを基準に、波長550nmでの面内方向位相差(Rin)は、0~200nmであり、面内方向平均屈折率(n)は、1.60以下であることができる。
【0010】
本発明の一実施例では、前記ポリイミドフィルムは、厚さ30~100μmにおいて、波長550nmでの透過率が、85%以上であり、ASTM E313-73規格に準拠した黄色度(Y.I.)が、5以下であることができる。
【0011】
本発明の一実施例では、前記ポリイミドフィルムは、50~250℃で測定した平均線膨張係数(CTE)が、100ppm/℃以下であり、ヤング率(Young’s Modulus)が、3~8GPaであることができる。
【0012】
本発明の一実施例では、前記脂環族化合物は、脂環族ジアミン及び脂環族酸二無水物のうちの少なくとも1つを含み、前記ジアミンと酸二無水物とを合わせた全モル%に対して、10~100モル%の割合で含まれている。
【0013】
本発明の一実施例では、前記脂環族酸二無水物は、当該酸二無水物の全モル%に対して、10~100モル%の割合で含まれている。
【0014】
本発明の一実施例では、前記少なくとも1種の酸二無水物は、フッ素化芳香族第1の酸二無水物、非フッ素化芳香族第2の酸二無水物、及びスルホン系芳香族第3の酸二無水物からなる群から選択される1種以上の芳香族酸二無水物をさらに含むことができる。
【0015】
本発明の一実施例では、前記少なくとも1種のジアミンは、芳香族ジアミン、脂環族ジアミン、又は芳香族ジアミンと脂環族ジアミンとの組み合わせを含むことができる。
【0016】
本発明の一実施例では、前記芳香族ジアミンと脂環族ジアミンとは、全ジアミン100モル%に対して、0~100:100~0モル%の割合で含まれている。
【0017】
本発明の一実施例では、前記芳香族ジアミンは、フッ素化第1のジアミン、スルホン系第2のジアミン、ヒドロキシ系第3のジアミン、エーテル系第4のジアミン、及び非フッ素系第5のジアミンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0018】
本発明の一実施例では、前記ジアミン(a)と前記酸二無水物(b)とのモル数の比(a/b)は、0.7~1.3の範囲であることができる。
【0019】
本発明の一実施例では、前記ポリイミドフィルムは、ディスプレイ装置のカバーウィンドウとして使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施例によれば、ポリイミドフィルムを構成する所定の成分を採択し、また、その含有量を調節を行うことで、低い厚さ方向位相差(Rth)、面内方向位相差(Rin)、及び面内方向平均屈折率を同時に確保し、視野角補償効果によって、画面歪みが防止され、優れた視認性が得られる。これと共に、高い光透過率、低い黄色度などの光学特性を継続して発揮することが可能となる。
【0021】
また、本発明では、優れたモジュラス及び低い線膨張係数(CTE)を示し、最終製品の作業性及び信頼性を向上させることができる。
【0022】
従って、本発明のポリイミドフィルムは、フラットディスプレイパネルを始めとした当該分野におけるディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイなどのカバーウインドウに有用に適用可能であり、その他、当該分野で公知のIT製品、電子製品、家電製品などにも適用可能である。
【0023】
本発明の効果は、上記の例示によって制限されず、より様々な効果が本明細書中に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、面内方向位相差(Rin)と厚さ方向位相差(Rth)とを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳述する。本発明の実施例は、当該技術分野で通常の知識を有する者に、本発明をより完全に理解させるために提供されるものであり、後述の実施例は、種々に変更して実施することができ、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるのではない。なお、本明細書中、同一の参照符号は、同一の構造を指称する。
【0026】
特に断りのない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が共通に理解可能な意味として使用される。また、一般的に使用される辞典に定義されている用語は、特に定義されていない限り、理想的又は過度に解釈されることはない。
【0027】
また、明細書全般において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。また、明細書全般において、「上に」又は「上方に」とは、対象部分の上又は下に位置する場合だけでなく、その中間に他の部分が存在する場合も含む意味であり、必ず重力方向を基準に上方に位置するという意味ではない。なお、本願明細書中、「第1」、「第2」などの用語は、任意の順番又は重要度を示すのではなく、構成要素を区分するために使用されたものである。
【0028】
<ポリイミドフィルム>
本発明の一実施例に係るポリイミド樹脂フィルムは、ディスプレイ装置に設けられる透明フィルムであって、より具体的にはフレキシブルディスプレイのカバーウィンドウ(Cover Window)として使用される。
【0029】
ここで、カバーウインドウとは、フレキシブルディスプレイ装置の最外殻に配置され、ディスプレイ装置を保護するフィルムを指称する。このようなカバーウインドウは、ウインドウフィルム単独で、又は光学的に透明な樹脂からなる別の基材(substrate)フィルム上に、接着剤層とウインドウコーティング層が形成されたフィルムであることができる。
【0030】
一方、外部に露出されるディスプレイのカバーウインドウは、日常生活において、柔軟性(flexibility)などの加工特性と優れた光学特性を有する必要があり、さらに、ディスプレイの視認性を考慮して、フィルムにより発生する位相遅延(Retardation)を追加又は相殺し得る光学特性も兼ね備える必要がある。
【0031】
位相差(Ratardation)とは、媒質を進む電磁波において直交する2つの電場成分の媒質内での速度差により発生する2電場成分間の位相の差異を意味する。このような位相差特性としては、正面での位相差特性と、所定角度での位相差特性とがあるが、正面での位相遅延値と、光がフィルムを通過する時に得られる位相遅延値とは、互いに相違し、正面での位相差特性だけでなく、傾いた角度、即ち、視野角においても均一な位相差特性を有することが重要である。ここで、正面での位相遅延値は、面内方向位相差(In-Plane Retardation、Rin)といわれ、斜め入射する光が経る位相遅延値を代表し得る値が、厚さ方向位相差(Out-Of-Plane Retardation、Rth)であることができる。
【0032】
本発明では、従来のポリイミドフィルムに比べて、厚さ方向位相差(Rth)、面内方向位相差(Rin)及び面内方向平均屈折率(n)を、それぞれ特定の範囲内に低く調節することを特徴とする。これによって、前記ポリイミドフィルムは、ディスプレイ装置のカバーウインドウに適用される場合、外力によるディスプレイ画面の歪みを防止し、広い視野角を示し、優れた視認性と高い信頼性を提供することができる。このようなディスプレイ装置は、当該分野で公知のディスプレイ装置を制限なく適用することができ、特に、インフォールディング(in-folding)型、アウトフォールディング(out-folding)型の折り畳み可能な表示装置(foldable display)であることができる。
【0033】
本発明の一具体例では、前記ポリイミドフィルムは、少なくとも1種のジアミン、及び少なくとも1種の酸二無水物を含むが、前記ジアミン及び前記酸二無水物のうちの少なくとも1つは、脂環族化合物(alicyclic compound)を含んで共重合されたものであり、フィルム厚さ40μmを基準に、波長550nmでの厚さ方向位相差(Rth)は、300~1,200nmであることができる。
なお、厚さ方向位相差(Rth)は、次の式1により定義されるものであることができる。
【0034】
【数1】
式中、nは、当該フィルムの面内の任意の方向軸(x軸)の屈折率であり、nは、前記x軸に垂直な方向(y軸)の屈折率であり、nは、前記x軸及び前記y軸に垂直な厚さ方向軸(z軸)の屈折率であり、dは、フィルムの厚さである。具体的に、厚さ方向位相差(Rth)は、フィルムの長手方向軸をX軸、前記X軸に垂直なフィルムの幅手方向の軸をY軸、前記X軸及び前記Y軸に垂直なフィルム厚さ方向軸をZ軸とし、それぞれの軸方向屈折率をnx、ny、nzとする時、平面屈折率の平均値と、厚さ方向への屈折率の値であるnz値との差に、フィルムの厚さを乗じて得られるものを意味する。
【0035】
本発明の他の一具体例では、前記ポリイミドフィルムは、フィルム厚さ40μmを基準に、波長550nmでの面内方向位相差(Rin)が、0~200nmであることができる。
なお、面内方向位相差(Rin)は、次の式2により定義されるものであることができる。
【0036】
[式2]
in=(n-n)*d
(式中、n、n及びdは前記式1での定義と同様である。)
【0037】
具体的に、面内方向位相差(Rin)とは、フィルムの長手方向軸をX軸、前記X軸に垂直なフィルムの幅手方向軸をY軸とし、それぞれの軸方向屈折率をnx、nyとする時、平面上の屈折率値の差とフィルムの厚さとを乗じて得られる、正面での位相遅延値を意味する。
【0038】
本発明のまた他の一具体例では、前記ポリイミドフィルムは、波長550nmにおいて測定された面内方向平均屈折率(n)が、1.60以下であることができる。
【0039】
本発明において、前記厚さ方向位相差(Rth)、面内方向位相差(Rin)、及び面内方向平均屈折率(n)は、前記フィルムの厚さから影響を受けることがあり得る。このような厚さ方向位相差(Rth)、面内方向位相差(Rin)、及び面内方向平均屈折率(n)は、それぞれ当該ポリイミドフィルムの厚さ40μmを基準にしている。しかし、これに制限されず、例えば、フィルム厚さ30~100μm、具体的に30~80μm、より具体的に40±5μmの条件下で測定されたものを換算する場合も、本発明の範疇に含まれる。
【0040】
一具体例としては、本発明に係るポリイミドフィルムは、厚さ方向位相差(Rth)が、350~1,200nmであり、具体的に400~1,150nmであることができる。また、面内方向位相差(Rin)は、0~200nmであり、具体的に50~150nmであることができる。また、面内方向屈折率(n)は、1.5~1.6であり、具体的に1.53~1.59であることができる。この時、厚さ方向位相差(Rth)、面内方向位相差(Rin)、面内方向屈折率(n)は、フィルム厚さ40nm及び測定波長550nmを基準にしたものであり、測定基準が互いに異なる場合、前記物性値は、一部の値が変動することがあり得る。前記厚さ方向位相差(Rth)、面内方向位相差(Rin)、屈折率のパラメータ及び当該数値を有する本発明のポリイミドフィルムは、厳しい環境下でも、視野角補償効果によって、画面歪みが防止され、視野角が拡張され、優れた視認性を確保することが可能である。
【0041】
本発明に係るポリイミドフィルムがモバイル通信端末やタブレットPCなどのカバーウインドウに使用されるためには、上述のような位相差特性に加え、高い透明度及び光透過率などの優れた光学特性と機械的特性とを同時に有するものであることが好ましい。
【0042】
本発明の他の一具体例では、前記ポリイミドフィルムは、厚さ30~100μmにおいて、波長550nmでの光透過率が85%以上であり、具体的に89%以上、より具体的に90%~99%であることができる。また、ASTM E313規格に準拠した黄色度(Y.I.)が、5以下であることができ、具体的に4.7以下、より具体的に4.5以下である。
【0043】
本発明の他の一具体例では、前記ポリイミドフィルムは、3~8GPaのヤング率(Young’s Modulus)を有することができ、具体的に3~6GPaである。機械的硬度と優れた柔軟性とを同時に示すという点から、4~6GPaであることができる。なお、ヤング率(Young’s Modulus)は、ISO 527-3に準拠して測定した値を意味する。前記率が上述の数値より小さい場合は、十分な硬度を発揮し難く、上述の数値より大きい場合は、柔軟性が低下し、折り畳み性が低下することがあり得る。
【0044】
本発明の他の一具体例では、前記ポリイミドフィルムは、厚さ30~100μmにおいて、50~250℃で測定した平均線膨張係数(CTE)が100ppm/℃以下であることができ、具体的に70ppm/℃以下、より具体的に30~65ppm/℃である。
【0045】
本発明に係るポリイミドフィルムは、前記厚さ方向位相差(Rth)、面内方向位相差(Rin)、屈折率の特性を満足すれば、ポリイミド樹脂を構成する成分及び/又はその組成などに特に制限はない。
【0046】
一具体例としては、前記ポリイミドフィルムは、少なくとも1種のジアミン、及び少なくとも1種の酸二無水物を含むが、前記ジアミン及び前記酸二無水物のうちの少なくとも1つは、脂環族化合物(alicyclic compound)を含んで共重合されたものである。
【0047】
本発明において、脂環族化合物(alicyclic compound)は、当該分野で周知の脂環族ジアミン及び脂環族酸二無水物のうちの少なくとも1つを含むことができる。このような脂環族ジアミン、脂環族酸二無水物としては、分子構造中、脂環族環を少なくとも1つ以上含むものであれば、特に制限されず、例えば、後述の脂環族ジアミン、脂環族酸二無水物成分であることができる。具体的に前記脂環族化合物は、脂環族酸二無水物であり、より具体的に、化学式(1)又は化学式(2)で示される脂環族酸二無水物を使用することが好ましい。このような脂環族化合物は、当該ジアミンと酸二無水物とを合わせた全モル%、例えば、ジアミン100モル%と酸二無水物100モル%とを合わせた200モル%全体に対して、10~100モル%の割合で含まれ、具体的に50~90モル%の割合であることができる。
【0048】
本発明のポリイミドフィルムを構成するジアミン(a)成分としては、分子中にジアミン構造を有する化合物であれば、特に限定されず、当該分野で周知のジアミン化合物を制限なく使用することができる。例えば、ジアミン構造を有している芳香族、脂環族、脂肪族化合物、又は、これらの組み合わせなどを使用することができる。
【0049】
特に、本発明では、ポリイミドフィルムの低い反射率、高い光透過率(High Transmittance)、低いY.Iなどの光学特性を考慮して、少なくとも1種の脂環族ジアミンを単独で使用、又は少なくとも1種の芳香族ジアミンを使用、又は前記芳香族ジアミンと脂環族ジアミンとを混用することができる。
【0050】
前記芳香族ジアミンの具体例としては、フッ素化置換基を有するフッ素系、スルホン(sulfone)系、ヒドロキシ(hydroxyl)系、エーテル(ether)系、非フッ素系などのジアミンを、それぞれ単独で使用、又は適切に組み合わせて1種以上を混用することができる。これによって、本発明では、ジアミン化合物として、フッ素置換基が導入されたフッ素化芳香族第1のジアミン、スルホン系芳香族第2のジアミン、ヒドロキシ系芳香族第3のジアミン、エーテル系芳香族第4のジアミン、非フッ素系芳香族第5のジアミンを、それぞれ単独で使用、又はこれらの2種以上を混合して使用することができる。
【0051】
使用可能なジアミン単量体(a)としては、例えば、オキシジアニリン(ODA)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(2,2’-TFDB)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,3’-ジアミノビフェニル(2,2’-bis(trifluoromethyl)-4,3’-diaminobiphenyl)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-5,5’-ジアミノビフェニル(2,2’-bis(trifluoromethyl)-5,5’-diaminobiphenyl)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノフェニルエーテル(2,2’-bis(trifluoromethyl)-4,4’-diaminodiphenyl ether:6-FODA)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(6HMDA)、ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4,4’-DDS)、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(3,3’-DDS)、スルホニルジフタル酸無水物(SO2DPA)、4,4’-オキシジアニリン(4,4’-ODA)、又はこれらの1種又は2種以上の混合形態などを適用することができるが、これらに制限されない。
【0052】
ポリイミドフィルムの高い透明性、高いガラス転移温度、及び低い黄色度を考慮して、フッ素化第1のジアミンとしては、直線状の高分子化を誘導し得る、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(2,2’-TFDB)、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(6-FAPB)を使用することができる。また、スルホン系第2のジアミンとしては、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4,4’-DDS)、又は3,3’-DDSを使用することができる。また、ヒドロキシ系第3のジアミンとしては、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-bis(3-amino-4-hydroxypenyl)-hexafluoropropane:BIS-AP-AF)を使用することができる。また、エーテル系第4のジアミンとしては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノフェニルエーテル(6-FODA)、又はオキシジアニリン(ODA)を使用することができる。また、非フッ素系第5のジアミンとしては、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)-ヘキサフルオロプロパン(2,2-bis(3-amino-4-methylphenyl)-hexafluoropropane:BIS-AT-AF)、m-トリジン(m-tolidine)、又はp-フェニレンジアミン(p-PDA)を使用することができる。
【0053】
本発明のジアミン単量体(a)において、前記フッ素化芳香族第1のジアミン、スルホン系芳香族第2のジアミン、ヒドロキシ系芳香族第3のジアミン、エーテル系芳香族第4のジアミン、非フッ素系芳香族第5のジアミンなどの含有量は、特に限定されないが、それぞれ、全ジアミン100モル%に対して、0~100モル%であることができ、具体的に10~90モル%、より具体的に20~80モル%である。但し、前記第1のジアミン乃至第5のジアミンのうちのいずれか1つの含有量は、全ジアミン100モル%を満たすように含まれている。
【0054】
使用可能な脂環族ジアミンとしては、例えば、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-bis(3-amino-4-hydroxy cyclohexyl)hexafluoropropane)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(MACM)、4,4’-メチレンビシクロヘキシルアミン(PACM)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4-BAC)、シス-1,2-シクロヘキサンジメタンアミン、トランス-1,2-シクロヘキサンジメタンアミン、1,4-シクロヘキシルジアミン(1,4-cyclohexyldiamine:CHDA)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)エーテル、又はこれらの混合物などを使用することができるが、これらに制限されない。
【0055】
本発明のジアミン単量体(a)において、芳香族ジアミンと脂環族ジアミンとの混合割合は、全ジアミン100モル%に対して、0~100:100~0モル%の割合であることができ、具体的に10~90:90~10モル%の割合である。
【0056】
本発明のポリイミドフィルムを構成する酸二無水物(b)単量体としては、分子中、酸二無水物構造を有する当該分野で周知の化合物を制限なく使用することができる。例えば、酸二無水物(dianhydride)構造を有している芳香族、脂環族、脂肪族化合物、又はこれらの組み合わせなどを使用することができ、具体的に少なくとも1種の脂環族酸二無水物を使用、又は少なくとも1種の芳香族酸二無水物を使用、又は前記芳香族酸二無水物と脂環族酸二無水物とを混合することができる。
【0057】
脂環族酸二無水物としては、化合物中、芳香族でない脂環族環を有するとともに、酸二無水物構造を有する化合物であれば、特に制限されない。具体的に、次の化学式(1)又は化学式(2)で示される脂環族酸二無水物を使用することが好ましい。
【0058】
【化1】
【0059】
【化2】
【0060】
前記化学式(1)及び化学式(2)において、
A~Cは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、炭素数4~炭素数20である環状脂環族有機基であり、
Xは、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-(CH-(ここで、1≦p≦10)、-(CF-(ここで、1≦q≦10)、-C(CHC-、-(CFC-、及び-C(=O)NH-からなる群から選択され、
nは、0~2である。
【0061】
前記化学式1又は化学式2の好適な一具体例としては、A~Cは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、炭素数4~8の環状脂環族有機基であることができ、Xは、-CH-、-(CHC-、-SO-、-(CFC-、-CO-、及び-CONH-からなる群から選択され、nは、0又は1である。
【0062】
使用可能な脂環族酸二無水物としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、ビシクロ[2,2,2]-7-オクテン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BCDA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物(TDA)、1,1’-ビシクロヘキサン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(H-BPDA)、1,2,4,5-シクロヘキサン-テトラカルボン酸二無水物(H-PMDA)、シクロペンタノン ビス-スピロノルボルナン(cyclopentanone bis-spironorbornane:cpODA)、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボキシ2,3:5,6-酸二無水物(7CI、8CI)、又はこれらの1種以上の混合物などが挙げられるが、これらに制限されない。このような脂環族酸二無水物の含有量は、特に制限されず、当該ポリイミドフィルムの機械的特性と位相差特性を考慮して適切に調節することができる。例えば、脂環族酸二無水物の含有量は、当該酸二無水物の全モル%に対して、10~100モル%の割合で含まれ、具体的に20~90モル%の割合であり、より具体的に30~80モル%の割合である。
【0063】
また、芳香族酸二無水物の一具体例としては、フッ素化芳香族第1の酸二無水物、非フッ素化芳香族第2の酸二無水物、スルホン系芳香族第3の酸二無水物を、それぞれ単独で使用、又はこれらの少なくとも2種以上が混合された組み合わせ形態であることができる。
【0064】
前記フッ素化第1の酸二無水物単量体としては、フッ素置換基が導入された芳香族酸二無水物であれば、特に限定されない。使用可能なフッ素化第1の酸二無水物としては、例えば、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(2,2-bis(3,4-dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride:6-FDA)、4-(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物(4-(trifluoromethyl)pyromellitic dianhydride:4-TFPMDA)などが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。フッ素化酸二無水物のうち、6-FDAは、分子鎖間及び分子鎖内の電荷移動錯体(CTC:Charge Transfer Complex)の形成を制限する特性が非常に強いため、透明化に適した化合物である。
【0065】
また、非フッ素化第2の酸二無水物単量体としては、フッ素置換基が導入されていない非フッ素化芳香族酸二無水物であれば、特に限定されない。使用可能な非フッ素化第3の酸二無水物単量体としては、例えば、ピロメリット酸二無水物(Pyromellitic Dianhydride:PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-Biphenyl tetracarboxylic acid dianhydride:BPDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4-(4,4-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPDA)、ビス(カルボキシフェニル)ジメチルシラン酸二無水物(bis(3,4dicarboxyphenyl)dimethylsilane dianhydride:SiDA)などが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用、又はこれらの2種以上を混合して使用することができる。
【0066】
また、スルホン系第3の酸二無水物単量体としては、スルホン基が導入された酸二無水物であれば、特に限定されず、例えば、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-diphenylsulfonetetracarboxylic dinhydride:DSDA)が挙げられる。
【0067】
本発明の酸二無水物単量体(b)において、前記フッ素化芳香族第1の酸二無水物、非フッ素化芳香族第2の酸二無水物、スルホン系芳香族第3の酸二無水物などの含有量は、特に限定されない。例えば、これらは、それぞれ全酸二無水物100モル%に対して、0~100モル%の範囲で含まれ、具体的に10~90モル%であることができ、より具体的に20~80モル%である。但し、前記第1の酸二無水物乃至第3の酸二無水物のうちの少なくとも1つの含有量は、全酸二無水物100モル%を満たすように含まれる。
【0068】
本発明の酸二無水物単量体(b)において、芳香族酸二無水物と脂環族酸二無水物との混合割合は、全酸二無水物100モル%に対して、0~90:10~100モル%の割合であることができ、具体的に90~10:10~90モル%の割合であり、より具体的に80~10:20~90モル%の割合である。
【0069】
本発明のポリイミドフィルムを構成するポリアミック酸組成物において、前記ジアミン成分(a)のモル数と、前記酸二無水物成分(b)のモル数との比(a/b)は、0.7~1.3であることができ、好ましくは、0.8~1.2であり、より好ましくは、0.9~1.1の範囲である。
【0070】
上述のように構成される本発明のポリイミドフィルムは、少なくとも1種のジアミンと、少なくとも1種の酸二無水物とを含むが、これらのうちの少なくとも1つの脂環族ジアミン又は脂環族酸二無水物を含んで得られる繰り返し単位を含む。このような脂環族ジアミン/酸二無水物から得られる所定の脂環族繰り返し単位を含む場合、低い位相差特性を示し、優れた視認性を確保することができる。具体的に、芳香族ジアミン/酸二無水物と、脂環族ジアミン/酸二無水物とを含むポリイミドの主鎖中の脂環族構造(cycloaliphatic)の含有量比が高くなるほど、厚さ方向位相差(Rth)特性が低下し、特に脂環族酸二無水物を使用する場合、厚さ方向位相差(Rth)特性が低下し、機械的特性が向上することが確認され、これによって、視認性を始とした光学特性と機械的特性を最適化することが可能である(下記の表1及び2を参照)。
【0071】
本発明のポリアミック酸組成物は、上述のような単量体の溶液重合反応を行うための溶媒として、当該分野で公知の有機溶媒を制限なく使用することができる。使用可能な溶媒としては、例えば、m-クレゾール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジエチルアセテート、及びジメチルフタレート(DMP)のうちから選択される1つ以上の極性溶媒を使用することができる。その他に、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムのような低沸点溶液、又はγ-ブチロラクトンのような溶媒を使用することができる。この時、溶媒(重合用第1の溶媒)の含有量は、特に制限されないが、適切なポリアミック酸組成物(ポリアミック酸溶液)の分子量と粘度を得るため、ポリアミック酸組成物の全重量に対して、50~95重量%が好ましく、より好ましくは、70~90重量%の範囲で含まれる。
【0072】
本発明に係るポリイミドは、前記ジアミン、酸二無水物、必要に応じて溶剤を使用し、溶液重合を行ってポリアミック酸組成物(ポリアミック酸誘導体)を製造した後、高温で閉環脱水させ、イミド化して製造された高耐熱樹脂であることができる。前記ポリアミック酸組成物は、少なくとも1種の酸二無水物と少なくとも1種のジアミンとを有機溶媒に投入した後、反応させて製造することができ、例えば、ポリイミドの物性改善のために、ジアミン(a)と酸二無水物(b)とをおよそ1:1の当量比で調節することができる。このようなポリアミック酸組成物の組成は、特に制限されず、例えば、ポリアミック酸組成物の全重量100重量%に対して、酸二無水物2.5~25.0重量%、ジアミン2.5~25.0重量%、及び組成物100%中の残部として有機溶媒を含んで構成することができる。ここで、有機溶媒の含有量は、70~90重量%であることができる。また、前記ポリアミック酸組成物は、当該固形分100重量%に対して、酸二無水物30~70重量%、及びジアミン30~70重量%の範囲で含むことができるが、これに制限されない。
【0073】
上述のように構成されるポリアミック酸組成物は、約1,000~200,000cps、好ましくは、約5,000~50,000cps範囲の粘度を有することができる。ポリアミック酸組成物の粘度が上述の範囲内である場合、ポリアミック酸組成物のコーティングを行う時、厚さの調節が容易であり、かつ均一なコーティング表面が得られる。
【0074】
必要に応じて、前記ポリアミック酸組成物は、本発明の目的と効果を損なわない範囲内で、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤、分散剤、粘度調節剤、レベリング剤などの少なくとも1種の添加剤を少量含むことができる。
【0075】
本発明に係るポリイミド樹脂フィルムは、当該分野で周知の常法に従って製造することができ、例えば、前記ポリアミック酸組成物を、基材(substrate)、例えば、ガラス基板上にコーティング(キャスティング)した後、30~350℃の範囲で徐々に昇温しながら、0.5~8時間イミド閉環反応(Imidazation)を誘導させ、製造することができる。
【0076】
なお、コーティング方法は、当業界で周知の常法を制限なく使用することができ、例えば、スピンコーティング(spin coating)法、ディップコーティング(dip coating)法、溶媒キャスティング(solvent casting)法、スロットダイコーティング(slot die coating)法、及びスプレーコーティング法からなる群から選択される少なくとも1つの方法により行うことができる。前記無色透明なポリイミド樹脂層の厚さは、数百nm~数十μmとなるように、ポリアミック酸組成物を、少なくとも1回以上コーティングすることができる。
【0077】
本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法において、重合されたポリアミック酸を支持体にキャスティングしてイミド化するステップに適用されるイミド化法としては、熱イミド化法、化学イミド化法、又は熱イミド化法と化学イミド化法とを併用して適用することができる。
【0078】
熱イミド化法は、ポリアミック酸組成物(ポリアミック酸溶液)を、支持体上にキャスティングし、3~400℃の温度範囲で徐々に昇温しながら、1~10時間加熱してポリイミドフィルムを得る方法である。
【0079】
また、化学イミド化法は、ポリアミック酸組成物に酢酸無水物などの酸無水物に代表される脱水剤と、イソキノリン、β-ピコリン、ピリジンなどのアミン類などに代表されるイミド化触媒とを投入する方法である。このような化学イミド化法に熱イミド化法又は熱イミド化法を併用する場合、ポリアミック酸組成物の加熱条件は、ポリアミック酸組成物の種類、製造されるフィルムの厚さなどによって変動することができる。
【0080】
前記熱イミド化法と化学イミド化法とを併用する方法について具体的に説明すると、ポリアミック酸組成物に脱水剤及びイミド化触媒を投入して支持体上にキャスティングした後、80~300℃、好ましくは150~250℃で加熱して脱水剤及びイミド化触媒を活性化することで部分的に硬化及び乾燥した後、ポリイミドフィルムを得ることができる。
【0081】
このように形成されたポリイミド樹脂は、イミド環を含有する高分子物質であって、イミド環の化学的安定性を基に、耐熱性、耐化学性、耐摩耗性及び電気的特性に優れている。前記ポリイミド樹脂は、ランダム共重合体(random copolymer)やブロック共重合体(block copolymer)形態であることができる。前記ポリイミドフィルムの厚さは、特に制限されず、適用される分野によって適切に調節することができる。例えば、10~150μmの範囲であることができ、好ましくは30~100μmである。
【0082】
上述のように製作された本発明のポリイミドフィルム及びその変形例は、低い位相差、高透過率などの優れた光学特性及び高い機械的特性が要求される種々の分野において有用に使用可能である。特に、ディスプレイ装置のカバーウインドウ(Cover Window)に適用されることで、表面擦りを防止し、フレキシブルディスプレイ装置に優れた柔軟性と視認性を付与することができる。
【0083】
本発明において、ディスプレイ装置は、画像を表示するフレキシブル表示装置又は非フレキシブル表示装置を指称し、フラットパネルディスプレイ装置(FPD:Flat Panel Display Device)だけでなく、曲面表示装置(Curved Display Device)、折り畳み可能な表示装置(Foldable Display Device)、フレキシブル表示装置(Flexible Display Device)、フォールダブルモバイルフォン、スマートフォン、モバイル通信端末や、タブレットPCなどが挙げられる。具体的に、前記ディスプレイ装置は、液晶表示装置(Liquid Crystal Display)、電気泳動表示装置(Electrophoretic Display)、有機発光表示装置(Organic Light Emitting Display)、無機EL表示装置(Inorganic Light Emitting Display)、電界放出表示装置(Field Emission Display)、表面伝導型電子放出表示装置(Surface-conduction Electron-emitter Display)、プラズマ表示装置(Plasma Display)、陰極線管表示装置(Cathode Ray Display)、電子ペーパーなどであることができる。一具体例としては、LCD、PDP、OLEDなどのフラットパネルディスプレイが挙げられる。上述の用途に限定されず、本発明のポリイミドフィルムは、当該分野で周知のディスプレイ装置に適用可能であり、その他、フレキシブルディスプレイ用基板や保護膜として活用することもできる。
【0084】
前記ポリイミドフィルムを備えたディスプレイ装置の一具体例としては、ディスプレイ部、偏光板、タッチスクリーンパネル、カバーウインドウ、及び保護フィルムを含み、前記カバーウィンドウは、本発明の一実施例に係るポリイミドフィルムを含むことができる。ここで、ディスプレイ装置を構成する各構成要素は、特に制限されず、当該分野で周知の構成要素を含むことができる。
【実施例
【0085】
以下、具体的な実施例に基づいて本発明を詳述する。後述の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎないものであり、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されない。
【0086】
[実施例1~9.ポリイミドフィルムの製造]
次の表1に示すジアミンと酸二無水物とを含む組成を用いてポリアミック酸組成物を製造した。
【0087】
前記ポリアミック酸組成物を、LCD用ガラスにスピンコートした後、窒素雰囲気のコンベクションオーブン中、80℃で30分、150℃で30分、200℃で1時間、300℃で1時間、段階的に徐々に昇温しながら、乾燥及びイミド閉環反応(Imidazation)を行った。これによって、イミド化率が85%以上である膜厚さ40μmのポリイミドフィルムが得られた。次に、ガラスからポリイミドフィルムを剥離した。
【0088】
【表1】
【0089】
[比較例1~5.ポリイミドフィルムの製造]
前記表1に記載の組成を使用した以外は、前記実施例1~9と同様にして比較例1~5のポリイミドフィルムをそれぞれ製造した。
【0090】
[実験例.物性評価]
実施例1~9及び比較例1~5で製造されたポリイミド樹脂フィルムの物性を、後述のような方法で評価し、その結果を次の表2に示す。なお、下記表2中の各物性は、ポリイミドフィルムの厚さ40μmを基準にしている。
【0091】
<物性評価方法>
1)光透過度の測定
550nm波長において、UV-Vis NIRスペクトロフォトメーター(島津製、型番:uv-3150)を用いて測定した。
【0092】
2)黄色度の測定
分光測色計(コニカミノルタ製、型番:CM-3700d)を用いて、500nmでの黄色度を、ASTM E131-73規格に準拠して測定した。
【0093】
3)厚さの測定
厚さ測定器(ミツトヨ製、型番:293-140)を用いて、フィルムの厚さを測定した。
【0094】
4)熱膨張係数(CTE)の測定
TMA(TAインスツルメント製、Q400)を用いて、IPC-TM-650 2.4.24.5方法で測定した。
【0095】
5)モジュラスの測定
UTM(インストロン製、型番:5942)を用いて、ISO 527-3規格に準拠して引張強度(MPa)及び弾性率(GPa)を測定した。
【0096】
6)面内方向平均屈折率(n)の測定
屈折率測定装置(屈折率/複屈折分析器、メトリコン社製、2010/M)を用いて、面内方向平均屈折率を測定した。サンプルの大きさは、横縦がそれぞれ5cmである正方形状とし、当該試験片をホルダーに装着して測定した。
【0097】
7)面内方向位相差(Rin)の測定
複屈折測定装置(Retarder、大塚製、RETs-100)を用いて測定した。サンプルの大きさは、横縦がそれぞれ5cmである正方形状とし、当該試験片をサンプルホルダーに装着し、モノクロメータを用いて、500nmに固定した。面内方向複屈折(Rin)は、入射角0°で測定した。
【0098】
8)厚さ方向位相差(Rth)の測定
複屈折測定装置(Retarder、大塚製、RETs-100)を用いて測定した。サンプルの大きさは、横縦がそれぞれ5cmである正方形状とし、当該試験片をサンプルホルダーに装着し、モノクロメータを用いて550nmに固定した。厚さ方向複屈折(Rth)は、入射角45°で測定した。
【0099】
【表2】
【0100】
前記表2に示されるように、本発明に係るポリイミドフィルムは、比較例に比べて、優れた厚さ方向位相差(Rth)、面内方向位相差(Rin)、及び面内方向平均屈折率(n)特性を有することで、画面歪みを防止し、優れた視認性が確保されることがわかった。特に、実施例1~9で得られたポリイミドフィルムは、面内方向位相差(Rin)が、製造時の特性調節によっては、比較例と類似していることがある反面、厚さ方向位相差(Rth)は、比較例に比べて著しく低くなることが確認された。また、優れた透明性、機械的特性、及び熱膨張係数を有することがわかった。
【0101】
従って、本発明のポリイミドフィルムは、ディスプレイ装置のカバーウィンドウに有用に適用可能であることが確認された。
図1