(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵装置用電極フィルム、電極およびエネルギー貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
H01G 11/38 20130101AFI20230214BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20230214BHJP
H01G 11/24 20130101ALI20230214BHJP
H01G 11/42 20130101ALI20230214BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20230214BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20230214BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
H01G11/38
H01G11/06
H01G11/24
H01G11/42
H01M4/133
H01M4/1393
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2021156683
(22)【出願日】2021-09-27
(62)【分割の表示】P 2018545171の分割
【原出願日】2017-02-27
【審査請求日】2021-10-25
(32)【優先日】2016-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509316442
【氏名又は名称】テスラ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラマン サンタナム
(72)【発明者】
【氏名】ボーケンヘイゲン ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】シ シャオメイ
(72)【発明者】
【氏名】イエ シャンロン
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-531245(JP,A)
【文献】特開2011-258333(JP,A)
【文献】特開2015-146249(JP,A)
【文献】特開2000-279777(JP,A)
【文献】特許第3884702(JP,B2)
【文献】国際公開第2014/138242(WO,A1)
【文献】特開平10-106540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/00-11/86
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥した炭素粒子と、乾燥した超フィブリル化バインダ粒子と
を備え、
超フィブリル化マトリックスを含み、溶媒残留物を実質的に含まない乾燥した自立型超フィブリル化電極フィルムであるエネルギー貯蔵装置用電極フィルム。
【請求項2】
電極フィルムは、約50μm~約120μmの厚さを有する
請求項1に記載した電極フィルム。
【請求項3】
上記乾燥した炭素粒子は、多孔質炭素材料を含む
請求項1に記載した電極フィルム。
【請求項4】
上記多孔質炭素材料は、活性炭素、多孔質グラファイト、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される
請求項3に記載した電極フィルム。
【請求項5】
導電性カーボンをさらに含有する
請求項1に記載した電極フィルム。
【請求項6】
上記導電性カーボンは、カーボンブラック、導電性グラファイト、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される
請求項5に記載した電極フィルム。
【請求項7】
約1重量%~約10重量%の上記導電性カーボンを含有する
請求項5に記載した電極フィルム。
【請求項8】
上記乾燥した超フィブリル化バインダ粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される
請求項1に記載した電極フィルム。
【請求項9】
約1重量%から約10重量%の上記乾燥した超フィブリル化バインダ粒子を含有する
請求項1に記載した電極フィルム。
【請求項10】
上記乾燥した超フィブリル化バインダ粒子は、最大で約3μmの最大寸法を有する
請求項1に記載した電極フィルム。
【請求項11】
上記乾燥した超フィブリル化バインダ粒子の最大寸法が、約0.01~約3μmである
請求項10に記載した電極フィルム。
【請求項12】
上記超フィブリル化マトリックスは、乾燥した超フィブリル化バインダ粒子と接触する少なくとも10%の表面積を有する炭素粒子を含む
請求項1に記載した電極フィルム。
【請求項13】
処理添加剤を実質的に含まない
請求項1に記載した電極フィルム。
【請求項14】
集電体と、請求項1に記載の電極フィルムを含む電極
を備え、
上記電極が、リチウム塩を含有する電解質とイオン接触している、
リチウムイオンバッテリである
エネルギー貯蔵装置。
【請求項15】
上記電極がアノードである
請求項14に記載した
エネルギー貯蔵装置。
【請求項16】
上記電解質がさらにカソードとイオン接触している
請求項
14に記載したエネルギー貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵装置用電極フィルム、電極およびエネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な種類のエネルギー貯蔵装置が、電気機器に電力を供給するために使用することができる。そのような電気機器としては、例えば、キャパシタ、バッテリ、キャパシタ-バッテリハイブリッドおよび/または燃料電池が挙げられる。リチウムイオンキャパシタなどのエネルギー貯蔵装置は、その電極の組成物を改良して、キャパシタの電気的性能を改善することができる。
【発明の概要】
【0003】
本発明、および、本発明によって達成する先行技術に対する利点を要約するために、特定の目的および利点がここに記載される。必ずしもそのような目的または利点の全てが特定の実施形態よって達成されるわけではない。したがって、例えば、当業者であれば、ここに記載される1つの利点または1群の利点を達成または最適化できる方法で、ここに記載または示唆されるその他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本発明を具体化または実施することができることを理解するであろう。
【0004】
第1の態様では、乾燥した炭素粒子と、乾燥した超フィブリル化バインダ粒子と、集電体とを含み、自立型乾燥電極フィルムを備えた、エネルギー貯蔵装置に使用するための電極が提供される。
【0005】
第1の態様における一実施形態では、乾燥電極フィルムは、約50μm~約120μmの厚さを有する。第1の態様における一実施形態では、電極はアノードである。第1の態様における一実施形態では、自立型乾燥電極フィルムは、導電性カーボンをさらに含有する。第1の態様における一実施形態では、電極フィルムは、約1質量%~約5質量%の導電性カーボンを含有する。第1の態様における一実施形態では、電極は、リチウム塩を含有する電解質とイオン接触している。第1の態様における一実施形態では、電解質はさらにカソードとイオン接触している。第1の態様における一実施形態では、乾燥した超フィブリル化バインダ粒子は、自立型乾燥電極フィルムの約3重量%~約7重量%を構成している。第1の態様における一実施形態では、電極を備えるリチウムイオンキャパシタが提供される。
【0006】
第2の態様では、乾燥した炭素粒子と、乾燥したフィブリル化可能なバインダ粒子とを含有する第1の乾燥電極混合物を形成する工程と、その乾燥電極フィルム混合物中のバインダを超フィブリル化して、その電極フィルム混合物中に超フィブリル化マトリックスを形成する工程と、その超フィブリル化された電極フィルム混合物をカレンダー処理して、自立型超フィブリル化電極フィルムを形成する工程とを含む。
【0007】
第2の態様における一実施形態では、上記の方法は、実質的に処理添加剤を使用しない乾式法である。第2の態様における一実施形態では、上記の方法は、自立型電極フィルムを集電体と接触させて第1電極を形成する工程をさらに含む。第2の態様における一実施形態では、上記の方法は、第2電極を形成する工程と、第1電極と第2電極との間にセパレータを挿入する工程とをさらに含む。第2の態様における一実施形態では、第1電極はアノードである。第2の態様における一実施形態では、自立型乾燥電極フィルムは、約50μm~約120μmの厚さを有する。第2における一実施形態では、乾燥した超フィブリル化バインダ粒子は、約3重量%~約7重量%の超フィブリル化マトリックスを含む。第2の態様における一実施形態では、上記の第1の混合物を形成する工程は、導電性カーボン粒子を第1の混合物に添加する工程をさらに含む。第2の態様における一実施形態では、第1の混合物は、約1質量%~約5質量%の導電性カーボン粒子を含有する。第2の態様における一実施形態では、バインダを超フィブリル化する工程は、乾燥電極フィルム混合物中のバインダをフィブリル化して第1のフィブリル化マトリックスを形成する工程と、第1のフィブリル化マトリックスを破壊して炭素粒子とフィブリル化バインダ粒子との粉末混合物を形成する工程と、その粉末混合物をフィブリル化して上記超フィブリル化マトリックスを含む第2のフィブリル化マトリックスを形成する工程とを含む。
【0008】
本明細書は、少なくとも1つのカラー図面を含む。このカラー図面の写しは、請求および必要な手数料の支払いによって事務局(the Office)が提供する。
【0009】
本明細書に開示されたまたはその他の特徴、態様、および利点は、特定の実施形態の図面を参照して説明される。これらの図面は、特定の実施形態を説明することを意図したものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るエネルギー貯蔵装置の一例を模式的に示した側方断面図である。
【
図2】電極フィルムの製造方法の工程の一例を示すフロー図である。
【
図3】異なる種類の導電性促進添加剤を含むアノードを有するリチウムイオンキャパシタセルのそれぞれの等価直列抵抗の性能を示す表である。
【
図4】薄い電極フィルムの製造方法の一例を示すフロー図である。
【
図5A】電極フィルムのカレンダーライン用の繰出機の概略図である。
【
図5B】
図5Aに示される繰出機の一部を詳細に示す図である。
【
図6A】従来技術の乾式電極処理によって調製された電極フィルムのSEM画像を示す。
【
図6B】超フィブリル化バインダを使用した乾式電極処理によって調製された電極フィルムのSEM画像を示す。
【
図7】本明細書で示す方法によって作製されるアノードを有するリチウムイオンキャパシタの様々な実施形態のデータを示す表である。
【0011】
特定の実施形態および実施例が以下に記載されるが、当業者であれば、本発明が具体的に開示された実施形態および/または使用、明らかな変更およびそれらの等価物を超えることを理解するであろう。したがって、本明細書に開示される本発明の範囲は、以下に記載される特定の実施形態によって限定されるべきではない。
【0012】
いくつかの実施形態では、改善された電気的および/または機械的性能を有するリチウムイオンキャパシタ(LiC)などのエネルギー貯蔵装置が提供される。いくつかの実施形態では、その装置は、改良された電極フィルム組成物を含有する電極を備えることができ、そのため改善された電気的および/または機械的性能を提供することができる。いくつかの実施形態では、電極はアノードおよび/またはカソードとすることができる。
【0013】
開示される実施形態は、従来の方法と比較してバインダ材の増強されたフィブリル化、すなわち本明細書で定義され説明される「超フィブリル化」、を経た電極フィルム材料の混合物、電極フィルム、電極、エネルギー貯蔵装置、および関連する方法を含むことができる。電気的および/または機械的性能の多くの利点は、バインダのフィブリル化の増強によって実現することができる。
【0014】
例えば、バインダのフィブリル化を増強することによって、バインダの付着力およびフィルム強度を高めることができる。そのような実施形態は、同等にフィブリル化されていないバインダを有する比較できるフィルムと同じかまたはより少ない量のバインダを使用して、より薄いフィルムの製造を可能にし得る。より薄いフィルムを使用することは、乾燥電極フィルムが自立型となる特性およびその他の理由により、従来では湿式の電極処理法よりもフィルムが厚くなってしまう乾式の電極フィルム技術にとっては有益であり得る。さらに、電極フィルム中の、導電性材料など他の材料のいくつかに比例するバインダの重量パーセント(「バインダー充填量」)を少なくすることは、電気的性能において利点がある。例えば、超フィブリル化バインダを使用することおよび電極フィルム中のバインダの量を少なくすることはまた、従来のフィブリル化バインダを有する従来のフィルムと比較して、フィルムを使用する装置における望ましくない電気直列抵抗(ESR)を小さくすることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、アノードおよび/またはカソードの電極フィルムは、フィブリル化可能なバインダ材および炭素などの他の電極材料を含有することができる。その電極フィルムは、望ましい機械的特性を維持しながらバインダ材の量を少なくすることができる。そのような望ましい機械的特性は、例えば、エネルギー貯蔵装置の製造における1つ以上の工程に必要とされる機械的特性に関係する場合がある。例えば、乾式の製造方法によって電極を製造する場合、自立型電極フィルムは、フィルムを集電体に接着する前に、巻いて扱ったり、その他の取り扱いをするために十分な安定性を有利に提供することができる。さらに、バインダ材のフィブリル化を増強させることにより、カレンダーラインの張力に耐えることができるより薄い電極フィルムの形成を有利に促進することができる。いくつかの実施形態では、数の増加したフィブリル、より大きなフィブリル表面積、および/またはより長いフィブリルを含有する電極フィルムは、フィルムの製造中に所望のフィルムの完全性を維持するのに十分な機械的強度を示しながらも、その厚みを薄くすることができる。
【0016】
電極フィルムを製造する方法は、従来の電極フィルムのフィブリル化処理工程と比較して、バインダ材のフィブリル化を増強させることができるように、処理速度を減速させおよび/または処理圧力を大きくしたフィブリル化処理工程を含むことができる。例えば、フィブリル化が増強されると、フィブリル数の増加、フィブリル表面積の増大、および/またはバインダ材からのより長いフィブリルが得られ、従来の電極フィルムのフィブリル化処理工程と比較して少ない量のバインダ材を使用しながらも望ましい機械的特性を維持することができる。そのようなフィブリル数の増加、フィブリル表面積の増大、および/またはフィブリルがより長くなることは、電極フィルムにおいてより効果的なマトリックス構造が構築されることを可能にし、このことは、本明細書に示す1つ以上の利点を提供すると考えられる。いくつかの実施形態では、このより効果的なマトリックス構造は、従来の乾式の電極技術と比較して、長さ方向での増大した引っ張り強さ、せん断応力、圧縮応力および/またはねじり応力に対する耐性、フィルム厚さの減少、フィルム密度の増加、バインダ量の減少をもたらす。特定の実施形態では、電極フィルムは、本明細書で示されるように、バインダ量が少なくなった自立型電極フィルムである。
【0017】
特定の実施形態では、電極フィルムは、超フィブリル化バインダ粒子および炭素粒子を含有する自立型電極フィルムである。超フィブリル化バインダ粒子は、処理工程200および/または400などの本明細書に示す製造方法に従って製造されるバインダ粒子であって、フィブリル化され、小さくされ、次いで再フィブリル化されるバインダ粒子である。そして、従来のフィブリル化技術よりも高い圧力で、より遅い速度で、より遅い供給速度で、および/またはより長い時間をかけてフィブリル化されるバインダ粒子を含む。超フィブリル化バインダ粒子は、フィブリルの数、フィブリルの表面積、および/またはフィブリルの長さに基づいて構造的に定義することができ、そのすべてが従来のバインダのフィブリル化技術に比べて増加する。本明細書に示す超フィブリル化マトリックスは、電極フィルム混合物の成分によって形成される構造であり、フィブリル化処理によって、バインダ粒子が相互にくっつくレベルまで超フィブリル化され、例えば
図6Bに示すように、まだ圧縮されておらず電極フィルムとされていないという構造である。
【0018】
いくつかの実施形態では、この超フィブリル化バインダ粒子は、その最大寸法が約3μm(ミクロン)未満、約2μm未満、約1μm未満、約0.5μm未満、約0.3μm未満、約0.1μm未満、約0.05μm未満、約0.03μm未満、約0.01μm未満、またはそれらの間の値、例えば、約0.01~3μm、約0.03~2μm、約0.05~1μm、または約0.1μm~0.3μmであるということによって特徴づけられる。さらに他の実施形態では、超フィブリル化マトリックスは炭素粒子を含み、その炭素粒子は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の表面積、またはこれらの間の範囲の値の表面積でバインダ粒子と接触する。いくつかの実施形態では、超フィブリル化バインダ粒子は、バインダ質量が同等である従来の乾式の処理による電極フィルムと比較して、電極フィルム中に存在する数が少なくとも2倍である。
【0019】
従来のフィブリル化バインダを用いて標準的な技術を使用して製造された乾燥粒子電極フィルム混合物から、乾式の処理によって作製された従来の乾燥電極フィルムは、一般に、アノードについてはその厚さが約120μm以上であることによって特徴づけられ、カソードについてはその厚さが約80μm以上であることによって特徴づけられる。これらの2種類の乾燥電極の厚さが相違する理由は、アノード電極フィルムがカソード電極フィルムよりも圧縮が困難であるためであり、それは、例えば、少なくとも部分的な理由としては、カソード電極フィルムの活性炭素と比較すると、アノードの炭素材料を圧縮することが困難であるためである。一般に、そのような従来のカソードフィルムは、約80μm~約10,000μmの範囲であり得、アノードフィルムは、約120μm~約10,000μmの範囲であり得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、従来の乾式の電極処理よりもバインダ材のフィブリル化を増強させることにより、より薄い電極フィルムの形成を容易にすることができる。有利なことに、電極フィルムが薄いと、占める体積を小さくしてリチウムイオンキャパシタに使用することができる。いくつかの実施形態では、バインダ材の超フィブリル化は、従来のフィブリル化された乾燥バインダ材を有する他の類似の従来の乾燥電極フィルムの構造的完全性および/または電気的性能を維持しながらも、約80μm、60μm、または50μm以下の厚さを有するカソード電極フィルムの形成を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に示す1つ以上の処理工程によって製造される電極フィルムは、約120μm、80μm、60μm、さらには約50μm以下の厚さを有することができ、その電極は任意的にアノードである。いくつかの実施形態では、バインダ材のフィブリル化が増強されると、120μm未満の厚さのアノード電極フィルムの形成が容易になることがある。いくつかの実施形態では、バインダ材のフィブリル化を増強することによって、例えば、厚さが120μm未満、80μm未満、60μm未満、50μm未満、40μm未満、30μm未満などの薄い電極フィルムの製造、例えば、厚さが120μm未満またはそれより薄いアノード電極フィルムや、厚さが120μm未満、80μm未満、またはそれより薄いカソード電極フィルムなど、より薄い電極フィルムの製造を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、より薄い電極フィルムは、電力性能が改善されたリチウムイオンキャパシタを提供することができる。いくつかの実施形態では、リチウムイオンキャパシタに使用されるアノードは、約40μm~約120μm、約50μm~約120μm、約50μm~約80μm、約60μm~約100μm、約80μm~約120μmの厚さを有する電極フィルムを備える。いくつかの実施形態では、リチウムイオンキャパシタに使用されるカソードは、約40μm~約80μm、約40μm~約70μm、約50μm~約80μm、約50μm~約70μmの厚さを有する電極フィルムを備える。
【0021】
いくつかの実施形態では、電極フィルムは、等価直列抵抗の低下を促進するために導電性促進添加剤を含有する。この添加剤は、カーボンブラックおよび/またはグラファイトであってもよい。いくつかの実施形態では、この電極フィルムは、従来の電極フィルムと比較して、バインダ材の量が少なく、1種類以上の導電性促進添加剤の量が多く、そのため、実施形態に係るその電極フィルムは、望ましい機械的特性を維持しながらも等価直列抵抗の低下を示す。
【0022】
本明細書に記載の電極フィルム組成物を含有する1つ以上の電極を備えるリチウムイオンキャパシタは、等価直列抵抗の低下を有利に示し、これにより従来の電極フィルムと比較して電力密度の大きいキャパシタを提供する。いくつかの実施形態では、改善された等価直列抵抗は、発熱を抑え、それによって従来の電極フィルムを備えるリチウムイオンキャパシタの熱放散を低減または回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の電極フィルム組成物を含有する1つ以上の電極を備えるリチウムイオンキャパシタは、より安価に製造することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の電極組成物を含有するリチウムイオンキャパシタは、プリズム形、円筒形および/またはボタン形を含む様々な形状を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の電解質を備えるリチウムイオンキャパシタは、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、および/または電気自動車(EV)に電力を供給するために使用することができる。
【0023】
本明細書に記載の電極およびエネルギー貯蔵装置は、リチウムイオンキャパシタの文脈で説明することができるが、実施形態は、リチウムの有無にかかわらない、1つ以上のバッテリ、キャパシタ、キャパシタ-バッテリハイブリッド、燃料電池、これらの組み合わせ、およびそれらと同等のものなどの多くのエネルギー貯蔵装置およびシステムのいずれかで使用できる。いくつかの実施形態では、電極は、ウルトラキャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、またはリチウムイオンバッテリで使用するように構成されたカソードまたはアノードである。好ましい実施形態では、電極は、リチウムイオンキャパシタに使用するように構成されたアノードである。
【0024】
図1は、エネルギー貯蔵装置100の一例の側方断面模式図である。エネルギー貯蔵装置100は、リチウムイオンキャパシタであってもよい。もちろん、他のエネルギー貯蔵装置も本発明の範囲内であり、バッテリ、キャパシタ-バッテリハイブリッド、および/または燃料電池を含むことができることを理解されたい。エネルギー貯蔵装置100は、第1電極102、第2電極104、および第1電極102と第2電極104との間に配置されたセパレータ106を備えることができる。例えば、第1電極102および第2電極104は、セパレータ106の対向する両面にそれぞれ隣り合わせで配置することができる。第1電極102はカソードであってもよく、第2電極104はアノードであってもよく、またはその逆(第1電極102がアノードであり、第2電極104がカソード)であってもよい。エネルギー貯蔵装置100は、エネルギー貯蔵装置100の電極102,104間のイオン伝達を容易にする電解質122を備えることができる。例えば、電解質122は、第1電極102、第2電極104、およびセパレータ106と接していてもよい。電解質122、第1電極102、第2電極104、およびセパレータ106は、エネルギー貯蔵装置のハウジング120内に収容されてもよい。例えば、エネルギー貯蔵装置のハウジング120は、第1電極102、第2の電極104、セパレータ106および電解質122を導入し、エネルギー貯蔵装置100に電解質122を含浸させたあと、第1電極102、第2電極104、セパレータ106および電解質122がハウジング外部の環境から物理的に密閉されるように、密閉してもよい。エネルギー貯蔵装置100は、二重電極、二重層装置として示されているが、単層電極のような他の種類を実装してもよいことが理解されよう。
【0025】
エネルギー貯蔵装置100は、いくつかの異なる種類の電解質122のうちの任意のものを備えることができる。例えば、装置100は、リチウムイオンキャパシタの電解質を備えることができ、この電解質は、リチウム塩などのリチウム源と、有機溶媒などの溶媒とを含むことができる。いくつかの実施形態において、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロほう酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(SO2CF3)2)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)、これらの組み合わせ、および/またはそれらと同等のものを含む。いくつかの実施形態では、リチウムイオンキャパシタ電解質の溶媒は、1種類以上のエーテルおよび/またはエステルを含むことができる。例えば、リチウムイオンキャパシタ電解質の溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ビニルカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)、これらの組み合わせ、および/またはそれらと同等のものを含むことができる。例えば、電解質は、LiPF6、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびジエチルカーボネートを含むことができる。
【0026】
セパレータ106は、セパレータ106の対向する両面に隣接する2つの電極、例えば第1電極102および第2電極104を、電気的に絶縁する一方、その2つの隣接する電極間のイオン伝達を可能にするように構成することができる。セパレータ106は、様々な多孔質の電気絶縁材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、セパレータ106はポリマー材料を含むことができる。例えば、セパレータ106は、セルロース材料(例えば、紙)、ポリエチレン(PE)材料、ポリプロピレン(PP)材料、および/またはポリエチレンおよびポリプロピレン材料を含むことができる。
【0027】
図1に示すように、第1電極102および第2電極104は、第1集電体108および第2集電体110をそれぞれ備える。第1集電体108および第2集電体110は、対応する電極と外部回路(図示せず)との間の電気的結合を容易にすることができる。第1集電体108および/または第2集電体110は、1種類以上の導電性材料を含有することができ、および/または対応する電極と、外部電気回路などの外部回路とエネルギー貯蔵装置100とを結合するための端子との間の電荷の移動を容易にするような様々な形状や寸法とすることができる。例えば、集電体は、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、およびそれらの合金などを含む材料などの金属材料を含むことができる。例えば、第1集電体108および/または第2集電体110は、長方形または実質的に長方形の形状のアルミニウムホイルを含むことができ、対応する電極と外部電気回路との間の望ましい電荷の移動(例えば、集電体プレートおよび/または電極と外部電気回路とを電気的に繋ぐように構成されたエネルギー貯蔵装置の別の部品を介する、電荷の移動)を提供するような寸法にすることができる。
【0028】
第1電極102は、第1集電体108の第1の表面(例えば、第1集電体108の上面)上の第1電極フィルム112(例えば、上部の電極フィルム)と、第1集電体108の対向する第2の表面(例えば、第1集電体108の底面)上の第2電極フィルム114(例えば、下部の電極フィルム)と、を備えている。同様に、第2電極104は、第2集電体110の第1の表面(例えば、第2集電体110の上面)上の第1電極フィルム116(例えば、上部の電極フィルム)と、第2集電体110の対向する第2の表面(例えば、第2の集電体110の底面)上の第2電極フィルム118と、を備えている。例えば、第2集電体110の第1の表面は、第1の集電体108の第2の表面に対向し、セパレータ106は、第1電極102の第2電極フィルム114および第2電極104の第1電極フィルム116に隣接している。
【0029】
電極フィルム112,114,116および/または118は、様々な適切な形状、寸法、および/または厚さとすることができる。例えば、電極フィルムは、約100μm(ミクロン)~約250μmを含む約30μm~約250μmの厚さを有することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、電極フィルム112,114,116および/または118などの電極フィルムの1つ以上は、バインダ材および炭素を含有する混合物を含有することができる。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、導電性促進添加剤などの1種類以上の添加剤を含有することができる。いくつかの実施形態では、リチウムイオンキャパシタのカソードの電極フィルムは、例えば多孔質炭素材料などの1種類以上の炭素系電気活性成分を含有する電極フィルム混合物を含有することができる。いくつかの実施形態では、カソードの多孔質炭素材料は、活性炭素を含む。例えば、カソードの電極フィルムは、バインダ材、活性炭素および導電性促進添加剤を含有することができる。いくつかの実施形態では、リチウムイオンキャパシタのアノードの電極フィルムは、リチウムイオンを可逆的にインターカレートできるように構成された炭素を含有する電極フィルム混合物を含有する。いくつかの実施形態では、このリチウムをインターカレートする炭素はグラファイトである。例えば、アノードの電極フィルムは、バインダ材、グラファイトおよび導電性促進添加剤を含有することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、バインダ材は、1種類以上のフィブリル化可能なバインダ成分を含むことができる。例えば、電極フィルムを形成する処理は、このフィブリル化可能なバインダ成分をフィブリル化して、電極フィルムがフィブリル化バインダを含むようにすることができる。いくつかの実施形態では、このフィブリル化バインダは、本明細書で示す超フィブリル化バインダ粒子を含む。バインダ成分は、複数のフィブリルを提供するためにフィブリル化されてもよく、このフィブリルは、フィルムの1種類以上の他の成分に対する所望の機械的支持を与える。例えば、フィブリルのマトリックス、格子および/またはウェブを形成して、電極フィルムに所望の機械的構造を与えることができる。例えば、リチウムイオンキャパシタのカソードおよび/またはアノードは、1種類以上のフィブリル化バインダ成分を含有する1つ以上の電極フィルムを備えることができる。いくつかの実施形態では、バインダ成分は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、および/または他の適切なフィブリル化可能な材料を、単独または組み合わせで含むことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、電極フィルムは、所望の機械的特性を維持しながらも、従来の既知の乾燥電極フィルムよりもバインダ材の重量が少ない。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、約1重量%~約10重量%、約3重量%~約15重量%、約3重量%~約10重量%、約3重量%~約8重量%、約3重量%~約7重量%、約3重量%~約6重量%、または約3重量%~約5重量%のバインダ材を含有する。さらに他の実施形態では、電極フィルムは、例えば約5重量%~約6重量%または約6.5重量%~約8重量%の、約4重量%~約7重量%のバインダ材を含有するアノードである。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、約7重量%~約11重量%、例えば約8重量%~約10重量%、のバインダ材を、活性炭素と共に含有するカソードである。いくつかの実施形態では、アノードフィルムなどの電極フィルムは、バインダ材の含有量が約4重量%未満または3重量%未満であり、例えば約0.5重量%~4重量%、1重量%~4重量%、0.5重量%~3重量%、または1重量%~3重量%である。いくつかの実施形態では、バインダの量が少ない電極フィルムは、引っ張り、せん断、圧縮および/またはねじりの応力に対する所望の耐性を維持することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、電極フィルムは、フィルム中の他の材料と比較してバインダ材の量が少ないので、導電性促進添加剤の量を増やすことができ、電気的性能を改善できる。例えば、このような実施形態に係るアノードは、所望の機械的特性を維持するかまたは向上させながら、等価直列抵抗の改善を示すことができる。いくつかの実施形態では、所望の電気的性能を得るために、特定の種類の導電性促進添加剤を電極フィルムに含有させることができる。例えば、バインダ材の含有量が少ない電極フィルムは、等価直列抵抗の改善を示しながら、引っ張り、せん断、圧縮および/またはねじりの応力に対する所望の耐性を示すことができ、それにより、比較可能な構造の他の従来のエネルギー貯蔵装置と比較して、電力密度が大きいリチウムイオンキャパシタなどの、エネルギー貯蔵装置の製造が容易となる。
【0034】
いくつかの実施形態では、導電性促進添加剤は、導電性カーボンを含む。いくつかの実施形態では、導電性カーボンは、1種類以上のカーボンブラックおよび/またはグラファイトを含む。いくつかの実施形態では、上記1種類以上のカーボンブラックは、商用の、{しょうよう}Akzo Nobel N.V.製のケッチェンブラック(Ketjenblack)(登録商標)、Imerys Graphite&Carbon, Ltd.製のC-NERGY(商標)Super C65、Imerys Graphite&Carbon, Ltd.製のSuper P(登録商標)、Cabot Corp.製のBP2000(登録商標)、および/またはCabot Corp.製のLITX(登録商標)50である。いくつかの実施形態では、上記1種類以上のグラファイトは、商用の、Superior Graphite Co.製のABG1010および/またはSuperior Graphite Co.製のABG1005を含む。例えば、リチウムイオンキャパシタのアノード電極フィルムは、本明細書に記載された1種類以上の導電性促進添加剤を含有することができる。いくつかの実施形態では、導電性カーボンは、電極フィルム混合物において、約1重量%~約8重量%、または約1重量%~約5重量%を含む、約1重量%~約10重量%であってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のように、電極フィルムが導電性カーボンを含有することにより、導電性カーボンを含有しないエネルギー貯蔵装置と比較して約5%のESR改善をもたらし得る。さらに他の実施形態では、導電性カーボンは、表面積が10~100m2/g、例えば20~50m2/g、および/または粒子サイズが0.1~10μmであることを特徴とする。さらに別の実施形態では、導電性カーボンは、粒子径が約0.1μm~約0.5μm、または約10μmであることを特徴とする。いくつかの実施形態では、本明細書で示される方法によって製造されるアノードを備えるリチウムイオンキャパシタは、ESRの値が約0.1(m ohm)(ミリオーム)~約10(m ohm)、例えば、約0.5(m ohm)~約5(m ohm)、または約1.5(m ohm)~約3.5(m ohm)である。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の電極フィルムは、乾式の製造工程によって製造することができる。本明細書では、乾式の製造工程は、電極フィルムの形成において溶媒が使用されないか、または実質的に使用されない工程を指すことができる。例えば、電極フィルムの成分は乾燥粒子を含むことができる。電極フィルムを形成するための乾燥粒子を混ぜ合わせて、乾燥粒子電極フィルム混合物を得ることができる。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、電極フィルムの成分の重量百分率と乾燥粒子電極フィルム混合物の成分の重量百分率が同程度となるように、乾式の製造処理によって乾燥粒子電極フィルム混合物から形成することができる。いくつかの実施形態では、乾式の製造処理によって乾燥粒子電極フィルム混合物から形成された電極フィルムは、あらゆる処理溶媒およびそれから生じる溶媒残留物を含まないかまたは実質的に含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、乾式の製造処理によって乾燥粒子電極フィルム混合物から形成された電極フィルムは、よりクリーンでありおよび/または構造的により強くすることができ、それによって、改善された電気化学的および/または機械的性能をもたらす。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、乾燥粒子混合物から乾式の処理によって形成された自立型乾燥粒子電極フィルムである。いくつかの実施形態では、自立型乾燥電極フィルムは、乾燥した炭素粒子および乾燥した超フィブリル化バインダ粒子から本質的になるかまたはそれらからなる。いくつかの実施形態では、PTFEなどの単一のフィブリル化可能なバインダのような自立型の乾燥電極フィルムを形成するために単一のバインダのみが使用される。
【0036】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置はバッテリではない。
【0037】
図2は、いくつかの実施形態に係る、電極フィルムを製造するための工程200の一例を示すフロー図である。いくつかの実施形態では、電極フィルムを製造するための工程200は乾式の処理工程であり、得られる電極フィルムが液体、溶媒および残留物を含まないかまたは実質的に含まないように液体または溶媒を使用しない。ブロック202において、炭素粒子およびバインダ材を含有する電極フィルム混合物が形成される。任意で、1種類以上の導電性促進添加剤を混ぜ合わせることができる。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は乾燥粒子混合物である。いくつかの実施形態では、バインダ材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)および超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などの1種類以上のフィブリル化可能なポリマーを含む。いくつかの実施形態では、バインダ材は、PTFEのような1種類のポリマーからなり、または本質的になる。いくつかの実施形態において、導電性促進添加剤は、1種類以上の導電性カーボンであり得る。例えば、導電性カーボンは、本明細書に記載の1種以上のカーボンブラックおよび/またはグラファイトを含むことができる。
【0038】
ブロック204では、電極フィルム混合物中のバインダを超フィブリル化して超フィブリル化マトリックスを形成することができる。超フィブリル化の処理は、従来のフィブリル化の処理を、遅い処理速度で、および/または高い処理圧力で行うことによって実施できる。例えば、超フィブリル化の処理は、米国特許出願公開第2015/0072234号に記載されたものと比較して、減速および/または減圧して実施することができる。いくつかの実施形態では、超フィブリル化の処理は、機械的せん断処理であってもよい。例えば、バインダ材を機械的に処理して複数のフィブリルをバインダ材から形成することができるように、バインダ材に機械的せん断力を作用させることができる。いくつかの実施形態では、機械的せん断の処理は、混合および/または粉砕(ミリング)処理を含む。例えば、電極フィルム混合物の粒子がブレンダーおよび/またはミルに提供され、ブレンダーおよび/またはミルを通って循環される速度は、超フィブリル化の処理中に低減され得る。電極フィルム混合物の粒子がブレンダーおよび/またはミルを通って循環する速度を遅くすることにより、電極フィルム混合物の粒子がブレンダーおよび/またはミルのプロセスチャンバ内で一回循環される時間を長くすることができる。いくつかの実施形態では、この循環の時間を長くして、バインダ材のフィブリル化を増強させることにより、混合物の超フィブリル化をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物の粒子がブレンダーおよび/またはミル内で循環する速度は、粒子がプロセスチャンバ内で一回循環される時間が、従来の乾式の電極処理のそれよりも約1.2倍~約3倍となるように決めることができる。例えば、従来の乾式の処理の混合および/または粉砕処理の時間は、約1分であり得る。いくつかの実施形態では、混合および/または粉砕の時間は、約2分、約3分、約4分、約5分、約7分、または約10分である。混合および/または粉砕の供給速度は、従来の乾式の電極処理と比較して、例えば約半分の速度にすることができる。いくつかの実施形態では、混合および/または粉砕の供給速度は、定格機械の供給速度の約10%、定格機械の供給速度の約20%、定格機械の供給速度の約30%、定格機械の供給速度の約40%、定格機械の供給速度の約50%、定格機械の供給速度の約60%、定格機械の供給速度の約70%、定格機械の供給速度の約80%、または定格機械の供給速度の約90%である。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、炭素粒子とバインダとの乾燥混合物を約2分間~約5分間混合および/または粉砕する工程を含む処理により調製することによって、得られる。
【0039】
いくつかの実施形態では、連続混合処理を行うことができる。そのような実施形態では、混合および/または粉砕の時間は、供給速度に反比例してもよい。したがって、このような実施形態では、混合および/または粉砕の時間を長くするために、従来の乾式のフィブリル化処理と比較して、供給速度を低下させることができる。いくつかの実施形態では、この供給速度を半分に減少させることにより、混合および/または粉砕の時間が2倍になる。例えば、ある特定の機械における従来の乾式処理の供給速度は、約50~60kg/hrであり得る。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される超フィブリル化バインダまたはマトリックスは、同じ機械で約25~30kg/hrの供給速度で製造することができる。一般に、この供給速度は粉砕機械(ミリングマシン)に依存し、本明細書に記載の観点からその機械の作動パラメータに基づいて調整することができる。さらに他の実施形態では、管(channel)のより大きな機器を使用することで、混合および/または粉砕の時間を長くすることができる。バッチ式の混合および/または粉砕処理をする場合、単純に混合および/または粉砕を長時間行うことによってその処理時間を長くすることができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、フィブリル化処理中のブレンダーおよび/またはミル内の処理圧力を高めて、超フィブリル化を行うことができる。いくつかの実施形態では、処理圧力が大きくなると、バインダ材に加えられるせん断力が増し、それによってバインダ材のフィブリル化の程度が増す。いくつかの実施形態では、超フィブリル化の処理圧力は、バインダ材に加えられるせん断力が従来の乾燥電極のフィブリル化処理におけるせん断力の約1.2倍~約3倍になるように決めることができる。
【0041】
遅い処理速度および/または大きな処理圧力で行う超フィブリル化処理は、バインダ材のフィブリル化の増強を促進して、バインダ材から形成されるフィブリルの数の増加、フィブリル表面積の増大、および/またはフィブリルの長さがより長くなるのを促進し得る。いくつかの実施形態では、処理速度を遅くすることおよび/または処理圧力を大きくすることによってフィブリル化を増強し、少ない量のバインダ材から、引っ張り、せん断、圧縮および/またはねじりの応力に対する所望の耐性を有する電極フィルムを形成することができる。例えば、処理速度を遅くすることおよび/または処理圧力を大きくすることによって、バインダ材の量を少なくする一方で、フィルムの1種類以上の他の成分に所望の機械的支持を与えるのに十分な量のフィブリルの形成を促進することができる。いくつかの実施形態では、ブロック202の混合工程およびブロック204のフィブリル化工程は、1つまたは実質的に1つの連続工程であってもよい。
【0042】
特定の実施形態では、ブロック204の超フィブリル化は、従来のフィブリル化処理を同じ材料に対して2回以上繰り返すことによって行うことができる。このような実施形態では、第1のフィブリル化処理工程によってフィブリル化マトリックスを形成することができる。次いで、このフィブリル化マトリックスは、サイズを小さくして、例えば、第1の粉末状電極フィルム混合物を形成してもよい。例えば、ブロック204は、この第1のフィブリル化された電極フィルム混合物を破壊する工程を含むことができる。電極フィルムを破壊する工程は、フィブリル化された電極フィルム混合物をストレーナー、シフター、メッシュ、リドル、スクリーンおよび/またはふるいに通すことを含むことができる。破壊されたフィブリル化電極フィルム混合物は、次いで、本明細書に記載する第2のフィブリル化工程によって、超フィブリル化され得る。この第2のフィブリル化工程は、本明細書で示すように、遅い処理速度および/または大きな処理圧力で行われるフィブリル化工程であり得る。第2のフィブリル化工程は、第2の粉末状電極フィルム混合物をもたらすことができる。次いで、第2の粉末状電極フィルム混合物に対して、ブロック204の工程のさらなる反復を行ってもよく、またはブロック206の工程を実施してもよい。いくつかの実施形態では、第2の(または追加の)フィブリル化工程は、フィブリル化が増強した電極フィルム混合物、およびそれから得られる1つ以上の利点を提供する。したがって、ブロック204におけるバインダの超フィブリル化は、1回、2回、3回またはそれ以上のフィブリル化の副工程の後に行うことができる。最終的に、ブロック204で、本明細書に示す超フィブリル化マトリックスおよび/または超フィブリル化バインダ粒子を得る。
【0043】
ブロック206では、フィブリル化電極フィルム混合物をカレンダー装置でカレンダー処理して、自立型超フィブリル化電極フィルムを形成することができる。カレンダー装置は、当該技術分野において周知であり、一般に、電極フィルム混合物などの原料が供給されて電極フィルムを形成するための一対のカレンダーロールを含む。いくつかの実施形態では、本明細書でさらに説明するように、所望の最小厚さでフィルムを形成するために、追加のカレンダー処理工程なしに、第1回目のカレンダー処理工程で電極フィルムを形成することができる。いくつかの実施形態では、カレンダー処理された混合物は、液体、溶媒、およびそこから生じる残留物を含まないまたは実質的に含まない、自立型の乾燥粒子フィルムを形成する。いくつかの実施形態では、電極フィルムはアノードの電極フィルムである。いくつかの実施形態では、電極フィルムはカソードの電極フィルムである。いくつかの実施形態では、超フィブリル化電極フィルム混合物は、選択された条件下でカレンダー処理することができる。例えば、さらに他の実施形態では、カレンダー処理は、10~300℃の温度で、5~150キロニュートンの圧力で行うことができる。カレンダーは、特定の用途のために選択されたサイズであってよいが、一般には、5~80cmの範囲の直径であってもよい。
【実施例】
【0044】
図3は、異なるタイプの導電性促進添加剤を含有するアノードを備えたリチウムイオンキャパシタセルのそれぞれの等価直列抵抗を示す表である。この表には、各キャパシタアノードが含有する導電性促進添加剤の種類と、それに対応する等価直列抵抗が、導電性促進添加剤を含有しないリチウムイオンキャパシタに対する改善のパーセンテージ表示で示されている。試験された導電性促進添加剤は、メソポーラスカーボンおよび種々のタイプの導電性カーボンを含んでいた。
図3に示すように、特定の種類の導電性カーボンを含有するアノードを備えるリチウムイオンキャパシタは、改善された等価直列抵抗性能を示したが、メソポーラス炭素を含有するアノードを備えたリチウムイオンキャパシタは、等価直列抵抗の目立った改善を示さなかった。例えば、特定のタイプの導電性カーボンを含有するアノードを備えるリチウムイオンキャパシタは、等価直列抵抗の5%またはそれ以上の改善を示した。
【0045】
また、銀(Ag)粉末、ニッケル(Ni)粉末または銅(Cu)粉末などの金属粉末を含有するアノードを備えたリチウムイオンキャパシタは、等価直列抵抗において有意な改善を示さなかった。
【0046】
図4は、いくつかの実施形態に係る、薄い電極フィルムを製造するための処理工程400の一例を示すフロー図である。いくつかの実施形態では、電極フィルムはカソードの電極フィルムとすることができる。いくつかの実施形態では、電極フィルムはアノードの電極フィルムとすることができる。いくつかの実施形態では、電極フィルムを製造するための工程400は乾式の処理工程であり、液体または溶媒を使用せず、得られる電極フィルムが液体、溶媒およびそれらの残留物を含まないかまたは実質的に含まない。いくつかの実施形態では、工程400を行って、ウルトラキャパシタ、バッテリ、および/またはリチウムイオンキャパシタの電極を形成することができる。
【0047】
ブロック402において、バインダ材と1種類以上の導電性促進添加剤とを含有する電極フィルム混合物の成分を混ぜ合わせることができる。いくつかの実施形態では、電極フィルム混合物は乾燥粒子混合物である。バインダ材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)および超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などの1種類以上のフィブリル化可能なポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、バインダ材は、PTFEのような1種類のポリマーからなりまたは本質的になる。いくつかの実施形態では導電性促進添加剤は、1種類以上の導電性カーボンであり得る。例えば、導電性カーボンは、本明細書に記載の1種類以上のカーボンブラックおよび/またはグラファイトを含むことができる。
【0048】
ブロック404において、バインダ材からフィブリルを形成するために、電極フィルム混合物をフィブリル化することができる。フィブリル化処理は、遅い処理速度および/または大きな処理圧力で実行することができる。その遅い処理速度および/または大きな処理圧力によって、少ない量のバインダ材から、引っ張り、せん断、圧縮および/またはねじりの応力に対する所望の耐性を有する電極フィルムを形成することができるように、フィブリル化の増強を促進し得る。本明細書に記載されているように、いくつかの実施形態では、フィブリル化処理は、機械的せん断処理、例えば、混合処理および/または粉砕処理を含むことができる。いくつかの実施形態では、フィブリル化処理の間、電極フィルム混合物の粒子がブレンダーおよび/またはミルを循環する速度を遅くすることができる。いくつかの実施形態では、フィブリル化処理中のブレンダーおよび/またはミルの内部の処理圧力を大きくすることができる。いくつかの実施形態では、ブロック402の混合工程およびブロック404のフィブリル化工程は、1つまたは実質的に1つの連続工程であってもよい。処理速度を遅くすることおよび/または処理圧力を大きくすることは、前述のより大きな強度を有する電極フィルムを、例えば120μm未満または本明細書に記載のように以前に可能であったよりも薄く、単一の高圧カレンダー処理工程(単一の工程)、または複数のカレンダー処理工程(例えば、最初のカレンダー処理工程の後、フィルムが繰り出され、1回または複数回、再カレンダー処理を行う工程)を介して行われる。
【0049】
特定の実施形態では、ブロック404は、
図2のブロック204を参照して説明したような、フィブリル化された電極フィルム混合物を、例えば破壊することによって、そのサイズを小さくし、そして再フィブリル化する工程を含むことができる。ブロック406では、そのフィブリル化された電極フィルム混合物をカレンダー処理して第1電極フィルムを形成することができる。ブロック408では、第1電極フィルムを繰り出すことができる。例えば、第1電極フィルムは、以下に説明する
図5Aおよび
図5Bに示すような繰出機を通すことができる。ブロック410において、繰り出された電極フィルムは、少なくとも1回再カレンダー処理することができる。いくつかの実施形態では、電極フィルムは、約50μm以下の厚さ、または本明細書に記載された他の薄さのような、薄い電極フィルムを形成するために2回以上再カレンダー処理することができる。いくつかの実施形態では、この薄い電極フィルムは、引っ張り、せん断、圧縮および/またはねじりの応力に対する所望の耐性を示すことができる自立型乾燥粒子電極フィルムである。例えば、カレンダーラインを1回通過したリチウムイオンキャパシタのアノード電極フィルムなどの、電極フィルムの厚さは、約120μmであってもよい。本明細書に記載された、フィブリル化を増強して得られる電極フィルムは、強度が高く、カレンダー処理された電極フィルムを繰り出し、約120μm未満の厚さに達するようにカレンダーラインを1回以上追加で通過させることができる。例えば、フィルムは、二度目のカレンダー処理によって、例えば約80μm以下の厚さに、より薄くすることができる。再カレンダー処理されたアノード電極フィルムは繰り出され、三度目のカレンダーラインの通過を経て、約50μmの厚さの電極フィルムとすることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、80μm未満の厚さの電極フィルム、または、従来の電極フィルムよりも薄い本明細書に記載された他の電極フィルムは、超フィブリル化されたバインダを有する電極フィルム混合物をカレンダーラインに1回だけ通すことによって製造することができる。例えば、カレンダー処理は、その増強されたフィブリル化に起因するフィルムの高い強度のため、混合物を1回だけカレンダー処理することによって80μm未満の厚さを達成できるように、電極フィルム混合物に十分な圧力を及ぼして行うことができる。電極フィルム混合物をカレンダー装置で一度だけ処理することによって電極フィルムを所望の薄さにすることは、より安価なおよび/またはより高速な製造処理工程を提供することができる。
【0051】
図5Aは、電極フィルムのカレンダーライン用の繰出機の一実施形態の概略図である。
図5Bは、
図5Aに示される繰出機の一部のより詳細な図である。
図5Aおよび
図5Bに示される装置は、
図4の再カレンダー処理工程410を実施するために用いることができる。例えば、図示された実施形態では、自立型乾燥電極フィルム(
図5Bに「繰出材」として示されている)が繰り出され、そして、図示された一対のローラで再カレンダー処理される。
図5Aおよび
図5Bに示すローラと類似のカレンダー装置も、乾燥した電極混合物を受けて圧縮し、
図2の工程206および
図4の工程410またはその他の実施形態のような第1回目のカレンダー処理工程において自立型乾燥電極フィルムを最初に形成することができることが理解されよう。
【0052】
図6Aおよび
図6Bは、乾燥電極フィルムマトリックスのSEM画像を示す。
図6Aは、従来の乾式の電極処理によって製造された乾燥電極フィルムマトリックスのSEM画像を示す。
図6Bは、工程200や本明細書に記載されたその他の超フィブリル化処理に従って製造された乾燥電極フィルムマトリックスを示す。
図6Aの電極フィルムは8%のバインダを含有し、80μmの厚さを有する。
図6Bの電極フィルムは6.5%のバインダを含有し、50μmの厚さを有する。
図6Bの電極フィルムは、2回の粉砕処理が施された電極フィルム混合物から製造された。
図6Aと
図6Bの比較から分かるように、
図6Bの乾燥電極フィルムマトリックスは、バインダのフィブリル化が増強されていることが特徴である。具体的には、
図6Bでは、フィブリルの数が増加している。
図6Aでは、炭素粒子(図に示されている)の実質的な部分は自由表面を有し、
図6Bでは、フィブリル化バインダは炭素粒子の実質的に増大した表面積を被覆する。一般に、
図6Bに示されるバインダは、同じ質量の
図6Aのバインダよりも大きな表面積を有し、より大きな表面積で炭素粒子と接触する。
図6Bのバインダは、本明細書で提供される超フィブリル化バインダの例である。
【0053】
図7は、本明細書で示す方法によって作製されたアノードを備える、様々な実施形態に係るリチウムイオンキャパシタについての、バインダの含有量、フィルムの厚さ、静電容量、およびESRを示す。
【0054】
本発明は特定の実施形態および実施例の文脈で開示されているが、当業者であれば、本発明は具体的に開示された実施形態を超えて他の実施形態および/または本発明の他の使用や変更などに拡張されることを理解するであろう。加えて、本発明の実施形態のいくつかの変形が示され、詳細に説明されているが、本発明の範囲内にある他の変更は、この開示に基づいて当業者には容易に明らかであろう。これらの実施形態の特定の特徴および態様の様々な組合せまたは部分的な組み合わせがなされ得ること、そしてそれも本発明の範囲に含まれることを理解されたい。開示された実施形態の様々な特徴および態様は、開示された発明の実施形態の様々な他の態様を形成するために、互いに組み合わせるか、または互いに置き換えることができることを理解されたい。したがって、本明細書に開示された本発明の範囲は、上記の特定の実施形態によって限定されるべきではない。
【0055】
本明細書で用いられる見出し(表題)は、便宜上のものであって、本明細書に開示される装置および方法の範囲または意味に必ずしも影響を及ぼすものではない。