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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】経口タキサン組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/337 20060101AFI20230214BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230214BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230214BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230214BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230214BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230214BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
A61K31/337
A61K47/26
A61K47/44
A61K47/12
A61K47/22
A61K9/08
A61P35/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021191523
(22)【出願日】2021-11-25
(62)【分割の表示】P 2018536325の分割
【原出願日】2016-09-29
(65)【公開番号】P2022016636
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】62/234,868
(32)【優先日】2015-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518110556
【氏名又は名称】エイジネックス・ホンコン・イノヴェイティヴ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ATHENEX HK INNOVATIVE LIMITED
【住所又は居所原語表記】UNIT 608 ‐ 613 IC DEVELOPMENT CENTRE, NO. 6 SCIENCE PARK WEST AVENUE, HONG KONG SCIENCE PARK, SHA TIN, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】チャン,デニス・エスビー
(72)【発明者】
【氏名】リー,ミン・ツン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ウェン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,ジョンソン・ユー‐ナム
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-541581(JP,A)
【文献】国際公開第97/23208(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/337
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タキサンと界面活性剤混合物とを含む癌治療用の医薬組成物であって、
タキサン、および、
80:20~65:35の重量比でのポリソルベート80およびポリオキシル35硬化ヒマシ油からなる界面活性剤混合物を含み、ここで、前記界面活性剤混合物は、重量で前記医薬組成物の少なくとも90%を構成し、
前記医薬組成物は、油を含まず、経口投与用に製剤され、
前記医薬組成物は、タキサンの溶解度およびタキサンの吸収の少なくとも1つを相乗的様式で増強する、医薬組成物。
【請求項2】
タキサンと界面活性剤混合物とを含む癌治療用の医薬組成物であって、
タキサン、
HM30181A、および、
ポリソルベート80およびポリソルベート20からなる界面活性剤混合物を含み、ここで、前記医薬組成物中の前記ポリソルベート20に対する前記ポリソルベート80の重量比は80:20であり、そして、前記界面活性剤混合物は重量で前記医薬組成物の少なくとも90%、かつ、98%以下を構成し、
前記界面活性剤混合物およびHM30181Aは、タキサンの溶解度およびタキサンの吸収の少なくとも1つを相乗的様式で増強し、
前記医薬組成物は、油を含まず、経口投与用に製剤される、医薬組成物。
【請求項3】
前記タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、および、テセタキセルから成るグループから選択される請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
更に、安定剤を含む請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記安定剤は、クエン酸およびアスコルビン酸の少なくとも一つを含む請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤混合物は、胃液又は腸液による前記医薬組成物の希釈時にミセルを形成する請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
摂取後にミセル溶液を形成する請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記タキサンが前記界面活性剤混合物中に溶解され、前記タキサンは前記医薬組成物中に少なくとも30mg/mL~70mg/mLの濃度で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記タキサンが前記界面活性剤混合物中に溶解され、前記タキサンは前記医薬組成物中に少なくとも30mg/mL~70mg/mLの濃度で存在する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項10】
癌治療用の医薬組成物の調製におけるタキサンと界面活性剤混合物とを含む組成物の使用方法であって、
タキサン、および、
80:20~65:35の重量比でのポリソルベート80およびポリオキシル35硬化ヒマシ油からなる界面活性剤混合物を含み、ここで、前記界面活性剤混合物は、重量で前記医薬組成物の少なくとも90%を構成し、
前記医薬組成物は、油を含まず、経口投与用に製剤され、
前記医薬組成物は、タキサンの溶解度およびタキサンの吸収の少なくとも1つを相乗的様式で増強する、使用方法。
【請求項11】
癌治療用の医薬組成物の調製におけるタキサンと界面活性剤混合物とを含む組成物の使用方法であって、
タキサン、
HM30181A、および、
ポリソルベート80およびポリソルベート20からなる界面活性剤混合物を含み、ここで、前記医薬組成物中の前記ポリソルベート20に対する前記ポリソルベート80の重量比は80:20であり、そして、前記界面活性剤混合物は重量で前記医薬組成物の少なくとも90%、かつ、98%以下を構成し、
前記界面活性剤混合物およびHM30181Aは、タキサンの溶解度およびタキサンの吸収の少なくとも1つを相乗的様式で増強し、
前記医薬組成物は、油を含まず、経口投与用に製剤される、使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、オプションとして、P-糖タンパク質(PGP)阻害剤の投与または同時投与後において、典型的には、異なる界面活性剤の組み合わせを用いることによって達成される高いバイオアベイラビリティでのタキサンの経口送達のための癌治療用の医薬組成物およびその調製のための使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の背景説明は、本発明の理解に有用な情報を含む。それは、本明細書で提供される情報のいずれかが先行技術であるとか、或いはここに請求されている発明に関連しているとか、または、具体的または暗示的に参照されている出版物が先行技術であることか、の自認を構成するものではない。
【0003】
タキサンは、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、ドセタキセル(Taxotere(登録商標)又Docecad)、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、テセタキセルを含む重要なクラスの細胞傷害性薬剤である。パクリタキセルは、太平洋イチイ(Taxus brevifolia)から単離されたジテルペンである。パクリタキセルはチューブリンに結合するので、パクリタキセルは細胞分裂を阻害する能力を有する。従って、パクリタキセルは、卵巣癌、乳癌、肺癌、頭頸部癌、および膵臓癌の治療用として承認されている。更に、パクリタキセルは、マラリヤや腎臓疾患などのその他の病気を効果的に治療することができる。しかしながら、パクリタキセルは水への溶解度が非常に低く、それによって安全で効果的な治療法の確立を困難にしている。
【0004】
タキサンの注射用の溶解度を改善するための1つの公知のアプローチでは、パクリタキセル製剤は、クレモフォール(Cremophor)(登録商標)EL(Kolliphor(登録商標)EL,ポリオキシ35ヒマシ油)、又はトゥイーン(Tween)(登録商標)80(ポリソルベート80)およびエタノールを含む。そのような製剤において投与される場合、Cremophor(登録商標)EL(又はTween(登録商標)80)は、それぞれ独立的に毒性があり、血管拡張、低血圧、呼吸困難、無気力、アナフィラキシー様過敏症反応、高脂血症、異常リポタンパク質パターン、赤血球の凝集および末梢神経障害などの副作用を示す。これらの副作用を回避する一つの選択肢は、前記医薬組成物を経口的に投与することである。残念なことに、経口投与された場合、このようなパクリタキセル製剤は、バイオアベイラビリティと吸収が非常に低いという欠点を有する。
【0005】
経口投与されるパクリタキセルのバイオアベイラビリティが低い1つの理由は、パクリタキセル製剤が消化管(GI)管に見られる条件下で物理的安定性が低いことである。本明細書で使用される「物理的安定性」とは、タキサンが溶液中に溶解したまま留まるか、または沈殿する傾向のことをいう。高い物理的安定性を有するタキサンは、溶液中にとどまる傾向を有するが、低い物理的安定性を有するタキサンは、沈殿傾向を有する。パクリタキセルは水に対して難溶性(0.01mg/mL未満の溶解度)であるため、医薬製剤は最初には溶解したタキサンを含有するが、それらのタキサンは臨床設定において容易に沈殿する。いくつかの水混和性有機溶媒は、パクリタキセルを部分的に溶解する。しかし、パクリタキセルの濃度が飽和に近い場合、水溶液を水性注入液または胃液で希釈すると、パクリタキセルが沈殿する可能性がある。Joshi等の米国特許第6319943号(特許文献1),col.1,ln.44~col.2,ln.9; Gutierrez-Rocca等の米国特許第6964946号(特許文献2),col.10,ln.39-65を参照。更に、注入液での希釈で、Cremophor(登録商標)/エタノール製剤からパクリタキセルが沈殿する。パクリタキセル沈殿物は、保存中に長期間にわたりいくつかの組成物でさえも形成された。沈殿を防止するための1つの戦略は、水溶液との混合時にミセルを形成する両親媒性媒体中にパクリタキセルを溶解することである。好都合なことに、親水性の外側が前記ミセルを水溶液中に懸濁状態に維持しながら、パクリタキセルはそれらのミセルの内部で溶化されたまま留まることができる。Joshi等の米国特許第6319943号(特許文献1),col.9,ln.11-41を参照。ここに記載のこれらおよびその他すべての外部資料の全体をここに参考文献として合体させる。合体される参考資料における定義又は文言の用法がここに提供される定義又は文言の用法と一致しない、又は、反する場合、ここに提供される定義と用語が適用され、参考文献中の定義と用語は適用されない。
【0006】
ドセタキセルはパクリタキセルの誘導体であり、乳癌、肺癌、前立腺癌、胃癌、頭頸部癌の治療薬として承認されている。典型的には、ドセタキセルは、非経口送達のためにも界面活性剤と処方されるが、パクリタキセルと同様に、経口投与されるドセタキセルのバイオアベイラビリティは非常に低い。バイオアベイラビリティが低いもう一つの理由は、タキサンが、P糖タンパク質(PGP)のような多剤輸送体によって標的細胞から流出することであり得る。この問題に対処するために、タキサンをPGP阻害剤と同時投与する試みがなされている。例えば、Broderらの米国特許第6245805号(特許文献3)および米国特許第7041640号(特許文献4)、Gaoらの米国特許第7115565号(特許文献5)を参照。本発明の主題に最も近い組成物および方法は、Gutierrez-Roccaらの米国特許第6964946号(特許文献2)に開示されている。例えば、Gutierrez-Roccaの医薬組成物は、タキサンまたはタキサン誘導体を、少なくとも30重量%の担体、0~70%の共可溶化剤を含む。Gutierrez-Roccaはまた、このような医薬組成物を投与して疾患を治療する方法を開示している。場合により、バイオアベイラビリティ増強剤、すなわちシクロスポリンを、タキサン含有医薬組成物の投与の72時間前または最短で投与後30分まで投与することができる。好都合にも、Gutierrez-Roccaは、50~500ng/mLの範囲のパクリタキセル血漿レベルをもたらした治療レジメンを報告しており、これは、感染の潜在的な不便性、不快感、時間ロスのない96時間のIV注入中に達成されるレベルに匹敵する。しかし、このシステムには多くの欠点がある。最も顕著には、製剤が比較的複雑であり、様々な担体/共可溶化剤製剤におけるタキサンの劣化と、製剤が胃液との接触時のタキサンの沈殿に対して対処していないことである。Joshi等の米国特許第6319943号(特許文献1); Machadoらの国際公開第2007/085067号(特許文献7)を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第6319943号
【文献】米国特許第6964946号
【文献】米国特許第6245805号
【文献】米国特許第7041640号
【文献】米国特許第7115565号
【文献】国際公開第2007/085067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、タキサンのバイオアベイラビリティが改善されたいくつかの製剤が製造されているにもかかわらず、タキサンの高いバイオアベイラビリティおよび溶解性を有する経口タキサン組成物および方法のためのシステムおよび方法を提供する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、2つの界面活性剤、最も典型的には2つの化学的に異なる界面活性剤の組み合わせ、を用いて医薬組成物中にタキサンを処方する組成物、方法および使用を提供する。好ましくは、医薬組成物は、PGP阻害剤(例えば、4-オキソ-4H-クロメン-2-カルボン酸[2-(2-(4-[2-(6,7-ジメトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-エチル]-フェニル)-2H-テトラゾール-5-イル)-4,5-ジメトキシ-フェニル]-アミド(HM30181))の投与後に、投与又は同時投与される。予想外に、医薬組成物の経口投与後のタキサンの吸収は、いずれかの界面活性剤が個々にタキサンと投与されたときに吸収されるタキサンの合計よりも増強される。この相乗効果は、前記界面活性剤が特定の範囲の比(例えば、終点を含めて60:40~85:15重量)で医薬組成物に含まれる場合に特に観察される。本明細書における値の範囲の列挙は、範囲内に入る個々の値ごとに個別に言及する簡略化方法として役立つことを意図するものに過ぎない。本明細書中で銘記されない限り、個々の各値は、あたかも本明細書に個々に列挙されているかの如く明細書に組み込まれる。
【0010】
好ましくは、医薬組成物中の第2界面活性剤に対する第1界面活性剤の比率は、65(±2):35(±2)または80(±2):20(±2)重量である。いくつかの実施形態では、本発明の特定の実施形態を記載および請求するために使用される、成分の量、濃度、反応条件などの特性を表す数字は、場合によっては「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、いくつかの実施形態では、記載された説明および添付の請求の範囲に記載された数値パラメータは、特定の実施形態によって得られることが意図される所望の特性に応じて変化し得る近似値である。一般に、第1界面活性剤および第2界面活性剤の重量は、医薬組成物の総重量の90%以下、92%以下、94%以下、96%以下或いは98%以下である。
【0011】
タキサンに関して、本発明者らは、本発明の医薬組成物および方法における使用にパクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、テセタキセルなどが適していると考えている。好ましい実施形態では、前記第1界面活性剤は、ポリソルベート80(Tween(登録商標)80)であり、前記第2界面活性剤は、ポリオキシル35硬化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)EL)、ポリオキシル40硬化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)RH40)、又は、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20)である。さらに好ましい態様において、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20)が第1界面活性剤であり、第2界面活性剤は、好ましくは、ポリエトキシル化ヒマシ油(例えば、Cremophor(登録商標)ELまたはCremophor(登録商標)RH40)である。更に別の好ましい実施例において、前記第1界面活性剤は、ポリオキシル35硬化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)EL)、であり、前記第2界面活性剤は、カプリルカプロイルポリオキシグリセリド(Labrasol(登録商標))又はポリオキシエチル化12-ヒドロキシステアリン酸(Solutol(登録商標)HS15)である。尚、前記医薬組成物は、更に、クエン酸および/またはアスコルビン酸(例えば、0.1~5重量%、好ましくは0.5~1重量%)のような安定剤をさらに含むことができると理解される。本明細書のいくつかの実施形態に関して提供される任意のおよびすべての例、または例示的な用語(例えば、「~など」)の使用は、単に本発明をよりよく示すことを意図するものであって、したがって、請求される発明の範囲を限定するものではない。
【0012】
従って、本発明者らは、PGP阻害剤および医薬組成物を含むキットを考案する。前記医薬組成物は、タキサンおよび第1界面活性剤および第2界面活性剤を含む。上述したように、前記第1界面活性剤および第2界面活性剤を、相加的な方法以上にタキサンの吸収を増強するそれぞれの量で含む。前記PGP阻害剤は、前記医薬組成物とは無関係に投与用に製剤化することができる。例えば、前記PGP阻害剤は、前記医薬組成物の1時間~5分前に経口的に服用されるピルとして処方することができる。あるいは、前記PGP阻害剤は、前記医薬組成物との同時投与のために製剤化することも可能である。
【0013】
本発明の主題のさらなる態様において、医薬組成物を製造する方法は、タキサンを、第1界面活性剤および第2界面活性剤と共に処方することを含み、前記第1界面活性剤および第2界面活性剤は、相加的な方法以上にタキサンの吸収を増強するそれぞれの量で含まれる。好ましい方法において、第1界面活性剤および第2界面活性剤は、前記医薬組成物の90重量%以下、92重量%以下、94重量%以下、96重量%以下または98重量%以下を構成し、前記医薬組成物中の前記第2界面活性剤に対する前記第1界面活性剤の比率は、60:40~85:15である。
【0014】
本発明の主題のさらに別の態様は、経口投与P-糖タンパク質阻害剤を哺乳動物に提供する第1提供工程と、上述の経口投与医薬組成物を提供する第2提供工程を含む哺乳動物を治療する方法を含む。
【0015】
従って、前記経口投与医薬組成物中のタキサンの経口バイオアベイラビリティとタキサンの薬物血中濃度曲線下面積の少なくとも1つを増加させる方法を、前記経口投与医薬組成物中に第1界面活性剤および第2界面活性剤をタキサンと共に含めることによって達成することができる、と理解される。経口投与タキサンの、半減期、ピーク血漿濃度、および/またはピーク血漿濃度に達する時間もまた増加し得る。
【0016】
即ち、本発明は、以下を提供する。
【0017】
医薬組成物であって、タキサン、および、タキサンの溶解度および吸収の少なくとも1つを相加的な方法以上に増強するそれぞれの量の第1界面活性剤および第2界面活性剤を含む医薬組成物、を提供する。
好ましくは、 前記医薬組成物中の前記第2界面活性剤に対する前記第1界面活性剤の重量比は60:40~85:15であり、
前記医薬組成物中の前記第2界面活性剤に対する前記第1界面活性剤の重量比は65:35~80:20である。
また、医薬組成物であって、タキサン、および、第1界面活性剤および第2界面活性剤を有し、ここで、前記医薬組成物中の前記第2界面活性剤に対する前記第1界面活性剤の重量比は60:40~85:15であり、そして、前記第1界面活性剤および前記第2界面活性剤は総重量の98%以下を構成する医薬組成物、を提供する。
好ましくは、前記タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、およびテセタキセルから成るグループから選択され
前記第1界面活性剤はポリソルベートを含み、そして、前記第2界面活性剤は前記第1界面活性剤と異なり、かつ、ポリソルベート又はポリオキシル硬化ヒマシ油を含み、
前記第1界面活性剤は、ポリソルベート80又はポリソルベート20を含み、
前記第2界面活性剤はポリオキシル35硬化ヒマシ油であり、
前記第1界面活性剤はポリオキシル硬化ヒマシ油を含み、そして、前記第2界面活性剤は、カプリルカプロイルポリオキシグリセリド又はポリオキシエチル化12-ヒドロキシステアリン酸を含み、
更に、安定剤を含み、
前記安定剤は、クエン酸およびアスコルビン酸の少なくとも一つを含む。
【0018】
また、キットであって、P-糖タンパク質阻害剤、および、医薬組成物を含み、前記医薬組成物は、タキサンおよび第1界面活性剤および第2界面活性剤を含み、前記第1界面活性剤および前記第2界面活性剤が、相加的な方法以上でタキサンの吸収を増強するそれぞれの量で存在するキット、を提供する。
好ましくは、前記P-糖タンパク質阻害剤は、前記医薬組成物とは独立して投与用に製剤化され、
好ましくは、前記P-糖タンパク質阻害剤は、前記医薬組成物との同時投与用に製剤化される。
また、キットであって、以下を有する、P-糖タンパク質阻害剤、および医薬組成物を含み、前記医薬組成物はタキサンと第1界面活性剤および第2界面活性剤を含み、前記医薬組成物中の前記第2界面活性剤に対する前記第1界面活性剤の重量比が60:40~85:15であり、そして、前記第1界面活性剤および前記第2界面活性剤は、総重量の98%以下を構成するキット、を提供する。
好ましくは、前記タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、およびテセタキセルから成るグループから選択され、
前記第1界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20およびカプリルカプロイルポリオキシグリセリドから成るグループから選択され、
前記第2界面活性剤は前記第1界面活性剤と異なり、かつ、ポリソルベート80又はポリエトキシル化ヒマシ油であり、
前記医薬組成物は、更に安定剤を含み、
前記安定剤は、クエン酸およびアスコルビン酸の少なくとも一つを含む。
【0019】
医薬組成物の製造方法であって、タキサンを第1界面活性剤および第2界面活性剤と共に処方する工程を有し、前記第1界面活性剤および前記第2界面活性剤は、相加的な方法以上にタキサンの吸収を増強するそれぞれの量で存在する医薬組成物の製造方法、を提供する。
また、医薬組成物の製造方法であって、タキサンを第1界面活性剤および第2界面活性剤と共に処方する工程を有し、前記第1界面活性剤および前記第2界面活性剤は、前医薬組成物の重量の98%以下を構成し、そして、前記医薬組成物中の前記第2界面活性剤に対する前記第1界面活性剤の重量比は、60:40~85:15である医薬組成物の製造方法、を提供する。
好ましくは、前記タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、およびテセタキセルから成るグループから選択され、
前記第1界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20およびカプリルカプロイルポリオキシグリセリドから成るグループから選択され、
前記第2界面活性剤は前記第1界面活性剤と異なり、かつ、ポリソルベート80又はポ
リエトキシル化ヒマシ油であり、
更に、前記タキサン、前記第1界面活性剤および前記第2界面活性剤を、安定剤と共に処方する工程を有し、
前記安定剤は、クエン酸およびアスコルビン酸の少なくとも一つを含む。
【0020】
また、哺乳動物を治療する方法であって、経口投与P-糖タンパク質阻害剤を提供する第1提供工程、そして、経口投与医薬組成物を提供する第2提供工程を有し、前記経口投与医薬組成物は、タキサンと第1界面活性剤および第2界面活性剤とを含み、そして、前記経口投与医薬組成物中の前記第2界面活性剤に対する前記第1界面活性剤の重量比は60:40~85:15である哺乳動物を治療する方法、を提供する。
好ましくは、 前記P-糖タンパク質阻害剤はHM30181であり、
前記タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、およびテセタキセルから成るグループから選択され、
前記第1界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20およびカプリルカプロイルポリオキシグリセリドから成るグループから選択され、
前記第2界面活性剤は前記第1界面活性剤と異なり、かつ、ポリソルベート80又はポリエトキシル化ヒマシ油であり、
前記経口投与医薬組成物は、更に、安定剤を含み、
前記安定剤は、クエン酸およびアスコルビン酸の少なくとも一つを含む。
【0021】
また、経口投与される医薬組成物中のタキサンの経口バイオアベイラビリティ、ピーク血漿濃度、およびタキサンの薬物血中濃度曲線下面積の少なくとも1つを増加させる方法であって、 前記経口投与される医薬組成物中に、タキサンと第1界面活性剤および第2界面活性剤を含める工程を有し、ここで、前記第1界面活性剤および前記第2界面活性剤は前記医薬組成物の98重量%以下を構成し、そして、前記医薬組成物中の前記第2界面活性剤に対する前記第1界面活性剤の重量比は60:40~85:15である方法、を提供する。
前記タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、およびテセタキセルから成るグループから選択され、
前記第1界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20およびカプリルカプロイルポリオキシグリセリドから成るグループから選択され、
前記第2界面活性剤は前記第1界面活性剤と異なり、かつ、ポリソルベート80又はポリエトキシル化ヒマシ油であり、前記経口投与される医薬組成物は、更に、安定剤を含み、
前記安定剤は、クエン酸およびアスコルビン酸の少なくとも一つを含む。
【0022】
医薬組成物からのタキサンの吸収を増加させるための第1界面活性剤および第2界面活性剤の利用法であって、前記医薬組成物中の前記第2界面活性剤に対する前記第1界面活性剤の重量比は60:40~85:15であり、そして、前記第1界面活性剤および前記第2界面活性剤は前記医薬組成物の総重量の98%以下を構成する第1界面活性剤および第2界面活性剤の利用法、を提供する。
好ましくは、前記タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセルおよびテセタキセルから成るグループから選択され、
前記第1界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20およびカプリルカプロイルポリオキシグリセリドから成るグループから選択され、前記第2界面活性剤は前記第1界面活性剤と異なり、かつ、ポリソルベート80又はポリエトキシル化ヒマシ油であり、前記医薬組成物は、更に、安定剤を含み、
前記安定剤は、クエン酸およびアスコルビン酸の少なくとも一つを含む。
【0023】
また、ガンの治療用の医薬組成物の製造における第1界面活性剤および第2界面活性剤の利用法であって、前記医薬組成物はタキサンを含み、前記医薬組成物中の前記第2界面活性剤に対する前記第1界面活性剤の重量比は60:40~85:15であり、そして、
前記第1界面活性剤および前記第2界面活性剤は前記医薬組成物の総重量の98%以下を構成する第1界面活性剤および第2界面活性剤の利用法、を提供する。
好ましくは、前記タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセルおよびテセタキセルから成るグループから選択され、
前記第1界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20およびカプリルカプロイルポリオキシグリセリドから成るグループから選択され、
前記第2界面活性剤は前記第1界面活性剤と異なり、かつ、ポリソルベート80又はポリエトキシル化ヒマシ油であり、
ガンの治療用の医薬組成物は、更に、安定剤を含み、前記安定剤は、クエン酸およびアスコルビン酸の少なくとも一つを含む。
【0024】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様および利点は、同様の数字が同様の構成要素を表す添付の図面とともに、以下の好ましい実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1.1A】pH1.2、pH4.0、pH6.8、およびpH7.5での100%Tween(登録商標)80製剤からのドセタキセルの溶解プロファイルを示すグラフである。
図1.1B】pH1.2、pH4.0、pH6.8、およびpH7.5での100%Cremophor(登録商標)EL製剤からのドセタキセルの溶解プロファイルを示すグラフである。
図1.1C】pH1.2、pH4.0、pH6.8、およびpH7.5での100%Tween(登録商標)20製剤からのドセタキセルの溶解プロファイルを示すグラフである。
図1.2A】pH1.2、pH4.0、pH6.8、およびpH7.5での65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)EL製剤からのドセタキセルの溶解プロファイルを示すグラフである。
図1.2B】pH1.2、pH4.0、pH6.8、およびpH7.5での65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)RH40製剤からのドセタキセルの溶解プロファイルを示すグラフである。
図1.2C】pH1.2、pH4.0、pH6.8、およびpH7.5での80%Tween(登録商標)80/20%Tween(登録商標)20製剤からのドセタキセルの溶解プロファイルを示すグラフである。
図1.2D】pH1.2、pH4.0、pH6.8、およびpH7.5での35%Tween(登録商標)20/65%Cremophor(登録商標)EL製剤からのドセタキセルの溶解プロファイルを示すグラフである。
図1.2E】pH1.2、pH4.0、pH6.8、およびpH7.5での20%Labrasol(登録商標)/80%Cremophor(登録商標)EL製剤からのドセタキセルの溶解プロファイルを示すグラフである。
図1.2F】pH1.2、pH4.0、pH6.8、およびpH7.5での50%Cremophor(登録商標)EL/50%Solutol(登録商標)HS15製剤からのドセタキセルの溶解プロファイルを示すグラフである。
図2.1】HM30181の同時投与有り又は無しでの、100%Tween(登録商標)80ドセタキセル製剤の投与後の、血漿ドセタキセル濃度対時間のグラフである。
図2.2】HM30181の同時投与有り又は無しでの、100%Tween(登録商標)20ドセタキセル製剤の投与後の、血漿ドセタキセル濃度対時間のグラフである。
図2.3】HM30181の同時投与有り又は無しでの、100%Cremophor(登録商標)ELドセタキセル製剤の投与後の、血漿ドセタキセル濃度対時間のグラフである。
図2.4】HM30181の同時投与有り又は無しでの、100%Labrasol(登録商標)ドセタキセル製剤の投与後の、血漿ドセタキセル濃度対時間のグラフである。
図3.1】HM30181の同時投与有り又は無しでの、65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)ELドセタキセル製剤の投与後の、血漿ドセタキセル濃度対時間のグラフである。
図3.2A】100%Tween(登録商標)80、100%Cremophor(登録商標)ELおよび65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)ELドセタキセル製剤の投与後(ドセタキセル単独投与のみ)の、血漿ドセタキセル濃度対時間のグラフである。
図3.2B】100%Tween(登録商標)80、100%Cremophor(登録商標)ELおよび65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)ELドセタキセル製剤の投与後(HM30181とのドセタキセル同時投与)の、血漿ドセタキセル濃度対時間のグラフである。
図3.3A】100%Tween(登録商標)80、100%Tween(登録商標)20、80%Tween(登録商標)80/20%Tween(登録商標)20、ドセタキセル製剤の投与後(ドセタキセル投与のみ)の、血漿ドセタキセル濃度対時間のグラフである。
図3.3B】100%Tween(登録商標)80、100%Tween(登録商標)20および80%Tween(登録商標)80/20%Tween(登録商標)20ドセタキセル製剤の投与後(HM30181とのドセタキセル同時投与)の、血漿ドセタキセル濃度対時間のグラフである。
図3.4A】100%Tween(登録商標)20、100%Cremophor(登録商標)ELおよび65%Tween(登録商標)20/35%Cremophor(登録商標)ELドセタキセル製剤の投与後(ドセタキセル単独投与)の、血漿ドセタキセル濃度対時間のグラフである。
図3.4B】100%Tween(登録商標)20、100%Cremophor(登録商標)ELおよび65%Tween(登録商標)20/35%Cremophor(登録商標)ELドセタキセル製剤の投与後(HM30181とのドセタキセル同時投与)の、血漿ドセタキセル濃度対時間のグラフである。
図3.5A】100%Labrasol(登録商標)、100%Cremophor(登録商標)ELおよび80%Cremophor(登録商標)EL/20%Labrasol(登録商標)ドセタキセル製剤の投与後(ドセタキセル単独投与)の、血漿ドセタキセル濃度対時間のグラフである。
図3.5B】100%Labrasol(登録商標)、100%Cremophor(登録商標)ELおよび80%Cremophor(登録商標)EL/20%Labrasol(登録商標)ドセタキセル製剤の投与後(HM30181とのドセタキセル同時投与)の、血漿ドセタキセル濃度対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細説明
本発明者らは、驚くべきことに、タキサン含有医薬組成物中に2つの異なる界面活性剤の組み合わせを含めることにより、経口投与タキサン、特にドセタキセルのバイオアベイラビリティを実質的に増加させることができることを発見した。界面活性剤の重量比が終点を含めて60:40~85:15の範囲である場合、タキサンのバイオアベイラビリティの相乗的増加が予想外に認められた。文脈が矛盾しない限り、本明細書に記載された全ての範囲は、その終点を含むものとして解釈されるべきであり、制限のない範囲は、商業的に実用的な値を含むと解釈されるべきである。同様に、文脈が矛盾しない限り、値のすべてのリストは中間値を含むものとして考慮されるべきである。
【0027】
好ましい実施形態において、前記医薬組成物中の前記第2界面活性剤に対する前記第1界面活性剤の比率は、重量で約65(±2):35(±2)または80(±2):20(±2)であり、前記第1界面活性剤および第2界面活性剤は、前記医薬組成物の90重量%以下、92重量%以下、94重量%以下、96重量%以下、または98重量%以下を構成する。典型的には、前記医薬組成物は、PGP阻害剤の事前投与(例えば、5分から60分、典型的には20~40分前の投与)の後に投与される。
【0028】
本明細書中で使用される場合、タキサンには、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、テセタキセルなど、ならびにその薬学的に許容される多形体、溶媒和物、水和物などが含まれる。同様に、適切なタキサン化合物はまた、タキサンプロドラッグ、前駆体、誘導体、代謝産物、およびタキサンコンジュゲート(例えば、タキサン-PEG、タキサン-RGDなど)を含む。しかし、特に好ましい実施形態は、医薬組成物中に無水ドセタキセルおよびドセタキセル三水和物を含む。典型的には、医薬組成物中のタキサンの濃度は、0.1~90mg/mLの範囲である。より典型的には、タキサンの濃度は、5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65または70mg/mLである。
【0029】
例示的な界面活性剤には、PEGエステル、スクロースエステル、ポリソルベート、トコフェロールエステル、プルロニック(登録商標)ブロックコポリマー、ビタミンE TPGS、PeceolTM、CapryolTM、Compritol(登録商標)、Gelucire(登録商標)、界面活性剤、GeleolTM、GeloilTM、PharmasolveTM、およびキトサン-チオブチルアミジンが挙げられる。BASFは、医薬製剤に使用される界面活性剤を販売している(1527060875456_0.basf.com/Documents/ENP/Brochure/EN/Brouchure_Solubilizer.pdf)。本発明の医薬組成物中におけるKolliphor(登録商標)TPGSおよびその他のKolliphor(登録商標)界面活性剤の使用が考えられる。好適な界面活性剤は、Tween(登録商標)80(ポリソルベート80)、Tween(登録商標)20(ポリソルベート20)、Cremophor(登録商標)EL(Kolliphor(登録商標)EL,ポリオキシル35硬化ヒマシ油)、Cremophor(登録商標)RH40(Kolliphor(登録商標)RH40,ポリオキシル40硬化ヒマシ油)、Solutol(登録商標)HS15(Kolliphor(登録商標)HS15,ポリオキシエチル化12-ヒドロキシステアリン酸)、およびLabrasol(登録商標)(カプリルカプロイルポリオキシグリセリド)である。
【0030】
タキサンの分解を防ぐために、医薬組成物は、クエン酸および/またはアスコルビン酸安定剤をさらに含むことができる。Machado等の国際公開第2007/085067号(特許文献7)に記載されているような他の有機酸も使用可能である。例えば、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、トシレート、コハク酸、グルタミン酸、アルギン酸、マレイン酸、およびアジピン酸は、医薬組成物と置換および/または添加可能である。
【0031】
前記医薬組成物は、水、エタノール、低分子量ポリエチレングリコール(例えば、PEG200および400)、デンプン/糖、脂肪および/またはタルクのような賦形剤をさらに含んでもよい。賦形剤はまた、水溶性有機溶媒、非イオン性界面活性剤、水不溶性脂質、有機液体/半固体、シクロデキストリン、およびStrickleyによって”Solubilizing Excipients in Oral and Injectable Formulations” ,Pharm.Res.,vol.21,no.2,201-229(2004年2月)に記載されているリン脂質を含むことができる。得られる医薬組成物は、硬質ゲルまたは軟質ゲルカプセルに充填することができ、或いは、液体製剤中で投与することができる。
【0032】
タキサンのバイオアベイラビリティをさらに高めるために、本発明は、PGP阻害剤および医薬組成物を含むキットが含まれる。適切なPGP阻害剤には、SrivalliおよびLakshmiの、Overview of P-glycoprotein inhibitors: a rational outlook, Brazilian J.Pharm.Sci,Vol48,n.3,pp.353-367(Jul/Sep.2012)に開示されているものが含まれる。例えば、ベラパミル、トリフルオペラジン、シクロスポリン、キニジンおよびレセルピンなどの他の抗高血圧剤、ヨヒンビン、抗エストロゲン剤、タモキシフェン、トレミフェン、抗腫瘍性ビンクリスチンおよびその誘導体が、適切なPGP阻害剤として作用しうる。HM30181、XR9576、およびGF120981の使用も考えられる。好都合なことに、HM30181は、経口バイオアベイラビリティおよびパクリタキセルの治療有効性を増加させることが示されており、シクロスポリンAよりも強力であった。Kwak J.-O.,LeeS.H.,Kim,M.S.ら、HM30181によるMDR1(ABCB1)の選択的阻害は経口バイオアベイラビリティおよびパクリタキセルの治療有効性を増加させる(Eur.J. Pharm.,627,92-98(2010))。グリセロールおよびPEGエステル、スクロースエステル、ポリソルベート、トコフェロールエステル、プルロニック(登録商標)ブロックコポリマー、Peceol、Gelucire、およびキトサン-チオブチルアミジンは、PGP阻害剤および界面活性剤(および/または賦形剤)の両方として作用することができる。
【0033】
1つの例示的なキットにおいて、前記PGP阻害剤は、医薬組成物の72時間前から72時間後まで経口的に摂取されるピルとして処方することができる。より典型的には、前記PGP阻害剤は、前記医薬組成物の前に、またはそれと同時に投与される。一般に、PGP阻害剤製剤は、Kimの国際公開第2014/092489号に記載の固体分散体と一致する。
【0034】
本発明は更に、第1界面活性剤および第2界面活性剤と共にタキサンを処方する工程を有する医薬組成物の製造方法を特徴とする。前記タキサンは、前記第1界面活性剤および第2界面活性剤の混合物に溶解することができる。あるいは、前記タキサンを一方の界面活性剤に溶解し、その後、他方の界面活性剤を添加することができる。最も典型的には、即時可溶化が比較的不良であることにより、補助手段を講じることができ、具体的には、加熱、超音波処理、剪断、および/または長期間の攪拌(例えば、撹拌機を用いる)が挙げられる。前記第1界面活性剤および第2界面活性剤のそれぞれの量は、以下により詳細に示されるように、付加的な方法以上にタキサンの吸収を高めるように選択される。好ましい方法において、前記第1界面活性剤および第2界面活性剤は、前記医薬組成物の重量の、90%以下、92%以下、94%以下、96%以下、98%以下、であり、前記医薬組成物中の前記第2界面活性剤に対する前記第1界面活性剤の重量比は、60:40~85:15である。
【0035】
本発明の主題の方法に従って、哺乳動物を、種々の癌および他のタキサン応答性疾患について治療することができる。第1に、必要に応じて、経口投与P-糖タンパク質阻害剤が哺乳動物に提供され、一般に純吸収を増加させる。第2に、P-糖タンパク質阻害剤が投与された典型的には約30分後に、ここに記載の前記経口投与医薬組成物が哺乳動物に提供される。本発明の医薬組成物による治療は、タキサンの経口バイオアベイラビリティ、半減期、ピーク血漿濃度、ピーク血漿濃度に達する時間、および経口投与される医薬品のタキサンの薬物血中濃度曲線下面積の少なくとも1つを増加させることが意図される。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の医薬組成物に投与した場合のタキサンの薬物動態特性の改善の1つの理由は、界面活性剤が胃液/腸液で希釈された場合にミセルを形成することであり得る。そして、これらのミセルは、単一の界面活性剤ビヒクルで投与されるタキサンよりも良好に吸収される。
【実施例
【0036】
実験結果
1.単一界面活性剤と2界面活性剤のドセタキセル製剤の溶解度および物理的安定性
【0037】
界面活性剤組成物中のドセタキセルの最大溶解度を以下の表1.1に要約する。
【0038】
【表1.1】
【0039】
単一界面活性剤および二界面活性剤配合物中のドセタキセルの溶解性、物理的安定性および放出を、37±0.5℃で平衡化された400mLの溶解媒体を用いたUSP2011の溶解装置II(Copley、UK)を使用して調べた。変化するpH条件および胃腸管に沿った通過時間をシミュレートするために、以下の例示的溶解試験方法を使用した

a.サイズ0のゼラチンカプセルに650mgの液体製剤を充填する。
b.溶解パドルの撹拌速度を毎分100回転(rpm)に設定する。
c.pH1.2の溶解媒体(0.1N HCl)400mLを含む溶解容器中に前記カプセルを(シンカー装置内)2時間入れ、1時間、pH4.0に調整し(0.25M KHPOおよび20%KOHを100mL加え、得られたKHPOの濃度は50mM)で1時間)、その後、pH6.8(KOHの添加による)で1時間、次にpH7.5(KOHの添加による)に2時間で調整した。
d.以下の時点でサンプルを採取する:pH1.2では0,10,20,30,60,90および120分、pH4では10,20,30および60分、pH6.8では10,20,30および60分:pH7.5の場合、0,10,20,30,60,90および120分。各サンプリングによる損失を補うために、同量の新しい溶解媒体を交換する。
e.収集した試料を遠心分離し、上清をHPLC分析に使用した。
【0040】
溶解試験における液体製剤中のドセタキセルの分析のためのHPLC条件
液体製剤の希釈(メタノール=1:30)
分析条件:
機器:Agilent1260 Infinity
クロマトグラフパラメータ:
カラム:Zorbax Eclipse Plus C18,4.6×150mm、5μm
移動相:水中の0.2%ギ酸(A);アセトニトリル(B)(表1.2を参照)
流速:0.8mL/分
カラム温度:摂氏25度
注入量:20μL
検出波長:230nm
【0041】
【表1.2】
【0042】
図1.1A、BおよびCは、単一界面活性剤製剤:それぞれ100%Tween(登録商標)80,100%Cremophor(登録商標)EL,および100%Tween(登録商標)20製剤、からのドセタキセルの放出プロフィールを示す。図1.1AおよびBは、ドセタキセルの放出がpH1.2およびpH4で遅く、210分を超えると最大放出に達することを示している。図1.1Cは、ドセタキセルの放出が最初に速いことを示しているが、放出%は急速に50%に低下し、ドセタキセルが溶解媒体中に沈殿していたことを示している。
【0043】
図1.2A~Fは、Tween(登録商標)80, Tween(登録商標)20, Cremophor(登録商標)EL, Cremophor(登録商標)RH40, Solutol(登録商標)HS15およびLabrasol(登録商標)を含む、混合界面活性剤配合物からのドセタキセルの溶解放出プロフィールを示す。全ての組み合わせ配合物で、最大濃度が30分以内に達成され、60~80%の間、より高い定常状態放出が維持された。
【0044】
2. HM30181の同時投与の有り、無しの、単一界面活性剤製剤からのドセタキセルのバイオアベイラビリティ
【0045】
Sprague Dawley(登録商標)ラットに、単独投与でのドセタキセル(20mg/kg)と、HM30181(10mg/kg、ドセタキセルの30分前)と種々の単一界面活性剤製剤と同時投与でのドセタキセル(20mg/kg)、とのいずれかを経口胃管栄養法により投与した。各製剤を、少なくとも3匹のラット(体重180~350g)の群で試験した。投与前、0.25,0.5,1.0,2,4,8,12および24時間に、頸静脈カニューレを介して血液サンプルを収集した。3匹のラットの別の群は、相対ドセタキセルバイオアベイラビリティの計算のために、市販のドセタキセル注射(Taxotere(登録商標),Sanofi)を用いてドセタキセル(5mg/kg)の静脈内投与を受けた。最大血漿中濃度(Cmax)、薬物血中濃度曲線下面積(AUC)およびドセタキセルのバイオアベイラビリティ(F)の増加によって示されるように、ドセタキセルをHM30181と同時投与したとき(すなわち、HM30181の投与後30分)に薬物動態データが改善した。最大血漿濃度(Tmax)、平均滞留時間(MRT)および半減期(t1/2)に達するまでに要した時間も、以下の表に報告する。
【0046】
Tween(登録商標)80単独中のドセタキセル、HM30181との同時投与のドセタキセル、の投与後のドセタキセルの血漿中濃度を図2.1に示す。表2.1に図示されているように、Tmax、Cmax、AUC、MRT、t1/2、およびドセタキセルのバイオアベイラビリティは、最大で一桁増加した。
【0047】
【表2.1】
【0048】
図2.2は、Tween(登録商標)20単独とHM30181との同時投与でのドセタキセルの投与後の血漿中濃度を示している。表2.2に示すように、Cmax、AUC、およびドセタキセルのバイオアベイラビリティは増加した。
【0049】
【表2.2】
【0050】
図2.3は、Cremophor(登録商標)EL単独とHM30181との同時投与でのドセタキセルの投与後の血漿中濃度を示している。表2.3に示すように、Cmaxは3倍に増加した。AUCおよびドセタキセルのバイオアベイラビリティは約8倍増加した。これらの結果が、ポリソルベート80ドセタキセル製剤について得られたデータに匹敵するということは、Cremophor(登録商標)ELとエタノールで製剤化されたパクリタキセルが、ポリソルベート80およびエタノール中で処方されたパクリタキセルよりも低い経口バイオアベイラビリティを示したことを報告した最近の記事に鑑みて驚くべきことである。MM Malingreら、The co-solvent CremophorEL limits absorption of orally administered paclitacelin cancer patients, 85(10)、BRITISH JOURNAL OF CANCER 1472、1472-77(2001);HA Bardelmeijerら、Entrapment by Cremophor EL decreases the absorption of paclitaxel from the gut, 49 CANCER CHEMOTHER PHARMACOL 119,119-25(2002)。著者らは、Cremophor(登録商標)ELは小腸によっては余り吸収されないミセル中にパクリタキセルとシクロスポリンAの両方を封入することによって、パクリタキセルのCmax、AUCおよび吸収を低下させる、という仮説をたてている。
【0051】
【表2.3】
【0052】
図2.4は、Labrasol(登録商標)単独とHM30181との同時投与でのドセタキセルの投与後の血漿中濃度を示している。ビヒクルとしてLabrasol(登録商標)を使用した時に得られた結果と比較して、HM30181の効果は穏やかであった。表2.4に示すように、Cmax、AUC、およびドセタキセルのバイオアベイラビリティは増加した。
【0053】
【表2.4】
【0054】
3. HM30181の同時投与の有り、無しの、二界面活性剤製剤からのドセタキセルのバイオアベイラビリティ
【0055】
Sprague Dawley(登録商標)ラットに、ドセタキセル(20mg/kg)単独、またはHM30181(10mg/kg、ドセタキセルの30分前)と同時投与でのドセタキセル(20mg/kg)を、二種類の界面活性剤製剤(重量比が異なる)で、強制経口投与した。各製剤を、少なくとも3匹のラット(体重180~350g)の群で試験した。投与前に、0.25,0.5,1.0,2,4,8,12および24時間に、頸静脈カニューレを介して血液サンプルを収集した。3匹のラットの別の群には、相対的なドセタキセルのバイオアベイラビリティの計算のために、市販のドセタキセル注射(Texotere(登録商標)、Sanofi)を使用してドセタキセル(5mg/kg)の静脈内投与を受けさせた。最大血漿濃度(Cmax)、薬物血中濃度曲線下面積(AUC)およびドセタキセルバイオアベイラビリティ(F)の増加によって示されるように、HM30181を同時投与したとき(すなわち、HM30181の投与後30分)に薬物動態データが改善した。最大血漿濃度(Tmax)、平均滞留時間(MRT)および半減期(t1/2)に達するまでに要した時間も、以下の表に報告する。
【0056】
図3.1は、HM30181の同時投与後にTween(登録商標)80とCremophor(登録商標)EL(それぞれ65%および35重量%)でドセタキセルを投与した場合のドセタキセルの血漿濃度の上昇を示す。表3.1に示すように、Cmax、AUC、およびドセタキセルのバイオアベイラビリティは増加した。
【0057】
【表3.1】
【0058】
図3.2Aは、ドセタキセルを、Tween(登録商標)80のみ、Cremophor(登録商標)ELのみ、65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)EL、で製剤化した場合のドセタキセル投与後のドセタキセルの血漿濃度を示す。図3.2Bは、HM30181を同時投与したドセタキセル製剤投与後のドセタキセルの血漿濃度を示す。図3.2AおよびBの両方から見ることができるように、65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)ELでのドセタキセル製剤の投与後のドセタキセルの血漿濃度は、Tween(登録商標)80、Cremophor(登録商標)ELそれぞれ単体でドセタキセルを製剤した場合に達成された血漿濃度を僅かに上回った。HM30181との65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)ELでのドセタキセルの同時投与は、65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)EL中のドセタキセルを単独で投与した場合に観察されたCmaxと比較してCmaxの3.75倍の増大をもたらした。
【0059】
表3.2は、ドセタキセルを単独で投与した場合、又はHM30181と同時投与した場合の、Tmax、Cmax、AUC、MRT、t1/2、およびバイオアベイラビリティに対するTween(登録商標)80およびCremophor(登録商標)ELの重量の比率を変化させた場合の影響を図示している。この実験において、Cremophor(登録商標)ELに対するTween(登録商標)80の比率が65~35重量%であった時に、最も高いAUCとドセタキセルバイオアベイラビリティ値が観察された。
【0060】
【表3.2】
【0061】
図3.3AおよびBは、100%Tween(登録商標)80、100%Tween(登録商標)20および80%Tween(登録商標)80/20%Tween(登録商標)20製剤中のドセタキセルの投与後のドセタキセルの血漿濃度を示している。各医薬組成物を、HM30181の同時投与無し(図3.3A)およびHM30181の同時投与有り(図3.3B)で試験した。図3.3Bに見られるように、HM30181と同時投与での80%Tween(登録商標)80/20%Tween(登録商標)20中のドセタキセル投与後のドセタキセルの血漿濃度は、Tween(登録商標)80およびTween(登録商標)20個別でドセタキセルを製剤した場合に達成された血漿濃度を超えている。
【0062】
表3.3は、ドセタキセルを単独で投与した場合と、HM30181と同時投与した場合の、Tmax、Cmax、AUC、MRT、t1/2、およびバイオアベイラビリティに対するTween(登録商標)80およびTween(登録商標)20の重量の比率を変化させた場合の影響を図示している。この実験において、Tween(登録商標)20に対するTween(登録商標)80の比率が80~20重量%であった時に、最も高いAUCとドセタキセルバイオアベイラビリティ値が観察された。
【0063】
【表3.3】
【0064】
図3.4Aは、100%Tween(登録商標)20、100%Cremophor(登録商標)ELおよび65%Tween(登録商標)20/35%Cremophor(登録商標)ELドセタキセル製剤の投与後のドセタキセルの血漿濃度を示している。図3.4Bは、HM30181との同時投与の各ドセタキセル製剤の投与後の血漿ドセタキセル濃度を示している。図3.4Aからわかるように、65%Tween(登録商標)20/35%Cremophor(登録商標)EL中のドセタキセルの投与後のドセタキセルの血漿濃度は、ドセタキセルをTween(登録商標)20およびCremophor(登録商標)EL単独で製剤した場合に達成される血漿濃度を上回っている。図3.4AおよびBは、65%Tween(登録商標)20/35%Cremophor(登録商標)EL製剤が、Tween(登録商標)20単独又はCremophor(登録商標)EL単独製剤よりも高いCmax値を達成したことをはっきりと示している。
【0065】
図3.5AおよびBは、Labrasol(登録商標)、Cremophor(登録商標)ELおよび80%Labrasol(登録商標)/20%Cremophor(登録商標)EL中のドセタキセル投与後のドセタキセルの血漿濃度を示している。各医薬組成物を、HM30181との同時投与有り、無しでテストした。それぞれ個々の界面活性剤単体との製剤と比較して、ドセタキセルを80%Labrasol(登録商標)/20%Cremophor(登録商標)ELで製剤した場合にCmax値がより高いことが明らかである。
【0066】
従って、上記のデータに基づくと、第2の異なる界面活性剤の添加が、数多くの薬物動態パラメータに対して相加的効果以上の有意な効果を提供したことが容易に理解できる。理論上の相加値は、以下の式に従って計算することができる。
【0067】
【数1】
【0068】
相乗効果は、測定値が理論上の相加値を超える場合に観察される。別の言い方をすれば、相加的Cmax、AUCおよびバイオアベイラビリティ(F)は、2界面活性剤配合物中の各界面活性剤の割合に基づいて重み付けされるべきである。例えば、HM30181との同時投与での、100%Tween(登録商標)80,65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)ELおよび100%Cremophor(登録商標)ELに関する表3.2からのデータを使用して、100%Tween(登録商標)80中のドセタキセルのバイオアベイラビリティ(F)は12.3%、100%Cremophor(登録商標)ELのバイオアベイラビリティ(F)は20.1%、そして65/35Tween(登録商標)80/Cremophor(登録商標)ELでは(F)は25.8%であった。従って、相加的効果は、12.3%プラス21.0
%で33.3%であると単純に考えるかもしれない。観察された25.8%は、33.3%未満、すなわち前記不適切な相加値、よりも小さいと思われる。これは誤った分析となる。正しい分析は、標準量の薬物の65%が、Tween(登録商標)80で、又35%でCremophor(登録商標)ELで投与されたと想像することである。それにより相加Fは加重平均、すなわち15.3%となる。観察された25.8%は添加剤Fの1.68倍であり、明らかに相加以上であり、相乗的であると正しく標識される。HM30181との同時投与無しでの、100%Tween(登録商標)80,65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)ELおよび100%Cremophor(登録商標)ELの表3.2からのデータを使用する別の例において、理論上の相加バイオアベイラビリティ(F)は1.7%である。観察されるバイオアベイラビリティは、4.1%であり、バイオアベイラビリティの2-4倍の相乗的増加となっている。
【0069】
表3.4は、表3.2および3.3で提供されたデータから導出された理論上のAUCおよび経口バイオアベイラビリティ値をまとめたものである。尚、データは予測不能であって、界面活性剤配合物の割合および同一性が変化するのに対して、相乗比の傾向を示さないことは容易に明らかである。従って、65%Tween(登録商標)80/35%Cremophor(登録商標)EL(HM30181を併用しない場合および併用する場合)で経口投与されたドセタキセルのAUCおよびバイオアベイラビリティの相乗的増加は、予想外である。驚くべきことに、AUCおよびバイオアベイラビリティの相乗的増加は、ドセタキセルが、HM30181との同時投与で65%Tween(登録商標)80/35%Tween(登録商標)20で経口投与された時に観察され、それをHM30181の同時投与無しで経口投与された時には観察されなかった。
【0070】
【表3.4】
【0071】
このような知見は、少なくとも理論的には、界面活性剤の作用様式は実質的に同じであるはずであるので、特に予想外である。したがって、第2の異なる界面活性剤の添加は、相乗的に1つまたは複数の薬物動態パラメータを増加させる技術的効果を有する。具体的には、第1界面活性剤がTween(登録商標)80, Tween(登録商標)20又はLabrasol(登録商標)であり、第2界面活性剤がCremophor(登録商標)El又はTween(登録商標)20である時に特に顕著な増加が観察された。ここに提供される結果は、上記のMalingreとbardelmeijerとが、Cremophor(登録商標)ELは経口投与されるパクリタキセルのバイオアベイラビリティを低下させる、と教示していることから、特に予想外である。
【0072】
さらに、第1界面活性剤および第2界面活性剤の重量比が相対的にバランスしている場合、典型的には60:40~85:15の範囲である場合に、1つまたは複数の薬物動態パラメータの特に有利な増加を観察することができた。
【0073】
4. 45mg/mLのドセタキセル濃度を有する液体医薬組成物の調製方法例(64.35%Tween(登録商標)80、34.65%Cremophor(登録商標)EL、0.5%アスコルビン酸、0.5%クエン酸):
a.1.95gのTween(登録商標)80と1.05gのCremophor(登録商標)ELとを20mLのガラスバイアル中に正確に計量する。
b.磁気棒攪拌によって十分に混合する。
c.アスコルビン酸16.5mgとクエン酸16.5mgを正確に計量する。
d.前記秤量したアスコルビン酸とクエン酸を、「工程b」からのTween(登録商標)80-Cremophor(登録商標)EL混合物に激しく磁気棒で撹拌しながら添加した。
e.有機酸を分散および溶解するために少なくとも10分間、超音波処理する。
f.すべての酸が溶解するまで攪拌超音波処理を続ける。これは約1-2時間かかるかもしれない。
g.ドセタキセル三水和物138mgを正確に秤量する。
h.いくつかの小さな部分(それぞれ~30-40mg)に分け、「工程f」からのTween(登録商標)80-Cremophor(登録商標)EL-アスコルビン酸-クエン酸混合物に、35℃にて磁気棒で激しく攪拌しながら添加する。
i.ドセタキセルを分散および溶解するために少なくとも10分間超音波処理する。
j.全てのドセタキセルが溶解するまで攪拌音波処理を続ける。これには約4時間かかるかもしれない。
【0074】
5.ドセタキセル単剤および2界面活性剤の水中でのミセルサイズの測定
【0075】
ヒトの胃における希釈条件をシミュレートするために、単一界面活性剤および2界面活性剤ドセタキセル製剤を濃度1.25mg/mL(水120mL中のドセタキセル150mg)に希釈した。表5.1は、DelsaTM Nano C Particle Analyzer(Beckman Coulter、US)を用いて測定した粒子サイズ(nm)を示す。沈殿を示したLabrasol(登録商標)組成物を除き、全ての製剤がヒトの胃の予想される希釈条件下でそれらのミセル状態にとどまった。
【0076】
【表5.1】
【0077】
6.アスコルビン酸および/またはクエン酸による液体製剤の安定性の促進
【0078】
以下の界面活性剤比を有する濃度45mg/mLのドセタキセル液体ドセタキセル製剤
を硬ゼラチンカプセルに充填し、「加速安定性」条件(40℃/相対湿度75%)に供した。
【0079】
例1:64.35%Tween(登録商標)80,34.65%Cremophor(登録商標)EL,0.5%アスコルビン酸、0.5%クエン酸
【0080】
例2:64.35%Tween(登録商標)80,34.65%Cremophor(登録商標)EL 1%クエン酸
【0081】
表6.1は各製剤の組成を詳述している。
【0082】
【表6.1】
【0083】
液体製剤中のドセタキセルの分解生成物のHPLC分析
液体製剤の希釈(メタノール=1:30)
メタノールを含む1mg/mLのドセタキセルシステム適合性混合物(USP、ロット番号F0K229)
界面活性剤の存在に起因するピークを同定するために、液体製剤標準を使用した。
分析条件:
機器:Agilent 1260 Infinity
クロマトグラフパラメータ:
カラム:Zorbax Eclipse Plus C18,4.6*150mm、5μm
移動相:超純水(A);アセトニトリル(B)(表6.2参照)
流速:1.2mL/分
カラム温度:摂氏45度
注入量:20μL
検出波長:230nm
他の条件はUSP35ドセタキセル注入に従う。
【0084】
ドセタキセルおよびその分解生成物のアッセイを、最初と、1ヶ月後、3ヶ月後、および6ヶ月後に行った。表6.3および6.4は、アスコルビン酸およびクエン酸の様々な比を含有するすべての液体製剤の不純物レベルが、40℃および相対湿度75%で6ヶ月間USP限界以下にとどまったことを示している。これらの結果は、全ての不純物のレベルがUSP受入れ基準を下回っていることから、前記液体製剤が貯蔵期間中安定であることを示している。
【0085】
【表6.2】
【0086】
【表6.3】
【0087】
【表6.4】
【0088】
いくつかの実施形態において、数値パラメータは、報告された有効数字の数に鑑みて、通常の丸め技術を適用して解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値ではあるが、特定の実施例に示された数値は、実施可能な限り正確に報告される。本発明のいくつかの実施形態で提示される数値は、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含みうる。
【0089】
本明細書の記述および以下の特許請求の範囲を通して使用において、「a」、「an」、および「the」の意味は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。また、本明細書の記載での使用において、「in」の意味は、文脈上他に明確に指示されない限り、「in」および「on」を含む。
【0090】
本明細書で開示される本発明の代替要素または実施形態のグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループメンバーは、個別に、またはここに記載されているグループまたは他の要素の他のメンバーと任意の組み合わせで参照および請求することができる。利便性および/または特許性の理由により、1つまたは複数のグループの要素を、あるグループに含める、又は削除することが可能である。そのような包含または欠失が生じる場合、明細書は、改変されたグループを含むとみなされ、したがって、添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの記述を満たすものとみなされる。
【0091】
尚、本明細書の発明概念から逸脱することなく、既に説明した以外の多くの変更が可能であることは、当業者には明らかである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されるものではない。さらに、明細書および特許請求の範囲の両方を解釈するにあたり、全ての用語は、文脈と一致する最も広い可能な方法で解釈されるべきである。特に、用語「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、要素、構成要素またはステップを非排他的な方法で参照するものとして解釈されるべきであり、参照される要素、構成要素またはステップが存在するか、他の要素、構成要素、またはステップが明示的に参照されていないものとする。明細書の請求項が、A、B、C...Nからなる群から選択されたものの少なくとも1つを指す場合、A+N、B+N等、ではなく、そのグループの一つの要素のみを要件とすると解釈されなければならない。
図1.1A】
図1.1B】
図1.1C】
図1.2A】
図1.2B】
図1.2C】
図1.2D】
図1.2E】
図1.2F】
図2.1】
図2.2】
図2.3】
図2.4】
図3.1】
図3.2A】
図3.2B】
図3.3A】
図3.3B】
図3.4A】
図3.4B】
図3.5A】
図3.5B】