IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーレーンチウム メディカル リミテッドの特許一覧

特許7227341止血組織シーラントパッチの接着力を測定する方法
<>
  • 特許-止血組織シーラントパッチの接着力を測定する方法 図1
  • 特許-止血組織シーラントパッチの接着力を測定する方法 図2
  • 特許-止血組織シーラントパッチの接着力を測定する方法 図3
  • 特許-止血組織シーラントパッチの接着力を測定する方法 図4
  • 特許-止血組織シーラントパッチの接着力を測定する方法 図5
  • 特許-止血組織シーラントパッチの接着力を測定する方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】止血組織シーラントパッチの接着力を測定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/04 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
G01N19/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021500373
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 IL2019050308
(87)【国際公開番号】W WO2019180713
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】62/646,409
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520364727
【氏名又は名称】シーレーンチウム メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロウブ、オルガド
(72)【発明者】
【氏名】コーエン、イーラン
(72)【発明者】
【氏名】シュウォーツ、ヨータム
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-184169(JP,A)
【文献】特開2014-023956(JP,A)
【文献】国際公開第2008/066115(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107228824(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
止血組織シーラントパッチの接着強度を測定する方法であって、前記止血組織シーラントパッチが、少なくとも1つの組織シーリング表面および止血剤を含み、前記方法が、
第1の止血組織シーラントパッチを第1の表面に接着させ、その結果、前記第1の止血組織シーラントパッチの前記組織シーリング表面が露出したままとなるようにするステップと、
第2の止血組織シーラントパッチを第2の表面に接着させ、その結果、前記第2の止血組織シーラントパッチの前記組織シーリング表面が露出したままとなるようにするステップと、
前記止血組織シーラントパッチの少なくとも一方で前記止血剤を活性化するステップと、
前記止血シーラントパッチの前記組織シーリング表面を第1の所定時間にわたって互いに押し付け、それにより前記止血シーラントパッチを互いに接着させるステップと、
前記第1の所定時間の後、前記組織シーリング表面を互いに押し付ける前記ステップにおいて加えられた力とは反対の方向に前記止血パッチに力を加えるステップと、および
前記止血シーラントパッチを互いに完全に剥離するのに必要な前記力を測定し、それにより前記止血組織パッチの前記接着強度を測定するステップと
を含む測定方法。
【請求項2】
前記第1および第2の止血組織シーラントパッチが円形であり、2cmの面積によって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記止血組織シーラントパッチを前記表面に接着させる前記ステップが、前記表面から前記パッチを剥離するのに少なくとも50Nの力が必要となるように前記パッチのそれぞれを接着させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記止血組織シーラントパッチを前記表面に接着させる前記ステップが、糊付けおよび両面テープによるテーピングから選択される方法によって前記止血組織シーラントパッチを接着させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記止血剤を活性化する前記ステップが、所定量の流体を前記第1の止血組織シーラントパッチの前記露出面に塗布するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
所定量の流体を塗布する前記ステップが、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を前記第1の止血シーラントパッチの前記露出面に塗布するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
所定量の流体を塗布する前記ステップが、125μlの1xPBS溶液を前記第1の止血シーラントパッチに塗布するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記止血シーラントパッチの前記組織シーリング表面を第1の所定時間にわたって互いに押し付ける前記ステップが、前記組織シーリング表面を約5Nの力で互いに押し付けるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記止血シーラントパッチの前記組織シーリング表面を第1の所定時間にわたって互いに押し付ける前記ステップが、前記組織シーリング表面を約5Nの力で約3分間にわたって互いに押し付けるステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記止血シーラントパッチの前記組織シーリング表面を第1の所定時間にわたって互いに押し付ける前記ステップが、前記パッチを組織に接着させるのに十分な力と時間で前記組織シーリング表面を互いに押し付けるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記止血シーラントパッチの前記組織シーリング表面を第1の所定時間にわたって互いに押し付ける前記ステップの後に、前記表面を第2の所定時間にわたって押し付けることをやめる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の所定時間が約10秒間である、請求項11に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連公報への参照
本出願は、2019年3月19日に提出された国際(PCT)出願番号第PCT/IL2019/050308号の国内段階出願であり、2018年3月22日に提出された米国仮特許出願第62/646,409号からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、止血成分を含んだ組織シーラントパッチの物理的特性の測定に関する。詳細には、そのようなパッチの接着強度を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フィブリノーゲンとトロンビンの組合せやフィブリンなどの止血剤の他、生体適合性ポリマーなどの材料から作製された裏材を含む、組織シーラントフィルムおよびパッチは、当技術分野でよく知られている。そのようなフィルムおよびパッチの例は、例えば、米国特許第5631011号、同第6054122号、同第6056970号、同第6162241号、同第6699844号、および同第7189410号、PCT(国際)特許出願公開第WO96/40174号、同第WO99/21908号、同第WO2006/044882号、同第WO2008/019128号、および同第WO2014/174509号、米国特許出願公開第2006/0155235号、同第2007/0162121号、同第2011/0071498号、同第2011/0288462号、および同第2012/0070485号、並びに欧州特許出願公開第2556842号に開示されている
【0004】
パッチ設計と品質管理の両方の問題として、組織シーラントパッチの物理的特性、特に接着強度を正確かつ再現性よく測定できることが重要である。
【0005】
米国特許第6056970号は、パッチ材料の機械的強度を測定する方法を開示しており、この方法では、パッチが引張強度試験機に入れられ、次いで材料が破断する最大負荷が測定される。
【0006】
米国特許出願公開第2007/0162121号は、2つのプラスチックタブを接着剤配合物で結合し、当該結合の強度を測定することによって、保護スリーブの縁部を組織に接着させるために使用されるシーラント組成物の接着強度を測定することが可能であることを開示している。この方法の詳細は提供されておらず、止血材料を含むパッチの接着強度を測定する方法は開示されていない。
【0007】
米国特許出願公開第2012/0070485号は、パッチ材料の引張強度の測定のためのASTM法D412-98aの使用を開示している。
【0008】
米国特許出願公開第2017/157222号は、フィブリンシーラントパッチの接着強度を測定する方法を開示している。そこに開示された方法では、フィブリンパッチを子ウシ真皮組織の表面に張り付け、生理食塩水で湿らせた。接着強度は、力-距離曲線の積分サイズから測定されるように、組織からパッチの90度剥離試験を実行するために必要な平均の力を測定する張力計の使用によって測定される。
【0009】
PCT特許出願公開第WO2014/174509号(以降’509号)は、2分間、手で押し付けることによって、2cm×2cmのパッチが一片の生肉に適用される、接着組織パッチの接着を測定する方法および、張力と圧縮力の測定器を使用することにより測定された、パッチを剥離するのに必要な力を開示している。
【0010】
欧州特許出願公開第2556842号は、組織シーラント化合物またはシーラント化合物を含有するフィルムの接着を測定するための定性的方法を開示しており、この方法では、シーラントをガラススライド上に配置し、水を添加し、シーラントの上にカバースリップを配置し、カバースリップがガラススライドに接着したことを観察することで、接着が経験的に検証される。
【0011】
したがって、止血組織シーラントパッチの接着強度を測定するための正確かつ再現可能である定量的方法は、長い間感じられていたが満たされていないニーズであることがわかる。
【発明の概要】
【0012】
本明細書に開示される発明は、この長い間感じられていたニーズを満たすように設計されている。発明者らは、驚くべきことに、止血シーラントによって接合された2つの同一の止血組織シーラントパッチを分離するのに必要な力を測定することによって、当技術分野でこれまでに知られている方法より信頼性が高く再現性のある、パッチの接着強度の測定方法が提供されることを発見した。
【0013】
したがって、本発明の目的は、止血組織シーラントパッチの接着強度を測定する方法を開示することであり、当該止血組織シーラントパッチは、少なくとも1つの組織シーリング表面および止血剤を含み、当該方法は、以下のステップを含む。
【0014】
第1の止血組織シーラントパッチを第1の表面に接着させ、その結果、当該第1の止血組織シーラントパッチの当該組織シーリング表面が露出したままとなるようにするステップ。
【0015】
第2の止血組織シーラントパッチを第2の表面に接着させ、その結果、当該第2の止血組織シーラントパッチの当該組織シーリング表面が露出したままとなるようにするステップ。
【0016】
前述の止血組織シーラントパッチの少なくとも一方で前述の止血剤を活性化するステップ。
【0017】
前述の止血シーラントパッチの前述の組織シーリング表面を第1の所定時間にわたって互いに押し付け、それにより前述の止血シーラントパッチを互いに接着させるステップ。
【0018】
前述の第1の所定時間の後、前述の組織シーリング表面を互いに押し付ける前述のステップにおいて加えられた力とは反対の方向に前述の止血パッチに力を加えるステップ。
【0019】
前述の止血シーラントパッチを互いに完全に剥離するのに必要な力を測定し、それにより前述の止血組織パッチの接着強度を測定するステップ。
【0020】
本発明のさらなる目的は、前述の第1および第2の止血組織シーラントパッチが円形であり、2cmの面積を有することを特徴とする、そのような方法を開示することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、前述の止血組織シーラントパッチを前述の表面に接着させる前述のステップが、前述の表面から前述のパッチを剥離するのに少なくとも50Nの力が必要となるように前述のパッチのそれぞれを接着させるステップを含む、上記のいずれかに定義される方法を開示することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、前述の止血組織シーラントパッチを前述の表面に接着させる前述のステップが、糊付けおよび両面テープによるテーピングから選択される方法によって前述の止血組織シーラントパッチを接着させるステップを含む、上記のいずれかに定義される方法を開示することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、前述の止血剤を活性化する前述のステップが、所定量の流体を前述の第1の止血組織シーラントパッチの前述の露出面に塗布するステップを含む、上記のいずれかに定義される方法を開示することである。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、所定量の流体を塗布する前述のステップは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を前述の第1の止血シーラントパッチに塗布するステップを含む。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、所定量の流体を塗布する前述のステップは、125μlの1%PBS溶液を前述の第1の止血シーラントパッチに塗布するステップを含む。
【0024】
本発明のさらなる目的は、前述の止血シーラントパッチの前述の組織シーリング表面を第1の所定時間にわたって互いに押し付ける前述のステップが、約5Nの力で前述の組織シーリング表面を互いに押し付けるステップを含む、上記のいずれかに定義される方法を開示することである。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、前述の止血シーラントパッチの前述の組織シーリング表面を第1の所定時間にわたって互いに押し付ける前述のステップは、前述の組織シーリング表面を約5Nの力で約3分間にわたって互いに押し付けるステップを含む。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、前述の止血シーラントパッチの前述の組織シーリング表面を第1の所定時間にわたって互いに押し付ける前述のステップは、前述のパッチを組織に接着させるのに十分な力と時間で前述の組織シーリング表面を互いに押し付けるステップを含む。
【0025】
本発明のさらなる目的は、前述の止血シーラントパッチの前述の組織シーリング表面を第1の所定時間にわたって互いに押し付ける前述のステップの後に、前述の表面を第2の所定時間にわたって押し付けることをやめる、上記のいずれかに定義される方法を開示することである。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、前記第2の所定時間は約10秒間である。
【0026】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本明細書に開示される方法の一実施形態による、対向する表面にパッチを接着させるステップを示す図である。
【0028】
図2】本明細書に開示される方法の一実施形態による、流体を一方のパッチに添加し、それによって止血剤を活性化するステップを示す図である。
【0029】
図3】本明細書に開示される方法の一実施形態による、2つのパッチをそれらが互いに接着するまで互いに押し付けるステップの後のある時点における方法、および2つの表面が引き離されるときのそれら表面の移動の方向を示す図である。
【0030】
図4】本明細書に開示される方法の一実施形態による、2つのパッチが剥離し始めた瞬間におけるそれらパッチを示す図である。
【0031】
図5】本明細書に開示される方法の一実施形態による、剥離された後の2つのパッチを示し、当該方法によって、組織に対して露出されるパッチの側の接着強度の測定が提供されることを示す図である。
【0032】
図6】本明細書に開示される方法の一実施形態による、止血組織パッチの接着強度に関する測定の典型的な結果を示すグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の説明では、本発明の様々な態様を説明する。説明の目的で、本発明の完全な理解をもたらすために特定の詳細が示されている。本発明の本質的な性質に影響を与えることなく詳細が異なる本発明の他の実施形態があることは、当業者には明らかであろう。したがって、本明細書で説明されるすべての実施形態は、例示的なものにすぎないと見なされるべきであり、限定的であると見なされるべきではない。さらに、場合によっては、明確または簡潔にするために、互いに異なる方法のステップが個別に説明される。本明細書に開示された、本発明の方法に関する自己矛盾しないすべてのステップの組合せは、特定の組合せが明示的に説明されていない場合であっても、発明者らによって本発明の範囲内であると見なされる。
【0034】
本明細書で使用する場合、「止血シーラントパッチ」という用語は、閉塞材料および止血剤を含む、身体部分の内外への流体の漏出を停止、遅延、または防止するためのデバイスまたは組成物を説明するために使用される。閉塞材料の非限定的な例としては、シートまたはフィルムに形成された生体適合性ポリマー、織布材料および不織布材料などが挙げられる。止血剤の非限定的な例としては、フィブリノーゲン/トロンビン混合物およびフィブリンが挙げられる。したがって、本明細書に定義される「止血シーラントパッチ」は、列挙されたこれら2つの構成要素を含む「包帯」、「包帯材」、「フィルム」などの用語によって文献で代替的に知られているデバイスを含み得る。
【0035】
本明細書で使用される略語「PBS」は、「リン酸緩衝生理食塩水」を表す。
【0036】
以下の説明において、「約」という用語は、数量に適用される場合、公称値の±25%の範囲を指す。
【0037】
発明者らは、驚くべきことに、別の同様のパッチに対する止血パッチの接着力を測定することにより、パッチの接着力が肉などの組織代用物またはガラスなどの物質からそれを剥離するのに必要な力として測定される当技術分野で現在知られている方法より信頼性が高く再現性のある結果が得られることを見出した。その結果、本発明の方法では、止血剤の活性化によって2つのパッチが互いに接着され、次いでそれらを分離するのに必要な力が測定される。
【0038】
次に、本発明の方法の1つの例示的な実施形態のフィルムからのスクリーンキャプチャであり、本方法の1つの好ましい実施形態における様々なステップを示す図1~5を参照する。
【0039】
次に、測定の設定を示す図1を参照する。2つの止血組織シーラントパッチ100aおよび100bは、2つの対向面(それぞれ101aおよび101b)に接着し、実際の使用において組織と接触することになる側が露出したままとなる。図1に示される止血組織シーラントパッチは、’509号に開示されたタイプのものであり、ポリエチレングリコール-ポリカプロラクトン-乳酸トリブロックコポリマーから作製されたフィルムの片方の表面に含まれたトロンビン/フィブリノーゲン/CaCl止血剤を含む。止血剤が一方の表面のみに塗布されるまたは含まれるパッチの場合、100aと100bの両方で露出したままとなるのはこの表面である。表面への接着は、パッチ自体よりも表面にパッチをより強く接着させる任意の手段によって行うことができる。好ましい実施形態では、パッチは、接着力が少なくとも50Nになるように表面に接着する。一例として、パッチは、セロハンテープまたはダクトテープなどの両面テープを使用することによって表面に接着させることができ、あるいはパッチを表面に糊付けすることができる。いくつかの実施形態では、2つの表面は、市販の材料試験機で使用されるか、それに組み込まれるか、またはその一体部分である、ピストンの対向面である。そのような機械は、正確で再現性のある結果を提供するので特に有用であり、一般に、本明細書に開示される方法を実行するようにプログラムすることができる。図示された実施形態は、装置が置かれたテーブルに垂直な軸に配向された2つのパッチを示しているが、本方法は、アクティブな表面が互いに面している限り、任意の絶対配向のパッチで使用されてもよい。
【0040】
2つのパッチが対向面に接着した後、止血剤が活性化される。次に、本方法の一実施形態におけるこのステップを示す図2を参照する。この実施形態では、液体120のアリコートが、パッチの一方の露出面に塗布される。本発明の方法での使用に適した液体の1つの非限定的な例は、PBSである。止血剤を活性化するために十分な液体を添加する必要がある。例えば、図示された、2cmの面積を有する’509号に開示されているタイプのパッチの場合、1xPBS溶液の125μlアリコートが、止血剤の活性化をもたらすのに十分である。図2に示された方法の実施形態では、液体はピペットによってパッチの表面に導入されているが、液体をパッチ上に配置するための任意の適切な方法が使用されてもよい。
【0041】
止血剤が活性化された後、2つのパッチが互いに押し付けられる。次に、本方法のこのステップを示す図3を参照する。2つのパッチは、互いに押し付けられ、すなわち、それらの表面が接触するまで、対向面に垂直な軸に沿って互いに向かって移動され、移動の方向は、図3の矢印によって示される。次に、パッチが互いに接着するのに十分な時間、それらは互いに保持される。図示されているパッチの場合、5Nの力で3分間パッチを押し付けると、パッチを相互に接着させるのに十分であることが見出されており、これらの条件は、生体内で組織シーラントパッチを接着させるために通常使用される力と時間を模倣している。本発明のいくつかの実施形態では、パッチへの力は、所定時間にわたって緩和される(すなわち、いかなる方向においてもパッチに力が加えられない)。この時間は通常、パッチが互いに押し付けられる時間より短く、通常は10秒程度である。
【0042】
次に、2つのパッチが引き離される。次に、本方法のこのステップを示す図4を参照する。図の矢印で示されているように、前のステップで使用された方向とは反対の方向に、対向面に対して垂直に力が加えられる。市販の材料試験機で測定を行う場合は、2つのピストンを一定の速度で移動させるように当該機を設定することで、それらピストンを離間するように移動させることが好ましい。この図は、2つのパッチがちょうど分離し始める時点を示している。プロセス中に測定された最大の力は、パッチの接着力として記録される。
【0043】
次に、測定が完了した後のシステムを示す図5を参照する。図からわかるように、2つのパッチは無傷のままであり、測定が、止血剤の活性化後の2つのパッチ間の接着力に関するものであって、ピストンに対するパッチのもう一方の側の接着、ポリマー裏材の引張強度、またはポリマー裏材に対する止血材料の接着など他の何らかのパラメータに関するものではないことを実証している。
【0044】
本明細書に開示される方法は、止血組織パッチの接着強度の再現可能かつ正確な測定を提供するため、品質管理プロトコルの一部として使用することもできる。本方法は精度と確度が高いため、疑わしい群が所定の基準を満たしているかどうかを判断するために使用できる。標準的な接着は、適切なプロトコルに従って作製されたことがわかっている複数のパッチの測定値から設定され、次いで、疑わしい群からの1つまたは複数のサンプルが試験される。疑わしいパッチの接着が標準測定値の範囲内である場合、疑わしい群は標準内で許容可能であると仮定でき、一方、疑わしいパッチの接着が確立された標準と有意に異なる場合、疑わしいパッチが標準に従って作製されなかったと仮定できる。
【実施例
【0045】
以下の例は、本明細書に開示された本発明を当業者が作製および使用するのを助けるために提示され、決して限定的であると解釈されるべきではない。
【0046】
例1
ポリエチレン-カプロラクトン-乳酸トリブロックコポリマーから作製されたポリマー裏材の表面に含まれたトロンビン、フィブリノーゲン、およびCaClを含む止血剤を含む、’509号に開示されたタイプの止血パッチの接着強度の試験が行われた。2cmの面積をそれぞれ有する2つの円形パッチのそれぞれを、両面粘着テープによって、止血剤を含んだ表面が露出したままとなるように両面ダクトテープを貼り付けた10mlシリンジのピストンに接着した。Testometric M250材料試験機のグリップにピストンを固定した。次に、1%PBS溶液の125μlアリコートを下のパッチに置き、続いて、2つのパッチを3分間にわたって5Nの力で互いに押し付けた。次に、力を10秒間にわたって0Nに緩和し、それに続いて、50mm s-1の一定の公称速度でグリップを離間するように移動させた。パッチの接着強度は、剥離に必要な最大の力として測定された。一連の二重反復試験の結果を表1に示す。平均の不確実性は1標準偏差である。
【表1】
【0047】
例2
次の例は、本明細書に開示されている方法と、それを品質管理に使用する方法の両方を示している。前の例で説明した方法と同じ方法で名目上作製されたパッチ群は、不正確な量のフィブリノーゲンシーラントで調製された疑いがある。試験として、いくつかの疑わしいパッチの接着強度を本明細書に開示される方法に従って用意し、正確なプロトコルに従って作製されたことが知られているパッチの接着強度、および50%過剰のフィブリノーゲンシーラントが含まれたパッチの接着強度と比較した。結果(接着強度(N))を表2にまとめる。
【表2】
【0048】
表にまとめた結果からわかるように、疑わしい群のパッチの接着強度は50%追加シーラントが添加されたパッチの接着強度と同様であることが見出された一方、通常のプロトコルに従って作製されたパッチの接着強度は、前の例で使用したパッチの接着強度と同じ実験誤差の範囲内であった。
【0049】
次に、表2に報告された測定の結果を示すグラフを表す図6を参照する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6