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特許7227374対合二分免疫受容体ポリヌクレオチドのハイスループットクローニングおよびその適用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】対合二分免疫受容体ポリヌクレオチドのハイスループットクローニングおよびその適用
(51)【国際特許分類】
   C40B 40/08 20060101AFI20230214BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230214BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20230214BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230214BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230214BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230214BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230214BHJP
【FI】
C40B40/08 ZNA
G01N33/53 D
C12Q1/68
C07K14/725
C12N15/12
C12N15/13
C12N5/10
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021532265
(86)(22)【出願日】2019-08-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019046170
(87)【国際公開番号】W WO2020036875
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】62/718,227
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/725,842
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/732,898
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/818,355
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/823,831
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521067511
【氏名又は名称】ルートパス・ジェノミクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シイ
(72)【発明者】
【氏名】ポーター,エリー
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/046205(WO,A1)
【文献】Human gene therapy,2017年,Vol.28,p.1158-1168
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C40B 40/08
C12Q 1/04
C12Q 1/6869
A61K 35/17
A61P 35/00
G01N 33/53
G01N 33/50
C12N 15/85
C12N 15/12
C12N 15/13
C12N 5/10
C07K 14/725
C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の標的反応性T細胞受容体(TCR)を同定する方法であって、
(a)複数のTCRを発現する複数の細胞を含む混合物を準備するステップであって、前記複数の細胞の各細胞が、前記複数のTCRのTCRを発現し、前記複数のTCRが対象由来の試料由来の少なくとも50個の異なる同種対を含み、複数のV遺伝子由来のV領域を含み、前記少なくとも50個の異なる同種対の各同種対がTCRベータ鎖と対合するTCRアルファ鎖を含み、前記複数のTCRが前記複数の細胞に対して外因性である、ステップと、
(b)(a)由来の前記複数の細胞含む混合物を、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と複合体を形成している1つまたは複数の標的ペプチド抗原と接触させるステップであって、前記複数の標的反応性TCRを発現する前記複数の細胞のサブセットが前記主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と複合体を形成している1つまたは複数の標的ペプチド抗原に結合する、ステップと、
(c)(b)由来の前記複数の細胞のサブセットのうちの少なくとも2つの細胞を同定するステップであって、少なくとも2つの細胞が前記複数の標的反応性TCRのうちの少なくとも2つの標的反応性TCRを発現し、それによって前記複数の標的反応性TCRのうちの前記少なくとも2つの標的反応性TCRを同定する、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数のV遺伝子が、少なくとも10個の異なるV遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の細胞が、対象由来の試料から単離され、前記試料が、組織試料、血液試料、末梢血単核細胞(PBMC)試料、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のTCRが、少なくとも100個の異なる同種対を含み、前記少なくとも100個の異なる同種対の各同種対がTCRベータ鎖と対合するTCRアルファ鎖を含む、請
求項1に記載の方法。
【請求項5】
(b)が、前記複数の細胞を、前記主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と複合体を形成している1つまたは複数の標的ペプチド抗原を提示する1つまたは複数の細胞と接触させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の細胞が、1つまたは複数の腫瘍細胞、腫瘍様塊、腫瘍溶解物パルス抗原提示細胞(APC)または前記1つもしくは複数の標的ペプチド抗原を提示するように操作されたAPCである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数の標的ペプチド抗原を提示するように操作された前記1つまたは複数のAPCが、標的ペプチド抗原をコードするDNAまたはRNAを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数の標的ペプチド抗原を提示するように操作された前記1つまたは複数のAPCが、対象由来のMHC分子を外部に発現する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のTCRが疲弊T細胞由来のTCRを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記MHCがMHC四量体である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記1つまたは複数の標的ペプチド抗原の配列または同一性が知られていない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
標的反応性TCRを発現すると同定された(b)由来の前記複数の細胞のサブセットのうちの前記少なくとも2つの細胞のうちの少なくとも1つの対象への投与、または(b)由来の前記複数の細胞のサブセットのうちの前記少なくとも2つの細胞のうちの少なくとも1つの細胞の標的反応性TCRを発現する細胞の対象への投与のための組成物を調製するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の細胞の各細胞がレポーター遺伝子を含み、前記細胞のTCRが前記1つまたは複数の標的ペプチド抗原の標的ペプチド抗原に結合すると、前記レポーター遺伝子がシグナルを送るように調節される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
(c)における同定が、前記レポーター遺伝子に基づいて前記少なくとも2つの細胞を選択することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(c)における同定が、細胞表面マーカーの発現に基づいて前記少なくとも2つの細胞を選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
(c)における同定が、カルシウムの流入に基づいて前記少なくとも2つの細胞を選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の細胞が細胞系細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のTCRが、少なくとも100の異なるVJの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のTCRが疾患または状態を有する対象由来の試料由来のTCRを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記複数のTCRが、対象由来の腫瘍浸潤リンパ球を含む試料由来のTCRを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
(a)の前に前記複数のTCRの各TCRのTCRベータ鎖をコードする第2のポリヌクレオチドとTCRアルファ鎖をコードする第1のポリヌクレオチドを物理的に連結させ、それによって複数の融合ポリヌクレオチドを発生させるステップ、および前記複数の細胞に前記複数の融合ポリヌクレオチドまたはその誘導体を送達するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
(a)の前に、前記複数のTCRの同種対を同定するために、前記複数のTCRをシークエンシングするステップ、および前記複数の細胞に前記複数のTCRの同種対をコードする配列を送達するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
(c)における同定が、前記複数の細胞のサブセットの少なくとも2つの細胞を選択することを含み、前記少なくとも2つの細胞が前記複数の標的反応性TCRの少なくとも2つの標的反応性TCRを発現し、それにより前記複数の標的反応性TCRの少なくとも2つの標的反応性TCRが選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記選択が、標的反応性TCRを発現する細胞に関連するマーカーに基づいて標的反応性TCRを発現する細胞を選択する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記選択が、(b)の前記複数の細胞における標的非反応性TCRを発現する細胞から標的反応性TCRを発現する細胞を分離することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記選択が、標的反応性TCRを発現する細胞に関連するマーカーに基づいて、(b)の前記複数の細胞における標的非反応性TCRを発現する細胞から標的反応性TCRを発現する細胞を分離することを含む、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
[0001]本出願は、2018年8月13日に出願された米国仮特許出願第62/718,227号、2018年8月31日に出願された米国仮特許出願第62/725,842号、2018年9月18日に出願された米国仮特許出願第62/732,898号、2019年3月14日に出願された米国仮特許出願第62/818,355号、および2019年3月26日に出願された米国仮特許出願第62/823,831号に対する優先権を主張し、それらの各々は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]T細胞受容体(TCR)は抗原-主要組織適合遺伝子複合体の認識に関与し、炎症反応の開始をもたらす。細胞傷害性T細胞およびヘルパーT細胞を含む、多くのT細胞サブセットが存在する。細胞傷害性T細胞(CD8+T細胞としても知られている)は、異常細胞、例えば、ウイルスに感染した細胞または腫瘍細胞を殺傷する。ヘルパーT細胞(CD4+T細胞としても知られている)は他の免疫細胞の活性化および成熟を支援する。細胞傷害性T細胞およびヘルパーT細胞の両方は、それらのそれぞれの応答を引き起こす特異的標的抗原の認識後にそれらの機能を果たす。T細胞の抗原特異性はT細胞の表面上で発現されたTCRによって規定され得る。T細胞受容体は、2つのポリペプチド鎖、最も一般的にはアルファおよびベータ鎖からなるヘテロ二量体タンパク質であるが、少数のT細胞はガンマおよびデルタ鎖を発現することができる。TCRの特定のアミノ酸配列および得られる三次元構造はTCR抗原特異性および親和性を規定する。膨大の数の可能なTCR配列が存在するので、任意の個々のT細胞についてのTCR鎖のアミノ酸およびコードDNA配列は、ほとんどの場合、生物の全TCRレパートリーにおいて一つだけであるか、または非常に少ない量である。この大きな配列多様性は、多くの細胞機構を介してT細胞発生の間に達成され、多種多様な潜在的抗原に応答する免疫系の能力の重要な態様であり得る。
【0003】
[0003]TCRレパートリーを分析することは、免疫系の特徴、ならびに疾患の病因および進行、特に未知の抗原誘発因子を有する疾患のさらなる理解を得るのに役立ち得る。TCRレパートリーの極端な多様性およびTCRの2つの部分からなる性質は主要な分析に関する課題を表している。ハイスループットシークエンシングは、スペクトラタイピング(spectratyping)より高額ではあるが、TCRクローン型の存在度のより大きいシークエンシング深度および有意により正確な定量を可能にすることができる。しかしながら、ハイスループットシークエンシングは依然としてPCRバイアスおよびシークエンシングエラーを受け、その結果、クローン型の存在度が劇的にゆがめられる可能性があり、存在しないクローン型が記録される可能性があり、それによって観察される多様性が不当に増加することになる。さらに、クローニング、機能的研究および治療的使用などの下流の適用のためのシークエンシングデータからのTCR鎖の同種対の選択および/または合成は、時間がかかる可能性がある。そして、TCR鎖の選択され、合成された同種対のライブラリーは、少なくなるか、または低い多様性を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]種々の適用のために使用され得る自然に対合したTCRのハイスループットクローニングのための組成物および方法が本明細書に提供される。本明細書に提供される組成物および方法は、シークエンシングおよび合成より優れることができ、宿主細胞における
直接発現のためのTCRの同種対をコードする融合核酸分子を提供することができる。組成物および方法はまた、B細胞受容体(BCR)などの他の二分免疫受容体にも適用され得る。本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドライブラリーを調製するための方法であって、
(a)複数のベッセルを生成するステップであって、各々が、(1)二分免疫受容体の第1のペプチド鎖をコードする第1の核酸および前記二分免疫受容体の第2のペプチド鎖をコードする第2の核酸を含む細胞と、(2)複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーとを含む、ステップと、
(b)前記複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーを重合またはゲル化して複数の硬化粒子を形成するステップであって、前記複数の硬化粒子のそれぞれが重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーからなるマトリクスを有し、前記複数の硬化粒子のそれぞれが前記第1の核酸の第1のプライマー伸長産物および前記第2の核酸の第2のプライマー伸長産物を含み、前記第1のプライマー伸長産物および前記第2のプライマー伸長産物が前記マトリクス内に包埋または封入されており、前記第1のプライマー伸長産物および前記第2のプライマー伸長産物の拡散が抑制される、ステップと
を含む、方法。
[2]前記第1および前記第2のプライマー伸長産物が、逆転写(RT)産物、第2の鎖合成(SSS)産物、または増幅産物である、[1]に記載の方法。
[3]前記第1および/または前記第2のプライマー伸長産物がアダプター配列を含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記アダプター配列が、前記第1または前記第2の核酸分子とハイブリダイズできないか、または相補的ではない、[3]に記載の方法。
[5]前記第1および前記第2のプライマー伸長産物が可変ドメインをコードする、[1]または[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記可変ドメインが、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む、[1]に記載の方法。
[7]前記第1および/または前記第2のプライマー伸長産物が、定常ドメインをさらにコードする、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記細胞を溶解して前記第1の核酸および前記第2の核酸を放出させるステップをさらに含む、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記第1の核酸および前記第2の核酸を逆転写するステップをさらに含む、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]前記逆転写するステップが、RTプライマーを使用することによって実施される、[9]に記載の方法。
[11]前記RTプライマーが拡散抑制剤に連結しており、前記拡散抑制剤が前記マトリクス内の前記RTプライマーの拡散を抑制する、[10]に記載の方法。
[12]鋳型スイッチ反応またはSSS反応を実施するステップをさらに含む、[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]前記第1の核酸および前記第2の核酸を増幅させて第1および第2の増幅産物を生成するステップをさらに含む、[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14]前記第1または前記第2の核酸の各々について、前記増幅させるステップが、第1の増幅プライマーおよび第2の増幅プライマーを使用することによって実施される、[13]に記載の方法。
[15]前記第1の増幅プライマーが拡散抑制剤に連結しており、前記拡散抑制剤が前記マトリクス内の前記第1の増幅プライマーの拡散を抑制する、[14]に記載の方法。
[16]前記複数の硬化粒子を洗浄するステップをさらに含む、[1]~[15]のいずれかに記載の方法。
[17]前記複数の硬化粒子を洗浄して、試薬が前記複数の硬化粒子から拡散することを可能にするステップをさらに含む、[16]に記載の方法。
[18]前記試薬が、RTプライマー、増幅プライマー、鋳型スイッチプライマー、SSSプライマー、またはそれらのいずれかの組合せを含む、[17]に記載の方法。
[19]前記複数の硬化粒子を繰り返し洗浄するステップをさらに含む、[1]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20]洗浄するステップの後に油中で前記複数の硬化粒子を乳化し、それによってさらなる複数のベッセルを形成するステップであって、前記さらなる複数のベッセルの各ベッセルが前記複数の硬化粒子の単一の硬化粒子を含む、ステップをさらに含む、[6]~[19]のいずれかに記載の方法。
[21]前記第1および前記第2のプライマー伸長産物が拡散抑制剤に連結している、[1]~[20]のいずれかに記載の方法。
[22]前記拡散抑制剤がポリマーである、[11]~[21]のいずれかに記載の方法。
[23]前記ポリマーが、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、または多糖である、[22]に記載の方法。
[24]前記拡散抑制剤が粒子である、[21]に記載の方法。
[25]前記粒子が、前記マトリクスの孔径より大きい直径を有する、[24]に記載の方法。
[26]前記拡散抑制剤が前記マトリクスである、[21]~[25]のいずれかに記載の方法。
[27]前記第1および前記第2のプライマー伸長産物が、捕捉剤を介して前記拡散抑制剤に連結している、[21]~[26]のいずれかに記載の方法。
[28]前記捕捉剤が固定化部分を含む、[27]に記載の方法。
[29]前記固定化部分が、前記捕捉剤を前記拡散抑制剤に連結する、[28]に記載の方法。
[30]前記固定化部分が反応基を含む、[28]または[29]に記載の方法。
[31]前記捕捉剤がターゲティング部分をさらに含む、[27]~[30]のいずれかに記載の方法。
[32]前記ターゲティング部分が捕捉オリゴヌクレオチドである、[31]に記載の方法。
[33]前記第1の増幅プライマーが、前記捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列を含む、[14]~[32]のいずれかに記載の方法。
[34]前記第1および前記第2の増幅産物が、前記捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列を含み、それによって前記第1および前記第2の増幅産物を前記捕捉剤に連結し、それによって前記拡散抑制剤に連結する、[14]~[33]のいずれかに記載の方法。
[35]前記第1の増幅産物および前記第2の増幅産物を連結して、前記さらなる複数のベッセルの各ベッセル内に融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを形成し、それによって複数の融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを有する前記融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドライブラリーを生成するステップをさらに含む、[20]~[34]のいずれかに記載の方法。
[36]前記第1の増幅産物および前記第2の増幅産物がライゲーションまたはPCRによって連結されている、[35]に記載の方法。
[37]前記第1の増幅産物および前記第2の増幅産物がホスホジエステル結合によって連結して連続ポリヌクレオチドを形成する、[35]または[36]に記載の方法。
[38]前記第1の増幅産物および前記第2の増幅産物がインフレームで連結している、[35]~[37]のいずれかに記載の方法。
[39]前記さらなる複数のベッセルから前記複数の融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを放出させるステップをさらに含む、[35]~[38]のいずれかに記載の方法。
[40]前記複数の各融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを環状化させるステップをさらに含む、[39]に記載の方法。
[41]前記複数の各融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドをベクターに挿入するステップをさらに含む、[39]に記載の方法。
[42]前記ベクターが、自己増幅RNAレプリコン、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、またはビリオンである、[41]に記載の方法。
[43]前記ベクターがウイルスベクターである、[41]に記載の方法。
[44]前記ベクターが非ウイルスベクターである、[41]に記載の方法。
[45]前記二分免疫受容体が、T細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)である、[1]~[44]のいずれかに記載の方法。
[46]前記TCRが、TCRアルファペプチド鎖およびTCRベータペプチド鎖、またはTCRガンマペプチド鎖およびTCRデルタペプチド鎖を含み、前記BCRが、重ペプチド鎖および軽ペプチド鎖を含む、[45]に記載の方法。
[47]前記細胞が免疫細胞である、[1]~[46]のいずれかに記載の方法。
[48]前記免疫細胞がリンパ球である、[47]に記載の方法。
[49]前記リンパ球がT細胞またはB細胞である、[48]に記載の方法。
[50]前記T細胞が、炎症性T細胞、細胞傷害性T細胞、調節性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、またはそれらの組合せである、[49]に記載の方法。
[51]前記T細胞が、CD4+T細胞またはCD8+T細胞である、[49]または[50]に記載の方法。
[52]前記B細胞が、形質芽球細胞、形質細胞、リンパ形質細胞様細胞、メモリーB細胞、濾胞性B細胞、辺縁帯B細胞、B-1細胞、B-2細胞、または調節性B細胞である、[49]~[51]のいずれかに記載の方法。
[53]前記免疫細胞が、腫瘍組織または血液試料から単離される、[47]~[52]のいずれかに記載の方法。
[54]前記融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを宿主細胞に送達するステップをさらに含む、[35]~[53]のいずれかに記載の方法。
[55]前記融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドライブラリーが、少なくとも50個の異なる融合二分免疫受容体配列を含む、[35]~[54]のいずれかに記載の方法。
[56]前記第1のペプチド鎖および前記第2のペプチド鎖が前記二分免疫受容体の同種対である、[1]~[55]のいずれかに記載の方法。
[57]前記ベッセルが液滴である、[1]~[56]のいずれかに記載の方法。
[58]前記液滴が油中水液滴である、[57]に記載の方法。
[59]前記硬化粒子がヒドロゲル粒子である、[1]~[58]のいずれかに記載の方法。
[60]前記ポリマーが、多糖、ポリアクリルアミド、またはそれらの組合せである、[1]~[59]のいずれかに記載の方法。
[61]前記多糖が、アガロース、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、キトサン、またはアルギネートである、[60]に記載の方法。
[62]前記モノマーが、アクリルアミドまたはメタクリルアミドモノマーである、[1]~[61]のいずれかに記載の方法。
[63]前記重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーが、アガロースおよびポリアクリルアミドの混合物を含む、[1]~[62]のいずれかに記載の方法。
[64]前記複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーを重合またはゲル化するステップが、開始剤を使用するステップを含む、[1]~[63]のいずれかに記載の方法。
[65]前記開始剤がUV光または化学物質である、[64]に記載の方法。
[66]前記複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーを重合またはゲル化するステップが、前記ベッセルの温度を低下させるステップを含む、[1]~[65]のいずれかに記載の方法。
[67]標的反応性T細胞受容体(TCR)を同定する方法であって、
(a)複数のTCRを発現する複数のT細胞を準備するステップであって、前記複数のT細胞の各T細胞が、前記複数のTCRのTCRの同種対を発現する、ステップと、
(b)前記複数のT細胞を複数の区画に分配するステップであって、各区画が前記複数のT細胞の個々のT細胞を含む、ステップと、
(c)各区画内で、第1のTCR鎖をコードする第1のポリヌクレオチドおよび前記個々のT細胞の前記TCRの同種対の第2のTCR鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを連結させ、それによって複数の融合ポリヌクレオチドを生成するステップであって、(i)前記第1のポリヌクレオチドおよび前記第2のポリヌクレオチドが前記個々のT細胞の内因性核酸の転写産物もしくは増幅産物であるか、または(ii)前記第1のポリヌクレオチドおよび前記第2のポリヌクレオチドがホスホロアミダイトを使用して化学的に合成されていない、ステップと、
(d)前記複数の融合ポリヌクレオチドを複数の細胞に送達するステップであって、前記複数の細胞の各細胞が前記複数の融合ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つの融合ポリヌクレオチドを含む、ステップと、
(e)前記複数の細胞において複数のベクターから前記複数の融合ポリヌクレオチドを発現させるステップであって、前記複数の細胞のサブセットが複数の標的反応性TCRを発現する、ステップと、
(f)前記複数の細胞を1つまたは複数の標的抗原と接触させるステップであって、前記複数の標的反応性TCRを発現する前記複数の細胞のサブセットが前記1つまたは複数の標的抗原に結合する、ステップと、
(g)前記複数の細胞のサブセットの前記複数の標的反応性TCRの標的反応性TCRを同定するステップと
を含む、方法。
[68]送達するステップの前に、前記複数の融合ポリヌクレオチドを含む複数のベクターを生成するステップであって、前記複数のベクターの各ベクターが前記複数の融合ポリヌクレオチドの融合ポリヌクレオチドを含む、ステップをさらに含む、[67]に記載の方法。
[69]前記複数の細胞が複数のレシピエント細胞である、[67]または[68]に記載の方法。
[70]前記内因性核酸が、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)である、[67]~[69]のいずれかに記載の方法。
[71]前記DNAがゲノムDNAである、[70]に記載の方法。
[72]前記RNAがメッセンジャーRNAである、[70]または[71]に記載の方法。
[73]接触させるステップが、細胞の集団を、前記1つまたは複数の標的抗原を提示する1つまたは複数の細胞と接触させるステップをさらに含む、[67]~[72]のいずれかに記載の方法。
[74]前記1つまたは複数の細胞が、1つもしくは複数の腫瘍細胞、腫瘍様塊、腫瘍溶解物パルス抗原提示細胞(APC)または前記1つもしくは複数の標的抗原を提示するように操作されたAPCである、[73]に記載の方法。
[75]前記1つまたは複数の標的抗原を提示するように操作された前記1つまたは複数のAPCが、標的抗原をコードするDNAまたはRNAと共に送達される、[74]に記載の方法。
[76]接触させるステップが、前記細胞の集団を腫瘍組織と接触させるステップをさらに含む、[67]~[72]のいずれかに記載の方法。
[77]前記1つまたは複数の標的抗原が、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と複合体を形成している、[67]~[72]のいずれかに記載の方法。
[78]前記MHCがMHC四量体である、[77]に記載の方法。
[79]前記第1のTCR鎖がTCRアルファ鎖であり、前記第2のTCR鎖がTCRベータ鎖である、[67]~[78]のいずれかに記載の方法。
[80]前記第1のTCR鎖がTCRガンマ鎖であり、前記第2のTCR鎖がTCRデルタ鎖である、[67]~[78]のいずれかに記載の方法。
[81]前記複数の細胞が細胞系細胞である、[67]~[80]のいずれかに記載の方法。
[82]前記細胞系細胞が、CHO-K1細胞;HEK293細胞;Caco2細胞;U2-OS細胞;NIH 3T3細胞;NSO細胞;SP2細胞;CHO-S細胞;DG44細胞;K-562細胞、U-937細胞;MRC5細胞;IMR90細胞;Jurkat細胞;HepG2細胞;HeLa細胞;HT-1080細胞;HCT-116細胞;Hu-h7細胞;Huvec細胞;またはMolt4細胞である、[81]に記載の方法。
[83]前記複数の細胞が、対象由来の試料から単離される、[67]~[80]のいずれかに記載の方法。
[84]前記複数のT細胞が、対象由来の試料から単離される、[67]~[82]のいずれかに記載の方法。
[85]前記試料が、腫瘍組織、血液試料、末梢血単核細胞(PBMC)試料、またはそれらの組合せである、[84]に記載の方法。
[86]前記腫瘍組織が多くても約2000mmである、[85]に記載の方法。
[87]前記血液試料が末梢血単核細胞(PBMC)を含む、[85]に記載の方法。
[88]前記複数のT細胞が、腫瘍浸潤T細胞または末梢T細胞である、[67]~[87]のいずれか一項に記載の方法。
[89]前記複数のT細胞が、CD8+T細胞、CD4+T細胞、疲弊T細胞、調節性T細胞、またはそれらのいずれかの組合せを含む、[67]~[88]のいずれかに記載の方法。
[90]前記複数の細胞のサブセットのうちの少なくとも1つの細胞を単離するステップをさらに含む、[67]~[89]のいずれかに記載の方法。
[91]前記複数の細胞のサブセットのうちの少なくとも1つの細胞がFACSによって単離される、[90]に記載の方法。
[92]前記複数の細胞のサブセットのうちの少なくとも1つの細胞がマーカーに基づいて単離される、[90]または[91]に記載の方法。
[93]前記マーカーが、細胞表面マーカーまたはサイトカインである、[92]に記載の方法。
[94]前記細胞表面マーカーが、CD39、CD69、CD103、CD25、PD-1、TIM-3、OX-40、4-1BB、CD137、CD3、CD28、CD4、CD8、CD45RA、CD45RO、GITR、FoxP3、またはそれらの組合せである、[93]に記載の方法。
[95]前記サイトカインが、IFN-γ、TNF-アルファ、IL-17A、IL-2、IL-3、IL-4、GM-CSF、IL-10、IL-13、グランザイムB、パーフォリン、またはそれらの組合せである、[93]または[94]に記載の方法。
[96](i)前記複数の細胞のサブセットのうちの少なくとも1つの細胞を前記対象に投与するステップまたは(ii)同定された標的反応性TCRを含む自家もしくは同種異系間細胞を前記対象に投与するステップをさらに含む、[67]~[95]のいずれかに記載の方法。
[97]前記自家または前記同種異系間細胞が、前記同定された標的反応性TCRをコードするポリヌクレオチドを含む、[96]に記載の方法。
[98]前記同定された標的反応性TCRをコードするポリヌクレオチドが、前記融合ポリヌクレオチドもしくはその増幅産物であるか、または前記融合ポリヌクレオチドの前記第1のTCR鎖および前記第2のTCR鎖をコードする配列を含む、[97]に記載の方法。
[99]複数の標的反応性T細胞受容体(TCR)を同定する方法であって、
(a)複数のTCRを発現する複数の細胞を準備するステップであって、前記複数の細胞の各細胞が前記複数のTCRのTCRを発現し、前記複数のTCRが少なくとも50個の異なる同種対を含み、複数のV遺伝子由来のV領域を含み、前記複数のTCRが前記複数の細胞に対して外因性である、ステップと、
(b)前記複数の細胞を1つまたは複数の標的抗原と接触させるステップであって、前記複数の標的反応性TCRを発現する前記複数の細胞のサブセットが前記1つまたは複数の標的抗原に結合する、ステップと、
(c)前記複数の細胞のサブセットのうちの少なくとも2つの細胞を同定するステップであって、少なくとも2つの細胞が前記複数の標的反応性TCRのうちの少なくとも2つの標的反応性TCRを発現し、それによって前記複数の標的反応性TCRのうちの前記少な
くとも2つの標的反応性TCRを同定する、ステップと
を含む、方法。
[100]前記複数のV遺伝子が、少なくとも10個の異なるV遺伝子を含む、[99]に記載の方法。
[101]前記複数の細胞が、複数の遺伝子操作された細胞である、[99]または[100]に記載の方法。
[102]前記複数の細胞が、対象由来の試料から単離される、[99]~[101]のいずれかに記載の方法。
[103]前記試料が、組織試料、血液試料、PBMC試料、またはそれらの組合せである、[102]に記載の方法。
[104]前記複数のTCRが、少なくとも100個の異なる同種対を含む、[99]~[103]のいずれかに記載の方法。
[105]前記複数の細胞のサブセットのうちの前記少なくとも2つの細胞を単離するステップをさらに含む、[99]~[104]のいずれかに記載の方法。
[106](b)が、前記複数の細胞を、前記1つまたは複数の標的抗原を提示する1つまたは複数の細胞と接触させるステップを含む、[99]~[105]のいずれかに記載の方法。
[107]前記1つまたは複数の細胞が、1つまたは複数の腫瘍細胞、腫瘍様塊、腫瘍溶解物パルス抗原提示細胞(APC)または前記1つもしくは複数の標的抗原を提示するように操作されたAPCである、[106]に記載の方法。
[108]前記1つまたは複数の標的抗原を提示するように操作された前記1つまたは複数のAPCが、標的抗原をコードするDNAまたはRNAを含む、[107]に記載の方法。
[109](b)が、前記複数の細胞を腫瘍組織と接触させるステップを含む、[99]~[105]のいずれかに記載の方法。
[110](b)が、前記複数の細胞を、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と複合体を形成している前記1つまたは複数の標的抗原と接触させるステップを含む、[99]~[105]のいずれかに記載の方法。
[111]前記MHCがMHC四量体である、[110]に記載の方法。
[112]前記1つまたは複数の標的抗原の配列または同一性が知られていない、[99]~[111]のいずれかに記載の方法。
[113]前記複数の細胞のサブセットのうちの前記少なくとも2つの細胞のうちの少なくとも1つを対象に投与するステップをさらに含む、[99]~[112]のいずれかに記載の方法。
[114]前記複数の細胞の各細胞がレポーター遺伝子を含み、前記細胞のTCRが前記1つまたは複数の標的抗原の標的抗原に結合すると、前記レポーター遺伝子がシグナルを送るように調節される、[99]~[113]のいずれかに記載の方法。
[115]前記複数の細胞が細胞系細胞である、[99]~[114]のいずれかに記載の方法。
[116]前記複数のTCRが、少なくとも100の異なるVJの組合せを含む、[99]~[115]のいずれかに記載の方法。
[117]前記複数のTCRが対象由来の試料からのTCRを含む、[99]~[116]のいずれかに記載の方法。
[118]前記対象が疾患または状態を有する、[117]に記載の方法。
[119]前記複数のTCRが、対象由来の腫瘍浸潤リンパ球を含む試料からのTCRを含む、[99]~[116]のいずれかに記載の方法。
[120]対象におけるがんを治療する方法であって、
(a)複数のTCRを発現する複数のT細胞を準備するステップであって、前記複数のT細胞の各T細胞が前記複数のTCRのTCRの同種対を発現する、ステップと、
(b)前記複数のT細胞を複数の区画に分配するステップであって、各区画が前記複数のT細胞の個々のT細胞を含む、ステップと、
(c)各区画内で、第1のTCR鎖をコードする第1のポリヌクレオチドおよび前記個々のT細胞の前記TCRの同種対の第2のTCR鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを連結させ、それによって複数の融合ポリヌクレオチドを生成するステップであって、(i)前記第1のポリヌクレオチドおよび前記第2のポリヌクレオチドが前記個々のT細胞の内因性核酸の転写産物もしくは増幅産物であるか、または(ii)前記第1のポリヌクレオチドおよび前記第2のポリヌクレオチドがホスホロアミダイトを使用して化学的に合成されていない、ステップと、
(d)前記複数の融合ポリヌクレオチドを複数の細胞に送達するステップであって、前記複数の細胞の各細胞が前記複数の融合ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つの融合ポリヌクレオチドを含む、ステップと、
(e)前記複数の細胞において前記複数の融合ポリヌクレオチドを発現させるステップであって、前記複数の細胞のサブセットが、前記複数の融合ポリヌクレオチドのサブセットから複数の標的反応性TCRを発現する、ステップと、
(f)前記複数の融合ポリヌクレオチドのサブセットから前記複数の標的反応性TCRを同定するステップと、
(g)前記複数の融合ポリヌクレオチドのサブセットの1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドまたはその誘導体を複数のレシピエント細胞に送達するステップであって、前記複数のレシピエント細胞の各細胞が、前記複数の融合ポリヌクレオチドのサブセットの前記1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドまたはその誘導体のうちの少なくとも1つを含む、ステップと、
(h)(i)前記複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも1つのレシピエント細胞を前記対象に投与するステップ、または(ii)前記複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも2つのレシピエント細胞を前記対象に投与するステップであって、前記少なくとも2つのレシピエント細胞が異なるTCRを発現する、ステップと
を含む、方法。
[121]前記複数のT細胞が、腫瘍浸潤T細胞または末梢T細胞である、[120]に記載の方法。
[122]前記複数のT細胞が、CD8+T細胞、CD4+T細胞、疲弊T細胞、調節性T細胞、またはそれらのいずれかの組合せを含む、[120]または[121]に記載の方法。
[123]前記複数のT細胞が、in vitroで活性化され、および/または増殖する、[120]~[122]のいずれかに記載の方法。
[124]前記複数の融合ポリヌクレオチドが複数のベクターにおいて送達され、前記複数のベクターの各ベクターが、前記複数の融合ポリヌクレオチドの融合ポリヌクレオチドを含む、[120]~[123]のいずれかに記載の方法。
[125](d)における送達するステップの前に、前記複数のベクターを生成するステップをさらに含む、[124]に記載の方法。
[126](f)における同定するステップが、前記複数の細胞を1つまたは複数の標的抗原と接触させるステップであって、前記複数の標的反応性TCRを発現する前記複数の細胞のサブセットが、前記1つまたは複数の標的抗原に結合する、ステップを含む、[120]~[125]のいずれかに記載の方法。
[127]前記1つまたは複数の標的抗原が、1つまたは複数の腫瘍細胞、抗原提示細胞(APC)、または人工APC(aAPC)によって提示される、[126]に記載の方法。
[128]前記1つまたは複数のAPCまたはaAPCが、(i)前記1つもしくは複数の標的抗原によってパルスされるか、または(ii)標的抗原をコードするDNAもしくはRNAを含む、[127]に記載の方法。
[129]前記1つまたは複数の抗原の各抗原が、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と複合体を形成している、[126]に記載の方法。
[130]前記MHCがMHC四量体である、[129]に記載の方法。
[131](g)における送達するステップの前に、前記複数の細胞のサブセットの1つまたは複数の細胞を単離するステップをさらに含む、[120]~[130]のいずれかに記載の方法。
[132]前記対象から前記複数のTCRを発現する前記複数のT細胞を単離するステップをさらに含む、[120]~[131]のいずれかに記載の方法。
[133]投与するステップが、前記複数のT細胞を単離してから多くても約60日後に実施される、[132]に記載の方法。
[134]前記複数のレシピエント細胞が、同種異系間細胞、自家細胞、または細胞系細胞である、[120]~[133]のいずれかに記載の方法。
[135]前記複数の細胞が、遺伝子操作された細胞または細胞系細胞である、[120]~[134]のいずれかに記載の方法。
[136](h)の前に、前記複数のレシピエント細胞を増殖させるステップをさらに含む、[120]~[135]のいずれかに記載の方法。
[137]前記誘導体が、前記1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドの配列を含む、[120]~[136]のいずれかに記載の方法。
[138]前記誘導体が、前記1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドの増幅産物または合成産物である、[120]~[137]のいずれかに記載の方法。
[139]対象における腫瘍を治療する方法であって、
(a)複数のT細胞受容体(TCR)を発現する前記対象から複数のT細胞を単離するステップであって、前記複数のT細胞の各T細胞が、内因性核酸から前記複数のTCRのTCRの同種対を発現し、前記複数のTCRが複数の腫瘍反応性TCRを含む、ステップと、
(b)前記複数のTCRから前記複数の腫瘍反応性TCRを同定するステップと、
(c)前記複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットをコードするポリヌクレオチドを複数のレシピエント細胞に送達するステップであって、前記複数のレシピエント細胞の各レシピエント細胞が、前記複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットをコードするポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、(i)前記ポリヌクレオチドが前記内因性核酸の転写産物もしくは増幅産物であるか、または(ii)前記ポリヌクレオチドがホスホロアミダイトを使用して化学的に合成されていない、ステップと、
(d)前記複数のレシピエント細胞において前記複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットを発現させるステップと、
(e)(i)前記複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも1つのレシピエント細胞を前記対象に投与するステップ、または(ii)前記複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも2つのレシピエント細胞を前記対象に投与するステップであって、前記少なくとも2つのレシピエント細胞が異なるTCRを発現する、ステップと
を含む、方法。
[140]ホスホロアミダイトを使用した前記複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットをコードするポリヌクレオチドの化学合成を含まない、[139]に記載の方法。
[141]前記複数のT細胞が、腫瘍浸潤T細胞または末梢T細胞である、[139または140]に記載の方法。
[142]前記複数のT細胞が、CD8+T細胞、CD4+T細胞、疲弊T細胞、調節性T細胞、またはそれらのいずれかの組合せを含む、[139]~[141]のいずれかに記載の方法。
[143]前記複数のレシピエント細胞が、同種異系間T細胞、自家T細胞、または細胞系細胞である、[139]~[142]のいずれかに記載の方法。
[144](b)の前に、複数のレポーター細胞において前記複数のTCRを発現させるステップをさらに含む、[139]~[143]のいずれかに記載の方法。
[145]発現させるステップが、ウイルスベクターによって前記複数のTCRをコードする核酸配列を送達するステップを含む、[144]に記載の方法。
[146]前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、[145]に記載の方法。
[147]前記複数のレポーター細胞の各レポーター細胞がレポーター遺伝子を含む、[144]~[146]のいずれかに記載の方法。
[148](b)において、同定するステップが、前記複数のTCRを、1つもしくは複数の標的抗原、または1つもしくは複数の標的抗原を提示する細胞もしくは組織と接触させるステップを含む、[144]~[147]のいずれかに記載の方法。
[149]前記1つまたは複数の標的抗原が、1つまたは複数の腫瘍細胞、抗原提示細胞(APC)、人工APC(aAPC)によって提示される、[148]に記載の方法。
[150]前記1つまたは複数のAPCまたはaAPCが、標的抗原をコードするDNAまたはRNAを含む、[149]に記載の方法。
[151]前記1つまたは複数の標的抗原がMHCと複合体を形成している、[148]に記載の方法。
[152]前記MHCがMHC四量体である、[151]に記載の方法。
[153]前記複数のTCRの前記複数の腫瘍反応性TCRが、TCRの少なくとも2つの異なる同種対を含む、[144]~[152]のいずれかに記載の方法。
[154]前記複数の腫瘍反応性TCRの各TCRが、異なるエピトープまたは異なるタンパク質に特異的である、[144]~[153]のいずれかに記載の方法。
[155]前記複数の腫瘍反応性TCRの各TCRが、異なる(i)TCRアルファCDR3配列、(ii)TCRベータCDR3可変ドメイン配列、(iii)TCRアルファ可変ドメイン配列、(iv)TCRベータ可変ドメイン配列、または(v)TCRアルファおよびTCRベータ可変ドメイン配列の組合せを含む、[144]~[154]のいずれかに記載の方法。
[156]前記複数の腫瘍反応性TCRが、前記対象由来の腫瘍細胞に結合するが、前記対象由来の健康な細胞に結合しないか、または前記腫瘍細胞に対してより少なくとも10倍低い親和性で前記対象由来の健康な細胞に結合する、[144]~[155]のいずれかに記載の方法。
[157](e)において投与される前記複数のレシピエント細胞が、(a)において単離される前記複数のT細胞より少なくとも10倍多い細胞を含む、[144]~[156]のいずれかに記載の方法。
[158]対象における腫瘍を治療する方法であって、
(a)T細胞受容体(TCR)の集団を発現する前記対象からT細胞の集団を単離するステップであって、前記T細胞の集団が多くても約10,000個の細胞を含む、ステップと、
(b)前記TCRの集団から複数の腫瘍反応性TCRを同定するステップと、
(c)前記複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットを発現する複数の細胞を前記対象に投与するステップであって、前記複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットが少なくとも2個の異なる同種対を含む、ステップと
を含む、方法。
[159]対象における腫瘍を治療する方法であって、
(a)TCRの集団から複数の腫瘍反応性T細胞受容体(TCR)を同定するステップであって、前記TCRの集団がTCRの少なくとも50個の異なる同種対を含む、ステップと、
(b)前記複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットを発現する複数の細胞を前記対象に投与するステップであって、前記複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットが、少なくとも50個の異なる同種対のうちの少なくとも5個の異なる同種対を含み、前記複数の腫瘍反応性TCRが前記複数の細胞に対して外因性である、ステップと
を含む、方法。
[160]対象における腫瘍を治療する方法であって、
(a)TCRの集団から同定された複数の腫瘍反応性TCRを発現する複数の細胞を前記対象に投与するステップであって、前記TCRの集団がTCRの少なくとも50個の異なる同種対を含み、前記複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットが、前記少なくとも50個の異なる同種対のうちの少なくとも5個の異なる同種対を含み、前記複数の腫瘍反応性TCRが前記複数の細胞に対して外因性である、ステップ
を含む、方法。
[161]前記複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットが少なくとも5個のTCRを含み、前記少なくとも5個のTCRの各TCRが、(1)異なるエピトープもしくは異なるタンパク質に特異的であるか、または(2)異なる(i)TCRアルファCDR3配列、(ii)TCRベータCDR3可変ドメイン配列、(iii)TCRアルファ可変ドメイン配列、(iv)TCRベータ可変ドメイン配列、もしくは(v)TCRアルファおよびTCRベータ可変ドメイン配列の組合せを含む、[159]または[160]に記載の方法。
[162](a)の前に、前記対象から前記TCRの集団を発現するT細胞の集団を単離するステップをさらに含む、[159]~[161]のいずれかに記載の方法。
[163]前記少なくとも50個の異なる同種対が、少なくとも5個の異なるV遺伝子由来のV領域を含む、[159]~[162]のいずれかに記載の方法。
[164]同定するステップが、マーカーによって前記複数の腫瘍反応性TCRを単離するステップを含む、[159]~[163]のいずれかに記載の方法。
[165]前記複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットを発現する前記複数の細胞が、複数の同種異系間細胞、自家細胞または細胞系細胞である、[159]~[164]のいずれかに記載の方法。
[166]前記複数の同種異系間細胞が、抑制性ナチュラルキラー(NK)細胞受容体に結合するタンパク質を発現する、[165]に記載の方法。
[167]前記タンパク質が、B2M-HLA-EまたはB2M-HLA-G融合タンパク質である、[166]に記載の方法。
[168]標的反応性T細胞受容体(TCR)を同定するための方法であって、
(a)第1の試料由来の複数のT細胞を、対象由来の腫瘍細胞を含む第2の試料または第3の試料と接触させるステップであって、前記第3の試料が前記第2の試料に由来し、前記第3の試料が、
(i)前記第2の試料の前記腫瘍細胞由来の標的抗原または前記標的抗原をコードする核酸、およびMHC、
(ii)MHCにおける前記標的抗原を提示する細胞、または
(iii)MHCを含む細胞および前記核酸によってコードされるタンパク質産物
を含み、
前記複数のT細胞のサブセットが、前記MHCと複合体を形成している前記標的抗原に
結合する、ステップと、
(b)前記第1の試料の前記複数のT細胞のサブセットまたはその一部を単離するステップと、
(c)前記複数のT細胞のサブセットまたはその一部を複数の区画に分配するステップであって、各区画が前記複数のT細胞のサブセットまたはその一部の個々のT細胞を含む、ステップと、
(d)各区画内で、第1のTCR鎖をコードする第1のポリヌクレオチドおよび前記個々のT細胞のTCRの同種対の第2のTCR鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを同定し、それによって1つまたは複数の対合ポリヌクレオチドを生成するステップと
を含む、方法。
[169]同定するステップが、前記第1のTCR鎖をコードする前記第1のポリヌクレオチドおよび前記個々のT細胞のTCRの同種対の前記第2のTCR鎖をコードする前記第2のポリヌクレオチドを物理的に連結させるステップを含む、[168]に記載の方法。
[170]前記1つまたは複数の対合ポリヌクレオチドが、1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドである、[168]または[169]に記載の方法。
[171]同定するステップが、シークエンシングによって前記第1のTCR鎖をコードする前記第1のポリヌクレオチドおよび前記個々のT細胞のTCRの同種対の前記第2のTCR鎖をコードする前記第2のポリヌクレオチドを連結させるステップを含む、[168]に記載の方法。
[172]前記第1のポリヌクレオチドおよび前記第2のポリヌクレオチドが、ホスホロアミダイトを使用して化学的に合成されていない、[168]~[170]のいずれかに記載の方法。
[173]前記第1のポリヌクレオチドおよび前記第2のポリヌクレオチドが、前記個々のT細胞の内因性核酸の転写産物または増幅産物である、[168]~[170]のいずれかに記載の方法。
[174]前記第1の試料または前記第2の試料が対象から単離される、[168]~[173]のいずれかに記載の方法。
[175]前記第1の試料および前記第2の試料が同じ対象から単離される、[168]~[174]のいずれかに記載の方法。
[176]前記第1の試料および前記第2の試料が異なる対象から単離される、[168]~[174]のいずれかに記載の方法。
[177]前記第1の試料または前記第2の試料が、組織試料、血液試料、PBMC試料、またはそれらの組合せである、[168]~[176]のいずれかに記載の方法。
[178]前記組織試料が、腫瘍組織または健康な組織である、[177]に記載の方法。
[179]前記第1の試料または前記第2の試料が、コア生検、細針生検、またはアフェレーシスによって対象から単離される、[168]~[178]のいずれかに記載の方法。
[180]単離するステップが、マーカーによって前記複数のT細胞のサブセットまたはその一部を単離するステップを含む、[168]~[179]のいずれかに記載の方法。
[181]前記マーカーが、細胞表面マーカーまたはサイトカインである、[180]に記載の方法。
[182]前記細胞表面マーカーが、CD39、CD69、CD103、CD25、PD-1、TIM-3、OX-40、4-1BB、CD137、CD3、CD28、CD4、CD8、CD45RA、CD45RO、GITR、FoxP3、またはそれらの組合せである、[181]に記載の方法。
[183]前記標的抗原を提示する細胞が、腫瘍細胞、抗原提示細胞(APC)、または人工APC(aAPC)である、[168]~[181]のいずれかに記載の方法。
[184]前記APCまたは前記aAPCが、前記標的抗原によりパルスされる、[183]に記載の方法。
[185]前記核酸によってコードされるタンパク質産物を含む細胞が、前記核酸またはその誘導体と共に送達されるAPCまたはaAPCである、[168]~[184]のいずれかに記載の方法。
[186]前記APCまたは前記aAPCが、前記MHCをコードするさらなる核酸と共にさらに送達される、[185]に記載の方法。
[187]前記核酸またはその誘導体がDNAまたはRNAである、[185または186]に記載の方法。
[188]前記標的抗原を提示する細胞または前記核酸によってコードされるタンパク質産物を含む細胞が、対象から単離されるか、または細胞系細胞である、[168]~[187]のいずれかに記載の方法。
[189]前記標的抗原を提示する細胞または前記核酸によってコードされるタンパク質産物を含む細胞が、前記第1の試料および前記第2の試料が単離される同じ対象から単離される、[188]に記載の方法。
[190]前記1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドを含む1つまたは複数のベクターを生成するステップであって、前記1つまたは複数のベクターの各ベクターが、前記1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドの融合ポリヌクレオチドを含む、ステップをさらに含む、[168]~[189]のいずれかに記載の方法。
[191]前記1つまたは複数のベクターを複数の細胞に送達するステップであって、前記複数の細胞の各細胞が前記1つまたは複数のベクターのうちの少なくとも1つのベクターを含む、ステップをさらに含む、[190]に記載の方法。
[192]前記複数の細胞において前記1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドを発現させるステップであって、前記複数の細胞のサブセットが複数の標的反応性TCRを発現する、ステップをさらに含む、[191]に記載の方法。
[193]前記複数の細胞を1つまたは複数の標的抗原と接触させるステップであって、前記複数の標的反応性TCRを発現する前記複数の細胞のサブセットが前記1つまたは複数の標的抗原に結合する、ステップをさらに含む、[192]に記載の方法。
[194]前記複数の標的反応性TCRの1つまたは複数の標的反応性TCRを同定するステップをさらに含む、[193]に記載の方法。
[195]前記1つまたは複数の標的反応性TCRをコードするポリヌクレオチドを複数のレシピエント細胞に送達するステップをさらに含む、[194]に記載の方法。
[196]前記複数のレシピエント細胞の1つまたは複数の細胞を前記対象に投与するステップをさらに含む、[195]に記載の方法。
[197][67]~[116および168]~[196]のいずれかに記載の方法によって同定される標的反応性または腫瘍反応性TCRをコードする配列を含むレシピエント細胞を含む医薬組成物。
[198][197]に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、レシピエント細胞を投与する方法。
【0005】
[0005]一態様によれば、複数の融合T細胞受容体(TCR)ポリヌクレオチドを含む組成物であって、複数の各融合TCRポリヌクレオチドが第1の核酸配列および第2の核酸配列を含み、(1)第1の核酸配列が第1のTCRペプチド鎖の第1の可変ドメインをコードし、第1の可変ドメインがCDR2およびCDR3を含み、(2)第2の核酸配列が第2のTCRペプチド鎖の第2の可変ドメインをコードし、第2の可変ドメインがCDR2およびCDR3を含み;各融合TCRポリヌクレオチドの第1および第2の核酸配列が、免疫細胞由来の第1および第2のTCRペプチド鎖の同種対をコードし;複数の融合TCRポリヌクレオチドが少なくとも50個の異なる同種対をコードし;複数の融合TCRポリヌクレオチドが少なくとも5個、10個、または20個の異なるV遺伝子由来のV領域を含む、組成物が本明細書に提供される。一部の実施形態では、第1のTCRペプチド鎖はT細胞受容体(TCR)アルファペプチド鎖であり、第2のTCRペプチド鎖はTCRベータペプチド鎖である。一部の実施形態では、第1のTCRペプチド鎖はTCRガンマペプチド鎖であり、第2のTCRペプチド鎖はTCRデルタペプチド鎖である。一部の実施形態では、第1の可変ドメインはCDR1をさらに含み、および/または第2の可変ドメインはCDR1をさらに含む。一部の実施形態では、第1のTCRペプチド鎖の第1の可変ドメインは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3およびCDR3を含む第1の完全長可変ドメインであり、ならびに/または第2のTCRペプチド鎖の第2の可変ドメインは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3およびCDR3を含む第2の完全長可変ドメインである。一部の実施形態では、第1の核酸配列は、第1のTCRペプチド鎖の第1の定常ドメインもしくはその一部をさらにコードし、および/または第2の核酸配列は、第2のTCRペプチド鎖の第2の定常ドメインもしくはその一部をさらにコードする。一部の実施形態では、第1の定常ドメインは第1の細胞外ドメインであり、および/または第2の定常ドメインは第2の細胞外ドメインである。一部の実施形態では、第1の定常ドメインは、第1のTCR鎖の第1の細胞外ドメイン、第1のヒンジ領域、第1の膜貫通領域および第1の細胞質尾部を含み、ならびに/または第2の定常ドメインは、第2のTCRペプチド鎖の第2の細胞外ドメイン、第2のヒンジ領域、第2の膜貫通領域および第2の細胞質尾部を含む。一部の実施形態では、複数の各融合TCRポリヌクレオチドは、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、または少なくとも1500の塩基対の長さである。一部の実施形態では、複数の各融合TCRポリヌクレオチドは、少なくとも1000、少なくとも1500、または少なくとも2000の塩基対の長さである。一部の実施形態では、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、免疫細胞から得られるか、または放出される。
【0006】
[0006]一部の実施形態では、免疫細胞は試料から単離される。一部の実施形態では、試料は対象から得られる。一部の実施形態では、免疫細胞はリンパ球である。一部の実施形態では、リンパ球はT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、炎症性T細胞、細胞傷害性T細胞、調節性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、T細胞は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞はin vitroで増殖する。一部の実施形態では、試料は、血液細胞試料、骨髄試料、臍帯血試料、腹水試料、胸水試料、脳脊髄試料、精液試料、痰試料、尿試料、糞便試料、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、試料は、脳、肝臓、肺、腎臓、前立腺、卵巣、脾臓、リンパ節、扁桃腺、甲状腺、膵臓、心臓、骨格筋、腸、喉頭、食道、胸腺、胃、腫瘍、感染部位、またはそれらの組合せに由来する組織試料である。一部の実施形態では、対象は哺乳動物である。一部の実施形態では、哺乳動物は、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、またはラットである。一部の実施形態では、対象は健康な対象または疾患対象である。一部の実施形態では、免疫細胞はマーカーによって試料から単離される。一部の実施形態では、マーカーは細胞表面マーカーである。一部の実施形態では、細胞表面マーカーは、CD39、CD69、CD103、CD25、PD-1、TIM-3、OX-40、4-1BB、CD137、CD3、CD28、CD4、CD8、CD45RA、およびCD45RO、GITR、FoxP3、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、マーカーはサイトカインである。一部の実施形態では、サイトカインは、IFN-γ、TNF-アルファ、IL-17A、IL-2、IL-3、IL-4、GM-CSF、IL-10、IL-13、グランザイムB、パーフォリン、またはそれらの組合せである。
【0007】
[0007]一部の実施形態では、複数の各融合TCRポリヌクレオチドはプロモーターをさらに含む。一部の実施形態では、プロモーターは構成的または誘導的である。一部の実施形態では、プロモーターはテトラサイクリン応答性プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターはウイルスプロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、β-アクチンプロモーター、SV40早期プロモーター、SV40後期プロモーター、免疫グロブリンプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、レトロウイルスプロモーター、Friend脾臓フォーカス形成ウイルスプロモーター、ヘルペスウイルスTKプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター;マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター、メタロチオネインプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクチニア7.5Kプロモーター、またはエノラーゼプロモーターである。一部の実施形態では、第1の核酸および第2の核酸はインフレームで融合され、その結果、第1の可変ドメインおよび第2の可変ドメインの発現は1つのプロモーターの制御下である。一部の実施形態では、複数の各融合TCRポリヌクレオチドは、プロテアーゼ切断部位をコードする配列をさらに含む。一部の実施形態では、プロテアーゼ切断部位は、細胞プロテアーゼ切断部位またはウイルスプロテアーゼ切断部位である。一部の実施形態では、プロテアーゼ切断部位は、エンテロキナーゼ切断部位、第Xa因子切断部位、トロンビン切断部位、レニン切断部位、コラゲナーゼ切断部位、トリプシン切断部位、カスパーゼプロテアーゼ切断部位、フューリン切断部位、PC5/6プロテアーゼ切断部位;PACEプロテアーゼ切断部位、LPC/PC7プロテアーゼ切断部位、第Xa因子プロテアーゼ切断部位、ゲネナーゼI(genenase I)切断部位、MMPプロテアーゼ切断部位、またはKEX2プロテアーゼ切断部位である。一部の実施形態では、プロテアーゼ切断部位は、ウイルス2Aプロテアーゼ切断部位、ウイルス3Cプロテアーゼ切断部位、感染性膵臓壊死ウイルス(IPNV)VP4プロテアーゼ切断部位、タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位、またはカブモザイクポチウイルス切断部位の核封入タンパク質a(N1a)である。一部の実施形態では、複数の各融合TCRポリヌクレオチドは自己切断ペプチドをコードする配列を含む。一部の実施形態では、自己切断ペプチドは、インテインペプチド、ヘッジホッグペプチド、または2Aペプチドである。一部の実施形態では、少なくとも20個の異なるV遺伝子は、少なくとも10個の異なるTRAV遺伝子および/または少なくとも10個の異なるTRBV遺伝子を含む。一部の実施形態では、TRAV遺伝子およびTRBV遺伝子は、ヒトまたはマウスTRAV遺伝子およびTRBV遺伝子である。
【0008】
[0008]一部の実施形態では、少なくとも10個の異なるTRAV遺伝子は、ヒトTRAV1-1、TRAV1-2、TRAV2、TRAV3、TRAV4、TRAV5、TRAV6、TRAV7、TRAV8-1、TRAV8-2、TRAV8-3、TRAV8-4、TRAV8-6、TRAV9-1、TRAV9-2、TRAV10、TRAV12-1、TRAV12-2、TRAV12-3、TRAV13-1、TRAV13-2、TRAV14、TRAV16、TRAV17、TRAV18、TRAV19、TRAV20、TRAV21、TRAV22、TRAV23、TRAV24、TRAV25、TRAV26-1、TRAV26-2、TRAV27、TRAV29、TRAV30、TRAV34、TRAV35、TRAV36、TRAV38-1、TRAV38-2、TRAV39、TRAV40、TRAV41からなる群から選択される。一部の実施形態では、少なくとも10個の異なるTRBV遺伝子は、ヒトTRBV2、TRBV3-1、TRBV4-1、TRBV4-2、TRBV4-3、TRBV5-1、TRBV5-4、TRBV5-5、TRBV5-6、TRBV5-8、TRBV6-1、TRBV6-2、TRBV6-3、TRBV6-4、TRBV6-5、TRBV6-6、TRBV6-8、TRBV6-9、TRBV7-2、TRBV7-3、TRBV7-4、TRBV7-6、TRBV7-7、TRBV7-8、TRBV7-9、TRBV9、TRBV10-1、TRBV10-2、TRBV10-3、TRBV11-1、TRBV11-2、TRBV11-3、TRBV12-3、TRBV12-4、TRBV12-5、TRBV13、TRBV14、TRBV15、TRBV16、TRBV18、TRBV19、TRBV20-1、TRBV24-1、TRBV25-1、TRBV27、TRBV28、TRBV29-1、およびTRBV30からなる群から選択される。
【0009】
[0009]一部の実施形態では、少なくとも20個の異なるV遺伝子は、少なくとも20個の異なるV遺伝子サブグループを含む。一部の実施形態では、少なくとも20個の異なるV遺伝子サブグループは、少なくとも10個の異なるTRAV遺伝子サブグループおよび/または少なくとも10個の異なるTRBV遺伝子サブグループを含む。一部の実施形態では、少なくとも10個の異なるTRAV遺伝子サブグループは、ヒトTRAV1、TRAV2、TRAV3、TRAV4、TRAV5、TRAV6、TRAV7、TRAV8、TRAV9、TRAV10、TRAV12、TRAV13、TRAV14、TRAV16、TRAV17、TRAV18、TRAV19、TRAV20、TRAV21、TRAV22、TRAV23、TRAV24、TRAV25、TRAV26、TRAV27、TRAV29、TRAV30、TRAV34、TRAV35、TRAV36、TRAV38、TRAV39、TRAV40、およびTRAV41サブグループからなる群から選択される。一部の実施形態では、少なくとも10個の異なるTRBV遺伝子サブグループは、ヒトTRBV2、TRBV3、TRBV4、TRBV5、TRBV6、TRBV7、TRBV9、TRBV10、TRBV11、TRBV12、TRBV13、TRBV14、TRBV15、TRBV16、TRBV18、TRBV19、TRBV20、TRBV24、TRBV25、TRBV27、TRBV28、TRBV29、およびTRBV30サブグループからなる群から選択される。
【0010】
[0010]一部の実施形態では、少なくとも10個の異なるTRAV遺伝子は、マウスTRAV1、TRAV2、TRAV3-1、TRAV3-3、TRAV3-4、TRAV3D-3、TRAV3N-3、TRAV4-2、TRAV4-3、TRAV4-4、TRAV4D-2、TRAV4D-3、TRAV4D-4、TRAV4N-3、TRAV4N-4、TRAV5-1、TRAV5-2、TRAV5-4、TRAV5D-2、TRAV5D-4、TRAV5N-2、TRAV5N-4、TRAV6-1、TRAV6-2、TRAV6-3、TRAV6-4、TRAV6-5、TRAV6-6、TRAV6-7、TRAV6D-3、TRAV6D-4、TRAV6D-5、TRAV6D-6、TRAV6D-7、TRAV6N-5、TRAV6N-6、TRAV6N-7、TRAV7-1、TRAV7-2、TRAV7-3、TRAV7-4、TRAV7-5、TRAV7-6、TRAV7D-2、TRAV7D-3、TRAV7D-4、TRAV7D-5、TRAV7D-6、TRAV7N-4、TRAV7N-5、TRAV7N-6、TRAV8-1、TRAV8-2、TRAV8D-1、TRAV8D-2、TRAV8N-2、TRAV9-1、TRAV9-2、TRAV9-3、TRAV9-4、TRAV9D-1、TRAV9D-2、TRAV9D-3、TRAV9D-4、TRAV9N-2、TRAV9N-3、TRAV9N-4、TRAV10、TRAV10D、TRAV10N、TRAV11、TRAV11D、TRAV11N、TRAV12-1、TRAV12-2、TRAV12-3、TRAV12D-1、TRAV12D-2、TRAV12D-3、TRAV12N-1、TRAV12N-2、TRAV12N-3、TRAV13-1、TRAV13-2、TRAV13-3、TRAV13-4、TRAV13-5、TRAV13D-1、TRAV13D-2、TRAV13D-3、TRAV13D-4、TRAV13N-1、TRAV13N-2、TRAV13N-3、TRAV13N-4、TRAV14-1、TRAV14-2、TRAV14-3、TRAV14D-1、TRAV14D-2、TRAV14D-3、TRAV14N-1、TRAV14N-2、TRAV14N-3、TRAV15-1、TRAV15-2、TRAV15D-1、TRAV15D-2、TRAV15N-1、TRAV15N-2、TRAV16、TRAV16D、TRAV16N、TRAV17、TRAV18、TRAV19、TRAV20、およびTRAV21からなる群から選択される。
【0011】
[0011]一部の実施形態では、少なくとも10個の異なるTRBV遺伝子は、マウスTRBV1、TRBV2、TRBV3、TRBV4、TRBV5、TRBV8、TRBV9、TRBV10、TRBV12-1、TRBV12-2、TRBV13-1、TRBV13-2、TRBV13-3、TRBV14、TRBV15、TRBV16、TRBV17、TRBV19、TRBV20、TRBV21、TRBV23、TRBV24、TRBV26、TRBV29、TRBV30、およびTRBV31からなる群から選択される。一部の実施形態では、少なくとも10個の異なるTRAV遺伝子サブグループは、TRAV1、TRAV2、TRAV3、TRAV4、TRAV5、TRAV6、TRAV7、TRAV8、TRAV9、TRAV10、TRAV11、TRAV12、TRAV13、TRAV14、TRAV15、TRAV16、TRAV17、TRAV18、TRAV19、TRAV20、およびTRAV21サブグループからなる群から選択される。一部の実施形態では、少なくとも10個の異なるTRBV遺伝子サブグループは、マウスTRBV1、TRBV2、TRBV3、TRBV4、TRBV5、TRBV8、TRBV9、TRBV10、TRBV12、TRBV13、TRBV14、TRBV15、TRBV16、TRBV17、TRBV19、TRBV20、TRBV21、TRBV23、TRBV24、TRBV26、TRBV29、TRBV30、およびTRBV31サブグループからなる群から選択される。
【0012】
[0012]一部の実施形態では、複数の各融合TCRポリヌクレオチドは環状化される。一部の実施形態では、複数の融合TCRポリヌクレオチドは、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個の異なる配列を含む。
【0013】
[0013]別の態様によれば、各々が免疫細胞由来の異なる融合TCRポリヌクレオチドを含む、複数のベクターが本明細書に提供される。一部の実施形態では、複数のベクターは、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個のベクターを含む。一部の実施形態では、複数のベクターは、自己増幅RNAレプリコン、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、またはビリオンである。一部の実施形態では、複数のベクターは、宿主細胞I型インターフェロン産生を低減させ、発現の持続時間を延長させ、タンパク質産生のレベルを増加させ、および/または二分免疫受容体に加えて治療利益を有するさらなる物質を発現させるように選択または操作されているTC-83アルファウイルスレプリコンの誘導体である。一部の実施形態では、複数のベクターはウイルスベクターである。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、B型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルスまたはそれらの偽型に由来する。一部の実施形態では、複数のベクターは非ウイルスベクターである。一部の実施形態では、非ウイルスベクターは、ナノ粒子、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、金属性ナノポリマー、ナノロッド、リポソーム、ミセル、マイクロバブル、細胞透過性ペプチド、またはリポスフィア(liposphere)である。
【0014】
[0014]各々が、本明細書に記載される組成物由来の異なる融合TCRポリヌクレオチド、または本明細書に記載される複数のベクター由来の異なる融合TCRポリヌクレオチドによってコードされる、複数のTCRであって、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個のTCRを含む、複数のTCRもまた、本明細書に提供される。
【0015】
[0015]各々が、本明細書に記載される組成物由来の異なる融合TCRポリヌクレオチド、本明細書に記載される複数のベクターの異なるベクター、または本明細書に記載される複数のTCRの異なるTCRを含む、複数の宿主細胞もまた、本明細書に提供される。一部の実施形態では、複数の宿主細胞はT細胞またはB細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、炎症性T細胞、細胞傷害性T細胞、調節性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、T細胞は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞である。一部の実施形態では、複数の宿主細胞は自家細胞である。一部の実施形態では、複数の宿主細胞は同種異系間細胞である。一部の実施形態では、複数の宿主細胞はドナーから得られる。一部の実施形態では、ドナーはヒトである。一部の実施形態では、ドナーは健康なドナーまたは疾患ドナーである。一部の実施形態では、複数の宿主細胞は試料から得られる。一部の実施形態では、試料は、血液試料、骨髄試料、臍帯血試料、腹水試料、胸水試料、脳脊髄試料、精液試料、痰試料、尿試料、糞便試料、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、試料は、脳、肝臓、肺、腎臓、前立腺、卵巣、脾臓、リンパ節、扁桃腺、甲状腺、膵臓、心臓、骨格筋、腸、喉頭、食道、胸腺、胃、腫瘍、感染部位、またはそれらの組合せから得られる組織試料である。一部の実施形態では、複数の宿主細胞は細胞系細胞である。一部の実施形態では、細胞系細胞は、CHO-K1細胞;HEK293細胞;Caco2細胞;U2-OS細胞;NIH 3T3細胞;NSO細胞;SP2細胞;CHO-S細胞;DG44細胞;K-562細胞、U-937細胞;MRC5細胞;IMR90細胞;Jurkat細胞;HepG2細胞;HeLa細胞;HT-1080細胞;HCT-116細胞;Hu-h7細胞;Huvec細胞;またはMolt 4細胞である。一部の実施形態では、複数の宿主細胞は遺伝子修飾された細胞である。
【0016】
[0016]一部の実施形態では、TCRアルファペプチド鎖、TCRベータペプチド鎖、TCRガンマペプチド鎖、TCRデルタペプチド鎖、BCR重ペプチド鎖、またはBCR軽ペプチド鎖をコードする内因性遺伝子は、下方制御されるか、または不活性化される。一部の実施形態では、さらなる内因性遺伝子は下方制御されるか、または不活性化され、そのさらなる内因性遺伝子は、PD1、CTLA-4、LAG3、Tim3、BTLA、BY55、TIGIT、B7H5、LAIR1、SIGLEC10、2B4、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、複数の宿主細胞の各々は、宿主細胞の機能を向上させるためにさらなる作用物質を発現するように操作される。一部の実施形態では、機能は、細胞傷害機能、炎症誘発機能、または抗炎症機能である。一部の実施形態では、さらなる作用物質はサイトカインである。一部の実施形態では、サイトカインは炎症性サイトカインである。一部の実施形態では、サイトカインは抗炎症性サイトカインである。一部の実施形態では、サイトカインは、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα);インターロイキン(IL)-1α;IL-1β;IL-2;IL-5;IL-6;IL-8;IL-15;IL-18;インターフェロン(IFN-γ);血小板活性化因子(PAF);単球走化性タンパク質1および2(MCP-1、MCP-2);マクロファージ遊走阻止因子(MIF);CXCL8;CXCL9;CXCL10;高移動度群ボックスタンパク質1(HMGB-1)、IL-1ra、IL-4、IL-10、IL-11、IL-13、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)、IL-16、またはそれらのいずれかの組合せである。
【0017】
[0017]別の態様によれば、複数のベクターであって、複数の各ベクターが、第1の核酸配列および第2の核酸配列を有する融合T細胞受容体(TCR)ポリヌクレオチドを含み、(1)第1の核酸配列が第1のTCRペプチド鎖の第1の可変ドメインをコードし、第1の可変ドメインが、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、(2)第2の核酸配列が第2のTCRペプチド鎖の第2の可変ドメインをコードし、第2の可変ドメインが、CDR1、CDR2、およびCDR3を含み;各融合TCRポリヌクレオチドの第1および第2の核酸配列が免疫細胞由来の第1および第2のTCRペプチド鎖の同種対をコードし;複数の融合TCRポリヌクレオチドが少なくとも20個の異なるV遺伝子由来のV領域を含む、複数のベクターを含む組成物が本明細書に提供される。一部の実施形態では、複数のベクターは、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、または少なくとも1,000,000個の異なる同種対を含む。一部の実施形態では、複数のベクターは、少なくとも約5個、10個、50個、100個、250個、500個、750個、1000個、1500個、2000個、2500個、5000個、7500個、または10000個、20000個、30000個、40000個、50000個、60000個、70000個、80000個、90000個、100000個、200000個、300000個、400000個、500000個、600000個、700000個、800000個、900000個、1000000個、2000000個、3000000個、4000000個、5000000個、10000000個、20000000個、またはそれより多くの異なる同種対を含む。一部の実施形態では、複数のベクターは、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個の異なる配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも20個の異なるV遺伝子は、少なくとも10個の異なるTRAV遺伝子サブグループおよび/または少なくとも10個の異なるTRBV遺伝子サブグループを含む。
【0018】
[0018]別の態様によれば、複数のヒドロゲル粒子またはビーズを含む組成物であって、複数の各ヒドロゲル粒子またはビーズが、第1の免疫受容体ペプチド鎖の第1の可変ドメインをコードする第1の核酸分子およびその第1の増幅産物(ここで第1の可変ドメインはCDR3を含む)、第2の免疫受容体ペプチド鎖の第2の可変ドメインをコードする第2の核酸分子およびその第2の増幅産物(ここで第2の可変ドメインはCDR3を含む)を含み、第1の増幅産物および第2の増幅産物が、重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーを有するマトリクス内に包埋または封入されており、第1の増幅産物および第2の増幅産物の拡散が抑制される、組成物が本明細書に提供される。
【0019】
[0019]別の態様によれば、複数のヒドロゲル粒子またはビーズを含む組成物であって、複数の各ヒドロゲル粒子またはビーズが、第1の免疫受容体ペプチド鎖の第1の可変ドメインをコードする第1の核酸分子およびその第1のプライマー伸長産物(ここで第1の可変ドメインはCDR3を含む)、ならびに第2の免疫受容体ペプチド鎖の第2の可変ドメインをコードする第2の核酸分子およびその第2のプライマー伸長産物(ここで第2の可変ドメインはCDR3を含む)を含み、第1のプライマー伸長産物および第2のプライマー伸長産物が、重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーを有するマトリクス内に包埋または封入されており、第1のプライマー伸長産物および第2のプライマー伸長産物の拡散が抑制される、組成物が本明細書に提供される。
【0020】
[0020]一部の実施形態では、第1および第2のプライマー伸長産物は予め設計された配列を有するアダプターを含む。一部の実施形態では、アダプターは、第1または第2の核酸とハイブリダイズできないか、または相補的ではない。一部の実施形態では、アダプターは、鋳型スイッチオリゴヌクレオチドの配列または逆相補的配列を含む。一部の実施形態では、第1および第2のプライマー伸長産物は逆転写(RT)産物である。一部の実施形態では、第1および第2のプライマー伸長産物は第2の鎖合成(SSS)産物である。一部の実施形態では、RT産物は拡散抑制剤に連結している。一部の実施形態では、SSS産物は拡散抑制剤に連結している。一部の実施形態では、SSS産物は拡散抑制剤に間接的に連結している。一部の実施形態では、第1および第2のプライマー伸長産物は第1および第2の増幅産物である。一部の実施形態では、第1の増幅産物および/または第2の増幅産物は拡散抑制剤に連結している。一部の実施形態では、第1の増幅産物および/または第2の増幅産物は捕捉剤を介して拡散抑制剤に連結している。一部の実施形態では、捕捉剤は、第1の増幅産物および/または第2の増幅産物のアダプター配列に対する相補配列を有するオリゴヌクレオチドを含む。
【0021】
[0021]一部の実施形態では、拡散抑制剤はポリマーである。一部の実施形態では、ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、または多糖である。一部の実施形態では、拡散抑制剤は粒子である。一部の実施形態では、粒子はマトリクスの孔径より大きい直径を有する。一部の実施形態では、拡散抑制剤はマトリクスである。一部の実施形態では、第1の核酸分子および第2の核酸分子は細胞から放出される。一部の実施形態では、細胞は単一細胞である。一部の実施形態では、細胞はリンパ球である。一部の実施形態では、細胞はT細胞またはB細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、CD3+T細胞、CD28+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD45RA+T細胞、CD45RO+T細胞、またはそれらのいずれかの組合せである。一部の実施形態では、B細胞は、形質芽球細胞、形質細胞、リンパ形質細胞様細胞、メモリーB細胞、濾胞性B細胞、辺縁帯B細胞、B-1細胞、B-2細胞、または調節性B細胞である。一部の実施形態では、第1の免疫受容体ペプチド鎖はTCRアルファペプチド鎖であり、第2の免疫受容体ペプチド鎖はTCRベータペプチド鎖である。一部の実施形態では、第1の免疫受容体ペプチド鎖はTCRガンマペプチド鎖であり、第2の免疫受容体ペプチド鎖はTCRデルタペプチド鎖である。一部の実施形態では、第1の免疫受容体ペプチド鎖は免疫グロブリン重ペプチド鎖であり、第2の免疫受容体ペプチド鎖は免疫グロブリン軽ペプチド鎖である。一部の実施形態では、第1の免疫受容体ペプチド鎖および第2の免疫受容体ペプチド鎖は二分免疫受容体の同種対である。一部の実施形態では、第1の増幅産物および第2の増幅産物は連結して連続ポリヌクレオチドを形成する。一部の実施形態では、第1の増幅産物および/または第2の増幅産物は、第1の核酸分子および/または第2の核酸分子の少なくとも100個、少なくとも500個、少なくとも1000個、少なくとも10000個、またはそれより多くのコピーを含む。一部の実施形態では、第1または第2の核酸は、拡散が抑制される。一部の実施形態では、第1の核酸分子および/または第2の核酸分子はデオキシリボ核酸またはリボ核酸である。一部の実施形態では、第1の核酸分子および/または第2の核酸分子は一本鎖核酸または二本鎖核酸である。一部の実施形態では、第1の核酸分子は第1の定常ドメインをさらにコードし、および/または第2の核酸分子は第2の定常ドメインをさらにコードする。一部の実施形態では、第1の定常ドメインは第1の細胞外定常ドメインであり、および/または第2の定常ドメインは第2の細胞外定常ドメインである。一部の実施形態では、第1の定常ドメインは、第1の細胞外定常ドメイン、第1のヒンジ領域、第1の膜貫通ドメイン、および第1の細胞質尾部を含み、ならびに/または第2の定常ドメインは、第2の細胞外定常ドメイン、第2のヒンジ領域、第2の膜貫通ドメイン、および第2の細胞質尾部を含む。
【0022】
[0022]一部の実施形態では、複数のヒドロゲル粒子またはビーズは、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個のヒドロゲル粒子またはビーズを含む。一部の実施形態では、複数のヒドロゲル粒子またはビーズは、二分免疫受容体の少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個の異なる同種対を含む。一部の実施形態では、ポリマーは、多糖、ポリアクリルアミド、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、多糖は、アガロース、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、キトサン、デンプン、デキストラン、またはアルギネートである。一部の実施形態では、モノマーは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドモノマーである。一部の実施形態では、重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーは、アガロースおよびポリアクリルアミドの混合物を含む。一部の実施形態では、重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーは架橋されている。一部の実施形態では、第1の可変ドメインおよび/または第2の可変ドメインは、CDR1、CDR2、またはそれらの組合せをさらに含む。一部の実施形態では、各ヒドロゲル粒子またはビーズはアガロースゲル粒子である。
【0023】
[0023]別の態様によれば、少なくとも5つのヒドロゲル粒子のうちの複数を含む組成物であって、少なくとも5つのヒドロゲル粒子の各々が、(a)第1の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第1のポリヌクレオチドおよび(b)第2の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第2のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含み、第1および第2の免疫受容体ペプチド鎖の各々が固有の同種免疫受容体対合鎖を含み、少なくとも5つのヒドロゲル粒子の個々のヒドロゲル粒子の第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドが単一細胞由来であり、(ii)互いに連結しており;ヒドロゲル粒子由来の第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドの拡散が抑制される、組成物が本明細書に提供される。一部の実施形態では、第1のポリヌクレオチドまたは第2のポリヌクレオチドはDNAである。一部の実施形態では、DNAは増幅産物である。一部の実施形態では、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは共有結合的に連結している。一部の実施形態では、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドはホスホジエステル結合によって連結している。一部の実施形態では、第1のポリヌクレオチドまたは第2のポリヌクレオチドは拡散抑制剤に連結している。
【0024】
[0024]別の態様によれば、少なくとも5つのヒドロゲル粒子のうちの複数を含む組成物であって、少なくとも5つのヒドロゲル粒子の各々が、(a)第1の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第1のRNAおよび(b)第2の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第2のRNAを含み、第1および第2の免疫受容体ペプチド鎖の各々が固有の同種免疫受容体対合鎖を含み、少なくとも5つのヒドロゲル粒子の個々のヒドロゲル粒子の各々の第1のRNAおよび第2のRNAが単一細胞由来であり、(1)各々の第1のRNAが第1のRNAの逆相補的配列を含む第1のcDNAとハイブリダイズされ、(2)各々の第2のRNAが第2のRNAの逆相補的配列を含む第2のcDNAとハイブリダイズされ;ヒドロゲル粒子からの第1のcDNAおよび第2のcDNAの拡散が抑制される、組成物が本明細書に提供される。一部の実施形態では、第1のcDNAまたは第2のcDNAは、第1のRNAまたは第2のRNAとハイブリダイズできないか、または相補的ではない配列をさらに含む。一部の実施形態では、第1のcDNAまたは第2のcDNAは、鋳型スイッチオリゴヌクレオチドの逆相補的配列をさらに含む。一部の実施形態では、第1のcDNAまたは第2のcDNAは拡散抑制剤に連結している。
【0025】
[0025]別の態様によれば、少なくとも5つのヒドロゲル粒子のうちの複数を含む組成物であって、少なくとも5つのヒドロゲル粒子の各々が、(a)第1の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第1のポリヌクレオチドおよび(b)第2の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第2のポリヌクレオチドを含み、第1および第2の免疫受容体ペプチド鎖の各々が固有の同種免疫受容体対合鎖を含み、少なくとも5つのヒドロゲル粒子の個々のヒドロゲル粒子の各々の第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドが単一細胞由来であり、(1)各々の第1のポリヌクレオチドが第1のプライマーとハイブリダイズされ、(2)各々の第2のポリヌクレオチドが第2のプライマーとハイブリダイズされ;ヒドロゲル粒子からの第1のプライマーおよび第2のプライマーの拡散が抑制される、組成物が本明細書に提供される。
【0026】
[0026]一部の実施形態では、第1のプライマーまたは第2のプライマーは逆転写プライマーである。一部の実施形態では、第1のプライマーまたは第2のプライマーは増幅プライマーである。一部の実施形態では、第1のポリヌクレオチドまたは第2のポリヌクレオチドはRNAである。一部の実施形態では、第1のポリヌクレオチドまたは第2のポリヌクレオチドはDNAである。一部の実施形態では、第1のプライマーまたは第2のプライマーは拡散抑制剤に連結している。
【0027】
[0027]別の態様によれば、少なくとも5つのヒドロゲル粒子のうちの複数を含む組成物であって、少なくとも5つのヒドロゲル粒子の各々が、(a)第1の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第1のDNAおよび(b)第2の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第2のDNAを含み、第1および第2の免疫受容体ペプチド鎖の各々が固有の同種免疫受容体対合鎖を含み、少なくとも5つのヒドロゲル粒子の個々のヒドロゲル粒子の各々の第1のDNAおよび第2のDNAが単一細胞由来であり、(1)各々の第1のDNAが、第1の免疫受容体鎖をコードする配列の逆相補的配列を含む第1のポリヌクレオチドとハイブリダイズされ、(2)各々の第2のDNAが、第2の免疫受容体鎖をコードする配列の逆相補的配列を含む第2のポリヌクレオチドとハイブリダイズされ;ヒドロゲル粒子からの第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドの拡散が抑制される、組成物が本明細書に提供される。
【0028】
[0028]一部の実施形態では、第1のDNAまたは第2のDNAはcDNAである。一部の実施形態では、第1のDNAまたは第2のDNAはゲノムDNAである。一部の実施形態では、第1のポリヌクレオチドまたは第2のポリヌクレオチドはRNAである。一部の実施形態では、RNAはメッセンジャーRNAである。一部の実施形態では、ヒドロゲル粒子からの第1のDNAまたは第2のDNAの拡散は抑制される。一部の実施形態では、第1のポリヌクレオチドまたは第2のポリヌクレオチドは増幅産物である。一部の実施形態では、増幅産物は、第1または第2のDNAとハイブリダイズできないか、または相補的ではないアダプターを含む。一部の実施形態では、アダプターは捕捉剤とさらにハイブリダイズする。一部の実施形態では、捕捉剤は拡散抑制剤に連結している。一部の実施形態では、拡散抑制剤はポリマーまたは粒子である。一部の実施形態では、第1および第2の免疫受容体ペプチド鎖は、TCRアルファおよびTCRベータペプチド鎖、TCRガンマおよびTCRデルタペプチド鎖、またはBCR重および軽ペプチド鎖である。一部の実施形態では、単一細胞は免疫細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞はT細胞またはB細胞である。
【0029】
[0029]別の態様によれば、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドライブラリーを調製するための方法であって、(a)複数のベッセルを生成するステップであって、各々が、(1)二分免疫受容体の第1のペプチド鎖をコードする第1の核酸および二分免疫受容体の第2のペプチド鎖をコードする第2の核酸を含む細胞と、(2)複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーとを含む、ステップと、(b)複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーを重合またはゲル化して複数の硬化粒子を形成するステップであって、複数の硬化粒子のそれぞれが重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーからなるマトリクスを有し、複数の硬化粒子のそれぞれが第1の核酸の第1のプライマー伸長産物および第2の核酸の第2のプライマー伸長産物を含み;第1のプライマー伸長産物および第2のプライマー伸長産物がマトリクス内に包埋または封入されており、第1のプライマー伸長産物および第2のプライマー伸長産物の拡散が抑制される、ステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0030】
[0030]一部の実施形態では、第1および第2のプライマー伸長産物は、逆転写(RT)産物、第2の鎖合成(SSS)産物、または増幅産物である。一部の実施形態では、第1および/または第2のプライマー伸長産物はアダプター配列を含む。一部の実施形態では、アダプター配列は、第1または第2の核酸分子とハイブリダイズできないか、または相補的ではない。一部の実施形態では、第1および第2のプライマー伸長産物は可変ドメインをコードする。一部の実施形態では、可変ドメインは、CDR1、CDR2およびCDR3を含む。一部の実施形態では、第1および/または第2のプライマー伸長産物は定常ドメインをさらにコードする。
【0031】
[0031]一部の実施形態では、方法は、細胞を溶解して第1の核酸および第2の核酸を放出させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、第1の核酸および第2の核酸を逆転写するステップをさらに含む。一部の実施形態では、逆転写するステップはRTプライマーを使用することによって実施される。一部の実施形態では、RTプライマーは拡散抑制剤に連結しており、拡散抑制剤はマトリクス内のRTプライマーの拡散を抑制する。一部の実施形態では、方法は、鋳型スイッチ反応またはSSS反応を実施するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、第1の核酸および第2の核酸を増幅させて第1および第2の増幅産物を生成するステップをさらに含む。一部の実施形態では、第1または第2の核酸の各々について、増幅させるステップは、第1の増幅プライマーおよび第2の増幅プライマーを使用することによって実施される。一部の実施形態では、第1の増幅プライマーは拡散抑制剤に連結しており、拡散抑制剤はマトリクス内の第1の増幅プライマーの拡散を抑制する。
【0032】
[0032]一部の実施形態では、方法は、複数の硬化粒子を洗浄するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、複数の硬化粒子を洗浄して、試薬が複数の硬化粒子から拡散することを可能にするステップをさらに含む。一部の実施形態では、試薬は、RTプライマー、増幅プライマー、鋳型スイッチプライマー、SSSプライマー、またはそれらのいずれかの組合せを含む。一部の実施形態では、方法は、複数の硬化粒子を繰り返し洗浄するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、洗浄するステップの後に油中で複数の硬化粒子を乳化し、それによってさらなる複数のベッセルを形成するステップであって、さらなる複数のベッセルの各ベッセルが複数の硬化粒子の単一の硬化粒子を含む、ステップをさらに含む。一部の実施形態では、第1および第2のプライマー伸長産物は拡散抑制剤に連結している。一部の実施形態では、拡散抑制剤はポリマーである。一部の実施形態では、ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、または多糖である。一部の実施形態では、拡散抑制剤は粒子である。一部の実施形態では、粒子は、マトリクスの孔径より大きい直径を有する。一部の実施形態では、拡散抑制剤はマトリクスである。一部の実施形態では、第1および第2のプライマー伸長産物は、捕捉剤を介して拡散抑制剤に連結している。一部の実施形態では、捕捉剤は固定化部分を含む。一部の実施形態では、固定化部分は、捕捉剤を拡散抑制剤に連結する。
【0033】
[0033]一部の実施形態では、固定化部分は反応基を含む。一部の実施形態では、捕捉剤はターゲティング部分をさらに含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は捕捉オリゴヌクレオチドである。一部の実施形態では、第1の増幅プライマーは、捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1および第2の増幅産物は、捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列を含み、それによって第1および第2の増幅産物を捕捉剤に連結し、それによって拡散抑制剤に連結する。一部の実施形態では、反応基は、スクシンイミジルエステル、アミド、アクリルアミド、アシルアジド、ハロゲン化アシル、アシルニトリル、アルデヒド、ケトン、ハロゲン化アルキル、スルホン酸アルキル、無水物、ハロゲン化アリール、アジリジン、ボロネート、カルボジイミド、ジアゾアルカン、エポキシド、ハロアセトアミド、ハロプラチネート、ハロトリアジン、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ホスホロアミダイト、ハロゲン化シリル、スルホン酸エステル、ハロゲン化スルホニル、アミン、アニリン、チオール、アルコール、フェノール、ヒラジン(hyrazine)、ヒドロキシルアミン、カルボン酸、グリコール、または複素環である。一部の実施形態では、方法は、第1の増幅産物および第2の増幅産物を連結して、さらなる複数のベッセルの各ベッセル内に融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを形成し、それによって複数の融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを有する融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドライブラリーを生成するステップをさらに含む。一部の実施形態では、第1の増幅産物および第2の増幅産物はライゲーションまたはPCRによって連結されている。一部の実施形態では、第1の増幅産物および第2の増幅産物はホスホジエステル結合によって連結して連続ポリヌクレオチドを形成する。一部の実施形態では、第1の増幅産物および第2の増幅産物はインフレームで連結している。
【0034】
[0034]一部の実施形態では、方法は、さらなる複数のベッセルから複数の融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを放出放出させるステップをさらに含む。
[0035]一部の実施形態では、方法は、複数の各融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを環状化させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、複数の各融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドをベクターに挿入するステップをさらに含む。一部の実施形態では、ベクターは、自己増幅RNAレプリコン、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、またはビリオンである。一部の実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、B型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルスまたはそれらの偽型に由来する。一部の実施形態では、ベクターは非ウイルスベクターである。一部の実施形態では、非ウイルスベクターは、ナノ粒子、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、金属性ナノポリマー、ナノロッド、リポソーム、ミセル、マイクロバブル、細胞透過性ペプチド、またはリポスフィアである。一部の実施形態では、二分免疫受容体はT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)である。一部の実施形態では、TCRは、TCRアルファペプチド鎖およびTCRベータペプチド鎖、またはTCRガンマペプチド鎖およびTCRデルタペプチド鎖を含み;BCRは、重ペプチド鎖および軽ペプチド鎖を含む。一部の実施形態では、細胞は免疫細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞はリンパ球である。一部の実施形態では、リンパ球はT細胞またはB細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、炎症性T細胞、細胞傷害性T細胞、調節性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、T細胞は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞である。一部の実施形態では、B細胞は、形質芽球細胞、形質細胞、リンパ形質細胞様細胞、メモリーB細胞、濾胞性B細胞、辺縁帯B細胞、B-1細胞、B-2細胞、または調節性B細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞は、腫瘍組織または血液試料から単離される。一部の実施形態では、方法は、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを宿主細胞に送達するステップをさらに含む。一部の実施形態では、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドライブラリーは、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個の異なる融合二分免疫受容体配列を含む。一部の実施形態では、第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖は二分免疫受容体の同種対である。一部の実施形態では、ベッセルは液滴である。一部の実施形態では、液滴は油中水液滴である。一部の実施形態では、硬化粒子はヒドロゲル粒子である。一部の実施形態では、ポリマーは、多糖、ポリアクリルアミド、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、多糖は、アガロース、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、キトサン、またはアルギネートである。一部の実施形態では、モノマーは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドモノマーである。一部の実施形態では、重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーは、アガロースおよびポリアクリルアミドの混合物を含む。一部の実施形態では、重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーは架橋されている。一部の実施形態では、複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーを重合またはゲル化するステップは、開始剤を使用するステップを含む。一部の実施形態では、開始剤はUV光または化学物質である。一部の実施形態では、複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーを重合またはゲル化するステップは、ベッセルの温度を低下させるステップを含む。
【0035】
[0036]別の態様によれば、液体中で実施される方法であって、(a)核酸分子とハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第1の伸長産物を形成するステップと;(b)第1の伸長産物またはその逆相補鎖を、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含むプライマーセットを用いて増幅させ、それによって第1の増幅産物を形成するステップと;(c)液体中でポリマーマトリクスを生成してヒドロゲル粒子を形成し、それによって第1の増幅産物の拡散を抑制するステップと;(d)ヒドロゲル粒子を洗浄し、それによってヒドロゲル粒子から第2のプライマーを枯渇させるステップとを含む、方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、第1のプライマーまたは第1の増幅産物は拡散抑制剤に連結している。
【0036】
[0037]別の態様によれば、液体中で実施される方法であって、(a)核酸分子とハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第1の伸長産物を形成するステップと;(b)液体中でポリマーマトリクスを生成してヒドロゲル粒子を形成し、それによって第1の伸長産物またはその逆相補鎖の拡散を抑制するステップと;(c)ヒドロゲル粒子を洗浄するステップと;(d)第1の伸長産物またはその逆相補鎖を、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含むプライマーセットを用いて増幅させ、それによって第1の増幅産物を形成するステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0037】
[0038]一部の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドまたは第1の伸長産物は拡散抑制剤に連結している。一部の実施形態では、方法は、さらなる核酸(nuclei acid)分子とハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチドを伸長するステップをさらに含む。一部の実施形態では、核酸分子およびさらなる核酸分子は免疫受容体の第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖をコードし、第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖は免疫受容体の同種対である。一部の実施形態では、拡散抑制剤はポリマーまたは粒子である。一部の実施形態では、ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、または多糖である。一部の実施形態では、粒子は、ポリマーマトリクスの孔径より大きい直径を有する。一部の実施形態では、拡散抑制剤はポリマーマトリクスである。一部の実施形態では、核酸分子はDNAまたはRNAである。一部の実施形態では、核酸分子はゲノムDNAである。一部の実施形態では、核酸分子はメッセンジャーRNAである。一部の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドは逆転写(RT)プライマーである。一部の実施形態では、方法は、RTプライマーを、鋳型スイッチオリゴヌクレオチドを用いて伸長し、それによって鋳型スイッチオリゴヌクレオチドの逆相補的配列を有する第1の伸長産物を生成するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、アダプター配列を有する第2の鎖合成(SSS)プライマーを使用して第1の伸長産物の逆相補鎖を合成するステップをさらに含む。一部の実施形態では、アダプター配列は、核酸分子または第1の伸長産物とハイブリダイズできないか、または相補的ではない。一部の実施形態では、第1の伸長産物はアダプター配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は免疫受容体のペプチド鎖をコードする。一部の実施形態では、方法は、ヒドロゲル粒子を洗浄した後または洗浄している間、試薬をヒドロゲル粒子と接触させ、その結果、試薬がヒドロゲル粒子内に拡散するステップをさらに含む。一部の実施形態では、試薬はオリゴヌクレオチドまたは酵素である。一部の実施形態では、酵素はポリメラーゼである。一部の実施形態では、方法は、洗浄した後、油中でヒドロゲル粒子を乳化するステップをさらに含む。
【0038】
[0039]別の態様によれば、液体中で実施される方法であって、(a)複数の液滴を形成するステップであって、複数のうちの少なくとも2つの液滴が単一細胞を含む、ステップと;(b)単一細胞由来の第1の核酸分子とハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第1の伸長産物を形成するステップ;および単一細胞由来の第2の核酸分子とハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第2の伸長産物を形成するステップと;(c)第1の伸長産物またはその逆相補鎖を、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含む第1のプライマーセットを用いて増幅させ、それによって第1のセットの増幅産物を形成するステップ;および第2の伸長産物またはその逆相補鎖を、第3のプライマーおよび第4のプライマーを含む第2のプライマーセットを用いて増幅させ、それによって第2のセットの増幅産物を形成するステップと;(d)第1のセットの増幅産物の増幅産物を第2のセットの増幅産物の増幅産物と連結させるステップであって、連結が、第2および第4のプライマーの不在下での液体中での連結を含む、ステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0039】
[0040]別の態様によれば、液体中で実施される方法であって、(a)複数の液滴を形成するステップであって、複数のうちの少なくとも2つの液滴が単一細胞を含む、ステップと;(b)単一細胞由来の第1の核酸分子とハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第1の伸長産物を形成するステップ;および単一細胞由来の第2の核酸分子とハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第2の伸長産物を形成するステップと;(c)第1の伸長産物またはその逆相補鎖を、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含む第1のプライマーセットを用いて増幅させ、それによって第1のセットの増幅産物を形成するステップ;および第2の伸長産物またはその逆相補鎖を、第3のプライマーおよび第4のプライマーを含む第2のプライマーセットを用いて増幅させ、それによって第2のセットの増幅産物を形成するステップと;(d)第2および第4のプライマーを除去するステップ;および第1のセットの増幅産物の増幅産物を第2のセットの増幅産物の増幅産物と連結させるステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0040】
[0041]一部の実施形態では、各液滴は、複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーを含む。一部の実施形態では、方法は、液体中のポリマーマトリクスを生成してヒドロゲル粒子を形成し、それによって第1のセットの増幅産物および第2のセットの増幅産物の拡散を抑制するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、ヒドロゲル粒子を洗浄し、それによってヒドロゲル粒子から第2のプライマーおよび第4のプライマーを枯渇させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、連結させるステップは、第1および第2のセットの増幅産物に付着末端を生成するステップを含む。一部の実施形態では、増幅産物に付着末端を生成するステップはUSER酵素を使用するステップを含む。一部の実施形態では、連結させるステップは、第1および第2のセットの増幅産物をハイブリダイズするステップを含む。一部の実施形態では、連結させるステップは、第1および第2のセットの増幅産物をライゲーションするステップを含む。一部の実施形態では、第1のプライマーおよび第3のプライマーは同じプライマーである。一部の実施形態では、第1のプライマー、第3のプライマー、第1のセットの増幅産物、または第2のセットの増幅産物は拡散抑制剤に連結している。
【0041】
[0042]別の態様によれば、液体中で実施される方法であって、(a)複数の液滴を形成するステップであって、複数の少なくとも2つの液滴が単一細胞を含む、ステップと;(b)単一細胞由来の第1の核酸分子とハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第1の伸長産物を形成するステップ;および単一細胞由来の第2の核酸分子とハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第2の伸長産物を形成するステップと;(c)液体中でポリマーマトリクスを生成してヒドロゲル粒子を形成し、それによって第1の伸長産物および第2の伸長産物の拡散が抑制される抑制するステップと;(d)第1の伸長産物またはその逆相補鎖を、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含む第1のプライマーセットを用いて増幅させ、それによって第1のセットの増幅産物を形成するステップ;および第2の伸長産物またはその逆相補鎖を、第3のプライマーおよび第4のプライマーを含む第2のプライマーセットを用いて増幅させ、それによって第2のセットの増幅産物を形成するステップと;(e)第1のセットの増幅産物の増幅産物を第2のセットの増幅産物の増幅産物と連結させるステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0042】
[0043]一部の実施形態では、方法は、(c)の後にヒドロゲル粒子を洗浄するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、試薬をヒドロゲル粒子と接触させ、その結果、試薬がヒドロゲル粒子内に拡散するステップをさらに含む。一部の実施形態では、試薬は酵素またはオリゴヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは第1のプライマーセットおよび/または第2のプライマーセットを含む。一部の実施形態では、酵素は、ポリメラーゼ、リガーゼ、USER酵素、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、方法は、洗浄した後、油中でヒドロゲル粒子を乳化するステップをさらに含む。一部の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドまたは第2のオリゴヌクレオチドは拡散抑制剤に連結している。一部の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドまたは第2のオリゴヌクレオチドはRTプライマーである。一部の実施形態では、方法は、第2の鎖合成(SSS)プライマーを使用して第1および/または第2の伸長産物の逆相補鎖を合成するステップをさらに含む。一部の実施形態では、SSSプライマーはアダプター配列を含む。一部の実施形態では、アダプター配列は第1および/または第2の伸長産物とハイブリダイズできないか、または相補的ではない。一部の実施形態では、方法は、RTプライマーを、鋳型スイッチオリゴヌクレオチドを用いて伸長するステップをさらに含む。一部の実施形態では、単一細胞は免疫細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞はT細胞またはB細胞である。一部の実施形態では、第1の核酸分子および第2の核酸分子はDNAまたはRNAである。一部の実施形態では、DNAはゲノムDNAである。一部の実施形態では、RNAはメッセンジャーRNAである。一部の実施形態では、第1の核酸分子は免疫受容体の第1のペプチド鎖をコードし、第2の核酸分子は免疫受容体の第2のペプチド鎖をコードする。一部の実施形態では、第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖は免疫受容体の同種対である。一部の実施形態では、第1のペプチド鎖または第2のペプチド鎖は可変ドメインを含む。一部の実施形態では、可変ドメインは、CDR1、CDR2、CDR3、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、第1のペプチド鎖または第2のペプチド鎖は定常ドメインを含む。一部の実施形態では、第1のペプチド鎖または第2のペプチド鎖は膜貫通領域および/または細胞質尾部を含む。一部の実施形態では、免疫受容体はB細胞受容体である。一部の実施形態では、免疫受容体はT細胞受容体である。一部の実施形態では、拡散抑制剤はポリマーまたは粒子である。一部の実施形態では、ポリマーは、ポリアクリルアミド、多糖、またはポリエチレングリコールである。一部の実施形態では、粒子は、ヒドロゲル粒子の孔径より大きい直径を有する。一部の実施形態では、拡散抑制剤はポリマーマトリクスである。一部の実施形態では、連結させるステップは、第1および第2のセットの増幅産物に付着末端を生成するステップを含む。一部の実施形態では、増幅産物に付着末端を生成するステップはUSER酵素を使用するステップを含む。一部の実施形態では、連結させるステップは、第1および第2のセットの増幅産物をハイブリダイズするステップを含む。一部の実施形態では、連結させるステップは、第1および第2のセットの増幅産物をライゲーションするステップを含む。
【0043】
[0044]別の態様によれば、(a)宿主細胞の集団を取得するステップであって、集団における各宿主細胞が、自然に対合したTCRアルファおよびベータペプチド鎖を有するTCRまたは自然に対合したBCR重および軽ペプチド鎖を有するBCRを発現し;(i)集団由来の宿主細胞の亜集団、または(ii)集団由来の宿主細胞の亜集団の発現されたTCRもしくはBCRを濃縮し、宿主細胞の亜集団または宿主細胞の亜集団の発現されたTCRもしくはBCRが標的抗原または標的MHC-抗原複合体に結合している、ステップと;(b)ステップ(b)からの濃縮した宿主細胞の亜集団または亜集団の発現されたTCRもしくはBCRを、標的抗原または標的MHC-抗原複合体を発現する対象に投与するステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0044】
[0045]一部の実施形態では、取得するステップは、本明細書に記載される方法のいずれかを使用するステップを含む。一部の実施形態では、(b)は、宿主細胞の集団または発現されたTCRもしくはBCRを標的抗原もしくは標的MHC-抗原複合体と接触させるステップを含む。一部の実施形態では、MHCはMHC四量体である。一部の実施形態では、(c)は注射によって投与するステップを含む。一部の実施形態では、注射は、静脈内、皮下、皮内、または筋肉内に注射することを含む。一部の実施形態では、標的抗原は新抗原または腫瘍関連抗原である。
【0045】
[0046]別の態様によれば、(1)少なくとも1,000個の細胞のうちの複数を準備するステップであって、少なくとも1,000個の細胞の各細胞がTCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を含む、ステップと;(2)少なくとも1,000個の区画のうちの複数を準備するステップであって、少なくとも1,000個の区画の各区画が固体支持体を含み、固体支持体が、(a)第1の共通配列、第2の共通配列、および第1の共通配列と第2の共通配列との間のTCRアルファ鎖をコードするタンパク質コード配列を含む第1のポリヌクレオチドと、(b)第3の共通配列、第4の共通配列、および第3の共通配列と第4の共通配列との間のTCRベータ鎖をコードするタンパク質コード配列を含む第2のポリヌクレオチドとを含み、各区画におけるTCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖は複数の細胞のうちの少なくとも1つに存在する同種対であり、それによってTCRアルファ鎖を各々コードする第1の複数のタンパク質コード配列およびTCRベータ鎖を各々コードする第2の複数のタンパク質コード配列を準備する、ステップと;(3)各区画において第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドを物理的に連結させるステップとを含む、方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、第1の複数のタンパク質コード配列は少なくとも10のTRAVサブグループを含み、第2の複数のタンパク質コード配列は少なくとも10のTRBVサブグループを含む。一部の実施形態では、少なくとも1,000個の区画の各区画は、少なくとも1,000個の細胞のうちの複数由来の細胞を含む。一部の実施形態では、区画は、ウェル、マイクロウェル、または液滴である。一部の実施形態では、固体支持体は、ビーズ、ヒドロゲル粒子、またはウェルもしくはマイクロウェルの表面である。一部の実施形態では、第1の共通配列、第2の共通配列、第3の共通配列、または第4の共通配列は、少なくとも1,000個の区画のうちの複数において同じである。
【0046】
[0047]別の態様によれば、少なくとも1,000個の区画のうちの複数を含む組成物であって、少なくとも1,000個の区画の各区画が固体支持体を含み、固体支持体が、(a)第1の共通配列、第2の共通配列、および第1の共通配列と第2の共通配列との間のTCRアルファ鎖をコードするタンパク質コード配列を含む第1のポリヌクレオチドと、(b)第3の共通配列、第4の共通配列、および第3の共通配列と第4の共通配列との間のTCRベータ鎖をコードするタンパク質コード配列を含む第2のポリヌクレオチドとを含み、(i)各区画におけるTCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖が同種対であり、(ii)複数の区画における複数の第1の共通配列が同じ配列を有し、第1のプライマーとハイブリダイズできるか、または相補的であり、(iii)複数の区画における複数の第2の共通配列が同じ配列を有し、第2のプライマーとハイブリダイズできるか、または相補的であり、(iv)複数の区画における複数の第3の共通配列が同じ配列を有し、第3のプライマーとハイブリダイズできるか、または相補的であり、(v)複数の区画における複数の第4の共通配列が同じ配列を有し、第4のプライマーとハイブリダイズできるか、または相補的である、組成物が本明細書に提供される。
【0047】
[0048]一部の実施形態では、各区画は、第1のプライマー、第2のプライマー、第3のプライマー、および第4のプライマーをさらに含む。一部の実施形態では、第1のプライマーの濃度は少なくとも1nMであり、第2のプライマーの濃度は少なくとも1nMであり、第3のプライマーの濃度は少なくとも1nMであり、第4のプライマーの濃度は少なくとも1nMである。一部の実施形態では、第2の共通配列は、各区画における第4の共通配列またはその逆相補配列とハイブリダイズできるか、または相補的である。
【0048】
[0049]別の態様によれば、少なくとも1,000個の区画のうちの複数を含む組成物であって、少なくとも1,000個の区画の各区画が、(a)5’末端における第1の共通配列、3’末端における第2の共通配列、および第1の共通配列と第2の共通配列との間のTCRアルファ鎖をコードするタンパク質コード配列を含む、第1の完全または部分的一本鎖ポリヌクレオチドと、(b)5’末端における第3の共通配列、3’末端における第4の共通配列、および第3の共通配列と第4の共通配列との間のTCRベータ鎖をコードするタンパク質コード配列を含む、第2の完全または部分的一本鎖ポリヌクレオチドとを含み、(i)TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖が同種対であり、(ii)第2の共通配列が第4の共通配列とハイブリダイズする、組成物が本明細書に提供される。一部の実施形態では、第1の共通配列、第2の共通配列、第3の共通配列、または第4の共通配列は、少なくとも1,000個の区画のうちの複数において同じである。一部の実施形態では、各区画は固体支持体をさらに含む。一部の実施形態では、固体支持体はビーズまたはヒドロゲル粒子である。
【0049】
[0050]別の態様によれば、標的反応性T細胞受容体(TCR)を同定する方法であって、(a)複数のTCRを発現する複数のT細胞を準備するステップであって、複数のT細胞の各T細胞が複数のTCRのTCRの同種対を発現する、ステップと;(b)複数のT細胞を複数の区画に分配するステップであって、各区画が複数のT細胞の個々のT細胞を含む、ステップと;(c)各区画内で、第1のTCR鎖をコードする第1のポリヌクレオチドおよび個々のT細胞のTCRの同種対の第2のTCR鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを連結させ、それによって複数の融合ポリヌクレオチドを生成するステップであって、(i)第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドが個々のT細胞の内因性核酸の転写産物もしくは増幅産物であるか、または(ii)第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドがホスホロアミダイトを使用して化学的に合成されていない、ステップと;(d)複数の融合ポリヌクレオチドを含む複数のベクターを生成するステップであって、複数のベクターの各ベクターが複数の融合ポリヌクレオチドの融合ポリヌクレオチドを含む、ステップと;(e)複数のベクターを複数の細胞に送達するステップであって、複数の細胞の各細胞が複数のベクターのうちの少なくとも1つのベクターを含む、ステップと;(f)複数の細胞における複数のベクターから複数の融合ポリヌクレオチドを発現させるステップであって、複数の細胞のサブセットが複数の標的反応性TCRを発現する、ステップと;(g)複数の細胞を1つまたは複数の標的抗原と接触させるステップであって、複数の標的反応性TCRを発現する複数の細胞のサブセットが1つまたは複数の標的抗原に結合する、ステップと;(h)複数の細胞のサブセットの複数の標的反応性TCRの標的反応性TCRを同定するステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0050】
[0051]別の態様によれば、標的反応性T細胞受容体(TCR)を同定する方法であって、(a)複数のTCRを発現する複数のT細胞を準備するステップであって、複数のT細胞の各T細胞が複数のTCRのTCRの同種対を発現する、ステップと;(b)複数のT細胞を複数の区画に分配するステップであって、各区画が複数のT細胞の個々のT細胞を含む、ステップと;(c)各区画内で、第1のTCR鎖をコードする第1のポリヌクレオチドおよび個々のT細胞のTCRの同種対の第2のTCR鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを連結させ、それによって複数の融合ポリヌクレオチドを生成するステップであって、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドが個々のT細胞の内因性核酸の転写産物もしくは増幅産物であるか、または(ii)第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドがホスホロアミダイトを使用して化学的に合成されていない、ステップと;(d)複数の融合ポリヌクレオチドを複数の細胞に送達するステップであって、複数の細胞の各細胞が複数の融合ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つの融合ポリヌクレオチドを含む、ステップと;(e)複数の細胞において複数のベクターから複数の融合ポリヌクレオチドを発現させるステップであって、複数の細胞のサブセットが複数の標的反応性TCRを発現する、ステップと;(f)複数の細胞を1つまたは複数の標的抗原と接触させるステップであって、複数の標的反応性TCRを発現する複数の細胞のサブセットが1つまたは複数の標的抗原に結合する、ステップと;(g)複数の細胞のサブセットの複数の標的反応性TCRの標的反応性TCRを同定するステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0051】
[0052]一部の場合、方法は、送達するステップの前に、複数の融合ポリヌクレオチドを含む複数のベクターを生成するステップであって、複数のベクターの各ベクターが複数の融合ポリヌクレオチドの融合ポリヌクレオチドを含む、ステップをさらに含む。一部の場合、複数の細胞は複数のレシピエント細胞である。一部の場合、内因性核酸はデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)である。一部の場合、DNAはゲノムDNAである。一部の場合、RNAはメッセンジャーRNAである。一部の場合、接触させるステップは、細胞の集団を、1つまたは複数の標的抗原を提示する1つまたは複数の細胞と接触させるステップをさらに含む。一部の場合、1つまたは複数の細胞は、1つもしくは複数の腫瘍細胞、腫瘍様塊(tumorsphere)、腫瘍溶解物パルス抗原提示細胞(tumor lysate-pulsed antigen-presenting cell)(APC)または1つもしくは複数の標的抗原を提示するように操作されたAPCである。一部の場合、1つまたは複数の標的抗原を提示するように操作された1つまたは複数のAPCは、標的抗原をコードするDNAまたはRNAと共に送達される(例えば、トランスフェクトされるか、または電気穿孔される)。一部の場合、接触させるステップは、細胞の集団を腫瘍組織と接触させるステップをさらに含む。一部の場合、1つまたは複数の標的抗原は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と複合体を形成している。一部の場合、MHCはMHC四量体である。一部の場合、第1のTCR鎖はTCRアルファ鎖であり、第2のTCR鎖はTCRベータ鎖である。一部の場合、第1のTCR鎖はTCRガンマ鎖であり、第2のTCR鎖はTCRデルタ鎖である。一部の場合、複数の細胞は細胞系細胞である。一部の場合、細胞系細胞は、CHO-K1細胞;HEK293細胞;Caco2細胞;U2-OS細胞;NIH 3T3細胞;NSO細胞;SP2細胞;CHO-S細胞;DG44細胞;K-562細胞、U-937細胞;MRC5細胞;IMR90細胞;Jurkat細胞;HepG2細胞;HeLa細胞;HT-1080細胞;HCT-116細胞;Hu-h7細胞;Huvec細胞;またはMolt4細胞である。一部の場合、複数の細胞は、対象由来の試料から単離される。一部の場合、複数のT細胞は、対象由来の試料から単離される。一部の場合、試料は、腫瘍組織、血液試料、末梢血単核細胞(PBMC)試料、またはそれらの組合せである。一部の場合、腫瘍組織は多くても約2000mmである。一部の場合、血液試料は末梢血単核細胞(PBMC)を含む。一部の場合、複数のT細胞は、腫瘍浸潤T細胞または末梢T細胞である。一部の場合、複数のT細胞は、CD8+T細胞、CD4+T細胞、疲弊T細胞、調節性T細胞、またはそれらのいずれかの組合せを含む。一部の場合、方法は、複数の細胞のサブセットのうちの少なくとも1つの細胞を単離するステップをさらに含む。一部の場合、複数の細胞のサブセットのうちの少なくとも1つの細胞はFACSによって単離される。一部の場合、複数の細胞のサブセットのうちの少なくとも1つの細胞はマーカーに基づいて単離される。一部の場合、マーカーは、細胞表面マーカーまたはサイトカインである。一部の場合、細胞表面マーカーは、CD39、CD69、CD103、CD25、PD-1、TIM-3、OX-40、4-1BB、CD137、CD3、CD28、CD4、CD8、CD45RA、CD45RO、GITR、FoxP3、またはそれらの組合せである。一部の場合、サイトカインは、IFN-γ、TNF-アルファ、IL-17A、IL-2、IL-3、IL-4、GM-CSF、IL-10、IL-13、グランザイムB、パーフォリン、またはそれらの組合せである。一部の場合、方法は、(i)複数の細胞のサブセットのうちの少なくとも1つの細胞を対象に投与するステップまたは(ii)同定された標的反応性TCRを含む自家もしくは同種異系間細胞を対象に投与するステップをさらに含む。一部の場合、自家または同種異系間細胞は、同定された標的反応性TCRをコードするポリヌクレオチドを含む。一部の場合、同定された標的反応性TCRをコードするポリヌクレオチドは、融合ポリヌクレオチドもしくはその増幅産物であるか、または融合ポリヌクレオチドの第1のTCR鎖および第2のTCR鎖をコードする配列を含む。
【0052】
[0053]別の態様によれば、複数の標的反応性T細胞受容体(TCR)を同定する方法であって、(a)複数のTCRを発現する複数の細胞を準備するステップであって、複数の細胞の各細胞が複数のTCRのTCRを発現し、複数のTCRが少なくとも50個の異なる同種対を含み、複数のV遺伝子由来のV領域を含み、複数のTCRが複数の細胞に対して外因性である、ステップと;(b)複数の細胞を1つまたは複数の標的抗原と接触させるステップであって、複数の標的反応性TCRを発現する複数の細胞のサブセットが1つまたは複数の標的抗原に結合する、ステップと;(c)複数の細胞のサブセットのうちの少なくとも2つの細胞を同定するステップであって、少なくとも2つの細胞が複数の標的反応性TCRのうちの少なくとも2つの標的反応性TCRを発現し、それによって複数の標的反応性TCRのうちの少なくとも2つの標的反応性TCRを同定する、ステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0053】
[0054]一部の場合、複数のV遺伝子は、少なくとも10個の異なるV遺伝子を含む。一部の場合、複数の細胞は、複数の遺伝子操作された細胞である。一部の場合、複数の細胞は、患者から単離されていない。一部の場合、複数の細胞は、対象由来の試料から単離される。一部の場合、試料は、組織試料、血液試料、PBMC試料、またはそれらの組合せである。一部の場合、複数の細胞は、疲弊T細胞を含まない。一部の場合、複数のTCRは、少なくとも100個の異なる同種対を含む。一部の場合、方法は、複数の細胞のサブセットのうちの少なくとも2つの細胞を単離するステップをさらに含む。一部の場合、(b)は、複数の細胞を、1つまたは複数の標的抗原を提示する1つまたは複数の細胞と接触させるステップを含む。一部の場合、1つまたは複数の細胞は、1つもしくは複数の腫瘍細胞、腫瘍様塊、腫瘍溶解物パルス抗原提示細胞(APC)または1つもしくは複数の標的抗原を提示するように操作されたAPCである。一部の場合、1つまたは複数の標的抗原を提示するように操作された1つまたは複数のAPCは、標的抗原をコードするDNAまたはRNAを含む。一部の場合、(b)は、複数の細胞を腫瘍組織と接触させるステップを含む。一部の場合、(b)は、複数の細胞を、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と複合体を形成している1つまたは複数の標的抗原と接触させるステップを含む。一部の場合、MHCはMHC四量体である。一部の場合、1つまたは複数の標的抗原の配列または同一性は知られていない。一部の場合、方法は、複数の細胞のサブセットのうちの少なくとも2つの細胞のうちの少なくとも1つを対象に投与するステップをさらに含む。一部の場合、複数の細胞の各細胞がレポーター遺伝子を含み、細胞のTCRが1つまたは複数の標的抗原の標的抗原に結合すると、レポーター遺伝子がシグナルを送るように調節される。一部の場合、複数の細胞は細胞系細胞である。一部の場合、複数のTCRは、少なくとも100の異なるVJの組合せを含む。
【0054】
[0055]別の態様によれば、対象におけるがんを治療する方法であって、(a)複数のTCRを発現する複数のT細胞を準備するステップであって、複数のT細胞の各T細胞が複数のTCRのTCRの同種対を発現する、ステップと;(b)複数のT細胞を複数の区画に分配するステップであって、各区画が複数のT細胞の個々のT細胞を含む、ステップと;(c)各区画内で、第1のTCR鎖をコードする第1のポリヌクレオチドおよび個々のT細胞のTCRの同種対の第2のTCR鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを連結させ、それによって複数の融合ポリヌクレオチドを生成するステップであって、(i)第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドが個々のT細胞の内因性核酸の転写産物もしくは増幅産物であるか、または(ii)第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドがホスホロアミダイトを使用して化学的に合成されていない、ステップと;(d)複数の融合ポリヌクレオチドを複数の細胞に送達するステップであって、複数の細胞の各細胞が複数の融合ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つの融合ポリヌクレオチドを含む、ステップと;(e)複数の細胞において複数の融合ポリヌクレオチドを発現させるステップであって、複数の細胞のサブセットが、複数の融合ポリヌクレオチドのサブセットから複数の標的反応性TCRを発現する、ステップと;(f)複数の融合ポリヌクレオチドのサブセットから複数の標的反応性TCRを同定するステップと;(g)複数の融合ポリヌクレオチドのサブセットの1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドまたはその誘導体を複数のレシピエント細胞に送達するステップであって、複数のレシピエント細胞の各細胞が、複数の融合ポリヌクレオチドのサブセットの1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドまたはその誘導体のうちの少なくとも1つを含む、ステップと;(h)(i)複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも1つのレシピエント細胞を対象に投与するステップまたは(ii)複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも2つのレシピエント細胞を対象に投与するステップであって、少なくとも2つのレシピエント細胞が異なるTCRを発現する、ステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0055】
[0056]一部の場合、複数のT細胞は、腫瘍浸潤T細胞または末梢T細胞である。一部の場合、複数のT細胞は、CD8+T細胞、CD4+T細胞、疲弊T細胞、調節性T細胞、またはそれらのいずれかの組合せを含む。一部の場合、複数のT細胞は、in vitroで活性化され、および/または増殖する。一部の場合、複数の融合ポリヌクレオチドは複数のベクターにおいて送達され、複数のベクターの各ベクターが、複数の融合ポリヌクレオチドの融合ポリヌクレオチドを含む。一部の場合、方法は、(d)における送達するステップの前に、複数のベクターを生成するステップをさらに含む。一部の場合、(f)における同定するステップは、複数の細胞を1つまたは複数の標的抗原と接触させるステップであって、複数の標的反応性TCRを発現する複数の細胞のサブセットが、1つまたは複数の標的抗原に結合する、ステップを含む。一部の場合、1つまたは複数の標的抗原は、1つまたは複数の腫瘍細胞または抗原提示細胞(APC)によって提示される。一部の場合、1つまたは複数のAPCは、(i)1つもしくは複数の標的抗原によってパルスされるか、または(ii)標的抗原をコードするDNAもしくはRNAを含む。一部の場合、1つまたは複数の抗原の各抗原は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と複合体を形成している。一部の場合、MHCはMHC四量体である。一部の場合、方法は、(g)における送達するステップの前に、複数の細胞のサブセットの1つまたは複数の細胞を単離するステップをさらに含む。一部の場合、方法は、対象から複数のTCRを発現する複数のT細胞を単離するステップをさらに含む。一部の場合、投与するステップが、複数のT細胞を単離してから多くても約60日後、50日後、40日後、30日後、20日後またはそれより少ない日数の後に実施される。一部の場合、複数のレシピエント細胞は、同種異系間細胞、自家細胞、または細胞系細胞である。一部の場合、複数の細胞は、遺伝子操作された細胞または細胞系細胞である。一部の場合、方法は、(h)の前に、複数のレシピエント細胞を増殖させるステップをさらに含む。一部の場合、誘導体は、1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドの配列を含む。一部の場合、誘導体は、1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドの増幅産物または合成産物である。
【0056】
[0057]別の態様によれば、対象における腫瘍を治療する方法であって、(a)複数のT細胞受容体(TCR)を発現する対象から複数のT細胞を単離するステップであって、複数のT細胞の各T細胞が、複数のTCRのTCRの同種対を発現し、複数のTCRが複数の腫瘍反応性TCRを含む、ステップと;(b)複数のTCRから複数の腫瘍反応性TCRを同定するステップと;(c)複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットをコードするポリヌクレオチドを複数のレシピエント細胞に送達するステップであって、複数のレシピエント細胞の各レシピエント細胞が、複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットをコードするポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、ステップと;(d)複数のレシピエント細胞において複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットを発現させるステップと;(e)(i)複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも1つのレシピエント細胞を対象に投与するステップ、または(ii)複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも2つのレシピエント細胞を対象に投与するステップであって、少なくとも2つのレシピエント細胞が異なるTCRを発現し、投与が、(a)における複数のT細胞を単離してから多くても約60日後、50日後、40日後、30日後、20日後またはそれより少ない日数の後に実施される、ステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0057】
[0058]別の態様によれば、対象における腫瘍を治療する方法であって、(a)複数のT細胞受容体(TCR)を発現する対象から複数のT細胞を単離するステップであって、複数のT細胞の各T細胞が、複数のTCRのTCRの同種対を発現し、複数のTCRが複数の腫瘍反応性TCRを含む、ステップと;(b)複数のTCRから複数の腫瘍反応性TCRを同定するステップと;(c)複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットをコードするポリヌクレオチドを複数のレシピエント細胞に送達するステップであって、複数のレシピエント細胞の各レシピエント細胞が、複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットをコードするポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、ステップと;(d)複数のレシピエント細胞において複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットを発現させるステップと;(e)(i)複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも1つのレシピエント細胞を対象に投与するステップ、または(ii)複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも2つのレシピエント細胞を対象に投与するステップであって、少なくとも2つのレシピエント細胞が異なるTCRを発現し、複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも1つまたは少なくとも2つのレシピエント細胞を対象に投与するために対象から複数のT細胞を単離してから約60日超、50日超、40日超、30日超、20日超またはそれより少ない日数の間、対象の腫瘍が進行していない、ステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0058】
[0059]別の態様によれば、対象における腫瘍を治療する方法であって、(a)複数のT細胞受容体(TCR)を発現する対象から複数のT細胞を単離するステップであって、複数のT細胞の各T細胞が、複数のTCRのTCRの同種対を発現し、複数のTCRが複数の腫瘍反応性TCRを含む、ステップと;(b)複数のTCRから複数の腫瘍反応性TCRを同定するステップと;(c)複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットをコードするポリヌクレオチドを複数のレシピエント細胞に送達するステップであって、複数のレシピエント細胞の各レシピエント細胞が、複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットをコードするポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、ステップと;(d)複数のレシピエント細胞において複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットを発現させるステップと;(e)(i)複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも1つのレシピエント細胞を対象に投与するステップ、または(ii)複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも2つのレシピエント細胞を対象に投与するステップであって、少なくとも2つのレシピエント細胞が異なるTCRを発現し、(i)腫瘍サイズが、約50%未満、30%未満、40%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満もしくは2%未満だけ増加しているか、または(ii)複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも1つまたは少なくとも2つのレシピエント細胞を投与するために複数のT細胞を単離してから対象における腫瘍細胞の数が、約2倍、3倍、4倍、5倍またはそれを超えて増加していない、ステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0059】
[0060]別の態様によれば、対象における腫瘍を治療する方法であって、(a)複数のT細胞受容体(TCR)を発現する対象から複数のT細胞を単離するステップであって、複数のT細胞の各T細胞が、複数のTCRのTCRの同種対を発現し、複数のTCRが複数の腫瘍反応性TCRを含む、ステップと;(b)複数のTCRから複数の腫瘍反応性TCRを同定するステップと;(c)複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットをコードするポリヌクレオチドを複数のレシピエント細胞に送達するステップであって、複数のレシピエント細胞の各レシピエント細胞が、複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットをコードするポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、ステップと;(d)複数のレシピエント細胞において複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットを発現させるステップと;(e)(i)複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも1つのレシピエント細胞を対象に投与するステップ、または(ii)複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも2つのレシピエント細胞を対象に投与するステップであって、少なくとも2つのレシピエント細胞が異なるTCRを発現し、複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも1つまたは少なくとも2つのレシピエント細胞を投与するために複数のT細胞を単離してから腫瘍が新たなステージまで進行していない、ステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0060】
[0061]別の態様によれば、対象における腫瘍を治療する方法であって、(a)複数のT細胞受容体(TCR)を発現する対象から複数のT細胞を単離するステップであって、複数のT細胞の各T細胞が、内因性核酸から複数のTCRのTCRの同種対を発現し、複数のTCRが複数の腫瘍反応性TCRを含む、ステップと;(b)複数のTCRから複数の腫瘍反応性TCRを同定するステップと;(c)複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットをコードするポリヌクレオチドを複数のレシピエント細胞に送達するステップであって、複数のレシピエント細胞の各レシピエント細胞が、複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットをコードするポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、(i)ポリヌクレオチドが内因性核酸の転写産物もしくは増幅産物であるか、または(ii)ポリヌクレオチドがホスホロアミダイトを使用して化学的に合成されていない、ステップと;(d)複数のレシピエント細胞において複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットを発現させるステップと;(e)(i)複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも1つのレシピエント細胞を対象に投与するステップ、または(ii)複数のレシピエント細胞のうちの少なくとも2つのレシピエント細胞を対象に投与するステップであって、少なくとも2つのレシピエント細胞が異なるTCRを発現する、ステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0061】
[0062]一部の場合、方法は、ホスホロアミダイトを使用した複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットをコードするポリヌクレオチドの化学合成を含まない。一部の場合、複数のT細胞は腫瘍浸潤T細胞または末梢T細胞である。一部の場合、複数のT細胞は、CD8+T細胞、CD4+T細胞、疲弊T細胞、調節性T細胞、またはそれらのいずれかの組合せを含む。一部の場合、複数のレシピエント細胞は、同種異系間T細胞、自家T細胞、または細胞系細胞である。一部の場合、方法は、(b)の前に、複数のレポーター細胞において複数のTCRを発現させるステップをさらに含む。一部の場合、発現させるステップは、ウイルスベクターによって複数のTCRをコードする核酸配列を送達するステップを含む。一部の場合、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。一部の場合、複数のレポーター細胞の各レポーター細胞はレポーター遺伝子を含む。一部の場合、(b)において、同定するステップは、複数のTCRを、1つもしくは複数の標的抗原、または1つもしくは複数の標的抗原を提示する細胞もしくは組織と接触させるステップを含む。一部の場合、1つまたは複数の標的抗原は、1つまたは複数の腫瘍細胞または抗原提示細胞(APC)によって提示される。一部の場合、1つまたは複数のAPCは、標的抗原をコードするDNAまたはRNAを含む。一部の場合、1つまたは複数の標的抗原はMHCと複合体を形成している。一部の場合、MHCはMHC四量体である。一部の場合、複数のTCRの複数の腫瘍反応性TCRは、TCRの少なくとも2個、5個、10個、15個、または20個の異なる同種対を含む。一部の場合、複数の腫瘍反応性TCRの各TCRは、異なるエピトープまたは異なるタンパク質に特異的である。一部の場合、複数の腫瘍反応性TCRの各TCRは、異なる(i)TCRアルファCDR3配列、(ii)TCRベータCDR3可変ドメイン配列、(iii)TCRアルファ可変ドメイン配列、(iv)TCRベータ可変ドメイン配列、または(v)TCRアルファおよびTCRベータ可変ドメイン配列の組合せを含む。一部の場合、複数の腫瘍反応性TCRは、対象由来の腫瘍細胞に結合するが、対象由来の健康な細胞に結合しないか、または腫瘍細胞に対してより少なくとも10分の1低い親和性で対象由来の健康な細胞に結合する。一部の場合、(e)において投与される複数のレシピエント細胞は、(a)において単離される複数のT細胞より少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1,000倍、少なくとも5,000倍、少なくとも10,000倍、少なくとも100,000倍、または少なくとも1,000,000倍多い細胞を含む。
【0062】
[0063]別の態様によれば、対象における腫瘍を治療する方法であって、(a)T細胞受容体(TCR)の集団を発現する対象からT細胞の集団を単離するステップであって、T細胞の集団が多くても約10,000個の細胞を含む、ステップと;(b)TCRの集団から複数の腫瘍反応性TCRを同定するステップと;(c)複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットを発現する複数の細胞を対象に投与するステップであって、複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットが少なくとも2個の異なる同種対を含む、ステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0063】
[0064]別の態様によれば、対象における腫瘍を治療する方法であって、(a)TCRの集団から複数の腫瘍反応性T細胞受容体(TCR)を同定するステップであって、TCRの集団がTCRの少なくとも50個の異なる同種対を含む、ステップと;(b)複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットを発現する複数の細胞を対象に投与するステップであって、複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットが、少なくとも50個の異なる同種対のうちの少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、または少なくとも20個の異なる同種対を含み、複数の腫瘍反応性TCRが複数の細胞に対して外因性である、ステップとを含む、方法が本明細書に提供される。一部の場合、複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットは少なくとも5個のTCRを含み、少なくとも5個のTCRの各TCRは、(1)異なるエピトープもしくは異なるタンパク質に特異的であるか、または(2)異なる(i)TCRアルファCDR3配列、(ii)TCRベータCDR3可変ドメイン配列、(iii)TCRアルファ可変ドメイン配列、(iv)TCRベータ可変ドメイン配列、もしくは(v)TCRアルファおよびTCRベータ可変ドメイン配列の組合せを含む。
【0064】
[0065]一部の場合、方法は、(a)の前に、対象からTCRの集団を発現するT細胞の集団を単離するステップをさらに含む。一部の場合、少なくとも50個の異なる同種対は、少なくとも5個、10個、15個、または20個の異なるV遺伝子由来のV領域を含む。一部の場合、同定するステップは、マーカーによって複数の腫瘍反応性TCRを単離するステップを含む。一部の場合、複数の腫瘍反応性TCRまたはそのサブセットを発現する複数の細胞は、複数の同種異系間細胞、自家細胞または細胞系細胞である。一部の場合、複数の同種異系間細胞は、抑制性ナチュラルキラー(NK)細胞受容体に結合するタンパク質を発現する。一部の場合、タンパク質は、B2M-HLA-EまたはB2M-HLA-G融合タンパク質である。
【0065】
[0066]別の態様によれば、標的反応性T細胞受容体(TCR)を同定するための方法であって、(a)第1の試料由来の複数のT細胞を、対象由来の腫瘍細胞を含む第2の試料または第3の試料と接触させるステップであって、第3の試料が第2の試料に由来し、第3の試料が、(i)第2の試料の腫瘍細胞由来の標的抗原または標的抗原をコードする核酸、およびMHC、(ii)MHCにおける標的抗原を提示する細胞、または(iii)MHCを含む細胞および核酸によってコードされるタンパク質産物を含み、複数のT細胞のサブセットが、MHCと複合体を形成している標的抗原に結合する、ステップと;(b)第1の試料の複数のT細胞のサブセットまたはその一部を単離するステップと;(c)複数のT細胞のサブセットまたはその一部を複数の区画に分配するステップであって、各区画が複数のT細胞のサブセットまたはその一部の個々のT細胞を含む、ステップと;(d)各区画内で、第1のTCR鎖をコードする第1のポリヌクレオチドおよび個々のT細胞のTCRの同種対の第2のTCR鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを同定し、それによって1つまたは複数の対合ポリヌクレオチドを生成するステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0066】
[0067]一部の場合、同定するステップは、第1のTCR鎖をコードする第1のポリヌクレオチドおよび個々のT細胞のTCRの同種対の第2のTCR鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを物理的に連結させるステップを含む。一部の場合、1つまたは複数の対合ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドである。一部の場合、同定するステップは、第1のTCR鎖をコードする第1のポリヌクレオチドおよび個々のT細胞のTCRの同種対の第2のTCR鎖をコードする第2のポリヌクレオチドをシークエンシングするステップを含む。
【0067】
[0068]一部の場合、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは、ホスホロアミダイトを使用して化学的に合成されていない。一部の場合、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは、個々のT細胞の内因性核酸の転写産物または増幅産物である。一部の場合、第1の試料または第2の試料は対象から単離される。一部の場合、第1の試料および第2の試料は同じ対象から単離される。一部の場合、第1の試料および第2の試料は異なる対象から単離される。一部の場合、第1の試料または第2の試料は、組織試料、血液試料、PBMC試料、またはそれらの組合せである。一部の場合、組織試料は、腫瘍組織または健康な組織である。一部の場合、第1の試料または第2の試料は、コア生検、細針生検、またはアフェレーシスによって対象から単離される。一部の場合、単離するステップは、マーカーによって複数のT細胞のサブセットまたはその一部を単離するステップを含む。一部の場合、マーカーは、細胞表面マーカーまたはサイトカインである。一部の場合、細胞表面マーカーは、CD39、CD69、CD103、CD25、PD-1、TIM-3、OX-40、4-1BB、CD137、CD3、CD28、CD4、CD8、CD45RA、CD45RO、GITR、FoxP3、またはそれらの組合せである。一部の場合、標的抗原を提示する細胞は、腫瘍細胞、抗原提示細胞(APC)、人工APC、またはそれらのいずれかの組合せである。一部の場合、APCまたはaAPCは、標的抗原によりパルスされる。一部の場合、核酸によってコードされるタンパク質産物を含む細胞は、核酸またはその誘導体と共に送達される(例えば、トランスフェクトされるまたは電気穿孔される)APCまたはaAPCである。一部の場合、APCまたはaAPCは、MHCをコードするさらなる核酸と共にさらに送達される。一部の場合、核酸またはその誘導体はDNAまたはRNAである。一部の場合、標的抗原を提示する細胞または核酸によってコードされるタンパク質産物を含む細胞は、対象から単離されるか、または細胞系細胞である。一部の場合、標的抗原を提示する細胞または核酸によってコードされるタンパク質産物を含む細胞は、第1の試料および第2の試料が単離される同じ対象から単離される。一部の場合、方法は、1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドを含む1つまたは複数のベクターを生成するステップであって、1つまたは複数のベクターの各ベクターが、1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドの融合ポリヌクレオチドを含む、ステップをさらに含む。一部の場合、方法は、1つまたは複数のベクターを複数の細胞に送達するステップであって、複数の細胞の各細胞が1つまたは複数のベクターのうちの少なくとも1つのベクターを含む、ステップをさらに含む。一部の場合、方法は、複数の細胞において1つまたは複数の融合ポリヌクレオチドを発現させるステップであって、複数の細胞のサブセットが複数の標的反応性TCRを発現する、ステップをさらに含む。一部の場合、方法は、複数の細胞を1つまたは複数の標的抗原と接触させるステップであって、複数の標的反応性TCRを発現する複数の細胞のサブセットが1つまたは複数の標的抗原に結合する、ステップをさらに含む。一部の場合、方法は、複数の標的反応性TCRの1つまたは複数の標的反応性TCRを同定するステップをさらに含む。一部の場合、方法は、1つまたは複数の標的反応性TCRをコードするポリヌクレオチドを複数のレシピエント細胞に送達するステップをさらに含む。一部の場合、方法は、複数のレシピエント細胞の1つまたは複数の細胞を対象に投与するステップをさらに含む。
【0068】
[0069]別の態様によれば、本明細書に記載される方法によって同定される標的反応性または腫瘍反応性TCRをコードする配列を含むレシピエント細胞を含む医薬組成物が本明細書に提供される。
【0069】
[0070]別の態様によれば、本明細書に記載される医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法が本明細書に提供される。一部の場合、レシピエント細胞は、約1×10細胞~約1×1011細胞の用量で投与される。
【0070】
[0071]本開示のさらなる態様および利点は、本開示の単に例示的な実施形態が示され、記載される、以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになるであろう。実現されるように、本開示は他のおよび異なる実施形態を可能にし、全て本開示から逸脱せずに、そのいくつかの詳細は種々の明らかな観点において改変が可能になる。したがって、図面および説明は、本質的に例示とみなされ、限定とみなされるべきではない。
【0071】
参照による組み込み
[0072]本明細書に言及されている全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が、具体的かつ個々に参照により組み込まれることが示された場合と同程度まで参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる刊行物および特許または特許出願が本明細書に含まれる開示と矛盾する場合、本明細書が、いずれかのそのような矛盾する事項に優先し、および/または矛盾する事項より優位になることが意図される。
【0072】
[0073]本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に特に記載される。本発明の特徴および利点のさらなる理解は、本発明の原理を利用する例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、およびその添付の図面(本明細書の「図(Figure)」、「図(Fig.)」、および「図(FIGURE)」も)を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】[0074]図1は、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドおよび免疫受容体発現ベクターを産生する一般概念の例示的なスキームを示す図である。複数起源の免疫受容体発現細胞(例えば、3つのT細胞が示される)は同時に処理され得る。各細胞について、二分免疫受容体の2つの遺伝子の配列(例えば、T細胞1のT細胞受容体アルファ遺伝子座の遺伝子TRAおよびT細胞受容体ベータ遺伝子座の遺伝子TRB、それぞれTRA1およびTRB1と名付けられた)を融合させて、両鎖をコードする融合DNA分子を作製し、それは融合二分免疫受容体遺伝子と呼ぶことができる(ステップ1)。融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、1つの容器、例えば試験管内で混合され得る(ステップ2)。融合DNA分子は、免疫受容体発現ベクターに作製され得る(ステップ3)。
図2】[0075]図2は、例のように、3つのT細胞(図に示すように、T細胞1、T細胞2、およびT細胞3)を使用する、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを産生する単一細胞反応器の概念の例示的なスキームを示す図である。(a)各細胞は単一細胞反応器に入れることができる。(b)細胞は、それらのそれぞれの単一細胞反応器内で溶解させて、2つの鎖をコードするmRNA分子(例えば、T細胞1からTRAおよびTRB、それぞれTRA1およびTRB1と名付けられた)を放出させることができる。(c)次いで、各mRNA分子をDNA分子に変換させて、増幅することができる。(d)融合DNA分子(例えば、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチド)は、各鎖の増幅産物をライゲートさせることによって作製され得る。単一細胞反応器間の障壁のため、異なる細胞からのTRAおよびTRBの誤対合(例えば、TRB2と融合したTRA1)は最小限にすることができる。
図3】[0076]図3は、例としてTCRを使用する、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドの異なる可能な方向を示す図である。点線の矢印は、タンパク質コード配列のセンス鎖の方向を示す。この例では、センス鎖の5’末端は「ヘッド」を指し、センス鎖の3’末端は「テイル」を指す。
図4A】[0077]図4Aは、テイル-テイル方向でTRAとTRBを融合する例示的な戦略を示す図である。
図4B】[0078]図4Bは、テイル-テイル方向でTRAとTRBを融合する例示的な戦略を示す図である。
図5A】[0079]図5Aは、TRAの後にTRBが続く順番で、ヘッド-テイル方向でTRAとTRBを融合する例示的な戦略を示す図である。
図5B】[0080]図5Bは、TRAの後にTRBが続く順番で、ヘッド-テイル方向でTRAとTRBを融合する例示的な戦略を示す図である。
図5C】[0081]図5Cは、TRAの後にTRBが続く順番で、ヘッド-テイル方向でTRAとTRBを融合する例示的な戦略を示す図である。
図6A】[0082]図6Aは、テイル-テイル融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを、二方向プロモーターを有する免疫受容体発現ベクターへと変換する例示的な方法を示す図である。
図6B】[0083]図6Bは、テイル-テイル融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを、二方向プロモーターを有する免疫受容体発現ベクターへと変換する例示的な方法を示す図である。
図7A】[0084]図7Aは、テイル-テイル融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを、2シストロン性免疫受容体発現ベクターへと変換する例示的な方法を示す図である。
図7B】[0085]図7Bは、テイル-テイル融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを、2シストロン性免疫受容体発現ベクターへと変換する例示的な方法を示す図である。
図7C】[0086]図7Cは、テイル-テイル融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを、2シストロン性免疫受容体発現ベクターへと変換する例示的な方法を示す図である。
図7D】[0087]図7Dは、テイル-テイル融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを、2シストロン性免疫受容体発現ベクターへと変換する例示的な方法を示す図である。
図8A】[0088]図8Aは、ヘッド-テイル融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを、2シストロン性免疫受容体発現ベクターへと変換する例示的な方法を示す図である。
図8B】[0089]図8Bは、ヘッド-テイル融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを、2シストロン性免疫受容体発現ベクターへと変換する例示的な方法を示す図である。
図8C】[0090]図8Cは、ヘッド-テイル融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを、2シストロン性免疫受容体発現ベクターへと変換する例示的な方法を示す図である。
図9A】[0091]図9Aは、テイル-テイル方向でTRAとTRBを融合する例示的な戦略を示す図である。
図9B】[0092]図9Bは、テイル-テイル方向でTRAとTRBを融合する例示的な戦略を示す図である。
図10A】[0093]図10Aは、ヘッド-テイル方向でTRAとTRBを融合する例示的な戦略を示す図である。
図10B】[0094]図10Bは、ヘッド-テイル方向でTRAとTRBを融合する例示的な戦略を示す図である。
図11A】[0095]図11Aは、水相が細胞およびプライマー-改変アガロースを含む、液滴形成の例を示す図である。
図11B】[0096]図11Bは、形成された液滴の例を示す図である。明るい点は色素によって染色された細胞核を示し、より大きな球体はアガロースビーズを示す。
図12】[0097]図12は、実施例8に記載するように、OE-PCRのエマルジョンの例示的なイメージを示す図である。拡大図は、TCRアルファ鎖およびベータ鎖ポリヌクレオチドを含有するアダプターを封入するアガロースビーズを含有するいくつかの液滴を示す。
図13】[0098]図13は、シークエンシングライブラリー構築およびシークエンシングの例示的なスキームを示す図である。この図で使用する場合、(p)は部分を意味し、(f)は全長を意味する。
図14】[0099]図14は、対合リードカウントマトリクス(M0)を示す例示的なシークエンシングデータを示す図である。
図15】[00100]図15Aは、TRAとTRBクローンの優性対合を示す例示的なシークエンシングデータを示す図である。[00101]図15Bは、TRAとTRBクローンの優性対合を示す例示的なシークエンシングデータを示す図である。[00102]図15Cは、TRAとTRBクローンの優性対合を示す例示的なシークエンシングデータを示す図である。[00103]図15Dは、TRAとTRBクローンの優性対合を示す例示的なシークエンシングデータを示す図である。[00104]図15Eは、TRAとTRBクローンの優性対合を示す例示的なシークエンシングデータを示す図である。[00105]図15Fは、TRAとTRBクローンの優性対合を示す例示的なシークエンシングデータを示す図である。
図16A】[00106]図16Aは、A1、A2、またはA3によって示すように、トップ1、2、または3のTRB対合パートナーにマップしたTRAクローンのリードのクローンワイズな画分を示す例示的なシークエンシングデータを示す図である。
図16B】[00107]図16Bは、B1、B2、またはB3によって示すように、トップ1、2、または3のTRA対合パートナーにマップしたTRBクローンのリードのクローンワイズな画分を示す例示的なシークエンシングデータを示す図である。
図17A】[00108]図17Aは、検出された優性対合の数を示す例示的なシークエンシングデータを示す図である。
図17B】[00109]図17Bは、優性対合によって与えられるリードの画分を示す例示的なシークエンスデータを示す図である。
図18】[00110]図18は、抗原についての先験的な知識の無い腫瘍反応性(または腫瘍特異的)TCRを選択する例示的なスキームを示す図である。
図19】[00111]図19は、腫瘍反応性(または腫瘍特異的)TCRを選択し、TCRを発現するレシピエント細胞を使用して、対象における腫瘍を治療する例示的なスキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
[00112]本発明の種々の実施形態が本明細書に示され、記載されているが、そのような実施形態は例としてのみ提供されることは当業者には明らかであろう。多数のバリエーション、変更および置換が本発明から逸脱せずに当業者に想起され得る。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する種々の代替が利用され得ることは理解されるべきである。
【0075】
[00113]本開示では、具体的に別段の記載がない限り、単数形の使用は複数形を含む。また、別段の記載がない限り、「または」の使用は「および/または」を意味する。同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」および「含む(including)」は、限定することを意図するものではない。
【0076】
定義
[00114]「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値についての許容可能な誤差の範囲内を意味し、これは、値がどのように測定または決定されるか、すなわち、測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」は、当該技術分野における慣行に従い、1以内または1を超える標準偏差を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の最大20%、最大10%、最大5%、または最大1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に、生物システムまたはプロセスに関して、この用語は、値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。特定の値が本出願および特許請求の範囲において記載される場合、別段の記載がない限り、特定の値についての許容可能な誤差の範囲内を意味する「約」という用語を想定すべきである。
【0077】
[00115]「免疫受容体」という用語は、免疫細胞がその標的を認識するために産生する受容体タンパク質または受容体タンパク質複合体を指す。標的は抗原またはその一部(例えば、エピトープ)であってもよい。抗原はタンパク質またはペプチドであってもよい。標的はMHC結合ペプチドであってもよい。免疫受容体の例には、B細胞受容体(BCR)、抗体(「免疫グロブリン」と交換可能に使用される)、およびT細胞受容体(TCR)が含まれる。
【0078】
[00116]「免疫受容体鎖」という用語は、免疫受容体のサブユニットとして機能するポリペプチドを指す。免疫受容体鎖の例には、免疫グロブリン(Ig)の重鎖、免疫グロブリンの軽鎖、TCRのアルファ鎖、TCRのベータ鎖、TCRのガンマ鎖、TCRのデルタ鎖が含まれる。
【0079】
[00117]「二分免疫受容体(bipartite immunoreceptor)」という用語は、2つの遺伝子によってコードされるポリペプチドによって形成される免疫受容体を指す。細胞内では、2つの遺伝子は染色体または異なる染色体の異なる遺伝子座に位置し得る。2つの遺伝子は、V(D)J再配列遺伝子などの再配列遺伝子であってもよい。V(D)J再配列遺伝子は、一次リンパ系臓器において発生し、可変(V)、結合(J)、および一部の場合、多様性(D)遺伝子セグメントをほぼランダム様式で再配列する、V(D)J組換えと呼ばれる機構によって生成され得る。二分免疫受容体の例には、限定されないが、BCR(再配列重鎖遺伝子および再配列軽鎖遺伝子によってコードされる)、抗体(再配列重鎖遺伝子および再配列軽鎖遺伝子によってコードされる)、およびTCR(再配列TRA遺伝子および再配列TRB遺伝子によってコードされる、または再配列TRG遺伝子および再配列TRD遺伝子によってコードされる)が含まれる。
【0080】
[00118]「遺伝子」という用語は、潜在的に転写および/または翻訳され得る核酸配列を指す(この定義は、5’および3’における調節エレメント、ならびに存在する場合、イントロンを含む)。オーファン(orphon)および偽遺伝子もまた、「遺伝子」の概念の例である。一般に、V、DおよびJ遺伝子とは、生殖細胞系列における遺伝子セグメントを指し、これらの生殖細胞系列遺伝子配列はIMGTデータベースにおいて見出され得る。V(D)J組換え後、再配列遺伝子におけるV、DおよびJ遺伝子セグメントは、それぞれV領域、D領域およびJ領域と称される。再配列遺伝子におけるV領域、D領域およびJ領域は、それぞれ生殖細胞系列におけるV遺伝子、D遺伝子またはJ遺伝子に由来する。
【0081】
[00119]「ソース免疫受容体発現細胞」という用語は、免疫受容体が免疫受容体発現ベクター内でクローニングされ得る免疫受容体発現細胞を指す。免疫受容体が二分免疫受容体である場合、これらの細胞は、後で免疫受容体発現ベクターに変換され得る、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを産生するために本明細書に記載される方法において入力細胞として使用され得る。例えば、ソース免疫受容体発現細胞は、ソースBCR発現細胞、ソース抗体発現細胞、またはソースTCR発現細胞であってもよい。
【0082】
[00120]「融合二分免疫受容体ポリヌクレオチド」という用語は、二分免疫受容体の両方の遺伝子(再配列遺伝子を含む)についてのコード配列を含む連続ポリヌクレオチド分子を指し、そのコード配列は免疫受容体鎖をコードする完全または部分的配列であり得る。例えば、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、融合BCRポリヌクレオチド、融合抗体ポリヌクレオチド、または融合TCRポリヌクレオチドであってもよい。
【0083】
[00121]「免疫受容体発現ベクター」という用語は、(1)融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを含み、(2)宿主細胞(例えば、本明細書に記載されるレシピエント細胞)において免疫受容体を発現するために使用され得るポリヌクレオチドベクター(プラスミドまたはウイルスベクターなど)を指す。例えば、免疫受容体発現ベクターは、BCR発現ベクター、抗体発現ベクター、またはTCR発現ベクターであってもよい。
【0084】
[00122]「レシピエント細胞」という用語は、免疫受容体発現ベクターが機能的に導入され得る細胞を指す。「機能的に導入される」という語句は、免疫受容体発現ベクターにおいてコードされる免疫受容体がレシピエント細胞において発現され得ることを意味する。レシピエント細胞の例には、限定されないが、CD45+細胞、T細胞、B細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、幹細胞、細菌細胞、酵母細胞および細胞系が含まれる。
【0085】
[00123]「免疫受容体プログラムレシピエント細胞」という用語は、免疫受容体発現ベクターを保持し、免疫受容体を発現するように操作されたレシピエント細胞を指す。適切な場合、「免疫受容体プログラムレシピエント細胞」という語句における「免疫受容体」という単語は、「BCR」、「抗体」または「TCR」と置き換えられてもよい。適切な場合、「免疫受容体プログラムレシピエント細胞」という語句における「レシピエント細胞」という語句は、レシピエント細胞として使用される細胞の種類、例えば、「CD45+細胞」、「T細胞」、「B細胞」、「マクロファージ」、「NK細胞」、「幹細胞」、「HeLa細胞」、「CHO細胞」、「細菌細胞」および「酵母細胞」と置き換えられてもよい。例えば、免疫受容体プログラムレシピエント細胞は、TCRプログラムT細胞、BCRプログラムB細胞、または抗体プログラムCHO細胞であってもよい。
【0086】
[00124]本明細書で使用される場合、「操作された」という用語およびその文法的等価物は、核酸(例えば、生物のゲノム内の核酸)またはポリペプチドの1つまたは複数の変更を指すことができる。1つまたは複数の変更には、遺伝子の修飾、付加および/または欠失が含まれ得る。操作された細胞とは、付加され、欠失され、および/または変更された遺伝子を有する細胞を指すことができる。
【0087】
[00125]「ポリクローナル免疫受容体プログラムレシピエント細胞」という用語は、発現される1つより多い異なる免疫受容体を有する免疫受容体プログラムレシピエント細胞の集団を指す。発現される1つより多い異なる免疫受容体の各々は、異なるエピトープ、異なる抗原、または異なるMHCによって提示されるエピトープに対して反応することができる。ポリクローナル免疫受容体プログラムレシピエント細胞の集団において発現される異なる免疫受容体の総数は、100、1,000、10,000、100,000または1,000,000を超えてもよい。一部の場合、ポリクローナル免疫受容体プログラムレシピエント細胞の集団において発現される異なる免疫受容体の総数は、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも2,000個、少なくとも5,000個、少なくとも10,000個、少なくとも50,000個、少なくとも100,000個、少なくとも500,000個、少なくとも1,000,000個、少なくとも5,000,000個またはそれより多くであってもよい。
【0088】
[00126]配列のドメインレベルの説明:本開示では、ポリヌクレオチド配列はドメインレベルで記載され得る。各ドメイン名は特定のポリヌクレオチド配列に対応し得る。例えば、ドメイン「A」は5’-TATTCCC-3’の配列を有し得、ドメイン「B」は5’-AGGGAC-3’の配列を有し得、ドメイン「C」は5’-GGGAAGA-3’の配列を有し得る。この場合、ドメインA、BおよびCの連結である配列を有するポリヌクレオチドは、[A|B|C}と書くことができる。符号「[」は5’末端を示し、符号「}」は3’末端を示し、符号「|」はドメイン名を区切る。配列「X」を有するssDNAまたはssDNAの部分は、[X}と称され得る。アスタリスク記号は配列相補性を示す。例えば、ドメイン[X}は、ドメイン[X}の逆相補体である。ds[X}という表記は、[X}および[X}によって形成される二本鎖DNAを記載するために使用され得る。一部の場合、特にdsDNAとssDNAとを区別する必要がない状況では、一方の鎖が配列[X}を有するdsDNAもまた、大まかに[X}と称され得る。[X}と同一の配列(TをUと置き換えていることを除いて)を有する一本鎖RNA分子またはセグメントもまた、[X}と称され得る。文脈に応じて、ドメイン名は、正確な配列を指す場合があるか、またはDNAもしくはドメインの一般的機能を記載する場合がある。例えば、[RBS}はリボソーム結合部位を記載するために使用され得るが、[RBS}についての正確な配列は変わってもよい。丸括弧はドメインの連結を分類するために使用され得、逆相補体操作(「」によって示される)は閉じ丸括弧の後に「」を付加することによって連結に適用され得る。例えば、[(X|Y)}は[Y|X}と同じである。
【0089】
[00127]「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「オリゴヌクレオチド」という用語は交換可能に使用される。それらは、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらのアナログを指すことができる。ポリヌクレオチドは、アデノシン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)およびウラシル(U)、またはそれらのバリアントから選択される1つまたは複数のヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドは一般に、ヌクレオシドおよび少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれより多くのリン酸(PO)基を含む。ヌクレオチドは、核酸塩基、五炭糖(リボースまたはデオキシリボースのいずれか)、および1つまたは複数のリン酸基を含むことができる。ポリヌクレオチドは任意の三次元構造を有することができ、種々の機能を実行することができる。以下はポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片のコードまたは非コード領域、連鎖分析から規定された遺伝子座(複数も含む)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、環状RNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログなどの、1つまたは複数の改変ヌクレオチドを含むことができる。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する改変がポリマーのアセンブリの前または後に与えられてもよい。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、標識化成分とのコンジュゲーションなどによって、重合後にさらに改変されてもよい。
【0090】
[00128]ポリヌクレオチドは、非標準的なヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログおよび/または改変ヌクレオチドを含む、1つまたは複数のヌクレオチドバリアントを含むことができる。改変ヌクレオチドの例には、限定されないが、ジアミノプリン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン(xantine)、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルクエオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-D46-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、2,6-ジアミノプリンなどが含まれる。一部の場合、ヌクレオチドは、トリホスフェート部分に対する改変を含む、それらのホスフェート部分における改変を含んでもよい。そのような改変の非限定的な例には、より長い長さのホスフェート鎖(例えば、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれより多くのホスフェート部分を有するホスフェート鎖)およびチオール部分(例えば、アルファ-チオトリホスフェートおよびベータ-チオトリホスフェート)を用いた改変が含まれる。核酸分子はまた、塩基部分(例えば、典型的に、相補的ヌクレオチドと水素結合を形成するために利用可能である1つもしくは複数の原子においておよび/または典型的に、相補的ヌクレオチドと水素結合を形成することができない1つもしくは複数の原子において)、糖部分またはホスフェート骨格において改変されてもよい。核酸分子はまた、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)などのアミン反応部分の共有結合性付着を可能にするために、アミノアリル(amino ally 1)-dUTP(aa-dUTP)およびアミノヘキシルアクリルアミド(aminohexhylacrylamide)-dCTP(aha-dCTP)などの、アミン改変基を含有してもよい。本開示のオリゴヌクレオチドにおける標準的なDNA塩基対またはRNA塩基対に対する代替物は、立法mmあたりのビットでのより高い密度、より高い安全性(天然毒素の偶発的または意図的な合成に対する抵抗性)、光プログラム化ポリメラーゼにおけるより容易な識別、またはより下級の二次構造を提供することができる。このような代替の塩基対は、新規および/または増幅合成のための天然および突然変異体ポリメラーゼと適合性がある。
【0091】
[00129]ペプチドという用語は、アミノ酸のポリマーであり、アミド結合を介して一緒に結合され、代替的に「ポリペプチド」と称される。本明細書の文脈において、アミノ酸はL-光学異性体またはD-光学異性体であり得ることは理解されるべきである。ペプチドは2つ以上のアミノ酸モノマーの長さであり、多くの場合、20より多いアミノ酸モノマーの長さであり得る。ポリペプチドは、線状に構造化されていなくてもよいか、または三次元構造に折り畳まれていてもよい。構造化されたポリペプチドはタンパク質であり得る。一部の場合、ペプチドは新抗原ペプチドである。一部の場合、ペプチドは腫瘍関連抗原ペプチドである。
【0092】
[00130]「新抗原」という用語は、ゲノムによりコードされたタンパク質のアミノ酸配列を変化させる腫瘍特異的突然変異から生じる腫瘍抗原のクラスを指す。
[00131]本明細書で使用される場合、「配列」という用語およびその文法的等価物は、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列を指すことができる。ポリヌクレオチド配列はDNAまたはRNAであってもよく;線状、環状または分枝状であってもよく;一本鎖または二本鎖のいずれかであってもよい。配列は突然変異されてもよい。配列は、任意の長さ、例えば、2から1,000,000の間またはそれより多くのアミノ酸またはヌクレオチドの長さ(またはそれらの間もしくはそれらを上回る任意の整数値)、例えば、約100から約10,000の間のヌクレオチドまたは約200から約500の間のアミノ酸もしくはヌクレオチドであってもよい。核酸の配列は実際の配列および配列の逆相補的配列を包含し得る。
【0093】
[00132]本明細書で使用される「ベッセル」という用語は、生化学反応(例えば、標的タンパク質および抗体結合、核酸ハイブリダイゼーションおよびプライマー伸長)が発生し得る区画(例えば、マイクロ流体チャネル、ウェル、管または液滴)を指す。「ベッセル」および「区画」という用語は交換可能に使用され得る。ベッセルまたは区画は、固体壁付き(solid-walled)(ベッセルまたは区画の境界が、ガラス、プラスチックまたはポリジメチルシロキサン(PDMS)などの固体である場合)または液体壁付き(liquid-walled)(ベッセルまたは区画の境界が油などの液体である場合)であってもよい。固体壁付きベッセルは、ベッセルを全て接続する連続した固体である、固体足場を含有することができる。区画の体積は1mLほどの大きさまたは1ピコリットルほどの小ささであってもよい。一部の実施形態では、複数の区画の区画のメジアン径は、1~10ピコリットル、10~100ピコリットル、100ピコリットル~1ナノリットル、1~10ナノリットル、10~100ナノリットル、100ナノリットル~1マイクロリットル、1~10マイクロリットル、10~100マイクロリットル、または100~1000マイクロリットルである。区画内の水性含有物の体積は区画の体積より小さくてもよいか、または区画の体積とほぼ等しくてもよい。一部の実施形態では、区画内の水性含有物のメジアン体積は1マイクロリットルまたはそれ以下である。ベッセルは複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーを含むことができる。複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーは、重合またはゲル化すると、ヒドロゲルまたは硬化マトリクスを形成することができ、それによって硬化粒子を形成する。硬化粒子はビーズであってもよい。硬化粒子は多孔質粒子であってもよい。硬化粒子はヒドロゲル粒子であってもよい。ヒドロゲル粒子は、架橋ポリアクリルアミド、架橋PEG、アガロースまたはアルギネートなどのゲル化ポリマーから作製され得る。硬化粒子は処理または刺激により融解され得る。例えば、アガロース粒子は高温によって融解され得る。クロスリンカーにおけるジスルフィド結合を有するポリアクリルアミド粒子は、ベータメルカプトエタノールまたはDTTなどの還元剤で処理することによって融解され得る。
【0094】
[00133]「液滴」という用語はある体積の液体を指す。「エマルジョン」とは、第1の液体が第2の液体中に溶解しないか、または混和しない、第2の液体中の第1の液体の微小液滴の分散を指す。エマルジョンの例には、油中水エマルジョン、水中油中水エマルジョンまたは脂質層(リポソーム)中水エマルジョンが含まれる。本明細書で使用される場合:「油中水エマルジョン」とは、油が連続相を形成し、水が不連続液滴中にある油中水混合物を指す。一部の実施形態では、液滴は均一のサイズまたは不均一のサイズであってもよい。一部の実施形態では、複数の液滴における液滴のメジアン直径は約0.001μm~約1mmの範囲であり得る。一部の実施形態では、複数の液滴における液滴のメジアン体積は、0.01ナノリットル~1マイクロリットルの範囲であり得る。
【0095】
[00134]「粒子」という用語は、球状、糸状、ブラシ状および多くの不規則な形を含む、任意の形状の不溶性物質を指す。粒子は内部に規則的またはランダムなチャネルを有する多孔質であってもよい。例には、シリカ、セルロース、セファロースビーズ、ポリスチレン(固体、多孔質および誘導体化(derivitized))ビーズ、制御細孔ガラス(controlled-pore glass)、ゲルビーズ、ゾル、生体細胞、細胞内粒子、微生物(原性動物、細菌、酵母、ウイルスなど)ミセル、リポソーム、シクロデキストリン、二相系(例えば、ワックス中のアガロースビーズ)など、および物質を封入またはカプセル化することができる他の構造が含まれる。
【0096】
[00135]本明細書で使用される場合、「分配」という用語は、動詞であってもよいか、または名詞であってもよい。動詞(「分配するため」または「分配する」)として使用される場合、この用語は一般に、1つの画分(または細分割)を別の画分から隔離するために使用され得るベッセル間の種または試料の分画(例えば、細分割)を指す。このようなベッセルは名詞の「分配」を使用して参照される。分配することは、例えば、マイクロ流体工学、ディスペンシング、ボルテックスなどを使用して実施され得る。分配は、例えば、ウェル、マイクロウェル、ホール、液滴(例えば、エマルジョン中の液滴)、エマルジョンの連続相、試験管、スポット、カプセル、ビーズ、希釈溶液中のビーズの表面、または試料の1つの画分を別の画分から隔離するための任意の他の適切な容器であってもよい。分配はまた、別の分配を含んでもよい。油中水エマルジョンは、マイクロ流体工学を使用することによって、または必要に応じて界面活性剤の存在下で水相と油相の混合物の物理的撹拌によって作り出され得る。
【0097】
[00136]「重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマー」という用語は、重合または非重合機構を介してマトリクスを形成することができる任意のポリマーまたはモノマーを指す。本開示での使用に適した重合可能またはゲル化可能なポリマーは、水性液体中に溶解または分散できるものである。重合可能またはゲル化可能なポリマーには、架橋可能な基を介して適切な架橋剤と架橋することができるものが含まれる。「重合可能」は「架橋可能な」の意味を包含し得る。重合は、モノマーからのポリマー形成のプロセスであり得、線形ポリマーからの架橋ポリマー形成のプロセスでもあり得る。重合可能なポリマーはマクロマーであってもよい。本明細書で使用される場合、「マクロマー」という用語は、さらなる重合に関与し得る官能基を有する任意のポリマーまたはオリゴマーを指す。
【0098】
[00137]「マトリクス」、「フレームワーク」および「ポリマーフレームワーク」という用語は交換可能に使用されてもよく、ベッセル内に形成されるポリマーネットワークを指すことができる。
【0099】
[00138]「固体支持体」、「支持体」、「固相支持体」、「基板」という用語および他の文法的等価物は、分子の付着または会合に適した個々の部位を含有するように改変され得る任意の材料を指す。それらは剛性または半剛性表面(複数も含む)を有する材料または材料の群であってもよい。可能な基板には、限定されないが、ガラスおよび改変されたまたは機能化されたガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン(登録商標)などを含む)、多糖、ナイロンまたはニトロセルロース、樹脂、シリカまたはシリコンおよび改変シリコンを含むシリカ系材料、炭素、金属、無機ガラス、プラスチック、光ファイバー束および様々な他のポリマーが含まれる。固体支持体または基板はマルチウェルプレートであってもよい。一部の実施形態では、固体支持体の少なくとも1つの表面は実質的に平坦であってもよいが、一部の実施形態では、それは、異なる分子または例えば、ウェル、隆起領域、ピン、エッチングされたトレンチなどとの反応のための領域を物理的に分離することが有用であり得る。一部の実施形態では、固体支持体は、ビーズ、樹脂、粒子、ゲル、ミクロスフェアまたは他の幾何学的形状の形態を取ることができる。
【0100】
[00139]「濃縮する」、「単離する」、「分離する」、「選別する」、「精製する」、「選択する」という用語またはそれらの等価物は交換可能に使用されてもよく、試料由来の所与の特性を有する副試料を取得することを指す。例えば、それらは、例えば、ある特定の細胞マーカーを発現するか、またはその細胞表現型のある特定の細胞マーカー遺伝子特徴を発現しない、ある特定の細胞表現型を有する所望の細胞系列または所望の細胞のうちの少なくとも約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を含有する細胞集団または細胞試料を取得することを指すことができる。
【0101】
概説
[00140]免疫受容体、例えば、B細胞受容体(BCR)およびT細胞受容体(TCR)は、複数のサブユニットまたは鎖によって形成され得る。BCR(およびBCRの可溶型、すなわち抗体)分子は、重鎖(H鎖)の2つの同一のコピーおよび軽鎖(L鎖)の2つの同一のコピーによって形成され得る。TCR分子は、アルファ鎖(TRA遺伝子/配列によってコードされるα鎖またはTCRα鎖)およびベータ鎖(TRB遺伝子/配列によってコードされるβ鎖またはTCRβ鎖)、またはガンマ鎖(TRG遺伝子/配列によってコードされるγ鎖またはTCRγ鎖)およびデルタ鎖(TRD遺伝子/配列によってコードされるδ鎖またはTCRδ鎖)によって形成され得る。これらの免疫受容体鎖は可変ドメイン(例えば、再配列VDJまたはVJ領域によってコードされる)を有することができる。可変ドメインの一部は超可変であってもよい。超可変領域は、相補性決定領域(CDR)、例えば、CDR1、CDR2およびCDR3を含むことができる。一部の場合、1つのB細胞内で、1つのみの機能的H鎖配列および1つの機能的L鎖配列が発現され得る。一部の場合、1つのT細胞内で、1つのみの機能的α鎖配列および1つの機能的β鎖配列が発現され得る。一部の場合、1つのT細胞内で、1つのみの機能的γ鎖配列および1つの機能的δ鎖配列が発現され得る。
【0102】
[00141]これらの免疫受容体のクローニングは、さらなる機能的研究および適用のために有用であり得る。しかしながら、これらの免疫受容体の二分性質により、従来の技術を使用して操作することが困難になり得る。例えば、100個のT細胞が溶解した場合、100個のTCRα鎖および100個のTCRβ鎖をシークエンスおよび/またはクローニングすることができるが、ソースTCR発現細胞内でどのTCRα鎖がどのTCRβ鎖と対合しているかを知ることは困難であり得る。これらの100個のT細胞から、TCRα鎖をコードする第1の配列およびTCRβ鎖をコードする第2の配列を各々含む100個の物理的に融合したDNA分子を取得することができれば、より価値があり得る(図1、ステップ1)。次いでTCRα鎖およびTCRβ鎖は1つのソースTCR発現細胞内で共発現され得る。そのような融合分子は、対合したTRAおよびTRB配列を取得するためにシークエンスされ得る。さらに、これらの融合分子は、発現ベクターを作り出すために、さらに操作され得、ベクターバックボーン(例えば、プラスミドバックボーン)に挿入され得(図1、ステップ3)、その結果、対合したTRAおよびTRB配列が、免疫受容体プログラムレシピエント細胞を産生するために本明細書に記載されるレシピエント細胞と呼ばれる新たな宿主細胞内で発現され得る。この場合、第1の配列はTCRα鎖の3つ全てのCDR配列を含むことができ、第2の配列はTCRβ鎖の3つ全てのCDR配列を含むことができる。同様の操作がB細胞の集団に対して実施され得る。これらの免疫受容体発現ベクターは、TCR-T療法、抗体療法、抗体操作、およびTCRまたは特定の抗原もしくは抗原のセットを認識する抗体の同定などの複数の適用において使用され得る。
【0103】
[00142]融合免疫受容体鎖の生成は単一細胞反応器内で実施され得る。単一細胞反応器は液滴またはヒドロゲル粒子であってもよい。本明細書に記載される単一細胞反応器を使用した組成物および方法は、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドの集団のハイスループットクローニングを可能にすることができ、二分免疫受容体の少なくとも約1,000個、10,000個、100,000個、1,000,000個または10,000,000個の固有の同種対を含有する、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチド、免疫受容体発現ベクターまたは免疫受容体プログラムレシピエント細胞のライブラリーを生成することができる。
T細胞受容体(TCR)
[00143]本明細書に記載される免疫受容体はT細胞受容体(TCR)であってもよい。本明細書に提供される組成物および方法は、TCRα鎖をコードする第1の核酸配列およびTCRβ鎖をコードする第2の核酸配列、またはTCRγ鎖をコードする第1の核酸配列およびTCRδ鎖をコードする第2の核酸配列を含む融合TCRポリヌクレオチドを産生するために使用され得る。融合TCRポリヌクレオチドはプロモーターをさらに含むことができ、および/またはレシピエント細胞内で発現されるようにベクターに挿入され得る。
【0104】
[00144]TCRは、種々のがんまたは感染性生物に関連する抗原を認識するT細胞の能力を与えるために使用され得る。TCRは、アルファ(α)鎖およびベータ(β)鎖またはガンマ(γ)およびデルタ(δ)鎖の両方から構成される。これらの鎖を構成するタンパク質は、TCRの非常に多くの多様性を生じるための固有の機構を利用する、DNAによってコードされる。このマルチサブユニット免疫認識受容体はCD3複合体と会合し、抗原提示細胞(APC)の表面上のMHCクラスIおよびIIタンパク質によって提示されるペプチドに結合する。APC上の抗原ペプチドへのTCRの結合は、T細胞とAPCとの間の接触点での免疫学的シナプスにおいて発生する、T細胞活性化における中心的な事象であり得る。
【0105】
[00145]TCRは、MHCクラスI分子との関連でT細胞エピトープを認識することができる。MHCクラスIタンパク質は高等脊椎動物の全ての有核細胞内で発現され得る。MHCクラスI分子は、12kDaの軽鎖β-2ミクログロブリンと非共有結合的に会合する46kDaの重鎖からなるヘテロダイマーである。ヒトにおいて、例えば、HLA-A2、HLA-Al、HLA-A3、HLA-A24、HLA-A28、HLA-A31、HLA-A33、HLA-A34、HLA-B7、HLA-B45およびHLA-Cw8などの、いくつかのMHC対立遺伝子が存在する。一部の実施形態では、MHCクラスI対立遺伝子は、一部の集団において、その集団のおよそ50%によって発現される、HLA-A2対立遺伝子である。一部の実施形態では、HLA-A2対立遺伝子は、HLA-A0201、0202、0203、0206または0207遺伝子産物であってもよい。一部の場合、異なる集団間のサブタイプの頻度に差が存在し得る。例えば、一部の実施形態では、HLA-A2陽性の白人集団の95%超はHLA-A0201であるのに対して、中国人の集団では、頻度は、およそ23%のHLA-A0201、45%のHLA-A0207、8%のHLA-A0206および23%のHLA-A0203であると報告されている。
【0106】
[00146]一部の実施形態では、TCRは、MHCクラスII分子との関連でT細胞エピトープを認識することができる。MHCクラスIIタンパク質はAPCのサブセットにおいて発現され得る。ヒトにおいて、例えば、DR1、DR3、DR4、DR7、DR52、DQ1、DQ2、DQ4、DQ8およびDPIなどの、いくつかのMHCクラスII対立遺伝子が存在する。一部の実施形態では、MHCクラスII対立遺伝子は、HLA-DRB10101、HLA-DRB0301、HLA-DRB0701、HLA-DRB0401またはHLA-DQB10201遺伝子産物である。
【0107】
[00147]B細胞によって発現される免疫グロブリンと同様に(膜結合型免疫グロブリンは、多くの場合、B細胞受容体(BCR)と称される)、TCR鎖は可変ドメイン(または可変領域)および定常ドメイン(または定常領域)からなる。完全長定常ドメイン/領域は、細胞外部分(本明細書では「細胞外定常ドメイン」と称される)、ヒンジ領域、膜貫通領域および細胞質尾部を含むことができる。種々の実施形態では、定常ドメインは、完全長定常ドメインまたはその一部、例えば、細胞外定常ドメインであってもよい。TCRαおよびδ鎖の可変ドメインは多数の可変(V)および結合(J)遺伝子によってコードされるが、TCRβおよびγ鎖は多様性(D)遺伝子によってさらにコードされる。VDJ組換えの間、各遺伝子セグメントの1つのランダム対立遺伝子は機能的可変ドメインを形成するために他の対立遺伝子と組換えられる。定常遺伝子セグメントとの可変ドメインの組換えにより、機能的TCR鎖転写物を得ることができる。さらに、ランダムヌクレオチドが遺伝子セグメント間の接合部位において付加および/または欠失され得る。このプロセスは、強力なコンビナトリアル(どの遺伝子領域が組換えられるかに依存する)および接合多様性(どのおよびいくつのヌクレオチドが付加/欠失されるかに依存する)をもたらすことができ、その結果、大量の抗原の同定を確実にすることができる、大きく、高度に多様性があるTCRレパートリーが得られる。さらなる多様性は、機能的TCRを形成するためのαおよびβまたはγおよびδ鎖の対合(「アセンブリ」とも称される)によって達成され得る。組換え、ランダム挿入、欠失および置換により、T細胞受容体をコードする遺伝子の小セットが、1015個から1020個の間のTCRクローン型を作り出す可能性を有する。本明細書で使用される場合、「クローン型」とは、同一の免疫受容体を保持する免疫細胞の集団を指す。例えば、クローン型とは、同一のTCRを保持するT細胞の集団、または同一のBCR(または抗体)を保持するB細胞の集団を指す。免疫受容体多様性との関連で「多様性」とは、集団における免疫受容体(例えば、TCR、BCRおよび抗体)クローン型の数を指す。本明細書で使用される場合、「同種対の組合せ」とは、免疫細胞内の二分免疫受容体の2つの鎖(例えば、TCRαおよびTCRβ、TCRγおよびTCRδ、または重鎖および軽鎖)の天然の組合せを指す。2つの鎖の同じ同種対の組合せにより、同じTCRを得ることができる。例えば、同じクローン型を有するT細胞はTCRαおよびTCRβ鎖の同じ同種対の組合せを有する。クローン型におけるより高度な多様性は、同種対の組合せのより高度な多様性を示し得る。
【0108】
[00148]各TCR鎖は、相補性決定領域(CDR1~3)と呼ばれる、その構造において3つの超可変ループを含有する。CDR1および2はV遺伝子によってコードされ、MHC複合体とのTCRの相互作用に必要とされ得る。しかしながら、CDR3は、V遺伝子とJ遺伝子との間またはD遺伝子とJ遺伝子との間の接合領域によってコードされるので、高度に多様性になり得る。CDR3はペプチド抗原と直接接触するTCRの領域であり得る。CDR3はT細胞クローン型を決定するための目的の領域として使用され得る。1つの個体のT細胞による全てのTCRの合計はTCRレパートリーまたはTCRプロファイルと呼ばれる。TCRレパートリーは疾患の発症および進行と共に変化し得る。したがって、がん、自己免疫、炎症性および感染性疾患などの、異なる疾患状態下で免疫レパートリーのステータスを決定することは、疾患の診断および予後に有用であり得る。
【0109】
[00149]TCRは、完全長TCRおよびその抗原結合性部分または抗原結合性断片(MHC-ペプチド結合断片とも呼ばれる)であってもよい。一部の実施形態では、TCRはインタクトなまたは完全長TCRである。一部の実施形態では、TCRは、完全長TCRよりも短いが、MHC分子に結合した特異的抗原ペプチド、すなわちMHC-ペプチド複合体に結合している抗原結合性部分である。TCRの抗原結合性部分または断片は、完全長またはインタクトなTCRの構造ドメインの一部のみを含有することができるが、さらに完全TCRが結合しているエピトープ(例えば、MHC-ペプチド複合体)にも結合することができる。一部の場合、TCRの抗原結合性部分または断片は、一般に各鎖が3つの相補性決定領域を含有する場合などの、特異的MHC-ペプチド複合体との結合のための結合部位を形成するのに十分な、TCRの可変α鎖および可変β鎖などの、TCRの可変ドメインを含有する。抗原結合ドメインまたは抗原結合ドメインに対して相同である結合ドメインを有するポリペプチドまたはタンパク質が含まれる。
B細胞受容体(BCR)および抗体
[00150]本明細書に記載される免疫受容体はB細胞受容体(BCR)であってもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載される免疫受容体は抗体(または免疫グロブリン)である。本明細書に提供される組成物および方法は、重鎖をコードする第1の核酸配列および軽鎖をコードする第2の核酸配列を含む融合BCRまたは抗体ポリヌクレオチドを産生するために使用され得る。融合二分BCRまたは抗体ポリヌクレオチドはプロモーターをさらに含むことができ、および/またはレシピエント細胞内で発現されるようにベクターに挿入され得る。
【0110】
[00151]BCRは、シグナル伝達タンパク質の対と関連する細胞膜結合型抗体からなる。BCRに結合している抗原は抗体分泌細胞に分化するようにB細胞を刺激することができる。BCRは、B細胞のクローン選択および抗体分泌形質細胞へのそれらの分化において重要な役割を果たすことができる。成熟B細胞はBCRの免疫グロブリンM(IgM)およびIgDアイソタイプの両方を有することができ、それらの両方はシグナル伝達サブユニットIgαおよびIgβと関連し得るが、それらの膜結合型重鎖アイソフォームが異なる。
【0111】
[00152]全免疫グロブリンまたは抗体は典型的に4つのポリペプチドからなり得る:重(H)鎖ポリペプチドの2つの同一のコピーおよび軽(L)鎖ポリペプチドの2つの同一のコピー。哺乳動物において、抗体は5つのアイソタイプ:IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEに分類される。アイソタイプは、それらの生物学的特性、機能的位置および異なる抗原に対処する能力が異なる。存在する重鎖の種類は抗体のクラスを規定する。ギリシャ文字によって示される5種類の哺乳動物Ig重鎖:α、δ、ε、γおよびμが存在する。これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体に見出される。重鎖はサイズおよび組成が異なり;αおよびγはおよそ450個のアミノ酸を含有するが、μおよびεはおよそ550個のアミノ酸を有する。重鎖の各々は1つのN末端可変(V)領域および3つのC末端定常(C1、C2およびC3)領域を含有することができ、各軽鎖は1つのN末端可変(V)領域および1つのC末端定常(C)領域を含有することができる。免疫グロブリン軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの異なる種類、カッパ(κ)またはラムダ(λ)のいずれかのうちの1つに割当てられ得る。典型的な免疫グロブリンでは、各軽鎖はジスルフィド結合によって重鎖に連結され得、2つの重鎖はジスルフィド結合によって互いに連結され得る。一部の実施形態では、提供される重鎖、軽鎖および/または抗体因子は1つまたは複数のジスルフィド結合を含む構造を有する。一部の実施形態では、1つまたは複数のジスルフィド結合は、IgG4免疫グロブリンについて予想される位置におけるジスルフィド結合であるか、またはIgG4免疫グロブリンについて予想される位置においてジスルフィド結合を含む。軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列され得、軽鎖定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列され得る。重鎖の残りの定常ドメインは互いに整列され得る。
【0112】
[00153]軽鎖および重鎖の各対の可変ドメインは抗体の抗原結合部位を形成することができる。
[00154]抗体は、抗原結合性断片(Fab)および断片結晶化可能領域(Fc)を含むことができる。Fc領域は、抗体が免疫系を活性化することを可能にし得る細胞表面受容体と相互作用することができる。IgG、IgAおよびIgD抗体アイソタイプでは、Fc領域は、抗体の2つの重鎖の第2および第3の定常ドメインに由来する、2つの同一のタンパク質断片からなり;IgMおよびIgE Fc領域は、各ポリペプチド鎖における3つの重鎖定常ドメイン(Cドメイン2~4)を含有する。IgGのFc領域は高度に保存されたN-グリコシル化部位を有する。Fc断片のグリコシル化は、Fc受容体媒介性活性に必須であり得る。この部位に付着したN-グリカンは主に複合型のコアフコシル化二分岐(diantennary)構造であり得る。抗体断片の例には、限定されないが、(1)V、V、CおよびC1ドメインからなる一価断片である、Fab断片、(2)ヒンジ領域にてジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)断片、(3)抗体の単一アームのVおよびVドメインからなるFv断片、(4)穏やかな還元性条件を使用したF(ab’)断片のジスルフィド架橋の切断によって生じる、Fab’断片、(5)ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、および(6)特異的に抗原に結合する抗体単一可変ドメイン(VまたはV)ポリペプチドである、単一ドメイン抗体(sdAb)が含まれる。
【0113】
[00155]軽鎖および重鎖の定常ドメインは抗原への抗体の結合に直接関与されない場合があるが、定常ドメインは可変ドメインの配向に影響を与え得る。定常ドメインはまた、エフェクター分子および細胞との相互作用を介した抗体依存性相補体媒介性溶解または抗体依存性細胞毒性への関与などの、種々のエフェクター機能も示し得る。
【0114】
[00156]また、抗体には、キメラ抗体、ヒト化抗体および組換え抗体、トランスジェニック非ヒト動物から生成されたヒト抗体、ならびに濃縮技術を使用してライブラリーから選択された抗体が含まれ得る。
【0115】
[00157]抗体は、脊椎動物の血液または他の体液に見出されるタンパク質であってもよく、細菌およびウイルスなどの異物を同定し、中和するために免疫系によって使用される。抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体および多反応性(polyreactive)抗体)、および抗体断片が含まれ得る。したがって、抗体は、限定されないが、任意の特異的結合メンバー、免疫グロブリンクラスおよび/またはアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA、IgD、IgEおよびIgM);限定されないが、Fab、F(ab’)2、FvおよびscFv(一本鎖または関連実体)を含む、生物学的に関連する断片またはその特異的結合メンバーを含むことができる。抗体断片は、組換えDNA技術によって、またはインタクトな抗体の酵素的もしくは化学的切断によって産生される。「二重特異性」または「二機能性」抗体以外の抗体は、同一のその各々の結合部位を有すると理解される。モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から取得され得る。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在する場合がある起こり得る天然に存在する突然変異を除いて同一である。ポリクローナル抗体は、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を含む調製物であってもよい。
【0116】
[00158]多くの免疫受容体の可変ドメイン(例えば、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、抗体重鎖、抗体軽鎖)は同じ一般構造を有することができ、各ドメインは、3つの相補性決定領域(CDR)によって接続されている4つのフレームワーク(FWまたはFR)領域を含む。本明細書で使用される場合、「フレームワーク領域」という用語は、超可変または相補性決定領域(CDR)の間に位置する可変ドメイン内の比較的保存されたアミノ酸配列を指すことができる。典型的な免疫グロブリンまたはTCR鎖では、各可変ドメインに4つのフレームワーク領域が存在し得、それらはFR1、FR2、FR3およびFR4と指定される。フレームワーク領域は可変ドメインの構造的フレームワークを提供するβシートを形成する。典型的な免疫グロブリンまたはTCR鎖では、各可変ドメインに3つの相補性決定領域(CDR)が存在し得、それらはCDR1、CDR2およびCDR3と指定される。CDRは抗体の「超可変領域」を形成し、それは抗原結合に関与し得る。
【0117】
単一細胞反応器
[00159]融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドのライブラリーを産生するための組成物および方法が本明細書に提供される。融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、単一細胞由来の二分免疫受容体をコードする2つのV(D)J再配列遺伝子のコード配列を含むことができる。単一細胞反応器は、単一細胞から融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを産生するために使用され得る。本明細書に記載される方法の例示的なスキームは図2に示される。単一細胞反応器(図2の影付きの構造によって概念的に示される)を使用することによって、誤対合を引き起こし得る、異なる細胞由来の異なる免疫受容体鎖をコードする核酸分子間の接触(すなわち、細胞間配列接触)が最小化され得る。例えば、図2に示されるように、TCRα鎖1をコードする核酸分子(TRA1)は、TCRβ鎖2をコードする核酸分子(TRB2)と接触することはできない。
【0118】
[00160]この例示的なスキームによって例示されるように、単一細胞反応器は、単一の生物学的粒子(例えば、単一細胞)由来の目的の分子が試薬または互いと反応し得る容器であってもよい。単一細胞反応器は2つの構成要素を含むことができる:(1)単一細胞由来の目的の分子が会合され得る固体支持体、および(2)生化学反応を発生させるための水性含有物。単一細胞反応器内の目的の分子は反応を受けることができ、その反応の間、異なる細胞由来の目的の分子は互いに接触しないか、または混合しない。目的の分子は、核酸、タンパク質または細胞に存在する他の分子であってもよい。核酸は、DNA、RNA、mRNA、miRNA、tRNAなどであってもよい。核酸は免疫受容体または免疫受容体鎖をコードすることができる。
【0119】
[00161]一部の場合、固体支持体はバッチ処理され得る。例えば、固体支持体はビーズであってもよく、その場合、多くのビーズが連続体積の水溶液中に浸漬され得、その結果、全てのビーズ上の全ての分子は水溶液中の反応物に接近することができる。例えば、固体支持体は、より大きな固体表面上にパターン化された固体マイクロウェルの表面であってもよい。この場合、固体表面全体が連続体積の水溶液中に浸漬され得、その結果、全てのマイクロウェル上の全ての分子が水溶液中の反応物に接近することができる。
【0120】
単一細胞反応器:形および形態
[00162]単一細胞反応器は障壁を有することができ、その障壁は、異なる単一細胞反応器の含有物が互いに接触することを制限する。
【0121】
[00163]単一細胞反応器が障壁を有する場合、単一細胞反応器はベッセルであり得る。この場合、単一細胞反応器は固体壁付きまたは液体壁付きであってもよい。障壁は、油障壁、固体障壁または他の障壁であってもよい。例えば、単一細胞反応器の障壁は、管、ウェル、マイクロウェルまたは油中水液滴であってもよい。一部の場合、単一細胞反応器はエマルジョン中の油中水液滴である。単一細胞反応器として油中水液滴を使用すると、超ハイスループットを提供することができる。なぜなら、数百万またはそれより多くのこのような液滴は数分~数時間で作り出され得るからである。油中水液滴の生成は、ボルテックスすることによって、またはフローフォーカシング(flow-focusing)マイクロ流体チップなどのマイクロ流体チップを使用することによって達成され得る。
【0122】
[00164]一部の実施形態では、エマルジョンはマイクロ流体デバイスを使用して受動的に形成される。これらの方法には、圧搾、滴下、噴射、チップストリーミング(tip-streaming)、チップマルチブレーキング(tip-multi-breaking)または同様のものが含まれ得る。受動的マイクロ流体液滴生成は、2つの異なる流体の競合する力を変化させることによって、特定の数、サイズおよび直径を制御するためにモジュレートされ得る。これらの力は、2つの溶液の混合時の毛細管力、粘着力および/または慣性力であってもよい。
【0123】
[00165]一部の実施形態では、エマルジョンはマイクロ流体チップの能動的制御によって形成される。能動的制御では、液滴生成は、電気力、磁力または求心力などの外力の適用によって操作され得る。マイクロ流体チップ内の液滴の能動的操作を制御するための一般的な方法は、油および水などの、2つの混合溶液の流速を変えることによって固有の力を変更することである。
【0124】
[00166]逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの標準的な分子生物学反応は油中水エマルジョン中で実施され得る。界面活性剤が、エマルジョンを安定化させるために水相または油相に添加されてもよい。
【0125】
[00167]一部の場合、単一細胞反応器は障壁を有さない。例えば、ヒドロゲル粒子(例えば、約100ミクロンの直径を有するアガロース粒子など)は、単一細胞由来の目的の分子が安定に付着しているポリマーマトリクスを含むことができる。ヒドロゲルの水性含有物は、目的の分子と反応することができる反応物を含むことができる。一部の実施形態では、目的の分子はヒドロゲル粒子のポリマーマトリクスに安定に付着しているので、異なる細胞由来の目的の分子は互いに接触しないか、または混合しない。
【0126】
[00168]別の例として、非多孔質粒子(例えば、約10ミクロンの直径を有するポリスチレン粒子)は、単一細胞由来の目的の分子が安定に付着している表面を含むことができる。固体粒子は、粒子の表面上の目的の分子と反応する反応物を含む溶液中に浸漬され得る。この場合、粒子はそれを取り囲む溶液と共に、単一細胞反応器を構成する。一部の場合、このような非多孔質粒子はベッセル内にさらに含まれてもよい。例えば、単一細胞反応器は、エマルジョンの液滴中の液体に取り囲まれたビーズ、またはウェル中の液体に取り囲まれたビーズであってもよい。
【0127】
単一細胞反応器:固体支持体-一般
[00169]種々の種類の固体支持体および種々の付着化学物質が、単一細胞由来の目的の分子が安定に会合され得る固体支持体を提供するために使用されてもよい。本開示は、任意の特定の種類の固体支持体材料または構成に限定されることを意図するものではない。
【0128】
[00170]固体支持体は平坦もしくは平面であってもよいか、または実質的に異なる構成を有してもよい。例えば、固体支持体は、粒子、ビーズ、ストランド、沈殿物、ゲル、ゾル-ゲル、シート、チューブ、球、容器、毛細管、パッド、スライス、フィルム、プレート、ディップスティック、スライドなどとして存在してもよい。磁気ラテックスビーズおよび酸化鉄粒子などの磁気ビーズまたは粒子が、固体基板の例である。
【0129】
[00171]固体支持体を形成することができる例示的な材料には、ガラスまたは他のセラミック、プラスチック、ポリマー、金属、半金属、合金、合成物、有機物などが含まれる。例えば、固体支持体は、シリコン、シリカ、石英、ガラス、制御細孔ガラス、炭素、アルミナ、チタニア、酸化タンタル、ゲルマニウム、窒化ケイ素、ゼオライトおよびガリウムヒ素からなる群から選択される材料を含むことができる。金、白金、アルミニウム、銅、チタンおよびそれらの合金などの多くの金属もまた、固体支持体として使用するための選択肢である。さらに、多くのセラミックおよびポリマーもまた、固体支持体として使用され得る。固体支持体として使用され得るポリマーには、限定されないが、以下:ポリスチレン;ポリ(テトラ)-フルオロエチレン(PTFE);ポリビニリデンジフルオリド;ポリカーボネート;ポリメチルメタクリレート;ポリビニルエチレン;ポリエチレンイミン;ポリ(エーテルエーテル)ケトン;ポリオキシメチレン(POM);ポリビニルフェノール;ポリラクチド;ポリメタクリルイミド(PMI);ポリアトケンスルホン(polyatkenesulfone)(PAS);ポリプロピレン;ポリエチレン;ポリヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA);ポリジメチル-シロキサン;ポリアクリルアミド;ポリイミド;およびブロック-コポリマーが含まれる。アレイについての基板には、シリコン、シリカ、ガラスおよびポリマーが含まれる。固体支持体は、単一材料(例えば、ガラス)、材料の混合物(例えば、コポリマー)または異なる材料の多層(例えば、小分子の単層でコーティングされた金属、BSAでコーティングされたガラスなど)からなってもよい。
【0130】
[00172]固体支持体の構成は任意の適切な形態であってもよく、例えば、ビーズ、球、粒子、顆粒、ゲル、ゾル-ゲル、自己集合単層(SAM)または表面(平坦であってもよいか、または成形した特徴を有してもよい)を含むことができる。固体支持体には、半固体支持体が含まれ得る。固体支持体の表面は、平面、実質的に平面、または非平面であってもよい。固体支持体は多孔性または非多孔性であってもよく、膨張または非膨張の特徴を有してもよい。固体支持体は、ウェル、くぼみまたは他の容器、ベッセル、特徴もしくは位置の形態で構成されてもよい。複数の固体支持体は、試薬のロボットによる送達のためにアドレス指定可能な、またはレーザーもしくは他の照明およびCCD、共焦点もしくは偏向集光による走査を含む検出手段によって種々の位置におけるアレイで構成されてもよい。
【0131】
[00173]一部の実施形態では、固体支持体はビーズ(粒子と同義)の形態である。ビーズは、生物学的、非生物学的、有機、無機、ポリマー、金属またはこれらのいずれかの組合せを含む、任意の基板材料から作製され得る。ビーズの表面または内部は、化学的に改変されてもよく、任意の種類の処理またはコーティング、例えば、ツール分子との結合相互作用を可能にする反応基を含有するコーティングに供されてもよい。
【0132】
[00174]一部の実施形態では、固体支持体は細胞であってもよい。細胞はソース免疫受容体発現細胞(例えば、TRA遺伝子/mRNAおよびTRB遺伝子/mRNAを有するソースT細胞)であってもよく、固体支持体であってもよい。細胞は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドもしくは同様の固定剤、またはそれらの組合せを使用して固定され得る。固定後、細胞は、Triton-X100などの洗浄剤を使用して透過処理され得る。固定され、透過処理された細胞は、多孔質粒子、粒子および固体支持体とみなされ得る。細胞は固定されているので、そのTRA含有およびTRB含有DNA(ゲノムDNAの一部)およびmRNAは、細胞内で拡散が抑制され得るか、または細胞に安定に付着され得る。細胞は透過性であり、多孔性であるので、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、プライマー、鋳型スイッチングオリゴ(TSO)などの試薬は、逆転写、プライマー伸長および鋳型スイッチングなどの反応を実施するためにDNAまたはRNA(例えば、TRAおよびTRB mRNA)と接触するように細胞内に拡散され得る。
【0133】
[00175]一部の実施形態では、ビーズは、それらの迅速な単離および/または精製を容易にする手段で産生され得る。例えば、磁気ビーズは、プレートウェル内の液相からビーズを迅速に単離するために磁場を印加することによって操作され得る。
【0134】
単一細胞反応器:固体支持体-ヒドロゲル
[00176]固体支持体はヒドロゲルを含むことができる。固体支持体はヒドロゲル粒子であってもよい。ヒドロゲルは既存の方法を使用してヒドロゲル粒子になり得る。例えば、ヒドロゲルのゾル状態または前駆体は油中水エマルジョンになり得る。水滴は、「油中ヒドロゲル」エマルジョンを生じるようにゲル状態に(例えば、前駆体の重合によって、またはアガロースなどの熱可逆性ヒドロゲルの温度を低下させることによって)変化され得る。前駆体の重合は、光によって、または油相に開始剤もしくは促進剤(例えば、TEMED)を加えることによって引き起こされ得る。このエマルジョンは、水溶液中に懸濁されたヒドロゲル粒子を生じるように解乳化され得る。
【0135】
[00177]一部の実施形態では、ヒドロゲルは、ゲル相と溶液(ゾル)相との間で可逆的であり得る可逆性ヒドロゲルである。一部の実施形態では、可逆性ヒドロゲルのゲル相とゾル相との間の遷移は温度によって制御される(すなわち、熱的に制御されるか、または熱可逆性である)。例えば、熱的に制御された可逆性(または熱可逆性)ヒドロゲルはアガロースヒドロゲルであってもよい。可逆性ヒドロゲルの有用な特性は、ゾル相において、捕捉剤、捕捉剤に付着した分子および目的の他の分子が自由に拡散することができ、ある特定の反応をより効率的にすることであり得る。
【0136】
[00178]例えば、熱応答性ポリマーを使用することによって熱感受性または熱可逆性ヒドロゲルを提供するための他の方法が存在する。温度感受性ポリマーは、両親媒性ジブロック(AB)、トリブロック(ABAまたはBAB型)またはマルチブロックコポリマーを作り出すために親水性ブロックへの疎水性ブロックの重合後グラフトによって、または共重合によって合成され得る。Aは、PEG(ポリ(酸化エチレン)(PEO)としても知られている)のような親水性ブロックであるのに対して、Bは、ポリエステル、ポリ(酸化プロピレン)(PPO)(ポリ(プロピレングリコール)(PPG)とも呼ばれる)またはポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAm)などの疎水性ブロックである。両親媒性ブロックコポリマーは、低温で親水性ブロックのシェルおよび疎水性ブロックのコアを有するミセルを形成するために水中で自己集合し、高温でのミセルの会合はゲル化を引き起こす。熱応答性ポリマー溶液がゲルに変化する温度はゲル化温度と呼ばれる。Pluronic(登録商標)(BSAF)またはSynperonic(登録商標)PE(ICI)として商業的に知られているポロキサマー(ABA型PEO-PPO-PEOポリマー)が、熱感受性ヒドロゲルを形成するために使用され得る。Pluronic(登録商標)の水溶液は周囲温度でミセルを形成するために自己集合し、体温でのミセルの会合の結果としてゲル化が起こった。Pluronic(登録商標)のマルチブロックコポリマーは、カップリング剤としてホスゲンまたはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をそれぞれ使用してPEOおよびPPOセグメントまたはPluronics(登録商標)をカップリングすることによって調製され得る。ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)およびポリ(乳酸)(PLA)のような脂肪族エステルは、加水分解により分解可能なPluronic(登録商標)ヒドロゲルを調製するために触媒としてオクタン酸第一スズ(Sn(oct))を使用して、対応するε-カプロラクトン(CL)および乳酸(LA)モノマーの開環重合(ROP)を介してPluronic(登録商標)の末端にカップリングされ得る。酸に不安定なアセタール結合に基づくPluronic(登録商標)のマルチブロックコポリマーは、p-トルエンスルホン酸無水物(p-TSA)触媒の存在下で、Pluronic(登録商標)およびジ-(エチレングリコール)ジビニルエーテル(DEGDVE)の反応によって作り出され得る。
【0137】
[00179]PLA、PCL、ポリ(グリコール酸)(PGA)およびポリ[(R)-3-ヒドロキシブチレート](PHB)などの脂肪族エステルを有するPEGに基づいた熱可逆性ヒドロゲルが使用されてもよい。例えば、ABA型PEG-ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)-PEG(PEG-PLGA-PEG)トリブロックコポリマーは加水分解により分解可能なヒドロゲルを形成した。コポリマーは2つのステップによって合成され得る。最初に、モノメトキシPEG-PLGA(MPEG-PLGA)のジブロックコポリマーが、触媒としてSn(oct)の存在下で、MPEGにおけるD,L-ラクチド(DLLA)およびグリコリド(GA)のROPを介して合成され得、続いてトリブロックPEG-PLGA-PEGコポリマーが、HDIカップリング剤を使用してジブロックMPEG-PLGAコポリマーを互いにカップリングすることによって調製され得る。コポリマー溶液は低温で存在し得るが、37℃でゲルになる(ゾルからゲルへの遷移)。中央のPEGブロックに隣接するPLGAブロックを有するBAB型トリブロックコポリマー(PLGA-PEG-PLGA)は、カップリング剤を必要とせずにPEGにおけるDLLAおよびGAのROPを介して合成され得る。PLGA-PEG-PLGAは、PEG-PCLA-PEGと同様のゾルからゲルへの遷移傾向を示す。これらのヒドロゲルのゲル化および分解は、疎水性および親水性ブロックの分子量、疎水性ブロックの組成、ポリマー濃度および添加剤を変化させることによって調整され得る。PLGA-PEG-PLGAのゲル化挙動は、種々の末端基(すなわち、ヒドロキシル、アセチル、プロピオニルおよびブタノイル基)の組み込みによってモジュレートされ得る。
【0138】
[00180]PNIPAmは室温で水溶液に溶解するが、そのコイルから小球への遷移に起因して32℃(相転移温度)を超えると沈殿する。他のポリマーとのPNIPAmの組み込みは、温度の増加に応じて水溶液中でゾルからゲルへの相転移を示すコポリマーを生じ得る。ラジカル重合が、PNIPAmベースのポリマーを作り出すために他のメタクリレートまたはアクリレートモノマー/ポリマーと共にNIPAmを組み込むために使用され得る。例えば、PNIPAm-ポリ(2-メタ-クリロイルオキシエチルホスホリルコリン)-PNIPAm(PNIPAm-MPC-PNIPAm)コポリマーは、原子移動ラジカル重合(ATRP)を介して合成され得る。NIPAmのATRPは2つのステップで行われ得る:(1)マクロ開始剤の調製および(2)ブロックコポリマーを得るためのマクロ開始剤へのNIPAmの添加。ネットワークの形成の間、ポリマー鎖間の疎水性相互作用に起因して温度が32℃を超えて上昇すると、ポリマー溶液はゲルを形成することができる。
【0139】
[00181]熱応答性ポリホスファゼンもまた、温度の増加に伴い、水溶液中でゾルからゲルへの相転移を示し得る。これらのポリマーは多段階合成によって調製され得る。最初に、ジクロロホスファゼンポリマーが、触媒として塩化アルミニウム(AlCl)を使用するヘキサクロロシクロトリホスファゼンの溶融重合反応を介して合成され得る。次いで、親水性PEGブロックおよび疎水性ブロックは、ヒドロゲルマクロマーを得るためにジクロロホス-ファゼンポリマー骨格にコンジュゲートされ得る。疎水性ブロックは、ジ-、トリ-およびオリゴ-ペプチドまたは単一の改変アミノ酸(例えば、L-イソロイシンエチルエステル(IleOEt)、D,L-ロイシンエチルエステル(LeuOEt)、L-バリンエチルエステル(ValOEt))であってもよい。
【0140】
[00182]MPEGおよびポリ(プロピレンフマレート)(PPF)からなるABA型トリブロックコポリマーは、PPFにおける不飽和二重結合の架橋によってさらに安定化され得る熱感受性ゲルを生じ得る。
【0141】
[00183]エナンチオマーPEG-P(L-ラクチド)-PEG(PEG-PLLA-PEG)およびPEG-P(D-ラクチド)-PEG(PEG-PDLA-PEG)トリブロックコポリマーの混合は、ゾルからゲルへの遷移を誘導することができる。温度が37℃に増加すると、ヒドロゲルが形成され得、それらは70℃を超える溶液になり得る。同様に、ヒドロゲルは、エナンチオマーPEG-(PLLA)8およびPEG-(PDLA)8星形ブロック、ならびにPEG-(PLLA)2およびPEG-(PDLA)2トリブロックコポリマーの立体錯体形成(stereocomplexation)によって形成され得る。
【0142】
[00184]合成ポリマーの自己集合に加えて、合成分子により化学的に改変された天然材料もまた、ヒドロゲルを形成するために水性媒体中で自己集合し得る。例えば、天然に豊富にあるキチンの部分的な脱アセチル化に由来する多糖であるキトサンはヒドロゲル形成のために使用され得る。キトサンは、いくつかのポリマーとコンジュゲートすると、物理的なヒドロゲルを形成することができる。例えば、PEG-アルデヒドはシッフ塩基反応を介してキトサンとカップリングされ得、続いてシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)により還元されてPEG-g-キトサンを生じる。得られたグラフトポリマーは低温で溶液であり、37℃付近の温度でゲルに変換することができる。ゲル化はポリマー鎖間の疎水性相互作用に起因し得、キトサンセグメントの会合およびPEG移動度の減少をもたらす。同様に、Pluronic(登録商標)-g-キトサンもまた、加熱すると熱可逆性のゾルからゲルへの転移を示す。
【0143】
[00185]ポリアクリルアミドはヒドロゲルについてのポリマーフレームワークであってもよい。ポリアクリルアミドゲルは、低粘度および高い固定化効率で捕捉剤を固定化する容易さなどのいくつかの利点を与える液滴中でモノマー(例えば、アクリルアミド)およびクロスリンカー(例えば、ビス-アクリルアミド)から重合され得る。
【0144】
[00186]ポリマーの自己集合は、物理的に架橋されたヒドロゲルを調製するための簡単な方法を提供することができる。自己集合は、水素結合および疎水性相互作用などの、分子内力および分子間力の結果として一部のポリマーで発生する。これらのポリマーの水溶液は、pHおよび温度などの外部刺激に応答して自己集合すると、ゾルからゲルへの遷移を受ける。熱応答性ポリマーの自己集合は温度の変化だけでヒドロゲルを製造するための手段である。
【0145】
[00187]さらに、アルギネートおよびアガロースなどの、いくつかの多糖ベースのポリマーが考慮され得る。アルギネートは容易に誘導体化され得、これにより、捕捉剤を固定化するための多くの選択肢を提供する(例えば、PawerおよびEdgar、Biomaterials 33(2012)、3279を参照のこと)。ポリマーが誘導体化されない場合でも、さらに、捕捉剤とポリマーフレームワークとの間で安定な物理的会合を達成することができる場合がある。例えば、大きな粒子(例えば、ミクロンサイズのストレプトアビジンによりコーティングされたビーズ)は誘導体化されていないポリマーフレームワーク内に封入され得、捕捉剤は、大きな粒子の表面または内部と安定した物理的会合を形成することができる。
【0146】
[00188]一部のポリマーでは、ゲル化は元に戻され得る。すなわち、ヒドロゲル粒子はゲル状態から流体状態に変換され得る。言い換えれば、ゲルは融解され得る。これは、ヒドロゲル粒子から標的分子またはDNAを回収することなどの、一部の状況において有用であり得る。例えば、ポリアクリルアミドゲルにおけるビス-アクリルアミドは、DATD(ジアリル-酒石酸ジアミド)、DHEBA(ジヒドロキシエチレン-ビス-アクリルアミド)およびBAC(ビス-アクリルイルシスタミン)(bis-acrylylcystamine)などのクロスリンカーと置き換えられ得る。これらのクロスリンカーは、いくつかの還元剤または酸化剤によって切断され得る。アルギネートゲルはEDTAによって容易に融解され得、アガロースゲルは高温によって融解され得る。
【0147】
単一細胞反応器:固体支持体-ヒドロゲル:誘発されたゲル化および硬化粒子
[00189]一部の場合、重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーを含む水溶液は、重合または非重合機構を介してマトリクスを形成することによってヒドロゲルに変換され得る。このプロセスはゲル化と呼ばれる。このような水溶液が区画の含有物である場合、ゲル化プロセスによって形成されるヒドロゲルはヒドロゲル粒子であり得る。区画(例えば、マイクロウェルまたは油中水液滴)の水相中の含有物から形成されるヒドロゲル粒子は、硬化粒子と称される。
【0148】
[00190]重合機構によって形成されるマトリクスの例には、限定されないが、ポリアクリルアミドが含まれる。ポリアクリルアミドは、アクリルアミドおよびビス-アクリルアミドのモノマーから形成されるマトリクスであってもよい。重合反応はフリーラジカルによって触媒されるビニル添加であってもよい。反応は、過硫酸アンモニウム(APS)からフリーラジカル形成を誘導する、TEMEDによって開始され得る。フリーラジカルは電子をアクリルアミド/ビスアクリルアミドモノマーに移動させ、それらをラジカル化し、それらを互いに反応させてポリアクリルアミド鎖を形成する。ビス-アクリルアミドの不在下で、アクリルアミドは、多孔質ゲルではなく、長鎖に重合することができる。ビス-アクリルアミドはアクリルアミド鎖を架橋することができ、多孔質ゲルマトリクスの形成を引き起こすことができる。架橋の量、ならびにそれにより、ゲルの孔径および結果として生じる分離特性は、アクリルアミドのビス-アクリルアミドに対する比を変化させることによって制御され得る。非重合機構によって形成されるマトリクスの例には、限定されないが、アガロースゲルが含まれる。アガロースは多糖であってもよい。アガロースのモノマー単位は、D-ガラクトースおよび3,6-アンヒドロ-L-ガラクトピラノースの二糖であってもよい。ある特定の温度(ゲル化温度)、例えば35℃未満の水溶液では、これらのポリマーストランドは、水素結合のような非共有結合性相互作用および静電相互作用によって多孔質ゲル構造内に一緒に保持され得る。ゲル化温度を上回る温度に増加させるために溶液を加熱すると、これらの非共有結合性相互作用を分解することができ、ストランドを分離することができる。次いで溶液が冷えると、これらの非共有結合性相互作用が再び確立され得、ゲルが形成し得る。したがって、アガロースゲルは、水素結合および静電相互作用によるゲル化によって形成することができる。ゲル化温度および融解温度はアガロースの種類に応じて変化し得る。テングサ(Gelidium)に由来する標準的なアガロースは、34~38℃(93~100°F)のゲル化温度および90~95℃(194~203°F)の融解温度を有することができるのに対して、そのより高いメトキシ置換基に起因するオゴノリ(Gracilaria)に由来するアガロースは、40~52℃(104~126°F)のゲル化温度および85~90℃(185~194°F)の融解温度を有することができる。融解温度およびゲル化温度は、特に1%未満の低いゲル濃度では、ゲルの濃度に依存し得る。したがって、ゲル化温度および融解温度は、通常、指定されたアガロース濃度で与えられる。天然アガロースは非荷電メチル基を含有することができ、メチル化の程度はゲル化温度に正比例し得る。しかしながら、合成メチル化は逆効果をもたらす可能性があり、それによりメチル化の増加はゲル化温度を低下させる可能性がある。異なる融解温度およびゲル化温度を有する様々な化学的に改変されたアガロースが化学的改変によって利用可能である。
【0149】
[00191]液滴中でポリアクリルアミドヒドロゲル粒子を作製する場合、重合開始剤は過硫酸アンモニウム(APS)または水溶性光開始剤であってもよい。APSが開始剤として使用される状況では、促進剤であるテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)がキャリアオイルに添加され得る。例えば、2.5mLのキャリアオイルおよび10μLのTEMEDが合わされてTEMED含有キャリアオイルを形成することができる。APSおよびTEMED含有キャリアオイルが使用される場合、得られたエマルジョンは、ポリアクリルアミドヒドロゲルの重合を誘導するために65℃で一晩インキュベートされ得る。他の水溶性光開始剤が使用されてもよい。一部の場合、光開始剤は365nm UV(核酸に対して安全とみなされ得る)で励起され得る。(a)Kojimaら、Chem Mater 10(1998):3429に記載されている方法などによって合成され得るナトリウム4-[2-(4-モルホリノ)ベンゾイル-2-ジメチルアミノ]-ブチルベンゼンスルホネート(MBS)、および(b)Ayubら、Advanced Materials Research 1125(2015):84に記載されている方法などによって調製され得る2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンおよびメチル化-β-シクロデキストリン(DMPA:MβCD複合体)によって形成される分子複合体などの、LAP以外のいくつかの選択肢が存在する。
【0150】
[00192]アルギネートがポリマーフレームワークとして使用される状況では、ゲル化は、マイクロ流体デバイスにおいて液滴にカルシウムイオンを直接送達することによって、またはフォトケージド(photocaged)カルシウムの放出によって引き起こされ得る。アガロースがポリマーフレームワークとして使用される状況では、ゲル化は温度を低下させることによって引き起こされ得る。
【0151】
[00193]生物学的粒子が複数の仕切りに分けられ、標的核酸が放出された後、仕切り内のモノマーおよびクロスリンカーは、ヒドロゲルを支持する架橋されたポリマーネットワークを形成するために重合され得る。このような重合を引き起こすためにいくつかの方法が使用され得る。例示的な方法は、過硫酸アンモニウム(APS)およびN,N,N’,N’-テトラメチルエタン-1,2-ジアミン(TEMED)を使用することであり得る。APSは水相中(例えば、液滴中)に含まれ得、TEMEDは分配油に添加され得る。液滴生成後、エマルジョンは、長期間(例えば、一晩)、(例えば、65℃で)加熱され得、これにより重合が引き起こされる。しかしながら、一部の適用では、このようなプロセスは、標的核酸の質の維持などの他の態様において困難になり得る。したがって、一部の場合、より速く、およびより穏やかな処理で重合を引き起こすことが望まれ得る。長波長UV(例えば、>360nm)の光開始剤は必要に応じてもよい。長波長UVは、通常、ほとんどの生体分子(タンパク質および核酸を含む)にとって安全とみなされる。便利なLEDベースの光源は、少なくとも360nm、361nm、362nm、363nm、364nm、365nm、またはそれより高いnmの照明のために利用可能であり得る。
【0152】
[00194]多くの分子または分子複合体は、長波長UVと適合する水溶性光開始剤、例えば、リチウム-およびマグネシウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(TMPPLおよびTMPPM)であってもよい。それらは、水溶液中のアクリルアミドおよびメタクリルアミドなどの適切なモノマーのフリーラジカル重合のための効果的な水溶性光開始剤である。TMPPL(LAPとも呼ばれる)は生体適合性ヒドロゲルの形成を引き起こすために使用され得る。同様に、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン(BDMB)のスルホン化による、ナトリウム4-[2-(4-モルホリノ)ベンゾイル-2-ジメチルアミノ]-ブチルベンゼンスルホネート(MBS)が水溶性の長波長UV光開始剤として使用され得る。水溶性光開始剤はまた、メチル化-β-シクロデキストリン(MβCD)と複合体を形成することなどによって水溶性形態で製剤化され得る。例えば、水溶性光開始剤としてMβCDと複合体を形成した2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)が使用され得る。
【0153】
単一細胞反応器:固体支持体への付着化学-一般
[00195]目的の分子は、静電相互作用または物理的封入を介するなどの非特異的な様式で固体支持体に付着され得る。例えば、カルボキシル分子でさらにコーティングされる、磁石の層によって囲まれたポリスチレン製の固相可逆的固定化(SPRI)ビーズは、「クラウディング剤(crowding agent)」ポリエチレングリコール(PEG)および塩(例えば、20%PEG、2.5M)の存在下でポリヌクレオチドに安定に結合することができる。同様に、シリカビーズは、グアニジウムの存在下でポリヌクレオチドに安定に結合することができる。様々に、正電荷ビーズはポリヌクレオチドに結合することが記載されている。封入の例として、固体支持体がヒドロゲルであり、目的の分子がヒドロゲルの孔径より大きい流体力学半径を有する場合、目的の分子は、物理的封入によってヒドロゲルベースの固体支持体に付着され得る。
【0154】
[00196]より特異的な付着のために、捕捉剤が使用されてもよい。捕捉剤は、固体支持体への目的の分子(例えば、目的のポリヌクレオチド)の安定な付着を媒介する化学組成物であってもよい。捕捉剤は、標的分子への結合、標的核酸分子上で伸長するプライマーとしての役割、標的分子との反応などの複数の機能を介して安定な付着を媒介することができる。
【0155】
単一細胞反応器:固体支持体への付着化学-一般:捕捉剤
[00197]本明細書に提供される組成物または方法は捕捉剤を含むことができる。捕捉剤は、単一細胞反応器内の目的の分子(標的分子と同義語)を固定化または封入するためのアンカーとして機能することができる。一方で、捕捉剤は標的分子に結合することができる。他方で、捕捉剤は、それ自体の拡散を抑制するために固体支持体と会合することができ、その結果、次に標的分子の拡散が制限される。一部の実施形態では、捕捉剤はヒドロゲルのフレームワーク内で拡散抑制剤に連結している。標的分子は、核酸鋳型またはそのコピー、例えば、免疫受容体鎖をコードする核酸またはそのコピーであってもよい。
【0156】
[00198]捕捉剤は2つの部分:ターゲティング部分および固定化部分を含むことができる。固定化部分は、非多孔質固体支持体およびヒドロゲルなどの多孔質固体支持体を含む固体支持体に捕捉剤を付着するのに関与し得る。ヒドロゲルの場合、固定化部分は、ヒドロゲルまたは拡散抑制剤を支持するポリマーフレームワーク(例えば、マトリクス)に付着され得る。ターゲティング部分は核酸鋳型またはそのコピーとの安定な相互作用を行うことに関与し得る。捕捉剤は、ターゲティング部分および固定化部分が同じ分子の2つの部分であり、共有結合している、1つの分子であってもよい。捕捉剤は、ターゲティング部分および固定化部分がリンカーを介して共有結合的に連結され得るか、または非共有結合的に連結され得る、1つより多い分子であってもよい。例えば、固定化部分はポリマーフレームワークに連結している第1のポリヌクレオチドであってもよく、ターゲティング部分は第1のポリヌクレオチドとハイブリダイズできる第2のポリヌクレオチドを含んでもよい。捕捉剤のターゲティング部分と固定化部分との間の相互作用の種類に制限がないことは理解されるべきである。
【0157】
[00199]一部の実施形態では、捕捉剤はターゲティング部分を含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは化学基である。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドはプライマーまたはオリゴヌクレオチドアプタマーである。一部の実施形態では、プライマーは逆転写プライマーである。一部の実施形態では、逆転写プライマーは、ポリ-デオキシ-チミジンヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、抗体もしくはその断片、またはペプチドアプタマーである。一部の実施形態では、化学基は反応基である。一部の実施形態では、反応基は核酸鋳型の核酸塩基と共有結合を形成する。一部の実施形態では、反応基は、NHSエステル、マレイミド基または標識-ITリンカーおよび反応基である。一部の実施形態では、核酸塩基はグアニンである。
【0158】
[00200]例えば、ポリヌクレオチドが目的の分子である場合、ターゲティング部分は、標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであってもよい。ターゲティング部分は、細胞内の全てのmRNA種とハイブリダイズする逆転写プライマーであってもよい。ターゲティング部分は、目的の特定のDNAまたはRNAとハイブリダイズする特定または設計された配列を有するプライマーであってもよい。
【0159】
[00201]適用および標的分子に応じて、ターゲティング部分は、プライマー(ポリメラーゼまたは逆転写酵素によって伸長され得る)、標的分子に非共有結合的に安定に結合する親和性剤、または標的分子と共有結合を形成する結合剤であってもよい。一部の場合、ターゲティング部分は、塩基対合によってその標的ポリヌクレオチド分子(例えば、免疫受容体鎖またはそのコピーをコードするポリヌクレオチド)に結合するオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0160】
[00202]一部の実施形態では、ターゲティング部分は、プライマーにおけるアダプター配列(例えば、ARS)とハイブリダイズでき、それによってプライマーを固体支持体に連結するACOである。一部の場合、ターゲティング部分は、プライマー、例えば、RTプライマーまたはPCRプライマーとして役立つオリゴヌクレオチドである。プライマーからの伸長産物もまた、捕捉剤を介して固体支持体に連結され得る。
【0161】
[00203]捕捉剤は固定化部分を含むことができる。固定化部分は捕捉剤を固体支持体に連結することができる。捕捉剤はリンカーを含むことができるか、またはリンカーを介して固体支持体に付着され得る。リンカーは、予め形成され得るか(例えば、PEGリンカー)、または捕捉剤における第1の反応基および固体支持体に固定化された第2の反応基によって形成され得る。
【0162】
[00204]固定化部分は、NHSエステル、ビオチン、マレイミド基、チオール基、アジド基、アビジンもしくはストレプトアビジン、一本鎖ポリヌクレオチド、ビオチン基、メタクリル基、またはそれらの反応産物であってもよい。固定化部分は反応基を含むことができる。
【0163】
[00205]反応基の例には、スクシンイミジルエステル、アミド、アクリルアミド、アシルアジド、ハロゲン化アシル、アシルニトリル、アルデヒド、ケトン、ハロゲン化アルキル、スルホン酸アルキル、無水物、ハロゲン化アリール、アジリジン、ボロネート、カルボジイミド、ジアゾアルカン、エポキシド、ハロアセトアミド、ハロプラチネート(haloplatinate)、ハロトリアジン、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ホスホロアミダイト、ハロゲン化シリル、スルホン酸エステル、ハロゲン化スルホニル、アミン、アニリン、チオール、アルコール、フェノール、ヒラジン(hyrazine)、ヒドロキシルアミン、カルボン酸、グリコールおよび複素環が含まれる。
【0164】
[00206]一部の実施形態では、固定化部分における反応基は求電子部分であり、これは固体支持体における求核部分と反応することができるか、またはその逆も同様である。求核部分または求電子部分のいずれかは、固定化部分または固体支持体に付着され得る。このような求電子部分には、限定されないが、例えば、カルボニル基、スルホニ基、アルデヒド基、ケトン基、ヒンダードエステル基、チオエステル基、安定イミン基、エポキシド基、アジリジン基などが含まれる。
【0165】
[00207]本開示において使用され得る反応基化学物質は上記の項目のものに限定されない。例として、他の実施形態では、第1の反応基と第2の反応基との間の反応は、親双極子反応を介して進行することができる。例えば、第1の反応基はアジドであってもよく、第2の反応基はアルキンであってもよい。あるいは、第1の反応基はアルキンであってもよく、第2の反応基はアジドであってもよい。アジドまたはアルキン含有ポリヌクレオチドに関与する付加環化反応は、触媒量で、in situでCu(II)をCu(I)に還元するための還元剤の存在下で、Cu(II)(例えば、触媒量のCuSOの形態において)の添加により水性条件下で室温にて実施され得る。還元剤には、アスコルビン酸塩、金属銅、キニーネ、ヒドロキノン、ビタミンK、グルタチオン、システイン、Fe2+、CO2+、および印加電位が含まれる。本開示において使用され得るさらに他の反応性化学物質には、限定されないが、Staudingerライゲーションおよびオレフィンメタセシス化学物質が含まれる(例えば、Mahalら、(1997) Science 276:1125-1128を参照のこと)。
【0166】
[00208]一部の実施形態では、捕捉剤(または目的の分子)と固体支持体との間の付着は非共有結合性付着である。例えば、適切な酸性基を有する捕捉剤(または目的の分子)は、ヒドロキシルまたは他の負電荷の基を保持する固体支持体と強力な会合を形成することができる。このシステムの他のバリエーションでは、互いに対して強い親和性を有する他の種類の部分が、捕捉剤(または目的の分子)および固体支持体における反応基に組み込まれてもよい。例えば、捕捉剤(または目的の分子)は適切な反応基を介してビオチンとカップリングされ得るのに対して、固体支持体はアビジンとコーティングされ得、その結果、捕捉剤(または目的の分子)と固体支持体との間に極めて強い非共有結合が生じる。
【0167】
単一細胞反応器:固体支持体への付着化学-ヒドロゲル
[00209]固体支持体がヒドロゲルを含む場合、捕捉剤の固定化部分は、ヒドロゲルまたは拡散抑制剤を支持するポリマーフレームワーク(例えば、マトリクス)に付着され得る。
【0168】
[00210]固定化部分は、一般的な固体支持体について本明細書に記載される化学物質を使用してポリマーフレームワーク(例えば、ヒドロゲルフレームワーク)または拡散抑制剤における反応基と反応することができる。ある特定の場合、必要に応じて、捕捉剤がフレームワークから放出され得るように、捕捉剤とポリマーフレームワークとの間の相互作用は可逆的であってもよい。例えば、固定化部分がストレプトアビジンを含み、ポリマーフレームワークがビオチンを含む場合、ストレプトアビジンとビオチンとの間の相互作用は、変性剤(ホルムアミドなど)の存在下で、かつ加熱しながら過剰量の遊離ビオチンを添加することによって逆転され得る。別の例として、固定化部分とポリマーフレームワークとの間の相互作用が核酸ハイブリダイゼーションを介する場合、相互作用は、核酸二本鎖を融解するために温度を増加させることによって逆転され得る。
【0169】
[00211]一部の実施形態では、固定化部分は、共有結合または非共有結合性相互作用を介してマトリクスまたはポリマーフレームワークと会合することができる。固定化部分は、(a)ポリマーフレームワークに組み込まれる化学物質、(b)直接的にポリマーフレームワークと安定に相互作用する化学物質もしくはタンパク質、または(c)間接的にポリマーフレームワークと安定に相互作用する化学物質もしくはタンパク質を含むことができる。(a)の例はメタクリル基であってもよく、これはポリアクリルアミドゲルに共重合され得る。(b)の例はNHSエステルであってもよく、これは安定な共有結合性相互作用を形成するために第一級アミン基と反応することができる。この例は、ポリマーフレームワークが第一級アミン基を含有する場合、適用可能であり得る。(b)の別の例はマレイミドであってもよく、これは安定な共有結合性相互作用を形成するためにチオール基と反応することができる。この例は、ポリマーフレームワークがチオール基を含有する場合、適用可能であり得る。(b)の別の例はチオール基であり、これは、安定な共有結合性相互作用を形成するためにC-C二重結合含有基(マレイミドおよびアクリレートなど)と反応することができる。この例は、ポリマーフレームワークがC-C二重結合含有基を含有する場合、適用可能であり得る。(b)の別の例はアジド基であってもよく、これは安定な共有結合性相互作用を形成するためにアルキン基と反応することができる。この例は、ポリマーフレームワークがアルキン基を含有する場合、適用可能であり得る。(b)の別の例はアビジンまたはストレプトアビジンであってもよく、これは安定な非共有結合性相互作用を形成するためにビオチンと相互作用することができる。この例は、ポリマーフレームワークがビオチン基を含有する場合、適用可能であり得る。(b)の別の例は一本鎖DNAポリヌクレオチドであってもよく、これは、安定な非共有結合性相互作用を形成するために逆相補配列の一本鎖ポリヌクレオチドと相互作用することができる。この例は、ポリマーフレームワークが一本鎖ポリヌクレオチドを含有する場合、適用可能であり得る。(c)の例はビオチンであってもよい。この例は、ポリマーがビオチンを含有する場合、およびヒドロゲルがストレプトアビジン四量体をさらに含有する場合、適用可能であり得る。この場合、固定化部分および同じストレプトアビジンの別のモノマーがポリマーにおけるビオチンと安定に相互作用することができるので、ストレプトアビジンの1つのモノマーはビオチンと安定に相互作用することができる。このように、固定化部分は間接的にポリマーと安定に相互作用することができる。
【0170】
[00212]ヒドロゲル内に核酸分子を封入するために、核酸分子がヒドロゲル外へ拡散することを阻止するために核酸分子はヒドロゲルのマトリクス内に固定化され得る。固定化は、直接的または間接的のいずれかで核酸分子に結合し、また、ヒドロゲルのマトリクスと相互作用する捕捉剤によって達成され得る。一部の場合、捕捉剤は核酸鋳型に連結している。一部の実施形態では、捕捉剤は核酸鋳型のコピーに連結している。捕捉剤は共有結合または非共有結合性相互作用を介してマトリクスに結合することができる。
【0171】
[00213]固体支持体がヒドロゲルを含む場合、ヒドロゲルは、捕捉用プローブ(またはターゲティング部分)をヒドロゲルフレームワークに付着させるために機能化され得る。固定化されたまたは拡散が抑制された捕捉剤(例えば、ACO)により改変されたヒドロゲルを作り出すことは、機能化されたヒドロゲルを作り出すことの例であり得る。一部の実施形態では、捕捉剤はポリマーフレームワークに連結している。一部の実施形態では、捕捉剤は拡散抑制剤(以下を参照のこと)に連結している。機能化されたヒドロゲルを作り出すことはヒドロゲル内に目的の核酸を抑制することに有用であり得、それによって目的の核酸、および目的の核酸が結合している他の分子は、(1)ヒドロゲル内で拡散しないか、もしくはヒドロゲル外へ拡散せず、または(2)制御された様式で、ヒドロゲル内で拡散することができるか、もしくはヒドロゲル外へ拡散することができる。一部の実施形態では、ヒドロゲルはヒドロゲル粒子の形態である。
【0172】
[00214]固体支持体が重合可能なモノマーまたはゲル化可能なポリマーから作製されたヒドロゲルである場合、固定化部分は、ポリマーおよび/もしくはモノマーと共重合される化学物質、ポリマーおよび/もしくはモノマーまたは拡散抑制剤と直接的に安定に相互作用する化学物質またはタンパク質、あるいはポリマーおよび/もしくはモノマーまたは拡散抑制剤と間接的に安定に相互作用する化学物質またはタンパク質であり得る。
【0173】
[00215]ヒドロゲル粒子は、ヒドロゲル粒子の構成単位を直接的に改変することによって機能化され得る。構成単位は、重合または非重合機構によってヒドロゲルまたは硬化マトリクスを形成することができる重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーである。例えば、ヒドロゲル粒子が構成単位の重合によって形成される場合、捕捉剤は構成単位に付着され得る。したがって、重合の間、捕捉剤はポリマーフレームワークに共重合され得る。あるいは、中間分子(例えば、リンカー)はツール分子を固定化するために使用され得る構成単位に付着され得る。ヒドロゲル粒子の構成単位はモノマーであってもよい。モノマーは、アクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルアルコール、メチルアクリルアミドまたはアクリル酸であってもよい。このストラテジーの例は、Acrydite(商標)により改変されたオリゴヌクレオチドをポリアクリルアミドヒドロゲルに共重合することである。この例では、オリゴヌクレオチドは捕捉用プローブの例である。このストラテジーの別の例は、「機能化されたアクリレート/アクリルアミド」をポリアクリルアミドヒドロゲルに共重合することである。機能化されたアクリレート/アクリルアミドは、ツール分子が、アミン-NHSエステル反応、クリックケミストリーなどのようなコンジュゲーション化学物質を介して付着され得る、コンジュゲーションハンドルを含有することができる。この例では、コンジュゲーションハンドルは中間分子として役立つことができる。機能化されたアクリレート/アクリルアミドの例は、3-アジドプロピルメタクリレート(AzPMA)であってもよく、アジド基は、捕捉剤がクリックケミストリーを介して付着され得るコンジュゲートハンドルである。機能化されたアクリレート/アクリルアミドの別の例はN-(3-アミノプロピル)-メタクリルアミドであり、第一級アミン基(3-アミノプロピル側鎖における)は、捕捉剤がNHSエステルを介して付着され得るコンジュゲーションハンドルである。
【0174】
[00216]ヒドロゲル粒子は構成単位の代わりにフレームワークを改変することによって機能化され得る。ヒドロゲル粒子を形成した後、ヒドロゲル粒子のフレームワークは、捕捉剤が付着され得るように改変され得る。例えば、アガロースヒドロゲル粒子の多価の特徴はその反応性の主要因であり得るので、ヒドロキシル官能基が部分的または完全に誘導体化され得る。このように、いくつかの新たな化学的機能が、アミン、カルボキシル、スルホネート、シアノおよびジクロロトリアジニルなどのアガロースゲルのポリマー鎖に沿ってグラフトされ得る。例えば、グリオキシルアガロースは、グリオキシル基を生成するために過ヨウ素酸ナトリウムにより後で酸化され得るジオールを導入するためにグリシドールによるヒドロゲルフレームワークの第一級ヒドロキシル基のエーテル化によって調製され得る。アクリル酸を含有するヒドロゲルにおけるカルボキシル基の改変はまた、例えば、EDC化学を使用して容易に実施され得る。
【0175】
[00217]小分子、ペプチド、オリゴヌクレオチドおよびタンパク質をヒドロゲルフレームワークとカップリングするための標準的な技術のほとんどが、本明細書で適用可能であり得る。一般的に使用される誘導体化の例には、カルボキシルまたはアミン基が含まれるが、他の官能基も使用されてもよい。適切なモノマーを使用することによって、重合の間、エポキシリンカーが導入されてもよいが、アルデヒドまたはチオール基が、水性条件における重合後手順の後、導入されてもよい。クリックケミストリーは機能化のために活用され得る。クリックケミストリー反応およびクリックケミストリー反応のための適切な反応基には、限定されないが、末端アルキン、アジド、歪アルキン(strained alkyne)、ジエン、ジエノフィル(dieneophiles)、アルコキシアミン、カルボニル、ホスフィン、ヒドラジド、チオールおよびアルケンが含まれる。例えば、一部の実施形態では、アジドおよびアルキンがクリックケミストリー反応に使用される。
【0176】
[00218]重合可能またはゲル化可能なポリマーまたはモノマーの官能基が、所与の標的の特定の捕捉を可能にするために使用され得る。ある特定の場合、所望の官能基が、プレポリマー混合物に直接加えられ得、共重合することが可能になり得る。このようなアプローチの実現可能性は、選択された生体分子の安定性または重合条件に存在するある特定の化学基の交差反応性に依存し得る。しかしながら、カルボキシルまたはアミン官能基を有する少量のコモノマーが、合成後の段階においてヒドロゲルのさらなる官能化を可能にするために重合ステップの間に使用されてもよい。このアプローチは、重合反応条件に耐えることができない分子のコンジュゲーションのために行われ得る。
【0177】
単一細胞反応器:固体支持体への付着化学-ヒドロゲル:拡散抑制剤
[00219]一部の場合、捕捉剤は、ヒドロゲル内に捕捉剤を封入するために拡散抑制剤に固定化され得る。
【0178】
[00220]拡散抑制剤は、ヒドロゲル内での拡散またはヒドロゲル外への拡散が抑制される剤(例えば、化学組成物)であってもよい。拡散抑制剤はヒドロゲル粒子の孔径より大きい流体力学半径を有することができる。拡散抑制剤は粒子またはポリマーであってもよい。粒子は磁気ビーズであってもよい。ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸またはPEGであってもよい。
【0179】
[00221]拡散抑制剤は拡散抑制ポリマーであってもよい。拡散抑制剤は、コンジュゲートされた捕捉剤がポリマーフレームワークと絡み合うのに十分に長いように、捕捉剤に直接的にコンジュゲートされる長いポリマー鎖であってもよい。例えば、捕捉剤は、標的分子と共に捕捉剤の拡散がフレームワーク内で抑制されるように、複数の長いPEG鎖とコンジュゲートされ得る。一部の実施形態では、長いポリマー鎖はポリアクリルアミド鎖であってもよい。一部の他の場合、拡散抑制剤は大きな粒子(例えば、ミクロンサイズのストレプトアビジンでコーティングされたビーズ)であってもよい。捕捉剤が大きな粒子と会合する場合、捕捉剤がヒドロゲルのフレームワーク内に封入されるように、大きな粒子はヒドロゲルの孔径より大きくてもよい。
【0180】
[00222]拡散抑制ポリマーは、PEG分子またはポリアクリルアミド分子であってもよい。拡散抑制ポリマーは、ヒドロゲルの機構の完全性を支持するフレームワークの形成に関与することができるか、または関与しなくてもよい。
【0181】
[00223]拡散抑制剤は、1つまたは複数の高分子量ポリマー(例えば、3350、8000および20,000の分子量を有するポリエチレングリコール)を含むことができ、それにより、ヒドロゲルの孔径より大きい流体力学半径を得ることができるか、またはそうでなければ、例えば、ヒドロゲルのポリマーフレームワークと絡み合うことによってヒドロゲル内に封入され得る。ポリマー(または鎖)の全分子量は5kDa~1000kDaであってもよい。一部の場合、ポリマーの全分子量は、5kDa~10kDa、10kDa~15kDa、15kDa~20kDa、20kDa~25kDa、25kDa~30kDa、30kDa~35kDa、35kDa~40kDa、40kDa~45kDa、または45kDa~50kDaであってもよい。一部の場合、ポリマーの全分子量は、50kDa~100kDa、100kDa~150kDa、150kDa~200kDa、200kDa~250kDa、250kDa~300kDa、300kDa~350kDa、350kDa~400kDa、400kDa~450kDa、または450kDa~500kDaであってもよい。一部の場合、ポリマーの全分子量は、500kDa~600kDa、600kDa~700kDa、700kDa~800kDa、800kDa~900kDa、900kDa~1000kDa、1000kDa~1500kDa、1500kDa~2000kDa、2000kDa~3000kDa、または3000kDa~5000kDaであってもよい。ポリマーは線形ポリアクリルアミドポリマーであってもよい。一部の場合、ポリマーの全分子量は、少なくとも約2kDa、3kDa、4kDa、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、15kDa、20kDaであってもよいし、またはそれより大きくてもよい。線形ポリアクリルアミドポリマーは、ヒドロゲルのフレームワークを形成するために使用されなくてもよい。例えば、線形ポリアクリルアミドポリマーはアガロースゲルのゲル化温度より高い水性形態でアガロースと混合されてもよく、温度をゲル化温度未満に減少させると、アガロースはゲル化を経て、フレームワーク内に線形ポリアクリルアミドポリマーを捕捉することができるポリマーフレームワークを形成することができる。一部の実施形態では、アクリルアミドモノマーは、重合の間、水性形態でアガロースと混合されてもよい。捕捉剤を架橋されたポリアクリルアミドヒドロゲルに付着させるために使用される本明細書に記載される化学物質もまた、ツール分子を線形ポリアクリルアミドポリマーに付着させるために使用されてもよい。
【0182】
[00224]拡散抑制剤は大きな粒子であってもよい。大きな粒子はヒドロゲルの孔径より大きいサイズを有することができる。大きな粒子を選択し、それに応じてヒドロゲルの孔径を調整することができる。大きな粒子のサイズ(直径によって表される)は0.5μm~5μmであってもよい。一部の場合、大きな粒子のサイズは、0.5μm~1μm、1μm~1.5μm、1.5μm~2μm、2μm~2.5μm、2.5μm~3μm、3μm~3.5μm、3.5μm~4μm、4μm~4.5μm、または4.5μm~5μmであってもよい。一部の他の場合、大きな粒子のサイズは、5μm~10μm、10μm~20μm、20μm~30μm、30μm~40μm、または40μm~50μmであってもよい。一部の場合、大きな粒子のサイズは、少なくとも約1μm、5μm、10μm、20μmであってもよいし、またはそれより大きくてもよい。
【0183】
単一細胞反応器:目的の分子
[00225]一部の実施形態では、単一細胞反応器は目的の分子を含む。一部の実施形態では、目的の分子は目的の核酸である。一部の実施形態では、目的の分子は固体支持体に付着される。一部の実施形態では、目的の核酸は固体支持体に付着される。一部の実施形態では、単一細胞反応器は第1の核酸および第2の核酸を含むことができる。一部の実施形態では、単一細胞反応器は、第1の核酸および第2の核酸が付着される固体支持体を含むことができる。付着は安定な付着であってもよい。付着は可逆的付着であってもよい。
【0184】
[00226]第1および/または第2の核酸は免疫受容体または免疫受容体鎖をコードするmRNAであってもよい。第1および/または第2の核酸は、免疫受容体または免疫受容体鎖をコードするmRNAの逆転写産物(すなわち、cDNA産物)であってもよい。逆転写産物は鋳型スイッチ逆転写産物であってもよい。第1および/または第2の核酸はアダプター配列をさらに含むことができる。単一細胞反応器は第1の核酸および第2の核酸のコピーをさらに含むことができる。一部の場合、第1および第2の核酸分子のコピーは固体支持体に付着される。
【0185】
[00227]様々な実施形態では、単一細胞反応器は融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは捕捉剤または固体支持体に結合している。一部の実施形態では、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)またはそれらの組合せである。融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、改変されたDNA、例えば、メチル化されたDNAであってもよい。一部の実施形態では、単一細胞反応器は融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドの複数のコピーをさらに含むことができる。
【0186】
[00228]一部の実施形態では、目的の核酸は、TCRα鎖、TCRβ鎖、TCRγ鎖、TCRδ鎖、重鎖または軽鎖をコードする核酸分子である。一部の実施形態では、目的の核酸は融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドまたはそのコピーである。
【0187】
[00229]一部の実施形態では、核酸鋳型のコピーは伸長プライマー(または伸長プライマー産物)である。核酸鋳型のコピーは、核酸鋳型の同じ配列または核酸鋳型の逆相補配列を有する合成産物を含むことができる。一部の実施形態では、核酸鋳型のコピーは伸長されたフォワードまたはリバースプライマーである。一部の実施形態では、核酸鋳型のコピーは伸長された逆転写(RT)プライマーである。一部の実施形態では、核酸鋳型のコピーは伸長された増幅プライマーである。本明細書で使用される場合、「伸長されたプライマー」または「プライマー伸長産物」とは、限定されないが、核酸増幅、第2の鎖合成および逆転写を含む、鋳型依存性核酸合成の間にプライマー伸長を受けているプライマーを指す。核酸鋳型またはそのコピーを固定化または封入するために、プライマーは、核酸鋳型とハイブリダイズできないか、または相補的ではないアダプター配列を有することができる。アダプター配列は捕捉剤に連結され得、捕捉剤はフレームワーク内で拡散抑制剤にさらに連結される。一部の実施形態では、アダプター配列は捕捉剤の配列とハイブリダイズする。一部の実施形態では、プライマーのアダプター配列は、鋳型とハイブリダイズできるか、または相補的である部分からの連続的に核酸配列であり得る。アダプター配列自体は、鋳型とハイブリダイズできなくてもよいか、または相補的でなくてもよい。一部の実施形態では、プライマーのアダプター配列は、化学リンカーによって鋳型とハイブリダイズできるか、または相補的である部分に連結され得る。ヘキサエチレングリコールなどの種々の化学リンカーが使用されてもよい。
【0188】
単一細胞反応器:水相中の反応物
[00230]単一細胞反応器の水相は、基質として核酸を使用する酵素を含むことができる。これらの酵素の例には、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、制限酵素、エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、USERミックス(New England Biolabs)における酵素、リガーゼが含まれる。
【0189】
[00231]単一細胞反応器の水相はプライマーを含むことができる。したがって、単一細胞反応器はプライマーおよび核酸鋳型(例えば、免疫受容体の鎖をコードする核酸配列)の両方を含むことができ、プライマーは水相に存在することができ、核酸鋳型が固体支持体に付着され得る。プライマーは、限定されないが、逆転写(RT)プライマーおよび増幅プライマーを含む、鋳型依存性核酸合成を実施するために使用される任意のプライマーであってもよい。一部の実施形態では、第1のプライマーおよび/または第2のプライマーはベッセル内の核酸鋳型により区分されている。一部の実施形態では、フォワードプライマーおよび/またはリバースプライマーはベッセル内の核酸鋳型により区分されている。
【0190】
[00232]単一細胞反応器の水相は、共通配列(アダプター配列とも呼ばれる)を逆転写産物の3’末端に付着するのに有用である鋳型スイッチングオリゴ(TSO)を含むことができる。
【0191】
単一細胞反応器:試薬の連続添加
[00233]一部の実施形態では、異なる試薬が、同時ではなく、規定された順序で同じ細胞に由来する標的分子に接触するように作製され得る。同様に、一部の実施形態では、いくつかの試薬または反応副産物は、次の反応が起こる前に除去され得る。例えば、溶解緩衝剤が細胞を溶解するために添加されてもよく(図2、パネル(b))、逆転写酵素および熱安定性DNAポリメラーゼが、mRNAを逆転写し(RT)、PCR増幅させるために添加されてもよい(図2、パネル(c))。この状況では、溶解緩衝剤はRTおよび/またはPCRを阻害する場合があり、RT-PCRステップの前に除去されることを必要とし得る。本開示の一部の態様はこれらの目標を達成するための方法を提供する。
【0192】
[00234]本開示では、新しい試薬の添加ならびに/または古い試薬、副産物および不要物の除去は、まとめて「試薬交換」と呼ばれる。試薬交換が必要とされる状況では、相互汚染を生じる可能性のある細胞間配列接触(例えば、第2の細胞由来の別の配列と接触する第1の細胞由来の配列)は、試薬交換の間、最小化される必要があり得る。固体支持体の使用は細胞間配列接触を最小化するのに役立ち得る。例えば、ウェルまたはマイクロウェルは単一細胞反応器として使用され得、この状況において、免疫受容体をコードするmRNA、cDNAまたは増幅されたDAN分子は、配列特異的または非配列特異的相互作用によってウェルまたはマイクロウェルの表面に付着され得る。例えば、捕捉剤(例えば、「親和性捕捉オリゴ(ACO)」)として役立つオリゴヌクレオチドは、本明細書に提供される種々の化学物質によって表面上で改変され得る。同時に、RTおよびPCRプライマーの一部または全てには、配列が捕捉オリゴに相補的であるオリゴヌクレオチドが、必要に応じてフレキシブルなリンカー(例えば、PEGのためのPEGなどのエチレングリコールスペーサー)を介して付加され得る。本明細書に記載される一部の例では、付加されたオリゴヌクレオチドは、「親和性保持配列(ARS)」と称される。ACOまたはARSの長さは、約5~約10、約10~約15、約15~約20、約20~約30、または約30~約50ヌクレオチドであってもよい。ACOまたはARSの長さは、少なくとも約5、10、15、20、25、30であってもよいし、またはそれより長くてもよい。捕捉ACO:ARS相互作用は、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用などの他の共有結合または非共有結合相互作用によって置き換えられ得る。あるいは、RTまたはPCRプライマーの一部または全ては、例えば、プライマーにおける反応基と表面との間に形成される化学結合を介して、直接的に表面に付着され得る。
【0193】
[00235]例えば、油中水液滴の水相は、誘因により、ヒドロゲル粒子(すなわち、硬化粒子)を形成することができるモノマーまたはポリマーを含有することができる。ヒドロゲル内でのまたはヒドロゲル外へのACOの拡散が抑制され得るように、ACOはヒドロゲル粒子に結合することができるか、またはヒドロゲル粒子内に封入され得る。ACOは拡散抑制剤に連結され得る。例えば、ACOは、ヒドロゲル粒子のフレームワークとして役立つポリマーに共有結合的または非共有結合的に連結され得る。ACOはまた、ヒドロゲルフレームワーク内に封入される粒子またはポリマーに付着され得る。このように、他の試薬、副産物および不要物がヒドロゲル粒子内でまたはヒドロゲル粒子外へ拡散され得ながら、細胞間配列接触を最小化するためにRTおよびPCRプライマーには、(必要に応じてフレキシブルなリンカーを介して)ARSが付加され得る。あるいは、RTまたはPCRプライマーの一部または全ては、ポリマーフレームワークまたは拡散抑制剤に直接的に付着され得る。ヒドロゲルフレームワークが十分に高密度である場合、mRNA、mRNA:cDNAハイブリッドおよびPCR産物などの大きな分子は、ヒドロゲル粒子外へ拡散するには大きすぎる可能性があり(例えば、1kbのdsDNAは4%アガロースゲル内で自由に拡散することができない)、これらの分子は、ポリマーフレームワークまたは拡散抑制剤と特定の反応をせずにポリマーフレームワーク内に封入され得る。ある意味では、これらの状況では、これらの大きな分子はそれ自体で拡散が抑制される。核酸鋳型またはそのコピーおよび生体粒子を封入するための方法は、米国特許出願第62/609,756号および同第62/674,214号に記載されており、それらの各々は、その全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0194】
[00236]拡散抑制剤は、自由拡散を阻止し、および/または標的分子が剤に付着されている場合、標的分子が自由拡散するのを抑制するように機能することができる剤であり得る。標的分子は、その分子が、例えば、(i)固体支持体を有する単一細胞反応器の表面に直接的もしくは間接的に付着される場合、または(ii)ヒドロゲル内のポリマーフレームワークもしくは拡散抑制剤に直接的もしくは間接的に付着される場合、または(iii)ヒドロゲル内に封入される場合、単一細胞反応器内で拡散が抑制され得る。
【0195】
[00237]一部の場合、試薬、副産物および不要物は、拡散が抑制されなくてもよく、ヒドロゲル粒子内へおよびヒドロゲル粒子外へ拡散することができる。一部の場合、拡散効率を増加させるために、ヒドロゲル粒子はゾル相に変化されてもよい。
【0196】
[00238]一部の他の場合、ヒドロゲル粒子における反応は、温度を、(例えば、PCRの間)熱可逆性ゲルの融点を上回って上昇させることを必要とし得る。ヒドロゲル粒子は再乳化され得、その再乳化は、ヒドロゲル粒子およびキャリアオイルを単に混合し、(例えば、ボルテックスおよびフリッキングすることによって)混合物を撹拌することによって、またはマイクロ流体チップを使用することによって行われ得る。新たに形成された「油中ゲル」液滴もまた、単一細胞反応器として使用され得る。一部の実施形態では、固体支持体はその機械的完全性を一時的に喪失し得るが(例えば、アガロース粒子などの熱可逆性ヒドロゲル粒子は、プライマーが標的に結合するために必要とされ得る高温で融解され得る)、または標的分子(例えば、免疫受容体をコードするポリヌクレオチド)が、固体支持体から一時的に解離し得るが(例えば、DNAハイブリダイゼーションが固体支持体への標的分子の付着を媒介する場合)、温度が低下すると、固体支持体は再び形成することができ(例えば、アガロースはゲル化することができ)、標的分子は固体支持体に再び付着することができる。一部の実施形態では、区画内の体積の50%超、60%超、70%超、80%超または90%超は、熱可逆性粒子によって占められる。このような場合、融解粒子が区画内の他の水性含有物と混合された後、ゲル化可能なポリマーの希釈は、約2倍未満、1.7倍未満、1.5倍未満、1.3倍未満、1.2倍未満またはそれ以下に制限され得る。したがって、希釈されたゲル化可能なポリマーは依然として適切な実験温度(例えば、室温または4℃)でゲルを形成することができる。
【0197】
[00239]一部の実施形態では、(1)エマルジョン中で反応を実施すること、(2)ゲルを形成すること(例えば、冷却することによって)、(3)解乳化、(4)拡散に基づく試薬交換、および(5)再乳化のサイクルは、複数回繰り返され得る。一部の場合、ヒドロゲル粒子を洗浄することが、解乳化後に実施され得る。
【0198】
[00240]手順の例として、ヒドロゲル粒子(冷却時にアガロースを含有する油中水液滴によって形成される)内の同じ細胞から免疫受容体をコードするDNAまたはRNAを捕捉することができ、「油中ゲル」エマルジョンを解乳化することができ、緩衝剤中でヒドロゲル粒子を洗浄することによって拡散に基づく試薬交換を実施することができる。試薬交換は、免疫受容体をコードする核酸を捕捉した後、逆転写の後、予備増幅ステップの後、または試薬交換を実施することが必要とされ得る場合の他のステップなどの、本明細書に記載される方法の間の任意のステップで実施され得る。例えば、免疫受容体をコードするRNAを捕捉することができ、逆転写および/または第2の鎖合成(アダプター配列を付加するため)を実施することができ、次いで増幅プライマーおよび試薬を拡散させるために試薬交換を実施することができる。別の例として、免疫受容体をコードするRNAを捕捉することができ、逆転写および/または第2の鎖合成(アダプター配列を付加するため)を実施することができ、予備増幅ステップを実施することができ、次いでさらなる増幅プライマーおよび試薬を拡散させるために試薬交換を実施することができる。一部の場合、ヒドロゲル粒子はさらなる反応を実施するために再乳化され得る。再乳化後、再乳化されたヒドロゲル粒子の各々は、油によりカプセル化され得るか、または取り囲まれ得る。一部の場合、再乳化されたヒドロゲル粒子は、油によってカプセル化されるか、または取り囲まれる場合、融解され得る。例えば、再乳化されたヒドロゲル粒子は、ヒドロゲル粒子のゲル化温度より高い温度で実施される反応の間、融解され得る。
免疫受容体をコードするポリヌクレオチドにより改変された固体支持体
[00241]本開示は、免疫受容体をコードするポリヌクレオチドにより改変された複数の固体支持体を提供する。一部の実施形態では、固体支持体(例えば、ビーズまたはマイクロウェルの壁)は1つの細胞からの標的ポリヌクレオチド(「単一細胞充実性」と呼ばれる特徴)を含有する。標的ポリヌクレオチドは免疫受容体をコードするポリヌクレオチドであってもよい。免疫受容体はTCRまたはBCRであってもよい。
【0199】
[00242]このような複数の固体支持体を提供することは、免疫受容体発現細胞またはそれらの核(またはソース免疫受容体発現生体粒子、もしくは生体粒子と称される)を複数の区画に分配することを含むことができる。
【0200】
[00243]単一の生体粒子に由来する第1および第2の免疫受容体をコードするポリヌクレオチドにより各々改変された複数の固体支持体は、(1)複数の生体粒子を複数の区画に分配することであって、各区画は、(a)1つもしくは複数の予め形成された固体支持体も含有するか、または(b)固体支持体として役立ち得る硬化粒子に変化され得る、分配すること、(2)各区画において、生体粒子を溶解すること、またはそうでなければ免疫受容体鎖をコードする標的DNAもしくはmRNA分子を放出させること、(3)各区画において、標的DNAまたはmRNA分子を固体支持体に付着させることによって提供され得る。
【0201】
[00244]一部の実施形態では、捕捉剤はプライマーであってもよい。プライマーは、鋳型として免疫受容体をコードするポリヌクレオチドを使用して伸長され得る。したがって、固体支持体に付着された第1および第2の免疫受容体をコードするポリヌクレオチドはプライマー伸長産物であり得る。プライマーは、免疫受容体をコードするポリヌクレオチドのC領域(定常ドメインをコードするポリヌクレオチドにおける領域)、J領域またはV領域を認識することができる。プライマーは、フォワードプライマー(免疫受容体のセンス配列の一部を有する)またはリバースプライマー(免疫受容体のアンチセンス配列の一部を有する)であってもよい。捕捉剤は、予め形成された固体支持体または硬化粒子に付着され得る。細胞は、溶解緩衝剤を区画に添加することによって、または温度を上昇させることによって区画内で溶解され得る。溶解は、捕捉剤に結合することができる、免疫受容体をコードするポリヌクレオチドの放出を引き起こすことができる。区画はまた、DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素を含有することができる。この場合、免疫受容体をコードするポリヌクレオチドに結合しているプライマーは、鋳型として免疫受容体をコードするポリヌクレオチドを使用して伸長され得、プライマー伸長産物を形成する。区画はまた、鋳型スイッチングオリゴ(TSO)も含有することができる。一部の実施形態では、捕捉剤はTSOを含むことができる。TSOの存在下では、逆転写産物は、TSOに相補的な配列を用いて、その3’末端で伸長され得る。各区画の含有物は本明細書に記載される2つのプライマーを含むことができ、各々は二分免疫受容体鎖をコードするポリヌクレオチドのうちの1つに結合するように設計されている。例えば、各区画の含有物は2つのプライマーを含むことができ、一方はTCRアルファ鎖をコードするポリヌクレオチドに結合するように設計され、他方はTCRベータ鎖をコードするポリヌクレオチドに結合するように設計されている。
【0202】
[00245]プライマー伸長産物は1つまたは両方の末端に共通配列を有することができる。プライマーは免疫受容体をコードする配列のC領域に結合するように設計され得る。C領域の配列は定常であるので、1つのプライマーのみが免疫受容体鎖(例えば、IgG、IgA、IgM、IgK、IgL、TCRアルファ、TCRベータ)の1つの種類に必要とされ得る。例えば、1つのプライマーが、1つの実験において使用される全ての細胞からTCRアルファ鎖をコードするポリヌクレオチドを捕捉するために使用され得る。したがって、プライマーの配列は共通配列とみなされ得る。C領域はセンス鎖における再配列V(D)J領域の下流にあるので、この共通配列は下流共通配列と呼ばれる。mRNAが標的ポリヌクレオチドである場合、C領域ターゲティングプライマーが使用され得る。TSOおよび鋳型スイッチング可能な逆転写酵素が区画内に存在する場合、RT産物の3’末端は、[TSO}を用いて伸長され得る。TSO配列は全ての区画、したがって全ての細胞内で定常であり得るので、TSO配列はまた、共通配列でもある。それはセンス鎖におけるV(D)J領域の上流にあるので、上流共通配列と呼ばれる。TSO配列は任意に設計されてもよく、標的配列のいずれかの部分に結合する必要がないので、TSO配列はまた、アダプター配列とも呼ばれる。この例では、プライマー伸長産物はV(D)J領域の上流および下流の両方に共通配列を有し、これらの共通配列はさらなる増幅および融合反応のために使用され得る。
【0203】
[00246]DNAが鋳型として使用される場合、プライマーのパネルはJ領域またはV領域の各々について設計され得る。J領域およびV領域は定常ではないので、さらなるアダプター配列が、パネル内のプライマーの各々の5’末端に付加されてもよい。アダプター配列は、下流共通配列(例えば、プライマーがJ領域に結合するように設計される場合)または上流共通配列(例えば、プライマーがV領域に結合するように設計される場合)であってもよい。
【0204】
[00247]生体粒子(例えば、細胞、核、エキソソームなど)を分配するための方法には、例えば、マイクロ流体ベースの方法および非マイクロ流体ベースの方法(例えば、ボルテックス)が含まれる。本開示は、一部の区画内で、1つのみの生体粒子が1つの区画に存在するようにソース生体粒子を区画に分配するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、区画の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%は、生体粒子を含有しないか、または1つのみの生体粒子を含有する。一部の実施形態では、区画の少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%は、プライマー送達粒子を含有しないか、または1つのみのプライマー送達粒子を含有する。
【0205】
[00248]利用される仕切りまたは区画の数は適用に応じて変化し得る。例えば、仕切りまたは区画の数は、約5個、10個、50個、100個、250個、500個、750個、1000個、1500個、2000個、2500個、5000個、7500個もしくは10000個、20000個、30000個、40000個、50000個、60000個、70000個、80000個、90000個、100000個、200000個、300000個、400000個、500000個、600000個、700000個、800000個、900000個、1000000個、2000000個、3000000個、4000000個、5000000個、10000000個、20000000個、またはそれより多くであってもよい。仕切りまたは区画の数は、少なくとも約1個、5個、10個、50個、100個、250個、500個、750個、1000個、1500個、2000個、2500個、5000個、7500個もしくは10000個、20000個、30000個、40000個、50000個、60000個、70000個、80000個、90000個、100000個、200000個、300000個、400000個、500000個、600000個、700000個、800000個、900000個、1000000個、2000000個、3000000個、4000000個、5000000個、10000000個、20000000個、またはそれより多くであってもよい。仕切りまたは区画の数は、5個未満、10個未満、50個未満、100個未満、250個未満、500個未満、750個未満、1000個未満、1500個未満、2000個未満、2500個未満、5000個未満、7500個未満もしくは10000個未満、20000個未満、30000個未満、40000個未満、50000個未満、60000個未満、70000個未満、80000個未満、90000個未満、100000個未満、200000個未満、300000個未満、400000個未満、500000個未満、600000個未満、700000個未満、800000個未満、900000個未満、1000000個未満、2000000個未満、3000000個未満、4000000個未満、5000000個未満、10000000個未満、20000000個未満、またはそれより多くの数未満であってもよい。仕切りまたは区画の数は、約5~10000000個、5~5000000個、5~1000000個、10~10000個、10~5000個、10~1000個、1000~6000個、1000~5000個、1000~4000個、1000~3000個または1000~2000個であってもよい。
【0206】
[00249]区画に分配される生体粒子の数は、約1個、2個、3個、4個、5個、10個、50個、100個、250個、500個、750個、1000個、1500個、2000個、2500個、5000個、7500個もしくは10000個、20000個、30000個、40000個、50000個、60000個、70000個、80000個、90000個、100000個、200000個、300000個、400000個、500000個、600000個、700000個、800000個、900000個、1000000個、2000000個、3000000個、4000000個、5000000個、10000000個、20000000個、またはそれより多くであってもよい。区画に分配される生体粒子の数は、少なくとも約1個、5個、10個、50個、100個、250個、500個、750個、1000個、1500個、2000個、2500個、5000個、7500個もしくは10000個、20000個、30000個、40000個、50000個、60000個、70000個、80000個、90000個、100000個、200000個、300000個、400000個、500000個、600000個、700000個、800000個、900000個、1000000個、2000000個、3000000個、4000000個、5000000個、10000000個、20000000個、またはそれより多くであってもよい。区画に分配される生体粒子の数は、2個未満、5個未満、10個未満、50個未満、100個未満、250個未満、500個未満、750個未満、1000個未満、1500個未満、2000個未満、2500個未満、5000個未満、7500個未満もしくは10000個未満、20000個未満、30000個未満、40000個未満、50000個未満、60000個未満、70000個未満、80000個未満、90000個未満、100000個未満、200000個未満、300000個未満、400000個未満、500000個未満、600000個未満、700000個未満、800000個未満、900000個未満、1000000個未満、2000000個未満、3000000個未満、4000000個未満、5000000個未満、10000000個未満、20000000個未満、またはそれより多くの数未満であってもよい。区画に分配される生体粒子の数は、約5~10000000個、5~5000000個、5~1000000個、10~10000個、10~5000個、10~1000個、1000~6000個、1000~5000個、1000~4000個、1000~3000個または1000~2000個であってもよい。
【0207】
[00250]一部の実施形態では、区画は、選別によって補助される分離を備えた標準的なマイクロウェルプレートにおけるウェルである。一部の実施形態では、ソーターは蛍光活性化セルソーター(FACS)である。さらに、Fluidigm C1と同様に、分配は、分離されたマイクロ流体チャンバにおける自動ライブラリー生成と合わせられてもよい。一部の実施形態では、仕切りは1ナノリットル未満のウェルであり、粒子は半透膜によって封止される。
【0208】
[00251]単一の生体粒子を個々の区画に分配した後、生体粒子は、その構成要素が放出されるように操作され得る。例えば、単一の細胞または核は、さらなる分析のためにそのDNA、RNA、タンパク質および/またはペプチドを区画に放出させるために溶解され得る。一部の実施形態では、DNAまたはRNAは免疫受容体をコードするポリヌクレオチドであってもよい。
【0209】
[00252]ある特定の態様によれば、細胞などの生体粒子は、仕切り内に細胞の含有物を放出させるために溶解剤(例えば、細胞溶解試薬)と共に分配され得る。そのような場合、溶解剤は、例えば、チャネルジャンクションの上流のさらなるチャネル(複数も含む)を介して分配ジャンクション/液滴生成ゾーンへの細胞の導入と同時またはその直前に細胞懸濁液と接触され得る。溶解剤の例には、リゾチーム、アクロモペプチダーゼ、リゾスタフィン、ラビアーゼ(labiase)、キタラーゼ、リティカーゼ(lyticase)、およびSigma-Aldrich,Inc.(St Louis、Mo.)から入手可能である様々な他の溶解酵素、ならびに他の市販の溶解酵素などの、異なる細胞型、例えば、グラム陽性または陰性細菌、植物、酵母、哺乳動物などの溶解のために使用される溶解酵素などの生体活性試薬が含まれる。他の溶解剤は、さらにまたは代替として、仕切りへの細胞の含有物の放出を引き起こすために細胞と共分配されてもよい。例えば、一部の場合、界面活性剤ベースの溶解溶液が細胞を溶解するために使用され得るが、それらは、界面活性剤が安定なエマルジョンを妨げ得るエマルジョンベースのシステムにとってあまり望ましくない場合がある。一部の場合、溶解溶液には、例えば、TritonX-100およびTween20などの非イオン性界面活性剤が含まれ得る。一部の場合、溶解溶液には、例えば、サルコシルおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などのイオン性界面活性剤が含まれ得る。同様に、電気穿孔などの、他の方法を利用する溶解方法が使用されてもよく、熱的、音響的または機械的細胞破壊もまた、ある特定の場合、例えば、液滴分配に加えてであってもよいか、または液滴分配の代わりであってもよい細胞のカプセル化などの非エマルジョンベースの分配に使用されてもよく、カプセル化の任意の孔径は、細胞破壊の後、所望のサイズの核酸断片を保持するように十分小さい。
【0210】
[00253]上記の細胞と共分配された溶解剤に加えて、例えば、DNaseおよびRNase不活性化剤またはプロテイナーゼKなどの阻害剤、EDTAなどのキレート剤、ならびに核酸の後の処理に対する異なる細胞溶解成分の負の活性または影響を取り除くまたはそうでなければ低減させる際に利用される他の試薬を含む、他の試薬もまた、細胞と共分配されてもよい。さらに、カプセル化された細胞の場合、細胞は、共分配されたマイクロカプセルから細胞またはそれらの含有物を放出させるために適切な刺激に曝露され得る。例えば、一部の場合、化学的刺激が、マイクロカプセルの分解および細胞またはその含有物のより大きな仕切りへの放出を可能にするためにカプセル化された細胞と共に共分配されてもよい。
【0211】
[00254]細胞のDNAを断片化するためのエンドヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ酵素および細胞の核酸断片を増幅させるために使用されるdNTPなどの、さらなる試薬もまた、細胞と共分配されてもよい。また、さらなる試薬には、ターミナルトランスフェラーゼ活性を有する酵素を含む、逆転写酵素、プライマーおよびオリゴヌクレオチド、ならびに鋳型スイッチングのために使用され得るスイッチオリゴヌクレオチド(「スイッチオリゴ」または「鋳型スイッチオリゴ」または「TSO」とも本明細書で称される)も含まれ得る。一部の場合、鋳型スイッチングはcDNAの長さを増大させるために使用され得る。鋳型スイッチングの一例では、cDNAは、鋳型の逆転写、例えば細胞mRNAから生成されてもよく、ターミナルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素は、さらなるヌクレオチド、例えばpolyCを、cDNAの末端などにおいて鋳型によってコードされていないcDNAに付加することができる。スイッチオリゴは、さらなるヌクレオチド、例えばpolyGと相補的な配列を含むことができる。cDNAにおけるさらなるヌクレオチド(例えばpolyC)は、スイッチオリゴにおけるさらなるヌクレオチド(例えば、polyG)と相補的な配列とハイブリダイズでき、それによってスイッチオリゴは、cDNAをさらに伸長するための鋳型として逆転写酵素によって使用され得る。スイッチオリゴは、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ロックド核酸(LNA)を含む改変された核酸、またはいずれかの組合せを含むことができる。
【0212】
[00255]上記の作用物質は細胞または他の生体粒子と共分配されてもよいが、これらの作用物質を必ずしも共分配する必要はない。本明細書に記載される方法は、硬化粒子の形成および硬化粒子内への標的分子の封入を可能にするので、種々のステップが、試験管内で作用物質をプールされた硬化粒子と直接混合することによって硬化粒子の形成後に実施されてもよい。単一細胞に由来する標的分子は、異なる単一細胞由来の標的分子と混合することなく、それらの同一性を依然として維持する。例えば、溶解剤は、硬化粒子をプールした後に添加されてもよい。別の例として、逆転写のための作用物質が、硬化粒子をプールした後に添加されてもよい。封入された標的部分を有する硬化粒子はバルクでの様々な操作を可能にすることが理解されるべきである。
【0213】
[00256]様々な実施形態では、生体粒子は、重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーを含む溶液と共分配され得る。一部の実施形態では、生体粒子は重合可能またはゲル化可能なポリマーと共分配される。一部の実施形態では、生体粒子は重合可能またはゲル化可能なモノマーと共分配される。一部の実施形態では、生体粒子は重合可能またはゲル化可能なポリマーおよびモノマーの混合物と共分配される。ポリマーは同じ化学物質であってもよいか、または異なる化学物質であってもよい。モノマーは同じ化学物質であってもよいか、または異なる化学物質であってもよい。一部の実施形態では、溶液は、ゲル化プロセスを開始するのに必要な作用物質をさらに含む。一部の実施形態では、溶液は、硬化粒子(例えば、ヒドロゲル粒子)を形成する重合プロセスを開始するのに必要な作用物質をさらに含む。
【0214】
[00257]本明細書に提供される反応の後、予め形成された固体支持体および硬化粒子は、それらがさらなる操作のために水溶液中に浸漬され得るように回収され得る。
[00258]固体壁付き区画の水性含有物が硬化粒子に変換されると、硬化粒子は、固体足場を変形させること、固体足場を溶解させること、ベッセルの開口によって硬化粒子を誘導させるために遠心力を使用すること、またはそれらの組合せによって区画から除去され得る。
【0215】
[00259]一部の実施形態では、区画は液体壁付き(例えば、油中水液滴)である。この場合、硬化粒子は、区画を合体させることによって、例えば、油中水エマルジョンを解乳化することによって区画から除去され得る。解乳化は、パーフルオロオクタノールおよびクロロホルムなどの解乳化剤により達成され得る。解乳化の方法は使用されるキャリアオイルに依存し得る。フルオロカーボンオイルの場合、エマルジョンは、HFE-7500オイル(20%~100%PFO)中の20%~100%(vol/vol)の1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタノールを添加することによって解乳化され得る。鉱物油の場合、エマルジョンは、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1;vol/vol/vol;Fisher、カタログ番号BP17521)によって解乳化され得る。解乳化はまた、ハンドヘルド帯電防止ガンを使用すること、およびセルストレーナーの上で水溶液により洗浄することなどの非化学的方法によっても達成され得る。
【0216】
アダプター付加
[00260]本開示は、単一の生体粒子に由来する第1および第2の免疫受容体をコードするポリヌクレオチドにより各々改変された複数の固体支持体を得るための方法を提供する。一部の実施形態では、第1および第2のポリヌクレオチドは、上流の共通配列(例えば、TSO配列)および下流の共通配列(例えば、C領域に結合するプライマーの配列)の両方を有する。この場合、これらの固体支持体は予備増幅または融合のために直接使用され得る。
【0217】
[00261]他の場合、第1または第2のポリヌクレオチドは、再配列V(D)J配列の上流または下流のいずれかに共通配列を有さなくてもよいか、または1つのみの共通配列を有してもよい。この場合、さらなる共通配列が付加され得る。さらなる共通配列はアダプター配列であってもよい。アダプター配列はプライマー伸長によって付加され得、プライマーはその5’末端においてアダプター配列を含有する。一部の実施形態では、プライマーのパネルが使用されてもよく、全てのプライマーは同じアダプター配列を共有する。パネルの各プライマーは、ソース免疫受容体発現細胞の免疫受容体レパートリーに存在し得る異なるV領域を認識することができる。パネルの各プライマーは、ソース免疫受容体発現細胞の免疫受容体レパートリーに存在し得る異なるJ領域を認識することができる。V領域をターゲティングするプライマーのパネルを使用して上流のアダプター配列を付加するための例は実施例の段落に提供される。
【0218】
[00262]単一細胞充実性を維持しながら(すなわち、固体支持体に付着した免疫受容体をコードするポリヌクレオチドが1つの細胞に由来していることを確保しながら)、これらのプライマー伸長反応を実施するために、単一細胞反応器が使用され得る。
【0219】
[00263]機械的強度ならびに固体支持体への第1および第2のポリヌクレオチドの付着がプライマー伸長反応の温度に耐えることができる場合、固体支持体はプライマーおよび酵素を含む連続体積の水溶液中に浸漬され得る。そうでなければ、固体支持体は、大部分の区画の各区画が1つ以下の固体支持体を含有する区画に再分配され得る。この場合、区画はプライマー伸長反応のためのプライマーおよび酵素も含むことができる。
【0220】
[00264]固体支持体が粒子である場合、固体支持体の再分配は、生体粒子が固体支持体(例えば、粒子)と置き換えられることを除いて、生体粒子を分配するために使用される同じ方法により行われ得る。固体支持体がヒドロゲル粒子である場合、酵素およびプライマーはヒドロゲル粒子に拡散され得、ヒドロゲル粒子は、本明細書に記載される他の方法を使用して再乳化され得る。
【0221】
[00265]本明細書に記載される方法を使用して、単一の生体粒子に由来する第1および第2の免疫受容体をコードするポリヌクレオチドにより各々改変された複数の固体支持体を提供することができ、第1および第2の免疫受容体をコードするポリヌクレオチドの両方は上流の共通配列および下流の共通配列を有する。
【0222】
対合二分免疫受容体ポリヌクレオチドの融合
[00266]第1の核酸配列および第2の核酸配列を含む融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを産生するための組成物および方法が本明細書に提供される。第1の核酸配列は第1の免疫受容体鎖をコードすることができ、第2の核酸配列は第2の免疫受容体鎖をコードすることができる。第1の免疫受容体鎖および第2の免疫受容体鎖は機能的免疫受容体の受容体を形成することができる。第1の免疫受容体鎖および第2の免疫受容体鎖をコードする核酸配列は単一細胞由来であり得る。第1の免疫受容体鎖および第2の免疫受容体鎖は、細胞(例えば、免疫細胞)から得られた免疫受容体の同種対の組合せ(または自然に対合した組合せ)由来であり得る。第1および/または第2の核酸配列は、免疫受容体の完全長可変ドメイン(例えば、3つ全てのCDR:CDR1、CDR2およびCDR3を含む)をコードすることができる。第1および/または第2の核酸配列は、CDR1、CDR2およびCDR3からなる群から選択される1つまたは複数のCDRを含む部分的可変ドメインをコードすることができる。第1および/または第2の核酸配列は、免疫受容体の定常ドメインをさらにコードすることができる。定常ドメインは、完全長定常ドメイン、または細胞外定常ドメイン、または完全長定常ドメインの任意の部分であってもよい。一部の場合、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1200、少なくとも1500、またはそれより多くのヌクレオチド(または塩基対)長である。一部の場合、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも2500、またはそれより多くのヌクレオチド(または塩基対)長である。一部の場合、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、600~1000または1500~3000ヌクレオチド(または塩基対)長である。
【0223】
[00267]単一細胞反応器内で、ライゲーションおよびPCRベースの方法などの、種々の方法が、二分免疫受容体の2つのペプチド鎖をコードする配列を融合させるために使用され得る。本明細書で使用される場合、「融合する」とは、連結することまたは物理的に連結することを指す。二分免疫受容体の2つのペプチド鎖をコードする配列は、単一細胞(または本明細書に記載される単一ソース免疫受容体発現細胞)由来であり得る。発現されたmRNAの性質に基づいて、RT-PCRを実施することによってゲノムDNAまたはmRNAから標的核酸をコピーするか、または増幅させるかのどちらかの選択がなされ得る。鋳型としてゲノムDNAを使用すると、逆転写ステップを必要しなくてもよいが、非機能的受容体を増幅させるリスクを有することがあり、一方、鋳型としてmRNAを使用すると、より多いコピー数から利益を受けることができ、機能的な発現された受容体を捕捉することができる。二分免疫受容体の2つのペプチド鎖をコードする2つの核酸の物理的融合は、複数の機構を介して生じ得る。例えば、物理的融合は、標準的なスプライシングオーバーラップ伸長(splicing-by-overlap-extension)PCR(SOE-PCR)(融合PCR、クロスオーバーPCR、またはOE-PCRと略されるオーバーラップ伸長PCRとしても知られている)によって達成され得、それによってPCRプライマーの2つが相補配列を有し、その結果、2つのアンプリコンがプライマーとして機能し、それらは互いに融合する。この方法の1つの利点は、融合構築物が有効なscFVフォーマットに即座になるように重複配列が設計され得ることであり得る。別の例として、融合は、タグがPCRプライマーに組み込まれるという点でSOE-PCRと同様の機構によって達成され得る。この場合、融合がCre媒介性組換えにより生じ得るようにタグはloxP部位を含有することができる。物理的融合はまた、平滑末端ライゲーションおよび付着末端ライゲーションを含むライゲーションによって達成され得る。
【0224】
予備増幅
[00268]融合反応の前に、二分免疫受容体ペプチド鎖の各々をコードする標的核酸が増幅され得、これは「予備増幅」と称される。予備増幅は、調製手順および増幅手順を含む、2つの手順を含むことができる。調製手順の間、1つまたは複数の反応が、増幅前に、共通配列(例えば、アダプター配列)を有するオリゴヌクレオチドを標的核酸に付加するために実施され得る。例えば、調製手順は、アダプターを用いて新たに合成される産物を生成するためにアダプター配列を有するプライマーを使用した標的核酸の核酸合成を含むことができる。アダプターは、標的核酸とハイブリダイズできなくてもよいか、または相補的でなくてもよい。本明細書で使用される場合、「ハイブリダイズできる」とは、所与の条件下で2つの核酸鎖の間に安定な塩基対合を形成することを指す。アダプターは所定の配列を含むことができ、増幅手順のためのプライマーを結合するために使用され得る。一部の場合、調製手順後、新たに合成された産物は、各末端に1つのアダプター配列を有する2つのアダプター配列を含む。
【0225】
[00269]上記の段落は、単一の生体粒子に由来する第1および第2の免疫受容体をコードするポリヌクレオチドにより各々が改変された複数の固体支持体を提供するための一般的な方法を記載し、第1および第2の免疫受容体をコードするポリヌクレオチドの両方は上流の共通配列および下流の共有配列を有する。このような複数の支持体の提供は調製手順を実施した結果であり得る。
【0226】
[00270]一部の場合、標的核酸はDNA(例えば、ゲノムDNA)であり、調製手順は、DNAのコピーを生成するために第1のアダプター配列を有する第1のプライマーおよび第2のアダプター配列を有する第2のプライマーを使用することを含むことができる。第1のアダプター配列および第2のアダプター配列は、予め設計されてもよいか、または人工配列であってもよい。第1のプライマーおよび第2のプライマーのうちの一方は、DNAのコピーをヒドロゲル粒子のポリマーフレームワークに連結させるために使用され得る。両方のアダプター配列がさらなる増幅のためのプライマーを結合するために使用され得る。二分免疫受容体の標的核酸はイントロンを含有することができるゲノムDNAであってもよい。プライマーは、イントロンを有さない領域を合成(またはコピー)するように設計され得、例えば、イントロンは、通常、J領域とC領域との間に位置するので、プライマーはTCR鎖についての可変ドメインのみを合成(またはコピー)するように設計され得る。
【0227】
[00271]一部の場合、二分免疫受容体の標的核酸はmRNAである。そしてこのような場合、RTステップはPCRによる増幅の前に実施され得る。RTプライマーは拡散が抑制され得る。一部の場合、RTプライマーは拡散が抑制されなくてもよい。RTプライマーは捕捉剤のターゲティング部分であってもよい。例えば、単一細胞反応器がヒドロゲル粒子である場合、RTプライマーはポリマーフレームワークに直接的または間接的に連結され得る。表面または固体支持体またはフレームワーク上に捕捉剤を固定化するための本明細書に記載される種々の方法は、RTプライマーをポリマーフレームワークに連結させるために使用され得る。RTプライマーは拡散抑制剤に連結され得る。RTステップの結果として、RT産物(cDNAまたは伸長RTプライマー)は、ポリマーフレームワークに直接的または間接的に連結され得る(または拡散が抑制され得る)。RTステップの間、鋳型スイッチングオリゴ(TSO)を使用する鋳型スイッチが実施され得る。一部の場合、鋳型スイッチステップはRTステップの間に実施され、鋳型スイッチされたRT産物はポリマーフレームワークに連結されるか、または拡散が抑制される。TSOは、増幅手順の間、プライマーを結合するために使用され得るアダプター配列として機能することができる。RTプライマーは、ポリTであってもよいし、または定常ドメインの配列とハイブリダイズできるか、または相補的である配列であってもよい。一部の他の場合、鋳型スイッチは実施されなくてもよく、第2の鎖合成(SSS)ステップはRTステップ後に実施される。SSSステップの間、共通アダプター配列を有するプライマーのパネルが使用され得る。
【0228】
[00272]予備増幅において、増幅産物(またはアンプリコン)は免疫受容体ペプチド鎖の全てのCDR配列をコードすることができる。免疫受容体ペプチド鎖をコードする核酸(例えば、DNAおよびmRNA)の全てのCDR配列を含有する配列を増幅させるための様々な手段が存在する。非限定的な例が本明細書に記載される。例えば、鋳型スイッチング反応はRTの間に実施され得る。TSOを使用する鋳型スイッチングがRTの間に実施され、cDNAがTSOの同じ配列を本質的に有するフォワードプライマー、および免疫受容体ポリヌクレオチドのC領域を認識するリバースプライマーによって増幅される場合、免疫受容体鎖のCDR1、CDR2およびCDR3配列を包含するV領域およびV(D)Jジャンクションの全体が増幅され得る(例えば、図4A、矢印(1)~(2))。あるいは、鋳型スイッチングがRTの間に実施されない場合、フォワードプライマーは、免疫受容体鎖のFR1(すなわち、CDR1の上流にあるフレームワーク1)セグメント上またはその上流の配列を認識するように設計され得る。このフォワードプライマーはSSSまたはPCRに使用され得る(例えば、図5Aおよび5B、矢印(1)~(3))。
【0229】
[00273]免疫受容体のV遺伝子は非常に多様であり得る。したがって、所与の生物(例えば、ヒト)における所与の免疫細胞型(例えば、T細胞またはB細胞)における免疫受容体鎖を増幅させるために、10~100個のプライマー(「V遺伝子プライマー」と称される)のパネルが設計され得る。一部の場合、少なくとも2個、5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、またはそれより多くのプライマーのパネルは、少なくとも2個、5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、またはそれより多くの異なるV遺伝子を標的とする(例えば、増幅させる)ように設計され得る。一部の場合、所与の生物における所与の免疫細胞型における全ての可能な免疫受容体鎖が増幅される。
【0230】
[00274]ヒトにおいて、TRAV1-1、TRAV1-2、TRAV2、TRAV3、TRAV4、TRAV5、TRAV6、TRAV7、TRAV8-1、TRAV8-2、TRAV8-3、TRAV8-4、TRAV8-6、TRAV9-1、TRAV9-2、TRAV10、TRAV12-1、TRAV12-2、TRAV12-3、TRAV13-1、TRAV13-2、TRAV14、TRAV16、TRAV17、TRAV18、TRAV19、TRAV20、TRAV21、TRAV22、TRAV23、TRAV24、TRAV25、TRAV26-1、TRAV26-2、TRAV27、TRAV29、TRAV30、TRAV34、TRAV35、TRAV36、TRAV38-1、TRAV38-2、TRAV39、TRAV40、およびTRAV41を含む、TRAについての40個より多い機能的V遺伝子が存在し得る。これらのV遺伝子の中で、それらの一部は同じサブグループに分類され得、それらは、「-」の記号の後は異なる番号であるが、「TRAV」のすぐ後の同じサブグループ番号で示される。例えば、TRAV1-1およびTRAV1-2は同じサブグループ由来である。本明細書で使用される場合、「グループ」は、同じ「遺伝子型」(例えば、V、D、JまたはC型)を共有し、同じ「鎖型」のポリペプチドの合成に潜在的に関与する遺伝子のセットである。ひいては、グループは、関連する偽遺伝子およびオーファンを含む。「サブグループ」は、所与の種における同じグループに属し、ヌクレオチドレベルにおいて(V、DおよびJについての生殖細胞系列構成において)少なくとも75%の同一性を共有する遺伝子のセットを意味する。
【0231】
[00275]ヒトにおいて、TRBV2、TRBV3-1、TRBV4-1、TRBV4-2、TRBV4-3、TRBV5-1、TRBV5-4、TRBV5-5、TRBV5-6、TRBV5-8、TRBV6-1、TRBV6-2、TRBV6-3、TRBV6-4、TRBV6-5、TRBV6-6、TRBV6-8、TRBV6-9、TRBV7-2、TRBV7-3、TRBV7-4、TRBV7-6、TRBV7-7、TRBV7-8、TRBV7-9、TRBV9、TRBV10-1、TRBV10-2、TRBV10-3、TRBV11-1、TRBV11-2、TRBV11-3、TRBV12-3、TRBV12-4、TRBV12-5、TRBV13、TRBV14、TRBV15、TRBV16、TRBV18、TRBV19、TRBV20-1、TRBV24-1、TRBV25-1、TRBV27、TRBV28、TRBV29-1、およびTRBV30を含む、TRBについての40個より多い機能的V遺伝子が存在し得る。他の種、例えば、マウスについてのV遺伝子はIMGTデータベース上に見出され得る。
【0232】
[00276]一部の場合、予備増幅に使用されるV遺伝子プライマーの数は少ない(例えば、BCRまたは抗体遺伝子を増幅させる場合、約5個、6個、8個または10個のV遺伝子プライマーのみが必要とされ得る)。このような場合、これらのプライマーはマルチプレックスPCRに使用され得る。一部の場合、予備増幅に使用されるV遺伝子プライマーの数は多い(例えば、TCR遺伝子を増幅させる場合、約50個、80個、100個、またはそれより多くのV遺伝子プライマーが必要とされ得る)。このような場合、各V遺伝子プライマーの5’末端に付着させるための共有アダプター配列が設計され得、これらのプライマー(「アダプター含有V遺伝子プライマー」と称される)が、cDNAとハイブリダイズし、単一サイクルプライマー伸長を実施するために使用され得る。このステップは、例えば、図5Aに示されるように、SSSステップを指す。SSSステップ後、1つの共有プライマー対、すなわち、アダプターをターゲティングするフォワードプライマーおよびC領域をターゲティングするリバースプライマーが、可能な免疫受容体鎖を増幅させるために使用され得る。融合およびその後の操作の目的のために、異なるアダプターが各鎖について使用され得る。例えば、第1のアダプター配列がTRA鎖について使用され得、第2のアダプター配列がTRB鎖について使用され得る。一部の実施形態では、V遺伝子プライマーは、タンパク質コード配列(ATGから開始する)の最初の15~40塩基の配列を有することができる。この場合、PCR産物はV遺伝子およびVDJジャンクションのコード配列全体を含むことができる。このようなアダプター含有V遺伝子プライマーの一部の例は、図5Aおよび実施例の節に記載されるように[AdptA|CDSTRA}および{AdptB|CDSTRB}である。アダプター含有V遺伝子プライマーのプライマーは、その3’末端を保護するためにブロッカーオリゴヌクレオチドとハイブリダイズされ得る。ブロッカーオリゴヌクレオチドは2つ以上の別個のオリゴヌクレオチド鎖であってもよい。
【0233】
[00277]SSSまたはPCRにおいて10~100個のプライマーを適用する場合、配列特異性を維持することは困難であり得る。しかしながら、限定されないが、DMSOおよびベタインなどの添加剤を使用すること、LNAまたはリボヌクレオチド(この後者はRNase H依存性PCRと併せて使用され得る)などの化学改変を使用すること、Yin-Yangプローブまたはトーホールド(toehold)プローブなどの競合オリゴヌクレオチドを使用することを含む、SSSまたはPCRについてのハイブリダイゼーションの特異性を増加させるために多くの方法が使用され得る。
【0234】
[00278]調製手順を実施した後、固体支持体を各々含む複数の単一細胞反応器が生成され得、OE-PCRなどのワンステップ融合反応(実施例6を参照のこと)が実施され得る。OE-PCRの間、アウタープライマー(例えば、図9BのpTSO)が、インナープライマー(例えば、図9Bのプライマー1Rおよび2R)より高い濃度で使用され得る。指数関数的増幅段階の後、アウタープライマーは線形増幅を誘導することができ、その結果、アウタープライマーから伸長される一本鎖伸長産物の蓄積が生じる。これらの一本鎖伸長産物の3’末端は重複を有し、その配列はインナープライマーによって決定され、したがって互いにハイブリダイズできる。ハイブリダイゼーション産物は二本鎖融合産物を産生するためにさらに伸長され得る。
【0235】
[00279]一部の実施形態では、増幅手順は、融合産物を作り出すことなく、単一細胞反応器において免疫受容体をコードするポリヌクレオチドを増幅させるために実施され得る。これを行うために、単一の固体支持体を各々含む複数の単一細胞反応器が調製手順において調製され得、第1の対のプライマーが、その上流および下流の共通配列への結合を介して第1の免疫受容体コードポリヌクレオチド(例えば、TCRアルファ鎖について)を増幅し、第2の対のプライマーが、その上流および下流の共通配列への結合を介して第2の免疫受容体コードポリヌクレオチド(例えば、TCRベータ鎖について)を増幅する。
【0236】
[00280]予備増幅産物は、拡散が抑制され得る。例えば、このPCRベースの予備増幅のためのプライマーは捕捉剤であってもよい。例えば、プライマーには、[ARS}が付加され得る。[ARS}は、PEGリンカーまたはSpacer 18などの、フレキシブルなリンカーを介してプライマー配列に連結され得る。これらのプライマーの非限定的な例には、図4Aおよび4BのARS-pTSOおよび図5Bのht1F、ht2Rが含まれる。
【0237】
[00281]増幅手順の後、第1の免疫受容体をコードするポリヌクレオチド(例えば、TCRアルファ鎖をコードする)の第1の複数の増幅産物および第2の免疫受容体をコードするポリヌクレオチド(例えば、TCRベータ鎖をコードする)の第2の複数の増幅産物により各々改変された複数の固体支持体を提供することができ、第1および第2の免疫受容体をコードするポリヌクレオチドは自然な対を形成する。
【0238】
重複設計
[00282]二分免疫受容体の2つのペプチド鎖をコードする2つの核酸は、いくつかの配向、例えば、頭-頭、頭-尾、および尾-尾で融合され得る(図3)。本明細書に記載されるように、「頭」はセンス核酸鎖の「5’末端」を指し、「尾」はセンス核酸鎖の「3’末端」を指す。一部の場合、配向は頭-尾であり、融合の順序(例えば、TRAの後にTRB、またはTRBの後にTRA)が制御され得る。このような制御性を達成するために、配列依存性融合が実施され得る。これを行うために、重複配列が2つの鎖の増幅産物内で操作され得る。本明細書に記載されるように、TCRのTRAおよびTRBポリヌクレオチドの融合は、異なるストラテジーを説明するための例として使用される。このストラテジーは、BCR鎖融合、抗体鎖融合およびTCRγδ鎖融合に適用され得る。
【0239】
尾-尾設計
[00283]図4Aおよび4Bは、TCR免疫受容体のTRAおよびTRBの尾-尾(tail-to-tail)融合の例を示す。TRAセグメントの増幅に関して、TRAのC領域を認識するプライマー(すなわち、TRAC)がリバースプライマーとして使用され得る。TRACを認識するこのプライマーの配列は、[TRAC-5A}と表記され得る。[OL-2}で表記される約10ntの配列は[TRAC-5A}の5’末端に付加されて、配列[OL-2|TRAC-5A}を有する「1R」と表記されるプライマーを形成することができる。同様に、TRBセグメントの増幅に関して、TRBのC領域を認識するプライマー(すなわち、TRBC)がリバースプライマーとして使用され得る。TRBCを認識するこのプライマーの配列は、[TRBC-5A}と表記される。[OL-1}で表記される約10ntの配列は[TRBC-5A}の5’末端に付加されて、配列[OL-1|TRBC-5A}を有する、本発明者らが「2R」と呼ぶプライマーを形成することができる。この設計では、[OL-1}は[TRAC-5A}の最初の約10塩基であり、[OL-2}は[TRBC-5A}の最初の約10塩基である。したがって、TRA増幅産物のセンス鎖の最後の約20塩基は[OL-1|OL-2}の配列を有することができ、TRB増幅産物のセンス鎖の最後の約20塩基は[OL-2|OL-1}の配列を有することができる。5’-3’エキソヌクレアーゼ(例えば、Gibson Assembly)、3’-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、配列およびリガーゼ非依存性クローニングまたはSLIC)、またはUSER酵素ミックス(例えば、USERフレンドリーDNA組換え(USER friendly DNA recombination)またはUSERec)を使用して長い付着末端を作り出した後、2つの末端はライゲーションによって融合され得る。アセンブリ方法のさらなる例には、限定されないが、環状ポリメラーゼ伸長クローニング(CPEC)およびシームレスライゲーションクローニング抽出物(SLiCE)アセンブリが含まれる。あるいは、これらの2つの末端はオーバーラップPCRによって融合され得る。尾-尾配向においてTRAおよびTRBを融合するためのストラテジーの詳細な説明は実施例1にさらに提供される。
【0240】
頭-尾設計
[00284]図5A~5Cは、TCR免疫受容体のTRAおよびTRBポリヌクレオチドの頭-尾(head-to-tail)融合の例を示す。本明細書に記載されるように、アダプター含有V遺伝プライマー-は、SSSの間、アダプター配列をV遺伝子配列に付加するために使用され得る。頭-尾融合を実施するために、[AdptA}および[AdptB}で表記される2つの異なるアダプター配列は、それぞれTRAおよびTRBについてのアダプター配列として使用され得る。TRAの後にTRBの順序で頭-尾融合を作り出すために、配列[TRAC-5A}を有するTRAを増幅させるためのリバースプライマーには、[htOL-2}と呼ばれる配列が付加されて、配列[htOL-2|TRAC-5A}を有する「ht1R」で表記されるプライマーを形成することができる。同時に、[htOL-1}と呼ばれる配列には、配列[AdptB}を有するプライマーが付加されて、配列[htOL-1|AdptB}を有する「ht2F」で表記される新しいプライマーを形成することができる。このプライマー「ht2F」は、TRBを増幅させるためのフォワードプライマーであってもよい。この設計では、[htOL-1}は[TRAC-5A}の最初の約10塩基であり得、[htOL-2}は[AdptB}の最初の約10塩基であり得る。TRAおよびTRBの増幅産物は、単一細胞反応器内でのライゲーションおよびオーバーラップPCRなどの様々なストラテジーによって融合され得、単一細胞に由来する免疫受容体をコードする配列を有する増幅産物は固体支持体に付着され、各単一細胞反応器内に1つの固体支持体のみが存在する。これらの単一細胞反応器内で、増幅産物は本明細書に提供される方法(例えば、固体支持体を融解すること)を使用して自由に拡散可能に作製され得る。例えば、2つの末端は、5’-3’エキソヌクレアーゼ(例えば、Gibson Assembly)、3’-5’エキソヌクレアーゼ(例えば、配列およびリガーゼ非依存性クローニングまたはSLIC)、またはUSER酵素ミックス(例えば、USERフレンドリーDNA組換えまたはUSERec)を使用して長い付着末端を作り出した後、ライゲーションによって融合され得る。アセンブリ方法のさらなる例には、限定されないが、環状ポリメラーゼ伸長クローニング(CPEC)およびシームレスライゲーションクローニング抽出物(SLiCE)アセンブリが含まれる。頭-尾配向において、およびTRAの後にTRBの順序でTRAおよびTRBを融合するためのストラテジーの詳細な説明は実施例2にさらに提供される。
【0241】
免疫受容体発現ベクター
[00285]融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、本開示において「レシピエント細胞」と称される宿主細胞において発現されるように発現ベクターに挿入され得る。融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、線形または環状核酸鎖としてレシピエント細胞に送達され得る。融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、発現ベクターとしてレシピエント細胞に送達され得る。一部の場合、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドまたはベクターは電気穿孔によってレシピエント細胞に送達され得る。一部の場合、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドまたはベクターは、カチオン性ポリマーなどの担体によって送達され得る。
【0242】
[00286]二分免疫受容体の2つの鎖は、プラスミド、トランスポゾン(例えば、Sleeping Beauty、Piggy Bac)、およびウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、AAVベクター、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクター)などのベクターから発現され得る。ベクターのさらなる例には、シャトルベクター、ファージミド、コスミドおよび発現ベクターが含まれる。プラスミドベクターの非限定的な例には、pUC、pBR322、pET、pBluescript、およびそれらのバリアントが含まれる。さらに、ベクターは、さらなる発現制御配列(例えば、エンハンサー配列、Kozak配列、ポリアデニル化配列、転写終結配列など)、選択可能なマーカー配列(例えば、抗生物質耐性遺伝子)、複製起点などを含むことができる。一部の場合、ベクターはレシピエント細胞に導入される核酸分子であり、それによって形質転換したレシピエント細胞を産生する。ベクターは、複製起点などの、レシピエント細胞内で複製することを可能にする核酸配列を含むことができる。ベクターはまた、1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子および他の遺伝子エレメントを含むことができる。ベクターは、融合遺伝子の発現を可能にする配列に作動可能に連結した本開示による融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを含む発現ベクターであってもよい。ベクターは、レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターを含む)、複製可能、複製欠損およびそれらの脆弱な形態を含むアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、シミアンウイルス40(SV-40)ベクター、ウシ乳頭腫ベクター、エプスタイン・バーベクター、ヘルペスベクター、ワクシニアベクター、Moloneyネズミ白血病ベクター、Harveyネズミ肉腫ウイルスベクター、ネズミ乳腺腫瘍ウイルスベクター、ラウス肉腫ウイルスベクターおよび非ウイルスプラスミドなどの、ウイルスまたは非ウイルスベクターであってもよい。バキュロウイルスベクターは昆虫細胞における発現に適切であり得る。
【0243】
[00287]一部の実施形態では、ベクターは、自己複製型(m)RNA、自己複製(m)RNA、自己増幅(m)RNA、またはRNAレプリコンとも称される自己増幅RNAレプリコンである。自己増幅RNAレプリコンはそれ自体を複製することができるRNAである。一部の実施形態では、自己増幅RNAレプリコンは細胞内部でそれ自体を複製することができる。一部の実施形態では、自己増幅RNAレプリコンはRNAポリメラーゼおよび目的の分子をコードする。RNAポリメラーゼはRNA依存性RNAポリメラーゼ(RDRPまたはRdRp)であってもよい。自己増幅RNAレプリコンはまた、プロテアーゼまたはRNAキャッピング酵素をコードすることができる。一部の実施形態では、自己増幅RNAレプリコンベクターは、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、エバーグレーズウイルス(Everglades virus)、ムカンボウイルス(Mucambo virus)、ピクスナウイルス(Pixuna virus)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、シンドビスウイルス(Sindbis virus)、南アフリカアルボウイルス(South African Arbovirus)No.86、セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)、ミデルブルグウイルス(Middelburg virus)、チクングニアウイルス(Chikungunya virus)、オニョン・ニョンウイルス(Onyong-nyong virus)、ロスリバーウイルス(Ross River virus)、バーマ森林ウイルス(Barmah Forest Virus)、ゲタウイルス(Getah Virus)、サギヤマウイルス(Sagiyama virus)、ベバルウイルス(Bebaru virus)、マヤロウイルス(Mayaro virus)、ウナウイルス(Una virus)、アウラウイルス(Aura virus)、ワタロアウイルス(Whataroa virus)、ババンキウイルス(Babanki virus)、キジラガチウイルス(Kyzylagach virus)、高地Jウイルス(Highlands J Virus)、フォート・モーガンウイルス(Fort Morgan virus)、ヌドゥムウイルス(Ndumu virus)、バギークリークウイルス(Buggy Creek virus)を含むことができるアルファウイルスとして知られているウイルスのトガウイルス科、およびアルファウイルスとして国際ウイルス分類委員会(ICTV)よって分類される任意の他のウイルスであるか、またはそれらに由来する。一部の実施形態では、自己増幅RNAレプリコンは、VEE TC-83ワクチン株などの、アルファウイルスの弱毒化形態由来の部分であるか、またはそれを含有する。一部の実施形態では、自己増幅RNAレプリコンベクターは、細胞変性をせずにまたは細胞へのアポトーシス効果なしに目的の分子(二分免疫受容体ならびに「レシピエント細胞のさらなるゲノム操作」および「レシピエント細胞によって発現されるさらなる作用物質」)という標題の節に記載されるさらなる作用物質を含む)の発現を可能にするウイルスの弱毒化形態である。一部の実施形態では、自己増幅RNAレプリコンベクターは、宿主細胞、標的細胞または生物における特定の機能(例えば、長期のまたは増加した二分免疫受容体発現)についてin vitro、in vivo、ex vivo、またはin silicaで操作されているか、または選択されている。例えば、自己増幅RNAレプリコンの異なるバリアントを保有する宿主細胞の集団は、異なる時点で目的の1つまたは複数の分子(自己増幅RNAレプリコンまたは宿主ゲノムにおいてコードされる)の発現レベルに基づいて選択され得る。一部の実施形態では、選択されたまたは操作された自己増幅RNAレプリコンは、I型インターフェロン応答、先天性抗ウイルス応答、または宿主細胞もしくは生物からの適応免疫応答を低減させるように改変されており、その結果、宿主細胞、標的細胞、または生物において、より長く持続するか、またはより高レベルで発現するRNAレプリコンのタンパク質発現を生じる。一部の実施形態では、この最適化された自己増幅RNAレプリコン配列は、所望の表現型形質(例えば、目的の分子のより高いもしくは十分に持続的な発現、または野生型株もしくはワクチン株と比較してベクターに対する低減した先天性抗ウイルス免疫応答)を有する個々の細胞または細胞の集団から得られる。一部の実施形態では、所望のまたは選択された自己増幅RNAレプリコン配列を保有する細胞は、自己増幅RNAレプリコンを含む治療剤で処置した後、有益な応答特性を有する対象(例えば、ヒトまたは動物)(例えば、優良応答者または完全寛解の対象)から得られる。一部の実施形態では、自己増幅RNAレプリコンベクターは、「レシピエント細胞のさらなるゲノム操作」および「レシピエント細胞によって発現されるさらなる作用物質」という標題の節に記載されるさらなる作用物質を発現することができる。一部の実施形態では、さらなる作用物質には、IL-2、IL-12、IL-15、IL-10、GM-CSF、TNFアルファ、グランザイムB、またはそれらの組合せなどのサイトカインが含まれる。一部の実施形態では、さらなる作用物質は、免疫受容体の発現に直接影響を与えることによって、または宿主細胞表現型をモジュレートすること(例えば、アポトーシスまたは増殖を誘導すること)によってのいずれかで二分免疫受容体の発現をモジュレートすることができる。一部の実施形態では、自己増幅RNAレプリコンは、1つまたは複数のサブゲノムポリヌクレオチドを産生するために1つまたは複数のサブゲノム配列を含有することができる。一部の実施形態では、サブゲノムポリヌクレオチドは、細胞翻訳機構による翻訳のための機能的mRNA分子として作用する。サブゲノムポリヌクレオチドは、サブゲノム配列からサブゲノムポリヌクレオチドを産生するようにポリメラーゼを誘導する自己増幅RNAレプリコンにおける規定された配列エレメント(例えば、サブゲノムプロモーターまたはSGP)の機能によって産生され得る。一部の実施形態では、SGPはRNA依存性RNAポリメラーゼ(RDRPまたはRdRp)によって認識される。一部の実施形態では、複数のSGP配列は単一の自己増幅RNAレプリコンに存在し、二分免疫受容体、二分免疫受容体の構成要素、またはさらなる作用物質をコードするサブゲノム配列の上流に位置することができる。一部の実施形態では、SGP配列のヌクレオチド長または組成は、サブゲノムポリヌクレオチドの発現特性を変更するために改変され得る。一部の実施形態では、非同一SGP配列は、対応するサブゲノムポリヌクレオチドの割合が、SGP配列が同一である場合と異なるように、自己増幅RNAレプリコンに位置する。一部の実施形態では、非同一SGP配列は、それらが、二分免疫受容体の増加した発現、標的細胞もしくは宿主に対して細胞傷害効果を有さない標的細胞の増加したもしくはより速い増殖を導くか、またはRNAレプリコンに対する先天性もしくは適応免疫応答を弱める、互いに対する割合で産生されるように二分免疫受容体およびさらなる作用物質(例えば、サイトカイン)の産生を誘導する。一部の実施形態では、互いに対するサブゲノム配列およびSGP配列の位置ならびにゲノム配列自体は、互いに対するサブゲノムポリヌクレオチドの割合を変更するために使用され得る。一部の実施形態では、二分免疫受容体をコードするSGPおよびサブゲノム配列は、二分免疫受容体の発現がさらなる作用物質に対して実質的に増加するように、さらなる作用物質をコードするSGPおよびサブゲノム領域の下流に位置することができる。一部の実施形態では、RNAレプリコンまたはSGPは、サイトカインがT細胞の発現を促進するか、または二分免疫受容体の治療効果を増大するが、サイトカイン放出症候群、サイトカインストーム、または神経毒性などの重度の副作用を引き起こさないように最適量のサイトカインを発現するように選択されているか、または操作されている。
【0244】
[00288]一部の実施形態では、TCRα鎖およびTCRβ鎖をコードする融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを含むベクターが本明細書に提供される。一部の実施形態では、TCRγ鎖およびTCRδ鎖をコードする融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを含むベクターが本明細書に提供される。一部の実施形態では、BCRまたは抗体重鎖およびBCRまたは抗体軽鎖をコードする融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを含むベクターが本明細書に提供される。一部の実施形態では、ベクターは、自己増幅RNAレプリコン、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルスまたはビリオンである。一部の実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。一部の実施形態では、ベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、B型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルスまたはそれらの偽型に由来する。一部の実施形態では、ベクターは非ウイルスベクターである。一部の実施形態では、非ウイルスベクターは、ナノ粒子、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、金属ナノポリマー、ナノロッド、リポソーム、ミセル、マイクロバブル、細胞透過性ペプチド、またはリポスフィアに製剤化され得る。
【0245】
[00289]2つの鎖の発現は2つのプロモーターまたは1つのプロモーターによって駆動され得る。一部の場合、2つのプロモーターが使用される。一部の場合、2つのプロモーターは、2つの鎖についてのそれらのそれぞれのタンパク質コード配列と共に、頭-頭、頭-尾、または尾-尾の配向において配列され得る。一部の場合、1つのプロモーターが使用される。1つのプロモーターが両方の鎖を発現するために使用され得るように2つのタンパク質コード配列がフレーム内で連結され得る。そしてこのような場合、2つのタンパク質コード配列は頭-尾の配向において配列され得、バイシストロニック発現を容易にするためにリボソーム結合部位(例えば、内部リボソーム結合部位またはIRES)、プロテアーゼ切断部位、または自己プロセシング切断部位(2Aペプチドをコードする配列など)と接続され得る。一部の場合、2つの鎖が一本鎖ポリペプチドとして発現され得るように2つの鎖はペプチドリンカーと連結され得る。各々の発現された鎖は、再配列V(D)J遺伝子を含む完全な可変ドメイン配列を含有することができる。各々の発現された鎖は、CDR1、CDR2およびCDR3を含む完全な可変ドメイン配列を含有することができる。各々の発現された鎖は、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3およびCDR3を含む完全な可変ドメイン配列を含有することができる。一部の場合、各々の発現された鎖は、定常ドメイン配列をさらに含有することができる。
【0246】
[00290]発現ベクターを作り出すために、さらなる配列が融合免疫受容体遺伝子に付加される必要があり得る。これらのさらなる配列には、ベクターバックボーン(例えば、標的細胞または大腸菌(E.coli)などの一時的な宿主におけるベクターの複製に必要とされるエレメント)、プロモーター、IRES、自己切断ペプチドをコードする配列、ターミネーター、アクセサリー遺伝子(ペイロードなど)、および免疫受容体ポリヌクレオチドの部分配列(定常ドメインをコードする配列の一部など)が含まれる。
【0247】
[00291]プロテアーゼ切断部位には、限定されないが、エンテロキナーゼ切断部位:(Asp)4Lys;第Xa因子切断部位:Ile-Glu-Gly-Arg;トロンビン切断部位、例えば、Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser;レニン切断部位、例えば、His-Pro-Phe-His-Leu-Val-Ile-His;コラゲナーゼ切断部位、例えば、X-Gly-Pro(Xが任意のアミノ酸である場合);トリプシン切断部位、例えば、Arg-Lys;限定されないが、ピコルナウイルス由来のプロテアーゼ2A切断部位、A型肝炎ウイルス3C切断部位、ヒトライノウイルス2Aプロテアーゼ切断部位、ピコルナウイルス3プロテアーゼ切断部位;およびカスパーゼプロテアーゼ切断部位、例えば、切断が第2のアスパラギン酸残基の後に起こる、活性化カスパーゼ-3によって認識され、切断されたDEVDを含む、ウイルス2Aまたは3Cプロテアーゼ切断部位などのウイルスプロテアーゼ切断部位が含まれる。一部の実施形態では、本開示は、プロテアーゼ切断部位を含む発現ベクターを提供し、プロテアーゼ切断部位は細胞プロテアーゼ切断部位またはウイルスプロテアーゼ切断部位を含む。一部の実施形態では、第1のタンパク質切断部位は、フューリンによって認識される部位;IPNVのVP4;タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ;ライノウイルスの3Cプロテアーゼ;PC5/6プロテアーゼ;PACEプロテアーゼ、LPC/PC7プロテアーゼ;エンテロキナーゼ;第Xa因子プロテアーゼ;トロンビン;ゲネナーゼI;MMPプロテアーゼ;カブモザイクポチウイルスの核封入タンパク質a(N1a);4型デング熱フラビウイルスのNS2B/NS3、黄熱病ウイルスのNS3プロテアーゼ;カリフラワーモザイクウイルスのORF V;KEX2プロテアーゼ;CB2;または2Aを含む。一部の実施形態では、タンパク質切断部位は、ウイルス内部で切断可能なシグナルペプチド切断部位である。一部の実施形態では、ウイルス内部で切断可能なシグナルペプチド切断部位は、C型インフルエンザウイルス、C型肝炎ウイルス、ハンタウイルス、フラビウイルス、または風疹ウイルス由来の部位を含む。
【0248】
[00292]本開示のベクターに含めるのに適したIRESエレメントは、真核リボソームに関与することができるRNA配列を含むことができる。一部の実施形態では、本開示のIRESエレメントは、少なくとも約250塩基対、少なくとも約350塩基対、または少なくとも約500塩基対である。本開示のIRESエレメントは、限定されないが、ウイルス、哺乳動物、およびショウジョウバエを含む生物のDNAに由来し得る。一部の場合、IRESエレメントが由来するウイルスDNAには、限定されないが、ピコルナウイルス相補的DNA(cDNA)、脳心筋炎ウイルス(EMCV)cDNAおよびポリオウイルスcDNAが含まれる。IRESエレメントが由来する哺乳動物DNAの例には、限定されないが、免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)をコードするDNAおよび塩基性線維芽増殖因子(bFGF)をコードするDNAが含まれる。IRESエレメントが由来するショウジョウバエDNAの例には、限定されないが、キイロショウジョウバエ由来のアンテナペディア遺伝子が含まれる。ポリオウイルスIRESエレメントのさらなる例には、例えば、ポリオウイルスIRES、脳心筋炎ウイルスIRES、またはA型肝炎ウイルスIRESが含まれる。フラビウイルスIRESエレメントの例には、限定されないが、ウシウイルス性下痢ウイルスIRESまたは古典的ブタ熱ウイルスIRESを含む、C型肝炎ウイルスIRES、GBウイルスB IRES、またはペスチウイルスIRESが含まれる。
【0249】
[00293]自己プロセシング切断部位の例には、限定されないが、インテイン配列;改変インテイン;ヘッジホッグ配列;他のホッグファミリー配列;2A配列、例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)に由来する2A配列;および各々についてのそれらのバリエーションが含まれる。
【0250】
[00294]組換え免疫グロブリンまたは他のタンパク質発現のためのベクターは、任意の数のプロモーターを含むことができ、プロモーターは、構成的、調節的または誘導的、細胞型特異的、組織特異的、または種特異的である。さらなる例には、テトラサイクリン応答性プロモーターが含まれる。ベクターは、組換え融合遺伝子が発現される宿主細胞に適合されたレプリコンであってもよく、それは、細菌細胞および例えば、大腸菌(Escherichia coli)において機能的なレプリコンを含むことができる。プロモーターは構成的または誘導的であってもよく、誘導は、例えば、特定の細胞型または特定の成熟レベルと関連する。あるいは、多くのウイルスプロモーターが適切であり得る。プロモーターの例には、β-アクチンプロモーター、SV40早期および後期プロモーター、免疫グロブリンプロモーター、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター、レトロウイルスプロモーター、伸長因子1A(EF-1A)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、およびFriend脾臓フォーカス形成ウイルスプロモーターが含まれる。プロモーターは、エンハンサーと関連していてもよいか、またはしていなくてもよく、エンハンサーは、特定のプロモーターと天然に関連していてもよいか、または異なるプロモーターと関連していてもよい。
【0251】
[00295]遺伝子発現のための宿主細胞であるレシピエント細胞は、限定されないが、動物細胞、特に哺乳動物細胞であってもよいか、またはそれは微生物細胞(細菌、酵母または真菌)または植物細胞であってもよい。宿主細胞の例には、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)細胞などの昆虫培養細胞、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母細胞、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、アスペルギウス(Aspergillus)、アウレオバシジウム(Aureobasidum)およびペニシリン属(Penicillium species)などの真菌ならびにCHO(チャイニーズハムスター卵巣)、BHK(ベビーハムスター腎臓)、COS、293、3T3(マウス)、Vero(アフリカミドリザル)細胞などの哺乳動物細胞が含まれ、限定されないが、ブタ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ウシを含む、種々のトランスジェニック動物系も同様に使用されてもよい。バキュロウイルス、特にAcNPVベクターは、例えば、昆虫細胞系におけるポリヘドリンプロモーターまたは他の強力なプロモーターの調節制御下での単一ORFの発現を伴う、単一のORF免疫受容体発現および本開示の切断のために使用され得る。哺乳動物細胞において使用されるプロモーターは、構成的(ヘルペスウイルスTKプロモーター;SV40早期プロモーター;ラウス肉腫ウイルスプロモーター;サイトメガロウイルスプロモーター;マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター)または調節的(例えば、メタロチオネインプロモーター)であってもよい。ベクターは、特定の哺乳動物細胞に感染するウイルス、例えば、レトロウイルス、ワクシニアおよびアデノウイルスならびにそれらの誘導体に基づいてもよい。プロモーターには、限定されないが、サイトメガロウイルス、アデノウイルス後期、およびワクシニア7.5Kプロモーターが含まれる。エノラーゼは構成的酵母プロモーターの一例であり、アルコールデヒドロゲナーゼは調節的プロモーターの一例である。
【0252】
[00296]特定のプロモーター、転写終結配列および組織特異的配列をコードする配列などの他の必要に応じた配列の選択は、発現が実施される細胞の種類によって決定され得る。それは、細菌、酵母、真菌、哺乳動物、昆虫、ニワトリまたは他の動物細胞であってもよい。
【0253】
[00297]免疫受容体発現ベクターから発現された免疫受容体は、それらの自然形態であってもよいか、または操作された形態であってもよい。一部の場合、操作された形態は一本鎖抗体断片または一本鎖TCR断片である。例えば、フレキシブルなリンカーは抗体の重鎖の可変ドメインおよび軽鎖の可変ドメインを連結することができ、それによって一本鎖抗体断片(すなわち、scFv)を形成する。一部の場合、操作された形態はTCR-CARである。実施例3、4および5は、免疫受容体発現ベクターを作り出すために機能的配列(例えば、定常ドメインコード配列、P2Aリンカーおよびプロモーター)を融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドにさらに融合するための方法を提供する。これらの方法はまた、免疫受容体のこれらの操作された形態を発現する免疫受容体発現ベクターを作り出すために機能的配列(例えば、リンカーCD28 TMドメイン)を融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドに導入するために使用され得る。
【0254】
ソース免疫受容体発現細胞
[00298]融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドが本明細書に記載される方法を使用して作り出され得るソース免疫受容体発現細胞は、種々の生物由来の種々の細胞型であってもよく、種々の組織または臓器から単離されてもよい。ソース免疫受容体発現細胞は種々の試料から得られ得る。ソース免疫受容体発現細胞は、BCR、TCRおよび抗体などの免疫受容体を産生することができる。ソース免疫受容体発現細胞は免疫細胞であってもよい。免疫細胞とは、先天性および/または適応免疫応答の開始および/または実行に機能的に関与する造血起源の細胞を指す。ソース免疫受容体発現細胞は、リンパ球、例えば、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)であってもよい。
【0255】
[00299]ソース免疫受容体発現細胞を宿主とする元の部位は、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドのレパートリーの特徴に影響を及ぼし得、その結果として、得られた免疫受容体発現ベクターおよび免疫受容体プログラムレシピエント細胞のレパートリーの特徴に影響を及ぼし得る。このようなレパートリーの特徴の態様は遺伝子使用の多様性であり得る。
【0256】
[00300]一部の場合、レパートリーは、2超、5超、10超、50超、100超、500超、1,000超、5,000超、10,000超、50,000超、または100,000超のV(D)Jの組合せを含有することができる。一部の場合、レパートリーは、2超、5超、10超、50超、100超、500超、1,000超、5,000超、10,000超、50,000超または100,000超の異なるV(D)Jの組合せを含有することができる。これは、ソース免疫受容体発現細胞のポリクローナル集団が、V、DおよびJ遺伝子の非常に多様な用法を有することができ、その結果、非常に多様なV(D)Jの組合せが生じるためである。
【0257】
[00301]融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドまたは免疫受容体発現ベクターのVJの組合せは、両方の免疫受容体鎖によって使用されるV遺伝子およびJ遺伝子によって規定され得る。融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドまたは免疫受容体発現ベクターのV(D)Jの組合せは、両方の免疫受容体鎖によって使用されるV遺伝子、D遺伝子およびJ遺伝子によって規定され得る。例えば、TRAV8-4/TRAJ45/TRBV29-1/TRBJ1-5は、対合したTCRの特定のVJの組合せを規定することができる。免疫受容体鎖についてのコード配列を考慮すると、V-QuestおよびMiXCRなどの計算ツールを使用してV(D)Jの組合せを推測することができる。
【0258】
[00302]2つの異なる融合二分免疫受容体ポリヌクレオチド(または2つの異なる免疫受容体発現ベクター)は同じV(D)Jの組換えを共有することができるが、異なる配列を有することができることに留意されるべきであり、これは、(1)V(D)Jの組換えの間、ランダム挿入および欠失がV-D、D-JおよびV-Jジャンクションにおいて発生する場合があり、(2)配列変化が突然変異生成および遺伝子合成によって人工的に作り出され得、可変配列が遺伝子合成の間に導入され得るためであり得る。例えば、2つの融合TCR遺伝子は同じVJの組換えを有してもよいが、異なるCDR3配列を有してもよい。融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドまたは発現ベクターは、ソース免疫受容体発現細胞由来の第1の免疫受容体鎖および第2の免疫受容体鎖の同種対の組合せ(または細胞内の自然対の組合せ)を含むことができる。複数の融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドまたは発現ベクターは、複数の免疫受容体発現細胞由来の第1の免疫受容体鎖および第2の免疫受容体鎖の多数の同種対の組合せを含むことができる。ソース免疫受容体発現細胞は異なるクローン型を有することができるので、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドまたは発現ベクターのポリクローナル集団を生じることができる。ポリクローナル免疫受容体発現ベクターを複数のレシピエント細胞に送達することにより、少なくとも100個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、少なくとも10,000,000個、または少なくとも100,000,000個、またはそれより多くの異なる免疫受容体(または免疫受容体の異なる同種対の組合せ)を発現する、免疫受容体プログラムレシピエント細胞のポリクローナル集団を産生することができる。異なる免疫受容体の各々は、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドにおいて固有の配列を有することができる。
【0259】
[00303]このポリクローナルの特徴により、本開示に記載される方法を使用して得られた融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドのライブラリー、発現ベクターのライブラリーおよび免疫受容体プログラムレシピエント細胞のポリクローナル集団を、以前に報告された対応物から区別することができる。例えば、1つまたは少数の免疫受容体鎖コード配列、免疫受容体ドメインコード配列、または融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドから開始し、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドの大きなライブラリーを作り出すために突然変異生成またはエラープローンPCRを使用してこれらの開始配列の多数のバリエーションを生成することができる。したがって、これらのライブラリーは1つまたは少数のV(D)J遺伝子の組合せを含有することができる。対照的に、本開示に記載される方法を使用して得られた融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドのライブラリー、発現ベクターのライブラリーおよび免疫受容体プログラムレシピエント細胞のポリクローナル集団は、約1,000個超、約5,000個超、約10,000個超、約50,000個超、約100,000個超、約500,000個超、約1,000,000個超、約5,000,000個超、または約10,000,000個超の配列を含有することができ、約1,000個超、約5,000個超、約10,000個超、約50,000個超、約100,000個超、約500,000個超、約1,000,000個超、約5,000,000個超、または約10,000,000個超のVJまたはVDJの組合せを含有することができる。一部の場合、本開示に記載される方法を使用して得られた融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドのライブラリー、発現ベクターのライブラリーおよび免疫受容体プログラムレシピエント細胞のポリクローナル集団は、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも2,000個、少なくとも5,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個のVJまたはVDJの組合せを含有することができる。さらに、本開示に記載される方法を使用して得られた融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドのライブラリー、発現ベクターのライブラリーおよび免疫受容体プログラムレシピエント細胞のポリクローナル集団は、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、もしくはそれより多くの異なるTRAV(TCRα鎖についてのV遺伝子)サブグループ、および/または少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、もしくはそれより多くの異なるTRBV(TCRβ鎖についてのV遺伝子)サブグループを含有することができる。
【0260】
試料
[00304]ソース免疫受容体発現細胞は、種々の試料から得られ得るか、または単離され得る。ソース免疫受容体発現細胞は、種々の試料から得られるか、または単離される免疫細胞であってもよい。試料は、本明細書に記載される種々の供給源または対象から得られ得る。レシピエント細胞もまた、本明細書に記載される試料から得られ得る。
【0261】
[00305]ある特定の実施形態では、ソース免疫受容体発現細胞は、病原体特異的、腫瘍特異的および/もしくは疾患特異的抗体または潜在的な臨床的有意性のTCRを同定するために、ヒトまたは他の動物、例えば、免疫化されているか、または感染症、がん、自己免疫状態、もしくはいずれかの他の疾患に罹患しているヒトまたは他の動物などの、対象または宿主の血液試料または他の生体試料から単離され得る。例えば、ヒトは、疾患と診断されていてもよく、疾患の症状を示していてもよく、疾患と診断されていなくてもよく、または疾患の症状を示していなくてもよい。例えば、ヒトは、感染性因子(例えば、ウイルス、細菌、寄生生物、プリオンなど)、抗原もしくは疾患に曝露されたヒトおよび/またはそれらに対して有用な抗体もしくはTCRを作製することができるヒトであってもよい。例えば、動物は、感染性因子(例えば、ウイルス、細菌、寄生生物、プリオンなど)、抗原もしくは疾患に曝露された動物および/またはそれらに対して有用な抗体もしくはTCRを作製することができる動物であってもよい。免疫化された宿主由来のある特定の免疫細胞は、問題となる1つもしくは複数の標的抗原および/または1つもしくは複数の未知の抗原に対する抗体またはTCRを作製することができる。本開示において、リンパ球プールは、試料から複数の免疫細胞を生成するために、蛍光活性化細胞分類(FACS)、磁気活性化細胞分類(MACS)、パニングまたは他のスクリーニング方法を使用した細胞のスクリーニングおよび選別などの任意の適切な方法によって所望の免疫細胞について濃縮され得る。
【0262】
[00306]免疫細胞は幹細胞に由来し得る。幹細胞は、成体幹細胞、胚性幹細胞、より具体的には非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞、全能性幹細胞または造血幹細胞であってもよい。代表的なヒト幹細胞はCD34+細胞であり得る。単離された免疫細胞は、樹状細胞、キラー樹状細胞、マスト細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK T細胞、B細胞、または炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、調節性Tリンパ球もしくはヘルパーTリンパ球からなる群から選択されるT細胞であってもよい。T細胞は、CD4+Tリンパ球、CD8+Tリンパ球、またはCD4+CD8+Tリンパ球であってもよい。
【0263】
[00307]一部の実施形態では、ソース免疫受容体発現細胞は、非免疫化ヒトまたは非ヒトドナーから単離された免疫細胞であってもよい。抗体またはTCR結合部位の配列多様性は、生殖細胞系列において直接コードされなくてもよいが、V遺伝子セグメントから組合せ方式で構築されてもよい。免疫化は、増殖(クローン性増殖)するか、または対応する抗体を分泌するために免疫原に結合するVH-VLまたはVa-VβまたはVγ-Vδの組合せを作製するいずれかの免疫細胞を誘発することができる。しかしながら、免疫化されていない対象由来の脾臓細胞および/もしくは免疫細胞または他の末梢血リンパ球の使用は、可能な抗体またはTCRレパートリーの良好な表現を提供することができ、また、任意の動物種を使用して後のBCRまたは抗体またはTCRライブラリーの構築を可能にすることができる。
【0264】
[00308]一部の場合、ソース免疫受容体発現細胞は末梢血試料から得られ得る。末梢血細胞は、特定の細胞型(例えば、単核細胞;赤血球;CD4+細胞;CD8+細胞;免疫細胞;T細胞、NK細胞など)について濃縮され得る。末梢血細胞はまた、特定の細胞型(例えば、単核細胞;赤血球;CD4+細胞;CD8+細胞;免疫細胞;T細胞、NK細胞など)について選択的に枯渇され得る。試料は、異なるBCR(または抗体)またはTCRを発現する個々の免疫細胞の少なくとも約5個、10個、100個、250個、500個、750個、1000個、2500個、5000個、10000個、25000個、50000個、75000個、10000個、250000個、500000個、750000個、1000000個、2500000個、5000000個、7500000個または10000000個のサブセットを含むことができる。
【0265】
[00309]一部の場合、ソース免疫受容体発現細胞は、非限定的な例として、脳、肝臓、肺、腎臓、前立腺、卵巣、脾臓、リンパ節(扁桃腺を含む)、甲状腺、胸腺、膵臓、心臓、骨格筋、腸、喉頭、食道および胃由来の組織を含む、固体組織を含む組織試料から得られ得る。さらなる非限定的な供給源には、骨髄、臍帯血、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織および腫瘍が含まれる。一部の実施形態では、T細胞系が使用されてもよい。一部の実施形態では、細胞は、健康なドナー、がんと診断された患者もしくは感染症と診断された患者由来であってもよいか、またはそれらから得られてもよい。一部の実施形態では、細胞は、異なる表現型の特徴を提示する細胞の混合集団の一部である。
【0266】
[00310]ソース免疫受容体発現細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、例えば、腫瘍浸潤T細胞であってもよい。TILはがんに罹患している臓器から単離され得る。1つまたは複数の細胞は、脳、心臓、肺、眼、胃、膵臓、腎臓、肝臓、腸、子宮、膀胱、皮膚、髪、爪、耳、腺、鼻、口、唇、脾臓、歯茎、歯、舌、唾液腺、扁桃腺、咽頭、食道、大腸、小腸(small intestine)、直腸、肛門、甲状腺、胸腺、骨、軟骨、腱、靭帯、腎上体、骨格筋、平滑筋、血管、血液、脊髄、気管、尿管、尿道、視床下部、下垂体、幽門、副腎、卵巣、卵管、子宮、膣、乳腺、精巣、精嚢、陰茎、リンパ、リンパ節またはリンパ管であってもよい、がんを有する臓器から単離され得る。1つまたは複数のTILは、脳、心臓、肝臓、皮膚、腸、肺、腎臓、眼、小腸(small bowel)または膵臓由来であってもよい。TILは、膵臓、腎臓、眼、肝臓、小腸、肺または心臓由来であってもよい。1つまたは複数の細胞は、膵島細胞、例えば、膵臓β細胞であってもよい。一部の場合、TILは消化管がん由来であってもよい。TIL培養物は多くの手段により調製され得る。例えば、腫瘍は非がん性組織または壊死領域から調整されてもよい。次いで腫瘍は約2~3mmの長さに断片化されてもよい。一部の場合、腫瘍は、約0.5mm~約5mmのサイズ、約1mm~約2mm、約2mm~約3mm、約3mm~約4mm、または約4mm~約5mmに断片化されてもよい。次いで腫瘍断片は、培地およびサイトカインなどの細胞刺激剤を利用してin vitroで培養され得る。一部の場合、IL-2は腫瘍断片からTILを増殖させるために利用され得る。IL-2の濃度は約6000IU/mLであってもよい。IL-2の濃度はまた、約2000IU/mL、3000IU/mL、4000IU/mL、5000IU/mL、6000IU/mL、7000IU/mL、8000IU/mL、9000IU/mL、または最大で約10000IU/mLまでであってもよい。TILが増殖すると、それらは腫瘍反応性を決定するためにin vitroアッセイに供され得る。例えば、TILは、CD3、CD4、CD8およびCD58発現についてFACによって評価され得る。TILはまた、共培養、細胞傷害性、ELISAまたはELISPOTアッセイに供され得る。一部の場合、TIL培養物は、凍結保存されてもよいか、または急速に増殖されてもよい。TILなどの細胞は、限定されないが、胎児、新生児、若年および成人を含む、発達段階のドナーから単離されてもよい。
【0267】
[00311]1つまたは複数の試料は1つまたは複数の供給源由来であってもよい。試料の1つまたは複数は2つ以上の供給源由来であってもよい。試料の1つまたは複数は1つまたは複数の対象由来であってもよい。試料の1つまたは複数は2つ以上の対象由来であってもよい。試料の1つまたは複数は同じ対象由来であってもよい。1つまたは複数の対象は同じ種由来であってもよい。1つまたは複数の対象は異なる種由来であってもよい。1つまたは複数の対象は健康であってもよい。1つまたは複数の対象は、疾患、障害または状態による影響を受けていてもよい。
【0268】
[00312]試料は状態を有する対象から採取され得る。一部の実施形態では、試料が採取される対象は、患者、例えば、がん患者またはがんを有すると疑われる患者であってもよい。対象は、哺乳動物、例えばヒトであってもよく、男性または女性であってもよい。一部の実施形態では、女性は妊娠している。試料は腫瘍生検であってもよい。生検は、例えば、医師、医師助手、看護師、獣医、歯科医、カイロプラクター、救急救命士、皮膚科医、がん専門医、消化器専門医または外科医を含む、医療提供者によって実施されてもよい。
【0269】
[00313]対象は、標的抗原が発現される疾患を有してもよい。例えば、疾患は、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質(adrenocortical)癌、副腎皮質(adrenal cortex)がん、AIDS関連がん、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管がん、肝外がん、膀胱がん、骨がん(ユーイング肉腫および骨肉腫および悪性線維性組織球腫を含む)、脳腫瘍、乳がん、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(胃腸)、原発不明癌、中枢神経系、リンパ腫、原発性、子宮頸がん、胆管癌、慢性リンパ球性白血病(cll)、慢性骨髄性白血病(cml)、慢性骨髄増殖性新生物、大腸がん、皮膚T細胞性リンパ腫、非浸潤性乳管癌(dcis)、子宮内膜がん、食道、ユーイング肉腫、性腺外胚細胞腫瘍、眼がん、眼内黒色腫、網膜芽腫、卵管がん、骨の線維性組織球腫、悪性および骨肉腫、胆嚢がん、胃(gastric)(胃(stomach))がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(gist)、胚細胞腫瘍、性腺外、卵巣、精巣、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、ヘアリー細胞白血病、頭頸部がん、肝細胞(肝臓)がん、組織球増殖症、ランゲルハンス細胞、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、島細胞腫、膵神経内分泌腫瘍、カポジ肉腫、腎臓、ランゲルハンス細胞組織球増加症、喉頭がん、白血病、口唇および口腔がん(oral cavity cancer)、肝がん(原発性)、肺がん、リンパ腫、マクログロブリン血症、ワルデンストレーム、男性乳がん、骨の悪性線維性組織球腫および骨肉腫、黒色腫、黒色腫、眼内(眼)、メルケル細胞癌、中皮腫、悪性、原発不明の転移性扁平上皮頸部がん、口腔がん(mouth cancer)、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物および慢性骨髄増殖性新生物、骨髄性白血病(myelogenous leukemia)、慢性(cml)、骨髄性白血病(myeloid leukemia)、急性(AML)、鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽腔がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口腔がん(oral cancer)、口唇および口腔がんならびに口腔咽頭がん、骨肉腫および骨の悪性線維性組織球腫、卵巣がん、膵臓がんおよび膵神経内分泌腫瘍(島細胞腫)、傍神経節腫、副鼻腔および鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、下垂体部腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、妊娠および乳がん、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、原発性腹膜がん、前立腺がん、直腸がん、腎細胞(腎臓)がん、網膜芽腫、唾液腺がん、肉腫、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、皮膚がん、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、原発不明の扁平上皮頸部がん、転移性、胃(stomach、gastric)がん、t細胞リンパ腫、皮膚、精巣がん、咽喉がん、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん、尿管および腎盂、移行上皮がん、尿道がん、子宮がん、子宮内膜および子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンストレームマクログロブリン血症またはウィルムス腫瘍を含むがんであってもよい。
【0270】
[00314]一部の実施形態では、試料は、血液、唾液、リンパ液、尿、脳脊髄液、精液、痰、糞便または組織ホモジネートなどの流体である。一部の実施形態では、試料は唾液である。一部の実施形態では、試料は全血である。一部の実施形態では、試験のための十分な量のポリヌクレオチドを得るために、少なくとも約0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、10、20、25、30、35、40、45または50mLの血液体積が採取される。一部の場合、血液は、限定されないが、EDTAを含むマグネシウムキレート剤を含有する装置内で収集され得、4℃で保存される。必要に応じて、限定されないが、EGTAを含むカルシウムキレート剤が添加されてもよい。一部の場合、細胞溶解阻害剤が、限定されないが、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド誘導体、ホルマリン、グルタルアルデヒド、グルタルアルデヒド誘導体、タンパク質クロスリンカー、核酸クロスリンカー、タンパク質および核酸クロスリンカー、第一級アミン反応性クロスリンカー、スルフヒドリル反応性クロスリンカー、スルフヒドリル添加またはジスルフィド還元、炭水化物反応性クロスリンカー、カルボキシル反応性クロスリンカー、光反応性クロスリンカーまたは切断可能なクロスリンカーを含む血液に添加される。一部の実施形態では、非核酸材料は酵素処理(プロテアーゼ消化など)を使用して出発材料から除去され得る。
【0271】
[00315]複数の試料は、少なくとも2個、3個、4個、5個、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個もしくは100個またはそれより多くの試料を含むことができる。複数の試料は、少なくとも約100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個もしくは1000個またはそれより多くの試料を含むことができる。複数の試料は、少なくとも約1000個、2000個、3000個、4000個、5000個、6000個、7000個、8000個の試料、9000個、もしくは10,000個の試料、もしくは100,000個の試料、もしくは1,000,000個またはそれより多くの試料を含むことができる。複数の試料は、少なくとも約10,000個の試料を含むことができる。
【0272】
[00316]第1の試料は1つまたは複数の細胞を含んでもよく、第2の試料は1つまたは複数の細胞を含んでもよい。第1の試料の1つまたは複数の細胞は、第2の試料の1つまたは複数の細胞と同じ細胞型であってもよい。第1の試料の1つまたは複数の細胞は、複数の試料の1つまたは複数の異なる細胞と異なる細胞型であってもよい。
【0273】
[00317]複数の試料は同時に得られてもよい。複数の試料は一緒に得られてもよい。複数の試料は連続して得られてもよい。複数の試料は、1つまたは複数の異なる試料を取得してから数年、例えば、100年、10年、5年、4年、3年、2年または1年の過程にわたって得られてもよい。1つまたは複数の試料は、1つまたは複数の異なる試料を取得してから約1年以内に得られてもよい。1つまたは複数の試料は、1つまたは複数の異なる試料を取得してから12ヵ月以内、11ヵ月以内、10ヵ月以内、9ヵ月以内、8ヵ月以内、7ヵ月以内、6ヵ月以内、4ヵ月以内、3ヵ月以内、2ヵ月以内または1ヵ月以内に得られてもよい。1つまたは複数の試料は、1つまたは複数の異なる試料を取得してから30日以内、28日以内、26日以内、24日以内、21日以内、20日以内、18日以内、17日以内、16日以内、15日以内、14日以内、13日以内、12日以内、11日以内、10日以内、9日以内、8日以内、7日以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内または1日以内に得られてもよい。1つまたは複数の試料は、1つまたは複数の異なる試料を取得してから約24時間以内、22時間以内、20時間以内、18時間以内、16時間以内、14時間以内、12時間以内、10時間以内、8時間以内、6時間以内、4時間以内、2時間以内または1時間以内に得られてもよい。1つまたは複数の試料は、1つまたは複数の異なる試料を取得してから約60秒以内、45秒以内、30秒以内、20秒以内、10秒以内、5秒以内、2秒以内または1秒以内に得られてもよい。1つまたは複数の試料は、1つまたは複数の異なる試料を取得してから1秒未満以内に得られてもよい。
【0274】
T細胞の供給源
[00318]T細胞は対象から得られてもよい(例えば、初代T細胞)。一部の場合、ソースTCR発現細胞は対象から得られる。T細胞は本明細書に記載される任意の試料から得られてもよい。一部の場合、レシピエントT細胞は対象から得られる。「対象」という用語は、免疫応答が誘発され得る生物(例えば、哺乳動物)を含むことを意図する。対象の例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラットおよびそれらのトランスジェニック種が含まれる。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織および腫瘍を含む、多くの供給源から得られてもよい。ある特定の態様では、T細胞系が使用されてもよい。T細胞は、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、アルファベータT細胞またはガンマデルタT細胞であってもよい。本開示のある特定の態様では、T細胞は、Ficoll(商標)分離などの様々な技術を使用して対象から収集された血液単位から得られてもよい。個体の循環血液由来の細胞はアフェレーシスによって得られてもよい。アフェレーシス産物は、T細胞、単球、顆粒細胞、B細胞、他の有核白血球、赤血球および血小板を含む、リンパ球を含有することができる。アフェレーシスによって収集された細胞は、血漿画分を除去するため、およびその後の処理ステップのために適切な緩衝剤または培地に細胞を入れるために洗浄され得る。一部の場合、細胞はリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄され得る。洗浄溶液は、カルシウムもしくはマグネシウムまたは他の二価カチオンを欠いていてもよい。カルシウムの不在化での最初の活性化ステップは拡大された活性化をもたらし得る。洗浄ステップは、製造業者の指示書に従って半自動化「フロースルー」遠心分離機(例えば、Cobe 2991 セルプロセッサー、Baxter CytoMate、またはHaemonetics Cell Saver 5)を使用することのような方法によって達成され得る。洗浄後、細胞は、例えば、Caフリー、MgフリーPBS、PlasmaLyte A、または緩衝剤を有するもしくは有さない他の食塩水溶液などの様々な生体適合性緩衝剤に再懸濁され得る。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分が除去され得、細胞は培養培地中に直接再懸濁され得る。
【0275】
[00319]一態様では、T細胞は、赤血球を溶解し、例えば、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離によって、または向流遠心エルトリエーションによって単球を枯渇させることによって末梢血リンパ球または組織から単離される。T細胞を組織から単離すると(例えば、腫瘍浸潤T細胞を腫瘍組織から単離すると)、赤血球を溶解するか、または単球を枯渇させる前に細胞を解離するために組織は細分化または断片化され得る。CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+およびCD45RO+T細胞などの、T細胞の特定の亜集団は、陽性または陰性選択技術によってさらに単離され得る。例えば、T細胞は、所望のT細胞の陽性選択のための十分な時間、DYNABEADS(商標)M-450 CD3/CD28Tなどの抗CD3/抗CD28(例えば、3×28)とコンジュゲートしたビーズとのインキュベーションによって単離され得る。一態様では、時間は約30分である。さらなる態様では、時間は30分~36時間またはそれより長くおよびそれらの間の全ての整数値の範囲である。さらなる態様では、時間は、少なくとも約1、2、3、4、5もしくは6時間であるか、またはそれらと等しい。さらに別の態様では、時間は10~24時間である。一態様では、インキュベーション時間は約24時間である。他の細胞型と比較してT細胞がほとんど存在しない任意の状況において、例えば、腫瘍組織または免疫不全の個体から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を単離する際に、より長いインキュベーション時間がT細胞を単離するために使用されてもよい。さらに、より長いインキュベーション時間の使用は、CD8+T細胞の捕捉の効率を増加させることができる。したがって、時間を単に短くするか、または長くすることによって、T細胞は抗CD3/抗CD28ビーズに結合することができ、および/またはビーズのT細胞に対する比を増加もしくは減少させることによって、T細胞の亜集団が、培養開始もしくはプロセスの間の他の時点について、または培養開始もしくはプロセスの間の他の時点に対して選択され得る。さらに、ビーズまたは他の表面上の抗CD3および/または抗CD28抗体の比を増加または減少させることによって、T細胞の亜集団が、培養開始もしくは他の所望の時点についてまたは培養開始もしくは他の所望の時点に対して選択され得る。一部の場合、選択の複数のラウンドが使用されてもよい。ある特定の態様では、選択手順が実施され得、「選択されていない」細胞(抗CD3/抗CD28ビーズに結合し得ない細胞)が活性化および増殖プロセスにおいて使用され得る。「選択されていない」細胞はまた、さらなる選択のラウンドに供され得る。
【0276】
[00320]陰性選択によるT細胞集団の濃縮は、陰性選択細胞に固有の表面マーカーに対する抗体の組合せにより達成され得る。1つの例示的な方法は、陰性磁気免疫粘着または陰性選択された細胞に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用するフローサイトメトリーによる細胞選別および/または選択である。例えば、陰性選択によってCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的に、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DRおよびCD8に対する抗体を含む。ある特定の態様では、典型的に、CD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+およびFoxP3+を発現する調節性T細胞を濃縮または陽性選択することが有用であり得る。あるいは、ある特定の態様では、T調節性細胞は、抗CD25とコンジュゲートしたビーズまたは他の同様の選択方法によって枯渇される。
【0277】
[00321]一実施形態では、IFN-γ、TNF-アルファ、IL-17A、IL-2、IL-3、IL-4、GM-CSF、IL-10、IL-13、グランザイムBおよびパーフォリン、または他の適切な分子、例えば、T-bet、Eomes、Tcf1(ヒトにおけるTCF7)などの他のサイトカインおよび転写因子のうちの1つまたは複数を発現するT細胞集団が選択され得る。細胞発現をスクリーニングするための方法は、例えば、PCT公開番号:WO2013/126712に記載される方法によって決定され得る。
【0278】
[00322]陽性または陰性選択による細胞の所望の集団の単離のために、細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度は変化されてもよい。ある特定の態様では、ビーズおよび細胞が一緒に混合される体積は細胞およびビーズの最大接触を確保するために減少され得る(例えば、細胞の濃度を増加させる)。例えば、一態様では、20億個の細胞/mLの濃度が使用される。別の態様では、10億個の細胞/mLの濃度が使用される。さらなる態様では、1億個超の細胞/mLが使用される。さらなる態様では、少なくとも約1000万個、1500万個、2000万個、2500万個、3000万個、3500万個、4000万個、4500万個または5000万個の細胞/mLの細胞の濃度が使用される。一部の態様では、少なくとも約7500万個、8000万個、8500万個、9000万個、9500万個または1億個の細胞/mLの細胞の濃度が使用される。一部の態様では、少なくとも約1億2500万個または1億5000万個の細胞/mLの細胞の濃度が使用され得る。高濃度を使用すると、細胞収率、細胞活性化および細胞増殖の増加が生じ得る。さらに、高い細胞濃度の使用は、CD28陰性T細胞などの目的の標的抗原を弱く発現し得るか、または多くの腫瘍細胞が存在する試料(例えば、白血病血液、腫瘍組織など)由来の細胞のより効率的な捕捉を可能にすることができる。このような細胞の集団は治療的価値を有することができる。例えば、高濃度の細胞を使用すると、より弱いCD28発現を有し得るCD8+T細胞のより効率的な選択が可能となる。
【0279】
[00323]一部の場合、より低い濃度の細胞が使用されてもよい。T細胞および表面の混合物を有意に希釈することによって、粒子と細胞との間の相互作用が最小化され得る。これにより、粒子に結合する大量の所望の抗原を発現する細胞を選択することができる。例えば、CD4+T細胞は、より高いレベルのCD28を発現することができ、希釈濃度においてCD8+T細胞より効率的に捕捉され得る。一部の態様では、使用される細胞の濃度は、少なくとも約5×10/mL、5×10/mLであるか、またはそれより高い。他の態様では、使用される濃度は、約1×10/mL~1×10/mL、およびそれらの間の任意の整数値であってもよい。他の態様では、細胞は、2~10℃または室温のいずれかで可変速度にて様々な長さの時間、回転子上でインキュベートされ得る。
【0280】
[00324]刺激のためのT細胞はまた、洗浄ステップ後に凍結され得る。凍結およびその後の解凍ステップは、細胞集団内の顆粒球およびある程度の単球を除去することによってより均一な産生物を提供することができる。血漿および血小板を除去する洗浄ステップの後、細胞は凍結溶液に懸濁され得る。多くの凍結溶液およびパラメーターがこの状況において有用であり得るが、使用され得る1つの方法は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミンおよび7.5%DMSO、もしくは31.25%Plasmalyte-A、31.25%デキストロース5%、0.45%NaCl、10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミンおよび7.5%DMSOを含有する培養培地、またはHespanおよびPlasmaLyte Aを含有する他の適切な細胞凍結培地を使用することを含む。次いで細胞は-80℃に凍結され得、液体窒素貯蔵タンクの気相中で保存され得る。細胞は、-20℃または液体窒素中で直ちに制御せずに凍結することによって凍結され得る。ある特定の態様では、凍結保存された細胞は本明細書に記載されるように解凍され、洗浄され、活性化の前に室温で1時間静置される。
【0281】
[00325]また、本開示の文脈において、増殖細胞(例えば、T細胞療法のためのTCRを発現する操作された細胞)が必要とされ得る前の時点での対象からの血液試料またはアフェレーシス産物の収集も企図される。したがって、増殖される細胞の供給源は必要な任意の時点で収集され得、T細胞などの所望の細胞は、本明細書に記載されるものなどの、T細胞療法から恩恵を受けるいくらかの疾患または状態についてのT細胞療法において後で使用するために単離され、凍結される。一部の場合、血液試料またはアフェレーシスは全体的に健康な対象から採取される。ある特定の態様では、血液試料またはアフェレーシスは、疾患を発症するリスクがあるが、まだ疾患を発症していない全体的に健康な対象から採取され、目的の細胞は後での使用のために単離され、凍結される。ある特定の態様では、T細胞は、後の時点で増殖され、凍結され、使用されてもよい。ある特定の態様では、試料は、本明細書に記載されるように特定の疾患の診断の直後であるが、任意の処置の前に患者から収集される。さらなる態様では、細胞は、限定されないが、ナタリズマブ、エファリズマブ、抗ウイルス剤、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレートおよびFK506、抗体または他の免疫除去剤(immunoablative agent)、例えば、CAMPATH、抗CD3抗体、シトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228および照射などの薬剤による処置を含む、いくらかの関連する処置様式の前に対象由来の血液試料またはアフェレーシスから単離される。
【0282】
[00326]本開示のさらなる態様では、T細胞は、機能的T細胞を対象に残す処置の後、患者から直接得られる。これに関して、ある特定のがん処置、特に免疫系を損傷する薬物による処置後、患者が処置から正常に回復している期間の間の処置直後、得られたT細胞の質は、ex vivoで増殖するそれらの能力に関して最適であり得るか、または改善され得ることが観察される。したがって、本開示の文脈内で、この回復段階の間、T細胞、樹状細胞または造血系の他の細胞を含む、血液細胞を収集することが企図される。さらに、ある特定の態様では、動員(例えば、GM-CSFによる動員)およびコンディショニングレジメンが、特に療法後の規定された時間枠の間、特定の細胞型の再増殖、再循環、再生および/または増殖が好ましい対象における状態を生じるように使用され得る。例示的な細胞型には、T細胞、B細胞、樹状細胞および免疫系の他の細胞が含まれる。
【0283】
[00327]対象から得られた初代T細胞に加えて、ソース細胞またはレシピエント細胞として使用されるT細胞は、細胞系T細胞などの細胞系細胞であってもよい。細胞系T細胞の例には、限定されないが、Jurkat、CCRF-CEM、HPB-ALL、K-T1、TALL-1、MOLT16/17およびHUT78/H9が含まれる。
【0284】
[00328]T細胞はin vitro培養から得られ得る。T細胞は、組織または細胞と接触することによってin vitroで活性化または増殖され得る。「活性化および増殖」の節を参照のこと。例えば、患者の末梢血から単離されたT細胞は、腫瘍細胞、腫瘍組織、腫瘍様塊、腫瘍溶解パルスAPCまたは腫瘍mRNA負荷APCなどの腫瘍抗原を提示する細胞と共培養され得る。腫瘍抗原を提示する細胞は、規定された抗原、規定された抗原のセットまたは規定されていない抗原のセット(腫瘍溶解物または全腫瘍mRNAなど)によりパルスされたか、またはそれらを発現するように操作されたAPCであってもよい。例えば、規定された抗原を提示する場合、APCは、既知の配列を有する1つまたは複数の短いエピトープ(例えば、7~13アミノ酸長)をコードする1つまたは複数のミニ遺伝子を発現することができる。APCはまた、2つ以上のエピトープをコードする配列を含有するベクターから2つ以上のミニ遺伝子を発現することができる。規定されていない抗原を提示する場合、APCは腫瘍溶解物または全腫瘍mRNAによりパルスされ得る。腫瘍抗原を提示する細胞は共培養前に照射され得る。共培養は、共刺激シグナルまたはサイトカインを提供することができる試薬(例えば、抗CD28抗体)を含む培地においてであってもよい。このような共培養は腫瘍抗原反応性T細胞を刺激し、および/または増殖させることができる。これらの細胞は、本明細書に記載される細胞表面マーカー(例えば、CD25、CD69、CD137)を使用して選択されてもよいか、または濃縮されてもよい。この方法を使用して、腫瘍抗原反応性T細胞は患者の末梢血から予め濃縮され得る。これらの予め濃縮されたT細胞は、本明細書に記載される方法を使用して融合(または物理的に連結した)TCRを得るための入力として使用され得る。一部の場合、予め濃縮されたT細胞は、例えば、単一細胞バーコードを使用したシークエンシングによってTCRの同種対を同定するために任意の他の方法に供される入力として使用され得る。予め濃縮されたT細胞(例えば、CD137+)は、共培養の間にマーカー(例えば、CD137)発現を獲得したT細胞を含有することができ、また、採決時にマーカーを既に発現しているT細胞も含有することができる。それにもかかわらず、後者の集団は腫瘍反応性であり得る。この方法は、記載されるTILを単離するための、より容易な代替手段を提供することができる。
【0285】
免疫受容体プログラムレシピエント細胞
[00329]本明細書に記載される融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを含有する発現ベクターは、免疫受容体プログラムレシピエント細胞を作り出すために新たな宿主細胞(本開示において「レシピエント細胞」と称される)に導入され得る。異なる目的のために、異なる種類の免疫受容体が異なる種類のレシピエント細胞に導入されてもよい。例えば、抗体は、発現のために様々な初代細胞(例えば、B細胞)または細胞系(例えば、HeLa細胞、CHO細胞)に導入されてもよい。例えば、TCRはT細胞に新たな特異性を与えるためにT細胞に導入されてもよい。免疫受容体プログラムレシピエント細胞は、標的分子または細胞を感知する(例えば、認識または結合する)ために新たに導入された免疫受容体を使用することができる。例えば、標的分子は抗原またはその断片であってもよい。標的分子はペプチドであってもよい。標的分子はエピトープであってもよい。
【0286】
レシピエント細胞の供給源
[00330]レシピエント細胞は、「試料」の節に記載されるように試料から得られ得る。レシピエント細胞としてのT細胞は、「T細胞の供給源」の節に記載されるように供給源由来であってもよい。レシピエント細胞は、T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、好中球、顆粒球、好酸球、赤血球、血小板、幹細胞、iPSCまたは間充織幹細胞であってもよい。さらに、レシピエント細胞は細胞系細胞であってもよい。細胞系は腫瘍形成性または人工的に不死化された細胞系であってもよい。細胞系の例には、限定されないが、CHO-K1細胞;HEK293細胞;Caco2細胞;U2-OS細胞;NIH3T3細胞;NSO細胞;SP2細胞;CHO-S細胞;DG44細胞;K-562細胞、U-937細胞;MRC5細胞;IMR90細胞;Jurkat細胞;HepG2細胞;HeLa細胞;HT-1080細胞;HCT-116細胞;Hu-h7細胞;Huvec細胞;およびMolt4細胞が含まれる。レシピエント細胞は自家T細胞または同種異系間T細胞であってもよい。レシピエント細胞は、遺伝子修飾されたまたは操作された細胞であってもよい。
【0287】
活性化および増殖
[00331]免疫受容体発現ベクターをT細胞に移入する前であるか後であるかにかかわらず、T細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号;同第6,534,055号;同第6,905,680号;同第6,692,964号;同第5,858,358号;同第6,887,466号;同第6,905,681号;同第7,144,575号;同第7,067,318号;同第7,172,869号;同第7,232,566号;同第7,175,843号;同第5,883,223号;同第6,905,874号;同第6,797,514号;同第6,867,041号;および米国特許出願公開第20060121005号に記載される方法を一般的に使用して活性化され、増殖され得る。T細胞はin vitroまたはin vivoで増殖され得る。
【0288】
[00332]T細胞は、T細胞のための活性化シグナルを生じるようにCD3 TCR複合体を刺激する作用物質およびT細胞の表面上の共刺激分子との接触によって増殖され得る。例えば、カルシウムイオノフォアA23187、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)またはフィトヘムアグルチニン(PHA)のような分裂促進性レクチンなどの化学物質が、T細胞のための活性化シグナルを生じるように使用され得る。非限定的な例として、T細胞集団は、抗CD3抗体もしくはその抗原結合性断片、または表面上で固定化された抗CD2抗体との接触、あるいはカルシウムイオノフォアと共にプロテインキナーゼC活性化因子(例えば、ブリオスタチン)との接触などによってin vitroで刺激され得る。T細胞の表面上でのアクセサリー分子の共刺激のために、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の集団は、T細胞の増殖を刺激するのに適した条件下で抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触され得る。CD4+T細胞またはCD8+T細胞のいずれかの増殖を刺激するために、抗CD3抗体および抗CD28抗体。例えば、各シグナルを提供する作用物質は、溶液中にあってもよいか、または表面に結合していてもよい。粒子の細胞に対する比は、標的細胞に対する粒径に依存し得る。さらなる実施形態では、T細胞などの細胞は、作用物質でコーティングされたビーズと合わせられ、その後、ビーズおよび細胞は分離され、次いで細胞が培養される。代替の実施形態では、培養前に、作用物質でコーティングされたビーズおよび細胞は分離されないが、一緒に培養される。T細胞培養に適した条件には、血清(例えば、ウシ胎児またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-g、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-2、IL-15、TGFβおよびTNF-αまたは細胞の成長のための任意の他の添加物を含む、増殖および生存に必要な因子を含有することができる適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640またはX-vivo5(Lonza))が含まれる。細胞の成長のための他の添加物には、限定されないが、界面活性剤、プラスマネート、ならびにN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノール(2-mercaptoethanoi)などの還元剤が含まれる。培地には、RPMI1640、A1M-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 1およびX-Vivo 20、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびビタミンを添加し、血清を含まないか、または適切な量の血清(または血漿)もしくは規定されたホルモンのセット、ならびに/またはT細胞の成長および増殖に十分な量のサイトカインを補足したOptimizerが含まれ得る。標的細胞は、成長を支持するのに必要な条件、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気プラス5%CO)下で維持され得る。様々な刺激時間に曝露されていたT細胞は異なる特徴を示し得る。
【0289】
[00333]別の実施形態では、細胞は、腫瘍または細胞と共培養することによって活性化され得るか、または増殖され得る。T細胞を活性化するために使用される細胞はAPCまたは人工APC(aAPC)であってもよい。APCは、樹状細胞、マクロファージまたはB細胞などのプロフェッショナルAPCであってもよい。APCは、単球または単球由来の樹状細胞であってもよい。aAPCは、T細胞受容体および共刺激分子についてのリガンドを発現することができ、移入のためのT細胞を、一部の場合、それらの効力および機能を改善しながら、活性化し、増殖することができる。aAPCは、T細胞活性化のための任意の遺伝子を発現するように操作され得る。aAPCは、T細胞増殖のための任意の遺伝子を発現するように操作され得る。aAPCは、ビーズ、細胞、タンパク質、抗体、サイトカイン、またはいずれかの組合せであってもよい。aAPCは、ゲノム移植を受けることができる細胞集団にシグナルを送達することができる。例えば、aAPCは、シグナル1、シグナル2、シグナル3またはいずれかの組合せを送達することができる。シグナル1は抗原認識シグナルであってもよい。例えば、シグナル1は、ペプチド-MHC複合体によるTCRのライゲーションまたはCD3シグナル変換複合体の活性化を導き得るCD3に対するアゴニスト抗体の結合であってもよい。シグナル2は共刺激シグナルであってもよい。例えば、共刺激シグナルは、抗CD28、誘導性共刺激因子(ICOS)、CD27および4-1BB(CD137)であってもよく、それらはそれぞれICOS-L、CD70および4-1BBLに結合する。シグナル3はサイトカインシグナルであってもよい。サイトカインは任意のサイトカインであってもよい。サイトカインは、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21またはそれらのいずれかの組合せであってもよい。
【0290】
[00334]一部の場合、aAPCは、細胞集団を活性化し、および/または増殖させるために使用され得る。一部の場合、人工物は自己特異性を誘導することができない。一部の場合、aAPCはHLAを発現することができない。aAPCは、活性化および/または刺激のために使用され得る遺伝子を安定に発現するように遺伝子修飾され得る。一部の場合、K562細胞が活性化のために使用され得る。K562細胞はまた、増殖のために使用され得る。K562細胞はヒト赤白血病細胞系であってもよい。K562細胞は目的の遺伝子を発現するように操作され得る。K562細胞は、HLAクラスI、IIまたはCD1d分子を内因的に発現することができないが、ICAM-1(CD54)およびLFA-3(CD58)を発現することができる。K562はシグナル1をT細胞に送達するように操作され得る。例えば、K562細胞はHLAクラスIを発現するように操作され得る。一部の場合、K562細胞は、B7、CD80、CD83、CD86、CD32、CD64、4-1BBL、抗CD3、抗CD3 mAb、抗CD28、抗CD28mAb、CD1d、抗CD2、膜結合型IL-15、膜結合型IL-17、膜結合型IL-21、膜結合型IL-2、切断型CD19、またはいずれかの組合せなどのさらなる分子を発現するように操作され得る。一部の場合、操作されたK562細胞は、CD80およびCD83に加えて、抗CD3 mAb、クローンOKT3の膜型を発現することができる。一部の場合、操作されたK562細胞は、CD80およびCD83に加えて、抗CD3 mAb、クローンOKT3の膜型、抗CD28 mAbの膜型を発現することができる。
【0291】
[00335]一部の場合、細胞の再刺激は、抗原およびフィーダーPBMCなどの照射された組織適合APCにより実施され得る。一部の場合、細胞は、PHAおよび同種異系間フィーダー細胞などの非特異的マイトジェンを使用して成長され得る。フィーダーPBMCは40Gyで照射され得る。フィーダーPBMCは、約10Gy~約15Gy、約15Gy~約20Gy、約20Gy~約25Gy、約25Gy~約30Gy、約30Gy~約35Gy、約35Gy~約40Gy、約40Gy~約45Gy、約45Gy~約50Gyで照射され得る。一部の場合、照射されたフィーダー細胞のみの対照フラスコは抗CD3およびIL-2により刺激され得る。
【0292】
[00336]aAPCはビーズであってもよい。球状ポリスチレンビーズは、CD3およびCD28に対する抗体でコーティングされ得、T細胞活性化のために使用され得る。ビーズは任意のサイズであってもよい。一部の場合、ビーズは約3および6マイクロメートルであってもよい。ビーズは約4.5マイクロメートルのサイズであってもよい。ビーズは任意の細胞対ビーズ比で利用され得る。例えば、1ミリリットルあたり100万個の細胞で3対1のビーズ対細胞比が使用され得る。aAPCはまた、剛性な球状粒子、ポリスチレンラテックスマイクロビーズ、磁気ナノ粒子またはマイクロ粒子、ナノサイズの量子ドット、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)ミクロスフェア、非球状粒子、カーボンナノチューブ束、楕円体PLGA微粒子、ナノワーム(nanoworm)、流体脂質二重層含有系、2D支持脂質二重層(2D-SLB)、リポソーム、RAFTソーム(RAFTsome)/マイクロドメインリポソーム、SLB粒子またはこれらのいずれかの組合せであってもよい。
【0293】
[00337]一部の場合、aAPCはCD4T細胞を増殖させることができる。例えば、aAPCは、抗原プロセシングおよびHLAクラスII抑制CD4T細胞の提示経路を模倣するように操作され得る。K562は、HLA-D、DPα、DPβ鎖、Ii、DMα、DMβ、CD80、CD83またはそれらのいずれかの組合せを発現するように操作され得る。例えば、操作されたK562細胞は、HLA抑制抗原特異的CD4T細胞を増殖させるためにHLA抑制ペプチドによりパルスされ得る。
【0294】
[00338]一部の場合、aAPCの使用は、T細胞活性化、増殖またはいずれかの組合せのために外因的に導入されたサイトカインと組み合わせられてもよい。細胞はまた、例えば、対象へのゲノム的に移植した細胞の投与後、対象の血液中でin vivoで増殖され得る。
【0295】
[00339]細胞(例えば、レシピエント細胞)はまた、例えば、対象へ細胞を投与した後、対象の血液中でin vivoで増殖され得る。
ミスアセンブリの阻止
[00340]一部の場合、免疫受容体発現ベクターは内因性二分免疫受容体を発現するレシピエント細胞に導入され得る。このような場合、内因性免疫受容体と外因性免疫受容体との間のミスアセンブリが阻止され得る。例えば、TCR発現ベクターがT細胞に導入される場合、内因性(ゲノム由来)TCR鎖および外因性(ベクター由来)TCR鎖の両方が発現され得る。したがって、内因性アルファ鎖が外因性ベータ鎖と二量体を形成し得、その結果、望ましくないTCR(すなわち、ミスアセンブリしたTCR)を生じる可能性がある。同様の状況がBCRプログラムB細胞において発生する場合がある。種々の方法が、免疫受容体鎖の定常ドメインを操作すること、または免疫受容体をコードする内因性遺伝子をノックアウト/ダウンすること、例えば、ジスルフィド結合を操作すること(Kuball 2007)、ドメインスワッピング(Bethune 2016)、RNA干渉によるノックダウン(Bunse 2014)、遺伝子ノックアウト(Provasi 2012)、TCRの一部をマウス化すること(murinizing)、一本鎖としてTCRを発現すること(UckertおよびSchumacher、2009)、およびTCR-CAR構築物においてTCRを発現すること(Walsengら、2017)によってこのようなミスアセンブリを最小化するために使用され得る。
【0296】
[00341]一部の場合、免疫受容体鎖の定常ドメインをコードする配列は突然変異生成によって操作される。一部の場合、2つの免疫受容体鎖の両方の定常ドメインをコードする配列は、1つまたは複数のシステインが各鎖の接触領域に導入され得るように操作される。一部の場合、2つの免疫受容体鎖の両方の定常ドメインをコードする配列は、1つまたは複数のジスルフィド結合が、発現された免疫受容体の2つの鎖の間で形成され得るように操作される。例えば、1つまたは複数のシステインは、免疫受容体の2つの鎖(例えば、TCRαおよびTCRβ鎖、またはBCR重鎖および軽鎖)の各定常ドメインに導入され得、ジスルフィド結合はシステイン間に形成され得る。
【0297】
[00342]一部の場合、免疫受容体の2つの鎖の定常ドメインをコードする配列は、その配列が、レシピエント細胞が得られる種と異なる種において見出される定常ドメインをコードするように操作される。例えば、レシピエント細胞がヒトから得られる場合、免疫受容体の2つの鎖の定常ドメインをコードする配列は、マウスにおいて見出される免疫受容体の定常ドメインをコードする配列に変化され得る(すなわち、マウス化)。
【0298】
[00343]一部の場合、第1の鎖(例えば、TCRα鎖)の第1の定常ドメインをコードする第1の配列の第1のセグメントおよび第2の鎖(例えば、TCRβ鎖)の第2の定常ドメインをコードする第2の配列の第2のセグメントがスワップされ得る。例えば、スワップした後、ミスアセンブルしたTCR分子はCD3またはシグナルと適切にアセンブルすることができない。
【0299】
[00344]一部の場合、第1の鎖(例えば、TCRα鎖)の第1の定常ドメインをコードする第1の配列の第1のセグメントおよび第2の鎖(例えば、TCRβ鎖)の第2の定常ドメインをコードする第2の配列の第2のセグメントは、別のタンパク質、例えば、CD3-ゼータの細胞内ドメインに変化され得る。例えば、細胞外システイン(鎖間ジスルフィド架橋を媒介する)の下流の元の定常ドメインが完全なヒトCD3-ゼータと置き換えられ得る、改変されたTCRαおよびTCRβ鎖により、改変されたTCR鎖は、内因性TCR鎖とミスアセンブルすることができなくなり、初代ヒトT細胞においてこれらのTCR鎖の正確な対合を生じる。
【0300】
[00345]一部の場合、P2Aリンカーを介して改変されたTCRβに連結される改変されたTCRα鎖をコードする構築物が使用され得る。
[00346]一部の場合、改変されたTCRβ鎖が、キメラ抗原受容体(CAR)に使用されるものと同様の人工シグナル伝達ドメイン、すなわち、CD28膜貫通(TM)コード配列、続く2つのシグナル伝達モジュール(CD28およびCD3ζ)に融合され得る。同時に、改変されたTCRα鎖はTCRαの細胞外ドメインのみを含有することができる。さらに、システイン置換が、TCR二量体の安定性を増加させるためにTCRα鎖およびTCRβ鎖の定常ドメイン(C-ドメイン)において実施され得る。この構築物は、「TCR-CAR」と称される。このようなTCR-CARは、NK細胞などの非T細胞においてシグナル伝達することができる。
【0301】
[00347]レシピエント細胞は、その内因性免疫受容体がノックアウトまたはノックダウンされた遺伝子修飾された細胞であってもよい。本明細書に記載される例はレシピエント細胞としてT細胞を使用するが、同様のストラテジーが他の細胞型に適用され得る。
【0302】
[00348]内因性TCRの成分を破壊するために遺伝子編集ヌクレアーゼが利用され得る。TCRα/β二量体は完全に機能するTCR複合体を産生することができるので、TCRαおよび/またはTCRβ機能の破壊は、内因性TCR発現を低減させる(またはさらに取り除く)ことができる。内因性TCRαまたはTCRβ遺伝子を破壊するために種々の方法が使用され得る。例えば、使用者が規定したDNAの配列を結合し、二本鎖DNA切断(DSB)を媒介する際に共通の作用様式を共有する4つのクラスの遺伝子編集タンパク質が存在する。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は標的DNA部位において共局在化するヘテロ二量体アレイである。ZFNは、DNAに結合し、DNAを切断するFoklヌクレアーゼドメインにつながれる個々のフィンガーサブユニットを含む。転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、DNA塩基認識を規定する超可変の2つのアミノ酸配列(反復可変二残基;RVD)によってDNAに結合する反復単位を含む。ZFNSと同様に、TALENは、DSB生成のためのFoklエンドヌクレアーゼドメインに融合する二量体タンパク質として機能する。メガヌクレアーゼ(MN)は、細菌のホーミングエンドヌクレアーゼに由来し、固有の標的部位のために操作される生来のヌクレアーゼ活性を有する単量体タンパク質である。クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)(CRISPR)および関連するCas9ヌクレアーゼプラットフォームは、Watson-Crick塩基対合を介して標的DNA配列と接触する小さなガイドRNA(gRNA)転写産物およびDNAを切断するCas9ヌクレアーゼを含む。
【0303】
[00349]一部の場合、ゲノム編集ヌクレアーゼをT細胞に導入することは、ゲノム編集ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドをT細胞に導入することを含む。一部の場合、ゲノム編集ヌクレアーゼをT細胞に導入することは、Cas9ポリペプチドをT細胞に導入することを含む。一部の実施形態では、ゲノム編集ヌクレアーゼは、TALENヌクレアーゼ、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼまたはメガTALヌクレアーゼを含む。一部の場合、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼは、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)またはスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のいずれかに由来する。これらの実施形態の一部では、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼは、例えば、少なくとも1つの2’-OMe-ホスホロチオエート改変塩基、少なくとも1つの2’-O-メチル改変塩基または少なくとも1つの2’-O-メチル3’チオPACE改変塩基などのヌクレアーゼ耐性gRNAを含む。一部の場合、TALENヌクレアーゼまたはメガTALヌクレアーゼは、外因性ポリアデニル化シグナルを有するRNAによってコードされる。一部の場合、本明細書に記載される方法は、ゲノム改変T細胞の集団を増殖させるのに有効な条件下でT細胞を培養することをさらに含むことができる。
【0304】
レシピエント細胞のさらなるゲノム操作
[00350]一部の場合、免疫受容体プログラムレシピエント細胞は、PD1およびCTLA-4などの免疫チェックポイントタンパク質をコードする不活性遺伝子を含む。これは、PD1およびCTLA-4などの免疫チェックポイントタンパク質をコードする遺伝子の不活性化によって可能になり得る。一部の場合、遺伝子修飾は、PD1、CTLA-4、LAG3、Tim3、BTLA、BY55、TIGIT、B7H5、LAIR1、SIGLEC10、2B4からなる群から選択される1つの遺伝子または2つの遺伝子の不活性化に依存する。一部の場合、遺伝子修飾は、B2MなどのMHC成分のノックアウトを含むことができる。本明細書に記載される遺伝子はまた、例えば、マイクロRNAによって下方制御され得る。
【0305】
レシピエント細胞によって発現されるさらなる作用物質
[00351]免疫受容体プログラムレシピエント細胞は、これらの細胞の機能を向上させるためにさらなる作用物質(例えば、タンパク質またはRNA)を発現するように操作され得る。例えば、機能は、細胞傷害機能、炎症誘発機能または抗炎症機能であってもよい。一部の場合、免疫受容体プログラムレシピエント細胞は、抗腫瘍効果を向上させるためにさらなる作用物質を発現するように操作され得る。一部の場合、さらなる作用物質は分泌タンパク質である。分泌タンパク質は、サイトカインもしくは抗体またはそれらの断片であってもよい。一部の場合、分泌タンパク質はサイトカインである。一部の場合、分泌タンパク質は一本鎖可変断片(scFv)である。分泌タンパク質は抑制分子を阻害することができ、その抑制分子は免疫エフェクター応答を開始する免疫細胞の能力を減少させる。分泌タンパク質は炎症誘発性サイトカインまたは抗炎症性サイトカインであってもよい。炎症誘発性サイトカインの例には、限定されないが、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα);インターロイキン(IL)-1α;IL-1β;IL-2;IL-5;IL-6;IL-8;IL-15;IL-18;インターフェロン(IFN-γ);血小板活性化因子(PAF);単球走化性タンパク質1および2(MCP-1、MCP-2);マクロファージ遊走阻止因子(MIF);CXCL8;CXCL9;CXCL10;および高移動度群ボックスタンパク質1(HMGB-1)が含まれる。抗炎症性サイトカインの例には、限定されないが、IL-1ra、IL-4、IL-10、IL-11、IL-13、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)およびIL-16が含まれる。一部の場合、さらなる作用物質はRNAである。一部の場合、さらなる作用物質はRNAをコードするDNAであってもよい。RNAは、ガイドRNA、マイクロRNAまたは小ヘアピンRNA(shRNA)であってもよい。RNAは抑制分子の転写または翻訳を阻害することができる。抑制分子の例には、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータが含まれる。一部の場合、RNAは、TCRα鎖、TCRβ鎖、ベータ-2ミクログロブリン、HLA分子、CTLA-4、PD1およびFASを含む外因性遺伝子の遺伝子発現を下方制御することができる。これらの抑制分子をコードする外因性遺伝子はまた、本明細書に記載される遺伝子編集方法によってノックアウトされてもよい。
【0306】
[00352]一部の実施形態では、本明細書に記載される免疫受容体プログラムレシピエント細胞は、別の作用物質、例えば、免疫受容体プログラムレシピエント細胞の活性を向上させる作用物質をさらに発現することができる。例えば、作用物質は抑制分子を阻害する作用物質であってもよい。抑制分子は、免疫エフェクター応答を開始する免疫受容体プログラムレシピエント細胞の能力を減少させることができる。抑制分子の例には、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータが含まれる。
【0307】
[00353]さらなる作用物質はスイッチ受容体であってもよい。例えば、抑制分子を阻害する作用物質は、細胞に陽性シグナルを提供する第2のポリペプチド、例えば、細胞内シグナル伝達ドメインに関連する、第1のポリペプチド、例えば、抑制分子を含む。一部の実施形態では、作用物質は、PD1、LAG3、CTLA4、CD160、BTLA、LAIR1、TIM3、2B4およびTIGIT、またはこれらのいずれかの断片(例えば、これらのいずれかの細胞外ドメインの少なくとも一部)などの抑制分子の第1のポリペプチド、ならびに細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメイン4-1BB、CD27またはCD28)および/または一次シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ゼータシグナル伝達ドメイン)である第2のポリペプチドを含む。一部の実施形態では、作用物質は、PD1またはその断片(例えば、PD1の細胞外ドメインの少なくとも一部)の第1のポリペプチド、およびCD28シグナル伝達ドメインまたはCD3ゼータシグナル伝達ドメインなどの細胞内シグナル伝達ドメインの第2のポリペプチドを含む。さらなる作用物質は、リンパ球枯渇耐性または低減した移植片対宿主疾患の可能性を与えるタンパク質であってもよい。例えば、タンパク質は抑制性ナチュラルキラー(NK)細胞受容体に結合することができるので、NK細胞はレシピエント細胞を殺傷することを阻害され得る。タンパク質はHLA-EまたはHLA-Gであってもよい。
【0308】
[00354]一部の実施形態では、さらなる作用物質は、免疫受容体発現ベクターによってコードされるか、またはそれから発現される。
適用
[00355]本明細書に記載されるように、ソース免疫受容体発現細胞のポリクローナル集団は、免疫受容体プログラムレシピエント細胞のポリクローナル集団に変換され得、免疫受容体プログラムレシピエント細胞の操作された免疫受容体レパートリーは、ソース免疫受容体発現細胞の天然の免疫受容体レパートリー(例えば、免疫受容体鎖の同種対の組合せ)を含むことができる。多くの免疫受容体の二分性質は、従来技術ではこのタスクを困難にする。本明細書に提供される方法はこれらの困難を克服するために使用され得る。ソース免疫受容体発現細胞を使用することより、免疫受容体プログラムレシピエント細胞を使用するいくつかの利点が存在し得る。例えば、免疫受容体プログラムレシピエント細胞は、より多くの数で調製され得、より理想的な機能特性を有することができ、より理想的なエピジェネティック状態であり得、より均一な遺伝的または表現型バックグラウンドを有することができ、抗腫瘍効果を向上させるためにさらなる作用物質を発現するように操作され得、または選択を補助するためにレポーター遺伝子を発現するように操作され得る。免疫受容体プログラムレシピエント細胞は多くの分野において多くの適用に使用され得る。
【0309】
抗体発見
[00356]ソース免疫受容体発現細胞がB細胞である場合、得られる融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドライブラリーは、様々な抗体をコードするライブラリーであり得る。このライブラリーは、所望の特徴を有する抗体を見つけるためにスクリーニングされ得る。所望の特徴は、特定の標的タンパク質への結合または標的細胞におけるある特定の細胞応答の誘発を含むことができる。抗体発見のために、プライマーおよびリンカー配列が、当業者によって行われ得る、scFv構築物の必要性に適合するように再設計され得ることを除いて、融合BCR遺伝子は実施例に記載される同様のストラテジーを使用して一本鎖Fv構築物(scFv)およびscFv発現ベクターに変換され得る。ソース免疫受容体発現細胞は、形質芽球、形質細胞、リンパ形質細胞性細胞、メモリーB細胞、濾胞性B細胞、辺縁帯B細胞、B-1細胞、B-2細胞または調節性B細胞であってもよい。
【0310】
結合の選択
[00357]抗体発現ベクターまたはscFv発現ベクターは、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、哺乳動物細胞ディスプレイおよびmRNAディスプレイなどの従来のスクリーニング技術と共に使用され得る。さらに、抗体発現ベクターライブラリーは、操作された抗体発現レシピエント細胞のライブラリーを産生するためにB細胞株(例えば、Raji細胞)に導入され得る。これらの細胞は、Eyerら、2017およびMazutizら、2013に記載される表現型スクリーニングに使用され得、抗体発現レシピエント細胞は動物から直接単離されたB細胞に置き換えることができる。
【0311】
機能の選択
[00358]抗体発現ベクターライブラリーはまた、表面受容体の機能のためのレポーター回路により操作された哺乳動物細胞に導入され得る。受容体アゴニストである抗体の直接選択が達成され得る。例えば、レンチウイルスの形態の抗体発現ベクターのライブラリーが、受容体アゴニストまたはアンタゴニスト抗体が求められる受容体に結合している蛍光レポーター系を含有する真核細胞を感染させるために使用され得る。この方法の実施形態では、非常に多数の候補抗体を発現するレンチウイルスおよび真核レポーター細胞が、各々が複製できる形式で一緒にパッケージ化され得るので、遺伝子型と表現型との間の直接的な相関を構築する。拡散抑制構成での(例えば、軟寒天または液滴中での)感染およびインキュベーション後、変化した蛍光(おそらく、抗体発現ベクターによってコードされる分泌抗体の作用に起因する)を示す細胞が保存され得、アゴニストまたはアンタゴニスト抗体をコードする統合遺伝子が回収され得る。インキュベーションは、適切なバックグラウンドシグナル伝達を提供するために同種リガンドまたは受容体の既知のアゴニストもしくはアンタゴニスト抗体の存在下であり得る。この系は、完全なトロンボポエチン表現型コピーである有効な抗体アゴニストを迅速に生成するその能力を例示することによって立証されている(Hongkai Zhangら、Chemistry & biology 20(5):734~741、2013年5月)。この系は、その活性化が選択可能な表現型の産生に関連付けられ得る任意の経路に一般化可能であり得る。
【0312】
ポリクローナル抗体の治療的使用
[00359]本明細書に記載される方法は、ヒトドナー由来のB細胞および形質細胞レパートリーから得たDNAライブラリーから組換えポリクローナル抗体を調製するために使用され得る。組換えポリクローナル抗体はある特定の疾患を処置するために使用され得る。例えば、免疫不全の患者は、数千のヒトドナーからプールされる血漿試料に由来する血漿ベースの薬物製品により処置され得る。このような製品の例には、静脈内免疫グロブリン(IVIG)および過免疫、特定の病原体に対する高力価の抗体を有するドナーの血漿から調製されるIVIGのバリエーションが含まれる。過免疫は、急性感染症を処置するため、または臓器移植後などの、免疫不全患者における感染症を阻止するために使用され得る。組換えポリクローナル抗体は現在の血漿ベースの製品を置き換えるために使用され得る。組換えポリクローナル抗体は血漿由来の等価物より高い効力を有するように操作され得る。
【0313】
ポリクローナル免疫受容体-プログラムレシピエント細胞の治療使用
[00360]免疫受容体-プログラムレシピエント細胞を患者に投与し、様々な疾患を治療することができる。一部の実施形態では、免疫受容体-プログラムレシピエント細胞は、ポリクローナル免疫受容体-プログラムレシピエント細胞である。
【0314】
がんの処置のためのTCR-T細胞
[00361]多くの腫瘍が、腫瘍微小環境内に浸潤した大量のT細胞を有し、これらの腫瘍浸潤T細胞(TIT)の多くが、腫瘍発現抗原を認識するTCRを有し得る。これらのTITは、腫瘍反応性T細胞であり得る。TITによって認識される抗原は、ネオ抗原、腫瘍特異的抗原または腫瘍関連抗原であり得る。これらの抗原は、野生型配列または変異型配列であり得る。がんを治療する一般的な戦略は、これらのTITの数および/または活性を増大するものであり得る。この戦略を実施する1つの特異的なアプローチは、TITのex vivoでの増殖であり得る。しかしながら、このアプローチは、多くの制限を有し得る。例えば、いくつかのTITは、一部、慢性的な抗原暴露により、ひどく疲弊した表現型を示し得る。これらのT細胞は、わずかにしか増殖させることができない。さらに、外科的に除去された腫瘍から単離された少ないT細胞から患者の体へと再注入するのに十分多くの数(数億または数十億個の細胞さえも必要な場合がある)へと増殖するのには非常に長い時間がかかることがある。単一細胞シークエンシングの近年の進歩により可能になった代替の方法は、ひどく疲弊した細胞を含む、これらの腫瘍浸潤T細胞から対合TCR配列を得ることである。次に、これらのTCR配列を合成し、TCR発現ベクターを得ることができる。また、これらのベクターを、多くの新鮮な宿主T細胞(例えば、CAR-Tのために宿主細胞を調製する工程と同様に、患者の末梢血から単離された後にex vivoで増殖)に導入し、TCR-T細胞を産生することができる。しかしながら、DNA合成の限界により、一度にわずかな(例えば、100より少ない、または50より少ない)ユニークTCR発現ベクターしか作製することができない。言い換えると、TCR-T細胞は、限定的な外因性TCRレパートリーを有し得る。
【0315】
[00362]上記のように融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを素早く得るための技術により、多くのTCRをコードする、多くの(例えば、約100個より多い、約1,000個より多い、約10,000個より多い、約100,000個より多い、または約1,000,000個より多い)ユニークTCR発現ベクターを生成することができる。これらのベクターを、新鮮な宿主T細胞(レシピエント細胞として)に導入して、非常に多様な外因性TCRレパートリー(約100より多い、約1,000より多い、約10,000より多い、約100,000より多い、または約1,000,000より多いクローン型)を有するポリクローナルTCR-T細胞を作製することができる。次いで、これらのポリクローナルTCR-T細胞は、患者に投与され得る。
【0316】
[00363]この適用に使用する起源TCR発現細胞は、外科的に除去された腫瘍から単離されたTITであり得る。例えば、腫瘍組織は、脂肪および結合組織をトリミングした後、3~5mm断片へと切断し、Seward Stomacherデバイス(Fisher社、Pittsburgh、PA)を使用する優しい機械粉砕を使用して、コールドRPMI1640中で脱凝集させることができる。この工程は、酵素消化せずに、単一細胞懸濁液を素早く産生することができる。細胞懸濁液は、75μm孔サイズスクリーン(BD Biosciences社、San Jose CA)を通して濾過し、培養培地で洗浄することができる。即時染色およびフローサイトメトリーによる分析のために使用する細胞の部分は、培養培地で洗浄することができ、細胞懸濁液は、不連続の70%とそれに続く100%のFicoll Isopaqueの勾配上に積層させ、遠心分離して、濃縮TIT(100%界面)から腫瘍細胞(70%界面)を分離することができる。次いで、濃縮TITは、D-PBS、1% BSA中で洗浄し、次いで処理することができる。いくつかの場合では、腫瘍試料からのTITは、3,000IU/ml組換えIL-2を使用して、Glutamax(Invitrogen社)、10%ヒトAB血清(Sigma社、St.Louis、MI)、50mM 2-メルカプトエタノール(Invitorogen社)、1mM ピルビン酸、1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen社)を含むRPMI1640を含有するTIT培養培地(TIL-CM)中で増殖させることができる。
【0317】
[00364]いくつかの場合では、新鮮な腫瘍が入手できないこともあり、そのような場合には、核は、凍結または固定組織から単離され得る。これらの核は、対合二分免疫受容体クローニング工程(この場合、対合TCRクローニング)のためのインプットとしても寄与し、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドライブラリーを得ることができる。これらの細胞および核は、さらなる選択をせずに使用することができる。あるいは、細胞または核の特定の集団を単離し、腫瘍特異的TCRを濃縮することができる。例えば、細胞表面マーカーCD39、CD69、CD103、CD25、PD-1、TIM-3、OX-40、4-1BBの発現は、腫瘍反応性と相関し得る。細胞表面マーカーを使用して、FACSにより腫瘍反応性TCRを単離/濃縮することができる。言い換えると、これらのマーカーの1つまたは組合せを高発現する細胞は、対合TCRクローニングのためのインプットとして使用され得る。
【0318】
[00365]T細胞は、レシピエント細胞として使用して、ポリクローナルTCR-T細胞を作製することができる。レシピエント細胞としてのT細胞は、「T細胞の供給源」の節で記載した供給源から得ることができ、「試料」の節で記載した様々な試料から得ることができる。いくつかの場合では、レシピエント細胞としてのT細胞は、患者の末梢血から得て、本明細書に記載のようにex vivoで増殖させることができる。
【0319】
[00366]あるいは、レシピエント細胞としてのT細胞は、ドナーから得ることができる。ドナーは、健康なドナーであり得る。ドナーから得られたT細胞は、例えば、冷凍庫内で好適に保存して、次いで、要求に応じて同種異系間個体へと注入することができる。レシピエント細胞またはポリクローナルTCR-T細胞は、「レシピエント細胞の供給源」、「活性化および増殖」、「ミスアセンブリーの防止」、「レシピエント細胞のさらなるゲノム操作」および「レシピエント細胞によって発現されたさらなる因子」と題した節に記載の方法を使用して、培養または改変することができる。レシピエント細胞がT細胞である場合、T細胞の内在性TCRは、本明細書に記載のようにノックアウトまたはノックダウンされ得る。レシピエント細胞がT細胞である場合、それは、CD8+T細胞、CD4+T細胞、またはCD8+CD4+二重陽性T細胞であり得る。それは、ガンマ-デルタT細胞であり得る。これらのTCR-T細胞は、本明細書に記載のように、さらに他の調節分子のサイトカインを発現するように操作して、それらの抗腫瘍活性を増大させることができる。ドナー(例えば、治療される対象とは異なる対象)から得られたレシピエント細胞を操作し、抑制性ナチュラルキラー(NK)細胞受容体に結合するタンパク質を発現させることができる。抑制性NK細胞受容体は、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)またはC型レクチンファミリー受容体であり得る。抑制性NK細胞受容体は、NKG/CD94またはKIR2DL4であり得る。抑制性NK細胞受容体に結合するタンパク質は、膜貫通タンパク質、細胞表面タンパク質、または分泌タンパク質であり得る。抑制性NK細胞受容体に結合するタンパク質は、HLA-EまたはHLA-Gを含み得る。一部の実施形態では、抑制性NK細胞受容体に結合するタンパク質は、B2Mドメインをさらに含む。一部の実施形態では、抑制性NK細胞受容体に結合するタンパク質は、B2M-HLA-E融合またはB2M-HLA-G融合タンパク質である。
【0320】
[00367]本明細書に記載の方法は、オリゴクローナルまたはポリクローナルTCR-T細胞による個別化されたがん処置を可能にすることができる。これらのTCR-T細胞は、腫瘍反応性であり得る対象特異的TCRを含み得る。合成TILまたはSynTILと名付けられた、例示的な治療方法を、図19に概略する。まず、切除した腫瘍または腫瘍生検を患者から得ることができる。腫瘍浸潤T細胞は、既存の方法を使用して腫瘍組織から得ることができる(図19、ステップ(1))。しかしながら、従来のTIL法でのようにこれらの細胞を培養する代わりに、本明細書で提供する方法を使用して、これらの細胞からのTCRは融合TCRポリヌクレオチドへと変換され得る(図19、ステップ(2))。次いで、融合TCRポリヌクレオチドは、TCR発現レンチウイルスベクターへと変換することができ(図19、ステップ(3))、それは本明細書に記載のようにレポーター細胞に形質導入するために使用され得る(図19、ステップ(4))。形質導入したレポーター細胞は、腫瘍細胞または腫瘍mRNA負荷APCとインキュベートすることができ、その後、レポーター陽性細胞(例えば、腫瘍反応性細胞)は、本明細書に記載のように同定または単離され得る(例えば、FACSを使用する)(図19、ステップ(5)、図18も参照)。必要に応じて、同定されたレポーター陽性細胞のTCRは、シークエンスされ得る。次に、選別した細胞からの融合TCRを再増幅させて、大部分のTCRが腫瘍反応性であると考えられる、TCR発現ベクターのプールを作製することができる(図19、ステップ(6))。いくつかの場合では、ドナー由来の同種異系間T細胞を使用して、同種異系間T細胞の代わりに同定された腫瘍反応性細胞を発現させることができる。また、そのような場合では、同種異系間T細胞は、本明細書に記載のように操作され得る。異なるTCR発現ベクターは、個々にまたはプールとして調製することができ、次いで、既存のTCR-T製造方法を使用して、患者の末梢血からの多くの(例えば、数億または数十億の)同種異系間T細胞に形質導入するために使用することができる(図19、ステップ(7))。TCR発現ベクターが個々に調製される場合、それらの規定のサブセット(例えば、5~20TCR)を使用して、末梢血T細胞を操作し、TCR-T細胞を作製することができる。これらのTCR-T細胞は、オリゴクローナルと考えることができる。TCR発現ベクターがプールとして調製される場合、結果生じるTCR-T細胞は、ポリクローナルと呼ぶことができる。例えば、プール内のTCRクローンの総数は、約5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上、30個以上、35個以上、40個以上、45個以上、もしくは50個以上、またはそれより多くてよい。プール内のTCRクローンの総数は、少なくとも約20個、30個、40個、50個、60個、80個、100個、200個、300個、もしくは500個、またはそれより多くであり得る。TCR-T細胞を、一連の放出試験にかけ(図19、ステップ(8))、患者に投与することができる(例えば、注入により)。各ステップに必要であり得る例示的なタイミングは、図19に示す。特定の状況では、腫瘍浸潤T細胞を、患者由来の末梢T細胞と置き換え、免疫受容体発現細胞の供給源として使用することができる。これらの供給源T細胞(例えば、末梢T細胞)は、活性化し、組織または細胞との共培養によって増殖させることができる。末梢血由来の標的反応性T細胞(例えば、腫瘍反応性T細胞)は、(1)表面マーカー発現(例えば、CD25、CD69、CD137、PD-1、および本明細書に記載の他のマーカー)に基づき、(2)本明細書に記載の共培養法を使用して腫瘍抗原によりパルスした、または腫瘍抗原を発現するように操作したAPCによるin vitroでの刺激、または2つの組合せにより濃縮することができる。APCは、プロフェッショナルなAPCまたは非プロフェッショナルなAPCであり得る。APCは、対象、例えば患者または健康なドナーから単離され得る。APCは、本明細書に記載のAPCであり得る(例えば、K562細胞)。
【0321】
[00368]本明細書で提供する方法は、従来の方法より、T細胞の単離から対象への治療細胞の投与までの早い所要時間を提供することができる。本明細書で提供する対象における腫瘍を治療する方法は、対象からT細胞の集団を単離するステップを含むことができ、T細胞の集団はT細胞受容体(TCR)の集団を発現する。TCRの集団のサブ集団は濃縮することができ、サブ集団は複数の腫瘍反応性TCRを含み得る。次に、複数の腫瘍反応性TCRまたはそれらのサブセットを発現する複数のレシピエント細胞は、対象に投与され得る。いくつかの場合では、投与するステップは、T細胞の集団を単離してから、多くても約60日後、50日後、40日後、30日後、20日後またはそれ以下で実施される。いくつかの場合では、対象の腫瘍は、対象からT細胞の集団を単離してから対象へと複数のレシピエント細胞を投与するまで、約60日間、50日間、40日間、30日間、20日間、またはそれ以下より長い期間進行しなかった。いくつかの場合では、腫瘍のサイズは、T細胞の集団を単離してから複数のレシピエント細胞を投与するまで、約50%、30%、40%、20%、15%、10%、5%または2%より小さく増加した。いくつかの場合では、対象の腫瘍細胞の数は、T細胞の集団を単離してから複数のレシピエント細胞を投与するまで、約2倍、3倍、4倍、または5倍まで増加しなかった。いくつかの場合では、腫瘍は、T細胞の集団を単離してから複数のレシピエント細胞を投与するまで、新しいステージへと進行しなかった。例えば、腫瘍は、ステージIからステージII、ステージIIからステージIII、またはステージIIIからステージIVに進行しなかった。
【0322】
[00369]本明細書で提供する対象における腫瘍を治療する方法は、T細胞の集団を対象から単離するステップを含むことができる。T細胞の集団は、内在性核酸からT細胞受容体(TCR)の集団を発現することができる。次に、TCRの集団のサブ集団は濃縮することができ、サブ集団は複数の腫瘍反応性TCRを含み得る。次いで、複数の腫瘍反応性TCRまたはそれらのサブセットを発現する複数のレシピエント細胞は、対象に投与され得る。複数の腫瘍反応性TCRをコードするポリヌクレオチドは、内在性核酸の複製産物であり得る(例えば、転写または増幅産物)。これらの複製産物は、相補鎖が鋳型として既存の鎖を使用して合成される、鋳型依存的な核酸合成、例えば、プライマー伸長、核酸増幅、第二鎖合成、転写、逆転写等によって生成され得る。
【0323】
[00370]いくつかの場合では、方法は、例えばフォスフォアミダイトを使用することによる、複数の腫瘍反応性TCRをコードするポリヌクレオチドの化学合成を含まない。T細胞の集団は、腫瘍浸潤T細胞であり得る。T細胞の集団は、疲弊T細胞または調節性T細胞を含み得る。複数のレシピエント細胞は、同種異系間T細胞、自家T細胞、または細胞系細胞であり得る。方法は、濃縮前のレポーター細胞の集団においてTCRの集団を発現させるステップをさらに含み得る。いくつかの場合では、発現時に、TCRの集団をコードする核酸配列は、ウイルスベクターによってレポーター細胞の集団へと送達され得る。ウイルスベクターは本明細書に記載の任意の型のベクター、例えばウイルスベクターまたは非ウイルスベクターであり得る。例えば、ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、B型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルスベクターまたはそれらの偽型であり得る。レポーター細胞の集団の各レポーター細胞は、レポーター遺伝子を含み得る。濃縮時、TCRの集団は、腫瘍細胞または腫瘍RNA負荷(例えばmRNA負荷)抗原提示細胞または1つもしくは複数の抗原/MHC複合体と接触させることができる。抗原の同一性または配列は公知でなくてよい。濃縮後、TCRの集団のサブ集団は、少なくとも約2個、5個、10個、15個、または20個の異なるTCRの同種対を含み得る。いくつかの場合では、サブ集団は、約20個以上、30個以上、40個以上、50個以上、60個以上、100個以上、200個以上、300個以上、400個以上、500個以上、1,000個以上、1,500個以上、2,000個以上、2,500個以上、3,000個以上、3,500個以上、もしくは4,000個以上、またはそれより多い異なる同種対を含み得る。TCRの集団のサブ集団の各TCRは、異なるエピトープまたは異なるタンパク質に特異的であり得る。TCRの集団のサブ集団の各TCRは、異なる(i)TCRアルファCDR3配列、(ii)TCRベータCDR3可変ドメイン配列、(iii)TCRアルファ可変ドメイン配列、(iv)TCRベータ可変ドメイン配列、または(v)TCRアルファおよびTCRベータ可変ドメイン配列の組合せを含み得る。複数の腫瘍反応性TCRは、対象由来の腫瘍細胞に結合することができるが、対象由来の健康な細胞には結合せず、または腫瘍細胞に対してよりも少なくとも約10分の1、20分の1、50分の1、100分の1、500分の1、または1000分の1の親和性を有する対象由来の健康な細胞には結合する。
【0324】
[00371]本明細書で提供する方法は、化学合成による同定した同種対を合成するステップを必要としない。対象におけるがんを治療する方法は、対象からT細胞の第1の集団を単離するステップを含み得る。T細胞の第1の集団は、内在性核酸からT細胞受容体(TCR)の集団を発現させることができる。次に、内在性核酸によってコードされるTCRの集団をコードする核酸配列は、細胞の第2の集団において発現させることができ、ここで、核酸配列は、例えばフォスフォアミダイトを使用して、化学的に合成されない。次に、TCRの集団のサブ集団は、細胞の第2の集団から濃縮することができ、ここで、サブ集団は複数の腫瘍反応性TCRを含む。次いで、複数の腫瘍反応性TCRを発現する複数のレシピエント細胞は、対象に投与され得る。
【0325】
[00372]本明細書で提供する対象におけるがんを治療する方法は、対象からT細胞の第1の集団を単離するステップを含むことができ、ここで、T細胞の第1の集団は、内在性核酸からT細胞受容体(TCR)の集団を発現する。次に、T細胞の第1の集団からの内在性核酸の転写または増幅産物は、細胞の第2の集団において発現させることができ、ここで、転写または増幅産物はTCRの集団をコードする。転写または増幅産物は、親鎖の複製によって合成された核酸鎖であり得る。次に、細胞の第2の集団からのTCRの集団のサブ集団は濃縮することができ、ここでサブ集団は複数の腫瘍反応性TCRを含む。次いで、複数の腫瘍反応性TCRを発現する複数のレシピエント細胞は、対象に投与され得る。
【0326】
[00373]本明細書で提供する対象におけるがんを治療する方法は、対象からT細胞の第1の集団を単離するステップを含むことができ、ここでT細胞の第1の集団は、内在性核酸からT細胞受容体(TCR)の集団を発現する。次に、TCRの集団は、細胞の第2の集団において発現させることができる。細胞の第2の集団は、T細胞の第1の集団の表現型バックグラウンド/形質を持たなくてもよい。例えば、細胞の第2の集団は、T細胞の第1の集団として非TCR遺伝子の同じ発現プロファイルを持たなくてもよい。細胞の第2の集団は、T細胞の第1の集団と同じ細胞型(例えば、疲弊T細胞、活性化T細胞、メモリーT細胞、またはエフェクターT細胞)でなくてもよい。次に、TCRの集団のサブ集団は、細胞の第2の集団から濃縮することができ、ここでサブ集団は、複数の腫瘍反応性TCRを含む。次に、複数の腫瘍反応性TCRを発現する複数のレシピエント細胞は、対象に投与され得る。T細胞の第1の集団は、腫瘍浸潤T細胞または末梢T細胞であり得る。T細胞の第1の集団は、疲弊T細胞または調節性T細胞を含み得る。投与は、T細胞の第1の集団を単離してから多くても約60日後、50日後、40日後、30日後、20日後またはそれ以下で実施することができる。濃縮時、細胞の第2の集団を、1つまたは複数の抗原/MHC複合体と接触させることができる。抗原/MHC複合体は、MHC四量体との複合体中の抗原であり得る。いくつかの場合では、細胞の第2の集団は、各々1つまたは複数の標的抗原(例えば、腫瘍抗原)を提示する1つまたは複数の細胞と接触させることができる。例えば、細胞の第2の集団は、腫瘍細胞または腫瘍RNA負荷APCと接触させることができる。複数のレシピエント細胞は、同種異系間細胞、自家細胞、または細胞系細胞であり得る。
【0327】
[00374]本明細書で提供する方法を使用して、TCRの集団から複数の腫瘍反応性TCRを同定することができる。本明細書で提供する対象における腫瘍を治療する方法は、TCRの集団から複数の腫瘍反応性T細胞受容体(TCR)を同定するステップを含むことができ、ここでTCRの集団は、少なくとも約20個、30個、50個、100個、1,000個、10,000個、100,000個、1,000,000個、10,000,000個またはそれより多くの異なる同種対を含む。次いで、複数の腫瘍反応性TCRまたはそれらのサブセットを発現する複数の細胞は、対象に投与され得る。複数の腫瘍反応性TCRまたはそれらのサブセットは、複数の細胞に対して外因性であり得る。複数の腫瘍反応性TCRまたはそれらのサブセットは、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、または少なくとも20個の異なる同種対を含み得る。いくつかの場合では、複数の腫瘍反応性TCRまたはそれらのサブセットは、約20個、30個、40個、50個、60個、100個、200個、300個、400個、500個、1,000個、1,500個、2,000個、2,500個、3,000個、3,500個、もしくは4,000個、またはそれより多くより多くの、または等しい異なる同種対を含み得る。複数の腫瘍反応性TCRの各TCRは、異なるエピトープまたは異なるタンパク質に特異的であってよく、または異なる(i)TCRアルファCDR3配列、(ii)TCRベータCDR3可変ドメイン配列、(iii)TCRアルファ可変ドメイン配列、(iv)TCRベータ可変ドメイン配列、または(v)TCRアルファおよびTCRベータ可変ドメイン配列の組合せを含み得る。方法は、対象からTCRの集団を発現するT細胞の集団を単離するステップをさらに含み得る。TCRの異なる同種対は、少なくとも5個、10個、15個、20個、またはそれより多くの異なるV遺伝子由来のV領域を含み得る。
【0328】
[00375]本明細書で提供する方法は、小さい試料サイズ、例えば多くても約100,000個、10,000個、1,000個、100個、またはそれ以下の細胞を有する試料から標的反応性TCRを同定することができる。本明細書で提供する対象における腫瘍を治療する方法は、T細胞受容体(TCR)の集団を発現する対象からT細胞の集団を単離するステップを含むことができ、ここでT細胞の集団は、多くても約10,000個の細胞を含む。次に、複数の腫瘍反応性TCRは、TCRの集団から同定され得る。次に、複数の腫瘍反応性TCRまたはそれらのサブセットを対象に投与することができ、ここで複数の腫瘍反応性TCRまたはそれらのサブセットは、少なくとも約2個、5個、10個、15個、20個、30個、40個、もしくは50個、またはそれより多くの異なる同種対を含む。様々な実施形態では、複数のレシピエント細胞は、対象に投与する前に増殖させることができる。
【0329】
自己免疫疾患の処置のためのTCR-Treg細胞
[00376]がんを治療する「キラー」細胞の作製に加えて、自己免疫疾患を治療する「ヒーラー」細胞も作製し得る。抗原特異的調節性T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)をTreg細胞(Jelena Skuljecら、Chimeric Antigen Receptor-Redirected Regulatory T Cells Suppress Experimental Allergic Airway Inflammation、a Model of Asthma、Front Immunol.2017年;8:1125)に導入することによって作製することができる。組織に特異的なTCRを、本明細書に記載の方法を使用してTreg細胞に導入することができ(培養および操作方法を含む)、これらの細胞をホームに誘導し、特定の組織または臓器を保護する。供給源免疫受容体発現細胞は、組織常在性のT細胞から得ることができ、公知の組織特異的抗原に対して選択することができる。ここで、組織特異的抗原は、細胞内または細胞表面結合され得る。これらのTCR-Treg細胞は、さらに操作し、本明細書に記載のそれらの免疫調節活性を増大するさらなる因子(例えば、サイトカインまたは他の調節性分子)を発現させることができる。そのようなさらなる因子の例は、抗炎症性サイトカイン、例えばIL-1ra、IL-4、IL-10、IL-11、IL-13、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)、およびIL-16を含む。
【0330】
標的反応性TCRの同定
[00377]T細胞は、特定のMHC結合抗原を認識するTCRを同定するため、複数の臓器、例えば末梢血、脾臓、リンパ節、および腫瘍(ここでは、本開示の他の箇所の記載と一貫するように、「供給源TCR発現細胞」と総称する)からスクリーニングされ得る。本明細書に記載の方法を使用して得られたポリクローナルTCRプログラムレシピエント細胞は、これらの適用において供給源TCR発現細胞を置き換えることができる。これらの適用では、レシピエント細胞は、細胞系細胞、例えば細胞系T細胞であり得る。細胞系T細胞の例は、限定はされないが、Jurkat、CCRF-CEM、HPB-ALL、K-T1、TALL-1、MOLT16/17、およびHUT78/H9を含む。細胞系T細胞の内在性TCRは、本明細書に記載のようにノックアウトまたはノックダウンされ得る。
【0331】
[00378]一部の実施形態では、MHC結合抗原は、ペプチドMHC複合体(pMHC)、pMHC四量体、pMHCオリゴマーである。例えば、pMHCは、ストレプトアビジン足場上で四量体化、または様々な化学足場上でオリゴマー化することができる(Cochran&Stern、2000年)。一部の実施形態では、pMHC、pMHC四量体、pMHCオリゴマーを蛍光標識し、pMHCを認識するポリクローナルTCRプログラムレシピエント細胞のFACS選別を促進させる。
【0332】
[00379]一部の実施形態では、MHC結合抗原は、細胞の表面上に提示される。いくつかの場合では、細胞は抗原提示細胞(APC)である。APCは、プロフェッショナルなAPC、例えば樹状細胞、マクロファージ、またはB細胞であり得る。APCは、MHCまたはHLAを発現する他の細胞(例えば、人工APC)でもあり得る。例えば、がん細胞系由来の細胞はAPCであり得る。一部の実施形態では、APCを操作して、1つのクラスIMHC対立遺伝子のみを発現させることができる。一部の実施形態では、APCを操作して、任意の数のクラスIMHC対立遺伝子およびクラスIIMHC対立遺伝子、例えば1人の対象から単離された全てのクラスIまたはクラスIIMHC対立遺伝子を発現させることができる。対象はヒトであり得る。ヒトは患者であり得る。患者はがん患者であり得る。
【0333】
[00380]一部の実施形態では、MHC結合抗原のエピトープが明確に定義される。例えば、pMHC四量体において、エピトープペプチドは、化学的に合成され得る。一部の実施形態では、MHC結合抗原のエピトープが知られていない、または明確に定義されない。例えば、抗原タンパク質は、APCにおいて過剰発現させることができ、複数のエピトープをAPCによって提示させることができる。別の例では、タンパク質の小さな群(例えば、少なくとも2個のタンパク質、少なくとも3個のタンパク質、少なくとも4個のタンパク質、少なくとも5個のタンパク質、少なくとも10個のタンパク質、少なくとも20個のタンパク質、少なくとも30個のタンパク質、少なくとも40個のタンパク質、または少なくとも50個のタンパク質)をAPCにおいて過剰発現させることができる。別の例では、未知の数のタンパク質をAPCにおいて過剰発現させることができ、そのような場合、cDNAプールをAPCに送達することができる(例えば、トランスフェクト、電気穿孔、または本明細書に記載のベクターを使用する他の送達方法)。
【0334】
[00381]一部の実施形態では、抗原は、抗原コードDNAまたはmRNAをAPCにトランスフェクトすることによってAPCに導入され得る。一部の実施形態では、タンパク質としての抗原は、APCの培養培地に添加され得る。一部の実施形態では、ペプチドとしての抗原は、APCの培養培地に添加され得る。
【0335】
[00382]MHC結合抗原を認識するTCR発現レシピエント細胞は、そうでないものから選択され得る。選択は、可溶性の、蛍光標識したpMHC、pMHC四量体またはpMHCオリゴマーへの結合に基づき得る。選択は、細胞がMHC結合抗原に接触した後の、TCR発現レシピエント細胞上での細胞表面マーカー発現に基づき得る。細胞表面マーカーは、CD25、CD69、CD39、CD103、CD137、ならびに他のT細胞活性化マーカー、またはそれらの組合せであり得る。選択は、カルシウム流入に基づき得る。選択は、レポーター遺伝子発現にも基づき得る。レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質(例えばGFPおよびmCherry)であり得る。レポーター遺伝子は、TCRシグナル伝達によって調節される転写因子の制御下にあり得る。これらの転写因子の例は、限定はされないが、AP-1、NFAT、NF-カッパ-B、Runx1、Runx3等を含む。
【0336】
[00383]一部の実施形態では、上記の基準に基づく、選択されたTCRプログラムレシピエント細胞は、増殖させ、MHC結合抗原を認識するTCRをさらに濃縮するため、再度選択を受けることができる。一部の実施形態では、選択されたTCR発現レシピエント細胞から単離されたTCR発現ベクターにおける融合TCRポリヌクレオチドは、増幅させ、TCR発現ベクターへと変換させることができる。また、これらのTCR発現ベクターを使用して、TCRプログラムレシピエント細胞の新しい集団を得ることができる。これらの細胞は、MHC結合抗原を認識するTCRをさらに濃縮するため、再度選択を受けることができる。
【0337】
[00384]抗原、エピトープまたは提示するMHCの同一性を必ずしも知る必要のない腫瘍反応性TCRの高速同定は、がんの免疫治療において広い適用範囲を持ち、レポーターベースの選択方法と組み合わせた本明細書に記載の大規模な平行TCRクローニング技術によって達成され得る。
【0338】
[00385]レポーターベースの選択方法の例示的なスキームを図18に概略する。レポーター細胞系は、T細胞系(例えば、Jurkat)であり得る。レポーター細胞系は、TCRシグナル伝達(例えば、NFAT、NF-カッパ-B、Nur77)によって制御されるプロモーターによって駆動されるレポーター遺伝子(例えば、蛍光タンパク質または染色可能な細胞表面タンパク質)を担持し得る。必要に応じて、レポーター細胞系の内在性TCRは、ノックアウトされ得る。レポーター細胞は、T細胞(例えば、腫瘍浸潤T細胞)の集団から得られたポリクローナルTCR発現レンチウイルスベクターによって形質導入することができ、そのいくつかは腫瘍反応性(または腫瘍特異的)である(図18、ステップ(1))。形質導入したレポーター細胞は、腫瘍細胞、腫瘍組織、腫瘍様塊、または腫瘍遺伝子を発現するように操作されたAPC(すなわち、がんワクチンとして研究されている腫瘍mRNA負荷APC)(自家MHCを発現するように操作された自家APCまたは同種異系間APCのいずれか)とインキュベートされ得る(図18、ステップ(2))。レポーター細胞系に形質導入したTCRが腫瘍反応性である場合、レポーター細胞内のレポーター遺伝子を発現させることができ、細胞を同定することができる(例えば、FACSまたはMACSを使用して選択する/単離する/濃縮する)(図18、ステップ(3))。必要に応じて、腫瘍反応性である同定されたTCRはシークエンスされ得る。選別された細胞由来のすでに融合したTCRは、単にPCR増幅され、バッチでTCR発現ベクターにクローニングされ得る。必要に応じて、個々のTCRは、例えばTCR発現ベクターを持つ大腸菌(E.coli)のコロニーを取ることによって得ることができる。
【0339】
[00386]本明細書に記載の方法は、免疫モニタリング試験を可能にし、患者の腫瘍組織または末梢血における腫瘍反応性T細胞を定量することができる。例えば、腫瘍生検は、がん患者から得ることができる。末梢T細胞も、同じ患者から得ることができる。末梢T細胞からのTCRは、TCR発現ベクターへとクローニングすることができ、順に本明細書に記載のようにレポーター細胞系を操作するために使用され得る。その間に、HLA遺伝子は、末梢血から増幅され得る。ヒトHLA発現のないAPC細胞系(例えば、K562および721.221などのMHCを発現しない、または非常に低いレベルで発現するヒト細胞系、COS-7などの非ヒト霊長類細胞系、または内在性HLAをノックアウトしたヒト細胞系)は、操作して患者のHLA遺伝子を発現させることができる。患者由来の自家APC(例えば、単球由来樹状細胞、樹状細胞、マクロファージ、およびB細胞)もAPCとして使用され得る。腫瘍試料(外科的試料または生検)からの全長mRNAを、単離、増幅および上記の自家またはHLA操作した同種異系間APCへとトランスフェクトし、腫瘍mRNA負荷APCを作製することができる。腫瘍試料は、コア生検または細針生検試料などの生検試料であり得る。これらの試料は、小体積の腫瘍試料でさえも増幅するのに十分なmRNAを含有し得るため、小体積(例えば、<1000mm、<500mm、<100mm、<50mm)であり得る。いくつかの場合では、腫瘍試料の体積は、約2000mm、1000mm、800mm、500mm、100mm、50mm、または20mmに等しいまたは多くても約2000mm、1000mm、800mm、500mm、100mm、50mm、または20mmであり得る。したがって、この方法は、大きな外科的腫瘍試料を得るのが難しい状況に適用することができる。TCR操作したレポーター細胞および腫瘍mRNA負荷APCは共にインキュベートすることができ、腫瘍反応性であるレポーター発現細胞を、上記のように単離することができる。単離された細胞由来のTCRは、シークエンスし、配列および多くの腫瘍反応性TCRを提供することができる。そのような情報を含有する報告が発行されていることもある。この方法は、従来のTCRレパートリー解析と組み合わせて、多くの腫瘍反応性TCRの正確性を改善することができる。APCおよびこの段落に記載の腫瘍mRNA負荷APCを得るおよび操作する方法は、本文書の他の箇所に記載の方法でも使用され得る。
【0340】
[00387]例えば、複数の標的反応性T細胞受容体(TCR)を同定する方法は、TCRの集団を発現する細胞の集団を提供するステップを含み得る。TCRの集団は、細胞の集団に対して外因性であり得る。TCRの集団は、異なる同種対、例えば、少なくとも50個の異なる同種対を含み得る。TCRの集団は、少なくとも約10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、またはそれより多くの異なるV遺伝子由来のV領域を含み得る。TCRの集団は、少なくとも100個の異なるVJ組合せを含み得る。方法は、細胞の集団を1つまたは複数の標的抗原と接触させるステップをさらに含むことができ、ここで複数の標的反応性TCRは1つまたは複数の標的抗原に結合する。次いで、複数の標的反応性TCRは、単離または濃縮され得る。いくつかの場合では、複数の少なくとも約5個、10個、15個、20個、30個、50個、100個、200個、300個、400個、500個、600個またはそれより多くの標的反応性TCRが単離または濃縮され得る。細胞の集団は、操作細胞、非疲弊細胞、または患者から単離されていない細胞であり得る。方法は、細胞の集団を1つまたは複数の標的抗原と接触させるステップをさらに含むことができ、ここで複数の標的反応性TCRは1つまたは複数の標的抗原と結合することができる。次いで、複数の少なくとも5個の標的反応性TCRが単離または濃縮され得る。TCRの集団は、少なくとも約100個、200個、500個、1,000個、10,000個、100,000個、1,000,000個、または10,000,000個の異なる同種対を含み得る。複数の標的反応性TCRは、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、またはそれより多くの異なるV遺伝子由来のV領域を含む。いくつかの場合では、細胞の集団を、腫瘍細胞または1つもしくは複数の標的抗原を提示する抗原提示細胞と接触させる。標的抗原は、腫瘍抗原または組織特異的抗原であり得る。1つまたは複数の標的抗原は、主要組織適合複合体(MHC)との複合体であり得る。MHCは、MHC四量体であり得る。方法は、複数の標的反応性TCRのうちの少なくとも1つの標的反応性TCRを対象に投与するステップをさらに含み得る。いくつかの場合では、細胞または操作した細胞の集団の細胞は、レポーター遺伝子を含み得る。レポーター遺伝子は、細胞のTCRが1つまたは複数の標的抗原の標的抗原に結合する場合、シグナルを送るように調節され得る。細胞または操作した細胞の集団は、細胞系細胞(例えば、Jurkat細胞)であり得る。
【0341】
[00388]例えば、複数の標的反応性T細胞受容体(TCR)を同定する方法は、複数のTCRを発現する複数のT細胞を提供するステップを含み得る。複数のTCRは、少なくとも20個の異なるV遺伝子由来のV領域を含む、少なくとも50個の異なる同種対を含み得る。方法は、複数のTCRの各TCRのTCRアルファ(またはガンマ)鎖をコードする第1のポリヌクレオチドとTCRベータ(またはデルタ)鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを物理的に連結するステップ、それによって複数の融合ポリヌクレオチドを生成するステップをさらに含み得る。複数の融合ポリヌクレオチドは、複数の細胞において発現させることができ、ここで複数の細胞のサブセットが、複数の標的反応性TCRを発現する。複数の細胞を、1つまたは複数の標的抗原と接触させ、複数の標的反応性TCRを同定することができる。複数の標的反応性TCRを発現する複数の細胞のサブセットは、1つまたは複数の標的抗原に結合することができる。複数の細胞のサブセットを、単離または濃縮し、それによって複数の標的反応性TCRを単離または濃縮することができる。
【0342】
[00389]例えば、複数の標的反応性T細胞受容体(TCR)を同定する方法は、複数のTCRを発現する複数のT細胞を提供するステップを含み得る。複数のTCRは、少なくとも20個の異なるV遺伝子由来のV領域を含む少なくとも50個の異なる同種対を含み得る。方法は、任意のバーコーディング、例えば単一細胞バーコーディングを使用しない、複数のTCRの1つまたは複数の同種対をシークエンシングするステップをさらに含み得る。例えば、シークエンシングは、複数のTCRの1つまたは複数の同種対のTCR鎖をシークエンシングするステップを含むことができ、ここでTCR鎖は同じバーコードを含まない。次いで、複数のTCRまたはそれらのサブセットをコードする1つまたは複数の同種対を、例えば可溶性形態でまたは複数の細胞において発現させることができる。1つまたは複数の同種対を発現させるために使用する複数の細胞は、細胞系細胞であり得る。複数のTCRまたはそれらのサブセットは、複数の標的反応性TCRを含み得る。次いで、複数のTCRを、1つまたは複数の標的抗原と接触させて、標的反応性TCRを同定することができる。複数の標的反応性TCRは、1つまたは複数の標的抗原に結合することができ、次いで単離または濃縮することができる。いくつかの場合では、TCRの同種対を同定する場合、複数のTCRの各TCRのTCRアルファ鎖をコードする第1のポリヌクレオチドとTCRベータ鎖をコードする第2のポリヌクレオチドを物理的に連結させ、それによって複数の融合ポリヌクレオチドを生成することができる。方法は、複数のTCRの1つまたは複数の同種対をシークエンシングするステップをさらに含み得る。複数のT細胞が対象から単離され得る。複数のT細胞は、腫瘍浸潤T細胞であり得る。複数のT細胞は、疲弊T細胞を含み得る。複数の標的反応性TCRは、FACSによって単離または濃縮され得る。複数の標的反応性TCRは、細胞表面マーカーまたはサイトカインマーカーによって単離され得る。例えば、標的反応性TCRは、FACSによる選別のための、CD69、CD25またはCD41BBなどの表面マーカーに特異的な抗体を使用することによって単離または濃縮され得る。
【0343】
[00390]いくつかの場合では、試料から単離された複数のT細胞は、例えば、抗原を提示するAPCによって、in vivoで培養および刺激することができ、複数のT細胞のサブセットを濃縮することができる。次いで、これらの前もって濃縮したT細胞を使用して、標的反応性TCRを同定することができる。例えば、血液試料またはPBMC試料から複数のT細胞を単離する場合、複数のT細胞の少ない画分が標的反応性T細胞であり得る。そのような場合では、先ず、複数のT細胞を1つまたは複数の標的抗原(例えば、MHC四量体形態、または細胞表面に提示される)と接触させ、T細胞を活性化することができる。複数のT細胞のサブセットは、マーカー(例えば、表面マーカー)に基づいて濃縮または単離することができ、次いで、同種TCR鎖を融合させるステップを含む、本明細書に記載の続く同定方法のために使用することができる。前もって濃縮したT細胞は、例えばシークエンシングを使用する、同種対を同定する公知の方法に供することもできる。シークエンシングは単一細胞バーコーディング(例えば、T細胞を個々の区画に分けるステップ、単一細胞から放出される核酸をバーコーディングするステップ、核酸をシークエンシングし、同じバーコードに基づく単一細胞からのTCR鎖を対合するステップ)を使用し得る。
【0344】
組成物
[00391]本開示は、融合免疫受容体ポリヌクレオチドを含む組成物、融合免疫受容体ポリヌクレオチドを含有する発現ベクター、または融合免疫受容体ポリヌクレオチドおよび/または発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。本開示は、融合免疫受容体ポリヌクレオチドを生成する核酸を含有する複数のヒドロゲル粒子を含む組成物も提供する。
【0345】
[00392]一態様では、本明細書は、複数の融合T細胞受容体(TCR)ポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。複数の各融合TCRポリヌクレオチドは、第1の核酸配列および第2の核酸配列を含み得る。第1の核酸配列は、第1のTCRペプチド配列の第1の可変ドメインをコードすることができ、ここで第1の可変ドメインはCDR2およびCDR3を含み、第2の核酸配列は第2のTCRペプチド配列の第2の可変ドメインをコードすることができ、ここで第2の可変ドメインはCDR2およびCDR3を含む。各融合TCRポリヌクレオチドの第1および第2の核酸配列は、免疫細胞由来の第1および第2のTCRペプチド配列の同種対をコードすることができる。複数の融合TCRポリヌクレオチドは、少なくとも約50個、100個、1,000個、10,000個、100,000個、1,000,000個、または10,000,000個の異なる同種対をコードする。複数の融合TCRポリヌクレオチドは、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、またはそれより多くの異なるV遺伝子由来のV領域を含み得る。
【0346】
[00393]第1のTCRペプチド鎖はT細胞受容体(TCR)アルファペプチド鎖であってよく、第2のTCRペプチド鎖はTCRベータペプチド鎖であってよい。第1のTCRペプチド鎖はTCRガンマペプチド鎖であってよく、第2のTCRペプチド鎖はTCRデルタペプチド鎖であってよい。第1の可変ドメインはCDR1をさらに含み得る。第2の可変ドメインはCDR1をさらに含み得る。第1のTCRペプチド鎖の第1の可変ドメインは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、およびCDR3を含む第1の全長可変ドメインであり得る。第2のTCRペプチド鎖の第2の可変ドメインは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、およびCDR3を含む第2の全長可変ドメインであり得る。第1の核酸配列は、第1のTCRペプチド鎖の第1の定常ドメインまたはそれらの部分をさらにコードし得る。第2の核酸配列は、第2のTCRペプチド鎖の第2の定常ドメインまたはそれらの部分をさらにコードし得る。各融合TCRポリヌクレオチドは、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、または少なくとも1500塩基対長であり得る。各融合TCRポリヌクレオチドは、少なくとも1000、少なくとも1500、または少なくとも2000塩基対長であり得る。
【0347】
[00394]第1の核酸配列および第2の核酸配列は、免疫細胞から獲得または放出され得る。免疫細胞は試料から単離され得る。例えば、試料は、血液試料、骨髄試料、臍帯血試料、腹水試料、胸水滲出液試料、脳脊髄試料、精液試料、唾液試料、尿試料、便試料、またはそれらの組合せであり得る。別の例としては、試料は、脳、肝臓、肺、腎臓、前立腺、卵巣、脾臓、リンパ節、扁桃、甲状腺、膵臓、心臓、骨格筋、腸、咽頭、食道、胸腺、胃、腫瘍、または感染部位を含む、様々な供給源から得た組織試料であり得る。試料は、対象から得ることができる。対象は、健康な対象または疾患の対象であり得る。いくつかの場合では、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、またはラットであり得る。免疫細胞は、二分免疫受容体を有するまたは発現する様々な免疫細胞であり得る。例えば、免疫細胞は、限定はされないが、T細胞またはB細胞を含む、リンパ球であり得る。T細胞は、炎症性T細胞、細胞傷害性T細胞、調節性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、またはそれらの組合せであり得る。T細胞は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞であり得る。
【0348】
[00395]いくつかの場合では、免疫細胞は、in vitroまたはex vivoで増殖させることができる。免疫細胞は、マーカーによって試料から単離され得る。マーカーは、細胞表面マーカーであり得る。例えば、好適な細胞表面マーカーは、限定はされないが、CD39、CD69、CD103、CD25、PD-1、TIM-3、OX-40、4-1BB、CD137、CD3、CD28、CD4、CD8、CD45RA、CD45RO、GITR、およびFoxP3を含む。マーカーはサイトカインであり得る。例えば、サイトカインは、IFN-γ、TNFアルファ、IL-17A、IL-2、IL-3、IL-4、GM-CSF、IL-10、IL-13、グランザイムB、パーフォリン、またはそれらの組合せであり得る。
【0349】
[00396]融合TCRポリヌクレオチドは、プロモーターをさらに含み得る。プロモーターは、構成的または誘導性であり得る。例えば、プロモーターは、テトラサイクリン応答性プロモーターであり得る。プロモーターは、ウイルスプロモーターであリ得る。プロモーターは、βアクチンプロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、免疫グロブリンプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、レトロウイルスプロモーター、フレンド脾フォーカス形成ウイルス(Friend spleen focus-forming virus)プロモーター、ヘルペスウイルスTKプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、メタロチオネインプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニア7.5Kプロモーター、またはエノラーゼプロモーターであり得る。
【0350】
[00397]第1の核酸および第2の核酸は、第1の核酸および第2の核酸の発現が1つのプロモーターの制御下にあり得るように、インフレームで融合され得る。いくつかの他の場合では、第1の核酸および第2の核酸は、インフレームで融合されなくてもよい。第1の核酸および第2の核酸の発現は、2つのプロモーター下で制御され得る。2つのプロモーターは、同じであっても異なっていてもよい。
【0351】
[00398]融合TCRポリヌクレオチドは、プロテアーゼ切断部位をコードする配列をさらに含み得る。プロテアーゼ切断部位は、細胞性プロテアーゼ切断部位またはウイルスプロテアーゼ切断部位であり得る。プロテアーゼ切断部位は、エンテロキナーゼ切断部位、factor Xa切断部位、トロンビン切断部位、レニン切断部位、コラゲナーゼ切断部位、トリプシン切断部位、カスパーゼプロテアーゼ切断部位、フューリン切断部位、PC5/6プロテアーゼ切断部位、PACEプロテアーゼ切断部位、LPC/PC7プロテアーゼ切断部位、Factor Xaプロテアーゼ切断部位、genenaseI切断部位、MMPプロテアーゼ切断部位、またはKEX2プロテアーゼ切断部位であり得る。プロテアーゼ切断部位は、ウイルス2Aプロテアーゼ切断部位、ウイルス3Cプロテアーゼ切断部位、伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPNV)VP4プロテアーゼ切断部位、タバコエッチ病ウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位、またはカブモザイクポティウイルスの核内封入タンパク質a(N1a)切断部位であり得る。融合TCRポリヌクレオチドは、自己切断型ペプチドをコードする配列を含み得る。自己切断型ペプチドは、インテインペプチド、ヘッジホッグペプチド、または2Aペプチドであり得る。
【0352】
[00399]複数の融合TCRポリヌクレオチドは、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、またはそれより多くの異なるV遺伝子由来のV領域を含み得る。いくつかの場合では、複数の融合TCRポリヌクレオチドは、少なくとも20個の異なるV遺伝子を含む。少なくとも20個の異なるV遺伝子は、少なくとも10個の異なるTRAV遺伝子および/または少なくとも10個の異なるTRBV遺伝子を含み得る。TRAV遺伝子またはTRBV遺伝子は、ヒトTRAV遺伝子またはTRBV遺伝子であり得る。TRAV遺伝子またはTRBV遺伝子は、マウスTRAV遺伝子またはTRBV遺伝子であり得る。ヒトTRAV遺伝子の例は、ヒトTRAV1-1、TRAV1-2、TRAV2、TRAV3、TRAV4、TRAV5、TRAV6、TRAV7、TRAV8-1、TRAV8-2、TRAV8-3、TRAV8-4、TRAV8-6、TRAV9-1、TRAV9-2、TRAV10、TRAV12-1、TRAV12-2、TRAV12-3、TRAV13-1、TRAV13-2、TRAV14、TRAV16、TRAV17、TRAV18、TRAV19、TRAV20、TRAV21、TRAV22、TRAV23、TRAV24、TRAV25、TRAV26-1、TRAV26-2、TRAV27、TRAV29、TRAV30、TRAV34、TRAV35、TRAV36、TRAV38-1、TRAV38-2、TRAV39、TRAV40および、TRAV41を含む。ヒトTRBV遺伝子の例は、ヒトTRBV2、TRBV3-1、TRBV4-1、TRBV4-2、TRBV4-3、TRBV5-1、TRBV5-4、TRBV5-5、TRBV5-6、TRBV5-8、TRBV6-1、TRBV6-2、TRBV6-3、TRBV6-4、TRBV6-5、TRBV6-6、TRBV6-8、TRBV6-9、TRBV7-2、TRBV7-3、TRBV7-4、TRBV7-6、TRBV7-7、TRBV7-8、TRBV7-9、TRBV9、TRBV10-1、TRBV10-2、TRBV10-3、TRBV11-1、TRBV11-2、TRBV11-3、TRBV12-3、TRBV12-4、TRBV12-5、TRBV13、TRBV14、TRBV15、TRBV16、TRBV18、TRBV19、TRBV20-1、TRBV24-1、TRBV25-1、TRBV27、TRBV28、TRBV29-1および、TRBV30を含む。
【0353】
[00400]複数の融合TCRポリヌクレオチドは、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、またはそれより多くの異なるV遺伝子サブグループ由来のV領域を含み得る。少なくとも20個の異なるV遺伝子は、少なくとも20個の異なるV遺伝子サブグループ由来の遺伝子を含み得る。少なくとも20個の異なるV遺伝子サブグループは、少なくとも10個の異なるTRAV遺伝子サブグループおよび/または少なくとも10個の異なるTRBV遺伝子サブグループを含み得る。ヒトTRAV遺伝子サブグループの例は、ヒトTRAV1、TRAV2、TRAV3、TRAV4、TRAV5、TRAV6、TRAV7、TRAV8、TRAV9、TRAV10、TRAV12、TRAV13、TRAV14、TRAV16、TRAV17、TRAV18、TRAV19、TRAV20、TRAV21、TRAV22、TRAV23、TRAV24、TRAV25、TRAV26、TRAV27、TRAV29、TRAV30、TRAV34、TRAV35、TRAV36、TRAV38、TRAV39、TRAV40、およびTRAV41サブグループを含む。ヒトTRBV遺伝子サブグループの例は、ヒトTRBV2、TRBV3、TRBV4、TRBV5、TRBV6、TRBV7、TRBV9、TRBV10、TRBV11、TRBV12、TRBV13、TRBV14、TRBV15、TRBV16、TRBV18、TRBV19、TRBV20、TRBV24、TRBV25、TRBV27、TRBV28、TRBV29、およびTRBV30サブグループを含む。
【0354】
[00401]マウスTRAV遺伝子の例は、マウスTRAV1、TRAV2、TRAV3-1、TRAV3-3、TRAV3-4、TRAV3D-3、TRAV3N-3、TRAV4-2、TRAV4-3、TRAV4-4、TRAV4D-2、TRAV4D-3、TRAV4D-4、TRAV4N-3、TRAV4N-4、TRAV5-1、TRAV5-2、TRAV5-4、TRAV5D-2、TRAV5D-4、TRAV5N-2、TRAV5N-4、TRAV6-1、TRAV6-2、TRAV6-3、TRAV6-4、TRAV6-5、TRAV6-6、TRAV6-7、TRAV6D-3、TRAV6D-4、TRAV6D-5、TRAV6D-6、TRAV6D-7、TRAV6N-5、TRAV6N-6、TRAV6N-7、TRAV7-1、TRAV7-2、TRAV7-3、TRAV7-4、TRAV7-5、TRAV7-6、TRAV7D-2、TRAV7D-3、TRAV7D-4、TRAV7D-5、TRAV7D-6、TRAV7N-4、TRAV7N-5、TRAV7N-6、TRAV8-1、TRAV8-2、TRAV8D-1、TRAV8D-2、TRAV8N-2、TRAV9-1、TRAV9-2、TRAV9-3、TRAV9-4、TRAV9D-1、TRAV9D-2、TRAV9D-3、TRAV9D-4、TRAV9N-2、TRAV9N-3、TRAV9N-4、TRAV10、TRAV10D、TRAV10N、TRAV11、TRAV11D、TRAV11N、TRAV12-1、TRAV12-2、TRAV12-3、TRAV12D-1、TRAV12D-2、TRAV12D-3、TRAV12N-1、TRAV12N-2、TRAV12N-3、TRAV13-1、TRAV13-2、TRAV13-3、TRAV13-4、TRAV13-5、TRAV13D-1、TRAV13D-2、TRAV13D-3、TRAV13D-4、TRAV13N-1、TRAV13N-2、TRAV13N-3、TRAV13N-4、TRAV14-1、TRAV14-2、TRAV14-3、TRAV14D-1、TRAV14D-2、TRAV14D-3、TRAV14N-1、TRAV14N-2、TRAV14N-3、TRAV15-1、TRAV15-2、TRAV15D-1、TRAV15D-2、TRAV15N-1、TRAV15N-2、TRAV16、TRAV16D、TRAV16N、TRAV17、TRAV18、TRAV19、TRAV20、およびTRAV21を含む。マウスTRBV遺伝子の例は、マウスTRBV1、TRBV2、TRBV3、TRBV4、TRBV5、TRBV8、TRBV9、TRBV10、TRBV12-1、TRBV12-2、TRBV13-1、TRBV13-2、TRBV13-3、TRBV14、TRBV15、TRBV16、TRBV17、TRBV19、TRBV20、TRBV21、TRBV23、TRBV24、TRBV26、TRBV29、TRBV30、およびTRBV31を含む。マウスTRAV遺伝子サブグループの例は、マウスTRAV1、TRAV2、TRAV3、TRAV4、TRAV5、TRAV6、TRAV7、TRAV8、TRAV9、TRAV10、TRAV11、TRAV12、TRAV13、TRAV14、TRAV15、TRAV16、TRAV17、TRAV18、TRAV19、TRAV20、およびTRAV21サブグループを含む。マウスTRBV遺伝子サブグループの例は、マウスTRBV1、TRBV2、TRBV3、TRBV4、TRBV5、TRBV8、TRBV9、TRBV10、TRBV12、TRBV13、TRBV14、TRBV15、TRBV16、TRBV17、TRBV19、TRBV20、TRBV21、TRBV23、TRBV24、TRBV26、TRBV29、TRBV30、およびTRAV31サブグループを含む。
【0355】
[00402]融合TCRポリヌクレオチドは環状化させることができる。複数の融合TCRポリヌクレオチドは、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個の異なる(またはユニークな)配列を含み得る。
【0356】
[00403]融合TCRポリヌクレオチドは、発現のため、宿主細胞に送達され得る。様々な遺伝子送達方法が使用され得る。上記のように、いくつかの場合では、融合TCRポリヌクレオチドは電気穿孔によって宿主細胞に送達することができ、いくつかの他の場合では、融合TCRポリヌクレオチドは、ベクターによって宿主細胞に送達することができる。一部の実施形態では、本明細書は、各々本明細書に記載の複数の融合TCRポリヌクレオチド由来の異なる融合TCRポリヌクレオチドを含む、複数のベクターを提供する。複数のベクターは、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、少なくとも10,000,000個のベクターを含み得る。複数のベクターは、自己増幅RNAレプリコン、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、またはビリオンであり得る。複数のベクターは、ウイルスベクターであり得る。複数のベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、B型肝炎ウイルス、もしくはヒトパピローマウイルスまたはこれらの偽型由来であり得る。複数のベクターは、非ウイルスベクターであり得る。非ウイルスベクターは、ナノ粒子、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、金属性ナノポリマー、ナノロッド、リポソーム、ミセル、マイクロバブル、細胞透過性ペプチド、またはリポスフィアであり得る。
【0357】
[00404]別の態様では、本明細書は、複数のベクターを含む組成物であって、複数の各ベクターが、第1の核酸配列および第2の核酸配列を有する融合TCRポリヌクレオチドを含み、ここで(1)第1の核酸配列が第1のTCRペプチド鎖の第1の可変ドメインをコードし、第1の可変ドメインがCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、(2)第2の核酸配列が第2のTCRペプチド鎖の第2の可変ドメインをコードし、第2の可変ドメインがCDR1、CDR2、およびCDR3を含み;各融合TCR配列の第1および第2の核酸配列が、免疫細胞由来の第1および第2のTCRペプチド鎖の同種対をコードする、組成物を提供する。複数の融合TCRポリヌクレオチドは、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、またはそれより多くの異なるV遺伝子を含み得る。いくつかの場合では、複数の融合TCRポリヌクレオチドは、少なくとも20個の異なるV遺伝子を含む。いくつかの場合では、複数のベクターは、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個の異なる同種対を含む。少なくとも20個の異なるV遺伝子は、少なくとも10個の異なるTRAV遺伝子サブグループおよび/または少なくとも10個の異なるTRBV遺伝子サブグループを含み得る。
【0358】
[00405]別の態様では、本明細書は、複数のTCRを提供する。複数の各TCRは、複数の融合TCRポリヌクレオチド由来の異なる融合TCRポリヌクレオチドによってコードされ得る。複数の各TCRは、本明細書に記載の複数のベクター由来の異なる融合TCRポリヌクレオチドによってコードされ得る。複数のTCRは、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個のTCRを含み得る。
【0359】
[00406]別の態様では、本明細書は、複数の宿主細胞を提供する。本明細書に記載のように、そのような宿主細胞は、「レシピエント細胞」と呼ばれる。複数の各宿主細胞は、本明細書に記載の複数の融合TCRポリヌクレオチド由来の異なる融合TCRポリヌクレオチドを含み得る。複数の各宿主細胞は、本明細書に記載の複数のベクターの異なるベクターを含み得る。複数の各宿主細胞は、融合TCRポリヌクレオチドを発現し得る。複数の各宿主細胞は、複数のTCRの異なるTCRを含み得る。複数の宿主細胞は、T細胞またはB細胞であり得る。T細胞は、炎症性T細胞、細胞傷害性T細胞、調節性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、またはそれらの組合せであり得る。T細胞は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞であり得る。複数の宿主細胞は、自家細胞であり得る。複数の宿主細胞は、同種異系間細胞であり得る。複数の宿主細胞は、ドナーから得ることができる。ドナーはヒトであり得る。ドナーは、健康なドナーまたは疾患のドナーであり得る。複数の宿主細胞は、試料から得ることができる。例えば、試料は、血液試料、骨髄試料、臍帯血試料、腹水試料、胸水滲出液試料、脳脊髄試料、精液試料、唾液試料、尿試料、便試料、またはそれらの組合せであり得る。別の例としては、試料は、脳、肝臓、肺、腎臓、前立腺、卵巣、脾臓、リンパ節、扁桃、甲状腺、膵臓、心臓、骨格筋、腸、咽頭、食道、胸腺、胃、腫瘍、感染部位、またはそれらの組合せから得た組織試料であり得る。複数の宿主細胞は、細胞系細胞であり得る。細胞系細胞の例は、限定はされないが、CHO-K1細胞;HEK293細胞;Caco2細胞;U2-OS細胞;NIH3T3細胞;NSO細胞;SP2細胞;CHO-S細胞;DG44細胞;K-562細胞、U-937細胞;MRC5細胞;IMR90細胞;Jurkat細胞;HepG2細胞;HeLa細胞;HT-1080細胞;HCT-116細胞;Hu-h7細胞;Huvec細胞;またはMolt 4細胞を含む。複数の宿主細胞は、遺伝子改変された細胞であり得る。いくつかの場合では、TCRアルファペプチド配列、TCRベータペプチド配列、TCRガンマペプチド配列、TCRデルタペプチド配列、BCR重ペプチド配列、またはBCR軽ペプチド配列をコードする内在性遺伝子は、下方調節または不活性化され得る。いくつかの場合では、TCRアルファおよびベータペプチド配列の両方をコードする内在性遺伝子は、下方調節または不活性化される。いくつかの場合では、さらなる内在性遺伝子が下方調節または不活性化される。さらなる内在性遺伝子の例は、限定はされないが、PD1、CTLA-4、LAG3、Tim3、BTLA、BY55、TIGIT、B7H5、LAIR1、SIGLEC10、および2B4を含む。いくつかの場合では、2つまたはそれより多くのさらなる内在性遺伝子が、下方調節または不活性化される。宿主細胞を、さらなる因子を発現するように操作して、宿主細胞の機能を増大させることができる。機能は、細胞傷害性機能、炎症促進性機能、または抗炎症機能であり得る。さらなる因子は、サイトカインであってよい。サイトカインは、炎症促進性サイトカインまたは抗炎症サイトカインであり得る。サイトカインは、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターロイキン(IL)-1α、IL-1β、IL-2、IL-5、IL-6、IL-8、IL-15、IL-18、インターフェロン(IFN-γ)、血小板活性化因子(PAF)、単球走化性タンパク質1および2(MCP-1、MCP-2)、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、CXCL8、CXCL9、CXCL10、高移動度群ボックスタンパク質1(HMGB-1)、IL-1ra、IL-4、IL-10、IL-11、IL-13、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、IL-16、またはそれらの任意の組合せであり得る。
【0360】
[00407]本明細書は、複数のヒドロゲル粒子またはビーズを含む組成物も提供する。いくつかの態様では、複数の各ヒドロゲル粒子またはビーズは:(a)第1の可変ドメインがCDR3を含む、第1の免疫受容体ペプチド配列の第1の可変ドメインをコードする第1の核酸分子およびそれらの第1の増幅産物、ならびに(b)第2の可変ドメインがCDR3を含む、第2の免疫受容体ペプチド配列の第2の可変ドメインをコードする第2の核酸分子およびそれらの第2の増幅産物を含み得る(例えば、図4A図4B図5A~5C、図9A図9B図10Aおよび図10BのTRAおよびTRB)。第1の増幅産物および第2の増幅産物は、重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーを有するマトリクス内に包埋または封入され得る。第1の増幅産物および第2の増幅産物の拡散は、抑制され得る。いくつかの他の態様では、複数の各ヒドロゲル粒子またはビーズは:(a)第1の可変ドメインがCDR3を含む、第1の免疫受容体ペプチド配列の第1の可変ドメインをコードする第1の核酸分子およびそれらの第1のプライマー伸長産物、ならびに(b)第2の可変ドメインがCDR3を含む、第2の免疫受容体ペプチド配列の第2の可変ドメインをコードする第2の核酸分子およびそれらの第2のプライマー伸長産物、を含む。第1のプライマー伸長産物および第2のプライマー伸長産物は、重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーを有するマトリクス内に包埋または封入され得る。第1のプライマー伸長産物および第2のプライマー伸長産物の拡散は、抑制され得る。第1および第2のプライマー伸長産物は、予め設計された配列を有するアダプター配列を含み得る。アダプター配列は、第1または第2の核酸にハイブリダイズ可能または相補性でなくてもよい。アダプター配列は、鋳型-スイッチオリゴヌクレオチドの配列または逆相補配列であり得る。第1および第2のプライマー伸長産物は、逆転写(RT)産物であり得る。第1および第2のプライマー伸長産物は、第2の鎖合成(SSS)産物であり得る。RT産物は、拡散抑制剤に連結され得る。SSS産物は、拡散抑制剤に連結され得る。SSS産物は、間接的に拡散抑制剤に連結され得る。例えば、SSS産物はポリヌクレオチドにハイブリダイズし、それは次いで拡散抑制剤に連結され得る(例えば、図5Aおよび図5Bならびに図10Aおよび図10B)。
【0361】
[00408]第1および第2のプライマー伸長産物は、第1および第2の増幅産物であり得る。第1の増幅産物および/または第2の増幅産物は、拡散抑制剤に連結され得る。第1の増幅産物および/または第2の増幅産物は、捕捉剤を介して拡散抑制剤に連結され得る。捕捉剤は、第1の増幅産物および/または第2の増幅産物のアダプター配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを含み得る。拡散抑制剤は、ポリマーであり得る。ポリマーは線状ポリマーであり得る。ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、またはポリサッカライドであり得る。拡散抑制剤は、粒子であり得る。粒子がヒドロゲル粒子またはビーズのマトリクスから拡散できないように、粒子は、マトリクスの孔径より大きい直径を有し得る。拡散抑制剤は、マトリクス自体であり得る。例えば、ポリヌクレオチドはマトリクスに直接連結し、それによってポリヌクレオチドの拡散を抑制することができる。第1の核酸分子および第2の核酸分子は、細胞から放出され得る。細胞は、単一細胞であり得る。細胞は、リンパ球であり得る。細胞は、T細胞またはB細胞であり得る。T細胞は、CD3+T細胞、CD28+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD45RA+T細胞、CD45RO+T細胞、またはそれらの任意の組合せであり得る。B細胞は、形質芽細胞、形質細胞、リンパ形質細胞、メモリーB細胞、濾胞性B細胞、辺縁帯B細胞、B-1細胞、B-2細胞、または調節性B細胞であり得る。第1の免疫受容体ペプチド配列は、TCRアルファペプチド配列であってよく、第2の免疫受容体ペプチド配列は、TCRベータペプチド配列であってよい。
【0362】
[00409]第1の免疫受容体ペプチド鎖は、TCRガンマペプチド鎖であってよく、第2の免疫受容体ペプチド鎖は、TCRデルタペプチド鎖であってよい。第1の免疫受容体ペプチド鎖は、免疫グロブリン重ペプチド鎖であってよく、第2の免疫受容体ペプチド鎖は、免疫グロブリン軽ペプチド鎖であってよい。第1の免疫受容体ペプチド鎖および第2の免疫受容体ペプチド鎖は、二分免疫受容体の同種対であってよい。
【0363】
[00410]第1の増幅産物および第2の増幅産物は、連結して連続するポリヌクレオチドを形成することができる。第1の増幅産物および/または第2の増幅産物は、少なくとも約100個、少なくとも約500個、少なくとも約1000個、少なくとも約10000個、またはそれより多くの第1の核酸分子および/または第2の核酸分子のコピーを含み得る。第1および第2の核酸は、拡散を抑制され得る。例えば、第1または第2の核酸は、拡散抑制剤に直接的または間接的に連結され得る。第1の核酸分子および/または第2の核酸分子は、デオキシリボ核酸またはリボ核酸であり得る。第1の核酸分子および/または第2の核酸分子は、一本鎖核酸または二本鎖核酸であり得る。第1の核酸分子は、第1の定常ドメインをさらにコードすることができ、および/または第2の核酸分子は、第2の定常ドメインをさらにコードすることができる。
【0364】
[00411]複数のヒドロゲル粒子またはビーズは、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、もしくは少なくとも10,000,000個のヒドロゲル粒子またはビーズを含み得る。複数のヒドロゲル粒子またはビーズは、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個の二分免疫受容体の異なる同種対を含み得る。
【0365】
[00412]ヒドロゲル粒子またはビーズを作製するために使用するポリマーは、ポリサッカライド、ポリアクリルアミド、またはそれらの組合せであり得る。ポリサッカライドは、アガロース、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、キトサン、デキストラン、デンプン、またはアルギン酸であり得る。ヒドロゲル粒子またはビーズを作製するために使用するモノマーは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドモノマーであり得る。重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーは、アガロースとポリアクリルアミドの混合物を含み得る。重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーは、架橋結合することができる。第1の可変ドメインおよび/または第2の可変ドメインは、CDR1、CDR2、またはそれらの組合せをさらに含み得る。いくつかの場合では、各ヒドロゲル粒子またはビーズは、アガロースゲル粒子である。
【0366】
[00413]別の態様では、本明細書は、複数の少なくとも5個のヒドロゲル粒子を含む組成物であって、少なくとも5個のヒドロゲル粒子の各々が、(a)第1の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第1のポリヌクレオチド、および(b)第2の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第2のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含み、第1および第2の免疫受容体ペプチド鎖の各々が、ユニークな同種免疫受容体対鎖を含み、少なくとも5個のヒドロゲル粒子の個々のヒドロゲル粒子の第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドが、(i)単一細胞由来であり、また(ii)互いに連結し、ヒドロゲル粒子からの第1のポリヌクレオチドおよび第2のヌクレオチドの拡散が抑制される、組成物を提供する。第1のポリヌクレオチドまたは第2のポリヌクレオチドはDNAであり得る。DNAは、増幅産物であり得る。第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは、共有結合により連結され得る。第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合により連結され得る。第1のポリヌクレオチドまたは第2のポリヌクレオチドは、拡散抑制剤に連結され得る。
【0367】
[00414]別の態様では、本明細書は、複数の少なくとも5個のヒドロゲル粒子を含む組成物であって、少なくとも5個のヒドロゲル粒子の各々が、(a)第1の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第1のRNAおよび(b)第2の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第2のRNAを含み、第1および第2の免疫受容体ペプチド鎖の各々が、ユニークな同種免疫受容体対合鎖を含み、少なくとも5個のヒドロゲル粒子の個々のヒドロゲル粒子の第1のRNAおよび第2のRNAの各々が単一細胞由来であり、(1)各第1のRNAが、第1のRNAの逆相補配列を含む第1のcDNAにハイブリダイズし、また(2)各第2のRNAが、第2のRNAの逆相補配列を含む第2のcDNAにハイブリダイズし;ヒドロゲル粒子からの第1のcDNAおよび第2のcDNAの拡散が抑制される、組成物を提供する。第1のcDNAまたは第2のcDNAは、第1のRNAまたは第2のRNAにハイブリダイズできないまたは相補性ではない配列をさらに含み得る。第1のcDNAまたは第2のcDNAは、鋳型-スイッチオリゴヌクレオチドの逆相補配列をさらに含み得る。第1のcDNAまたは第2のcDNAは、拡散抑制剤に連結され得る。
【0368】
[00415]別の態様では、本明細書は、複数の少なくとも5個のヒドロゲル粒子を含む組成物であって、少なくとも5個のヒドロゲル粒子の各々が、(a)第1の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第1のポリヌクレオチドおよび(b)第2の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第2のポリヌクレオチドを含み、第1および第2の免疫受容体ペプチド鎖の各々が、ユニークな同種免疫受容体対合鎖を含み、少なくとも5個のヒドロゲル粒子の個々のヒドロゲル粒子の第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドの各々が単一細胞由来であり、(1)各第1のポリヌクレオチドが、第1のプライマーにハイブリダイズし、また(2)各第2のポリヌクレオチドが、第2のプライマーにハイブリダイズし;ヒドロゲル粒子からの第1のプライマーおよび第2のプライマーの拡散が抑制される、組成物を提供する。第1のプライマーまたは第2のプライマーは、逆転写プライマーであり得る。第1のプライマーまたは第2のプライマーは、増幅プライマーであり得る。第1のポリヌクレオチドまたは第2のポリヌクレオチドはRNAであり得る。第1のポリヌクレオチドまたは第2のポリヌクレオチドは、DNAであり得る。第1のプライマーまたは第2のプライマーは、拡散抑制剤に連結され得る。
【0369】
[00416]別の態様では、本明細書は、複数の少なくとも5個のヒドロゲル粒子を含む組成物であって、少なくとも5個のヒドロゲル粒子の各々が、(a)第1の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第1のDNAおよび(b)第2の免疫受容体ペプチド鎖をコードする配列を含む第2のDNAを含み、第1および第2の免疫受容体ペプチド鎖の各々が、ユニークな同種免疫受容体対合鎖を含み、少なくとも5個のヒドロゲル粒子の個々のヒドロゲル粒子の第1のDNAおよび第2のDNAの各々が単一細胞由来であり、(1)各第1のDNAが、第1の免疫受容体鎖をコードする配列の逆相補配列を含む第1のポリヌクレオチドにハイブリダイズし、また(2)各第2のDNAが、第2の免疫受容体鎖をコードする配列の逆相補配列を含む第2のポリヌクレオチドにハイブリダイズし;ヒドロゲル粒子からの第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドの拡散が抑制される、組成物を提供する。第1のDNAまたは第2のDNAは、cDNAであり得る。第1のDNAまたは第2のDNAは、ゲノムDNAであってよく、そのような場合、アダプター配列を有するプライマーを使用して第1のDNAまたは第2のDNAにハイブリダイズし、第1または第2のDNAの伸長産物を生成することができる。第1のポリヌクレオチドまたは第2のポリヌクレオチドはRNAであり得る。RNAは、メッセンジャーRNAであり得る。例えば、図4Aまたは図5Aは、mRNAへのcDNAのハイブリダイズを示す。ヒドロゲル粒子からの第1のDNAまたは第2のDNAの拡散は抑制され得る。いくつかの場合では、第1のDNAまたは第2のDNAは、cDNAであってよく、そのような場合、第1のポリヌクレオチドまたは第2のポリヌクレオチドは、第2の鎖合成(SSS)産物であってよい。第1のポリヌクレオチドまたは第2のポリヌクレオチドは、増幅産物であり得る。増幅産物は、第1または第2のDNAにハイブリダイズしないまたは相補性ではないアダプター配列を含み得る。アダプター配列は、捕捉剤にさらにハイブリダイズすることができる。捕捉剤は、拡散抑制剤に連結され得る。
【0370】
[00417]拡散抑制剤は、ポリマーまたは粒子であり得る。第1および第2の免疫受容体ペプチド鎖は、TCRアルファおよびTCRベータペプチド鎖、TCRガンマおよびTCRデルタペプチド鎖、またはBCR重および軽ペプチド鎖であり得る。単一細胞は、免疫細胞であり得る。免疫細胞は、T細胞またはB細胞であり得る。
【0371】
[00418]別の態様では、本明細書は、複数の少なくとも1,000個の区画を含む組成物であって、少なくとも1,000個の区画の各区画が固体支持体を含み、固体支持体が:(a)第1の共通配列、第2の共通配列、および第1と第2の共通配列の間にTCRアルファ鎖をコードするタンパク質コード配列を含む第1のポリヌクレオチド、および(b)第3の共通配列、第4の共通配列、および第3と第4の共通配列の間にTCRベータ鎖をコードするタンパク質コード配列を含む第2のポリヌクレオチドを含み、(i)各区画のTCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖が同種対であり、(ii)複数の区画の複数の第1の共通配列が、同じ配列を有し、第1のプライマーにハイブリダイズ可能または相補性であり、(iii)複数の区画の複数の第2の共通配列が、同じ配列を有し、第2のプライマーにハイブリダイズ可能または相補性であり、(iv)複数の区画の複数の第3の共通配列が、同じ配列を有し、第3のプライマーにハイブリダイズ可能または相補性であり、ならびに(v)複数の区画の複数の第4の共通配列が、同じ配列を有し、第4のプライマーにハイブリダイズ可能または相補性である、組成物を提供する。各区画は、第1のプライマー、第2のプライマー、第3のプライマー、および第4のプライマーをさらに含み得る。第1のプライマーの濃度は、少なくとも1nMであってよく、第2のプライマーの濃度は、少なくとも1nMであってよく、第3のプライマーの濃度は、少なくとも1nMであってよく、第4のプライマーの濃度は少なくとも1nMであってよい。各プライマーの濃度は、少なくとも約0.5nM、少なくとも約1nM、少なくとも約1.5nM、少なくとも約2nM、少なくとも約2.5nM、少なくとも約3nM、少なくとも約3.5nM、または少なくとも約4nMであってよい。第2の共通配列は、各区画の第4の共通配列またはそれらの逆相補配列にハイブリダイズ可能または相補性であり得る。
【0372】
[00419]別の態様では、本明細書は、複数の少なくとも1,000個の区画を含む組成物であって、少なくとも1,000個の区画の各区画は:(a)5'末端に第1の共通配列、3'末端に第2の共通配列、および第1の共通配列と第2の共通配列の間にTCRアルファ鎖をコードするタンパク質コード配列を含む、第1の完全または部分一本鎖ポリヌクレオチド、および(b)5'末端に第3の共通配列、3'末端に第4の共通配列、および第3の共通配列と第4の共通配列の間にTCRベータ鎖をコードするタンパク質コード配列を含む、第2の完全または部分一本鎖ポリヌクレオチドを含み、(i)TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖が同種対であり、(ii)第2の共通配列が第4の共通配列にハイブリダイズする、組成物を提供する。第1の共通配列、第2の共通配列、第3の共通配列、または第4の共通配列は、複数の少なくとも1,000個の区画において同じであってもよい。各区画は、固体支持体をさらに含み得る。固体支持体は、ビーズまたはヒドロゲル粒子であり得る。
【0373】
方法
[00420]本開示は、本明細書に記載の融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを作製または使用する方法を提供する。様々な方法および適用を提供する。
【0374】
[00421]一態様では、本明細書は、融合二分免疫受容体配列ライブラリーを調製するための方法であって、(a)複数の容器を生成するステップであって、各々が、(1)二分免疫受容体の第1のペプチド配列をコードする第1の核酸および二分免疫受容体の第2のペプチド配列をコードする第2の核酸を含む細胞と、(2)複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーとを含む、ステップと;(b)複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーを重合またはゲル化して複数の硬化粒子を形成するステップであって、複数の硬化粒子のそれぞれが重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーからなるマトリクスを有し、複数の硬化粒子のそれぞれが第1の核酸の第1のプライマー伸長産物および第2の核酸の第2のプライマー伸長産物を含むステップを含む、方法を提供する。いくつかの場合では、第1のプライマー伸長産物および第2のプライマー伸長産物は、マトリクス内に包埋または封入される。いくつかの場合では、第1のプライマー伸長産物および第2のプライマー伸長産物の拡散が抑制される。第1および第2のプライマー伸長産物は、逆転写(RT)産物、第2の鎖合成(SSS)産物、または増幅産物であり得る。第1および/または第2のプライマー伸長産物は、アダプター配列を含み得る。アダプター配列は、第1または第2の核酸分子にハイブリダイズ可能または相補性でなくてもよい。第1および第2のプライマー伸長産物は、可変ドメインをコードし得る。可変ドメインは、CDR1、CDR2、および/またはCDR3を含み得る。第1および/または第2のプライマー伸長産物は、定常ドメインをさらにコードし得る。
【0375】
[00422]各容器内の細胞は、溶解して、第1の核酸および第2の核酸を放出させることができる。第1の核酸および第2の核酸は、逆転写され得る。逆転写は、RTプライマーを使用して実施され得る。RTプライマーは、拡散抑制剤に連結することができ、拡散抑制剤は、マトリクス内のRTプライマーの拡散を抑制する。いくつかの場合では、鋳型-スイッチ反応またはSSS反応が実施される。第1の核酸または第2の核酸を、増幅して、第1および第2の増幅産物を生成することができる。いくつかの場合では、第1または第2の核酸の各々について、第1の増幅プライマーおよび第2の増幅プライマーを使用して増幅が実施される。第1の増幅プライマーは、拡散抑制剤に連結することができ、拡散抑制剤は、マトリクス内の第1の増幅プライマーの拡散を抑制する。
【0376】
[00423]いくつかの場合では、硬化粒子は洗浄され得る。硬化粒子を洗浄し、硬化粒子から試薬を拡散させることができる。試薬は、RTプライマー、増幅プライマー、鋳型-スイッチプライマー、SSSプライマー、またはそれらの任意の組合せを含み得る。いくつかの場合では、硬化粒子を洗浄し、硬化粒子へと別の試薬を拡散させることができる。いくつかの場合では、方法は、硬化粒子を繰り返し洗浄するステップをさらに含み得る。硬化粒子は、洗浄ステップ後に油中で再乳化され得る。再乳化した硬化粒子は、再び、単一細胞反応として使用し、反応を実行することができる。特定の反応の間に、温度が上昇すると、硬化粒子は完全にまたは部分的に溶解し得る。
【0377】
[00424]第1および第2のプライマー伸長産物は、拡散抑制剤に連結され得る。拡散抑制剤は、ポリマーであり得る。拡散抑制剤として使用するポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、またはポリサッカライドであり得る。拡散抑制剤は、粒子であり得る。粒子は、マトリクスの孔径より大きい直径を有し得る。拡散抑制剤は、マトリクス自体であり得る。
【0378】
[00425]ポリヌクレオチドが制限され得るように、ポリヌクレオチドをマトリクスまたは拡散抑制剤に連結する様々な方法がある。例えば、第1および第2のプライマー伸長産物は、捕捉剤を介して拡散抑制剤に連結され得る。捕捉剤は、固定化部分を含み得る。固定化部分は、捕捉剤を拡散抑制剤に連結することができる。固定化部分は、反応基を含み得る。捕捉剤は、ターゲティング部分をさらに含み得る。ターゲティング部分は、捕捉オリゴヌクレオチドであり得る。第1の増幅プライマーは、捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド配列を含み得る。第1および第2の増幅産物は、捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、それによって第1および第2の増幅産物を捕捉剤に連結し、それによって拡散抑制剤に連結する、オリゴヌクレオチド配列を含み得る。反応基は、スクシンイミジルエステル、アミド、アクリルアミド、アシルアジド、ハロゲン化アシル、アシルニトリル、アルデヒド、ケトン、ハロゲン化アルキル、スルホン酸アルキル、無水物、ハロゲン化アリール、アジリジン、ボロン酸エステル、カルボジイミド、ジアゾアルカン、エポキシド、ハロアセトアミド、ハロ白金酸塩(haloplatinate)、ハロトリアジン、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ホスホロアミダイト、ハロゲン化シリル、スルホン酸エステル、ハロゲン化スルホニル、アミン、アニリン、チオール、アルコール、フェノール、ヒラジン(hyrazine)、ヒドロキシルアミン、カルボン酸、グリコール、または複素環であり得る。
【0379】
[00426]第1の増幅産物および第2の増幅産物は、さらに連結し、各容器または硬化粒子内で融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを形成し、それによって複数の融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを有する融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドライブラリーを生成することができる。各融合ポリヌクレオチドは、ユニーク配列を有し得る。第1の増幅産物および第2の増幅産物は、ライゲーションまたはPCRによって連結され得る。第1の増幅産物および第2の増幅産物は、ホスホジエステル結合によって連結され、連続したポリヌクレオチドを形成することができる。第1の増幅産物および第2の増幅産物は、インフレームで連結され得る。
【0380】
[00427]複数の融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、複数の容器または硬化粒子から放出させることができる。複数の各融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、環状化させることができる。
【0381】
[00428]複数の各融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、ベクターに(例えば、融合線状ポリヌクレオチドをポリヌクレオチドベクター骨格へとライゲートすることによって)変換され得る。いくつかの場合では、ベクターはポリヌクレオチドではなく、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、非ポリヌクレオチドベクターによって宿主細胞へと送達され得る。
【0382】
[00429]ベクターは、自己増幅RNAレプリコン、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、またはビリオンであり得る。ベクターはウイルスベクターであり得る。ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、B型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルスまたはそれらの偽型に由来し得る。ベクターは非ウイルスベクターであり得る。非ウイルスベクターは、ナノ粒子、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、金属性ナノポリマー、ナノロッド、リポソーム、ミセル、マイクロバブル、細胞透過性ペプチド、またはリポスフィアであり得る。
【0383】
[00430]二分免疫受容体は、T細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)であり得る。TCRは、TCRアルファペプチド配列およびTCRベータペプチド配列、またはTCRガンマペプチド配列およびTCRデルタペプチド配列を含み得る;BCRは、重ペプチド配列および軽ペプチド配列を含み得る。
【0384】
[00431]供給源細胞として使用される細胞は、免疫細胞であり得る。免疫細胞は、リンパ球であり得る。リンパ球は、T細胞またはB細胞であり得る。T細胞は、炎症性T細胞、細胞傷害性T細胞、調節性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、またはそれらの組合せであり得る。T細胞は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞であり得る。B細胞は、形質芽細胞、形質細胞、リンパ形質細胞、メモリーB細胞、濾胞性B細胞、辺縁帯B細胞、B-1細胞、B-2細胞、または調節性B細胞であり得る。免疫細胞は、腫瘍組織または血液試料から単離することができる。
【0385】
[00432]融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、宿主細胞に送達され得る。融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドライブラリーは、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個の異なる融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを含むことができ、各々異なる配列を有する。第1の核酸および第2の核酸によってコードされる第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖は、二分免疫受容体の同種対であり得る。
【0386】
[00433]本明細書に記載の方法で使用する容器は、液滴であり得る。液滴は、油中水液滴であり得る。硬化粒子は、ポリマーおよび/またはモノマーを重合またはゲル化することによって液滴内で形成することができる。硬化粒子は、ヒドロゲル粒子であり得る。ヒドロゲル粒子を形成するために使用するポリマーは、ポリサッカライド、ポリアクリルアミド、またはそれらの組合せであり得る。ポリサッカライドは、アガロース、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、キトサン、デンプン、デキストラン、またはアルギン酸であり得る。ヒドロゲル粒子を形成するために使用するモノマーは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドモノマーであり得る。重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーは、アガロースとポリアクリルアミドの混合物を含み得る。重合またはゲル化した複数のポリマーおよび/またはモノマーは、架橋結合され得る。いくつかの場合では、複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーは、開始剤(imitator)を使用することによって重合またはゲル化され得る。開始剤は、UV光または化学物質であり得る。いくつかの場合では、複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーは、容器の温度を低下させることによって重合またはゲル化され得る。例えば、アガロース粒子は、アガロースの温度を低下させることによって形成され得る。
【0387】
[00434]別の態様では、本明細書は、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを作製するために液体中で実施する方法を提供する。方法の例示的な手順は:(a)複数の容器(例えば、液滴)を生成するステップであって、各々が、単一細胞(例えば、免疫細胞)および複数の重合可能またはゲル化可能なポリマーおよび/またはモノマーを含む、ステップ;(b)各容器容器で単一細胞を溶解し、第1の核酸および第2の核酸を有するその核酸を放出させるステップであって、第1の核酸および第2の核酸が免疫受容体の第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖をコードするステップ;(c)第1の核酸および第2の核酸がRNAである場合に、第1および第2の核酸を逆転写するステップ;(d)第1および第2の核酸またはそれらの誘導体(例えば、cDNA)がヒドロゲル粒子内に封入されるように、ポリマーおよび/またはモノマーを重合またはゲル化するステップによりヒドロゲル粒子を生成するステップ;(e)ヒドロゲル粒子を洗浄し、試薬交換を実施するステップ;(f)ヒドロゲル粒子を再乳化するステップ;(g)第1および第2の核酸またはそれらの誘導体を増幅し、第1および第2の核酸の増幅産物を生成するステップ;ならびに(h)第1および第2の核酸の増幅産物を連結または融合し、複数の融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドを形成するステップを含み得る。いくつかの場合では、鋳型スイッチ反応は、逆転写の間に実施される。いくつかの他の場合では、第2の鎖合成反応は逆転写の後に実施される。いくつかの場合では、ヒドロゲル粒子を生成するステップは、第1および第2の核酸を増幅するステップの後に実施することができ、次いでヒドロゲル粒子を洗浄するステップは、第1および第2の核酸を増幅するために使用した内部プライマーを除去することができる。いくつかの他の場合では、ヒドロゲル粒子を生成するステップは、逆転写の後および増幅の前に実施されなくてもよい。
【0388】
[00435]一部の実施形態では、本明細書は、液体中で実施する方法であって、:(a)核酸分子にハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第1の伸長産物を形成するステップ;(b)第1の伸長産物またはそれらの逆相補鎖を、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含むプライマーセットによって増幅し、それによって増幅産物を形成するステップ;(c)液体中でポリマーマトリクスを生成し、ヒドロゲル粒子を形成し、それによって増幅産物の拡散を抑制するステップ;および(d)ヒドロゲル粒子を洗浄し、それによってヒドロゲル粒子から第2のプライマーを枯渇させるステップを含む、方法を提供する。第1のプライマーまたは増幅産物は拡散抑制剤に連結され得る。方法は、さらなる核酸分子にハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチドを伸長するステップをさらに含み得る。核酸分子およびさらなる核酸分子は、免疫受容体の同種対であり得る。
【0389】
[00436]一部の実施形態では、本明細書は、液体中で実施する方法であって、:(a)核酸分子にハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第1の伸長産物を形成するステップ;(b)液体中でポリマーマトリクスを生成し、ヒドロゲル粒子を形成し、それによって第1の伸長産物またはそれらの逆相補鎖の拡散を抑制するステップ;(c)ヒドロゲル粒子を洗浄するステップ;ならびに(d)第1の伸長産物またはそれらの逆相補鎖を、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含むプライマーセットによって増幅し、それによって増幅産物を形成するステップを含む、方法を提供する。第1のオリゴヌクレオチドまたは第1の伸長産物は拡散抑制剤に連結され得る。
【0390】
[00437]拡散抑制剤は、ポリマーまたは粒子であり得る。ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、またはポリサッカライドであり得る。粒子は、ポリマーマトリクスの孔径より大きい直径を有し得る。拡散抑制剤は、ポリマーマトリクスであり得る。核酸分子は、DNAまたはRNAであり得る。核酸分子は、ゲノムDNAであり得る。核酸分子は、メッセンジャーRNAであり得る。第1のオリゴヌクレオチドは、逆転写(RT)プライマーであり得る。RTプライマーは、鋳型スイッチオリゴヌクレオチドによってさらに伸長され、それによって、鋳型スイッチオリゴヌクレオチドの逆相補配列を有する第1の伸長産物を生成することができる。いくつかの場合では、アダプター配列を有する第2の鎖合成(SSS)プライマーを使用して、第1の伸長産物の逆相補鎖を合成することができる。アダプター配列は、核酸分子または第1の伸長産物にハイブリダイズ可能または相補性でなくてもよい。第1の伸長産物は、アダプター配列を含み得る。核酸分子は、免疫受容体のペプチド配列をコードすることができる。いくつかの場合では、方法は、ヒドロゲル粒子を洗浄するステップの後または間に、試薬がヒドロゲル粒子へと拡散するように、試薬をヒドロゲル粒子と接触させるステップをさらに含み得る。試薬は、オリゴヌクレオチドまたは酵素であり得る。酵素は、ポリメラーゼであり得る。ポリメラーゼは、プルーフリーディング活性を有し得る。ポリメラーゼの例は、DNAポリメラーゼ、熱安定性ポリメラーゼ、野生型ポリメラーゼ、改変ポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tliポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、VENTポリメラーゼ、DEEPVENTポリメラーゼ、EX-Taqポリメラーゼ、LA-Taqポリメラーゼ、Ssoポリメラーゼ、Pocポリメラーゼ、Pabポリメラーゼ、Mthポリメラーゼ、ES4ポリメラーゼ、Truポリメラーゼ、Tacポリメラーゼ、Tneポリメラーゼ、Tmaポリメラーゼ、Teaポリメラーゼ、Tihポリメラーゼ、Tfiポリメラーゼ、Platinum Taqポリメラーゼ、Tbrポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ、Pfu-turboポリメラーゼ、Pyrobestポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Sacポリメラーゼ、Klenow断片、およびバリアント、改変産物およびそれらの誘導体を含む。
【0391】
[00438]様々な実施形態では、ヒドロゲル粒子は、洗浄後、油中で再乳化され得る。
[00439]一部の実施形態では、本明細書は、液体中で実施する方法であって、:(a)複数の少なくとも2つの液滴が単一細胞を含む、複数の液滴を形成するステップ;(b)単一細胞由来の第1の核酸分子にハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第1の伸長産物を形成するステップ;および単一細胞由来の第2の核酸分子にハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第2の伸長産物を形成するステップ;(c)第1の伸長産物またはそれらの逆相補鎖を、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含む第1のプライマーセットによって増幅し、それによって第1の増幅産物のセットを形成するステップ;ならびに第2の伸長産物またはそれらの逆相補鎖を、第3のプライマーおよび第4のプライマーを含む第2のプライマーセットによって増幅し、それによって第2の増幅産物のセットを形成するステップ;ならびに(d)第1の増幅産物のセットの増幅産物を第2の増幅産物のセットの増幅産物に連結するステップであって、連結するステップが第2および第4のプライマーの不在下での液体中で連結するステップを含む、ステップ、を含む、方法を提供する。
【0392】
[00440]一部の実施形態では、本明細書は、液体中で実施する方法であって、:(a)複数の少なくとも2つの液滴が単一細胞を含む、複数の液滴を形成するステップ;(b)単一細胞由来の第1の核酸分子にハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第1の伸長産物を形成するステップ;および単一細胞由来の第2の核酸分子にハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第2の伸長産物を形成するステップ;(c)第1の伸長産物またはそれらの逆相補鎖を、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含む第1のプライマーセットによって増幅し、それによって第1の増幅産物のセットを形成するステップ;ならびに第2の伸長産物またはそれらの逆相補鎖を、第3のプライマーおよび第4のプライマーを含む第2のプライマーセットによって増幅し、それによって第2の増幅産物のセットを形成するステップ;(d)第2および第4のプライマーを除去するステップ;ならびに(e)第1の増幅産物のセットの増幅産物を第2の増幅産物のセットの増幅産物に連結するステップ、を含む、方法を提供する。複数の各液滴は、複数の重合可能またはゲル化可能ポリマーおよび/またはモノマーを含み得る。液体中のポリマーマトリクスを生成し、ヒドロゲル粒子を形成し、それによって増幅産物の第1のセットおよび増幅産物の第2のセットの拡散を抑制することができる。ヒドロゲル粒子を緩衝液中で洗浄し、ヒドロゲル粒子から第2のプライマーおよび第4のプライマーを枯渇させることができる。
【0393】
[00441]様々な実施形態では、連結するステップは、第1および第2のセットの増幅産物に突出末端を生成するステップを含む。USER酵素を使用して、増幅産物に突出末端を生成することができる。いくつかの場合では、連結するステップは、第1および第2のセットの増幅産物をハイブリダイズするステップを含む。いくつかの場合では、連結するステップは、第1および第2のセットの増幅産物をライゲートするステップを含む。第1のプライマーおよび第3のプライマーは、同じプライマーであり得る(すなわち、同じ配列を有する)。第1のプライマー、第3のプライマー、増幅産物の第1のセット、または増幅産物の第2のセットは、拡散抑制剤に連結され得る。
【0394】
[00442]一部の実施形態では、本明細書は、液体中で実施する方法であって、:(a)複数の少なくとも2つの液滴が単一細胞を含む、複数の液滴を形成するステップ;(b)単一細胞由来の第1の核酸分子にハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第1の伸長産物を形成するステップ;および単一細胞由来の第2の核酸分子にハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチドを伸長し、それによって第2の伸長産物を形成するステップ;(c)液体中のポリマーマトリクスを生成し、ヒドロゲル粒子を形成し、それによって第1の伸長産物および第2の伸長産物の拡散を抑制するステップ;(d)第1の伸長産物またはそれらの逆相補鎖を、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含む第1のプライマーセットによって増幅し、それによって第1の増幅産物のセットを形成するステップ;ならびに第2の伸長産物またはそれらの逆相補鎖を、第3のプライマーおよび第4のプライマーを含む第2のプライマーセットによって増幅し、それによって第2の増幅産物のセットを形成するステップ;ならびに(e)第1の増幅産物のセットの増幅産物を第2の増幅産物のセットの増幅産物に連結するステップ、を含む、方法を提供する。方法は、(c)の後に、ヒドロゲル粒子を洗浄するステップをさらに含み得る。方法は、試薬がヒドロゲル粒子に拡散するように、試薬をヒドロゲル粒子と接触させるステップをさらに含み得る。試薬は、酵素またはオリゴヌクレオチドを含み得る。試薬は、第1のプライマーセットおよび/または第2のプライマーセットであり得る。酵素は、ポリメラーゼ、リガーゼ、USER酵素、またはそれらの組合せであり得る。方法は、洗浄後に、油中でヒドロゲル粒子を乳化するステップをさらに含み得る。第1のオリゴヌクレオチドまたは第2のオリゴヌクレオチドは、拡散抑制剤に連結され得る。第1および第2の核酸分子がmRNAである場合に、第1のオリゴヌクレオチドまたは第2のオリゴヌクレオチドは、RTプライマーであり得る。RTプライマーは、鋳型-スイッチオリゴヌクレオチドによってさらに伸長され得る。いくつかの場合では、第2の鎖合成(SSS)プライマーを使用して、第1および/または第2の伸長産物の逆相補鎖を合成することができる。SSSプライマーは、アダプター配列を含み得る。アダプター配列は、第1および/または第2の伸長産物とハイブリダイズ可能または相補性でなくてもよい。SSSプライマーは、RTプライマーと一緒に添加することができ、またはポリマーマトリクスに拡散することによって別々に添加することができる。単一細胞は免疫細胞であり得る。免疫細胞はT細胞またはB細胞であり得る。第1の核酸分子および第2の核酸分子はDNA(例えば、ゲノムDNA)またはRNA(例えば、mRNA)である。
【0395】
[00443]様々な実施形態では、第1の核酸分子は、免疫受容体の第1のペプチド鎖をコードすることができ、第2の核酸分子は、免疫受容体の第2のペプチド配列をコードすることができる。第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖は、免疫受容体の同種対である。第1のペプチド鎖または第2のペプチド鎖は、部分または全長可変ドメインを含み得る。可変ドメインは、CDR1、CDR2、CDR3、またはそれらの組合せを含み得る。第1のペプチド鎖または第2のペプチド鎖は、定常ドメインを含み得る。いくつかの場合では、第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖はTCR鎖であり、それらはヒンジ領域、膜貫通領域、および細胞質側末端をさらに含み得る。第1のペプチド鎖および第2のペプチド鎖は、機能性TCRを形成することができる。免疫受容体は、TCRまたはBCRであり得る。
【0396】
[00444]別の態様では、本明細書は、本明細書に記載の、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチオド、免疫受容体発現ベクター、または宿主細胞(例えば、レシピエント細胞)を使用する方法を提供する。様々な適用を、本開示で提供する。例えば、方法は:(a)宿主細胞の集団、自然に対合したTCRアルファおよびベータペプチド配列を有するTCRまたは自然に対合したBCR重および軽ペプチド配列を有するBCRを発現する集団の各宿主細胞を得るステップ;(b)(i)集団からの宿主細胞のサブ集団、または(ii)集団からの宿主細胞のサブ集団の発現されたTCRまたはBCRを濃縮するステップであって、宿主細胞のサブ集団または宿主細胞のサブ集団の発現されたTCRまたはBCRが標的抗原または標的MHC抗原複合体に結合する、ステップ;ならびに(c)宿主細胞のサブ集団またはステップ(b)から濃縮されたサブ集団の発現されたTCRまたはBCRを、標的抗原または標的MHC抗原複合体を発現する対象に投与するステップを含み得る。
【0397】
[00445]宿主細胞の集団は、本明細書に記載の方法を使用して得ることができる。T細胞のサブ集団は、宿主細胞の集団または発現されたTCRまたはBCRを、標的抗原または標的MHC抗原複合体と接触させるステップによって濃縮することができる。MHCは、MHC四量体であり得る。宿主細胞の濃縮したサブ集団または発現されたTCRまたはBCRは、注射によって対象に投与され得る。注射は、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内に注射するステップを含み得る。標的抗原は、ネオ抗原または腫瘍関連抗原である。対象は、がんまたは自己免疫疾患を有し得る。
【0398】
[00446]別の態様では、本明細書は:(1)TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を含む複数の少なくとも1,000個の細胞、少なくとも1,000個の細胞の各細胞を提供するステップ;(2)固体支持体を含む複数の少なくとも1,000個の区画、少なくとも1,000個の区画の各区画を提供するステップであって、固体支持体が:(a)第1の共通配列、第2の共通配列、ならびに第1および第2の共通配列の間にTCRアルファ鎖をコードするタンパク質コード配列を含む、第1のポリヌクレオチド、(b)第3の共通配列、第4の共通配列、ならびに第3および第4の共通配列の間にTCRベータ鎖をコードするタンパク質コード配列を含む、第2のポリヌクレオチド、を含み、各区画のTCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖が、複数の細胞の少なくとも1つに存在する同種対であり、それによって各々TCRアルファ鎖をコードする第1の複数のタンパク質コード配列および各々TCRベータ鎖をコードする第2の複数のタンパク質コード配列を提供するステップ;ならびに(3)各区画において第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドを物理的に連結するステップを含む方法を提供する。第1の複数のタンパク質コード配列は、少なくとも10個のTRAVサブグループを含んでよく、第2の複数のタンパク質コード配列は、少なくとも10個のTRBVサブグループを含んでよい。少なくとも1,000個の区画の各区画は、複数の少なくとも1,000個の細胞からの細胞を含み得る。区画は、ウェル、マイクロウェル、または液滴であり得る。固体支持体は、ビーズ、ヒドロゲル粒子、またはウェルまたはマイクロウェルの表面であり得る。第1の共通配列、第2の共通配列、第3の共通配列、または第4の共通配列は、複数の少なくとも1,000個の区画において同じ配列であり得る。
処置レジメン
[00447]処置レジメンで使用される細胞(例えば、免疫受容体プログラムレシピエント細胞)が本明細書に開示され得る。例えば、対象は、がんまたは疾患の処置のための処置レジメンの一部として細胞を受けることができる。処置レジメンは:いくつか挙げると、外科的処置、化学療法、放射線照射、免疫抑制剤、免疫刺激薬、抗真菌剤、抗ウイルス薬、抗生物質、または制吐薬を含み得る。いくつかの場合では、骨髄移植、フルダラビンなどの化学療法剤、外部ビーム放射線療法(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATHなどの抗体を使用するT細胞除去療法と共に(例えば、前、同時、または後に)、細胞組成物を対象に投与することができる。いくつかの場合では、増殖させた細胞を外科的処置の前または後に投与することができる。外科的処置は、いくつかの場合では、腫瘍切除であり得る。外科的処置を実施して、TILまたはTITを単離することができる。
【0399】
[00448]治療有効量の細胞を、投与のために使用することができる。いくつかの場合では、約5×1010個の細胞が対象に投与される。いくつかの場合では、約5×1010個の細胞は、対象に投与される細胞の量の中央値を表す。一部の実施形態では、約5×1010個の細胞は、対象における治療応答をもたらすのに必要である。一部の実施形態では、少なくとも約1×10個の細胞、少なくとも約2×10個の細胞、少なくとも約3×10個の細胞、少なくとも約4×10個の細胞、少なくとも約5×10個の細胞、少なくとも約6×10個の細胞、少なくとも約6×10個の細胞、少なくとも約8×10個の細胞、少なくとも約9×10個の細胞、約1×10個の細胞、少なくとも約2×10個の細胞、少なくとも約3×10個の細胞、少なくとも約4×10個の細胞、少なくとも約5×10個の細胞、少なくとも約6×10個の細胞、少なくとも約6×10個の細胞、少なくとも約8×10個の細胞、少なくとも約9×10個の細胞、少なくとも約1×10個の細胞、少なくとも約2×10個の細胞、少なくとも約3×10個の細胞、少なくとも約4×10個の細胞、少なくとも約5×10個の細胞、少なくとも約6×10個の細胞、少なくとも約6×10個の細胞、少なくとも約8×10個の細胞、少なくとも約9×10個の細胞、少なくとも約1×10個の細胞、少なくとも約2×10個の細胞、少なくとも約3×10個の細胞、少なくとも約4×10個の細胞、少なくとも約5×10個の細胞、少なくとも約6×10個の細胞、少なくとも約6×10個の細胞、少なくとも約8×10個の細胞、少なくとも約9×10個の細胞、少なくとも約1×1010個の細胞、少なくとも約2×1010個の細胞、少なくとも約3×1010個の細胞、少なくとも約4×1010個の細胞、少なくとも約5×1010個の細胞、少なくとも約6×1010個の細胞、少なくとも約6×1010個の細胞、少なくとも約8×1010個の細胞、少なくとも約9×1010個の細胞、少なくとも約1×1011個の細胞、少なくとも約2×1011個の細胞、少なくとも約3×1011個の細胞、少なくとも約4×1011個の細胞、少なくとも約5×1011個の細胞、少なくとも約6×1011個の細胞、少なくとも約6×1011個の細胞、少なくとも約8×1011個の細胞、少なくとも約9×1011個の細胞、または少なくとも約1×1012個の細胞が対象に投与される。例えば、約5×1010個の細胞が対象に投与され得る。別の例では、3×10個の細胞で開始して、細胞は、約5×1010個の細胞に増殖させ、対象に投与することができる。いくつかの場合では、細胞は治療に十分な数に増殖させる。例えば、5×10個の細胞を急速に増殖させ、治療使用に十分な数を生成することができる。いくつかの場合では、治療使用に十分な数は、5×1010個であり得る。任意の数の細胞が、治療使用のために注入され得る。例えば、患者は、端点を含む、1×10個~5×1012個の間の数の細胞を注入され得る。患者は、患者のために生成され得る限りの数の細胞を注入され得る。いくつかの場合では、患者に注入される細胞は、全てが操作細胞であるわけではない。例えば、患者に注入される細胞のうちの少なくとも90%が操作細胞であり得る。他の例では、患者に注入される細胞のうちの少なくとも40%が操作細胞であり得る。患者において治療有効であるために必要な細胞の量は、細胞の生存率、および細胞が遺伝子改変される効率によって変わり得る。いくつかの場合では、遺伝子改変後の細胞の生存率の積(例えば、乗算)は、対象への投与に利用可能な細胞の治療用アリコットに相当し得る。いくつかの場合では、遺伝子改変後の細胞の生存率の増加は、患者において治療有効であるために投与に必要な細胞の量の減少に相当し得る。
【0400】
[00449]いくつかの場合では、方法は、対象における治療応答をもたらすのに必要な量の操作細胞を計算および/または対象に投与するステップを含み得る。一部の実施形態では、治療応答をもたらすのに必要な操作細胞の量を計算するステップは、操作細胞の生存率を決定するステップを含む。一部の実施形態では、対象における治療応答をもたらすために、対象に投与される細胞は生細胞である。一部の実施形態では、対象における治療応答をもたらすために、細胞のうちの、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%が生細胞である。一部の実施形態では、対象における治療応答をもたらすために、細胞のうちの、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%の細胞が、免疫受容体の同種対をコードするポリヌクレオチドを導入されている。
【0401】
[00450]いくつかの場合では、養子移植された細胞は、定量的PCR(qPCR)によってモニターすることができる。養子移植された細胞のqPCRアッセイは、導入後に対象に存在する改変細胞のレベルを示すことができる。いくつかの場合では、養子移入された細胞を、フローサイトメトリーを使用してモニターすることができる。例えば、フローサイトメトリーアッセイは、4-1BB対TCRのレベルを決定することができる。いくつかの場合では、単一細胞TCR PCRを実施することができる。養子移入された細胞のレベルは、注入後40日目に同定することができる。改変細胞など、養子移入された細胞のレベルは、注入後5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195日目、または最大200日目に同定することができる。
【0402】
免疫刺激薬
[00451]いくつかの場合では、免疫刺激薬を、細胞または対象に導入することができる。免疫刺激薬は、特異的または非特異的であり得る。特異的免疫刺激薬は、ワクチンまたは抗原など、抗原特異性を提供することができる。非特異的免疫刺激薬は、免疫応答を増加させるまたは免疫応答を刺激することができる。非特異的免疫刺激薬は、アジュバントであり得る。免疫刺激薬は、ワクチン、コロニー刺激剤、インターフェロン、インターロイキン、ウイルス、抗原、共刺激剤、免疫原性薬剤、免疫モジュレーター、または免疫療法剤であり得る。免疫刺激薬は、インターロイキンなどのサイトカインであり得る。1つまたは複数のサイトカインが、本開示の細胞と共に導入することができる。サイトカインは、細胞傷害性Tリンパ球(養子移入させる腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球を含む)をブーストして、腫瘍微小環境内で増殖させるのに用いることができる。いくつかの場合では、IL-2を使用して、本明細書に記載の細胞の増殖を促進することができる。IL-15などのサイトカインも用いることができる。例えばIL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21、またはそれらの任意の組合せなど、免疫療法の分野において妥当である、他の関連サイトカインも利用することができる。いくつかの場合では、IL-2、IL-7、およびIL-15を使用して、本開示の細胞を培養する。インターロイキンは、IL-2、またはアルデスロイキン(aldeskeukin)であり得る。アルデスロイキンは、低用量または高用量で投与され得る。高用量アルデスロイキンレジメンは、寛容性を示す限り、最大約14回用量、約0.037mg/kg(600,000IU/kg)で、8時間ごとに静脈内にアルデスロイキンを投与するステップを含み得る。免疫刺激薬(例えば、アルデスロイキン)は、細胞投与後24時間以内に投与され得る。免疫刺激薬(例えば、アルデスロイキン)は、細胞注入後、最大約4日間、約8時間ごとの約15分間にわたる注入として投与され得る。免疫刺激薬(例えば、アルデスロイキン)は、約100,000IU/kg、約200,000IU/kg、約300,000IU/kg、約400,000IU/kg、約500,000IU/kg、約600,000IU/kg、約700,000IU/kg、約800,000IU/kg、約900,000IU/kg、または最大約1,000,000IU/kgの用量で投与され得る。いくつかの場合では、アルデスロイキンは、約100,000IU/kg~約300,000IU/kg、約300,000IU/kg~約500,000IU/kg、約500,000IU/kg~約700,000IU/kg、約700,000IU/kg~約1,000,000IU/kgの用量で投与され得る。免疫刺激薬(例えば、アルデスロイキン)は、1用量~約14用量で投与され得る。免疫刺激薬(例えば、アルデスロイキン)は、少なくとも約1用量、2回用量、3回用量、4回用量、5回用量、6回用量、7回用量、8回用量、9回用量、10回用量、11回用量、12回用量、13回用量、14回用量、15回用量、16回用量、17回用量、18回用量、19回用量、または最大約20用量で投与され得る。いくつかの場合では、アルデスロイキンなどの免疫刺激薬は、約1用量~3用量、3用量~5用量、5用量~8用量、8用量~10用量、10用量~14用量、14用量~20用量で投与され得る。いくつかの場合では、アルデスロイキン(aldeskeukin)は、20用量を超えて投与される。いくつかの場合では、アルデスロイキンなどの免疫刺激薬は、細胞投与と逐次的または同時に投与され得る。例えば、免疫刺激薬は、約-14、-13、-12、-11、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13日目、または最大約14日目に投与され得る。いくつかの場合では、アルデスロイキンなどの免疫刺激薬は、細胞の集団の投与後0日目~4日目に投与される。いくつかの場合では、免疫刺激薬(例えば、アルデスロイキン)は、約10分間、15分間、20分間、30分間、40分間、50分間、1時間、2時間、または最大約3時間の期間にわたって投与される。いくつかの場合では、免疫刺激薬(例えば、アルデスロイキン)は、操作細胞の投与の約24時間前~操作細胞の投与の約4日後に投与され得る。免疫刺激薬(例えば、アルデスロイキン)は、操作細胞の投与後-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19日目、または最大約20日目に投与され得る。
【0403】
[00452]アルデスロイキンなどの免疫刺激薬は、およそ0.17mgの一塩基リン酸ナトリウムおよび0.89mgの二塩基リン酸ナトリウムによってpH7.5(7.2~7.8の範囲)に緩衝した、滅菌の、白色からオフホワイトの凍結乾燥したケーキとしての2200万IU(-1.3mg)のIL-2と、50mgのマンニトールおよび0.18mgのドデシル硫酸ナトリウムを含有する、単回使用バイアルとして提供され得る。バイアルは、1.2mLの注射用滅菌水、USPによって再構成することができ、生じる濃度は1800万IU/mlまたは1.1mg/mLである。希釈剤は、バイアルの側面に沿って入れ、過剰な泡形成を避けるべきである。バイアルは保存剤を含有しないため、再構成された溶液は、24時間で使用されるべきである。再構成されたアルデスロイキンは、50mLの5%ヒト血清アルブミン(HSA)でさらに希釈され得る。HSAは、RIL-2の添加前に希釈剤に添加され得る。1000倍の範囲を超える再構成された溶液の希釈(すなわち、1mg/mL~1mcg/mL)は、ガラスボトルまたはポリ塩化ビニルバッグのいずれかで許容され得る。アルデスロイキンは、冷蔵および室温、2℃~30℃で48時間、化学的に安定であり得る。アルデスロイキンの投与は、総体重に基づいて計算することができる。アルデスロイキンの最終希釈物は、15分間にわたって注入され得る。
【0404】
[00453]いくつかの場合では、免疫刺激薬は、コロニー刺激因子である。コロニー刺激因子は、G-CSF(フィルグラスチム)であり得る。フィルグラスチムは、300mcg/mlおよび480μg/1.6mlバイアルで保存され得る。フィルグラスチムは、皮下注射として毎日投与され得る。フィルグラスチム投与は、約5mcg/kg/日からであり得る。フィルグラスチム投与は、約1mcg/kg/日からであってよく、フィルグラスチム投与は、約2mcg/kg/日からであってよく、フィルグラスチム投与は、約3mcg/kg/日からであってよく、フィルグラスチム投与は、約4mcg/kg/日からであってよく、フィルグラスチム投与は、約5mcg/kg/日からであってよく、フィルグラスチム投与は、約6mcg/kg/日からであってよく、フィルグラスチム投与は、約7mcg/kg/日からであってよく、フィルグラスチム投与は、約8mcg/kg/日からであってよく、フィルグラスチム投与は、約9mcg/kg/日からであってよく、フィルグラスチム投与は、約10mcg/kg/日からであってよい。いくつかの場合では、フィルグラスチムは、約0.5mcg/kg/日~約1.0mcg/kg/日、約1.0mcg/kg/日~約1.5mcg/kg/日、約1.5mcg/kg/日~約2.0mcg/kg/日、約2.0mcg/kg/日~約3.0mcg/kg/日、約2.5mcg/kg/日~約3.5mcg/kg/日、約3.5mcg/kg/日~約4.0mcg/kg/日、約4.0mcg/kg/日~約4.5mcg/kg/日の範囲の用量で投与され得る。フィルグラスチム投与は、好中球数が少なくとも約1.0×10/L×3日または少なくとも約5.0×10/Lになるまで毎日続けることができる。フィルグラスチムなどの免疫刺激薬は、操作細胞の投与後-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19日目、または最大約20日目に投与され得る。
【0405】
化学療法剤
[00454]化学療法剤または化合物は、がんの処置に有用な化学化合物であり得る。開示したT細胞と組み合わせて使用され得るがん化学療法剤は、限定はされないが、有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)を含む。これらは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびNavelbine(商標)(ビノレルビン、5’-ノルアンヒドロブラスチン)を含む。さらに他の場合では、がん化学療法剤は、カンプトテンシン化合物などのトポイソメラーゼI阻害剤を含む。本明細書で使用される場合、「カンプトテンシン化合物」は、Camptosar(商標)(イリノテカンHCL)、Hycamtin(商標)(トポテカンHCL)、ならびにカンプトテシンおよびその類似体に由来する他の化合物を含む。本明細書に開示の方法および組成物において使用され得るがん化学療法剤の別のカテゴリーは、エトポシド、テニポシドおよびミトポドジドなどのポドフィロトキシン誘導体である。本開示はさらに、アルキル化剤として公知の、他のがん化学療法剤であって、腫瘍細胞内の遺伝子素材をアルキル化するがん化学療法剤も包含する。これらは、限定ではなく、シスプラチン、シクロホスファミド、窒素マスタード、トリメチレンチオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロランブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロマファジンおよびダカルバジンを含む。本開示は、化学療法剤としての代謝拮抗剤を包含する。これらのタイプの薬剤の例は、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン、アザチオプリン(azathioprime)、およびプロカルバジンを含む。本明細書に開示の方法および組成物において使用され得るがん化学療法剤の追加のカテゴリーは、抗生物質を含む。例は、限定ではなく、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシン(mytomycin)Cおよびダウノマイシンを含む。これらの化合物のために、多数のリポソーム製剤が市販されている。本開示は、限定ではなく、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、イホスファミドおよびミトキサントロンを含む、他のがん化学療法剤をさらに包含する。
【0406】
[00455]本明細書に開示の免疫受容体プログラムレシピエント細胞は、細胞傷害剤/抗新生物剤および抗血管新生剤を含む、他の抗腫瘍剤と組み合わせて投与することができる。細胞傷害剤/抗新生物剤は、がん細胞を攻撃および死滅させる薬剤として規定され得る。いくつかの細胞傷害剤/抗新生物剤は、腫瘍細胞における遺伝子素材をアルキル化するアルキル化剤、例えば、シスプラチン、シクロホスファミド、窒素マスタード、トリメチレンチオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロマファジン、およびダカルバジンであり得る。他の細胞傷害剤/抗新生物剤は、腫瘍細胞のための代謝拮抗剤、例えば、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン、アザチオプリン(azathioprime)、およびプロカルバジンであり得る。他の細胞傷害剤/抗新生物剤は、抗生物質、例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシン(mytomycin)C、およびダウノマイシンであり得る。これらの化合物のために、多数のリポソーム製剤が市販されている。さらに他の細胞傷害剤/抗新生物剤は、有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)であってよい。これらは、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびエトポシドを含む。種々の細胞傷害剤/抗新生物剤は、タキソールおよびその誘導体、L-アスパラギナーゼ、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、VM-26、イホスファミド、ミトキサントロン、ならびにビンデシンを含む。
【0407】
[00456]抗血管新生剤も使用することができる。本開示の方法および組成物において使用するための好適な抗血管新生剤は、ヒト化およびキメラ抗体を含む抗VEGF抗体、抗VEGFアプタマー、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。他の血管新生阻害剤は、アンジオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン1(αおよびβを含む)、インターロイキン12、レチノイン酸、ならびにメタロプロテナーゼ-1および-2組織阻害剤(TIMP-1および-2)を含む。抗血管新生活性を有するトポイソメラーゼII阻害剤である、ラゾキサンなどのトポイソメラーゼを含む低分子も使用することができる。
【0408】
[00457]本開示の操作細胞と組み合わせて使用され得る他の抗がん剤は、限定はされないが、以下を含む:アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン(ambomycin);アメタントロン酢酸塩;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アバスチン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;ビスナフィドジメシレート;ビセレシン;ブレオマイシン硫酸塩;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキルソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンクエン酸塩;プロピオン酸ドロモスタノロン;ズアゾマイシン;エダトレキサート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸エステルナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸塩;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンリン酸エステル;フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモフォシン;インターロイキンII(組換えインターロイキンIIまたはrIL2を含む);インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-Ia;インターフェロンガンマ-Ib;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレチオド酢酸塩;レトロゾール;ロイプロリド酢酸塩;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;メゲストロール酢酸塩;メレンゲストロール酢酸エステル;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルホセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トレミフェンクエン酸塩;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;ビネピジン硫酸塩;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンレウロシン;ビノレルビン酒石酸塩;硫酸ビンロシジン;ビンゾリジン硫酸塩;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩。他の抗がん剤としては、限定はされないが、以下を含む:20-epi-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管新生阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス;抗背側化形態形成タンパク質-1;抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン;抗ネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシネート;アポトーシス遺伝子調節物質;アポトーシス調節剤;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータ-アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビサジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフラート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリアポックスIL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリックス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;cis-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クランベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペントアントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスフェート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド;デキスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;9-ジヒドロタキソール;ジオキサマイシン;ジフェニルスプロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルフォシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフル;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;エトポシドリン酸塩;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;フルオロダウノルニシン(fluorodaunorunicin)塩酸塩;フォルフェニメックス;ホルメスタン;フォストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリックス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモフォシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫刺激ペプチド;インスリン様増殖因子-1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン:ヨードドキソルビシン;4-イポメアノール;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン-Nトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;レンチナン硫酸塩;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球アルファインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミソール;リアロゾール;直鎖ポリアミン類似体;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン(lysofylline);溶解ペプチド;メイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリクスメタロプロテアーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;マイトトキシン線維芽細胞増殖因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリル脂質A+ミオバクテリウム(myobacterium)細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;多種腫瘍抑制剤1ベースの治療;マスタード系抗がん剤;ミカペルオキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N-アセチルジナリン;N-置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素調節物質;窒素酸化物抗酸化剤;ニトルリン;O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導因子;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ポリ硫酸ペントサンナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;ピロカルピン塩酸塩;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤;白金複合体;白金化合物;
白金-トリアミン複合体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインA系免疫調節物質;タンパク質キナーゼC阻害剤;タンパク質キナーゼC阻害剤、微細藻類;プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルプロテイントランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン;レニウムRe186エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメックス;ルビジノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣体;セムスチン;老化由来の阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達調節物質;単鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ボロカプテートナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分割阻害剤;スチピアミド;ストロメリシン阻害剤;スルフィノシン;超活性血管作用性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;チマルファシン;チモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;エチルエチオプルプリンすず;チラパザミン;チタノセンビクロリド(titanocene bichloride);トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖器洞由来成長阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;赤血球遺伝子治療;ベラレソール;ベラミン;ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマー。前述の化学療法剤のいずれかが、臨床有効量で投与され得る。化学療法剤も、細胞の集団の投与後約-14、-13、-12、-11、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13日目、または最大約14日目に投与され得る。いくつかの場合では、対象は、化学療法剤に対して不応性の難治性がんを有し得る。
【0409】
抗真菌剤
[00458]いくつかの場合では、抗真菌療法は、免疫受容体プログラムレシピエント細胞を受ける対象に投与される。抗真菌剤は、真菌を死滅または真菌の増殖を防止できる薬剤であり得る。抗真菌剤の標的は、ステロール生合成、DNA生合成、およびβ-グルカン生合成を含み得る。抗真菌剤は、葉酸合成阻害剤または核酸架橋剤でもあり得る。葉酸合成阻害剤は、サルファに基づく薬剤であり得る。例えば、葉酸合成阻害剤は、真菌の葉酸合成を阻害する薬剤または競合阻害剤であり得る。サルファに基づく薬剤、または葉酸合成阻害剤は、メトトレキサートまたはスルファメトキサゾール(sulfamethaxazole)であり得る。いくつかの場合では、抗真菌剤は、核酸架橋剤であり得る。架橋結合剤は、真菌においてDNAまたはRNAプロセスを阻害し得る。例えば、架橋剤は、シトシンのフッ化類似体であり得る、5-フルオロシトシンであってよい。5-フルオロシトシンは、5-フルオロウラシルへの細胞質内変換によりDNAおよびRNA合成の両方を阻害し得る。他の抗真菌剤は、グリセオフルビンであり得る。グリセオフルビンは、ペニシリン・グリセオフルバム(Penicillium griseofulvum)によって産生される抗真菌抗生物質である。グリセオフルビンは真菌の有糸分裂を阻害し、架橋剤と考えることができる。追加的な架橋剤は、アリルアミン(ナフチフィンおよびテルビナフィン)であってよく、スクアレンエポキシダーゼのレベルでエルゴステロールの合成を阻害し;1つのモルホリン(morpholene)誘導体(アモロルフィン)は、エルゴステロール経路のその後のステップを阻害する。
【0410】
[00459]いくつかの場合では、抗真菌剤は、ポリエン、アゾール、アリルアミン、またはエキノカンジンのクラスに由来し得る。一部の実施形態では、ポリエン抗真菌剤は、アンホテリシンB、カンジシジン、フィリピン、ハマイシン、ナタマイシン、ニスタチン、またはリモシジンである。いくつかの場合では、抗真菌剤は、アゾールファミリーに由来し得る。アゾール抗真菌剤は、ラノステロール14αデメチラーゼを阻害し得る。アゾール抗真菌剤は、イミダゾール、例えばビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ルリコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール(sulcoazole)、またはチオコナゾールであり得る。アゾール抗真菌剤は、トリアゾール、例えばアルバコナゾール、エフィコナゾール、エポキシコナゾール、フルコナゾール、イサブボナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、プロピコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、またはボリコナゾールであり得る。いくつかの場合では、アゾールは、チアゾール、例えばアバファンギンであり得る。抗真菌剤は、アリルアミン、例えばアモルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、またはテルビナフィンであり得る。抗真菌剤は、エキノカンジン、例えばアニデュラファンギン、カスポファンギン、またはミカファンギンでもあり得る。抗真菌剤であり得るさらなる薬剤は、オーロン、安息香酸、シクロピロクス、フルシトシン、グリセオフルビン、ハロプロジン、トルナフテート、ウンデシレン酸、クリスタルバイオレット(cystal violet)、またはペルーバルサムであり得る。
【0411】
[00460]当業者は、個体に感染している真菌に基づいて、いずれの公知の抗真菌薬物療法を適用するか適切に決定することができる。いくつかの場合では、対象は、操作細胞と組み合わせてフルコナゾールを受けることができる。抗真菌薬療法は、予防的に投与することができる。
【0412】
[00461]フルコナゾールは、200mg錠剤において利用することができる。いくつかの場合では、フルコナゾールは、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、または最大約400mg錠剤として投与することができる。経口調製物に寛容を示すことができない対象におけるIV投与のため、フルコナゾールは、2MG/ML注射用溶液に入れられる。これは、200mg/時間の最大IV速度で投与されるべきである。いくつかの場合では、注入速度は、約50mg/時間~約500mg/時間であり得る。注入速度はまた、約20mg/時間~約30mg/時間、約30mg/時間~約40mg/時間、約40mg/時間~約50mg/時間、約50mg/時間~約60mg/時間、約60mg/時間~約70mg/時間、約70mg/時間~約80mg/時間、約80mg/時間~約90mg/時間、約90mg/時間~約100mg/時間、約100mg/時間~約120mg/時間、約120mg/時間~約140mg/時間、約140mg/時間~約160mg/時間、約160mg/時間~約180mg/時間、約180mg/時間~約200mg/時間、約180mg/時間~約220mg/時間、約220mg/時間~約240mg/時間、約240mg/時間~約275mg/時間であり得る。
【0413】
[00462]抗真菌剤は、治療有効量で投与することができる。治療有効量は、真菌感染症を処置または防止するが、がんの処置に有効ではない用量である。例えば、フルコナゾールなどの抗真菌剤は、約10mg~約1000mgで投与することができる。フルコナゾールは、約10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、または最大約1000mgで投与することができる。フルコナゾールは、400mgで投与することができる。いくつかの場合では、抗真菌剤投与は、細胞療法の前、細胞療法の間、細胞療法が投与された後であり得る。例えば、フルコナゾール投与は、細胞療法の投与後約0日目(細胞療法が対象に導入される日)~約4日目であり得る。抗真菌剤は、細胞療法投与までの約14日間前から細胞療法が完了してから約14日後に投与することができる。抗真菌剤は、約-14、-13、-12、-11、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13日目、または最大約14日目に投与され得る。
【0414】
免疫抑制剤
[00463]いくつかの場合では、対象は、治療レジメンの一部として免疫抑制剤を受けることができる。免疫抑制剤は、放射線療法剤、生物剤、または化学薬剤を指し得る。いくつかの場合では、免疫抑制剤は、化学薬剤を含み得る。例えば、化学薬剤は、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、イホスファミド、チオテパ、ヘキサメチルメラミン、ブスルファン、フルダラビン、ニトロソウレア、白金、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、プロカルバジン、ダカルバジン、テモゾロミド、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、フルオロウラシル、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、およびミスラマイシンからなる群由来の少なくとも1つのメンバーを含み得る。化学薬剤は、シクロホスファミドまたはフルダラビンであり得る。
【0415】
[00464]さらに、免疫抑制剤は、グルココルチコイド、細胞分裂阻害薬、抗体、抗イムノフィリンまたはそれらの任意の誘導体を含み得る。グルココルチコイドは、アレルギー応答、炎症、および自己免疫性状態を抑制することができる。グルココルチコイドは、プレドニゾン、デキサメタゾン、およびヒドロコルチゾンであり得る。免疫抑制療法は、免疫系を抑制する任意の処置を含み得る。免疫抑制療法は、レシピエントにおける移植片拒絶を軽減する、最小化する、または消失させる一助となり得る。例えば、免疫抑制療法は、免疫抑制剤を含み得る。移植前、移植中、および/または移植後に使用され得る免疫抑制剤は、限定はされないが、MMF(ミコフェノール酸モフェチル(Cellcept))、ATG(抗胸腺細胞グロブリン)、抗CD154(CD4OL)、抗CD40(2C10、ASKP1240、CCFZ533X2201)、アレムツズマブ(Campath)、抗CD20(リツキシマブ)、抗IL-6R抗体(トシリズマブ、Actemra)、抗IL-6抗体(サリルマブ、オロキズマブ)、CTLA4-Ig(Abatacept/Orencia)、ベラタセプト(LEA29Y),シロリムス(Rapimune)、エベロリムス、タクロリムス(Prograf)、ダクリズマブ(Ze-napax)、バシリキシマブ(Simulect)、インフリキシマブ(Remicade)、シクロスポリン、デオキシスパガリン、可溶性補体受容体1、コブラ毒因子、コンプスタチン、抗C5抗体(エクリズマブ/Soliris)、メチルプレドニゾロン、FTY720、エベロリムス、レフルノミド、抗IL-2R-Ab、ラパマイシン、抗CXCR3抗体、抗ICOS抗体、抗OX40抗体、および抗CD122抗体である。さらに、1つまたは1つを超える免疫抑制剤/薬物を、併せて、または逐次的に使用することができる。1つまたは1つを超える免疫抑制剤/薬物は、誘導療法のため、または維持療法のために使用することができる。同じまたは異なる薬物を、誘導期および維持期に使用することができる。いくつかの場合では、ダクリズマブ(Zenapax)は、誘導療法のために使用することができ、タクロリムス(Prograf)およびシロリムス(Rapimune)は、維持療法のために使用することができる。ダクリズマブ(Zenapax)はまた、誘導療法のために使用することができ、低用量タクロリムス(Prograf)および低用量シロリムス(Rapimune)は、維持療法のために使用することができる。免疫抑制はまた、限定はされないが、全身放射線照射、胸腺放射線照射、ならびに全および/または部分脾臓摘出を含む非薬物レジメンを使用して達成することもできる。
【0416】
[00465]いくつかの場合では、細胞分裂阻害剤を免疫抑制のために投与することができる。細胞分裂阻害剤は、細胞分裂を阻害することができる。細胞分裂阻害剤は、プリン類似体であり得る。細胞分裂阻害剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、例えばメトトレキサート、アザチオプリン、またはメルカプトプリンであり得る。細胞分裂阻害剤は、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、イホスファミド、チオデパ、ヘキサメチルメラミン、ブスルファン、フルダラビン、ニトロソウレア、白金、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、プロカルバジン、ダカルバジン、テモゾロミド、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、フルオロウラシル、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、およびミスラマイシンのうちの少なくとも1つであり得る。
【0417】
[00466]いくつかの場合では、フルダラビンなどの免疫抑制剤は、処置レジメンの一部として投与することができる。フルダラビンリン酸塩は、糖部分が、リボースまたはデオキシリボースの代わりにアラビノースであり得るという点において、生理的ヌクレオシドとは異なる合成プリンヌクレオシドであり得る。フルダラビンは、プリンアンタゴニスト代謝拮抗剤であり得る。フルダラビンは、50mgバイアル内に、白色の凍結乾燥した固体ケーキの形態のフルダラビンリン酸塩粉末として供給することができる。25mg/mlの濃度へと2mLの注射用滅菌水により再構成した後に、溶液は、7.7のpHを有し得る。フルダラビン粉末は、2~8℃で少なくとも18か月間安定であり得る;再構成された場合、フルダラビンは、室温で少なくとも16日間安定である。保存剤は存在しないため、再構成されたフルダラビンは、8時間以内に投与され得る。特異的適合性情報については専門的な参考文献を閲覧するべきである。フルダラビンは、血清中で脱リン酸化され、細胞内に輸送され、ヌクレオチドフルダラビン三リン酸に変換され得る;この2-フルオロ-ara-ATP分子は、薬物の細胞傷害性効果に要求されると考えられる。フルダラビンは、DNAポリメラーゼ、リボヌクレオチドリダクターゼ、DNAプライマーゼを阻害し、鎖伸長、ならびにRNAおよびタンパク質合成に干渉し得る。フルダラビンは、15~30分間にわたる100mlの0.9%塩化ナトリウム、USPにおけるIV注入として投与することができる。用量は、体表面積(BSA)に基づき得る。患者が肥満である場合(BMI>35)、薬物投与量は、実際の体重を使用して計算され得る。いくつかの場合では、フルダラビンなどの免疫抑制剤は、対象の体表面積の約20mg/m~約30mg/mで投与することができる。いくつかの場合では、フルダラビンなどの免疫抑制剤は、対象の体表面積の約5mg/m~約10mg/m、対象の体表面積の約10mg/m~約15mg/m、対象の体表面積の約15mg/m~約20mg/m、対象の体表面積の約20mg/m~約25mg/m、対象の体表面積の約25mg/m~約30mg/m、対象の体表面積の約30mg/m~約40mg/mで投与することができる。いくつかの場合では、フルダラビンなどの免疫抑制剤は、対象の体表面積の約1mg/m、2mg/m、3mg/m、4mg/m、5mg/m、6mg/m、7mg/m、8mg/m、9mg/m、10mg/m、11mg/m、12mg/m、13mg/m、14mg/m、15mg/m、16mg/m、17mg/m、18mg/m、19mg/m、20mg/m、21mg/m、22mg/m、23mg/m、24mg/m、25mg/m、26mg/m、27mg/m、28mg/m、29mg/m、30mg/m、31mg/m、32mg/m、33mg/m、34mg/m、35mg/m、36mg/m、37mg/m、38mg/m、39mg/m、40mg/m、41mg/m、42mg/m、43mg/m、44mg/m、45mg/m、46mg/m、47mg/m、48mg/m、49mg/m、50mg/m、51mg/m、52mg/m、53mg/m、54mg/m、55mg/m、56mg/m、57mg/m、58mg/m、59mg/m、60mg/m、61mg/m、62mg/m、63mg/m、64mg/m、65mg/m、66mg/m、67mg/m、68mg/m、69mg/m、70mg/m、71mg/m、72mg/m、73mg/m、74mg/m、75mg/m、76mg/m、77mg/m、78mg/m、79mg/m、80mg/m、81mg/m、82mg/m、83mg/m、84mg/m、85mg/m、86mg/m、87mg/m、88mg/m、89mg/m、90mg/m、91mg/m、92mg/m、93mg/m、94mg/m、95mg/m、96mg/m、97mg/m、98mg/m、99mg/m、最大約100mg/mで投与することができる。いくつかの場合では、フルダラビンなどの免疫抑制剤は、100mlの0.9%塩化ナトリウム、USPにおける25mg/mの用量であり、約15~約30分間にわたって注入される。
【0418】
[00467]いくつかの場合では、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤は、処置レジメンの一部として投与することができる。シクロホスファミドは、窒素マスタード誘導体アルキル化剤であり得る。肝臓における活性代謝物への変換後に、シクロホスファミドは、アルキル化(alkyating)剤として機能する;この薬物も、強力な免疫抑制活性を保持する。IV投与後の血清半減期は、3~12時間の範囲である;薬物および/またはその代謝物は、投与後最大72時間、血清中で検出することができる。指示通りの注射用滅菌水による再構成後に、シクロホスファミドは、室温で24時間、または2~8℃で維持された場合は6日間、安定であり得る。シクロホスファミドは、250ml D5Wに希釈し、1時間にわたって注入することができる。用量は、対象の体重に基づき得る。対象が肥満である場合(BMI>35)、薬物投与量は、記載通り、実際の体重を使用して計算され得る。いくつかの場合では、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤は、約1mg/kg~約3mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約20mg/kg、20mg/kg~約30mg/kg、約30mg/kg~約40mg/kg、約40mg/kg~約50mg/kg、約50mg/kg~約60mg/kg、約60mg/kg~約70mg/kg、約70mg/kg~約80mg/kg、約80mg/kg~約90mg/kg、約90mg/kg~約100mg/kgで投与することができる。いくつかの場合では、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤は、対象の50mg/kgを超えて投与される。いくつかの場合では、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤は、対象の約1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、22mg/kg、23mg/kg、24mg/kg、25mg/kg、26mg/kg、27mg/kg、28mg/kg、29mg/kg、30mg/kg、31mg/kg、32mg/kg、33mg/kg、34mg/kg、35mg/kg、36mg/kg、37mg/kg、38mg/kg、39mg/kg、40mg/kg、41mg/kg、42mg/kg、43mg/kg、44mg/kg、45mg/kg、46mg/kg、47mg/kg、48mg/kg、49mg/kg、50mg/kg、51mg/kg、52mg/kg、53mg/kg、54mg/kg、55mg/kg、56mg/kg、57mg/kg、58mg/kg、59mg/kg、60mg/kg、61mg/kg、62mg/kg、63mg/kg、64mg/kg、65mg/kg、66mg/kg、67mg/kg、68mg/kg、69mg/kg、70mg/kg、71mg/kg、72mg/kg、73mg/kg、74mg/kg、75mg/kg、76mg/kg、77mg/kg、78mg/kg、79mg/kg、80mg/kg、81mg/kg、82mg/kg、83mg/kg、84mg/kg、85mg/kg、86mg/kg、87mg/kg、88mg/kg、89mg/kg、90mg/kg、91mg/kg、92mg/kg、93mg/kg、94mg/kg、95mg/kg、96mg/kg、97mg/kg、98mg/kg、99mg/kg、最大約100mg/kgで投与することができる。いくつかの場合では、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤は、少なくとも約1日間~約3日間、3日間~5日間、5日間~7日間、7日間~約10日間、10日間~14日間、14日間~約20日間にわたって投与することができる。いくつかの場合では、シクロホスファミドは、約60mg/kgの用量であってよく、250mlの5%デキストロース水溶液に希釈され、1時間にわたって注入される。
【0419】
[00468]免疫抑制剤は、例えば、シクロホスファミドおよびフルダラビンのレジメンであり得る。例えば、シクロホスファミドフルダラビンレジメンは、操作細胞療法を受ける対象に投与することができる。シクロホスファミドフルダラビンレジメンは、60mg/kg qdを2日間、および25mg/cm qdを5日間のレジメンで投与することができる。化学療法薬レジメン、例えば、シクロホスファミドフルダラビンは、本開示の操作細胞の投与に1時間~14日間先行して投与することができる。化学療法レジメンは、異なる用量で投与することができる。例えば、対象は、より高い初回用量に続いてより低い用量を受けることができる。対象は、より低い初回用量に続いてより高い用量を受けることができる。
【0420】
[00469]いくつかの場合では、免疫抑制剤は、抗体であり得る。抗体は、治療有効用量で投与することができる。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。投与され得るポリクローナル抗体は、抗リンパ球または抗胸腺細胞抗原であり得る。モノクローナル抗体は、抗IL-2受容体抗体、抗CD25抗体、または抗CD3抗体であり得る。抗CD20抗体を使用することもできる。CD20と反応する薬剤、例えば、リツキサンなどのB細胞除去療法を免疫抑制剤として使用することもできる。
【0421】
[00470]免疫抑制剤は、抗イムノフィリンでもあり得る。抗イムノフィリンは、シクロスポリン、タクロリムス、エベロリムス、またはシロリムスであり得る。追加的な免疫抑制剤は、IFN-ベータなどのインターフェロン、オピオイド(opiod)、抗TNF結合剤、ミコフェノール酸塩またはフィンゴリモドであり得る。
【0422】
[00471]免疫抑制剤は、放射線療法も指し得る。放射線療法は、放射線照射を含み得る。全身放射線照射は、12Gyで投与することができる。放射線量は、健康な組織を含む全身への12Gyの累積線量を含み得る。放射線量は、5Gy~20Gyを含み得る。放射線量は、5Gy、6Gy、7Gy、8Gy、9Gy、10Gy、11Gy、12Gy、13Gy、14Gy、15Gy、16Gy、17Gy、18Gy、19Gy、または最大20Gyであり得る。放射線照射は、全身放射線照射または部分放射線照射であり得る。放射線照射が全身放射線照射である場合、照射は均一であっても均一でなくてもよい。例えば、放射線照射が均一ではなくてよい場合、頸部などの身体のより狭い領域は、臀部などのより広い領域よりも高い線量を受けることができる。例えば、一実施形態では、対象は、高用量化学療法による標準的な処置に続き、末梢血幹細胞移植を受ける場合がある。ある特定の実施形態では、移植後、対象は、本開示の増殖された細胞(例えば、免疫受容体プログラムレシピエント細胞)の注入を受ける。患者に投与される上述の処置の投与量は、処置されている状態および処置のレシピエントの正確な性質により変わり得る。ヒト投与のための投与量の縮尺調整は、当技術分野で任用されている実務に従って実施することができる。CAMPATHの用量は、例えば、成人患者では、1~30日間の期間、通常毎日投与される、1~約100mgの範囲内であり得る。1日用量は、1日当たり1~10mgであり得るが、一部の場合では、より大容量の1日当たり最大40mgを使用することができる(米国特許第6,120,766号に記載)。
【0423】
抗生物質
[00472]抗生物質は、治療レジメンの一部として対象に投与することができる。抗生物質は、治療有効用量で投与することができる。抗生物質は、細菌を死滅させるまたは細菌の増殖を阻害することができる。抗生物質は、広範囲の細菌を標的化することができる広域性抗生物質であり得る。広域性抗生物質は、第3または第4世代のいずれかであり、セファロスポリンまたはキノロンであり得る。
【0424】
[00473]抗生物質は、特異的なタイプの細菌を標的化することができる狭域性抗生物質でもあり得る。抗生物質は、ペニシリンおよびセファロスポリンなどの細菌細胞壁を標的化することができる。抗生物質は、ポリミキシンなどの細胞膜を標的化することができる。抗生物質は、抗生物質:リファマイシン、リピアルマイシン、キノロンおよびスルホンアミドなどの必須細菌酵素に干渉し得る。抗生物質は、マクロライド、リンコサミド、およびテトラサイクリンなどのタンパク質合成阻害剤でもあり得る。抗生物質は、ダプトマイシンなどの環状リポペプチド、チゲサイクリンなどのグリシルサイクリン、リネゾリドなどのオキサゾリジノン(oxazolidione)、およびフィダキソマイシンなどのリピアルマイシンでもあり得る。
【0425】
[00474]いくつかの場合では、抗生物質は、第1世代、第2世代、第3世代、第4世代、または第5世代であり得る。第1世代抗生物質は、狭域性を有し得る。第1世代抗生物質の例は、ペニシリン(ペニシリンGまたはペニシリンV)、セファロスポリン(セファゾリン、セファロチン、セファピリン、セファレチン、セフラジン、またはセファドロキシン)であり得る。いくつかの場合では、抗生物質は、第2世代であり得る。第2世代抗生物質は、ペニシリン(アモキシリンまたはアンピシリン)、セファロスポリン(セフロキシム、セファマンドール、セフォキシチン、セファクロル、セフロジル、ロラカルベフ)であり得る。いくつかの場合では、抗生物質は、第3世代であり得る。第3世代抗生物質は、ペニシリン(カルベニシリンおよびチカルシリン)またはセファロスポリン(セフィキシム、セフトリアキソン、セフォタキシム、セフチゾキシム、およびセフタジジム)であり得る。抗生物質は、第4世代抗生物質でもあり得る。第4世代抗生物質は、セフィピムであり得る。抗生物質は、第5世代でもあり得る。第5世代抗生物質は、セフタロリンまたはセフトビプロールであり得る。
【0426】
[00475]いくつかの場合では、抗生物質は、細菌壁標的剤、細胞膜標的剤、細菌酵素干渉剤、殺菌剤、タンパク質合成阻害剤または静菌剤であり得る。細菌壁標的剤は、ペニシリン誘導体(ペナム系)、セファロスポリン(セフェム系)、モノバクタム、およびカルバペネムであり得る。β-ラクタム抗生物質は、殺菌性または静菌性であり、細菌細胞壁のペプチドグリカン層の合成を阻害することにより作用する。いくつかの場合では、抗生物質は、タンパク質合成阻害剤であり得る。タンパク質合成阻害剤は、細菌が細胞壁を作製するのに必要とされる酵素トランスペプチダーゼの不可逆的阻害剤として作用するアンピシリンであり得る。これは、二分裂における細菌細胞壁合成の第3および最終ステージを阻害し、最終的に細胞溶解がもたらされる;したがって、アンピシリンは通常、溶菌性である。いくつかの場合では、殺菌剤は、セファロスポリンまたはキノロンであり得る。他の場合では、静菌剤は、トリメトプリム、スルファメトキサゾール、またはペンタミジンである。
【0427】
[00476]いくつかの場合では、PCP肺炎の防止のための薬剤を投与することができる。例えば、トリメトプリムおよびスルファメトキサゾールを投与して、肺炎を防止することができる。トリメトプリムおよびスルファメトキサゾール(TMP/SMX;例示的なサルファ薬物)の用量は、第1の用量の化学療法の際にまたはその後に、非連続日で1日1錠PO、1週間に3回であってよく、少なくとも約6か月間、少なくとも2回の連続した実験室研究においてCD4計数が200を超えるまで続ける。いくつかの場合では、トリメトプリムは、160mgで投与することができる。トリメトプリムは、約100~約300mgで投与することができる。トリメトプリムは、約100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、または最大約300mgで投与することができる。いくつかの場合では、スルファメトキサゾールは、800mgで投与される。スルファメトキサゾールは、約500mg~約1000mgで投与することができる。スルファメトキサゾールは、約500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、または最大約1000mgで投与することができる。いくつかの場合では、TMP/SMXレジメンは、治療有効量で投与することができる。TMP/SMXは、1日に約1回~約10回投与することができる。TMP/SMXは、1日に1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、または最大約20回投与することができる。いくつかの場合では、TMP/SMXは、週ごとで投与することができる。例えば、TMP/SMXは、1週間に1回、2回、3回、4回、5回、6回、または最大約7回投与することができる。TMP/SMXレジメンは、本明細書に記載のレシピエント細胞などの細胞療法の投与後約-14、-13、-12、-11、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13日目、または最大約14日目に投与することができる。
【0428】
[00477]いくつかの場合では、サルファアレルギーを有する対象は、ペンタミジンを受けることができる。ペンタミジンは、エアロゾルによって投与することができる。入院前の1週間以内のネブライザー当たりペンタミジン300mg、これを2回の連続した追跡実験室研究においてCD4計数が200を上回るまで、および化学療法後少なくとも6か月間、毎月続けた。ペンタミジンを使用して、PCP感染症の出現を防止することができる。これは、凍結乾燥粉末の300mgバイアル内に供給することができ、ネブライザーにより投与され得る。ペンタミジンは、約300mg~約500mgで投与することができる。いくつかの場合では、ペンタミジン(petamidine)は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mgまたは最大約800mgで投与することができる。
【0429】
[00478]いくつかの場合では、抗生物質などの静菌剤は、免疫受容体プログラムレシピエント細胞の投与の前に、これらの細胞と同時に、またはこれらの細胞の後に投与することができる。いくつかの場合では、静菌剤は、免疫受容体プログラムレシピエント細胞の投与の約14日前~これらの細胞の投与の約6か月後に投与することができる。
【0430】
抗ウイルス剤
[00479]いくつかの場合では、抗ウイルス剤は、処置レジメンの一部として投与することができる。いくつかの場合では、ヘルペスウイルス予防法は、処置レジメンの一部として対象に投与することができる。ヘルペスウイルス予防法は、バラシクロビル(バルトレックス)であり得る。バルトレックスを経口使用して、陽性HSV血清学を有する対象におけるヘルペスウイルス感染症の出現を防止することができる。これは、500mg錠剤中に供給することができる。バラシクロビルは、治療有効量で投与することができる。例えば、バラシクロビルは、約50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、または最大約700mg錠剤で投与することができる。対象が、経口摂取に寛容を示すことができる場合、バラシクロビルは、毎日経口500mgの用量で、フルダラビンの最後の用量の翌日に開始することができる。抗ウイルス療法は、細胞療法の投与後約-14、-13、-12、-11、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13日目、または最大約14日目に投与され得る。
【0431】
[00480]いくつかの場合では、対象は、ヘルペスの予防法のための経口薬物療法を服用できない場合がある。そのような場合、アシクロビルを投与することができる。アシクロビルは、500mg/バイアルの注射用粉末として供給することができる。いくつかの場合では、アシクロビルは、治療有効量で投与することができる。アシクロビルは、約50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、または最大約700mgで経口投与することができる。アシクロビルは、1日当たり1回、2回、3回、4回、5回、6回、または最大約7回投与することができる。アシクロビルは、細胞療法の投与後約-14、-13、-12、-11、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13日目、または最大約14日目に投与され得る。いくつかの場合では、アシクロビルは静脈内投与することができる。例えば、アシクロビルは、1mg/kg~約3mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約10mg/kg、約10mg/kg~約20mg/kg、20mg/kg~約30mg/kg、約30mg/kg~約40mg/kg、約40mg/kg~約50mg/kg、約50mg/kg~約60mg/kg、約60mg/kg~約70mg/kg、約70mg/kg~約80mg/kg、約80mg/kg~約90mg/kg、約90mg/kg~約100mg/kgで投与することができる。いくつかの場合では、アシクロビルは、50mg/kgを超えて投与される。アシクロビルは、50mg/mLの濃度となるように10mLの注射用滅菌水で再構成することができる。再構成した溶液は、12時間以内に使用するべきである。IV溶液は、7mg/mLまたはそれ以下の濃度に希釈し、1時間にわたって注入して、腎損傷を回避することができる。
【0432】
投与
[00481]本明細書では、がんなどの状態を有する対象に治療レジメンを投与するための方法が提供され得る。いくつかの例では、細胞組成物(例えば、免疫受容体プログラムレシピエント細胞を含む)は、単位剤形で提供することができる。細胞組成物は、溶液に再懸濁し、注入として投与することができる。本明細書では、免疫刺激薬、免疫抑制剤、抗生物質、抗真菌剤、制吐剤、化学療法剤、放射線療法およびそれらの任意の組合せを含む処置レジメンも提供され得る。上述のいずれかを含む処置レジメンを凍結乾燥し、水溶液(例えば、生理食塩水溶液)中で再構成することができる。いくつかのの例では、処置(例えば、細胞処置)は、皮下注射、筋肉内注射、皮内注射、経皮的投与、静脈内(「i.v.」)投与、鼻腔内投与、リンパ内注射、および経口投与から選択される経路によって投与される。いくつかの例では、対象は、リンパ内のマイクロカテーテルによって免疫受容体プログラムレシピエント細胞を含む細胞組成物を注入される。
【0433】
[00482]多くの薬物は、液体、カプセル、錠剤または咀嚼錠として経口投与することができる。経口経路は、最も簡便であり、通常最も安全で最も安価であり得るため、最も高頻度で使用される経路であり得る。しかしながら、薬物が典型的に消化管を通って移動する道のりのため、経口経路には限界があり得る。経口投与される薬物のため、吸収は、口および胃の中で始めることができる。しかしながら、ほとんどの薬物は、小腸から吸収され得る。薬物は、血流を経てその標的部位に輸送される前に、腸管壁を通過し、肝臓に移行する。腸管壁および肝臓は、多くの薬物を化学的に変更(代謝)し、血流に達する薬物の量を低下させる。したがって、これらの薬物は、静脈内注射される場合、同じ効果を生じるように、より少ない用量で与えることができる。
【0434】
[00483]皮下経路のため、皮膚直下の脂肪性組織中に針が挿入され得る。薬物は、注射された後に、次いで小血管(毛細血管)内に移動し、血流によって運び出される。あるいは、薬物は、リンパ管を通って血流に達することができる。より大きい体積の薬物製品が必要とされる場合、筋肉内経路が使用され得る。筋肉は、皮膚および脂肪性組織の下に位置するため、より長い針が使用され得る。薬物は通常、上腕、大腿または臀部の筋肉内に注射される。静脈内経路のため、針が静脈内に直接的に挿入され得る。薬物を含有する溶液は、単一用量でまたは持続注入によって与えることができる。注入のため、溶液は、重力によって(折り畳み式のプラスチック袋から)移動され得る、またはより一般的には、通常、前腕における静脈内に挿入された管(カテーテル)へと細い軟性チューブを通って注入ポンプによって移動され得る。いくつかの場合では、細胞または治療レジメンは、注入として投与される。注入は、ある期間にわたって行われ得る。例えば、注入は、約5分間~約5時間の期間にわたる細胞または治療レジメンの投与であり得る。注入は、約5分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間または最大約5時間の期間にわたって行われ得る。
【0435】
[00484]一部の実施形態では、静脈内投与は、早く、十分に制御された様式で体全体に正確な用量を送達するのに使用される。これは、皮下または筋肉内注射によって与えた場合に疼痛および組織損傷を引き起こすであろう刺激性溶液にも使用することができる。特に、そのヒトが肥満の場合、静脈への針またはカテーテルの挿入が困難になり得るため、静脈内注射は、皮下または筋肉内注射よりも投与が困難になり得る。静脈内に与えた場合、薬物は、血流へと直ちに送達され、他の任意の経路によって与えた場合よりも早く効果を生じる傾向がある。結果的に、医療施術者は、静脈内注射を受ける人を、薬物が働いているまたは望まれない副作用を引き起こしている徴候について密接にモニターすることができる。また、この経路によって与えられた薬物の効果は、より短い時間持続する傾向がある。したがって、いくつかの薬物は、持続注入によって与えて、その効果を一定に維持することができる。くも膜下腔内経路のため、下部脊椎における2つの椎骨の間、および脊髄周りの間隙中に針が挿入され得る。次に、薬物は、脊柱管中に注射され得る。少量の局所麻酔薬が、注射部位を麻痺させるために使用され得る。薬物が、例えば、それらの構造の感染症を処置するために、脳、脊髄、またはこれらを覆う組織の層(髄膜)における急速または局所効果の産生に必要とされる場合、この経路が使用され得る。
【0436】
[00485]口を通る吸入によって投与される薬物は、薬物が、気道(気管)を通過して、肺に入ることができるように、経鼻経路によって投与されるものよりも小さい液滴へと微粒化することができる。薬物がどの程度深く肺内に進むかは、液滴のサイズに依存し得る。小さい液滴はより深く進むことができ、これより吸収される薬物の量を増大することができる。肺の内側で、薬物は、血流中に吸収され得る。
【0437】
[00486]いくつかの場合では、対象の体重に従って処置レジメンを投薬することができる。肥満(BMI>35)と決定された対象において、実際の体重が用いられることを必要とする場合がある。BMIは、次式によって計算される:BMI=体重(kg)/[身長(m)]
【0438】
[00487]理想体重は、男性については50kg+2.3×(60インチを超えるインチ数)として、または女性については45.5kg+2.3×(60インチを超えるインチ数)として計算することができる。その理想体重の20%を超える対象に対して、調整された体重を計算することができる。調整された体重は、理想体重+(0.4×(実際の体重-理想体重))の和であり得る。いくつかの場合では、体表面積を用いて、投与量を計算することができる。体表面積(BSA)は、次式によって計算することができる:BSA(m2)=√身長(cm)×体重(kg)/3600。
【0439】
[00488]いくつかの場合では、細胞療法を含む医薬組成物は、単独で、または薬学的に許容される担体または賦形剤と併せて、任意の経路により投与することができ、このような投与は単回投与および複数回投与の両方で実行することができる。より詳細には、医薬組成物は、錠剤、カプセル、薬用ドロップ、トローチ、ハンドキャンディー(hand candies)、粉剤、スプレー、水性懸濁液、注射用溶液、エリキシル剤、シロップなどの形態の多様な薬学的に許容される不活性の担体と組み合わせることができる。このような担体は、固体の希釈剤または充填剤、滅菌水性媒体、および多様な非毒性有機溶媒などを含む。さらに、このような経口医薬製剤は、このような目的で一般に利用されるタイプの多様な薬剤により、適切に甘味および/または芳香を添加することができる。
【0440】
[00489]いくつかの場合では、治療レジメンは、担体または賦形剤と共に投与することができる。担体および賦形剤の例は、デキストロース、塩化ナトリウム、スクロース、ラクトース、セルロース、キシリトール、ソルビトール、マリトール、ゼラチン、PEG、PVP、およびそれらの任意の組合せを含み得る。いくつかの場合では、デキストロースまたは塩化ナトリウムなどの賦形剤は、約0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、または最大約15%のパーセントであり得る。いくつかの場合では、対象において疾患を処置する方法は、操作細胞(例えば、免疫受容体プログラムレシピエント細胞)を含む1つまたは複数の細胞(臓器および/または組織を含む)を対象に移植するステップを含み得る。細胞内ゲノム移植によって調製された細胞を使用して、がんを処置することができる。
【実施例
【0441】
実施例1:液滴ベースの単一細胞反応器を使用する、テイル-テイル方向の対合TCRクローニング
[00490]ステップ1:オリゴヌクレオチド負荷、熱可逆性ヒドロゲルの調製
[00491]オリゴヌクレオチド負荷、熱可逆性ヒドロゲルは、超低温ゲル化温度(ULGT)アガロース(熱可逆性ヒドロゲルとして寄与する)およびオリゴヌクレオチドとの共有結合により改変された線状ポリアクリルアミドポリマーによって作製することができる。ULGTアガロースは、IX-A型であってよく、Sigma Aldrich社から入手することができる(カタログ#A2576)。
【0442】
[00492]オリゴヌクレオチド改変線状ポリアクリルアミドは、オリゴヌクレオチドとアクリルアミドモノマーの共重合によって作製することができる。特に、PBS緩衝液中に、約4%アクリルアミド、100μM Acrydite-dT30、100μM Acrydite-T1dを含有する溶液を調製し、適切な量の過硫酸アンモニウム(APS)およびTEMEDを溶液に添加し、溶液を室温で約6時間インキュベートし、その間にアクリルアミド、Acrydite-dT30、Acrydite-T1d(T1dの配列は5’-CGGGAAAGCAGA-3’であり得る)が、高分子量線状ポリマーへと共重合される。
【0443】
[00493]この溶液を、PBSに対して透析し、長鎖線状ポリアクリルアミドに組み込まれないアクリルアミドモノマー、短鎖ポリアクリルアミド、およびオリゴヌクレオチドなどの廃棄物を除去する。この透析は、APS、TEMED、それらの反応/分解産物も除去する。次いで、2%溶解ULGTアガロースおよびオリゴヌクレオチド改変線状ポリアクリルアミドを含有する溶液を1:1比で混合することによって作製し、オリゴヌクレオチド負荷1%ULGTアガロースを得ることができる。
【0444】
[00494]この例では、dT30は、図4Aおよび図5Aに示す、拡散抑制TCRアルファ定常ドメイン(TRAC)RTプライマーおよび拡散抑制TCRベータ定常ドメイン(TRBC)RTプライマーとして寄与する。あるいは、遺伝子特異的プライマーターゲティングTRACおよびTRBCは、RTプライマーとして使用することができる。TRACターゲティング遺伝子特異的プライマー配列の例は、5’-ttgagaatca aaatcggtga ata-3’である。TRBCターゲティング遺伝子特異的プライマー配列の例は、5’-tgtgcacctc cttccc-3’である。
【0445】
[00495]この例では、T1dは、ARSを持つ分子(例えば、プライマーおよびPCR産物)が拡散抑制されるように、図4Aおよび図5Bに示す親和性保持配列(ARS)とハイブリダイズすることができる親和性捕捉オリゴ(ACO)として寄与する。1% ULGTアガロースゲル中のdT30およびT1dの最終濃度が100nM~500nMの範囲であるように、重合条件を最適化することができる。
【0446】
[00496]ステップ2:ヒドロゲル液滴へのT細胞のカプセル化
[00497]約10,000個のT細胞に、約50μLの上記の溶解オリゴヌクレオチド負荷、熱可逆性ヒドロゲルを37℃で添加し、優しく混合し、フローフォーカシング微小流体装置を使用してキャリアオイルによって乳化させ、平均容積約250pLの、約200,000個の均一サイズの油中水液滴を形成する、またはTissueLyserLT(Qiagen社)を使用してボルテックスすることによって異種サイズの油中水液滴を形成する。キャリアオイルは、フルオロカーボンオイルを含有する界面活性剤(例えば、RAN Biotechnologies社、カタログ#008-FluoroSurfactant-2wtH)、またはミネラルオイルを含有する界面活性剤(例えば、73:20:7の比で混合したTegosoft DEC、ミネラルオイル、Abil WE09、Abilら、2017年を参照)であり得る。ボルテックス法では、T細胞の適当な画分(例えば、>20%)が、容積が0.1nLと0.5nLの間である液滴中にあるように、ボルテックスの頻度および期間を調整することができる。
【0447】
[00498]ステップ3:mRNAの捕捉および逆転写
[00499]上記で産生したエマルジョンを5分間、65~75℃でインキュベートし、細胞を破壊し、mRNAを放出させることができる。次いで、エマルジョンを氷上に置き、dT30をポリAテイルとハイブリダイズさせる(図4A、上)。この氷上でのインキュベーションはアガロースのゲル化も促進する。次に、エマルジョンは、水溶液中のヒドロゲルビーズを得るために解乳化される。解乳化方法は、使用するキャリアオイルに依存する。フルオロカーボンオイルでは、エマルジョンは、HFE-7500オイル(20% PFO)中の20%(体積/体積)1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクタノールを添加することによって解乳化することができる。ミネラルオイルでは、エマルジョンは、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1;体積/体積/体積;Fisher社、カタログ番号BP17521)によって解乳化することができる。
【0448】
[00500]試薬交換を実施し、逆転写(RT)および鋳型スイッチング(TS)が起こり得るように、ヒドロゲルビーズの水性内容物に緩衝液および試薬を送達することができる(図4A、矢印(1))。これを行うため、ヒドロゲルビーズは、4℃で十分な量のdNTPを含有するRT緩衝液(例えば、SmartScribe RT緩衝液)によって洗浄することができ、次いで十分な量のRT酵素(例えば、SmartScript逆転写酵素)および鋳型スイッチングオリゴ(TSO)をビーズ懸濁液に添加し、ヒドロゲルビーズへの拡散を可能にする。TSOは、5’-AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACAT/rG//rG//+G/-3’の配列を有することができ、ここで/rG/はリボースGヌクレオチドを意味し、/+G/はLNA Gヌクレオチドを意味する。次いで、ヒドロゲルビーズを短時間の遠心分離(例えば、500gで1分間)によって圧縮し、上澄み液を除去することができる。次いで、ヒドロゲルビーズを、攪拌方法を使用して再乳化する。これを行うため、少量(例えば、約500μL)のキャリアオイルを、圧縮したヒドロゲルビーズを含有するチューブに添加することができる。チューブを攪拌し(例えば、ボルテックスまたは手ではじくことによって)、ヒドロゲルビーズが、その間に少量の(例えば、50pL)水溶液流体または水溶液流体の無いキャリアオイルによって囲まれる、油中水エマルジョンを形成する。このエマルジョンをインキュベートし、RTおよび鋳型スイッチングを終了させ(例えば、42℃で1時間)、続いて、4℃で5分間インキュベートしてアガロースゲルにする。次いで、エマルジョンは、上記のように再び解乳化することができる。
【0449】
[00501]ステップ4:PCR増幅TRAおよびTRB
[00502]ヒドロゲル中で拡散抑制された第1鎖cDNAにより、ヒドロゲル粒子は再び(上記のように)試薬交換され、液滴ベースの単一細胞反応器におけるTRAおよびTRBのPCR増幅のための緩衝液、DNAポリメラーゼ(例えば、TaqまたはKOD)、およびプライマーを送達することができる。3つのプライマーのセットを使用してTRACおよびTRBCを増幅することができる:プライマー「ARS-pTSO」、「1R」、および「2R」(図4A、矢印(2)を参照)。プライマーARS-pTSOは、[T1i|3xSpacer18|pTSO}の配列を有し、T1iはT1dと相補性であり、3xSpacer18は、3つの連続する内側Spacer18(すなわち、ヘキサエチレングリコール)改変からなる可動性リンカーであり、pTSOは、鋳型スイッチcDNAを刺激することができるTSOと基本的に同じ配列を有する。pTSOは、以下の配列を有し得る:5’-GCAGTGGTATCAACGCAGAGTAC-3’。プライマー1Rおよび2Rは、「対合二分免疫受容体配列の融合:テイル-テイル設計」節に概略した戦略に従って設計することができる。ドメインTRAC-5Aは、配列5’-GACCCTGCCGTGTACCAG-3’を有することができ;ドメインTRBC-5Aは、配列5’-TGTGTTTGAGCCATCAGAAGCAGAG-3’を有することができ;ドメインOL-1は、配列5’-ACCAG-3’を有することができ;ドメインOL-2は、配列5’-CTCTGCT-3’を有することができる。
【0450】
[00503]試薬交換後、ヒドロゲルビーズは、上記の攪拌方法を使用して再び乳化することができる。エマルジョンはPCRにかけることができ(図4B、矢印(3))、その後、増幅および拡散抑制TRAおよびTRBを産生することができる。増幅したTRAおよびTRBも、融合を促進するオーバーラップ配列を有する。エマルジョンは、アガロースのゲル化のために再び冷却し、次いで解乳化することができる。
【0451】
[00504]ステップ5.TRAおよびTRBの融合
[00505]増幅したTRAおよびTRBの融合は、「対合二分免疫受容体配列の融合:テイル-テイル設計」節に概略した戦略に従って実行することができる。例えば、USER(New England Biolabs社)およびリガーゼを使用することができる。これを行うため、プライマー1Rおよび2Rは、選択された位置でデオキシウリジンによって改変される必要がある。例えば、プライマー1Rは、配列5’-AGCAGAGC/dU/GG/dU/ACACGGCAGGGTC-3’を有することができ、プライマー2Rは、配列5’-ACCAGCTC/dU/GC/dU/TCTGATGGCTCAAACACA-3’を有することができ、ここで/dU/はデオキシウリジン改変を意味する。
【0452】
[00506]先のステップでのPCR増幅後、エマルジョンは解乳化することができ、試薬交換を実行して、アガロースビーズ中の水性内容物へUSER緩衝液および酵素ミックスを送達することができる。ヒドロゲルビーズは、攪拌方法を使用して再び乳化することができ、エマルジョンはUSER消化に適した温度でインキュベートすることができる(例えば、37℃で1時間)。温度をわずかに上昇させ、アガロースが溶解されるのを確実にすることができ、これはUSER消化PCR産物が自由に拡散するのを可能にする。次いで、エマルジョンは、USER消化TRAおよびTRBの突出末端がハイブリダイズできるように、再び37℃でインキュベートすることができる(図4B、矢印(4))。次いで、エマルジョンを氷上で冷却し、アガロースゲルにし、解乳化することができる。
【0453】
[00507]次に、リガーゼ緩衝液および酵素(例えば、Taq DNAリガーゼ)をアガロースビーズに導入するために試薬交換を適用することができ、次いでそれは攪拌方法を使用して再乳化することができる。エマルジョンは、次いで、突出末端をライゲートするリガーゼに最適な温度でインキュベートすることができる(図4B、矢印(5))。エマルジョンは、再び冷却し、解乳化して、水性溶液中でアガロースビーズを回収することができる。
【0454】
[00508]アガロースビーズは、約100μLの1×TEで希釈し、再び溶解することができ、そのためアガロース濃度は十分に低く、室温でゲル化しない。この混合物に、配列pTSOを有するプライマーを、PCR緩衝液および酵素と共に添加することができ、バルクPCRを実行し、融合産物をさらに増幅することができる。この新しいPCR産物は、もはや拡散抑制されず、Agencourt AMPureビーズを使用して精製することができる。精製PCR産物は、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドのライブラリーを表す。
【0455】
実施例2:液滴ベースの単一細胞反応器を使用する、ヘッド-テイル方向の対合TCRクローニング
[00509]最初の3ステップは、TSOが必ずしも必要でない以外は実施例1と基本的に同じであってよい(図5A、上および矢印(1))。
【0456】
[00510]ステップ4:拡散抑制されたcDNAの第2の鎖合成
[00511]RT後、ヒドロゲルビーズを試薬交換に供し、第2の鎖合成(SSS)プライマーの群を送達することができる(図5A、矢印(2))。群は2つのパネルを含み得る:TRAパネルおよびTRBパネル。各パネルは、種によって10~100個のプライマーを含有し得る。ヒトでは、45プライマーのTRAパネルおよび48プライマーのTRBパネルを使用して、IMGTデータベースで注釈をつけられた、全ての機能性V遺伝子バリアントをカバーすることができる。TRAパネルの各プライマーは、[AdptA|CDSTRA}の一般構造を有することができ、TRBパネルの各プライマーは、一般構造[AdptB|CDSTRB}を有することができる。AdptAおよびAdptBは、本開示に記載する。AdptAは、P2A-3Aの配列を有し得る。P2A-3Aは、P2A「自己切断」ペプチドのコード配列の連続する約20塩基であり得る。P2Aのコード配列は、「gcgacgaatt ttagtttgct taagcaagcc ggagatgtgg aggaaaatcc tggaccg」であり得る。AdpBは、attB1-Kの配列を有することができ、そのヌクレオチド配列は「ACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCT tacc」であり得る。CDSTRAは、各TRA-L1遺伝子(TRAV遺伝子のリーダー配列をコードする)のコード配列の最初の20~45塩基であり得る。CDSTRBは、各TRB-L1遺伝子(TRBV遺伝子のリーダー配列をコードする)のコード配列の最初の20~45塩基であり得る。この場合、CDSTRAおよびCDSTRBは、それぞれTRAV-L1UEおよびTRBV-L1UEとも呼ぶことができる(ここで、Uは上流を意味し、Eは正確を意味し、配列が確かに開始コドンから開始することを意味している)。全てのCDSTRAおよびCDSTRB配列は、類似のTmを有するように設計されるべきであり、それによりそれらが適度に良い効率および特異性でcDNA上のそれらの標的部位に全て結合することができる。
【0457】
[00512]試薬交換後、ヒドロゲルビーズ中のプライマーの濃度は、各プライマーにつき約10nMであり得る(全部で約1μM)。AdptAおよびAdptBの存在が、SSSプライマーの非特異的結合を引き起こし得るため、AdptAおよびAdptBに相補的な配列を有するブロッカーオリゴヌクレオチド(ここでは、それぞれBlocker AおよびBlocker Bと呼ばれる)を添加し、AdptAおよびAdptBにハイブリダイズさせることができる。Blocker AおよびBlocker Bの3’末端は、伸長ブロッカーによって改変され得る(例えば、アミン、C3スペーサー、ジデオキシ改変、または逆位dT)。Blocker Aの濃度が、TRAパネルSSSプライマーの総濃度と等しいまたはより高く、Blocker Bの濃度が、TRBパネルSSSプライマーの総濃度と等しいまたはより高いことを確実にすることができる。
【0458】
[00513]試薬交換後、ヒドロゲルビーズは、攪拌方法を使用して再乳化することができる。エマルジョンは、まず、3~10分間、約95℃に加熱し、mRNA:cDNA二量体を変性させ、次いでアニーリング温度に冷却することができ、それは、典型的なCDSTRAおよびCDSTRB配列のTmよりも3~10℃低くてよい。アニーリングは、3~6時間続けることができる。次いで、エマルジョンは、冷却し、アガロースゲルにさせ、解乳化することができ、ヒドロゲルビーズを室温で洗浄し、未結合のSSSプライマーを除去することができる。必要に応じて、ssDNA3’~5’エキソヌクレアーゼ(例えば、ExoI)をアガロースビーズに添加し(試薬交換を介して)、残りのおよびハイブリダイズしなかったSSSプライマーを分解することができる。エキソヌクレアーゼが、アガロースの溶解温度よりも高いインキュベーション温度を必要とする場合、このエキソヌクレアーゼ処置ステップは別の乳化→反応→解乳化→試薬交換を必要とし得る。
【0459】
[00514]次に、DNAポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼI、Phi29、Klenow断片、Taq等)および適当な緩衝液を、試薬交換を介してアガロースに添加することができる。アガロースビーズは、攪拌方法によって再び乳化することができ、エマルジョンは、SSSを実行するために10~60分間、DNAポリメラーゼの最適な温度でインキュベートすることができる(図5B、矢印(3))。
【0460】
[00515]ステップ5:TRAおよびTRBのPCR増幅、融合
[00516]SSS後、エマルジョンを、冷却し、アガロースゲルにさせ、解乳化、およびPCR緩衝液で洗浄することができる。プライマーht1F、ht1R、ht2F、ht2Rならびに熱安定性DNAポリメラーゼ(例えば、Hotstart Taq)を、試薬交換を介してヒドロゲルに添加することができる(図5B、矢印(4))。プライマーht1Fは、配列[T1i|3xSpacer18|AdptA}を有することができ、T1iは親和性保持配列(ARS)として寄与する。プライマーht2Rは、配列[T1i|3xSpacer18|TRBC-3A}を有することができ、TRBC-3Aは、TRBCのリバースプライマーであり、配列5’-CTCTGCTTCTGATGGCTCAAACACA-3’を有し得る。プライマーht1Rおよびht2Fを、本明細書に記載する。ドメイン[htTRAC-5A}は、配列5’-gaccctgccgtgtaccagc-3’を有し得る。
【0461】
[00517]ヒドロゲルビーズは、攪拌方法を使用して乳化し、PCRにかけることができる(図5Bおよび5C、矢印(5))。TRAおよびTRB PCR産物は、オーバーラップ配列を有し、実施例1に記載の方法を使用して融合することができる(図5C)。融合産物は、融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドのライブラリーを表す。
【0462】
実施例3:二方向プロモーターによるテイル-テイル融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドの免疫受容体発現ベクターへの変換
[00518]実施例1から得られたテイル-テイル融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドは、部分C領域配列のみを含有し得る。残りのC領域配列を、プロモーターと共に添加し、発現ベクター内の全発現カセットを形成することができる。図6Aおよび図6Bは、これを達成する例示的な戦略を概略する。まず、上鎖を選択的に捕捉し、放出させることができる(図6A、矢印(1))。これは、上鎖の保存配列(例えば、[OL-1|OL-2})を特異的に認識する捕捉オリゴヌクレオチドを使用して行うことができる。次に、反対方向に向かう2つのヒトプロモーターを含む線状DNA構築物(ここではプロモーターセグメントと名付けた)を、捕捉した上鎖と融合することができる(図6A、矢印(2)および(3))。融合を促進するため、プロモーターセグメントの下鎖(図6Aに示す)は、捕捉した上鎖にハイブリダイズする配列[TSO}を有する一本鎖領域を含み得る。一本鎖領域は、USER消化によって作製することができる。これを行うため、プロモーターセグメントを増幅するために使用するフォワードプライマーは、少ない(例えば、1~5)デオキシウリジン改変を有することができ、PCR産物は、USER酵素ミックスによって処置することができる。dsDNAを得るため(図6A、矢印(3))、強い鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ(例えば、phi29、Bst)を使用することができる。あるいは、リガーゼは、上鎖をシースするために使用することができる。
【0463】
[00519]この融合産物は、PCRによってさらに増幅することができる。フォワードプライマー(基本的に[TSO}の配列を有する)が、上鎖の中央の[TSO}(本発明者らは、干渉するプライマー結合部位と呼ぶ)にハイブリダイズしないことを確実にするため、ブロッカーオリゴヌクレオチドを使用することができる。このブロッカーオリゴヌクレオチドは、配列[PB3|TSO}を有することができ、[PB3}は、[プロモーターB}の連続する10~20塩基の配列を有する。結果として、ブロッカーオリゴヌクレオチドは、フォワードプライマーよりも実質的に高いTmを有し得る。PCR反応では、ブロッカーオリゴヌクレオチドは、フォワードプライマーの濃度よりも低い濃度で使用することができる。2ステップアニーリングを、熱サイクリングプログラムに適用することができる。各PCRサイクルでは、変性ステップ後、比較的高い温度での第1のアニーリングステップ(例えば、68℃)を使用して、ブロッカーが上鎖にハイブリダイズするが、フォワードプライマーが上鎖または下鎖のいずれにもハイブリダイズしないことを確実にすることができる。次に、比較的低い温度での第2のアニーリングステップ(例えば、58℃)を使用して、フォワードプライマーが下鎖に結合することを確実にすることができる。上鎖の[TSO}配列は、第1のアニーリングステップ中にブロッカーによって既に占領されているため、フォワードプライマーはこの配列に効果的に結合できない。第2のアニーリングステップでは、ブロッカーが下鎖の[TSO}(フォワードプライマー結合部位)にも結合できるが、フォワードプライマーがより高い濃度を有するため、ブロッカーよりもより効果的に下鎖の[TSO}部位に結合することができる。
【0464】
[00520]次に、増幅産物は、公知の方法を使用して環状化させることができる(図6A、矢印(4))。環状化産物は、基本的に[OL-1}と[OL-2}の間を切断するステップによって線状化することができる。これは、基本的に配列[OL-2}を有するフォワードプライマーおよび基本的に配列[OL-1}を有するリバースプライマーを使用するPCR増幅によって、簡単に達成することができる。両プライマーは、3’末端で伸長し、PCRの正確なTmに達することができる。線状化産物では、プロモーターセグメント(例えば、プロモーターA)の第1のプロモーターは、TRAを転写するように配置および方向付けられ、プロモーターセグメント(例えば、プロモーターB)の第2のプロモーターは、TRBを転写するように配置および方向付けられる。
【0465】
[00521]線状化産物は、既存の方法を使用して、プラスミド骨格にクローニングすることができる(図6B、矢印(6))。線状化産物は、TRAまたはTRBのいずれのC領域の全配列を含有しなくてもよい。これらの定常配列(TRACおよびTRBCの完全または部分配列)は、プラスミド骨格に含むことができ、それによりTRAおよびTRBの翻訳産物は機能性である。プラスミド骨格は、TRA(例えば、pA1)およびTRB(例えば、pA2)の転写終結配列を有し得る。プラスミド骨格は、ベクターの増殖および機能のための他の要素、例えば、複製オリジン、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)、レトロウイルスベクター機能のためのLTR、またはトランスポザーゼ依存性挿入のための配列エレメントなども有し得る。
【0466】
実施例4:テイル-テイル融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドの二分免疫受容体発現ベクターへの変換
[00522]TCR発現ベクターでは、TRAおよびTRBのコード配列は、ヘッド-テイル方向に、インフレーム様式で融合することができ、それにより、1つのプロモーターは、TRAとTRBの両方をコードするmRNAを転写するために使用することができ、リボソームは、連続するポリペプチド、または、P2Aなどの「自己切断ペプチド」を使用する場合、2つのポリペプチドのいずれかとして、TRAおよびTRBを転写することができる。TRAとTRBの間のリンカー配列を挿入することができる。
【0467】
[00523]この例では、本発明者らは、図4Aおよび図4B、ならびに実施例1に記載の方法を使用して生成されたテイル-テイル融合TCR遺伝子を、TCR発現ベクターに変換する方法を示し、ここで、TRAおよびTRBはヘッド-テイル方向に、インフレームで融合し、TRAとTRBの間にリンカーを有する。戦略は、図7A~7Dに図示する。
【0468】
[00524]この例では、TRAとTRBの開始部位が制御され得る。この例では、配列を記載するために、より正確なネーミングシステムが使用される。図7Aの上は、図4Aおよび図4B、ならびに実施例1に記載の方法を使用して生成された融合産物を示す。TRA配列は、5’UTR、TRAのLドメイン、TRAの再配置VDJ配列、およびTRAのC領域の5’末端の短い配列(本発明者らは、ミニCまたはmCと呼ぶ)を含有し得る。したがって、TRA配列は、TRAUTR-L-VDJmCと呼ばれる。同様に、TRB配列は、TRBUTR-L-VDJmCと呼ばれる。
【0469】
[00525]実施例2に記載した[P2A-3A|TRAV-L1UE}パネルは、上鎖を「トリム」するために使用することができ、それにより(1)TRA配列は、TRAのL1領域の開始コドンから正確に開始することができ、(2)共通配列[P2A-3A}が導入され、増幅などの操作をさらに促進する(図7A、矢印(1))。反応は、テイル-テイル融合TCR遺伝子が鋳型として使用される以外は、実施例2記載のSSS反応に類似し得る。類似の様式で、[attB1-K|TRBV-L1UE}パネルを使用して、下鎖をトリムすることができる(図7A、矢印(2))。配列[P2A-3A}および[attB1-K}を有するプライマーを使用するさらなるPCR増幅は、平滑末端dsDNAをもたらすことができる(図7A、矢印(3))。この例では、トリミング後、UTR配列がトリムされるため、[TRAUTR-L-VDJmC}は「TRAL-VDJmC」になる;TRBも同様である。
【0470】
[00526]次いで、PCR産物は、[TRBL-VDJmC*}の下流のds[Lox66|P2A-5}と呼ばれる別のdsDNA(後述の説明を参照)と融合することができる(図7B、矢印(4))。これは、図6Aの矢印(2)~(3)に記載のものと類似のプロセスを使用して達成することができる。
【0471】
[00527]次に、図6Aの矢印(4)に記載のものと類似のプロセスを使用して、融合dsDNAを環状化させることができる(図7B、矢印(5))。環状化後、[P2A-5}を[P2A-3A}とライゲートし、[P2A-5|P2A-3A}を形成することができ、それは[P2A}の正確な配列を有し得る。環状化DNAは、TRAとTRBの間のブレークポイントで線状化することができる(図7B、矢印(6))。これは、例えば、本明細書に記載のようにプライマー[TRAC-5A}および[TRBC-5A}を使用して、環状化DNAをPCR増幅することによって達成することができる。この線状化産物は、ds[Lox71|FF|TRBC-3}を[TRBL-VDJmC}の上流に融合することができる(図7C、矢印(7))。ここで、TRBC-3は、[TRBC-5A}の下流のTRBCの配列であり(注:ヒトでは、これはTRBC1またはTRBC2のいずれかであってよい)、FFはフューリン(urin)切断部位に続いて可動性(lexible)リンカーである、ポリペプチド配列をコードする。Lox66およびLox71は、不可逆的な組換えが起こるCre組換え部位の対である。[TRBL-VDJmC|TRBC-3}はTRBの全長配列であるため、本発明者らは、[TRBL-VDJmC|TRBC-3}を[TRBL-VDJ|TRBc}と上書きすることができ、[TRBL-VDJ}は、L領域の開始コドンから再配置VDJセグメントの終わりまでのTRBの配列であり、TRBcはTRBCの配列である。(図7Cの縦の「=」印を参照されたい)。
【0472】
[00528]上記の融合産物をCreリコンビナーゼによって処置するステップは、Lox66とLox71の間のDNA配列の反転を起こし、二重変異体Lox部位[dmLox}および[LoxP}部位の形成をもたらし得る(図7C、矢印(8))。[Lox66}および[Lox71}の配列は、変換後、FF、dmLox、およびP2Aが、停止コドン無しで、インフレームに接続されるように設計される(図7Dの矢印(8)後のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を参照されたい)。
【0473】
[00529]この反転産物は、[attB1-K}および[TRAC-5A}によってPCR増幅することができ、PCR産物はベクター骨格にクローニングすることができる(図7D、矢印(9))。骨格は、TRACを完成するのに十分な配列を有してよく、プロモーター、ターミネーター、および上記のようにベクターの機能に必要な他のエレメントも有し得る。
【0474】
実施例5:ヘッド-テイル融合二分免疫受容体ポリヌクレオチドの二分免疫受容体発現ベクターへの変換
[00530]その配列構築物が図8Aに記載される、実施例2に記載の方法によって生成されたヘッド-テイル融合TCR遺伝子は、先の実施例と類似の戦略を使用して、TCR発現ベクターへと変換することができる。命名規則は、実施例4と同じである。まず、融合TCR遺伝子は、従来のオーバーラップPCRまたは図6Aの矢印(2)~(3)に記載の他の方法を使用して、ds[TRBC-3|P2A-5}を融合することができる(図8A、矢印(1))。この融合は、「TRBL-VDJ}の下流に完全なTRBc配列を作成する(図8Aの縦の「=」印)。この融合産物は、前述のように環状化させることができ(図8A、矢印(2))、プライマー[attB1-K}および[TRAC-5A}を使用するPCR増幅によって線状化することができる(図8B、矢印(3))。線状化産物は、前述のようにベクター骨格にクローニングし、TRAc配列を完成し、他の必要なエレメントを取り入れることができる(図8C)。
【0475】
実施例6:OE-PCRを使用する対合TCRクローニング
[00531]実施例1および2は、USER媒介突出末端生成およびライゲーションを使用して前もって増幅したTRAおよびTRBを融合する方法を記載する。あるいは、前もって増幅したTRAおよびTRBは、オーバーラップ伸長PCR(OE-PCR)を使用して融合することができる。いくつかの場合では、内側プライマー(例えば、実施例1のプライマー1Rおよび2R、または実施例2のプライマーht1Rおよびht2F)を除去するステップは、融合を促進し得る。内側プライマーの除去は、先に記載のように達成することができる。他の場合では、OE-PCRは、内側プライマーを除去するステップ無しで実施することができる。これらの場合では、前もって増幅した産物は、拡散抑制される必要がない。したがって、外側プライマー(例えば、実施例1のpTSO、または実施例2の[Adpt1}および[TRBC-5A})は、ARSに連結される必要がない。
【0476】
[00532]図9Aおよび9Bは、OE-PCRを使用して、テイル-テイル方向でTRAとTRBを融合する方法を記載する。ステップ1~3は、実施例1と同一である(図9A、矢印(1))。ステップ4では、試薬交換を適用し、高濃度のpTSO(例えば、400nM)、低濃度のプライマー1Rおよび2R(例えば、各80nM)、熱安定性DNAポリメラーゼ、およびPCR緩衝液をアガロースビーズに送達することができる(図9A、矢印(2))。アガロースビーズは、攪拌方法を使用して、フルオロカーボンオイルを含有する界面活性剤によって再乳化することができる(図9B、矢印(3))。次いで、エマルジョンPCRを、OE-PCR熱サイクルプログラムを使用して実行することができる。熱サイクルプログラムは、3つのステージを有することができる。第1のステージのゴールは、TRAおよびTRBを増幅することである。第2のステージのゴールは、プライマーとしてpTSOを使用して、TRAおよびTRBならびに3'末端オーバーラップ領域のセンス配列を有するssDNA産物を生成することである。第3のステージのゴールは、ssDNA産物を融合することである。
【0477】
[00533]図10Aおよび10Bは、OE-PCRを使用して、ヘッド-テイル方向でTRAおよびTRBを融合する方法を記載する。ステップ1~4は、実施例2と同一である(図10A、矢印(1)~(3))。ステップ5では、試薬交換を適用し、高濃度の外側プライマー[AdptA}および[TRBC-5A}(例えば、各400nM)、低濃度のプライマー1Rおよび2R(例えば、各80nM)、熱安定性DNAポリメラーゼ、およびPCR緩衝液をアガロースビーズに送達することができる(図10B、矢印(4))。次いで、OE-PCRを、上記のように実施することができる(図10B、矢印(5))。
【0478】
実施例7:プライマー改変アガロース
[00534]プライマー改変アガロースを調製する方法の2つの例を、本明細書で提供する。第1の方法では、約4%のアガロースおよび100~500mMの過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)を含有する溶液を70℃で調製した。70℃での短いインキュベーション後、溶液は、ボルテックスを使用して界面活性剤含有オイルで乳化した。安定な油中水エマルジョンを作製する当技術分野で使用される、実質上任意の界面活性剤含有オイルをここで使用することができる。エマルジョンを氷上で約20分間インキュベートし、次いで20%~100%のPFOを使用して解乳化した。生じたアガロースビーズ懸濁液を水中で洗浄し、遠心分離および上澄み液の除去によって圧縮し、再び溶解し、0.1~1mMのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH)の存在下で、アミン標識RTプライマーを含有する等量の溶液と混合した。37℃で終夜のインキュベーション後、上記のように、溶液を乳化し、氷上でインキュベートし、解乳化および洗浄し、RTプライマーを共有結合により結合した2%アガロースビーズの懸濁液を生じた。固定化RTプライマーの濃度は、DNA結合色素またはRTプライマーに相補的な蛍光標識オリゴヌクレオチドで染色することによって測定することができる。100nM~10μMの固定化RTプライマーを有するアガロースビーズを得た。
【0479】
[00535]第2の方法では、RTプライマーは、線状ポリアクリルアミドに共有結合により連結される。これを行うため、アミン改変線状ポリアクリルアミドを、先ず、アクリルアミドとN-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩を共重合するステップによって調製し、次いでNHS-アジドおよびDBCO改変プライマーと反応させた。プライマー改変線状ポリアクリルアミドを、上記のように、2%アガロースと混合し、乳化し、氷上でインキュベートし、解乳化し、洗浄した。
【0480】
[00536]多くの商標名の多くのアガロース源がある。ゲル化温度は多様であり、改変はゲル化温度に影響し得る。性質制御ステップとして、生じるプライマー改変アガロースは、約37℃で溶解したまま、室温ではゲル化したままであるように制御することができる。
【0481】
実施例8:ヘッド-テイル様式での、末梢T細胞由来のTCRアルファおよびベータ鎖物理的に連結ならびにNGSベース特徴付け
[00537]健康なドナー由来の末梢T細胞を使用して、物理的に連結した(ヘッド-テイル方向)、自然対合TCR(すなわち融合TCRポリヌクレオチド)のDNAライブラリーを調製した。典型的なランでは、以下の成分を混合することによって、細胞懸濁液(CS)を作製した:末梢T細胞(典型的には終濃度μLあたり1000~5000個の細胞)、1つはヒトTRAC mRNAをターゲティングし、他はヒトTRBC mRNAをターゲティングする、2つのRTプライマーを含む、1%プライマー改変アガロース(この例では:TRBCターゲティングRTプライマーはTRBC1およびTRBC2を区別しない)、およびPBS。
【0482】
[00538]以下の成分を含む、Reagent Complete Mix(RCM)と呼ばれる溶液を調製した:1%アガロース、SSIV反応緩衝液(製造業者のユニット定義テストに従って調製)、Maxima H Minus逆転写酵素(終濃度:5~50U/μL)、Q5 DNAポリメラーゼ(終濃度:0.02~0.2U/μL)、SYBR Gold(終濃度:製造業者によって規定されたように1×)、dNTP(各0.1~1mM)、RNaseOUT(終濃度:10×ストックからの希釈)、[AdptA|CDSTRA}パネル(終濃度:各1~5nM)、および[AdptB|CDSTRB}パネル(終濃度:各1~5nM)。
【0483】
[00539] [AdptA|CDSTRA}および[AdptB|CDSTRB}パネルを調製する場合、各プライマーをまずブロッカーA/BおよびV特異的ブロッカー(VSB)と呼ばれる追加のブロッカーとアニールさせることができる。VSBは、相当するCDSTRAまたはCDSTRB領域の3'部分に相補的であり得るが、相当するCDSTRAまたはCDSTRB領域より10~15ヌクレオチド短い。言い換えると、各[AdptA|CDSTRA}および[AdptB|CDSTRB}の3'末端はVSBと平滑末端を形成し得る。3'VSBは、VSBを伸長不能にするようにも改変され得る。
【0484】
[00540]典型的な実行では、RCMおよびCSは、標準的な入口2つの液滴生成マイクロ流体チップ(例えば、Zilionisら、2017年 Nature Protocol doi:10.1038/nprot.2016.154のヒドロゲルビーズ生成装置)の2つのインポートへと等しい流速で注入し、およそ30~70μmの直径を有する液滴を産生した。熱安定性界面活性剤含有フルオロカーボンオイル(例えば、RAN008-FluoroSurfactant-2wtF、RAN008-FluoroSurfactant-5wtH、またはBio-Rad液滴オイル)を油相として使用することができる。図11Aは、液滴生成プロセスのスナップ写真を示す。生じたエマルジョンは、50℃で1~2時間インキュベートした。インキュベーション中、エマルジョンの小さい画分は、SYBR Goldがプライマーおよび細胞核を染色できるため、蛍光顕微鏡によって調べることができる。画像の例を図11Bに提供する。次いで、エマルジョンを、93℃で2分間、65℃で20分間、および72℃で1分間インキュベートした。93℃で30秒、60℃で1分間、72℃で1分間、80℃で1分間の5~8サイクルを加えることができる。
【0485】
[00541]次いで、エマルジョンを冷却し、アガロースゲルビーズを形成し、十分な量の20%PFOとインキュベートすることによって解乳化した。アガロースゲルビーズをLow-EDTA TE中で洗浄し、次いでプライマーAdptA、ht1R、ht2FおよびTRBC-5A図10Aおよび10Bに記載のように)、ならびにホットスタートKOD、市販のKOD反応緩衝液、および十分なdNTPと混合し、ビーズ懸濁液を形成した。ビーズ懸濁液を、DropSeqまたはinDropチップ(例えば、Zilionisら、2017年 Nature Protocol doi:10.1038/nprot.2016.154の細胞カプセル化装置)の水相入口へと注入した。ビーズ以外のビーズ懸濁液の全ての成分を含有する担体溶液を、他の水相入口へと注入した。ビーズ懸濁液および担体溶液の流速を調整し、それにより大半の液滴にアガロースビーズが0または1個だけである。前述のように、ここでは、同じ界面活性剤含有フルオロカーボンオイルを油相として使用した。図12は、アガロースビーズを含有する液滴をハイライトした、典型的なエマルジョンの顕微鏡画像を示す。
【0486】
[00542]エマルジョンを、OE-PCR熱サイクルプログラムにかけた。OE-PCR熱サイクルプログラムの例は、以下の通りである:93℃で2分、[93℃で15秒、63℃で30秒、70℃で1分]の35サイクル、および70℃で3分。次いで、エマルジョンは、20%PFOを使用して解乳化し、SPRI精製し、AdptAおよびTRBC-5Aのネステッドバージョンを使用してさらに増幅した。増幅産物は、物理的に連結した(ヘッド-テイル方向で)、自然対合TCRのDNAライブラリーと考えることができる。このライブラリーの各メンバーは、図13-(1)に示す構造を有し、1Fおよび2Fは、それぞれアダプター配列AdptAおよびAdptBであり、AC-5およびBC-5は、それぞれTRACおよびTRBCの5’セグメントである。増幅産物を、Nextera XTキットによって処置し、TRAV配列の一部を除去し(PCR産物を過剰に切断しない、図13-(2)参照)、次いでネステッドTRBC-5AおよびNexteraアダプターをターゲティングする別のプライマー(Tn5MEAまたはTn5MEB)を使用してPCR増幅した。PCR産物をアガロースゲル上で分離し、650bpと800bpの間の長さを有するDNA断片を回収し、図13-(3)に示す戦略を使用するMiSeq(600サイクルキット)を使用して分析した。
【0487】
[00543]この断片化およびサイズ選択戦略により、ペアエンドリードの実質的な画分は、MiXCRソフトウェアパッケージを使用して、TRAV、TRAJ、TRBV、TRBJ遺伝子ならびに同じ物理的に連結した分子のCDR3αおよびCDR3β配列を同定するのに十分な情報を含有する。典型的なNGSランでは、TCRアルファ鎖(TRA)配列を、1000~100,000個のクローンにクラスター化することができる(注入細胞数およびリード深度に依存する)。同様に、TCRベータ鎖(TRB)配列は、1000~100,000個のクローンにクラスター化することができる。TRAおよびTRBクローンにマッピングされるリードのみが保存されることに注意されたい。残りは、無視された。
【0488】
[00544]M0と呼ばれる数値マトリクスを作成することができ、各横列はTRAクローンであり、各縦列はTRBクローンであり、マトリクスのエレメント(i,j)の値は、リードの総数を示し、Read1配列はi-th TRAクローンにマッピングされ、Read2配列はj-th TRBクローンにマッピングされる。M0マトリクスの部分のヒートマップ可視化は、図14に示す。
【0489】
[00545]1つのTRAクローンが主に1つのTRBクローンと対合するかどうか、および1つのTRBクローンが主に1つのTRAクローンと対合するかどうか評価するため、3つのTRAクローンがシーケンシングデータセットから無作為に選ばれ(図15A~C)、全てのTRBクローンとの対合のリード数をプロットした。これらのTRAクローンの各々は、1つのTRBクローンと主に対合することが分かった。同じことが、3つの無作為に選ばれたTRBクローンについても真であった(図15D~F)。
【0490】
[00546]無作為に選んだクローンを超えて全体的な概要を提供するため、本発明者らは、各TRAクローンについて(すなわち、M0マトリクスの各横列について)、上位1、2、3位の対合によって与えられる画分のリードを計算した。これらの画分は、それぞれFTop1、FTop2、およびFTop3と呼ばれる。例としてTRAクローン#148を使用して(図15A)、全部で1581リードがこのTRAクローンにマッピングされ、その1349リードがTRBクローン#73にマッピングされ、175リードがTRBクローン#218にマッピングされ、57リードがTRBクローン#985にマッピングされ、他のTRBクローンにはマッピングされなかった。したがって、FTop1(TRA#148)=1349/1581=0.85、FTop2(TRA#148)=(1349+175)/1581=0.96、FTop3(TRA#148)=(1349+175+57)/1581=1。この方法を使用して、全てのTRAクローンをFTop1値によってランク付けすることができる。各TRAクローンの降順のランクおよび相当するFTop1値をプロットすることができる(図16A、データ系列A1)。同様に、TRAクローンをFTop2値によってランク付けすることができる。各TRAクローンの降順のランクおよび相当するFTop2値をプロットすることができる(図16A、データ系列A2)。同様に、TRAクローンをFTop3値によってランク付けすることができる。各TRAクローンの降順のランクおよび相当するFTop3値をプロットすることができる(図17A、データA3)。これらのプロットでは、円のサイズは、このTRAクローンにマッピングした総リード数を反映する。類似のプロットを、TRBクローンについても作成することができ(図16B)、データ系列B1、B2、B3は、それぞれFTop1、FTop2、およびFTop3のランク順および値を示す。TRAクローンの半分より多くについて、リードの70%より多くが1つの単一対合によって与えられることが分かった。同じ結論がTRBクローンについても示された。
【0491】
[00547]ライブラリー全体にわたる対合の正確性を表す計量を作成することができる。優性対合は自然対合よりも起こりやすいため、優性対合によって与えられるリードの画分を計算することができる。いくつかのクローンが他よりもより提示されることを考慮して、優性対合を定義するため、マトリクスM0をノーマライズし、マトリクスM1を作成した。M1は、M0と同じ次元を有する。M1の各エレメントの値は、以下のように計算される:
【0492】
【数1】
【0493】
[00548]したがって、M1の全ての値が0と1の間である。M1i,jが、前もって決定された閾値(優性閾値と呼ばれる)より大きい場合、対合は優性であると定義され得る。予測されるように、優性閾値が増加すると優性対合の数は減少する(図17A)。同様に、優性閾値が増加すると、優性対合によって与えられるリードの画分が減少する(図17B、実線)。この例のライブラリーについて、優性閾値が0.7である場合、297の優性対合が同定され、全リードの63%がこれらの優性対合によって与えられる。対照として、シーケンシングデータからのTRA-TRB対合が無作為に再編成される場合、優性対合によって与えられるリードの画分は、ほぼ0%である(図17B、点線)。
【0494】
[00549]本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、記載されるが、そのような実施形態は例示のためのみに提供されることは当業者には明らかであろう。本発明が、本明細書内で提供される特定の実施例によって制限されることを意図しない。本発明は、前述の明細書を参照して記載されるが、本明細書の実施形態の説明および例示は、限定の意味と解釈されることを意味しない。多くのバリエーション、変更、および置換が、現在、本発明から逸脱することなく当業者に考えられるであろう。さらに、本発明の全ての態様が、様々な条件および変数に依存する本明細書に記載の特定の描写、形状または相対的な割合に限定されないことが理解されるべきである。本明細書に記載の本発明の実施形態の様々な代替物が、本発明を実施するステップで用いられ得ることが理解されるべきである。したがって、本発明が、任意のそのような代替物、改変、変形、または等価物もカバーすると考えられる。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定し、これらの請求項の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの等価物がそれらによってカバーされることを意図する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
【配列表】
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