(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】自動車用のオイルフィルタ及びオイルフィルタ用のフィルタカートリッジ
(51)【国際特許分類】
B01D 35/02 20060101AFI20230214BHJP
F01M 11/03 20060101ALI20230214BHJP
B01D 27/08 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
B01D35/02 E
F01M11/03 B
B01D27/08
(21)【出願番号】P 2021535012
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2019080179
(87)【国際公開番号】W WO2020126186
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-17
(31)【優先権主張番号】102018009928.9
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】サンダー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ル クレシュ,ライオネル
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハ,エリック
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0333664(US,A1)
【文献】国際公開第2017/050367(WO,A1)
【文献】特表2019-502853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0246303(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D23/00-35/04
B01D35/08-35/30
F01M11/00-13/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体(16)及びカバー部材(18)を含むオイルフィルタハウジング(14)内に配置されるフィルタカートリッジ(12)を有し、前記フィルタカートリッジ(12)のピストン(36)が、ろ過されたオイル用のチャネル(20)及び排出口(28)を含み、前記チャネル(20)が、半径方向で少なくとも領域ごとに前記フィルタカートリッジ(12)のフィルタ材(22)によって取り囲まれており、前記フィルタ材(12)が、前記ピストン(36)の第1の端部プレート(30)と第2の端部プレート(40)との間に配置されており、前記ピストン(36)が、閉鎖されている前記オイルフィルタハウジング(14)内で前記フィルタカートリッジ(12)の軸方向(38)に移動可能であるため、前記ピストン(36)が閉鎖位置にあるとき、前記排出口(28)に形成された少なくとも1つの通過開口部(32)を経由して前記オイルフィルタハウジング(14)の側面に設けられたチャネル(34)へのろ過されたオイルの流入を遮断し、且つ前記ピストン(36)が開放位置にあるとき、該ピストン(36)が前記閉鎖位置に対して前記閉鎖位置のときよりさらに前記カバー部材(18)から離間されて、前記チャネル(34)への前記オイルの流入を可能にし、前記フィルタカートリッジ(12)の閉鎖部材(54)により、前記フィルタカートリッジ(12)が配置されている前記オイルフィルタハウジング(14)の収容領域(58)からのオイルの排出のために形成される排出チャネル(56)を閉鎖可能な、自動車用のオイルフィルタ(10)であって、
前記閉鎖部材(54)は、前記フィルタカートリッジ(12)の少なくとも1つの支柱(64)の自由端部に保持されており
、
前記ピストン(36)は、前記少なくとも1つの支柱(64)に対して前記フィルタカートリッジ(12)の前記軸方向(38)に変位可能であ
り、
前記自由端部は、前記閉鎖されているオイルフィルタハウジング(14)内において、前記オイルフィルタハウジング(14)の前記カバー部材(18)に支持される
ことを特徴とするオイルフィルタ。
【請求項2】
基体(16)及びカバー部材(18)を含むオイルフィルタハウジング(14)内に配置可能な、自動車のオイルフィルタ(10)用のフィルタカートリッジであり、前記フィルタカートリッジ(12)のピストン(36)が、ろ過されたオイル用のチャネル(20)及び排出口(28)を含み、前記チャネル(20)が、半径方向で少なくとも領域ごとに前記フィルタカートリッジ(12)のフィルタ材(22)によって取り囲まれており、前記フィルタ材(12)が、前記ピストン(36)の第1の端部プレート(30)と第2の端部プレート(40)との間に配置されており、前記ピストン(36)が、閉鎖されている前記オイルフィルタハウジング(14)内で前記フィルタカートリッジ(12)の軸方向(38)に移動可能であるため、前記ピストン(36)が閉鎖位置にあるとき、前記排出口(28)に形成された少なくとも1つの通過開口部(32)を経由して前記オイルフィルタハウジング(14)の側面に設けられたチャネル(34)へのろ過されたオイルの流入を遮断し、且つ前記ピストン(36)が開放位置にあるとき、該ピストン(36)が前記閉鎖位置に対して前記閉鎖位置のときよりさらに前記カバー部材(18)から離間されて、前記チャネル(34)への前記オイルの流入を可能にし、前記閉鎖部材(54)により、前記フィルタカートリッジ(12)が配置されている前記オイルフィルタハウジング(14)の収容領域(58)からのオイルの排出のために形成される排出チャネル(56)を閉鎖可能な、前記フィルタカートリッジであって、
前記閉鎖部材(54)は、前記フィルタカートリッジ(12)の少なくとも1つの支柱(64)の自由端部に保持されており
、
前記ピストン(36)は、前記少なくとも1つの支柱(64)に対して前記フィルタカートリッジ(12)の前記軸方向(38)に変位可能であ
り、
前記自由端部は、前記閉鎖されているオイルフィルタハウジング(14)内において、前記オイルフィルタハウジング(14)の前記カバー部材(18)に支持される
ことを特徴とするフィルタカートリッジ。
【請求項3】
前記ピストン(36)が前記少なくとも1つの支柱(64)に対して変位する場合、前記少なくとも1つの支柱(64)は、前記ピストン(36)を誘導するための誘導部材として形成される
ことを特徴とする請求項
2記載のフィルタカートリッジ。
【請求項4】
前記第1及び第2の端部プレート(30、40)のうちの少なくとも1つに、前記少なくとも1つの支柱(64)に貫通する通過開口部が形成される
ことを特徴とする請求項
2または請求項
3記載のフィルタカートリッジ。
【請求項5】
前記通過開口部は、前記少なくとも1つの端部プレート(30、40)の縁部から半径方向に突出するタブ(70、72)内に形成される
ことを特徴とする請求項
4記載のフィルタカートリッジ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの支柱(64)は、少なくとも1つの誘導領域(76、78)を有し、
前記第1及び第2の端部プレート(30、40)は、前記誘導領域(76、78)に沿って、前記ピストン(36)の変位時に誘導可能であり、
前記誘導領域(76、78)は、前記フィルタカートリッジ(12)の軸方向(38)と実質的に平行に調整されている
ことを特徴とする請求項
3~請求項
5のいずれか一項記載のフィルタカートリッジ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの支柱(64)は、前記第1の端部プレート(30)の領域内に形成された第1の誘導領域(76)と、前記第2の端部プレート(40)の領域内に形成された第2の誘導領域(78)との間に更なる長手領域(80)を有し、前記長手領域(80)内において前記少なくとも1つの支柱(64)が弓状に形成される
ことを特徴とする請求項
6記載のフィルタカートリッジ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの支柱(64)は、前記長手領域(80)内で半径方向に外側へ湾曲して形成される
ことを特徴とする請求項
7記載のフィルタカートリッジ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの支柱(64)は、少なくとも1つのばね領域(82)を有し、前記少なくとも1つのばね領域(82)内において前記フィルタカートリッジ(12)の前記軸方向に作用する力の印加により、圧縮可能である
ことを特徴とする請求項
2~請求項
8のいずれか一項記載のフィルタカートリッジ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの支柱(64)は、前記少なくとも1つのばね領域(82)内において1つのV字形を形成する、少なくとも2つの脚部(84、86)を有し、
前記脚部(84、86)における相互に離間された端部は、前記力の印加により相対移動する
ことを特徴とする請求項
9記載のフィルタカートリッジ。
【請求項11】
前記少なくとも1つのばね領域(82)は、前記少なくとも1つの支柱(64)の一部分に形成されており、
前記少なくとも1つの支柱(64)は、前記一部分内において、前記第1及び第2の端部プレート(30、40)のうち、前記閉鎖部材(54)により近い端部プレート(30)から突出する
ことを特徴とする請求項
9または請求項1
0記載のフィルタカートリッジ。
【請求項12】
前記閉鎖部材(54)により近い端部プレート(30)は、前記フィルタカートリッジ(12)の前記チャネル(20)における前記排出口(28)の周りを取り囲むように、陥入部(88)を有し、
前記陥入部(88)の内壁は、前記排出口(28)を通るように形成されており、
前記フィルタ材(22)のフィルタ材領域(90)は、前記陥入部(88)の外壁(92)と前記フィルタカートリッジ(12)の前記軸方向(38)において重なる
ことを特徴とする請求項
2~請求項1
1のいずれか一項記載のフィルタカートリッジ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの支柱(64)は、端部領域(66)内に少なくとも1つの停止部材(66)を有し、
前記少なくとも1つの停止部材(6
8)は、前記第1及び第2の端部プレート(30、40)のうち、前記閉鎖部材(54)からより離れた端部プレート(40)に下側で係合する
ことを特徴とする請求項
2~請求項1
2のいずれか一項記載のフィルタカートリッジ。
【請求項14】
前記フィルタカートリッジ(12)は、前記第1及び第2の端部プレート(30、40)の円周方向に相互に離間された複数の支柱(64)を有し、且つ/又は、前記支柱(64)は、断面が少なくとも領域ごとに矩形を有する
ことを特徴とする請求項
2~請求項1
3のいずれか一項記載のフィルタカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルフィルタのオイルフィルタハウジング内に配置されているフィルタカートリッジを有する自動車用のオイルフィルタに関する。オイルフィルタハウジングは、基体及びカバー部材を含む。フィルタカートリッジのピストンは、ろ過されたオイル用のチャネル及び排出口を含み、チャネルは、半径方向で少なくとも領域ごとにフィルタカートリッジのフィルタ材によって取り囲まれている。フィルタ材は、ピストンの第1の端部プレートと第2の端部プレートとの間に配置されている。ピストンは、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内でフィルタカートリッジの軸方向に変位可能であるため、ピストンが閉鎖位置にあるときは、排出口内に形成された少なくとも1つの通過開口部を経由して、内燃機関への潤滑剤の供給のためにオイルフィルタハウジングの側面に設けられたチャネルにろ過されたオイルが流入することを遮断し、ピストンが開放位置にあるときは、ろ過されたオイルの流入を可能にする。開放位置のとき、ピストンは、閉鎖位置に対して閉鎖位置のときより更にカバー部材から離間されている。フィルタカートリッジは、排出チャネルを閉鎖可能である閉鎖部材を備える。排出チャネルは、フィルタカートリッジが配置されているオイルフィルタハウジングの収容領域からオイルを排出するために形成されている。更に、本発明は、このようなオイルフィルタ用のフィルタカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなオイルフィルタは、下記特許文献1に記載されている。特許文献1では、フィルタカートリッジは、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内で浮動支承されている。オイルフィルタを備える自動車の内燃機関が作動しておらず、したがってオイルがフィルタカートリッジのフィルタ材を通流していないとき、フィルタカートリッジは、閉鎖位置にある。その場合、フィルタカートリッジのチャネルの排出口に形成された通過開口部から、ろ過されたオイルが、内燃機関に潤滑剤を供給するためにオイルフィルタハウジングの側面に設けられたチャネルに流入することができない。内燃機関が作動すると、フィルタカートリッジは開放位置に変位する。その際、フィルタカートリッジのチャネルの排出口は、戻し弁ばねの力に抗して、フード型の閉鎖装置をオイルフィルタハウジングの基体における管状の収容部から離れる方向に押す。排出口は、この管状の収容部内に突出している。閉鎖装置をその収容部の座面から押し離すことによって、ろ過されたオイルは、排出口内に形成された通過開口部を経由してオイルフィルタハウジングの側面に設けられたチャネルに流入することができる。フィルタ材が追加されると、フィルタカートリッジは、より更にバイパス位置へ向かって変位され、管状の収容部は、バイパス弁ばねの力に抗して、内壁におけるその座面から離れる方向に移動する。その場合、未ろ過のオイルは、オイルフィルタハウジングの側面に設けられたチャネルに到達することができる。
【0003】
特許文献1記載のオイルフィルタの場合、フィルタカートリッジの閉鎖部材は、端部プレートに対して変位可能なスリーブとして形成されており、そのスリーブは、第3のばね又はサービス弁ばねを使用して、排出チャネルの入口に向かって押される。整備が必要な場合、排出チャネルを経由して、フィルタカートリッジのために設けられた、オイルフィルタハウジングの収容領域からオイルを排出することができる。したがって、第3のばねの力を使用して排出チャネルの入口に向かって押されたスリーブ部材によって、オイルフィルタ用のサービス弁の機能が提供されている。
【0004】
第3のばね、すなわち補正ばねは、オイルフィルタハウジングが閉鎖される場合、排出チャネルがフィルタカートリッジの各位置で閉鎖されるように寸法が決められている。したがって、補正ばねは、フィルタカートリッジのストローク又は移動を調整し、フィルタ容器又はオイルフィルタハウジングの底部の排出口に向かって、スリーブに配置された密封部材を常時押し付ける必要がある。
【0005】
この第3のばね又は補正ばねが金属製である場合、焼却によるフィルタカートリッジの廃棄処分時、フィルタカートリッジを完全に焼却することができない。したがって、フィルタカートリッジは完全には灰化できない。
【0006】
更に、フィルタカートリッジが開放位置又はバイパス位置に変位しなければならない場合、逆止弁ばね及びバイパス弁ばねの力に加えて、第3のばねすなわち補正ばね、又はサービス弁ばねの力に打ち勝つ必要がある。加えて、オイルフィルタハウジングが閉鎖される場合、許容誤差の調整のために、フィルタカートリッジは、既に閉鎖位置のとき、少なくとも閉鎖部材が排出チャネルを閉鎖するまで第3のばねが圧縮されるようにする必要がある。フィルタカートリッジが開放位置及びバイパス位置に移動する場合は、必ず第3のばね又はサービス弁ばねの力に打ち勝たなければならないため、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内でのフィルタカートリッジの変位は、第3のばね、すなわち補正ばねを設けない場合よりも大きな圧力損失を伴う。
【0007】
更に、フィルタカートリッジのストロークのために設ける取付けスペースに加えて、スリーブ部材及び第3のばねのために比較的大きな取付けスペースを設ける必要がある。これは、補正ばね及びスリーブを設けない場合よりも、又はフィルタカートリッジがオイルフィルタハウジング内で動かないように配置されている場合よりも、利用できるフィルタ材のフィルタ面が少なくなることを必然的に伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2017/088962(A1)号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、単純化された構造を有するオイルフィルタ及びフィルタカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本課題は、特許請求の範囲における請求項1記載の特徴を有するオイルフィルタ、及び特許請求の範囲における請求項3の特徴を有するフィルタカートリッジによって解決される。本発明の目的に適した発展形態を有する有利な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0011】
本発明に係る自動車用のオイルフィルタは、オイルフィルタのオイルフィルタハウジングに配置されているフィルタカートリッジを含む。オイルフィルタハウジングは、基体及びカバー部材を含む。フィルタカートリッジのピストンは、ろ過されたオイル用のチャネル及び排出口を含む。ピストンのチャネルは、半径方向で少なくとも領域ごとにフィルタカートリッジのフィルタ材によって取り囲まれている。フィルタ材は、ピストンの第1の端部プレートと第2の端部プレートとの間に配置されている。ピストンは、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内でフィルタカートリッジの軸方向に変位可能であるため、ピストンが閉鎖位置にある場合、排出口内に形成された少なくとも1つの通過開口部を経由して、オイルフィルタハウジングの側面に設けられたチャネルにろ過されたオイルが流入することを遮断し、ピストンが開放位置にある場合、オイルフィルタハウジングの側面に設けられたチャネルにオイルが流入する。ピストンが開放位置にある場合、ピストンは、閉鎖位置に対して閉鎖位置のときより更にカバー部材から離間されている。フィルタカートリッジは、排出チャネルを閉鎖可能である閉鎖部材を備える。排出チャネルは、オイルフィルタハウジングの収容領域からオイルを排出するために形成されている。フィルタカートリッジは、収容領域内に配置されている。閉鎖部材は、フィルタカートリッジの少なくとも1つの支柱に保持されており、支柱の自由端部は、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内で支持されている。ピストンは、少なくとも1つの支柱に対してフィルタカートリッジの軸方向に変位可能である。オイルフィルタハウジング内の少なくとも1つの支柱を支持することによって、少なくとも1つの支柱を使用して、オイルフィルタハウジングが閉鎖される場合に排出チャネルが常に閉鎖されるように、閉鎖部材を排出チャネルの入口に向かって押すことができる。したがって、閉鎖部材を使用して排出チャネルの閉鎖を引き起こすために、フィルタカートリッジにばねを設ける必要はない。それに対応して、オイルフィルタ及び特にフィルタカートリッジの構造が単純化される。
【0012】
ピストンの閉鎖位置とは、オイルフィルタを備える自動車の内燃機関が停止しているときに、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内にピストンを収容するフィルタカートリッジのピストンの位置である。したがって、ピストンの閉鎖位置は、エンジン停止位置と称されることもある。
【0013】
それに対して、ピストンの開放位置とは、フィルタカートリッジの排出口を使用してオイルフィルタハウジングの側面に逆止弁が押し開けられている、又は開けられているピストンの位置である。これは、オイルフィルタの作動中、オイルフィルタを備える自動車のオイルポンプが、オイルフィルタハウジングを通してオイルを供給することにより引き起こされ、オイルは、その際に好適には、フィルタカートリッジのフィルタ材を使用して浄化される。オイルポンプは通常、自動車の作動中の内燃機関によって駆動されるため、ピストンの開放位置は、エンジン作動位置と称されることもある。
【0014】
ピストンの閉鎖位置から開放位置への変位は、オイルポンプによって供給されるオイルがオイルフィルタハウジング及びオイルフィルタハウジングに配置されたフィルタカートリッジを通流するときに調整される、オイルフィルタハウジング内での支配的な圧力状態によって引き起こされる。したがって、フィルタカートリッジのピストンは、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内で浮動支承される。そして、ピストンは、オイルポンプ作動中に調整する圧力状態に基づいて、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内で閉鎖位置から少なくとも1つの支柱に対して開放位置へ変位される。その際、オイルフィルタハウジングが閉鎖される場合、フィルタカートリッジの少なくとも1つの支柱に保持され且つ支柱を使用してオイルフィルタハウジングに対して支持される閉鎖部材によって、オイルフィルタハウジングの側面に設けられている排出チャネルは、常時閉鎖されている。
【0015】
このフィルタカートリッジは、第3のばね又はサービス弁ばねを設ける、特許文献1記載の、スリーブを排出チャネルの入口に押し付けるオイルフィルタの場合のフィルタカートリッジより部品が少ない。このようなばねを無くすことによって、オイルフィルタの作動中、フィルタカートリッジの圧力損失もまた低減する。これは、フィルタカートリッジのピストンを変位させるためにサービス弁ばねによって印加される力に打ち勝つ必要がないからである。オイルフィルタ、又はフィルタカートリッジの作動中の圧力損失が低減することにより、オイルフィルタを備える自動車の走行モード時の燃料消費量もまた低減する。
【0016】
更に、少なくとも1つの支柱は、焼却可能な材料、例えばプラスチック材料により製造可能である。このように、完全焼却、すなわち完全に灰化することによって、フィルタカートリッジを廃棄することができる。こうして、特に費用がわずかで済むことによって、このフィルタカートリッジを完全灰化可能な構成部品とすることができる。
【0017】
そのうえ、フィルタカートリッジの軸方向へのピストンの変位時、場合によっては摩耗によって、フィルタカートリッジの汚れる側、すなわちろ過することとなるオイルの側に摩耗くずが蓄積するようにできる。加えて、サービス弁ばねによって変位可能なスリーブの代わりに、少なくとも1つの支柱を設けることにより、フィルタカートリッジのピストンに対してスリーブのストローク経路を空けておく必要が無くなるため、フィルタカートリッジのフィルタ材のために提供され得るフィルタ面が拡大する。
【0018】
第1の端部プレートと第2の端部プレートとの間に配置されたフィルタ材を含むフィルタカートリッジのピストンは、少なくとも1つの支柱に対して移動可能である。ピストンが変位可能であるにもかかわらず、フィルタカートリッジ自体にフィルタカートリッジのサービス弁機能を含む閉鎖部材が設けられている。閉鎖部材は、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内で支持可能である少なくとも1つの支柱によって、排出チャネルを封止するように、その所定の位置に保持されている。
【0019】
この場合の特別な利点は、特許文献1に記載されている第3のばね、又は補正ばね若しくはサービス弁ばねを、フィルタカートリッジの形態での交換可能な構成部品から無くすことができることにある。
【0020】
好適には、少なくとも1つの支柱の自由端部は、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内で、オイルフィルタハウジングのカバー部材において支持されている。したがって、カバー部材をオイルフィルタハウジングの基体に固定すると、簡単な方法で閉鎖部材が排出チャネルに向かって押されるか、又は閉鎖部材によって排出チャネルが変位されることをもたらすことができる。更に、少なくとも1つの支柱の自由端部をカバー部材において支持することによって、カバー部材を取り外す際は、オイルフィルタハウジングの基体内の収容領域からフィルタカートリッジを難なく取り外すことができるので、整備時にフィルタカートリッジを簡単に取り外すこともできる。
【0021】
自動車のオイルフィルタ用の、本発明に係るフィルタカートリッジは、基体及びカバー部材を含む、オイルフィルタのオイルフィルタハウジング内に配置することができる。フィルタカートリッジのピストンは、ろ過されたオイル用のチャネル及び排出口を含む。ろ過されたオイル用のチャネルは、半径方向で少なくとも領域ごとにフィルタカートリッジのフィルタ材によって取り囲まれている。フィルタ材は、ピストンの第1の端部プレートと第2の端部プレートとの間に配置されている。ピストンは、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内でフィルタカートリッジの軸方向に変位可能であるため、ピストンが閉鎖位置にあるときは、排出口内に形成された少なくとも1つの通過開口部を経由して、オイルフィルタハウジングの側面に設けられたチャネルにろ過されたオイルが流入することを遮断する。更に、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内のピストンが、フィルタカートリッジの軸方向に変位可能であるため、ピストンが閉鎖位置に対して、閉鎖位置にあるときより更にカバー部材から離間されているピストンの開放位置のとき、オイルフィルタハウジングの側面に設けられたチャネルにオイルが流入できる。フィルタカートリッジは、排出チャネルを閉鎖可能である閉鎖部材を備える。排出チャネルは、オイルフィルタハウジングの収容領域からオイルを排出するために形成されており、収容領域は、フィルタカートリッジを収容するために設けられている。閉鎖部材は、フィルタカートリッジの少なくとも1つの支柱に保持されており、少なくとも1つの支柱の自由端部は、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内で支持可能である。ピストンは、少なくとも1つの支柱に対してフィルタカートリッジの軸方向に変位可能である。
【0022】
このようなフィルタカートリッジは、特に簡単な構造を備え、少なくとも1つの支柱を使用して保持され、かつ閉鎖されているオイルフィルタハウジング内で支持された閉鎖部材によってサービス弁の機能を保証している。本実施形態の構造では、金属製のサービス弁ばねは、不要となる。オイルフィルタハウジング内で支持可能な、閉鎖部材に接続されている少なくとも1つの支柱によって、フィルタカートリッジがオイルフィルタハウジング内に取り付けられる場合、閉鎖部材を排出チャネルに向かって確実に封止するように押すことができる。
【0023】
好適には、少なくとも1つの支柱の自由端部は、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内においてオイルフィルタハウジングのカバー部材により支持され得る。少なくとも1つの支柱の自由端部をカバー部材にて支持することにより、オイルフィルタハウジングの基体からカバー部材を取り外した後は、オイルフィルタハウジングの収容領域からフィルタカートリッジを難なく取り外すことができるので、特に、整備時にフィルタカートリッジを簡単に取り外すことができる。
【0024】
ピストンが少なくとも1つの支柱に対して変位する場合、フィルタカートリッジのピストンを誘導するための誘導部材として少なくとも1つの支柱が形成されているときに有利であることが示される。これにより、少なくとも1つの支柱の機能性が向上し、加えて、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内のフィルタカートリッジのピストンについて変位のプロセス安全性が実現可能である。
【0025】
例えば、少なくとも1つの支柱が、少なくとも1つの端部プレート内に形成されている溝部に誘導され得るか、又は少なくとも1つの端部プレートに形成された延長部が、少なくとも1つの支柱に形成される溝部に係合され得る。
【0026】
ただし、少なくとも1つの端部プレート内に少なくとも1つの支柱に貫通する通過開口部が形成される場合、特に、ピストンの確実な誘導が実現可能である。少なくとも1つの端部プレート内に形成されている一種の穴に、少なくとも1つの支柱が誘導される。
【0027】
通過開口部は、少なくとも1つの端部プレートの縁部から半径方向に突出するタブ内に形成することができる。このようにして、少なくとも1つの支柱がフィルタカートリッジのフィルタ材の外側を通ることが確立されている。これにより、ろ過することとなるオイルが外側からフィルタ材を通過してフィルタカートリッジのチャネルに流れ込む機能が損なわれることは、特にほとんどない。加えて、少なくとも1つの支柱に対するピストンの誘導は、このようにプロセス安全性が極めて向上する。
【0028】
少なくとも1つの支柱が少なくとも1つの誘導領域を備え、ピストンの変位時に誘導領域に沿ってそれぞれの端部プレートが誘導可能であり、誘導領域がフィルタカートリッジの軸方向と実質的に平行に調整されている場合、有利であることが示される。少なくとも1つの、真っすぐ通る誘導領域によって、フィルタカートリッジのピストンの円滑で摩擦のない誘導を実現することができる。
【0029】
特に、少なくとも1つの誘導領域内の少なくとも1つの支柱は、フィルタカートリッジの少なくとも1つの端部プレート内に形成される通過開口部を貫通することができる。それぞれの誘導領域における少なくとも1つの支柱が、第1の端部プレート内及び第2の端部プレート内に形成されるそれぞれの通過開口部を貫通する場合、特に、フィルタ領域の正確な誘導を保証することができる。
【0030】
有利な発展形態では、第1の端部プレートの領域内に形成された第1の誘導領域と第2の端部プレートの領域内に形成された第2の誘導領域との間の少なくとも1つの支柱は、追加の長手領域を備える。追加の長手領域では、少なくとも1つの支柱は、弓状に形成される。このようにして、オイルフィルタハウジング及び/又はフィルタカートリッジの製造誤差を補償することができ、更に、オイルフィルタが閉鎖される場合、閉鎖部材が常に排出チャネルを閉鎖することを保証することができる。少なくとも1つの支柱が弓状であることによって、オイルフィルタハウジング及び/又はフィルタカートリッジに誤差があっても簡単な方法で補正することができるため、オイルフィルタが閉鎖される場合、排出チャネルの封止を引き起こす圧力を確実に閉鎖部材に印加することができる。
【0031】
好適には、少なくとも1つの支柱は、追加の長手領域内で半径方向に外側へ湾曲させて形成されている。したがって、一方では、少なくとも1つの支柱がフィルタカートリッジのフィルタ材に向かって押されないことが保証されている。少なくとも1つの支柱が追加の長手領域内で半径方向に外側へ湾曲されている場合、ろ過することとなるオイルは、半径方向に外側から内側へ、妨害されることなくフィルタ材を貫流することができる。少なくとも1つの弓状の支柱は、フィルタ材のつぶれにもまた抗するように作用する。加えて、複数の支柱が存在する場合、このような支柱が追加の長手領域内でオイルフィルタハウジングと共に設置されていれば、フィルタカートリッジの取付位置は、オイルフィルタハウジング内で特に好適に設定可能である。
【0032】
少なくとも1つの支柱を弓状に形成することに対して追加的に又は代替的に、少なくとも1つの支柱は、フィルタカートリッジの軸方向に作用する力の印加によって、圧縮可能な少なくとも1つのばね領域を備える。このようなばね領域によって、オイルフィルタハウジング及び/又はフィルタカートリッジの許容誤差、特に製造誤差の調整もまたもたらされる。なぜなら、少なくとも1つの支柱の高さ方向寸法を低減することができるばね領域を設けることによって、オイルフィルタハウジング及び/又はフィルタカートリッジの許容誤差がある場合でも、閉鎖されているオイルフィルタハウジング内の閉鎖部材が排出チャネルの入口に向かって常に押されるからである。
【0033】
好適には、少なくとも1つの支柱を弓状に形成することによって、及び/又はばね領域を設けることによって実現することができる許容誤差の調整は、特に、この領域の設定間隔値からの、カバー部材と排出チャネルとの間の実際の間隔値の誤差を補正するため、並びに/又は、例えば、製造時及び/若しくはフィルタカートリッジの取付位置のわずかな差異によって生じ得る、フィルタカートリッジの様々な長さの軸方向の誤差を補正するために使用される。
【0034】
少なくとも1つの支柱は、少なくとも1つのばね領域内で、有利にはV字形に相互配置された少なくとも2つの脚部を備えることができる。この場合、脚部の相互離間された端部は、力の印加によって相対移動することができる。少なくとも2つの脚部を含む、このような特定の屈曲領域によって、極めて簡単かつ確実な方法で、少なくとも1つの支柱の高さ方向寸法の圧縮のためのばね領域を設けることができる。
【0035】
好適には、少なくとも1つのばね領域は、少なくとも1つの支柱の一部分に形成されており、その支柱の一部分において、支柱は、閉鎖部材に近い2つの端部プレートのうち、閉鎖部材に近い1つから突出している。なぜなら、ここでは、取付けスペースの観点から、ばね領域をより簡単に設ける必要があるからである。
【0036】
好適には、フィルタカートリッジのチャネルの排出口を取り囲んでいる両方の端部プレートのうち、閉鎖部材により近い端部プレートが、陥入部を備えている。この場合、陥入部の内壁は、排出口によって形成されており、フィルタ材のフィルタ材領域は、フィルタカートリッジの軸方向で陥入部の外壁と部分的に重なる。閉鎖部材により近い端部プレートの領域内での、このような陥入部又は溝部の種類に従って形成された折返しによって、逆止弁の開弁、又はバイパス弁の開弁に必要な、浮動支承されているフィルタカートリッジの変位経路の同時実現の際、オイルフィルタハウジング内のフィルタカートリッジに利用できる取付けスペースに、フィルタ材の特に大きなフィルタ面を設けることができる。フィルタカートリッジの排出口の、管状の収容部との十分な重なりによる、オイルフィルタハウジングの側面でのフィルタカートリッジのこのような確実な中央誘導も保証される。
【0037】
更に、少なくとも1つの支柱が端部領域において、両方の端部プレートのうちの閉鎖部材からより離れた端部プレートに下側で係合する、少なくとも1つの停止部材を備える場合が有利である。このような停止部材は、フィルタカートリッジのピストンの、少なくとも1つの支柱に対する変位移動用止め具である。加えてこのようにして、特定の位置の少なくとも1つの支柱は、閉鎖部材に対してより離れた端部プレートに移動され、配置される。停止部材は、ばね舌片又は同様の係止部材として形成することができる。
【0038】
好適には、フィルタカートリッジは、端部プレートの円周方向に相互離間される複数の支柱を備える。特に、支柱は、円周方向に等間隔に相互離間することができる。したがって、一方では、排出チャネルの確実な閉鎖を引き起こす、閉鎖部材の均一支持を、支柱によって実現可能である。他方では、フィルタカートリッジのピストンの、このような改善された誘導を、ピストンの支柱に対する変位時に実現することができる。
【0039】
特に、支柱は、少なくとも領域ごとに、矩形断面を有することができる。このような、細長い薄板のように形成された支柱は、一方では、特に頑丈であり、他方では、有利には半径方向に取付けスペースをほとんど必要とせずに、フィルタカートリッジに配置することができる。更に、長辺側がフィルタカートリッジのフィルタ材を向いている支柱の矩形断面形状によって、フィルタカートリッジの軸方向に作用する力がその支柱に印加されるときに、支柱が湾曲する方向を規定することができる。したがって、例えば、このような力が印加されたときに、支柱がフィルタ材から離れるように移動することを保証することができる。このようにして、支柱のフィルタ材との接触が防止され、フィルタ材の優れた貫流性が保証される。
【0040】
本発明に係るオイルフィルタについて記載された利点及び好ましい実施形態は、本発明に係るフィルタカートリッジにも適用でき、かつその逆も同様である。
【0041】
本発明のその他の利点、特徴、及び詳細については、下記の好ましい実施形態の説明及び図面を参照して行う説明によって明らかとなる。本明細書において先に述べた特徴及び特徴の組み合わせ、並びに図の記述において以下に述べる、かつ/又は図において単独で示される特徴及び特徴の組み合わせは、本発明の範囲を逸脱することなく、それぞれ示される組み合わせにおいてばかりでなく、他の組み合わせにおいても又は単独でも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】オイルフィルタのオイルフィルタハウジングにフィルタカートリッジが取り付けられている、自動車用のオイルフィルタを示す断面斜視図である。
【
図2】
図1に断面図で示されるフィルタカートリッジの一変形形態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に係るオイルフィルタのオイルフィルタハウジングに取り付けられているフィルタカートリッジを示す斜視図である。
【
図4】
図3に係るフィルタカートリッジの一方の端部領域を示す部分斜視図である。
【
図5】
図3に係るフィルタカートリッジの他方の端部領域を示す部分斜視図である。
【
図6】
図3に係るフィルタカートリッジのさらなる断面斜視図である。
【
図7】
図3に係るフィルタカートリッジの下端領域の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1では、特に商用車であり得る自動車用のオイルフィルタ10が断面斜視図で示されている。オイルフィルタ10のフィルタカートリッジ12は、
図1では同様に部分的に断面図で示されている。オイルフィルタ10は、基体16及びカバー18すなわちカバー部材を含むオイルフィルタハウジング14を含む。フィルタカートリッジ12を交換するには、カバー18を、例えば、ねじを外して、基体16から取り外す。
図1では、オイルフィルタハウジング14が閉じた状態で示されている。すなわち、カバー18は、カバー18に保持されたフィルタカートリッジ12と共に基体16にねじ留めされている。
【0044】
フィルタカートリッジ12は、チャネル20を有するピストン36を備える。チャネル20は、半径方向にフィルタ材22で取り囲まれている。フィルタ材22は、例えば、プリーツフィルタとして形成することができる。チャネル20は、多数の通路26が形成される中央支持管24を含む。これらの通路26を経由して、フィルタ材22によりろ過されたオイルは、チャネル20内に到達することができる。したがって、オイルフィルタハウジング14内にある未ろ過のオイルは、その後、半径方向に外側からフィルタ材22を通って入り、このようにして、ピストン36に形成されているチャネル20に到達する。
【0045】
カバー18の反対側の、フィルタカートリッジ12の端部において、フィルタカートリッジ12のチャネル20は、管状の排出口28を含む。この排出口28は、フィルタカートリッジ12のピストン36の第1の端部プレート30と一体に形成することができる。チャネル20の排出口28には、複数の通過開口部32が形成されている。これらの通過開口部32を経由して、ろ過されたオイルは、チャネル20から流出して、内燃機関に潤滑剤を供給するためにオイルフィルタハウジング14の側面に設けられたチャネル34に流入することができる。これは、フィルタカートリッジ12のピストン36が、フィルタカートリッジ12の軸方向38へカバー18から十分に離れて変位している場合に可能である。軸方向38は、
図1において、フィルタカートリッジ12又はオイルフィルタ10の中心軸線によって示されている。
【0046】
図1では、ピストン36の第1の端部プレート30と第2の端部プレート40との間に配置されたフィルタ材22を含むフィルタカートリッジ12のピストン36が閉鎖位置で示されている。閉鎖位置では、ろ過されたオイルの通過開口部32からの流出が遮断され、それに応じてろ過されたオイルのチャネル34への流入が遮断される。ピストン36が
図1で示される閉鎖位置のとき、自動車の内燃機関は、停止している。それに対応して、通常、内燃機関によって駆動されるオイルポンプ(図示せず)もまた、未ろ過のオイルをオイルフィルタハウジング14には供給しない。したがって、未ろ過のオイルはまた、フィルタカートリッジ12のフィルタ材22を通る貫通流によって浄化されない。したがって、ピストン36の閉鎖位置は、ピストン36のエンジン停止位置と称されることもある。
【0047】
ピストン36が開放位置(ここでは図示せず)にあるとき、ピストン36は、オイルフィルタハウジング14内で更にカバー18から離間される。閉鎖されているオイルフィルタハウジング14の内部の、閉鎖位置(
図1を参照されたい)から開放位置への、フィルタカートリッジ12のピストン36の軸方向38に沿うこのような移動は、オイルフィルタハウジング14内のオイルフィルタ10の作動中に支配的な圧力状態によって引き起こされる。すなわち、自動車の内燃機関の作動中、オイルポンプは、未ろ過のオイルをオイルフィルタハウジング14に供給する。特に、未ろ過のオイルによって大面積の上側すなわち第2の端部プレート40に印加される圧力は、小面積の下側すなわち第1の端部プレート30に印加される未ろ過のオイルの圧力より大きい。ろ過することとなるオイルがフィルタ材22を貫通して流れる場合に起こる圧力損失を考慮しても、排出口28を使用して逆止弁ばね42の力に抗して基体16の閉鎖部44を、基体16内に設けられている管状の収容部46から押し離すには、この圧力差で十分である。
【0048】
自動車の内燃機関の作動中又は作動開始時、すなわちオイルポンプの作動中、オイルがオイルフィルタハウジング14を通って流れることによって、ピストン36の閉鎖位置から開放位置への変位が引き起こされるため、ピストン36の開放位置は、ピストン36のエンジン作動位置とも称されることがある。
【0049】
したがって、オイルフィルタ10の作動中の圧力状態により引き起こされるピストン36の変位移動の結果、ピストン36は、排出口28を使用して逆止弁ばね42の力に抗して、管状の収容部46に設けられた弁座から閉鎖部44を押し離す。これにより、ピストン36がこの開放位置(図示せず)のとき、ろ過されたオイルは、チャネル20から排出口28内に形成された通過開口部32を経由してチャネル34に到達することができる。
【0050】
自動車の内燃機関の作動中にフィルタ材22がひどく詰まると、未ろ過のオイルがフィルタ材22を貫通してチャネル20に流れるときの圧力損失が何倍にも拡大するため、フィルタカートリッジ12のピストン36は、カバー18から更に一層軸方向38へバイパス位置(図示せず)に移動する。その際、バイパス弁ばね48の力に抗して、フィルタカートリッジ12のピストン36によって、管状の収容部46は、同様にオイルフィルタハウジング14内の基体16の側面に設けられている弁座50から離れるように押圧される。その結果、未ろ過のオイルは、チャネル34に直接到達することができる。
【0051】
フィルタカートリッジ12の浮動支承されたピストン36と、車両側でオイルフィルタハウジング14内に配置された閉鎖装置、すなわち弁装置による圧力状態との相互作用についての詳細な図示及び説明に関しては、その代わりに、上記特許文献1に記載の実施形態でも示される。その理由は、弁機能(逆止弁、バイパス弁、サービス弁)は、本実施形態では、上記特許文献1と同様、同じ方法で実現されており、フィルタカートリッジのみが、特許文献1に対して変更点を有しているからである。
【0052】
したがって、本実施形態では、フィルタカートリッジ12の軸方向38に移動可能なフィルタカートリッジ12のピストン36によって、逆止弁の機能に加えてバイパス弁の機能も提供されている。この場合、ピストン36が開放位置にあるとき、逆止弁は開かれており、ピストン36がバイパス位置にあるとき、さらにバイパス弁もまた開かれている。
【0053】
加えて、フィルタカートリッジ12には、サービス弁52が組み込まれている。サービス弁機能に関して、本実施形態では、フィルタカートリッジ12の環状の閉鎖部材54により排出チャネル56が閉鎖される。閉鎖部材54は、
図2及び
図3において
図1よりも良好に認識でき、排出チャネル56は、
図1に断面図で示されている。排出チャネル56は、オイルフィルタハウジング14内に形成されている。排出チャネル56が閉鎖部材54によって閉鎖されていない場合、オイルは、オイルフィルタハウジング14の収容領域58から排出チャネル56を経由して排出され得る。オイルフィルタハウジング14が閉鎖される場合、フィルタカートリッジ12は、収容領域58内に配置される。
【0054】
図2及び
図3からは、排出チャネル56を閉鎖する閉鎖部材54が、本実施形態においては環状である外側の封止部60と、本実施形態においては同様に環状である内側の封止部62とを備えることができることが特に良く読み取れる。封止部60、62は、例えば、閉鎖部材54が
図1で示されるフィルタカートリッジ12のピストン36の閉鎖位置において排出チャネル56を閉鎖するとき、排出チャネル56の対応する領域に接触させることができる。ただし、排出チャネル56は、ピストン36が開放位置(図示せず)にあるとき、及びピストン36がバイパス位置(図示せず)にあるときもまた、閉鎖部材54によって閉鎖される。カバー18がオイルフィルタハウジング14の基体16から取り外され、フィルタカートリッジ12がオイルフィルタハウジング14から取り出されている場合にのみ、サービス弁52は、開かれている。なぜならば、その場合、閉鎖部材54が排出チャネル56から離間されているからである。サービス弁52が開かれると、その後、オイルは、オイルフィルタハウジング14の収容領域58から排出チャネル56内に到達することができる。
【0055】
しかし、本実施形態では、フィルタカートリッジ12のピストン36の、
図1に示される閉鎖位置から上述の開放位置への変位時、すなわち閉鎖位置から逆止弁ばね42の力に打ち勝つ必要があるエンジン作動位置への変異時、及び追加的にバイパス弁ばね48の力に打ち勝つ必要があるバイパス位置への変位時にもまた、特許文献1に記載の、浮動支承されているフィルタカートリッジの態様の場合のように、サービス弁ばねを追加的に圧縮する必要はない。
【0056】
本実施形態に係るオイルフィルタ10の場合、すなわち、オイルフィルタハウジング14が閉鎖されているとき、フィルタカートリッジ12の複数の支柱64(
図2及び
図3を参照されたい)によって、閉鎖部材54は、オイルフィルタハウジング14のカバー18に支持される。そのために、
図1において複数の支柱64のうち2つのみが良く識別できる支柱64の自由端部は、ピストン36の第1の端部プレート30から、また第2の端部プレート40から軸方向38に突出している。
【0057】
オイルフィルタハウジング14が閉じられ、それによって、カバー18が基体16に固定されると、排出チャネル56によって提供された出口が閉鎖されるように、支柱64は、少なくとも1つの封止部60、62が設けられた閉鎖部材54を排出チャネル56に向かって押圧する。本実施形態では、フィルタカートリッジ12の支柱64は、フィルタピストン自体より長いため、カバー18に対するフィルタカートリッジ12の支持を可能にする。しかし、オイルフィルタハウジング14の基体16、すなわちオイルフィルタハウジング14の収容部58においては、支柱64の別の形状の支持も考えられ、この場合、支柱64は、フィルタピストン36の長さより短くてもよく、しかも第2の端部プレート40には誘導されない。
【0058】
フィルタカートリッジ12の詳細については、その他の図を参照して説明するものとする。例えば、
図2及び
図3から、端部領域66内のそれぞれの支柱64は、閉鎖部材54から離れており、したがって、支柱64を介して閉鎖部材54をカバー18において支持することができ、例えば、弾力のある係止舌片68の形状でそれぞれの停止部材を備えることが良く読み取れる。このような係止舌片68は、閉鎖部材54から離れた端部プレート40、すなわち第2の端部プレート40に、半径方向に第2の端部プレート40の縁部から突出しているタブ70の領域内で、下側でかみ合っている。加えて、このようなタブ70内には、通過開口部、本実施形態では、矩形のスリットの形状で形成されており、それぞれの支柱64は、それぞれのタブ70内に設けられた通過開口部を貫通して案内される。
【0059】
同じように、その他のタブ72内に、半径方向に第1の端部プレート30の縁部から突出する、本実施形態では、矩形のスリットのように形成されるさらなる通過開口部が設けられている。これらの通過開口部をもまた、それぞれの支柱64は、貫通して案内される。したがって、支柱64は、フィルタカートリッジ12のピストン36の変位移動を軸方向38に沿って円滑に行う誘導部材として形成される。
図2に示されるフィルタカートリッジ12の変形形態の場合、支柱64は、ピストン36の長さを超えて実質的に真っすぐに形成されている。支柱64は、それぞれの支柱64が第1の下側端部プレート30から突出する部分に、排出チャネルと支柱64用止め具との間の距離と、カバー18内の支柱64との許容誤差を調整可能にする屈曲箇所74を備える。
【0060】
フィルタカートリッジ12が
図3に示される変形形態のとき、許容誤差調整のために更に別の手段が設けられる。同様に、これらの手段によって、フィルタカートリッジ12の支柱64の、軸方向38の長さに関するフィルタカートリッジ12の製造誤差、及びオイルフィルタハウジング14の製造誤差もまた考慮することができる。
【0061】
それぞれの支柱64は、
図3に示されるように、支柱64が実質的に軸方向38と平行に調整されており、したがって、真っすぐに形成されているそれぞれの誘導領域76、78を備える。誘導領域76、78において、フィルタカートリッジ12のピストン36の支柱64に対する変位移動が行われる。したがって、真っすぐに形成された誘導領域76、78は、少なくとも逆止弁及びバイパス弁の機能の実現に必要なピストンのストローク経路又は変位経路と同じ長さになる。
【0062】
第1の端部プレート30の領域に形成された第1の誘導領域76と、第2の端部プレート40の領域に形成された第2の誘導領域78との間に、それぞれの支柱64は弓状に形成されており、またそれぞれの支柱64は本実施形態では半径方向に外側へ湾曲されるさらなる長手領域80を備える。このような弓状によって、特に簡単な方法で、排出孔すなわち排出チャネル56とカバー18すなわちフィルタカバーとの間の許容誤差を調整することができる。
【0063】
追加的に又は代替的に、
図3に示されるように、それぞれの支柱64は、所定の屈曲領域の形状でばね領域82を備えることができる。これらのばね領域82内で、支柱64に印加される力が軸方向38へ作用する場合、それぞれの支柱64の長さを低減することができる。したがって、一方では長手領域80内の弓状のそれぞれの支柱64によって、オイルフィルタハウジング14と組み合わせて許容誤差の調整のための調整用曲がり部が設けられている。ただし、このような許容誤差の調整のために、特定の屈曲領域、すなわちはばね領域82を追加的に又は代替的に設けることもできる。
【0064】
本実施形態では、それぞれの支柱64は、ばね領域82内で閉鎖部材54に接続されたその端部に、V字形を形成する2つの脚部84、86を備える。脚部84、86の相互離間された両方の端部は、力の印加によって相対移動することができる。
【0065】
図4に示されるように、ピストン36が支柱64に対して変位するとき、第2の端部プレート40の領域内における支柱64の自由端部にある第2の誘導領域78は、更に第2の端部プレート40のタブ70内に形成された通過開口部を貫通する、すなわち
図1及び
図3で示される、ピストン36が閉鎖位置、すなわちエンジン停止位置にある場合よりも更に、通過開口部から突出する。
【0066】
許容誤差調整に関する以上に説明した手段はすべて、結局、軸方向の力の印加時に支柱64の高さ方向寸法が圧縮可能であるようにその支柱64を形成することに基づいている。
【0067】
そして、
図5に示されるように、ピストン36が、
図1に示されるピストン36の閉鎖位置内より更にオイルフィルタハウジング14のカバー18から離間されている同じ状況において、第1の誘導領域76が、閉鎖部材54の方へ向かって、フィルタカートリッジ12の軸方向38に沿って第1の下側端部プレート30を更に若干だけ超えて突出している。したがって、タブ70、72内に形成された通過開口部を貫通する誘導領域76、78に沿ったフィルタカートリッジ12の軸方向38へのピストン36の誘導は、特に、
図3を
図4及び
図5と併せて見ることで良く確認することができる。更に、
図5からは、屈曲領域、すなわちばね領域82における両方の脚部84、86のV字形が良く確認できる。
【0068】
図6のフィルタカートリッジ12の断面図からは、特に、封止部60、62を備える、閉鎖部材54の支持体が、支柱64と一体に形成することができることが確認できる。この場合、本実施形態では環状の支持体に、封止部60、62が配置されている。
【0069】
特に、
図7の拡大詳細図からは、フィルタカートリッジ12の変位経路が不変である場合に、第1のすなわち下側の端板、又は端部プレート30において、好適には、フィルタ媒体、すなわちフィルタ材22の延長、したがって、利用可能なフィルタ面の拡大をもたらす溝状の折返し部又は陥入部88が形成されていることが分かる。陥入部88は、チャネル20の排出口28の周りを通っている。この場合、陥入部88の内壁は、排出口28を通じて形成されている。フィルタ材22のフィルタ材領域90は、軸方向38において陥入部88の外壁92と部分的に重なっている。
【0070】
したがって、フィルタ媒体すなわちフィルタ材22は、フィルタ材22が単に陥入部88の底部96まで、すなわち第2の端部プレート40のうち近い方の排出口28の端部まで到達するであろうフィルタカートリッジ12に対して、
図7において矢印により示される長さ94の分だけ、軸方向38に延長される。長さ94は、実質的に溝状の陥入部88の深さと一致する。
【0071】
閉鎖部材により近い端部プレート30の領域内での、このような陥入部88、又は溝部のように形成された折返し部によって、逆止弁の開弁、又はバイパス弁の開弁に必要な、浮動支承されているフィルタカートリッジ12の変位経路を維持して、オイルフィルタハウジング14内のフィルタカートリッジに利用できる取付けスペースに、フィルタ材22の特に大きなフィルタ面を設けることができる。同様に、陥入部88によって、フィルタカートリッジ12の排出口28と管状の収容部46との十分な重なりによる、オイルフィルタハウジング14の側面でのフィルタカートリッジのこのような確実な中央誘導の維持が可能になる。