(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】中間領域スプレーバーを固定するための保持デバイスを有するローラースタンド
(51)【国際特許分類】
B22D 11/124 20060101AFI20230214BHJP
B22D 11/128 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
B22D11/124 J
B22D11/128 320Z
B22D11/124 F
(21)【出願番号】P 2021540910
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(86)【国際出願番号】 EP2019074955
(87)【国際公開番号】W WO2020064451
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-10
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】515153152
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・オーストリア・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・ビルスキ
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203470863(CN,U)
【文献】実開昭60-001556(JP,U)
【文献】特公昭49-037328(JP,B1)
【文献】特開昭56-056768(JP,A)
【文献】中国実用新案第205128876(CN,U)
【文献】実開昭55-066054(JP,U)
【文献】中国実用新案第202910270(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続ビレット鋳造機(1)のストランドガイド(3)用のローラースタンド(13)であって、少なくとも一つの下側支持ローラー(14)を取り付けるためのキャリアフレームを有し、前記ローラースタンド(13)は、中間領域スプレーバー(23,24,25,26,27,28)を固定するための保持デバイス(18a,18b,18c,18d,18e,18f,18g,18h)を具備
し、前記ローラースタンド(13)は、前記中間領域スプレーバー(23,24,25,26,27,28)にスプレー冷却液を導入するよう構成された少なくとも一つの導管をさらに具備し、前記中間領域スプレーバー(23,24,25,26,27,28)にスプレー冷却液を導入するための前記導管が前記キャリアフレームに統合されていることを特徴とするローラースタンド(13)。
【請求項2】
連続ビレット鋳造機(1)用の二次冷却チャンバー(5)のストランドガイド(3)であって、請求項
1に記載のローラースタンド(13)を少なくとも一つ具備することを特徴とするストランドガイド(3)。
【請求項3】
連続ビレット鋳造機(1)であって、請求項
1に記載のローラースタンド(15)に固定された中間領域スプレーバー(23,24,25,26,27,28)を有する、請求項
2に記載された二次冷却チャンバー(5)のストランドガイド(3)を具備することを特徴とする連続ビレット鋳造機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの下側支持ローラーを取り付けるためのキャリアフレームを有する、連続ビレット鋳造機のストランドガイド用のローラースタンド、ストランドガイド、およびこの種のローラースタンドを有する連続ビレット鋳造機に関する。
【背景技術】
【0002】
連続ビレット鋳造機では、金属ストランド、たとえばスチールストランドが、ストランドガイド内で、金型から二次冷却チャンバーおよび引き抜き矯正ユニット(WSU)を経由してランアウト領域またはローラーテーブルへと弧となって案内される。キャリアフレームのローラースタンドに取り付けられた支持およびストランド案内ローラーは、実際にはストランドガイドチャネルを形成するプロセスにおいて、それを支持および案内する。本明細書の文脈において、支持およびストランド案内ローラーは、より明確にするために、以下では単に支持ローラーという用語で呼称する。
【0003】
金属ストランドの冷却に不規則性があると、ビレットが目的の形状にならない可能性がある。所望の長方形の断面の代わりに、例えば菱形の断面が形成されることがある。
【0004】
不規則な冷却は、例えば、スチールストランドがストランドガイドの中心線またはストランドガイドチャネルの中心線に対して中央に、対称的に配置されていない場合に発生する。この場合、冷却液を吹き付ける冷却ノズルとスチールストランドとの間の距離は、スチールストランドの異なる側で異なる。冷却強度における関連する違いは、スチールストランドの歪みによる形状欠陥につながる可能性がある。
【0005】
しかしながら、たとえ金属ストランドがストランドガイドの中心線に対して、すなわちストランドガイドチャネルの中心線に対して中央に対称的に配置されても、冷却ノズルを備えたスプレーバーがストランドガイドの中心線に対して、すなわちストランドガイドチャネルの中心線に対して対称的に配置されない場合には不規則な冷却が発生し得る。だが、正確な位置合わせは多大な労力を伴い、エラーが発生しやすくなる。
【0006】
ストランドガイドのローラースタンドも、相互に正確に位置合わせする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
意図は、連続ビレット鋳造機において、スプレーバーおよび/または冷却ノズルの非対称配置のリスク、労力、およびそれらの対称配置のエラーに対する感受性を低減することが可能である装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、連続ビレット鋳造機のストランドガイド用のローラースタンドであって、少なくとも一つの下側支持ローラーを取り付けるためのキャリアフレームを有し、ローラースタンドがスプレーバーを固定するための保持デバイスを具備することを特徴とするローラースタンドによって達成される。
【0009】
連続ビレット鋳造機は、スチールストランドの連続鋳造に優先的に適している。
【0010】
金属ストランドは、ストランドガイドによって、金型から二次冷却チャンバーを通ってWSUに、そしてランアウト領域またはローラーテーブルへと弧となって案内される。キャリアフレームのローラースタンドに取り付けられた支持およびストランド案内ローラーは、実際にはストランドガイドチャネルを形成するプロセスにおいて、金属ストランドを支持および案内する。
【0011】
金属ストランドに関して、「上」は、本明細書の文脈において、金属ストランドの内側の弧を意味し、一方、「下」は、金属ストランドの外側の弧を意味する。金属ストランドの内側の弧は、金属ストランドの外側の弧よりも小さい半径を有する。下側支持ローラーは、金属ストランドの外側の弧を案内および支持するよう機能する。金属ストランドは、金型側に始端を、ローラーテーブル側に終端を有する。
【0012】
本発明の有利な効果
連続ビレット鋳造機では、金属ストランドは、一般に、ローラースタンドにおいて二次冷却チャンバーの領域の支持ローラーによって、サポートが存在しない隣接するローラースタンド間の領域がローラースタンドを通過する金属ストランドのそれぞれの長さよりも何倍も長いように支持される。隣接するローラースタンド間のこれらの領域、そしてまた、金型からWSUの方向に見た場合の二次冷却チャンバーの始端と第1のローラースタンドとの間の領域、そしてまた金型からWSUの方向に見た場合の二次冷却チャンバーの末端と最後のローラースタンドとの間の領域は、本明細書の文脈では中間領域と呼称される。
【0013】
冷却されるべき金属ストランドの長さの大部分が中間領域にあるため、中間領域での均一な冷却を保証することが特に重要である。
【0014】
スプレーバーは冷却ノズルを備えており、そこから、スプレーバーを介して供給されるスプレー冷却液、例えば冷却水が金属ストランドにスプレーされる。一般に、冷却される各側に少なくとも一つのスプレーバーが存在する。例えば、連続ビレット鋳造機の場合、一般に、上から、下から、そして連続ビレットの二つの側からの冷却のために、少なくとも四つのスプレーバーが存在するであろう。
【0015】
中間領域スプレーバーは、中間領域、つまり金属ストランドがローラースタンドを通過しない二次冷却チャンバーのストランドガイドの領域で、金属ストランドを冷却できるようにするスプレーバーである。これらは、単に、ローラースタンドの支持ローラー間でのおよび/またはそれに隣接したローラースタンドにおける冷却を可能にするスプレーバーではない。
【0016】
本発明によれば、ストランドガイドのローラースタンド上には、中間領域スプレーバーを固定するための保持デバイスが存在する。ローラースタンドは互いに正確に位置合わせされ、ストランドガイドチャネルを画定する。中間領域スプレーバーが、(それ自体、既に互いに正確に整列させられている)ローラースタンドに固定される場合、冷却ノズルはストランドガイドチャネルの中心線に対して対称的に整列させられる。したがって、非対称配置のリスク、労力、そして中間領域スプレーバーおよび/または冷却ノズルの対称的な配置に関するエラーに対する感受性は、これによって、ローラースタンドおよび冷却ノズル付き中間領域スプレーバーが互いに独立して並べられる従来構造と比較して、中間領域において低減される。
【0017】
中間領域スプレーバーがローラースタンドに固定される場合、ローラースタンドの領域での冷却もまたローラースタンドのすぐ近くで簡単に達成でき、中間領域スプレーバーがローラースタンドの近くに配置されない従来設計よりも、より均一な冷却が可能になる。
【0018】
ローラースタンドはまた、好ましくは、中間領域スプレーバーにスプレー冷却液を導入するのに適した少なくとも一つの導管を具備する。導入は、直接的であっても、あるいは(例えば導管と中間領域スプレーバーとの間のホースを介して)間接的であってもよい。これにより、連続ビレット鋳造機の、よりコンパクトでシンプルな構造が可能になる。
【0019】
中間領域スプレーバーにスプレー冷却液を導入するための導管は、好ましくは、キャリアフレームに統合される。これにより、連続ビレット鋳造機の、よりコンパクトでシンプルな構造が可能になる。この場合、例えば、キャリアフレームを支持ローラーのキャリアとして使用すると同時に、中間領域スプレーバー用のスプレー冷却液分配器として使用することが可能である。例えば、キャリアフレームは、キャビティ内のスプレー冷却液を供給ポイントから中間領域スプレーバー用の接続ポイントへと運ぶ中空コンポーネントから構成することができる。
【0020】
別の実施形態によれば、スプレー冷却液を中間領域スプレーバーに導入するための導管を含む導管ラックはキャリアフレームに固定される。導管ラックは、好ましくは、同様に、中間領域スプレーバーを固定するための保持デバイスを具備する。
【0021】
本発明はさらに、連続ビレット鋳造機用の二次冷却チャンバーのストランドガイドに関し、本発明に係る少なくとも一つのローラースタンドを具備することを特徴とする。
【0022】
本発明はさらに、連続ビレット鋳造機に関し、本発明に係るローラースタンドに固定された中間領域スプレーバーを有する二次冷却チャンバーの、本発明に係るストランドガイドを具備することを特徴とする。
【0023】
既存のローラースタンドは、本発明に係るローラースタンドに簡単に置き換えることができるため、本発明による節約の可能性は、新築のプラントだけでなく、近代化の場合にも容易に達成することができる。
【0024】
本発明について、実施形態の例示的概略図面を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】湾曲したガイダンスおよび二次冷却チャンバーを備えた従来の連続ビレット鋳造機の概略図である。
【
図2】本発明に係るローラースタンドを示す図である。
【
図3】本発明に係るローラースタンドを有する二次冷却チャンバーの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、連続ビレット鋳造機1において、金属ストランド2、例えばスチールストランドが、金型4から二次冷却チャンバー5およびWSU6を経由してローラーテーブル7へとストランドガイド3内を弧となって、どのように案内されるかを斜視図で概略的に示している。キャリアフレーム9のローラースタンド8に取り付けられた支持ローラー10は、実際にはストランドガイドチャネルを形成するプロセスにおいて、それを支持および案内する。冷却バー11aおよび11bが、金属ストランドの上下のラック12上に示されている。概略的に示されているのは、中間領域、すなわち、金属ストランドがどのローラースタンドも通過しない二次冷却チャンバーのストランドガイドの領域において、金属ストランドの冷却を可能にする中間領域スプレーバーである。金属ストランドを冷却するための冷却ノズルからのスプレー冷却液の噴霧が概略的に示されている。金型からローラーテーブルへと眺めたときに金属ストランドに沿って右側および左側に金属ストランドに隣接して配置された冷却バーおよび冷却ノズルは、より明確にするために図示されていない。
【0027】
図2は、下側支持ローラー14および上側支持ローラー15を取り付けるためのキャリアフレームを有する、連続ビレット鋳造機のストランドガイド用の本発明に係るローラースタンド13を示している。下側支持ローラー14はキャリアフレーム部16aに取り付けられており、そして上側支持ローラー15を担持するロッカー17a,17bはキャリアフレーム部16bに取り付けられている。中間領域スプレーバーを固定するための複数の保持デバイス18a,18b,18c,18d,18e,18f,18g,18hが、キャリアフレーム部16aおよびキャリアフレーム部16bの両方に設けられている。ローラースタンドはまた、中間領域スプレーバーにスプレー冷却液を導入するのに適した導管を具備する。この導管はキャリアフレーム部16bに統合されている。供給ポイント19およびホースを介して中間領域スプレーバーを間接的に接続するための二つの接続ポイント20a,20bを見ることができる。スプレー冷却液は、キャリアフレーム部16bの空洞を通って接続ポイントへと流れる。キャリアフレーム部16aには、冷却液接続部21を介して、キャリアフレーム部16aを冷却するための冷却液を供給することができる。
【0028】
図3は、
図2によるローラースタンド22を有する二次冷却チャンバーの詳細を示している。中間領域スプレーバー23,24,25,26,27,28は、本発明に係るローラースタンド22に、例えば、キャリアフレーム部30aおよび30b上の
図3に見られる保持デバイス29a,29b,29c,29dに固定されている。存在するその他の保持デバイスは
図3では認識できない。この図は、スプレー冷却液が接続ポイント32a,32bからホース31a,31bを介して中間領域スプレーバー26および27へと、どのように運ばれるかを示している。
【0029】
コーンは、ストランドガイドの中心に対して、すなわちストランドガイドチャネルの中心線に対して対称に配置されたスプレーノズル33からスプレー冷却液がどのように噴霧されるかを示すために使用される。中間領域スプレーバーはキャリアフレームに固定されており、そして二つのキャリアフレーム部30aおよび30b間の空間へと延在しているので、図示の有利な実施形態によれば、ローラースタンドの領域において、キャリアフレーム部品30aおよび30b間で冷却することも可能である。
【0030】
本発明について、好ましい例示的な実施形態によって、より具体的に例示および説明してきたが、本発明は開示された実施例によって制限されず、その他の変形は、本発明の保護の範囲を超えることなく当業者によってそこから導き出すことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 連続ビレット鋳造機
2 金属ストランド
3 ストランドガイド
4 金型
5 二次冷却チャンバー
6 WSU
7 ローラーテーブル
8 ローラースタンド
9 キャリアフレーム
10 支持ローラー
11a,11b 冷却バー
12 スタンド
13 ローラースタンド
14 下側支持ローラー
15 上側支持ローラー
16a,16b キャリアフレーム部
17a,17b ロッカー
18a,18b,18c,18d,18e,18f,18g,18h 保持デバイス
19 供給ポイント
20a,20b 接続ポイント
21 冷却液接続部
22 ローラースタンド
23 中間領域スプレーバー
24 中間領域スプレーバー
25 中間領域スプレーバー
26 中間領域スプレーバー
27 中間領域スプレーバー
28 中間領域スプレーバー
29a,29b,29c,29d 保持デバイス
30a,30b キャリアフレーム部
31a,31b ホース
32a,32b 接続ポイント
33 スプレーノズル