(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】冠血流量及び血流速度の取得方法並びに装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
A61B6/03 360Z
(21)【出願番号】P 2021560922
(86)(22)【出願日】2019-04-15
(86)【国際出願番号】 CN2019082715
(87)【国際公開番号】W WO2020210948
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-10-13
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518198842
【氏名又は名称】上海博動医療科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI PULSE MEDICAL TECHNOLOGY, INC.
【住所又は居所原語表記】Floor 14th,Building 82,No.1198 North Qinzhou Road, Xuhui District, Shanghai 200233, China
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(72)【発明者】
【氏名】塗 聖賢
(72)【発明者】
【氏名】李 澤杭
(72)【発明者】
【氏名】韓 静峰
(72)【発明者】
【氏名】李 冠宇
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-509501(JP,A)
【文献】国際公開第2020/107667(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/107668(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0095292(US,A1)
【文献】N.Guggenheim et al,"3D determinasion of the intravascular volume and flow of coronary arteries",International Journal of Bio-Medical Computing,1994年,vol.35,pp.13-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冠血流量の取得方法において、
冠動脈の画像情報を取得し、
最初の冠動脈の幾何学的特徴データを得ることと、
最初の冠動脈の幾何学的特徴データによって冠動脈の無病変状態を再構成して、冠動脈の参考管腔の幾何学的特徴データを得ることと、
前記冠動脈
の参考管腔の幾何学的特徴データに基づいて冠動脈参考管腔の総体積Vを得ることと、
式1により冠動脈開口部の血流量Qを計算することと、を含み、
【数1】
Qの単位がmm
3/s、Vの単位がmm
3である場合、Kの取り得る値の範囲は5~9.5であり、前記冠動脈の画像情報は狭窄がある冠動脈の画像情報であることを特徴とする冠血流量の取得方法。
【請求項2】
請求項1に記載の冠血流量の取得方法において、
Kの取り得る値の範囲が6.5~8であることを特徴とする冠血流量の取得方法。
【請求項3】
請求項1に記載の冠血流量の取得方法において、
Kの取る値が7であることを特徴とする冠血流量の取得方法。
【請求項4】
請求項1に記載の冠血流量の取得方法において、
前記冠動脈参考管腔の総体積Vは、
前記冠動脈の幾何学的特徴データが冠動脈血管の長さ及び冠動脈血管の参考管腔面積を含むステップと、
冠動脈血管を血管中心線に沿って複数の血管中心線に垂直するスライスに切り分け、前記スライスの底面積を相応箇所の参考管腔面積と定義して、前記冠動脈血管長さも用いて、複数の前記スライスの体積の和を求めて前記冠動脈参考管腔の総体積Vを得るステップと、
によって取得されることを特徴とする冠血流量の取得方法。
【請求項5】
請求項1に記載の冠血流量の取得方法において、
前記冠動脈参考管腔の総体積Vは、
前記冠動脈の幾何学的特徴データに基づき、冠動脈の分岐コアを識別するステップと、
前記冠動脈が複数の分岐コアと、分岐コアによって分割された複数の血管セグメントとを含み、前記複数の分岐コアと前記複数の血管セグメントの体積を加算して冠動脈参考管腔の総体積Vを得るステップと、
によって取得されることを特徴とする冠血流量の取得方法。
【請求項6】
請求項5に記載の冠血流量の取得方法において、
前記分岐コアを円錐台に簡素化してその体積を計算し、円錐台の一方の底面の面積が前記分岐コア近位端の参考管腔面積であり、円錐台の他方の底面の面積が前記分岐コアの両遠位端の参考管腔面積の和であり、円錐台の高さが分岐コア近位端の中心からカリーナ部までの距離であることを特徴とする冠血流量の取得方法。
【請求項7】
請求項5に記載の冠血流量の取得方法において、
前記複数の血管セグメントを円錐台に簡素化してその体積を計算し、円錐台の上下底面の面積がそれぞれ前記血管セグメント近位端の参考管腔面積と遠位端の参考管腔面積であり、円錐台の高さが前記血管セグメントの中心線の長さであることを特徴とする冠血流量の取得方法。
【請求項8】
請求項5に記載の冠血流量の取得方法において、
前記複数の血管セグメントが最遠位端血管セグメントと、最遠位端血管セグメント以外の他の血管セグメントと、を含み、
前記最遠位端血管セグメント以外の他の血管セグメントを円柱体に簡素化してその体積を計算し、円柱体毎の底面積は該血管セグメントのいずれか一箇所の参考管腔面積であり、円柱体の高さは該血管セグメントの中心線の長さであることを特徴とする冠血流量の取得方法。
【請求項9】
請求項8に記載の冠血流量の取得方法において、
前記幾何学的特徴データは、いずれか1つの分岐コアの近位端主血管と遠位端主血管との間の分岐角度α
1、遠位端主血管の全長L
1、近位端主血管と分枝血管との間の分岐角度α
2、分枝血管の全長L
2、
及び前記いずれか1つの分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積S
0、該分岐コアの遠位端主血管の近位端の参考管腔面積S
1、該分岐コアの分枝血管の近位端の参考管腔面積S
2のうちの任意2つを含み、
更に、下記の式2によって余剰の1つの参考管腔面積を得、
【数2】
ここで、eは自然定数、-∞≦r<-0.6であることを特徴とする冠血流量の取得方法。
【請求項10】
請求項9に記載の冠血流量の取得方法において、
-2≦r<-0.75であることを特徴とする冠血流量の取得方法。
【請求項11】
請求項9に記載の冠血流量の取得方法において、
r=-1であることを特徴とする冠血流量の取得方法。
【請求項12】
請求項9に記載の冠血流量の取得方法において、
冠動脈血管開口から最も近い第一分岐コアの近位端主血管には病変していない管腔が存在するか否かを判断し、
もし存在すれば、前記第一分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積を前記第一分岐コアの近位端主血管のいずれか1つの病変していないところの参考管腔面積と定義して、
前記第一分岐コアの所在する主血管上のあらゆる分枝血管のいずれも病変が発生していないと黙認し、前記画像情報に基づいて前記第一分岐コアの所在する主血管上の全ての分岐の分枝血管近位端の参考管腔面積を直接取得し、
さらに、前記第一分岐コアの所在する主血管上のいずれか1つの分岐コアから冠動脈血管開口までの距離に基づき、近くから遠くへ、いずれか1つの分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積と分枝血管近位端の参考管腔面積によっていずれか1つの分岐コアに繋がる遠位端主血管近位端の参考管腔面積を逐一に計算し、
もし冠動脈血管開口から最も近い第一分岐コアの近位端主血管には病変していない管腔が存在しないと、
最遠位端血管の近位端が病変しているか否かを判断し、
もし病変が存在しないと、画像情報に基づいて最遠位端血管近位端の参考管腔面積を直接取得し、
分岐コアから冠動脈血管開口までの距離に基づき、遠くから近くへ、いずれか1つの分岐コアの遠位端主血管近位端と分枝血管近位端の参考管腔によっていずれか1つの分岐コアに繋がる近位端主血管の参考管腔面積を逐一に計算することを特徴とする冠血流量の取得方法。
【請求項13】
請求項4~12のいずれか1項に記載の冠血流量の取得方法において、
冠動脈血管における関心領域の参考管腔面積は以下の方法で得られ、
前記冠動脈の幾何学的特徴データが前記冠動脈血管における関心領域の中膜内周面積S’を含み、
相応の領域の参考管腔面積S=A*S’、ここで、0.7≦A<1であることを特徴とする冠血流量の取得方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の冠血流量の取得方法において、
非侵襲的冠動脈CT造影により冠動脈の画像情報を取得することを特徴とする冠血流量の取得方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項で取得された冠動脈開口部の血流量を該冠動脈開口部の参考管腔面積で割ることで、冠動脈開口部の血流速度を取得することを特徴とする冠動脈血流速度の取得方法。
【請求項16】
請求項15に記載の冠動脈血流速度の取得方法において、
冠動脈開口部の血流速度を取得した後、下記の式3又は式4によって前記冠動脈における冠動脈開口を除いたいずれか1つの血管セグメントの血流速度を段階的に計算し、
【数3】
前記v
0は分岐コアの近位端主血管の血流速度、v
1は分岐コアの遠位端主血管の血流速度であり、
【数4】
v
2は分岐コアの分枝血管の血流速度であることを特徴とする冠動脈血流速度の取得方法。
【請求項17】
冠血流量の取得装置において、
冠動脈の画像情報を取得し、
最初の冠動脈の幾何学的特徴データを得
、かつ、最初の冠動脈の幾何学的特徴データによって冠動脈の無病変状態を再構成して冠動脈の参考管腔の幾何学的特徴データを得るための冠動脈幾何学的特徴分析モジュールと、
前記冠動脈
の参考管腔の幾何学的特徴データに基づいて冠動脈参考管腔の総体積Vを取得するための体積計算モジュールと、
式1によって冠動脈開口部の血流量Qを計算するための血流量計算モジュールと、を備え、
【数5】
Qの単位がmm
3/s、Vの単位がmm
3である場合、Kの取り得る値の範囲は5~9.5であることを特徴とする冠血流量の取得装置。
【請求項18】
請求項17に記載の冠血流量の取得装置において、
Kの取り得る値の範囲が6.5~8であることを特徴とする冠血流量の取得装置。
【請求項19】
請求項17に記載の冠血流量の取得装置において、
Kの取る値が7であることを特徴とする冠血流量の取得装置。
【請求項20】
請求項17に記載の冠血流量の取得装置において、
前記冠動脈の幾何学的特徴分析モジュールは、冠動脈血管の長さと冠動脈血管の参考管腔面積を取得するためのものであり、
前記体積計算モジュールは、冠動脈血管を血管中心線に沿って複数の血管中心線に垂直するスライスに切り分け、前記スライスの底面積を相応の箇所の参考管腔面積と定義し、前記冠動脈血管の長さも用いて、複数の前記スライスの体積の和を求めて前記冠動脈参考管腔の総体積Vを得るためのものであることを特徴とする冠血流量の取得装置。
【請求項21】
請求項17に記載の冠血流量の取得装置において、
前記体積計算モジュールは、
前記冠動脈の幾何学的特徴データに基づいて、冠動脈の分岐コアを識別し、
前記冠動脈が複数の分岐コアと、分岐コアによって分割された複数の血管セグメントとを含み、前記複数の分岐コアと前記複数の血管セグメントの体積を加算して冠動脈参考管腔の総体積Vを得るためのものであることを特徴とする冠血流量の取得装置。
【請求項22】
請求項21に記載の冠血流量の取得装置において、
前記体積計算モジュールは、前記分岐コアを円錐台に簡素化してその体積を計算するためのものであり、円錐台の一方の底面の面積が前記分岐コア近位端の参考管腔面積であり、円錐台の他方の底面の面積が前記分岐コアの両遠位端の参考管腔面積の和であり、円錐台の高さが分岐コア近位端中心からカリーナ部までの距離であることを特徴とする冠血流量の取得装置。
【請求項23】
請求項21に記載の冠血流量の取得装置において、
前記体積計算モジュールは、前記複数の血管セグメントを円錐台に簡素化してその体積を計算するためのものであり、円錐台の上下底面の面積がそれぞれ前記血管セグメント近位端の参考管腔面積と遠位端の参考管腔面積であり、円錐台の高さが前記血管セグメント中心線の長さであることを特徴とする冠血流量の取得装置。
【請求項24】
請求項21に記載の冠血流量の取得装置において、
前記複数の血管セグメントは最遠位端血管セグメントと、最遠位端血管セグメント以外の他の血管セグメントと、を含み、
前記体積計算モジュールは、前記最遠位端血管セグメント以外の他の血管セグメントを円柱体に簡素化してその体積を計算するためのものであり、円柱体毎の底面積が該血管セグメントのいずれか一箇所の参考管腔面積であり、円柱体の高さが該血管セグメント中心線の長さであることを特徴とする冠血流量の取得装置。
【請求項25】
請求項24に記載の冠血流量の取得装置において、
前記冠動脈の幾何学的特徴分析モジュールは、
いずれか1つの分岐コアの近位端主血管と遠位端主血管との間の分岐角度α
1、遠位端主血管の全長L
1、近位端主血管と分枝血管との間の分岐角度α
2、分枝血管の全長L
2、
及び前記いずれか1つの分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積S
0、該分岐コアの遠位端主血管近位端の参考管腔面積S
1、該分岐コアの分枝血管の近位端の参考管腔面積S
2のうちの任意2つを取得し、
さらに、下記の式2によって余剰の1つの参考管腔面積を取得し、
【数6】
ここで、eは自然定数、-∞≦r<-0.6であることを特徴とする冠血流量の取得装置。
【請求項26】
請求項25に記載の冠血流量の取得装置において、
-2≦r<-0.75であることを特徴とする冠血流量の取得装置。
【請求項27】
請求項25に記載の冠血流量の取得装置において、
r=-1であることを特徴とする冠血流量の取得装置。
【請求項28】
請求項25に記載の冠血流量の取得装置において、
前記冠動脈の幾何学的特徴分析モジュールは、
冠動脈血管開口から最も近い第一分岐コアの近位端主血管には病変していない管腔が存在するか否かを判断し、
もし存在すれば、前記第一分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積を前記第一分岐コアの近位端主血管のいずれか1つの病変していないところの参考管腔面積と定義して、
前記第一分岐コアの所在する主血管上のあらゆる分枝血管のいずれも病変が発生していないと黙認し、前記画像情報に基づいて前記第一分岐コアの所在する主血管上の全ての分岐の分枝血管近位端の参考管腔面積を直接取得し、
さらに、前記第一分岐コアの所在する主血管上のいずれか1つの分岐コアから冠動脈血管開口までの距離に基づき、近くから遠くへ、いずれか1つの分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積と分枝血管近位端の参考管腔面積によっていずれか1つの分岐コアに繋がる遠位端主血管近位端の参考管腔面積を逐一に計算し、
もし冠動脈血管開口から最も近い第一分岐コアの近位端主血管には病変していない管腔が存在しないと、
最遠位端血管の近位端が病変しているか否かを判断し、
もし病変が存在しないと、画像情報に基づいて最遠位端血管近位端の参考管腔面積を直接取得し、
分岐コアから冠動脈血管開口までの距離に基づき、遠くから近くへ、いずれか1つの分岐コアの遠位端主血管近位端と分枝血管近位端の参考管腔によっていずれか1つの分岐コアに繋がる近位端主血管の参考管腔面積を逐一に計算することを特徴とする冠血流量の取得装置。
【請求項29】
請求項20~28のいずれか1項に記載の冠血流量の取得装置において、
前記冠動脈の幾何学的特徴分析モジュールは冠動脈血管における関心領域の参考管腔面積を取得するためのものであり、
前記冠動脈血管における関心領域の中膜内周面積S’の取得を含み、
相応の領域の参考管腔面積S=A*S’、ここで、0.7≦A<1であることを特徴とする冠血流量の取得装置。
【請求項30】
請求項17~28のいずれか1項に記載の冠血流量の取得装置において、
前記冠動脈の幾何学的特徴分析モジュールは、非侵襲的冠動脈CT造影によって冠動脈の画像情報を取得することを特徴とする冠血流量の取得装置。
【請求項31】
冠動脈血流速度の取得装置において、
冠動脈開口部の血流量を取得するための請求項17~30のいずれか1項に記載の冠血流量の取得装置と、
冠動脈開口部の血流量を該冠動脈開口部の参考管腔面積で割ることで、冠動脈開口部の血流速度を取得するための血流速度計算モジュールと、を備えることを特徴とする冠動脈血流速度の取得装置。
【請求項32】
請求項31に記載の冠動脈血流速度の取得装置において、
前記血流速度計算モジュールは、冠動脈開口部の血流速度を取得した後、下記の式3又は式4によって前記冠動脈における冠動脈開口を除いたいずれか1つの血管セグメントの血流速度を段階的に計算するためのものであり、
【数7】
前記v
0は分岐コアの近位端主血管の血流速度、v
1は分岐コアの遠位端主血管の血流速度であり、
【数8】
v
2は分岐コアの分枝血管の血流速度であることを特徴とする冠動脈血流速度の取得装置。
【請求項33】
プロセッサー、メモリー及び前記メモリーに記憶されたコンピュータ実行可能な指令を備え、前記プロセッサーが前記コンピュータ実行可能な指令を実行する場合、請求項1~14のいずれか1項に記載の冠血流量の取得方法を実現することを特徴とする冠血流量を取得するための装置。
【請求項34】
プロセッサー、メモリー及び前記メモリーに記憶されたコンピュータ実行可能な指令を備え、前記プロセッサーが前記コンピュータ実行可能な指令を実行する場合、請求項15又は16に記載の冠動脈血流速度の取得方法を実現することを特徴とする冠動脈血流速度を取得するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療技術分野に関し、特に、冠血流量及血流速度の取得方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関の報告によれば、心血管疾病が既に人類の健康を一番目に脅かすことになることを表明している。心血管疾病の生理及び病理行為をよりよく理解するために、動脈血液流動を深く掘り下げて研究することが血行力学の主な任務になる。
【0003】
その中で、冠血流量と血流速度は血行力学計算の重要なパラメータであり、現在冠血流量と血流速度の計算方法を主に侵襲的方法と非侵襲的方法に分ける。
【0004】
侵襲的方法は、冠動脈造影のTIMIフレームカウント法を含み、冠動脈造影により血流が時間につれて変化する情報を見えるため、血管セグメントの長さと血流が該血管セグメントを流れる時間によって、現在血管の血流速度を算出することができる。
【0005】
非侵襲的方法は、CT画像による分割で心筋の大きさを得ることを含み、従来の研究で発見された生物体中の器官の大きさと血流量との間の関係に基づいて冠動脈開口部の血流量の大きさを推定する。非侵襲的CT造影画像に基づいて冠動脈樹の血流量を計算し、従来の方法では、まず、CT画像に基づいて心筋を分割し、それから、心筋の大きさにより血流量を推定する必要があり、該方法のステップは比較的複雑である。
【0006】
したがって、如何に方法がより簡単で、正確率がより高い冠血流量及び血流速度の取得方法並びに装置を提供するかは本分野で早急に解決を要する技術課題になる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の解決しようとする技術課題は、より簡単な冠血流量及び血流速度の取得方法並びに装置を提供するものである。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明が提供した冠血流量の取得方法において、
冠動脈の画像情報を取得し、冠動脈の幾何学的特徴データを得るステップと、
冠動脈の幾何学的特徴データに基づいて冠動脈参考管腔の総体積Vを取得するステップと、
式1によって冠動脈開口部の血流量Qを計算するステップと、を含み、
【0009】
【0010】
Qの単位がmm3/s、Vの単位がmm3である場合、Kの取り得る値の範囲は5~9.5であり、好ましくは、6.5~8であり、最も好ましくは、7であり、前記冠動脈の画像情報は狭窄がある冠動脈の画像情報である。
【0011】
さらには、冠動脈参考管腔の総体積Vは、
冠動脈の幾何学的特徴データが冠動脈血管の長さ及び冠動脈血管の参考管腔面積を含むステップと、
冠動脈血管を血管中心線に沿って複数の血管中心線に垂直するスライスに切り分け、前記スライスの底面積を相応箇所の参考管腔面積とし、冠動脈血管の長さを合わせて、複数のスライスの体積の和を求めて冠動脈参考管腔の総体積Vを得るステップと、
によって取得される。
【0012】
さらには、冠動脈参考管腔の総体積Vは、
冠動脈の幾何学的特徴データに基づき、冠動脈の分岐コアを識別するステップと、
冠動脈が複数の分岐コアと、分岐コアによって分割された複数の血管セグメントと、を含み、複数の分岐コアと複数の血管セグメントの体積を加算して冠動脈参考管腔の総体積Vを得るステップと、
によって取得される。
【0013】
さらには、分岐コアを円錐台に簡素化してその体積を計算し、円錐台の一方の底面の面積が分岐コア近位端の参考管腔面積であり、円錐台の他方の底面の面積が分岐コアの両遠位端の参考管腔面積の和であり、円錐台の高さが分岐コア近位端の中心からカリーナ部(carina、分岐堤)までの距離である。
【0014】
さらには、複数の血管セグメントを円錐台に簡素化してその体積を計算し、円錐台の上下底面の面積がそれぞれ血管セグメント近位端の参考管腔面積と遠位端の参考管腔面積であり、円錐台の高さが血管セグメント中心線の長さである。
【0015】
さらには、複数の血管セグメントは最遠位端血管セグメントと、最遠位端血管セグメント以外の他の血管セグメントと、を含み、
最遠位端血管セグメント以外の他の血管セグメントを円柱体に簡素化してその体積を計算し、円柱体毎の底面積は該血管セグメントのいずれか一箇所の参考管腔面積であり、円柱体の高さは該血管セグメント中心線の長さである。
【0016】
さらには、幾何学的特徴データはいずれか1つの分岐コアの近位端主血管と遠位端主血管との間の分岐角度α1、遠位端主血管の全長L1、近位端主血管と分枝血管との間の分岐角度α2、分枝血管の全長L2、
及び前記いずれか1つの分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積S0、該分岐コアの遠位端主血管近位端の参考管腔面積S1、該分岐コアの分枝血管の近位端の参考管腔面積S2のうちの任意2つを含み、
それから、下記の式2によって余剰の1つの参考管腔面積を得て、
【0017】
【0018】
ここで、eは自然定数、-∞≦r<-0.6であり、好ましくは、-2≦r<-0.75であり、より好ましくは、r=-1である。
【0019】
さらには、冠動脈血管開口から最も近い第一分岐コアの近位端主血管には病変していない管腔が存在するか否かを判断し、
もし存在すれば、第一分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積を前記第一分岐コアの近位端主血管のいずれか1つの病変していないところの参考管腔面積と定義して、
第一分岐コアの所在する主血管上のあらゆる分枝血管のいずれも病変が発生していないと黙認し、画像情報に基づいて第一分岐コアの所在する主血管上の全ての分岐の分枝血管近位端の参考管腔面積を直接取得し、
【0020】
さらに、第一分岐コアの所在する主血管上のいずれか1つの分岐コアから冠動脈血管開口までの距離に基づき、近くから遠くへ逐一にいずれか1つの分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積と分枝血管近位端の参考管腔面積によっていずれか1つの分岐コアに繋がる遠位端主血管近位端の参考管腔面積を計算する。
【0021】
さらには、もし冠動脈血管開口から最も近い第一分岐コアの近位端主血管には病変していない管腔が存在しないと、
最遠位端血管の近位端が病変しているか否かを判断し、
もし病変が存在しないと、画像情報に基づいて最遠位端血管近位端の参考管腔面積を直接取得し、
分岐コアから冠動脈血管開口までの距離に基づき、遠くから近くへ逐一にいずれか1つの分岐コア遠位端主血管近位端と分枝血管近位端の参考管腔によっていずれか1つの分岐コアに繋がる近位端主血管の参考管腔面積を計算する。
【0022】
さらには、冠動脈血管中の関心領域の参考管腔面積は、以下の方法で得ることができ、
冠動脈の幾何学的特徴データが冠動脈血管中の関心領域の中膜内周面積S’を含み、
相応の領域の参考管腔面積S=A*S’、ここで、0.7≦A<1である。
【0023】
さらには、非侵襲的冠動脈CT造影により冠動脈画像情報を取得する。
【0024】
さらには、本発明は、上記のいずれか1つの方法で取得された冠動脈開口部の血流量を該冠動脈開口部の参考管腔面積で割り、冠動脈開口部の血流速度を取得する冠動脈血流速度の取得方法をさらに提供する。
【0025】
さらには、冠動脈開口部の血流速度を取得した後、下記の式3又は式4によって冠動脈における冠動脈開口を除いたいずれか1つの血管セグメントの血流速度を段階的に計算し、
【0026】
【0027】
v0は分岐コア近位端主血管の血流速度、v1は分岐コア遠位端主血管の血流速度であり、
【0028】
【0029】
v2は分岐コアの分枝血管の血流速度である。
【0030】
さらには、本発明は冠血流量の取得装置であって、
冠動脈の画像情報を取得し、冠動脈の幾何学的特徴データを得るための冠動脈の幾何学的特徴分析モジュールと、
前記冠動脈の幾何学的特徴データに基づいて冠動脈参考管腔の総体積Vを取得するための体積計算モジュールと、
式1によって冠動脈開口部の血流量Qを計算するための血流量計算モジュールと、を含み、
【0031】
【0032】
Qの単位がmm3/s、Vの単位がmm3である場合、Kの取り得る値の範囲は5~9.5であり、好ましくは、6.5~8であり、最も好ましくは、7である冠血流量の取得装置をさらに提供する。
【0033】
さらには、前記冠動脈の幾何学的特徴分析モジュールは、冠動脈血管の長さと冠動脈血管の参考管腔面積を取得するのに用いられ、
前記体積計算モジュールは、冠動脈血管を血管中心線に沿って複数の血管中心線に垂直するスライスに切り分け、前記スライスの底面積を相応の箇所の参考管腔面積と定義し、前記冠動脈血管の長さを合わせ、複数の前記スライスの体積の和を求めて前記冠動脈参考管腔の総体積Vを得る。
【0034】
さらには、前記体積計算モジュールは、
前記冠動脈の幾何学的特徴データに基づいて、冠動脈の分岐コアを識別するのに用いられ、
前記冠動脈は複数の分岐コアと、分岐コアによって分割された複数の血管セグメントと、を含み、前記複数の分岐コアと前記複数の血管セグメントの体積を加算して冠動脈参考管腔の総体積Vを得る。
【0035】
さらには、前記体積計算モジュールは、前記分岐コアを円錐台に簡素化してその体積を計算するのに用いられ、円錐台の一方の底面の面積が前記分岐コア近位端の参考管腔面積であり、円錐台の他方の底面の面積が前記分岐コアの両遠位端の参考管腔面積の和であり、円錐台の高さが分岐コア近位端中心からカリーナ部までの距離である。
【0036】
さらには、前記体積計算モジュールは、前記複数の血管セグメントを円錐台に簡素化してその体積を計算するのに用いられ、円錐台の上下底面の面積がそれぞれ前記血管セグメント近位端の参考管腔面積と遠位端の参考管腔面積であり、円錐台の高さが前記血管セグメント中心線の長さである。
【0037】
さらには、前記複数の血管セグメントは最遠位端血管セグメントと、最遠位端血管セグメント以外の他の血管セグメントと、を含み、
前記体積計算モジュールは、前記最遠位端血管セグメント以外の他の血管セグメントを円柱体に簡素化してその体積を計算するのに用いられ、円柱体毎の底面積が該血管セグメントのいずれか一箇所の参考管腔面積であり、円柱体の高さが該血管セグメント中心線の長さである。
【0038】
さらには、前記冠動脈幾何学的特徴分析モジュールは、
いずれか1つの分岐コアの近位端主血管と遠位端主血管との間の分岐角度α1、遠位端主血管の全長L1、近位端主血管と分枝血管との間の分岐角度α2、分枝血管の全長L2、
及び前記いずれか1つの分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積S0、該分岐コアの遠位端主血管近位端の参考管腔面積S1、該分岐コアの分枝血管の近位端の参考管腔面積S2中の任意2つを取得し、
それから、下記の式2によって余剰の1つの参考管腔面積を取得するのに用いられ、
【0039】
【0040】
ここで、eは自然定数、-∞≦r<-0.6であり、好ましくは、-2≦r<-0.75であり、より好ましくは、r=-1である。
【0041】
さらには、前記冠動脈幾何学的特徴分析モジュールは、
冠動脈血管開口から最も近い第一分岐コアの近位端主血管には病変していない管腔が存在するか否かを判断し、
もし存在すれば、前記第一分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積を前記第一分岐コアの近位端主血管のいずれか1つの病変していないところの参考管腔面積と定義して、
前記第一分岐コアの所在する主血管上のあらゆる分枝血管のいずれも病変が発生していないと黙認し、前記画像情報に基づいて前記第一分岐コアの所在する主血管上の全ての分岐の分枝血管近位端の参考管腔面積を直接取得し、
【0042】
さらに、前記第一分岐コアの所在する主血管上のいずれか1つの分岐コアから冠動脈血管開口までの距離に基づき、近くから遠くへ逐一にいずれか1つの分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積と分枝血管近位端の参考管腔面積によっていずれか1つの分岐コアに繋がる遠位端主血管近位端の参考管腔面積を計算し、
もし冠動脈血管開口から最も近い第一分岐コアの近位端主血管には病変していない管腔が存在しないと、
最遠位端血管の近位端が病変しているか否かを判断し、
もし病変が存在しないと、画像情報に基づいて最遠位端血管近位端の参考管腔面積を直接取得し、
分岐コアから冠動脈血管開口までの距離に基づき、遠くから近くへ逐一にいずれか1つの分岐コア遠位端主血管近位端と分枝血管近位端の参考管腔によっていずれか1つの分岐コアに繋がる近位端主血管の参考管腔面積を計算する。
【0043】
さらには、前記冠動脈幾何学的特徴分析モジュールは、冠動脈血管中の関心領域の参考管腔面積を取得するためのもので、
前記冠動脈血管中の関心領域の中膜内周面積S’の取得を含み、
相応の領域の参考管腔面積S=A*S’、ここで、0.7≦A<1である。
【0044】
さらには、前記冠動脈の幾何学的特徴分析モジュールは、非侵襲的冠動脈CT造影によって冠動脈の画像情報を取得する。
【0045】
さらには、本発明は冠動脈血流速度の取得装置であって、
冠動脈開口部の血流量を取得するための上記いずれか1項に記載の冠血流量の取得装置と、
冠動脈開口部の血流量を該冠動脈開口部の参考管腔面積で割ることで、冠動脈開口部の血流速度を取得するための血流速度計算モジュールと、を備える冠動脈血流速度の取得装置を提供する。
【0046】
さらには、前記血流速度計算モジュールは、冠動脈開口部の血流速度を取得した後、下記の式3又は式4によって前記冠動脈における冠動脈開口を除いたいずれか1つの血管セグメントの血流速度を段階的に計算し、
【0047】
【0048】
前記v0は分岐コアの近位端主血管の血流速度、v1は分岐コアの遠位端主血管の血流速度であり、
【0049】
【0050】
v2は分岐コアの分枝血管の血流速度である。
【0051】
さらには、本発明は別の冠血流量を取得するための装置をさらに提供し、
該冠血流量を取得するための装置はプロセッサー、メモリー及びメモリーに記憶されたコンピュータ実行可能な指令を備え、プロセッサーがコンピュータ実行可能な指令を実行する場合、上記いずれか1つの冠血流量の取得方法を実現する。
【0052】
さらには、本発明は冠動脈血流速度の取得装置を提供し、
該冠動脈血流速度の取得装置はプロセッサー、メモリー及び前記メモリーに記憶されたコンピュータ実行可能な指令を備え、プロセッサーがコンピュータ実行可能な指令を実行する場合、上記いずれか1つの冠動脈血流速度の取得方法を実現する。
【0053】
上記のように、本発明は新しい冠血流量、血流速度の取得方法を提供し、冠動脈の画像情報により、冠動脈の血流量と血流速度を取得することができる。従来技術における病人の心筋大きさにより冠血流量を推定する方法に比べてより簡単であり、病人の個性化血流を使用せずに血行力学計算を行うことに比べて、血行力学結果の正確度を高めることができ、画像に基づく血行力学計算により正確な境界条件を提供することができる。かつ、本発明中の画像情報を非侵襲的方法によって直接得ることができ、人体に対して創傷をもたらす必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
以下、図面と具体的な実施形態を用いて本発明についてさらに詳しく説明する。
【0055】
【
図1】
図1は本発明における冠血流量の取得方法のフローを示す図である。
【
図2】
図2は本発明における分岐コアの構造を示す図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例における冠動脈全体の参考管腔面積の取得方法のフローを示す図である。
【
図4】
図4は本発明における一部の冠動脈血管の簡素化構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳しく説明する。本発明の記述は各実施形態を合わせて一緒に説明するが、これはこの発明の特徴がこの数種の実施形態だけに限ることを代表するわけではない。まさしくその逆であり、実施形態を用いて発明を説明する目的は本発明の請求項に基づいて延出し得るその他の選択又は改良をカバーするためである。本発明を深く理解させるために、以下の記述において多くの詳細を含む。本発明はこれらの詳細を使用せずに実施することもできる。この他、本発明のポイントを混乱又は混同させることを避けるために、ある具体的な詳細は記述の中で省略される。
【0057】
本発明の発明者は「相対成長則」に基づき、冠動脈の体積と冠動脈開口
部の血流量の関係を発見した。これを基にして、大量の冠動脈サンプルを選び取り、大量のサンプルの実験データに基づいて、冠動脈開口
部の血流量と冠動脈の総体積との間の具体的な関係を確定し、最終的に冠血流量の取得方法を提供し、
図1に示すように、
【0058】
ST1:冠動脈の画像情報を取得し、冠動脈の幾何学的特徴データを得るステップと、ここで、冠動脈の幾何学的特徴データは冠動脈の画像情報によって直接得られた最初の冠動脈の幾何学的特徴データを含んでも良い、最初の冠動脈の幾何学的特徴データによって冠動脈無病変状態を再構成して得られた冠動脈参考管腔の幾何学的特徴データを更に含んでも良い。
【0059】
ST2:冠動脈の幾何学的特徴データに基づいて冠動脈参考管腔の総体積Vを取得するステップと、
【0060】
ST3:式1によって冠動脈開口部の血流量Qを計算するステップと、を含み、
【0061】
【0062】
Qの単位がmm3/s、Vの単位がmm3である場合、Kは大量のサンプルによる実験によって確定された係数であり、Kの取り得る値の範囲は5~9.5であり、好ましくは、6.5~8であり、最も好ましくは、7である。
【0063】
なお、もし冠動脈開口部の血流量Qと冠動脈参考管腔の総体積Vの単位が変化する場合、Kの取り得る値の範囲も相応のオーダーの変化が発生すべきである。
【0064】
従来技術では、冠動脈の実際の管腔の体積で血流量を推定する方法を用いる人がいる。実際の管腔の体積に比べて、本発明に用いられた参考管腔は充血状態での血流量をより反映させることができ、心筋の灌流に必要な血流量は冠動脈の狭窄によって減少するわけにはいかないので、実際の管腔の体積を用いると、血流量の過小評価を引き起こすことになる。
【0065】
本発明では、冠動脈参考管腔体積を用いて流速を計算し、血行力学計算により正確な境界条件を提供することができる。
【0066】
なお、本発明における近位端とは冠動脈開口部により接近する一端を指し、遠位端は冠動脈開口からより離間する一端に対応する。
【0067】
近位端主血管、遠位端主血管及び分枝血管は相対的な概念であり、任意1つの分岐について、冠動脈開口からより近い一端の主血管が近位端主血管であり、冠動脈開口からより遠い一端の主血管が遠位端主血管であり、もう1つが分枝血管である。前記分枝血管が2次分枝に2次分岐した場合、この2次分岐について、該分枝血管が主血管であり、該2次分枝が分枝血管である。
【0068】
本発明における冠動脈参考管腔の総体積Vは従来技術での如何なる既知の方法によって取得することができる。
【0069】
本発明の一実施例では、冠動脈参考管腔体積Vは、以下のステップにより得ることができ、即ち、
【0070】
ST1’:冠動脈の画像情報を取得し、冠動脈血管の長さと冠動脈血管の参考管腔面積を含む冠動脈の幾何学的特徴データを得るステップと、
【0071】
ST2’:冠動脈血管を血管中心線に沿って複数の血管中心線に垂直するスライスに切り分け、スライスの底面積を相応箇所の参考管腔面積と定義し、冠動脈血管の長さも用いて、複数のスライスの体積の和を求めて冠動脈参考管腔の総体積Vを得るステップ。即ち、冠動脈参考管腔をN個のとても薄いスライスの加重に簡素化することで、冠動脈横断面積と血管長さの積の総和を求める数によって冠動脈参考管腔の総体積Vを得ることができる。下式のように、
【0072】
【0073】
ここで、Siと△hiは冠動脈参考管腔の第i個目の薄いスライスの面積と厚さを表し、Nは簡素化した薄いスライスの総数である。なお、Nの数が大きければ大きいほど、得られた冠動脈参考管腔の体積Vが正確になり、計算において実際のニーズに応じて適切なNの数を選択しても良い。
【0074】
本発明の別の実施例では、計算し易いために、冠動脈参考管腔体積Vは、
ST1’’:冠動脈の画像情報を取得し、冠動脈の長さ、参考管腔面積を含む冠動脈の幾何学的特徴データを得るステップと、
【0075】
ST21’’:冠動脈の幾何学的特徴データに基づいて、冠動脈の分岐コアを識別するステップと、
によって取得してもよい、
【0076】
その中で、分岐コアは本分野における任意の分岐コアの認定方法により確定されても良い、計算誤差が受け入れ可能な範囲内にさえあればよい。
【0077】
本発明の一好ましい実施例では、
図2に示すように、分岐コアは該分岐の近位端主血管20が大きくなり始めるところの第一断面D
0と、遠位端主血管30のカリーナ部50における第二断面D
1と、分枝血管40のカリーナ部50における第三断面D
2と、血管壁と共同で取り囲んだ領域であり、その中で、主血管と分枝血管の遠位端分界点がカリーナ部である。
【0078】
ST22’:分岐コアにより冠動脈を複数の血管セグメントに分割することができ、即ち冠動脈が複数の分岐コアと、分岐コアで分割された複数の血管セグメントと、を含み、複数の分岐コアと複数の血管セグメントの体積を加算して冠動脈参考管腔の総体積Vを得ることができる。
【0079】
その中で、分岐コアを円錐台に簡素化してその体積を計算し、円錐台の一方の底面の面積が分岐コア近位端の参考管腔面積、即ち第一断面D0の面積であり、円錐台の他方の底面の面積が分岐コアの両遠位端の参考管腔面積の和、即ち第二断面D1と第三断面D2の面積の和であり、円錐台の高さが分岐コア近位端中心からカリーナ部までの距離であり、ここの分岐コア近位端中心とは第一断面D0の中心を指す。
【0080】
複数の血管セグメントを円錐台に簡素化してその体積を計算し、円錐台の上下底面の面積がそれぞれ血管セグメント近位端の参考管腔面積と遠位端の参考管腔面積であり、円錐台の高さが血管セグメント中心線の長さである。
【0081】
さらには、冠動脈血管の構造特徴に基づき、更に複数の血管セグメントを最遠位端血管セグメントと最遠位端血管セグメント以外の他の血管セグメントに分ける。冠動脈血管において、最遠位端血管セグメントの参考管腔面積が血管長さの延びる方向につれて次第に減少することになり、最遠位端血管セグメントを除いたいずれか1つのその他の血管セグメントについて、同一の血管セグメント内において、参考管腔面積が同じである。
【0082】
したがって、最遠位端血管セグメント以外の他の血管セグメントを円柱体に簡素化してその体積を計算し、円柱体毎の底面積が該血管セグメントのいずれか1箇所の参考管腔面積であり、円柱体の高さが該血管セグメント中心線の長さである。最遠位端血管セグメントを円錐台に簡素化し、円錐台の上下底面の面積がそれぞれ最遠位端血管セグメント近位端の参考管腔面積と遠位端の参考管腔面積であり、円錐台の高さが血管セグメント中心線の長さである。
【0083】
さらには、ST1では、冠動脈の画像情報に基づいて、冠動脈血管長さ、分岐角度及び最初の管腔面積を含む最初の冠動脈の幾何学的特徴データを直接得ることができる。病変の管腔について、管腔面積を修正する必要があり、正常状態時の管腔面積、及び参考管腔面積を得る。病変が発生していない管腔について、該箇所の実際の管腔面積が参考管腔面積である。
【0084】
従来の冠動脈評価の方法において、参考管腔面積の計算は、病変前後の正常管腔位置を選び取って、その面積の平均値を取って病変位置の参考管腔の大きさとすることは多い。しかしながら、冠動脈はびまん性病変が発生した場合には、冠動脈中の病変の分布領域が長く、病変血管セグメントの付近で正常管腔を探し当て難い。したがって、従来の方法は、全血管セグメントのびまん性病変を有する患者において、決して適用するものではなく、参考管腔の大きさを過小評価し易い。
【0085】
本願発明者は研究において次のようなことを発見した。
図2に示す冠動脈分岐構造では、いずれか1つの分岐コアの近位端主血管の血流速度、遠位端主血管近位端の血流速度及び分枝血管近位端の血流速度は以下の関係を有し、
【0086】
【0087】
v0は分岐コアの近位端主血管の血流速度、v1は分岐コアの遠位端主血管の血流速度であり、
【0088】
【0089】
v2は分岐コアの分枝血管の血流速度である。
【0090】
ここで、eは自然定数、rは大量のサンプルによる実験によって確定されたeの指数の係数であり、-∞≦r<-0.6であり、計算結果をより精確にさせるために、好ましくは、-2≦r<-0.75であり、より好ましくは、r=-1であり、
【0091】
α1は近位端主血管と遠位端主血管との間の分岐角度、L1は遠位端主血管の全長、α2は近位端主血管と分枝血管との間の分岐角度、L2は分枝血管の全長である。
【0092】
なお、本分野の一般的な定義において、
図2に示すように、分岐角度α
1は近位端主血管の血管が大きくなり始まるところにおける断面D
0の法線R
0と遠位端主血管のカリーナ部における断面D
1の法線R
1との挟角であり、分岐角度α
2はR
0と分枝血管のカリーナ部における断面D
2の法線R
2との挟角であり、遠位端主血管の全長L
1は分岐中心から該遠位端主血管の最遠位端血管セグメントの遠位端までの全長(該遠位端主血管のこの血管セグメントの長さではない)、分枝血管の全長L
2は分岐中心から分枝血管の最遠位端血管セグメントの遠位端までの全長(該分枝血管のこの血管セグメントの長さではない)である。一般的に言えば、分岐中心は分岐コアの重心であるが、本発明では、分岐コア内の任意一点を分岐中心として血管長さを計算することによる誤差はいずれも受け入れ可能な範囲内にある。
【0093】
さらには、任意1つの分岐コアについて、流量保存則に従って、該分岐コア近位端の参考管腔面積S0、該分岐コアが遠位端主血管に隣接するところの参考管腔面積S1及び該分岐コアが分枝血管に隣接するところの参考管腔面積S2には、以下の関係v0*S0=v1*S1+v2*S2が存在し、これにより、いずれか1つの分岐コアには下式2の関係が存在することを得ることができる。
【0094】
【0095】
ここで、S0は該分岐コアの近位端の参考管腔面積であり、同時に、1つの分岐コアの近位端主血管が最遠位端の血管セグメントであることは有り得ないため、近位端主血管上のいずれか1箇所の参考管腔面積が全部同じであるべき、即ちS0は同時に該分岐コア近位端主血管の参考管腔面積でもある。
【0096】
S1は分岐コアが遠位端主血管に隣接するところの参考管腔面積であり、S1は同時に該分岐コアの遠位端主血管の近位端の参考管腔面積でもあり、該遠位端主血管が最遠位端血管セグメント以外の他の血管セグメントであるならば、該遠位端主血管上のいずれか1箇所の参考管腔面積はいずれも該遠位端主血管近位端の参考管腔面積に等しい。
【0097】
S2は分岐コアが分枝血管に隣接するところの参考管腔面積であり、S2は同時に該分岐コアの分枝血管近位端の参考管腔面積でもあり、該分枝血管が最遠位端血管セグメント以外の他の血管セグメントであるならば、該分枝血管上のいずれか1箇所の参考管腔面積はいずれも該分枝血管近位端の参考管腔面積に等しい。
【0098】
この上で、本発明は冠動脈分岐の解剖構造に基づいて参考管腔を計算できる方法を提出し、冠動脈のびまん性病変を有する患者により正確な参考管腔の計算方法を提供することができ、さらには血行力学計算により正確な境界条件を提供することができる。
【0099】
冠動脈の画像情報によって、いずれか1つの分岐コアの近位端主血管と遠位端主血管との間の分岐角度α1、遠位端主血管の全長L1、近位端主血管と分枝血管との間の分岐角度α2、分枝血管の全長L2、及びいずれか1つの分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積S0、該分岐コアの遠位端主血管の近位端の参考管腔面積S1、該分岐コアの分枝血管の近位端の参考管腔面積S2のうちの任意2つを含む冠動脈の幾何学的特徴データを得た後、式2によって余剰の1つの参考管腔面積を取得する。
【0100】
実際に血流量を計算する過程において、冠動脈の実際の病変状況に応じて、病変血管の参考管腔を逐一に計算することができる。
【0101】
さらには、冠動脈血管全体の参考管腔を自動的に計算し易いために、
図3に示すように、本発明は遠くから近くへ及び近くから遠くへ冠動脈参考管腔面積を逐一に計算する方法をさらに提供した。
【0102】
本発明の一実施例では、
図4に示すように、近くから遠くへとの方法によって全冠動脈血管の参考管腔面積を計算し、具体的なステップは次の通りであり、
【0103】
ST11:冠動脈の画像情報を取得し、最初の冠動脈の幾何学的特徴データを得る、
【0104】
ST12:冠動脈分岐コアを識別する、
【0105】
ST13:冠動脈血管開口から最も近い第一分岐コアの近位端主血管には病変していない管腔が存在するか否かを判断し、前記第一分岐コアの近位端主血管のいずれか1つのところには正常の管腔面積を有しさえすれば、病変していない管腔が存在すると認める、
【0106】
ST14:もし存在すれば、第一分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積を第一分岐コアの近位端主血管のいずれか1つの病変していないところの参考管腔面積と定義して、
第一分岐コアの所在する主血管上のあらゆる分枝血管のいずれも病変が発生していないと黙認し、冠動脈の画像情報に基づいて第一分岐コアの所在する主血管上の全ての分岐の分枝血管近位端の参考管腔面積を直接取得する、
【0107】
ST15:さらに、第一分岐コアの所在する主血管上のいずれか1つの分岐コアから冠動脈血管開口までの距離に基づき、近くから遠くへいずれか1つの分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積と分枝血管近位端の参考管腔面積によっていずれか1つの分岐コアに繋がる遠位端主血管近位端の参考管腔面積を逐一に計算する。
【0108】
具体的には、
図4を参照して、冠動脈全体の近くから遠くへとの計算方法は次の通りであり、
【0109】
ST141:まず、第一分岐コア11の近位端主血管21の参考管腔面積と第一分枝血管41近位端の参考管腔面積によって、第一分岐コア11の遠位端主血管31近位端の参考管腔面積を計算し、
【0110】
さらには、第一分岐コア11の遠位端主血管31が第二分岐コア12の近位端主血管22であり、第一分岐コア11の遠位端主血管31の近位端の参考管腔面積が第二分岐12の近位端主血管22の参考管腔面積である、
【0111】
ST142:それから、第二分岐コア12の近位端主血管22の参考管腔面積と第二分枝血管42の近位端の参考管腔面積によって、第二分岐コア12の遠位端主血管32近位端の参考管腔面積を計算する、
【0112】
ST143:その他はこれによって類推することができ、近くから遠くへ第三分岐コア13から最遠位端分岐コアまでの遠位端主血管の参考管腔面積を逐一に計算し、最終的にこの主血管上のあらゆる血管セグメントの参考管腔面積を得る。
【0113】
本発明の別の実施例では、さらに遠位から近位への方式を用いてあらゆる血管セグメントの参考管腔面積を段階的に計算することもできる。例えば、
【0114】
ST11:冠動脈の画像情報を取得し、最初の冠動脈の幾何学的特徴データを得る、
【0115】
ST12:冠動脈分岐コアを識別する、
【0116】
ST13:冠動脈血管開口から最も近い第一分岐コアの近位端主血管には病変していない管腔が存在するか否かを判断する、
【0117】
ST14’:もし冠動脈血管開口から最も近い第一分岐コアの近位端主血管には病変していない管腔が存在しなければ、さらに、最遠位端血管の近位端が病変しているか否かを判断する、
【0118】
ST15’:もし病変が存在しなければ、画像情報に基づいて最遠位端血管近位端の参考管腔面積を直接取得する、
【0119】
ST16’:分岐コアから冠動脈血管開口までの距離に基づき、遠くから近くへいずれか1つの分岐コアの遠位端主血管近位端と分枝血管近位端の参考管腔面積によって、いずれか1つの分岐コアに繋がる近位端主血管の参考管腔面積を逐一に計算する。
【0120】
上記同一の分岐コア上の近位端主血管、遠位端主血管及び分枝血管の参考管腔面積の間の関係によって冠動脈全体の参考管腔を計算する以外、本発明は別の冠動脈参考管腔の計算方法をさらに提供した。血管壁は管腔面から外に向かって一般に順に内膜、中膜及び外膜であるため、内膜は管壁の最内層で、プラーク病変が成長する領域であり、内膜の内周面積が実際の管腔面積であり、中膜が内膜と外膜との間に位置し、内膜の外側と密着され、中膜の内周面積が内膜の外周面積であり、したがって、さらに、以下の方法で冠動脈血管における関心領域の参考管腔面積を計算することができる。
【0121】
冠動脈の画像情報に基づいて、冠動脈血管における関心領域の中膜内周面積S’を含む冠動脈の幾何学的特徴パラメータを取得し、
【0122】
相応の領域の参考管腔面積S=A*S’、ここで、0.7≦A<1。
【0123】
さらには、本発明において非侵襲的冠動脈CT造影によって冠動脈の画像情報を取得してもよい。余計な外傷が増加することなく、冠動脈の血流情報を得ることができ、患者の苦しみを極めて大きく軽減した。
【0124】
さらに、本発明は冠動脈血流速度の取得方法をさらに提供し、上記いずれか1つの方法によって取得した冠動脈開口部の血流量を該冠動脈開口部の参考管腔面積で割って、冠動脈開口部の血流速度を取得する。
【0125】
さらには、冠動脈開口部の血流速度を取得した後、下式3又は式4によって冠動脈における冠動脈開口を除いたいずれか1つの血管セグメントの血流速度を段階的に計算し、
【0126】
【0127】
v0は分岐近位端主血管の血流速度、v1は分岐遠位端主血管の血流速度であり、
【0128】
【0129】
v2は分岐の分枝血管の血流速度である。
【0130】
ここで、α1、α
2
、L1、L2及びrが前の定義と同じである。
【0131】
従来の分岐血流速度の計算方法の多くは分枝開口の管腔大きさに基づいて血流速度比を計算するものであるが、本方法が提出した分岐モデルに分岐角度と分枝長さの情報を加えたので、分岐血流速度比を計算する正確度をさらに高めた。
【0132】
さらには、本発明は冠血流量の取得装置をさらに提供し、該冠血流量の取得装置は、
冠動脈の画像情報を取得し、冠動脈の幾何学的特徴データを得るための冠動脈の幾何学的特徴分析モジュールと、
前記冠動脈の幾何学的特徴データに基づいて冠動脈参考管腔の総体積Vを取得するための体積計算モジュールと、
式1によって冠動脈開口部の血流量Qを計算するための血流量計算モジュールと、を備え、
【0133】
【0134】
Qの単位がmm3/s、Vの単位がmm3である場合、Kの取り得る値の範囲は5~9.5であり、好ましくは、6.5~8であり、最好ましくは、7である。
【0135】
さらには、前記冠動脈の幾何学的特徴分析モジュールは冠動脈血管の長さと冠動脈血管の参考管腔面積を取得する。
【0136】
前記体積計算モジュールは、冠動脈血管を血管中心線に沿って複数の血管中心線に垂直するスライスに切り分け、前記スライスの底面積を相応の箇所の参考管腔面積と定義し、前記冠動脈血管の長さも用いて、複数の前記スライスの体積の和を求めて前記冠動脈参考管腔の総体積Vを得る。
【0137】
さらには、前記体積計算モジュールは、
前記冠動脈の幾何学的特徴データに基づき、冠動脈の分岐コアを識別し、
前記冠動脈が複数の分岐コアと、分岐コアで分割された複数の血管セグメントと、を含み、前記複数の分岐コアと前記複数の血管セグメントの体積を加算して冠動脈参考管腔の総体積Vを得る。
【0138】
さらには、前記体積計算モジュールは、前記分岐コアを円錐台に簡素化してその体積を計算するためのもので、円錐台の一方の底面の面積が前記分岐コア近位端の参考管腔面積であり、円錐台の他方の底面の面積が前記分岐コア両遠位端の参考管腔面積の和であり、円錐台の高さが分岐コア近位端中心からカリーナ部までの距離である。
【0139】
さらには、前記体積計算モジュールは、前記複数の血管セグメントを円錐台に簡素化してその体積を計算するためのもので、円錐台の上下底面の面積がそれぞれ前記血管セグメント近位端の参考管腔面積と遠位端の参考管腔面積であり、円錐台の高さが前記血管セグメントの中心線の長さである。
【0140】
さらには、前記複数の血管セグメントが最遠位端血管セグメントと、最遠位端血管セグメント以外の他の血管セグメントと、を含み、
前記体積計算モジュールは、前記最遠位端血管セグメント以外の他の血管セグメントを円柱体に簡素化してその体積を計算するためのもので、円柱体毎の底面積が該血管セグメントのいずれか一箇所の参考管腔面積であり、円柱体の高さが該血管セグメントの中心線の長さである。
【0141】
さらには、前記冠動脈の幾何学的特徴分析モジュールは、
いずれか1つの分岐コアの近位端主血管と遠位端主血管との間の分岐角度α1、遠位端主血管の全長L1、近位端主血管と分枝血管との間の分岐角度α2、分枝血管の全長L2、
及び前記いずれか1つの分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積S0、該分岐コアの遠位端主血管近位端の参考管腔面積S1、該分岐コアの分枝血管の近位端の参考管腔面積S2のうちの任意2つを取得し、
それから、下記の式2によって余剰の1つの参考管腔面積を取得し、
【0142】
【0143】
ここで、eは自然定数、-∞≦r<-0.6であり、好ましくは、-2≦r<-0.75であり、最も好ましくは、r=-1である。
【0144】
さらには、前記冠動脈の幾何学的特徴分析モジュールは、
冠動脈血管開口から最も近い第一分岐コアの近位端主血管には病変していない管腔が存在するか否かを判断し、
もし存在すれば、前記第一分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積を前記第一分岐コアの近位端主血管のいずれか1つの病変していないところの参考管腔面積と定義して、
前記第一分岐コアの所在する主血管上のあらゆる分枝血管のいずれも病変が発生していないと黙認し、前記画像情報に基づいて前記第一分岐コアの所在する主血管上の全ての分岐の分枝血管近位端の参考管腔面積を直接取得し、
【0145】
さらに、前記第一分岐コアの所在する主血管上のいずれか1つの分岐コアから冠動脈血管開口までの距離に基づき、近くから遠くへ、いずれか1つの分岐コアの近位端主血管の参考管腔面積と分枝血管近位端の参考管腔面積によっていずれか1つの分岐コアに繋がる遠位端主血管近位端の参考管腔面積を逐一に計算し、
もし冠動脈血管開口から最も近い第一分岐コアの近位端主血管には病変していない管腔が存在しないと、
最遠位端血管の近位端が病変しているか否かを判断し、
もし病変が存在しないと、画像情報に基づいて最遠位端血管近位端の参考管腔面積を直接取得し、
分岐コアから冠動脈血管開口までの距離に基づき、遠くから近くへいずれか1つの分岐コアの遠位端主血管近位端と分枝血管近位端の参考管腔によっていずれか1つの分岐コアに繋がる近位端主血管の参考管腔面積を逐一に計算する。
【0146】
さらには、前記冠動脈の幾何学的特徴分析モジュールは冠動脈血管における関心領域の参考管腔面積を取得するためのものであり、
前記冠動脈血管における関心領域の中膜内周面積S’の取得を含み、
相応の領域の参考管腔面積S=A*S’、ここで、0.7≦A<1である。
【0147】
さらには、前記冠動脈の幾何学的特徴分析モジュールは、非侵襲的冠動脈CT造影によって冠動脈の画像情報を取得する。
【0148】
さらには、本発明は冠動脈血流速度の取得装置であって、
冠動脈開口部の血流量を取得するための上記いずれか1項の冠血流量の取得装置と、
冠動脈開口部の血流量を該冠動脈開口部の参考管腔面積で割ることで、冠動脈開口部の血流速度を取得するための血流速度計算モジュールと、を備える冠動脈血流速度の取得装置を
提供する。
【0149】
さらには、前記血流速度計算モジュールは、冠動脈開口部の血流速度を取得した後、下記の式3又は式4によって前記冠動脈における冠動脈開口を除いたいずれか1つの血管セグメントの血流速度を段階的に計算するためのものであり、
【0150】
【0151】
前記v0は分岐コアの近位端主血管の血流速度、v1は分岐コアの遠位端主血管の血流速度であり、
【0152】
【0153】
v2は分岐コアの分枝血管の血流速度である。さらには、本発明は別の冠血流量を取得するための装置をさらに提供しており、
該冠血流量を取得するための装置はプロセッサー、メモリー及びメモリーに記憶されたコンピュータ実行可能な指令を備え、プロセッサーがコンピュータ実行可能な指令を実行する場合、上記のいずれか1項の冠血流量の取得方法を実現する。
【0154】
さらには、本発明は冠動脈血流速度の取得装置を提供しており、
該冠動脈血流速度の取得装置はプロセッサー、メモリー及びメモリーに記憶されたコンピュータ実行可能な指令を備え、プロセッサーがコンピュータ実行可能な指令を実行する場合、上記のいずれか1項の冠血流量の取得方法を実現する。
【0155】
上記のように、出願人は血流量の新しい計算方法を提出し、余計な外傷がない条件下で、まず、冠動脈分岐モデルに基づいて冠動脈には狭窄がない場合の正常の参考管腔を算出し、次に、冠動脈参考管腔の寸法に基づいて冠動脈開口部の総血流量を計算して、最後に分岐モデルの血流分配比に基づいて全冠動脈樹全体の血流分布を計算する。冠動脈の構造寸法から血流量を直接推定し、得られたのは冠動脈樹全体中の各血管セグメントの血流分布であり、画像に基づく血行力学計算により正確な境界条件を提供することができる。
【0156】
(具体的な実施例)
実施例1~7及び比較例1~2
冠動脈開口部に病変が発生していない冠動脈サンプルを選び取り、
CT冠動脈造影画像に基づいて左側の冠動脈樹を分割し、最初の冠動脈の幾何学的特徴データを得、近くから遠くへの方法で再構成して無病変の状態での冠動脈参考管腔幾何学的特徴データを得、ここで、r=-1であり、
計算して得られた左冠動脈樹の参考管腔体積が1100mm3であり、
【0157】
【0158】
式1によって、冠動脈開口部の血流量を計算し、Kの取り得る値は表2を参照して下さい。
【0159】
測定して得られた左冠動脈開口部の面積が11.5mm2であり、式:血流速度=血流量/管腔面積によって、血流速度を計算した。
【0160】
【0161】
*誤差は(各実施例又は比較例で得られた血流速度v-比較例3で得られた血流速度v)/比較例3で得られた血流速度vである。
【0162】
比較例3(冠動脈造影のTIMIフレームカウント法によって血流速度を計算する)
冠動脈造影画像において目標血管セグメントを選び取って測定し、その長さが80.26mmであった。
【0163】
造影のTIMIフレームカウント法に基づき、造影剤が血管セグメントの近位端から遠位端まで10フレームを必要とし、冠動脈造影撮像のフレームレートが15フレーム/秒であり、時間が0.67秒であると算出できる。
したがって、冠動脈造影によって計算し得られた血流速度が80.26mm/0.67s=119.8mm/s=0.12m/sであった。
【0164】
表1から分かるように、本発明が提供した方法を用いて得られた冠血流量と血流速を、比較例3におけるTIMIフレームカウント法(業界内のゴールドスタンダード)で計算し得られた血流速度に比べて、結果が近くて、誤差が小さい。特に、実施例4では、K=7の時、非侵襲的CT冠動脈造影によって計算し得られた冠動脈血流速度と冠動脈造影TIMIフレームカウント法で測定して得られた結果が一致している。比較例1又は2において、K値が9.5より大きい又は5未満の場合、誤差が大きい。
【0165】
これで分かるように、本発明が提供した冠血流量の取得方法は、冠動脈の構造寸法から血流を直接推定し、先にCT画像に基づいて心筋を分割する必要がなく、従来の画像学に基づく血行力学計算において、冠動脈の分割が必須条件であるため、冠動脈の寸法によって血流を推定することは、画像処理の作業量が増加することなく、従来技術において患者の心筋の大きさによって冠血流量を推定することに比べてより簡単で、精確である。
【0166】
上記のように、本発明が提供した上記の実施例は、本発明の原理及びその効果を例示的に説明しただけで、本発明を制限するためのものではない。如何なるこの技術を熟知している人々は皆本発明の精神や範囲に背かない下で、上記の実施例について修飾又は変更を行うことができる。したがって、所属する技術分野では通常の知識を有する者が本発明に開示された精神と技術思想から逸脱せずに行われた全ての等価修飾又は変更は、依然として本発明の特許請求の範囲に含まれるべきである。