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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】眼科装置及び眼科撮影方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/02 20060101AFI20230214BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
G02B21/02
G02B21/02 A
A61B3/10 300
A61B3/10 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022007453
(22)【出願日】2022-01-20
(62)【分割の表示】P 2020510940の分割
【原出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2022058704
(43)【公開日】2022-04-12
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】62/650,309
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(73)【特許権者】
【識別番号】509012991
【氏名又は名称】オプトス ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 誠
(72)【発明者】
【氏名】西 泰史
(72)【発明者】
【氏名】野中 杏菜
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 勝也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 三環子
(72)【発明者】
【氏名】徳永 京也
(72)【発明者】
【氏名】水田 正宏
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムソン デイビッド エム
(72)【発明者】
【氏名】ムヨ ゴンザーロ
(72)【発明者】
【氏名】ゴーマン アリスター
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-084972(JP,A)
【文献】特開2017-148541(JP,A)
【文献】特開2013-179971(JP,A)
【文献】特開2009-002991(JP,A)
【文献】特開2006-171636(JP,A)
【文献】特開2001-318323(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0092161(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0085252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
A61B 3/00-3/18
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
G02B 23/00-23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を供給する光源と、
前記光源からの光を被検眼側に照射するように構成された眼科光学系と、
前記眼科光学系に関して被検眼の瞳位置に対応する位置と共役な位置に配置され、前記光源からの光を角度走査して前記被検眼に照射される光を走査する走査部と、
前記被検眼からの反射光を前記眼科光学系と前記走査部を経由して受光する受光部と、
前記受光部からの情報と前記走査部からの情報とに基づいて、被検眼の像を形成する画像処理部と、
を含み、
前記眼科光学系は、
光源側から前記走査部により、前記眼科光学系へ入射する入射光線と前記眼科光学系の光軸とのなす角をωinとし、
前記眼科光学系から前記被検眼側へ射出される射出光線と前記光軸とのなす角をωoutとし、
前記眼科光学系において、Mは、M=|ωout/ωin|と定義し、
前記入射光線が近軸光線であるときのMをMpar、及び
前記入射光線がωinの最大角度光線であるときのMをMmaxとした場合、
Mpar<Mmax
で示される条件式を満足するように前記Mの値が分布し、
前記画像処理部は、前記走査部によって走査される入射角度ωinに関する前記Mの値の分布に基づいて、前記受光部の受光結果に関するデータを補正する
眼科装置。
【請求項2】
前記眼科光学系は、前記Mparから前記Mmaxの範囲でωinが大きくなるに従いMが大きくなる分布である請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記眼科装置は、前記眼科光学系による被検眼側での角度ωoutによるMの値の変化特性を記憶する記憶装置を有し、
前記画像処理部は、前記記憶装置に記憶された前記角度ωoutによるMの値の変化特性に基づいて、前記受光部の受光結果に関するデータを補正する、請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
光を供給する光源と、
前記光源からの光を被検眼側に照射するように構成された眼科光学系と、
前記眼科光学系に関して被検眼の瞳位置に対応する位置と共役な位置に配置され、前記光源からの光を角度走査して前記被検眼に照射される光を走査する走査部と、
前記被検眼からの反射光を前記眼科光学系と前記走査部を経由して受光する受光部と、
前記受光部からの情報と前記走査部からの情報とに基づいて、被検眼の像を形成する画像処理部と、
を含み、
前記眼科光学系は、
光源側から前記走査部により、前記眼科光学系へ入射する入射光線と前記眼科光学系の光軸とのなす角をωinとし、
前記眼科光学系から前記被検眼側へ射出される射出光線と前記光軸とのなす角をωoutとし、
前記眼科光学系において、Mは、M=|ωout/ωin|と定義し、
前記入射光線が近軸光線であるときのMをMpar、及び、
前記入射光線がωinの最大角度光線であるときのMをMmaxとした場合、
Mpar<Mmax
で示される条件式を満足するように前記Mの値が分布する、
眼科装置の眼科撮影方法であって、
前記走査部による角度ωinの走査範囲を設定するステップと、
前記眼科光学系による被検眼側での角度ωoutによる前記Mの値の変化特性を入力するステップと、
前記Mの値の分布を示す変化特性に基づいて、前記受光部の受光結果に関するデータを補正し、前記走査部による角度ωinの走査範囲に対応する被検眼の像を形成するステップと
を含む眼科撮影方法。
【請求項5】
前記眼科装置は、前記眼科光学系による被検眼側での角度ωoutによる前記Mの値の変化特性を記憶する記憶装置をさらに含み、
前記Mの値の変化特性を入力するステップは、前記記憶装置に記憶された前記Mの値の変化特性を用いる請求項4に記載の眼科撮影方法。
【請求項6】
前記眼科光学系は、前記Mparから前記Mmaxの範囲でωinが大きくなるに従いMが大きくなる請求項5に記載の眼科撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、眼科装置、及び眼科撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献2、及び特許文献3には、走査型レーザ検眼鏡、及び光干渉断層計を用いて被検眼を撮影する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2015/0216408号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0150953号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0320813号明細書なお、これらの文献にも記載されている通り、便宜上、走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope)を「SLO」と称する。また、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography)を「OCT」と称する。
【発明の概要】
【0004】
本開示の技術の第1の態様は、
光を供給する光源と、
前記光源からの光を被検眼側に照射するように構成された眼科光学系と、
前記眼科光学系に関して被検眼の瞳位置に対応する位置と共役な位置に配置され、前記光源からの光を角度走査して前記被検眼に照射される光を走査する走査部と、
前記被検眼からの反射光を前記眼科光学系と前記走査部を経由して受光する受光部と、
前記受光部からの情報と前記走査部からの情報とに基づいて、被検眼の像を形成する画像処理部と、
を含み、
前記眼科光学系は、
光源側から前記走査部により、前記眼科光学系へ入射する入射光線と前記眼科光学系の光軸とのなす角をωinとし、
前記眼科光学系から前記被検眼側へ射出される射出光線と前記光軸とのなす角をωoutとし、
前記眼科光学系において、Mは、M=|ωout/ωin|と定義し、
前記入射光線が近軸光線であるときのMをMpar、及び
前記入射光線がωinの最大角度光線であるときのMをMmaxとした場合、
Mpar<Mmax
で示される条件式を満足するように前記Mの値が分布し、
前記画像処理部は、前記走査部によって走査される入射角度ωinに関する前記Mの値の分布に基づいて、前記受光部の受光結果に関するデータを補正する
眼科装置である。
【0005】
前記眼科光学系は、前記Mparから前記Mmaxの範囲でωinが大きくなるに従いMが大きくなる分布とすることができる。
また、前記眼科装置は、前記眼科光学系による被検眼側での角度ωoutによるMの値の変化特性を記憶する記憶装置を有し、
前記画像処理部は、前記記憶装置に記憶された前記角度ωoutによるMの値の変化特性に基づいて、前記受光部の受光結果に関するデータを補正することができる。
【0006】
本開示の技術の第の態様は、
光を供給する光源と、
前記光源からの光を被検眼側に照射するように構成された眼科光学系と、
前記眼科光学系に関して被検眼の瞳位置に対応する位置と共役な位置に配置され、前記光源からの光を角度走査して前記被検眼に照射される光を走査する走査部と、
前記被検眼からの反射光を前記眼科光学系と前記走査部を経由して受光する受光部と、
前記受光部からの情報と前記走査部からの情報とに基づいて、被検眼の像を形成する画像処理部と、
を含み、
前記眼科光学系は、
光源側から前記走査部により、前記眼科光学系へ入射する入射光線と前記眼科光学系の光軸とのなす角をωinとし、
前記眼科光学系から前記被検眼側へ射出される射出光線と前記光軸とのなす角をωoutとし、
前記眼科光学系において、Mは、M=|ωout/ωin|と定義し、
前記入射光線が近軸光線であるときのMをMpar、及び、
前記入射光線がωinの最大角度光線であるときのMをMmaxとした場合、
Mpar<Mmax
で示される条件式を満足するように前記Mの値が分布する、
眼科装置の眼科撮影方法であって、
前記走査部による角度ωinの走査範囲を設定するステップと、
前記眼科光学系による被検眼側での角度ωoutによる前記Mの値の変化特性を入力するステップと、
前記Mの値の分布を示す変化特性に基づいて、前記受光部の受光結果に関するデータを補正し、前記走査部による角度ωinの走査範囲に対応する被検眼の像を形成するステップと
を含む眼科撮影方法である。
【0007】
前記眼科装置は、前記眼科光学系による被検眼側での角度ωoutによる前記Mの値の変化特性を記憶する記憶装置をさらに含み、
前記Mの値の変化特性を入力するステップは、前記記憶装置に記憶された前記Mの値の変化特性を用いることができる。
また、前記眼科光学系は、前記Mparから前記Mmaxの範囲でωinが大きくなるに従いMが大きくなるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】眼科装置の全体構成の一例を示す概略構成図。
図2】眼科装置に含まれる広角光学系の概略的な構成の一例を示す概念図。
図3】広角光学系としてのSLO用とOCT用との複合型の対物レンズ系の一例を示す構成図。
図4】角倍率を説明するための図。
図5】角倍率を説明するための図。
図6A】複合型の対物レンズ系の変形例の構成を示す概念図。
図6B】複合型の対物レンズ系の他の変形例の構成を示す概念図。
図7】対物レンズ系における走査光の入射角ωinと射出角ωoutを説明するための図。
図8】対物レンズ系のωinとωoutの関係の例を示す図。
図9】対物レンズ系のωoutとMの関係の例を示す図。
図10】スキャナから対物レンズ系を経て被検眼の瞳面に入射する最大画角の光束と近軸光束とを示す概念図。
図11】被検眼の瞳面における最小角度と最大角度の光束の断面形状の一例を示す図。
図12】対物レンズ系のωoutとPmax/Pminの関係の例を示す図。
図13】実施例1-1の対物レンズ系の構成を示す図。
図14】実施例1-1の対物レンズ系のωoutとMの関係を示す図。
図15】実施例1-1の対物レンズ系のωoutとPmax/Pminの関係を示す図。
図16】実施例1-2の対物レンズ系の構成を示す図。
図17】実施例1-2の対物レンズ系のωoutとMの関係を示す図。
図18】実施例1-2の対物レンズ系のωoutとPmax/Pminの関係を示す図。
図19】実施例2-1の対物レンズ系の構成を示す図。
図20】実施例2-1の対物レンズ系のωoutとMの関係を示す図。
図21】実施例2-1の対物レンズ系のωoutとPmax/Pminの関係を示す図。
図22】実施例2-2の対物レンズ系の構成を示す図。
図23】実施例2-2の対物レンズ系のωoutとMの関係を示す図。
図24】実施例2-2の対物レンズ系のωoutとPmax/Pminの関係を示す図。
図25】実施例3-1の対物レンズ系の構成を示す図。
図26】実施例3-1の対物レンズ系のωoutとMの関係を示す図。
図27】実施例3-1の対物レンズ系のωoutとPmax/Pminの関係を示す図である。
図28】実施例3-2の対物レンズ系の構成を示す図。
図29】実施例3-2の対物レンズ系のωoutとMの関係を示す図。
図30】実施例3-2の対物レンズ系のωoutとPmax/Pminの関係を示す図。
図31】実施例4-1の対物レンズ系の構成を示す図。
図32】実施例4-1の対物レンズ系のωoutとMの関係を示す図。
図33】実施例4-1の対物レンズ系のωoutとPmax/Pminの関係を示す図。
図34】実施例5-1の対物レンズ系の構成を示す図。
図35】実施例6-1の対物レンズ系の構成を示す図。
図36】実施例7-1の対物レンズ系の構成を示す図。
図37】実施例8-1の対物レンズ系の構成を示す図。
図38】実施例9-1の対物レンズ系の構成を示す図。
図39】実施例10-1の対物レンズ系の構成を示す図。
図40】実施例11-1の対物レンズ系の構成を示す図。
図41】撮影光学系の別の実施形態の構成を示す断面図。
図42】撮影光学系のさらに別の実施形態の構成を示す斜視図。
図43】画像処理装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。
【0010】
まず、図1を参照して、眼科装置110の構成の一例を説明する。眼科装置110は、撮影装置14及び制御装置16を含む。撮影装置14は、SLOユニット18及びOCTユニット20を備えており、被検眼12の眼底の眼底画像を取得する。以下、SLOユニット18により取得された画像をSLO画像と称する。また、OCTユニット20により取得された画像をOCT画像と称する。
【0011】
制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)16A、RAM(Random Access Memory)16B、ROM(Read-Only memory)16C、及び入出力(I/O)ポート16Dを備えたコンピュータによって実現される。
【0012】
制御装置16は、I/Oポート16Dを介してCPU16Aに接続された入力/表示装置16Eを備えている。入力/表示装置16Eは、被検眼12の画像を表示したり、ユーザから各種指示を受け付けたりするグラフィックユーザインターフェースを有する。グラフィックユーザインターフェースの一例としては、タッチパネル・ディスプレイが挙げられる。
【0013】
また、制御装置16は、I/Oポート16Dに接続された画像処理装置17を備えている。画像処理装置17は、撮影装置14によって得られたデータに基づき被検眼12の画像を生成する。なお、制御装置16は、不図示の通信インターフェースを介してネットワークに接続されるように構成してもよい。
【0014】
撮影装置14は、制御装置16の制御下で作動する。撮影装置14は、SLOユニット18、撮影光学系19、及びOCTユニット20を含む。撮影光学系19は、第1光学スキャナ22、第2光学スキャナ24、及び広角光学系30を含む。広角光学系30は、共通レンズ群28を有する対物レンズ系(図1では不図示)、及び合成部26を含む。
【0015】
第1光学スキャナ22は、SLOユニット18から射出された光をX方向、及びY方向に2次元走査する。第2光学スキャナ24は、OCTユニット20から射出された光をX方向、及びY方向に2次元走査する。第1光学スキャナ22及び第2光学スキャナ24は、光束を偏向できる光学素子であればよく、例えば、ポリゴンミラーや、ガルバノミラー等を用いることができる。また、それらの組み合わせであってもよい。
【0016】
なお、本明細書においては、眼科装置110が水平面に設置された場合の水平方向を「X方向」、水平面に対する垂直方向を「Y方向」とし、X方向とY方向の双方に垂直な方向を「Z方向」とする。
【0017】
撮影光学系19は、広角光学系30を備える。広角光学系30によって、眼底において広いFOV(Field of View:視野)12Aでの観察が実現される。FOV12Aは、撮影装置14によって撮影可能な範囲を示している。FOV12Aは、視野角として表現され得る。視野角は、本実施形態において、内部照射角と外部照射角とで規定され得る。外部照射角とは、眼科装置110から被検眼12へ照射される光束の照射角を、瞳孔27を基準として規定した照射角である。また、内部照射角とは、眼底へ照射される光束の照射角を、眼球中心Oを基準として規定した照射角である。外部照射角と内部照射角とは、対応関係にある。例えば、外部照射角が120度の場合、内部照射角は約160度に相当する。
【0018】
SLOシステムは、図1に示すように、制御装置16、SLOユニット18、及び撮影光学系19によって実現される。SLOシステムは、広角光学系30を備えるため、広いFOV12Aでの眼底撮影を可能とする。SLOユニット18は、光源18A、検出素子18B、及びビームスプリッタ18Cを含む。なお、検出素子18Bは、本開示の技術に係る受光部の一例である。光源18Aから射出された光は、ビームスプリッタ18Cを透過して撮影光学系19へ入射する。撮影光学系19に入射された光は、第1光学スキャナ22によってX方向及びY方向に走査される。走査光は広角光学系30及び瞳孔27を経由して、眼底に照射される。眼底により反射された反射光は、広角光学系30及び第1光学スキャナ22を経由してSLOユニット18へ入射される。SLOユニットに入射された反射光は、ビームスプリッタ18Cで反射されて、検出素子18Bで受光される。画像処理装置17は、検出素子18Bで検出された信号に基づいてSLO画像を生成する。
【0019】
OCTシステムは、図1に示すように、制御装置16、OCTユニット20、及び撮影光学系19によって実現される。OCTシステムは、広角光学系30を備えるため、広いFOV12Aでの眼底撮影を可能とする。OCTユニット20は、光源20A、検出素子20B、光カプラ20C、光カプラ20F、参照光学系20D、及びコリメートレンズ20Eを含む。なお、検出素子20Bは、本開示の技術に係る受光部の一例である。光源20Aから射出された光は、光カプラ20Cで分岐される。分岐された一方の光は、測定光として、コリメートレンズ20Eで平行光にされた後、撮影光学系19に入射される。測定光は、第2光学スキャナ24によってX方向及びY方向に走査される。走査光は広角光学系30及び瞳孔27を経由して、眼底に照射される。眼底により反射された測定光は、広角光学系30及び第2光学スキャナ24を経由してOCTユニット20へ入射される。光カプラ20Cで分岐された他方の光は、参照光として、参照光学系20Dへ入射される。参照光と、眼底で反射された測定光とは、光カプラ20Fで干渉して干渉光を生成する。干渉光は検出素子20Bで受光される。画像処理装置17は、検出素子20Bで検出された信号に基づいてOCT画像を生成する。なお、OCTの手法としては、SD-OCT(Spectral-Domain OCT)でもよく、SS-OCT(Swept-Source OCT)でもよい。
【0020】
<SLO用とOCT用との複合型対物レンズ系>
次に、図2を参照して、撮影光学系19が含む広角光学系30の構成を説明する。なお、以下では、SLOユニット18から射出して撮影光学系19へ入射する光を「SLO光」といい、OCTユニット20から射出して撮影光学系19へ入射する光を「OCT光」という。本実施形態では、撮影光学系19へ入射するSLO光及びOCT光はほぼ平行光となるように構成されている。
【0021】
図2は、撮影光学系19の概略的な構成の一例を示す概念図である。図2に示すように、広角光学系30は、SLO画像の取得に用いられるSLO用対物レンズ系31と、OCT画像の取得に用いられるOCT用対物レンズ系32とが合成部26により組み合わされた構成を有する。SLO用対物レンズ系31とOCT用対物レンズ系32とはそれぞれ、本開示の技術に係る眼科光学系の一例であり、本開示の技術に係る眼科用対物レンズの一例であり、本開示の技術に係る対物レンズの一例である。
【0022】
SLO用対物レンズ系31は、第1レンズ群G1と、第3レンズ群G3とで構成される。OCT用対物レンズ系32は、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3とで構成される。第1レンズ群G1はSLO専用レンズ群である。第2レンズ群G2はOCT専用レンズ群である。第3レンズ群G3は図1に示す共通レンズ群28の一例である。SLO用対物レンズ系31は合成部26を透過する光路を有し、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3との間に合成部26が配置されている。また、合成部26は、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間の光路に位置しており、OCT用対物レンズ系32は合成部26により光路が折り曲げられた屈曲型の光路を有する。すなわち、SLO用対物レンズ系31とOCT用対物レンズ系32とは、合成部26より被検眼側に、第3レンズ群G3を共通レンズ群28として有する。
【0023】
本実施形態では、SLO光とOCT光とは異なる波長の光を用いており、合成部26として、波長依存性を有するダイクロイックミラーを用いている。図2の合成部26は、被検眼側へ向かうSLO光の光路と被検眼側へ向かうOCTの光路とを合成する機能を有する。また、合成部26は、被検眼12に照射した光が被検眼12で反射される光については、SLO光に基づく反射光の光路と、OCT光に基づく反射光の光路とを分離し、SLO光に基づく反射光を第1レンズ群G1へ導き、OCT光に基づく反射光を第2レンズ群G2へ導く機能も有する。
【0024】
図2に示したように、ダイクロイックミラーのような光合成及び光分離機能を有する素子を用いて、SLO用対物レンズ系31とOCT用対物レンズ系32とにおいて、被検眼側のレンズ群を共通とすることによって、SLO用対物レンズ系31とOCT用対物レンズ系32とが複合された複合型の対物レンズ系を構成することができる。これにより、超広角の眼底画像及び超広角の眼底部分における網膜の断層画像を一つの装置で得ることが可能となる。
【0025】
なお、SLO光としては、可視光の1種の波長の光、または可視光の数種の波長の光を用いることができる。例えば、SLO光として、波長450nm、波長520nm、波長638nmの3種の光を用い、カラーのSLO画像を得ることができる。また、OCT光としては、波長800~1000nmの赤外光を用いることができる。SLO光とOCT光とで波長が異なるため、合成部26より被検眼側の第3レンズ群G3で発生した色収差を、第1レンズ群G1ではSLO光の波長に応じて補正し、第2レンズ群G2ではOCT光の波長に応じて補正するように、SLO用対物レンズ系31とOCT用対物レンズ系32とは構成されている。
【0026】
また、SLO用対物レンズ系31は、アフォーカル光学系であり、第1光学スキャナ22の位置(第1光学スキャナ22の走査中心の位置)と被検眼12の瞳位置とを共役関係にするように構成されている。OCT用対物レンズ系32もまた、アフォーカル光学系であり、第2光学スキャナ24の位置(第2光学スキャナ24の走査中心の位置)と被検眼12の瞳位置とを共役関係にするように構成されている。なお、本明細書において、「共役関係」とは、完全な共役関係に限定されず、製造上の誤差及び経時変化に伴う誤差等として予め許容された誤差を含む共役関係を意味する。また、本明細書において、「アフォーカル光学系」とは、完全なアフォーカル光学系に限定されず、製造上の誤差及び経時変化に伴う誤差等として予め許容された誤差を含むアフォーカル光学系を意味する。
【0027】
上記構成を有する撮影光学系19の動作について説明する。まず、SLO撮影に関する動作について説明する。SLOユニット18から撮影光学系19へ入射した平行光のSLO光は、ポリゴンミラーなどの第1光学スキャナ22によって角度走査される。角度走査された平行光のSLO光は、第1レンズ群G1、合成部26、第3レンズ群G3を順に透過して平行光のまま被検眼12の瞳面上に所定の倍率で投影され、被検眼12の瞳を走査中心として角度走査を行う。この平行光は被検眼12によって集光され、被検眼12の眼底においてはSLO光の集光スポットが、照射光として眼底を走査することになる。この照射光が眼底で反射されて得られた反射光は、被検眼12の瞳を通り、第3レンズ群G3、合成部26、第1レンズ群G1を順に透過して、第1光学スキャナ22を経て、SLOユニット18に入射する。反射光がSLOユニット18に入射した後の動作は、図1を参照した説明の通りである。
【0028】
OCT撮影に関する動作について説明する。OCTユニット20から撮影光学系19へ入射した平行光のOCT光は、ガルバノミラーミラーなどの第2光学スキャナ24によって角度走査される。角度走査された平行光のOCT光は、第2レンズ群G2を透過し、合成部26で反射された後、第3レンズ群G3を透過して平行光のまま被検眼12の瞳面上に所定の倍率で投影され、被検眼12の瞳を走査中心として角度走査を行う。この平行光は被検眼12によって集光され、被検眼12の眼底においてはOCT光の集光スポットが、照射光として眼底(網膜面)及び網膜の内部を走査することになる。このOCT光が眼底或いは網膜内部で反射されて得られた反射光は、被検眼12の瞳を通り、第3レンズ群G3を透過して、合成部26で反射され、第2レンズ群G2を透過して、第2光学スキャナ24を経て、OCTユニット20に入射する。反射光がOCTユニット20に入射した後の動作は、図1を参照した説明の通りである。なお、前述のとおり、OCT用対物レンズ系32もSLO用対物レンズ系31と同様にほぼアフォーカル系であるが、被検眼12の眼底などの断面情報の取得のために照射光のビーム径は比較的大きく、観察面において正確に集光させることが必要である。従って、観察面までの距離の変化や被検眼12の視度に応じて、平行光束を適宜収斂または発散させることが必要である。しかしこの場合においても対物レンズ系としてはアフォーカル系が基準となっている。
【0029】
図3に、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、及び第3レンズ群G3の具体的な構成の一例を示す。第1レンズ群G1は、一例として図示するように、第1光学スキャナ22側から被検眼側へ向かって順に、第1光学スキャナ22側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分(レンズL11とレンズL12との接合レンズ)、第1光学スキャナ22側に凹面を有する負レンズL13、被検眼側に凸面を有する正レンズL14、及び、正レンズL15を含む。より詳細には、負レンズL13の形状については、第1光学スキャナ22側のレンズ面の曲率半径の絶対値が被検眼側のレンズ面の曲率半径の絶対値より小さい。また、正レンズL14の形状については、被検眼側のレンズ面の曲率半径の絶対値が第1光学スキャナ22側のレンズ面の曲率半径の絶対値より小さい。なお、本明細書において「レンズ成分」とは、光軸上での空気との接触界面が2面であるレンズを意味し、1つのレンズ成分とは、1つの単レンズ、若しくは複数のレンズが接合されて構成された1組の接合レンズを意味する。第1レンズ群G1のメニスカス形状のレンズ成分は、図示したように接合レンズとした場合は色収差補正のために有効であるが、使用する光の波長域が比較的狭い場合には単レンズとすることができる。
【0030】
第2レンズ群G2は、一例として、第2光学スキャナ24側から被検眼側へ向かって順に、第2光学スキャナ24側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分(レンズL21とレンズL22との接合レンズ)、第2光学スキャナ24側に凹面を向けた負レンズL23、被検眼側に凸面を向けた正レンズL24、及び、正レンズL25を含む。より詳細には、負レンズL23の形状については、第2光学スキャナ24側のレンズ面の曲率半径の絶対値が被検眼側のレンズ面の曲率半径の絶対値より小さい。また、正レンズL24の形状については、被検眼側のレンズ面の曲率半径の絶対値が第2光学スキャナ24側のレンズ面の曲率半径の絶対値より小さい。第2レンズ群G2のメニスカス形状のレンズ成分は、図示したように接合レンズとした場合は色収差補正のために有効であるが、使用する光の波長域が比較的狭い場合には単レンズとすることができる。
【0031】
第3レンズ群G3は、合成部26と被検眼12との間に設けられ、SLO用とOCT用とに共通に用いられる共通レンズ群28である。第3レンズ群G3は、一例として、合成部26側から被検眼側へ向かって順に、被検眼側に凸面を向けた正レンズL31、被検眼側に凸面を向けた正レンズL32と負レンズL33とが接合されたレンズ成分、被検眼側に凸面を向けた正レンズL34と負レンズL35とが接合されたレンズ成分、及び、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL36を含む。この例の第3レンズ群G3は接合レンズを2つ含むが、色収差補正の状況に応じて接合レンズを1つのみ含む構成にすることも可能である。
【0032】
本実施形態では、共通レンズ群28を有する構成において、SLO用対物レンズ系31及びOCT用対物レンズ系32の近軸角倍率を好適に設定している。ここで、図4及び図5を参照しながら、近軸角倍率について説明する。
【0033】
図4及び図5に、k個の面からなるアフォーカル光学系40を例示する。図4及び図5において、図の左側が物体側、右側が像側である。アフォーカル光学系40に入射した平行光束は、アフォーカル光学系40通過後も平行光束として射出する。しかし、入射した平行光束がアフォーカル光学系40の物体側で光軸AXとなす角(入射角ωという)と、射出した平行光束がアフォーカル光学系40の像側で光軸AXとなす角(射出角ωkという)とは一般に異なる。
【0034】
図5に示すように、k個の面からなるアフォーカル光学系40の第1面401から物体側にs1の距離にある軸上物点から出た任意の近軸光線が、アフォーカル光学系40を通過した後、最終面の第k面40kから像側にsk’のところで光軸と交わったとする。この近軸光線が第1面401と第k面40kと交わる高さをそれぞれh1、hkとし、物体側及び像側で光軸となす角をそれぞれu1、uk’とし、物体の大きさとそれに対応する像の大きさをそれぞれy1,yk’とする。説明を簡単にするため、アフォーカル光学系前後の媒質の屈折率は1であるとする。Helmholtz-Lagrange不変式により、
u1・y1=uk’・yk’
であり、u1=h1/s1、uk’=hk/sk’により
h1・(y1/s1)=hk・(yk’/sk’)
であり、ここで
ω≡y1/s1、
ωk≡yk’/sk’
とし、s1→-∞とするとsk’→∞となる。このとき、Mparを以下のように定義する。
Mpar≡ωk/ω=(h1/hk)s1→-∞
Mparは近軸領域における角倍率であり、すなわち近軸角倍率である。上記説明より明らかなように、光軸に平行な近軸光線をアフォーカル光学系に入射させると、その近軸光線はアフォーカル光学系を通過後も光軸に平行であり、その場合の物体側の近軸光線と像側の近軸光線との光軸からの高さの比h1/hkをとれば、アフォーカル光学系の近軸角倍率になる。つまり、近軸角倍率Mparは、入射角ωに無関係な光学系の常数である。なお、光学分野では周知のように、横倍率は角倍率の逆数であるから、近軸横倍率をβparとすると、
βpar=1/Mpar
である。
【0035】
ここで、M1を第1光学スキャナ22と被検眼12の瞳とを共役関係にする光学系の近軸角倍率とし、M2を第2光学スキャナ24と被検眼12の瞳とを共役関係にする光学系の近軸角倍率とする。すなわち、図2に示す構成において、M1を第1光学スキャナ22から被検眼12へのSLO用対物レンズ系31の近軸角倍率とし、M2を第2光学スキャナ24から被検眼12へのOCT用対物レンズ系32の近軸角倍率とした場合、下記条件式(1)を満足するように構成する。
|M1|<|M2| (1)
【0036】
このような構成により、超広角視野(Ultra-Wide field。以下、UWFという)でのSLO撮影が可能になると共に、超高画角のすべての領域でのOCT撮影が可能となる。眼科装置の使用法の一例では、最初に、SLO撮影によって被検眼12の撮影可能領域12A全体と同程度の広範囲の画像をSLO光による0.5秒以下での高速走査により撮影した後、OCT光によるOCT撮影によって病変部等の狭小な範囲を撮影して断面形状の情報を得る。このような使用法ではSLO撮影用の第1光学スキャナ22のX方向走査とY方向走査の少なくとも一方には速い走査速度が求められるが、OCT撮影用の第2光学スキャナ24にはそれほど速い走査速度は求められない。したがって、具体的には例えば、SLO撮影用の第1光学スキャナ22のX方向走査とY方向走査の少なくとも一方にはポリゴンミラーを用い、OCT撮影用の第2光学スキャナ24にガルバノミラーを用いるのが実用的である。SLO用の第1光学スキャナ22としてポリゴンミラーを用いた走査方向におけるSLO光を走査可能な最大走査角をθ1とし、第2光学スキャナ24がOCT光を走査可能な最大走査角をθ2とすると、上記事情から、SLO用の第1光学スキャナ22の最大走査角θ1より、OCT用の第2光学スキャナ24の最大走査角θ2の方が小さくなり、θ2<θ1となる。すなわち、第1光学スキャナ22の走査角範囲より、第2光学スキャナ24の走査角範囲の方が小さくなる。
【0037】
一方、撮影可能領域を考えると、OCT撮影で撮影される領域は狭いものの、病変部等が発生する領域は特定できないため、SLO撮影によって撮影された領域のいずれの箇所においてもOCT撮影が可能であることが望まれる。つまり、OCT撮影が可能な領域はSLO撮影が可能な領域と同じであることが望まれる。換言すれば、SLO撮影で可能な外部照射角をΘ1とし、OCT撮影で可能な外部照射角をΘ2とした場合、Θ1=Θ2であることが望まれる。
【0038】
上記条件式(1)を満足することによって、SLO撮影とOCT撮影で走査角の異なるスキャナを用い、θ2<θ1となる場合でも、Θ1=Θ2にすることができる。
【0039】
より具体的には、SLO対物レンズ系31の近軸角倍率M1の範囲は下記条件式(2)を満足するように設定することが好ましい。また、OCT対物レンズ系32の近軸角倍率M2の範囲は下記条件式(3)を満足するように設定することが好ましい。
1.5<|M1|<3.5 (2)
2.5<|M2|<5 (3)
【0040】
条件式(2)及び(3)を満足する構成は、外部照射角が100度より広角となる場合に有効である。また、条件式(2)及び(3)を満足する構成は、外部照射角が120度より広角となるUWFと呼ばれる超広角の光束走査により、180度程度或いはそれを超える内部照射角を必要とする場合にさらに有効である。
【0041】
また、上述したように近軸横倍率は近軸角倍率の逆数であるので、第1光学スキャナ22から被検眼12へのSLO用対物レンズ系31の近軸横倍率をβ1、第2光学スキャナ24から被検眼12へのOCT用対物レンズ系32の近軸横倍率をβ2とすると、下記条件式(4)を満足する。なお、ここでいうβ1とは、第1光学スキャナ22の走査中心を物点とし、被検眼12の瞳位置を像点とした場合の、SLO用対物レンズ系31の近軸横倍率であり、β2とは、第2光学スキャナ24の走査中心を物点とし、被検眼12の瞳位置を像点とした場合の、OCT用対物レンズ系32の近軸横倍率である。
|β2|<|β1| (4)
【0042】
また、近軸横倍率は、光軸に平行な平行光束が対物レンズ系に入射して射出する場合の、入射光束の径と射出光束の径との比として考えることができる。光軸に平行なSLO光及びOCT光の平行光束が対物レンズ系に入射した場合、SLO光についての入射光束の径をφin(SLO)、射出光束の径をφout(SLO)とし、同様にOCT光についての入射光束の径をφin(OCT)、射出光束の径をφout(OCT)とすると、
β1=φout(SLO)/φin(SLO)
β2=φout(OCT)/φin(OCT)
と表される。したがって、光軸に平行な平行光束が対物レンズ系に入射した場合の対物レンズ系による光束径の変化は、条件式(4)から、OCT用対物レンズ系32の方がSLO用対物レンズ系31より小さくなるように構成されていることがわかる。
【0043】
より具体的には、β1の範囲は下記条件式(5)を満足するように設定することが好ましい。また、β2の範囲は下記条件式(6)を満足するように設定することが好ましい。
0.25<|β1|<0.7 (5)
0.2<|β2|<0.4 (6)
【0044】
条件式(5)及び(6)を満足する構成は、外部照射角が100度より広角となる場合に有効である。また、条件式(5)及び(6)を満足する構成は、外部照射角が120度より広角となるUWFと呼ばれる超広角の光束走査により、180度程度或いはそれを超える内部照射角を必要とする場合にさらに有効である。なお、条件式(5)については、下限値を0.28とし、上限値を0.67とすることがより好ましい。
【0045】
なお、上述した眼科装置の一般的な使用法において、最初のSLO撮影ではX方向走査とY方向走査の少なくとも一方においてポリゴンミラーなどの高速走査が求められる。これに対して、OCT撮影においては、走査領域が相対的に狭く、走査速度もSLO撮影で要求されるほどの高速は要求されない。したがって、X方向走査とY方向走査の少なくとも一方において、第2光学スキャナ24がOCT光を走査する走査速度は、第1光学スキャナ22がSLO光を走査する走査速度より遅くなるように構成される。なお、ここで言う走査速度とは、単位面積当たりの走査時間を意味する。SLO撮影ではUWFとしての超広角の眼底撮影領域全体を高速に走査することが必要であり、SLO用の第1光学スキャナ22の最大走査角は眼底撮影領域により決定される。一方、OCT撮影では、断面計測が必要な限られた部分領域を走査することになるが、SLO撮影と同様の超広角の眼底領域全体に対して、部分領域毎ではあるが計測できるように、OCT用の第2光学スキャナ24の最大走査角度が上記の条件式の関係において構成されることが好ましい。
【0046】
上記のように走査速度が設定された撮影光学系19においても、上記条件式(1)を満足するように構成することが好ましい。また、条件式(2)及び(3)の少なくとも一方を満足するように設定することが好ましい。同様に、上記のように走査速度が設定された撮影光学系19において、上記条件式(4)を満足するように構成することが好ましい。また、条件式(5)及び(6)の少なくとも一方を満足するように設定することが好ましい。
【0047】
なお、上記条件式(2)、(3)、(5)、(6)に係る構成は、広角光学系30がSLOとOCTとの複合型の対物レンズ系を有する場合に限定されず、SLO用対物レンズ系31とOCT用対物レンズ系32とが個別に構成された場合にも有効である。従って、UWF用対物レンズとしては、上記条件式(2)、(3)で示す条件により、近軸角倍率が1.5より大きいことが好ましく、また、実用上からは1.8より大きいことが有利である。
【0048】
以上のような構成において、共通レンズ群28としての第3レンズ群G3は、SLO用対物レンズとして、またOCT用対物レンズとしての基本的機能である、被検眼12の瞳とスキャナとの共役関係を形成する略アフォーカル系であるための瞳収差を主に補正している。そして、第1レンズ群G1は第3レンズ群G3との併用によって、SLO用対物レンズ系31として必要な上記倍率関係の確保と色収差補正の機能とを実現している。また、第2レンズ群G2は第3レンズ群G3との併用によって、OCT用対物レンズ系32として必要な上記倍率関係の確保と色収差補正の機能とを実現している。このようなレンズ構成は、外部照射角が120度を超える超広角対物レンズ系として好適であるが、より画角が小さい場合には、各レンズの構成をより簡単なレンズ構成とすることが可能であることは言うまでもない。
【0049】
なお、図2の構成ではSLO用対物レンズ系31とOCT用対物レンズ系32ともに合成部26よりスキャナ側(すなわち光源側)にレンズ群を有しているが、共通レンズ群28を適宜設計することにより、SLO用対物レンズ系31とOCT用対物レンズ系32のいずれか一方が合成部26より光源側即ちスキャナ側にレンズ群を有しない構成とすることも可能である。図6A、及び図6Bにそれぞれ、複合型の対物レンズ系の第1の変形例、第2の変形例の概念図を示す。
【0050】
図6Aに示した構成では、図2の構成と比較すると、SLO用の第1光学スキャナ22と合成部26との間にレンズ群は配置されておらず、図2の第3レンズ群G3が第3レンズ群G3-1に変更され、図2の第2レンズ群G2が第2レンズ群G2-1に変更されている。図6Aの構成では、第3レンズ群G3-1が共通レンズ群28に対応するとともに、SLO用対物レンズ系31は第3レンズ群G3-1のみから構成され、OCT用対物レンズ系32は第2レンズ群G2-1及び第3レンズ群G3-1から構成される。この構成では、第3レンズ群G3-1は、SLO用の可視光域での収差補正がなされている。そして、OCT用対物レンズ系32中の第2レンズ群G2-1は、第3レンズ群G3-1との合成系において、OCT用の赤外域での収差補正のためのレンズ構成とすることが必要であり、基本的には負の屈折力を有する構成とすることが好ましい。そして、この変形例においても上述した事情を鑑みた場合は、SLO用の第1光学スキャナ22の最大走査角θ1より、OCT用の第2光学スキャナ24の最大走査角θ2の方が小さくなり、θ2<θ1となる。
【0051】
また、図6Bに示した構成では、図2の構成と比較すると、第2光学スキャナ24と合成部26の間にレンズ群は配置されておらず、図2の第3レンズ群G3が第3レンズ群G3-2に変更され、図2の第1レンズ群G1が第1レンズ群G1-1に変更されている。図6Bの構成では、第3レンズ群G3-2が共通レンズ群28に対応するとともに、SLO用対物レンズ系31は第1レンズ群G1-1及び第3レンズ群G3-2から構成され、OCT用対物レンズ系32は第3レンズ群G3-2のみから構成される。この構成では、第3レンズ群G3-2は、OCT用の赤外光域での収差補正がなされている。そして、SLO用対物レンズ系31中の第1レンズ群G1-1は、第3レンズ群G3-2との合成系において、SLO用の可視光域での収差補正のためのレンズ構成とすることが必要であり、基本的には正の屈折力を有する構成とすることが好ましい。そして、この変形例においても上述した事情を鑑みた場合は、SLO用の第1光学スキャナ22の最大走査角θ1より、OCT用の第2光学スキャナ24の最大走査角θ2の方が小さくなり、θ2<θ1となる。
【0052】
なお、図2図6A及び図6Bの光路の形状は一例である。本開示の技術においては、異なる形状の光路を採用することも可能である。例えば、合成部26の波長特性を適宜設定することにより、SLO用対物レンズ系31の光路を屈曲型としOCT用対物レンズ系32の光路を直線状とした構成も可能である。
【0053】
<SLO用またはOCT用の対物レンズ系>
次に、撮影光学系19で用いられる対物レンズ系について説明する。なお、以下に述べる実施形態は、広角光学系30が図2図6A、及び図6Bに示した複合型の対物レンズ系を有する場合に限定されず、SLO用対物レンズ系31とOCT用対物レンズ系32とがそれぞれ個別に構成された場合にも適用可能である。なお、以下では、説明の便宜上、SLO用対物レンズ系31とOCT用対物レンズ系32とを区別して説明する必要がない場合は、単に「対物レンズ系」と称する。また、第1光学スキャナ22と第2光学スキャナ24とを区別して説明する必要がない場合は、単に「スキャナ」と称する。
【0054】
上述した共通レンズ群28を有するSLO用対物レンズ系とOCT用対物レンズ系は、それぞれ独立に設計されている。以下の実施形態では、SLO用対物レンズ系31及びOCT用対物レンズ系32のそれぞれにおいて、角倍率の角度分布について好適に設計されている。ここで、角倍率の角度分布について説明する。
【0055】
図7に、一例として、対物レンズ系300の図を示す。対物レンズ系300は、レンズL1~L11の11枚のレンズを含む屈折光学系である。また、対物レンズ系300は、基本的にはアフォーカル光学系である。図7にはスキャナが有する1つの反射面が位置する走査中心位置Psと、被検眼12の瞳面Ppも示す。スキャナの走査中心位置Psと、瞳面Ppの位置とは、対物レンズ系300によって光学的に共役関係となるように構成される。スキャナから対物レンズ系300に入射する光束は略平行光である。図7には、スキャナにより走査され、対物レンズ系300を通過して瞳面Ppに入射する最大画角の光束の状態を示す。
【0056】
図7に示すように、スキャナ側から対物レンズ系300へ入射する入射光線44iと対物レンズ系300の光軸AXとのなす角をωinとし、対物レンズ系300から被検眼側へ射出される射出光線44oと光軸AXとのなす角をωoutとする。そして、M=|ωout/ωin|と定義する。入射光線44iが近軸光線のときのMをMparとし、入射光線44iが最大画角の光線のときのMをMmaxとした場合、下記条件式(7)を満足するように構成する。
Mpar<Mmax (7)
【0057】
条件式(7)は、最大画角の光線についてのMが近軸領域での角倍率よりも大きいことを意味している。条件式(7)を満足することによって、角倍率の角度分布が周辺光線の射出角の増大に伴ってより大きくなるような収差構造を有することが容易となる。このような角倍率分布の構成とすることによって、スキャナによる最大走査角においてより大きな角度とすることができ、対物レンズ系として一層大きな角度の外部照射角を得ることが容易となり、撮影光学系19の眼底における視野角を眼底中心から眼底周辺までの広範囲の眼底領域を観察可能な角度とすることが可能となる。
【0058】
さらに、下記条件式(8)を満足することが好ましい。
1.1×Mpar<Mmax (8)
ωoutは対物レンズ系300から被検眼12へ入射する光線の角度である。条件式(8)を満足することによって、対物レンズ系300から被検眼12へ入射する光線の角度ωoutを効率的に拡大することができ、大きな外部照射角を得ることが容易となる。
【0059】
また、下記条件式(9)を満足することが好ましい。
Mmax<2×Mpar (9)
条件式(9)を満足することによって、ωinが小さいときの眼科装置の分解能と、ωinが最大のときの眼科装置の分解能との差が許容範囲内になるよう構成することが容易となる。なお、UWF用の眼科装置の構成としては、条件式(8)及び条件式(9)を同時に満足することが好ましい。
【0060】
また、下記条件式(10)及び(11)を満足することも好ましい。
1<Mpar (10)
1<Mmax (11)
条件式(10)及び(11)を満足することによって、大きな外部照射角を得ることが容易となる。さらにMmaxについては、下記条件式(11A)を満足することがより好ましい。なお、条件式(11A)については、下限値を2.5とし、上限値を3とすることがさらにより好ましい。
2<Mmax<5 (11A)
【0061】
なお、走査される被検眼12の領域の観点から上記条件式(7)について考えると、被検眼12の光軸AXとの交点を含む中心部におけるMをMc、被検眼12の周辺部におけるMをMpとした場合、下記条件式(7A)を満足することが好ましい。
Mc<Mp (7A)
MparとMcとは近似した値となる。また、最大画角の光線が被検眼12の周辺部に到達する場合は、MmaxとMpとは同じ値となる。条件式(7A)を満足することによって、条件式(7)を満足した場合と同様の効果を得ることができる。
【0062】
図8に、本実施形態の一例に係る対物レンズ系のωinとωoutの関係を実線で例示する。図8のグラフの横軸はωinであり、縦軸はωoutである。スキャナとして、ガルバノミラーやポリゴンミラーを用いるが、装置の大型化、及び高コスト化を防ぐために、なるべくωinは小さい値にしたまま、ωoutの最大化を実現したいという要望がある。そのため、この例では、ωinとωoutの比であるMを一定としていない。なお、図8では、比較のために、全画角でMが一定値をとる比較例についてのωinとωoutの関係を破線で示す。比較例のMの値は直線となるが、本実施形態の一例では入射角ωinが大きくなるにしたがって射出角ωoutが急激に大きくなっている。
【0063】
また、図9のグラフには、本実施形態の一例に係る対物レンズ系のωoutとMの関係を例示する。図9の横軸はωoutであり、縦軸はMである。図8及び図9に示す例は上記条件式(7)~(11)を満足している。また、この例は、ωinが大きくなるに従いMが大きくなる範囲をMparからMmaxの間に有している。なお、MparからMmaxの全範囲においてωinが大きくなるに従いMが大きくなる構成とすることがより好ましい。
【0064】
上述のような角倍率の角度分布は、図7に例示した対物レンズ系に限らず、100度程度以上の外部照射角を維持する対物レンズ系において好適な構成である。そして、条件式(2)、(3)で示す条件に関連して上述した通り、UWF用対物レンズとしては、近軸角倍率が1.5より大きいことが好ましく、さらに近軸角倍率Mparに関する条件式1.5<Mpar<5.0を満たすことが好ましい。そして、実用的には近軸角倍率の下限値は1.8より大きいことが有利である。また、上限値は4.0よりも小さいことが、UWFとしての走査手段の走査角を大きくし過ぎないために有利である。
【0065】
次に、広角光学系30により被検眼12の瞳面上に照射される光の光束径について考察する。眼科装置においては、走査角であるωinが変化しても、被検眼12の瞳面では、光束径は所望の値以下であることが好ましい。仮に、光束径が所望の値を超えると被検眼12の瞳に入らないという問題が発生する。また、周辺光束、すなわちωinが大きな光束は、対物レンズ系300のレンズの周辺部を通過するため対物レンズ系300の収差の影響が大きく現れやすく、被検眼12の瞳上でメリディオナル方向に変動してウォブリングを生じてしまう。
【0066】
そこで、本実施形態では、対物レンズ系300から被検眼12へ射出される射出光束と対物レンズ系300の光軸AXとのなす角の最大値をωmaxとし、射出光束と光軸AXとのなす角がωmaxのときの被検眼12の瞳面Ppの位置における射出光束のメリディオナル方向の光束径をPmaxとし、射出光束と光軸AXとのなす角が最小のときの被検眼12の瞳面Ppの位置における射出光束のメリディオナル方向の光束径をPminとした場合、下記条件式(12)を満足するように構成している。
Pmax<Pmin×0.7/(cos(ωmax)) (12)
条件式(12)を満足することによって、被検眼12の瞳上でメリディオナル方向の光束径が小さくなるようにし、被検眼12の瞳内に光束が入りやすい構成にすることができる。
【0067】
図10に、スキャナの反射面22Aから射出して対物レンズ系300を通り瞳面Ppに入射する光束の概念図を示す。図10では、YZ平面を示し、光軸AXの方向をZ方向とし、スキャナの反射面22Aによる走査方向をY方向としている。すなわち、図10に示す構成では、メリディオナル方向はY方向となる。また、図10では、射出光束と光軸AXとのなす角が最大角度ωmaxのときの光束を破線で示し、射出光束と光軸AXとのなす角が最小のときの光束を二点鎖線で示している。図7に関する説明で前述したように、スキャナの走査中心位置Psと、瞳面Ppの位置とは、近軸領域において、対物レンズ系300によって光学的に共役関係となるように構成されている。図7では瞳位置を光軸AXに垂直な面、即ち瞳面Ppの位置として示している。よって、光軸AX上に配置された反射面22Aで反射される走査光束は、対物レンズ系300を経由し、瞳面Ppで交差する。図10の構成においては、二点鎖線で示す光軸に略平行な光束の瞳面Pp上におけるメリディオナル方向の断面径がPminとなる。また、破線で示す対物レンズ系300からの最大角度ωmaxの光束については、瞳面Pp上にてメリディオナル方向の断面径がPmaxとなる。
【0068】
図10で破線及び二点鎖線で示した2つの光束の、被検眼12の瞳面における形状を、図11に模式的に示す。図11では、XY平面を示し、Y方向を紙面上下方向としている。図11では、被検眼12の瞳12Bの形状を実線で示し、射出光束と光軸AXとのなす角が最大角度ωmaxのときの光束の形状を破線で示し、射出光束と光軸AXとのなす角が最小のときの光束の形状を二点鎖線で示す。二点鎖線で示す光束の形状は略円形であるが、破線で示す光束の形状はY方向、すなわちメリディオナル方向に縮小された形状になっている。このような形状とすることによって、ウォブリングがある場合でも対物レンズ系300からの射出光束を被検眼12の瞳12Bへ入射させることが容易となる。なお、図11では、説明のためにY方向に光束が角度走査されることとして説明したが、実際の光束は瞳面Ppの軸上位置を中心としてXYの二次元方向に角度走査される。このため、11図に示したY方向は必ずしもスキャナによる走査方向に一致することにはならないのであり、上記光束の径についてはメリディオナル方向の径である。
【0069】
被検眼12の瞳12Bに効率的に光束が入射するように、さらに、下記条件式(13)を満足することが好ましい。
Pmax<Pmin (13)
条件式(13)を満足しない場合は、設計及び製造において、射出光束と光軸AXとのなす角がωmaxのときの光束の瞳上での位置を管理する必要があり、製造難易度があがってしまう。
【0070】
また、下記条件式(14)を満足することが好ましい。
0.2×Pmin<Pmax (14)
条件式(14)を満足しない場合は、網膜上の光束径の変化が顕著になりすぎてしまう。なお、眼科装置の構成としては、条件式(13)及び条件式(14)を同時に満足することが好ましい。
【0071】
図12に、本実施形態の一例に係る対物レンズ系についてのωoutとPmax/Pminの関係を実線で例示する。図12の横軸はこの対物レンズ系を通り瞳面Ppに入射する光束が光軸AXとなす角度ωoutであり、縦軸はPmax/Pminである。本実施形態と異なり、光束径の考慮がなされていない系では、被検眼12の瞳12B上のメリディオナル方向の光束径は1/cos(ωout)の関係になるはずである。図12では、このような光束径の考慮がなされていない系の特性を比較例として破線で示す。
【0072】
図12に例示するように、ωoutの最大角度72度のとき、破線で示す比較例は320%になる。これに対し、実線で示す本実施形態では対物レンズ系を好適に設計することによってPmax/Pminが1以下になるようにしており、約64%となっている。
【0073】
次に、図13を参照しながら、本実施形態に係る対物レンズ系の構成について説明する。なお、本明細書のレンズ系の構成の説明における「~は、~からなり」は、構成要素としてレンズのみを考えた場合の意味で用いており、レンズ以外のもの(例えば、フィルタやプリズム等の屈折力を有しない光学部材、絞り等)は考慮の対象外としている。すなわち、本明細書において「対物レンズ系は、前群と、後群とからなり」は、対物レンズ系を構成するレンズ群は前群と後群のみであるが、対物レンズ系はその他にレンズ以外のものを含んで構成されていてもよいことを意味する。
【0074】
図13は、本実施形態に係る対物レンズ系の構成を示す図であり、後述の実施例1-1の構成を示す図でもある。なお、ここでは全体的な構成と群構成について主に説明し、個々のレンズの詳細な構成については後述の実施例の項で説明する。図13に示す対物レンズ系311は、スキャナ側から順に、第1レンズ群G1、及び第3レンズ群G3を含む。第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは対物レンズ系311内で最大の空気間隔によって隔てられている。第3レンズ群G3は共通レンズ群28の一例である。この最大の空気間隔はダイクロイックミラーなどの光合成及び光分離機能を有する合成部26を設けるために好都合であり、SLO用とOCT用との複合型の対物レンズ系を構成することが可能である。
【0075】
上記の最大の空気間隔によって群分けをすることにより、対物レンズ系311は、正の屈折力を有する前群GFと、前群GFの被検眼側に配置された正の屈折力を有する後群GRとからなり、前群GFと後群GRとは対物レンズ系311におけるレンズ面間の光軸上での最大の空気間隔によって隔てられていると考えることができる。図13の例では、第1レンズ群G1が前群GFに対応し、第3レンズ群G3が後群GRに対応する。図3の第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とから構成されるOCT用対物レンズ系32の例では、第2レンズ群G2が前群GFに対応し、第3レンズ群G3が後群GRに対応する。なお、対物レンズ系311におけるレンズ面間の光軸上での最大の空気間隔が2つ以上ある場合は、最も被検眼側の最大の空気間隔によって前群GFと後群GRとを分けることにする。
【0076】
前群GFは、光源側から入射した光線の傾き角を小さい角度に変換して後群GRへ伝送する機能を有する。図13に示すように、最大画角の光線45の光軸AXに対する角度は、前群GFへ入射するときの角度よりも前群GFから射出されるときの角度の方が小さい。一方、後群GRから被検眼側へ射出される光線の光軸AXに対する角度は非常に大きく、結果として、UWF用対物レンズとして好適なものとなっている。
【0077】
上記のように光源からの光を被検眼に導くための光学系として好適な本実施形態に係る対物レンズ系は、対物レンズ系の最も光源側のレンズ面から対物レンズ系の最も被検眼側のレンズ面までの光軸上の幾何学的距離をTLとし、対物レンズ系の焦点距離をfとした場合、下記条件式(15)を満足するように構成される。TLはいわゆるレンズ全長に相当する。条件式(15)は、アフォーカル光学系である対物レンズ系が満足する1つの条件である。アフォーカル光学系の条件を満足することにより、被検眼へ略平行な光束を入射させることができる。これにより、被検眼の形状やサイズ等の個体差による影響を抑えながら被検眼を良好に観察することが可能となる。
-1<TL/f<1 (15)
【0078】
さらに、本実施形態に係る対物レンズ系は、前群GFの焦点距離をfFとし、後群GRの焦点距離をfRとした場合、UWF用対物レンズとして、下記条件式(16)を満足することが好ましい。
1<fF/fR<4 (16)
前群GFと後群GRとの間の光線が光軸AXとほぼ平行の場合は、fF/fRは近軸角倍率Mparとほぼ同義となる。条件式(16)と合わせて前述のMmaxに関する条件式を満足することにより、大きな外部照射角を得ることができる。なお、UWF用対物レンズとしては、fF/fRが1.5より大きいことがより好ましい。
【0079】
また、本実施形態に係る対物レンズ系は、前群GFと後群GRとを隔てている光軸上での最大の空気間隔をDとし、対物レンズ系の最も光源側のレンズ面から対物レンズ系の最も被検眼側のレンズ面までの光軸上の幾何学的距離をTLとした場合、下記条件式(17)を満足することが好ましい。
0.1<D/TL<0.5 (17)
条件式(17)の下限を満足しない場合は、所定のレンズ全長内のレンズ密度が高くなり、重量化してしまう。条件式(17)の上限を満足しない場合は、収差補正に必要なレンズ成分を所定のレンズ全長内に収めることができなくなる。
【0080】
より詳しくは、後群GRは、正の屈折力を有するA群GRAと、A群GRAの被検眼側に配置された正の屈折力を有するB群GRBとからなる。A群GRAは、接合レンズ全体として正の屈折力を有する少なくとも1つの接合レンズを含み、A群GRAの最も被検眼側のレンズの被検眼側のレンズ面は凸面もしくは平面である。B群GRBは被検眼側に凹面を向けた1つもしくは複数の正メニスカス形状のレンズ成分からなる。B群GRBをこのように構成することにより、光線収差を良好に補正することができる。
【0081】
B群GRBの焦点距離をfBとし、後群GRの焦点距離をfRとした場合、下記条件式(18)を満足することが好ましい。
0.4<fB/fR<2.5 (18)
条件式(18)の下限を満足しない場合は、色収差や高次収差の補正が困難になる。条件式(18)の上限を満足しない場合は、レンズ系全体が大型化・重量化してしまう。なお、条件式(18)については、下限値を0.5とし、上限値を1.75とすることがより好ましく、さらには下限値を0.8とし、上限値を1.1とすることがさらにより好ましい。
【0082】
また、A群GRAに含まれる接合レンズを構成する正レンズの焦点距離をfApとし、後群GRの焦点距離をfRとした場合、A群GRAに含まれる全ての接合レンズ内の全ての正レンズが下記条件式(19)を満足することが好ましい。
0.9<fAp/fR<3.7 (19)
条件式(19)の下限を満足しない場合は、硝材の体積が増加し、高コスト化かつ重量化してしまう。条件式(19)の上限を満足しない場合は、色収差の補正が不十分となる。なお、条件式(19)については、下限値を1.7とし、上限値を3とすることがより好ましい。
【0083】
前群GFは、負屈折力のレンズ面と、このレンズ面の被検眼側に配置された正屈折力のレンズ面を有することが好ましい。この構成により、広画角側の高次の光線収差、特に像面湾曲及びコマ収差、をより良好に補正することができる。
【0084】
一例として、前群GFが被検眼側に凸面を向けた正メニスカスレンズを有する場合は、この正メニスカスレンズのスキャナ側の凹面が上記の負屈折力のレンズ面となり、この正メニスカスレンズの被検眼側の凸面が正屈折力のレンズ面となるので、広画角側の高次の光線収差を補正することができる。
【0085】
また、前群GFがスキャナ側に凸面を向けたメニスカスレンズを有する場合、このメニスカスレンズの被検眼側にさらに負レンズと正レンズとを有することが好ましい。この構成により、広画角側の高次の光線収差の補正という効果に加え、硝材の選択次第で倍率色収差の補正も可能となる。倍率色収差の補正の必要が無い場合は、広画角の高次の光線収差をより精度良く補正することも可能となる。
【0086】
さらに、前群GFは、負レンズと、この負レンズの被検眼側に配置された正レンズとを有し、これら負レンズと正レンズとの間に負屈折力の空気レンズを形成することが好ましい。この構成により、広画角側の高次の光線収差、特に像面湾曲及びコマ収差、を補正することができる。また、上記の空気レンズを形成する構成において、上記負レンズと上記正レンズとは互いに凹面を対向させて配置されていることが好ましい。この構成により、広画角側の高次の光線収差、特に像面湾曲及びコマ収差、を補正することができる。また、上記の空気レンズを形成する構成において、空気レンズを構成する上記負レンズのスキャナ側には、被検眼側に凹面を向けたメニスカスレンズをさらに有し、空気レンズを構成する上記正レンズの被検眼側には、正レンズをさらに有することが好ましい。この構成により、広画角側の高次の光線収差の補正という効果に加え、硝材の選択次第で倍率色収差の補正も可能となる。倍率色収差の補正の必要が無い場合は、広画角の高次の光線収差をより精度良く補正することも可能となる。
【0087】
後群GRのA群GRAは、接合レンズを1つ以上有することが好ましい。この構成により、軸上色収差と瞳の色収差を補正することができる。A群GRAは、接合レンズを2つ以上有することが好ましい。この構成により、軸上色収差と瞳の色収差をより精度良く補正することができる。
【0088】
後群GRのB群GRBは、1つ以上の正メニスカス形状の単レンズを有することが好ましい。このレンズにより、最も被検眼側の広画角光線をアプラナティックに受け、高次の光線収差、特に像面湾曲及びコマ収差、を発生させないように曲げることができる。単レンズとすることにより、接合面による余計な光線収差を発生することがない。この効果を高めるためには、B群GRBは、1つまたは複数の正メニスカス形状の単レンズのみで構成されていることが好ましい。
【0089】
図13に示す対物レンズ系311は、複数の上記の好ましい構成を備えており、最大画角の光線45が対物レンズ系311から被検眼側へ射出される際の射出光線と対物レンズ系の光軸AXとのなす角は、50度以上となっている。このことは、対物レンズ系311が広画角の眼底用光学系であることを意味する。
【0090】
<好適な実施例の説明>
次に、本開示の技術の対物レンズ系の数値実施例について説明する。以下に述べる実施例のうち、実施例1-1、実施例2-1、実施例3-1、実施例4-1、実施例5-1、実施例6-1、実施例7-1、実施例8-1、実施例9-1、実施例10-1、及び実施例11-1は、SLO用対物レンズ系の実施例であり、実施例1-2、実施例2-2、及び実施例3-2は、OCT用対物レンズ系の実施例である。また、実施例1-1と実施例1-2とは共通レンズ群を有し、実施例1-1と実施例1-2とによって、複合型の対物レンズ系の実施例1を構成することができる。同様に、実施例2-1と実施例2-2とは共通レンズ群を有し、実施例2-1と実施例2-2とによって、複合型の対物レンズ系の実施例2を構成することができる。同様に、実施例3-1と実施例3-2とは共通レンズ群を有し、実施例3-1と実施例3-2とによって、複合型の対物レンズ系の実施例3を構成することができる。
【0091】
各実施例は、上述のωmaxが優に60度を超え72度に達する超広角の対物レンズ系である。外部照射角はωmaxの2倍とすることができるから、以下の実施例は、外部照射角が120度から144度の視野角を有し、内部照射角が200度を超える眼底撮影を可能とする超広角の眼科装置の実現を可能としている。
【0092】
〔実施例1-1〕
実施例1-1は、波長域が450nm~650nm、基準波長が520nmのSLO用対物レンズ系を想定した対物レンズ系311である。図13に、実施例1-1の対物レンズ系311のレンズ構成の図を、スキャナの走査中心位置Ps及び被検眼12の瞳面Ppとともに示す。なお、図中のPs及びPpは光軸方向の位置を示すために図示しているのであり、形状や大きさを示しているわけではない。対物レンズ系311は、スキャナ側から順に、第1レンズ群G1、及び第3レンズ群G3を含む。第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは対物レンズ系311内で最大の空気間隔によって隔てられている。
【0093】
第1レンズ群G1は、スキャナ側に凸面を向けたメニスカスレンズL11、同じくスキャナ側に凸面を向けたメニスカスレンズL12、スキャナ側に凹面を有する負レンズL13、被検眼側に凸面を向けた正メニスカスレンズL14、正レンズL15を含む。レンズL11とレンズL12とは互いに接合されてスキャナ側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分を形成しており、最もスキャナ側のレンズ面は非球面である。第3レンズ群G3は、正レンズL31、正レンズL32、負レンズL33、正レンズL34、両凹形状の負レンズL35、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL36を含む。より詳細には、正レンズL34の形状については、スキャナ側のレンズ面の曲率半径の絶対値が被検眼側のレンズ面の曲率半径の絶対値より小さい。レンズL32とレンズL33、またレンズL34とレンズL35とはそれぞれ互いに接合されている。より詳細には、レンズL32とレンズL33とは接合されて両凸レンズ成分を形成し、レンズL34とレンズL35とはスキャナ側に凸面を向けた正レンズ成分を形成している。
【0094】
なお、対物レンズ系311は、前述した前群GFと後群GRとからなると考えることができる。前群GFは第1レンズ群G1に対応し、後群GRは第3レンズ群G3に対応する。A群GRAは、レンズL31、レンズL32、レンズL33からなる。B群GRBは、レンズL34、レンズL35、レンズL36からなる。
【0095】
表1に、実施例1-1のレンズデータを示す。レンズデータでは、左の欄から順に、面番号、曲率半径、光軸上の面間隔、d線(波長587.56nm)基準の屈折率、d線基準のアッベ数を示している。レンズデータの第1面はスキャナの走査中心位置Psであり、thicknessの欄の最終行の値は表中の最も被検眼側のレンズ面から瞳面Ppまでの光軸上の距離を示す。
【表1】
【0096】
表1では、非球面はsurface numberの欄に(ASP)と記入している。非球面は、光軸に垂直な方向の高さをhとし、非球面の頂点における接平面から高さhにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(サグ量)をzsとし、近軸の曲率半径の逆数をcとし、円錐係数をkとし、4次の非球面係数をA、6次の非球面係数をB、8次の非球面係数をC、10次の非球面係数をD、12次の非球面係数をEとしたとき、下に示す式で表されるものとする。
zs=(c・h)/〔1+{1-(1+k)・h・c1/2
+A・h+B・h+C・h+D・h10+E・h12
【0097】
表2に、実施例1-1の非球面の非球面係数を示す。表2中の「E-n」(nは整数)は「×10-n」を意味する。
【表2】


なお、上で述べたレンズデータ及び非球面係数の記載方法及び構成図の図示方法は、基本的に以下の実施例についても同様である。
【0098】
図14に、実施例1-1のωoutとMの関係を示す。図15に、実施例1-1のωoutとPmax/Pminの関係を実線で示し、1/cos(ωout)の曲線を破線で示す。本実施例1-1は、外部照射角132度のSLO用対物レンズ系であり、図14及び図15に示すとおり、UWF用対物レンズとして優れた性能を有していることが明らかである。
【0099】
〔実施例1-2〕
実施例1-2は、波長域が900nm~1050nm、基準波長が1000nmのOCT用対物レンズ系を想定した対物レンズ系321である。図16に、実施例1-2の対物レンズ系321のレンズ構成の図を示す。対物レンズ系321は、スキャナ側から順に、第2レンズ群G2、及び第3レンズ群G3を含む。第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とは対物レンズ系321内で最大の空気間隔によって隔てられている。この最長空気間隔にはダイクロイックミラーなどの光合成及び光分離機能を有する合成部26を設けるために好都合であり、SLO用とOCT用との複合型の対物レンズ系を構成することが可能である。
【0100】
第2レンズ群G2は、前述の実施例1-1の第1レンズ群G1と類似の構成であるが、最もスキャナ側のスキャナ側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分は、両凸形状の正レンズL21と両凹形状の負レンズL22との接合レンズで形成されている。実施例1-2の第3レンズ群G3は、実施例1-1の第3レンズ群G3と共通である。
【0101】
なお、対物レンズ系321は、前述した前群GFと後群GRとからなると考えることができる。前群GFは第2レンズ群G2に対応し、後群GRは第3レンズ群G3に対応する。A群GRA、B群GRBを構成するレンズは実施例1-1と同様である。
【0102】
表3に、実施例1-2のレンズデータを示す。
【表3】
【0103】
表4に、実施例1-2の非球面の非球面係数を示す。
【表4】
【0104】
図17に、実施例1-2のωoutとMの関係を示す。図18に、実施例1-2のωoutとPmax/Pminの関係を実線で示し、1/cos(ωout)の曲線を破線で示す。本実施例1-2は、外部照射角128度のOCT用対物レンズ系であり、図17及び図18に示すとおり、UWF用対物レンズとして優れた性能を有していることが明らかである。
【0105】
〔実施例2-1〕
実施例2-1は、SLO用対物レンズ系を想定した対物レンズ系312である。図19に、実施例2-1の対物レンズ系312のレンズ構成の図を示す。対物レンズ系312は、スキャナ側から順に、第1レンズ群G1、及び第3レンズ群G3を含む。第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは対物レンズ系312内で最大の空気間隔によって隔てられている。
【0106】
第1レンズ群G1は、両凸形状の正レンズL11、両凹形状の負レンズL12、両凹形状の負レンズL13、被検眼側に凸面を向けた正レンズL14、正レンズL15を含む。レンズL11とレンズL12とは互いに接合されてスキャナ側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分を形成しており、最もスキャナ側のレンズ面は非球面である。第3レンズ群G3は、正レンズL31、両凸形状の正レンズL32、両凹形状の負レンズL33、スキャナ側に凸面を向けた正レンズL34、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL35を含む。レンズL32とレンズL33とは互いに接合されてスキャナ側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分を形成している。
【0107】
なお、対物レンズ系312は、前述した前群GFと後群GRとからなると考えることができる。前群GFは第1レンズ群G1に対応し、後群GRは第3レンズ群G3に対応する。A群GRAは、レンズL31、レンズL32、レンズL33、レンズL34からなる。B群GRBは、レンズL35からなる。
【0108】
表5に、実施例2-1のレンズデータを示す。
【表5】
【0109】
表6に、実施例2-1の非球面の非球面係数を示す。
【表6】
【0110】
図20に、実施例2-1のωoutとMの関係を示す。図21に、実施例2-1のωoutとPmax/Pminの関係を実線で示し、1/cos(ωout)の曲線を破線で示す。本実施例2-1は、外部照射角144度のSLO用対物レンズ系であり、図20及び図21に示すとおり、UWF用対物レンズとして優れた性能を有していることが明らかである。
【0111】
〔実施例2-2〕
実施例2-2は、OCT用対物レンズ系を想定した対物レンズ系322である。図22に、実施例2-2の対物レンズ系322のレンズ構成の図を示す。対物レンズ系322は、スキャナ側から順に、第2レンズ群G2、及び第3レンズ群G3を含む。第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とは対物レンズ系322内で最大の空気間隔によって隔てられている。第2レンズ群G2は、図19に示した前述の実施例2-1の第1レンズ群G1と類似の構成を有している。実施例2-2の第3レンズ群G3は、実施例2-1の第3レンズ群G3と共通である。
【0112】
なお、対物レンズ系322は、前述した前群GFと後群GRとからなると考えることができる。前群GFは第2レンズ群G2に対応し、後群GRは第3レンズ群G3に対応する。A群GRA、B群GRBを構成するレンズは実施例2-1と同様である。
【0113】
表7に、実施例2-2のレンズデータを示す。
【表7】
【0114】
表8に、実施例2-2の非球面の非球面係数を示す。
【表8】
【0115】
図23に、実施例2-2のωoutとMの関係を示す。図24に、実施例2-2のωoutとPmax/Pminの関係を実線で示し、1/cos(ωout)の曲線を破線で示す。本実施例2-2は、外部照射角144度のOCT用対物レンズ系であり、図23及び図24に示すとおり、UWF用対物レンズとして優れた性能を有していることが明らかである。
【0116】
〔実施例3-1〕
実施例3-1は、SLO用対物レンズ系を想定した対物レンズ系313である。図25に、実施例3-1の対物レンズ系313のレンズ構成の図を示す。対物レンズ系313は、スキャナ側から順に、第1レンズ群G1、及び第3レンズ群G3を含む。第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは対物レンズ系313内で最大の空気間隔によって隔てられている。
【0117】
第1レンズ群G1は、スキャナ側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11、スキャナ側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12、両凹形状の負レンズL13、被検眼側に凸面を向けた正レンズL14、正レンズL15を含む。レンズL11とレンズL12とは互いに接合されてスキャナ側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分を形成している。第3レンズ群G3は、スキャナ側に凸面を向けた負メニスカスレンズL31、両凸形状の正レンズL32、両凸形状の正レンズL33、被検眼側に凸面を向けた負メニスカスレンズL34、スキャナ側に凸面を向けた正レンズL35、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL36を含む。レンズL31とレンズL32とは接合されて両凸形状の正レンズ成分を形成しており、レンズL33とレンズL34も互いに接合されて両凸形状の正レンズ成分を形成している。この実施例3-1の第3レンズ群G3においても、前述の実施例1-1(図13)と同様に2つの接合レンズが設けられているが、実施例1-1の第3レンズ群G3の2つの接合面は共に被検眼側に凸面を向けているが、本実施例3-1では、互いの接合面は凹面を向い合わせに形成されている。また、最も被検眼側のレンズ面は非球面である。
【0118】
なお、対物レンズ系313は、前述した前群GFと後群GRとからなると考えることができる。前群GFは第1レンズ群G1に対応し、後群GRは第3レンズ群G3に対応する。A群GRAは、レンズL31、レンズL32、レンズL33、レンズL34、レンズL35からなる。B群GRBは、レンズL36からなる。
【0119】
表9に、実施例3-1のレンズデータを示す。
【表9】
【0120】
表10に、実施例3-1の非球面の非球面係数を示す。
【表10】
【0121】
図26に、実施例3-1のωoutとMの関係を示す。図27に、実施例3-1のωoutとPmax/Pminの関係を実線で示し、1/cos(ωout)の曲線を破線で示す。本実施例3-1も、外部照射角144度のSLO用対物レンズ系であり、図26及び図27に示すとおり、UWF用対物レンズとして優れた性能を有していることが明らかである。
【0122】
〔実施例3-2〕
実施例3-2は、OCT用対物レンズ系を想定した対物レンズ系323である。図28に、実施例3-2の対物レンズ系323のレンズ構成の図を示す。対物レンズ系323は、スキャナ側から順に、第2レンズ群G2、及び第3レンズ群G3を含む。第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とは対物レンズ系323内で最大の空気間隔によって隔てられている。第2レンズ群G2は、図25に示した第1レンズ群G1と類似の構成を有している。但し、実施例3-1の第1レンズ群G1の最もスキャナ側のスキャナ側に凸面を向けたメニスカスレンズ成分は、第1レンズ群G1中で最も中心厚が小さいのに対し、本実施例3-2の第1レンズ群G1では、第1レンズ群G1中で最も大きな中心厚となっている。本実施例3-2の第3レンズ群G3は、実施例3-1の第3レンズ群G3と共通である。
【0123】
なお、対物レンズ系323は、前述した前群GFと後群GRとからなると考えることができる。前群GFは第2レンズ群G2に対応し、後群GRは第3レンズ群G3に対応する。A群GRA、B群GRBを構成するレンズは実施例3-1と同様である。
【0124】
表11に、実施例3-2のレンズデータを示す。
【表11】
【0125】
表12に、実施例3-2の非球面の非球面係数を示す。
【表12】
【0126】
図29に、実施例3-2のωoutとMの関係を示す。図30に、実施例3-2のωoutとPmax/Pminの関係を実線で示し、1/cos(ωout)の曲線を破線で示す。本実施例3-2も、外部照射角144度のOCT用対物レンズ系であり、図29及び図30に示すとおり、UWF用対物レンズとして優れた性能を有していることが明らかである。
【0127】
〔実施例4-1〕
実施例4-1は、SLO用対物レンズ系を想定した対物レンズ系314である。図31に、実施例4-1の対物レンズ系314のレンズ構成の図を示す。対物レンズ系314は、スキャナ側から順に、第1レンズ群G1、及び第3レンズ群G3を含む。第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは対物レンズ系314内で最大の空気間隔によって隔てられている。
【0128】
第1レンズ群G1は、スキャナ側に凹面を向けた正メニスカスレンズL11、スキャナ側に凹面を向けた負メニスカスレンズL12、スキャナ側に凸面を向けた負メニスカスレンズL13、正レンズL14を含む。レンズL11とレンズL12とは互いに接合されてスキャナ側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズ成分を形成している。第3レンズ群G3は、正レンズL31、両凸形状の正レンズL32、スキャナ側に凹面を向けた負レンズL33、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL34、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL35を含む。レンズL32とレンズL33とは互いに接合されて正レンズ成分を形成している。実施例4-1の正メニスカスレンズL34は、そのスキャナ側の凸面上に回折光学素子(略称DOE)が設けられている。レンズ面に回折光学素子を設けることによって、色収差補正が容易になるのみならず、レンズ面による屈折及び回折光学素子による回折を利用することができるため、レンズの有効径を小さくすることが可能である。回折光学素子は他のレンズ面に設けることも可能であり、例えば、レンズL31のような有効径が大きいレンズや、最もスキャナに近いレンズ成分を構成するレンズL11、レンズL12に設けると有効である。
【0129】
なお、対物レンズ系314は、前述した前群GFと後群GRとからなると考えることができる。前群GFは第1レンズ群G1に対応し、後群GRは第3レンズ群G3に対応する。A群GRAは、レンズL31からなる。B群GRBは、レンズL32、レンズL33、レンズL34、レンズL35からなる。
【0130】
表13に、実施例4-1のレンズデータを示す。
【表13】
【0131】
表13では、回折光学素子が設けられた面はsurface numberの欄に(DOE)と記入している。回折面の位相形状ψは、光軸に垂直な方向の高さをhとし、回折光の回折次数をmとし、設計波長をλ0とし、2次の位相係数をC2、4次の位相係数をC4、6次の位相係数をC6としたとき、次に示す式で表されるものとする。
ψ(h,m)=〔2π/(m×λ0)〕×(C2・h+C4・h+C6・h
【0132】
表14に、実施例4-1の回折面の位相係数を示す。表20中の「E-n」(nは整数)は「×10-n」を意味する。
【表14】
【0133】
図32に、実施例4-1のωoutとMの関係を示す。図33に、実施例4-1のωoutとPmax/Pminの関係を実線で示し、1/cos(ωout)の曲線を破線で示す。本実施例4-1は、外部照射角130度のSLO用対物レンズ系であり、図32及び図33に示すとおり、UWF用対物レンズとして優れた性能を有していることが明らかである。
【0134】
〔実施例5-1〕
実施例5-1は、SLO用対物レンズ系を想定した対物レンズ系315である。図34に、実施例5-1の対物レンズ系315のレンズ構成の図を示す。対物レンズ系315は、スキャナ側から順に、第1レンズ群G1、及び第3レンズ群G3を含む。第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは対物レンズ系315内で最大の空気間隔によって隔てられている。
【0135】
第1レンズ群G1は、スキャナ側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11、被検眼側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12を含む。第3レンズ群G3は、スキャナ側に凸面を向けた負メニスカスレンズL31、両凸形状の正レンズL32、両凸形状の正レンズL33、被検眼側に凸面を向けた負メニスカスレンズL34、両凸形状の正レンズL35、被検眼側に凸面を向けた負メニスカスレンズL36、スキャナ側に凸面を向けた正レンズL37、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL38、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL39を含む。レンズL31とレンズL32とは互いに接合されて両凸形状の正レンズ成分を形成している。レンズL33とレンズL34とは互いに接合されて両凸形状の正レンズ成分を形成している。レンズL35とレンズL36とは互いに接合されて両凸形状の正レンズ成分を形成している。
【0136】
なお、対物レンズ系315は、前述した前群GFと後群GRとからなると考えることができる。前群GFは第1レンズ群G1に対応し、後群GRは第3レンズ群G3に対応する。A群GRAは、レンズL31、レンズL32、レンズL33、レンズL34、レンズL35、レンズL36、レンズL37からなる。B群GRBは、レンズL38、レンズL39からなる。
【0137】
表15に、実施例5-1のレンズデータを示す。
【表15】
【0138】
実施例5-1のωoutとMの関係は、実施例1-1~実施例4-1と定性的に同様の傾向を有する。実施例5-1のωoutとPmax/Pminの関係は、実施例3-1と定性的に同様の傾向を有するが、実施例5-1においては、ωoutが70度のときにPmax/Pminが140%以下の値をとる。
【0139】
〔実施例6-1〕
実施例6-1は、SLO用対物レンズ系を想定した対物レンズ系316である。図35に、実施例6-1の対物レンズ系316のレンズ構成の図を示す。対物レンズ系316は、スキャナ側から順に、第1レンズ群G1、及び第3レンズ群G3を含む。第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは対物レンズ系316内で最大の空気間隔によって隔てられている。
【0140】
第1レンズ群G1は、両凸形状の正レンズL11、両凹形状の負レンズL12、被検眼側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13を含む。レンズL11とレンズL12とは互いに接合されてスキャナ側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分を形成している。第3レンズ群G3は、スキャナ側に凸面を向けた負メニスカスレンズL31、両凸形状の正レンズL32、両凸形状の正レンズL33、スキャナ側に凹面を向けた負レンズL34、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL35、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL36、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL37を含む。レンズL31とレンズL32とは互いに接合されて両凸形状の正レンズ成分を形成している。レンズL33とレンズL34とは互いに接合されて両凸形状の正レンズ成分を形成している。
【0141】
なお、対物レンズ系316は、前述した前群GFと後群GRとからなると考えることができる。前群GFは第1レンズ群G1に対応し、後群GRは第3レンズ群G3に対応する。A群GRAは、レンズL31、レンズL32、レンズL33、レンズL34からなる。B群GRBは、レンズL35、レンズL36、レンズL37からなる。
【0142】
表16に、実施例6-1のレンズデータを示す。
【表16】
【0143】
実施例6-1のωoutとMの関係は、実施例1-1~実施例4-1と定性的に同様の傾向を有する。実施例6-1のωoutとPmax/Pminの関係は、実施例3-1と定性的に同様の傾向を有するが、実施例6-1においては、ωoutが70度のときにPmax/Pminが140%以下の値をとる。
【0144】
〔実施例7-1〕
実施例7-1は、SLO用対物レンズ系を想定した対物レンズ系317である。図36に、実施例7-1の対物レンズ系317のレンズ構成の図を示す。対物レンズ系317は、スキャナ側から順に、第1レンズ群G1、及び第3レンズ群G3を含む。第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは対物レンズ系317内で最大の空気間隔によって隔てられている。
【0145】
第1レンズ群G1は、スキャナ側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11、被検眼側に凸面を向けた正レンズL12を含む。レンズL12のスキャナ側及び被検眼側のレンズ面は非球面である。第3レンズ群G3は、被検眼側に凸面を向けた正メニスカスレンズL31、両凸形状の正レンズL32、被検眼側に凸面を向けた負メニスカスレンズL33、両凸形状の正レンズL34、両凹形状の負レンズL35、両凸形状の正レンズL36、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL37、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL38を含む。レンズL32とレンズL33とは互いに接合されて両凸形状の正レンズ成分を形成している。レンズL34とレンズL35とは互いに接合されて被検眼側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズ成分を形成している。
【0146】
なお、対物レンズ系317は、前述した前群GFと後群GRとからなると考えることができる。前群GFは第1レンズ群G1に対応し、後群GRは第3レンズ群G3に対応する。A群GRAは、レンズL31、レンズL32、レンズL33、レンズL34、レンズL35、レンズL36からなる。B群GRBは、レンズL37、レンズL38からなる。
【0147】
表17に、実施例7-1のレンズデータを示す。
【表17】
【0148】
表18に、実施例7-1の非球面の非球面係数を示す。
【表18】
【0149】
実施例7-1のωoutとMの関係は、実施例1-1~実施例4-1と定性的に同様の傾向を有する。実施例7-1のωoutとPmax/Pminの関係は、実施例1-1と定性的に同様の傾向を有する。
【0150】
〔実施例8-1〕
実施例8-1は、SLO用対物レンズ系を想定した対物レンズ系318である。図37に、実施例8-1の対物レンズ系318のレンズ構成の図を示す。対物レンズ系318は、スキャナ側から順に、第1レンズ群G1、及び第3レンズ群G3を含む。第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは対物レンズ系318内で最大の空気間隔によって隔てられている。
【0151】
第1レンズ群G1は、スキャナ側に凹面を向けた正メニスカスレンズL11を含む。レンズL11のスキャナ側のレンズ面は非球面である。第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズL31、両凹形状の負レンズL32、両凸形状の正レンズL33、被検眼側に凹面を向けた負メニスカスレンズL34、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL35、両凸形状の正レンズL36、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL37、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL38を含む。レンズL32とレンズL33とは互いに接合されて被検眼側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分を形成している。レンズL34とレンズL35とは互いに接合されて被検眼側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズ成分を形成している。
【0152】
なお、対物レンズ系318は、前述した前群GFと後群GRとからなると考えることができる。前群GFは第1レンズ群G1に対応し、後群GRは第3レンズ群G3に対応する。A群GRAは、レンズL31、レンズL32、レンズL33、レンズL34、レンズL35、レンズL36からなる。B群GRBは、レンズL37、レンズL38からなる。
【0153】
表19に、実施例8-1のレンズデータを示す。
【表19】
【0154】
表20に、実施例8-1の非球面の非球面係数を示す。
【表20】
【0155】
実施例8-1のωoutとMの関係は、実施例1-1~実施例4-1と定性的に同様の傾向を有する。実施例8-1のωoutとPmax/Pminの関係は、実施例1-1~実施例2-2と定性的に同様の傾向を有する。
【0156】
〔実施例9-1〕
実施例9-1は、SLO用対物レンズ系を想定した対物レンズ系319である。図38に、実施例9-1の対物レンズ系319のレンズ構成の図を示す。対物レンズ系319は、スキャナ側から順に、第1レンズ群G1、及び第3レンズ群G3を含む。第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは対物レンズ系319内で最大の空気間隔によって隔てられている。
【0157】
第1レンズ群G1は、スキャナ側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11、両凸形状の正レンズL12、両凹形状の負レンズL13、両凹形状の負レンズL14、両凸形状の正レンズL15、被検眼側に凸面を向けた正レンズL16を含む。レンズL11とレンズL12とは互いに接合されて両凸形状のレンズ成分を形成している。レンズL14とレンズL15とは互いに接合されて被検眼側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分を形成している。第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズL31、被検眼側に凸面を向けた負メニスカスレンズL32、両凸形状の正レンズL33、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL34を含む。レンズL31とレンズL32とは接合されて両凸形状の正レンズ成分を形成している。
【0158】
なお、対物レンズ系319は、前述した前群GFと後群GRとからなると考えることができる。前群GFは第1レンズ群G1に対応し、後群GRは第3レンズ群G3に対応する。A群GRAは、レンズL31、レンズL32、レンズL33からなる。B群GRBは、レンズL34からなる。
【0159】
表21に、実施例9-1のレンズデータを示す。
【表21】
【0160】
実施例9-1のωoutとMの関係は、実施例1-1~実施例4-1と定性的に同様の傾向を有する。実施例9-1のωoutとPmax/Pminの関係は、実施例1-1と定性的に同様の傾向を有する。
【0161】
〔実施例10-1〕
実施例10-1は、SLO用対物レンズ系を想定した対物レンズ系3110である。図39に、実施例10-1の対物レンズ系3110のレンズ構成の図を示す。対物レンズ系3110は、スキャナ側から順に、第1レンズ群G1、及び第3レンズ群G3を含む。第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは対物レンズ系3110内で最大の空気間隔によって隔てられている。
【0162】
第1レンズ群G1は、両凹形状の負レンズL11、被検眼側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12、スキャナ側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13、両凹形状の負レンズL14を含む。第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズL31、両凹形状の負レンズL32、両凸形状の正レンズL33、スキャナ側に凸面を向けた正レンズL34、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL35を含む。レンズL31とレンズL32とは接合されてメニスカス形状のレンズ成分を形成している。
【0163】
なお、対物レンズ系3110は、前述した前群GFと後群GRとからなると考えることができる。前群GFは第1レンズ群G1に対応し、後群GRは第3レンズ群G3に対応する。A群GRAは、レンズL31、レンズL32、レンズL33、レンズL34からなる。B群GRBは、レンズL35からなる。
【0164】
表22に、実施例10-1のレンズデータを示す。
【表22】
【0165】
実施例10-1のωoutとMの関係は、実施例1-1~実施例4-1と定性的に同様の傾向を有する。実施例10-1のωoutとPmax/Pminの関係は、実施例1-1と定性的に同様の傾向を有する。
【0166】
〔実施例11-1〕
実施例11-1は、SLO用対物レンズ系を想定した対物レンズ系3111である。図40に、実施例11-1の対物レンズ系3111のレンズ構成の図を示す。対物レンズ系3111は、スキャナ側から順に、第1レンズ群G1、及び第3レンズ群G3を含む。第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とは対物レンズ系3111内で最大の空気間隔によって隔てられている。
【0167】
第1レンズ群G1は、被検眼側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11、スキャナ側に凸面を向けた負メニスカスレンズL12、スキャナ側に凸面を向けた正レンズL13、両凹形状の負レンズL14、両凸形状の正レンズL15を含む。レンズL14とレンズL15とは接合されてメニスカス形状のレンズ成分を形成している。第3レンズ群G3は、スキャナ側に凸面を向けた負メニスカスレンズL31、両凸形状の正レンズL32、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL33、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズL34を含む。レンズL31とレンズL32とは接合されて両凸形状の正レンズ成分を形成している。
【0168】
なお、対物レンズ系3111は、前述した前群GFと後群GRとからなると考えることができる。前群GFは第1レンズ群G1に対応し、後群GRは第3レンズ群G3に対応する。A群GRAは、レンズL31、レンズL32からなる。B群GRBは、レンズL33、レンズL34からなる。
【0169】
表23に、実施例11-1のレンズデータを示す。
【表23】
【0170】
実施例11-1のωoutとMの関係は、実施例1-1~実施例4-1と定性的に同様の傾向を有する。実施例11-1のωoutとPmax/Pminの関係は、実施例1-1と定性的に同様の傾向を有する。
【0171】
表24~表27に各実施例の各条件式の対応値を示す。表27では、fAp/fR(min)の欄に各実施例のfAp/fRの最小値を示し、fAp/fR(max)の欄に各実施例のfAp/fRの最大値を示す。
【0172】
【表24】
【0173】
【表25】
【0174】
【表26】
【0175】
【表27】
【0176】
上記の各実施例は外部照射角として120度を超えるUWF光学系であり、最も被検眼側のレンズ面から被検眼の瞳面Ppまでの軸上距離は、いわゆる作動距離として25mm以上を確保している。この作動距離はUWF光学系を有する眼科装置の実際の使用において大きな値とすることが重要ではあるが、対物レンズとしての有効径は作動距離の増大に応じて急激に大きくなる。このため、UWF光学系の作動距離としては、20mm以上、好ましくは22mm以上であることが実用的である。作動距離の上限値については大きいほど被検者の負担を軽減できるが、光学系の性能面やコスト面、また製造の容易性からして42mmが上限といえる。
【0177】
<リレー系を用いた別の実施形態>
次に、撮影光学系の別の実施形態について説明する。図41に、撮影光学系の別の実施形態の構成の断面図を示す。図3に示す例と比較して、図41に示す撮影光学系は、リレー用の光学系を有する点が大きく異なる。図41の撮影光学系は、第1光学スキャナ22と被検眼12との間の光路に第1リレー系601と対物レンズ系600とを含み、第2光学スキャナ24と被検眼12との間の光路に第2リレー系602と対物レンズ系600とを含む。第1リレー系601は、第1光学スキャナ22側から順に、第1副レンズ群RG1と共通副レンズ群RG3とを含む。第2リレー系602は、第2光学スキャナ24側から順に、第2副レンズ群RG2と共通副レンズ群RG3とを含む。
【0178】
図41の撮影光学系は、図3の合成部26と同様の機能を有する合成部626を含む。合成部626は、第1副レンズ群RG1と共通副レンズ群RG3との間に配置されており、かつ第2副レンズ群RG2と共通副レンズ群RG3との間に配置されている。入射角依存性を有する合成部626に対応可能なように、第1副レンズ群RG1と共通副レンズ群RG3との間を通過する走査光束は平行光であり、第2副レンズ群RG2と共通副レンズ群RG3との間を通過する走査光束も平行光であるように構成される。
【0179】
図41に示す例では、共通レンズ群は、共通副レンズ群RG3と対物レンズ系600とから構成されている。第1光学スキャナ22によって角度走査された光は、第1副レンズ群RG1、合成部626、共通副レンズ群RG3、対物レンズ系600を順に透過して被検眼12に到達する。第2光学スキャナ24によって角度走査された光は、第2副レンズ群RG2、合成部626、共通副レンズ群RG3、対物レンズ系600を順に透過して被検眼12に到達する。
【0180】
第1リレー系601によって、第1光学スキャナ22と共役関係にあるリレー共役位置Prが、合成部626と被検眼12との間の光路中に形成される。図41に示す例では、第1リレー系601によって、リレー共役位置Prが、第1リレー系601と対物レンズ系600との間の光路中に形成される。また、第2リレー系602によって、第2光学スキャナ24とリレー共役位置Prとは合成部626を介して共役関係になっている。そして、対物レンズ系600によって、リレー共役位置Prと被検眼12の瞳位置とは共役関係になっている。よって、図41に示す構成例においても、第1光学スキャナ22と被検眼12の瞳位置とは共役関係になっており、第2光学スキャナ24と被検眼12の瞳位置とは共役関係になっている。図41に示す例のようにリレー系を用いることにより、図3に示す例と同程度の大きな外部照射角を得る場合でも、図3の合成部26よりも図41の合成部626の径を小さくすることができるので、合成部の口径を小さくすることができコストダウンを図ることができる。光学部材の径が大きくなりやすい超広角の眼科用光学系では、リレー系を用いることにより大幅なコストダウンを期待できる。
【0181】
本実施形態では、MR1を第1光学スキャナ22からリレー共役位置Prへの第1リレー系601の近軸角倍率とし、MR2を第2光学スキャナ24からリレー共役位置Prへの第2リレー系602の近軸角倍率とした場合、下記条件式(20)を満足するように構成されている。条件式(20)を満足することにより、条件式(1)を満足した場合と同様の効果が得られる。
|MR1|<|MR2| (20)
【0182】
また、小型化のためにはMR1は下記条件式(21)を満足することが好ましい。条件式(20)と条件式(21)とから、MR2は下記条件式(22)を満足することが好ましい。
|MR1|=1 (21)
|MR2|>1 (22)
【0183】
一例として、図41に示す第1副レンズ群RG1は、第1光学スキャナ22側から被検眼側へ向かって順に、第1光学スキャナ22側に凹面を向けた正メニスカスレンズLr11と、両凸形状の正レンズLr12と、両凹形状の負レンズLr13とを含む。レンズLr12とレンズLr13とは接合されて第1光学スキャナ22側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分を形成している。
【0184】
図41の例では、第1副レンズ群RG1と共通副レンズ群RG3とは、光軸に垂直な平面に対して対称に構成されている。すなわち、共通副レンズ群RG3は、第1光学スキャナ22側から被検眼側へ向かって順に、両凹形状の負レンズLr31と、両凸形状の正レンズLr32と、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズLr33とを含む。レンズLr31とレンズLr32とは接合されて被検眼側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分を形成している。また、図41に示す第2副レンズ群RG2は、少なくとも1枚の正レンズと少なくとも1枚の負レンズとを有し、空気間隔によって隔てられて互いに対向する凹面形状のレンズ面を有する。
【0185】
なお、図41に示す構成において、第1光学スキャナ22はX方向及びY方向のうちの一方向のみ走査するように構成されていてもよい。同様に、第2光学スキャナ24もX方向及びY方向のうちの一方向のみ走査するように構成されていてもよい。このように、両方のスキャナを一次元のスキャナとする場合には、リレー系による瞳共役位置であるリレー共役位置Prに、その一次元走査方向に直交する方向の一次元スキャナを設けることによって、被検眼の瞳面にて光ビームを2次元で角度走査することが可能である。
【0186】
図42の斜視図に、上記のようなリレー系を用いた撮影光学系のさらに別の実施形態の構成を示す。図41に示す構成と比較して、図42に示す構成では、リレー共役位置Prに第3光学スキャナ625が配置されており、図41の第1光学スキャナ22に代わり第1光学スキャナ622が配置され、図41の第2光学スキャナ24に代わり第2光学スキャナ624が配置されている点が大きく異なる。第1光学スキャナ622及び第2光学スキャナ624は、X方向及びY方向のうちの一方向のみ走査するように構成されており、第3光学スキャナ625は第1光学スキャナ622及び第2光学スキャナ624の走査方向と直交する方向を走査するように構成されている。例えば、第1光学スキャナ622としてポリゴンミラーを用いてY方向を走査し、第2光学スキャナ624としてガルバノミラーを用いてY方向を走査し、第3光学スキャナ625としてガルバノミラーを用いてX方向を走査するように構成してもよい。
【0187】
<リレー系を用いた実施形態の実施例>
図41及び図42に示す撮影光学系の対物レンズ系600としては、例えば、<好適な実施例の説明>の項で示した各実施例の対物レンズ系を用いることができる。一例として、図41には対物レンズ系600として前述の実施例9-1を用いた例を示す。また、図41に例示した、第1リレー系601の実施例のレンズデータと非球面係数を表28と表29にそれぞれ示し、第2リレー系602の実施例のレンズデータと非球面係数を表30と表31にそれぞれ示す。
【0188】
【表28】
【0189】
【表29】
【0190】
【表30】
【0191】
【表31】
【0192】
表28~表31に示す各リレー系の実施例と実施例9-1の対物レンズ系とを組み合わせた光学系の条件式の対応値を表32に示す。
【表32】


ここで、M1は第1リレー系601と対物レンズ系600とを組み合わせた光学系の近軸角倍率であり、M2は第2リレー系602と対物レンズ系600とを組み合わせた光学系の近軸角倍率である。これは、図3に示すSLO用対物レンズ系31を図41に示す第1リレー系601と対物レンズ系600とを組み合わせた光学系に置換し、図3に示すOCT用対物レンズ系32を図41に示す第2リレー系602と対物レンズ系600とを組み合わせた光学系に置換することによって条件式(1)の近軸角倍率M1、M2と同様に考えることができる。表32のMpar、Mmaxについても、図7に示す対物レンズ系300を図41に示す第1リレー系601と対物レンズ系600とを組み合わせた光学系に置換する、あるいは、図41に示す第2リレー系602と対物レンズ系600とを組み合わせた光学系に置換することにより条件式(7)のMpar、Mmaxと同様に考えることができる。
【0193】
表28~表31に示す各リレー系の実施例の条件式(20)~(22)の対応値を表33に示す。
【表33】


ただし、表33のMRpar、MRmaxは各リレー系について以下のように定義される。すなわち、各スキャナ側から各リレー系へ入射する入射光線と各リレー系の光軸とのなす角をωinRとし、各リレー系から対物レンズ系側へ射出される射出光線と光軸AXとのなす角をωoutRとし、MR=|ωoutR/ωinR|と定義し、入射光線が近軸光線のときのMRはMRparとし、入射光線が最大画角の光線のときのMRをMRmaxとしている。
【0194】
<画像処理装置の動作説明>
次に、前述したUWF用対物レンズ系として好適な角倍率分布の特性を有する対物レンズ系を用いて眼科装置を構成する場合の画像処理装置17の動作の一例について説明する。対物レンズ系の角倍率分布についての特性データを用いて画像表示する際に補正を必要とすることがある。そのための処理の一例について図43を参照しながら説明する。以下に述べる画像表示処理は、SLO画像及びOCT画像の両方について適用可能である。
【0195】
以下では、説明の便宜上、画像表示処理が図1に示した制御装置16によって実行される場合について説明する。また、以下では、説明の便宜上、画像処理装置17がASIC(Application Specific Integrated Circuit)であることを前提として説明する。なお、ここでは、画像処理装置17の一例として、ASICによって実現される形態例を挙げているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、画像処理装置17は、FPGA(Field Programmable gate Array)等の他のハードウェア資源であってもよい。
【0196】
43に示す画像表示処理では、ステップ500で、画像処理装置17は、入力/表示装置16Eによって受け付けられた指示に従って走査範囲を設定する。ここで走査範囲とは、例えばX方向及びY方向それぞれの走査角の上限値及び下限値によって設定された範囲である。
【0197】
ステップ502で、CPU16Aは、現時点でのωinを特定する。なお、ωinは、現時点でのスキャナの走査角から一意的に特定される。
【0198】
ステップ504で、画像処理装置17は、対物レンズ系の角倍率分布データをルックアップテーブルから取得し、ステップ502で特定されたωinでの対物レンズ系のデータを取得する。ルックアップテーブルは、画角と対物レンズ系のデータとの対応付け、すなわちωinと対物レンズ系のデータとの対応付けがされたテーブルであり、角倍率分布に関する情報を含む。角倍率分布データは、スキャナの走査角である入射角ωinの関数としての角倍率Mのデータである。なお、その他にも、ωinの関数としての歪曲収差量、ωinの関数としての周辺光量等のデータを取得するようにしてもよい。また、これらのデータは、設計データであってもよく、測定データであってもよい。
【0199】
ステップ506で、画像処理装置17は、受光部での受光結果に基づくデータを、ステップ504で取得した対物レンズ系の角倍率分布データに基づいて補正する。
【0200】
ステップ508で、画像処理装置17は、ステップ506で補正したデータに基づいて画像を生成する。ステップ510で、入力/表示装置16Eは、ステップ508で生成したデータに基づいて画像を表示し、本画像表示処理を終了する。
【0201】
なお、上記で説明した画像表示処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。また、上記のような眼底像についての検出データから眼底像形成への歪補正に関する画像処理について、米国特許第9039183号及び米国特許9649031号公報、また国際公開第2014/096835号に関連する開示があり、これらを本開示の中に含めることとする。
【0202】
また、上記実施形態では、CPU16Aによるソフトウェア構成と、画像処理装置17によるハードウェア構成とによって画像表示処理が実現される場合を例示したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、画像表示処理が、コンピュータを利用したソフトウェア構成のみよって実行されるようにしてもよい。
【0203】
また、上記実施形態では、SLOシステムとOCTシステムの両方の機能を有する装置について説明したが、本開示の技術を適用して、SLOシステム及びOCTシステムの一方のみの機能を有する装置を構成することも可能である。
【0204】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【0205】
以上の上記実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
眼科光学系であって、
前記眼科光学系は、光源からの光線を被検眼に照射するように構成されており、
前記光源側から前記眼科光学系へ入射する入射光線と前記眼科光学系の光軸とのなす角をωinとし、
前記眼科光学系から前記被検眼側へ射出される射出光線と前記光軸とのなす角をωoutとし、
前記眼科光学系においてM=|ωout/ωin|と定義したとき、
前記入射光線が近軸光線のときのMをMpar、及び
前記入射光線が最大画角の光線のときのMをMmaxとした場合、
Mpar<Mmax
で示される条件式を満足する眼科光学系。
【0206】
(付記2)
1.1×Mpar<Mmax
で示される条件式を満足する付記1に記載の眼科光学系。
【0207】
(付記3)
Mmax<2×Mpar
で示される条件式を満足する付記1又は2に記載の眼科光学系。
【0208】
(付記4)
1<Mpar、及び
1<Mmax
で示される条件式を満足する付記1から付記3のいずれか一項に記載の眼科光学系。
【0209】
(付記5)
ωinが大きくなるに従いMが大きくなる範囲をMparからMmaxの間に有する付記1から付記4のいずれか一項に記載の眼科光学系。
【0210】
(付記6)
前記眼科光学系は屈折光学系であり、かつ前記入射光線が最大画角の光線のときのωoutは50度以上である付記1から付記5のいずれか一項に記載の眼科光学系。
【0211】
(付記7)
前記眼科光学系は前記光源側から順に、
前記光源側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分、
前記光源側に凹面を向け前記光源側のレンズ面の曲率半径の絶対値が前記被検眼側のレンズ面の曲率半径の絶対値より小さい負レンズ、
前記被検眼側に凸面を向け前記被検眼側のレンズ面の曲率半径の絶対値が前記光源側のレンズ面の曲率半径の絶対値より小さい正レンズ、
正レンズ、
前記被検眼側に凸面を向けた正レンズ、
前記被検眼側に凸面を向けた正レンズと負レンズが接合された接合レンズ、
前記光源側に凸面を向けた正レンズ、及び、
前記被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズ
を含む付記1から付記6のいずれか一項に記載の眼科光学系。
【0212】
(付記8)
付記1から付記7のいずれか一項に記載の眼科光学系と、
走査部と、を備え、
前記走査部は、前記眼科光学系に関して前記被検眼の瞳位置と共役関係にある瞳共役位置に配置され、前記光源から照射された光線を前記眼科光学系に入射させ、かつ前記被検眼が前記射出光線によって走査されるように、前記光源から照射された光線を走査する眼科装置。
【0213】
(付記9)
前記被検眼からの前記射出光線の反射光を受光する受光部と、
前記受光部での受光結果に基づくデータを、ωoutに関するMに基づいて補正する画像処理装置とを備えた付記8に記載の眼科装置。
【0214】
(付記10)
前記画像処理装置は、補正したデータに基づいて、前記被検眼の画像を生成する付記9に記載の眼科装置。
【0215】
(付記11)
眼科光学系であって、
前記眼科光学系は、所定の走査角で走査される光束を被検眼に照射するように構成されており、
前記眼科光学系から前記被検眼へ射出される射出光束と前記眼科光学系の光軸とのなす角の最大値をωmaxとし、
前記射出光束と前記光軸とのなす角がωmaxのときの前記被検眼の瞳位置における前記射出光束の走査方向の光束径をPmaxとし、
前記射出光束と前記光軸とのなす角が最小のときの前記被検眼の瞳位置における前記射出光束の走査方向の光束径をPminとした場合、
Pmax<Pmin×0.7/(cos(ωmax))
で示される条件式を満足する眼科光学系。
【0216】
(付記12)
Pmax<Pmin
で示される条件式を満足する付記11に記載の眼科光学系。
【0217】
(付記13)
0.2×Pmin<Pmax
で示される条件式を満足する付記11又は付記12に記載の眼科光学系。
【0218】
(付記14)
前記眼科光学系は屈折光学系であり、かつ前記入射光束が最大画角の光束のときの前記射出光束と前記光軸とのなす角は50度以上である付記11から付記13のいずれか一項に記載の眼科光学系。
【0219】
(付記15)
前記眼科光学系は、光源からの光束を前記被検眼に照射するように構成されており、
前記眼科光学系は前記光源側から順に、
前記光源側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分、
前記光源側に凹面を向け前記光源側のレンズ面の曲率半径の絶対値が前記被検眼側のレンズ面の曲率半径の絶対値より小さい負レンズ、
前記被検眼側に凸面を向け前記被検眼側のレンズ面の曲率半径の絶対値が前記光源側のレンズ面の曲率半径の絶対値より小さい正レンズ、
正レンズ、
前記被検眼側に凸面を向けた正レンズ、
前記被検眼側に凸面を向けた正レンズと負レンズが接合された接合レンズ、
前記光源側に凸面を向けた正レンズ、及び、
前記被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズ
を含む付記11から付記14のいずれか一項に記載の眼科光学系。
【0220】
(付記16)
付記11から付記15のいずれか一項に記載の眼科光学系と、
走査部とを備え、
前記走査部は、前記眼科光学系に関して前記被検眼の瞳位置と共役関係にある瞳共役位置に配置され、光源から照射された光束を前記眼科光学系に入射させ、かつ前記被検眼が前記眼科光学系からの射出光束によって走査されるように、前記光源から照射された光束を走査する眼科装置。
【0221】
(付記17)
眼科装置であって、
光源と、
前記光源からの光線を被検眼に照射する眼科光学系とを備え、
前記光源側から前記眼科光学系へ入射する入射光線と前記眼科光学系の光軸とのなす角をωinとし、
前記眼科光学系から前記被検眼側へ射出される射出光線と前記光軸とのなす角をωoutとし、
前記眼科光学系においてM=|ωout/ωin|と定義したとき、
前記入射光線が近軸光線のときのMをMpar、及び
前記入射光線が最大画角の光線のときのMをMmaxとした場合、
Mpar<Mmax
で示される条件式を満足する眼科装置。
【0222】
(付記18)
所定の最大走査角で第1の光束を走査可能な第1走査部と、
前記第1走査部から入射する前記第1の光束を被検眼へ射出し、前記第1走査部の位置と前記被検眼の瞳位置とを共役関係にする第1対物光学系と、
前記第1走査部の最大走査角より小さい最大走査角で前記第1の光束とは異なる第2の光束を走査可能な第2走査部と、
前記第2走査部から入射する前記第2の光束を前記被検眼へ射出し、前記第2走査部の位置と前記被検眼の瞳位置とを共役関係にする第2対物光学系と、
前記第1走査部と前記被検眼との間の光路及び前記第2走査部と前記被検眼との間の光路に配置されて、前記被検眼側へ向かう前記第1の光束の光路と前記被検眼側へ向かう前記第2の光束の光路とを合成する合成部とを備え、
前記第1対物光学系と前記第2対物光学系は、前記合成部より前記被検眼側に共通の光学系を有し、
前記第1走査部から前記被検眼への前記第1対物光学系の近軸角倍率をM1、及び
前記第2走査部から前記被検眼への前記第2対物光学系の近軸角倍率をM2とした場合、
|M1|<|M2|
で示される条件式を満足する眼科装置。
【0223】
(付記19)
前記第1対物光学系は走査型レーザ検眼鏡用であり、前記第2対物光学系は光干渉断層計用であり、
1.5<|M1|<3.5、及び
2.5<|M2|<5
で示される条件式を満足する付記18に記載の眼科装置。
【0224】
(付記20)
前記第2走査部が前記第2の光束を走査する走査速度は、前記第1走査部が前記第1の光束を走査する走査速度より遅い付記18又は付記19に記載の眼科装置。
【0225】
(付記21)
前記共通の光学系は、前記合成部側から前記被検眼側へ向かって順に、
前記被検眼側に凸面を向けた正レンズ、
前記被検眼側に凸面を向けた正レンズと負レンズとが接合された接合レンズ、
前記合成部側に凸面を向けた正レンズ、及び、
前記被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズ
を含む付記18から付記20のいずれか一項に記載の眼科装置。
【0226】
(付記22)
前記第1対物光学系のうち前記合成部より前記第1走査部側の光学系は、前記第1走査部側から前記被検眼側へ向かって順に、
前記第1走査部側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分、
前記第1走査部側に凹面を向け前記第1走査部側のレンズ面の曲率半径の絶対値が前記被検眼側のレンズ面の曲率半径の絶対値より小さい負レンズ、
前記被検眼側に凸面を向け前記被検眼側のレンズ面の曲率半径の絶対値が前記第1走査部側のレンズ面の曲率半径の絶対値より小さい正レンズ、及び、
正レンズ
を含む付記18から付記21のいずれか一項に記載の眼科装置。
【0227】
(付記23)
前記第2対物光学系のうち前記合成部より前記第2走査部側の光学系は、前記第2走査部側から前記被検眼側へ向かって順に、
前記第2走査部側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分、
前記第2走査部側に凹面を向け前記第2走査部側のレンズ面の曲率半径の絶対値が前記被検眼側のレンズ面の曲率半径の絶対値より小さい負レンズ、
前記被検眼側に凸面を向け前記被検眼側のレンズ面の曲率半径の絶対値が前記第2走査部側のレンズ面の曲率半径の絶対値より小さい正レンズ、及び、
正レンズ
を含む付記18から付記22のいずれか一項に記載の眼科装置。
【0228】
(付記24)
所定の最大走査角で第1の光束を走査可能な第1走査部と、
前記第1走査部から入射する前記第1の光束を被検眼へ射出し、前記第1走査部の位置と前記被検眼の瞳位置とを共役関係にする第1対物光学系と、
前記第1走査部の最大走査角より小さい最大走査角で前記第1の光束とは異なる第2の光束を走査可能な第2走査部と、
前記第2走査部から入射する前記第2の光束を前記被検眼へ射出し、前記第2走査部の位置と前記被検眼の瞳位置とを共役関係にする第2対物光学系と、
前記第1走査部と前記被検眼との間の光路及び前記第2走査部と前記被検眼との間の光路に配置されて、前記被検眼側へ向かう前記第1の光束の光路と前記被検眼側へ向かう前記第2の光束の光路とを合成する合成部とを備え、
前記第1対物光学系と前記第2対物光学系は、前記合成部より前記被検眼側に共通の光学系を有し、
前記第1走査部から前記被検眼への前記第1対物光学系の近軸横倍率をβ1、及び
前記第2走査部から前記被検眼への前記第2対物光学系の近軸横倍率をβ2とした場合、
|β2|<|β1|
で示される条件式を満足する眼科装置。
【0229】
(付記25)
前記第1光学系は走査型レーザ検眼鏡用であり、前記第2光学系は光干渉断層計用であり、
0.25<|β1|<0.7、及び
0.2<|β2|<0.4
で示される条件式を満足する付記24に記載の眼科装置。
【0230】
(付記26)
前記第2走査部が前記第2の光束を走査する走査速度は、前記第1走査部が前記第1の光束を走査する走査速度より遅い付記24又は付記25に記載の眼科装置。
【0231】
(付記27)
所定の走査速度で第1の光束を走査する第1走査部と、
前記第1走査部から入射する前記第1の光束を被検眼へ射出し、前記第1走査部の位置と前記被検眼の瞳位置とを共役関係にする第1対物光学系と、
前記第1走査部の走査速度より遅い走査速度で前記第1の光束とは異なる第2の光束を走査する第2走査部と、
前記第2走査部から入射する前記第2の光束を前記被検眼へ射出し、前記第2走査部の位置と前記被検眼の瞳位置とを共役関係にする第2対物光学系と、
前記第1走査部と前記被検眼との間の光路及び前記第2走査部と前記被検眼との間の光路に配置されて、前記被検眼側へ向かう前記第1の光束の光路と前記被検眼側へ向かう前記第2の光束の光路とを合成する合成部とを備え、
前記第1対物光学系と前記第2対物光学系は、前記合成部より前記被検眼側に共通の光学系を有し、
前記第1走査部から前記被検眼への前記第1対物光学系の近軸角倍率をM1、及び
前記第2走査部から前記被検眼への前記第2対物光学系の近軸角倍率をM2とした場合、
|M1|<|M2|
で示される条件式を満足する眼科装置。
【0232】
(付記28)
角度走査光線を被検眼側に照射するように構成された眼科光学系であって、
(1)前記眼科光学系への入射光線と前記眼科光学系の光軸とのなす角をωinとし、
(2)前記眼科光学系から前記被検眼側への射出光線と前記光軸とのなす角をωoutとし、
(3)Mは、M=|ωout/ωin|と定義し、
前記入射光線が近軸光線であるときのMをMparとし、
前記入射光線がωinの最大角度光線であるときのMをMmaxとした場合、
Mpar<Mmax
で示される条件式を満足する眼科光学系。
【0233】
(付記29)
1.1×Mpar<Mmax
で示される条件式を満足する付記28に記載の眼科光学系。
【0234】
(付記30)
Mmax<2×Mpar
で示される条件式を満足する付記28に記載の眼科光学系。
【0235】
(付記31)
1<Mpar、及び
1<Mmax
で示される条件式を満足する付記28に記載の眼科光学系。
【0236】
(付記32)
1.5<Mpar<5.0
で示される条件式を満足する付記28~31のうちの何れか1項に記載の眼科光学系。
【0237】
(付記33)
MparからMmaxの範囲でωinが大きくなるに従いMが大きくなる付記28~32のうちの何れか1項に記載の眼科光学系。
【0238】
(付記34)
前記眼科光学系が屈折光学系である付記28~33のうちの何れか1項に記載の眼科光学系。
【0239】
(付記35)
前記被検眼の反対側から順に、
前記被検眼側に凹面を向けたメニスカスレンズ成分、
前記被検眼の反対側に凹面を向けた負レンズ、
前記被検眼側に凸面を向けた正レンズ、
正レンズ、
前記被検眼側に凸面を向けた正レンズ、
接合レンズ、
前記被検眼の反対側に凸面を向けた正レンズ、及び
前記被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズ
を含む付記28~34のうちの何れか1項に記載の眼科光学系。
【0240】
(付記36)
付記28~35のうちの何れか1項に記載の眼科光学系、及び
前記眼科光学系に関して前記被検眼の瞳位置と共役な位置に配置された走査部
を備え、
前記走査部は前記光線を前記眼科光学系に入射させ、ωinの角度で前記光線を走査する眼科装置。
【0241】
(付記37)
前記入射光線が最大画角の光線である場合、ωoutが50度以上である付記36に記載の眼科装置。
【0242】
(付記38)
前記被検眼からの反射光を受光する受光部と、
前記走査部によって制御されるωinに関するMに基づいて、前記受光部の受光結果に関するデータを補正する画像処理部と
をさらに備える付記36又は37に記載の眼科装置。
【0243】
(付記39)
前記補正したデータに基づいて前記画像処理部が前記被検眼の画像を生成する付記38に記載の眼科装置。
【0244】
(付記40)
角度走査光束を被検眼側に照射するように構成された眼科光学系であって、
(1)前記眼科光学系からの射出光束と前記眼科光学系の光軸とがなす最大角度をωmaxとし、
(2)前記射出光束と前記光軸とのなす角がωmaxのときの前記被検眼の瞳位置におけるメリディオナル方向の前記射出光束の径をPmaxとし、
(3)前記射出光束と前記光軸とのなす角が最小のときの前記被検眼の前記瞳位置におけるメリディオナル方向の前記射出光束の径をPminとした場合、
Pmax<Pmin×0.7/(cos(ωmax))
で示される条件式を満足する眼科光学系。
【0245】
(付記41)
Pmax<Pmin
で示される条件式を満足する付記40に記載の眼科光学系。
【0246】
(付記42)
0.2×Pmin<Pmax
で示される条件式を満足する付記40に記載の眼科光学系。
【0247】
(付記43)
前記眼科光学系が屈折光学系である付記40~42のうちの何れか1項に記載の眼科光学系。
【0248】
(付記44)
付記40~43のうちの何れか1項に記載の眼科光学系、及び
走査部を備え、
前記走査部は、前記眼科光学系に関して前記被検眼の前記瞳位置と共役な位置に配置され、
前記走査部は光束を前記眼科光学系に所定の走査角度範囲内で入射させ、
前記走査部は、前記眼科光学系からの射出光束によって前記被検眼を走査するように前記光束を走査する眼科装置。
【0249】
(付記45)
前記眼科光学系に入射した前記光束が最大画角の光束のとき、前記被検眼に至る前記射出光束と前記光軸とのなす角度は50度以上である付記44に記載の眼科装置。
【0250】
(付記46)
角度走査光線を被検眼側に照射するように構成された眼科光学系であって、
(1)前記眼科光学系への入射光線と前記眼科光学系の光軸とのなす角をωinとし、
(2)前記眼科光学系から前記被検眼側への射出光線と前記光軸とのなす角をωoutとし、
(3)Mは、M=|ωout/ωin|と定義し、
前記光軸との交点を含み走査される前記被検眼の中心部におけるMをMcとし、
走査される前記被検眼の周辺部におけるMをMpとした場合、
Mc<Mp
で示される条件式を満足する眼科光学系。
【0251】
(付記47)
入射光線を射出光線に移行するよう構成された眼科用対物レンズであって、
光軸に対する前記入射光線の角度をωinとし、
前記光軸に対する前記射出光線の角度をωoutとし、
Mは、M=|ωout/ωin|と定義し、
前記入射光線が近軸光線であるときのMをMparとし、
前記入射光線が最大画角の光線であるときのMをMmaxとした場合、
Mpar<Mmax
で示される条件式を満足するように、前記光軸に沿って配列された複数のレンズを備える眼科用対物レンズ。
【0252】
(付記48)
入射光束を射出光束に移行するように構成された眼科用対物レンズであって、
前記眼科用対物レンズからの前記射出光束と光軸とがなす最大角度をωmaxとし、
前記射出光束と前記光軸とのなす角がωmaxのときの、前記射出光束が前記光軸と交差する位置での前記光軸に垂直な面と交差する前記射出光束のメリディオナル方向の径をPmaxとし、
前記眼科用対物レンズからの前記射出光束と前記光軸とがなす角度が最小になるときの、前記面と交差する前記射出光束のメリディオナル方向の径をPminとした場合、
Pmax<Pmin×0.7/(cos(ωmax))
で示される条件式を満足するように、前記光軸に沿って配列された複数のレンズを備える眼科用対物レンズ。
【0253】
(付記49)
光源からの光を被検眼に導くための対物レンズを有し、
前記対物レンズの最も前記光源側のレンズ面から前記対物レンズの最も前記被検眼側のレンズ面までの光軸上の距離をTL、
前記対物レンズの焦点距離をfとした場合、
-1<TL/f<1
で示される条件式を満足する眼科光学系。
【0254】
(付記50)
前記対物レンズは、正の屈折力を有する前群と、前記前群の前記被検眼側に配置された正の屈折力を有する後群とからなり、
前記前群と前記後群とは、前記対物レンズにおけるレンズ面間の光軸上での最大の空気間隔によって隔てられており、
前記前群の焦点距離をfF、
前記後群の焦点距離をfRとした場合、
1<fF/fR<4
で示される条件式を満足する付記49に記載の眼科光学系。
【0255】
(付記51)
前記対物レンズは、正の屈折力を有する前群と、前記前群の前記被検眼側に配置された正の屈折力を有する後群とからなり、
前記前群と前記後群とは、前記対物レンズにおけるレンズ面間の光軸上での最大の空気間隔によって隔てられており、
前記最大の空気間隔をDとした場合、
0.1<D/TL<0.5
で示される条件式を満足する付記49又は50に記載の眼科光学系。
【0256】
(付記52)
前記後群は、正の屈折力を有するA群と、前記A群の前記被検眼側に配置された正の屈折力を有するB群とからなり、
前記A群は、正の屈折力を有する少なくとも1つの接合レンズを含み、前記A群の最も被検眼側のレンズの被検眼側のレンズ面は凸面もしくは平面であり、
前記B群は被検眼側に凹面を向けた1つもしくは複数の正メニスカス形状のレンズ成分からなり、
前記B群の焦点距離をfB、
前記後群の焦点距離をfRとした場合、
0.4<fB/fR<2.5
で示される条件式を満足する付記50又は51に記載の眼科光学系。
【0257】
(付記53)
前記A群に含まれる前記接合レンズを構成する正レンズの焦点距離をfApとした場合、
前記A群に含まれる全ての前記接合レンズ内の全ての正レンズが
0.9<fAp/fR<3.7
で示される条件式を満足する付記52に記載の眼科光学系。
【0258】
(付記54)
前記対物レンズから前記被検眼側へ射出する射出光線と前記対物レンズの光軸とのなす角は50度以上である付記49~53のうちの何れか1項に記載の眼科光学系。
【0259】
(付記55)
前記前群は、負屈折力のレンズ面と、前記負屈折力のレンズ面の前記被検眼側に配置された正屈折力のレンズ面を有する付記50~53のうちの何れか1項に記載の眼科光学系。
【0260】
(付記56)
前記前群は、前記被検眼側に凸面を向けた正メニスカスレンズを有する付記55に記載の眼科光学系。
【0261】
(付記57)
前記前群は、前記被検眼側に凹面を向けたメニスカスレンズを有し、前記メニスカスレンズの前記被検眼側にさらに、負レンズと正レンズとを有する付記50~53のうちの何れか1項に記載の眼科光学系。
【0262】
(付記58)
前記前群は、負レンズと、前記負レンズの前記被検眼側に配置された正レンズとを有し、前記負レンズと前記正レンズとの間に負屈折力の空気レンズが形成されている付記50~52のうちの何れか1項に記載の眼科光学系。
【0263】
(付記59)
前記負レンズと前記正レンズとは互いに凹面を対向させて配置されている付記58に記載の眼科光学系。
【0264】
(付記60)
前記前群は、前記負レンズに対して前記被検眼側と反対側に配置されて前記被検眼側に凹面を向けたメニスカスレンズと、前記正レンズの前記被検眼側に配置された正レンズとをさらに有する付記59に記載の眼科光学系。
【0265】
(付記61)
前記A群は、接合レンズを1つ以上有する付記52又は53に記載の眼科光学系。
【0266】
(付記62)
前記A群は、接合レンズを2つ以上有する付記52又は53に記載の眼科光学系。
【0267】
(付記63)
前記B群は、1つ以上の正メニスカス形状の単レンズを有する付記52又は53に記載の眼科光学系。
【0268】
(付記64)
前記B群は、1つ又は複数の正メニスカス形状の単レンズのみからなる付記52又は53に記載の眼科光学系。
【0269】
(付記65)
第1の最大走査角で第1の走査光束を射出するように構成された第1走査部と、
SLOシステムを形成するよう構成されて共通レンズ群を有し、前記第1走査部と被検眼の瞳とを第1の共役関係にし、前記第1の走査光束を前記共通レンズ群を介して前記被検眼へ射出するよう構成される第1光学系と、
第2の走査光束を射出するように構成され、前記第1走査部の前記第1の最大走査角よりも小さい第2の最大走査角を有する第2走査部と、
OCTシステムを形成するよう構成されて前記共通レンズ群を有し、前記第2走査部と前記被検眼の前記瞳とを第2の共役関係にし、前記第2の走査光束を前記共通レンズ群を介して前記被検眼に射出するよう構成される第2光学系と、
前記第1光学系の光路と前記第2光学系の光路とを合成するよう構成され、前記第1走査部と前記共通レンズ群との間に配置されて、同様に前記第2走査部と前記共通レンズ群との間に配置される合成部と
を備え、
(1)前記第1の共役関係に関する前記被検眼の前記瞳への前記第1光学系の近軸角倍率をM1とし、
(2)前記第2の共役関係に関する前記被検眼の前記瞳への前記第2光学系の近軸角倍率をM2とした場合、
|M1|<|M2|
で示される条件式を満足する眼科装置。
【0270】
(付記66)
1.5<|M1|<3.5、及び
2.5<|M2|<5
で示される条件式を満足する付記65に記載の眼科装置。
【0271】
(付記67)
前記第1走査部が前記第1の走査光束を走査する走査速度よりも遅い走査速度で、前記第2走査部が前記第2の走査光束を走査する付記65に記載の眼科装置。
【0272】
(付記68)
前記共通レンズ群が、前記合成部側から前記被検眼側に向かって順に、
前記被検眼側に凸面を向けた正レンズ、
接合レンズ、
前記合成部側に凸面を向けた正レンズ、及び
前記被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズ
を含む付記65~67のうちの何れか1項に記載の眼科装置。
【0273】
(付記69)
前記第1光学系が、前記合成部に対して前記第1走査部側に第1レンズ群を備え、
前記第1レンズ群は、前記第1走査部側から前記被検眼側に向かって順に、
前記第1走査部側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分、
前記第1走査部側に凹面を向けた負レンズ、
前記被検眼側に凸面を向けた正レンズ、及び
正レンズ
を含む付記65~68のうちの何れか1項に記載の眼科装置。
【0274】
(付記70)
前記第2光学系が、前記合成部に対して前記第2走査部側に第2レンズ群を備え、
前記第2レンズ群は、前記第2走査部側から前記被検眼側に向かって順に、
前記第2走査部側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分、
前記第2走査部側に凹面を向けた負レンズ、
前記被検眼側に凸面を向けた正レンズ、及び
正レンズ
を含む付記65~69のうちの何れか1項に記載の眼科装置。
【0275】
(付記71)
第1の最大走査角で第1の走査光束を射出するように構成された第1走査部と、
SLOシステムを形成するよう構成されて共通レンズ群を有し、前記第1走査部と被検眼の瞳とを第1の共役関係にし、前記第1の走査光束を前記共通レンズ群を介して前記被検眼に射出するよう構成される第1光学系と、
第2の走査光束を射出するように構成され、前記第1走査部の前記第1の最大走査角よりも小さい第2の最大走査角を有する第2走査部と、
OCTシステムを形成するよう構成されて前記共通レンズ群を有し、前記第2走査部と前記被検眼の前記瞳とを第2の共役関係にし、前記第2の光束を前記共通レンズ群を介して前記被検眼に射出するよう構成される第2光学系と、
前記第1光学系の光路と前記第2光学系の光路とを合成するよう構成され、前記第1走査部と前記共通レンズ群との間に配置されて、同様に前記第2走査部と前記共通レンズ群との間に配置される合成部と
を備え、
(1)前記第1走査部から前記被検眼への前記第1光学系の近軸横倍率をβ1とし、
(2)前記第2走査部から前記被検眼への前記第2光学系の近軸横倍率をβ2とした場合、
|β2|<|β1|
で示される条件式を満足する眼科装置。
【0276】
(付記72)
0.25<|β1|<0.7、及び
0.2<|β2|<0.4
で示される条件式を満足する付記71に記載の眼科装置。
【0277】
(付記73)
前記第1走査部が前記第1の走査光束を走査する走査速度よりも遅い走査速度で、前記第2走査部が前記第2の走査光束を走査する付記71に記載の眼科装置。
【0278】
(付記74)
第1の走査速度で第1の走査光束を走査するように構成された第1走査部と、
SLOシステムを形成するよう構成されて共通レンズ群を有し、前記第1走査部と被検眼の瞳とを第1の共役関係にし、前記第1の走査光束を前記共通レンズ群を介して前記被検眼に射出するよう構成される第1光学系と、
前記第1走査部の前記第1の走査速度よりも遅い第2の走査速度で、前記第1の光束と異なる第2の走査光束を走査するように構成された第2走査部と、
OCTシステムを形成するよう構成されて前記共通レンズ群を有し、前記第2走査部と前記被検眼の前記瞳とを第2の共役関係にし、前記第2の走査光束を前記共通レンズ群を介して前記被検眼に射出するよう構成される第2光学系と、
前記第1光学系の光路と前記第2光学系の光路とを合成するよう構成され、前記第1走査部と前記共通レンズ群との間に配置されて、同様に前記第2走査部と前記共通レンズ群との間に配置される合成部と
を備え、
(1)前記第1の共役関係に関する前記被検眼の前記瞳への前記第1光学系の近軸角倍率をM1とし、
(2)前記第2の共役関係に関する前記被検眼の前記瞳への前記第2光学系の近軸角倍率をM2とした場合、
|M1|<|M2|
で示される条件式を満足する眼科装置。
【0279】
(付記75)
第1の走査角範囲で第1の走査光束を射出するように構成された第1走査部と、
SLOシステムを形成するよう構成されて共通レンズ群を有し、前記第1走査部と被検眼の瞳とを第1の共役関係にし、前記第1の走査光束を前記共通レンズ群を介して第1の外部照射角Θ1で前記被検眼に射出するよう構成される第1光学系と、
前記第1の走査角範囲よりも小さい第2の走査角範囲で第2の走査光束を射出するように構成された第2走査部と、
OCTシステムを形成するよう構成されて前記共通レンズ群を有し、前記第2走査部と前記被検眼の前記瞳とを第2の共役関係にし、前記第2の走査光束を前記共通レンズ群を介して第2の外部照射角Θ2で前記被検眼に射出するよう構成される第2光学系と、
前記第1光学系の光路と前記第2光学系の光路とを合成するよう構成され、前記第1走査部と前記共通レンズ群との間に配置されて、同様に前記第2走査部と前記共通レンズ群との間に配置される合成部と
を備え、
Θ1=Θ2
で示される条件式を満足する眼科装置。
【0280】
(付記76)
前記第1の外部照射角Θ1及び前記第2の外部照射角Θ2が共に100度以上である付記75に記載の眼科装置。
【0281】
(付記77)
前記第1光学系は、前記第1走査部と第3の共役関係にあるリレー共役位置を、前記合成部と前記被検眼との間の光路中に形成する第1リレー系を有し、
前記第2光学系は、前記第2走査部と前記リレー共役位置とを第4の共役関係にする第2リレー系を有する付記65~76のうちの何れか1項に記載の眼科装置。
【0282】
(付記78)
前記リレー共役位置に配置された第3走査部をさらに備え、
前記第3走査部の走査方向は、前記第1走査部の走査方向及び前記第2走査部の走査方向と直交している付記77に記載の眼科装置。
【0283】
(付記79)
前記第3の共役関係に関する前記リレー共役位置への前記第1リレー系の近軸角倍率をMR1、
前記第4の共役関係に関する前記リレー共役位置への前記第2リレー系の近軸角倍率をMR2とした場合、
|MR1|<|MR2|
で示される条件式を満足する付記77又は78に記載の眼科装置。
【0284】
(付記80)
|MR1|=1
で示される条件式を満足する付記79に記載の眼科装置。
【0285】
(付記81)
|MR2|>1
で示される条件式を満足する付記79に記載の眼科装置。
【0286】
(付記82)
前記第1リレー系は、前記第1走査部側から順に、第1副レンズ群と、前記共通レンズ群に含まれる共通副レンズ群とを有し、
前記第2リレー系は、前記第2走査部から順に、第2副レンズ群と、前記共通副レンズ群とを有し、
前記合成部は、前記第1副レンズ群と前記共通副レンズ群との間に配置され、かつ前記第2副レンズ群と前記共通副レンズ群との間に配置される付記77~81のうちの何れか1項に記載の眼科装置。
【0287】
(付記83)
前記第1副レンズ群と前記共通副レンズ群との間を通過する前記第1の走査光束は平行光であり、
前記第2副レンズ群と前記共通副レンズ群との間を通過する前記第2の走査光束は平行光である付記82に記載の眼科装置。
【0288】
(付記84)
前記第1リレー系は、前記第1走査部側から順に、第1副レンズ群と、前記共通レンズ群に含まれる共通副レンズ群とを有し、
前記第1副レンズ群は、前記第1走査部側に凹面を向けた正メニスカスレンズと、前記第1走査部側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ成分とを有し、
前記第1副レンズ群と前記共通副レンズ群とは、光軸に垂直な平面に対して対称に構成されている付記80に記載の眼科装置。
【0289】
(付記85)
前記第2副レンズ群は、少なくとも1枚の正レンズと少なくとも1枚の負レンズとを有し、空気間隔によって隔てられて互いに対向する凹面形状のレンズ面を有する付記82に記載の眼科装置。
【0290】
(付記86)
前記共通レンズ群は、前記共通副レンズ群と、前記リレー共役位置より前記被検眼側に配置された対物レンズとを有し、
前記対物レンズは、前記リレー共役位置側から順に、正の屈折力を有する前群と、前記対物レンズにおけるレンズ面間の光軸上での最大の空気間隔によって前記前群と隔てられた正の屈折力を有する後群とを有する付記82~85の何れか1項に記載の眼科装置。
【0291】
(付記87)
前記前群は、前記リレー共役位置側から順に、正レンズと、負レンズとを有する付記86に記載の眼科装置。
【0292】
(付記88)
前記後群は、前記リレー共役位置側から順に、正の屈折力を有する接合レンズと、正レンズと、前記被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズとを有する付記86又は87に記載の眼科装置。
【符号の説明】
【0293】
12 被検眼
19 撮影光学系
22、622 第1光学スキャナ
24、624 第2光学スキャナ
26、626 合成部
27 瞳孔
28 共通レンズ群
30 広角光学系
31 SLO用対物レンズ系
32 OCT用対物レンズ系
110 眼科装置
300、600 対物レンズ系
601 第1リレー系
602 第2リレー系
625 第3光学スキャナ
AX 光軸
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
GF 前群
GR 後群
GRA A群
GRB B群
Pr リレー共役位置
RG1 第1副レンズ群
RG2 第2副レンズ群
RG3 共通副レンズ群
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43