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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
E02F9/24 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022526619
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2021020060
(87)【国際公開番号】W WO2021241652
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2020094869
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】黒髪 和重
(72)【発明者】
【氏名】石井 隆昭
(72)【発明者】
【氏名】時田 充基
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博史
(72)【発明者】
【氏名】土江 慶幸
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012323(JP,A)
【文献】特開2019-169778(JP,A)
【文献】特開2019-060108(JP,A)
【文献】特開2009-193494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、前記機体に取り付けられる作業装置と、運転室内に設けられ操作者による操作に応じて前記作業装置の動作を指示する操作装置と、前記操作者に対して通知を行う通知装置と、所定の情報を入力するための入力装置と、周囲の作業員に対して報知を行う報知装置と、前記通知装置及び前記報知装置を制御する制御装置と、前記作業員が携帯する携帯端末と通信を行う通信装置と、を備える作業機械において、
前記制御装置は、
前記作業員によって前記携帯端末が操作されることにより、前記携帯端末から送信される前記作業機械の可動範囲内への進入の承認を要求するための承認要求を前記通信装置が受信したか否かを判定し、
前記承認要求を受信したと判定した場合、前記承認要求を受信したことの通知を前記通知装置により行い、
前記入力装置に対して前記作業機械の可動範囲内への進入を承認する承認操作が行われたか否かを判定し、
前記承認要求を受信したか否か、及び、前記承認操作が行われたか否か、によって、前記操作者と前記作業員との意思疎通の度合いを表す意思疎通レベルを設定し、
前記意思疎通レベルに応じて、前記報知装置による報知態様を決定し、
決定した前記報知態様の報知を前記報知装置により行う、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記作業機械の周囲の前記作業員の位置を検出する作業員位置検出装置を備え、
前記制御装置は、
基準レベル以下の前記意思疎通レベルが設定された作業員の前記作業機械の可動範囲の外側から内側への移動を前記作業員位置検出装置が検出したとき、前記報知態様を変更する、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記作業機械の周囲の前記作業員の位置を検出する作業員位置検出装置と、
前記作業機械の作業範囲を設定する作業範囲設定装置と、を備え、
前記制御装置は、
基準レベル以上の前記意思疎通レベルが設定された作業員の前記作業範囲の外側から内側への移動を前記作業員位置検出装置が検出したとき、前記報知態様を変更する、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記作業機械の作業範囲を設定する作業範囲設定装置を備え、
前記制御装置は、
前記作業機械の作業範囲が設定されているか否かを判定し、その判定結果に基づいて、前記報知態様を決定する、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項2に記載の作業機械において、
前記制御装置は、
前記基準レベル以下の前記意思疎通レベルが設定された作業員の前記可動範囲内の存在を前記作業員位置検出装置が検出した場合、前記作業装置の動作を制限する、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械において、
前記作業機械の作業範囲を設定する作業範囲設定装置を備え、
前記制御装置は、
前記作業範囲内の前記作業員を前記作業員位置検出装置が検出した場合、前記意思疎通レベルにかかわらず、前記作業装置の動作を制限する、
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設作業現場の労働人口の減少に伴い、作業現場の効率化が求められている。作業現場の効率化に向けた課題の1つとして、作業機械と、作業機械の周囲で作業を行う作業員との円滑な協働作業の実現が挙げられる。一般的な作業現場では、作業機械の操作の支援、物資の運搬、施工指示等の作業を行う作業員が油圧ショベル等の作業機械の周囲に存在していることが多い。
【0003】
作業員は、通常、作業機械の可動範囲外に位置している。作業員は、可動範囲内へ進入する場合には、作業機械との接触を防ぐために、停止中の作業機械が動き出さないこと、または、作業機械の操作者が作業員の存在に気付いていることを事前に確認する必要がある。しかしながら、作業機械が動き出す可能性があるかどうかについては、周囲から一目で判断することは難しい。また、騒音環境下にあり、作業に集中している作業機械の操作者とコミュニケーションを取ることは容易ではない。このため、可動範囲内に進入してよいかどうかの判断をするまでに時間を要してしまい、作業効率の低下を招くおそれがある。
【0004】
特許文献1には、エンジンの始動を表示する表示器と、旋回時に旋回を表示する表示灯と、を備えた作業機械が開示されている。特許文献1に記載の作業機械では、エンジン始動時に、作業装置に設けられた表示器が自動的に点滅するとともに、スピーカからエンジン始動を知らせるための音声が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-327469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、作業機械のエンジンの始動、旋回等の動作を表示器、スピーカ等により作業機械の周囲の作業員に一方的に知らせるものである。したがって、作業員は、操作者が意図している動作までは判断することができない。また、作業員は、作業機械の操作者が自身の存在に気付いているのかどうかを判断することもできない。このため、例えば、作業員が作業機械のエンジンが停止状態であることを確認して作業機械の可動範囲内に進入した後、作業機械の操作者がエンジンを始動した場合には、その後しばらくの間、操作者には作業を行う意思がない場合であっても、作業員は作業機械の可動範囲外へ退避する必要が生じる。また、退避後、作業員は、作業機械の操作者に自身の存在を知ってもらうためのコミュニケーションをとる必要が生じる。その結果、作業現場での作業の効率が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、作業員が作業機械の可動範囲内に進入する際において、作業員と作業機械の操作者との意思疎通を適切にとることができ、作業効率の向上を図ることが可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による作業機械は、機体と、前記機体に取り付けられる作業装置と、運転室内に設けられ操作者による操作に応じて前記作業装置の動作を指示する操作装置と、前記操作者に対して通知を行う通知装置と、所定の情報を入力するための入力装置と、周囲の作業員に対して報知を行う報知装置と、前記通知装置及び前記報知装置を制御する制御装置と、前記作業員が携帯する携帯端末と通信を行う通信装置と、を備える。前記制御装置は、前記作業員によって前記携帯端末が操作されることにより、前記携帯端末から送信される前記作業機械の可動範囲内への進入の承認を要求するための承認要求を前記通信装置が受信したか否かを判定し、前記承認要求を受信したと判定した場合、前記承認要求を受信したことの通知を前記通知装置により行い、前記入力装置に対して前記作業機械の可動範囲内への進入を承認する承認操作が行われたか否かを判定し、前記承認要求を受信したか否か、及び、前記承認操作が行われたか否か、によって、前記操作者と前記作業員との意思疎通の度合いを表す意思疎通レベルを設定し、前記意思疎通レベルに応じて、前記報知装置による報知態様を決定し、決定した前記報知態様の報知を前記報知装置により行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業員が作業機械の可動範囲内に進入する際において、作業員と作業機械の操作者との意思疎通を適切にとることができ、作業効率の向上を図ることが可能な作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】油圧ショベルの周囲監視システムについて示す図。
図2】運転室の内部を運転席の後側から前方に向かって見たときの概略図。
図3】油圧ショベルに搭載される油圧システム及びコントローラを示す図。
図4】コントローラの機能ブロック図。
図5】油圧ショベルを上方から見た図であり、油圧ショベルの可動範囲及び作業範囲について示す。
図6】タッチパネルモニタの作業範囲の設定画面について示す図。
図7A】作業員位置テーブルについて示す図。
図7B】承認要求監視テーブルを示す図。
図7C】意思疎通レベルテーブルを示す図。
図8】コントローラにより実行される位置特定処理について示すフローチャート。
図9】コントローラにより実行される意思疎通レベル設定処理について示すフローチャート。
図10】コントローラにより実行される通知処理について示すフローチャート。
図11】コントローラにより実行される外部報知処理について示すフローチャート。
図12図11の第1報知フラグ設定処理について示すフローチャート。
図13図11の第2報知フラグ設定処理について示すフローチャート。
図14】コントローラにより実行される動作制御フラグの設定処理について示すフローチャート。
図15】タッチパネルモニタの画面について示す図であり、作業モードが進入禁止モードに設定されているときの画面を示す。
図16】タッチパネルモニタの画面の遷移を説明する図であり、作業員が承認要求を出してから承認されるまでの画面の遷移について示す。
図17】タッチパネルモニタの画面の遷移を説明する図であり、作業員が作業範囲内に進入した場合の画面の遷移について示す。
図18】タッチパネルモニタの画面の遷移を説明する図であり、作業員が承認要求を出すことなく可動範囲内に進入した場合の画面の遷移について示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る作業機械について説明する。本実施形態では、作業機械が、クローラ式の油圧ショベルである例について説明する。
【0012】
図1は、油圧ショベル1の周囲監視システム90について示す図である。説明の便宜上、図1に示すように油圧ショベル1の前後及び上下方向を規定する。つまり、本実施形態では、特に断り書きのない場合は、運転席の前方(同図中では左方向)を油圧ショベル1の前方とする。
【0013】
周囲監視システム90は、油圧ショベル1と、油圧ショベル1の周囲で作業を行う作業員が携帯する携帯端末5と、を含む。なお、図1では、図面の簡略化のために、1台の携帯端末5のみを示しているが、複数の作業員が油圧ショベル1の周囲で作業をしている場合もある。
【0014】
本実施形態では、一例として、携帯端末5が、タブレットPCである例について説明する。なお、携帯端末5は、タブレットPCに限らず、スマートフォン、ノートPC等であってもよい。携帯端末5は、油圧ショベル1と無線通信を行うための無線通信装置52を備えている。
【0015】
携帯端末5は、タッチパネル51と、油圧ショベル1と無線通信を行うための無線通信装置52と、携帯端末5の位置を演算するためのGNSSモジュール53と、端末コントローラ54と、を備える。端末コントローラ54は、タッチパネル51、無線通信装置52及びGNSSモジュール53等の各部を制御する端末制御装置として機能する。端末コントローラ54は、動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)、記憶装置としての所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリと、記憶装置としてのEEPROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリと、図示しない入出力インタフェース(I/Oインタフェース)と、その他の周辺回路と、を備えたマイクロコンピュータで構成される。
【0016】
タッチパネル51は、携帯端末5の前面(正面)に設けられている。タッチパネル51は、入力部と、各種情報が表示される表示部と、を有する。表示部は、例えば液晶ディスプレイであり、端末コントローラ54からの信号に基づいて、各種情報を表す表示画像を表示画面に表示することにより、作業員に対して各種情報の通知を行う。入力部は、例えば、手指、タッチペン等により入力操作が可能なタッチセンサであり、操作者の操作に応じて、所定の情報を端末コントローラ54に入力する。
【0017】
GNSSモジュール53は、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球衛星測位システム)を利用して、携帯端末5の位置を検出する装置である。つまり、携帯端末5は、自身の位置情報を取得する機能を有している。端末コントローラ54は、複数の測位衛星からの衛星信号(GNSS電波)を取得し、地理座標系(グローバル座標系)における自身の位置を演算する。
【0018】
端末コントローラ54は、無線通信装置52によって、端末ID及び自身の位置に関する情報等を油圧ショベル1に送信する。
【0019】
油圧ショベル1は、機体(車体)4と、機体4に取り付けられる作業装置10と、を備える。機体4は、走行体2と、走行体2上に旋回可能に設けられた旋回体3と、を備え、旋回体3の前部に作業装置10が取り付けられている。走行体2は、左右一対のクローラを走行モータ2aによって駆動することにより走行する。旋回体3は、旋回モータ3aによって駆動され、走行体2に対して回動する。
【0020】
旋回体3は、旋回フレーム8と、旋回フレーム8の前部左側に設けられる運転室(キャブ)7と、旋回フレーム8の後部に設けられるカウンタウエイト9と、旋回フレーム8における運転室7の後側に設けられるエンジン室6と、を有する。エンジン室6には、動力源であるエンジン80、及びエンジン80により駆動される油圧ポンプ等の油圧機器が収容されている。旋回フレーム8の前部中央には作業装置10が回動可能に連結されている。
【0021】
作業装置10は、回動可能に連結される複数の被駆動部材及び被駆動部材を駆動する複数の油圧シリンダを有する多関節型の作業装置である。本実施形態では、3つの被駆動部材としてのブーム11、アーム12及びバケット13が、直列的に連結される。ブーム11は、その基端部が旋回フレーム8の前部においてブームピン11bによって回動可能に連結される。アーム12は、その基端部がブーム11の先端部においてアームピン12bによって回動可能に連結される。バケット13は、アーム12の先端部においてバケットピン13bによって回動可能に連結される。ブームピン11b、アームピン12b及びバケットピン13bは、互いに平行に配置され、作業装置10の各被駆動部材が同一面内で相対回転可能とされている。
【0022】
ブーム11は、アクチュエータである油圧シリンダ(以下、ブームシリンダ11aとも記す)によって駆動され、旋回フレーム8に対して回動する。アーム12は、アクチュエータである油圧シリンダ(以下、アームシリンダ12aとも記す)によって駆動され、ブーム11に対して回動する。バケット13は、アクチュエータである油圧シリンダ(以下、バケットシリンダ13aとも記す)によって駆動され、アーム12に対して回動する。
【0023】
運転室7の外郭には、油圧ショベル1の外部に対して報知を行う報知装置である外部報知用ブザー23が設けられている。外部報知用ブザー23は、音を出力することにって、油圧ショベル1の周囲の作業員に対して報知を行う音出力装置である。旋回体3の外周には、油圧ショベル1の外部に対して報知を行う報知装置である外部報知用ライト22が設けられている。外部報知用ライト22は、旋回体3の左側面、右側面及び後面に設けられる。外部報知用ライト22は、光を発することにより、油圧ショベル1の周囲の作業員に対して報知を行う発光装置である。外部報知用ライト22は、複数の発光ダイオード(LED)を備えている。
【0024】
図2は、運転室7の内部を運転席75の後側から前方に向かって見たときの概略図である。図2に示すように、運転室7内には、操作者が着座する運転席75と、油圧ショベル1の各部を操作するための操作レバー(B1~B4)と、油圧ショベル1の動作を制御するコントローラ100と、コントローラ100からの信号に基づいて所定の表示画像を表示画面に表示させるタッチパネルモニタ18と、が設けられている。タッチパネルモニタ18は、運転席75側からみて右側のピラー76に取り付けられている。コントローラ100は、運転室7における運転席75の後方に設けられている。
【0025】
運転席75の右側には、バケット13の操作及びブーム11の操作を行うための右操作レバーB1が設けられ、運転席75の左側には、旋回体3の操作及びアーム12の操作を行うための左操作レバーB2が設けられている。運転席75の前側には左右一対の走行レバー(左走行レバーB4及び右走行レバーB3)が設けられている。左走行レバーB4は左側のクローラの操作を行うための操作レバーであり、右走行レバーB3は右側のクローラの操作を行うための操作レバーである。
【0026】
左側の操作レバーB2の左側(ドア側)には、ゲートロックレバー60aが設けられている。ゲートロックレバー60aは、運転室7の出入りを許可するロック位置(上げ位置)と、運転室7の出入りを禁止するロック解除位置(下げ位置)とに選択的に操作が可能な部材である。
【0027】
タッチパネルモニタ18は、各種情報を表示することにより操作者に情報の提示を行う表示部18aと、油圧ショベル1の各種設定を行うための入力部18bと、を有する。タッチパネルモニタ18は、コントローラ100に接続されている。表示部18aは、例えば液晶ディスプレイであり、コントローラ100からの制御信号に基づいて、油圧ショベル1の稼働情報等の各種情報を表す表示画像を表示画面に表示する。入力部18bは、例えば、手指、タッチペン等により入力操作が可能なタッチセンサであり、操作者の操作に応じて、所定の情報をコントローラ100に入力する。つまり、タッチパネルモニタ18は、操作者によって操作され、操作に応じた信号をコントローラ100に入力する入力装置として機能する。
【0028】
図3は、油圧ショベル1に搭載される油圧システム30及びコントローラ100を示す図である。なお、以下では、油圧ショベル1に搭載される走行モータ(油圧モータ)2a、旋回モータ(油圧モータ)3a、ブームシリンダ(油圧シリンダ)11a、アームシリンダ(油圧シリンダ)12a及びバケットシリンダ(油圧シリンダ)13aを総称して油圧アクチュエータとも記す。油圧システム30には、複数の油圧アクチュエータが設けられているが、図3では、作業装置10の被駆動部材を駆動するための油圧シリンダ37(例えば、ブームシリンダ11a)を代表して図示している。また、油圧アクチュエータを操作する電気式の操作装置34及び操作装置34の操作に応じて駆動される電磁比例弁33a,33b及び流量制御弁40は、複数の油圧アクチュエータごとに設けられるが、図3では、代表して、一つの油圧アクチュエータを制御するための構成のみを図示している。
【0029】
油圧システム30は、メインポンプ31及びパイロットポンプ32と、メインポンプ31から吐出される作動流体としての作動油によって駆動される油圧シリンダ37と、メインポンプ31から油圧シリンダ37への作動油の流れを制御する流量制御弁40と、流量制御弁40の受圧部41a,41b(41)への指令パイロット圧を生成する電磁比例弁33a,33b(33)と、を備える。
【0030】
メインポンプ31及びパイロットポンプ32は、エンジン80に接続され、エンジン80によって駆動されて作動油(圧油)を吐出する。メインポンプ31は可変容量型の油圧ポンプであり、パイロットポンプ32は固定容量型の油圧ポンプである。エンジン80は、油圧ショベル1の動力源であり、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関により構成される。
【0031】
電磁比例弁33a,33bは、パイロット油圧源であるパイロットポンプ32の吐出圧(油圧)を元圧として、流量制御弁40の受圧部41a,41bへ出力する指令パイロット圧を生成する減圧弁である。電磁比例弁33a,33bは、コントローラ100からの信号に基づいて制御される。操作装置34は、操作者による操作に応じて、作業装置10、旋回体3及び走行体2の動作を指示するものであり、傾動操作可能な操作レバー(操作部材)34aと、操作レバー34aの操作量(操作角)に応じた信号をコントローラ100に出力する操作センサ34bと、を有する。コントローラ100は、操作装置34からの信号に基づいて電磁比例弁33a,33bを制御する。
【0032】
電磁比例弁33aによって生成された指令パイロット圧が、中立位置(N)に位置している流量制御弁40の受圧部41aに作用すると、流量制御弁40が一方に駆動して、流量制御弁40が中立位置(N)から第1位置(P1)に切り換えられる。これにより、メインポンプ31から吐出された圧油が油圧シリンダ37(ブームシリンダ11a)のボトム室に導かれるとともにロッド室からタンク39に作動油が排出され、油圧シリンダ37(ブームシリンダ11a)が伸長する。その結果、被駆動部材(ブーム11)が第1の方向(上方向)に回動する。
【0033】
電磁比例弁33bによって生成された指令パイロット圧が、中立位置(N)に位置している流量制御弁40の受圧部41bに作用すると、流量制御弁40が他方に駆動して、流量制御弁40が中立位置(N)から第2位置(P2)に切り換えられる。これにより、メインポンプ31から吐出された圧油が油圧シリンダ37(ブームシリンダ11a)のロッド室に導かれるとともにボトム室からタンク39に作動油が排出され、油圧シリンダ37(ブームシリンダ11a)が収縮する。その結果、被駆動部材(ブーム11)が第2の方向(下方向)に回動する。
【0034】
メインポンプ31から吐出された作動油は、流量制御弁40を通じて油圧シリンダ37に供給され、作業装置10が駆動される。なお、図示しないが、メインポンプ31から吐出された作動油は、流量制御弁を通じて旋回モータ3a及び走行モータ2aに供給され、旋回体3及び走行体2のそれぞれが駆動される。
【0035】
ゲートロックレバー装置60は、ゲートロックレバー60aと、バッテリ(不図示)からの電力を供給または遮断するためのシャットオフリレー60cと、ゲートロックレバー60aの操作位置を検出してコントローラ100に出力する操作位置センサ60bと、を有する。パイロットポンプ32と電磁比例弁33との間のパイロットラインには、ゲートロックレバー60aの操作位置に応じて、パイロットラインを連通する連通位置と、パイロットラインの連通を遮断する遮断位置との間で切り換えられる電磁切換弁(以下、ロック弁と記す)36が設けられている。
【0036】
ゲートロックレバー60aがロック解除位置(下げ位置)に操作されると、シャットオフリレー60cがオンされ(閉状態とされ)、バッテリ(不図示)からロック弁36に電力が供給される。これにより、ロック弁36が連通位置に切り換えられる。このため、ゲートロックレバー60aがロック解除位置にある状態では、操作レバー34aの操作量に応じた指令パイロット圧が電磁比例弁33によって生成され、操作された操作レバー34aに対応する油圧アクチュエータが動作する。つまり、ゲートロックレバー60aがロック解除位置(下げ位置)に操作されると、操作装置34によるアクチュエータの動作が可能な状態となる。
【0037】
ゲートロックレバー60aがロック位置(上げ位置)に操作されると、シャットオフリレー60cがオフされ(開状態とされ)、バッテリ(不図示)からロック弁36への電力の供給が遮断される。これにより、ロック弁36が遮断位置に切り換えられる。このため、電磁比例弁33へのパイロット元圧が遮断され、操作レバー34aによる操作が無効化される。つまり、ゲートロックレバー60aがロック位置(上げ位置)に操作されると、操作装置34によるアクチュエータの動作が不能な状態となる。
【0038】
油圧ショベル1は、油圧ショベル1に搭載されるタッチパネルモニタ18、外部報知用ライト22、外部報知用ブザー23、及び電磁比例弁33等の各機器を制御する制御装置であるコントローラ100と、携帯端末5(図1参照)と無線通信を行う通信装置20と、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球衛星測位システム)を利用して油圧ショベル1の方位及び位置を演算するGNSS受信装置50と、複数のカメラを有する周囲監視装置55と、を備える。
【0039】
コントローラ100は、動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)111、記憶装置としてのROM(Read Only Memory)112、記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)113、入力インタフェース114及び出力インタフェース115、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ100は、1つのマイクロコンピュータで構成してもよいし、複数のマイクロコンピュータで構成してもよい。コントローラ100のROM112は、EEPROM等の不揮発性メモリであり、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、コントローラ100のROM112は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。RAM113は揮発性メモリであり、CPU111との間で直接的にデータの入出力を行うワークメモリである。RAM112は、CPU111がプログラムを演算実行している間、必要なデータを一時的に記憶する。なお、コントローラ100は、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の記憶装置をさらに備えていてもよい。
【0040】
CPU111は、ROM112に記憶された制御プログラムをRAM113に展開して演算実行する処理装置であって、制御プログラムに従って入力インタフェース114及びROM112,RAM113から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。入力インタフェース114には、通信装置20、入力部18b、GNSS受信装置50、周囲監視装置55、操作装置34の操作センサ34b、及び、ゲートロックレバー装置60の操作位置センサ60bからの信号が入力される。入力インタフェース114は、入力された信号をCPU111で演算可能なように変換する。出力インタフェース115は、CPU111での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を油圧システム30の電磁比例弁33a,33b、表示部18a、外部報知用ライト22、外部報知用ブザー23等に出力する。
【0041】
通信装置20は、例えば、2.4GHz帯、5GHz帯等の帯域を感受帯域とする通信アンテナを含む通信インタフェースを有する。通信装置20は、無線基地局を介さずに携帯端末5に搭載される無線通信装置52と直接、情報(データ)の授受を行う。通信装置20は、携帯端末5の無線通信装置52との間で、例えば、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)802.11規格に基づく無線通信方式であるWi-Fi(登録商標)に基づいて無線通信を行う無線LANルータである。なお、通信方式は、これに限定されるものではなく、例えば、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの通信方式を採用することもできる。なお、油圧ショベル1と携帯端末5は、携帯電話通信網等の広域ネットワークに接続される無線基地局等を介して、間接的に情報の授受を行うようにしてもよい。
【0042】
GNSS受信装置50は、旋回体3の後部に取り付けられる左右一対のGNSSアンテナ50aを備えている。GNSSアンテナ50aは、旋回体3の位置を検出する位置センサとして機能する。GNSS受信装置50は、GNSSアンテナ50aからの情報に基づき、グローバル座標系における旋回体3の位置及び方位を演算する演算装置50cを備えている。
【0043】
周囲監視装置55は、旋回体3の前方、左方、右方及び後方を撮影するカメラを備えている。コントローラ100は、カメラで撮影された画像を取得し、取得した画像に対してレンズ歪み補正を行い、さらに上方視点画像への視点変換処理を行う。コントローラ100は、視点変換処理を行った画像と、油圧ショベル1のイラストとを合成し、俯瞰画像191(図15参照)を生成する。コントローラ100は、生成した俯瞰画像191をタッチパネルモニタ18の表示画面に表示させる。
【0044】
本実施形態に係るコントローラ100は、油圧ショベル1の周囲で作業を行う作業員が、油圧ショベル1の可動範囲内への進入可否の判断を容易に行うことができるように、外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23を所定の報知態様で報知させる。所定の報知態様は、油圧ショベル1の操作者と、油圧ショベル1の周囲で作業を行う作業員との意思疎通の度合いに応じて、コントローラ100により決定される。意思疎通の度合いは、作業員によって携帯端末5が操作されることにより、携帯端末5から送信される油圧ショベル1の可動範囲内への進入の承認(許可)を要求するための信号(以下、承認要求)を通信装置20が受信したか否かの判定結果、及び、操作者によってタッチパネルモニタ18に対して作業員の可動範囲内への進入を承認(許可)するための承認操作が行われたか否かの判定結果によって決定される。
【0045】
コントローラ100は、作業員から可動範囲内への進入の承認要求が出された場合、油圧ショベル1の操作者による承認操作待ちの状態であることを作業員に知らせるための報知態様で報知が行われるように報知装置(22,23)を制御する。また、コントローラ100は、操作者によって可動範囲内への進入を承認(許可)する承認操作が行われた場合には、その旨を作業員に知らせるための報知態様で報知が行われるように報知装置(22,23)を制御する。このように、本実施形態に係るコントローラ100は、油圧ショベル1の操作者と、油圧ショベル1の周囲の作業員との意思疎通の度合いに応じた報知態様で報知装置(22,23)による報知を行う。以下、詳しく説明する。
【0046】
図4は、コントローラ100の機能ブロック図である。図4に示すように、コントローラ100は、ROM112に記憶されているプログラムを実行することにより、位置特定部121、モニタ制御部122、承認要求判定部123、意思疎通レベル決定部124、モード設定部125、報知制御部126、動作可否判定部127、操作量演算部128及び弁制御部(アクチュエータ制御部)129として機能する。
【0047】
位置特定部121は、GNSS受信装置50から出力されるグローバル座標系における油圧ショベル1の位置及び方位の情報(以下、ショベル位置情報とも記す)、並びに、通信装置20から出力されるグローバル座標系における携帯端末5の位置の情報(以下、作業員位置情報とも記す)に基づいて、油圧ショベル1に対する携帯端末5の相対的な位置、すなわちショベル基準の作業員の位置を演算する。このように、本実施形態では、GNSS受信装置50、通信装置20及びコントローラ100が、油圧ショベル1の周囲の作業員の位置を検出する作業員位置検出装置として機能する。
【0048】
位置特定部121は、ショベル基準の作業員の位置と、ROM112の記憶領域である可動範囲記憶部141に記憶されている可動範囲の情報と、に基づいて、作業員が可動範囲内に存在しているか否かを判定する。また、位置特定部121は、ショベル基準の作業員の位置と、ROM112の記憶領域である作業範囲記憶部142に記憶されている作業範囲の情報と、に基づいて、作業員が作業範囲内に存在しているか否かを判定する。
【0049】
位置特定部121は、上記判定結果に基づいて、作業員の位置を特定し、特定した作業員の位置と端末IDとを関連付けた作業員位置テーブルをROM112の記憶領域である位置記憶部に記憶する。図7Aは、作業員位置テーブルを示す図である。位置特定部121は、端末IDごとに、作業員の位置を特定し、特定した作業員の位置情報(以下、位置特定情報とも記す)を端末IDに関連付けて記憶する。
【0050】
作業員が可動範囲外に存在していると判定された場合、位置特定部121は、その作業員の携帯端末5の端末IDと関連付けて、作業員の位置を「可動範囲外」として設定する。作業員が可動範囲内に存在していると判定され、かつ、作業員が作業範囲外に存在していると判定された場合、位置特定部121は、その作業員の携帯端末5の端末IDと関連付けて、作業員の位置を「可動範囲内」として設定する。作業員が作業範囲内に存在していると判定された場合、位置特定部121は、その作業員の携帯端末5の端末IDと関連付けて、作業員の位置を「作業範囲内」として設定する。
【0051】
図5は、油圧ショベル1を上方から見た図であり、油圧ショベル1の可動範囲S0及び作業範囲S1について示す。図5に示すように、可動範囲S0は、油圧ショベル1の最大旋回半径Rxの円形状の範囲である。最大旋回半径Rxは、作業装置10を前方(旋回中心軸に直交する方向)に向かって伸ばしたときの、旋回体3の旋回中心軸Oからバケット13の先端までの長さに相当する。換言すれば、最大旋回半径Rxは、旋回中心軸Oに直交する方向における、旋回中心軸Oから作業装置10が届く位置までの最大の長さに相当する。なお、本実施形態では、可動範囲S0を最大旋回半径Rxの円形状の範囲としたが、最大旋回半径Rxに許容値を加算した半径の円形状の範囲を可動範囲S0としてもよい。可動範囲S0は、油圧ショベル1の各部の寸法に基づいて予め定められ、ROM112の可動範囲記憶部141に記憶されている。
【0052】
作業範囲S1は、可動範囲S0内に設定される範囲であって、操作者がタッチパネルモニタ18を操作することによって任意に設定することのできる範囲である。モニタ制御部122は、タッチパネルモニタ18からの入力信号に基づいて、作業範囲S1を設定する。モニタ制御部122は、作業範囲S1の左端を規定する左旋回限界角度θLと、作業範囲S1の右端を規定する右旋回限界角度θRと、を設定する。また、モニタ制御部122は、作業範囲の最大半径を規定する作業半径Rwを設定する。
【0053】
作業範囲の設定方法について説明する。本実施形態では、タッチパネルモニタ18が作業範囲S1を設定するための作業範囲設定装置として機能する。タッチパネルモニタ18に所定の操作がなされると、作業範囲の設定画面が表示される。図6は、タッチパネルモニタ18の作業範囲の設定画面について示す図である。図6に示すように、タッチパネルモニタ18に表示される設定画面には、左旋回限界角度θL(図5参照)を入力するための左旋回角入力部195aと、右旋回限界角度θR(図5参照)を入力するための右旋回角入力部195bと、作業半径Rw(図5参照)を入力するための旋回半径入力部195cと、が含まれる。
【0054】
操作者は、左旋回角入力部195a、右旋回角入力部195b及び旋回半径入力部195cをそれぞれタッチ操作して数値を入力し、決定部195dをタッチ操作することにより、作業範囲を設定することができる。モニタ制御部122は、図6に示す設定画面から操作者による作業範囲の設定操作が行われると、作業範囲S1を設定する。本実施形態では、図5に示すように、左旋回限界角度θL、右旋回限界角度θR及び作業半径Rwで規定される旋回体3前方の扇状の領域A1と、旋回中心軸Oから旋回体3の最外周部までの距離を半径Rsとする円形状の領域A2と、を合成した領域が、作業範囲S1として設定される。作業範囲S1は、ROM112の作業範囲記憶部142に記憶される。これにより、作業範囲S1が設定された状態となる。
【0055】
なお、操作者は、作業範囲S1を変更したい場合には、タッチパネルモニタ18を用いて、新たな作業範囲S1を設定する操作を行う。これにより、モニタ制御部122は、作業範囲記憶部142に記憶されている作業範囲S1の情報を更新する処理を行う。また、操作者は、作業範囲S1の設定を解除したい場合には、タッチパネルモニタ18を用いて、作業範囲S1の設定の解除操作を行う。これにより、モニタ制御部122は、作業範囲記憶部142に記憶されている作業範囲S1の情報を消去する処理を行う。これにより、作業範囲S1が未設定の状態になる。
【0056】
作業範囲S1が設定されると、油圧ショベル1は、作業範囲S1内での動作のみが許容され、作業範囲S1外に油圧ショベル1の一部が逸脱するような動作が禁止される。例えば、旋回体3を左旋回させるための操作が行われ、その操作量が所定の操作量(最大操作量等)で維持された場合、旋回体3は左旋回動作を行うが、左旋回限界角度θLに近づくにつれて旋回体3の速度が低下し、左旋回限界角度θLで停止する。また、作業装置10についても、同様に、作業装置10が作業半径Rwを越えるような操作がなされた場合、作業装置10は停止する。このように、作業範囲S1外に油圧ショベル1の一部が逸脱するような動作を禁止するための制御は、油圧ショベル1の姿勢を検出する姿勢検出装置からの情報に基づいて、コントローラ100によって行われる。姿勢検出装置は、旋回体3に対するブーム11の角度を検出するブーム角センサ、ブーム11に対するアーム12の角度を検出するアーム角センサ、アーム12に対するバケット13の角度を検出するバケット角センサ、走行体2に対する旋回体3の角度(旋回角度)を検出する旋回角センサを含む。
【0057】
図8は、コントローラ(位置特定部121)により実行される位置特定処理について示すフローチャートである。図8に示すフローチャートの処理は、例えば、携帯端末5と通信装置20とが無線通信により接続されることにより開始され、所定の周期で繰り返し実行される。
【0058】
図8に示すように、ステップS110において、位置特定部121は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末情報を取得し、ステップS115へ進む。携帯端末5の端末情報には、携帯端末5を識別するための固有の情報である端末ID、携帯端末5のグローバル座標系における携帯端末5の位置の情報(作業員位置情報)、及び、可動範囲S0内への進入の承認要求等の情報が含まれる。
【0059】
ステップS115において、位置特定部121は、GNSS受信装置50からグローバル座標系における油圧ショベル1の位置及び方位の情報(ショベル位置情報)を取得し、ステップS120へ進む。
【0060】
ステップS120において、位置特定部121は、可動範囲記憶部141から可動範囲S0の情報を取得するとともに作業範囲記憶部142から作業範囲S1の情報を取得する。位置特定部121は、ステップS120において可動範囲S0及び作業範囲S1の情報を取得すると、ループ処理(ステップS130,S170)を実行する。
【0061】
ループ処理(ステップS130,S170)は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5に対する処理が完了すると終了し、ループ処理が終了すると図8のフローチャートに示す処理を終了する。以下、ループ処理(ステップS130,S170)において実行される処理について説明する。
【0062】
ステップS135において、位置特定部121は、ステップS110で取得した作業員位置情報及びステップS115で取得したショベル位置情報に基づいて、油圧ショベル1に対する携帯端末5の相対的な位置(ショベル基準の作業員の位置)を演算し、ステップS140へ進む。
【0063】
ステップS140において、位置特定部121は、ステップS135で演算したショベル基準の作業員の位置と、ステップS120で取得した可動範囲S0の情報に基づいて、作業員が可動範囲S0内に存在しているか否かを判定する。ステップS140において、作業員が可動範囲S0内に存在していると判定されるとステップS145へ進み、作業員が可動範囲S0内に存在していない、すなわち作業員は可動範囲S0外に存在していると判定されるとステップS150へ進む。
【0064】
ステップS145において、位置特定部121は、ステップS135で演算したショベル基準の作業員の位置と、ステップS120で取得した作業範囲S1の情報に基づいて、作業員が作業範囲S1内に存在しているか否かを判定する。作業員が作業範囲S1内に存在していると判定されるとステップS160へ進み、作業員が作業範囲S1内に存在していない、すなわち作業員は作業範囲S1外に存在していると判定されるとステップS155へ進む。
【0065】
ステップS150において、位置特定部121は、端末IDと関連付けて、作業員の位置を「可動範囲外」に設定する。ステップS150では、作業員が可動範囲外に存在しているという判定結果が作業員位置テーブル(図7A参照)に記憶される。なお、作業範囲は、可動範囲に包含されるため、作業員が可動範囲外に存在していることを表す判定結果は、作業員が作業範囲外に存在していることを意味する。ステップS155において、位置特定部121は、端末IDと関連付けて、作業員の位置を「可動範囲内」に設定する。ステップS155では、作業員が可動範囲内であって、かつ、作業範囲外に存在しているという判定結果が作業員位置テーブル(図7A参照)に記憶される。ステップS160において、位置特定部121は、端末IDと関連付けて、作業員の位置を「作業範囲内」に設定する。ステップS160では、作業員が可動範囲内であって、かつ、作業範囲内に存在しているという判定結果が作業員位置テーブル(図7A参照)に記憶される。
【0066】
図8のフローチャートに示す処理は、所定の制御周期で繰り返し実行されるため、作業員が可動範囲外から可動範囲内へ移動したり、作業員が作業範囲外から作業範囲内に移動したりすると、図7Aに示す作業員位置テーブルが更新される。
【0067】
図4に示すモード設定部125は、作業範囲記憶部142を参照し、油圧ショベル1の作業範囲S1が設定されているか否かを判定し、その判定結果に基づいて作業モードを設定する。上述したように、作業範囲S1が設定されると、作業範囲S1を超えるような油圧ショベル1の動作が禁止される状態となる。つまり、作業員は、作業範囲S1の外側であれば、可動範囲S0の内側へ進入することが可能な状態となる。このため、モード設定部125は、作業範囲S1が設定されていると判定すると、作業モードを進入可能モードに設定する。作業範囲S1が設定されていない場合、操作者によって可動範囲S0全域に対して油圧ショベル1を動作させる操作が行われる可能性がある。このため、モード設定部125は、作業範囲S1が設定されていないと判定すると、作業モードを進入禁止モードに設定する。
【0068】
携帯端末5は、作業員の操作に基づいて、油圧ショベル1の可動範囲S0内への進入の承認を要求するための承認要求を油圧ショベル1に送信する。承認要求判定部123は、携帯端末5から送信される承認要求を通信装置20が受信したか否かを判定する。承認要求判定部123は、通信装置20に無線通信により接続されている携帯端末5ごとに、承認要求を受信したか否かを判定し、その判定結果をテーブル形式でROM112に記憶する。
【0069】
具体的には、承認要求の有無を携帯端末5の端末IDと関連付けた承認要求監視テーブルをROM112の記憶領域である承認状態記憶部に記憶する。図7Bは、承認要求監視テーブルを示す図である。承認要求判定部123は、携帯端末5からの承認要求を受信していない場合、その携帯端末5の端末IDと関連付けて、承認要求の状態を「承認要求なし」として設定する。承認要求判定部123は、携帯端末5からの承認要求を受信した場合、その携帯端末5の端末IDと関連付けて、承認要求の状態を「承認要求あり」として設定する。
【0070】
承認要求判定部123によって、承認要求を通信装置20が受信したと判定されると、後述するように、モニタ制御部122は、承認要求を受信したことを表す表示画像をタッチパネルモニタ18の表示画面に表示させることにより、操作者に対して、承認要求を受けていることの通知を行う。つまり、タッチパネルモニタ18は、操作者に対して承認要求を受けたことの通知を行う通知装置としての機能を有する。
【0071】
意思疎通レベル決定部124は、承認要求監視テーブル(図7B参照)を参照し、タッチパネルモニタ18に対して、油圧ショベル1の可動範囲S0内への進入を承認する承認操作が行われたか否かを判定する。意思疎通レベル決定部124は、承認要求監視テーブル(図7B参照)の情報(すなわち、承認要求を受信したか否かの判定結果)、及び、承認操作が行われたか否かの判定結果に基づいて、油圧ショベル1の操作者と、携帯端末5を所持する作業員との意思疎通の度合いを表す意思疎通レベルを各作業員(各携帯端末5)に対して設定する。
【0072】
意思疎通レベル決定部124は、携帯端末5の端末IDと意思疎通レベルとを関連付けた意思疎通レベルテーブルを生成し、ROM112の記憶領域である意思疎通レベル記憶部に記憶する。図7Cは、意思疎通レベルテーブルを示す図である。
【0073】
意思疎通レベル決定部124は、承認要求監視テーブル(図7B参照)を参照し、「承認要求なし」と設定されている端末IDに対しては、意思疎通レベルを「1」に設定する。意思疎通レベル決定部124は、承認要求監視テーブル(図7B参照)を参照し、「承認要求あり」と設定されている端末IDに対しては、承認操作が行われたか否かを判定する。意思疎通レベル決定部124は、承認操作が行われていないと判定した場合には、その端末IDと関連付けて意思疎通レベルを「2」に設定する。意思疎通レベル決定部124は、承認操作が行われていると判定した場合には、その端末IDと関連付けて意思疎通レベルを「3」に設定する。
【0074】
意思疎通レベルは、その値が高いほど作業員と操作者との意思疎通が図れていることを表している。意思疎通レベルが「1」の状態は、作業員及び操作者の双方が、意思疎通に対するアクションを行っていない状態である。意思疎通レベルが「2」の状態は、作業員から操作者に対して、可動範囲S0への進入の承認を要求するためのアクションが行われ、かつ、操作者から作業員に対して承認するためのアクションが行われていない状態である。つまり、意思疎通レベルが「2」の状態は、作業員から操作者に対する一方的な意思表示しかなされていない状態である。なお、意思疎通レベルが「2」の場合、作業員から承認要求が出されていることに操作者が気付いていない場合と、作業員から承認要求が出されていることに操作者が気付いてはいるが、意図的に承認を行っていない場合とが想定される。意思疎通レベルが「3」の場合は、作業員から操作者に対して、可動範囲S0への進入の承認を要求するためのアクションが行われ、かつ、操作者から作業員に対して承認するためのアクションが行われた状態である。つまり、意思疎通レベルが「3」の状態は、作業員と操作者との間で、双方向で意思表示がなされている状態である。
【0075】
このように、意思疎通レベル決定部124は、通信装置20が携帯端末5からの承認要求を受信したか否か、及び、承認要求に対する承認操作が行われたか否か、によって、操作者と作業員との意思疎通の度合いを表す意思疎通レベルを各作業員(各携帯端末5)に対して設定する。
【0076】
図9は、コントローラ(意思疎通レベル決定部124)100により実行される意思疎通レベル設定処理について示すフローチャートである。図9に示すフローチャートの処理は、例えば、携帯端末5と通信装置20とが無線通信により接続されることにより開始され、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0077】
図9に示すように、ステップS210において、意思疎通レベル決定部124は、承認要求監視テーブル(図7B参照)に記憶されている承認状態情報(承認要求の有無の情報)を取得する。意思疎通レベル決定部124は、ステップS210において承認状態情報を取得すると、ループ処理(ステップS220,S260)を実行する。
【0078】
ループ処理(ステップS220,S260)は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5に対する処理が完了すると終了し、ループ処理が終了すると図9のフローチャートに示す処理を終了する。以下、ループ処理(ステップS220,S260)において実行される処理について説明する。
【0079】
ステップS230において、意思疎通レベル決定部124は、ステップS210で取得した承認状態情報に基づいて、承認要求があるか否かを判定する。ステップS230において、承認要求があると判定されるとステップS240へ進み、承認要求がないと判定されると、ステップS235へ進む。
【0080】
ステップS240において、意思疎通レベル決定部124は、タッチパネルモニタ18に対して、油圧ショベル1の可動範囲S0内への進入を承認する承認操作が行われたか否かを判定する。承認操作が行われたと判定されるとステップS255へ進み、承認操作が行われていないと判定されると、ステップS245へ進む。
【0081】
ステップS235において、意思疎通レベル決定部124は、端末IDと関連付けて、意思疎通レベルを「1」に設定する。ステップS245において、意思疎通レベル決定部124は、端末IDと関連付けて、意思疎通レベルを「2」に設定する。ステップS255において、意思疎通レベル決定部124は、端末IDと関連付けて、意思疎通レベルを「3」に設定する。
【0082】
図9のフローチャートに示す処理は、所定の制御周期で繰り返し実行されるため、作業員の承認要求の有無、または操作者の承認操作の有無の状態が変化すると、図7Cに示す意思疎通レベルテーブルが更新される。
【0083】
図4に示すモニタ制御部122は、位置特定部121が特定した作業員の位置特定情報が記憶された作業員位置テーブル(図7A参照)、及び、意思疎通レベル決定部124が決定した意思疎通レベルが記憶された意思疎通レベルテーブル(図7C参照)を参照し、作業員の位置特定情報及び意思疎通レベルに基づいて、タッチパネルモニタ18の表示部18aの表示画像を制御する。
【0084】
図10は、コントローラ(モニタ制御部122)100により実行される通知処理について示すフローチャートである。図10に示すフローチャートの処理は、例えば、携帯端末5と通信装置20とが無線通信により接続されることにより開始され、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0085】
図10に示すように、ステップS310において、モニタ制御部122は、作業員位置テーブル(図7A参照)に記憶されている作業員の位置特定情報を取得する。また、ステップS310において、モニタ制御部122は、意思疎通レベルテーブル(図7C参照)に記憶されている意思疎通レベル情報を取得する。モニタ制御部122は、ステップS310において作業員の位置特定情報及び意思疎通レベル情報を取得すると、ループ処理(ステップS320,S390)を実行する。
【0086】
ループ処理(ステップS320,S390)は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5に対する処理が完了すると終了し、ループ処理が終了すると図10のフローチャートに示す処理を終了する。以下、ループ処理(ステップS320,S390)において実行される処理について説明する。
【0087】
ステップS325において、モニタ制御部122は、ステップS310で取得した作業員の位置特定情報に基づいて、作業員が作業範囲S1内に存在しているか否かを判定する。ステップS325において、作業員が作業範囲S1内に存在していない、すなわち作業員が作業範囲S1外に存在していると判定されるとステップS330へ進み、作業員が作業範囲S1内に存在していると判定されるとステップS380へ進む。
【0088】
ステップS330において、モニタ制御部122は、ステップS310で取得した意思疎通レベル情報に基づいて、意思疎通レベルが「1」,「2」,「3」のいずれであるかを判定する。ステップS330において、意思疎通レベルが「1」であると判定されると、ステップS340へ進む。ステップS330において、意思疎通レベルが「2」であると判定されると、ステップS350へ進む。ステップS330において、意思疎通レベルが「3」であると判定されると、ステップS370へ進む。
【0089】
ステップS340において、モニタ制御部122は、ステップS310で取得した作業員の位置特定情報に基づいて、作業員が可動範囲S0内に存在しているか否かを判定する。ステップS340において、作業員が可動範囲S0内に存在していない、すなわち作業員が可動範囲S0外に存在していると判定されると、ステップS345へ進む。ステップS340において、作業員が可動範囲S0内に存在していると判定されると、ステップS360へ進む。
【0090】
ステップS350において、モニタ制御部122は、ステップS310で取得した作業員の位置特定情報に基づいて、作業員が可動範囲S0内に存在しているか否かを判定する。ステップS350において、作業員が可動範囲S0内に存在していない、すなわち作業員が可動範囲S0外に存在していると判定されると、ステップS355へ進む。ステップS350において、作業員が可動範囲S0内に存在していると判定されると、ステップS360へ進む。
【0091】
ステップS345において、モニタ制御部122は、作業員が可動範囲S0外に存在していることを表す存在通知アイコン181(図15図16参照)をタッチパネルモニタ18の表示部18aに表示させる。
【0092】
ステップS355において、モニタ制御部122は、可動範囲S0外に存在している作業員が承認要求を出している状態であることを表す承認要求アイコン182(図16参照)をタッチパネルモニタ18の表示部18aに表示させる。また、モニタ制御部122は、作業員から承認要求が出されている状態であることを操作者に通知するためのメッセージをタッチパネルモニタ18の表示部18aに表示させる。
【0093】
ステップS360において、モニタ制御部122は、可動範囲S0内への進入が承認されていない状態である作業員(以下、未承認の作業員とも記す)が可動範囲S0内に存在していることを表す注意アイコン184(図18参照)をタッチパネルモニタ18の表示部18aに表示させる。また、モニタ制御部122は、未承認の作業員が可動範囲S0内に存在していること、及び、それにより油圧ショベル1の動作が制限されていることを操作者に通知するための注意喚起メッセージをタッチパネルモニタ18の表示部18aに表示させる。
【0094】
ステップS370において、モニタ制御部122は、承認操作によって承認済みとなった作業員が作業範囲S1外に存在していることを表す承認済みアイコン183(図16図17参照)をタッチパネルモニタ18の表示部18aに表示させる。
【0095】
ステップS380において、モニタ制御部122は、作業員が作業範囲S1内に存在していることを表す警告アイコン185(図17参照)をタッチパネルモニタ18の表示部18aに表示させる。また、モニタ制御部122は、作業員が作業範囲S1内に存在していること、及び、それにより油圧ショベル1の動作が制限されていることを操作者に通知するための警告メッセージをタッチパネルモニタ18の表示部18aに表示させる。
【0096】
図10のフローチャートに示す処理は、所定の制御周期で繰り返し実行されるため、作業員の位置特定情報及び意思疎通レベルの情報が変化すると、タッチパネルモニタ18の表示部18aに表示される画像が変化する。したがって、油圧ショベル1の操作者は、現在の状況を適切に把握することができる。
【0097】
図4に示す動作可否判定部127は、ゲートロックレバー装置60のゲートロックレバー60aの操作位置に基づいて、油圧ショベル1が動作可能な状態であるか否かを判定する。ゲートロックレバー60aがロック解除位置に操作されている場合、動作可否判定部127は、油圧ショベル1が動作可能な状態であると判定し、動作可能フラグをオンに設定する。ゲートロックレバー60aがロック位置に操作されている場合、動作可否判定部127は、油圧ショベル1が動作可能な状態でない、すなわち油圧ショベル1は動作不能な状態であると判定し、動作可能フラグをオフに設定する。
【0098】
報知制御部126は、モード設定部125で設定された作業モード、動作可否判定部127での判定結果(動作可能フラグの情報)、作業員の位置特定情報及び意思疎通レベルに基づいて、外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23による報知態様を決定する。報知制御部126は、外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23を制御することにより、決定した報知態様の報知を外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23によって行う。
【0099】
報知制御部126は、基準レベル以下の意思疎通レベルが設定された作業員の可動範囲S0の外側から内側への移動を作業員位置検出装置が検出したとき、報知装置(22,23)による報知態様を変更する。これにより、その作業員は、可動範囲S0内に進入してしまっていることを知ることができる。また、報知制御部126は、基準レベル以上の意思疎通レベルが設定された作業員の作業範囲S1の外側から内側への移動を作業員位置検出装置が検出したとき、報知装置(22,23)による報知態様を変更する。これにより、その作業員は、作業範囲S1内に進入してしまっていることを知ることができる。基準レベルは、予め定められる閾値であり、本実施形態では「2」である。また、報知制御部126は、油圧ショベル1の作業範囲S1が設定されているか否かの判定結果(すなわち、作業モードの設定状態)に基づいて、報知装置(22,23)による報知態様を決定する。以下、図11図13を参照して、報知制御部126による処理の内容について詳しく説明する。
【0100】
図11は、コントローラ(報知制御部126)100により実行される外部報知処理について示すフローチャートである。図12は、図11の第1報知フラグ設定処理について示すフローチャートであり、図13は、図11の第2報知フラグ設定処理について示すフローチャートである。図11に示すフローチャートの処理は、例えば、携帯端末5と通信装置20とが無線通信により接続されることにより開始され、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0101】
図11に示すように、ステップS405において、報知制御部126は、作業員位置テーブル(図7A参照)に記憶されている作業員の位置特定情報を取得する。また、ステップS405において、報知制御部126は、意思疎通レベルテーブル(図7C参照)に記憶されている意思疎通レベル情報を取得する。さらに、ステップS405において、報知制御部126は、作業モードの設定情報及び動作可否情報(動作可能フラグの情報)を取得する。ステップS405において、報知制御部126が各種情報を取得すると、ステップS410へ進む。
【0102】
ステップS410において、報知制御部126は、ステップS405で取得した動作可否情報に基づいて、油圧ショベル1が動作可能な状態であるか否かを判定する。報知制御部126は、動作可能フラグがオフに設定されている場合、油圧ショベル1は動作可能な状態でない、すなわち油圧ショベル1は動作不能な状態であると判定し、ステップS420へ進む。ステップS410において、報知制御部126は、動作可能フラグがオンに設定されている場合、油圧ショベル1は動作可能な状態であると判定し、ステップS445へ進む。
【0103】
ステップS445において、報知制御部126は、ステップS405で取得した作業モードの情報に基づいて、作業モードが進入可能モードに設定されているか否かを判定する。ステップS445において、作業モードが進入可能モードに設定されていると判定されると、ステップS450へ進む。ステップS445において、作業モードが進入可能モードに設定されていない、すなわち作業モードが進入禁止モードに設定されていると判定されると、ステップS480へ進む。
【0104】
図11に示すステップS445において、作業モードが進入可能モードに設定されていると判定されると、報知制御部126は、第1報知フラグ設定処理S450を実行する。図12に示すように、第1報知フラグ設定処理S450は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5に対して、発光制御フラグの設定処理が完了するまで、繰り返されるループ処理(ステップ454,S475)である。
【0105】
ステップS456において、報知制御部126は、ステップS405で取得した作業員の位置特定情報に基づいて、作業員が可動範囲S0内に存在しているか否かを判定する。ステップS456において、作業員が可動範囲S0内に存在していると判定されるとステップS458へ進み、作業員が可動範囲S0内に存在していない、すなわち作業員は可動範囲S0外に存在していると判定されるとステップS466へ進む。
【0106】
ステップS458において、報知制御部126は、ステップS405で取得した作業員の位置特定情報に基づいて、作業員が作業範囲S1内に存在しているか否かを判定する。ステップS458において、作業員が作業範囲S1内に存在していない、すなわち作業員が作業範囲S1外に存在していると判定されるとステップS460へ進み、作業員が作業範囲S1内に存在していると判定されるとステップS462へ進む。
【0107】
ステップS460において、報知制御部126は、ステップS405で取得した意思疎通レベル情報に基づいて、意思疎通レベルが「1」,「2」,「3」のいずれであるかを判定する。ステップS460において、意思疎通レベルが「1」であると判定されると、ステップS462へ進む。ステップS460において、意思疎通レベルが「2」であると判定されると、ステップS463へ進む。ステップS460において、意思疎通レベルが「3」であると判定されると、ステップS470へ進む。
【0108】
ステップS466において、報知制御部126は、ステップS405で取得した意思疎通レベル情報に基づいて、意思疎通レベルが「1」,「2」,「3」のいずれであるかを判定する。ステップS466において、意思疎通レベルが「1」または「3」であると判定されると、ステップS470へ進む。ステップS466において、意思疎通レベルが「2」であると判定されると、ステップS468へ進む。
【0109】
ステップS462において、報知制御部126は、ブザーフラグをオンに設定し、ステップS464へ進む。ステップS463において、報知制御部126は、ブザーフラグをオフに設定し、ステップS464へ進む。ステップS464において、報知制御部126は、第1A発光制御フラグをオンに設定し、その他の発光制御フラグをオフに設定し、ステップS475へ進む。ステップS468において、報知制御部126は、第2A発光制御フラグをオンに設定し、その他の発光制御フラグ及びブザーフラグをオフに設定し、ステップS475へ進む。ステップS470において、報知制御部126は、第3A発光制御フラグをオンに設定し、その他の発光制御フラグ及びブザーフラグをオフに設定し、ステップS475へ進む。
【0110】
このように、報知制御部126は、油圧ショベル1が動作可能な状態であり、かつ、作業モードが進入可能モードに設定されている場合、端末IDに関連付けて、第1A発光制御フラグ、第2A発光制御フラグ及び第3A発光制御フラグのいずれかをオンに設定し、その他の発光制御フラグをオフに設定する。第1報知フラグ設定処理(ステップS450)が完了すると、図11に示すステップS496へ進む。
【0111】
図11に示すステップS445において、作業モードが進入可能モードに設定されていない、すなわち作業モードが進入禁止モードに設定されていると判定されると、報知制御部126は、ループ処理(ステップS480,S489)を実行する。ループ処理(ステップS480,S489)は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5に対して、発光制御フラグの設定処理が完了するまで、繰り返される。以下、ループ処理(ステップS480,S489)において実行される処理について説明する。
【0112】
ステップS482において、報知制御部126は、ステップS405で取得した作業員の位置特定情報に基づいて、作業員が可動範囲S0内に存在しているか否かを判定する。ステップS482において、作業員が可動範囲S0内に存在していると判定されるとステップS484へ進み、作業員が可動範囲S0内に存在していない、すなわち作業員は可動範囲S0外に存在していると判定されるとステップS485へ進む。
【0113】
ステップS484において、報知制御部126は、ブザーフラグをオンに設定し、ステップS486へ進む。ステップS485において、報知制御部126は、ブザーフラグをオフに設定し、ステップS486へ進む。ステップS486において、報知制御部126は、第1A発光制御フラグをオンに設定し、その他の発光制御フラグをオフに設定してステップS489へ進む。ループ処理(ステップS480,S489)が完了すると、ステップS496へ進む。
【0114】
ステップS410において、油圧ショベル1が動作可能な状態でないと判定されると、報知制御部126は、第2報知フラグ設定処理S420を実行する。図13に示すように、第2報知フラグ設定処理S420は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5に対して、発光制御フラグの設定処理が完了するまで、繰り返されるループ処理(ステップS424,S440)である。
【0115】
ステップS426において、報知制御部126は、ステップS405で取得した作業員の位置特定情報に基づいて、作業員が可動範囲S0内に存在しているか否かを判定する。ステップS426において、作業員が可動範囲S0内に存在していると判定されるとステップS428へ進み、作業員が可動範囲S0内に存在していない、すなわち作業員は可動範囲S0外に存在していると判定されるとステップS434へ進む。
【0116】
ステップS428において、報知制御部126は、ステップS405で取得した意思疎通レベル情報に基づいて、意思疎通レベルが「1」,「2」,「3」のいずれであるかを判定する。ステップS428において、意思疎通レベルが「1」であると判定されると、ステップS430へ進む。ステップS428において、意思疎通レベルが「2」であると判定されると、ステップS431へ進む。ステップS428において、意思疎通レベルが「3」であると判定されると、ステップS438へ進む。
【0117】
ステップS434において、報知制御部126は、ステップS405で取得した意思疎通レベル情報に基づいて、意思疎通レベルが「1」,「2」,「3」のいずれであるかを判定する。ステップS434において、意思疎通レベルが「1」または「3」であると判定されると、ステップS438へ進む。ステップS434において、意思疎通レベルが「2」であると判定されると、ステップS436へ進む。
【0118】
ステップS430において、報知制御部126は、ブザーフラグをオンに設定し、ステップS432へ進む。ステップS431において、報知制御部126は、ブザーフラグをオフに設定し、ステップS432へ進む。ステップS432において、報知制御部126は、第1B発光制御フラグをオンに設定し、その他の発光制御フラグをオフに設定し、ステップS440へ進む。ステップS436において、報知制御部126は、第2B発光制御フラグをオンに設定し、その他の発光制御フラグ及びブザーフラグをオフに設定し、ステップS440へ進む。ステップS438において、報知制御部126は、第3B発光制御フラグをオンに設定し、その他の発光制御フラグ及びブザーフラグをオフに設定し、ステップS440へ進む。
【0119】
このように、報知制御部126は、油圧ショベル1が動作可能な状態でない場合、端末IDに関連付けて、第1B発光制御フラグ、第2B発光制御フラグ及び第3B発光制御フラグのいずれかをオンに設定し、その他の発光制御フラグをオフに設定する。第2報知フラグ設定処理(ステップS420)が完了すると、図11に示すステップS492へ進む。
【0120】
図11のステップS492において、報知制御部126は、ブザーフラグの設定情報に基づいて、外部報知用ブザー23を制御し、ステップS494へ進む。ステップS496において、報知制御部126は、ブザーフラグの設定情報に基づいて、外部報知用ブザー23を制御し、ステップS498へ進む。ステップS492,S496において、報知制御部126は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末IDごとに設定されているブザーフラグの設定情報を参照する。ステップS492,S496において、報知制御部126は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末IDのうち、少なくとも一つの端末IDに関連付けられたブザーフラグがオンに設定されている場合、外部報知用ブザー23によって、音を出力する。ステップS492,S496において、報知制御部126は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末IDに関連付けられたブザーフラグが全てオフに設定されている場合、外部報知用ブザー23によって音を出力しない。
【0121】
ステップS494,S498において、報知制御部126は、発光制御フラグの設定情報に基づいて、外部報知用ライト22を制御し、図11のフローチャートに示す処理を終了する。報知制御部126は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末IDごとに設定されている発光制御フラグの設定情報を参照する。
【0122】
ステップS494,S498において、報知制御部126は、端末IDごとに設定されている発光制御フラグの優先度に基づいて、外部報知用ライト22の報知態様を決定する。発光制御フラグの優先度は、予め定められ、ROM112に記憶されている。第1A発光制御フラグは第2A発光制御フラグよりも優先度が高く、第2A発光制御フラグは第3A発光制御フラグよりも優先度が高い。第1B発光制御フラグは第2B発光制御フラグよりも優先度が高く、第2B発光制御フラグは第3B発光制御フラグよりも優先度が高い。
【0123】
ステップS498において、報知制御部126は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末IDに関連付けられた発光制御フラグの設定情報に、第1A発光制御フラグがオンに設定されている情報が含まれている場合、赤色LEDを点滅させる(間欠的に発光させる)報知態様で外部報知用ライト22を制御する。赤色LEDを点滅させる報知態様は、作業員に対して、油圧ショベル1から離れるように促す警告を行うための報知態様である。
【0124】
ステップS498において、報知制御部126は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末IDに関連付けられた発光制御フラグの設定情報に、第1A発光制御フラグがオンに設定されている情報が含まれておらず、第2A発光制御フラグがオンに設定されている情報が含まれている場合、黄色LEDを点滅させる報知態様で外部報知用ライト22を制御する。黄色LEDを点滅させる報知態様は、作業員に対して、承認が行われていないことを知らせるとともに、承認されるまで可動範囲S0内へ進入をしてはいけないという注意喚起を行うための報知態様である。
【0125】
ステップS498において、報知制御部126は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末IDに関連付けられた発光制御フラグの設定情報が第3A発光制御フラグがオンに設定されている情報である場合、緑色LEDを点滅させる報知態様で外部報知用ライト22を制御する。
【0126】
ステップS494において、報知制御部126は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末IDに関連付けられた発光制御フラグの設定情報に、第1B発光制御フラグがオンに設定されている情報が含まれている場合、赤色LEDを点灯させる(連続的に発光させる)報知態様で外部報知用ライト22を制御する。赤色LEDを点灯させる報知態様は、作業員に対して、油圧ショベル1から離れるように促す警告を行うための報知態様である。
【0127】
ステップS494において、報知制御部126は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末IDに関連付けられた発光制御フラグの設定情報に、第1B発光制御フラグがオンに設定されている情報が含まれておらず、第2B発光制御フラグがオンに設定されている情報が含まれている場合、黄色LEDを点灯させる報知態様で外部報知用ライト22を制御する。黄色LEDを点灯させる報知態様は、作業員に対して、承認が行われていないことを知らせるとともに、承認されるまで可動範囲S0内へ進入をしてはいけないという注意喚起を行うための報知態様である。
【0128】
ステップS494において、報知制御部126は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末IDに関連付けられた発光制御フラグの設定情報が第3B発光制御フラグがオンに設定されている情報である場合、緑色LEDを点灯させる報知態様で外部報知用ライト22を制御する。
【0129】
以上のとおり、報知制御部126は、条件に応じて、外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23による報知態様を選択する。報知態様の内容は、予め作業員に伝えられている。なお、報知態様の内容は、携帯端末5によって確認できるようにしてもよい。例えば、緑色LEDが点滅及び点灯している報知態様は、(1)作業員が可動範囲内に存在しておらず、かつ、作業員から承認要求が出されていない状態、(2)作業員からの承認要求に対し、承認がなされている状態のいずれかを示す報知態様であることが、予め作業員に伝えられている。
【0130】
図4の操作量演算部128は、操作装置34の操作センサ34bから出力される信号に基づいて、操作量を演算する。弁制御部(アクチュエータ制御部)129は、操作量演算部128で演算された操作量に基づいて、電磁比例弁33を制御することにより、各アクチュエータの動作を制御する。具体的には、弁制御部129は、操作量に基づいて、アクチュエータの目標速度を演算し、アクチュエータが目標速度で動作するように電磁比例弁33に供給される制御電流の指令値を演算する。弁制御部129は、電磁比例弁33に供給される制御電流が指令値となるように、制御電流を制御する。電磁比例弁33は、制御電流が大きくなるほど、生成する指令パイロット圧が大きくなる。
【0131】
弁制御部129は、意思疎通レベル及び作業員の位置特定情報に基づいて、作業装置10の動作、旋回体3の旋回動作、及び走行体2の走行動作の制限制御を行う。制限制御としては、アクチュエータの動作を減速させる減速制御と、アクチュエータの動作を停止させる停止制御とがある。減速制御において、弁制御部129は、操作量に基づいて演算されるアクチュエータの目標速度に所定の補正係数(0よりも大きく1よりも小さい値)を乗じることにより、目標速度を補正する。なお、この補正方法に代えて、予め上限値を定め、操作量に基づいて演算された目標速度の大きさが上限値よりも大きい場合に、目標速度を上限値に補正する方法を採用してもよい。停止制御において、弁制御部129は、制御電流の指令値を「0」に設定する。なお、アクチュエータが動作している状態では、制御電流の指令値が「0」に向かって徐々に小さくなるように指令値を変化させることが好ましい。
【0132】
弁制御部129は、基準レベル「2」以下の意思疎通レベルが設定された作業員の可動範囲S0内の存在を作業員位置検出装置が検出した場合、ブームシリンダ11a、アームシリンダ12a及びバケットシリンダ13a、走行モータ2a、旋回モータ3aの動作を制限する制限制御を実行する。弁制御部129は、動作制御フラグの設定情報に基づいて、通常制御、減速制御及び停止制御のいずれかを実行する。弁制御部129は、油圧ショベル1が動作可能な状態にあるときに、通常制御フラグ、減速制御フラグ及び停止制御フラグのいずれかを設定する。なお、これらの動作制御フラグは、作業員ごと(携帯端末5ごと)に設定される。
【0133】
弁制御部129は、作業員が作業範囲S1内に存在する場合には、意思疎通レベルにかかわらず停止制御フラグをオンに設定し、その他の動作制御フラグ(通常制御フラグ及び減速制御フラグ)をオフに設定する。弁制御部129は、作業員が可動範囲S0内に存在する場合であって、その作業員の意思疎通レベルが基準レベル「2」以下のときには、減速制御フラグをオンに設定し、その他の動作制御フラグ(通常制御フラグ及び停止制御フラグ)をオフに設定する。上記以外の場合には、弁制御部129は、通常制御フラグをオンに設定し、その他の動作制御フラグ(減速制御フラグ及び停止制御フラグ)をオフに設定する。
【0134】
図14は、コントローラ(弁制御部129)100により実行される動作制御フラグの設定処理について示すフローチャートである。図14に示すフローチャートの処理は、例えば、イグニッションスイッチがオンされることにより開始され、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0135】
図14に示すように、ステップS505において、弁制御部129は、作業員位置テーブル(図7A参照)に記憶されている作業員の位置特定情報、意思疎通レベルテーブル(図7C参照)に記憶されている意思疎通レベル情報、及び動作可否情報(動作可能フラグの情報)を取得して、ステップS510へ進む。
【0136】
ステップS510において、弁制御部129は、ステップS505で取得した動作可否情報に基づいて、油圧ショベル1が動作可能な状態であるか否かを判定する。弁制御部129は、動作可能フラグがオフに設定されている場合、油圧ショベル1は動作可能な状態でない、すなわち油圧ショベル1は動作不能な状態であると判定し、ステップS585へ進む。ステップS510において、弁制御部129は、動作可能フラグがオンに設定されている場合、油圧ショベル1は動作可能な状態であると判定し、ステップS525へ進む。
【0137】
ステップS525において、弁制御部129は、操作量演算部128で演算された操作装置34の操作量を取得する。弁制御部129は、ステップS525において操作量を取得すると、ループ処理(ステップS530,S570)を実行する。
【0138】
ループ処理(ステップS530,S570)は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5に対する処理が完了すると終了し、ループ処理が終了するとステップS580へ進む。以下、ループ処理(ステップS530,S570)において実行される処理について説明する。
【0139】
ステップS535において、弁制御部129は、ステップS505で取得した作業員の位置特定情報に基づいて、作業員が作業範囲S1内に存在しているか否かを判定する。ステップS535において、作業員が作業範囲S1内に存在していない、すなわち作業員が作業範囲S1外に存在していると判定されるとステップS540へ進み、作業員が作業範囲S1内に存在していると判定されるとステップS560へ進む。
【0140】
ステップS540において、弁制御部129は、ステップS505で取得した作業員の位置特定情報に基づいて、作業員が可動範囲S0内に存在しているか否かを判定する。ステップS540において、作業員が可動範囲S0内に存在していると判定されるとステップS545へ進み、作業員が可動範囲S0内に存在していない、すなわち作業員は可動範囲S0外に存在していると判定されるとステップS550へ進む。
【0141】
ステップS545において、弁制御部129は、ステップS505で取得した意思疎通レベル情報に基づいて、意思疎通レベルが「1」,「2」,「3」のいずれであるかを判定する。ステップS545において、意思疎通レベルが「1」または「2」であると判定されると、ステップS555へ進む。ステップS545において、意思疎通レベルが「3」であると判定されると、ステップS550へ進む。
【0142】
ステップS550において、弁制御部129は、通常制御フラグをオンに設定し、その他の動作制御フラグをオフに設定して、ステップS570へ進む。ステップS555において、弁制御部129は、減速制御フラグをオンに設定し、その他の動作制御フラグをオフに設定して、ステップS580へ進む。ステップS560において、弁制御部129は、停止制御フラグをオンに設定し、その他の動作制御フラグをオフに設定して、ステップS570へ進む。ループ処理(ステップS530,S570)が完了すると、ステップS580へ進む。
【0143】
ステップS580において、弁制御部129は、動作制御フラグの設定情報に基づいて、電磁比例弁33の制御を行い、図14のフローチャートに示す処理を終了する。弁制御部129は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末IDごとに設定されている動作制御フラグの設定情報を参照する。
【0144】
ステップS580において、弁制御部129は、端末IDごとに設定されている動作制御フラグの優先度に基づいて、動作態様を決定する。動作制御フラグの優先度は、予め定められ、ROM112に記憶されている。停止制御フラグは減速制御フラグよりも優先度が高く、減速制御フラグは通常制御フラグよりも優先度が高い。
【0145】
ステップS580において、弁制御部129は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末IDに関連付けられた動作制御フラグの設定情報に、停止制御フラグがオンに設定されている情報が含まれている場合、停止制御を実行する。これにより、操作装置34により操作が行われた場合であっても、流量制御弁40が中立位置(N)に保持されるため、アクチュエータが動作することが防止される。また、操作装置34により操作が行われており、アクチュエータが動作している状態で、停止制御が実行されると、流量制御弁40が中立位置(N)に切り替えられるため、アクチュエータの動作が停止する。
【0146】
ステップS580において、弁制御部129は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末IDに関連付けられた動作制御フラグの設定情報に、停止制御フラグがオンに設定されている情報が含まれておらず、減速制御フラグがオンに設定されている情報が含まれている場合、減速制御を実行する。これにより、操作装置34の操作量に応じたアクチュエータの速度よりも低い速度でアクチュエータが動作することになる。
【0147】
ステップS580において、弁制御部129は、無線通信により接続されている全ての携帯端末5の端末IDに関連付けられた動作制御フラグの設定情報が通常制御フラグがオンに設定されている情報である場合、通常制御を実行する。ステップS580において行われる通常制御では、弁制御部129は、操作量に基づいて指令値を演算する。これにより、操作装置34の操作量に応じた速度でアクチュエータが動作することになる。
【0148】
ステップS585において、弁制御部129は、電磁比例弁33の指令値を「0」に設定し、図14のフローチャートに示す処理を終了する。
【0149】
次に、本実施形態に係る油圧ショベル1の動作例について説明する。図15は、タッチパネルモニタ18の画面について示す図であり、作業モードが進入禁止モードに設定されているときの画面を示す。なお、図15では、外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23の報知態様についても示す。
【0150】
図15に示すように、タッチパネルモニタ18の画面には、油圧ショベル1の稼働時間、燃料残量計、冷却水温計等の稼働情報を表示する稼働情報表示領域171と、周囲監視装置55のカメラで撮影された画像から生成される俯瞰画像191を表示する周囲監視領域172と、メッセージを表示するメッセージ領域173と、が含まれる。
【0151】
操作者は、ゲートロックレバー60aをロック解除位置(下げ位置)に操作し、イグニッションスイッチを操作してエンジン80を始動させることにより、操作装置34による各アクチュエータの動作が可能な状態になる。油圧ショベル1の周囲に作業員が存在する場合、タッチパネルモニタ18には、存在通知アイコン181が表示される(図10のS325→S330→S340→S345)。このため、油圧ショベル1の操作者は、油圧ショベル1の周囲に作業員が存在することを知ることができる。存在通知アイコン181は、例えば、白色の背景に作業員のイラスト及び作業員名(本実施形態では、「A」及び「B」)の文字が付されたアイコンである。作業員名は、端末IDに関連付けられており、予めROM112に記憶されている。なお、作業員名は、携帯端末5から取得するようにしてもよい。
【0152】
操作者が、作業範囲S1の設定をしていない場合、作業モードが進入禁止モードに設定される。進入禁止モードが設定されている状態では、外部報知用ライト22の赤色LEDが点滅する。つまり、作業範囲S1が設定されていないことが油圧ショベル1の周囲の作業員に報知される(図11のS410→S445→S480→S482→S485→S486→S489→S496→S498)。図15に示す例では、作業員A及び作業員Bは、それぞれ可動範囲S0外に位置しているため、外部報知用ブザー23による報知は行われない。作業員A及び作業員Bのいずれかが可動範囲S0内に移動すると、外部報知用ブザー23による報知が行われる(図11のS482→S484)。
【0153】
操作者が、作業範囲S1の設定をしていない場合、油圧ショベル1の可動範囲S0の全域において、油圧ショベル1が動作する可能性がある。本実施形態では、外部報知用ライト22の赤色LEDが点滅することにより、作業範囲S1が設定されていないことを油圧ショベル1の周囲の作業員に報知することができるため、作業員の可動範囲S0内への進入を防止することができる。また、この状態では、作業員は、携帯端末5を操作して承認要求を出したとしても操作者が承認する状態にないことを事前に知ることができる。したがって、作業員の承認要求操作が不必要に発生してしまうことを防止することができる。その結果、作業員の作業効率の向上を図ることができる。
【0154】
進入禁止モードが設定されている状態では、タッチパネルモニタ18のメッセージ領域173に「作業範囲を設定していないため、立ち入りを禁止しています。」というメッセージが表示される。これにより、操作者は、現在の作業モードが進入禁止モードに設定されていることを知ることができる。
【0155】
操作者が、作業範囲設定画面(図6参照)において、タッチパネルモニタ18を操作することにより、作業範囲S1の設定を行うと、作業モードが進入可能モードに設定される。図16図18を参照して、作業モードが進入可能モードに設定されている状態でのタッチパネルモニタ18の表示態様、並びに、外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23による報知態様について説明する。
【0156】
図16は、タッチパネルモニタ18の画面の遷移を説明する図であり、作業員が承認要求を出してから承認されるまでの画面の遷移について示す。また、図16(a)~(d)に示す状態における外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23の報知態様についても示す。
【0157】
作業員A及び作業員Bのいずれからも可動範囲S0内への進入の承認要求が出されていない場合、作業員A及び作業員Bともに意思疎通レベルが「1」に設定される。なお、作業員A及び作業員Bは、可動範囲S0外に位置している。この場合、図16(a)に示すように、タッチパネルモニタ18の表示画面には、存在通知アイコン181が作業員ごとに表示される(図10のS325→S330→S340→S345)。
【0158】
なお、作業員A及び作業員Bは、それぞれ可動範囲S0外に位置しているため、外部報知用ライト22の報知態様は、緑色LEDが点滅する報知態様となる(図12のS456→S466→S470)。なお、外部報知用ブザー23による報知は行われない。したがって、作業員A及び作業員Bは、承認要求を出せる状態にあることを知ることができる。
【0159】
作業員Aが携帯端末5を操作して可動範囲S0への進入の承認要求を出すと、作業員Aの意思疎通レベルが「2」に設定される。これにより、図16(b)に示すように、油圧ショベル1のタッチパネルモニタ18の作業員Aの存在通知アイコン181が承認要求アイコン182に変化する(図10のS325→S330→S350→S355)。承認要求アイコン182は、例えば、青色の背景に作業員のイラスト及び作業員名の文字が付されたアイコンである。また、タッチパネルモニタ18には、「可動範囲立ち入りの承認要求があります。」といったメッセージがメッセージ領域173に表示される。したがって、操作者は、作業員Aから承認要求が出されたことを知ることができる。
【0160】
図16(b)に示す状態では、作業員Aの承認要求に対する操作者の承認操作は行われていない状態であり、意思疎通レベルが「2」に設定されている。このため、外部報知用ライト22の報知態様は、黄色LEDが点滅する報知態様となる(図12のS456→S466→S468)。なお、外部報知用ブザー23による報知は行われない。したがって、作業員Aは、操作者の承認操作が行われていない状態(承認待ちの状態)であることを知ることができる。
【0161】
操作者は、油圧ショベル1の周囲を目視し、作業員Aの位置を確認する。操作者は、作業員Aの位置、作業内容、油圧ショベル1の状態等を考慮し、作業員Aの可動範囲S0内への進入を許可するか否かの判断を行う。操作者は、作業員Aの可動範囲S0内への進入を許可する場合には、承認操作を行う。
【0162】
操作者による承認操作について説明する。操作者が、タッチパネルモニタ18の承認要求アイコン182をタッチすると、図16(c)に示すように、稼働情報表示領域171に、「Aが可動範囲内に立ち入ることを許可しますか?」というメッセージと、可動範囲S0内への進入を許可することを決定するための「承認」ボタンと、可動範囲S0内への進入を許可しないことを決定するための「拒否」ボタンと、が表示される。操作者が「承認」ボタンをタッチすると、図16(d)に示すように、タッチパネルモニタ18の承認要求アイコン182が承認済みアイコン183に変化する(図10のS325→S330→S370)。承認済みアイコン183は、例えば、緑色の背景に作業員のイラスト及び作業員名の文字が付されたアイコンである。このように、本実施形態での承認操作は、承認要求アイコン182をタッチし、「承認」ボタンをタッチする操作に相当する。
【0163】
図16(d)に示す状態では、作業員Aの承認要求に対する操作者の承認操作が行われた状態であり、意思疎通レベルが「3」に設定されている。このため、外部報知用ライト22の報知態様は、緑色LEDが点滅する報知態様となる(図12のS456→S466→S470)。なお、外部報知用ブザー23による報知は行われない。外部報知用ライト22の報知態様が、黄色LEDの点滅から緑色LEDの点滅へと変化するため、作業員Aは、操作者により承認操作が行われたこと、すなわち自身が可動範囲S0内へ進入することが許可されたことを知ることができる。このように、作業員Aと操作者との間で、作業員Aが可動範囲S0内に進入することに関する意思疎通がとられているので、油圧ショベル1の作業及び作業員Aによる周囲作業を効率よく行うことができる。
【0164】
なお、操作者が承認操作を行わない場合、外部報知用ライト22の報知態様は、黄色LEDが点滅する報知態様で維持される。この場合、作業員Aは可動範囲S0内への立ち入りを拒否されていると認識することができる。
【0165】
承認操作が行われた後、作業員Aが可動範囲S0内に進入した場合には、油圧ショベル1の動作に制限はかかることなく、操作者の操作に応じて、各アクチュエータを動作させることができる。なお、外部報知用ライト22の報知態様は、緑色LEDが点滅する報知態様が維持される(図12のS456→S458→S460→S470)。また、タッチパネルモニタ18に警告等の表示がなされることもない。操作者は、俯瞰画像191における作業員Aの画像186と油圧ショベル1の位置関係を確認しつつ、効率的に作業を行うことができる。
【0166】
図17を参照して、作業員が作業範囲S1内に進入した場合における操作者に対する通知態様及び作業員に対する報知態様の変化について説明する。図17は、タッチパネルモニタ18の画面の遷移を説明する図であり、作業員が作業範囲S1内に進入した場合の画面の遷移について示す。また、図17(a)及び図17(b)に示す状態における外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23の報知態様についても示す。
【0167】
図17(a)に示す状態では、図16(d)に示す状態と同じである。すなわち、図17(a)に示す状態は、作業員Aの承認要求に対する操作者の承認操作が行われた状態であり、意思疎通レベルが「3」に設定されている。この状態から、作業員Aが作業範囲S1内に進入すると、外部報知用ライト22の報知態様が緑色LEDの点滅から赤色LEDの点滅に変化し、さらに、外部報知用ブザー23による報知が行われる(図12のS456→S458→S462→S464)。
【0168】
外部報知用ライト22の報知態様が赤色LEDの点滅となるため、作業員Aは、油圧ショベル1の作業範囲S1内に進入してしまっていることを知ることができ、作業範囲S1外に直ちに退避することができる。なお、作業員Aが油圧ショベル1の方向を向いていない等、外部報知用ライト22が赤色で点滅していることを認識していない場合であっても、外部報知用ブザー23による報知が行われるため、作業員Aに対して、油圧ショベル1に注意を向けさせることができる。
【0169】
なお、図17(b)に示す状態、すなわち作業範囲S1内に作業員が存在していることを作業員位置検出装置が検出している状態では、意思疎通レベルにかかわらず、コントローラ100によってアクチュエータが動作しないように停止制御が実行される(図14のS535→S560)。
【0170】
このように、承認済みの作業員であっても、作業範囲S1内に進入した場合には、作業員に対して注意を喚起するための報知が行われるとともに、油圧ショベル1の動作が制限されるので、油圧ショベル1に作業員が接触することを防止しつつ、作業員を速やかに退避させることが可能となる。
【0171】
作業員Aが、作業範囲S1外から作業範囲S1内に進入すると、タッチパネルモニタ18の作業員Aの承認済みアイコン183が警告アイコン185に変化する(図10のS325→S380)。警告アイコン185は、例えば、赤色の背景に作業員のイラスト及び作業員名の文字が付されたアイコンである。また、タッチパネルモニタ18には、「作業員が作業範囲に存在するため、動作を制限します。」といったメッセージがメッセージ領域173に表示される。したがって、操作者は、作業員Aが作業範囲S1内に進入したことを知ることができる。
【0172】
図18を参照して、可動範囲S0内への進入が許可されていない作業員Aが、可動範囲S0外から可動範囲S0内に進入した場合における操作者に対する通知態様及び作業員に対する報知態様の変化について説明する。図18は、タッチパネルモニタ18の画面の遷移を説明する図であり、作業員が承認要求を出すことなく可動範囲S0内に進入した場合の画面の遷移について示す。また、図18(a)及び図18(b)に示す状態における外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23の報知態様についても示す。
【0173】
図18(a)に示す状態は、図16(a)に示す状態と同じである。すなわち、図18(a)に示す状態では、作業員A及び作業員Bのいずれからも可動範囲S0内への進入の承認要求が出されていない。このため、作業員A,Bと操作者との意思疎通レベルは「1」に設定されている。この状態から、作業員Aが承認要求を出すことなく可動範囲S0内に進入すると、外部報知用ライト22の報知態様が緑色LEDの点滅から赤色LEDの点滅に変化し、さらに、外部報知用ブザー23による報知が行われる(図12のS456→S458→S460→S462→S464)。
【0174】
外部報知用ライト22の報知態様が赤色LEDの点滅となるため、作業員Aは、油圧ショベル1の可動範囲S0内に進入してしまっていることを知ることができる。なお、作業員Aが油圧ショベル1の方向を向いていない等、外部報知用ライト22が赤色で点滅していることを認識していない場合であっても、外部報知用ブザー23による報知が行われるため、作業員Aに対して、油圧ショベル1に注意を向けさせることができる。
【0175】
なお、作業員Aが承認要求を出した後、操作者による承認操作が行われるまでの間に、作業員Aが可動範囲S0内へ進入した場合には、外部報知用ライト22の報知態様が黄色LEDの点滅から赤色LEDの点滅に変化する(図12のS456→S458→S460→S463→S464)。外部報知用ライト22の報知態様が赤色LEDの点滅となるため、作業員Aは、油圧ショベル1の可動範囲S0内に進入してしまっていることを知ることができる。
【0176】
また、可動範囲S0内への進入が承認(許可)されていない作業員Aが、可動範囲S0外から可動範囲S0内に進入すると、操作装置34の操作量に応じた目標速度よりも低い速度でアクチュエータが動作する減速制御が実行される(図14のS535→S540→S545→S555)。アクチュエータが、操作者の意図する速度よりも低い速度で動作するため、操作者に操作の違和感を与えることができる。
【0177】
可動範囲S0内への進入が承認(許可)されていない作業員Aが、可動範囲S0外から可動範囲S0内に進入すると、タッチパネルモニタ18の作業員Aの存在通知アイコン181が注意アイコン184に変化する(図10のS330→S340→S360、あるいは、図10のS330→S350→S360)。注意アイコン184は、例えば、黄色の背景に作業員のイラスト及び作業員名の文字が付されたアイコンである。また、タッチパネルモニタ18には、「未承認の作業員が可動範囲に存在するため、動作を制限します。」といったメッセージがメッセージ領域173に表示される。
【0178】
その結果、操作者は、可動範囲S0内への進入を承認(許可)していない作業員Aが可動範囲S0内に進入したことを直ちに知ることができる。なお、図18(b)に示す状態では、油圧ショベル1の動作が制限されているため、このまま作業を行った場合には、油圧ショベル1による作業効率が低下する。したがって、操作者に対して、作業員の退避を求める行動を促す効果が期待できる。つまり、本実施形態によれば、作業現場での状況の是正を図ることができる。
【0179】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0180】
(1)油圧ショベル(作業機械)1は、機体4と、機体4に取り付けられる作業装置10と、運転室7内に設けられ操作者による操作に応じて作業装置10の動作を指示する操作装置34と、操作者に対して通知を行う通知装置(タッチパネルモニタ18の表示部18a)と、所定の情報を入力するための入力装置(タッチパネルモニタ18の入力部18b)と、周囲の作業員に対して報知を行う報知装置(外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23)と、タッチパネルモニタ18及び報知装置(外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23)を制御するコントローラ(制御装置)100と、作業員が携帯する携帯端末5と無線通信を行う通信装置20と、を備える。
【0181】
コントローラ100は、油圧ショベル1の周囲の作業員によって携帯端末5が操作されることにより、携帯端末5から送信される油圧ショベル1の可動範囲S0内への進入の承認を要求するための承認要求を通信装置20が受信したか否かを判定する。コントローラ100は、通信装置20が承認要求を受信したと判定した場合、承認要求を受信したことの通知をタッチパネルモニタ(通知装置)18により行う。コントローラ100は、タッチパネルモニタ18に対して油圧ショベル1の可動範囲S0内への進入を承認する承認操作が行われたか否かを判定する。コントローラ100は、承認要求を受信したか否か、及び、承認操作が行われたか否か、によって、操作者と作業員との意思疎通の度合いを表す意思疎通レベル(指標)を作業員に対して設定する。つまり、複数の作業員のそれぞれに対して、意思疎通レベルが設定される。コントローラ100は、意思疎通レベルに応じて、報知装置(外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23)による報知態様を決定する。コントローラ100は、決定した報知態様の報知を報知装置(外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23)により行う。
【0182】
この構成では、作業員は、油圧ショベル1の可動範囲S0内に進入する際、油圧ショベル1の操作者との意思疎通を適切に行うことができる。例えば、作業員は、油圧ショベル1の報知態様を確認することによって、可動範囲S0内への進入の可否を速やかに判断することができる。本実施形態では、外部報知用ライト22の黄色LEDが発光している場合、作業員は、承認がなされるまで可動範囲S0内へ進入してはいけないことを直感的に認識することができる。そして、承認がなされると、外部報知用ライト22の報知態様が黄色LEDの発光から緑色LEDの発光に変化するため、作業員は、直感的に可動範囲S0内へ進入してよい状態になったことを認識することができる。また、複数の作業員が油圧ショベル1の周囲に存在する場合、作業員が、それぞれ個別に承認要求を出し、それぞれの承認要求に対して承認が行われることになる。このため、作業員は、自身の存在が操作者に認知されているか否かを判断することができる。これにより、油圧ショベル1による作業、及び、油圧ショベル1と作業員との円滑な協同作業を実現することができる。つまり、油圧ショベル1による作業、及び、作業員の作業の効率の向上を図ることができる。このように、本実施形態によれば、作業員が油圧ショベル1の可動範囲内に進入する際において、作業員と油圧ショベル1の操作者との意思疎通を適切にとることができ、作業効率の向上を図ることが可能な油圧ショベル1を提供することができる。
【0183】
(2)油圧ショベル1は、油圧ショベル1の周囲の作業員の位置を検出する作業員位置検出装置(GNSS受信装置50、通信装置20及びコントローラ100)を備える。コントローラ100は、作業員位置検出装置で検出された油圧ショベル1の周囲の作業員の位置に基づいて、予め定められた油圧ショベル1の可動範囲S0内に作業員が存在するか否かを判定し、その判定結果と意思疎通レベルに基づいて、報知装置(外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23)による報知態様を決定する。
【0184】
コントローラ100は、予め定められた基準レベル「2」以下の意思疎通レベルが設定された作業員の油圧ショベル1の可動範囲S0の外側から内側への移動を作業員位置検出装置が検出したとき、報知装置による報知態様を変更する。
【0185】
本実施形態では、意思疎通レベルが「1」に設定されている作業員が、可動範囲S0外から可動範囲S0内に移動すると、外部報知用ライト22の報知態様が緑色LEDの発光から赤色LEDの発光へと変化する。また、外部報知用ブザー23の報知態様が、「音報知なし」から「音報知あり」へと変化する。これにより、作業員は、油圧ショベル1から直ちに離れる必要があることを直感的に認識することができる。
【0186】
また、本実施形態では、意思疎通レベルが「2」に設定されている作業員が、可動範囲S0外から可動範囲S0内に移動すると、外部報知用ライト22の報知態様が黄色LEDの発光から赤色LEDの発光へと変化する。これにより、作業員は、油圧ショベル1から直ちに離れる必要があることを直感的に認識することができる。
【0187】
このように、意思疎通レベルが基準レベル「2」以下の作業員(すなわち、可動範囲S0への進入が許可されていない作業員)が可動範囲S0内に進入した場合、報知態様が変化するため、作業員に対して、可動範囲S0内から可動範囲S0外への退避を適切に促すことができる。
【0188】
(3)油圧ショベル1は、油圧ショベル1の作業範囲S1を設定するタッチパネルモニタ(作業範囲設定装置)18を備える。コントローラ100は、作業員位置検出装置で検出された油圧ショベル1の周囲の作業員の位置に基づいて、タッチパネルモニタ(作業範囲設定装置)18により設定された油圧ショベル1の作業範囲S1内に作業員が存在するか否かを判定し、その判定結果に基づいて、報知装置(外部報知用ライト22及び外部報知用ブザー23)による報知態様を決定する。
【0189】
コントローラ100は、予め定められた基準レベル「2」以上の意思疎通レベルが設定された作業員の作業範囲S1の外側から内側への移動を作業員位置検出装置が検出したとき、報知装置による報知態様を変更する。
【0190】
本実施形態では、意思疎通レベルが「2」に設定されている作業員が、作業範囲S1外から作業範囲S1内に移動すると、外部報知用ブザー23の報知態様が、「音報知なし」から「音報知あり」へと変化する。これにより、作業員は、油圧ショベル1から直ちに離れる必要があることを直感的に認識することができる。
【0191】
また、本実施形態では、意思疎通レベルが「3」に設定されている作業員が、作業範囲S1外から作業範囲S1内に移動すると、外部報知用ライト22の報知態様が緑色LEDの点滅から赤色LEDの点滅へと変化する。また、外部報知用ブザー23の報知態様が、「音報知なし」から「音報知あり」へと変化する。これにより、作業員は、油圧ショベル1から直ちに離れる必要があることを直感的に認識することができる。
【0192】
このように、意思疎通レベルが基準レベル「2」以上の作業員(すなわち、可動範囲S0への進入の承認要求を出した作業員、及び、可動範囲S0への進入が承認された作業員)が作業範囲S1内に進入した場合、報知態様が変化するため、作業員に対して、作業範囲S1内から作業範囲S1外への退避を適切に促すことができる。
【0193】
(4)コントローラ100は、油圧ショベル1の作業範囲S1が設定されているか否かを判定し、その判定結果に基づいて、報知装置による報知態様を決定する。本実施形態では、作業範囲S1が設定されていない場合には、可動範囲S0内に作業員が存在していない場合であっても、外部報知用ライト22の赤色LEDを点滅させる。つまり、作業範囲S1が設定されている場合と、作業範囲S1が設定されていない場合とで、報知態様が異なっている。これにより、作業員は、可動範囲S0全域に亘って作業が行われる可能性がある状態であることを知ることができる。つまり、作業員は、承認要求を出したとしても承認されることはないと判断することができる。したがって、この構成によれば、油圧ショベル1の周囲の作業員の無駄な承認要求操作の手間をなくすことができる。その結果、作業員の作業効率の向上を図ることができる。
【0194】
(5)コントローラ100は、基準レベル「2」以下の意思疎通レベルが設定された作業員の可動範囲S0内の存在を作業員位置検出装置が検出した場合、作業員が可動範囲S0内に存在していないときに比べて、作業装置10の動作を制限する制限制御を実行する。未承認の作業員が可動範囲S0内に存在している場合には作業装置10の動作が制限されるため、操作者は、未承認の作業員が可動範囲S0内に進入したことを直ちに知ることができる。また、作業装置10の動作が制限された状態のままでは、作業効率が低下する。したがって、操作者に対して、作業員の退避を求める行動を促す効果が期待できる。つまり、本実施形態によれば、作業現場での状況の是正を図ることができる。
【0195】
(6)コントローラ100は、作業範囲S1内の作業員を作業員位置検出装置が検出した場合、意思疎通レベルにかかわらず、作業範囲S1内に作業員が存在していないときに比べて、作業装置10の動作を制限する制限制御を実行する。作業員が作業範囲S1内に存在している場合には作業装置10の動作が制限されるため、操作者は、作業員が作業範囲S1内に進入したことを直ちに知ることができる。また、作業装置10の動作が制限された状態のままでは、作業効率が低下する。したがって、操作者に対して、作業員の退避を求める行動を促す効果が期待できる。つまり、本実施形態によれば、作業現場での状況の是正を図ることができる。
【0196】
(7)コントローラ100は、ゲートロックレバー60aがロック位置(上げ位置)に操作され、油圧ショベル1の動作が不能な状態である場合と、ゲートロックレバー60aがロック解除位置(下げ位置)に操作され、油圧ショベル1の動作が可能な状態である場合とで、異なる報知態様で報知を行う。本実施形態では、油圧ショベル1の動作が不能な状態では、外部報知用ライト22のLEDが点灯する報知態様となり、油圧ショベル1の動作が可能な状態では、外部報知用ライト22のLEDが点滅する報知態様となる。これにより、作業員は、油圧ショベル1の外部から、油圧ショベル1の動作が可能な状態であるか否かを容易に判断することができる。
【0197】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0198】
<変形例1>
上記実施形態では、携帯端末5のGNSSモジュール53によって測定された携帯端末5の位置情報と、油圧ショベル1の位置情報とに基づいて、ショベル基準の作業員の位置を演算する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、油圧ショベル1に搭載されているカメラ、あるいは、油圧ショベル1の周囲に設置されているカメラ等で撮影された画像に基づいて、作業員の位置を検出してもよい。また、3D-LiDARを用いて作業員の位置を検出してもよい。ただし、この場合、検出された作業員と、それを識別するためのIDを関連付ける必要がある。このため、コントローラ100は、作業員の顔認証システム、RFIDシステム等を利用した識別処理を行う。このように、GNSSを利用しないで作業員の位置を演算する構成とすれば、タブレットのような高機能デバイスではなく、RFIDタグに承認要求を行うか否かを入力するスイッチを設けたような簡易的な装置を携帯端末として採用することができる。
【0199】
<変形例2>
上記実施形態では、油圧ショベル1が動作可能な状態であって、かつ、作業員が作業範囲S1内に存在している場合には、停止制御が実行される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。停止制御に代えて、減速制御を実行してもよい。
【0200】
<変形例3>
上記実施形態では、図5に示すように、左旋回限界角度θL、右旋回限界角度θR及び作業半径Rwで規定される扇状の領域A1と、旋回中心軸Oを中心とする半径Rsの円形状の領域A2と、を合成した領域が、作業範囲S1として設定される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、タッチパネルモニタ18上の複数箇所がタッチ操作されることにより、タッチ操作された位置を頂点とする多角形状の作業範囲を設定するようにしてもよい。
【0201】
<変形例4>
上記実施形態では、タッチパネルモニタ18が操作されることにより作業範囲S1が設定されると、作業モードが進入可能モードに設定され、作業範囲S1が設定されていないと、作業モードが進入禁止モードに設定される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0202】
<変形例4-1>
運転室7内に、進入禁止モードと作業モードとの切り替え操作が可能なモード切替操作部材を設けるようにしてもよい。
【0203】
<変形例4-2>
油圧ショベル1の故障、異常が検出された場合、自動的に進入禁止モードが選択されるようにしてもよい。例えば、GNSS受信装置50の受信状態が悪化するなどして、油圧ショベル1の位置を正確に求めることができない場合、可動範囲S0内に作業員が存在するか否かを適切に判定することができないおそれがある。したがって、このような異常が検出された場合には、コントローラ100は進入禁止モードを自動で選択する。これにより、異常が検出された場合において、作業員に対して適切な報知を行うことができ、作業員が油圧ショベル1の可動範囲S0内に進入することを防止することができる。
【0204】
<変形例5>
上記実施形態では、電気レバー方式の操作装置34を備える油圧ショベル1を例として説明したが、油圧パイロットレバー方式の操作装置を備える油圧ショベルに本発明を適用してもよい。この場合、操作装置で生成される指令パイロット圧を電磁比例弁によって減圧可能な構成とすることにより、アクチュエータ及び被駆動部材の動作を制限することができる。
【0205】
<変形例6>
上記実施形態では、アクチュエータとして、油圧モータ(走行モータ2a、旋回モータ3a)、油圧シリンダ(ブームシリンダ11a、アームシリンダ12a、バケットシリンダ13a)等の油圧機器を備える例に説明したが、アクチュエータとして、電動モータ、電動シリンダ等の電動機器を備える作業機械に本発明を適用してもよい。
【0206】
<変形例7>
上記実施形態では、作業機械がクローラ式の油圧ショベルである場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。ホイール式の油圧ショベル、クローラクレーン等の種々の作業機械に本発明を適用することができる。
【0207】
<変形例8>
上記実施形態では、タッチパネルモニタ18が、操作者に所定の情報を通知する通知装置及び所定の情報を入力するための入力装置として機能する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。通知装置と入力装置を個別に設けるようにしてもよい。また、通知装置として、音声によって所定の情報を操作者に通知する音声出力装置を備えるようにしてもよい。
【0208】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0209】
1…油圧ショベル(作業機械)、4…機体、5…携帯端末、7…運転室、10…作業装置、18…タッチパネルモニタ(通知装置、作業範囲設定装置、入力装置)、20…通信装置(作業員位置検出装置)、22…外部報知用ライト(報知装置)、23…外部報知用ブザー(報知装置)、34…操作装置、50…GNSS受信装置(作業員位置検出装置)、100…コントローラ(制御装置、作業位置検出装置)、S0…可動範囲、S1…作業範囲
図1
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図7A
図7B
図7C
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