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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 19/36 20060101AFI20230214BHJP
   F16C 33/60 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
F16C19/36
F16C33/60
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022536989
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2022015090
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 健一郎
【審査官】田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-048250(JP,A)
【文献】特開2019-178735(JP,A)
【文献】特開2021-055719(JP,A)
【文献】米国特許第4362344(US,A)
【文献】独国特許発明第102017106195(DE,B3)
【文献】英国特許出願公告第1326070(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/36
F16C 33/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製の外輪と、
前記外輪と共通の中心軸を有し、前記外輪の内周側に配置される鋼製の内輪と、
前記外輪の内周面および前記内輪の外周面上を転動可能に配置される複数の転動体と、を備える転がり軸受であって、
前記外輪は、
第1外輪と、前記中心軸の延びる方向である第1軸方向において前記第1外輪に並べて配置されるとともに前記第1外輪に対して固定される第2外輪と、を含み、
前記内輪は、
第1内輪と、前記第1軸方向において前記第1内輪に並べて配置されるとともに前記第1内輪に対して固定される第2内輪と、を含み、
前記第1外輪、前記第2外輪、前記第1内輪および前記第2内輪のそれぞれは、
前記第1軸方向に直交する方向に延びる円盤環状部である第1部分と、
前記第1部分に接続し、周面が円環状の転走面を構成する第2部分と、
前記第2部分に接続し、前記第1軸方向に沿って延びる筒状部を含む第3部分と、
を含み、
前記第1内輪および前記第2内輪のそれぞれの第3部分の端面は、前記第1外輪および前記第2外輪のそれぞれの第3部分の内周面に、間隔を空けて対向している、
転がり軸受。
【請求項2】
前記転がり軸受の前記第1軸方向における端面は、
前記第1外輪および前記第2外輪のそれぞれの第3部分の端面と、
前記第1内輪および前記第2内輪のそれぞれの主面と、
から構成される、
請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記転動体がローラであり、
前記第1外輪、前記第2外輪、前記第1内輪および前記第2内輪のそれぞれが含む前記第2部分は、前記転がり軸受の径方向の外方に向かうにしたがって径の大きくなる円錐台状の筒状部である、
請求項1または請求項2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記第1外輪、前記第2外輪、前記第1内輪および前記第2内輪のそれぞれは、一定の板厚を有する一枚の板材で構成されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
外輪、内輪のそれぞれが一対の板部材からなる転がり軸受が知られている(例えば特許文献1参照)。外輪、内輪のそれぞれが一対の板部材からなる転がり軸受において、外輪と内輪との間にシールを備えた転がり軸受が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-178735号公報
【文献】特開2021-55719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薄型で取り扱いやすい転がり軸受に対するニーズが存在する。そこで、薄型で取り扱いやすい転がり軸受を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に従った転がり軸受は、鋼製の外輪と、前記外輪と共通の中心軸を有し、前記外輪の内周側に配置される鋼製の内輪と、前記外輪の内周面および前記内輪の外周面上を転動可能に配置される複数の転動体と、を備える。前記外輪は、第1外輪と、前記中心軸の延びる方向である第1軸方向において前記第1外輪に並べて配置されるとともに前記第1外輪に対して固定される第2外輪と、を含む。前記内輪は、第1内輪と、前記第1軸方向において前記第1内輪に並べて配置されるとともに前記第1内輪に対して固定される第2内輪と、を含む。前記第1外輪、前記第2外輪、前記第1内輪および前記第2内輪のそれぞれは、第1部分と、第2部分と、第3部分と、を含む。前記第1部分は、前記第1軸方向に直交する方向に延びる円盤環状部である。前記第2部分は、前記第1部分に接続し、その周面は円環状の転走面を構成する。前記第3部分は、前記第2部分に接続し、前記第1軸方向に沿って延びる筒状部を含む。前記第1内輪および前記第2内輪のそれぞれの第3部分の端面は、前記第1外輪および前記第2外輪のそれぞれの第3部分の内周面に、間隔を空けて対向している。
【発明の効果】
【0006】
上記転がり軸受によれば、薄型で取り扱いやすい転がり軸受が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示にかかる転がり軸受の構造を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1のII-IIで切断した状態を示す断面図である。
図3図3は、図2の一部を拡大して示す一部拡大断面図である。
図4図4は、第2外輪を取り出し、一部を切り欠いて示す一部断面斜視図である。
図5図5は、内輪を作製する過程の一部を示す断面斜視図である。
図6図6は、第2内輪を取り出し、一部を切り欠いて示す一部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示に従った転がり軸受は、鋼製の外輪と、前記外輪と共通の中心軸を有し、前記外輪の内周側に配置される鋼製の内輪と、前記外輪の内周面および前記内輪の外周面上を転動可能に配置される複数の転動体と、を備える。前記外輪は、第1外輪と、前記中心軸の延びる方向である第1軸方向において前記第1外輪に並べて配置されるとともに前記第1外輪に対して固定される第2外輪と、を含む。前記内輪は、第1内輪と、前記第1軸方向において前記第1内輪に並べて配置されるとともに前記第1内輪に対して固定される第2内輪と、を含む。前記第1外輪、前記第2外輪、前記第1内輪および前記第2内輪のそれぞれは、第1部分と、第2部分と、第3部分と、を含む。前記第1部分は、前記第1軸方向に直交する方向に延びる円盤環状部である。前記第2部分は、前記第1部分に接続し、その周面は円環状の転走面を構成する。前記第3部分は、前記第2部分に接続し、前記第1軸方向に沿って延びる筒状部を含む。前記第1内輪および前記第2内輪のそれぞれの第3部分の端面は、前記第1外輪および前記第2外輪のそれぞれの第3部分の内周面に、間隔を空けて対向している。
【0009】
従来、特許文献1に開示された薄型の転がり軸受が公知である。特許文献1に開示された転がり軸受は、外輪および内輪のそれぞれが、軸方向に分割された一対の部材(外輪分割輪、内輪分割輪ともいう)から構成される。また、特許文献1の転がり軸受は、外輪分割輪、内輪分割輪のそれぞれが軸方向に延びるフランジ部を有することを開示している。さらに、フランジ部の先端にはラビリンス部を有してもよいことが記載されている。外輪分割輪、内輪分割輪のいずれか一方に形成されたラビリンス部は、外輪分割輪、内輪分割輪の他方の端面を覆うように延びる。
【0010】
特許文献2の転がり軸受は、特許文献1と同様に、外輪分割輪が組み合わされてなる外輪と、内輪分割輪が組み合わされてなる内輪と、を備える。また、外輪分割輪、内輪分割輪のそれぞれが軸方向に延びるフランジ部を有する。外輪分割輪のフランジ部と、内輪分割輪のフランジ部との間にシールが配設され、外輪と内輪の間がシールされる。
【0011】
これらの転がり軸受は、軸方向の寸法が小さい、すなわち薄い軸受となりうる。また、鋼板のプレスによって作製可能である。しかしながら、軸方向の寸法について、さらなる小型化のニーズがある。また、転がり軸受の取り扱いやすさを考慮すると、製造時、使用時のいずれにおいても軸受の内部が確認できることが好ましい。
【0012】
上記の状況下で検討が重ねられ、本開示にかかる転がり軸受が想到された。本開示にかかる転がり軸受において、外輪は第1外輪と第2外輪とを含み、内輪は第1内輪と第2内輪とを含む。また、第1外輪、第2外輪、第1内輪、第2内輪のそれぞれは、軸方向に延びる筒状部(フランジ部)を有する。そして、第1内輪、第2内輪が有する筒状部の端面は、第1外輪および前記第2外輪のそれぞれの第3部分の内周面に、間隔を空けて対向している。
【0013】
特許文献1,2に開示された転がり軸受では、内輪および外輪のフランジ部がどちらも軸方向に沿って延び、その端面は軸方向に垂直な面とされている。また、フランジ部の先端にラビリンス部が設けられる場合、ラビリンス部はフランジ部よりも軸方向における外方に形成され、フランジ部の端面を覆うように構成されている。これに対して本開示にかかる転がり軸受では、内輪のフランジ部の端部が外径方向に屈曲し、内輪のフランジ部の端面が外輪の内周面に対向するよう構成されている。軸方向において、内輪のフランジ部の先端部は、外輪のフランジ部よりも外方に突出していない。この構成によって、ラビリンス部を設ける場合よりも軸方向の寸法を抑制することができ、また同時に、フランジ部において外輪と内輪との間に形成される隙間を小さくできる。このため、ラビリンス部が無くても、軌道内への異物や埃の進入を防止できる。
【0014】
本開示にかかる転がり軸受は、外輪と内輪との間に形成される隙間から内部を視認できる。この構成によって、製造時においても使用時においても転動体や軌道路内の状態を外部から確認できる。例えば、製造時においては、転動体が所定の数や方向で挿入されていることを確認できる。使用時においては、グリースが適正に注入されているかどうかを確認し、必要に応じて外輪と内輪の隙間から軌道内にグリースを注入することもできる。
【0015】
前記転がり軸受において、前記転がり軸受の前記第1軸方向における端面は、前記第1外輪および前記第2外輪のそれぞれの第3部分の端面と、前記第1内輪および前記第2内輪のそれぞれの主面と、から構成されてもよい。かかる構成によれば、転がり軸受の軸方向の寸法を抑制しながらも、外輪と内輪との間に形成される隙間を小さくできる。なお、ここで「主面」とは、内輪を構成する板材における主面(端面ではない、最も大きな面積を有する面)を意味している。
【0016】
前記転がり軸受において、前記転動体がローラであってもよい。前記第1外輪、前記第2外輪、前記第1内輪および前記第2内輪のそれぞれが含む前記第2部分は、前記転がり軸受の径方向の外方に向かうにしたがって径の大きくなる円錐台状の筒状部であってよい。本開示にかかる転がり軸受は鋼板のプレス加工によって製造されうるところ、転動体がローラである場合には、転走面を平坦面として形成すればよいので、転動体がボールである場合と比較して加工が容易である。このため、薄型で取り扱いやすい転がり軸受をより確実に、公知の技術を適用して合理的に製造できる。
【0017】
前記第1外輪、前記第2外輪、前記第1内輪および前記第2内輪のそれぞれは、一定の板厚を有する一枚の板材で構成されていてもよい。かかる構成の転がり軸受は、鋼板のプレス加工によって製造できる。特に、内輪分割輪のフランジ部の端部を外径方向に屈曲させる構成は、プレス加工において確実に作製できる。このため、薄型で取り扱いやすい転がり軸受を合理的なコストで安定に製造できる。
【0018】
[実施形態の具体例]
次に、本開示の転がり軸受の具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0019】
図1は、本開示にかかる転がり軸受1の構造を示す概略斜視図である。一部を切り開いて内部を示している。図1におけるZ軸は、転がり軸受1の中心軸Rが延びる方向に沿う。本明細書では、Z軸方向を、転がり軸受の厚み方向あるいは軸方向とも称する。図1におけるXY平面は、転がり軸受の径方向および周方向に沿う平面である。
【0020】
図1を参照して、転がり軸受1の全体的な構成を説明する。転がり軸受1は、外輪1Aと、内輪1Bと、複数の転動体としてのローラ1Cと、を備える。外輪1Aと内輪1Bとは、共通する中心軸Rを有する。外輪1Aおよび内輪1Bは、鋼製である。内輪1Bは、外輪1Aの内周側に配置される。外輪1Aおよび内輪1Bは、所定の形状に加工された鋼板から構成される。外輪1Aおよび内輪1Bを構成する鋼は、例えば、JIS規格に規定されるSCM415である。
【0021】
図1を参照して、外輪1Aは、大略的に円環状の第1外輪10と、大略的に円環状の第2外輪20と、を含む。第1外輪10および第2外輪20は互いに同一の形状を有する。第1外輪10および第2外輪20は、第1軸としての中心軸Rの方向に互いに並べて配置されている。第1外輪10と第2外輪20とは、互いに固定されている。
【0022】
内輪1Bは、大略的に円環状の第1内輪30と、大略的に円環状の第2内輪40と、を含む。第1内輪30および第2内輪40は互いに同一の形状を有する。第1内輪30および第2内輪40は、中心軸Rの方向に互いに並べて配置されている。第1内輪30と第2内輪40とは、互いに固定されている。
【0023】
外輪1Aの内周面と内輪1Bの外周面とによって構成される円環状の軌道路内に、複数のローラ1Cが配置される。ローラ1Cは、複数の第1ローラ51と、複数の第2ローラ52と、を含む。第1ローラ51および第2ローラ52は、周方向に交互に配置される。第1ローラ51および第2ローラ52は、円柱状の形状を有する。第1ローラ51と第2ローラ52とは、配置方向が異なるのみで、同一の材料および寸法を有する。第1ローラ51は、円筒状の外周面51aと、外周面51aの両端のそれぞれに円形の端面とを有する。第2ローラ52は、円筒状の外周面52aと、外周面52aの両端のそれぞれに円形の端面とを有する。第1ローラ51および第2ローラ52は、鋼製である。第1ローラ51および第2ローラ52は、例えば、JIS規格に規定されるSUJ2である。
【0024】
転がり軸受1の具体的な寸法は、本開示にかかる効果を奏する限り特に制限されないが、典型的には、外輪の外径が30mm~150mm程度、内輪の内径が0mm~120mm程度の転がり軸受であってよい。また、軸方向の厚みは4mm~15mm程度とできる。本開示にかかる転がり軸受は超薄型とも称される、軸方向の寸法が抑制された転がり軸受である。
【0025】
第1外輪10は、中心軸Rに直交する方向に延びる第1部分15を有する。第2外輪20は、中心軸Rに直交する方向に延びる第1部分25を有する。第1部分15、25は、円盤環状の部分である。第1部分15は、中心軸Rと共通の中心軸を有する。第1部分15、25には、厚み方向(中心軸Rの方向)に貫通した取り付け用孔11が周方向において等間隔に複数(実施の形態1においては6つ)形成されている。転がり軸受1を外部部材に対して固定する際には、取り付け用孔11にボルトを挿入し、外部部材のねじ孔にボルトをねじ込むことによって、転がり軸受1を固定できる。
【0026】
第1部分15には、取り付け用孔11の間に、貫通孔12および突出部13のいずれか一方が交互に形成されている。貫通孔12には、第2外輪20の突出部22が嵌合している。突出部13は、第2外輪20に形成される貫通孔23(図4)に嵌合されている。嵌合部は接着剤によって接着されていてもよい。この構成によって、第1外輪10と第2外輪20が互いに固定されている。第1外輪10と第2外輪20との固定の仕方はこれに制限されず、例えばビス等で固定されていてもよい。
【0027】
第1内輪30は、中心軸Rに直交する方向に延びる第1部分35を有する。第2内輪40は、中心軸Rに直交する方向に延びる第1部分45を有する。第1部分35、45は、円盤環状の部分である。第1部分35、45には、厚み方向(中心軸Rの方向)に貫通した取り付け用孔31が周方向において等間隔に複数(実施の形態1においては6つ)形成されている。転がり軸受1を外部部材に対して固定する際には、取り付け用孔31にボルトを挿入し、外部部材のねじ孔にボルトをねじ込むことによって、転がり軸受1を固定できる。
【0028】
第1部分35には、取り付け用孔31の間に、貫通孔32および突出部33のいずれか一方が交互に形成されている。貫通孔32には、第2内輪40の突出部42が嵌合している。突出部33は、第2内輪40に形成される貫通孔43(図6)に嵌合されている。嵌合部は接着剤によって接着されていてもよい。この構成によって、第1内輪30と第2内輪40が互いに固定されている。第1内輪30と第2内輪40との固定の仕方はこれに制限されず、例えばビス等で固定されていてもよい。
【0029】
図2は、図1のII-IIで切断した状態を示す断面図である。図2を参照して、外輪1Aおよび内輪1Bのそれぞれについてさらに説明する。
第1外輪10は、第1部分15と、第2部分16と、第3部分17と、を含む。第1部分15、第2部分16および第3部分17は、おおむね同一の厚みを有する。第3部分17は、第1部分15よりも若干(例えば0.1~0.3mm程度)薄くてもよい。第1部分15が、第1部分16および第3部分17よりも厚くてもよい。第1部分15は、円盤環状の形状を有する。第2部分16は、筒状の形状を有する。第2部分16の外形形状は、円錐台状である。第2部分16は、第1部分15の内縁からZ軸方向において第1部分15から離れるにしたがって内径が小さくなるように延びる。言い換えると、第2部分16は、転がり軸受1の径方向の外方に向かうにしたがって大きくなる径を有する。第2部分16は、円環状の内周面16aを有する。内周面16aは、第1ローラ51がその上を転走する転走面を構成する。内周面16aは、転がり軸受1の中心軸Rと共通の中心軸を有する。第3部分17は、円筒状の形状を有する。第3部分17は、転がり軸受1の中心軸Rと共通の中心軸を有する。第3部分17は、第2部分16のZ軸方向における第1部分15とは反対側の端部に接続され、Z軸方向に沿って延びる。第3部分17の端面17aは、中心軸Rに直交する面である。
【0030】
同様に、第2外輪20は、第1部分25と、第2部分26と、第3部分27と、を含む。第2外輪20は、第1外輪10と配置方向が異なるのみで、寸法および形状は同一である。第1部分25は、第1部分15と同様の構成である。第2部分26は第2部分16と同様の構成である。第3部分27は、第3部分17と同様の構成である。第2部分26は、Z軸方向において第1外輪10の第2部分16とは反対側に延びるよう配置される。第2部分26は、円環状の内周面26aを有する。内周面26aは、第2ローラ52がその上を転走する転走面を構成する。第3部分27は、第2部分26のZ軸方向における第1部分25とは反対側の端部に接続され、Z軸方向に沿って第3部分17とは反対側に延びる。
【0031】
第1外輪10と第2外輪20とは、第1外輪10における第1部分15の主面15aおよび第2外輪20における第1部分25の主面25aにおいて相対し、互いに固定されている。
【0032】
内輪1Bは、円環状の第1内輪30と、円環状の第2内輪40と、を含む。第1内輪30および第2内輪40は、配置方向が異なるのみで、同一の寸法および形状を有する。
【0033】
第1内輪30は、第1部分35と、第2部分36と、第3部分37と、を含む。第1部分35、第2部分36および第3部分37は、おおむね同一の厚みを有する。第3部分37は、第1部分35よりも若干(例えば0.1~0.3mm程度)薄くてもよい。第1部分35が、第1部分36および第3部分37よりも厚くてもよい。第1外輪10の厚みと、第1内輪30の厚みとは一致する。第1部分35は、円盤環状の形状を有する。第1部分35は、転がり軸受1の中心軸Rと共通の中心軸を有する。第2部分36は、筒状の形状を有する。第2部分36の外形形状は、円錐台状である。第2部分36は、第1部分35の外縁からZ軸方向において第1部分35から離れるにしたがって外径が大きくなるように延びる。言い換えると、第2部分36は、転がり軸受1の径方向の外方に向かうにしたがって大きくなる径を有する。
【0034】
第2部分36は、円環状の外周面36aを有する。外周面36aは、第2ローラ52がその上を転走する転走面を構成する。外周面36aは、転がり軸受1の中心軸Rと共通の中心軸を有する。第3部分37は、円筒状の形状を有する。第3部分37は、転がり軸受1の中心軸Rと共通の中心軸を有する。第3部分37は、第2部分36のZ軸方向における第1部分35とは反対側の端部に接続される。第3部分37は、円筒部71と、先端部72とを含む。円筒部71は、Z軸方向に沿って延びる筒状部である。先端部72は円筒部71の一端に連続し、円筒部71の末端から転がり軸受1の径方向外方に延びる部分である。
【0035】
同様に、第2内輪40は、第1部分45と、第2部分46と、第3部分47と、を含む。第2内輪40は、第1内輪30と配置方向が異なるのみで、寸法および形状は同一である。第1部分45は、第1部分35と同様の構成である。第2部分46は第2部分36と同様の構成である。第3部分47は、第3部分37と同様の構成である。第2部分46は、Z軸方向において第1内輪30の第2部分36とは反対側に延びるよう配置される。第2部分46は、円環状の外周面46aを有する。外周面46aは、第1ローラ51がその上を転走する転走面を構成する。第3部分47は、第2部分46のZ軸方向における第1部分45とは反対側の端部に接続され、Z軸方向に沿って第3部分47とは反対側に延びる。第3部分47は、円筒部81と、先端部82とを含む。円筒部81は、Z軸方向に沿って延びる筒状部である。先端部82は円筒部81の一端に連続し、円筒部81の末端から転がり軸受1の径方向外方に延びる部分である。
【0036】
図3は、図2の一部を拡大して示す一部拡大断面図である。図3を参照して、第1内輪30の第3部分37の端面37aは、第1外輪10の第3部分17の内周面17bに対して、間隔を空けて対向している。内周面17bと端面37aとの間隔は、特に制限されないが、例えば0.1mm~0.6mm程度とすることができる。同様に、第2内輪40の第3部分47の端面47aは、第2外輪20の第3部分27の内周面27bに対して、間隔を空けて対向している。内周面27bと端面47aとの間隔は、内周面17bと端面37aとの間隔と同様にできる。
【0037】
第1外輪10の第3部分17と第1内輪30の第3部分37との間には、外部と連通する空間Sが形成されている。本開示にかかる構成によれば、空間Sは、軸方向における外方の端部、すなわち入り口付近が狭くなっている。第1外輪10と第1内輪30の間に間隔があることによって、外部から軸受の軌道内を確認することやグリースを注入することが可能となる。また同時に、入り口付近を狭くすることによって、異物や埃の進入を抑制できる。第2外輪20の第3部分27および第2内輪40の第3部分47の間の空間Sも、同様に構成されている。
【0038】
転がり軸受1の全体を見るとき、転がり軸受1の軸方向における端面101は、第1外輪10の第3部分17の端面17aと、第1内輪30を構成する鋼板の主面30bとから構成される。すなわち、端面17aと主面30bとは、軸方向において同じ高さに構成されている。同様に、転がり軸受1の軸方向における端面102は、第2外輪20の第3部分27の端面27aと、第2内輪40を構成する鋼板の主面40bとから構成される。すなわち、端面27aと主面40bとは、軸方向において同じ高さに構成されている。なお、ここで「主面」とは、内輪を構成する鋼板の面のうち、端面ではない、最も大きな面積を有する面を意味している。
【0039】
本開示にかかる転がり軸受の製造方法の一例を説明する。
本開示にかかる転がり軸受は、一定の厚さを有する鋼板の順送プレス加工によって製造できる。図4は、第2外輪20を取り出し、一部を切り欠いて示す一部断面斜視図である。図4を参照して、第2外輪20は、一連の板材が所定の形状に曲げられ、所定箇所をカット及び成形した後、成形部分が板材から切断されることによって、作製される。例えば、板材の絞り加工によって、第2部分26および後に第3部分27が形成される立ち上がり部および底部を形成する。立ち上がり部の一部が第2部分26となる。次いで、底部に穴を開けるようにカットする。カット部分をバーリングし、第3部分27を形成する。最後に所定箇所で板材を切断し、成形部分を切り離す。切り離し箇所の端面が、第1部分25の端面25eとなる。この間の工程で、取り付け用孔11、突出部22および貫通孔23が形成される。必要に応じて、転走面となる第2部分の内周面26aを研削等により所定の形状に調整してもよい。第1外輪10と第2外輪20とは、区別なく製造される。多数製造された外輪部材の中から、任意にあるいは選択の上で、2つの部材が一対に組み合わされ、互いに固定されて外輪1Aを構成する。
【0040】
図5は、第2内輪40を作製する過程の一部を模式的に示す断面斜視図である。図6は、第2内輪40を取り出し、一部を切り欠いて示す一部断面斜視図である。図5図6を参照して、第2内輪40も、一定の厚さを有する鋼板の順送プレス加工によって製造できる。第2内輪30は、板材にスリットを入れ、次いで絞りによって立ち上がり部を成形した後、所定箇所をカットし、最後に板材から成形部が切断されることによって作製される。図5を参照して、板材Mの絞り加工によって、板材Mに対して立ち上がる円筒部81と、円筒部81から斜めに延びる第2部分46と、絞りの底面に相当する第1部分45と、を形成する。同時に、または前後の工程で、取り付け用孔31、突出部42および貫通孔43を形成してもよい。最後に、板材Mから第2内輪40を切り離す。この時、円筒部81から外径方向に離れた位置c1において、板材Mを切断する。位置c1において板材Mを切断することによって、先端部82が形成される。切り離し箇所の端面が、第3部分47の端面47aとなる。
【0041】
第2内輪40は、第2部分46の外周面46aが転走面となる。板材Mを切断する際に、先端部82を形成するように切断することによって、切断時のストレスによって外周面46aに歪みが生じることを防止できる。また、円筒部81から若干離れた位置で切断することによって切断がより容易になり、真円度の高い、安定した品質の軸受部材を製造できる。第2内輪40は、生産効率の高い順送プレスによって安定に製造できるとともに、フランジ部の端部が外径方向に屈曲しているという形状によって、薄型で取り扱いやすい転がり軸受を実現する。後の工程において、必要に応じて、転走面となる外周面46aを研削等により所定の形状に調整してもよい。第2内輪40と第1内輪30はその区別なく製造される。多数製造された内輪部材の中から、任意にあるいは選択の上で、2つの部材が一対に組み合わされ、互いに固定されて内輪1Bを構成する。
【0042】
軸受の組み立てにおいては、例えば、内輪1Bと第2外輪20とが組み合わされ、続いて、ローラが所定の方向に配置される。すべてのローラが配置された後、第1外輪10が組み合わされて固定される。なお、当然ながら、一連の製造工程の中では、必要に応じて研削や焼入れ等の公知の工程が実施されてよい。
【0043】
(変形例)
上記の例では、転がり軸受における転動体はローラであったが、転動体は玉であってもよい。転動体の間にセパレータが配置されてもよい。また、転動体は保持器に保持されていてもよい。また、本開示にかかる転がり軸受において、第1外輪と第2外輪とを確実に固定するための構成、第1内輪と第2内輪とを確実に固定するための構成を備えてもよい。例えば、外輪同士、内輪同士の相対面に接着剤の層を有してもよく、接着剤が溜まる凹部が形成されてもよい。また、外輪同士、内輪同士は薄板用のねじ等で締結されてもよい。
【0044】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0045】
1 転がり軸受、1A 外輪、1B 内輪、1C ローラ、10 第1外輪、11、31 取り付け用孔、12、23、43 貫通孔、13、22、42 突出部、15、25、35、45 第1部分、15a、25a、30b、40b 主面、16、26、36、46 第2部分、16a、26a 内周面、17、27、37、47 第3部分、17a、27a、37a、47a 端面、17b、27b 内周面、20 第2外輪、25e、
30 第1内輪、36a、46a 外周面、40 第2内輪、51 第1ローラ、51a、52a 外周面、51B、51C、52B、52C 端面、52 第2ローラ、71、81 円筒部、72、82 先端部、101 :端面、M 板材、R 中心軸、S、S 空間。
【要約】
鋼製の外輪と、前記外輪と共通の中心軸を有し、前記外輪の内周側に配置される鋼製の内輪と、前記外輪の内周面および前記内輪の外周面上を転動可能に配置される複数の転動体と、を備える転がり軸受である。前記外輪は、第1外輪と、前記中心軸の延びる方向である第1軸方向において前記第1外輪に並べて配置されるとともに前記第1外輪に対して固定される第2外輪と、を含む。前記内輪は、第1内輪と、前記第1軸方向において前記第1内輪に並べて配置されるとともに前記第1内輪に対して固定される第2内輪と、を含む。前記第1外輪、前記第2外輪、前記第1内輪および前記第2内輪のそれぞれは、第1部分と、第2部分と、第3部分と、を含む。前記第1部分は、前記第1軸方向に直交する方向に延びる円盤環状部である。前記第2部分は、前記第1部分に接続し、周面が円環状の転走面を構成する。前記第3部分は、前記第2部分に接続し、前記第1軸方向に沿って延びる筒状部である。前記第1内輪および前記第2内輪のそれぞれの第3部分の端面は、前記第1外輪および前記第2外輪のそれぞれの第3部分の内周面に、間隔を空けて対向している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6