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特許7227445電池極性判定回路、充電器、及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】電池極性判定回路、充電器、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230215BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230215BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
H02J7/00 T
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018229152
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020092539
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年9月7日に発明した充電器をアスクル株式会社に卸した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】北村 謙治
(72)【発明者】
【氏名】溝口 康成
(72)【発明者】
【氏名】狩野 貴史
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-153034(JP,A)
【文献】特開2006-320154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容される電池のそれぞれの電極端子に当接する第1接点及び第2接点を含む電池収容部と、
前記電池収容部から前記電池の電圧が引き出される電圧引出点に抵抗器を介して接続され、前記電池収容部に収容される前記電池の極性を判定する制御装置と、
前記第1接点が前記電圧引出点に接続されると共に前記第2接点が接地される第1接続状態と、前記第2接点が前記電圧引出点に接続されると共に前記第1接点が接地される第2接続状態と、を切り替え可能な接続切替回路と、
前記抵抗器と前記制御装置とが接続される電圧読込点にカソードが接続され、アノードが接地されるダイオードと、を備え、
前記制御装置は、前記接続切替回路の接続状態に対する前記電圧読込点の電圧に基づいて前記電池の極性を判定し、
前記ダイオードの順方向電圧は、前記電圧読込点の電圧が前記制御装置の絶対最大定格の下限値以上となるように設定される、電池極性判定回路。
【請求項2】
前記ダイオードは、ショットキバリアダイオードである、請求項1に記載の電池極性判定回路。
【請求項3】
前記抵抗器は、前記ダイオードから流入する電流が前記ダイオードの許容電流を超えないように抵抗値が設定される、請求項1又は2に記載の電池極性判定回路。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1接続状態及び前記第2接続状態のいずれにおいても前記電圧読込点の電圧が所定の電圧範囲にない場合に、前記電池の異常判定を行う、請求項1乃至3のいずれかに記載の電池極性判定回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の前記電池極性判定回路と、
前記制御装置による制御に基づいて、前記電池を充電するための充電電力を前記電圧引出点に出力する電源回路と、を備え、
前記制御装置は、前記電池の極性を判定した後、前記第1接続状態又は前記第2接続状態のうち前記電圧読込点の電圧が前記電池の電圧となる接続状態で前記電池を充電する、充電器。
【請求項6】
前記制御装置は、前記電池の極性を判定してから充電を開始するまでの間に、前記第1接続状態又は前記第2接続状態のうち前記電池の正極端子が接地される逆バイアスの接続状態により前記電池を放電終止電圧まで放電させる、請求項5に記載の充電器。
【請求項7】
前記制御装置は、前記逆バイアスの接続状態と、前記第1接点及び前記第2接点が共に開放される開放状態と、を切り替えるPWM制御により前記電池の放電電流を制御する、請求項6に記載の充電器。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれかに記載の前記電池極性判定回路と、
前記電圧引出点に出力される前記電池の電力で動作する負荷装置と、を備え、
前記制御装置は、前記電池の極性を判定した後、前記第1接続状態又は前記第2接続状態のうち前記電圧読込点の電圧が前記電池の電圧となる接続状態で前記電池を放電する、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池極性判定回路、充電器、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に円筒形の乾電池や二次電池は、様々な電子機器の電源として広く利用されている。また二次電池は、充電することで繰り返し使用することが可能であり、二次電池を充電する機器として充電器が広く利用されている。このような電子機器又は充電器に電池を装着する際には、電池の極性を確認する必要がある。つまり電池は、正極端子が当接すべき接点に正極端子が当接し、負極端子が当接すべき接点に負極端子が当接する正しい接続方向で、電子機器又は充電器に装着する必要がある。
【0003】
しかし、電子機器及び充電器は、接続方向が逆方向でも電池が装着可能な構成になっている場合が多いため、正しい接続方向とは逆の接続方向で電池が装着される可能性がある。そして正しい接続方向とは逆の接続方向で電池が装着されると、電子機器は動作しないことになり、また充電器においては、電池の充電ができないことになるだけでなく、例えば電池の液漏れ等が生ずる虞もある。
【0004】
このような課題を解決することを目的とする従来技術の一例として、例えば特許文献1には、電池の正極端子及び負極端子から流入する電流の有無をそれぞれ検知する一対のフォトカプラにより電池の接続方向を判定する充電器が開示されている。また、例えば特許文献2には、電池の正極端子及び負極端子の電圧を比較する一対のオペアンプを備え、当該一対のオペアンプの出力電圧の大小関係に基づいて電池の接続方向を判定する充電器及び電子機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-39076号公報
【文献】特開2018-153034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来技術は、いずれもフォトカプラやオペアンプ等の比較的高価な電子部品を使用しているため、充電器及び電子機器の低コスト化が妨げられる虞が生じる。一方、低コスト化を目的として、これらの比較的高価な電子部品を使用することなく、電池の電圧を制御装置で直接読み取ることも考えられる。しかしながら、この場合には、制御装置は、電池の接続方向によっては絶対最大定格の範囲外の電圧が入力されて破損する虞が生じる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、破損の虞を低減しつつ低コストで電池極性を判定することができる電池極性判定回路、充電器、及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、収容される電池のそれぞれの電極端子に当接する第1接点及び第2接点を含む電池収容部と、前記電池収容部から前記電池の電圧が引き出される電圧引出点に抵抗器を介して接続され、前記電池収容部に収容される前記電池の極性を判定する制御装置と、前記第1接点が前記電圧引出点に接続されると共に前記第2接点が接地される第1接続状態と、前記第2接点が前記電圧引出点に接続されると共に前記第1接点が接地される第2接続状態と、を切り替え可能な接続切替回路と、前記抵抗器と前記制御装置とが接続される電圧読込点にカソードが接続され、アノードが接地されるダイオードと、を備え、前記制御装置は、前記接続切替回路の接続状態に対する前記電圧読込点の電圧に基づいて前記電池の極性を判定し、前記ダイオードの順方向電圧は、前記電圧読込点の電圧が前記制御装置の絶対最大定格の下限値以上となるように設定される、電池極性判定回路である。
【0009】
電池極性判定回路は、電池収容部に収容される電池のそれぞれの電極端子が、接続切替回路により電圧引出点又はグランドにそれぞれ接続されるように制御されると共に、電圧引出点とグランドとの間で直列接続される抵抗器とダイオードとの接続点としての電圧読込点における電圧により、電池収容部での電池の接続方向、すなわち電池極性が判定される。このとき、ダイオードは、アノードが接地され、カソードが電圧読込点に接続されると共に、電圧読込点の電圧が制御装置の絶対最大定格の下限値以上となるように順方向電圧が設定されている。
【0010】
このため、電池極性判定回路は、電池極性を判定するための回路構成が抵抗器及びダイオードの比較的安価な素子のみからなるため、フォトカプラやオペアンプ等の比較的高価な電子部品を使用する回路と比較して安価に構成することができる他、回路基板上の実装面積を低減することができるため小型化に寄与することができる。また、制御装置は、電池との接続方向に拘らず、絶対最大定格を超過する電圧が入力されないことになる。従って、本発明の第1の態様に係る電池極性判定回路によれば、破損の虞を低減しつつ低コストで電池極性を判定することができる。
【0011】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、上記した本発明の第1の態様において、前記ダイオードは、ショットキバリアダイオードである、電池極性判定回路である。
【0012】
本発明の第2の態様に係る電池極性判定回路によれば、整流素子の中でも順方向電圧が低いショットキバリアダイオードにより電圧読込点における電圧の低下を抑制することができるため、制御装置に入力される電圧に起因して制御装置が破損する虞をより低減することができる。
【0013】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、上記した本発明の第1又は2の態様において、前記抵抗器は、前記ダイオードから流入する電流が前記ダイオードの許容電流を超えないように抵抗値が設定される、電池極性判定回路である。
【0014】
本発明の第3の態様に係る電池極性判定回路によれば、ダイオードに許容電流を超える電流が流れないように、抵抗器における抵抗値が設定されているため、ダイオードに入力される電流に起因してダイオードが破損する虞を低減することができる。
【0015】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、上記した本発明の第1乃至3のいずれかの態様において、前記制御装置は、前記第1接続状態及び前記第2接続状態のいずれにおいても前記電圧読込点の電圧が所定の電圧範囲にない場合に、前記電池の異常判定を行う、電池極性判定回路である。
【0016】
本発明の第4の態様に係る電池極性判定回路によれば、電池と制御装置との接続状態を接続切替回路において切り替えることにより、電池の電圧を読み込むことができるため、電池の電圧が所定の電圧範囲にない異常状態で電池が充電されないようにすることができる。
【0017】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、上記した本発明の第1乃至4のいずれかの態様における前記電池極性判定回路と、前記制御装置による制御に基づいて、前記電池を充電するための充電電力を前記電圧引出点に出力する電源回路と、を備え、前記制御装置は、前記電池の極性を判定した後、前記第1接続状態又は前記第2接続状態のうち前記電圧読込点の電圧が前記電池の電圧となる接続状態で前記電池を充電する、充電器である。
【0018】
本発明の第5の態様に係る充電器によれば、電池極性判定回路により電池の極性を判定した上で、電源回路と電池との適切な接続状態で充電を行うことができ、破損の虞を低減しつつ低コスト化を図ることができる。
【0019】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、上記した本発明の第5の態様において、前記制御装置は、前記電池の極性を判定してから充電を開始するまでの間に、前記第1接続状態又は前記第2接続状態のうち前記電池の正極端子が接地される逆バイアスの接続状態により前記電池を放電終止電圧まで放電させる、充電器である。
【0020】
本発明の第6の態様に係る充電器は、電池極性判定回路の回路構成に伴い、第1接続状態又は第2接続状態のうち電池の正極端子が接地される接続状態に制御した場合に、電池の電池容量が抵抗器において消費される閉回路が形成される。このため、本発明の第6の態様に係る充電器によれば、新たな構成を追加することなく、電池の極性判定から充電開始までの間に電池のリフレッシュ放電を行うことができる。
【0021】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、上記した本発明の第6の態様において、前記制御装置は、前記逆バイアスの接続状態と、前記第1接点及び前記第2接点が共に開放される開放状態と、を切り替えるPWM制御により前記電池の放電電流を制御する、充電器である。
【0022】
本発明の第7の態様に係る充電器によれば、接続切替回路に対するPWM制御により、電池の放電電流を制御することができ、電池の特性に適したリフレッシュ放電が可能になる。
【0023】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様は、上記した本発明の第1乃至4のいずれかの態様における前記電池極性判定回路と、前記電圧引出点に出力される前記電池の放電電力で動作する負荷装置と、を備え、前記制御装置は、前記電池の極性を判定した後、前記第1接続状態又は前記第2接続状態のうち前記電圧読込点の電圧が前記電池の電圧となる接続状態で前記電池を放電する、電子機器である。
【0024】
本発明の第8の態様に係る電子機器は、電池収容部に収容される電池がいずれの向きであっても、電池の極性を判定した上で、適切な接続方向で電池を放電することができる。また、電子機器は、電池の極性を判定する回路が比較的安価な素子のみからなり、制御装置に絶対最大定格を超過する電圧が入力されない。これにより本発明の第8の態様に係る電子機器によれば、破損の虞を低減しつつ低コストで電池極性を判定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、破損の虞を低減しつつ低コストで電池極性を判定することができる電池極性判定回路、充電器、及び電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係る充電器の回路図である。
図2】制御装置の制御動作を示すフローチャートである。
図3】本発明の第2実施形態に係る電子機器の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0028】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る充電器1の回路図である。本実施形態に係る充電器1は、電池収容部2、制御装置3、接続切替回路4、抵抗器R、及びダイオードDを備える「電池極性判定回路」、並びに電源回路5から構成される。そして、充電器1は、電池収容部2に収容される電池BATの極性、すなわち電池BATの接続方向を判定し、適切な接続方向で電池BATを充電する。
【0029】
電池収容部2は、収容される電池BATのそれぞれの電極端子に当接する第1接点T1及び第2接点T2を含む。すなわち、電池BATは、正極端子が第1接点T1に当接して電池収容部2に収容される場合には負極端子が第2接点T2に当接し、負極端子が第1接点T1に当接して電池収容部2に収容される場合には正極端子が第2接点T2に当接する。ここで、電池BATは、本実施形態においては、公称電圧1.2[V]のニッケル水素二次電池であるものとする。
【0030】
制御装置3は、例えば公知のマイコン制御回路からなり、詳細を後述するように、電池BATの極性判定や電池BATの充電制御を含めて、充電器1の全体を統括制御する。また、本実施形態の制御装置3は、回路上のアナログ電圧をデジタル電圧に変換して読み込むADコンバータ(図示せず)を内蔵している。ここで、制御装置3は、本実施形態においては、高電位側の電源電圧がVDD=5[V]、低電位側の電源電圧がVSS=0[V]であり、許容される入力電圧がVSS-0.3[V]≦VIN≦VDD+0.3[V]の範囲である一般的な絶対最大定格が規定されているものとする。
【0031】
接続切替回路4は、図1に示す電圧引出点P1及び接地点GNDとの間において、電池BATが収容された電池収容部2の接続状態を切り替える回路である。より具体的には、接続切替回路4は、例えば電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)からなる第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、及び第4スイッチSW4を含む。第1スイッチSW1は、一端が第1接点T1に接続され、他端が電圧引出点P1に接続されている。第2スイッチSW2は、一端が第2接点T2に接続され、他端が接地されている。第3スイッチSW3は、一端が第2接点T2に接続され、他端が電圧引出点P1に接続されている。第4スイッチSW4は、一端が第1接点T1に接続され、他端が接地されている。
【0032】
これにより、接続切替回路4は、例えば、第1接点T1が電圧引出点P1に接続されると共に第2接点T2が接地される第1接続状態と、第2接点T2が電圧引出点P1に接続されると共に第1接点T1が接地される第2接続状態と、を切り替えることができる。尚、接続切替回路4の各スイッチは、制御装置3により断接制御される。
【0033】
抵抗器Rは、一端が電圧引出点P1に接続され、他端が制御装置3との接続点としての電圧読込点P2に接続されている。抵抗器Rは、電圧引出点P1と電圧読込点P2との間に流れる電流を制限する。
【0034】
ダイオードDは、本実施形態においてはショットキバリアダイオードであり、カソードが電圧読込点P2に接続され、アノードが接地されている。ダイオードDは、アノードの電圧がカソードの電圧と所定の順方向電圧Vとの和よりも高い場合に順方向に電流が流れる。ここで、本発明に係るダイオードDは、電圧読込点P2の電圧VP2が制御装置3の絶対最大定格の下限値である-0.3[V]以上となるように順方向電圧Vが設定される。本実施形態においては、順方向電圧VがV=0.3[V]であるショットキバリアダイオードが使用されているものとして説明するが、更に低Vタイプのショットキバリアダイオードを採用してもよい。また、制御装置3の絶対最大定格の下限値がより低い場合には、ショットキバリアダイオード以外の整流素子を採用してもよい。
【0035】
電源回路5は、制御装置3による制御に基づいて、電池BATを充電するための充電電力を電圧引出点P1に出力する。より具体的には、電源回路5は、例えば、図示しない外部電源から供給される電力を、電池BATの状態を監視する制御装置3の制御に基づいて電池BATの充電に適した電圧に変換するDC-DCコンバータである。
【0036】
次に、電池収容部2に収容された電池BATの極性を判定して充電する制御装置3の制御手順の一例を説明する。図2は、制御装置3の制御動作を示すフローチャートである。制御装置3は、電池BATが電池収容部2に収容された状態で図2の制御をスタートする。尚、制御開始時においては、接続切替回路4の各スイッチがいずれもOFFであり、電源回路5が充電電力を出力していないものとする。
【0037】
制御動作が開始されると、制御装置3は、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2をON、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4をOFFに制御する(ステップS1)。これにより、電池収容部2は、第1接点T1が電圧引出点P1に接続されると共に第2接点T2が接地される上記の第1接続状態となる。
【0038】
ここで、電圧引出点P1の電圧VP1は、電池BATの正極端子が第1接点T1に当接する方向で電池収容部2に収容されている場合には、第1接続状態により順方向に接続された電池BATの電圧として約1.2[V]となる。このとき、電圧引出点P1から抵抗器R、電圧読込点P2、及びダイオードDを介して接地に至る回路においては、ダイオードDに逆方向の電圧が印加されることにより電流が流れない状態となる。このため、電圧読込点P2の電圧VP2は、抵抗器Rにおける電圧降下を受けないことにより、電圧引出点P1と同じく約1.2[V]となる。
【0039】
また、電圧引出点P1の電圧VP1は、電池BATの負極端子が第1接点T1に当接する方向で電池収容部2に収容されている場合には、第1接続状態により逆方向に接続された電池BATの電圧として約-1.2[V]となる。このとき、電圧引出点P1から抵抗器R、電圧読出点P2、及びダイオードDを介して接地に至る回路においては、ダイオードDに順方向の電圧が印加されることにより電流が流れる状態となる。このため、電圧読込点P2の電圧VP2は、電圧引出点P1よりも抵抗器Rにおける電圧降下分が加算された電圧として、ダイオードDの順方向電圧Vの大きさに伴う-0.3[V]となる。このとき、抵抗器Rは、ダイオードDから流入する電流がダイオードDの許容電流を超えないような抵抗値rを有するものが採用されている。
【0040】
このように、制御装置3は、接続切替回路4を第1接続状態に制御した状態で、電圧読込点P2の電圧VP2を読み込むことにより、電池BATが正極端子を第1接点T1に当接させた状態で電池収容部2に収容されているか否かを判定することができる。より具体的には、制御装置3は、電圧読込点P2の電圧VP2が、所定の電圧範囲(VMIN≦VP2≦VMAX)内であるか否かを判定する(ステップS2)。ここで、所定の電圧範囲とは、正常な電池BATの電圧変動域を規定する範囲であり、本実施形態におけるニッケル水素二次電池の場合は、例えば、下限値VMINが放電終止電圧としての1.0[V]に設定され、上限値VMAXが充電終止電圧としての1.3[V]として設定される。
【0041】
第1接続状態における電圧読込点P2の電圧VP2が所定の電圧範囲内である場合(ステップS2でYes)、制御装置3は、電池BATが第1接続状態により順方向に接続されているものとして、電源回路5に充電電力を出力させる制御を行い、第1接続状態で電池BATを充電する(ステップS3)。
【0042】
また、制御装置3は、電圧読込点P2の電圧VP2に基づいて、電池BATの電圧(=電圧引出点P1の電圧VP1=電圧引出点P2の電圧VP2)を監視し、当該電圧の値又はその変化量ΔVなどの指標に基づき、電池BATが満充電状態に達したか否かの判定を行う(ステップS4)。電池BATが満充電状態に達するまでは、制御装置3は、電池BATの充電を継続する(ステップS4でNo)。
【0043】
そして、電池BATが満充電状態に達した場合には(ステップS4でYes)、制御装置3は、電源回路5による充電電力の供給を停止させ、接続切替回路4の各スイッチをOFFに制御することにより、電池BATの充電を終了して一連の制御手順を完了する。このとき、制御装置3は、充電の正常終了をユーザに通知してもよい。
【0044】
一方、ステップS2において、第1接続状態における電圧読込点P2の電圧VP2が所定の電圧範囲にない場合(ステップS2でNo)、制御装置3は、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2をOFF、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4をONに制御する(ステップS5)。これにより、電池収容部2は、第2接点T2が電圧引出点P1に接続されると共に第1接点T1が接地される上記の第2接続状態となる。
【0045】
そして、制御装置3は、接続切替回路4を第2接続状態に制御した状態で、電圧読込点P2の電圧VP2を読み込むことにより、電池BATが正極端子を第2接点T2に当接させた状態で電池収容部2に収容されているか否かを判定する。より具体的には、制御装置3は、第2接続状態において、電圧読込点P2の電圧VP2が、上記の所定の電圧範囲内であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0046】
第2接続状態における電圧読込点P2の電圧VP2が所定の電圧範囲内である場合(ステップS6でYes)、制御装置3は、電池BATが第2接続状態により順方向に接続されているものとして、上記説明したように、満充電状態になるまで電池BATを充電する(ステップS3、ステップS4)。
【0047】
これに対し、第2接続状態における電圧読込点P2の電圧VP2が所定の電圧範囲にない場合(ステップS6でNo)、制御装置3は、電池BATの故障や、電池収容部2における電池BATの接触不良などにより、電池BATの充電を正常に行うことができないものとして異常判定を行い(ステップS7)、一連の制御手順を完了する。このとき、制御装置3は、充電の異常終了をユーザに通知してもよい。
【0048】
ところで、二次電池は、浅い充放電を頻繁に繰り返すと、いわゆるメモリ効果によって、電池容量が見かけ上減少し、放電できる容量が実質的に小さくなることがある。このメモリ効果による見かけ上の電池容量の減少は、例えば二次電池の深放電を行うリフレッシュ放電によって解消することができる。本発明に係る電池極性判定回路は、図1に示す回路に新たな構成を追加することなく当該リフレッシュ放電を行うこともできる。
【0049】
より具体的には、上記の制御装置3は、リフレッシュ放電が必要な場合において、ステップS2又はステップS5において電池BATの極性を判定してからステップS3における充電を開始するまでの間に、電池BATを放電終止電圧まで放電させる。すなわち、制御装置3は、電池BATの極性判定の後、上記の第1接続状態又は第2接続状態のうち、電池BATの正極端子が接地される逆バイアスの接続状態となるように接続切替回路4を制御する。
【0050】
例えば、正極端子が第2接点T2に当接した状態であると判定された場合、制御装置3は、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2をONに制御し、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4をOFFに制御することにより第1接続状態を形成する。これにより、電池極性判定回路においては、第2接点T2、第2スイッチSW2、ダイオードD、抵抗器R、第1スイッチSW1、及び第1接点T1を順に接続する閉回路が形成されることにより、電池BATの充電容量が抵抗器Rで消費されることになる。
【0051】
また、このとき、制御装置3は、上記した逆バイアスの接続状態と、各スイッチを全てOFFにして第1接点T1及び第2接点T2を共に開放する開放状態と、をPWM制御により繰り返し切り替えて放電させることで、電池BATの特性に適した放電電流でリフレッシュ放電を行うことができる。
【0052】
以上のように、本発明の第1実施形態に係る充電器1は、電池BATの接続状態を切り替える接続切替回路4を制御しつつ、抵抗器RとダイオードDとの接続点としての電圧読込点P2の電圧VP2に基づいて電池BATの極性を判定することができ、適切な接続方向で電池BATを充電することができる。このとき、電池BATの極性を判定する回路は、抵抗器R及びダイオードDの比較的安価な素子のみからなるため、フォトカプラやオペアンプ等の比較的高価な電子部品を使用する回路と比較して安価に構成することができる他、回路基板上の実装面積を低減することができるため小型化に寄与することができる。また、本発明の第1実施形態に係る充電器1は、ダイオードDの順方向電圧Vが制御装置3の絶対最大定格に基づいて設定されているため、制御装置3と電池BATとの接続方向に拘らず、制御装置3に絶対最大定格を超過する電圧が入力されないようにすることができる。従って、本発明の第1実施形態に係る充電器1によれば、破損の虞を低減しつつ低コストで電池極性を判定することができる。
【0053】
<第2実施形態>
続いて、本発明に係る電池極性判定回路を備える電子機器について、図3を参照しながら第2実施形態として説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係る電子機器10の回路図である。第2実施形態に係る電子機器10は、上記した第1実施形態の充電器1における電源回路5に代えて負荷装置20を備える点で、上記の第1実施形態と回路構成が異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
第2実施形態に係る電子機器10は、電池収容部2に電池BATが収容されることにより、電池BATから負荷装置20へ供給される電力により動作する。ここで、電子機器10は、上記した第1実施形態の充電器1と同様に、内部に備える電池極性判定回路により電池BATの極性を判定する。そして、制御装置3は、上記した第1接続状態又は第2接続状態のうち、電圧読込点P2の電圧VP2が電池BATの電圧となる接続状態、すなわち電池BATの正極端子が第1接点T1に接続される状態に接続切替回路4を制御することで、電池BATから負荷装置20に電力を供給することができる。
【0055】
これにより、本発明の第2実施形態に係る電子機器10によれば、電池収容部2に収容される電池BATがいずれの向きであっても、電池BATの極性を判定した上で、適切な接続方向で電池BATを放電することができる。また、電子機器10は、電池BATの極性を判定する回路が比較的安価な素子のみからなり、制御装置3に絶対最大定格を超過する電圧が入力されない。従って、本発明の第2実施形態に係る電子機器10によれば、破損の虞を低減しつつ低コストで電池極性を判定することができる。
【0056】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の第1実施形態では、図2のステップS3において第2接続状態に制御されるよりも先に、ステップS1において第1接続状態に制御される制御手順を例示したが、ステップS1とステップS3との順序は逆であってもよい。また、例えば、上記の第1実施形態では、第1接続状態において電圧読込点P2の電圧VP2が所定の電圧範囲内であることを以って充電を開始する制御手順を例示したが(図2のステップS2でYes)、第1接続状態における電圧読込点P2の電圧VP2を読み込んだ直後に、第2接続状態における電圧読込点P2の電圧VP2を読み込むことにより、制御手順の初期の段階で電池BATの極性に加えて充電可否を判定してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 充電器
2 電池収容部
3 制御装置
4 接続切替回路
5 電源回路
10 電子機器
20 負荷装置
BAT 電池
T1~T2 第1接点~第2接点
SW1~SW4 第1スイッチ~第4スイッチ
R 抵抗器
D ダイオード
P1 電圧引出点
P2 電圧読込点
図1
図2
図3