(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】サージ防護素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01T 4/12 20060101AFI20230215BHJP
H01T 21/00 20060101ALI20230215BHJP
H01T 2/02 20060101ALI20230215BHJP
H01T 1/20 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
H01T4/12 G
H01T21/00
H01T2/02 F
H01T1/20 F
(21)【出願番号】P 2018236053
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】野本 雅樹
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-043021(JP,A)
【文献】特開2007-317542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 4/12
H01T 21/00
H01T 2/02
H01T 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に一対の端辺と一対の側辺との四辺を有した平面視矩形状の絶縁性基板と、
前記絶縁性基板の上面に放電間隙を介して対向配置され一対の前記端辺まで拡がった一対の主放電電極と、
前記絶縁性基板の上面の外周部上に下面が接着用ペーストで接着されて前記絶縁性基板上に放電空間を形成する箱状の蓋体と、
一対の前記端辺にて露出した一対の前記主放電電極に導通した状態で前記絶縁性基板の両端部に形成された一対の端子電極と、
トリガ用間隙を介して互いに対向配置され一対の前記主放電電極に接続される一対のトリガ電極とを備え、
前記主放電電極が、一対の前記側辺にまで拡がっており、
前記放電間隙が、前記トリガ用間隙と同じ幅に設定され、
前記トリガ電極が、
Al、Ti、SnO
2
、Ni、Nb、TiN、Ba、もしくはFe、またはこれらの材料のうち2つ以上を含有する合金材料によって形成されていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項2】
請求項1に記載のサージ防護素子において、
一対の前記主放電電極の間隔が、前記絶縁性基板の上面の外周部で前記放電空間内の前記放電間隙よりも広く形成されていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項3】
上面に一対の端辺と一対の側辺との四辺を有した平面視矩形状の絶縁性基板と、前記絶縁性基板の上面に放電間隙を介して対向配置され一対の前記端辺まで拡がった一対の主放電電極と、前記絶縁性基板の上面の外周部上に下面が接着用ペーストで接着されて前記絶縁性基板上に放電空間を形成する箱状の蓋体と、一対の前記端辺にて露出した一対の前記主放電電極に導通した状態で前記絶縁性基板の両端部に形成された一対の端子電極と、トリガ用間隙を介して互いに対向配置され一対の前記主放電電極に接続される一対のトリガ電極とを備え、前記主放電電極が、一対の前記側辺にまで拡がっており、前記放電間隙が、前記トリガ用間隙と同じ幅に設定されているサージ防護素子を製造する方法であって、
前記絶縁性基板の上面に放電間隙を介して対向配置され一対の前記端辺まで拡がった一対の主放電電極を形成する主放電電極形成工程と、
前記絶縁性基板の上面にトリガ用間隙を介して互いに対向配置され一対の前記主放電電極に接続される一対のトリガ電極を形成するトリガ電極形成工程と、
前記絶縁性基板の上面の外周部上に前記蓋体を接着する封止工程と、
一対の前記端辺にて露出した一対の前記主放電電極に導通した状態で前記絶縁性基板の両端部に一対の端子電極を形成する端子電極形成工程とを有し、
前記封止工程で、前記蓋体の下面に接着用ペーストを塗布した状態で前記絶縁性基板上に前記蓋体を載置して加熱する加熱工程を有し、
前記主放電電極を、一対の前記側辺にまで拡げ、
前記放電間隙を、前記トリガ用間隙と同じ幅に設定することを特徴とするサージ防護素子の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載されたサージ防護素子の製造方法において、
前記封止工程で、前記蓋体の下面において直下に前記主放電電極が無く前記絶縁性基板が露出している部分だけ、前記接着用ペーストを他の部分よりも厚くすることを特徴とするサージ防護素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導雷や誘導サージ、静電気サージに起因した電流やノイズを吸収して電気機器、電子機器またはこれらの回路を保護するサージ防護素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電話機、ファクシミリ、モデム等の通信機器用の電子機器が通信線との接続する部分、電源線、アンテナ或いはCRT駆動回路等、雷サージや静電気等の異常電圧(サージ電圧)による電撃を受けやすい部分には、異常電圧によって電子機器やこの機器を搭載するプリント基板の熱的損傷又は発火等による破壊を防止するために、サージ防護素子(サージアブソーバ)が接続されている。
【0003】
従来のサージ防護素子として、例えば特許文献1に記載されているように、アルミナ等の絶縁性基板の上面に放電間隙を介して一対の放電電極を対向配置させたチップ型サージアブソーバが知られている。このサージ防護素子では、
図6及び
図7に示すように、絶縁性基板2の上面に放電間隙の周囲を囲って絶縁性基板2との間に放電空間を形成する箱状の蓋体5が設けられている。なお、このサージ防護素子では、
図7に示すように、トリガ電極104も設けている。上記蓋体5による放電空間の封止工程では、蓋体5の下面にガラスペースト等の接着用ペースト5aを塗布した状態で、絶縁性基板2の上面に蓋体5を載置し加熱することで、絶縁性基板2上に接着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、従来のサージ防護素子では、蓋体5を絶縁性基板2上に接着する際、
図7の(a)に示すように、主放電電極103の側縁部に10~20μm程度の段差(図中の符号Eの部分)が生じるため、絶縁性基板2の側辺2bで蓋体5と絶縁性基板2との間に隙間が生じ易く、ガラスペーストが密着し難いために封止不良となる場合があった。このため、従来は、封止工程の加熱時に蓋体5上に金属製ウエイトを載せ、蓋体5を絶縁性基板2に向けて押さえることで蓋体5に圧力を掛け、ガラスペーストを上記隙間まで拡げて封止を行っている。しかしながら、この方法では、封止工程でウエイトが必要であり、設備が複雑になってしまう不都合があった。また、ウエイトを載せない場合、確実に封止するために封止温度を高くする等の方法もあるが、封止温度を高くすると軟化によって部材が変形してしまう等の問題がある。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、ウエイトが不要であると共に従来の封止温度でも封止不良の発生を抑制可能なサージ防護素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るサージ防護素子は、上面に一対の端辺と一対の側辺との四辺を有した平面視矩形状の絶縁性基板と、前記絶縁性基板の上面に放電間隙を介して対向配置され一対の前記端辺まで拡がった一対の主放電電極と、前記絶縁性基板の上面の外周部上に下面が接着用ペーストで接着されて前記絶縁性基板上に放電空間を形成する箱状の蓋体と、一対の前記端辺にて露出した一対の前記主放電電極に導通した状態で前記絶縁性基板の両端部に形成された一対の端子電極と、トリガ用間隙を介して互いに対向配置され一対の前記主放電電極に接続される一対のトリガ電極とを備え、前記主放電電極が、一対の前記側辺にまで拡がっており、前記放電間隙が、前記トリガ用間隙と同じ幅に設定されていることを特徴とする。
【0008】
このサージ防護素子では、主放電電極が、絶縁性基板の一対の側辺にまで拡がっているので、主放電電極の側縁部に段差が無くなり、蓋体の下面の直下にある段差による隙間が全体として減少することで、ウエイトを用いなくても、また封止温度を上げなくても封止不良を低減することができる。また、主放電電極が一対の側辺まで拡がって主放電電極の面積が増大することで、一対の主放電電極の対向領域が長くなると共に放熱性も上がるため、サージ耐久性が向上する。
また、放電間隙が、トリガ用間隙と同じ幅に設定されているので、主放電電極とトリガ電極とが同電位に置かれることで、放電確率が向上する。
【0009】
第2の発明に係るサージ防護素子は、第1の発明において、一対の前記主放電電極の間隔が、前記絶縁性基板の上面の外周部で前記放電空間内の前記放電間隙よりも広く形成されていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、一対の主放電電極の間隔が、絶縁性基板の上面の外周部で放電空間内の放電間隙よりも広く形成されているので、側辺近傍において一対の主放電電極の間隔が拡がることで、マイグレーションやメッキ工程での意図しないショートの発生を抑制することできる。
【0010】
第3の発明に係るサージ防護素子の製造方法は、第1又は第2の発明のサージ防護素子を作製する方法であって、前記絶縁性基板の上面に放電間隙を介して対向配置され一対の前記端辺まで拡がった一対の主放電電極を形成する主放電電極形成工程と、前記絶縁性基板の上面にトリガ用間隙を介して互いに対向配置され一対の前記主放電電極に接続される一対のトリガ電極を形成するトリガ電極形成工程と、前記絶縁性基板の上面の外周部上に前記蓋体を接着する封止工程と、一対の前記端辺にて露出した一対の前記主放電電極に導通した状態で前記絶縁性基板の両端部に一対の端子電極を形成する端子電極形成工程とを有し、前記封止工程で、前記蓋体の下面に接着用ペーストを塗布した状態で前記絶縁性基板上に前記蓋体を載置して加熱する加熱工程を有し、前記主放電電極を、一対の前記側辺にまで拡げ、前記放電間隙を、前記トリガ用間隙と同じ幅に設定することを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子の製造方法では、主放電電極を、絶縁性基板の一対の側辺にまで拡げ、放電間隙を、前記トリガ用間隙と同じ幅に設定するので、主放電電極の側縁部に段差が無くなり、蓋体の下面の直下にある段差による隙間が全体として減少することで、接着用ペーストが全体的に濡れ易くなり、封止不良を低減することができる。
【0011】
第4の発明に係るサージ防護素子の製造方法は、第3の発明において、前記封止工程で、前記蓋体の下面において直下に前記主放電電極が無く前記絶縁性基板が露出している部分だけ、前記接着用ペーストを他の部分よりも厚くすることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子の製造方法では、封止工程で、蓋体の下面において直下に主放電電極が無く絶縁性基板が露出している部分だけ、接着用ペーストを他の部分よりも厚くするので、厚くした接着用ペーストで段差による隙間を埋めることができ、より封止不良を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法によれば、主放電電極が、絶縁性基板の一対の側辺にまで拡がっており、放電間隙が、トリガ用間隙と同じ幅に設定されているので、ウエイトを用いなくても、また封止温度を上げなくても封止不良を低減することができると共に、サージ耐久性が向上し、放電確率も向上する。
したがって、本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法では、製造歩留まりが向上すると共に高い信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るサージ防護素子およびその製造方法の第1実施形態において、主放電電極及びトリガ電極を形成した絶縁性基板を示す平面図(a)及びサージ防護素子を示す断面図(b)である。
【
図2】第1実施形態において、蓋部を示す断面図(a)及び下面図(b)である。
【
図3】本発明に係るサージ防護素子およびその製造方法の第2実施形態において、主放電電極及びトリガ電極を形成した絶縁性基板を示す平面図である。
【
図4】本発明に係るサージ防護素子およびその製造方法の第3実施形態において、主放電電極及びトリガ電極を形成した絶縁性基板を示す平面図である。
【
図5】本発明に係るサージ防護素子およびその製造方法の第4実施形態において、主放電電極及びトリガ電極を形成した絶縁性基板を示す平面図である。
【
図6】本発明に係るサージ防護素子およびその製造方法の従来例において、蓋体を示す断面図(a)及び下面図(b)である。
【
図7】本発明の従来例において、主放電電極及びトリガ電極を形成した絶縁性基板を示す平面図(a)及び断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るサージ防護素子およびその製造方法の第1実施形態を、
図1及び
図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部を認識可能又は認識容易な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0015】
本実施形態のサージ防護素子1は、
図1及び
図2に示すように、上面に一対の端辺2aと一対の側辺2bとの四辺を有した平面視矩形状の絶縁性基板2と、絶縁性基板2の上面に放電間隙S1を介して対向配置され一対の端辺2aまで拡がった一対の主放電電極3と、絶縁性基板2の上面の外周部上に下面が接着用ペースト5aで接着されて絶縁性基板2上に放電空間を形成する箱状の蓋体5と、一対の端辺2aにて露出した一対の主放電電極3に導通した状態で絶縁性基板2の両端部に形成された一対の端子電極7とを備えている。
【0016】
上記主放電電極3は、一対の側辺2bにまで拡がっている。すなわち、主放電電極3は、放電間隙S1に沿った横幅が絶縁性基板2の幅と同じに設定された矩形状に形成されている。
本実施形態のサージ防護素子1では、トリガ用間隙S2を介して互いに対向配置され一対の主放電電極3に接続される一対のトリガ電極4を備えている。
一対の上記トリガ電極4は、主放電電極3上で対向方向に延在した帯状又は長方形状にパターン形成されている。
上記放電間隙S1は、トリガ用間隙S2と同じ幅に設定されている。
【0017】
上記絶縁性基板2および蓋体5の原料となる絶縁性材料としては、例えば、アルミナ、コランダム、ムライト、コランダムムライト、またはこれらの混合物等が用いられる。
上記トリガ電極4は、例えばAl、Ti、SnO2、W、Ni、Nb、TiN、Ba、Cu、もしくはFe、またはこれらの材料のうち2つ以上を含有する合金材料によって形成される。
上記主放電電極3は、例えばAg等の導電性材料や導電性酸化物などで形成されている。
【0018】
また、上記端子電極7は、Agペースト等の導電性ペーストやNiメッキやはんだメッキ等により形成される。
なお、上記絶縁性基板2と蓋体5との間に形成された放電空間には、放電に好適な所定の放電制御ガスが満たされている。
上記放電制御ガスは、例えばHe、Ar、Ne、Xe、SF6、CO2、C3F8、C2F6、CF4、H2及びこれらの混合ガス等の不活性ガスである。
【0019】
このサージ防護素子1では、過電圧又は過電流が侵入すると、まずグロー放電がトリガ用間隙S2を介して生じて一対のトリガ電極4間でトリガされ、さらに放電が沿面放電の形態で進展して一対の主放電電極3の間でアーク放電が生じることにより、サージ電圧が吸収される。
【0020】
次に、本実施形態のサージ防護素子1の製造方法について説明する。
本実施形態のサージ防護素子1の製造方法は、絶縁性基板2の上面に放電間隙S1を介して対向配置され一対の端辺2aまで拡がった一対の主放電電極3を形成する主放電電極形成工程と、絶縁性基板2の上面にトリガ用間隙S2を介して互いに対向配置され一対の主放電電極3に接続される一対のトリガ電極4を形成するトリガ電極形成工程と、絶縁性基板2の上面の外周部上に蓋体5を接着する封止工程と、一対の端辺2aにて露出した一対の主放電電極3に導通した状態で絶縁性基板2の両端部に一対の端子電極7を形成する端子電極形成工程とを有している。
【0021】
上記封止工程では、蓋体5の下面に接着用ペースト5aを塗布した状態で絶縁性基板2上に蓋体5を載置して加熱する加熱工程を有し、主放電電極3を、一対の側辺2bにまで拡げ、放電間隙S1を、トリガ用間隙S2と同じ幅に設定する。
また、この封止工程では、蓋体5の下面において直下に主放電電極3が無く絶縁性基板2が露出している部分3aに対向した部分5bだけ、接着用ペースト5aを他の部分よりも厚くする。
【0022】
上記主放電電極形成工程では、例えば、Agペースト等をスクリーン印刷によって絶縁性基板2上にパターン形成して焼結させることで、Ag等で形成された主放電電極3を作製する。
上記トリガ電極形成工程では、例えば、トリガ電極4を、上述した材料を含むペーストを絶縁性基板2の上面にスクリーン印刷によってパターン形成したのちに焼結することで形成するほか、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、焼き付け法等の一般的な薄膜形成方法が採用可能である。
【0023】
上記封止工程では、例えば、蓋体5の下面又は絶縁性基板2の外周部上にガラスペースト等の接着剤をスクリーン印刷等によりパターン形成し、上述した放電制御ガス雰囲気中において接着剤上に蓋体5を載せた状態で加熱することで、蓋体5と絶縁性基板2とを接合すると共に内部に放電空間を気密状態で形成する。
【0024】
なお、上記露出している部分に対向した5bは、接着用ペースト5aを複数回塗布することで、他の部分よりも接着用ペースト5aを厚くする。
ここで、接着剤としては、SiO2、B2O3、PbO、Na2O、Li2O、BaO、CaO、ZnO、MgO、TiO2、Al2O3、P3O5のうち、一種または二種以上を混合してなるガラスペースト等を用いることができる。
【0025】
上記端子電極形成工程では、例えば、ディッピング等によりAgペースト等の導電性ペーストを絶縁性基板2及び蓋体5の両端部に設けて、これを焼結し、さらにNiメッキ及びSnメッキを施すことにより端子電極7を形成する。
このようにして、本実施形態のサージ防護素子1が作製される。
【0026】
このように本実施形態のサージ防護素子1では、主放電電極3が、絶縁性基板2の一対の側辺2bにまで拡がっているので、主放電電極3の側縁部に段差が無くなり、蓋体5の下面の直下にある段差による隙間が全体として減少することで、ウエイトを用いなくても、また封止温度を上げなくても封止不良を低減することができる。また、主放電電極3が一対の側辺2bまで拡がって主放電電極3の面積が増大することで、一対の主放電電極3の対向領域が長くなると共に放熱性も上がるため、サージ耐久性が向上する。
また、放電間隙S1が、トリガ用間隙S2と同じ幅に設定されているので、主放電電極3とトリガ電極4とが同電位に置かれることで、放電確率が向上する。
【0027】
また、本実施形態のサージ防護素子1の製造方法では、主放電電極3を、絶縁性基板2の一対の側辺2bにまで拡げ、放電間隙S1を、トリガ用間隙S2と同じ幅に設定するので、主放電電極3の側縁部に段差が無くなり、蓋体5の下面の直下にある段差による隙間が全体として減少することで、接着用ペースト5aが全体的に濡れ易くなり、封止不良を低減することができる。
また、封止工程で、蓋体5の下面において直下に主放電電極3が無く絶縁性基板2が露出している部分だけ、接着用ペースト5aを他の部分よりも厚くするので、厚くした接着用ペースト5aで段差による隙間を埋めることができ、より封止不良を低減することができる。
【0028】
次に、本発明に係るサージ防護素子およびその製造方法の第2から第4実施形態について、
図3および
図5を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0029】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、主放電電極3が絶縁性基板2の一対の側辺2bまで拡がった矩形状であるのに対し、第2実施形態のサージ防護素子21は、
図3に示すように、主放電電極23が、側辺2bにおいて内側に矩形状に凹んだ複数の凹部23aが並んで形成されている点である。
すなわち、第2実施形態では、主放電電極23の両側部が櫛歯状に形成されている。
【0030】
なお、凹部23aは、蓋体5の下面の接着幅よりも狭く設定し、蓋体5の内側の放電空間内に露出しないようにすることが好ましい。
また、第2実施形態では、封止工程の際、蓋体5の下面において凹部23aの直上に対応する部分に厚く接着用ペースト5aを形成しておく。これにより、複数の凹部23aは、厚めの接着用ペースト5aによって埋められる。
このように第2実施形態のサージ防護素子21でも、主放電電極23が絶縁性基板2の側辺2bまで拡がっているため、封止不良を低減することができる。
また、複数の凹部23aが接着面に並んでいることで、接着面積が増大し、シール強度が向上する。さらに、凹部23aにおける毛細管現象によって接着用ペースト5aの濡れが促進される。
【0031】
次に、第3実施形態と第1実施形態の異なる点は、第1実施形態では、放電間隙S1が直線状に延在しているのに対し、第3実施形態のサージ防護素子41では、
図4に示すように、放電間隙S1がジグザグ状に延在している点である。
すなわち、第3実施形態では、一対の主放電電極43の対向部分が階段状に形成されている。
【0032】
また、絶縁性基板2の外周部で主放電電極43が形成されておらず絶縁性基板2が露出している部分43aは、一対の側辺2bで互いに異なる位置に配されている。
また、主放電電極43は、対向方向に突出した部分43bを有している。
この第3実施形態のサージ防護素子41でも、第1実施形態と同様に、主放電電極43が絶縁性基板2の側辺2bまで拡がっているため、封止不良を低減することができる。
また、ジグザグ状の放電間隙S1によって、対向している電極面積が増大することで、繰り返しの放電や大きなサージが進入してきた場合に主放電電極43の一部が劣化しても、同じ電磁気的環境にある他の電極部分が同様に動作可能であり、耐久性が向上する。
【0033】
次に、第4実施形態と第1実施形態の異なる点は、第1実施形態では、一対の主放電電極3の間隔が同じ幅で延在しているのに対し、第4実施形態のサージ防護素子51では、
図5に示すように、一対の主放電電極3の間隔が、絶縁性基板2の上面の外周部で放電空間内の放電間隙S1よりも広く形成されている点である。
すなわち、第4実施形態では、一対の主放電電極3の間隔が、絶縁性基板2の上面の外周部で近接する側辺2bに向けて漸次広くテーパ状とされた部分53aが設けられている。したがって、このテーパ状とされた部分53aは、放電空間内に配された放電間隙S1より広く形成されている。
【0034】
このように第4実施形態のサージ防護素子51では、一対の主放電電極3の間隔が、絶縁性基板2の上面の外周部で放電空間内の放電間隙S1よりも広く形成されているので、側辺2b近傍において一対の主放電電極3の間隔が拡がることで、マイグレーションやメッキ工程での意図しないショートの発生を抑制することできる。
【0035】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、主放電電極とトリガ電極とを別々に設けたが、これらが一体となった電極を採用しても構わない。
【符号の説明】
【0036】
1,21,41,51…サージ防護素子、2…絶縁性基板、2a…絶縁性基板の端辺、2b…絶縁性基板の側辺、3,23,43,53…主放電電極、4…トリガ電極、5…蓋体、5a…接着用ペースト、7…端子電極、S1…放電間隙、S2…トリガ用間隙