(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】石材位置特定プログラム、石材位置特定システム、及び石材位置特定装置
(51)【国際特許分類】
E02D 29/02 20060101AFI20230215BHJP
G01C 11/06 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
E02D29/02 301
G01C11/06
(21)【出願番号】P 2019064087
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】原野 陽輔
(72)【発明者】
【氏名】山崎 博信
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳史
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104985(JP,A)
【文献】特開2008-196231(JP,A)
【文献】特開2011-065349(JP,A)
【文献】特開2000-160579(JP,A)
【文献】特開2004-212107(JP,A)
【文献】特開2008-250610(JP,A)
【文献】特開2008-234261(JP,A)
【文献】特開2008-282419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/02
G01C 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
崩落前の石垣画像の画像データと、石垣から崩落した後の石材画像の画像データとが記憶されたメモリを有する石材位置特定装置のコンピュータで実行される石材位置特定プログラムであって、
前記石垣画像の画像データに基づいて、前記石垣画像を分割した分割石垣画像の画像データを生成し、前記石材画像の画像データに基づいて、前記石材画像を回転及び縮小、又は回転及び拡大させた回転石材画像の画像データを生成し、
前記分割石垣画像の画像データと前記回転石材画像の画像データとを用いて、崩落前の前記石垣画像に含まれる
崩落した石材
の石垣画像と
、崩落後の前記石材画像に含まれる石材とに対してパターンマッチングを行い、パターンマッチングの結果を出力する
ことを特徴とする石材位置特定プログラム。
【請求項2】
前記石垣画像の画像データに基づいて、崩落前の石垣画像のうち、崩落した部分の石垣画像の画像データを抽出し、抽出した該画像データを利用して、前記石垣画像を分割した分割石垣画像の画像データを生成することを特徴とする請求項1記載の石材位置特定プログラム。
【請求項3】
前記石材画像の画像データに基づいて、前記石材画像に含まれる石材部分の画像の画像データを抽出し、抽出した該画像データを利用して、前記回転石材画像の画像データを生成することを特徴とする請求項1記載の石材位置特定プログラム。
【請求項4】
前記パターンマッチングにより、前記回転石材画像に含まれる石材が前記分割石垣画像に含まれる石材であることが特定されたとき、前記石垣画像において前記検出された石材の画像データを特定の色を表す値にし、前記特定の色を含む前記石材画像の画像データに基づいて、前記石垣画像を分割した分割石垣画像の画像データを生成し、該画像データと前記回転石材画像の画像データとを用いて、崩落前の前記石垣画像に含まれる石材と崩落後の前記石材画像に含まれる石材とに対してパターンマッチングを行うことを、前記回転石材画像に含まれる石材が前記分割石垣画像に含まれる石材であることを特定することができなくなるまで繰り返すことを特徴とする請求項1記載の石材位置特定プログラム。
【請求項5】
前記分割石垣画像の画像データに基づいて、前記分割石垣画像を回転させた回転後の分割石垣画像の画像データを生成し、
前記回転後の分割石垣画像の画像データと前記回転石材画像の画像データとを用いて、前記パターンマッチングを行う
ことを特徴とする請求項1記載の石材位置特定プログラム。
【請求項6】
パーソナルコンピュータと
石材位置特定装置と
を備える石材位置特定システムにおいて、
前記パーソナルコンピュータは、
石材位置の特定を要求する要求情報を送信し、
前記石材位置特定装置は、
崩落前の石垣画像の画像データと、石垣から崩落した後の石材画像の画像データとが記憶されたメモリと、
前記要求情報に従って、前記石垣画像の画像データに基づいて、前記石垣画像を分割した分割石垣画像の画像データを生成し、前記石材画像の画像データに基づいて、前記石材画像を回転及び縮小、又は回転及び拡大させた回転石材画像の画像データを生成し、前記分割石垣画像の画像データと前記回転石材画像の画像データとを用いて、崩落前の前記石垣画像に含まれる
崩落した石材
の石垣画像と
、崩落後の前記石材画像に含まれる石材とに対してパターンマッチングを行い、パターンマッチングの結果を前記パーソナルコンピュータへ出力する画像
処理部と
を備えることを特徴とする石材位置特定システム。
【請求項7】
崩落前の石垣画像の画像データと、石垣から崩落した後の石材画像の画像データとが記憶されたメモリと、
前記石垣画像の画像データに基づいて、前記石垣画像を分割した分割石垣画像の画像データを生成し、前記石材画像の画像データに基づいて、前記石材画像を回転及び縮小、又は回転及び拡大させた回転石材画像の画像データを生成し、前記分割石垣画像の画像データと前記回転石材画像の画像データとを用いて、崩落前の前記石垣画像に含まれる
崩落した石材
の石垣画像と
、崩落後の前記石材画像に含まれる石材とに対してパターンマッチングを行い、パターンマッチングの結果を出力する画像処理部と
を備えることを特徴とする石材位置特定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石材位置特定プログラム、石材位置特定システム、及び石材位置特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
災害によって、城や神社仏閣などの一部が崩落する場合がある。これらは、人類共通の文化的な財産としての価値があるため、関係者などによって、崩落した部分の修復が行われる。
【0003】
しかし、例えば、地震によって城の石垣の一部が崩落して、崩落した石垣の一部を修復する場合、石工による目視によって、修復作業が進められる場合がある。このような修復作業は、非常に手間がかかり、時間と費用がかかっていた。
【0004】
そこで、IT(Information Technology)技術を利用して、石垣の修復が行われる場合がある。例えば、以下の技術がある。
【0005】
すなわち、石垣の石が崩れ落ちる前の石垣の表面形状をレーザー計測して取得した3次元石垣データと、崩れ落ちた石の崩れ落ちる前に石垣の表面に露出していた露出部分をレーザー計測して取得した3次元露出部分データとを比較して、石垣の配置状態を特定する技術がある。
【0006】
この技術によれば、石垣の表面から崩れ落ちた石を石垣の表面に高精度に復元させることができる、とされる。
【0007】
また、石垣を構成する石材1石毎の3次元形状データを参照して復元すべき稜線を近似する近似線を求め、近似線に基づいて石垣の設計法面を定義し、隣接する石材の干渉状態を確認しながら設計法面に一致するように石材の配置位置を決定する技術もある。
【0008】
この技術によれば、コンピュータを使用して、石垣修復の施工を事前検討することができる、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-104985号公報
【文献】特開2008-196231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、3次元石垣データと3次元露出部分データとを比較して石垣の配置状態を特定する技術は、レーザー計測によって、各データを取得している。しかし、災害は事前に予測することが困難である。かかる技術では、崩落前の石垣をレーザー計測していない場合、3次元石垣データと3次元露出部分データとを利用することができない。そのため、かかる技術では、崩落前の石垣を構成する各石材と、崩落後の各石材とを精度よくマッチングさせることができない場合がある。
【0011】
また、かかる技術では、レーザー計測によって具体的にどのようにして3次元石垣データと3次元露出部分データを取得するかについては記載されていない。そのため、かかる技術では、各データを取得することができず、崩落前の石垣を構成する各石材と崩落後の各石材とを精度よくマッチングさせることができない場合がある。
【0012】
また、隣接する石材の干渉状態を確認しながら設計法面に一致するように石材の配置位置を決定する技術は、修復前の石垣の各石材に対して4つのマーキングを行い、さらに、基準球との相対位置も計測機で計測させるようにしている。上述したように、災害は予測することは困難であり、事前にこのような計測を行うことができなかった場合、石垣を構成する石材1石毎の3次元形状データを取得することができない。従って、かかる技術でも、崩落前の石垣を構成する各石材と、崩落後の各石材とを精度よくマッチングさせることができない場合がある。
【0013】
そこで、一開示は、石垣崩落前の石材と崩落後の石材とを精度よくマッチングさせることが可能な石材位置特定プログラム、石材位置特定システム、及び石材位置特定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一開示は、崩落前の石垣画像の画像データと、石垣から崩落した後の石材画像の画像データとが記憶されたメモリを有する石材位置特定装置のコンピュータで実行される石材位置特定プログラムであって、前記石垣画像の画像データに基づいて、前記石垣画像を分割した分割石垣画像の画像データを生成し、前記石材画像の画像データに基づいて、前記石材画像を回転及び縮小、又は回転及び拡大させた回転石材画像の画像データを生成し、前記分割石垣画像の画像データと前記回転石材画像の画像データとを用いて、崩落前の前記石垣画像に含まれる石材と崩落後の前記石材画像に含まれる石材とに対してパターンマッチングを行い、パターンマッチングの結果を出力することにある。
【発明の効果】
【0015】
一開示によれば、石垣崩落前の石材と崩落後の石材とを精度よくマッチングさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は石材位置特定装置の構成例を表す図である。
【
図2】
図2は石材位置特定システムの構成例を表す図である。
【
図4】
図4は崩落前の石垣画像の例を表す図である。
【
図5】
図5(A)は崩落前の石垣画像、
図5(B)はトリミング後の石垣画像の例を夫々表す図である。
【
図6】
図6(A)はトリミング後の石垣画像、
図6(B)は分割石垣画像の例を夫々表す図である。
【
図7】
図7(A)と
図7(B)は崩落後の石材画像の例を表す図である。
【
図8】
図8はトリミング後の石材画像の例を表す図である。
【
図9】
図9(A)と
図9(B)はパターンマッチングの例を表す図である。
【
図11】
図11はパターンマッチングの結果例を表す図である。
【
図13】
図13は特定済石材が黒塗りされた石垣画像の例を表す図である。
【
図14】
図14はパターンマッチングの結果例を表す図である。
【
図15】
図15はマッチング回数と正答率の例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下の実施例は開示の技術を限定するものではない。そして、各実施の形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0018】
[第1の実施の形態]
<石材位置特定装置の構成例>
図1は、石材位置特定装置100の構成例を表す図である。
【0019】
石材位置特定装置100は、石垣が崩落する前の石垣画像と、石垣が崩落した後の石材画像とを用いて、崩落後の石材が石垣のどの位置に存在していたかを特定する。具体的には、石材位置特定装置100は、パターンマッチングを利用して、崩落後の石材が崩落前の石垣のどの位置に存在していたかを特定することが可能である。
【0020】
図1に示すように、石材位置特定装置100は、メモリ101と、画像処理部102、モニタ部103、操作部104、及びIF(Interface)105を備える。
【0021】
メモリ101は、例えば、RAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置である。メモリ101には、崩落前の石垣画像に関する石垣画像データと、石垣から崩落した後の石材画像に関する石材画像データとが記憶されている。また、メモリ101には、画像処理部102によって処理された画像データなどが適宜記憶される。
【0022】
石垣画像データは、例えば、以下の処理によってメモリ101に記憶される。すなわち、操作者が、崩落前の石垣画像の写真を、石材位置特定装置100に接続されたスキャナ装置をスキャンすることで、崩落前の石垣画像に関する石垣画像データが取得され、IF105と画像処理部102を経由して、メモリ101に記憶される。或いは、石材位置特定装置100と接続された他の装置から送信された、崩落前の石垣画像に関する石垣画像データをIF105で受信し、画像処理部102を経由して、メモリ101に記憶されてもよい。
【0023】
また、石材画像データについても、例えば、操作者が、スキャナ装置により、石材画像の写真をスキャンすることで、IF105などを介して、メモリ101に記憶されてもよいし、他の装置から送信されたものであってもよい。
【0024】
画像処理部102は、メモリ101から画像データを読み出して、画像処理を行う。具体的には、画像処理部102は、メモリ101から読み出した石垣画像データに基づいて、石垣画像を分割した分割石垣画像に関する分割石垣画像データを取得する。また、画像処理部102は、メモリ101から読み出した石材画像データに基づいて、石材画像を回転及び縮小(又は回転及び拡大)させた回転石材画像に関する回転石材画像データを取得する。画像処理部102は、分割石垣画像データと回転石材画像データとを用いて、崩落前の石垣画像に含まれる石材と崩落後の石材とに対してマッチングを行い、その結果を出力する。詳細は動作例において説明する。
【0025】
なお、画像処理部102の機能は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)により実現されてもよい。例えば、FPGA110がメモリ101からプログラムを読み出して、実行することで、画像処理部102の機能を実現する。FPGA110は、例えば、画像処理部102に対応する。FPGAに代えて、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサやコントローラなどであってもよい。
【0026】
モニタ部103は、画像処理部102から出力された、マッチングの結果を示す画像データなどに基づいて、マッチングの結果を示す出力画像を表示する。また、モニタ部103は、画像処理部102から出力された画像処理の結果を示すデータに基づいて、適宜、その出力結果を表示することも可能である。
【0027】
操作部104は、例えば、キーボードなどである。操作者が操作部104を操作することで、モニタ部103に表示された画像内の位置を指定することが可能であり、指定した位置に関するデータを画像処理部102へ出力する。画像処理部102では、位置に関するデータに基づいて、画像からその画像に含まれる一部の画像を抽出(又はトリミング)する処理を行うことが可能となる。
【0028】
なお、操作部104は、例えば、モニタ部103内に含まれ、画面タッチ操作により、操作部104の操作機能が実現されてもよい。
【0029】
IF105は、例えば、ネットワークを介して、他の装置(例えば、パーソナルコンピュータやスキャナ装置)と接続され、IF105を介して、他の装置から送信された画像データを受信する。また、IF105は、例えば、画像処理部102から出力されたマッチング結果に関するデータを入力し、入力したマッチング結果に関するデータを、他の装置へ送信する。
【0030】
なお、以下では、石垣を構成する1つ1つの石を、例えば、石材と称する場合がある。石材が1つ1つ積み上げられたものが、例えば、石垣となる。
【0031】
また、以下では、1つの画像と、1枚の画像、及び1画像フレームとを区別しないで用いる場合がある。さらに、画像と画像データとを区別しないで用いる場合がある。
【0032】
<石材位置特定システム>
図2は、石材位置特定システム10の構成例を表す図である。
【0033】
石材位置特定システム10は、石材位置特定装置100とパーソナルコンピュータ200とを備え、ネットワークを介して互いに接続される。
【0034】
例えば、パーソナルコンピュータ200は、石垣位置の特定を指示(又は要求)する指示情報(又は要求情報)を石材位置特定装置100へ送信し、石材位置特定装置100は、その指示情報に従って、石材位置特定の処理を行って、パターンマッチング結果を示すデータをパーソナルコンピュータ200へ送信する。パーソナルコンピュータ200は、受信したマッチング結果を示すデータにより、マッチング結果を取得することが可能である。
【0035】
なお、
図2においては、1台のパーソナルコンピュータ200の例を表しているが、複数台のパーソナルコンピュータ200が石材位置特定システム10に含まれてもよい。
【0036】
また、
図2において、石材位置特定装置100は、パーソナルコンピュータ200に対するクラウドサーバとしての役割を果たしてもよい。この場合、各画像データやマッチング結果に関するデータなどが石材位置特定装置100に記憶され、パーソナルコンピュータ200が石材位置特定装置100に適宜アクセスして、各画像データやマッチング結果などを取得するようにしてもよい。
【0037】
<動作例>
図3は動作例を表すフローチャートである。以下では、具体的に画像の例を示しながら、動作例を説明する。
【0038】
図3に示すように、石材位置特定装置100は、処理を開始すると(S10)、崩落前の石垣画像を取得する(S11)。
【0039】
図4は、石垣が崩落する前における城の石垣画像の例を表す図である。このような石垣画像としては、石垣の面に対して正面から撮影した画像であることが望ましい。
【0040】
このような石垣画像の画像データは、上述したように、例えば、スキャナ装置などを利用して取得され、メモリ101において石垣画像データとして記憶されている。
【0041】
図3に戻り、次に、石材位置特定装置100は、崩落前の石垣画像の背景を削除した画像を取得する(S12)。
【0042】
背景を削除した後に残った石垣の画像は、例えば、崩落した石垣の部分である。石材の位置を特定する対象は、崩落した石垣に含まれる石材である。本処理において、石垣のうち、崩落することなく残った石垣の部分を削除し、崩落した石垣の部分を抽出(又はトリミング。以下では、「抽出」と「トリミング」とを区別しないで用いる場合がある。)することで、トリミング後の石垣画像の画像データを取得(又は生成)する。
【0043】
これにより、例えば、石垣画像全体を用いる場合と比較して、対象となる石垣画像の画像データのデータ量が少なくなるため、計算処理を軽減させ、後段のパターンマッチングにおける精度を向上させることが可能となる。
【0044】
図5(A)は崩落前の石垣画像の例を表す図である。例えば、石材位置特定装置100は、以下の処理を行うことで、背景を削除して、石垣画像に含まれる石垣をトリミングする。
【0045】
すなわち、画像処理部102は、メモリ101から読み出した石垣画像データをモニタ部103へ出力する。これにより、例えば、
図5(A)に示す石垣画像がモニタ部103において表示される。そして、操作者は、モニタ部103に表示される石垣画像を見ながら、崩落した部分の石垣の位置を、操作部104を利用して特定する。
図5(A)に示す黒い点線は、崩落した石垣と崩落することなく残った石垣の境界部分を表している。操作部104は、特定した位置に関するデータ(例えば、4点の位置座標に関するデータ)を画像処理部102へ出力する。画像処理部102は、特定した位置に関するデータに基づいて、石垣画像から、黒い点線の枠外の画像を削除し、黒い点線の枠内の画像をトリミングする。例えば、画像処理部102は、4点の位置座標に関するデータを用いて、その4点の位置座標に含まれる石垣画像の画像データを抽出することでトリミングを行い、トリミング後の石垣画像の画像データを生成する。
【0046】
図5(B)はトリミング後の石垣画像の例を表す図である。画像処理部102は、例えば、トリミング後の石垣画像に関する画像データをメモリ101に記憶する。
【0047】
図3に戻り、次に、石材位置特定装置100は、崩落前の石垣画像を分割した分割石垣画像を取得する(S13)。石材位置特定装置100は、トリミング後の石垣画像を分割することで、分割石垣画像を取得する。
【0048】
図6(A)はトリミング後の石垣画像の例を表す図である。石材位置特定装置100は、例えば、以下の処理を行って、分割石垣画像を取得する。
【0049】
すなわち、画像処理部102は、トリミング後の石垣画像に対して、縦横、所定の画素数からなる領域を1つのブロックとして、トリミング後の石垣画像の一番左上から順番に、横方向に数画素(例えば第1の画素数)、縦方向にも数画素(例えば第2の画素数。第1の画素数と第2の画素数は同じでもよいし異なっていてもよい。)、それぞれスライドさせた各ブロックの画像を取得する。画像処理部102は、このようにして取得した画像の画像データを、分割石垣画像の画像データとして、メモリ101に記憶する。
【0050】
図6(B)は、分割石垣画像の例を表す図である。
図6(A)の例では、例えば、数千枚の分割石垣画像の画像データが取得される。
【0051】
図3に戻り、一方、石材位置特定装置100は、崩落後の石材画像を取得する(S14)。
【0052】
図7(A)と
図7(B)は崩落後の石材画像の例を表す図である。石材画像の画像データは、上述したように、スキャナ装置などを利用して取得され、メモリ101に記憶されている。
【0053】
なお、石材画像により示された石材は、例えば、崩落前の石垣の表面に存在する石材である。石垣の表面側の面した石材の部分は、それ以外の部分と比較して、太陽を受けるなどしているため、異なる輝度(又は異なる色合い)を有しており、石工が見ればすぐに把握することが可能である。そのため、石垣位置の特定に利用される石材画像は、石工によって、石垣の表面の可能性が高いものとされた画像が選択されてもよい。例えば、そのように選択された石材を、操作者がカメラなどを利用して写真を撮り、それをスキャナ装置などによって読み込んだり、石材画像データとして送信したりすることで、石材画像の画像データが取得されてもよい。
【0054】
図3に戻り、次に、石材位置特定装置100は、崩落後石材画像の背景を削除した画像を取得する(S15)。石材位置特定装置100は、石材画像の背景を削除して、石材画像に含まれる石材部分の画像データを抽出する。
【0055】
図8は、
図7(B)の崩落後の石材画像に対して、トリミング後の石材画像の例を表す図である。例えば、石材位置特定装置100は、以下の処理を行って、トリミング後の石材画像の画像データを生成(又は抽出)する。
【0056】
すなわち、画像処理部102は、メモリ101から読み出した崩落後の石材画像の画像データを読み出して、モニタ部103へ出力し、モニタ部103には、トリミング後の石材画像が表示される。操作者は、モニタ部103に表示された石材画像を見ながら、操作部104を操作することで、石材画像を含む4点の位置を指定する。操作部104は指定された4点の位置座標のデータを画像処理部102へ出力する。画像処理部102は、4点の位置座標のデータに基づいて、その4点内に含まれる石材画像の画像データを抽出する。そして、画像処理部102は、抽出した画像データに基づいて、エッジ抽出処理などを施すことで、エッジ内に含まれる画像データを抽出する。この抽出により、画像処理部102は、例えば
図8に示す、トリミング後の石材画像(石材画像に含まれる石材部分の画像)の画像データを抽出することが可能となる。画像処理部102は、トリミング後の石材画像の画像データをメモリ101に記憶する。
【0057】
図3に戻り、次に、石材位置特定装置100は、トリミング後の石材画像に対して、回転及び縮小処理を行う(S16)。石材位置特定装置100は、例えば、以下の処理を行うことで、回転及び縮小処理を行う。
【0058】
すなわち、画像処理部102は、S15で取得した画像データに対して、公知の回転行列を用いた回転変換処理を行うことで、回転処理が施された石材画像を生成する。この際、画像処理部102は、例えば、回転行列におけるθを10度、20度、30度、…、360度と、10度ずつ変化させることで、S15で取得した画像に対して10度ずつ回転させた各回転画像の画像データを生成する。
【0059】
また、画像処理部102は、各回転画像の画像データに対して、公知の縮小行列を用いた縮小変換処理を行うことで、縮小処理が施された石材画像を生成する。この際、画像処理部102は、各回転画像に対して、例えば、0.9倍した縮小画像を生成し、次に、その取得画像に対して更に0.9倍した縮小画像を生成し、次に、その取得画像に対して更に0.9倍など、0.9倍することで13回を繰り返して、回転後の縮小画像を生成する。
【0060】
すなわち、画像処理部102は、S15で取得したトリミング後の石材画像に対して、10度回転させた石材画像を生成し、その10度回転させた石材画像に対して、0.9倍した石材画像を生成し、その石材画像をさらに0.9倍した石材画像を生成し、さらに、その石材画像を0.9倍した石材画像を生成する。この際、画像処理部102は、0.9倍を13回繰り返す。そして、画像処理部102は、回転変換処理により、さらに10度回転(S15で取得した画像に対しては20度回転)させた石材画像を生成し、その10度回転させた石材画像に対して、0.9倍することを13回繰り返して、回転後の縮小画像を生成する。以後、画像処理部102は、10度ずつ回転させ、360度まで繰り返し、各10度ずつ回転させた回転画像に対して0.9倍を13回繰り返す。
【0061】
この場合、画像処理部102は、1枚の石材画像に対して、36×13=468枚の石材画像の画像データを生成することになる。
【0062】
なお、回転と縮小により取得された画像を、例えば、回転石材画像と称する場合がある。
【0063】
また、S16の例では、石材画像を縮小する例を説明したが、縮小に代えて、石材画像を拡大する場合であってもよい。この場合、画像処理部102は、トリミング後の石材画像に対して、公知の拡大行列を用いた拡大変換処理が行われてもよい。拡大変換についても、画像処理部102は、1つの石材画像に対して、複数回、拡大処理を繰り返してもよい。
【0064】
図3に戻り、次に、石材位置特定装置100は、回転石材画像の画像データと、分割石垣画像の画像データとを用いて、石材画像に含まれる石材と石垣画像に含まれる石材とに対するパターンマッチングを行う(S17)。
【0065】
図9(A)から
図10(B)は、パターンマッチングの例を表す図である。
【0066】
パターンマッチングの対象となる画像は、回転石材画像と分割石垣画像である。
【0067】
一方の回転石材画像については、1枚のトリミング後の石材画像(以下では、「石材画像」と称する場合がある。)に対し、S14からS16までの処理により、回転処理と縮小処理とを組み合わせて処理が行われた画像(回転石材画像)となっている。
【0068】
図9(A)では、石材画像に対して+10度の回転処理と0.9倍の縮小処理とが行われた石材画像、
図9(B)では、石材画像に対して+10度の回転処理と0.9×0.9倍の縮小処理とが行われた石材画像の例をそれぞれ表している。縮小処理は、回転処理後の石材画像に対して、0.9倍することを13回繰り返すため、+10度の回転処理が施された石材画像に対しては、0.9倍を13回繰り返した13枚の回転石材画像が得られる。
【0069】
図10(A)では、石材画像に対して、+20度の回転処理と0.9倍の縮小処理が行われた石材画像、
図10(B)は、
図10(A)の石材画像に対してさらに0.9倍(0.9×0.9倍)の縮小処理が行われた石材画像の例をそれぞれ表している。縮小処理は、回転処理後の石材画像に対して、0.9倍することを13回繰り返すため、+20度の回転処理が施された石材画像に対しては、0.9倍を13回繰り返した13枚の回転石材画像が得られる。
【0070】
他方、S11からS13までの処理により、縦100画素、横150画素の1枚の画像を、縦横20画素ずつ、(トリミング後の)石垣画像をスライドさせて得られたx枚の分割石垣画像が得られる。
【0071】
そのため、画像処理部102は、
図9(A)から
図10(B)に示すように、468枚の1つ1つの回転石材画像と、x枚の1つ1つの分割石垣画像とを用いて、各々、パターンマッチングを行う。
【0072】
なお、石材画像に対する回転処理は、上述した例では、10度ずつ回転させる例を示したが、10度以外の度数(例えば、20度でもよいし、5度でもよい)により回転処理が行われてもよい。また、石材画像に対する縮小処理も、0.9倍以外の倍数(例えば、0.5倍でもよいし、0.8倍でもよい)であってもよいし、繰り返し回数も13回以外の回数(例えば、1回でもよいし、複数回でもよい)でもよい。
【0073】
画像処理部102は、例えば、以下のようにしてパターンマッチングを行う。
【0074】
すなわち、画像処理部102は、回転石材画像と分割石垣画像の各画像内において予め決められた特徴点を中心に複数の画素からなる特徴領域(例えば、48×48画素)において、局所特徴量を算出する。局所特徴量としては、例えば、特徴領域内の各画素のペアが複数予め決められ、そのペアとなった各画素間の輝度差の符号に応じたビット値(例えば、輝度差が正値の場合は「1」、負値の場合は「0」など)で表される。画像処理部102は、各画像の画像データがRGBにより表されたときは、公知の変換式により、各画素の輝度値を算出してもよい。また、局所特徴量は、例えば、BRIEF(Binary Robust Independent Elementary Features)特徴により表された局所特徴量であってもよい。そして、画像処理部102は、回転石材画像における、ある特徴領域の局所特徴量に最も近似した、分割石垣画像における特徴領域を探索し、最も近似した局所特徴量を持つ2つの特徴領域内の特徴点どうしを接続して、ベクトルを生成する。画像処理部102は、このようなベクトルを2つの画像間(回転石材画像と分割石垣画像)全体で計算し、ベクトルに関するヒストグラムを計算する。そして、画像処理部102は、ヒストグラムの中で最も個数が多いベクトルを抽出し、1つの画像内において、そのようなベクトルを有する特徴点の個数を計算し、その個数が1つの画像に含まれる特徴点全部の個数に対する比率を、類似度として計算する。画像処理部102は、1枚の回転石材画像と、1枚の分割石垣画像との画像間で1つの類似度と計算する。
【0075】
なお、局所特徴量は、例えば、BRIEF以外にも、ORB(Oriented fast and Rotated BRIEF)やBRISK(Binary Robust Invariant Scalable Keypoints)などが用いられてもよい。
【0076】
また、石材位置特定装置100は、例えば、回転及び拡大させた回転石材画像と、分割石垣画像とを用いて、パターンマッチングを行ってもよい。回転及び拡大させた回転石材画像を用いた場合でも、石材位置特定装置100は、上述した回転及び縮小させた回転石材画像を用いた場合と同様の手法により、パターンマッチングを行うことが可能である。
【0077】
図3に戻り、次に、石材位置特定装置100は、パターンマッチングの結果を出力する(S18)。
【0078】
図11は、パターンマッチングの結果を表す出力例を表す図である。本第1の実施の形態では、画像処理部102は、1枚の石材画像に対して、類似度が高い順に上位10個の分割石垣画像を出力することが可能である。その際、
図11に示すように、画像処理部102は、1枚の石材画像に対して、上位10個の分割石垣画像とともに、類似度と角度とを出力することも可能である。ここで角度は、例えば、
図11に示す類似度を得たときの、回転処理(S16)が行われたときの角度を表す。
【0079】
図11に示すように、石材#1の識別番号を有する石材画像については、類似度が高い上位10個の分割石垣画像は、どの画像であるかを示し、石材#2の識別番号を有する石材画像については、類似度が高い上位10個の分割石垣画像はどの画像であるかを示している。画像処理部102は、全石材画像に対して、各々、類似度が高い上位10個の分割石垣画像を出力することが可能である。
【0080】
なお、画像処理部102は、各石材画像の画像データと、各石材画像に対する上位10個の分割石垣画像の画像データとを、モニタ部103へ出力する。この際、画像処理部102は、
図11に示すように、各石材画像の識別番号、各分割石垣画像の識別番号、類似度、角度の各データもモニタ部103へ出力してもよい。
【0081】
図3に戻り、次に、石材位置特定装置100は、結果判定を行い(S19)、新たな石垣位置が特定できたか否かを判定する(S20)。例えば、石材位置特定装置100では、以下の処理を行う。
【0082】
すなわち、モニタ部103は、石材画像とともに、類似度が高い上位10個の分割石垣画像を表示する。
【0083】
図12は、モニタ部103に表示される石材画像と分割石垣画像の例を表す図である。操作者は、モニタ部103に表示された石材画像と上位10個の分割石垣画像とを目視で確認し、石材画像に写っている石材が、上位10個の分割石垣画像のいずれかの画像に写っている石材であると特定すると、操作部104を操作する。操作部104は、このような操作により、石材を特定したことを示すデータなどを画像処理部102へ出力する。画像処理部102は、このデータを受け取ったか否かにより、S20を判定する。
【0084】
石材位置特定装置100は、石垣位置を特定できたと判定したとき(S20でY)、検出済石材を崩落前の石垣画像から削除する(S21)。石材位置特定装置100は、石材画像に含まれる石材が、崩落前の石垣に含まれる石材であることを特定すると、その石材を「黒塗り」することで、崩落前の石垣画像から削除するようにしている。例えば、石材位置特定装置100では、以下の処理を行う。
【0085】
すなわち、操作者は、操作部104を操作し、モニタ部103に表示される石垣画像から特定した石材を指定する。操作部104は、その指定された石材の識別情報と、崩落前の石垣画像における位置情報などを画像処理部102へ出力する。画像処理部102は、位置情報に基づいて、石垣画像に含まれる、その指定された位置に含まれる石材を、「黒色」となるように画像処理を行うことで、検出済石材を、石垣画像から削除する。
【0086】
図13は、検出済石材を削除した後の石垣画像の例を表す図である。
図13において、黒くなっている石材が検出済の石材であることを表している。画像処理部102は、崩落前の石垣画像の画像データをメモリ101から読み出して、操作部104から出力された石材の位置情報に基づいて、崩落前の石垣画像における位置を特定し、特定した位置に含まれる画像データに対してエッジ処理などを施すことで、特定した位置に含まれる石材を抽出する。そして、画像処理部102は、抽出した石材の画像データを、R=0,G=0,B=0とすることで、検出済石材を「黒塗り」にすることが可能である。
【0087】
なお、「黒塗り」以外にも、例えば、画像処理部102は、抽出した石材の画像データを、R=255,G=255,B=255とすることで、石垣画像において検出済の石材の画像を「白」にしてもよい。或いは、画像処理部102は、抽出した石材の画像データをある特定の色を表す値にすることで、石垣画像において、検出済の石材の画像の色を操作者が把握しやすい色にすればよい。
【0088】
このような特定は、1つ1つの石材画像に対して、候補となる分割石垣画像が表示されるため、操作者は、1つ1つの石材画像に対して、候補となる10個の分割石垣画像に含まれる石材のいずれかを特定することにより、行われる。そのため、操作者は、モニタ部103に表示された10個の分割石垣画像を見ても、その中に含まれる石材と、石材画像に写っている石材とが同一ではないと判定し、目視によって特定することができない石材画像が存在する場合もある。
【0089】
図3に戻り、石材位置特定装置100は、検出済石材を崩落前石垣画像から削除すると(S21)、S12へ移行して、検出済石材が削除された崩落前石垣画像に対して、S12以降の処理を行う。石材位置特定装置100は、「黒塗り」された崩落前の石垣画像に対して、S12以降の処理を行うことになる。
【0090】
そして、石材位置特定装置100は、「黒塗り」された崩落前の石垣画像が分割された分割石垣画像と、回転石材画像とを用いてパターンマッチングを行う(S17)。
【0091】
このように、本石材位置特定装置100は、1回目のパターンマッチングにより、石材を特定できなかったとき、検出済の石材を除いた石垣画像に基づいて、2回目のパターンマッチングを行うことが可能となる。
【0092】
例えば、2回目のパターンマッチングにより、1回目のパターンマッチングと比較して、石材の検出率が向上する場合がある。
【0093】
図14は、石材画像#10に対する、1回目のパターンマッチングの結果出力の例を表す図である。
図14に示すように、1回目のパターンマッチング結果により、石材画像#10に対して、類似度が高い上位10個の分割石垣画像として、分割石垣画像#10~#100が計算される。また、11位の分割石垣画像として、分割石垣画像#110が計算される。
【0094】
例えば、1回目のパターンマッチングによって、分割石垣画像#30が、石材画像#10ではなく、他の石材画像#11に対して類似度が高く、検出済石材となる場合を考える。この場合、分割石垣画像#30は、石材画像#10に対する上位10個の分割石垣画像から除かれ、以降の分割石垣画像の順位が1つずつ繰り上げられることになる。その結果、1回目のパターンマッチング結果では、11位の分割石垣画像#110が、2回目のパターンマッチングの際には、上位10個内に含まれる、結果出力として、モニタ部103に表示されることになる。そのため、操作者は、石材画像#10に含まれる石材に最も近似した石材として、分割石垣画像#110に写っている石材と判定することも可能である。従って、石材画像#10に対する検出率は、1回目のパターンマッチングよりも向上することが可能となる。すなわち、2回目の再マッチング処理(S17)により、石材画像に含まれる石材の検出率が向上する場合がある。
【0095】
図15は、上述の処理によって得られた結果を表形式でまとめたものである。本石材位置特定装置100は、パターンマッチングを、複数回実行することも可能であり、
図15では、5回パターンマッチングを繰り返した場合の例を表している。
【0096】
なお、
図15に示す正答率は、崩落した石材の全体個数に対する特定済石材の個数の比率を表している。
【0097】
図15に示すように、1回目のマッチングでは、正答率がx1%だったものが、マッチング回数を重ねるごとに正答率が上昇し、5回目のマッチング処理では、正答率がx5%(ただし、x1<x5)となった。1回目の正答率と比較して、5回目の正答率は上昇した結果を得た。なお、
図15において、x1<x2<x3<x4<x5が成り立つ。
【0098】
このように、本石材位置特定装置100は、パターンマッチングを複数回繰り返すことで、検出済となる石材の確率(又は検出率)を向上させることが可能となる。
【0099】
図3に戻り、一方、石材位置特定装置100は、新たな石垣位置を特定することができなかったとき(S20でN)、一連の処理を終了する(S22)。本石材位置特定装置100では、石材が石垣のどの位置に位置するかを特定することができなかったときは、一連の処理を終了するようにしている。
【0100】
以上説明したように、本第1の実施の形態では、石材位置特定装置100は、石材画像を回転及び縮小(又は回転及び拡大)させ、石垣画像を分割させた後、各画像の画像データを用いてパターンマッチングを行うようにしている。そのため、石垣に積まれた状態の石材と、石材画像に含まれる石材とに関して、向きと大きさとを一致させた状態で、パターンマッチングが可能となり、石垣崩落前の石材と崩落後の石材とを精度よくマッチングさせることが可能となる。
【0101】
また、本第1の実施の形態における石材位置特定装置100では、石垣に積まれた状態の石材の1つ1つに対してレーザー測定したり、マーキングしたりして、3次元データを取得することなく、パターンマッチングを行うことが可能である。そのため、石材位置特定装置100は、費用と時間をかけずに、崩落した石材が石垣のどの位置における石材であるかを、効率的に特定することも可能である。
【0102】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、石材位置特定装置100において、石材画像に対して補正を行い、補正後の石材画像に対して、回転及び縮小(又は回転及び拡大)が行われる例である。
【0103】
図16は、本第2の実施の形態における動作例を表すフローチャートである。
【0104】
図16に示すように、石材位置特定装置100は、崩落後の石材画像の背景を削除してトリミングすると(S15)、トリミング後の石材画像に対して補正処理を行う(S30)。補正処理としては、台形補正と分割補正がある。最初に台形補正について説明する。
【0105】
<台形補正>
図17(A)から
図17(C)は台形補正の例を表す図である。
【0106】
例えば、
図17(A)に示すように、石材画像に写っている石材は正面を向いていない場合がある。このような場合、石材位置特定装置100は、石材画像に対して台形補正を行って、正面を向いた石材画像を取得する。
【0107】
すなわち、石材位置特定装置100は、崩落後の石材画像に対して、
図17(B)に示すように、背景を削除して石材部分の画像をトリミングする。そして、石材位置特定装置100は、
図17(C)に示すように、トリミング後の石材画像に対して台形補正を行い、石材が正面を向いた石材画像(以下、台形補正後石材画像と称する場合がある。)の画像データを生成する。
図16に戻り、そして、石材位置特定装置100は、台形補正後石材画像に対して回転処理及び縮小処理を行う(S31)。以降は、第1の実施の形態と同様である。
【0108】
台形補正は、例えば、公知の方法でよい。例えば、石材位置特定装置100では、以下の処理を行う。すなわち、画像処理部102は、トリミング後の画像データをメモリ101から読み出してモニタ部103へ出力する。モニタ部103には、トリミング後の石材画像が表示される。操作者は、操作部104を用いて、モニタ部103に表示されたトリミング後の石材画像における任意の4点を指定する。また、操作者は、操作部104を用いて、正面から見た任意の4点を指定する。画像処理部102は、操作部104から得た、全部で8点の位置に関する情報に基づいて、射影変換に用いる行列を計算する。画像処理部102は、計算した行列を用いて、トリミング後の石材画像に対して、射影変換を行うことで、ある方向を向いた石材から、正面方向を向いた石材への画像データ(例えば
図17(C))を生成することが可能となる。台形補正は、例えば、このような射影変換により行われる。
【0109】
<分割補正>
次に、分割による補正(以下、「分割補正」と称する場合がある。)について説明する。分割補正は、例えば、石材画像を分割して補正することである。分割して得られた石材画像を、例えば、分割後石材画像と称する場合がある。
【0110】
図18(A)はトリミング後の石材画像、
図18(B)は分割後石材画像の例をそれぞれ表す図である。
【0111】
石材位置特定装置100は、パターンマッチング(S17)の際に、2つの画像間の類似度を算出した。類似度は、例えば、1つの画像内に含まれる全特徴点のうち、2つの画像間において最も個数の多いベクトルを有する特徴点の個数の割合を表す。そのような最も個数の多いベクトルを有する部分は、1つの画像内で、ある特定の領域に集中する場合がある。すなわち、
図18(A)に示すように、1つの画像(トリミング後の石材画像)内において類似度が高いエリアと低いエリアが含まれる場合がある。
【0112】
そこで、石材位置特定装置100は、そのような類似度の高いエリアがあれば、そのエリアの類似度が画像全体の類似度として計算することで、1つの画像全体の中で類似度が分散される事態を回避して、類似度が低下することを回避することが可能となる。そのために、石材位置特定装置100は、パターンマッチング(S17)の前段において、石材画像を分割するようにしている(S30)。例えば、石材位置特定装置100は、以下の処理により、石材画像を分割して、分割後石材画像の画像データを生成する。
【0113】
すなわち、画像処理部102は、メモリ101からトリミング後の石材画像の画像データを抽出し、石材画像に対して予め決められた領域ごとに分割する。画像処理部102は、領域ごとに抽出した画像データをまとめて(又は1つのファイルデータとして)、メモリ101に記憶したり、モニタ部103へ出力したりする。
【0114】
図18(B)は、モニタ部103において、領域ごとにまとめて受け取った画像データに基づいて表示された分割後石材画像の例を表している。その後、画像処理部102は、分割後石材画像の1つ1つに対して、回転処理と縮小処理(又は拡大処理)とを施して、回転石材画像の画像データを生成して(S31)、パターンマッチングを行う(S17)。
【0115】
このような石材画像の補正は、例えば、第1の実施の形態において、新たな石垣位置を特定することができなかった場合(S20でN)において行われてもよい。第1の実施の形態に示す動作例を何度も繰り返しても、新たな石垣位置を特定することができない場合、石材画像の補正(S30)により、パターンマッチングの比較対象が変化することから、新たな石垣位置を特定する可能性が高くなるからである。
【0116】
[その他の実施の形態]
第1の実施の形態では、石材画像に対して回転処理が行われ、石垣画像に対して分割処理が行われる例について説明した。例えば、石垣画像に対して回転処理が行われてもよい。この場合、例えば、画像処理部102は、メモリ101に記憶された1枚分の分割石垣画像の画像データに対して、回転石材画像と同様の回転処理により、所定数度(例えば10度)ずつ回転させた複数枚(例えば36枚)分の回転後の分割石垣画像の画像データを生成し、回転石材画像と分割後の回転石垣画像とでパターンマッチングを行えばよい。さらに、画像処理部102は、例えば、1枚分の回転後の分割石垣画像の画像データに対して、縮小処理(又は拡大処理)を施してもよい。この場合、画像処理部102は、回転処理と縮小処理(又は拡大処理)とが施された複数枚分の分割石垣画像の画像データと、回転石材画像の画像データとでパターンマッチングを行えばよい。
【0117】
また、第1及び第2の実施の形態で説明した石材位置特定装置100は、例えば、積み上げられた石材の1つ1つを修復するために、石垣から石材を取り除く場合でも適用可能である。石垣における石材の位置を、本石材位置特定装置100により特定することによって、修復後の石材を、石垣の元の位置に積み上げられることも可能である。
【0118】
さらに、第1及び第2の実施の形態では、石垣画像に対する処理について説明した。例えば、本石材位置特定装置100は、石垣画像以外にも、仏像画像に対しても同様の処理を行うことが可能である。この場合、石材位置特定装置100では、石材画像に代えて、崩壊(又は崩落)した仏像部分の画像(以下、仏像部分画像)とし、石垣画像に代えて、崩壊する前の仏像画像(以下、全体仏像画像)として、
図3に示す処理を行えばよい。具体的には、例えば、画像処理部102は、仏像部分画像に対して、第1の実施の形態と同様に、回転処理と縮小処理(又は拡大処理)を施し、全体仏像画像に対して、第1の実施の形態と同様に、分割処理を施す。そして、画像処理部102は、回転処理等が行われた仏像部分画像の画像データと、分割処理が行われた分割後の全体仏像画像の画像データとを用いて、パターンマッチングを行って、崩落した部分の仏像部分を特定することも可能である。
【0119】
さらに、石材位置特定装置100は、石垣画像以外にも、神社画像、寺院画像などについても、石垣画像や仏像画像と同様に処理を行い、崩落した部分を特定することも可能である。
【0120】
以上まとめると、付記のようになる。
【0121】
(付記1)
崩落前の石垣画像の画像データと、石垣から崩落した後の石材画像の画像データとが記憶されたメモリを有する石材位置特定装置のコンピュータで実行される石材位置特定プログラムであって、
前記石垣画像の画像データに基づいて、前記石垣画像を分割した分割石垣画像の画像データを生成し、前記石材画像の画像データに基づいて、前記石材画像を回転及び縮小、又は回転及び拡大させた回転石材画像の画像データを生成し、
前記分割石垣画像の画像データと前記回転石材画像の画像データとを用いて、崩落前の前記石垣画像に含まれる石材と崩落後の前記石材画像に含まれる石材とに対してパターンマッチングを行い、パターンマッチングの結果を出力する
ことを特徴とする石材位置特定プログラム。
【0122】
(付記2)
前記石垣画像の画像データに基づいて、崩落前の石垣画像のうち、崩落した部分の石垣画像の画像データを抽出し、抽出した該画像データを利用して、前記石垣画像を分割した分割石垣画像の画像データを生成することを特徴とする付記1記載の石材位置特定プログラム。
【0123】
(付記3)
前記分割石垣画像の画像データは、崩落した部分の石垣画像の前記画像データに基づいて、崩落した部分の石垣画像に対して、所定の大きさの領域を、縦方向に第1の画素数、横方向に第2の画素数分、スライドさせて各々得られる画像の画像データであることを特徴とする付記2記載の石材位置特定プログラム。
【0124】
(付記4)
前記石材画像の画像データに基づいて、前記石材画像に含まれる石材部分の画像の画像データを抽出し、抽出した該画像データを利用して、前記回転石材画像の画像データを生成することを特徴とする付記1記載の石材位置特定プログラム。
【0125】
(付記5)
前記分割石垣画像の画像データと前記回転石材画像の画像データとを用いて、前記回転石材画像の第1の特徴点における第1の局所特徴量と前記分割石垣画像の第2の特徴点における第2の局所特徴量を前記回転石材画像と前記分割石垣画像に含まれる全特徴点についてそれぞれ算出し、前記第1の局所特徴量を有する前記第1の特徴点と前記第1の局所特徴量に最も近似した前記第2の局所特徴量を有する前記第2の特徴点とを結ぶベクトルを算出し、前記分割石垣画像内に含まれる全特徴点の個数に対し、前記分割石垣画像において該ベクトルの個数が最も多い前記第2の特徴点の個数の比率を類似度とし、前記回転石材画像に対して類似度が最も高い前記分割石垣画像を探索することで、前記パターンマッチングを行うことを特徴とする付記1記載の石材位置特定プログラム。
【0126】
(付記6)
前記回転石材画像に対して前記類似度が高い順に複数の前記分割石垣画像を表示することを特徴とする付記5記載の石材位置特定プログラム。
【0127】
(付記7)
前記第1及び第2の局所特徴量はBRIEF(Binary Robust Independent Elementary Features)特徴により表された局所特徴量であることを特徴とする付記5記載の石材位置特定プログラム。
【0128】
(付記8)
前記パターンマッチングにより、前記回転石材画像に含まれる石材が前記分割石垣画像に含まれる石材であることが特定されたとき、前記石垣画像において前記検出された石材の画像データを特定の色を表す値にし、前記特定の色を含む前記石材画像の画像データに基づいて、前記石垣画像を分割した分割石垣画像の画像データを生成し、該画像データと前記回転石材画像の画像データとを用いて、崩落前の前記石垣画像に含まれる石材と崩落後の前記石材画像に含まれる石材とに対してパターンマッチングを行うことを、前記回転石材画像に含まれる石材が前記分割石垣画像に含まれる石材であることを特定することができなくなるまで繰り返すことを特徴とする付記1記載の石材位置特定プログラム。
【0129】
(付記9)
前記石材画像の画像データに基づいて、前記石材画像に含まれる石材が正面となるように台形補正、又は前記石材画像を複数に分割する分割補正を行い、台形補正又は分割補正した前記石材画像を回転及び縮小、又は回転及び拡大させた前記回転石材画像の画像データを生成することを特徴とする付記1記載の石材位置特定プログラム。
【0130】
(付記10)
前記石材画像の画像データに対して射影変換を行うことで、台形補正を行うことを特徴とする付記9記載の石材位置特定プログラム。
【0131】
(付記11)
前記分割石垣画像の画像データに基づいて、前記分割石垣画像を回転させた回転後の分割石垣画像の画像データを生成し、
前記回転後の分割石垣画像の画像データと前記回転石材画像の画像データとを用いて、前記パターンマッチングを行う
ことを特徴とする付記1記載の石材位置特定プログラム。
【0132】
(付記12)
パーソナルコンピュータと
石材位置特定装置と
を備える石材位置特定システムにおいて、
前記パーソナルコンピュータは、石垣位置の特定を要求する要求情報を送信し、
前記石材位置特定装置は、
崩落前の石垣画像の画像データと、石垣から崩落した後の石材画像の画像データとが記憶されたメモリと、
前記要求情報に従って、前記石垣画像の画像データに基づいて、前記石垣画像を分割した分割石垣画像の画像データを生成し、前記石材画像の画像データに基づいて、前記石材画像を回転及び縮小、又は回転及び拡大させた回転石材画像の画像データを生成し、前記分割石垣画像の画像データと前記回転石材画像の画像データとを用いて、崩落前の前記石垣画像に含まれる石材と崩落後の前記石材画像に含まれる石材とに対してパターンマッチングを行い、パターンマッチングの結果を前記パーソナルコンピュータへ出力する画像処理部と
を備えることを特徴とする石材位置特定システム。
【0133】
(付記13)
崩落前の石垣画像の画像データと、石垣から崩落した後の石材画像の画像データとが記憶されたメモリと、
前記石垣画像の画像データに基づいて、前記石垣画像を分割した分割石垣画像の画像データを生成し、前記石材画像の画像データに基づいて、前記石材画像を回転及び縮小、又は回転及び拡大させた回転石材画像の画像データを生成し、前記分割石垣画像の画像データと前記回転石材画像の画像データとを用いて、崩落前の前記石垣画像に含まれる石材と崩落後の前記石材画像に含まれる石材とに対してパターンマッチングを行い、パターンマッチングの結果を出力する画像処理部と
を備えることを特徴とする石材位置特定装置。
【符号の説明】
【0134】
10:石材位置特定システム 100:石材位置特定装置
101:メモリ 102:画像処理部
103:モニタ部 104:操作部
105:IF 110:FPGA