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特許7227483無線受信機、送信局判別方法および送信局判別プログラム
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  • 特許-無線受信機、送信局判別方法および送信局判別プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】無線受信機、送信局判別方法および送信局判別プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 15/24 20060101AFI20230215BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
H04L15/24
H04B1/16 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019068183
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020167599
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田中 敬三
(72)【発明者】
【氏名】美麗 忠宗
(72)【発明者】
【氏名】小寺 宏
(72)【発明者】
【氏名】福有 啓史
(72)【発明者】
【氏名】河野 諒太
(72)【発明者】
【氏名】岸部 真一
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-242732(JP,A)
【文献】特開昭62-143200(JP,A)
【文献】特開平10-093393(JP,A)
【文献】特開2014-143652(JP,A)
【文献】特開2016-086251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0008641(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 15/24
H04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールス信号を受信する無線受信機であって、
受信したモールス信号の周波数を検出する周波数検出部と、
検出された周波数が前記無線受信機に受信されたモールス信号を送信した既知の送信局である既知局の送信周波数と一致するか否かを判定することにより、受信中のモールス信号を送信している送信局を判別する局判別部と、
送信局を判別した結果を報知する報知部と、
を備えている無線受信機。
【請求項2】
新規の送信局と当該送信局の送信周波数とを対応付けて記憶部に登録する第1登録部をさらに備え、
前記局判別部は、検出された周波数が、登録された全ての前記既知局にそれぞれ対応付けられた送信周波数のいずれかと一致するか否かを判定することにより、受信中のモールス信号を送信している送信局を判別し、
前記第1登録部は、検出された周波数が、登録された前記既知局の送信周波数のいずれとも一致しなかったときに、当該送信局を当該送信周波数と対応付けて前記記憶部に登録する請求項1に記載の無線受信機。
【請求項3】
受信したモールス信号からキーイングスピードを検出するキーイングスピード検出部をさらに備え、
前記局判別部は、検出された周波数が前記既知局の送信周波数であると判定したときに、さらに、検出されたキーイングスピードが前記既知局によって送信されたモールス信号から検出されたキーイングスピードであるか否かを判定することにより、受信中のモールス信号を送信している送信局を判別する請求項1または2に記載の無線受信機。
【請求項4】
新規の送信局と当該送信局のキーイングスピードとを対応付けて記憶部に登録する第2登録部をさらに備え、
前記局判別部は、検出されたキーイングスピードが、登録された全ての前記既知局にそれぞれ対応付けられたキーイングスピードのいずれかと一致するか否かを判定することにより、受信中のモールス信号を送信している送信局を判別し、
前記第2登録部は、検出されたキーイングスピードが、登録された前記既知局のキーイングスピードのいずれとも一致しなかったときに、当該送信局を当該キーイングスピードと対応付けて前記記憶部に登録する請求項3に記載の無線受信機。
【請求項5】
受信したモールス信号を文字コードデータに変換する変換部と、
変換された前記文字コードデータに基づいて、文字列を表示する文字列表示部と、
をさらに備え、
前記報知部は、判別された送信局に応じて文字列の表示形態を異ならせる請求項1から4のいずれか1項に記載の無線受信機。
【請求項6】
前記表示形態は表示色である請求項5に記載の無線受信機。
【請求項7】
前記表示形態はフォントである請求項5に記載の無線受信機。
【請求項8】
前記表示形態は改行である請求項5に記載の無線受信機。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1から8のいずれか1項に記載の無線受信機における前記周波数検出部、前記局判別部および前記報知部として機能させるための送信局判別プログラム。
【請求項10】
無線受信機が受信したモールス信号の周波数を検出する周波数検出ステップと、
検出された周波数が前記無線受信機に受信されたモールス信号を送信した既知の送信局である既知局の送信周波数と一致するか否かを判定することにより、受信中のモールス信号を送信している送信局を判別する局判別ステップと、
送信局を判別した結果を報知する報知ステップと、
を含んでいる送信局判別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールス信号を受信する無線受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、無変調連続波(CW:Continuous Wave)を受信する受信機で受信したモールス信号を解読して文字に変換し、変換した文字を表示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭56-69956号公報(1981年6月11日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモールス信号を文字に変換して表示する無線通信機では、いくつかの送信局と交信する場合、表示された文字列が送信局の区別なく羅列されているので、一部の文字列を見ただけでは、モールス信号を送信した送信局を判別することができない。このため、ユーザは、文字列の内容から、それぞれの送信局を推定していた。
【0005】
本発明の一態様は、受信したモールス信号から送信局を容易に判別することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る無線受信機は、モールス信号を受信する無線受信機であって、受信したモールス信号の周波数を検出する周波数検出部と、検出された周波数が前記無線受信機に受信されたモールス信号を送信した既知の送信局である既知局の送信周波数と一致するか否かを判定することにより、受信中のモールス信号を送信している送信局を判別する局判別部と、送信局を判別した結果を報知する報知部とを備えている。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る送信局判別方法は、無線受信機が受信したモールス信号の周波数を検出する周波数検出ステップと、検出された周波数が前記無線受信機に受信されたモールス信号を送信した既知の送信局である既知局の送信周波数と一致するか否かを判定することにより、受信中のモールス信号を送信している送信局を判別する局判別ステップと、送信局を判別した結果を報知する報知ステップとを含んでいる。
【0008】
上記の構成によれば、現在受信しているモールス信号から検出された周波数に基づいて容易に送信局を判別することができる。
【0009】
前記無線受信機は、新規の送信局と当該送信局の送信周波数とを対応付けて記憶部に登録する第1登録部をさらに備え、前記局判別部は、検出された周波数が、登録された少なくとも1つの前記既知局にそれぞれ対応付けられた送信周波数と一致するか否かを判定することにより、受信中のモールス信号を送信している送信局を判別し、前記第2登録部は、検出された周波数が少なくとも1つの前記既知局の送信周波数と一致しなかったときに、当該送信局を当該送信周波数と対応付けて前記記憶部に登録してもよい。
【0010】
上記の構成によれば、検出された周波数に基づいて少なくとも1つの送信局を判別することができる。
【0011】
前記無線受信機は、受信したモールス信号からキーイングスピードを検出するキーイングスピード検出部をさらに備え、前記局判別部が、検出された周波数が前記既知局の送信周波数であると判定したときに、さらに、検出されたキーイングスピードが前記既知局によって送信されたモールス信号から検出されたキーイングスピードであるか否かを判定することにより、受信中のモールス信号を送信している送信局を判別してもよい。
【0012】
上記の構成によれば、現在受信しているモールス信号から検出されたキーイングスピードに基づいて容易に送信局を判別することができる。
【0013】
前記無線受信機は、新規の送信局と当該送信局のキーイングスピードとを対応付けて記憶部に登録する第2登録部をさらに備え、前記局判別部は、検出されたキーイングスピードが、登録された少なくとも1つの前記既知局にそれぞれ対応付けられたキーイングスピードと一致するか否かを判定することにより、受信中のモールス信号を送信している送信局を判別し、前記第2登録部は、検出されたキーイングスピードが少なくとも1つの前記既知局のキーイングスピードと一致しなかったときに、当該送信局を当該キーイングスピードと対応付けて前記記憶部に登録してもよい。
【0014】
上記の構成によれば、検出されたキーイングスピードに基づいて少なくとも1つの送信局を判別することができる。
【0015】
前記無線受信機は、受信したモールス信号を文字コードデータに変換する変換部と、変換された前記文字コードデータに基づいて、文字列を表示する文字列表示部とをさらに備え、前記報知部が、判別された送信局に応じて文字列の表示形態を異ならせていてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、文字列の表示形態が変わったことで、ユーザは送信局が変わったことを視覚的に認識することができる。
【0017】
前記無線受信機において、前記表示形態は表示色であってもよい。
【0018】
上記の構成によれば、文字列の表示色が変わったことで、より印象的に文字列の状態が変わったことを認識することができる。これにより、送信局が変わったことを、より容易に認識することができる。
【0019】
前記無線受信機において、前記表示形態はフォントであってもよい。
【0020】
上記の構成によれば、文字列の表示色が変わったことで、より印象的に文字列の状態が変わったことを認識することができる。これにより、送信局が変わったことを、より容易に認識することができる。
【0021】
前記無線受信機において、前記表示形態は改行であってもよい。
【0022】
上記の構成によれば、文字列が改行されることで、送信局が変わったことを認識することができる。
【0023】
本発明の一態様に係る無線受信機をコンピュータによって実現してもよい。この場合には、コンピュータを上記無線受信機が備える前記周波数検出部、前記局判別部および前記報知部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記無線受信機をコンピュータにて実現させる送信局判別プログラムも、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、受信したモールス信号から送信局を容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係るトランシーバにおける受信系統の構成を示すブロック図である。
図2】上記トランシーバにおける局判別部による局判別の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、図1および図2を参照して説明すれば、以下の通りである。
【0027】
〈トランシーバの構成〉
図1は、本実施形態に係るトランシーバ1における受信系統の構成を示すブロック図である。
【0028】
図1に示すように、トランシーバ1(無線受信機)は、アンテナ2と、RFアンプ3と、ミキサ4と、IFフィルタ5と、デジタル信号処理回路6と、CPU(Central Processing Unit)7と、文字列表示部8とを備えている。
【0029】
RFアンプ3は、アンテナ2に受信されるRF信号を増幅する。ミキサ4は、RFアンプ3からのRF信号を中間周波数のIF信号に変換する。IFフィルタ5は、IF信号から妨害波を除去する。
【0030】
デジタル信号処理回路6は、IFフィルタ5を経たIF信号(モールス信号)に対して、各種の処理を施す回路である。デジタル信号処理回路6は、このような処理を行なうために、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などで構成されている。デジタル信号処理回路6は、復調部61と、CWデコード部62(キーイングスピード検出部,変換部)と、周波数カウント部63(周波数検出部)と、局判別部64(第1登録部,第2登録部)と、メモリ65(記憶部)とを有している。
【0031】
復調部61は、入力されるモールス信号を所定の復調方式で音声信号に復調する。復調部61は、受信信号の周波数に対して近接する周波数の信号発生器(BFO:Beat Frequency Oscillator)の信号を混合し、ビートを発生させるなどの処理を行なうことにより、モールス符号を音声信号に変換する。この音声信号は、図示しないアンプによって増幅され、さらに図示しないスピーカによって音声として出力される。
【0032】
CWデコード部62は、入力されるモールス信号を文字コードデータに変換する。より具体的には、CWデコード部62は、モールス符号の長点と短点とを区別するとともに、長点と短点との並びを解析し、その解析結果に基づいて辞書を参照することにより、該当する文字コードデータを出力する。
【0033】
また、CWデコード部62は、入力されるモールス信号の通信速度であるキーイングスピードを検出する。CWデコード部62は、モールス信号におけるモールス符号の有無をそれぞれ“1”,“0”から成るパルス信号で表し、パルス信号におけるパルスが変化するタイミングを求めて、そのタイミングにパルスカウント検波を行なうことによりキーイングスピードを検出する。CWデコード部62は、検出したキーイングスピードのデジタル値を出力する。
【0034】
周波数カウント部63は、入力されるモールス信号の周波数をカウントすることにより、当該周波数のデジタル値を出力する。また、周波数カウント部63は、トランシーバ1に受信設定されている受信周波数と、モールス信号の周波数との偏差(周波数偏差)を検出して、その周波数偏差をオートチューンの処理に用いられるオートチューンデータとして出力する。
【0035】
局判別部64は、CWデコード部62からのキーイングスピードの変化に基づいて、受信中の送信局を判別する。また、局判別部64は、周波数カウント部63からの周波数の変化に基づいて、受信中の送信局を判別する。局判別部64は、キーイングスピードの変化に基づく判別結果、および周波数の変化に基づく判別結果を、それぞれ局判別信号として出力する。
【0036】
メモリ65は、既にモールス信号を受信した送信局(送信局に付与された後述する識別符号)を、CWデコード部62によって検出されたキーイングスピードと、周波数カウント部63によって検出された周波数(送信局の周波数)と対応付けて記憶する。
【0037】
CPU7は、トランシーバ1の各部を制御する制御装置である。CPU7は、トランシーバ1の受信系統として、文字列表示処理部71(報知部)と、オートチューン処理部72とを有している。文字列表示処理部71およびオートチューン処理部72は、それぞれ、CPU7が所定のプログラムを実行することにより実現される機能ブロックである。
【0038】
文字列表示処理部71は、CWデコード部62からの文字コードデータに基づいて文字列の表示データ(文字列表示データ)を文字列表示部8に出力する。また、文字列表示処理部71は、局判別部64からの局判別信号に基づいて、判別された送信局に応じて文字列の表示形態を変更することにより、送信局の判別結果をユーザに報知する。変更する表示形態としては、例えば、表示色、フォント、改行が挙げられる。
【0039】
なお、CPU7は、文字コードデータをログとして保存するときに、保存するファイルの形式を送信局ごとに異ならせて保存する。ファイル形式としては、例えば、リッチテキスト形式、HTML(Hyper Text Markup Language)形式が挙げられる。
【0040】
オートチューン処理部72は、周波数カウント部63からのオートチューンデータに基づいて、送信局の周波数(送信周波数)を受信周波数と一致するように調整する。
【0041】
文字列表示部8は、文字列表示処理部71から出力される文字列表示データに基づいて文字列を表示する。
【0042】
〈局判別動作〉
図2は、トランシーバ1における局判別部64による局判別の処理手順を示すフローチャートである。
【0043】
まず、局判別部64は、CWデコード部62から送出されていない文字コードデータが存在するか否かを判定する(ステップS1)。CWデコード部62からキーイングスピードが出力されている間は、文字コードデータを送出すべきモールス信号が存在している。そこで、局判別部64は、キーイングスピードが存在することで、文字コードデータが存在すると判定できる。
【0044】
局判別部64は、ステップS1において、未送出の文字コードデータが存在すると判定すると(YES)、メモリ65に記憶されている登録済みの送信局の周波数(送信周波数)と現在受信している送信局の周波数とが一致するか否かを判定する(ステップS2)。
【0045】
既にトランシーバ1に受信された送信局は、送信周波数とともに後述するようにメモリ65に既知局として登録される。このため、局判別部64は、少なくとも1つの送信局が登録されていれば、登録されている全ての送信局についての送信周波数と、現在受信している送信局の周波数と一致するか否かを判定する。
【0046】
局判別部64は、ステップS2において、登録済みの送信局の周波数と現在受信している送信局の周波数とが一致すると判定すると(YES)、一致を判定した送信局について、メモリ65に記憶されている登録済みのキーイングスピードと、CWデコード部62によって検出された現在のキーイングスピードとが一致するか否かを判定する(ステップS3)。
【0047】
キーイングスピードについても、送信周波数と同じく、送信局とともに登録される。したがって、局判別部64は、少なくとも1つの送信局が登録されていれば、登録されている全ての送信局についてのキーイングスピードと、検出されたキーイングスピードと一致するか否かを判定する。
【0048】
局判別部64は、ステップS3において、登録済みのキーイングスピードと現在のキーイングスピードとが一致すると判定すると(YES)、周波数およびキーイングスピードのそれぞれの一致を判定した送信局に局判別信号を設定して(ステップS4)、処理をステップS1に戻す。
【0049】
メモリ65に登録されている送信局は、登録順に識別符号が付与されている。このため、局判別部64は、識別符号に局判別信号の情報を対応付けることで設定情報を作成し、その設定情報をメモリ65に記憶させることにより、設定情報を登録する。
【0050】
設定情報が登録されることで、ステップS1以降の処理が再び繰り返される場合、局判別部64は、ステップS1の次に、設定情報の局判別信号を認識できたか否かを判定する処理を行なってもよい。そして、局判別部64は、設定情報の局判別信号を認識できたときには、送信局が既に判別されていると判断して、ステップS2~S4の処理を省略してもよい。
【0051】
局判別信号は、固有のコードによって構成される信号であるが、局判別信号の形態はこのような信号に限定されない。また、局判別信号は、予め規定数用意されており、後述する表示色やフォントと個々に対応付けられていてもよい。
【0052】
局判別部64は、ステップS2において、登録済みの送信局の周波数と現在受信している送信局の周波数とが一致しないと判定すると(NO)、新規の送信局の登録情報を作成する(ステップS5)。また、局判別部64は、ステップS3において、登録済みのキーイングスピードと、CWデコード部62によって検出された現在のキーイングスピードとが一致しないと判定したときも(NO)、新規の送信局の登録情報を作成する(ステップS5)。
【0053】
送信局の送信周波数とキーイングスピードは、一連の交信が終わるたびに変わることがある。このため、送信局の登録情報は、一時的に記憶されていればよい。例えば、メモリ65に登録できる送信局の登録数を予め規定しておき、規定の登録数を超えると古い登録情報から順に抹消する。あるいは、トランシーバ1の電源をOFFにしたときなどに一部または全ての登録情報を抹消してもよい。
【0054】
局判別部64は、登録情報の主となるデータとして新規の送信局に上記の識別符号を新たに付与し、当該識別符号に、周波数カウント部63から取得した送信局の周波数と、CWデコード部62から取得したキーイングスピードとを対応付けて、登録情報を作成する。登録情報において、識別符号が新規の送信局を表している。
【0055】
そして、局判別部64は、上記のように登録情報を作成した新規の送信局に局判別信号を設定して設定情報を作成し(ステップS6)、処理をステップS1に戻す。
【0056】
なお、上述の処理手順では、ステップS2,S3の処理を経て、送信局を判別しているが、登録された周波数と現在の周波数との比較によるステップS2の処理のみで送信局を判別してもよい。この場合、登録されたキーイングスピードと現在のキーイングスピードとの比較によるステップS3が省かれる。このため、局判別部64は、ステップS4,S6において、送信局への局判別信号の設定を周波数の一致に基づいてのみ行い、ステップS5において、周波数カウント部63から取得した送信局の周波数周波数のみを識別符号に対応付けて登録情報を作成する。
【0057】
〈文字列表示動作〉
文字列表示処理部71は、局判別部64からの局判別信号に基づいて、CWデコード部62から取得した文字コードデータを文字列表示データに変換する。また、文字列表示処理部71は、文字列表示データに表示形態を特定する表示形態情報を付与して、文字列表示部8に出力する。表示形態情報としては、例えば、表示色、フォント、改行が挙げられる。
【0058】
文字列表示処理部71は、表示色を表示形態情報として文字列表示データに付与する場合、予め規定数用意されている局判別信号と複数の異なる表示色とを個々に対応付けたテーブルを参照し、入力された局判別信号に対応する表示色を特定する。
【0059】
文字列表示処理部71は、フォントを表示形態情報として文字列表示データに付与する場合、予め規定数用意されている局判別信号と複数の異なるフォントとを個々に対応付けたテーブルを参照し、入力された局判別信号に対応するフォントを特定する。
【0060】
文字列表示処理部71は、改行を表示形態情報として文字列表示データに付与する場合、入力される局判別信号が他の局判別信号に変わったタイミングで改行コードを文字列表示データに付与する。
【0061】
文字列表示部8は、上記のようにして表示形態情報が付与された文字列表示データに基づいて文字列を表示する。
【0062】
送信局に応じて文字列の表示色を変更する場合、送信局が変わると、局判別信号も変わるため、当該局判別信号に応じた表示色の文字列表示データが文字列表示部8に出力される。これにより、文字列表示部8は、送信局が変わるごとに表示色を変えて文字列を表示する。
【0063】
送信局に応じて文字列のフォントを変更する場合、送信局が変わると、局判別信号に応じたフォントの文字列表示データが文字列表示部8に出力される。これにより、文字列表示部8は、送信局が変わるごとにフォントを変えて文字列を表示する。
【0064】
送信局に応じて文字列を改行する場合、送信局が変わると、局判別信号が変わったタイミングで改行コードを挿入された文字列表示データが文字列表示部8に出力される。これにより、文字列表示部8は、送信局が変わるごとに文字列を改行する。
【0065】
〈トランシーバによる効果〉
本実施形態に係るトランシーバ1は、受信したモールス信号の周波数を検出する周波数カウント部63と、検出された周波数がトランシーバ1に受信されたモールス信号を送信した既知の送信局である既知局の送信周波数と一致するか否かを判定することにより、受信中のモールス信号を送信している送信局を判別する局判別部64と、送信局を判別した結果を報知する文字列表示処理部71とを備えている。
【0066】
上記の構成によれば、現在受信しているモールス信号から検出された周波数に基づいて容易に送信局を判別することができる。これにより、適切な対応をとることができる。
【0067】
アマチュア無線の運用では、自らCQを発して交信を始める以外は、既に行なわれている2局の交信を受信し、その交信が終わってから一方の局を呼びかける形態が一般的である。このような状況において、交信中の2局を判別できれば、交信が終わったことを容易に認識することができるので、呼びかけをスムーズ行なうことが可能となる。また、送信を行なわずに、他局同士の交信を聞いている場合でも、2局を判別できれば、交信内容を容易に理解することができる。
【0068】
局判別部64は、周波数カウント部63によって検出された周波数が、登録された少なくとも1つの既知局にそれぞれ対応付けられた送信周波数と一致するか否かを判定することにより、受信中のモールス信号を送信している送信局を判別する。また、局判別部64は、検出された周波数が既知局の送信周波数と一致しなかったときに、当該送信局を当該送信周波数と対応付けてメモリ65に登録する。
【0069】
上記の構成によれば、検出された周波数に基づいて少なくとも1つの送信局をそれぞれ判別することができる。
【0070】
CWデコード部62は、受信したモールス信号からキーイングスピードを検出する。また、局判別部64は、検出された周波数が既知局の送信周波数であると判定したときに、さらに、検出されたキーイングスピードが既知局によって送信されたモールス信号から検出されたキーイングスピードであるか否かを判定することにより、受信中のモールス信号を送信している送信局を判別する。
【0071】
上記の構成によれば、現在受信しているモールス信号から検出されたキーイングスピードに基づいて容易に送信局を判別することができる。
【0072】
局判別部64は、CWデコード部62によって検出されたキーイングスピードが、登録された少なくとも1つの既知局にそれぞれ対応付けられたキーイングスピードと一致するか否かを判定することにより、受信中のモールス信号を送信している送信局を判別する。また、局判別部64は、検出されたキーイングスピードが既知局のキーイングスピードと一致しなかったときに、当該送信局を当該キーイングスピードと対応付けてメモリ65に登録する。
【0073】
上記の構成によれば、検出されたキーイングスピードに基づいて少なくとも1つの送信局をそれぞれ判別することができる。
【0074】
トランシーバ1は、受信したモールス信号を文字コードデータに変換するCWデコード部62と、変換された文字コードデータに基づいて文字列を表示する文字列表示部8とを備えている。また、文字列表示処理部71は、判別された送信局に応じて文字列の表示形態を異ならせる。
【0075】
上記の構成によれば、文字列の表示形態が変わったことで、ユーザは送信局が変わったことを視覚的に認識することができる。
【0076】
表示形態は、表示色であってもよい。これにより、文字列の表示色が変わったことで、より印象的に文字列の状態が変わったことを認識することができる。したがって、送信局が変わったことを、より容易に認識することができる。
【0077】
また、表示形態は、フォントであってもよい。これにより、文字列の表示色が変わったことで、より印象的に文字列の状態が変わったことを認識することができる。したがって、送信局が変わったことを、より容易に認識することができる。
【0078】
また、表示形態は改行であってもよい。文字列が改行されることで、従来のモールス信号のデコード機能を備えた無線受信機が文字を単に羅列して表示していたのと比べて、送信局が変わったことを認識することができる。また、文字列を表示するための文字コードデータに改行コードを挿入するだけで、改行を実現できる。これにより、表示データ量を抑制することができるだけでなく、表示色やフォントのデータを保持しておく必要がなく、記憶データ量の増加を抑えることができる。
【0079】
〔ソフトウェアによる実現例〕
トランシーバ1の制御ブロック(特にCWデコード部62、周波数カウント部63、局判別部64および文字列表示処理部71)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0080】
後者の場合、トランシーバ1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラム(送信局判別プログラムを含む)の命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサ(デジタル信号処理回路6を構成するプロセッサおよびCPU7)を備えているとともに、上記プログラムを記憶したコンピュータで読み取り可能な記録媒体を備えている。
【0081】
そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。
【0082】
上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0083】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 トランシーバ(無線受信機)
8 文字列表示部
62 CWデコード部(キーイングスピード検出部,変換部)
63 周波数カウント部(周波数検出部)
64 局判別部(第1登録部,第2登録部)
65 メモリ(記憶部)
71 文字列表示処理部(報知部)
図1
図2