IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タイガー魔法瓶株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-飲料抽出装置 図1
  • 特許-飲料抽出装置 図2
  • 特許-飲料抽出装置 図3
  • 特許-飲料抽出装置 図4
  • 特許-飲料抽出装置 図5
  • 特許-飲料抽出装置 図6
  • 特許-飲料抽出装置 図7
  • 特許-飲料抽出装置 図8
  • 特許-飲料抽出装置 図9
  • 特許-飲料抽出装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】飲料抽出装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/30 20060101AFI20230215BHJP
   A47J 31/057 20060101ALI20230215BHJP
   A47J 31/00 20060101ALI20230215BHJP
   A47J 31/46 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
A47J31/30
A47J31/057 106
A47J31/00 302
A47J31/46
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019094269
(22)【出願日】2019-05-20
(65)【公開番号】P2020188842
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116159
【弁理士】
【氏名又は名称】玉城 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】米原 詩織
(72)【発明者】
【氏名】葛原 裕介
【審査官】松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-201659(JP,A)
【文献】特開2017-6674(JP,A)
【文献】特開2001-70168(JP,A)
【文献】特開2019-30668(JP,A)
【文献】特表2017-513583(JP,A)
【文献】特開平5-207935(JP,A)
【文献】特開2009-163606(JP,A)
【文献】米国特許第5267506(US,A)
【文献】特開平3-215228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00-31/60
A23F 3/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水タンクと、前記給水タンクの水を送る送水ポンプと、前記送水ポンプから送られる水を加熱する加熱手段と、前記加熱手段で加熱された湯及び蒸気が供給され、抽出原料から抽出液を抽出する飲料抽出容器と、前記加熱手段と前記飲料抽出容器とを連通する給湯パイプと、前記飲料抽出容器内を大気に開放可能な第1の電磁弁と、制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記抽出原料を蒸らす蒸らし工程と、前記蒸らし工程で蒸らされた抽出原料から抽出液を抽出する抽出工程と、前記抽出工程で抽出された抽出液を押し出す押出工程とを行うとともに、前記押出工程後に前記第1の電磁弁を開して前記飲料抽出容器内を大気に開放することを特徴とする飲料抽出装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記押出工程と、前記押出工程後に前記第1の電磁弁を開して前記飲料抽出容器内を大気に開放することとを複数回繰り返し行うことを特徴とする請求項1に記載の飲料抽出装置。
【請求項3】
前記給湯パイプは、分岐部を有し、
前記分岐部には、他のパイプの一端が連通し、
前記他のパイプは、その他端が給水タンク内に開口し、その途中に前記第1の電磁弁を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料抽出装置。
【請求項4】
前記給湯パイプは、第2の電磁弁を有し、
前記第2の電磁弁は、電源のオン時に開し、電源のオフ時に閉することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の飲料抽出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーメーカーなどの飲料抽出装置に関するものであり、より具体的には、抽出液を飲料抽出容器で抽出した後に、適正にサーバーやカップなどに注ぎ出すことのできる飲料抽出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーヒー粉からコーヒーを抽出する所謂コーヒーメーカーや、茶葉からお茶を抽出する所謂お茶メーカーなどの飲料抽出装置が知られている。たとえば、本出願人は、特許文献1のコーヒーメーカーをすでに出願している。
【0003】
上記コーヒーメーカーは、飲料抽出容器内で「コーヒー粉を蒸らす蒸らし工程」と、「蒸らしたコーヒー粉からコーヒーを抽出する抽出工程」と、「抽出したコーヒーに蒸気圧を掛けて押し出す押出工程」を有し、更に押出工程の後に、新たな押出工程を複数回繰り返すもので、例え、大量のコーヒー粉及び大量の湯量を入れる大型のコーヒーメーカーであっても抽出したコーヒーを適正に注出することができるものである。
【0004】
ところで、圧力をかけるための蒸気は、送水ポンプにより少量の水を加熱ヒーターに送り込むことにより発生させている。そのため、押出工程後に新たな押出工程を行うという上記のような従来のコーヒーメーカーは、内圧が高い状態の飲料抽出容器内に更に蒸気を送り込むことになり、圧力の上がり方が予測しづらく必要以上に高圧となる恐れがあった。そして、飲料抽出容器の内圧が高圧になると、新たに蒸気を飲料抽出容器内に送り込めなくなり、その結果、コーヒーを十分に押し出すことができなくなる。
【0005】
また、飲料抽出容器の内圧が高圧になると、適正な注出が行われなくなる恐れも生じる。
【0006】
そのような弊害をなくすには、例えば、1回目の押出工程と2回目の押出工程との間に所定の待機時間を設けることが考えられるが、待機時間を設けるだけでは飲料抽出容器内の圧力が十分下がらないし、また、長い待機時間を設けると全ての注出を完了するまでの時間が長くなるという新たな問題が生じる。
【0007】
ところで、上記のような新たな押出工程を繰り返すコーヒーメーカーにおいても、最後の押出工程の後に蓋体を開放することになる。また、従来のコーヒーメーカーとして一度しか押出工程を行わないものもあるが、このようなものも押出工程の後に蓋体を開放することになる。
【0008】
ところが、上記のような押出工程を有する飲料抽出容器において、押出工程後に圧力を逃がす等手段が設けられていないものでは、押出工程の終了直後は依然として圧力がかかった状態(即ち、内部から蓋体を押し上げる力が作用している状態)にあり、このような状態時(即ち、押出工程の終了直後)に、蓋体のロック状態を解除して蓋体を開放しようとすると、どうしても蓋体のロック状態が解除しにくくなる。また、例え、蓋体のロック状態が解除できたとしても、押出工程の終了直後に蓋体を開放すると、飲料抽出容器内の蒸気が噴き出る恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-201659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記従来の課題を解決することで、より具体的には、押出工程後に飲料抽出容器内を大気に開放することにより、新たな押出工程を適正に行ったり、又は蓋体の開放を容易にしたり、或いは蓋体開放時の飲料抽出容器内からの蒸気の吹き出しをなくすことができる飲料抽出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の飲料抽出装置は、上記の課題を解決するために、以下のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0012】
請求項1に係る発明は、 給水タンクと、前記給水タンクの水を送る送水ポンプと、前記送水ポンプから送られる水を加熱する加熱手段と、前記加熱手段で加熱された湯及び蒸気が供給され、抽出原料から抽出液を抽出する飲料抽出容器と、前記加熱手段と前記飲料抽出容器とを連通する給湯パイプと、前記飲料抽出容器内を大気に開放可能な第1の電磁弁と、制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記抽出原料を蒸らす蒸らし工程と、前記蒸らし工程で蒸らされた抽出原料から抽出液を抽出する抽出工程と、前記抽出工程で抽出された抽出液を押し出す押出工程とを行うとともに、前記押出工程後に前記第1の電磁弁を開して前記飲料抽出容器内を大気に開放する構成。
【0013】
上記構成により、押出工程後に第1の電磁弁を開して飲料抽出容器内をほぼ大気状態にすることができるため、例えば、押出工程を複数回行うものでは、2回目以降の押出工程を1回目と同程度の圧力で行うことができるようになり、飲料抽出容器内の圧力が必要以上に高圧になることはない。また、飲料抽出容器内が一度大気状態に戻るため、必要な蒸気量を適正に送り込むことが可能になる。
【0014】
また、特に、押出工程後に圧力を逃がす等手段が設けられていないものにおいては、押出工程直後の蓋体の開放が容易になるとともに、蓋体開放時に飲料抽出容器25からの蒸気の吹き出しがなくなる。なお、本発明は、一度の押出工程しか行わないものにも、複数回の押出工程を行うものにも有効である。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加えて、前記制御装置は、前記押出工程と、前記押出工程後に前記第1の電磁弁を開して前記飲料抽出容器内を大気に開放することとを複数回繰り返し行う構成。
【0016】
上記構成により、各押出工程後に第1の電磁弁を開して飲料抽出容器内をほぼ大気状態にすることができるため、2回目以降の押出工程を1回目と同程度の圧力で行うことができるようになり、飲料抽出容器内の圧力が必要以上に高圧になることはない。また、飲料抽出容器内が一度大気状態に戻るため、必要な蒸気量を適正に送り込むことが可能になる。
【0017】
また、最後の押出工程直後に蓋体を開放する場合には、蓋体の開放が容易になるとともに、蓋体開放時に飲料抽出容器25からの蒸気の吹き出しがなくなる。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2の構成に加えて、前記給湯パイプは、分岐部を有し、前記分岐部には、他のパイプの一端が連通し、前記他のパイプは、その他端が給水タンク内に開口し、その途中に前記第1の電磁弁を有する構成。なお、分岐部は、例えば、図8に示すような3個の開口を有するT字状の管継ぎ手部材を用いることができ、その場合、1個目の開口に加熱手段側の給湯パイプを連結し、2個目の開口に飲料抽出容器側の給湯パイプを連結し、3個目の開口に他のパイプを連結することになる。
【0019】
上記構成により、他のパイプを、その他端が他の部材に邪魔になることなく飲料抽出装置内に容易に組み込むことができるようになる。また、他のパイプを介して蒸気が排出されることになるが、給水タンク内であり、安全である。また、給水タンクには水があり給水タンクが加熱する恐れは低い。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれか一項の構成に加えて、前記給湯パイプは、第2の電磁弁を有し、前記第2の電磁弁は、電源のオン時に開し、電源のオフ時に閉する構成。なお、第2の電磁弁は、非通電時は閉し、通電時は開するものである。
【0021】
上記構成により、コーヒーメーカーの使用中に誤って蓋体が開けられたとしても、後記のスイッチ手段により非通電になって第2の電磁弁が閉するため、給湯パイプの先端(図4参照)から蒸気が噴き出ることがなくなる。
【発明の効果】
【0022】
以上の結果、本発明は、2回目以降の押出工程を1回目と同程度の圧力で行うことができ、飲料抽出容器内の圧力が必要以上に高圧になることを防止することができるとともに、飲料抽出容器内に必要な蒸気量を適正に送り込むことができる。更には、押出工程直後の蓋体の開放を容易にすることができるとともに、蓋体開放時に蒸気が噴き出ることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係る飲料抽出装置(コーヒーメーカー)の正面図
図2】飲料抽出装置を斜め上方から見た斜視図
図3図1のA-A線の断面図
図4】飲料抽出装置の蓋体を開けた状態を斜め上方から見た斜視図
図5】給湯パイプからの湯や蒸気が蓋体内の供給パイプを介してシリンダ本体内に流入する状態を示す拡大概略図
図6】飲料抽出容器の断面図
図7】飲料抽出容器各部の分解斜視図
図8】飲料抽出装置の制御システム図
図9図8の飲料抽出制御を示すフローチャート
図10図9のフローチャートの飲料抽出制御に対応したタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付の図面を参照して、本発明の飲料抽出装置について説明する。なお、飲料抽出装置として、抽出原料であるコーヒー粉からコーヒーを抽出する所謂コーヒーメーカーや、茶葉からお茶を抽出する所謂お茶メーカーなどが知られているが、以下においては、コーヒーメーカーを用いて説明する。
【0025】
近年、コーヒーメーカーとして漏斗型のペーパーフィルターやメッシュフィルターを用いて、コーヒー粉に湯を通して成分を抽出するものが一般的であるが、以下に説明するコーヒーメーカー10は、給水タンク15、送水ポンプ17、加熱手段である加熱ヒーター18及び飲料抽出容器25を有し、飲料抽出容器25内で蒸らし工程、抽出工程及び押出工程などを行うことにより、コーヒー粉Cから成分を安定的に抽出し、且つ味のバラツキが少ないコーヒーを提供し得るものである。
【0026】
コーヒーメーカー10は、図1にその正面図を示し、図2にその斜視図を示し、図3図1のA-A線での断面図を示し、図4に蓋体が開放した斜視図を示す。なお、図1において手前側を前方とし、奥側を後方とし、上側を上方とし、下側を下方とし、右側を右方とし、左側を左方とする。
【0027】
まず、湯及び蒸気等の概略的な流れについてコーヒーメーカー10の要部機構を示すブロック図である図8により説明する。
【0028】
コーヒーメーカー10は、上流側から、水Wを貯留する給水タンク15と、給水タンク15から供給される水Wを給水パイプ20を介して加熱手段である加熱ヒーター18に送る送水ポンプ17と、を有し、送水ポンプ17がオンして駆動すると給水パイプ20内の水Wを加熱ヒーター18に送る。
【0029】
加熱ヒーター18は、送られた水Wを加熱して湯HWや蒸気Sを生成する。加熱ヒーター18で生成された湯HWや蒸気Sは、給湯パイプ19を介して飲料抽出容器25に送られる。飲料抽出容器25には予め必要な量の抽出原料であるコーヒー粉Cが入れられており、加熱ヒーター18から湯HWや蒸気Sが送られると、飲料抽出容器25内で蒸らし行程及び抽出行程などが行われてコーヒーが抽出される。
【0030】
そして、抽出されたコーヒーは、押出工程時に飲料抽出容器25の底面の吐出孔68から押し出されてサーバー14に注出される。
【0031】
ところで、飲料抽出容器25内に蒸気圧を加えるには、飲料抽出容器25が正しくコーヒーメーカー10に取り付けられ、蓋体30が正しく閉じられている必要がある。そこで、飲料抽出容器25及び蓋体30の正しい装着状態を検知するスイッチ手段41が設けられている。
【0032】
スイッチ手段41は、これらが正しい装着状態である場合に、送水ポンプ17及び加熱ヒーター18等への通電を許容し、装着状態が正しくない場合には、通電を遮断するようになっている。
【0033】
給水タンク15と送水ポンプ17との間の給水パイプ20には、流量計16が設けられており、供給される水量を検出して検出した信号を制御装置22に送る。
【0034】
加熱ヒーター18と飲料抽出容器25との間の給湯パイプ19には、湯温検出センサー21aが設けられ、加熱ヒーター18には、ヒーター温検出センサー21bが設けられており、飲料抽出容器25に送る湯の温度や、加熱ヒーター18の温度を検出して検出したそれぞれの信号を制御装置22に送る。
【0035】
また、加熱ヒーター18と飲料抽出容器25との間の給湯パイプ19には、分岐部27が設けられる。分岐部27は、複数の開口を有し、内部が連通する管継ぎ手部材、例えば、図8に示すように、3個の開口を有するT字状の管継ぎ手部材であり、1個目の開口に加熱ヒーター18側の給湯パイプ19を連結し、2個目の開口に飲料抽出容器25側の給湯パイプ19を連結し、3個目の開口に他のパイプである分岐パイプ27aを連結することになる。
【0036】
そして、他のパイプである分岐パイプ27aは、その途中に第1の電磁弁28が設けられ、その他端は、給水タンク15内に開口する。
【0037】
第1の電磁弁28は、非通電時には開状態にあり、通電時に閉状態になるものである。具体的には、第1の電磁弁28は、送水ポンプ17にほぼ追随してオンオフするように制御されるもので(図10参照)、電源スイッチがオフのときは勿論のこと、電源スイッチがオンのコーヒーメーカー10の使用中であっても、第1の電磁弁28に通電されないときには開状態になって、飲料抽出容器25と給水タンク15とを連通して飲料抽出容器25内の空気を給水タンク15側に送る。即ち、飲料抽出容器25内の圧力を大気圧状態にする。
【0038】
そして、第1の電磁弁28に通電されると閉状態になって、飲料抽出容器25と給水タンク15との連通を遮断する。このような制御形態により、飲料抽出容器25内の圧力を適正に制御でき、且つ押出工程直後の蓋体の開放を容易にする。
【0039】
なお、給水タンク15は、給水動作を良好にするために、例えば、その頂部に空気が流入可能な外部開口を有している。そのため、第1の電磁弁28が開すると直ちに飲料抽出容器25内の空気を給水タンク15側に送ることになる。
【0040】
また、加熱ヒーター18と飲料抽出容器25とを連通する給湯パイプ19には、第2の電磁弁29が設けられる。図8の場合は、加熱ヒーター18と分岐部27との間である。
【0041】
第2の電磁弁29は、非通電時には閉状態にあり、通電時に開状態になるものである。具体的には、第2の電磁弁29は、通電のオンオフに連動する。即ち、非通電時(コーヒーメーカー10の不使用時)には閉状態にあり、通電時(コーヒーメーカー10の使用中)には開状態になるものである。
【0042】
上記したように、第2の電磁弁29は、コーヒーメーカーの使用中に誤って蓋体が開けられた場合、スイッチ手段41が上動して電源スイッチをオフし、第2の電磁弁が閉する。その結果、給湯パイプ19の先端(正確には、図4に示すようにパッキン部材35の先端)から蒸気が噴き出ることがなくなる。即ち、スイッチ手段41は、操作部11上の電源スイッチと同様の機能を奏するものである。
【0043】
飲料抽出容器25は、蓋体30によってほぼ気密状態にされる容器であり、供給される湯HWや蒸気Sでコーヒー粉Cを蒸らし、抽出し、抽出後に更に蒸気圧を加えることにより、抽出されたコーヒーを底部の吐出孔68から押し出し、吐出孔68の下方に載置されるサーバー14内に注入する。
【0044】
コーヒーメーカー10は、操作部11(図1、2、4参照)を操作することにより制御装置22により制御される。制御装置22は、CPUを主体に構成され、メモリ等の記憶手段に、コーヒーメーカー10の各種制御プログラムや設定値等が記憶されている。
【0045】
制御装置22には、流量計16、送水ポンプ17、加熱ヒーター18、湯温検出センサー21a、ヒーター温検出センサー21b、スイッチ手段41、第1の電磁弁28及び第2の電磁弁29などが電気的に接続されており、操作部11からの操作に基づき、送水、給湯、蒸気供給が行なわれるとともに、飲料抽出容器25で蒸らし工程、抽出工程及び押出工程などが行われ、課題に適したコーヒーが生成される。
【0046】
次いで、詳細について説明する。コーヒーメーカー10は、後方側に背部箱体10Aを有し、下方側に底部箱体10Bを有し、上方側に上部箱体10Cを有する平面視矩形状で、右方から見て、給水タンク15が装着されていない状態でコ字状を呈するものである。
【0047】
背部箱体10Aは、底部箱体10Bの後端部側から所定前後幅、所定左右幅を有して上部箱体10Cの後端側まで立ち上がる全体として断面略矩形状の筒状体であり、その内部空間10AAには、送水ポンプ17、流量計16(図8参照)、湯沸し用の加熱ヒーター18、湯温検出センサー21a(図8参照)、ヒーター温検出センサー21b(図8参照)、制御装置22(図8参照)などが設置されている。
【0048】
底部箱体10Bは、強度の高い箱状の部材であり、前後左右の下方に別部材で複数の脚部10BBを有して、コーヒーメーカー10全体を安定した状態で支持する。そして、後方の上面には、背部箱体10Aが立設状態で取り付けられており、背部箱体10Aよりも前方側の上面には、サーバー14(カップであっても良い)が載置される。
【0049】
上部箱体10Cは、平面視矩形状で上下に厚みを有し、背部箱体10Aの上端に連結されて前方側に向かって水平に伸びる庇状の部材である。そして、その上部の左側には蓋体30を有し、その上部の右側には操作部11を有する。
【0050】
また、蓋体30の下方の上部箱体10C内は、飲料抽出容器25を収容するための収容空間12が形成される。収容空間12には、飲料抽出容器25を挿入するための上下が開口した挿入用筒体13を有し、上部箱体10C内にはゴム製の給湯パイプ19が引き込まれている。
【0051】
挿入用筒体13は、平面視円形で上下が開口した筒状部材である。そしてその先端部は、大径部13aとされており(図3参照)、挿入用筒体13内に飲料抽出容器25が嵌入すると、後記する飲料抽出容器25のシリンダ自体のフランジ47が大径部13a上に接地する。
【0052】
給湯パイプ19は、背部箱体10Aの加熱ヒーター18から伸びているゴム製のもので、蓋体30の内板31に一体に形成される供給パイプ40の上端に嵌合されており(図5参照)、当該供給パイプ40を介して湯HWや蒸気Sが飲料抽出容器25に供給される。
【0053】
なお、給湯パイプ19は、背部箱体10Aの加熱ヒーター18から上部箱体10Cの蓋体30内に亘って引き回されており、その途中に分岐部27を有する。そして、分岐部27には、分岐パイプ27aの一端が連結され、分岐パイプ27aの他端は、給水タンク15の上部に連結される(図8参照)。
【0054】
また、分岐パイプ27aの途中には、第1の電磁弁28が配設され、更に、分岐部27と加熱ヒーター18との間の給湯パイプ19には、第2の電磁弁29が配設される(図8参照)。なお、第1の電磁弁28及び第2の電磁弁29は、背部箱体10Aと上部箱体10Cのいずれかの内部空間に配置されることになる。
【0055】
そして、上部箱体10Cと背部箱体10Aと底部箱体10Bとの間の左側の空間は、サーバー載置空間10Dにされており、当該サーバー載置空間10Dには、図1から4に示すように、サーバー14(カップであっても良い)が載置される。サーバー載置空間10Dにサーバー14が載置されると、サーバー14内には飲料抽出容器25で抽出されたコーヒーが押出工程時に吐出孔68より押し出される。
【0056】
また、上部箱体10Cと背部箱体10Aと底部箱体10Bとの間の右側の空間は、給水タンク設置空間10Eにされており、図1、2、4に示すように、給水タンク設置空間10Eには、給水タンク15が配置される。
【0057】
給水タンク15は、給水タンク15を手前側から後方に押し込んで装着し、後方から前方に引き出して水を補給することになる。そして、給水タンク15を手前側から後方に押し込んで装着すると、給水タンク15の後端下方に設けられる図示しない短い長さの第1の管部分が、同じく図示しない給水パイプ20の先端に連結されるパッキンに嵌合して、給水タンク15の下方と給水パイプ20とを連結する。
【0058】
また、給水タンク15の後端上方には、図示しない短い長さの第2の管部分が設けられており、給水タンク15が押し込まれると当該第2の管部分は、分岐パイプ27a(図8参照)の先端に連結される図示しないパッキンに嵌合して、給水タンク15の内部上方と分岐パイプ27aとを連通する。その結果、押出工程後に第1の電磁弁28が開すると給水タンク15内の空気を飲料抽出容器25に送って飲料抽出容器25内を即座に大気圧状態にする。なお、その時、飲料抽出容器25からの蒸気等が給水タンク15に送られることになるが、給水タンク15内で水に戻るため安全である。
【0059】
給水タンク15が装着されると、給水タンク15内の水Wは、上記第1の管部分及び給水パイプ20を介して、背部箱体10A内の下方に設けられる送水ポンプ17に送られる。
【0060】
加熱ヒーター18は、背部箱体10A内で送水ポンプ17の上方に設けられ、給水パイプ20を介して送水ポンプ17に連結されている。そのため、送水ポンプ17で送られる水Wは、加熱ヒーター18に送られて湯HWや蒸気Sになり、給湯パイプ19を介して飲料抽出容器25に送られることになる。
【0061】
なお、加熱ヒーター18は、例えば、水管の周りをヒーター管が囲むようにして構成されるもので、水管内に流れる水をヒーター管のヒーターによって早急に加熱することができるものである。
【0062】
蓋体30は、例えば平面視楕円形の部材で、ヒンジ部33を支点にして上下動自在にされており、開放時には全体が立設する状態になり(図4参照)、閉鎖時には飲料抽出容器25の上部に位置する。
【0063】
蓋体30は、ほぼ水平形状の内板31と断面略ハット形の外板32を有し、それらの間に内部空間30aを形成している。内部空間30aには、蓋体30を開閉するロック機構を有する。
【0064】
ロック機構は、ロック解除レバー34、ロック解除レバー34を上方に押し上げる上動ばね36、梃子部材37、係止爪38及び係止片39を有する。
【0065】
ロック解除レバー34は、蓋体30の上面に設けられる平面視矩形状の薄板であり(図2参照)、その下面中央には、突起部34aが垂下し、更に下面後方には上動ばね36の上端が当接している。
【0066】
ロック解除レバー34の後方側を押し下げると、ロック解除レバー34の後方側は、上動ばね36の力に抗して下方に移動する。ロック解除レバー34の後方側が下動すると、ロック解除レバー34の下面に設けられる突起部34aが梃子部材37の後方側の端部を下方に押す。
【0067】
梃子部材37の後方側の端部が下方に押されると、梃子部材37は、中央部に設けられるヒンジ37aを支点にして図3で時計方向に回動する。梃子部材37が時計方向に回動すると、梃子部材37の前方側の端部に形成される係止爪38が、上部箱体10C側に形成される係止片39との係合を解除する。
【0068】
そこで、ロック解除レバー34の前方側の端部に指を掛けて蓋体30を上方に押し上げると、蓋体30は、後方側にあるヒンジ部33を支点にして後方側に上動して飲料抽出容器25の上面を開放し、飲料抽出容器25の上方への取り出しを可能にする(図4参照)。
【0069】
蓋体30の閉鎖は、蓋体30を前方側に倒して上方から力を加えることにより行われる。即ち、蓋体30の閉鎖は、蓋体30を前方側に倒して上方から力を加えると、梃子部材37の係止爪38が上部箱体10C側の係止片39に強制的に係合することにより行われる。
【0070】
また、蓋体30の内板31の中央には、図5に示すように、内板31を上下に貫通する供給パイプ40が内板31と一体に形成されている(別体であってもよい)。そして、供給パイプ40上端には、給湯パイプ19の端部が嵌合され、供給パイプ40の下端には、円筒状のパッキン部材35が嵌合される(図4も参照)。
【0071】
供給パイプ40の最下端部は、閉鎖されており、最下端部の若干上方には、左右方向に開口する2個のパイプ穴40a、40aを有する(2個より多くてもよい)。
【0072】
そして、蓋体30が閉鎖されると、パッキン部材35は、内板31と、飲料抽出容器25のシリンダキャップ50とで上下から押されて、その下端は、シリンダキャップ50の上面に形成されるキャップ開孔51を囲むように圧接され、図5に示すように、最下端が内側に入り込み、中央部が外方に広がるようなまんじゅう形状のパッキン空間35aを形成する。
【0073】
この状態で抽出動作が開始されると、湯HWや蒸気Sは、矢印1で示すように、給湯パイプ19より直線状に速い速度で供給パイプ40に送られる。供給パイプ40に送られる湯HWや蒸気Sは、供給パイプ40の最下端の閉鎖部に衝突して速度が低下する。速度が低下した湯HWや蒸気Sは、方向を変えて矢印2で示すように、2個のパイプ穴40a、40aを通って左右に広がった状態でパッキン空間35a内に流入する。
【0074】
パッキン空間35aに流入した湯HWや蒸気Sは、矢印3で示すように、パッキン空間35a内でかき混ぜられ、更に速度を落とした状態になる。その後、湯HWや蒸気Sは、矢印4で示すように、キャップ開孔51より飲料抽出容器25内に広がった状態で流入する。
【0075】
従来、この部分に散水部を設けて湯HWや蒸気Sを広げ且つ速度を落とした状態で供給していた。すると散水部を設ける分、構造が複雑になったり且つコストが高騰したりするが、上記のような構造にすることにより構造を簡略化することができ、且つコストを低減することができる。
【0076】
ところで、上部箱体10Cには、飲料抽出容器25が正しくコーヒーメーカー10に取り付けられ、蓋体30が正しく閉じられているかを同時に検知することができるスイッチ手段41が設けられている。
【0077】
このスイッチ手段41は、上部箱体10Cの前方側に取り付けられている(図3参照)。その取り付け形態は、立設し且つその上端が上部箱体10Cの上面より上方に飛び出る形態であり、その取付位置は、蓋体30の内板31の下方であって、且つ飲料抽出容器25のシリンダキャップ50に設けられる取手53の下方である。なお、スイッチ手段41は、図示しないバネにより上下動自在にされている。
【0078】
そのため、シリンダキャップ50を取り付けた飲料抽出容器25が挿入用筒体13内に収容され、シリンダキャップ50に設けられる取手53が前方側に倒されて蓋体30が上方から押されて閉じられると、蓋体30の内板31の下面は、シリンダキャップ50の取手53の上面を下方に押す。
【0079】
すると、取手53の下面は、スイッチ手段41を下方に押し下げる。その結果、蓋体30は完全に閉蓋するとともに、スイッチ手段41がオン(即ち、通電する。)し、送水ポンプ17及び加熱ヒーター18等への通電が開始される。
【0080】
飲料抽出容器25について説明する。飲料抽出容器25は、図6にその断面図を示し、図7にその分解斜視図を示す。
【0081】
飲料抽出容器25は、中心となる筒状のシリンダ本体45と、シリンダ本体45の上端開口部46aに嵌合固定されるシリンダキャップ50と、シリンダ本体45の下方内部に取り付けられるフィルタ部材55と、シリンダ本体45の下端外周部に取り付けられる液溜部65と、を有する。
【0082】
シリンダ本体45は、上下が開口した筒状の樹脂製部材であり、上端部に上端開口部46aを有する筒状の本体部46と、本体部46の上端の上部フランジ部47と、本体部46の下部に位置する小径部48を有する。
【0083】
上部フランジ部47は、本体部46の上端開口部46aから外方に水平に突き出た平面視リング状の部分であり、径方向の対向する箇所に2箇所の切欠部47a、47aを有し、2箇所の切欠部47a、47aのそれぞれの中央部には、外方に突き出た係合突起47b、47bを有する。
【0084】
小径部48は、本体部46の径より小さい径の筒状で且つ上下の長さが短い部分である。そして、本体部46の内周面と、小径部48の内周面との間には、水平で且つ平面視リング状の段部49を有する(図6参照)。
【0085】
また、小径部48は、その外周に雄ネジ48bを有するとともに、その内周に120度間隔で3個のヘリコイド係合片48a、48a、48aを有する(1個のみを図6に示す。)。この3個のヘリコイド係合片48a、48a、48aのそれぞれは、フィルタ部材55の外周の3個のヘリコイド係合溝60、60、60のそれぞれに係合する。
【0086】
シリンダキャップ50は、円盤状のステンレス製部材であり、中央部は山状に盛り上がるとともに、頂上の水平部分には上下に貫通した円形のキャップ開孔51を有する。また、シリンダキャップ50の上面の径方向に対向する箇所には、それぞれロック支持部材52A、52Aが取り付けられている。
【0087】
ロック支持部材52Aは、それぞれ中央部が外方に向かって切り掛かれた切欠部52Aa、52Aaを有する平面視コ字状の樹脂製部材であり、それぞれの切欠部52Aa、52Aa内には、下記のロック部材52、52の根本部52c、52cが嵌入する。
【0088】
なお、それぞれの切欠部52Aa、52Aa内に下記のロック部材52、52の根本部52c、52cが嵌入すると、それぞれの切欠部52Aa、52Aaを横切るように軸52b、52bが取り付けられる。すると、それぞれのロック部材52、52は、それぞれの根本部52c、52cが切欠部52Aa、52Aa内に嵌入する形態で軸支されることになる。
【0089】
ロック部材52、52は、略矩形状の樹脂製の部材であり、長辺上の一側面部には、一体形成される棒状の根本部52c、52cを有し、その中央部には、矩形状のロック溝52a、52aを有する。なお、棒状の根本部52cの中心部には、軸52bが挿通可能な図示しない挿通口を有する。
【0090】
上記したように、ロック部材52、52の根本部52c、52cは、ロック支持部材52A、52Aのそれぞれの切欠部52Aa、52Aa内に嵌入し、水平な軸52b、52bに軸支される。
【0091】
ロック部材52、52の根本部52c、52cが軸支されると、ロック部材52、52は、それぞれの軸52b、52bを中心に上下に回動可能である。そして、ロック部材52、52を下方に回動することにより、ロック溝52a、52aをシリンダ本体45の係合突起47b、47bのそれぞれに係合し、上方に回動することにより、ロック溝52a、52aをシリンダ本体45の係合突起47b、47bのそれぞれから離脱してシリンダキャップ50を取り外すことになる。
【0092】
また、シリンダキャップ50の上面のロック支持部材52Aとキャップ開孔51との間には、半円弧状の樹脂製の取手53が取り付けられる。取手53は、それぞれの端部53b、53bに、外方に突き出た図示しない軸部を有しており、この軸部をロック支持部材52A、52Aの内側壁に軸支することにより回動自在にされている(図7の最上図参照)。
【0093】
また、取手53は、その中央部に外方に突き出たコ字状の把持部53aを有しており、この把持部53aを持って取手53を起こし、上方に引き上げることにより飲料抽出容器25を挿入用筒体13から取り出すことになる。
【0094】
なお、取手53を前方側へ倒すと把持部53aの下方にスイッチ手段41が位置する。そして、蓋体30を完全に閉鎖すると、把持部53aの下面がスイッチ手段41を下方に押すことになる。
【0095】
シリンダキャップ50は、その下面にシリコン製の環状パッキン54が嵌合されている。そして、シリンダキャップ50がシリンダ本体45の上端開口部46a内に嵌合されると、環状パッキン54は、上端開口部46aの内周面と、上部フランジ部47の上面に当接し、シリンダ本体45内を密閉する。
【0096】
フィルタ部材55は、筒状部56と、上部フランジ57とを有する樹脂製の筒状部材であり、シリンダ本体45内に挿入されて脱着可能に支持される。そのため、筒状部56の外径は、シリンダ本体45の小径部48の内径より小さくされ、上部フランジ57の外径は、シリンダ本体45の本体部46の内径より小さいが、小径部48の内径より大きくされており、フィルタ部材55がシリンダ本体45内に挿入されると、上部フランジ57の下面がシリンダ本体45内の段部49の上面に載置する(図6参照)。
【0097】
筒状部56は、内部に水平で且つ十字状のフィルタ枠58を有する。フィルタ枠58は、上下の2層構造からなり、各層間にステンレス製のメッシュ部材59を挟み込むような形態で筒状部56と一体形成される。
【0098】
また、筒状部56の外周には、120度間隔で3個のヘリコイド係合溝60、60、60を有する。そして、3個のヘリコイド係合溝60、60、60のそれぞれには、シリンダ本体45の小径部48の内周面に形成される3個のヘリコイド係合片48a、48a、48aのそれぞれが係合する。
【0099】
液溜部65は、有底本体部66と、漏斗状底板67を有する樹脂製の部材であり、その内周部に雌ネジ70を有する。
【0100】
漏斗状底板67は、有底本体部66内周面の中央部の少し下方に一体成形される漏斗状の底部材であり、その最下端には、上下方向に開口した吐出孔68を有し、更に吐出孔68より径方向に少し離れた位置に上下方向に突出した空気導入管69が立設する。この空気導入管69は、押出工程時に、外部より空気を導入して液溜部65内が真空にならないようにするもので、吐出孔68からのコーヒーの注出を良好にする。
【0101】
飲料抽出容器25の組立は、以下のように行われる。まず、フィルタ部材55をシリンダ本体45の上方からシリンダ本体45内に挿入し、フィルタ部材55を中心軸を中心に回動して、筒状部56外周面の3個のヘリコイド係合溝60、60、60のそれぞれを、シリンダ本体45の小径部48内周面の3個のヘリコイド係合片48a、48a、48aのそれぞれに係合する。
【0102】
すると、フィルタ部材55は、上部フランジ57の下面がシリンダ本体45内の段部49の上面に載置した状態で固定される。なお、取り外す場合は、フィルタ部材55を逆方向に回動してシリンダ本体45との係合を解除する。そして、フィルタ部材55を上方に引き上げてシリンダ本体45の上端開口部46aより取り出すことになる。
【0103】
次いで、フィルタ部材55の上部に上端開口部46aより必要量のコーヒー粉を入れる。そして、シリンダ本体45の上端開口部46aにシリンダキャップ50を置き、シリンダキャップ50を下方に押し下げる。すると、シリンダキャップ50の下面の環状パッキン54が上端開口部46aに入り込んで上端開口部46aの上面と内周面とに密着し、シリンダ本体45内は密封される。
【0104】
その後、左右のロック部材52、52を軸52b、52bを中心にして下方に回動し、それぞれのロック部材52、52のロック溝52a、52aを、シリンダ本体45の左右の係合突起47b、47bのそれぞれに係合してシリンダキャップ50をシリンダ本体45に固定する。その結果、飲料抽出容器25が完成する。なお、取手53は、図6のように倒すことになるが、倒すと把持部53aは、コーヒーメーカー10の前方側に位置し、その下方には、スイッチ手段41が位置することになる。
【0105】
その後、コーヒーメーカー10の蓋体30を開放し、飲料抽出容器25を、上部箱体10C内の挿入用筒体13に挿入する(図4参照)。飲料抽出容器25を、挿入用筒体13内に挿入すると、把持部53aは、スイッチ手段41により少し上方に押し上げられ傾斜状態になる。
【0106】
その後、蓋体30を上方から押すと、傾斜状態の把持部53aは、下方に押されてスイッチ手段41を下方に押す。すると、蓋体30の係止爪38が上部箱体10Cの係止片39に係合して蓋体30は完全に閉蓋する。その結果、送水ポンプ17及び加熱ヒーター18などへの通電が可能になる。
【0107】
即ち、挿入用筒体13に飲料抽出容器25が挿入されていない場合や、蓋体30が完全に閉鎖されていない場合は、送水ポンプ17及び加熱ヒーター18などは駆動しない。スイッチ手段41は、電源スイッチでもあり、コーヒーメーカー10の安全装置でもある。
【0108】
コーヒーメーカー10の動作について図8から図10により説明する。なお、図8は、飲料抽出装置の制御システム図であり、図9は、図8の飲料抽出制御を示すフローチャートであり、図10は、図9のフローチャートの飲料抽出制御に対応したタイムチャートである。
【0109】
必要量のコーヒー粉Cを入れた飲料抽出容器25を所定の箇所に収納後、コンセント挿入後、スイッチ手段41がオンされた状態でスタートボタンが押されると、制御動作を開始する(ステップS1)。そして、先ず予熱工程に入り、制御装置22は、加熱ヒータ―18を駆動、即ち、オンして予熱制御を実行する(ステップS2)。なお、加熱ヒーター18には、ヒーター温検出センサー21b(サーミスタ)が設けられており、該ヒーター温検出センサー21bにより加熱ヒーター18の温度を検出する。
【0110】
また、同時に第2の電磁弁29がオンし、給湯パイプ19が連通状態になる。なお、第2の電磁弁29は、制御装置22の制御が終了するか、または制御途中で蓋体30が解放されるかして電源がオフになるまでは、そのままの状態を維持する。
【0111】
そして、加熱ヒーター18をオンした後、ヒーター温検出センサー21bにより加熱ヒーター18の温度が例えば110℃程度まで上昇したことが検出されると、加熱ヒーター18をオンしたまま予熱工程(ステップS2)を終了する一方、送水ポンプ17をオンして蒸らし工程(ステップS3)を行う。なお、送水ポンプ17がオンされると同時に第1の電磁弁28がオンして分岐パイプ27aを閉鎖する。
【0112】
蒸らし工程(ステップS3)では、制御装置22は、加熱ヒーター18をオンしたまま送水ポンプ17を例えば3秒間程度オンし、給水タンク15内の水Wを送水ポンプ17により加熱可能な状態になった加熱ヒーター18に少量供給して沸騰状態にまで加熱する。その結果、沸騰状態になった湯HWと蒸気Sは、給湯パイプ19を通って、蓋体30内の供給パイプ40に供給される。
【0113】
供給パイプ40に供給される湯HWと蒸気Sは、パッキン部材35によって形成されるパッキン空間35aで拡散し且つ速度を落としてキャップ開孔51より飲料抽出容器25内に供給され、シリンダ本体45内のコーヒー粉Cの上層部から下層部までの全体に亘って十分に浸透する。なお、この場合、飲料抽出容器25に入れられるコーヒー粉Cは、抽出すべきカップ分に相当する量、例えば、4杯分抽出しようとする場合は、4杯分に相当する量である。
【0114】
制御装置22は、送水ポンプ17の駆動時間であるオン時間が経過すると、同時点で送水ポンプ17と、加熱ヒーター18とをオフし、同状態を所定の設定時間、例えば、12秒維持する(即ち、待機工程を実行する)。
【0115】
なお、送水ポンプ17と加熱ヒーター18とがオフすると、同時に第1の電磁弁28もオフして分岐パイプ27aを開放することになる。ところで、この第1の電磁弁28の開動作は必ずしも必要でないため省略してもよい。
【0116】
送水ポンプ17と加熱ヒーター18とが所定の設定時間オフすると、飲料抽出容器25内のコーヒー粉Cは、密閉空間内で全体が均一に蒸らされ、湯および蒸気を含んで重量が増し、或る程度膨潤状態になる。そして、所定時間が経過すると、抽出工程を実行する(ステップS4)。
【0117】
抽出工程は、給湯パイプ19を介して飲料抽出容器25に湯HWを連続的に送給する給湯工程であり、給湯工程での時間は、給湯量によることになる。なお、給湯量は、例えば4杯分のコーヒーを抽出する場合には、4杯分のコーヒーを抽出できる量であり、その全量をこの抽出工程で給湯することになる。
【0118】
抽出工程では、制御装置22は、加熱ヒーター18と、送水ポンプ17と、第1の電磁弁28とを共にオンすることによって、所定温度、所定量の湯HWを飲料抽出容器25に送給する。そして、第1の電磁弁28は閉して分岐パイプ27aを閉鎖することになる。
【0119】
コーヒー粉Cは、蒸らし工程において十分蒸らされ、湯HW及び蒸気Sを含んで重量が増している。このため、抽出工程では、コーヒー粉Cは、湯HWに対して浮き上がることなく、沈み易くなっている。従って、湯HWが注がれることで飲料抽出容器25内で効率良く上下に対流し、下層部と上層部が効果的に混合撹拌される。
【0120】
しかも、コーヒー粉Cは、蒸らし工程で蒸らされて湯HWおよび蒸気Sを含んで膨潤しているから、湯HWを吸入しやすくなっており、コーヒー粉Cから均一かつ効果的に抽出を行なうことができる。
【0121】
なお、抽出工程では、コーヒーの一部はシリンダ本体45内に滞留し、一部は液溜部65より吐出孔68を通してサーバー内に滴下する。
【0122】
また、抽出工程では、終了直前に加熱ヒーター18をオフする(但し、送水ポンプ17はオンのままである。)。このようにすることにより、抽出工程の終了直後に飲料抽出容器25内に送られる湯量や蒸気量が低減し、以後の工程への悪影響が低減する。
【0123】
抽出工程が終了すると、制御装置22は、待機工程を実行する(ステップS5)。待機工程は、加熱ヒーター18及び送水ポンプ17をオンしない工程で、抽出工程での抽出時間を長くして、コーヒー粉Cのすべてに対して一層効果的に湯HWを浸潤させるものであり、コーヒー粉Cから溶出し難いコクや苦みの成分をより容易に取り出すことができる。その結果、味のバラツキが少ないコーヒーを抽出することができる。
【0124】
また、待機工程では、第1の電磁弁28も同時にオフし、分岐パイプ27aを連通することになる。ところで、この第1の電磁弁28の開動作も必ずしも必要でないため省略してもよい。
【0125】
待機工程が終了すると、制御装置22は、第1回目の押出工程1を実行する(ステップS6)。
【0126】
1回目の押出工程1では、制御装置22は、まず加熱ヒーター18を所定時間(例えば、9秒)オンし、第1の電磁弁28をオフすることにより予熱を行う。即ち、図10の加熱工程が実行される。そして、第1の電磁弁28がオフの間、分岐パイプ27aを開放することになる。ところで、この第1の電磁弁28の開動作は必ずしも必要でないため省略してもよい。
【0127】
次いで、送水ポンプ17と第1の電磁弁28とをオンし、少量の水を加熱ヒーター18に送り込む。これにより水が蒸気となり、飲料抽出容器25が蒸気で満たされる。即ち、図10の蒸気工程が実行される。そして、第1の電磁弁28がオンすると、分岐パイプ27aは閉鎖することになる。
【0128】
すると、抽出工程で抽出された抽出液であるコーヒーは、その上面が蒸気の圧力で押されることになる。その結果、押されたコーヒーは、メッシュ部材59で不純物が取り除かれて液溜部65に至り、液溜部65の最下端の吐出孔68からサーバー14内に注出される。なお、この場合押し出されるコーヒーは抽出されたうちの一部である。
【0129】
この時の送水ポンプ17の動作は、例えば、オンオフを複数回(例えば、3回であり、全体の時間は11秒である。)繰り返すことにより行われる。このような駆動方法を採用すると、加熱ヒーター18に供給する単位時間当たりの水量が連続駆動の場合に比べて少なくなり、相対的に加熱ヒーター18の加熱度が高まるので、蒸気の発生量が増え、飲料抽出容器25内の圧力が高まって、コーヒーの押し出し機能が向上する。
【0130】
蒸気工程が終了すると、加熱ヒーター18と、送水ポンプ17と、第1の電磁弁28とを共にオフする待機工程が実行される。待機工程における所定時間は、コーヒー粉の量、種類、湯量等によって予め設定しておくとよい。
【0131】
そして、第1の電磁弁28がオフすることにより飲料抽出容器25内の圧力を大気圧状態にするとともに(ステップS7)、この状態は、2回目の押出工程2の加熱工程まで続行する。ところで、図9のステップS7の「大気開放工程」は、図10の1回目の押出工程1の「待機工程」が相当し、図9のステップS9の「大気開放工程」は、図10の2回目の押出工程2の「待機工程」が相当する。
【0132】
1回目の押出工程1が終了すると、制御装置22は、2回目の押出工程2を実行する(ステップS8)。2回目の押出工程2は、1回目と同様に、加熱ヒーター18のみをオンする加熱工程と、送水ポンプ17及び第1の電磁弁28をオンして、蒸気を飲料抽出容器25に送る蒸気工程と、加熱ヒーター18と、送水ポンプ17と、第1の電磁弁28とを共にオフする待機工程とを有する。
【0133】
2回目の押出工程2では、制御装置22は、加熱ヒーター18を所定時間(例えば、9秒)オンし、送水ポンプ17と第1の電磁弁28とを同時にオフすることにより、加熱ヒーター18で蒸気を発生させる。即ち、図10の加熱工程が実行される。そして、第1の電磁弁28がオフの間、分岐パイプ27aは連通することになる。
【0134】
次いで、加熱ヒーター18をオフし、送水ポンプ17と第1の電磁弁28とをオンすることにより、加熱ヒーター18で発生した蒸気を飲料抽出容器25に供給する。即ち、図10の蒸気工程が実行される。そして、第1の電磁弁28がオンすると、分岐パイプ27aは閉鎖されることになる。
【0135】
すると、1回目の押出工程1で押し出されなかったコーヒーは、その上面が蒸気の圧力で押されることになる。その結果、押されたコーヒーは、メッシュ部材59で不純物が取り除かれて液溜部65に至り、液溜部65の最下端の吐出孔68よりサーバー14内に注出される。
【0136】
また、送水ポンプ17は、1回目と同様に、例えば、オンオフを複数回(例えば、3回であり、全体の時間は11秒である。)繰り返すことにより行われる。上記したように、このような駆動方法を採用すると、加熱ヒーター18部分に供給する単位時間当たりの水の量が連続駆動の場合に比べて少なくなり、相対的に加熱ヒーター18の加熱度が高まるので、蒸気の発生量が増え、飲料抽出容器25内の圧力が高まって、コーヒーの押し出し機能が向上する。
【0137】
蒸気工程が終了すると、加熱ヒーター18と、送水ポンプ17と、第1の電磁弁28とを共にオフする待機工程が実行される。待機工程における所定時間は、やはりコーヒー粉の量、種類、湯量等によって予め設定しておくとよい。
【0138】
そして、第1の電磁弁28がオフすることにより飲料抽出容器25内の圧力を大気圧状態にするとともに(ステップS9)、この状態は、3回目の押出工程3の加熱工程まで続けられる。なお、押出工程の繰り返しの回数は、杯数によりあらかじめ設定されており、設定回数が終了した時点で制御が終了することになる。
【0139】
2回目の押出工程2が終了すると、制御装置22は、図10に記載される3回目の押出工程3(必要ならばそれ以降の押出工程も)を実行することになる。しかしながら、それらの押出工程は、1回目の押出工程1及び2回目の押出工程2と同じであるため省略する。なお、2回目の押出工程2で終了する場合は、2回目の押出工程2の待機工程が大気開放工程になり、この大気開放工程により、押出工程2の終了直後の蓋体の開放が容易になり、更には蓋体開放時に蒸気が噴き出ることもなくなる。
【0140】
これらの結果、押出工程を繰り返す場合、各押出工程後に飲料抽出容器内の圧力をほぼ大気圧にすることができるため、コーヒーメーカーから全てのコーヒーを的確且つ確実に注出することができる。
【0141】
以上の実施の形態では、飲料抽出装置の一例としてコーヒーメーカーに適用した場合を説明したが、コーヒーメーカーのみに限らず、これに類する各種の飲料抽出装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0142】
10・・・コーヒーメーカー
15・・・ 給水タンク
17・・・送水ポンプ
18・・・加熱ヒーター
19・・・給湯パイプ
20・・・給水パイプ
22・・・制御装置
25・・・飲料抽出容器
27・・・分岐部
28・・・第1の電磁弁
29・・・第2の電磁弁
22・・・分岐パイプ
30・・・蓋体
45・・・シリンダ本体
50・・・シリンダキャップ
55・・・フィルタ部材
65・・・液溜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10