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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】電気機器のシール構造
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/21 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
A47J27/21 101Q
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019098635
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020192017
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家中 達朗
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000228(JP,A)
【文献】特開2015-33484(JP,A)
【文献】中国実用新案第205083317(CN,U)
【文献】実開昭51-139858(JP,U)
【文献】実開平04-122895(JP,U)
【文献】実開昭49-095362(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/21
A47J 41/00
B65D 47/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上縁に注ぎ口を具える容器本体と、
容器本体を塞ぐ蓋体であって、前記注ぎ口と前記容器本体を連通する前記蓋体内に設けられた注湯通路と、前記蓋体の内部に形成され、前記容器本体と連通する蒸気室と、前記蒸気室と容器本体を連通する排水孔を具え、前記注湯通路と前記排水孔は、スライド可能な弁板に装着されたシール部により塞がれる、
電気機器の蓋体シール構造であって、
前記シール部は、前記注湯通路を塞ぐ栓シールと、前記排水孔を塞ぐ排水孔シールを有し、前記栓シールと前記排水孔シールとの間には、凹みが形成されている、
ことを特徴とする電気機器のシール構造。
【請求項2】
前記シール部は、円盤状の弁板に嵌まるシール本体を有し、前記栓シールは、前記シール本体の外周に円環状に形成され、前記排水孔シールは、前記シール本体から内向きに突設されており、前記栓シールと前記シール本体との間に前記凹みが形成されている、
請求項1に記載の電気機器のシール構造。
【請求項3】
前記栓シールは、前記排水孔シールよりも肉厚を薄く形成している、
請求項1又は請求項2に記載の電気機器のシール構造。
【請求項4】
前記電気機器は、電気ケトルである、
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電気機器の蓋体のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ケトルなどの液体を加熱し沸騰させる電気機器に用いられるシール構造に関するものであり、より詳細には、蓋体に形成された注湯通路と蒸気室の排水孔の両方を同時にシールするシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気ケトルでは、加熱手段を具えたケトル本体を電源台に載置し、電源台からケトル本体に給電を行ない、加熱手段に通電している(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
電気ケトルは、水が注入される容器本体の上縁に注ぎ口を有し、注ぎ口と対向する周縁に取っ手が配置されている。容器本体は蓋体により塞がれており、蓋体には容器本体と注ぎ口とを連通する注湯通路が形成されている。
【0004】
また、蓋体には、容器本体内で加熱により生じる蒸気を流入させて結露(液化)させる蒸気室が設けられている。蒸気室には、容器本体と連通可能な排水孔が形成されており、蒸気室内の結露水は、蒸気室に設けられた排水孔に集められる。
【0005】
蓋体には、蓋体に設けられた蓋ボタンの操作に連動して上下動する弁板が設けられており、弁板には、注湯通路をシールする栓シールと排水孔をシールする排水孔シールを具えるシール部が装着されている。そして、蓋ボタンの操作により弁板を押し下げることでシールが解除され、容器本体と注湯通路が連通する。このとき、排水孔に溜まっていた結露水は、容器本体に戻される。また、この状態でケトル本体を前方に傾けることで湯を注出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6265225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
栓シールと排水孔シールは、1つのシール部から形成されている。栓シールは、注湯通路を構成する通路壁に栓シールが押圧されて液密性を確保する。また、排水孔シールは、排水孔を構成する孔壁に押圧されて液密性を確保する。
【0008】
栓シール及び排水孔シールは、それぞれ通路壁、孔壁に押圧されて撓み変形する。この変形が他方のシールを歪めてしまうことがある。その結果、栓シールと注湯通路のシール性が低下することがある。また、排水孔シールから蒸気室及び排水孔内の水が注湯通路に漏れ出てしまうことがある。
【0009】
そして、ケトル本体を傾けたり、蓋体を取り外してひっくり返したりしたときに、水や湯が注ぎ口等から零れてしまうことがある。
【0010】
本発明の目的は、注湯通路に連通する注湯通路と排水孔をシールするシール部のシール性を向上することのできる電気機器のシール構造及びこれを具えた電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電気機器のシール構造は、
上縁に注ぎ口を具える容器本体と、
容器本体を塞ぐ蓋体であって、前記注ぎ口と前記容器本体を連通する前記蓋体内に設けられた注湯通路と、前記蓋体の内部に形成され、前記容器本体と連通する蒸気室と、前記蒸気室と容器本体を連通する排水孔を具え、前記注湯通路と前記排水孔は、スライド可能な弁板に装着されたシール部により塞がれる、
電気機器の蓋体シール構造であって、
前記シール部は、前記注湯通路を塞ぐ栓シールと、前記排水孔を塞ぐ排水孔シールを有し、前記栓シールと前記排水孔シールとの間には、凹みが形成されている。
【0012】
前記シール部は、円盤状の弁板に嵌まるシール本体を有し、前記栓シールは、前記シール本体の外周に円環状に形成され、前記排水孔シールは、前記シール本体から内向きに突設されており、前記栓シールと前記シール本体との間に前記凹みが形成されていることが望ましい。
【0013】
前記栓シールは、前記排水孔シールよりも肉厚を薄く形成することが望ましい。
【0014】
前記電気機器は、電気ケトルとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電気機器のシール構造によれば、シール部は、栓シールと排水孔シールとの間に凹み設けている。そして、栓シールが注湯通路の通路壁に押圧されて撓み変形したとしても、凹みが撓み変形の影響を吸収する。また、排水孔シールが孔壁に押圧されて撓み変形したとしても、凹みが撓み変形の影響を吸収する。従って、栓シール、排水孔シール間に撓み変形の影響はほとんど及ばないから、シール部は、そのシール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、電気ケトルの斜視図である。
図2図2は、電気ケトルの右側面図である。
図3図3は、電気ケトルの正面図である。
図4図4は、図2の線A-Aに沿う断面図である。
図5図5は、図2の線B-Bに沿う断面図である。
図6図6は、図2の線C-Cに沿うケトル本体の断面図である。
図7図7は、電気ケトルの内部構成を示す斜視断面図である。
図8図8は、図3の線D-Dに沿う断面図である。
図9図9は、蓋体の斜視図である。
図10図10は、蓋体の背面図である。
図11図11は、図9の線H-Hに沿う断面図である。
図12図12は、図9の線I-Iに沿う断面図である。
図13図13は、図10の線J-Jに沿う断面図である。
図14図14は、シール部の斜視図である。
図15図15は、図14の線K-Kに沿う断面図である。
図16図16は、図11の丸囲み部Lの拡大図であって、(a)は凹みのないシール部、(b)は凹みを有するシール部により注湯空間及び排水孔をシールした拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照しながら本発明の電気機器について説明を行なう。なお、以下では、電気機器としてヤカン型の電気湯沸かし器である電気ケトル10を例示して説明を行なうが、電気機器は、電気ケトル10に限らず、ポットやコーヒーメーカーなどの家電製品などであってもよい。また、説明する電気ケトル10は、ケトル本体20を電源台110に載置可能な構成としているが、電源台110は電気機器と一体に構成されているものであってもよいことは勿論である。
【0018】
概略構成として、電気ケトル10は、図1乃至図3に示すように、ヤカン型のケトル本体20とケトル本体20に装着される蓋体50、ケトル本体20が載置される電源台110を具える。
【0019】
ケトル本体20は、図4乃至図8に示すように、外装カバー30と、外装カバー30の内側に水を入れる容器本体40を嵌めた二重構造を採用できる。外装カバー30及び容器本体40には、図8に示すように、上縁前方に容器本体40内から連続する注ぎ口21が外向きに膨らんで形成されている。また、外装カバー30は、注ぎ口21と対向する背面側に取っ手22が設けられている。図8に示すように、取っ手22には、後述するスイッチ23や蒸気検知機構70の一部が配置されている。
【0020】
容器本体40は、外装カバー30に略沿う内面形状を有しており、底面にはステンレス製の底板41が配置されている。底板41の下方にはヒーターなどの加熱手段42が配置されている。ケトル本体20の底面の中央には、受電端子44を有する受電部43が凹設されている。
【0021】
ケトル本体20の受電部43は、図4等に示すように、皿状の載置面111を有する電源台110に載置されて電源供給を受ける。電源台110は、載置面111の略中央に、受電部43の受電端子44と電気的に接続可能な給電端子113を具える給電部112が突設されている。そして、電源台110にケトル本体20を載置した際に、受電部43に給電部112が嵌まり、受電端子44と給電端子113が電気的に接続される。給電端子113は、図示しない電源コードを介して商用電源に接続される。
【0022】
また、容器本体40は、図4乃至図8に示すように、中央よりやや上部に内向きにフランジ45が突設されており、蓋体50のシールパッキン53が当接可能となっている。
【0023】
容器本体40は、図7及び図8に示すように、上記したフランジ45よりも高い位置に、蒸気検知機構70が配置されている。蒸気検知機構70は、容器本体40に開設された蒸気入口71及び蒸気入口71の上側に開設された蒸気出口72を有し、容器本体40の外側で蒸気入口71と蒸気出口72を蒸気通路73で繋いで構成される。蒸気通路73には、バイメタルスイッチなどの蒸気検知手段74を具え、容器本体40内の水が沸騰すると、蒸気入口71から蒸気通路73に蒸気が侵入し、バイメタルスイッチと連動してスイッチ23をオフに切り替えるようにしている。
【0024】
図示の蒸気入口71及び蒸気出口72は、外周を囲うように蒸気孔シール75が装着されており、後述する蓋体50の蓋体本体51に設けられた蓋体側蒸気入口82と蓋体側蒸気入口82に蒸気孔シール75が密着することで連通可能としている。
【0025】
上記構成のケトル本体20は、容器本体40の上縁側に蓋体50が装着される。蓋体50は、図示の実施形態では、ケトル本体20に着脱可能であるが、ヒンジ等により開閉可能な構成とすることもできる。
【0026】
蓋体50は、図4乃至図6図8に示すように、上方が拡径した周壁52を有する蓋体本体51と、蓋体カバー54を具え、容器本体40の上縁に着脱可能に嵌まる。蓋体本体51は、周壁52の下縁に環状にシールパッキン53が装着されており、蓋体50を容器本体40の上縁に挿入した状態で、シールパッキン53は、容器本体40の内面とフランジ45に当接し、容器本体40を液密に維持する。
【0027】
蓋体カバー54は、蓋体本体51の上面を覆っており、図4図5図9乃至図12に示すように、容器本体40の係合受部47に係合可能な係合爪55を先端に具えるレバー56,56が左右方向に対向して配置されている。レバー56,56は、バネ57,57により外向きに付勢されており、係合爪55は周壁52を貫通して突出し、係合受部47に係合した状態から、レバー56,56をバネ57,57の付勢力に抗して中央側に接近させることで、係合爪55,55が後退して係合受部47から外れ、蓋体50を取り外し可能となっている。
【0028】
また、レバー56,56間には、図9図12及び図13等に示すように、蓋ボタン60が配置されている。蓋ボタン60は、弁板62を具える中子61に連繋されている。蓋ボタン60は、バネ63により上向きに付勢されており、押下されることで下方に移動して停止し、再度押下されることで上方に移動する構成を具備している。
【0029】
蓋体本体51には、図13に示すように、下面側のやや前寄りに短円筒状の注湯空間91が円環状の通路壁92により区画されている。注湯空間91は、斜め上方に注湯路93が形成されており、注湯路93は、注ぎ口21にて開口している。注湯空間91と注湯路93により注湯通路90が構成される。
【0030】
注湯空間91の上面は、図11乃至図13に示すように、水平壁94が形成されており、水平壁94の上部には、蒸気室カバー80で塞がれた蒸気室81が形成されている。蒸気室81は、容器本体40からの蒸気が流入し、結露する。蒸気室81は、図11及び図16(b)に示すように、注湯空間91と連通する排水孔84が形成されており、結露により生じた水は、排水孔84を通じて排出可能となっている。具体的には、排水孔84は、注湯空間91の通路壁92の内側に形成されており、排水孔84は、下向きに凸の立壁86を具える孔壁85により区画されている。
【0031】
蒸気室81は、図8図10及び図13に示すように、注湯路93とは逆側の後方側の周壁52に蒸気室入口83が形成されている。蒸気室入口83は、容器本体40の蒸気出口72と連通する大きさ、形状である。また、蒸気室入口83の直下には、容器本体40の蒸気入口71と連通する大きさ、形状の蓋体側蒸気入口82が形成されている。
【0032】
然して、容器本体40内で発生した蒸気は、蓋体側蒸気入口82から蒸気入口71を通って蒸気通路73に侵入し、蒸気検知手段74を作動させて、蒸気出口72から蓋体50の蒸気室入口83を通過し、蒸気室81に侵入する。蒸気室81に侵入した蒸気は、蒸気室81内で結露し、排水孔84側に流れる。
【0033】
注湯空間91及び排水孔84は、図11乃至図13に示すように、中子61に装着されたシール部100により塞がれる。中子61は、注湯空間91の内径と略同じ外径を有する円盤状の弁板62と、弁板62から上向きに突設された弁棒64を具える。弁棒64の上端は、水平壁94及び蒸気室カバー80を貫通して上向きに延びており、上端が蓋ボタン60にネジ止め66されている。
【0034】
なお、本実施形態では、図13に示すように、注湯空間91を蓋体本体51のやや前方寄りに設けているから、弁板62の中心から弁棒64を突設すると、弁棒64が前方寄りに位置してしまう。その結果、蓋ボタン60も蓋体カバー54の前方寄りの位置に設ける必要があり、レバー56,56の配置との関係でデザイン上好ましくない。このため、弁棒64は、弁板62のやや後方寄り、すなわち、蓋体カバー54の中心に突設している。弁棒64を弁板62の中心からズレた位置に配置しているから、弁棒64を上下動させたときに、弁板62が傾き、平行にスライドできない虞がある。そこで、本実施形態では、弁棒64の前方に弁棒64と平行にガイド棒65を立設している。また、ガイド棒65は、水平壁94に上向きに凹設されたガイド孔67にスライド可能に嵌まっている。
【0035】
シール部100は、図11乃至図13、さらには、図14及び図15に示すように、弁板62の外周に嵌まる円環状のパッキンである。シール部100は、環状のシール本体101とシール本体101の外周側に形成された栓シール103及びシール本体101の内周に突設された排水孔シール104を具える。シール本体101は、内周側に溝102が形成されており、溝102を弁板62の外周に嵌めることで弁板62に装着される。また、シール本体101は、外周側が通路壁92の内周側に当接可能となっている。シール部100は、容器本体40と注湯通路90を液密に遮断し、また、容器本体40と蒸気室81とを液密に遮断する重要な部材である。
【0036】
栓シール103は、シール本体101の外周側で、通路壁92の外周側と当接する環状のシールである。栓シール103は、通路壁92への押圧力を高めるために図14及び図15に示すようにやや上向きに形成されており、また、栓シール103の可撓性を高めて通路壁92への密着性を良好とするために、シール本体101や排水孔シール104よりも薄く形成している。
【0037】
従って、シール本体101と栓シール103を通路壁92に密着させると、図11の丸囲み部Lの拡大図16(a)に示すように、斜め上向きに形成された栓シール103が下向きに押され、栓シール103とシール本体101との間に撓みが発生する虞がある。この撓みは、シール部100のシール性を低下させてしまう。その結果、図16(a)の矢印Uに示すように排水孔84から水や湯が逆流し、注ぎ口21から外部に零れてしまう。そこで、本実施形態では、図14及び図15に示すように、シール本体101と栓シール103との間に凹み105を形成している。凹み105を形成することで、栓シール103が通路壁92に当接したときに、図16(b)に示すように、栓シール103は、通路壁92に密着しつつ、凹み105部分を基端として下向きに撓み、その撓みの影響は、凹み105で吸収されてシール本体101や排水孔シール104の変形を防止できる。従って、栓シール103とシール本体101、排水孔シール104はそれぞれ良好なシール性を具備することができる。
【0038】
排水孔シール104は、排水孔84の位置に合わせて、シール本体101の内側に出っ張って形成されている。排水孔84には、図11の丸囲み部Lの拡大図16(b)に示すように、孔壁85に下向きに凸の立壁86が形成されており、排水孔シール104は、密着状態において立壁86が排水孔シール104に埋没するよう変形する。これにより排水孔シール104のシール性を可及的に高めることができ、蓋ボタン60を押下操作しない限り、蒸気室81の排水孔84は注湯空間91や容器本体40とは連通しない構成としている。これにより、ケトル本体20を転倒させたときに、容器本体40から排水孔84を通って水又は湯が逆流し、外部に零れないようにすることができる。
【0039】
上記構成の電気ケトル10は、蓋体50のレバー56,56を摘まんで接近させ、蓋体50を取り外し、容器本体40内に水を注入する。
【0040】
続いて、蓋体50は、上縁に押し下げて装着する。このとき、蓋体50は図11乃至図13に示すように、蓋ボタン60を上昇位置に移動させておき、シール部100は、押し上げられた弁板62により栓シール103とシール本体101が通路壁92に密着し、排水孔シール104が排水孔84を塞いだ状態としておく。シール部100は、シール本体101と栓シール103との間に凹み105が形成されているから栓シール103が通路壁92に密着した状態でシール本体101や排水孔シール104が変形せず、通路壁92と良好な密着状態を維持する。また、排水孔シール104には、排水孔84の立壁86が埋没して良好な密着状態を維持する。
【0041】
この状態で、電源台110は、電源コードを商用電源に接続し、電源台110にケトル本体20を載置する。続いて、取っ手22のスイッチ23を押下する。これにより、給電端子113から受電端子44を介して加熱手段42に電源が供給されて、加熱手段42が水を加熱し沸騰させる。
【0042】
水が沸騰すると、容器本体40内に蒸気が発生する。容器本体40は、シールパッキン53及び弁板62のシール部100により気密状態が維持されているから、発生した蒸気は、図8に矢印Vで示すように、蓋体50の周壁52に形成された蓋体側蒸気入口82から蒸気入口71を通って蒸気通路73に侵入する。蒸気通路73には、蒸気検知手段74が配置されているから、蒸気が蒸気検知手段74を作動させてスイッチ23を押し上げてオフにする。これにより、加熱手段42による加熱が止まる。
【0043】
また、蒸気通路73に流入した蒸気は、蒸気出口72から蓋体50の蒸気室入口83を通過し、蒸気室81に侵入する。そして、蒸気室81に侵入した蒸気は、蒸気室81内で結露し、排水孔84側に流れて溜まる。
【0044】
そして、ユーザーは、取っ手22を掴んでケトル本体20を持ち上げ、蓋体50の蓋ボタン60を押下することで、弁板62及びシール部100が降下し、注湯空間91及び排水孔84が開放する。このとき、蒸気室81、すなわち、排水孔84に溜まっている結露水は、排水孔84から落下して容器本体40に戻る。また、この状態で、ケトル本体20を前方に傾けることで、容器本体40の湯は、注湯空間91に連通する注湯路93を通って注ぎ口21から放出される。
【0045】
注湯が終わると、蓋ボタン60を押下すると、バネ63の付勢力により弁板62及びシール部100が上昇し、注湯空間91及び排水孔84を塞ぐ。そして、ケトル本体20を電源台110に戻せばよい。
【0046】
一方、水や湯が容器本体40に入っている状態で、誤ってケトル本体20を転倒させてしまうことがある。本発明の実施形態によるケトル本体20は、上記のとおり、排水孔84は排水孔シール104によりシールされている。従って、万一ケトル本体20を転倒させてしまい、蒸気入口82,71から蒸気通路73、蒸気出口72、蒸気室入口83を通って蒸気室81に水や湯が流れ込んでも外部に流れ出ることはなく、また、容器本体40の水や湯が排水孔84を通じて外部に零れ出ることもない。さらに、注湯通路90である注湯空間91は、栓シール103及びシール本体101によりシールされており、凹み105により撓み変形は抑えられているから、シール性は確保され、容器本体40から注湯路93に水や湯が流れ出ることはない。
【0047】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
10 電気ケトル
20 ケトル本体
22 取っ手
30 外装カバー
40 容器本体
50 蓋体
70 蒸気検知機構
100 シール部
101 シール本体
103 栓シール
104 排水孔シール
105 凹み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16