(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
A47J27/00 109G
(21)【出願番号】P 2019098866
(22)【出願日】2019-05-27
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 洋史
(72)【発明者】
【氏名】和泉 修壮
【審査官】松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-17711(JP,A)
【文献】特開2019-76661(JP,A)
【文献】特開2015-202186(JP,A)
【文献】特開2012-161631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-27/13
A47J 27/20-29/06
A47J 33/00-36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端に位置する底部と上端に位置する開口部とを有する内釜と、
前記内釜の開口部を封止する内蓋と、
前記内釜を加熱する加熱部と、
前記内釜と前記内蓋とによって形成された炊飯空間を、前記底部に接し、調理物が収容される空間である小炊飯空間と、前記内蓋に接し、前記小炊飯空間の上側に位置する空間である非炊飯空間とに区画する中蓋と、
予め設定されたプログラムに従って炊飯動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置によって、
前記小炊飯空間に投入した炊飯物と水とを加熱しながら、前記炊飯物に前記水を所定の第1工程時間の間吸水させる吸水工程と、
前記吸水工程の後で、前記小炊飯空間において前記炊飯物に吸水された水以外の前記水がなくなるまで前記炊飯物を所定の第2工程時間の間加熱する昇温工程と、
前記昇温工程の後で、前記小炊飯空間に前記炊飯物に吸水された水以外の前記水がない状態で、前記炊飯物を所定の第3工程時間の間加熱する炊上げ工程と、
前記炊上げ工程の後で、前記炊上げ工程よりも火力を落として前記炊飯物を所定の第4工程時間の間加熱する追炊き工程と、
前記追炊き工程の後で、前記追炊き工程よりも火力を落として前記炊飯物を所定の第5工程時間の間加熱するむらし工程、のそれぞれの工程に応じた前記プログラムに従って前記加熱部を駆動する炊飯器であって、
前記中蓋を使用する少量炊飯モードに対応する前記プログラムである少量炊飯用プログラムを備え、
前記少量炊飯用プログラムにおいて、
前記炊上げ工程の前記第3工程時間を、
前記昇温工程の前記第2工程時間より短くした、
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記少量炊飯用プログラムにおいて、
前記昇温工程における前記炊上げ工程の直前に、前記昇温工程におけるそれ以前の工程よりも前記加熱部による単位時間当たりの加熱量が大きい後期昇温工程、を設定し、
前記炊上げ工程の前記第3工程時間を、
前記後期昇温工程の工程時間より短くした、
ことを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記少量炊飯用プログラムにおいて、
前記炊上げ工程における前記昇温工程の直後に、前記炊上げ工程におけるそれ以後の工程よりも前記加熱部による単位時間当たりの加熱量が大きい初期炊上げ工程、を設定した、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記少量炊飯用プログラムにおいて、
前記初期炊上げ工程の直前に、前記後期昇温工程、を設定し、
前記初期炊上げ工程における前記加熱部による単位時間当たりの加熱量を、
前記後期昇温工程における前記加熱部による単位時間当たりの加熱量よりも大きくした、
ことを特徴とする請求項3に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記加熱部は、前記内釜の底部を加熱するメインヒータを含み、
前記少量炊飯用プログラムにおいて、
前記追炊き工程の前記第4工程時間を前期と後期に分けた場合に、前記後期のデューティ比を前記前期のデューティ比に対して低下させる
ことを特徴とする請求項1~請求項4の何れか一項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記少量炊飯用プログラムにおいて、
前記むらし工程の前記第5工程時間を、
前記炊上げ工程の前記第3工程時間より長くした、
ことを特徴とする請求項1~請求項5の何れか一項に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記内釜がセラミック製である、
ことを特徴とする請求項1~請求項6の何れか一項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炊飯器は、より美味しい御飯を食べたいというニーズに応えるために、種々の改良が加えられている。例えば、特許文献1に記載の如くである。また、従来の炊飯器には、炊飯用の内釜をセラミック製(土鍋)としたものもあり、土鍋で炊いたような美味しい御飯を炊くことができるという特徴を有している。例えば、特許文献2、3に記載の如くである。
【0003】
食事の度に食べる分だけ御飯を炊き、いつも炊き立ての御飯を食べることは、より美味しい御飯を食べるための方法として有効である。しかしながら、特許文献1~3に示された従来の炊飯器では、最大炊飯量(5合炊きや5.5合炊き)に近い量の御飯を炊く場合には、良好な炊飯結果を得る(即ち、御飯を美味しく炊く)ことができるものの、1合程度の少量の御飯を炊いた場合には、最大炊飯量で炊いた場合に比べて御飯の味が落ちるという課題がある。つまり、従来の炊飯器では、1合程度の少量の御飯を美味しく炊き上げることが困難であった。このため従来は、より美味しい御飯を食べるために少量の御飯を炊く場合には、炊飯器ではない手段を採用することが多い。しかしながら、例えば土鍋を用いて直火で炊飯する場合には火加減が難しく、毎回同じ食味の御飯を炊くことが困難である。また、土鍋を用いて直火で炊飯する場合、短時間に高火力で炊き上げることで、美味しい御飯を得ることができるが、1合程度の少量炊飯を行う場合には、高火力にするとおこげが付きすぎるおそれがあるため、少量の御飯を美味しく炊き上げるためには、それに適した火加減を実現する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-201667号公報
【文献】特開2015-217151号公報
【文献】特開2015-226593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、斯かる現状の課題に鑑みてなされたものであり、最大炊飯量に比して少ない1合程度の少量の御飯を美味しく炊き上げることができる炊飯器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る炊飯器は、下端に位置する底部と上端に位置する開口部とを有する内釜と、
前記内釜の開口部を封止する内蓋と、前記内釜を加熱する加熱部と、前記内釜と前記内蓋とによって形成された炊飯空間を、前記底部に接し、調理物が収容される空間である小炊飯空間と、前記内蓋に接し、前記小炊飯空間の上側に位置する空間である非炊飯空間とに区画する中蓋と、予め設定されたプログラムに従って炊飯動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置によって、前記小炊飯空間に投入した炊飯物と水とを加熱しながら、前記炊飯物に前記水を所定の第1工程時間の間吸水させる吸水工程と、前記吸水工程の後で、前記小炊飯空間において前記炊飯物に吸水された水以外の前記水がなくなるまで前記炊飯物を所定の第2工程時間の間加熱する昇温工程と、前記昇温工程の後で、前記小炊飯空間に前記炊飯物に吸水された水以外の前記水がない状態で、前記炊飯物を所定の第3工程時間の間加熱する炊上げ工程と、前記炊上げ工程の後で、前記炊上げ工程よりも火力を落として前記炊飯物を所定の第4工程時間の間加熱する追炊き工程と、前記追炊き工程の後で、前記追炊き工程よりも火力を落として前記炊飯物を所定の第5工程時間の間加熱するむらし工程、のそれぞれの工程に応じた前記プログラムに従って前記加熱部を駆動する炊飯器であって、前記中蓋を使用する少量炊飯モードに対応する前記プログラムである少量炊飯用プログラムを備え、前記少量炊飯用プログラムにおいて、前記炊上げ工程の前記第3工程時間を、前記昇温工程の前記第2工程時間より短くしたものである。
【0007】
このような構成の炊飯器によれば、中蓋を使用して内釜容量に対して少ない少量炊飯を行う場合に、昇温工程で水分を無くした後の炊上げ工程において、水分を無くしてからの加熱時間を短くすることで、御飯の焦げ付きを防止することができ、これにより、少量炊飯でありながら、程よくおこげが出来た美味しい御飯を炊き上げることができる。
【0008】
本発明は、前記少量炊飯用プログラムにおいて、前記昇温工程における前記炊上げ工程の直前に、前記昇温工程におけるそれ以前の工程よりも前記加熱部による単位時間当たりの加熱量が大きい後期昇温工程、を設定し、前記炊上げ工程の前記第3工程時間を、前記後期昇温工程の工程時間より短くすると好適である。
【0009】
本構成によれば、炊上げ工程で一気に火力を上げることで、おこげが付きすぎないようにすることができる。おこげが固くなりすぎると、食べられないものとなってしまうが、本構成によれば、おこげが固くなりすぎることがなく、確実に食べることができるおこげが得られる。
【0010】
本発明は、前記少量炊飯用プログラムにおいて、前記炊上げ工程における前記昇温工程の直後に、前記炊上げ工程におけるそれ以後の工程よりも前記加熱部による単位時間当たりの加熱量が大きい初期炊上げ工程、を設定すると好適である。
【0011】
本構成によれば、炊上げ工程の初期により一気に火力を上げることで、おこげが固くなりすぎることを確実に防止することができる。また、本構成によれば、中蓋によって、炊上げ工程の初期で一気に炊飯物を沸騰状態としても吹きこぼれることがなく、炊飯物を短時間で炊き締めることができる。これにより、外側はしゃっきりとし、内側はもっちりとした御飯を炊き上げることができる。
【0012】
本発明は、前記少量炊飯用プログラムにおいて、前記初期炊上げ工程の直前に、前記後期昇温工程、を設定し、前記初期炊上げ工程における前記加熱部による単位時間当たりの加熱量を、前記後期昇温工程における前記加熱部による単位時間当たりの加熱量よりも大きくすると好適である。
【0013】
本構成によれば、中蓋を使用する少量炊飯時において、炊上げ工程の初期で一気に炊飯物を沸騰状態とし、炊飯物を短時間で炊き締めることができる。これにより、外側はしゃっきりとし、内側はもっちりとした御飯を炊き上げることができる。
【0014】
本発明において、前記加熱部は、前記内釜の底部を加熱するメインヒータを含み、前記少量炊飯用プログラムにおいて、前記追炊き工程の前記第4工程時間を前期と後期に分けた場合に、前記後期のデューティ比を前記前期のデューティ比に対して低下させると好適である。
【0015】
本構成によれば、追炊き工程において段階を分けて火力を下げることにより、おこげを必要なだけ付けつつも、炊飯物におこげが過度に形成されたりおこげを通り越して焦げたりしてしまうことを好適に抑制できる。
【0016】
本発明は、前記少量炊飯用プログラムにおいて、前記むらし工程の前記第5工程時間を、前記炊上げ工程の前記第3工程時間より長くすると好適である。
【0017】
本構成によれば、むらし工程の時間を炊上げ工程の時間よりも長くとることで、御飯の甘味をより引き出すことができるため、より美味しい御飯を炊き上げることができる。
【0018】
本発明において、前記内釜がセラミック製であると好適である。
【0019】
本構成によれば、セラミック製の内釜(所謂土鍋)に中蓋を使用して内釜容量に対して少ない少量炊飯を行う場合に、程よくおこげが出来た美味しい御飯を炊き上げることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の炊飯器によれば、内釜容量に対して少ない少量炊飯であっても、自動的に美味しい御飯を炊き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】内釜および中蓋を備えた炊飯器を示す右側面断面図。
【
図3】炊飯器の蓋部(内蓋を着けた状態)を示す底面図。
【
図4】炊飯器の蓋部(内蓋を外した状態)を示す底面図。
【
図7】内釜を示す図、(A)平面図、(B)
図7(A)におけるA-A矢視断面図。
【
図8】中蓋を示す図、(A)平面図、(B)側面図。
【
図10】中蓋を示す断面図、(A)
図8(A)におけるB-B矢視断面図、(B)
図8(A)におけるC-C矢視断面図。
【
図11】内釜と中蓋との組み合わせ状態を示す平面図。
【
図12】内釜と中蓋との組み合わせ状態を示す断面図、(A)
図11におけるD-D矢視断面図、(B)
図11におけるE-E矢視断面図。
【
図13】内釜と中蓋との組み合わせによる炊飯空間の形成状態を示す断面図、(A)中蓋なしの場合の炊飯空間を示す図、(B)中蓋ありの場合の炊飯空間を示す図。
【
図15】少量炊飯モードにおける吸水工程の工程フロー図。
【
図16】少量炊飯モードにおける昇温工程の工程フロー図。
【
図17】少量炊飯モードにおける炊上げ工程の工程フロー図。
【
図18】少量炊飯モードにおける追炊き工程の工程フロー図。
【
図19】少量炊飯モードにおけるむらし工程の工程フロー図。
【
図20】少量炊飯モードにおけるむらし工程の別実施形態に係る工程フロー図。
【
図21】少量炊飯モードによる炊飯時の各工程における炊飯物の温度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[炊飯器の全体構成]
図1および
図2に示す炊飯器1は、本発明に係る炊飯器の一実施形態であり、炊飯器本体2と蓋体3を備えている。なお、説明の便宜上、炊飯器1に対して、
図1および
図2に示した矢印のように、前後方向、左右方向、および上下方向を規定している。また、以下の説明における、前、後、左、右、上、下等の記載は、炊飯器1を構成する各部が、炊飯器1が使用される際の所定位置に組み付けられている状態を基準として向きを表している。
【0023】
炊飯器本体2は、炊飯器1の外殻の一部を構成する部位であり、蓋体3の下方に配置され、内釜(後述する内釜4)を収容するための空間を形成する。蓋体3は、炊飯器1の外殻の一部を構成する部位であり、炊飯器本体2の上方に配置されて、炊飯器本体2の内部に形成された内釜の収容空間を封止可能に構成されている。
【0024】
炊飯器1は、
図2および
図3に示すように、内釜4、容器部材5、加熱部6、内蓋7、中蓋8、制御装置9を備えている。容器部材5と加熱部6の一部、および制御装置9は、炊飯器本体2の内部に収容されている。炊飯器本体2に収容された容器部材5は、内釜4を保温または蓄熱するための容器状に構成された部材であり、炊飯器本体2における内釜4を収容するための空間の一部を構成している。また、加熱部6の一部は、蓋体3の内部に収容されている。内蓋7は、蓋体3の下面(炊飯器1の炊飯時に内部に位置する側の面)に配置されている。
【0025】
蓋体3は、ヒンジ3aを備えている。蓋体3は、炊飯器本体2の後端上部にヒンジ3aを介して連結されており、前後方向および略上下方向を向く姿勢の間で回動可能に構成されている。
【0026】
内釜4は、炊飯器1における御飯を炊くための空間(以下、炊飯空間と呼ぶ)の一部を構成する部位であり、炊飯器本体2に収容された状態で使用される。また、炊飯器1では、内釜4の内部に配置して使用する中蓋8を備えている。炊飯空間は、調理物(例えば、米と水)を加熱調理するための空間であり、調理中において調理物が対流可能な空間となっている。なお、炊飯器1の炊飯空間は、御飯以外の調理物を加熱調理することも可能である。
【0027】
加熱部6は、内釜4を加熱するための手段であり、メインヒータ6a・6b、側面ヒータ6c、肩ヒータ6d、蓋ヒータ6eにより構成している。メインヒータ6a・6bは、一連のメインヒータを構成しており、第一のメインヒータ6aが容器部材5の下方に配置され、第二のメインヒータ6bが容器部材5の底部5aと側部5bとの間を繋ぐ湾曲部5cの裏側に配置されている。また、加熱部6は、側面ヒータ6cが容器部材5の側部5bの裏側に配置され、肩ヒータ6dが炊飯器本体2の上端近傍の肩部に配置され、蓋ヒータ6eが蓋体3の内部に配置されている。
【0028】
加熱部6は、メインヒータ6aで容器部材5の底部5aを誘導加熱し、メインヒータ6bで容器部材5の湾曲部5cを誘導加熱し、側面ヒータ6cで容器部材5の側部5bを誘導加熱して内釜4を加熱する。また、加熱部6は、肩ヒータ6dで内釜4の上方端部を加熱するとともに、蓋ヒータ6eで内釜4の内部を蓋体3側から加熱することによって、内釜4を加熱する。加熱部6を構成する各ヒータ6a・6b・6c・6d・6eの出力は、ユーザーの設定や制御装置9に予め設定されているプログラム等に応じて、制御装置9によって個別に制御可能である。
【0029】
図2に示すように、内蓋7は、蓋体3の下面に配置されている。そして、内蓋7は、
図3および
図4に示すように、蓋体3に対して着脱可能に構成されている。
図2および
図3に示すように、内蓋7の外周部には、外径方向外側へ延びるリング状の上面シール部7aと、下方へ延びるリング状の側面シール部7bが形成されている。上面シール部7aおよび側面シール部7bは、内蓋7の内釜4との間の隙間を封止するものである。
【0030】
また、蓋体3における内蓋7の内側には、加熱部6の一部を構成する蓋ヒータ6eが配置されている。
【0031】
さらに、
図2、
図3および
図4に示すように、蓋体3は、炊飯時に発生する蒸気を排出するための蒸気排出ユニット13を備えている。蒸気排出ユニット13は、大小2つの蒸気排出口13a・13bを備えている。各蒸気排出口13a・13bは、内蓋7の下面に開口されており、蓋体3の内部に形成されている排気通路3bを介して、蓋体3の上面に形成されている蒸気口3cに連通している。
【0032】
蒸気排出ユニット13は、各蒸気排出口13a・13bを開閉する弁体13c・13dを備えており、制御装置9(
図5参照)からの信号に基づいて弁体13c・13dを変位させることによって、各蒸気排出口13a・13bを開閉できるように構成されている。また、蒸気排出ユニット13の一部は、内蓋7に設けられている。内蓋7は、蓋体3に対して着脱可能に構成されており、
図4に示すように内蓋7を外した状態では、排気通路3b中に配置した蓋センサ12が露出される。
【0033】
そして、炊飯器1では、炊飯器本体2に内釜4が収容された状態で蓋体3を閉めると、内釜4の上端部4fに内蓋7の上面シール部7aが当接するとともに、内釜4の内周部に側面シール部7bが当接し、内釜4の上部開口が内蓋7によって封止される。このとき、内釜4と内蓋7によって、炊飯器1における炊飯空間(後述する炊飯空間CA)が形成される。
【0034】
図5に示すように、制御装置9は、炊飯器1の炊飯動作を制御する装置であり、所謂マイコンにより構成されている。制御装置9は、加熱部6、操作部10、センタセンサ11、蓋センサ12、蒸気排出ユニット13等と接続されている。
【0035】
図1および
図5に示すように、操作部10は、ユーザーが炊飯器1に対して操作指示を行うための部位であり、操作スイッチ10a、表示部10b、報知部10cを備えている。ユーザーは、操作スイッチ10aを操作することによって好みの炊き加減等を選択する。具体的には、炊飯器1は、1合の御飯を美味しく炊き上げることができる少量炊飯モードを備えており、少量炊飯モードを選択するときには、中蓋8で、炊飯空間を区画して、少量炊飯に適したより小さい炊飯空間において御飯を調理する。表示部10bは、ユーザーによる炊き加減の選択状況や炊飯の進行状況等を表示可能な画面により構成されている。報知部10cは、炊き上がりや炊飯器1の異常等を音や表示でユーザーに報知するための部位であり、スピーカや表示ランプ等により構成されている。
【0036】
制御装置9は、ユーザーが操作部10により炊飯モードを選択すると、選択された炊飯モードに応じたプログラムに従って加熱部6の出力を調整する。また、制御装置9には、センタセンサ11や蓋センサ12の検出結果がフィードバックされ、さらに加熱部6への出力を調整する。センタセンサ11は、内釜4の温度を検出する温度センサであり、蓋センサ12は、蒸気排出ユニット13を介して内釜4から放出される気体(蒸気)の温度を検出する温度センサである。
【0037】
[内釜の詳細な構成]
ここで、内釜4について、さらに詳細に説明する。内釜4は、炊飯器1を構成する内釜の第1の実施形態である。
【0038】
図6および
図7に示すように、内釜4は、水および米等の調理物を収容するための有底略円筒状の容器であり、底部4a、側部4b、湾曲部4cを有している。内釜4は、セラミック製である(所謂土鍋である)。内釜4の下端は底部4aによって構成されており、上端には開口部4hが形成されている。内釜4の開口部4hは、内蓋7によって封止可能に構成されている。
【0039】
炊飯器1においては、内釜4がセラミック製であるため、セラミックから放射される輻射熱の作用によって、少量炊飯を行った場合であっても、美味しい御飯を炊き上げることができる。炊飯器1では、土鍋で炊いたような食感の御飯を、火加減を気にすることなく、自動的に炊き上げることができる。なお、炊飯器1は、本実施形態で示したように、内釜4をセラミック製とすることが好適であるが、炊飯器1では、セラミック製以外(例えば金属製)の内釜を使用することもできる。
【0040】
内釜4の側部4bの内周面には、係止部4dが形成されている。係止部4dは、中蓋8を係止するためのリング状の凸部である。内釜4の側部4bの上端部には、鍔部4eおよび上端部4fを形成している。鍔部4eは、ユーザーが内釜4を持つ際の手がかりとなる部位である。上端部4fは、内蓋7の上面シール部7aに当接する部位であり、内釜4の半径方向内側に向けて若干先下がりとなる傾斜を有している。
【0041】
係止部4dの頂部より上側の部位は、内釜4の半径方向内側に向けて先下がりとなる傾斜を有している。このような構成によれば、炊き上がった御飯を保温するときに、係止部4dの上部に存在するツユ(凝縮水)は自然に流れ落ち、係止部4dにおいて溜まることがない。仮に、ツユを溜めてしまうと、溜まったツユが保温中の御飯に落ちることで、御飯の食味を低下させる要因となるが、係止部4dの頂部より上側の部位に傾斜を設けておくことで、このような食味低下を抑制することができる。
【0042】
また、係止部4dは、内釜4を用いて洗米をするときに米の流出を阻止する堰としても機能する。なお、内釜4の内壁部に炊飯水量の目安を表す目盛を設ける場合、係止部4dは、目盛の記載位置よりも上側(即ち、目盛を阻害しない位置)に設けることが好ましい。
【0043】
[中蓋の詳細な構成]
ここで、中蓋8について、さらに詳細に説明する。中蓋8は、炊飯器1を構成する中蓋の第1の実施形態である。
【0044】
図6、
図8、
図9および
図10(A)(B)に示すように、中蓋8は、横板部8aと縦板部8bを有している。横板部8aは略円盤状の部材で構成され、縦板部8bは上方から下方に向けて縮径する筒状の部材で構成されている。中蓋8は、略円盤状の横板部8aの周囲を筒状の縦板部8bで囲むように配置して構成されており、全体として中心Pを有する円形である蓋状の形態を有している。中蓋8は、内釜4と同様にセラミック製である。
【0045】
炊飯器1では、中蓋8をセラミック製とすることで、同じくセラミック製である内釜4と組み合わせた場合に、熱伝導率の差異を無くすことができるため、炊飯時における内釜4との温度差を少なくすることができる。炊飯時における各部の温度差は、ツユが発生する要因となるため、温度差を抑制することでツユの発生が抑制され、これにより、より美味しい御飯を炊き上げることができる。
【0046】
横板部8aは、上面8cと下面8dを有しており、上面8cから上向きに突出させた取手部8eが設けられている。上面8cは、取手部8eとの境界部から半径方向外側に向かって縦板部8bに至るまで先下がりに形成された凸曲面である。縦板部8bの下端は横板部8aの下端よりも下方に位置している。このため、中蓋8の下端には、横板部8aの下面8dと縦板部8bとによって、凹状の部位が形成されている。また、中蓋8の外周部には、縦板部8bの外側の周面によって、略円錐状の側周面8hが形成されている。
【0047】
中蓋8は、横板部8aと縦板部8bの境界近傍に横板部8aを貫通する複数(本実施形態では3箇所)の蒸気孔8fを有している。3箇所の蒸気孔8f・8f・8fは、中蓋8の中心P回りに等間隔(120°ピッチ)となるように配置しており、各蒸気孔8f・8f・8fの間隔を最大としている。蒸気孔8f・8f・8fをこのような配置とすることで、炊飯空間(後述する小炊飯空間)で生じる蒸気を均等に分散させながら放出することが可能になり、御飯の炊きムラを抑制することができる。
【0048】
即ち、本実施形態に示す炊飯器1において、中蓋8は、横板部8aを板厚方向に貫通し、中蓋8の中心P回りに等間隔で形成された複数の蒸気孔8f・8f・8fを有しているため、炊飯空間(後述する小炊飯空間)から均等に蒸気を排出することができ、調理物の炊きムラを低減することができる。
【0049】
また、中蓋8は、蒸気孔8f・8f・8fが、上面8cの最外縁部であり、かつ横板部8aとの境界近傍の位置に形成されている。このような構成の中蓋8では、上面8c上で生じたツユは、上面8c上に溜まらずに外周側に流れ、縦板部8bで堰き止められて、効率良く蒸気孔8f・8f・8fから炊飯空間(後述する小炊飯空間)に戻される。このため、中蓋8を取り外す際に、ミトンを嵌めた手で取手部8eを把持するときに、ミトンの濡れを気にする必要がない。また、上面8cを球面状の曲面とすることによって、各蒸気孔8f・8f・8fへ戻るツユの量を均一に分散させることができる。
【0050】
炊飯器1は、中蓋8の上面8cが凸曲面であるため、上面8cで生じたツユを均等に分散させることができ、ひいては、炊飯空間(後述する小炊飯空間)に戻るツユを均等に分散させることができる。
【0051】
また、炊飯器1は、中蓋8の上面8cが、中蓋8の中心Pから半径方向外側に向けて先下がりに形成されており、複数の蒸気孔8f・8f・8fは、横板部8aの縦板部8bとの境界近傍に形成されているため、ツユを縦板部8bによって堰き止めて横板部8aの外縁部に集めることができる。中蓋8では、その集めたツユを蒸気孔8f・8f・8fから効率良く落とすことができるため、中蓋8の上面8cにツユ溜まりが生じることを回避できる。
【0052】
また、中蓋8は、縦板部8bの上端において、側周面8hから径方向外側へ突出する鍔部8gを有している。鍔部8gは、全体としてリング状の形態を有しており、内釜4の係止部4dの内径寸法に比して大きい外形寸法を有している。炊飯器1では、鍔部8gの外径寸法を係止部4dの内径寸法に比して大きくすることで、中蓋8が係止部4dを越えて内釜4の底部4a側へ脱落してしまうことを防止している。
【0053】
[内釜と中蓋の組み合わせ状態]
図11および
図12に示すように、中蓋8は、鍔部8gを内釜4の係止部4dに係止させることによって、内釜4に対して懸架され、内釜4の上下方向中途部の所定位置に配置される。鍔部8gを係止部4dで係止している状態で、中蓋8の上端は、内釜4の上端以下の位置に配置される。
【0054】
[炊飯空間の説明]
次に、炊飯器1の炊飯空間について説明する。
【0055】
炊飯器1は、中蓋8を使用しない場合、
図13(A)に示すように、内釜4の上部開口を内蓋7で封止することによって、炊飯空間CAが形成される。炊飯空間CAは、内釜4の最大炊飯量に対応する量の調理物(米と水等)を調理することが可能な空間である。炊飯器1は、中蓋8を使用しない場合、炊飯空間CAにおいて炊飯することができ、炊飯空間CA内を米と水が対流しながら加熱調理される。
【0056】
炊飯器1は、中蓋8を使用する場合、
図13(B)に示すように、内釜4と内蓋7で形成された炊飯空間CAを、中蓋8によって、小炊飯空間CA1と非炊飯空間CA2とに区画することができる。小炊飯空間CA1は、炊飯空間CAの下方の一部であり、底部4aに接している。非炊飯空間CA2は、炊飯空間CAの上方の一部であり、内蓋7に接している。
【0057】
図13(B)に示すように、中蓋8は、鍔部8gが係止部4dで係止され、内釜4に対して所定位置に組み合わされたとき、全体が炊飯空間CAの内部に配置される。中蓋8は、炊飯空間CAを下部と上部に区画し、炊飯空間CAよりも容積が小さい小炊飯空間CA1と、基本的には調理に利用しない非炊飯空間CA2と、を形成する。
【0058】
小炊飯空間CA1は、内釜4の最大炊飯量に比して少ない量(例えば、1合)の調理物(米と水等)を調理することに適した空間である。炊飯器1は、中蓋8を使用する場合、小炊飯空間CA1においてのみ炊飯することができ、小炊飯空間CA1内を米と水が対流しながら加熱調理される。また、炊飯器1は、中蓋8を使用する場合、非炊飯空間CA2には調理物を投入せず、小炊飯空間CA1から放出された蒸気が蒸気排出ユニット13に向かう流通経路を構成している。
【0059】
即ち、本実施形態に示す炊飯器1は、下端に位置する底部4aと上端に位置する開口部4hとを有する内釜4と、内釜4の開口部4hを封止する内蓋7と、内釜4を加熱する加熱部6と、を備え、内釜4と内蓋7とによって形成した炊飯空間CAにおいて調理を行うものである。炊飯器1は、炊飯空間CAを、底部4aに接し、調理物が収容される空間である小炊飯空間CA1と、内蓋7に接し、小炊飯空間CA1の上側に位置する空間である非炊飯空間CA2とに区画する中蓋8を備えている。内釜4は、炊飯空間CAの内部となる位置に中蓋8を係止可能な係止部4dが形成されている。そして、中蓋8は、係止部4dに係止されて炊飯空間CAの内部に配置されている。炊飯器1は、このような構成によって、内釜4の容量に対して少ない少量炊飯であっても、自動的に美味しい御飯を炊き上げることを可能にしている。
【0060】
[非炊飯空間の役割]
炊飯器1では、小炊飯空間CA1から中蓋8の蒸気孔8fを通して放出された蒸気が、非炊飯空間CA2を通って蒸気排出ユニット13に導かれる。即ち、炊飯器1は、蒸気の排出経路となる非炊飯空間CA2を有している。非炊飯空間CA2内の蒸気は、中蓋8を上方から加熱することに利用されるため、中蓋8の上面8cや取手部8eに溜まるツユを蒸発させて低減させることができる。
【0061】
なお、本実施形態で示した内釜4および中蓋8は例示であり、炊飯器1で用いる中蓋およびその中蓋に対応した係止部を有する内釜の形態は、これに限定されるものではない。
【0062】
[少量炊飯モードにおける炊飯動作の制御方法]
次に、炊飯器1において少量炊飯モードを選択した場合の炊飯動作の制御方法について説明する。
【0063】
炊飯器1は、ユーザーが操作部10で「少量炊飯モード」を選択し、中蓋8を使用して炊飯を行う場合には、
図14に示すフローに従って炊飯動作を制御する。
図14に示すように、ユーザーが少量炊飯モードを選択したとき、炊飯器1は、制御装置9によって、吸水工程(STEP-100)、昇温工程(STEP-200)、炊上げ工程(STEP-300)、追炊き工程(STEP-400)、むらし工程(STEP-500)の各工程に応じた制御を行って御飯を炊き上げる。
【0064】
吸水工程(STEP-100)は、小炊飯空間CA1に投入した炊飯物たる米と水とを加熱部6で加熱しながら、米に水を所定時間の間吸水させる工程である。炊飯器1では、「少量炊飯モード」を選択した場合の吸水工程(STEP-100)の工程時間(所要時間)をT1としている。
【0065】
昇温工程(STEP-200)は、吸水工程(STEP-100)の後で、小炊飯空間CA1内において、米に吸水された水以外の水がなくなるまで米を所定時間の間加熱する工程である。炊飯器1では、「少量炊飯モード」を選択した場合の昇温工程(STEP-200)の工程時間をT2としている。
【0066】
炊上げ工程(STEP-300)は、昇温工程(STEP-200)の後で、小炊飯空間CA1内において、米に吸水された水以外の水がない状態で、米を所定時間の間加熱する工程である。炊飯器1では、「少量炊飯モード」を選択した場合の炊上げ工程(STEP-300)の工程時間をT3としている。
【0067】
追炊き工程(STEP-400)は、炊上げ工程(STEP-300)の後で、炊上げ工程(STEP-300)よりも火力を落として、米を所定時間の間加熱する工程である。炊飯器1では、「少量炊飯モード」を選択した場合の追炊き工程(STEP-400)の工程時間をT4としている。
【0068】
むらし工程(STEP-500)は、追炊き工程(STEP-400)の後で、追炊き工程(STEP-400)よりも火力を落として、米を所定時間の間加熱する工程である。炊飯器1では、「少量炊飯モード」を選択した場合のむらし工程(STEP-500)の工程時間をT5としている。
【0069】
そして、制御装置9には、上述した各工程の所要時間(即ち、工程時間T1~T5)が、予め設定されている。
【0070】
[吸水工程]
図15に示すように、「少量炊飯モード」による炊飯動作が開始され、吸水工程(STEP-100)に移行すると、まず制御装置9は、センタセンサ11が検知する内釜4の温度に基づく判定を行う(STEP-101)。ステップ(STEP-101)では、センタセンサ11が検知する内釜4の温度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。ここで、センタセンサ11の検知温度が所定の閾値以上でない(判定がNOである)ときは、ステップ(STEP-102)に進み、検知温度が所定の閾値以上である(判定がYESである)ときは、ステップ(STEP-103)に進む。
【0071】
ステップ(STEP-102)では、制御装置9において、メインヒータ6a・6bの出力パラメータが「ヒータ出力:50~70%、デューティ比:0~16」、蓋ヒータ6eの出力パラメータが「デューティ比:6~10」、側面ヒータ6cの出力パラメータが「デューティ比:0~10」、肩ヒータ6dの出力パラメータが「デューティ比:0(OFF)」に設定される。そして、制御装置9に設定された各出力パラメータに基づいて加熱部6が駆動される。
【0072】
なお、ここで示す「デューティ比」は、ある期間においてヒータ出力が継続される期間の割合を示すものである。以下の説明で示す「デューティ比」は、期間を16等分した場合におけるヒータの出力期間を表したものである。以下の説明および参照する各図では、分母にあたる「16」の数字の表記を省略し、「デューティ比:α/16」を「デューティ比:α」と表記する。
【0073】
また、ステップ(STEP-103)では、制御装置9において、メインヒータ6a・6bの出力パラメータが「ヒータ出力:0%(OFF)、デューティ比:0」、蓋ヒータ6eの出力パラメータが「デューティ比:0(OFF)」、側面ヒータ6cの出力パラメータが「デューティ比:0(OFF)」、肩ヒータ6dの出力パラメータが「デューティ比:0(OFF)」に設定される。即ち、ステップ(STEP-103)では、加熱部6による加熱を休止する。
【0074】
ステップ(STEP-102)またはステップ(STEP-103)が完了すると、次に、ステップ(STEP-104)に進む。ステップ(STEP-104)では、吸水工程(STEP-100)が開始されてからの経過時間が所定の閾値(タイマー時間t11)以上であるか否かを判定する。ここで、経過時間がタイマー時間t11以上でない(判定がNOである)ときは、ステップ(STEP-101)へと戻り、経過時間がタイマー時間t11以上である(判定がYESである)ときは、次の昇温工程(STEP-200)に進む。即ち、タイマー時間t11は、吸水工程(STEP-100)の工程時間T1に等しい。
【0075】
[昇温工程]
図16に示すように、昇温工程(STEP-200)に移行されると、ステップ(STEP-201)が開始され、制御装置9において、メインヒータ6a・6bの出力パラメータが「ヒータ出力:60~70%、デューティ比:16」、蓋ヒータ6eの出力パラメータが「デューティ比:0~14」、側面ヒータ6cの出力パラメータが「デューティ比:6~16」、肩ヒータ6dの出力パラメータが「デューティ比:2~10」に設定される。
【0076】
ステップ(STEP-201)が完了すると、次に、蓋センサ12が検知する温度に基づく判定を行う(STEP-202)。ステップ(STEP-202)では、蓋センサ12が検知する蒸気の温度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。ここで、検知温度が所定の閾値以上でない(判定がNOである)ときは、内釜4内の水がまだ沸騰していないと判断してステップ(STEP-201)へと戻り、検知温度が所定の閾値以上である(判定がYESである)ときは、内釜4内の水が沸騰していると判断してステップ(STEP-203)に進む。即ち、加熱部6は、ステップ(STEP-201)において、制御装置9に設定された出力パラメータに基づく駆動状態が、ステップ(STEP-201)が開始されてから蓋センサ12が所定の温度を検知するまで継続される。
【0077】
ステップ(STEP-203)では、制御装置9において、メインヒータ6a・6bの出力パラメータが「ヒータ出力:70~80%、デューティ比:12~16」、蓋ヒータ6eの出力パラメータが「デューティ比:12~16」、側面ヒータ6cの出力パラメータが「デューティ比:8~14」、肩ヒータ6dの出力パラメータが「デューティ比:2~10」に設定される。つまり、ステップ(STEP-203)では、ステップ(STEP-201)における出力パラメータに比べて、メインヒータ6a・6b、蓋ヒータ6e、および側面ヒータ6cに対する各出力パラメータが増大され、加熱部6による加熱量を増大させるように設定される。そして、ステップ(STEP-203)が完了すると、次に、ステップ(STEP-204)に進む。
【0078】
ステップ(STEP-204)では、ステップ(STEP-203)が開始されてからの経過時間が所定の閾値(タイマー時間t21)以上であるか否かを判定する。
【0079】
ステップ(STEP-204)では、ステップ(STEP-203)が開始されてからの経過時間が所定の閾値(タイマー時間t21)以上であるか否かを判定する。加熱部6は、ステップ(STEP-203)において制御装置9に設定された出力パラメータに基づく駆動状態が、ステップ(STEP-203)が開始されてからタイマー時間t21が経過するまで継続される。
【0080】
[炊上げ工程]
図17に示すように、炊上げ工程(STEP-300)に移行されると、ステップ(STEP-301)が開始され、制御装置9において、メインヒータ6a・6bの出力パラメータが「ヒータ出力:80~90%、デューティ比:12~16」、蓋ヒータ6eの出力パラメータが「デューティ比:12~16」、側面ヒータ6cの出力パラメータが「デューティ比:8~14」、肩ヒータ6dの出力パラメータが「デューティ比:2~10」に設定される。つまり、ステップ(STEP-301)では、ステップ(STEP-203)における出力パラメータに比べて、メインヒータ6a・6bに対する出力パラメータがさらに増大され、加熱部6による加熱量を増大させるように設定される。そして、ステップ(STEP-301)が完了すると、次に、ステップ(STEP-302)に進む。
【0081】
ステップ(STEP-302)では、ステップ(STEP-301)が開始されてからの経過時間が所定の閾値(タイマー時間t31)以上であるか否かを判定する。経過時間がタイマー時間t31以上である(判定がYESである)ときは、次のステップ(STEP-303)に進む。即ち、加熱部6は、ステップ(STEP-301)において、制御装置9に設定された出力パラメータに基づく駆動状態が、ステップ(STEP-301)が開始されてからタイマー時間t31が経過するまで継続される。
【0082】
ステップ(STEP-303)では、制御装置9において、メインヒータ6a・6bの出力パラメータが「ヒータ出力:55~65%、デューティ比:0~7」、蓋ヒータ6eの出力パラメータが「デューティ比:12~16」、側面ヒータ6cの出力パラメータが「デューティ比:2~8」、肩ヒータ6dの出力パラメータが「デューティ比:2~10」に設定される。つまり、ステップ(STEP-303)では、ステップ(STEP-301)における出力パラメータに比べて、メインヒータ6a・6bおよび側面ヒータ6cに対する出力パラメータが減少され、加熱部6による加熱量を減少させるように設定される。そして、ステップ(STEP-303)が完了すると、次のステップ(STEP-304)に進む。
【0083】
ステップ(STEP-304)では、ステップ(STEP-303)が開始されてからの経過時間が所定の閾値(タイマー時間t32)以上であるか否かを判定する。経過時間がタイマー時間t32以上である(判定がYESである)ときは、次の追炊き工程(STEP-400)に進む。
【0084】
即ち、炊飯器1では、炊上げ工程(STEP-300)のステップ(STEP-301)における各ヒータの出力パラメータを、それ以後のステップ(STEP-303)における各ヒータの出力パラメータに比べて、メインヒータ6a・6bと側面ヒータ6cの各デューティ比を大きくしている。換言すれば、炊飯器1では、昇温工程(STEP-200)の直後のステップ(STEP-301)における加熱部6による単位時間当たりの加熱量を、炊上げ工程(STEP-300)のそれ以後のステップにおける加熱部6による単位時間当たりの加熱量より大きくしている。
【0085】
炊飯器1では、このような構成とすることで、中蓋8を使用する少量炊飯モード時において、炊上げ工程(STEP-300)の初期で一気に炊飯物を沸騰状態とし、炊飯物を短時間で炊き締めることができる。
【0086】
[追炊き工程]
図18に示すように、追炊き工程(STEP-400)に移行されると、ステップ(STEP-401)が開始され、制御装置9において、メインヒータ6a・6bの出力パラメータがON時「ヒータ出力:50~70%、デューティ比:8~11」、OFF時「ヒータ出力:0%(OFF)、デューティ比:0」、蓋ヒータ6eの出力パラメータが「デューティ比:12~16」、側面ヒータ6cの出力パラメータが「デューティ比:2~8」、肩ヒータ6dの出力パラメータが「デューティ比:2~10」に設定される。つまり、ステップ(STEP-401)では、炊上げ工程(STEP-300)の後期(ステップ(STEP-303))における出力パラメータに比べて、メインヒータ6a・6bに対する出力パラメータをやや減少させて、加熱部6による加熱量を減少させるように設定される。そして、ステップ(STEP-401)が完了すると、次に、ステップ(STEP-402)に進む。
【0087】
ステップ(STEP-402)では、ステップ(STEP-401)が開始されてからの経過時間が所定の閾値(タイマー時間t41)以上であるか否かを判定する。経過時間がタイマー時間t41以上である(判定がYESである)ときは、次のステップ(STEP-403)に進む。つまり、ステップ(STEP-401)の間は、タイマー時間t41が経過するまで、メインヒータ6a・6bのON-OFFを繰り返すように設定される。
【0088】
ステップ(STEP-403)では、制御装置9において、メインヒータ6a・6bの出力パラメータがON時「ヒータ出力:50~70%、デューティ比:4~7」、OFF時「ヒータ出力:0%(OFF)、デューティ比:0」、蓋ヒータ6eの出力パラメータが「デューティ比:12~16」、側面ヒータ6cの出力パラメータが「デューティ比:2~8」、肩ヒータ6dの出力パラメータが「デューティ比:2~10」に設定される。そして、ステップ(STEP-403)が完了すると、次のステップ(STEP-404)に進む。
【0089】
ステップ(STEP-404)では、ステップ(STEP-403)が開始されてからの経過時間が所定の閾値(タイマー時間t42)以上であるか否かを判定する。経過時間がタイマー時間t42以上である(判定がYESである)ときは、次のむらし工程(STEP-500)に進む。つまり、ステップ(STEP-403)の間は、タイマー時間t42が経過するまで、メインヒータ6a・6bのON-OFFを繰り返すように設定される。
【0090】
[むらし工程]
図19に示すように、むらし工程(STEP-500)に移行されると、ステップ(STEP-501)が開始され、制御装置9において、メインヒータ6a・6bの出力パラメータが「ヒータ出力:50~70%、デューティ比:1~5」、蓋ヒータ6eの出力パラメータが「デューティ比:12~16」、側面ヒータ6cの出力パラメータが「デューティ比:2~10」、肩ヒータ6dの出力パラメータが「デューティ比:2~10」に設定される。つまり、ステップ(STEP-501)では、追炊き工程(STEP-400)における出力パラメータに比べて、側面ヒータ6cに対する出力パラメータをやや増大させて、加熱部6による加熱量を若干増大させるように設定される。そして、ステップ(STEP-501)が完了すると、次に、ステップ(STEP-502)に進む。
【0091】
ステップ(STEP-502)では、ステップ(STEP-501)が開始されてからの経過時間が所定の閾値(タイマー時間t51)以上であるか否かを判定する。経過時間がタイマー時間t51以上である(判定がYESである)ときは、次のステップ(STEP-503)に進む。
【0092】
ステップ(STEP-503)では、制御装置9において、メインヒータ6a・6bの出力パラメータが「ヒータ出力:0%(OFF)、デューティ比:0」、蓋ヒータ6eの出力パラメータが「デューティ比:12~16」、側面ヒータ6cの出力パラメータが「デューティ比:2~10」、肩ヒータ6dの出力パラメータが「デューティ比:2~10」に設定される。そして、ステップ(STEP-503)が完了すると、次のステップ(STEP-504)に進む。
【0093】
ステップ(STEP-504)では、ステップ(STEP-503)が開始されてからの経過時間が所定の閾値(タイマー時間t52)以上であるか否かを判定する。経過時間がタイマー時間t52以上である(判定がYESである)ときは、むらし工程(STEP-500)を完了する。
【0094】
炊飯器1は、制御装置9によって、上記各工程に応じた加熱部6の駆動制御を行って、「少量炊飯モード」における炊飯動作を終了する。
【0095】
[むらし工程の別実施形態]
なお、むらし工程は、
図20に示すような別実施形態に係るむらし工程(STEP-550)としてもよい。むらし工程(STEP-550)が開始されると、まず、制御装置9において、メインヒータ6a・6bの出力パラメータが「ヒータ出力:50~70%、デューティ比:1~5」、蓋ヒータ6eの出力パラメータが「デューティ比:12~16」、側面ヒータ6cの出力パラメータが「デューティ比:11~14」、肩ヒータ6dの出力パラメータが「デューティ比:2~10」に設定される(STEP-551)。ステップ(STEP-551)が完了すると、次に、ステップ(STEP-552)に進む。
【0096】
ステップ(STEP-552)では、ステップ(STEP-551)が開始されてからの経過時間が所定の閾値(タイマー時間t53)以上であるか否かを判定する。経過時間がタイマー時間t53以上である(判定がYESである)ときは、次のステップ(STEP-553)に進む。
【0097】
ステップ(STEP-553)では、制御装置9において、メインヒータ6a・6bの出力パラメータが「ヒータ出力:0%(OFF)、デューティ比:0」、蓋ヒータ6eの出力パラメータが「デューティ比:12~16」、側面ヒータ6cの出力パラメータが「デューティ比:11~14」、肩ヒータ6dの出力パラメータが「デューティ比:2~10」に設定される。そして、ステップ(STEP-553)が完了すると、次のステップ(STEP-554)に進む。
【0098】
ステップ(STEP-554)では、ステップ(STEP-553)が開始されてからの経過時間が所定の閾値(タイマー時間t54)以上であるか否かを判定する。経過時間がタイマー時間t54以上である(判定がYESである)ときは、むらし工程(STEP-500)を完了し、「少量炊飯モード」における炊飯動作を終了する。
【0099】
即ち、別実施形態に係るむらし工程(STEP-550)では、むらし工程(STEP-500)に比して、各ステップ(STEP-551、553)における側面ヒータ6cのデューティ比を大きく設定し、側面ヒータ6cによる加熱量を増大させている。ここで、各ステップ(STEP-551、553)における側面ヒータ6cのデューティ比は、前述したむらし工程(STEP-500)の場合に比べて、加熱量が2倍以上となる値に設定することが好ましい。このような構成とすることで、むらし工程(STEP-550)では、むらし工程(STEP-500)の場合よりも中蓋8近傍の内釜4の側面温度を高めることができ、これにより、内釜4による炊飯物に対する遠赤外線効果を高めることができる。すると、むらし工程(STEP-550)においては、御飯の一粒一粒によりしっかりと熱を伝えることができ、これにより、よりふっくらとした甘みのある御飯の炊き上がりを実現することができる。
【0100】
[炊飯物の温度変化]
図21には、少量炊飯モードを選択した場合におけるセンタセンサ11の検知温度Taの変化と、小炊飯空間CA1内の温度Tbの変化を示している。センタセンサ11が検知する温度Taは、内釜4の底部4aの表面温度であり、小炊飯空間CA1内の温度Tbの変化は、センタセンサ11の検知温度の変化に対する応答遅れがある。炊飯器1は、内釜4がセラミック製であるため、金属製の内釜に比して応答遅れがより大きくなることを考慮して、加熱部6の制御シーケンスが設定されている。
【0101】
図15および
図21に示すように、少量炊飯モードによる炊飯が開始され、吸水工程(STEP-100)に移行すると、吸水工程の前期においては、小炊飯空間CA1内の温度Tbが上昇されるとともに、温度Tbが約30℃に維持されるように、制御装置9に設定された出力パラメータに従って加熱部6が駆動される。
【0102】
次に、吸水工程の後期においては、小炊飯空間CA1内の温度Tbをさらに上昇させるように、制御装置9に設定された出力パラメータに従って加熱部6が駆動され、吸水工程(STEP-100)の終了時には、温度Tbが約70℃まで昇温される。炊飯器1の少量炊飯モードの吸水工程(STEP-100)では、このような加熱状況下において、米に吸水させる構成としている。
【0103】
そして、本実施形態に示す炊飯器1では、吸水工程(STEP-100)の工程時間T1を、20分程度としている。
【0104】
次に、
図16および
図21に示すように、昇温工程(STEP-200)に移行すると、昇温工程の前期(ステップ(STEP-201)~ステップ(STEP-202)が対応)においては、小炊飯空間CA1内の温度Tbが約90℃まで昇温されるように、制御装置9に設定された出力パラメータに従って加熱部6が駆動される。
【0105】
そして、前期の昇温工程を終えるタイミングにおいては、制御装置9に設定された出力パラメータに従って、加熱部6の出力をやや抑え、小炊飯空間CA1内の温度Tbの上昇度合いを抑えている。
【0106】
次に、昇温工程の後期(ステップ(STEP-203)~ステップ(STEP-204)が対応)においては、小炊飯空間CA1内の温度Tbを約100℃にまで昇温させるように、制御装置9に設定された出力パラメータに従って、昇温工程の前期よりも単位時間当たりの加熱量を増大させて加熱部6が駆動される。そして、小炊飯空間CA1内の炊飯物(米と水)は、昇温工程(STEP-200)が終了する時点で、米に吸水されている水以外の水がなくなった状態(所謂ドライアップした状態)とされる。
【0107】
なお、本実施形態に示す炊飯器1では、昇温工程(STEP-200)の工程時間T2を、6~7分程度としている。また、炊飯器1では、昇温工程(STEP-200)におけるステップ(STEP-204)のタイマー時間t21を、4分程度としている。
【0108】
次に、炊上げ工程(STEP-300)に移行すると、炊上げ工程の初期(ステップ(STEP-301)~ステップ(STEP-302)が対応)においては、小炊飯空間CA1内の温度Tbを、短時間(30~40秒程度)で一気に約110℃まで昇温させるように、制御装置9に設定された出力パラメータに従って加熱部6が駆動される。
【0109】
このように、炊上げ工程(STEP-300)の初期(初期炊上げ工程とも呼ぶ)において一気に火力を上げることで、おこげが固くなりすぎることが防止できる。また、炊飯器1の「少量炊飯モード」では中蓋8を用いているため、中蓋8を使用しない場合に比べて火力を上げても吹きこぼれが生じることがない。このため、炊飯器1では、炊上げ工程(STEP-300)の初期で一気に炊飯物が沸騰状態となるように火力を上げることができ、炊飯物を短時間で炊き締めることができる。これにより、御飯粒の外側はしゃっきりとし、内側はもっちりとした御飯を炊き上げることができる。
【0110】
次に、炊上げ工程の後期(ステップ(STEP-303)~ステップ(STEP-304)に対応)においては、制御装置9に設定された出力パラメータに従って、出力を抑えて加熱部6が駆動される。このとき、小炊飯空間CA1内の温度Tbは、内釜4や中蓋8等への蓄熱効果に起因した応答遅れによってさらに上昇し続け、所定の時間が経過した後、応答遅れに起因する温度上昇が落ち着き、炊上げ工程が終了する時点において、約110℃に維持される。
【0111】
そして、本実施形態に示す炊飯器1では、炊上げ工程(STEP-300)の工程時間T3を、3分程度としている。
【0112】
即ち、炊飯器1では、炊上げ工程(STEP-300)の工程時間T3は、昇温工程(STEP-200)の工程時間T2(約6~7分)より短い時間に設定されており、小炊飯空間CA1内の炊飯物である米は、炊上げ工程(STEP-300)において、3~4分程度の短時間で一気に炊き締められる。
【0113】
また、炊飯器1では、炊上げ工程(STEP-300)の工程時間T3は、昇温工程の後期(ステップ(STEP-203)~ステップ(STEP-204)の工程時間(即ちタイマー時間t21、約4分)よりも短い時間に設定されており、小炊飯空間CA1内の炊飯物である米は、炊上げ工程(STEP-300)において、非常に短時間で一気に炊き締められる。
【0114】
このように構成した炊飯器1によれば、中蓋8を使用して内釜4の容量に対して少ない少量炊飯を行う場合に、炊上げ工程(STEP-300)において、ドライアップ後の加熱時間をより短く設定することで、御飯が焦げ付くことを防止できる。また、炊上げ工程(STEP-300)で一気に火力を上げることで、おこげが付きすぎないようにすることができる。炊上げ工程(STEP-300)を長くすると、おこげが固くなりすぎてしまい、できたおこげは食べられないようなものとなってしまう。炊飯器1では、このような構成によって、おこげが固くなりすぎることを防止しており、多くのユーザーが美味しく食べることのできるおこげが得られる。
【0115】
次に、追炊き工程(STEP-400)に移行すると、追炊き工程の前期(ステップ(STEP-401)~ステップ(STEP-402)に対応)において、制御装置9に設定された出力パラメータに従って、メインヒータ6a・6bをON-OFFさせるように加熱部6が駆動され、小炊飯空間CA1内の温度Tbがやや下降傾向となりながら約110℃に維持される。
【0116】
次に、追炊き工程の後期(ステップ(STEP-403)~ステップ(STEP-404)に対応)において、制御装置9に設定された出力パラメータに従って、メインヒータ6a・6bをON-OFFさせるようにしながら追炊き工程の前期よりも出力を抑えて加熱部6が駆動される。追炊き工程の後期では、前期よりも加熱部6の出力を抑えていくことで、小炊飯空間CA1内の温度を下降傾向に維持しつつ、温度Tbを下降させる。具体的には、追炊き工程の工程時間を前期と後期に分けて考えた場合、追い炊き工程の後期のデューティ比を、追炊き工程の前期のデューティ比に対して低下させるようにしている。さらに具体的には、メインヒータ6a・6bがON時(デューティ比:4~7)とOFF時の時間比率を調整することにより、追炊き工程の後期におけるメインヒータ6a・6bのデューティ比の平均値が3以下となるようにしている。
【0117】
そして、本実施形態に示す炊飯器1では、追炊き工程(STEP-400)の工程時間T4を、8~9分程度としている。
【0118】
そして、炊飯器1では、追炊き工程(STEP-400)の後期で火力を弱めることで、おこげが付きすぎることを防止している。このようにして炊き上げた御飯では、おこげが固くなりすぎることがなく、このようにして出来たおこげは、多くのユーザーが美味しく食べることができる。
【0119】
次に、むらし工程(STEP-500)に移行すると、むらし工程の前期(ステップ(STEP-501)~ステップ(STEP-502)に対応)においては、制御装置9に設定された出力パラメータに従って、追炊き工程(STEP-400)とほぼ同じ出力を維持しつつ加熱部6が駆動され、小炊飯空間CA1内の温度Tbが約100℃に維持される。
【0120】
次に、むらし工程の後期(ステップ(STEP-503)~ステップ(STEP-504)に対応)においては、制御装置9に設定された出力パラメータに従って、加熱部6のメインヒータ6a・6bをOFFにすることで、小炊飯空間CA1内の温度Tbがさらに下降され、むらし工程(STEP-500)の終了時点で、温度Tbが約90℃とされる。
【0121】
そして、本実施形態に示す炊飯器1では、むらし工程(STEP-500)の工程時間T5を、11~13分程度としている。
【0122】
即ち、炊飯器1では、むらし工程(STEP-500)の工程時間T5を、炊上げ工程(STEP-300)の工程時間T3(約3分)より長い時間に設定しており、小炊飯空間CA1内の米(ほぼ炊き上がった御飯)は、むらし工程(STEP-500)において、比較的長い時間高温に保持される。
【0123】
そして、炊飯器1では、むらし工程(STEP-500)の工程時間T5を炊上げ工程(STEP-300)の工程時間T3より長くすることで、むらし中に御飯の甘味をより引き出すことができるため、より美味しい御飯を炊き上げることができる。
【0124】
また、炊飯器1では、セラミック製の内釜4および中蓋8(所謂土鍋)を使用することで、内釜4の容量に対して少ない少量炊飯を行う場合であっても、程よくおこげが出来た美味しい御飯を炊き上げることができる。つまり、炊飯器1では、少量炊飯であっても、土鍋で炊いたような美味しい御飯を容易に炊き上げることができる。
【0125】
そして、炊飯器1では、少量炊飯モードにおける炊飯工程を上記のようなプログラムに従って実行することで、従来のプログラムに従って炊飯した場合に比べて、御飯のかたさ、弾力性、および粘りを高めることができ、ユーザーが噛みごたえがよいと感じる御飯を炊き上げることができる。このため、炊飯器1によれば、従来の炊飯器で炊き上げた御飯よりもより美味しいと感じられる御飯を炊き上げることができる。
【0126】
なお、本実施形態では、加熱部6に誘導加熱方式の熱源(所謂IHヒータ)を採用した炊飯器1を例示して説明を行ったが、炊飯器1における加熱部6の態様はこれに限定されるものではなく、電熱ヒータを熱源とするものでもよい。
【符号の説明】
【0127】
1 炊飯器
4 内釜
6 加熱部
6a・6b メインヒータ
7 内蓋
8 中蓋
9 制御装置
CA 炊飯空間
CA1 小炊飯空間
CA2 非炊飯空間
T1 吸水工程の工程時間(第1工程時間)
T2 昇温工程の工程時間(第2工程時間)
T3 炊上げ工程の工程時間(第3工程時間)
T4 追炊き工程の工程時間(第4工程時間)
T5 むらし工程の工程時間(第5工程時間)