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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】容器体
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20230215BHJP
   A47J 27/21 20060101ALI20230215BHJP
   B65D 43/22 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
A47J27/00 103P
A47J27/21 101R
A47J27/00 101D
B65D43/22 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019099130
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020192063
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】岡田 吉広
【審査官】武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-33608(JP,A)
【文献】実開平4-135222(JP,U)
【文献】特開2002-282123(JP,A)
【文献】特開2004-357785(JP,A)
【文献】特開2014-213057(JP,A)
【文献】特開2003-164373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
A47J 27/21
B65D 43/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
蓋体と、
前記本体に対して前記蓋体を開閉自在に装着するヒンジ機構と、
前記ヒンジ機構の後側を覆うカバー部材と、を備え、
前記カバー部材のヒンジ機構対向側の上側部位には、爪部が形成されており、
前記爪部は、前記本体を構成する部材であって前記カバー部材の材料よりも高い剛性を有する材料によって形成される第1部材に対して係止される、容器体。
【請求項2】
前記カバー部材には、ヒンジ機構対向側の上側部位からヒンジ機構側に向かって延びる延設部が形成されており、
前記爪部は、前記延設部の先端に設けられる、請求項1に記載の容器体。
【請求項3】
前記カバー部材のヒンジ機構対向側の下側部位には、上方に延びるビス孔を有するビス受け部が設けられており、
前記カバー部材は、前記カバー部材の下側に配設される第2部材に対して前記ビス受け部を介してビス止めされる、請求項1または2に記載の容器体。
【請求項4】
前記カバー部材のヒンジ機構対向側には、前記第1部材に対する位置を決める位置決めリブが形成されている、請求項1または2に記載の容器体。
【請求項5】
前記ヒンジ機構は、付勢部材を有し、
前記爪部は、左右一対形成されており、
前記爪部それぞれの内側近傍にスリットが形成されており、
前記スリットには、前記蓋体の開閉時において前記付勢部材の一部が通過する、請求項1から4のいずれか1項に記載の容器体。
【請求項6】
前記カバー部材のヒンジ機構対向側には、補強リブが形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の容器体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器等の容器体に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「炊飯器本体の後部に蓋後部をヒンジ軸により取付け、その蓋をヒンジばねにより開放方向に付勢し、上記ヒンジ軸、その軸受部及び上記ヒンジばねの収納部分に上記炊飯器本体の後方から当てたヒンジ部カバーを固定し、上記炊飯器本体に係合した蓋の係合を解除することにより上記蓋を自動開放するようにした炊飯器の蓋開閉構造において、上記ヒンジ軸を所定の間隔をおいて対向した左右2本のヒンジ軸により構成すると共に、各ヒンジ軸の外端部を上記蓋に固定し、上記軸受部を各ヒンジ軸ごとに設けた外側軸受部と内側軸受部とにより構成し、上記各ヒンジ軸にヒンジばねを挿通し、上記ヒンジ部カバーの一部を各ヒンジばねに押し当てた構成を採用したもの」が提案されている(例えば、特開2002-282123号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-282123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の炊飯器では、ヒンジ部カバーに係止爪が設けられており、その係止爪は、肩部材に設けられる係止部に係止されている。ここで、通常、ヒンジ部カバーおよび肩部材は、ポリプロピレン等の安価な樹脂から形成されていることが多い。そして、このような安価な樹脂は、一般的に耐熱性が低く、熱変形することが多い。このため、炊飯器では、熱源に比較的近い肩部材が、炊飯中に生じる熱によって徐々に変形していくことが多い。このように肩部材が変形すると、係止部の位置にズレが生じ、係止爪で連結されているヒンジ部カバーの位置にもズレが生じ、ヒンジ部カバーと肩部材との間に隙間等が生じてしまう。
【0005】
本発明の課題は、炊飯器等の容器体においてヒンジ部カバーと、ヒンジ部カバーとの連結部材(炊飯器の肩部材など)との間に隙間等を生じにくくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る容器体は、
本体と、
蓋体と、
前記本体に対して前記蓋体を開閉自在に装着するヒンジ機構と、
前記ヒンジ機構の後側を覆うカバー部材と、を備え、
前記カバー部材のヒンジ機構対向側の上側部位には、爪部が形成されており、
前記爪部は、前記本体を構成する部材であって前記カバー部材の材料よりも高い剛性を有する材料によって形成される第1部材に対して係止される。
【0007】
上記構成によれば、カバー部材(背景技術の「ヒンジ部カバー」に相当)の爪部が、カバー部材の材料よりも高い剛性を有する材料によって形成される第1部材に対して係止される。一般的に、剛性が高い材料ほど、熱変形しにくくなる。このため、この容器体では、カバー部材と、第1部材との間に隙間等を生じにくくすることができる。
【0008】
本発明では、
前記カバー部材に、ヒンジ機構対向側の上側部位からヒンジ機構側に向かって延びる延設部が形成されており、
前記爪部は、前記延設部の先端に設けられると好適である。
【0009】
上記構成によれば、カバー部材の形状を安定させることができる。
【0010】
本発明では、
前記カバー部材のヒンジ機構対向側の下側部位には、上方に延びるビス孔を有するビス受け部が設けられており、
前記カバー部材は、前記カバー部材の下側に配設される第2部材に対して前記ビス受け部を介してビス止めされると好適である。
【0011】
上記構成によれば、カバー部材の外側にビスの頭が露出することを避けることができ、延いてはカバー部材のデザイン性の向上に貢献することができる。
【0012】
本発明では、
前記カバー部材のヒンジ機構対向側に、前記第1部材に対する位置を決める位置決めリブが形成されていると好適である。
【0013】
上記構成によれば、カバー部材の取付けを容易にすることができると共に、仮にカバー部材が熱変形したとしてもその変形度合いを低くすることができる。
【0014】
本発明では、
前記ヒンジ機構は、付勢部材を有し、
前記爪部は、左右一対形成されており、
前記爪部それぞれの内側近傍にスリットが形成されており、
前記スリットには、前記蓋体の開閉時において前記付勢部材の一部が通過すると好適である。
【0015】
上記構成によれば、カバー部材が熱によって膨張した場合であっても爪部が付勢部材の一部に接触する等、付勢部材の一部の動きを阻害することを防止することができる。
【0016】
本発明では、
前記カバー部材のヒンジ機構対向側に補強リブが形成されていると好適である。
【0017】
上記構成によれば、カバー部材の熱等による変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る炊飯器の正面図である。
図2図1のI-I断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る炊飯器を図2のII-II線で片側だけ切断した部分断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る炊飯器を構成する蓋体から上側外装部材を外した際の平面図である。なお、本図面において中央の破線円は内鍋の外周位置を示している。
図5】本発明の実施の形態に係る炊飯器の蓋体を構成する下側外装部材、軸固定部含有部材および補強部材の分解斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係る炊飯器を、締結板金のビス螺入位置を含む面で切断した部分断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る炊飯器を構成するヒンジカバーの後方斜視図である。
図8】本発明の実施の形態に係る炊飯器、ヒンジカバーの爪部を含む面で切断した部分断面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る炊飯器、ヒンジカバーのビス受け部を含む面で切断した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<本発明の実施の形態に係る炊飯器の構造>
本発明の実施の形態に係る炊飯器100は、誘導加熱式の圧力炊飯器であって、図1図3に示されるように、主に、本体110、内鍋130、蓋体140およびヒンジ機構150から構成される。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0020】
1.本体
本体110は、図1図3に示されるように、主に、筐体111、取っ手112、断熱材(図示せず)、誘導加熱コイル113、保温ヒータHT、フェライトコア組立体121、サーミスタ114、送風ファン115、ヒートシンク116、操作パネル117、電源回路基板118、制御回路基板119および自動巻取式電源コードユニット120から構成される。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0021】
(1)筐体
筐体111は、図1図3に示されるように、主に、側壁111a、底壁111b、肩部材111c、保護枠111dおよび基板支持部材111eから構成されており、断熱材(図示せず)、誘導加熱コイル113、フェライトコア組立体121、サーミスタ114、送風ファン115、ヒートシンク116、電源回路基板118、制御回路基板119および自動巻取式電源コードユニット120等を収容している。また、肩部材111cの前側の上側には操作パネル117が配設されている。
【0022】
側壁111aは、平面視において略長方形を呈する囲い壁であって、図1図3に示されるように本体110の側面を覆っている。また、この側壁111aには、図1図3に示されるように取っ手112が回動自在に取り付けられる。
【0023】
底壁111bは、略方形の板状体であって、図1図3に示されるように側壁111aの下側に嵌め込まれており、側壁111aの下側の開口を覆っている。そして、この底壁111bには、図2に示されるように、筐体111の外部の空気を内部に吸い込むための吸気口Os、および、筐体111の内部の空気を外部に排出するための排気口(図示せず)が形成されている。なお、図2に示されるように、吸気口Osの直上には、送風ファン115が配設されている。この送風ファン115が駆動されると、吸気口Osを通って外部の空気が筐体111の内部に吸い込まれ、それによって生じる空気流れにより内部の加熱空気が排気口から系外に排出される。
【0024】
肩部材111cは、略方形状の枠体であって、図1図3に示されるように側壁111aの上側に嵌合されており、側壁111aの上側の開口の縁部を覆っている。そして、図2に示されるように、この肩部材111cの下側には、保護枠111dが取り付けられている。なお、図2に示されるように、保護枠111dはフランジ部FP(後述)で肩部材111cに取り付けられており、フランジ部FPは肩部材111cを外側に向かって張り出させている。
【0025】
保護枠111dは、内鍋130の外周を保護すると共に肩部材111cの形状を保持する役目を担う部材であって、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の形状を保ちやすい材質から形成されている。そして、この保護枠111dは、図2および図3に示されるように、主に、内鍋収容部PA、フランジ部FP、支持部(図示せず)および被嵌合部Cpから形成されている。内鍋収容部PAは、内鍋130の外周を覆う椀状の部位である。フランジ部FPは、上述の通り、肩部材111cの下側に配設されており、肩部材111cの後側の枠状部位を外側に向かって張ることにより肩部材111cの後側の枠状部位の形状を保持させている。また、このフランジ部FPには、左側の被嵌合部の前後に一対の電線案内孔(図示せず)が形成されている。なお、この電線案内孔(図示せず)は、フランジ部FPの厚み方向に沿って延びるように形成されている。この電線案内孔には、サーミスタ114等から延びる信号線(図示せず)が案内される。なお、信号線は、一方の電線案内孔の下側から上側に抜けて、被嵌合部Cpの上側を通り、もう一方の電線案内孔の上側から下側に抜けるようにして電線案内孔に通されている。なお、上述の通り、フランジ部FPの上側には肩部材111cが位置しているため、フランジ部FPの上側に通された信号線は、フランジ部FPと肩部材111cとの間を通ることになる。支持部は、肩部材111cの前側の枠状部位の後部を外側に向かって張ることにより肩部材111cの前側の枠状部位の後部の形状を保持させている。被嵌合部Cpには、後述の通り、取っ手112の軸部112bが回動自在に嵌合される。
【0026】
基板支持部材111eは、図2に示されるように制御回路基板119を支持する共に肩部材111cの前側の部位の形状を保持する役目を担う部材であって、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の形状を保ちやすい材質から形成されている。
【0027】
(2)取っ手
取っ手112は、使用者が炊飯器100を手で持ち運ぶために設けられている部材であって、図3に示されるように本体部112aおよび軸部112bから構成されている。本体部112aは、略コの字状を呈している。軸部112bは、図3に示されるように本体部112aの両端から内側に向かって延びている。なお、この炊飯器100において、この軸部112bは、図3に示されるように、側壁111aの長手方向中央の上部に形成される孔Pxを通って、保護枠111dに形成される被嵌合部Cpに嵌合されている。
【0028】
(3)断熱材
断熱材は、保護枠111dの内鍋収容部PAの側壁および誘導加熱コイル113の外周に巻き付けられており、炊飯時において内鍋130から生じる熱が内鍋収容部PAの外側に流出するのを抑制する役割を担っている。
【0029】
(4)誘導加熱コイル
誘導加熱コイル113は、内鍋130を誘導加熱する誘導加熱源であって、図2および図3に示されるように保護枠111dの内鍋収容部PAの底壁部および側壁下端部の外側に配設されている。
【0030】
(5)保温ヒータ
保温ヒータHTは、保温運転時に使用される円環状のヒータであって、図2に示されるように保護枠111dの内鍋収容部PAの上端(フランジ部FPの下端)からやや下側の部分に配設されている。
【0031】
(6)フェライトコア組立体
フェライトコア組立体121は、図3に示されるように誘導加熱コイル113の周囲に配設されている。フェライトコアは、通電時に誘導加熱コイル113から発生する電磁波が外部に漏れ出るのを抑制する役目を担っている。また、このフェライトコア組立体121においてフェライトコアを収容するフェライトコアホルダ(図示せず)には、整線部が形成されており、保温ヒータHTや誘導加熱コイル113へと延びる電源線(図示せず)がその整線部に通されている。
【0032】
(7)サーミスタ
サーミスタ114は、温度センサであって、図2に示されるように、保護枠111dの内鍋収容部PAの底壁部の中央部に形成された開口を通って、上方に向かって突出している。なお、このサーミスタ114は、コイルバネ等の付勢部材によって上方に付勢されている。すなわち、このサーミスタ114は、上下方向に沿って出没自在な状態とされている。また、このサーミスタ114は、内鍋検知センサ(図示せず)に組み込まれている。内鍋検知センサは、炊飯器内に内鍋130が存在するか否かを判断するためのものであって、サーミスタ114が下端位置まで下がると、検知信号を制御回路基板119のマイクロコンピュータに送信する。マイクロコンピュータは、検知信号を受信すると、炊飯器内に内鍋130が存在すると判断する。なお、マイクロコンピュータが、炊飯器内に内鍋130が存在しないと判断した場合、炊飯運転が開始されない。ところで、このサーミスタ114は、図2に示されるように略円盤状のカバー部材127によって支持されている。このカバー部材127は、保護枠111dの内鍋収容部PAの底壁にネジ止めされている。
【0033】
(8)送風ファン
送風ファン115は、上述の通り、筐体111の底壁111bに形成される吸気口Osの直上に、回転軸が略上下方向に沿うようにして配設されている(図2参照)。すなわち、この送風ファン115が駆動されると、外部の空気が吸気口Osから吸い込まれて筐体内に流入し、そのまま上方に向かって送られる。上方に向かって送られた外部の空気は、ヒートシンク116を通って電源回路基板118および制御回路基板119などに供給されて、それらの部材等を冷却する。
【0034】
(9)ヒートシンク
ヒートシンク116は、外部の空気と効率よく熱交換を行わせる部品である。
【0035】
(10)操作パネル
操作パネル117は、炊飯器100の運転方法を決定して実行するためのものであって、図1図3に示されるように、主に、パネル本体117aおよび押圧ボタンBT等から構成されており、上述の通り、肩部材111cの前側の上側に配設されている。
【0036】
(11)電源回路基板
電源回路基板118は、電源回路を構成する基板であって、いくつかの発熱部品を実装している。なお、この電源回路基板118は、図2に示されるように、後述する制御回路基板119と同様に筐体111の前側空間SPfに収容されている。
【0037】
(12)制御回路基板
制御回路基板119は、制御回路を構成する基板であって、マイクロコンピュータ等の電子部品を実装している。そして、この制御回路基板119は、図2に示されるように、筐体111の前側空間SPfにおいて、ヒートシンク116の上方、操作パネル117の下側に配設される基板支持部材111eに支持されている。
【0038】
(13)自動巻取式電源コードユニット
自動巻取式電源コードユニット120は、電源コードおよび自動巻取機構(図示せず)等から構成されており、図2に示されるように筐体111の後側の空間に収容されている。電源コードは、差込プラグ(図示せず)および電気線(図示せず)から構成されている。差込プラグは、電気線の先端に配設されている。電気線は、伸展自在に自動巻取機構に巻回されている。
【0039】
2.内鍋
内鍋130は、上方に開口する椀状の鍋であって、肩部材111cの開口に挿通されると共に、保護枠111dの内鍋収容部PAに所定の隙間をもって収容される。なお、ここで、内鍋130は、種々のアルミニウム合金およびステンレス合金の多層体(クラッド材)であって、誘導加熱コイル113によって誘導加熱され得る。
【0040】
3.蓋体
蓋体140は、図1図5に示されるように、主に、外装体141、開閉ボタン142、圧力調整機構143、補強部材144、内蓋145、レバー部材146、軸固定部含有部材147および軸151から構成されており、ヒンジ機構150を介して本体110に回動自在に取り付けられている。なお、軸151は、ヒンジ機構150の一部も構成している。
【0041】
外装体141は、図2および図3に示されるように、ポリプロピレン等の汎用樹脂製の上側外装部材141aおよび下側外装部材141bから構成される略直方体状の部材であって、開閉ボタン142、圧力調整機構143およびレバー部材146等を収容している。なお、ここで、開閉ボタン142は、図1図3に示されるように、上面が外装体141の上側に露出するように外装体141に配設されている。また、ここで、この外装体141は、図4および図5に示されるように使用時の内圧に耐えることができるように補強部材144によって補強されている。さらに、図2および図3に示されるように、この外装体141の下面には、内蓋145が着脱自在に配設されている。
【0042】
開閉ボタン142は、蓋体140を開閉するための角丸長方形状のボタンであって、図2に示されるようにレバー部材146の上側に配設されている。なお、この開閉ボタン142は、コイルバネ(図示せず)によって上方に向かって付勢されている。
【0043】
レバー部材146は、当接板部(図示せず)と、当接板部の前側から下方に延びる左右一対の延設板部(図示せず)と、各延設板部の下部から後方に向かって延びる爪部(図示せず)とから形成される金属板部材であって、外装体141に軸支されていると共に、当接板部の後端でコイルバネ(図示せず)によって上方に向かって付勢されている。なお、ここで、使用者によって開閉ボタン142が押し下げられると、開閉ボタン142は、レバー部材146の当接板部のうち回動軸の後側の部位に当接する。
【0044】
そして、使用者が蓋体140を閉状態としようとするとき、使用者は開閉ボタン142を操作する必要がなく、そのまま蓋体140を本体110に向かって倒し込めばよい。このとき、レバー部材146の爪部が、肩部材111cに形成される傾斜面(図示せず)に接触しながら下方に移動していく。この間、レバー部材146は、コイルバネの付勢力に逆らって前方に向かって回動する。そして、爪部が、肩部材111cに形成される爪受孔(図示せず)まで達すると、コイルバネの付勢力により爪部がその爪受孔に嵌り込む。このようにして蓋体140が閉状態となる。一方、蓋体140を開状態とするとき、使用者は、開閉ボタン142を押し下げる。すると、開閉ボタン142の下端部位がレバー部材146の当接部に当接し、レバー部材146がコイルバネの付勢力に逆らって前方に向かって回動する。このとき、爪受孔に嵌り込んでいた爪部が爪受孔から引き出される。そして、ヒンジ機構150の付勢力により蓋体140が上方に持ち上げられ、蓋体140が開状態となる。
【0045】
圧力調整機構143は、蓋体140が閉状態とされ圧力炊飯運転されている状態において、内鍋130の内部の圧力を1.03~1.3気圧に調整する機構であって、図4に示されるように、主に、調圧ボール(図示せず)、調圧ボール収容部143a、往復動アクチュエータ143bおよび作用ロッド143cから構成されている。調圧ボールは、調圧ボール収容部143aに収容されており、下側外装部材141bに形成されている調圧孔(図示せず)の上側に配設されている。そして、この調圧ボールは、作用ロッド143cの押棒部(図示せず)に押されていない状態において調圧孔を塞ぐように弁座に鎮座して内鍋130の内圧を調整し(内鍋130の内圧が所定値以上になると、この調圧ボールが押し上げられ、一時的に内圧が低下させられる。)、押棒部に押された状態において調圧孔を常時開放する。往復動アクチュエータ143bは、ソレノイドを利用した電磁式ピストンであり、図4に示されるようにそのピストンPTの先端に作用ロッド143cが取り付けられている。なお、ここで、往復動アクチュエータ143bのピストンPTが後退すると作用ロッド143cが前方に移動し、往復動アクチュエータ143bのピストンPTが前進すると作用ロッド143cが後方に移動する。そして、作用ロッド143cが前方に移動すると、調圧ボールが、調圧孔を塞ぐように弁座に鎮座する状態となる(すなわち圧力炊飯運転状態となる)と共に、作用ロッド143cの開閉ロック部(後述)RCによりレバー部材146の回動運動が規制されて蓋体140が開かない状態となる。一方、作用ロッド143cが後方に移動すると、作用ロッド143cの押棒部(後述)によって調圧ボールが調圧孔から押し除けられ、調圧孔を常時開放する状態となると共に、作用ロッド143cの開閉ロック部RCによるレバー部材146の回動運動の規制が解除されて蓋体140が開く状態となる。作用ロッド143cは、図4に示されるように、主に、押棒部、延設部EPおよび開閉ロック部RCから形成されている。押棒部は、調圧ボール収容部143aに出没自在であって、上述の通り、圧力炊飯運転以外において調圧ボールを押して調圧孔を常時開放する役目を担っている。延設部EPは、押棒部と開閉ロック部RCとを物理的に連結する部位であって、平面視において略L字形を呈している。開閉ロック部RCは、図4に示されるように、延設部EPの前端に設けられている部位であって、レバー部材146のうちコイルバネに対向する部位の下側の隙間に出没自在とされている。なお、この開閉ロック部RCは、圧力炊飯運転時すなわち作用ロッド143cが前方に移動するとき、前述の隙間に進入し、作用ロッド143cが後方に移動するとき、前述の隙間から抜き出ることになる。なお、本実施の形態において、この圧力調整機構としては、特に限定されず、従前のものが採用されてもかまわない。
【0046】
補強部材144は、下側外装部材141bの剛性を高めるためのものであって、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等のエンジニアリングプラスチックから形成されている。なお、エンジニアリングプラスチックは、汎用樹脂に比べてその剛性が高く、耐熱性に優れるため、汎用樹脂よりも熱変形しにくい性質を有する。
【0047】
そして、この補強部材144は、図4および図5に示されるように、略角枠形状を呈する部材であって、外装体141の下側外装部材141bに対してビス止めされている。なお、図4および図5に示されるように、補強部材144の後側の部位は、外装体141の下側外装部材141bに対して軸固定部含有部材147の延設部(後述)147bと共にビスで共締めされている。
【0048】
内蓋145は、図2に示されるように内鍋130の上部を覆って密閉するための部材である。
【0049】
軸固定部含有部材147は、図4に示されるように略L字形の柱状部材であって、軸固定部147aおよび延設部147bを有し、下側外装部材141bに対して左右に一対設けられている。なお、この軸固定部含有部材147は、ポリプロピレン等の汎用樹脂で形成されている。軸固定部147aは、図4に示されるように軸151を固定する役目を担っている。延設部147bは、図4および図5に示されるように軸固定部147aから前方に向かって延びている。なお、この延設部147bは、図4に示されるように平面透視において軸固定部147aから内鍋130の外周線(図4中の破線円)の内側に入るまで延びている。すなわち、軸固定部147aは平面視において内鍋130と重なることはないが、延設部147bは平面透視において内鍋130と重なっている。
【0050】
軸151は、蓋体140の回動軸となるシャフトであって、上述の通り、軸固定部含有部材147の軸固定部147aに固定されている。なお、この軸151は、ヒンジ機構150の締結板金153の軸受孔(図示せず)によって回動自在に支持されている。
【0051】
4.ヒンジ機構
ヒンジ機構150は、図2および図4に示されるように、主に、軸151、中央大径円筒部152、締結板金153および一対のトーションバネ154等から構成されており、上述の通り、蓋体140が本体110に対して回動自在となるように蓋体140を本体110に取り付けている。なお、上述の通り、このヒンジ機構150は、図2および図6に示されるようにトーションバネ154によって蓋体140を開方向に向かって付勢している。
【0052】
軸151は上記説明の通りである。中央大径円筒部152は、一対のトーションバネ154の配設位置を決めるための部位であって、図4に示されるように軸151に中央に取り付けられている。締結板金153は、図6に示されるようにヒンジ機構150を本体110の保護枠111dのフランジ部FPに取り付けるための部材である。この締結板金153は、図4に示されるように平面視において略「コ」の字形状を呈しており、主に、主壁部BMと、主壁部BMの左右両端に配設される一対の側壁部RAとから形成されている。そして、主壁部BMは、図4に示されるように、トーションバネ154よりも内鍋側(本体側)に位置している。また、この主壁部BMにはビス孔OBが形成されている。図6に示されるように、ビス孔OBにはビスBSが通り、ビスBSが保護枠111dのフランジ部FPに螺入されることによって、ヒンジ機構150が保護枠111dのフランジ部FPに締結される。なお、図6に示される通り、締結板金153は、軸151よりも内鍋側で保護枠111dのフランジ部FPにビス止めされている。また、各側壁部RAには、軸受孔(図示せず)が形成されている。上述の通り、この軸受孔には軸151が回動自在に挿入されている。
【0053】
ところで、このヒンジ機構150は、図2および図6に示されるようにヒンジカバー160で覆われている。以下、このヒンジカバー160について詳述する。
【0054】
ヒンジカバー160は、図2および図6に示されるようにヒンジ機構150の後側を覆う部材であって、図7に示されるように、主に、主壁部161、天壁部162、側壁部163、爪部164、爪梁部165、ビス受け部166およびリブ部167から形成されている。
【0055】
主壁部161は、図7に示されるように部分円筒形状を呈する壁部位であって、ヒンジ機構150の後側を覆う役目を担っている。そして、この主壁部161には、図7に示されるように上側に開口する一対の縦スリットSvが左右に形成されている。なお、本発明の実施の形態において、この主壁部161には、従前のヒンジカバーに形成されているビス孔は形成されていない。
【0056】
天壁部162は、図7に示されるように主壁部161の上端から水平方向に沿って片側に延びる壁部位であって、ヒンジ機構150の後部の上側を覆う役割を担っている。そして、この天壁部162には、図7に示されるように主壁部161の縦スリットSLに対応位置に、前後方向に開口する横スリットShが形成されている。なお、本説明において、縦スリットSLと横スリットShとを合わせたものを「スリットSL」と称することがある。そして、このスリットSLには、蓋体140の開閉時にトーションバネ154の一部が通過する。
【0057】
側壁部163は、図7に示されるように主壁部161の両側端から、天壁部162が延びる側と同じ側に向かって延びる壁部位であって、ヒンジ機構150の後部の側面を覆う役割を担っている。
【0058】
爪部164は、図7に示されるように爪梁部165の先端に形成されている。そして、この爪部164は、図8に示されるように締結板金153の側壁部RAの上端部から外方に向かって延びるフランジ部FTに係止される。
【0059】
爪梁部165は、図7に示されるように主壁部161の縦スリットSvの外側の上端付近から、天壁部162が延びる側と同じ側に向かって延びている。また、上述の通り、この爪梁部165の先端には、爪部164が形成されている。
【0060】
ビス受け部166は、図7に示されるように主壁部161の下端部から、天壁部162が延びる側と同じ側に向かって延びる部位である。このビス受け部166は、図7に示されるように主壁部161の縦スリットSvの僅かに内側に位置するように形成されている。このビス受け部166には、ビスBS(図9参照)を螺合させるためのビス孔OIが形成されている。このビス孔OIは、ヒンジカバー160の高さ方向に沿って形成されている。そして、図9に示されるように、このビス孔OIには、肩部材111cの後端側に形成されているビス孔ODを通ったビスBSが螺合される。その結果、肩部材111cに対してヒンジカバー160が締結される。なお、このビスBSは、肩部材111cに対して側壁111aが取り付けられる前に螺合される。
【0061】
リブ部167は、位置決めおよび補強の役目を担う梁状の部位であって、図7に示されるように、主壁部161の裏側面において、主壁部161ている。そして、このリブ部167は、図8に示されるように締結板金153の側壁部RAの上端から僅か下側に形成される凹部YAに嵌め込まれる。
【0062】
<本発明の実施の形態に係る炊飯器の特徴>
(1)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、ヒンジカバー160の爪部164が締結板金153に対して係止される。このため、この炊飯器100では、ヒンジカバー160と締結板金153との間に隙間等を生じにくくすることができる。
【0063】
(2)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、爪梁部165の先端に爪部164が形成されている。このため、この炊飯器100では、ヒンジカバー160の形状を安定させることができる。
【0064】
(3)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、主壁部161の下端部から裏側に向かってビス受け部166が延びており、そのビス受け部166に、ヒンジカバー160の高さ方向に沿ったビス孔OIが形成されている。そして、そのビス孔OIには、肩部材111cの後端側に形成されているビス孔ODを通ったビスBSが螺合される。その結果、肩部材111cに対してヒンジカバー160が締結される。このため、この炊飯器100では、ヒンジカバー160の外側にビスBSの頭が露出することを避けることができ、延いてはヒンジカバー160のデザイン性の向上に貢献することができる。
【0065】
(4)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100ではヒンジカバー160の裏側に、締結板金153に対する位置を決めるリブ部167が形成されている。このため、この炊飯器100では、ヒンジカバー160の取付けを容易にすることができると共に、仮にヒンジカバー160が熱変形したとしてもその変形度合いを低くすることができる。
【0066】
(5)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、爪梁部165が主壁部161の縦スリットSvの外側の上端付近から裏側に向かって延びており、爪梁部165の先端に爪部164が設けられている。このため、この炊飯器100では、ヒンジカバー160が熱によって膨張した場合であっても爪部164がトーションバネ154の一部に接触する等、トーションバネ154の一部の動きを阻害することを防止することができる。
【0067】
(6)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、主壁部161の裏側面において、主壁部161の高さ方向略中央を通る水平面に沿って一方の側端から他方の側端を走るようにリブ部167が形成されている。このため、この炊飯器100では、ヒンジカバー160の熱等による変形を抑制することができる。
【0068】
<変形例>
(A)
先の実施の形態に係る炊飯器100ではリブ部167が位置決めリブのみならず補強リブの役割を果たしていたが、位置決めリブと補強リブを別々に設けてもよい。
【0069】
(B)
先の実施の形態では本発明が炊飯器100に適用されたが、本発明は他の電気製品(電気調理器を含む。)や、機械(調理機械を含む。)、構造物(調理器具等を含む。)等に適用されてもかまわない。
【符号の説明】
【0070】
100 :炊飯器(容器体)
110 :本体
111c :肩部材(第2部材)
140 :蓋体
150 :ヒンジ機構
153 :締結板金(第1部材)
154 :トーションバネ(付勢部材)
160 :ヒンジカバー(カバー部材)
164 :爪部
165 :爪梁部(延設部)
166 :ビス受け部
167 :リブ部(位置決めリブ,補強リブ)
OI :ビス孔
SL :スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9