(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ポリエチレン系樹脂発泡粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/18 20060101AFI20230215BHJP
B29B 17/00 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C08J9/18 CES
B29B17/00 ZAB
(21)【出願番号】P 2021172503
(22)【出願日】2021-10-21
【審査請求日】2022-11-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平 晃暢
(72)【発明者】
【氏名】野原 徳修
(72)【発明者】
【氏名】林 達也
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-283576(JP,A)
【文献】特開2008-265093(JP,A)
【文献】特開2007-203559(JP,A)
【文献】特開2002-003637(JP,A)
【文献】特開2013-045643(JP,A)
【文献】特表平10-505298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60
B29C 67/20
B29B 17/00-17/04
C08J 11/00-11/28
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バージンポリエチレン(A)とリサイクルポリエチレン(B)との混合樹脂を基材樹脂とするポリエチレン系樹脂発泡粒子であって、
上記混合樹脂が、上記バージンポリエチレン(A)40重量%以上90重量%以下と上記リサイクルポリエチレン(B)10重量%以上60重量%以下(ただし、両者の合計が100重量%である)とを含有し、
上記バージンポリエチレン(A)が、メタロセン系重合触媒により重合された、密度0.915g/cm
3以上0.930g/cm
3未満、かつ融点120℃以上130℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン(A1)であり、
上記リサイクルポリエチレン(B)が、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と低密度ポリエチレン(B2)とを含み、かつ上記直鎖状低密度ポリエチレン(B1)を主成分とするポストコンシューマ材料である、ポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
上記リサイクルポリエチレン(B)がフィルムの廃棄物から回収されたものである、請求項1に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
上記バージンポリエチレン(A)の融解熱量が、80J/g以上100J/g以下である、請求項1又は2に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
上記バージンポリエチレン(A)の、温度190℃、荷重2.16kgの条件でのメルトフローレイトが0.8g/10min以上1.5g/10min以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
上記バージンポリエチレン(A)の、温度190℃、荷重2.16kgの条件でのメルトフローレイトと、上記リサイクルポリエチレン(B)の、温度190℃、荷重2.16kgの条件でのメルトフローレイトとの差が-1.0g/10min以上1.0g/10min以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項6】
上記リサイクルポリエチレン(B)が、上記直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と上記低密度ポリエチレン(B2)との合計100重量%中に上記直鎖状低密度ポリエチレン(B1)を50重量%以上90重量%以下と低密度ポリエチレン(B2)10重量%以上50重量%以下とを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項7】
上記リサイクルポリエチレン(B)の融点が115℃以上130℃以下であり、上記リサイクルポリエチレン(B)の密度が0.910g/cm
3以上0.930g/cm
3未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項8】
上記発泡粒子の平均気泡径が50μm以上180μm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項9】
上記発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定において、上記発泡粒子を10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで昇温した際に得られる1回目のDSC曲線に、上記基材樹脂に固有の融解ピークである固有ピークと、該固有ピークよりも高温側に現れる融解ピークである高温ピークとが現れ、該高温ピークの融解熱量が15J/g以上50J/g以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項10】
上記発泡粒子の嵩密度が10~30kg/m
3である、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子。
【請求項11】
バージンポリエチレン(A)40重量%以上90重量%以下とリサイクルポリエチレン(B)10重量%以上60重量%以下との混合樹脂(ただし、両者の合計が100重量%である)を基材樹脂とするポリエチレン系樹脂粒子を密閉容器内において分散媒に分散させる分散工程と、
上記密閉容器内において上記樹脂粒子に無機物理発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程と、
上記発泡剤を含浸させた上記樹脂粒子を上記密閉容器から該密閉容器の内圧よりも低圧の雰囲気下に放出することにより、上記樹脂粒子を発泡させる発泡工程と、を有し、
上記バージンポリエチレン(A)は、メタロセン系重合触媒により重合された、密度0.915g/cm
3以上0.930g/cm
3未満、かつ融点120℃以上130℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン(A1)であり、
上記リサイクルポリエチレン(B)が、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と低密度ポリエチレン(B2)とを含み、かつ上記直鎖状低密度ポリエチレン(B1)を主成分とするポストコンシューマ材料である、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項12】
上記リサイクルポリエチレン(B)がフィルムの廃棄物から回収されたものである、請求項11に記載のポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポストコンシューマ材料を含む混合樹脂を基材樹脂とするポリエチレン系樹脂発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体は、賦形性、緩衝性能に優れることから、緩衝包装材として広く使用されている。ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体、被包装物に傷をつけ難い性質を有することから、特に電気・電子機器包装材などに好適である。このような発泡粒子成形体は、たとえば、成形型内で、ポリエチレン系樹脂発泡粒子を二次発泡させると共にその表面を溶融させることにより相互に融着させるという型内成形法により得られる。
【0003】
ポリエチレン系樹脂発泡粒子においては、無架橋であっても型内成形が可能な発泡粒子を得ることが容易であることから、直鎖状低密度ポリエチレンを基材樹脂とする無架橋の発泡粒子が検討されている。また、環境負荷低減の観点から、発泡剤として二酸化炭素等の無機物理発泡剤が使用されることがある(特許文献1、2参照)。
【0004】
近年、環境負荷低減の観点から、再生材料を使用することが検討されている。中でも、使用済みの製品の廃棄物等から原料を回収してリサイクルするポストコンシューマ(以下、適宜「PCR」という)材料に注目が集まっている。再生材料を使用した発泡粒子成形体として、廃発泡ポリオレフィン系樹脂成形体から得られる廃ポリオレフィン系樹脂とバージンポリオレフィンとの混合樹脂から予備発泡粒子、発泡粒子成形体を製造する方法が開発されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2013/031745号
【文献】国際公開第2014/042189号
【文献】特開2005-297464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、PCR材料に由来するポリエチレン系樹脂は、樹脂材料自体の劣化や品質の安定性等に問題があり、PCR材料を用いると良好な発泡粒子成形体を製造可能なポリエチレン系樹脂発泡粒子を得ることが難しかった。また、PCR材料には、ポリエチレン系樹脂以外に種々の添加剤が含まれていることがある。このような添加剤を含むPCR材料は、発泡粒子の融着性等の特性に悪影響を及ぼすおそれがあった。そのため、PCR材料を使用して良好なポリエチレン系樹脂発泡粒子を製造することは困難であった。また、無機物理発泡剤を使用した場合には難しかった。このような問題は、特にPCR材料を比較的多量に配合した場合には顕著であった。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、PCR材料を含有しながらも、表面平滑性に優れた発泡粒子成形体を型内成形により良好な成形条件で製造できるポリエチレン系樹脂発泡粒子及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、バージンポリエチレン(A)とリサイクルポリエチレン(B)との混合樹脂を基材樹脂とするポリエチレン系樹脂発泡粒子であって、
上記混合樹脂が、上記バージンポリエチレン(A)40重量%以上90重量%以下と上記リサイクルポリエチレン(B)10重量%以上60重量%以下(ただし、両者の合計が100重量%である)とを含有し、
上記バージンポリエチレン(A)が、メタロセン系重合触媒により重合された、密度0.915g/cm3以上0.930g/cm3未満、かつ融点120℃以上130℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン(A1)であり、
上記リサイクルポリエチレン(B)が、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と低密度ポリエチレン(B2)とを含み、かつ上記直鎖状低密度ポリエチレン(B1)を主成分とするポストコンシューマ材料である、ポリエチレン系樹脂発泡粒子にある。
【0009】
本発明の他の態様は、バージンポリエチレン(A)40~90重量%とリサイクルポリエチレン(B)10~60重量%との混合樹脂(ただし、両者の合計が100重量%である)を基材樹脂とするポリエチレン系樹脂粒子を密閉容器内において分散媒に分散させる分散工程と、
上記密閉容器内において上記樹脂粒子に無機物理発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程と、
上記発泡剤を含浸させた上記樹脂粒子を上記密閉容器から該密閉容器の内圧よりも低圧の雰囲気下に放出することにより、上記樹脂粒子を発泡させる発泡工程と、を有し、
上記バージンポリエチレン(A)は、メタロセン系重合触媒により重合された、密度0.915g/cm3以上0.930g/cm3未満、かつ融点120℃以上130℃以下の直鎖状低密度ポリエチレン(A1)であり、
上記リサイクルポリエチレン(B)が、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と低密度ポリエチレン(B2)とを含み、かつ上記直鎖状低密度ポリエチレン(B1)を主成分とするポストコンシューマ材料である、ポリエチレン系樹脂発泡粒子の製造方法にある。
【発明の効果】
【0010】
上記ポリエチレン系樹脂発泡粒子によれば、ポストコンシューマ材料(つまり、PCR材料)を含有しながらも、表面平滑性に優れた発泡粒子成形体を型内成形により良好な成形条件(例えば低い成形加熱温度)で製造することができる。また、発泡剤として無機物理発泡剤を使用した場合であっても、上記発泡粒子成形体を製造可能な発泡粒子を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、直鎖状低密度ポリエチレンの2回目のDSC曲線の一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、発泡粒子の高温ピークの面積の算出方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「X~Y」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、「X以上Y以下」と同義であり、その端点X及びYの値を含むものとして用いることとする。また、下限として数値又は物性値を表現する場合、その数値又は物性値以上であることを意味し、上限として数値又は物性値を表現する場合、その数値又は物性値以下であることを意味する。また、「重量%」と「質量%」、「重量部」と「質量部」は、それぞれ実質的に同義である。また、本明細書において、ポリエチレン系樹脂発泡粒子のことを適宜「発泡粒子」といい、発泡粒子成形体のことを適宜「成形体」という。また、ポリエチレンとは、エチレン成分を50モル%以上含むポリエチレンを意味する。
【0013】
本開示の発泡粒子は、バージンポリエチレン(A)とリサイクルポリエチレン(B)とが所定の割合で混合された混合樹脂を基材樹脂とする。混合樹脂は、具体的には、バージンポリエチレン(A)とリサイクルポリエチレン(B)との合計100重量%中にバージンポリエチレン(A)を40重量%以上90重量%以下含有する。換言すれば、バージンポリエチレン(A)とリサイクルポリエチレン(B)との合計100重量%中において、バージンポリエチレン(A)40重量%~90重量%と、リサイクルポリエチレン(B)10重量%~60重量%とを含有する。
上記発泡粒子は、上記混合樹脂中にリサイクルポリエチレン(B)を比較的多量(例えば10重量%以上60重量%以下)に配合した場合であっても表面平滑性に優れる成形体を低温の成形加熱温度で型内成形することができる。そのため、優れたリサイクル効果を発揮することができる。バージンポリエチレン(A)が90重量%を超える場合には、相対的にリサイクルポリエチレン(B)の含有量が10重量%未満となり、製造時のリサイクルポリエチレンの使用量が少なくなるため、リサイクル効果が不十分になる。リサイクル効果が向上するという観点から、バージンポリエチレン(A)とリサイクルポリエチレン(B)との合計100重量%中のリサイクルポリエチレン(B)の含有量は、15重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることがさらに好ましく、40重量%以上であることが特に好ましい。一方、バージンポリエチレン(A)が40重量%未満の場合には、相対的にリサイクルポリエチレン(B)の含有量が60重量%を超え、製品としての使用や再生処理の過程で劣化あるいは品質変化したポリエチレンの含有量が多くなり過ぎて、型内成形での発泡粒子の成形性や成形体の表面平滑性が不十分になるおそれがある。成形性、表面平滑性がより向上するという観点から、バージンポリエチレン(A)とリサイクルポリエチレン(B)との合計100重量%中のバージンポリエチレン(A)の含有量は、45重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましい。
【0014】
バージンポリエチレン(A)は、所定の物性(具体的には、密度、融点)を有し、かつメタロセン系重合触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレン(A1)であり、リサイクルポリエチレン(B)は、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と低密度ポリエチレン(B2)とを含み、かつ直鎖状低密度ポリエチレン(B1)を主成分とするPCR材料である。このような発泡粒子によれば、PCR材料を上記のごとく多量に含有しながらも、表面平滑性に優れた発泡粒子成形体を低温の成形加熱温度での型内成形により製造することができる。
【0015】
本明細書において、バージンポリエチレンとは、所謂バージンのポリエチレンであり、再生材料を除く、新品のポリエチレンを意味する。バージンポリエチレン(A)は、直鎖状低密度ポリエチレン(A1)から構成されている。直鎖状低密度ポリエチレン(A1)は、直鎖状を呈する、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である。共重合体を構成するα-オレフィンの炭素数は通常4~10である。直鎖状低密度ポリエチレン(A1)は、エチレンと炭素数6~8のα-オレフィンとの共重合体であることが好ましく、エチレンと炭素数6のαオレフィンとの共重合であることがより好ましい。この場合には、直鎖状低密度ポリエチレンの密度及び融点を本開示において規定する範囲に調整しやすい。
【0016】
直鎖状低密度ポリエチレン(A1)としては、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ペンテン共重合、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1ペンテン共重体、エチレン-1-オクテン共重合体等が好ましく例示される。なお、本開示の目的、効果を阻害しない範囲において、共重合体には、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィン以外の他のモノマーがさらに共重合されていてもよいが、他のモノマーの含有率は、エチレンと炭素数4~10のα-オレフィンと当該他のモノマーとの合計100質量%に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体であることが好ましく、ランダム共重合体であることがより好ましい。
【0017】
バージンポリエチレン(A)は、1種類の直鎖状低密度ポリエチレン(A1)を含んでいてもよいし、2種類以上の直鎖状低密度ポリエチレン(A1)を含んでいてもよい。
【0018】
また、リサイクル性を高める観点から、直鎖状低密度ポリエチレン(A1)は無架橋であることが好ましい。つまり、直鎖状低密度ポリエチレン(A1)が無架橋の場合には、本開示の発泡粒子や、発泡粒子を型内成形して得られる成形体からのポリエチレン系樹脂のリサイクルが容易になる。
【0019】
本明細書でいう無架橋とは、発泡粒子の熱キシレン抽出法による不溶分が5質量%以下であることをいう。発泡粒子のリサイクルがより容易になる観点及び得られる発泡粒子成形体の柔軟性をより高める観点から、発泡粒子の熱キシレン抽出法による不溶分の割合は、発泡粒子中の3質量%以下が好ましく、0であることが最も好ましい。
発泡粒子の熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分は、精秤した発泡粒子約1g(その正確な重量をL(g)とする)を150mLの丸底フラスコに入れ、100mLのキシレンを加え、マントルヒーターで加熱して6時間還流させた後、溶け残った残渣を100メッシュの金網で濾過して分離し、80℃の減圧乾燥器で8時間以上乾燥し、この際に得られた乾燥物重量の重量M(g)を測定し、下記式(1)により求める。なお、残渣の濾過は金網で速やかに行うことが好ましい。
熱キシレン抽出法による不溶分(質量%)=(M/L)×100・・・(1)
【0020】
バージンポリエチレン(A)(具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン(A1))は、メタロセン系重合触媒により重合された、密度が0.915g/cm3以上0.930g/cm3未満であり、融点が120℃以上130℃以下である。このようなバージンポリエチレン(A)と特定のリサイクルポリエチレン(B)との混合樹脂を基材樹脂とするため、上記発泡粒子によれば、リサイクルポリエチレン(具体的にはPCR材料)を含有しながらも、表面の平滑性に優れた成形体を良好な成形条件で成形することが可能になる。なお、本明細書で、良好な成形性とは、融着性、二次発泡性、成形後の形状回復性に優れた成形体を良好な成形条件で成形可能なことを意味する。良好な成形条件とは、成形加熱温度が低温(具体的には、低圧)であることをいう。また、型内成形では、広範囲の成形加熱温度(具体的には、複数の成形圧)で成形できることが好ましい。
【0021】
バージンポリエチレン(A)の密度は、0.915g/cm3以上0.930g/cm3未満である。バージンポリエチレン(A)の密度が0.915g/cm3未満の場合には、離型後の成形体が収縮、変形し易くなり、良好な成形体を成形することが困難になるおそれがある。成形性がより向上するという観点から、バージンポリエチレン(A)の密度は0.918g/cm3以上であることが好ましく、0.920g/cm3以上であることがより好ましい。また、バージンポリエチレン(A)の密度が0.930g/cm3以上の場合には、成形加熱温度が高くなるおそれがある。また、成形体の柔軟性が低下し、用途によっては緩衝性能が不足するおそれがある。成形性や柔軟性がより向上するという観点から、バージンポリエチレン(A)の密度は0.928g/cm3以下であることが好ましく、0.925g/cm3以下であることがより好ましい。
【0022】
バージンポリエチレン(A)の密度は、例えば、JIS K7112:1999に記載のB法(ピクノメーター法)により測定される。
【0023】
また、バージンポリエチレン(A)の融点は、120℃以上130℃以下である。バージンポリエチレン(A)の融点が120℃未満の場合には、成形性が悪くなり成形が困難になる。具体的には、離型後の成形体が収縮、変形し易くなり、形状回復性が悪くなる。成形性がより向上する観点から、バージンポリエチレン(A)の融点は、121℃以上であることが好ましく、122℃以上であることがより好ましい。また、バージンポリエチレン(A)の融点が130℃を超える場合には、低い成形温度での成形では融着性が低下し、成形性が悪くなる。成形性がより向上する観点から、バージンポリエチレン(A)の融点は、128℃以下であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましい。
【0024】
バージンポリエチレン(A)の融点は、例えば、JIS K7121:1987に規定されたプラスチックの転移温度測定方法により測定される。まず、「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」に従い、試験片を10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、次いで10℃/分の冷却速度で30℃まで冷却して試験片の状態調節を行う。その後、10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで加熱する示差走査熱量測定を行い、DSC曲線を得る。得られたDSC曲線の吸熱ピークの頂点温度を融点とする。なお、DSC曲線に複数の吸熱ピークが現れている場合には、頂点の高さが最も高い吸熱ピークの頂点温度を融点とする。
【0025】
また、バージンポリエチレン(A)は、メタロセン系重合触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレンである。メタロセン系重合触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレンは、チーグラ・ナッタ触媒により重合された、同程度の密度、融点を有する直鎖状低密度ポリエチレンに比べて、成形時の伸びがよく、低圧条件での成形性が向上する傾向がある。そのため、バージンポリエチレン(A)としてメタロセン系重合触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレン(A1)を用いることにより、上記のごとく多量のPCR材料を配合しながらも、表面平滑性に優れた成形体を良好な成形条件で成形することが可能になる。一方、発泡粒子が、チーグラ・ナッタ触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレンから構成されるバージンポリエチレンとリサイクルポリエチレンとの混合樹脂を基材樹脂とする場合には、成形性、表面平滑性が低下するおそれがある。また、成形体の柔軟性が低下するおそれがある。
【0026】
また、発泡粒子の型内成形での成形性や成形体の柔軟性がより向上するという観点から、バージンポリエチレン(A)(具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン(A1))の融解熱量ΔH1は、80J/g以上100J/g以下であることが好ましく、80J/g以上95J/g以下であることがより好ましく、82J/g以上90J/g以下であることがさらに好ましい。
【0027】
バージンポリエチレン(A)の融解熱量ΔH1は、例えば、JIS K7122:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計を用いて測定される。まず、「一定の熱処理を行った後、融解熱を測定する場合」に従い、加熱速度及び冷却速度を10℃/分として試験片の状態調節を行う。その後、加熱速度を10℃/分に設定して熱流束DSC(つまり、示差走査熱量測定)を行い、DSC曲線を取得する。得られたDSC曲線に基づき、融解熱量の値を決定することができる。また、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、複数の融解ピークの面積の合計を融解熱量とする。なお、
図1にバージンポリエチレン(A)のDSC曲線の一例を示す。
図1に示されるように、融解熱量は、DSC曲線上の80℃の点αと融解終了温度Teを示すDSC曲線上の点βとを結ぶ直線を引き、当該直線とDSC曲線とによって囲まれる領域(
図1の斜線部分)の面積で表される。
【0028】
二次発泡性がより向上し、表面平滑性がより向上する観点や、独立気泡率がより高くなり、成形性がより向上する観点から、バージンポリエチレン(A)のメルトフローレイト(つまり、MFR)は0.8g/10min以上1.5g/10min以下であることが好ましく、0.9g/10min以上1.4g/10min以下であることがより好ましく、1.0g/10min以上1.3g/10min以下であることがさらに好ましい。
【0029】
バージンポリエチレン(A)のMFRは、例えば、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0030】
直鎖状低密度ポリエチレン(A1)の重合触媒としてメタロセン系重合触媒を用いることにより、バージンポリエチレン(A)の密度、融解熱量、融点、MFRを上記範囲内に調整し易くなる。また、密度、融解熱量、融点、MFRは、共重合体(具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン(A1))を構成するα-オレフィンの種類、その含有量、共重体の分子量、及び分子量分布等を変更することにより制御することができる。
【0031】
リサイクルポリエチレン(B)は、PCR材料(ポストコンシューマ材料)である。ポストコンシューマ材料とは、JIS Q14021:2000に記載されたPCR材料を意味する。具体的には、PCR材料は、家庭から排出される材料、又は製品のエンドユーザとしての商業施設、工業施設及び各種施設から本来の目的のためにはもはや使用できなくなった製品として発生する材料であり、流通経路から戻される材料を含むものである。つまり、PCR材料は、一度市場に出た材料、又は製品(使用済み材料、又は製品)の廃棄物からリサイクルされた材料である。
【0032】
リサイクルポリエチレン(B)は、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と低密度ポリエチレン(B2)とを含み、かつ直鎖状低密度ポリエチレン(B1)を主成分とする。つまり、リサイクルポリエチレン(B)は、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と低密度ポリエチレン(B2)との合計100質量%中に、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)を50質量%以上含有する。リサイクルポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と共に、低密度ポリエチレン(B2)を含有するため、廃棄物由来のリサイクルポリエチレン(B)を含有するにも関わらず、発泡粒子の型内成形において、表面平滑性に優れる成形体を低温(具体的には、低圧)で成形することが可能になる。
リサイクルポリエチレン(B)が低密度ポリエチレン(B2)を含まない場合には、低温での伸びが低下し、良好な成形体を成形することが困難になるおそれがある。一方、リサイクルポリエチレン(B)中の低密度ポリエチレン(B2)が50重量%を超えて多くなると、成形体の表面平滑性が低下したり、離型後の成形体が収縮、変形し易くなり成形が困難になったりするおそれがある。
【0033】
直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と低密度ポリエチレン(B2)との合計100重量%中における直鎖状低密度ポリエチレン(B1)の含有量は、50重量%以上90重量%以下であることが好ましい。換言すれば、リサイクルポリエチレン(B)は、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と低密度ポリエチレン(B2)との合計100重量%に対して、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)50重量%以上90重量%以下と、低密度ポリエチレン(B2)10重量%以上50重量%以下とを含有することが好ましい。この場合には、より低温での成形を可能としつつ、成形可能温度範囲が広くなり、成形体の表面平滑性がより向上する。この効果がより向上するという観点から、リサイクルポリエチレン(B)は、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と低密度ポリエチレン(B2)との合計100重量%に対して、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)50重量%以上80重量%以下と、低密度ポリエチレン(B2)20重量%以上50重量%以下とを含有することがより好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)50重量%以上70重量%以下と、低密度ポリエチレン(B2)30重量%以上50重量%以下とを含有することがさらに好ましい。
【0034】
直鎖状低密度ポリエチレン(B1)としては、直鎖状低密度ポリエチレン(A1)と同様のものが例示される。直鎖状低密度ポリエチレン(B1)は、無架橋であることが好ましい。
【0035】
低密度ポリエチレン(B2)は、分岐構造を有し、密度が910kg/m3以上930kg/m3未満のポリエチレンである。低密度ポリエチレン(B2)は、無架橋であることが好ましい。
【0036】
リサイクルポリエチレン(B)には、本開示の目的、効果を阻害しない範囲で上記直鎖状低密度ポリエチレン(B1)及び上記低密度ポリエチレン(B2)以外の他の重合体を含んでいてもよい。リサイクルポリエチレン(B)中の他の重合体の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、0、つまり、リサイクルポリエチレン(B)は、重合体として実質的に上記直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と上記低密度ポリエチレン(B2)のみを含むことが特に好ましい。
【0037】
リサイクルポリエチレン(B)としては、本開示の目的、効果を阻害しない限り、種々のPCR材料を用いることができる。具体的には、PCR材料の由来となる材料、又は製品は、フィルム、シート、ボード等が挙げられる。また、発泡製品であってもよく、非発泡製品であってもよい。中でも、非発泡のフィルムの廃棄物から回収されたリサイクルポリエチレンが好ましい。この場合には、例えば、包装材等として使用されたポリエチレンフィルムの廃棄物から、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と低密度ポリエチレン(B2)とを含み、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)を主成分とするリサイクルポリエチレンが容易に得られる。また、包装材等として使用されるポリエチレンフィルムは着色剤を含まないものが多く、その廃棄物から回収されたリサイクルポリエチレンを用いた発泡製品の色調に影響を与えにくい。また、包装用のポリエチレンフィルムは廃棄される量が多いため、環境負荷低減に貢献しやすいものである。さらに、フィルムに要求されるポリエチレンの物性が発泡粒子に要求されるポリエチレンの物性に比較的近いという観点からも、リサイクルポリエチレン(B)はフィルム由来であることが好ましい。
なお、本明細書においてフィルムとは、膜状の高分子材料を主要成分とし、その厚さが250μm未満のものをいう。
【0038】
ポリエチレンフィルムには、たとえば滑剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤などの添加剤が通常含まれている。滑剤としては、具体的には、ステアリン酸アミドやエルカ酸アミド等の脂肪酸アミド、グリセリンモノステアレート等の脂肪酸エステル、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩等が例示される。アンチブロッキング剤としては、具体的には、シリカ、タルク、ゼオライト等が例示される。酸化防止剤としては、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)プロピオネート、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、テトラキス[3-(3´,5´-ジ-tert-ブチル-4´-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリスリトール等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト系酸化防止剤等が例示される。したがって、たとえばガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)、電界脱離イオン化質量分析(FD/MS)、液体クロマトグラフ分析(HPLC)等により上記添加剤を検出することにより、リサイクルポリエチレン(B)がフィルム由来であるか否かを推定することができる。
【0039】
使用済みのポリエチレンフィルムの廃棄物からPCR材料を製造する手段としては、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、まず、ポリエチレンフィルムの廃棄物を粉砕して、押出機に供給して、加熱混練することにより溶融樹脂を得る。次いで、溶融樹脂を水中に押出すと共にカットすることにより、ペレット状のリサイクルポリエチレン(B)を得ることができる。
【0040】
一般に、包装材等として使用されたポリエチレンフィルムの廃棄物由来のリサイクルポリエチレンは、少なくとも2回以上溶融混練された熱履歴を有する。また、PCR材料は、工程内リサイクル品と異なり、リサイクル前の製品の使用環境で汚染や劣化を受けていたり、回収・再生処理により品質が大きく変化する。そのため、従来は、リサイクルポリエチレンを使用して発泡粒子、成形体を製造しても、品質の安定した発泡粒子、成形体を得ることが困難であった。本開示のように、所定のバージンポリエチレン(A)と所定のリサイクルポリエチレン(B)とを組み合わせることにより、リサイクルポリエチレン(B)を多量に使用しても、表面平滑性に優れた成形体を低温の成形加熱温度で製造することができる発泡粒子を得ることができる。また、このようにして得られる発泡粒子及び成形体は、品質が安定している。
【0041】
リサイクルポリエチレン(B)の融点は115℃以上130℃以下であることが好ましい。この場合には、発泡粒子の製造安定性及び成形性をより向上させることができる。この効果がより向上する観点から、リサイクルポリエチレン(B)の融点は、118℃以上128℃以下であることがより好ましく、120℃以上125℃以下であることがさらに好ましい。
【0042】
リサイクルポリエチレン(B)の密度は0.910g/cm3以上0.930g/cm3未満であることが好ましい。この場合には、発泡粒子の製造安定性及び成形性をより向上させることができる。この効果がより向上する観点から、リサイクルポリエチレン(B)の密度は、0.915g/cm3以上0.928g/cm3以下であることがより好ましく、0.920g/cm3以上0.925g/cm3以下であることがさらに好ましい。
【0043】
リサイクルポリエチレン(B)のMFRは0.8g/10min以上2.5g/10min以下であることが好ましい。この場合には、発泡粒子の製造安定性及び成形性をより向上させることができる。この効果がより向上する観点から、リサイクルポリエチレン(B)のMFRは、0.9g/10min以上2.0g/10min以下であることがより好ましく、1.0g/10min以上1.8g/10min以下であることがさらに好ましい。
【0044】
また、バージンポリエチレン(A)のMFR(Iv)とリサイクルポリエチレン(B)のMFR(Ir)との差[(Ir-Iv)]は-1.2~1.2g/10minであることが好ましく、-1.0~1.0g/10minであることがより好ましく、-0.8~0.8g/10minであることがさらに好ましい。この場合には、発泡粒子の成形性をより確実に向上させることができる。
さらに、型内成形で成形可能な加熱温度範囲(具体的には、成形圧範囲)が広くなるという観点からは、バージンポリエチレン(A)のMFR(Iv)とリサイクルポリエチレン(B)のMFR(Ir)との差[(Ir-Iv)]は、-0.5~0.5g/10minであることが特に好ましい。
【0045】
リサイクルポリエチレン(B)の融点、密度、MFRは、上述のバージンポリエチレン(A)と同様にして測定することができる。リサイクルポリエチレン(B)として、例えばフィルムの廃棄物から回収されたPCR材料を用いることにより、融点、密度、MFRが上記範囲内のリサイクルポリエチレン(B)を容易に入手することができる。
【0046】
発泡粒子には、本開示の目的、効果を阻害しない範囲で上記バージンポリエチレン(A)及び上記リサイクルポリエチレン(B)以外の他の重合体を含んでいてもよい。他の重合体としては、上記バージンポリエチレン(A)及び上記リサイクルポリエチレン(B)の説明において例示した種のポリエチレン以外のポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリエチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂;オレフィン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー等が例示される。発泡粒子中の他の重合体の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、0、つまり、発泡粒子は、重合体として実質的に上記バージンポリエチレン(A)と上記リサイクルポリエチレン(B)との混合樹脂のみを含むことが特に好ましい。柔軟性に優れる成形体を得る観点から、発泡粒子は、高密度ポリエチレンを含まないことが好ましい。
【0047】
また、発泡粒子の融着性を向上させる観点から、発泡粒子に、その表面を被覆する被覆層を形成してもよい。被覆層は、例えば、発泡粒子を構成するポリエチレン系樹脂よりも融点の低いポリエチレン系樹脂から構成されることが好ましい。
【0048】
発泡粒子の平均気泡径は50μm以上180μm以下であることが好ましい。この場合には、型内成形での成形性、成形体の表面平滑性がより向上する。また、成形体の柔軟性がより向上する。成形性がより向上する観点からは、発泡粒子の平均気泡径は55μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましい。一方、表面平滑性、柔軟性がより向上する観点からは、160μm以下であることがより好ましく、120μm以下であることがさらに好ましい。
【0049】
発泡粒子の平均気泡径は、例えば次のようにして測定される。発泡粒子を略二等分し、走査型電子顕微鏡等の顕微鏡を用いて切断面全体の拡大写真を撮影する。断面拡大写真において、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面に至る線分を等角度(45°)で4本引き、これらの線分と交差する気泡数を測定する。4本の線分の合計長さを線分と交差する全気泡数で除することにより、発泡粒子の気泡径を算出する。同様の操作を20個の発泡粒子について行い、各発泡粒子の気泡径の算術平均値を算出し、この値を平均気泡径とする。
【0050】
発泡粒子は、例えば、二酸化炭素等の無機物理発泡剤を用いた所謂分散媒放出発泡方法により製造される。従来、この方法において発泡剤として無機物理発泡剤を用いると、発泡粒子の気泡径が小さくなりやすく、成形性が低下しやすいことが知られていた。本開示の発泡粒子によれば、平均気泡径が小さい場合であっても、良好な成形性を有している。その結果、柔軟性及び表面平滑性が優れた成形体を、優れた成形条件で成形することができる。
【0051】
発泡粒子の平均気泡径は、例えば、後述の分散媒放出発泡方法において、発泡剤として無機物理発泡剤を使用することにより上記範囲に調整することができる。また、気泡調整剤の種類、気泡調整剤の添加量、発泡方法、発泡剤の添加量、発泡温度、二段発泡工程の有無やその条件を変更することにより、上記範囲に調整することができる。なお、例えば、気泡調整剤の添加量を多くすると、気泡の数が増えるため気泡が小さくなり平均気泡径を小さくすることができる。二段発泡工程を設けることにより平均気泡径を大きくすることができる。
【0052】
発泡粒子の成形性と成形体の物性等をより向上させるという観点から、発泡粒子の独立気泡率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。なお、発泡粒子の独立気泡率は、ASTM-D2856-70手順Cに基づき測定することができる。
【0053】
発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定において、発泡粒子を10℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温した際に得られる1回目のDSC曲線に、基材樹脂に固有の融解ピークである固有ピークと、固有ピークよりも高温側に現れる融解ピークである高温ピークとが現れ、高温ピークの融解熱量(以下、「高温ピーク熱量」という。)が10J/g以上50J/g以下であることが好ましい。この場合には、発泡粒子の成形性がより向上する。この効果が向上する観点から、高温ピークの融解熱量は12J/g以上40J/g以下であることがより好ましく、15J/g以上30J/g以下であることがさらに好ましい。
【0054】
発泡粒子の高温ピーク熱量は、例えば、JIS K7122:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計を用いて測定される。具体的には、以下の方法により算出することができる。まず、1~3mgの発泡粒子を用いて熱流束DSCを行い、DSC曲線を取得する。このときの測定開始温度は30℃、測定終了温度は200℃、昇温速度は10℃/分とする。発泡粒子が高温ピークを有する場合、DSC曲線には、
図2に示すように、固有ピークΔHaと、固有ピークΔHaの頂点よりも高温側に頂点を有する高温ピークΔHbとが現れる。
【0055】
次に、DSC曲線上における80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当する点βとを結ぶ直線L1を引く。なお、融解終了温度Tは、高温ピークΔHbにおける高温側の端点、つまり、DSC曲線における、高温ピークΔHbと、高温ピークΔHbよりも高温側のベースラインとの交点である。
【0056】
直線L1を引いた後、固有ピークΔHaと高温ピークΔHbとの間に存在する極大点γを通り、グラフの縦軸に平行な直線L2を引く。この直線L2により固有ピークΔHaと高温ピークΔHbとが分割される。高温ピークΔHbの吸熱量は、DSC曲線における高温ピークΔHbを構成する部分と、直線L1と、直線L2とによって囲まれた部分の面積に基づいて算出することができる。
【0057】
なお、前述の方法によってDSC曲線を取得した後、発泡粒子を一旦冷却し、再度DSC曲線を取得した場合、DSC曲線には固有ピークΔHaのみが現れ、高温ピークΔHbはDSC曲線から消失する。
【0058】
発泡粒子の嵩密度は10~50kg/m3であることが好ましい。この場合には、得られる成形体の物性と軽量性とをよりバランスよく高めることができる。この観点から、嵩密度は12~40kg/m3であることがより好ましく、15~30kg/m3であることがさらに好ましい。
【0059】
発泡粒子の嵩密度は、例えば以下のように求められる。発泡粒子群から発泡粒子を無作為に取り出して容積1Lのメスシリンダーに入れ、自然堆積状態となるように多数の発泡粒子を1Lの目盛まで収容し、収容された発泡粒子の質量W2[g]を収容体積V2(1L])で除して(W2/V2)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の嵩密度が求められる。また、発泡粒子を構成する基材樹脂の密度[kg/m3]を上記嵩密度[kg/m3]で除すことにより発泡粒子の嵩倍率[倍]を求めることができる。
【0060】
発泡粒子は、無機物理発泡剤を用いた所謂分散媒放出発泡方法(つまり、ダイレクト発泡方法)により製造され、具体的には、たとえば下記の造粒工程、分散工程、発泡剤含浸工程、及び発泡工程を行うことにより製造される。
【0061】
造粒工程は、バージンポリエチレン(A)40~90重量%とリサイクルポリエチレン(B)10~60重量%とが混合された混合樹脂(ただし、両者の合計を100重量%とする)を基材樹脂とするポリエチレン系樹脂粒子を作製する工程である。ポリエチレン系樹脂粒子のことを以下適宜「樹脂粒子」という。
造粒工程は、例えば次のようにして行われる。まず、バージンポリエチレン(A)40~90重量部とリサイクルポリエチレン(B)10~60重量部とを両者の合計量が100重量部となるように混合して混合樹脂を作製する。混合は、例えば次のようにして行われる。押出機にバージンポリエチレン(A)40~90重量部と、リサイクルポリエチレン(B)10~60重量部と、必要に応じて添加される添加剤とを供給し、これらを押出機内で溶融混練することにより混合樹脂を得る。
【0062】
次に、押出機内の混合樹脂の溶融混練物を押出機先端に付されたダイの細孔からストランド状に押出し、ストランド状押出物を例えば水没させることにより冷却する。その後、樹脂粒子の重量が所定重量になるように、ストランド状押出物をペレタイザーで切断することにより、混合樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子を製造することができる(ストランドカット法)。また、溶融混練後に、溶融混練物を水中で押出し、樹脂粒子の重量が所定重量になるように、押出直後にペレタイザーで切断することによっても樹脂粒子を製造することができる(アンダーウォーターカット法)。
【0063】
造粒工程で使用するバージンポリエチレン(A)、リサイクルポリエチレン(B)の詳細は、上述の通りである。また、造粒工程でのバージンポリエチレン(A)とリサイクルポリエチレン(B)との混合割合は、上述の発泡粒子の混合樹脂におけるバージンポリエチレン(A)とリサイクルポリエチレン(B)との含有割合と対応する。
【0064】
造粒工程において添加される添加剤としては、例えば気泡調整剤が用いられる。気泡調整剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、シリカ等の無機物;ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンワックス、ポリカーボネート、架橋ポリスチレン等の重合体を用いることができる。通常、気泡調整剤の添加量は、バージンポリエチレン(A)とリサイクルポリエチレン(B)との合計100質量部に対して、0.001~5質量部であることが好ましく、0.005~3質量部であることがより好ましく、0.01~2質量部であることがさらに好ましい。樹脂粒子には、さらに必要に応じて、結晶核剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、導電性フィラー、抗菌剤等の添加剤を添加することができる。
【0065】
樹脂粒子の1個当たりの平均重量は、0.2~10mgであることが好ましく、0.5~5mgであることがより好ましい。樹脂粒子の形状は、円柱状、球状、角柱状、楕円球状である。発泡粒子の形状は、発泡前の樹脂粒子の形状に対応した形状(具体的には、類似した形状)となる。
【0066】
分散工程では、樹脂粒子を密閉容器内において分散媒に分散させる。密閉容器としては、オートクレーブなどの耐圧容器が用いられる。分散媒は、例えば液体であり、具体的には、水等の水性媒体である。分散媒には、分散剤を添加することができる。分散剤としては、微粒状の酸化アルミニウム、酸化チタン、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、カオリン、マイカ、クレー等が挙げられる。これらの分散剤は、通常、樹脂粒子100質量部に対して0.001~1質量部程度使用される。
【0067】
分散剤を使用する場合には、分散助剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤を併用することが好ましい。分散助剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.001~1質量部であることが好ましい。
【0068】
発泡剤含浸工程では、密閉容器内において、樹脂粒子に無機物理発泡剤を含浸させる。具体的には、樹脂粒子が分散媒中に分散している密閉容器内に無機物理発泡剤を圧入し、加熱・加圧下で樹脂粒子に発泡剤を含浸させる。
【0069】
無機物理発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気等が用いられる。これらのうち1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。オゾン層の破壊を防止できるため環境負荷の低減が可能であり、安価であるという観点から、無機物理発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、空気が好ましく、二酸化炭素がより好ましい。なお、無機物理発泡剤と共に有機物理発泡剤を併用してもよいが、環境負荷低減の観点から、有機物理発泡剤の配合量は、無機物理発泡剤と有機物理発泡剤との合計量100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、0であること(つまり、無機物理発泡剤のみを用いること)がさらに好ましい。
【0070】
発泡剤の使用量は、発泡粒子の嵩密度に応じて適宜調整することができる。また、発泡剤の使用量は、直鎖状低密度ポリエチレン(A1)の種類、発泡剤の種類等を考慮して決定される。発泡剤の使用量は、樹脂粒子100質量部に対して、通常0.5~30質量部であり、好ましくは1~15質量部である。
【0071】
発泡剤含浸工程前、発泡剤含浸工程中、及び発泡剤含浸工程後のいずれかの時点において、ポリエチレン系樹脂が分散している分散媒を所定温度に保持する高温ピーク形成工程を行うことが好ましい。この場合には、上述の高温ピークを容易に生じさせることができる。高温ピーク形成工程は、好ましくは、発泡剤含浸工程後に行われる。高温ピーク形成工程は、具体的には、次のようにして行われる。
【0072】
密閉容器内で分散媒中に分散した樹脂粒子を、直鎖状低密度ポリエチレン(A1)の融解終了温度Te℃未満の温度で加熱し、直鎖状低密度ポリエチレン(A1)の一部又は大部分を融解させる。次いで、直鎖状低密度ポリエチレン(A1)の融点Tm℃よりも30℃低い温度以上(つまり、Tm-30℃以上)、かつ融解終了温度Te℃未満の温度Ta℃に十分な時間(例えば1~60分間)保持することにより、融解した直鎖状低密度ポリエチレン(A1)の結晶部分を再結晶化させる。このようにして、高温ピークを生じさせることができる。
また、密閉容器内で分散媒中に分散した樹脂粒子を、Tm-30℃以上、融解終了温度Te℃未満の範囲内の温度まで十分な時間をかけてゆっくりと昇温させることによっても、高温ピークを生じさせることができる。
なお、上述のTm-30℃以上かつTe℃未満という保持温度範囲は、発泡剤として無機物理発泡剤を用いた場合の適切な範囲である。
【0073】
発泡工程では、発泡剤を含浸させた樹脂粒子を密閉容器からその内圧よりも低圧の雰囲気下に放出する。これにより、樹脂粒子を発泡させ、発泡粒子を得ることができる。
【0074】
具体的には、発泡工程では、発泡剤を含有する樹脂粒子を分散媒と共に発泡温度Tb℃で密閉容器内から低圧の雰囲気へ放出することにより、発泡粒子が得られる。発泡温度Tbは、低密度ポリエチレンの融点Tmより15℃低い温度(つまり、Tm-15℃)以上、融解終了温度以下の範囲であることが好ましい。
【0075】
高温ピーク形成工程における保持温度Ta、その保持時間、発泡工程における発泡温度等の条件を変更することにより、上述の高温ピーク熱量の大きさを調整することができる。例えば、発泡粒子の高温ピーク熱量は、保持温度Taでの保持時間が長いほど大きくなる傾向がある。また、発泡粒子の高温ピーク熱量は、発泡温度Tbが低いほど大きくなる傾向がある。
【0076】
なお、上記のようにして得られる発泡粒子は、空気等により加圧処理して気泡の内圧を高めた後、スチーム等で加熱して発泡させ(つまり、二段発泡工程)、さらに見掛け密度の低い発泡粒子(つまり、二段発泡粒子)とすることもできる。
【0077】
発泡粒子の型内成形により、発泡粒子成形体が得られる。つまり、発泡粒子を成形型内に充填した後、成形型内にスチーム等の加熱媒体を導入することにより、発泡粒子を加熱して二次発泡させると共に、相互に融着させて成形空間の形状が賦形された成形体を得ることができる。成形体の製造方法としては、公知の型内成形法が例示される。具体的には、クラッキング成形法(例えば、特公昭46-38359号公報参照)、加圧成形法(例えば、特公昭51-22951号公報参照)、圧縮充填成形法(例えば、特公平4-46217号公報参照)、常圧充填成形法(例えば、特公平6-49795号公報参照)、これらを組み合わせた方法(例えば、特公平6-22919号公報参照)などの型内成形法を採用することができる。
発泡粒子の型内成形においては、その発泡性(具体的には、二次発泡性)を補うために発泡粒子は、成形型内への充填前に、空気等の加圧気体により発泡粒子を予め加圧処理して発泡粒子の気泡内の圧力を高め、所定の内圧を付与してから成形型内に充填させて成形されることが多い。一方、本開示の発泡粒子は発泡性、成形性が良好であることから、上記加圧処理を行わずに良好な成形体を製造することができる。具体的には、成形型内に充填する発泡粒子の内圧が0.01MPa(G;ゲージ圧)以下であることが好ましく、0MPa(G)であることがより好ましい。
【0078】
成形体は、上述の発泡粒子が多数相互に融着して構成されている。本開示の発泡粒子を型内成形することにより、表面平滑性に優れ、外観が美麗な成形体が得られる。
【0079】
軽量性と剛性との両立の観点から、成形体の密度は、10~50kg/m3であることが好ましく、15~40kg/m3であることがより好ましく、18~30kg/m3であることがさらに好ましい。
【0080】
成形体の密度は、成形体の重量(g)を、成形体の外形寸法から求められる体積(L)で除し、単位換算することにより算出される。なお、成形体の外形寸法から体積を求めることが容易でない場合には、水没法により成形体の体積を求めることができる。
【0081】
成形体の引張強さS[単位:MPa]と引張伸びE[単位:%]との積S×E[単位:MPa・%]は、8MPa・%以上であることが好ましい。この場合には、成形体が優れた柔軟性を発揮することができる。また、成形体の耐久性が向上するため、例えば緩衝材等の繰り返し使用する用途にも好適に使用することができる。柔軟性、耐久性がより向上する観点から、引張強さSと引張伸びEとの積(つまり、S×E)は、10MPa・%以上であることがより好ましい。なお、上記積の上限は概ね50MPa・%である。
【0082】
成形体の引張強さS及び引張伸びEは、JIS K6767:1999に準拠して、測定される。具体的には、まず、バーチカルスライサーを用いて成形体から全ての面が切り出し面となるように、120mm×25mm×10mmの切り出し片を切り出す。この切り出し片から糸鋸を用いてダンベル状1号形状の試験片を作製する。次いで、試験片を用いて500mm/分の引張速度で引張試験を行うことにより引張強さS及び引張伸びEが求められる。測定される引張り時の最大引張り応力を引張強さE、破断時の伸びを引張伸びSとする。なお、成形体の引張強さSと引張伸びEとを併せて引張り特性ということがある。
【0083】
成形体の引張強さSは、0.25MPa以上であることが好ましく、0.30MPa以上であることがより好ましい。この場合には、成形体が優れた柔軟性を発揮することができる。また、同様の観点から、引張伸びEは、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。
【0084】
成形体の50%圧縮強さは、50~300kPaであることが好ましい。この場合には、成形体が柔軟性を備えつつ優れた強度を発揮することができる。この観点から、成形体の50%圧縮強さは、80~250kPaであることがより好ましく、100~200kPaであることがさらに好ましい。
【0085】
成形体の50%圧縮強さは、例えば以下のようにして求められる。まず、成形体の表面にあるスキン層が試験片に含まれないように、成形体の中心部から縦50mm×横50mm×厚み25mmの試験片を切り出す。次いで、JIS K6767:1999に基づき、圧縮速度10mm/分にて圧縮試験を行い成形体の50%圧縮強さを求めることができる。
【0086】
本開示の発泡粒子を用いて得られる成形体は、使用済みのフィルム等の廃棄物に由来するポリエチレン成分を含有するものであり、環境適合性に優れている。また、優れた柔軟性、表面平滑性を示す。これにより、成形体が優れた緩衝性、表面保護性を示し、緩衝包装材として好適になる。特に、電気・電子機器用の包装材としても使用することができる。
【実施例】
【0087】
次に、発泡粒子、成形体の実施例、比較例について説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例によって限定されるものではない。
【0088】
実施例、比較例においては、表1に示すバージンポリエチレン(vPE1~vPE4)、表2に示すリサイクルポリエチレン(rPE1~rPE4)を用いた。リサイクルポリエチレンは、フィルム製品由来のPCR材料である。
実施例、比較例において使用したリサイクルポリエチレンは、使用済みのポリエチレンフィルムの廃棄物を溶融混練し、溶融混練物をUWC(つまり、アンダーウォーターカット)により造粒したペレット状のものを使用した。リサイクルポリエチレンのペレットは、外観上半透明から白色を呈し、球状であった。
【0089】
表1、表2にバージンポリエチレン、リサイクルポリエチレンの組成、物性、重合に使用された触媒種等を示す。リサイクルポリエチレンの「LLDの含有割合(重量%)」は、リサイクルポリエチレンを構成する樹脂成分100重量%中に占めるLLD成分の割合を示す。表1、表2中の略号などは以下の通りである。「vPE」はバージンポリエチレンを表す。「rPE」はリサイクルポリエチレンを表す。「LLD」は直鎖状低密度ポリエチレン(PE-LLD)を表す。「LD」は低密度ポリエチレン(PE-LD)を表す。
【0090】
・融点
バージンポリエチレン、リサイクルポリエチレンの融点は、JIS K7121:1987に規定されたプラスチックの転移温度測定方法により測定した。まず、試験片として、直鎖状低密度ポリエチレン(A1)のペレットを準備した。「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」に従い、試験片2mgを10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、次いで10℃/分の冷却速度で30℃まで冷却して試験片の状態調節を行った。その後、10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで加熱する示差走査熱量測定を行い、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線の吸熱ピークの頂点温度を融点とした。なお、測定装置としては、日立ハイテクサイエンス社製の熱流束示差走査熱量測定装置「DSC7020」を用いた。
【0091】
・融解熱量
バージンポリエチレン、リサイクルポリエチレンの融解熱量は、JIS K7122:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計を用いて測定した。まず、「一定の熱処理を行った後、融解熱を測定する場合」に従い、加熱速度及び冷却速度を10℃/分として試験片の状態調節を行った。その後、加熱速度を10℃/分に設定して熱流束DSC(つまり、示差走査熱量測定)を行い、DSC曲線を取得した。得られたDSC曲線に基づき、融解熱量の値を決定した。なお、
図1にvPE1のDSC曲線の一例を示す。
図1に示されるように、融解熱量は、DSC曲線上の80℃の点αと融解終了温度Teを示すDSC曲線上の点βとを結ぶ直線を引き、当該直線とDSC曲線とによって囲まれる領域(
図1の斜線部分)の面積で表される。なお、測定装置としては、日立ハイテクサイエンス社製の熱流束示差走査熱量測定装置「DSC7020」を用いた。DSC測定時の窒素ガスの流量は、30ミリリットル/分とした。
【0092】
・MFR
バージンポリエチレン(A)、リサイクルポリエチレン(B)のMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0093】
・酸化防止剤の含有量
リサイクルポリエチレン(B)に含まれる添加剤として酸化防止剤の含有量をガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)、電界脱離イオン化質量分析(FD/MS)、及び液体クロマトグラフ分析(HPLC)により測定した。なお、酸化防止剤は、フィルム用途において一般的に配合される添加剤の1つである。
測定試料の前処理としては、まず、リサイクルポリエチレン(B)のペレットを冷凍粉砕し、溶媒としてクロロホルムを用いてソックスレー抽出を行い、抽出液を濃縮させ、アセトンを用いて再沈させた。これをろ過し、ろ液を濃縮して定容したものを測定試料としてGC/MS分析、FD/MS分析、及びHPLC分析を行った。リサイクルポリエチレン(B)中の酸化防止剤の含有量は、標準試料とのピーク強度の対比により定量した。なお、GC/MSの測定装置としては日本電子社製「JMS-Q1500GC型」を使用し、FD/MSの測定装置としては日本電子社製「JMS-T100GCV型」を使用し、HPCLの測定装置としては日本分光社製「EXTREMA型」を使用した。
いずれのリサイクルポリエチレンにおいても、フェノール系酸化防止剤として3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、及びテトラキス[3-(3´,5´-ジ-tert-ブチル-4´-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリスリトールが検出された。また、ホスファイト系酸化防止剤としてトリス(2、4-tert-ブチルフェニル)ホスファイトが検出された。表2にリサイクルポリエチレン(B)中の樹脂100重量部に対する酸化防止剤の総含有量(重量部)を示す。
【0094】
[実施例1~5、比較例1~4]
(樹脂粒子の製造)
バージンポリエチレンのペレットとリサイクルポリエチレンのペレットと気泡調整剤とを押出機に供給した。バージンポリエチレンとリサイクルポリエチレンとの配合割合は表3に示す通りである。また、気泡調整剤の添加量は、バージンポリエチレンとリサイクルポリエチレンとの合計100質量部に対して0.02質量部である。気泡調整剤はホウ酸亜鉛であり、具体的には富田製薬社製のホウ酸亜鉛2335を用いた。押出機内でバージンポリエチレン、リサイクルポリエチレン、気泡調整剤を溶融混練して溶融樹脂(つまり混合樹脂)を得た。次いで、押出機内の溶融樹脂をダイの細孔からストランド状に押出した。ストランド状押出物を水中で冷却し、ペレタイザーにより切断し、1個当たりの質量が1.6mgの樹脂粒子を得た。なお、樹脂粒子の直径Dに対する長さLの比L/Dは1.8とした。
表3中、「vLLD:rLLD:rLD」とは、樹脂粒子中において、バージンの直鎖状低密度ポリエチレン(vLLD)に由来するポリエチレン成分と、リサイクルポリエチレンの直鎖状低密度ポリエチレン(rLLD)に由来するポリエチレン成分と、リサイクルポリエチレンの低密度ポリエチレンに由来するポリエチレン成分との重量比率(ただし、vLLDとrLLDとrLDとの合計を100重量%とする)を意味する。
【0095】
(一段発泡粒子の製造)
内容積5Lのオートクレーブ内に、分散媒としての水3Lと樹脂粒子1kgを入れた。さらに、オートクレーブ内に分散剤としてのマイカ0.3質量部、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.03質量部(有効成分として)を添加した。マイカとしては、ヤマグチマイカ社製のA-11を用い、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液としては、第一工業製薬社製のネオゲン(登録商標)S-20Fを用いた。
【0096】
オートクレーブの内容物を撹拌しながら、表3に示す発泡温度まで加熱しつつ、表3に示す平衡圧となるまでオートクレーブ中に物理発泡剤としての二酸化炭素を圧入して樹脂粒子に発泡剤を含浸させた。次いで、オートクレーブ内を発泡温度で10分間保持した後、オートクレーブを開放し、内容物を大気圧下に放出することにより樹脂粒子を発泡させ、一段発泡粒子を得た(一段発泡工程)。発泡温度を表3に示す。なお、表3において、「(G)」は、ゲージ圧であることを意味する。
【0097】
一次発泡粒子の嵩密度を次のようにして測定した。測定は、一段発泡粒子を温度23℃、相対湿度50%、気圧1atmの雰囲気下で2日間静置することにより、状態調節を実施した一段発泡粒子について行った。状態調節後の一段発泡粒子群から一段発泡粒子を無作為に取り出して容積1Lのメスシリンダーに入れ、自然堆積状態となるように多数の一段発泡粒子を1Lの目盛まで収容した。収容された一段発泡粒子の質量W2[g]を測定し、この質量W2を収容体積V2(つまり、1L])で除して(W2/V2)、単位を[kg/m3]に換算することにより、一段発泡粒子の嵩密度を求めた。その結果を表3に示す。
【0098】
(二段発泡粒子の製造)
次に、一段発泡粒子から二段発泡粒子を製造する二段発泡工程を行った。まず、圧力容器内で一段発泡粒子に圧縮空気を含浸させて、発泡粒子の内圧を表3に示す値にした。内圧を付与した一段発泡粒子を加圧発泡機に充填した後、表3に示す圧力(ゲージ圧)のスチームにより一段発泡粒子を加熱してさらに発泡させた(二段発泡工程)。これにより、二段発泡粒子を得た。なお、二段発泡粒子の熱キシレン抽出法による不溶分の割合は、0であった。測定結果を表3に示す。
【0099】
・嵩密度
二段発泡粒子の嵩倍率を上述の一段発泡粒子と同様にして測定した。
【0100】
・嵩倍率
発泡粒子を構成する基材樹脂の密度[kg/m3]を上記二段発泡粒子の嵩密度[kg/m3]で除すことにより二段発泡粒子の嵩倍率[倍]を求めた。
【0101】
・平均気泡径
発泡粒子を略二等分し、走査型電子顕微鏡等の顕微鏡を用いて切断面全体の拡大写真を撮影した。断面拡大写真において、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面に至る線分を等角度(45°)で4本引き、これらの線分と交差する気泡数を測定した。4本の線分の合計長さを線分と交差する全気泡数で除することにより、発泡粒子の気泡径を算出した。同様の操作を20個の発泡粒子について行い、各発泡粒子の気泡径の算術平均値を算出し、この値を平均気泡径とした。
【0102】
・独立気泡率
発泡粒子の独立気泡率は、ASTM-D2856-70手順Cに基づき空気比較式比重計を用いて測定した。具体的には、次のようにして求めた。状態調節後の嵩体積約20cm3の発泡粒子を測定用サンプルとし、下記の通りエタノール没法により正確に見掛けの体積Vaを測定した。見掛けの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じ、東京サイエンス社製Beckman
Model1000 Air Comparison Pycnometerにより測定される測定用サンプルの真の体積の値Vxを測定した。そして、これらの体積値Va及びVxを基に、下記の式(2)により独立気泡率を計算し、サンプル5個(N=5)の平均値を発泡粒子の独立気泡率とした。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(2)
ただし、
Vx:上記方法で測定される発泡粒子の真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(単位:cm3)
Va:発泡粒子を、エタノールの入ったメスシリンダーに沈めた際の水位上昇分から測定される発泡粒子の見掛けの体積(単位:cm3)
W:発泡粒子測定用サンプルの重量(単位:g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(単位:g/cm3)
【0103】
・高温ピーク熱量
前述した方法により発泡粒子(具体的には、二段発泡粒子)の高温ピーク熱量を測定した。即ち、約2mgの発泡粒子を用いて熱流束DSCを行い、得られたDSC曲線における高温ピークのピーク面積を発泡粒子の高温ピーク熱量とした。熱流束DSCにおける測定開始温度は30℃、測定終了温度は200℃、昇温速度は10℃/分とした。測定装置として、熱流束示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製、型番:DSC7020)を用いた。
【0104】
・成形可能範囲の評価
実施例、比較例の発泡粒子を後述の「・成形圧を0.01MPaずつ変化させることによる型内成形」に記載の方法により、成形圧を0.07~0.12MPa(G)の範囲で0.01MPaずつ変化させて成形体を試験的に作成する型内成形を行い、成形可能範囲を下記の基準で評価した。その結果を表3に示す。
3:合格品を成形可能な成形圧が0.07~0.12MPa(G)の範囲内に3点以上存在する場合。
2:合格品を成形可能な成形圧が0.07~0.12MPa(G)の範囲内に2点存在する場合。
1:合格品を成形可能な成形圧が0.07~0.12MPa(G)の範囲内に1点存在する場合。
0:合格品を成形可能な成形圧が0.07~0.12MPa(G)の範囲内に存在しない場合。
なお、評価点1以上が合格であり、0が不合格である。
【0105】
・成形圧を0.01MPaずつ変化させることによる型内成形
後述の「(発泡粒子成形体の製造)」の方法において、成形圧(具体的には、成形スチーム圧)を、0.07~0.12MPa(G)の間で0.01MPaずつ変化させて成形体を成形した。離型後の成形体を80℃に調整されたオーブン内に12時間静置することにより成形体の養生を行った。養生後の成形体を相対湿度50%、温度23℃、気圧1atmの雰囲気にて24時間静置することにより、成形体の状態調節を行った。次いで、成形体の二次発泡性、融着性、回復性を下記の基準により5段階で評価した。各項目では評価5が合格である。全ての項目で合格となる成形体が得られるスチーム圧を、上述の合格品を成形可能な成形圧とした。成形可能なスチーム圧の下限値が低いものほど、成形可能な成形加熱温度が低いことを意味し、成形性が優れていることを意味する。また、成形可能なスチーム圧の下限値から上限値までの幅が広いものほど、成形可能な成形加熱温度の範囲が広いことを意味し、成形性が優れていることを意味する。
【0106】
・二次発泡性
発泡粒子成形体の中央部に100mm×100mmの矩形を描き、次いで、この矩形のいずれかの角から対角線を描いた。この対角線に重なるように形成され、一辺1mmの正方形よりも大きいボイド(つまり、発泡粒子間の間隙)の数を数えた。ボイドの数に基づいて、以下の基準により二次発泡性を5段階で評価した。
5:ボイドの数が5個未満
4:ボイドの数が5個以上10個未満
3:ボイドの数が10個以上15個未満
2:ボイドの数が15個以上20個未満
1:ボイドの数が20個以上
【0107】
・融着性
成形体を長手方向に略等分となるように折り曲げて破断させた。これにより露出した破断面を目視観察し、発泡粒子同士の界面が剥離している発泡粒子の数と、内部で破断した発泡粒子の数とを数えた。そして、破断面に露出している発泡粒子の総数、つまり、発泡粒子同士の界面が剥離している発泡粒子の数と、内部で破断した発泡粒子の数との合計に対する発泡粒子の内部で破断した発泡粒子の数の割合を算出した。この割合を百分率(%)で表した値を融着率とした。融着率に基づいて、以下の基準により融着性を5段階で評価した。
5:融着率が80%以上
4:融着率が60%以上80%未満
3:融着率が40%以上60%未満
2:融着率が20%以上40%未満
1:融着率が20%未満
【0108】
・回復性
発泡粒子成形体におけるひけ、つまり、成形体の中央が周囲よりもくぼんでいる状態の有無を評価した。具体的には、得られた成形体の中央部分と四隅部分の厚みをそれぞれ測定し、四隅部分のうち最も厚みが厚い部分に対する中央部分の厚みの比を算出した。厚み比に基づいて、以下の基準により回復性を5段階で評価した。
5:厚み比が99%以上
4:厚み比が98%以上99%未満
3:厚み比が96%以上98%未満
2:厚み比が90%以上96%未満
1:厚み比が90%未満
【0109】
(発泡粒子成形体の製造)
まず、二段発泡工程において得られた二段発泡粒子を23℃で24時間乾燥させた。次いで、二段発泡粒子に内圧付与を行うことなく(つまり、内圧は0)、クラッキング量を20%(具体的には、8mm)に調節した平板成形型(具体的には、平板形状のキャビティを備える金型)内に二段発泡粒子を充填した。成形型の寸法は、縦200mm、横65mm、厚み40mmである。次に、成形型を型締めし、成形型の両面にあるドレン弁を開放した状態で水蒸気を5秒間供給して予備加熱を行った後、成形型の一方の面側から0.01MPa(G)のスチームを供給して一方加熱を行った。次いで、成形型の反対側の面から0.01MPa(G)のスチームを供給して一方加熱を行った後、表3に示す成形圧の水蒸気で8秒間加熱した。この8秒間の加熱が本加熱である。本加熱終了後、放圧し、成形型内面に取り付けられた面圧計の値が0.02MPa(G)に低下するまで水冷した後、成形体を離型した。成形体を80℃のオーブン内で12時間静置することにより養生した。成形体を相対湿度50%、温度23℃、大気圧1atmの条件にて24時間静置することにより、成形体の状態調節を行った。このようにして成形体を製造した。次に、以下のようにして成形体の密度、引張強さ、引張伸び、50%圧縮強さを測定すると共に、成形体の表面平滑性を評価した。測定結果、評価結果を表3に示す。
【0110】
・成形体密度
成形体密度(kg/m3)は、成形体の重量(g)を成形体の外形寸法から求められる体積(L)で除し、単位換算することにより算出した。
【0111】
・引張強さ及び引張伸び
成形体の引張強さS及び引張伸びEは、JIS K6767:1999に準拠して求めた。まず、バーチカルスライサーを用いて成形体から全ての面が切り出し面となるように、120mm×25mm×10mmの切り出し片を切り出した。この切り出し片から糸鋸を用いてダンベル状1号形状の試験片を作製した。次いで、試験片を用いて、500mm/分の引張速度で引張試験を行った。測定される引張り時の最大引張り応力を引張強さE、破断時の伸びを引張伸びSとした。
【0112】
・50%圧縮応力
成形体の表面にあるスキン層が試験片に含まれないように、成形体の中心部から縦50mm×横50mm×厚み25mmの試験片を切り出した。JIS K6767:1999に基づき、圧縮速度10mm/分にて圧縮試験を行い成形体の50%圧縮応力を求めた。なお、50%圧縮応力の測定に用いた試験片の密度を上記成形体密度の測定と同様の方法により求め、「切り出し密度」として表3に示した。
【0113】
(表面平滑性)
成形体の表面を観察し、表面性を下記基準に基づいて評価した。
A:成形体の表面に粒子間隙がほとんどなく、金型転写、成形痕などに起因する凹凸が目立たない良好な表面状態を示す。
B:成形体の表面に粒子間隙がやや認められるか、あるいは、金型転写、成形痕などに起因する凹凸がやや認められる。
C:成形体の表面に粒子間隙が認められるか、あるいは、金型転写、成形痕などに起因する凹凸が認められる。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
表1~表3より理解されるように、実施例1~5の発泡粒子によれば、所定のバージンポリエチレンと所定のリサイクルポリエチレンとの混合樹脂を基材樹脂とすることにより、PCR材料であるリサイクルポリエチレンを比較的多量に含有しながらも、表面平滑性に優れた発泡粒子成形体を低圧で製造することができた。
【0118】
実施例1~4は、実施例5と比較して成形可能範囲が広いものであった。これは、バージンポリエチレン(A)のMFRと、リサイクルポリエチレン(B)のMFRとの差[Ir-Iv]が-0.5~0.5g/10minの範囲内にあることが理由の一つであると考えられる。また、リサイクルポリエチレン(B)中の低密度ポリエチレン(B1)の含有割合が比較的多いことも理由の一つであると考えられる。
また、実施例1、2、4、5は、実施例3と比較して引張り特性が良好であり、柔軟性に優れていた。これは、発泡粒子の平均気泡径が比較的小さいためであると考えられる。
【0119】
比較例1及び2では、バージンポリエチレンとして、チーグラ・ナッタ触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレンを用いた。型内成形での成形圧がやや高くなり、成形時にリサイクルポリエチレンに含まれる低密度ポリエチレンの影響を受けやすくなっていた。その結果、成形体の表面平滑性が低下していた。また、比較例1では、成形体の柔軟性が低下していた。
比較例2では、チーグラ・ナッタ触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレンが使用されていることに加え、バージンポリエチレンとリサイクルポリエチレンのMFR差が大きすぎるため、成形性が著しく悪く、いずれの成形圧でも合格品を得ることができなかった。
【0120】
比較例3では、低密度ポリエチレンを含有しておらず、直鎖状低密度ポリエチレンのみから構成されたポリエチレン系樹脂から構成されたリサイクルポリエチレンを使用した。その結果、成形性が著しく悪く、いずれの成形圧でも合格品を得ることができなかったこれは、廃棄物に由来するリサイクルポリエチレンが低密度ポリエチレンを含まない場合には、成形時の伸びが劣るためであると考えられる。
【0121】
比較例4では、バージンポリエチレンを使用せずに発泡粒子を作製した。つまり、比較例4の発泡粒子は、基材樹脂がリサイクルポリエチレンから構成されている。そのため、発泡性がやや劣り、発泡粒子の嵩倍率がやや低下した。また、成形性が著しく悪く、いずれの成形圧でも合格品を得ることができなかった。
【要約】
【課題】PCR材料を含有しながらも、表面平滑性に優れた発泡粒子成形体を型内成形により良好な成形条件で製造できるポリエチレン系樹脂発泡粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】バージンポリエチレン(A)とリサイクルポリエチレン(B)との混合樹脂を基材樹脂とするポリエチレン系樹脂発泡粒子及びその製造方法である。混合樹脂は、バージンポリエチレン(A)と、リサイクルポリエチレン(B)との所定の割合で含有する。バージンポリエチレン(A)は、メタロセン系重合触媒により重合された所定の物性を有する直鎖状低密度ポリエチレン(A1)である。リサイクルポリエチレン(B)は、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)と低密度ポリエチレン(B2)とを含み、直鎖状低密度ポリエチレン(B1)を主成分とするポストコンシューマ材料である。
【選択図】
図1