(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】圧縮機ユニット及び冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F04C 29/12 20060101AFI20230215BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
F04C29/12 C
F04C29/00 B
(21)【出願番号】P 2021203179
(22)【出願日】2021-12-15
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2021161447
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊竹 大樹
(72)【発明者】
【氏名】片山 達也
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168345(WO,A1)
【文献】実開昭62-016776(JP,U)
【文献】特開2014-092078(JP,A)
【文献】特開平05-099177(JP,A)
【文献】特開2014-020209(JP,A)
【文献】特開2004-239099(JP,A)
【文献】特開2004-060605(JP,A)
【文献】実開昭56-039873(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機構(50)を有する圧縮機本体(11)と、前記圧縮機本体(11)に接続されたアキュムレータ(40)と、を備え、冷凍サイクルを行う冷凍装置(1)に搭載される圧縮機ユニットであって、
前記圧縮機構(50)は、シリンダ(51)と、前記シリンダ(51)内で偏心回転するピストン(54)と、前記シリンダ(51)の圧縮室(55)の内部を低圧室(55a)と高圧室(55b)とに区画するブレード(57)と、を有し、
前記ピストン(54)及び前記ブレード(57)の重量に対して前記圧縮機本体(11)の回転数
Nの2乗を乗算した値F、前記ピストン(54)の厚み方向の中心から前記圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離h、前記圧縮機本体(11)が前記アキュムレータ(40)側に傾く方向に振動する際の回転中心であって前記圧縮機ユニット(10)の重心(G1)を通る中心軸まわりの慣性モーメントI、前記アキュムレータ(40)の入口管(42)の軸心から前記圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離L、前記冷凍装置(1)の定格能力Pが、
F×(h/I)×L≦19×P+128
という条件を満た
し、
前記圧縮機本体(11)の回転数Nは、112rps以上である
圧縮機ユニット。
【請求項2】
請求項1の圧縮機ユニットにおいて、
F×(h/I)×L≦19×P+95
という条件を満たす
圧縮機ユニット。
【請求項3】
圧縮機構(50)を有する圧縮機本体(11)と、前記圧縮機本体(11)に接続されたアキュムレータ(40)と、を備え、冷凍サイクルを行う冷凍装置(1)に搭載される圧縮機ユニットであって、
前記圧縮機構(50)は、シリンダ(51)と、前記シリンダ(51)内で偏心回転するピストン(54)と、前記シリンダ(51)の圧縮室(55)の内部を低圧室(55a)と高圧室(55b)とに区画するブレード(57)と、を有し、
前記ピストン(54)及び前記ブレード(57)の重量に対して前記圧縮機本体(11)の回転数
Nの2乗を乗算した値F、前記ピストン(54)の厚み方向の中心から前記圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離h、前記圧縮機本体(11)が前記アキュムレータ(40)側に傾く方向に振動する際の回転中心であって前記圧縮機ユニット(10)の重心(G1)を通る中心軸まわりの慣性モーメントI、前記アキュムレータ(40)の入口管(42)の軸心から前記圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離L、前記シリンダ(51)の容積V
、前記圧縮機本体(11)の回転数Nが、
F×(h/I)×L≦0.063×V×N+114
という条件を満た
し、
前記圧縮機本体(11)の回転数Nは、112rps以上である
圧縮機ユニット。
【請求項4】
請求項3の圧縮機ユニットにおいて、
F×(h/I)×L≦0.063×V×N+85
という条件を満たす
圧縮機ユニット。
【請求項5】
請求項
1~4の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、
前記圧縮機本体(11)
の回転数
Nは、130rps以上である
圧縮機ユニット。
【請求項6】
請求項
5の圧縮機ユニットにおいて、
前記圧縮機本体(11)は、1シリンダ型である
圧縮機ユニット。
【請求項7】
請求項1~
6の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、
前記ピストン(54)及び前記ブレード(57)の少なくとも一方の密度は、6020kg/m
3以下である
圧縮機ユニット。
【請求項8】
請求項
7において、
前記ピストン(54)及び前記ブレード(57)の少なくとも一方の材質は、アルミニウムである
圧縮機ユニット。
【請求項9】
請求項1~
8の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、
前記圧縮機本体(11)に充填された潤滑油の重量M1、前記圧縮機ユニット(10)の重量M2が、
M1/M2>0.0172×P+0.0418
という条件を満たす
圧縮機ユニット。
【請求項10】
請求項1~
9の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、
前記圧縮機構(50)を駆動する駆動機構(20)を備え、
前記駆動機構(20)は、駆動軸(25)と、前記駆動軸(25)を回転させるロータ(23)を有するモータ(21)と、前記ロータ(23)に設けられたバランスウエイト(30)と、を有し、
前記バランスウエイト(30)は、前記ロータ(23)の軸方向端部において周方向に延びる円環状のウエイト本体(31)を有し、
前記ウエイト本体(31)における前記ロータ(23)側の面には、周方向に沿って延びる凹部(31a)が形成される
圧縮機ユニット。
【請求項11】
請求項1~
9の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、
前記圧縮機構(50)を駆動する駆動機構(20)を備え、
前記駆動機構(20)は、駆動軸(25)と、前記駆動軸(25)を回転させるロータ(23)を有するモータ(21)と、前記ロータ(23)に設けられたバランスウエイト(30)と、を有し、
前記バランスウエイト(30)は、ウエイト本体(31)と、ウエイトカバー(32)と、を有し、
前記ウエイト本体(31)は、前記ロータ(23)の軸方向端部において周方向に延びる円弧状に形成され、
前記ウエイトカバー(32)は、円環状のカバー本体(32a)と、前記カバー本体(32a)の内周縁に沿って立設する内周壁(32b)と、前記カバー本体(32a)の外周縁に沿って立設する外周壁(32c)と、を有し、
前記ウエイト本体(31)は、前記ウエイトカバー(32)の前記カバー本体(32a)、前記内周壁(32b)、及び前記外周壁(32c)に覆われる
圧縮機ユニット。
【請求項12】
請求項1~
11の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、
前記圧縮機構(50)を駆動する駆動機構(20)を備え、
前記駆動機構(20)は、駆動軸(25)と、前記駆動軸(25)を回転させるロータ(23)を有するモータ(21)と、を有し、
前記ピストン(54)の厚み方向の中心から前記モータ(21)の重心(G2)までの距離hmが、
hm/h<0.0288×P+1.0673
という条件を満たす
圧縮機ユニット。
【請求項13】
請求項
12の圧縮機ユニットにおいて、
前記圧縮機構(50)は、前記モータ(21)の下方に配置されたフロントヘッド(52)を有し、
前記フロントヘッド(52)は、上方に延びて前記駆動軸(25)を支持するボス部(52b)を有し、
前記ロータ(23)の下端部と前記ボス部(52b)の上端部とが、径方向から見て重なり合っている
圧縮機ユニット。
【請求項14】
請求項1~
13の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、
前記アキュムレータ(40)は、上部筐体(41b)と、前記上部筐体(41b)の下方に配置された下部筐体(41c)と、を有し、
前記下部筐体(41c)の板厚は、前記上部筐体(41b)の板厚よりも厚い
圧縮機ユニット。
【請求項15】
請求項1~
14の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、
前記アキュムレータ(40)は、前記アキュムレータ(40)の内部を上下に仕切る仕切板(65)を有し、
前記仕切板(65)は、前記アキュムレータ(40)の軸方向の中心位置よりも下方に配置される
圧縮機ユニット。
【請求項16】
請求項1~
15の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、
前記アキュムレータ(40)の出口管(43)には、重量部材(66)が設けられる
圧縮機ユニット。
【請求項17】
請求項1~
16の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、
前記圧縮機構(50)は、前記シリンダ(51)の下部に配置されたリアヘッド(53)を有し、
前記リアヘッド(53)は、前記圧縮機本体(11)のケーシング(12)の内周面に固定される
圧縮機ユニット。
【請求項18】
請求項1~
17の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、
前記圧縮機本体(11)のケーシング(12)は、円筒状の胴部(12a)と、前記胴部(12a)の上方開口を塞ぐ上椀部(12b)と、前記胴部(12a)の下方開口を塞ぐ下椀部(12c)と、を有し、
前記下椀部(12c)の板厚は、前記上椀部(12b)の板厚よりも厚い
圧縮機ユニット。
【請求項19】
請求項1~
18の何れか1つの圧縮機ユニット(10)と、
前記圧縮機ユニット(10)で圧縮された冷媒が流れる冷媒回路(1a)と、を備える
冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機ユニット及び冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧縮機本体と、圧縮機本体に接続されたアキュムレータと、を備えた圧縮機ユニットが開示されている。
【0003】
特許文献1の発明では、アキュムレータの入口管の取り合い部を圧縮機本体の支持中心に近づけた配置とすることで、圧縮機本体の運転時において、圧縮機本体が傾く方向の振動や、圧縮機本体の軸方向の振動が、入口管に対して伝播するのを抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧縮機性能をさらに向上させるために、圧縮機構を高速回転させたいという要望がある。ここで、圧縮機本体の回転数を上げていくと、圧縮機本体がアキュムレータ側に傾く方向の振動が、回転数の2乗に比例して増大する。その結果、アキュムレータの軸方向の振動が増大してしまい、入口管を介して室外機全体に振動が伝播することで、製品で生じる騒音が大きくなる。
【0006】
ここで、従来の発明では、圧縮機本体の回転数を上げた場合に、アキュムレータの振動が増大するのを抑えるための各種部材の最適な寸法関係については、何ら規定されていない。
【0007】
本開示の目的は、圧縮機本体の回転数を上げた場合でも、アキュムレータの振動が増大するのを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、圧縮機構(50)を有する圧縮機本体(11)と、前記圧縮機本体(11)に接続されたアキュムレータ(40)と、を備え、冷凍サイクルを行う冷凍装置(1)に搭載される圧縮機ユニットであって、前記圧縮機構(50)は、シリンダ(51)と、前記シリンダ(51)内で偏心回転するピストン(54)と、前記シリンダ(51)の圧縮室(55)の内部を低圧室(55a)と高圧室(55b)とに区画するブレード(57)と、を有し、前記ピストン(54)及び前記ブレード(57)の重量に対して前記圧縮機本体(11)の回転数の2乗を乗算した値F、前記ピストン(54)の厚み方向の中心から前記圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離h、前記圧縮機本体(11)が前記アキュムレータ(40)側に傾く方向に振動する際の回転中心であって前記圧縮機ユニット(10)の重心(G1)を通る中心軸まわりの慣性モーメントI、前記アキュムレータ(40)の入口管(42)の軸心から前記圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離L、前記冷凍装置(1)の定格能力Pが、F×(h/I)×L≦19×P+128という条件を満たす。
【0009】
第1の態様では、アキュムレータ(40)の上下方向の振動の大きさを表すパラメータとして、F×(h/I)×Lを定義し、このパラメータが、冷凍装置(1)の定格能力Pに基づいて設定される値よりも小さくなるようにしている。
【0010】
これにより、圧縮機本体(11)の回転数を上げた場合でも、アキュムレータ(40)の振動が増大するのを抑えることができる。
【0011】
本開示の第2の態様は、第1の態様の圧縮機ユニットにおいて、F×(h/I)×L≦19×P+95という条件を満たす。
【0012】
第2の態様では、パラメータF×(h/I)×Lを、上述した条件を満たすように設定することで、アキュムレータ(40)の振動が増大するのをさらに抑えることができる。
【0013】
本開示の第3の態様は、圧縮機構(50)を有する圧縮機本体(11)と、前記圧縮機本体(11)に接続されたアキュムレータ(40)と、を備え、冷凍サイクルを行う冷凍装置(1)に搭載される圧縮機ユニットであって、前記圧縮機構(50)は、シリンダ(51)と、前記シリンダ(51)内で偏心回転するピストン(54)と、前記シリンダ(51)の圧縮室(55)の内部を低圧室(55a)と高圧室(55b)とに区画するブレード(57)と、を有し、前記ピストン(54)及び前記ブレード(57)の重量に対して前記圧縮機本体(11)の回転数の2乗を乗算した値F、前記ピストン(54)の厚み方向の中心から前記圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離h、前記圧縮機本体(11)が前記アキュムレータ(40)側に傾く方向に振動する際の回転中心であって前記圧縮機ユニット(10)の重心(G1)を通る中心軸まわりの慣性モーメントI、前記アキュムレータ(40)の入口管(42)の軸心から前記圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離L、前記シリンダ(51)の容積V、所定回転数以上である前記圧縮機本体(11)の回転数Nが、F×(h/I)×L≦0.063×V×N+114
という条件を満たす。
【0014】
第3の態様では、アキュムレータ(40)の上下方向の振動の大きさを表すパラメータとして、F×(h/I)×Lを定義し、このパラメータが、シリンダ(51)の容積V及び所定回転数以上である圧縮機本体(11)の回転数Nに基づいて設定される値よりも小さくなるようにしている。
【0015】
これにより、圧縮機本体(11)の回転数を上げた場合でも、アキュムレータ(40)の振動が増大するのを抑えることができる。
【0016】
本開示の第4の態様は、第3の態様の圧縮機ユニットにおいて、F×(h/I)×L≦0.063×V×N+85という条件を満たす。
【0017】
第4の態様では、パラメータF×(h/I)×Lを、上述した条件を満たすように設定することで、アキュムレータ(40)の振動が増大するのをさらに抑えることができる。
【0018】
本開示の第5の態様は、第1~4の態様の何れか1つの態様の圧縮機ユニットにおいて、前記圧縮機本体(11)の所定回転数は、112rps以上である。
【0019】
第5の態様では、圧縮機本体(11)の回転数を所定回転数以上に上げることで、圧縮機性能を向上させるとともに、高速回転域においても、アキュムレータ(40)の振動が増大するのを抑えることができる。
【0020】
本開示の第6の態様は、第5の態様の圧縮機ユニットにおいて、前記圧縮機本体(11)の所定回転数は、130rps以上である。
【0021】
第6の態様では、圧縮機本体(11)の回転数を所定回転数以上にさらに上げることで、圧縮機性能をさらに向上させるとともに、高速回転域においても、アキュムレータ(40)の振動が増大するのを抑えることができる。
【0022】
本開示の第7の態様は、第6の態様の圧縮機ユニットにおいて、前記圧縮機本体(11)は、1シリンダ型である。
【0023】
第7の態様では、高速回転域において振動課題が特に大きくなる1シリンダ型の圧縮機本体(11)に対しても、アキュムレータ(40)の振動が増大するのを抑えることができる。
【0024】
本開示の第8の態様は、第1~7の態様の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、前記ピストン(54)及び前記ブレード(57)の少なくとも一方の密度は、6020kg/m3以下である。
【0025】
第8の態様では、ピストン(54)及びブレード(57)の少なくとも一方の密度を所定値以下にして軽量化することで、パラメータFを小さくして、パラメータF×(h/I)×Lの値を小さくすることができる。
【0026】
本開示の第9の態様は、第8の態様において、前記ピストン(54)及び前記ブレード(57)の少なくとも一方の材質は、アルミニウムである。
【0027】
第9の態様では、ピストン(54)及びブレード(57)の少なくとも一方をアルミニウムで形成して軽量化することで、パラメータFを小さくすることができる。
【0028】
本開示の第10の態様は、第1~9の態様の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、前記圧縮機本体(11)に充填された潤滑油の重量M1、前記圧縮機ユニット(10)の重量M2が、M1/M2>0.0172×P+0.0418という条件を満たす。
【0029】
第10の態様では、パラメータM1/M2を、上述した条件を満たすように設定することで、圧縮機本体(11)の底部に溜まる潤滑油の量を多くして、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。これにより、パラメータF×(h/I)×Lの値を小さくすることができる。
【0030】
本開示の第11の態様は、第1~10の態様の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、前記圧縮機構(50)を駆動する駆動機構(20)を備え、前記駆動機構(20)は、駆動軸(25)と、前記駆動軸(25)を回転させるロータ(23)を有するモータ(21)と、前記ロータ(23)に設けられたバランスウエイト(30)と、を有し、前記バランスウエイト(30)は、前記ロータ(23)の軸方向端部において周方向に延びる円環状のウエイト本体(31)を有し、前記ウエイト本体(31)における前記ロータ(23)側の面には、周方向に沿って延びる凹部(31a)が形成される。
【0031】
第11の態様では、バランスウエイト(30)は、周方向に延びる円環状に形成される。つまり、バランスウエイト(30)は、周方向に連続的に繋がった形状となり、ロータ(23)の回転中に、潤滑油を含む冷媒が攪拌され難くなる。
【0032】
これにより、バランスウエイト(30)がロータ(23)とともに回転した場合でも、バランスウエイト(30)によって潤滑油が巻き上げられて油上がりが生じるのを抑えることができる。その結果、圧縮機本体(11)の底部に溜まる潤滑油の量を十分に確保して、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0033】
本開示の第12の態様は、第1~10の態様の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、前記圧縮機構(50)を駆動する駆動機構(20)を備え、前記駆動機構(20)は、駆動軸(25)と、前記駆動軸(25)を回転させるロータ(23)を有するモータ(21)と、前記ロータ(23)に設けられたバランスウエイト(30)と、を有し、前記バランスウエイト(30)は、ウエイト本体(31)と、ウエイトカバー(32)と、を有し、前記ウエイト本体(31)は、前記ロータ(23)の軸方向端部において周方向に延びる円弧状に形成され、前記ウエイトカバー(32)は、円環状のカバー本体(32a)と、前記カバー本体(32a)の内周縁に沿って立設する内周壁(32b)と、前記カバー本体(32a)の外周縁に沿って立設する外周壁(32c)と、を有し、前記ウエイト本体(31)は、前記ウエイトカバー(32)の前記カバー本体(32a)、前記内周壁(32b)、及び前記外周壁(32c)に覆われる。
【0034】
第12の態様では、バランスウエイト(30)は、ウエイト本体(31)と、ウエイトカバー(32)とを有する。ウエイト本体(31)は、円環状のウエイトカバー(32)に覆われる。つまり、バランスウエイト(30)は、周方向に連続的に繋がった形状となり、ロータ(23)の回転中に、潤滑油を含む冷媒が攪拌され難くなる。
【0035】
これにより、バランスウエイト(30)がロータ(23)とともに回転した場合でも、バランスウエイト(30)によって潤滑油が巻き上げられて油上がりが生じるのを抑えることができる。その結果、圧縮機本体(11)の底部に溜まる潤滑油の量を十分に確保して、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0036】
本開示の第13の態様は、第1~12の態様の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、前記圧縮機構(50)を駆動する駆動機構(20)を備え、前記駆動機構(20)は、駆動軸(25)と、前記駆動軸(25)を回転させるロータ(23)を有するモータ(21)と、を有し、前記ピストン(54)の厚み方向の中心から前記モータ(21)の重心(G2)までの距離hmが、hm/h<0.0288×P+1.0673という条件を満たす。
【0037】
第13の態様では、パラメータhm/hを、上述した条件を満たすように設定して、モータ(21)の重心(G2)の位置を下げることで、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0038】
本開示の第14の態様は、第13の態様の圧縮機ユニットにおいて、前記圧縮機構(50)は、前記モータ(21)の下方に配置されたフロントヘッド(52)を有し、前記フロントヘッド(52)は、上方に延びて前記駆動軸(25)を支持するボス部(52b)を有し、前記ロータ(23)の下端部と前記ボス部(52b)の上端部とが、径方向から見て重なり合っている。
【0039】
第14の態様では、ロータ(23)の下端部とボス部(52b)の上端部とを、径方向から見て重なり合うように配置して、モータ(21)の重心(G2)の位置を下げることで、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0040】
本開示の第15の態様は、第1~14の態様の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、前記アキュムレータ(40)は、上部筐体(41b)と、前記上部筐体(41b)の下方に配置された下部筐体(41c)と、を有し、前記下部筐体(41c)の板厚は、前記上部筐体(41b)の板厚よりも厚い。
【0041】
第15の態様では、アキュムレータ(40)の下部筐体(41c)の板厚を、上部筐体(41b)の板厚よりも厚くして、アキュムレータ(40)の重心位置を下げることで、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0042】
本開示の第16の態様は、第1~15の態様の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、前記アキュムレータ(40)は、前記アキュムレータ(40)の内部を上下に仕切る仕切板(65)を有し、前記仕切板(65)は、前記アキュムレータ(40)の軸方向の中心位置よりも下方に配置される。
【0043】
第16の態様では、仕切板(65)を、アキュムレータ(40)の軸方向の中心位置よりも下方に配置して、アキュムレータ(40)の重心位置を下げることで、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0044】
本開示の第17の態様は、第1~16の態様の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、前記アキュムレータ(40)の出口管(43)には、重量部材(66)が設けられる。
【0045】
第17の態様では、アキュムレータ(40)の出口管(43)に重量部材(66)を設けることで、アキュムレータ(40)の重心位置を下げ、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0046】
本開示の第18の態様は、第1~17の態様の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、前記圧縮機構(50)は、前記シリンダ(51)の下部に配置されたリアヘッド(53)を有し、前記リアヘッド(53)は、前記圧縮機本体(11)のケーシング(12)の内周面に固定される。
【0047】
第18の態様では、リアヘッド(53)を圧縮機本体(11)のケーシング(12)の内周面に固定した構成とすることで、リアヘッド(53)の重量を増やし、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0048】
本開示の第19の態様は、第1~18の態様の何れか1つの圧縮機ユニットにおいて、前記圧縮機本体(11)のケーシング(12)は、円筒状の胴部(12a)と、前記胴部(12a)の上方開口を塞ぐ上椀部(12b)と、前記胴部(12a)の下方開口を塞ぐ下椀部(12c)と、を有し、前記下椀部(12c)の板厚は、前記上椀部(12b)の板厚よりも厚い。
【0049】
第19の態様では、ケーシング(12)の下椀部(12c)の板厚を、上椀部(12b)の板厚よりも厚くして、圧縮機本体(11)の重心位置を下げることで、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0050】
本開示の第20の態様は、第1~19の態様の何れか1つの圧縮機ユニット(10)と、前記圧縮機ユニット(10)で圧縮された冷媒が流れる冷媒回路(1a)と、を備える冷凍装置である。
【0051】
第20の態様では、圧縮機ユニット(10)を備えた冷凍装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】
図1は、本実施形態の冷凍装置の構成を示す冷媒回路図である。
【
図2】
図2は、圧縮機ユニットの構成を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、バランスウエイトの構成を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、圧縮機構の構成を示す平面断面図である。
【
図5】
図5は、従来の圧縮機ユニットにおける圧縮機本体の回転数と製品音の音圧レベルとの関係を示すグラフ図である。
【
図6】
図6は、圧縮機本体の回転数と、圧縮機ユニットのY軸まわり回転振動の角加速度との関係を示すグラフ図である。
【
図7】
図7は、冷凍装置の定格能力とパラメータF×(h/I)×Lとの関係を示すグラフ図である。
【
図8】
図8は、冷凍装置の定格能力とパラメータM1/M2との関係を示すグラフ図である。
【
図9】
図9は、冷凍装置の定格能力とパラメータhm/hとの関係を示すグラフ図である。
【
図10】
図10は、本変形例1に係るバランスウエイトの構成を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、バランスウエイトの構成を示す分解斜視図である。
【
図12】
図12は、本変形例2に係る圧縮機ユニットの構成を示す縦断面図である。
【
図13】
図13は、本変形例3に係る圧縮機ユニットの構成を示す縦断面図である。
【
図14】
図14は、本変形例4に係る圧縮機ユニットの構成を示す縦断面図である。
【
図15】
図15は、本変形例5に係る圧縮機ユニットの構成を示す縦断面図である。
【
図16】
図16は、その他の実施形態において、2シリンダ型の圧縮機のそれぞれピストンに加わる力と重心までの距離とを説明する図である。
【
図17】
図17は、その他の実施形態において、シリンダ容積と圧縮機本体の回転数の積V×Nと、パラメータF×(h/I)×Lとの関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
《実施形態》
図1に示すように、圧縮機ユニット(10)は、冷凍装置(1)に設けられる。冷凍装置(1)は、冷媒が充填された冷媒回路(1a)を有する。冷媒回路(1a)は、圧縮機ユニット(10)、放熱器(3)、減圧機構(4)、及び蒸発器(5)を有する。減圧機構(4)は、例えば膨張弁である。冷媒回路(1a)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。
【0054】
冷凍サイクルでは、圧縮機ユニット(10)によって圧縮された冷媒が、放熱器(3)において空気に放熱する。放熱した冷媒は、減圧機構(4)によって減圧され、蒸発器(5)において蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機ユニット(10)に吸入される。
【0055】
冷凍装置(1)は、空気調和装置である。空気調和装置は、冷房専用機、暖房専用機、あるいは冷房と暖房とを切り換える空気調和装置であってもよい。この場合、空気調和装置は、冷媒の循環方向を切り換える切換機構(例えば四方切換弁)を有する。冷凍装置(1)は、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などであってもよい。冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する。
【0056】
図2に示すように、圧縮機ユニット(10)は、圧縮機本体(11)と、アキュムレータ(40)と、を備える。アキュムレータ(40)は、圧縮機本体(11)に接続される。圧縮機本体(11)は、ケーシング(12)と、駆動機構(20)と、圧縮機構(50)と、を有する。
【0057】
以下、
図2において、圧縮機本体(11)とアキュムレータ(40)とが並ぶ左右方向をX軸方向、X軸方向に直交する紙面奥行方向をY軸方向、圧縮機本体(11)が立設する上下方向をZ軸方向とする。
【0058】
ケーシング(12)は、縦長の円筒状の密閉容器で構成される。ケーシング(12)は、胴部(12a)と、上椀部(12b)と、下椀部(12c)と、を有する。胴部(12a)は、上下に延びる円筒状に形成され、軸方向の両端が開口している。上椀部(12b)は、胴部(12a)の上端に固定され、胴部(12a)の上方開口を塞ぐ。下椀部(12c)は、胴部(12a)の下端に固定され、胴部(12a)の下方開口を塞ぐ。胴部(12a)には、吸入管(16)が貫通して固定される。上椀部(12b)には、吐出管(17)が貫通して固定される。
【0059】
ケーシング(12)の底部には、油溜まり部(18)が形成される。油溜まり部(18)は、胴部(12a)の下部の内壁及び下椀部(12c)によって構成される。油溜まり部(18)には、潤滑油が貯留される。潤滑油は、圧縮機構(50)や駆動軸(25)の摺動部を潤滑する。
【0060】
駆動機構(20)は、ケーシング(12)の内部に収容される。駆動機構(20)は、モータ(21)と、駆動軸(25)と、バランスウエイト(30)と、を有する。モータ(21)は、圧縮機構(50)の上方に配置される。モータ(21)は、ステータ(22)と、ロータ(23)と、を有する。
【0061】
ステータ(22)は、ケーシング(12)の胴部(12a)の内周面に固定される。ロータ(23)は、ステータ(22)の内部を上下方向に貫通している。ロータ(23)の軸心内部には、駆動軸(25)が固定される。モータ(21)が通電されると、ロータ(23)とともに駆動軸(25)が回転駆動される。
【0062】
駆動軸(25)は、ケーシング(12)の胴部(12a)の軸心上に位置している。駆動軸(25)の内部には、給油路(25a)が形成される。駆動軸(25)の下端は、油溜まり部(18)に浸漬される。油溜まり部(18)に貯留された潤滑油は、駆動軸(25)の内部の給油路(25a)を通じて、圧縮機構(50)や駆動軸(25)の摺動部へ供給される。
【0063】
駆動軸(25)は、主軸部(26)と、偏心部(27)と、を有する。主軸部(26)の上部は、モータ(21)のロータ(23)に固定される。偏心部(27)の軸心は、主軸部(26)の軸心から所定量だけ偏心している。
【0064】
主軸部(26)における偏心部(27)よりも上部は、後述するフロントヘッド(52)のボス部(52b)によって回転可能に支持される。主軸部(26)における偏心部(27)よりも下部は、後述するリアヘッド(53)によって回転可能に支持される。
【0065】
バランスウエイト(30)は、ロータ(23)の軸方向の両端部にそれぞれ設けられる。バランスウエイト(30)は、周方向に延びる円環状のウエイト本体(31)を有する。ウエイト本体(31)におけるロータ(23)側の面には、周方向に沿って延びる凹部(31a)が形成される(
図3参照)。
【0066】
圧縮機構(50)は、ケーシング(12)の内部に収容される。圧縮機構(50)は、モータ(21)の下方に配置される。圧縮機構(50)は、シリンダ(51)と、フロントヘッド(52)と、リアヘッド(53)と、ピストン(54)と、ブレード(57)と、を有する。
【0067】
シリンダ(51)は、扁平な略環状の部材で形成される。シリンダ(51)の中央部には、円形状の圧縮室(55)が形成される。シリンダ(51)には、径方向に延びる吸入通路(56)が形成される。吸入通路(56)の下流端は、圧縮室(55)と連通する。吸入通路(56)の上流端には、吸入管(16)が接続される。
【0068】
ケーシング(12)の胴部(12a)には、吸入通路(56)に対向する位置に貫通孔(15)が形成される。ケーシング(12)の貫通孔(15)には、継手管(19)が接続される。継手管(19)は、金属材料で形成された円筒状の部材で形成される。継手管(19)は、貫通孔(15)に嵌め込まれた状態でケーシング(12)の胴部(12a)に接合される。継手管(19)は、ケーシング(12)の胴部(12a)からケーシング(12)の外部に向かって延びる。
【0069】
吸入管(16)は、シリンダ(51)の吸入通路(56)に接続されるとともに、継手管(19)の内部を通ってケーシング(12)の外部に延びる。吸入管(16)の外周面は、継手管(19)の内周面にロウ付けされる。
【0070】
フロントヘッド(52)は、シリンダ(51)の上部に配置される。フロントヘッド(52)は、シリンダ(51)の内部空間を上方から覆うように配置される。フロントヘッド(52)は、環状プレート部(52a)と、ボス部(52b)と、を有する。
【0071】
環状プレート部(52a)は、扁平な環状の部材で形成され、シリンダ(51)の上端部に積層される。環状プレート部(52a)は、ケーシング(12)の胴部(12a)の内周面に固定される。ボス部(52b)は、環状プレート部(52a)の径方向中央部から上方に延びる筒状の部材で形成される。ボス部(52b)は、駆動軸(25)の主軸部(26)を回転可能に支持する。フロントヘッド(52)には、環状プレート部(52a)を軸方向に貫通する吐出通路(図示省略)が形成される。
【0072】
リアヘッド(53)は、シリンダ(51)の下部に配置される。リアヘッド(53)は、シリンダ(51)の内部空間を下方から覆うように配置される。リアヘッド(53)は、駆動軸(25)の主軸部(26)を回転可能に支持する。
【0073】
図4にも示すように、ピストン(54)は、シリンダ(51)内部に収容される。ブレード(57)は、ピストン(54)に一体形成される。シリンダ(51)とピストン(54)とによって、圧縮室(55)が区画される。ピストン(54)は、真円形の環状に形成される。ピストン(54)の内部には、駆動軸(25)の偏心部(27)が嵌め込まれる。圧縮室(55)の内部は、ブレード(57)によって低圧室(55a)と高圧室(55b)とに区画される。ブレード(57)は、一対のブッシュ(58)によって揺動可能に支持される。
【0074】
ピストン(54)は、駆動軸(25)の回転駆動に伴って、シリンダ(51)内で偏心回転する。ピストン(54)の偏心回転に伴って低圧室(55a)の容積が徐々に大きくなると、吸入管(16)を流れる冷媒が吸入通路(56)から低圧室(55a)へ吸入されていく。
【0075】
次に、低圧室(55a)が吸入通路(56)から遮断されると、遮断された空間が高圧室(55b)を構成する。高圧室(55b)の容積が徐々に小さくなると、高圧室(55b)の内圧が上昇していく。高圧室(55b)の内圧が所定の圧力を超えると、高圧室(55b)の冷媒が吐出通路(59)を通じて、圧縮機構(50)の外部へ流出する。この高圧冷媒は、ケーシング(12)の内部空間を上方へ流れ、モータ(21)のコアカット(図示省略)等を通過する。モータ(21)の上方に流出した高圧冷媒は、吐出管(17)より冷媒回路へ送られる。
【0076】
〈アキュムレータの構成〉
圧縮機本体(11)の上流側には、アキュムレータ(40)が接続される。アキュムレータ(40)は、圧縮機本体(11)に吸入される前の冷媒を一時的に貯留するとともに、冷媒ガスに含まれる液冷媒や冷凍機油を気液分離するものである。
【0077】
アキュムレータ(40)は、本体容器(41)と、入口管(42)と、出口管(43)と、を有する。入口管(42)は、本体容器(41)に冷媒を流入させる。出口管(43)は、本体容器(41)から冷媒を流出させる。
【0078】
本体容器(41)は、縦長の円筒状の部材で構成される。本体容器(41)は、胴部(41a)と、上部筐体(41b)と、下部筐体(41c)と、を有する。胴部(41a)は、上下方向に延びる円筒状に形成され、軸方向の両端が開口している。上部筐体(41b)は、胴部(41a)の上端に固定され、胴部(41a)の上方開口を塞ぐ。下部筐体(41c)は、胴部(41a)の下端に固定され、胴部(41a)の下方開口を塞ぐ。
【0079】
上部筐体(41b)の上部には、入口管(42)が接続される。入口管(42)の下端部は、本体容器(41)の内部空間における上部寄りの位置に開口している。下部筐体(41c)の下部には、出口管(43)が接続される。出口管(43)の上端部は、本体容器(41)内を上方向に延びて本体容器(41)の内部空間における上部寄りの位置に開口している。
【0080】
出口管(43)の下端部は、本体容器(41)の下端から下方に延びた後に、圧縮機本体(11)の吸入管(16)に向かって屈曲して吸入管(16)に接続される。
【0081】
〈各種部材の寸法関係について〉
ところで、圧縮機性能をさらに向上させるために、圧縮機構(50)を高速回転させたいという要望がある。ここで、圧縮機本体(11)の回転数を上げていくと、圧縮機本体(11)がアキュムレータ(40)側に傾く方向の振動が、回転数の2乗に比例して増大する。その結果、アキュムレータ(40)の軸方向の振動が増大してしまい、入口管(42)を介して室外機全体に振動が伝播することで、製品で生じる騒音が大きくなる。
【0082】
そこで、本実施形態では、圧縮機本体(11)の回転数を上げた場合でも、アキュムレータ(40)の振動が増大するのを抑えることができるように、各種部材の最適な寸法関係について検討した。
【0083】
図5は、従来の圧縮機ユニットにおける圧縮機本体の回転数と製品音の音圧レベルとの関係を示すグラフ図である。
図5に示すように、圧縮機本体(11)の回転数が大きくなると、製品で生じる騒音である音圧レベルが大きくなる傾向にある。従来の圧縮機ユニット(10)では、音圧レベルが第1閾値を超える場合に、製品仕様として許容される騒音の基準をオーバーしたと判定する。第1閾値における圧縮機本体(11)の回転数を、130rpsとする。
【0084】
また、騒音の新たな基準として、第1閾値よりも低い第2閾値を設けるようにした。音圧レベルが第2閾値を超える場合に、製品仕様として許容される騒音の基準をオーバーしたと判定する。第2閾値における圧縮機本体(11)の回転数を、112rpsとする。
【0085】
図6は、圧縮機本体の回転数と、圧縮機ユニットのY軸まわり回転振動の角加速度との関係を示すグラフ図である。ここで、角加速度は、圧縮機本体(11)がアキュムレータ(40)側に傾く方向に振動する際の回転中心であって圧縮機ユニット(10)の重心(G1)を通る中心軸をY軸としたときに、ピストン(54)及びブレード(57)の慣性力によるY軸まわりの回転振動の値を示す。ピストン(54)及びブレード(57)の慣性力は、ピストン(54)及びブレード(57)の重量に対して、回転数の2乗を乗算した値に比例する。
【0086】
図6に示すように、比較例としての従来の圧縮機ユニットにおいて、圧縮機本体(11)の回転数を140rpsとした場合、角加速度は、241rad/s
2となる。ここで、
図5において音圧レベルの基準として検討した圧縮機本体(11)の回転数が130rpsの場合、角加速度は208rad/s
2となる。また、圧縮機本体(11)の回転数が112rpsの場合、角加速度は154rad/s
2となる。
【0087】
なお、以下の説明では、所定回転数以上である圧縮機本体(11)の回転数を最高回転数という。所定回転数は、112rps以上、好ましくは、130rps以上である。圧縮機本体(11)の最高回転数とは、製品の運転範囲の中で出現しうる最高の回転数をいう。
【0088】
ここで、本実施形態では、ピストン(54)及びブレード(57)の慣性力によるY軸まわりの回転振動の値である角加速度を、従来の圧縮機ユニットよりも抑えることを目的としている。
【0089】
そのため、本実施形態の圧縮機ユニット(10)では、圧縮機本体(11)の最高回転数140rpsで、ピストン(54)及びブレード(57)の慣性力によるY軸まわりの回転振動を130rpsでの値に抑えるために、振動の値を、208/241=0.86倍にする必要がある。
【0090】
また、圧縮機本体(11)の最高回転数140rpsで、ピストン(54)及びブレード(57)の慣性力によるY軸まわりの回転振動を112rpsでの値に抑えるためには、振動の値を、154/241=0.64倍にする必要がある。
【0091】
図7は、冷凍装置の定格能力とパラメータF×(h/I)×Lとの関係を示すグラフ図である。本実施形態では、アキュムレータ(40)の上下方向の振動の大きさを表すパラメータとして、F×(h/I)×Lを定義し、このパラメータが、冷凍装置(1)の定格能力Pに基づいて設定される値よりも小さくなるようにしている。
【0092】
具体的に、
図2に示すように、ピストン(54)及びブレード(57)の重量に対して圧縮機本体(11)の回転数の2乗を乗算した値F[kg/s
2]、ピストン(54)の厚み方向の中心から圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離h[m]、圧縮機本体(11)がアキュムレータ(40)側に傾く方向に振動する際の回転中心であって圧縮機ユニット(10)の重心(G1)を通る中心軸まわりの慣性モーメントI[kg・m
2]、アキュムレータ(40)の入口管(42)の軸心から圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離L[m]、冷凍装置(1)の定格能力P[kW]とする。
【0093】
図7のグラフ図に示すように、横軸をx、縦軸をyとして、従来の圧縮機ユニットにおいて、圧縮機本体(11)の最高回転数を140rpsまで上げた場合、パラメータF×(h/I)×Lは、y=19x+149で示す直線が最小値ラインとなる。つまり、1つのシリンダ(51)を有する1シリンダ型の従来の圧縮機ユニットや、2つのシリンダ(51)を有する2シリンダ型の従来の圧縮機ユニットにおいて算出されたパラメータF×(h/I)×Lは、y=19x+149で示す直線よりも上側に位置する。
【0094】
これに対し、本実施形態の圧縮機ユニット(10)では、従来の圧縮機ユニットにおいて算出されたy=19x+149の切片が、
図6のグラフ図に基づいて算出した0.86倍、つまり、切片が128となるようにオフセットさせるようにした。
【0095】
この場合、本実施形態の圧縮機ユニット(10)では、パラメータF×(h/I)×Lが、下記の(1)式を満たすように設定した。
【0096】
F×(h/I)×L≦19×P+128 ・・・(1)
このように、(1)式を満たすことで、圧縮機本体(11)の最高回転数を130rps以上とした場合であっても、アキュムレータ(40)の振動が増大するのを抑えることができる。
【0097】
また、本実施形態の圧縮機ユニット(10)では、y=19x+149の切片が、
図6のグラフ図に基づいて算出した0.64倍、つまり、切片が95となるようにオフセットさせるようにした。
【0098】
これにより、本実施形態の圧縮機ユニット(10)では、パラメータF×(h/I)×Lが、下記の(2)式を満たすように設定した。
【0099】
F×(h/I)×L≦19×P+95 ・・・(2)
このように、(2)式を満たすことで、圧縮機本体(11)の最高回転数を112rps以上とした場合であっても、アキュムレータ(40)の振動が増大するのを抑えることができる。
【0100】
〈条件式を満たすための対策について〉
以下、パラメータF×(h/I)×Lを、冷凍装置(1)の定格能力Pに基づいて設定される値よりも小さくするための、具体的な対策について説明する。
【0101】
まず、ピストン(54)及びブレード(57)の少なくとも一方を軽量化することが考えられる。パラメータFは、ピストン(54)及びブレード(57)の重量に対して、回転数の2乗を乗算した値に比例するため、ピストン(54)及びブレード(57)の少なくとも一方を軽量化することで、パラメータFを小さくすることができる。
【0102】
例えば、従来の圧縮機ユニットでは、ピストン(54)及びブレード(57)の密度が7000kg/m3程度である。そこで、本実施形態では、ピストン(54)及びブレード(57)の少なくとも一方の密度を、例えば、7000×0.86=6020kg/m3以下とすることで、(1)式を満たすように設定する。具体的には、ピストン(54)及びブレード(57)の少なくとも一方の材質をアルミニウムにするのが好ましい。アルミニウムの密度は、2700kg/m3であり、条件を満たす。
【0103】
また、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げ、ピストン(54)の厚み方向の中心から圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離hを小さくすることが考えられる。
【0104】
具体的に、
図8は、冷凍装置の定格能力とパラメータM1/M2との関係を示すグラフ図である。ここで、圧縮機本体(11)に充填された潤滑油の重量M1[kg]、圧縮機ユニット(10)の重量M2[kg]とする。
【0105】
図8のグラフ図に示すように、横軸をx、縦軸をyとした場合、従来の圧縮機ユニットでは、パラメータM1/M2は、y=0.0172x+0.0418で示す直線が最大値ラインとなる。つまり、1つのシリンダ(51)を有する1シリンダ型の従来の圧縮機ユニットや、2つのシリンダ(51)を有する2シリンダ型の従来の圧縮機ユニットにおいて算出されたパラメータM1/M2は、y=0.0172x+0.0418で示す直線よりも下側に位置する。
【0106】
これに対し、本実施形態の圧縮機ユニット(10)では、パラメータM1/M2が、下記の(3)式を満たすように設定した。
【0107】
M1/M2>0.0172×P+0.0418 ・・・(3)
このように、(3)式を満たすことで、圧縮機本体(11)の底部に溜まる潤滑油の量を多くして、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。これにより、パラメータF×(h/I)×Lの値を小さくすることができる。
【0108】
また、バランスウエイト(30)の形状を工夫することで、油上がりが生じるのを抑え、圧縮機本体(11)の底部に溜まる潤滑油の量を多くすることが考えられる。
【0109】
図3に示すように、バランスウエイト(30)は、周方向に延びる円環状のウエイト本体(31)を有する。ウエイト本体(31)におけるロータ(23)側の面には、周方向に沿って延びる凹部(31a)が形成される。
【0110】
このように、バランスウエイト(30)は、周方向に延びる円環状に形成される。つまり、バランスウエイト(30)は、周方向に連続的に繋がった形状となり、ロータ(23)の回転中に、潤滑油を含む冷媒が攪拌され難くなる。
【0111】
これにより、バランスウエイト(30)がロータ(23)とともに回転した場合でも、バランスウエイト(30)によって潤滑油が巻き上げられて油上がりが生じるのを抑えることができる。その結果、圧縮機本体(11)の底部に溜まる潤滑油の量を十分に確保して、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0112】
また、モータ(21)の重心(G2)の位置を下げ、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることで、ピストン(54)の厚み方向の中心から圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離hを小さくすることが考えられる。
【0113】
具体的に、
図9は、冷凍装置の定格能力とパラメータhm/hとの関係を示すグラフ図である。ここで、ピストン(54)の厚み方向の中心から前記モータ(21)の重心(G2)までの距離hm[m]とする。
【0114】
図9のグラフ図に示すように、横軸をx、縦軸をyとした場合、従来の圧縮機ユニットでは、パラメータhm/hは、y=0.0288x+1.0673で示す直線が最小値ラインとなる。つまり、1つのシリンダ(51)を有する1シリンダ型の従来の圧縮機ユニットや、2つのシリンダ(51)を有する2シリンダ型の従来の圧縮機ユニットにおいて算出されたパラメータhm/hは、y=0.0288x+1.0673で示す直線よりも上側に位置する。
【0115】
これに対し、本実施形態の圧縮機ユニット(10)では、パラメータhm/hが、下記の(4)式を満たすように設定した。
【0116】
hm/h<0.0288×P+1.0673 ・・・(4)
このように、(4)式を満たすことで、モータ(21)の重心(G2)の位置を下げ、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0117】
-実施形態の効果-
本実施形態の特徴によれば、ピストン(54)及びブレード(57)の重量に対して圧縮機本体(11)の回転数の2乗を乗算した値F、ピストン(54)の厚み方向の中心から圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離h、圧縮機本体(11)がアキュムレータ(40)側に傾く方向に振動する際の回転中心であって圧縮機ユニット(10)の重心(G1)を通る中心軸まわりの慣性モーメントI、アキュムレータ(40)の入口管(42)の軸心から圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離L、冷凍装置(1)の定格能力Pが、F×(h/I)×L≦19×P+128という条件を満たす。
【0118】
このように、アキュムレータ(40)の上下方向の振動の大きさを表すパラメータとして、F×(h/I)×Lを定義し、このパラメータが、冷凍装置(1)の定格能力Pに基づいて設定される値よりも小さくなるようにしている。
【0119】
これにより、圧縮機本体(11)の回転数を上げた場合でも、アキュムレータ(40)の振動が増大するのを抑えることができる。
【0120】
本実施形態の特徴によれば、F×(h/I)×L≦19×P+95という条件を満たすことで、アキュムレータ(40)の振動が増大するのをさらに抑えることができる。
【0121】
本実施形態の特徴によれば、圧縮機本体(11)の回転数を、112rps以上に上げることで、圧縮機性能を向上させるとともに、高速回転域においても、アキュムレータ(40)の振動が増大するのを抑えることができる。
【0122】
本実施形態の特徴によれば、圧縮機本体(11)の回転数を、130rps以上に上げることで、圧縮機性能をさらに向上させるとともに、高速回転域においても、アキュムレータ(40)の振動が増大するのを抑えることができる。
【0123】
本実施形態の特徴によれば、高速回転域において振動課題が特に大きくなる1シリンダ型の圧縮機本体(11)に対しても、アキュムレータ(40)の振動が増大するのを抑えることができる。
【0124】
本実施形態の特徴によれば、ピストン(54)及びブレード(57)の少なくとも一方の密度を6020kg/m3以下にして軽量化することで、パラメータFを小さくして、パラメータF×(h/I)×Lの値を小さくすることができる。
【0125】
本実施形態の特徴によれば、ピストン(54)及びブレード(57)の少なくとも一方の材質をアルミニウムにして軽量化することで、パラメータFを小さくすることができる。
【0126】
本実施形態の特徴によれば、圧縮機本体(11)に充填された潤滑油の重量M1、圧縮機ユニット(10)の重量M2が、M1/M2>0.0172×P+0.0418という条件を満たすことで、圧縮機本体(11)の底部に溜まる潤滑油の量を多くして、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。これにより、パラメータF×(h/I)×Lの値を小さくすることができる。
【0127】
本実施形態の特徴によれば、バランスウエイト(30)は、ロータ(23)の軸方向端部において周方向に延びる円環状のウエイト本体(31)を有する。ウエイト本体(31)におけるロータ(23)側の面には、周方向に沿って延びる凹部(31a)が形成される。
【0128】
このように、バランスウエイト(30)は、周方向に延びる円環状に形成される。つまり、バランスウエイト(30)は、周方向に連続的に繋がった形状となり、ロータ(23)の回転中に、潤滑油を含む冷媒が攪拌され難くなる。
【0129】
これにより、バランスウエイト(30)がロータ(23)とともに回転した場合でも、バランスウエイト(30)によって潤滑油が巻き上げられて油上がりが生じるのを抑えることができる。その結果、圧縮機本体(11)の底部に溜まる潤滑油の量を十分に確保して、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0130】
本実施形態の特徴によれば、ピストン(54)の厚み方向の中心からモータ(21)の重心(G2)までの距離hmが、hm/h<0.0288×P+1.0673という条件を満たすことで、モータ(21)の重心(G2)の位置を下げ、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0131】
本実施形態の特徴によれば、圧縮機ユニット(10)と、前記圧縮機ユニット(10)で圧縮された冷媒が流れる冷媒回路(1a)と、を備える。これにより、圧縮機ユニット(10)を備えた冷凍装置(1)を提供できる。
【0132】
《変形例1》
以下、前記実施形態と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0133】
図10及び
図11に示すように、バランスウエイト(30)は、ウエイト本体(31)と、ウエイトカバー(32)と、を有する。ウエイト本体(31)は、ロータ(23)の軸方向端部において周方向に延びる円弧状に形成される。
【0134】
ウエイトカバー(32)は、カバー本体(32a)と、内周壁(32b)と、外周壁(32c)と、を有する。カバー本体(32a)は、円環状の板材で形成される。内周壁(32b)は、カバー本体(32a)の内周縁に沿って立設する。外周壁(32c)は、カバー本体(32a)の外周縁に沿って立設する。ウエイト本体(31)は、ウエイトカバー(32)のカバー本体(32a)、内周壁(32b)、及び外周壁(32c)に覆われる。
【0135】
-変形例1の効果-
本変形例の特徴によれば、バランスウエイト(30)は、ウエイト本体(31)と、ウエイトカバー(32)とを有する。ウエイト本体(31)は、円環状のウエイトカバー(32)に覆われる。つまり、バランスウエイト(30)は、周方向に連続的に繋がった形状となり、ロータ(23)の回転中に、潤滑油を含む冷媒が攪拌され難くなる。
【0136】
これにより、バランスウエイト(30)がロータ(23)とともに回転した場合でも、バランスウエイト(30)によって潤滑油が巻き上げられて油上がりが生じるのを抑えることができる。その結果、圧縮機本体(11)の底部に溜まる潤滑油の量を十分に確保して、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0137】
《変形例2》
図12に示すように、圧縮機構(50)は、モータ(21)の下方に配置されたフロントヘッド(52)を有する。フロントヘッド(52)は、上方に延びて駆動軸(25)を支持するボス部(52b)を有する。
【0138】
ロータ(23)の下端における中央部には、凹部(23a)が形成される。ボス部(52b)の上端部は、ロータ(23)の凹部(23a)内に挿通される。これにより、ロータ(23)の下端部とボス部(52b)の上端部とが、径方向から見て重なり合っている。
【0139】
-変形例2の効果-
本変形例の特徴によれば、ロータ(23)の下端部とボス部(52b)の上端部とを、径方向から見て重なり合うように配置して、モータ(21)の重心(G2)の位置を下げることで、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0140】
《変形例3》
図13に示すように、アキュムレータ(40)は、仕切板(65)を有する。仕切板(65)は、円環状の板材で形成される。仕切板(65)の中央の孔には、アキュムレータ(40)の出口管(43)が挿通される。仕切板(65)は、アキュムレータ(40)の内部を上下に仕切る。仕切板(65)は、アキュムレータ(40)の軸方向の中心位置よりも下方に配置される。
【0141】
-変形例3の効果-
本変形例の特徴によれば、仕切板(65)を、アキュムレータ(40)の軸方向の中心位置よりも下方に配置して、アキュムレータ(40)の重心位置を下げることで、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0142】
《変形例4》
図14に示すように、アキュムレータ(40)の出口管(43)には、重量部材(66)が設けられる。このように、重量部材(66)を出口管(43)に取り付けることで、アキュムレータ(40)の重心位置が下がる。これにより、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)を下げることができる。
【0143】
-変形例4の効果-
本変形例の特徴によれば、アキュムレータ(40)の出口管(43)に重量部材(66)を設けることで、アキュムレータ(40)の重心位置を下げ、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0144】
《変形例5》
図15に示すように、圧縮機構(50)は、シリンダ(51)の下部に配置されたリアヘッド(53)を有する。リアヘッド(53)は、径方向外方に張り出して、圧縮機本体(11)のケーシング(12)の内周面に密着する。リアヘッド(53)は、圧縮機本体(11)のケーシング(12)の内周面に固定される。
【0145】
-変形例5の効果-
本変形例の特徴によれば、リアヘッド(53)を圧縮機本体(11)のケーシング(12)の内周面に固定した構成とすることで、リアヘッド(53)の重量を増やし、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0146】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0147】
本実施形態では、圧縮機本体(11)のケーシング(12)の胴部(12a)、上椀部(12b)、及び下椀部(12c)を同じ板厚で形成することを想定しているが、この形態に限定するものではない。例えば、下椀部(12c)の板厚を、上椀部(12b)の板厚よりも厚くした構成であってもよい。
【0148】
このように、ケーシング(12)の下椀部(12c)の板厚を、上椀部(12b)の板厚よりも厚くして、圧縮機本体(11)の重心位置を下げることで、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0149】
また、本実施形態では、アキュムレータ(40)の本体容器(41)の胴部(41a)、上部筐体(41b)、及び下部筐体(41c)を同じ板厚で形成することを想定しているが、この形態に限定するものではない。例えば、下部筐体(41c)の板厚を、上部筐体(41b)の板厚よりも厚くした構成であってもよい。
【0150】
このように、アキュムレータ(40)の下部筐体(41c)の板厚を、上部筐体(41b)の板厚よりも厚くして、アキュムレータ(40)の重心位置を下げることで、圧縮機ユニット(10)の重心(G1)の位置を下げることができる。
【0151】
また、本実施形態では、ピストン(54)とブレード(57)とが一体形成された揺動ピストン型の圧縮機について説明したが、ピストン(54)とブレード(57)とが別体で形成されたローリングピストン型のロータリ圧縮機であってもよい。この場合にも、パラメータFは、ピストン(54)及びブレード(57)の重量に対して圧縮機本体(11)の回転数の2乗を乗算して算出すればよい。なお、ピストン(54)とブレード(57)とが別体で形成されたロータリ圧縮機の場合、ブレード(57)を揺動可能に支持する必要が無いため、ブッシュ(58)は不要である。
【0152】
また、本実施形態では、1つのシリンダ(51)を有する1シリンダ型の圧縮機について説明したが、上下方向に並んで配置された2つのシリンダ(51)を有する2シリンダ型の圧縮機についても同様に、パラメータF×(h/I)×Lの条件式を適用可能である。
【0153】
具体的に、
図16に示すように、上側のピストン(54)及びブレード(57)の重量に対して圧縮機本体(11)の回転数の2乗を乗算した値をF1、下側のピストン(54)及びブレード(57)の重量に対して圧縮機本体(11)の回転数の2乗を乗算した値をF2とする。上側及び下側のピストン(54)の厚み方向の中心から圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離を、それぞれh1、h2とする。
【0154】
ここで、F1とF2の合計をFとすると、F=F1+F2となる。また、重心まわりの力のモーメントの合計をF×hとすると、F×h=F1×h1+F2×h2となる。よって、以下の(5)式が成り立つ。
【0155】
h=h1×F1/(F1+F2)+h2×F2/(F1+F2) ・・・(5)
また、3つ以上のシリンダ(51)を有する圧縮機についても同様に、パラメータF×(h/I)×Lの条件式を適用可能である。
【0156】
具体的に、n個のシリンダ(51)を有する圧縮機の場合、それぞれのピストン(54)及びブレード(57)の重量に対して圧縮機本体(11)の回転数の2乗を乗算した値をF1、F2、F3、・・・とする。以下、i番目のピストン(54)及びブレード(57)の重量に対して圧縮機本体(11)の回転数の2乗を乗算した値をFiとする。
【0157】
また、ピストン(54)の厚み方向の中心から圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離を、それぞれh1、h2、h3、・・・とする。以下、i番目のピストン(54)の重心(G1)までの距離をhiとする。
【0158】
ここで、F1、F2、F3、・・・の合計をFとすると、F=F1+F2+F3+・・・=ΣFiとなる。また、重心まわりの力のモーメントの合計をF×hとすると、F×h=F1×h1+F2×h2+F3×h3+・・・=Σ(Fi×hi)となる。よって、以下の(6)式が成り立つ。
【0159】
h=(1/F)×Σ(Fi×hi) ・・・(6)
また、本実施形態では、パラメータF×(h/I)×Lを、冷凍装置(1)の定格能力P[kW]に基づいて設定するようにしたが、この形態に限定するものではない。例えば、パラメータF×(h/I)×Lを、シリンダ(51)の容積V[cc]と、所定回転数以上である圧縮機本体(11)の回転数N[rps]とに基づいて設定するようにしてもよい。
【0160】
図17は、シリンダ容積と圧縮機本体の回転数の積V×Nと、パラメータF×(h/I)×Lとの関係を示すグラフ図である。本実施形態では、アキュムレータ(40)の上下方向の振動の大きさを表すパラメータとして、F×(h/I)×Lを定義し、このパラメータが、シリンダ(51)の容積Vと、所定回転数以上である圧縮機本体(11)の回転数Nとの積V×Nに基づいて設定される値よりも小さくなるようにしている。
【0161】
図17のグラフ図に示すように、横軸をx、縦軸をyとして、従来の圧縮機ユニットにおいて、圧縮機本体(11)の最高回転数を140rpsまで上げた場合、パラメータF×(h/I)×Lは、y=0.063x+133で示す直線が最小値ラインとなる。つまり、1つのシリンダ(51)を有する1シリンダ型の従来の圧縮機ユニットや、2つのシリンダ(51)を有する2シリンダ型の従来の圧縮機ユニットにおいて算出されたパラメータF×(h/I)×Lは、y=0.063x+133で示す直線よりも上側に位置する。
【0162】
これに対し、本実施形態の圧縮機ユニット(10)では、従来の圧縮機ユニットにおいて算出されたy=0.063x+133の切片が、
図6のグラフ図に基づいて算出した0.86倍、つまり、切片が114となるようにオフセットさせるようにした。
【0163】
この場合、本実施形態の圧縮機ユニット(10)では、パラメータF×(h/I)×Lが、下記の(7)式を満たすように設定した。
【0164】
F×(h/I)×L≦0.063×V×N+114 ・・・(7)
このように、(7)式を満たすことで、圧縮機本体(11)の最高回転数を130rps以上とした場合であっても、アキュムレータ(40)の振動が増大するのを抑えることができる。
【0165】
また、本実施形態の圧縮機ユニット(10)では、y=0.063x+133の切片が、
図6のグラフ図に基づいて算出した0.64倍、つまり、切片が85となるようにオフセットさせるようにした。
【0166】
これにより、本実施形態の圧縮機ユニット(10)では、パラメータF×(h/I)×Lが、下記の(8)式を満たすように設定した。
【0167】
F×(h/I)×L≦0.063×V×N+85 ・・・(8)
このように、(8)式を満たすことで、圧縮機本体(11)の最高回転数を112rps以上とした場合であっても、アキュムレータ(40)の振動が増大するのを抑えることができる。
【0168】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。また、明細書及び特許請求の範囲の「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0169】
以上説明したように、本開示は、圧縮機ユニット及び冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0170】
1 冷凍装置
1a 冷媒回路
10 圧縮機ユニット
11 圧縮機本体
12 ケーシング
12a 胴部
12b 上椀部
12c 下椀部
20 駆動機構
21 モータ
23 ロータ
25 駆動軸
30 バランスウエイト
31 ウエイト本体
31a 凹部
32 ウエイトカバー
32a カバー本体
32b 内周壁
32c 外周壁
40 アキュムレータ
41b 上部筐体
41c 下部筐体
42 入口管
43 出口管
50 圧縮機構
51 シリンダ
52 フロントヘッド
52b ボス部
53 リアヘッド
54 ピストン
65 仕切板
66 重量部材
【要約】
【課題】圧縮機本体の回転数を上げた場合でも、アキュムレータの振動が増大するのを抑える。
【解決手段】ピストン(54)及びブレード(57)の重量に対して圧縮機本体(11)の回転数の2乗を乗算した値F、ピストン(54)の厚み方向の中心から圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離h、圧縮機本体(11)がアキュムレータ(40)側に傾く方向に振動する際の回転中心であって圧縮機ユニット(10)の重心(G1)を通る中心軸まわりの慣性モーメントI、アキュムレータ(40)の入口管(42)の軸心から圧縮機ユニット(10)の重心(G1)までの距離L、冷凍装置(1)の定格能力Pが、F×(h/I)×L≦19×P+128という条件を満たす。
【選択図】
図2