(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】電池冷却制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/26 20060101AFI20230215BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20230215BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230215BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20230215BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20230215BHJP
B60W 20/13 20160101ALN20230215BHJP
【FI】
B60W10/26 900
B60K6/442 ZHV
B60L3/00 S
B60L58/26
B60W20/00 900
B60W20/13
(21)【出願番号】P 2018158470
(22)【出願日】2018-08-27
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】横辻 北斗
(72)【発明者】
【氏名】村松 克好
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-044887(JP,A)
【文献】国際公開第2011/121717(WO,A1)
【文献】特開2016-120780(JP,A)
【文献】特開2005-204481(JP,A)
【文献】特開2011-219005(JP,A)
【文献】国際公開第2015/107589(WO,A1)
【文献】特開2013-016393(JP,A)
【文献】特開2016-159707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/26
B60K 6/442
B60L 3/00
B60L 58/26
B60W 20/00
B60W 20/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関、走行用の動力を出力可能な回転電機、及び、当該回転電機と電力の給電及び受電を行う蓄電装置を備える車両に設けられ、当該蓄電装置を冷却する電池冷却制御装置であって、
前記蓄電装置の温度を検出する蓄電装置管理部と、
前記車両の走行モードを、前記内燃機関を停止させて前記回転電機を作動させて前記車両が走行するEV走行と、前記内燃機関及び前記回転電機を作動させて前記車両が走行するHEV走行とに切り替え可能であるとともに、前記蓄電装置管理部の検出結果に基づき、前記蓄電装置の温度が予め設定した冷却開始温度となると冷却開始指令を出力し、前記蓄電装置の温度が予め設定した冷却停止温度となると冷却停止指令を出力する電子制御部と、
前記冷却開始指令を受信すると前記蓄電装置に対する冷却を開始し、前記冷却停止指令を受信すると前記蓄電装置に対する冷却を停止する冷却システムとを備え、
前記電子制御部は、
前記EV走行中の前記冷却開始温度を、前記HEV走行中の前記冷却開始温度よりも高い値に設定するとともに、
前記EV走行中の前記冷却停止温度を、前記HEV走行中の前記冷却停止温度以上の値に設定し、
前記EV走行の場合と前記HEV走行の場合とで、前記冷却開始温度及び前記冷却停止温度の設定値を変更する
ことを特徴とする電池冷却制御装置。
【請求項2】
前記電子制御部は、
前記HEV走行のなかでも、さらに、前記内燃機関及び前記回転電機の動力によって前記車両が走行するパラレル走行と、前記内燃機関により発電した電力を用いて前記回転電機が作動し前記車両が走行するシリーズ走行とに、切り替え可能である
ことを特徴とする
請求項1に記載の電池冷却制御装置。
【請求項3】
前記電子制御部は、
前記シリーズ走行中の前記冷却開始温度を、前記パラレル走行中の前記冷却開始温度以上の値に設定するとともに、
前記シリーズ走行中の前記冷却停止温度を、前記パラレル走行中の前記冷却停止温度以上の値に設定する
ことを特徴とする
請求項2に記載の電池冷却制御装置。
【請求項4】
前記蓄電装置管理部は、前記蓄電装置の充電率を検出し、
前記電子制御部は、
前記EV走行中において、前記蓄電装置管理部の検出結果に基づき、
前記充電率が所定値よりも大きい場合の前記冷却開始温度を、前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却開始温度よりも高い値に設定し、
前記充電率が前記所定値よりも大きい場合の前記冷却停止温度を、前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却停止温度以上の値に設定する
ことを特徴とする
請求項1から3のいずれか1項に記載の電池冷却制御装置。
【請求項5】
前記蓄電装置管理部は、前記蓄電装置の充電率を検出し、
前記電子制御部は、
前記シリーズ走行中において、前記蓄電装置管理部の検出結果に基づき、
前記充電率が所定値よりも大きい場合の前記冷却開始温度を、前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却開始温度よりも高い値に設定し、
前記充電率が前記所定値よりも大きい場合の前記冷却停止温度を、前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却停止温度以上の値に設定する
ことを特徴とする
請求項2または3に記載の電池冷却制御装置。
【請求項6】
前記蓄電装置管理部は、前記蓄電装置の充電率を検出し、
前記電子制御部は、
前記パラレル走行中において、前記蓄電装置管理部の検出結果に基づき、
前記充電率が所定値よりも大きい場合の前記冷却開始温度を、前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却開始温度よりも高い値に設定し、
前記充電率が前記所定値よりも大きい場合の前記冷却停止温度を、前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却停止温度以上の値に設定する
ことを特徴とする
請求項2または3に記載の電池冷却制御装置。
【請求項7】
前記電子制御部は、
前記EV走行中における前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却開始温度を、前記HEV走行中における前記冷却開始温度以上に設定し、
前記EV走行中における前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却停止温度を、前記HEV走行中における前記冷却停止温度以上に設定する
ことを特徴とする
請求項4に記載の電池冷却制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン及びモータを有する電動車両に備わる電池冷却制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電動車両(例えばハイブリッド車やプラグインハイブリッド車等)には、モータに電力を給電するためのバッテリが設けられており、さらに、当該バッテリが高温となり劣化することを抑制するために、当該バッテリを冷却する冷却装置が設けられている。
【0003】
一例として、下記特許文献1,2には、2種類の走行モードを選択可能な電動車両において、走行に使用する消費電力の多い走行モード中に、冷却装置によるバッテリへの冷却力を高めるといった技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005‐204481号公報
【文献】特開2011‐219005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷却装置によりバッテリに対する冷却を開始すると、消費電力が増加、すなわち電費が悪化し、EV航続距離(バッテリが満充電の状態から走行可能な距離)が減少する。そのため、バッテリの劣化を抑制することとEV航続距離を増加することとを両立することができない。例えば上記特許文献1,2においては、走行に使用する消費電力の多い走行モードを選択した場合、冷却装置による冷却力を高めるため冷却装置が消費する電力も増加してしまうことになり、EV航続距離が大幅に減少してしまう。
【0006】
本発明は、上記技術的課題に鑑み、バッテリ劣化の抑制とEV航続距離の増加とを両立することを可能とする電池冷却制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係る電池冷却制御装置は、
内燃機関、走行用の動力を出力可能な回転電機、及び、当該回転電機と電力の給電及び受電を行う蓄電装置を備える車両に設けられ、当該蓄電装置を冷却する電池冷却制御装置であって、
前記蓄電装置の温度を検出する蓄電装置管理部と、
前記車両の走行モードを、前記内燃機関を停止させて前記回転電機を作動させて前記車両が走行するEV走行と、前記内燃機関及び前記回転電機を作動させて前記車両が走行するHEV走行とに切り替え可能であるとともに、前記蓄電装置管理部の検出結果に基づき、前記蓄電装置の温度が予め設定した冷却開始温度となると冷却開始指令を出力し、前記蓄電装置の温度が予め設定した冷却停止温度となると冷却停止指令を出力する電子制御部と、
前記冷却開始指令を受信すると前記蓄電装置に対する冷却を開始し、前記冷却停止指令を受信すると前記蓄電装置に対する冷却を停止する冷却システムとを備え、
前記電子制御部は、
前記EV走行中の前記冷却開始温度を、前記HEV走行中の前記冷却開始温度よりも高い値に設定するとともに、
前記EV走行中の前記冷却停止温度を、前記HEV走行中の前記冷却停止温度以上の値に設定し、
前記EV走行の場合と前記HEV走行の場合とで、前記冷却開始温度及び前記冷却停止温度の設定値を変更する
ことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第2の発明に係る電池冷却制御装置は、
上記第1の発明に係る電池冷却制御装置において、
前記電子制御部は、
前記HEV走行のなかでも、さらに、前記内燃機関及び前記回転電機の動力によって前記車両が走行するパラレル走行と、前記内燃機関により発電した電力を用いて前記回転電機が作動し前記車両が走行するシリーズ走行とに、切り替え可能である
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第3の発明に係る電池冷却制御装置は、
上記第2の発明に係る電池冷却制御装置において、
前記電子制御部は、
前記シリーズ走行中の前記冷却開始温度を、前記パラレル走行中の前記冷却開始温度以上の値に設定するとともに、
前記シリーズ走行中の前記冷却停止温度を、前記パラレル走行中の前記冷却停止温度以上の値に設定する
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第4の発明に係る電池冷却制御装置は、
上記第1から3のいずれか1つの発明に係る電池冷却制御装置において、
前記蓄電装置管理部は、前記蓄電装置の充電率を検出し、
前記電子制御部は、
前記EV走行中において、前記蓄電装置管理部の検出結果に基づき、
前記充電率が所定値よりも大きい場合の前記冷却開始温度を、前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却開始温度よりも高い値に設定し、
前記充電率が前記所定値よりも大きい場合の前記冷却停止温度を、前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却停止温度以上の値に設定する
ことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第5の発明に係る電池冷却制御装置は、
上記第2または3の発明に係る電池冷却制御装置において、
前記蓄電装置管理部は、前記蓄電装置の充電率を検出し、
前記電子制御部は、
前記シリーズ走行中において、前記蓄電装置管理部の検出結果に基づき、
前記充電率が所定値よりも大きい場合の前記冷却開始温度を、前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却開始温度よりも高い値に設定し、
前記充電率が前記所定値よりも大きい場合の前記冷却停止温度を、前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却停止温度以上の値に設定する
ことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第6の発明に係る電池冷却制御装置は、
上記第2または3の発明に係る電池冷却制御装置において、
前記蓄電装置管理部は、前記蓄電装置の充電率を検出し、
前記電子制御部は、
前記パラレル走行中において、前記蓄電装置管理部の検出結果に基づき、
前記充電率が所定値よりも大きい場合の前記冷却開始温度を、前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却開始温度よりも高い値に設定し、
前記充電率が前記所定値よりも大きい場合の前記冷却停止温度を、前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却停止温度以上の値に設定する
ことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第7の発明に係る電池冷却制御装置は、
上記第4の発明に係る電池冷却制御装置において、
前記電子制御部は、
前記EV走行中における前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却開始温度を、前記HEV走行中における前記冷却開始温度以上に設定し、
前記EV走行中における前記充電率が前記所定値以下の場合の前記冷却停止温度を、前記HEV走行中における前記冷却停止温度以上に設定する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電池冷却制御装置は、バッテリ劣化の抑制とEV航続距離の増加とを両立することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1に係る電池冷却制御装置が搭載された車両の主な構成を説明するブロック図である。
【
図2】本発明の実施例1におけるECUが各設定温度を決定する処理について説明するフローチャートである。
【
図3】本発明の実施例2におけるECUが各設定温度を決定する処理について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る電池冷却制御装置について、実施例にて図面を用いて説明する。
【0018】
[実施例1]
図1は、本実施例に係る電池冷却制御装置が搭載された車両の主な構成を説明するブロック図である。
図1に示すように、車両1は主として、ECU(Electronic Control Unit:電子制御部)11、モータジェネレータ(回転電機)12、インバータ13、バッテリ(蓄電装置)14、エンジン(内燃機関)15、BMU(Battery Management Unit:蓄電装置管理部)16、及び冷却システム17を備えている。
【0019】
ECU11は、車両1に設けられた各種センサからの情報に基づき、車両1の運転状態を把握し、それに基づいて車両1に搭載された各種装置を総括的に制御するものである。なお、ECU11の入出力信号としては、例えばCAN(Contoroller Area Network)信号を用いる。CAN信号とは、ECU11と接続する通信線によって伝送される信号を指す。また、ECU11は、後述する車両1の各走行モードの切り替えを行う。
【0020】
モータジェネレータ12は、インバータ13を介してバッテリ14と接続しており、ECU11の指令に基づき駆動し、バッテリ14との間で電力の給電及び受電が行われるとともに、車両1の走行用の動力を出力可能とする。なお、エンジン15を停止させ、モータジェネレータ12を作動させて車両1の走行が行われる走行モードは、一般的にEV走行と呼称される。
【0021】
エンジン15は、ECU11の指令に基づき作動し、車両1の走行用の動力を出力可能とする。一般的にパラレル走行と呼称される走行モードは、このエンジン15及びモータジェネレータ12の動力によって、車両1の走行が行われるものである。
【0022】
また、一般的にシリーズ走行と呼称される走行モードは、エンジン15が作動することで発電が行われ、発電された電力はモータジェネレータ12に給電され、車両1の走行自体はこの電力を用いて作動するモータジェネレータ12の動力のみによって行われるものである。
【0023】
上述のようにエンジン15及びモータジェネレータ12を作動させて走行が行われるパラレル走行及びシリーズ走行を、纏めてHEV走行と呼称する。そして、これまでに説明したEV走行、HEV走行(パラレル走行、シリーズ走行)の各走行モードは、ECU11によって切り替え可能である。
【0024】
BMU16は、ECU11及びバッテリ14と接続しており、バッテリ14の温度、SOC(States Of Charge:充電率)、電圧、及び電流の検出及び管理を行い、ECU11にその情報を伝達する。
【0025】
冷却システム17は、ECU11と接続しており、ECU11の指令に基づきバッテリ14の冷却を行うシステムである。
【0026】
また、本実施例におけるECU11には、バッテリ14に対し冷却を開始する温度である冷却開始温度、及び、バッテリ14に対する冷却を停止する温度である冷却停止温度が予め設定されている。そして、BMU16の検出結果に基づき、バッテリ14の温度が冷却開始温度となると冷却システム17に対し冷却開始指令を出力し、バッテリ14の温度が冷却停止温度となると冷却システム17に対し冷却停止指令を出力する。
【0027】
そして、冷却システム17は、ECU11から上記冷却開始指令を受信するとバッテリ14に対する冷却を開始し、上記冷却停止指令を受信するとバッテリ14に対する冷却を停止する。
【0028】
また、ECU11は、EV走行中とHEV走行中とで、冷却開始温度及び冷却停止温度の設定値を変更する。具体的には、冷却開始温度を、EV走行中の設定値をHEV走行中の設定値よりも高い値に設定し、冷却停止温度を、EV走行中の設定値をHEV走行中の設定値以上の値に設定する。
【0029】
さらにECU11は、HEV走行のなかでも、シリーズ走行中の場合とパラレル走行中の場合とで、冷却開始温度及び冷却停止温度の設定値を変更する。具体的には、冷却開始温度及び冷却停止温度ともに、シリーズ走行中の設定値をパラレル走行中の設定値以上の値に設定する。
【0030】
以下、ECU11が各設定温度を決定する処理(動作)について、
図2のフローチャートを用いて具体的に説明する。
【0031】
まず、ステップS1においては、車両1がEV走行中であるか否かを判断する。EV走行中であればステップS4へ、そうでなければステップS2へ移行する。
【0032】
ステップS2においては、車両1がシリーズ走行中であるか否かを判断する。シリーズ走行中であればステップS5へ、そうでなければステップS3へ移行する。
【0033】
ステップS3においては、車両1がパラレル走行中であるか否かを判断する。パラレル走行中であればステップS6へ、そうでなければステップS7へ移行する。
【0034】
ステップS4においては、冷却開始温度をTe1に設定し、冷却停止温度をTe2に設定する。
【0035】
ステップS5においては、冷却開始温度をTs1に設定し、冷却停止温度をTs2に設定する。
【0036】
ステップS6においては、冷却開始温度をTp1に設定し、冷却停止温度をTp2に設定する。
【0037】
また、既に説明したごとく、上述の各冷却開始温度については、Te1>Ts1≧Tp1とし、各冷却停止温度については、Te2≧Ts2≧Tp2とする。
【0038】
ステップS7においては、冷却開始温度及び冷却停止温度の値(前回値)を保持する。このステップS7は、走行モードの切り替えの際の移行時間、あるいは、通信機器が故障するなどして走行モードを特定できない場合を想定している。
【0039】
そしてECU11は、上記ステップS1~S7によって決定した冷却開始温度及び冷却停止温度に基づき、冷却システム17に対しバッテリ14への冷却開始及び冷却停止の指令を行う。
【0040】
すなわち、本実施例では、ECU11において、車両1がEV走行、シリーズ走行、あるいはパラレル走行のいずれの走行モードであるかに応じて、バッテリ14の冷却開始温度及び冷却停止温度の設定値を変更する。
【0041】
バッテリ14の発熱量は、EV走行中>シリーズ走行中及びパラレル走行中であるのに対し、冷却開始温度を、EV走行中>シリーズ走行中及びパラレル走行中と設定することで、EV航続可能距離及び時間を延ばす(電費を下げない)ことができる。
【0042】
また、シリーズ走行及びパラレル走行中のバッテリ14の温度を低く抑えることで、長距離ドライブの場合に、バッテリ14の温度が高いまま維持されることを防止し、バッテリ14の劣化を抑制することができる。
【0043】
上述のようにして本実施例に係る電池冷却制御装置では、バッテリの劣化の抑制と車両のEV航続距離の増加(電費の向上)とを両立させることができる。
【0044】
なお、本実施例では、車両1を停車させ、バッテリ14の充電を行う際、普通充電の場合は、急速充電の場合に比べ強力な冷却を行うようにしてもよい(急速充電中は、ユーザーが早く充電を完了させたいはずなので、冷却のためにシステムを動作させることで充電完了までの時間が伸びることを避けるため、強力な冷却は行わない)。
【0045】
[実施例2]
本実施例におけるECUは、実施例1におけるECU11にさらなる機能を付加したものである。以下、本実施例におけるECUが冷却開始温度及び冷却停止温度を決定する処理(動作)について、
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
まず、ステップS1においては、実施例1同様、車両1がEV走行中であるか否かを判断する。EV走行中であればステップS1aへ、そうでなければステップS2へ移行する。
【0047】
ステップS1aでは、実施例1で説明したBMU16によるバッテリ14のSOCの検出結果に基づき、バッテリ14のSOCが予め設定した所定値よりも大きいか否かを判断する。所定値よりも大きい場合はステップS4へ、所定値以下である場合はステップS4aへ移行する。
【0048】
ステップS4においては、実施例1同様、冷却開始温度をTe1に設定し、冷却停止温度をTe2に設定する。
【0049】
ステップS4aにおいては、冷却開始温度をTe3に設定し、冷却停止温度をTe4に設定する。
なお、その他のステップについては、実施例1と同様のため、ここでの説明は省略する。
【0050】
そして、各冷却開始温度については、Te1>Te3≧Ts1≧Tp1とし、各冷却停止温度については、Te2≧Te4≧Ts2≧Tp2とする(Ts1,Ts2,Tp1,Tp2の示す温度については実施例1参照)。
【0051】
また、
図3では、ステップS1において車両1がEV走行中であると判断した場合のみ、SOCの状態に応じて冷却開始温度及び冷却停止温度の変更を行っている(ステップS1a,S4,S4a)が、これについては、ステップS2において車両1がシリーズ走行中であると判断した場合、さらに、ステップS3において車両1がシリーズ走行中であると判断した場合にも、同様の処理を行うようにしてもよい。
【0052】
このようにして、本実施例におけるECUは、走行モードに加え、バッテリ14のSOC状態をも考慮して、バッテリ14に対する冷却開始温度及び冷却停止温度の設定値を変更する。具体的には、冷却開始温度を、SOCが所定値よりも大きい場合の設定値を、SOCが所定値以下の場合の設定値よりも高い値に設定し、冷却停止温度を、SOCが所定値よりも大きい場合の設定値を、SOCが所定値以下の場合の設定値以上の値に設定する。
【0053】
なお、冷却開始温度及び冷却停止温度ともに、EV走行中におけるSOCが上記所定値以下の場合の設定値を、HEV走行中における設定値以上に設定する(上記不等式のうちTe3≧Ts1≧Tp1,Te4≧Ts2≧Tp2の部分)。
【0054】
すなわち、SOCが低いということは、いずれにしても間もなくエンジンによる走行に切り替わる状態であるため、その時点でのバッテリ消費の増減がEV航続距離全体に与える影響は小さい。したがって、本実施例においては、SOCが低い状態であればEV航続距離は無視してバッテリ冷却を早めに(低い温度で)開始し、バッテリの劣化を抑制する。
【0055】
なお、上記所定値は、満充電の半分程度の値に設定してもよく、あるいは、その値を自在に変更可能としてもよい。
【0056】
本実施例に係る電池冷却制御装置では、上述のように走行モードに加えてSOC状態をも考慮することで、バッテリの劣化の抑制と車両のEV航続距離の増加(電費の向上)との両立をより確実に実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、エンジン及びモータを有する電動車両に備わる電池冷却制御装置として好適である。
【符号の説明】
【0058】
1 車両
11 ECU(電子制御部)
12 モータジェネレータ(回転電機)
13 インバータ
14 バッテリ(蓄電装置)
15 エンジン(内燃機関)
16 BMU(蓄電装置管理部)
17 冷却システム